説明

IP電話システム

【課題】 IP電話システムにおいて、SIPプロトコル上で作動する他の端末装置に影響を及ぼすことなく、パーク機能を実現できるIP電話システムを提供する。
【解決手段】 IP電話端末間で通話状態にある第一のIP電話端末からのパーク指示を受けて、第二のIP電話端末との間の接続を切断すると共に、切断された第二のIP電話端末と上記サーバとを接続してパーク保留する一方、上記パーク指示を出した第一の前記IP電話端末からパーク解除指示があったとき、前記第二のIP電話端末と上記サーバとのパーク保留を解除すると共に、前記第一のIP電話端末と前記第二のIP電話端末との接続を復元するパーク装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIP電話システムに係り、特にSIPプロトコル上で作動する端末装置に影響を及ぼすことなくパーク機能を実現するに好適なIP電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、インターネット・プロトコルを利用したIP電話システムが普及してきている。このIP電話システムに用いられるIP電話端末は、ネットワークに接続するためのネットワークインタフェースを備え、例えばLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)に接続される。この種のIP電話は、インターネット・プロトコル上での通話を実現すべくIP電話間の接続管理を行うサーバ(SIPサーバ)がネットワークに接続されて、このSIPサーバを介して通信が行われる。ちなみにSIPサーバは、複数の電話端末間でなされるインタラクティブ通信のセッションの開始、終了および変更を制御するために定義されたプロトコルを管理する機能を備えたものである。このように構成されたIP電話システムは、公衆通信回線を利用した音声通信に比べて通信費を安く抑えることが可能であるほか、インターネットへの接続環境を有効に活用できることから複数の電話端末が必要な企業向けへの応用が進んでいる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
一方、従来から企業内では、複数のボタンを供えたボタン電話機が用いられて、例えば外線(局線)通話と内線通話との切り換えや、必要に応じて通話を保留・待機させる通話保留が実現されている(例えば、特許文献2を参照)。この特許文献2に記載のボタン電話機の通話保留方法は、局線からの着信を保留するためのパーク保留ボタンを複数備えてなるボタン電話機を、複数収納するボタン電話装置(主装置)が制御することによってなされる。具体的に主装置は、ボタン電話機間で内線通話を行う場合、この主装置が収納するボタン電話機からの発呼要求を受けて、この主装置が管理する他のボタン電話機に対して着呼処理を行う。このように構成されたボタン電話機のシステムにあっては、内線を用いて相互通話を行っているときに、この通話を一時的に保留する必要がある場合、一方のボタン電話機からの通話を保留すべく保留ボタンが押下される。すると主装置と他方のボタン電話機との間は、接続を維持したまま保留状態(パーク保留状態)に遷移する。その後、主装置は、保留指示を出した一方のボタン電話機から、この保留を解除するパークアウト指示が主装置に対して出されると、保留中であった他方のボタン電話機との通話を許可すべくボタン電話機間の接続を復帰させる。
【特許文献1】特開2002−152224号公報
【特許文献2】特許3471371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述したIP電話システムは、IP電話端末間の発着呼および終話のとき、SIPサーバから通話相手方の接続情報(IPアドレス)を受け取っているものの、SIPサーバはIP電話端末間での通話において何ら関与をするものではない。つまり、SIPサーバは、従来のボタン電話機における主装置のように、常に通話に関与しているわけではない。このため上述したIP電話にあっては、従来のボタン電話機が備える保留機能を実現できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に基づいてなされたもので、その目的は、IP電話システムにおいて、SIPプロトコル上で作動する端末装置に影響を及ぼすことなく、パーク機能を実現できるIP電話システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく、本発明に係るIP電話システムは、インターネット・プロトコルに準拠した複数のIP電話端末と、これら複数のIP電話端末における接続管理を所定の通信プロトコルに基づいて制御するサーバとがネットワークに接続されたIP電話システムであって、
前記サーバは、上記ネットワークに接続された前記複数のIP電話端末の接続情報を保持するユーザ情報テーブルと、このユーザ情報テーブルに保持された前記接続情報の登録更新処理および読み出し処理を行うユーザ登録管理部と、このユーザ登録管理部を介して読み出された前記ユーザ情報に基づき前記複数のIP電話端末に対する呼制御を行う呼制御実行部と、前記IP電話端末間で通話状態にある第一のIP電話端末からのパーク指示を受けて、第二のIP電話端末との接続を切断すると共に、切断された第二のIP電話端末と上記サーバとを接続してパーク保留する一方、上記パーク指示を出した第一の前記IP電話端末からパーク解除指示があったとき、前記第二のIP電話端末と上記サーバとのパーク保留を解除すると共に、前記第一のIP電話端末と前記第二のIP電話端末との接続を復元するパーク装置とを備えることを特徴としている。
【0007】
上述のIP電話システムによれば、IP電話装置間でなされる通信において、論理的な接続を絶つことなく、例えば保留ボタンを押下することで、一時的にその回線を保留状態(パーク状態)に設定することができる。そして、保留状態を解除するには、再び保留ボタンを押下する等すればよい。
好ましくは、前記パーク装置は、前記IP電話端末間で行われる通信毎に割付される個別の識別番号により前記パーク指示を出した上記IP電話端末を識別するパーク管理テーブルと、
このパーク管理テーブルに保持された前記識別番号に相当する前記IP電話端末のパーク指示に従い、該IP電話端末が行う通信を保留または復帰させるパーク制御部とを備えることが望ましい。
【0008】
上述のIP電話システムによれば、パーク指示を出したIP電話端末をパーク管理テーブルに保持すると共に、IP電話端末から出されたパーク解除指令を、パーク管理テーブルに保持された情報からパークから復帰し、パーク前のIP電話端末間の通信を復帰させることができる。
また、本発明に係るIP電話システムは、インターネット・プロトコルに準拠した複数のIP電話端末と、これら複数のIP電話端末における接続管理を所定の通信プロトコルに基づいて制御するサーバおよび各IP電話端末からのパーク指示を受けて該IP電話端末間のパーク制御をする複数のパーク装置とがネットワークに接続されたIP電話システムであって、
前記サーバは、上記ネットワークに接続された前記複数のIP電話端末の接続情報を保持するユーザ情報テーブルと、このユーザ情報テーブルに保持された前記接続情報の登録更新処理および読み出し処理を行うユーザ登録管理部と、このユーザ登録管理部を介して読出された前記ユーザ情報に基づき前記複数のIP電話端末に対する呼制御を行うサーバ呼制御実行部とを具備し、
前記各パーク装置は、互いに異なる所定のパーク番号を保持するパーク管理テーブルと、前記複数のIP電話端末に対する呼制御を行うパーク呼制御実行部と、前記IP電話端末間で通話状態にある第一のIP電話端末からのパーク番号およびパーク指令を受けて、このパーク番号と前記パーク管理テーブルに保持したパーク番号とが一致したとき、第二のIP電話端末との接続を切断すると共に、切断された第二のIP電話端末と上記サーバとを接続してパーク保留する一方、上記パーク指示を出した第一の前記IP電話端末からパーク番号およびパーク解除指示を受けて、このパーク番号と前記パーク管理テーブルに保持したパーク番号とが一致したとき、前記第二のIP電話端末と上記サーバとのパーク保留を解除すると共に、前記第一のIP電話端末と前記第二のIP電話端末との接続を復元するパーク制御部とを備えることを特徴としている。
【0009】
上述のIP電話システムは、ネットワークに接続された複数のIP電話端末からパーク指令と共に出力されるパーク番号と、予め保持されたパーク番号と一致するパーク装置が、IP電話端末間でなされている通話のパーク処理を実行する。そしてパーク装置は、IP電話端末からパーク解除指令が出されたとき、このパーク解除指令と共に出力されたパーク番号と一致したとき、パーク処理中のIP電話端末間の通話を復帰させる。
【0010】
ちなみに上述した所定の通信プロトコルは、セッション・イニシエーション・プロトコル(RFC3261)に基づくものとして構成される。
上述のIP電話システムは、IETF(Internet Engineering Task Force)のRFC(Request for comments)3261(SIP:Session Initiation Protocol)の規定に準拠したもので、この通信プロトコルに基づいてなされる通信を妨げることなく、パーク機能を実現する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係るIP電話システムは、パーク装置を備えているので、IP電話端末間で通話状態にあるとき、一方のIP電話端末からのパーク指示が出されたとき、他方のIP電話端末との接続を切断すると共に、切断された第二のIP電話端末とサーバとを接続してパーク保留する。また、本発明に係るIP電話システムは、パーク装置によってパーク指示を出したIP電話端末からパーク解除指示があったとき、保留側のIP電話端末と上記サーバとのパーク保留を解除すると共に、前記第一のIP電話端末と前記第二のIP電話端末との接続を復元することができる。
【0012】
特に、本発明に係るIP電話システムは、パーク番号に基づいてパーク処理を行っているので、複数のパーク処理を効率よく行うことが可能となると共に、SIPに規定される通信を妨げることなく、簡易にしてしかも容易にパーク機能を実現できる等の実用上多大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るIP電話システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。ちなみに、この図は、本発明に係るIP電話システムの一実施形態を示すものであって、この図によって本発明のIP電話システムが限定されるものではない。
この図において1は、LAN等に適用される通信回線であり、後述する複数のIP電話端末10やIP電話端末10の通話制御を行うSIPサーバ20が接続される。
【0014】
IP電話端末10には、このLANを介して通信を行うLANインタフェース11と、このLANインタフェース11を介して通話呼の処理を行う呼制御実行部12が設けられている。また、IP電話端末10は、IP電話端末10に対する種々の設定を行うため、たとえば図示しないキーボード(押しボタンスイッチ)から入力される設定情報を受け付ける入力部13、および特に図示しないがIP電話端末10のステータス(例えば発信先電話番号、時刻情報、内線番号、着信先電話番号)を使用者に示す表示部14が設けられる。具体的に表示部14は、液晶表示板(LCDパネル)などの表示用デバイスが用いられる。そして、IP電話端末10には、これらの各部を統括し、IP電話端末10全体の制御を司る端末制御部15が設けられている。
【0015】
一方、SIPサーバ20は、LANを介して通信を行うLANインタフェース21と、このLANインタフェース21を介して通話呼の処理を行う呼制御実行部22が設けられている。この呼制御実行部22は、SIPサーバ20に設けられてLAN1に接続された複数のIP電話端末10を使用するユーザ情報が登録されているデータベース23を読み書きするユーザ登録管理部24を介して実行される。
【0016】
またSIPサーバ20には、詳細は後述するが、LAN1に接続される複数のIP電話端末10から出されるパーク指令(保留指令)およびパーク解除指令(保留解除指令)を受け付けるパーク制御部31が設けられている。このパーク制御部31は、パーク指令およびパーク解除指令を出したIP電話端末10を識別するパーク管理テーブル32を備え、パーク装置30を構成する。
【0017】
このように構成された本発明に係るIP電話システムが特徴とするところは、IP電話端末10間で通話状態にある一方のIP電話端末10からのパーク指示を受けて、他方のIP電話端末10との間の接続を切断すると共に、切断された側のIP電話端末10とSIPサーバ20とを接続して通話状態を維持(パークイン)する一方、パーク指示を出した一方のIP電話端末10からのパーク解除指示があったとき、パーク状態にある他方のIP電話端末10とSIPサーバ20とのパーク状態を解除(パークアウト)すると共に、IP電話端末10間の接続を復元するパーク装置を備えた点にある。
【0018】
このような特徴ある本発明のIP電話システムに関し、より詳細に説明する。図2は、本発明に係るIP電話システムにおけるパークイン処理シーケンスを示す図である。この図は、予めSIPプロトコルによってIP電話端末10(端末装置Aおよび端末装置B)とが接続され、相互に通話を行っている状態からのパークイン処理を示している。
まず、一方のIP電話端末10(以下、端末装置Aと称する)は、通話中の他方のIP電話端末10(以下、端末装置Bと称する)との通話を保留するパーク状態に移行するとき、該端末装置Aに設けられたPARKキー(図示せず)を押下する。すると端末装置Aは、端末装置Bとの通話を保留するメッセージ(INVITEメッセージ)をSIPサーバ20に送信する(ステップS1)。
【0019】
INVITEメッセージを受けたSIPサーバ20は、端末装置Bに対して、ステップS1で受け取ったINVITEメッセージを送出する(ステップS2)。端末装置Bは、ステップS2でSIPサーバ20から送出されたINVITEメッセージを受信すると、200OKメッセージをSIPサーバ20に返信し、このINVITEメッセージを受理したこと通知する(ステップS3)。
【0020】
するとSIPサーバ20は、端末装置Aに対して、端末装置BがINVITEメッセージを受理したことを示す200OKメッセージを送信する(ステップS4)。一方、このメッセージを受けた端末装置Aは、INVITEメッセージを受信したことを示すACK了解メッセージをSIPサーバ20に送出し(ステップS5)、端末装置Bとの通話を保留することに関し、了解したことを通知する。次いでSIPサーバ20は、端末装置Aが出力したACK了解メッセージを受けて、端末装置BにACK了解メッセージを送信する(ステップS6)。これによって、端末装置Aと端末装置Bとの間の通話は保留状態になる。
【0021】
次に端末装置Aは、SIPサーバ20に対してパーク装置への通話転送を行うべくINVITEメッセージを送信する(ステップS7)。SIPサーバ20は、このINVITEメッセージを受け、パーク装置30にINVITEメッセージを送信する(ステップS8)。パーク装置30は、ステップS8でINVITEメッセージを受信すると、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信し、INVITEメッセージ受理を通知する(ステップS9)。
【0022】
SIPサーバ20は、ステップS9でパーク装置30から送信されたINVITEメッセージ受理通知(200OK)を端末装置Aに送信する(ステップS10)。すると端末装置Aは、200OKメッセージを受信したことを示すACK了解メッセージをSIPサーバ20に送信してパーク装置30との通話了解を通知する(ステップS11)。
SIPサーバ20は、ステップS11で端末装置Aがパーク装置30に対して送信したACK了解メッセージを送信する(ステップS12)。これにより端末装置Aとパーク装置30との間は、通話状態に移行する。
【0023】
そして端末装置Aは、端末装置Bに対してパーク装置30との間の通話を転送するため、REFER転送メッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS13)。このときREFER転送メッセージ内のRefer−Toに、パーク装置のURI(SIP:パーク装置@PROXY)を設定する。するとSIPサーバ20は、端末装置Bに対してREFER転送メッセージを送信する(ステップS14)。
【0024】
一方、端末装置Bは、ステップS14でなされたREFER転送メッセージを受信すると202AcceptedメッセージをSIPサーバ20に送信してREFER転送メッセージ受理を通知する(ステップS15)。この202Acceptedメッセージを受けたSIPサーバ20は、端末装置Aに202Acceptedメッセージを送信する(ステップS16)。
【0025】
また端末装置Bは、ステップS15において202AcceptedメッセージをSIPサーバ20に送信した後、REFER転送メッセージ内のRefer−Toに設定されているSIPサーバ20のURI(例えばSIP:パーク装置@PROXY)に従って、SIPサーバ20との通話を行うINVITEメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS17)。
【0026】
するとSIPサーバ20は、ステップS17で受信したINVITEメッセージをパーク装置30に送信する(ステップS18)。このINVITEメッセージを受信したパーク装置30は、メッセージを受理したことを200OKメッセージとしてSIPサーバ20に送信して通知する(ステップS19)。
次いでSIPサーバ20は、ステップS19で受信した200OKメッセージを端末装置Bに送信する(ステップS20)。端末装置Bは、ステップS20で200OKメッセージを受信すると、ACK了解メッセージをSIPサーバ20に送信してパーク装置30との通話了解を通知する(ステップS21)。この通話了解を受けたSIPサーバ20は、パーク装置30にACK了解メッセージを送信する(ステップS22)。これにより端末装置Bとパーク装置30との間がパーク保留状態となる。
【0027】
そしてパーク装置30はステップS7からステップS12によって確立した端末装置Aとの通話を切断するため、SIPサーバ20に対し、BYE切断メッセージを送信する(ステップS23)。このBYE切断メッセージを受信したSIPサーバ20は、このメッセージを端末装置Aに送信する(ステップS24)。すると端末装置Aは、ステップS24でBYE切断メッセージを受けて、通話切断を了解する200OKメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS25)。そしてSIPサーバ20は、ステップS25で受信した200OKメッセージをパーク装置に送信する(ステップS26)。
【0028】
端末装置Bは、ステップS14によって転送が完了したこと端末装置Aに通知すべくNOTIFYメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS27)。ちなみに、このNOTIFYメッセージにはREFER転送メッセージに対する200OKメッセージを設定する。するとSIPサーバ20は、ステップS26で受信したNOTIFYメッセージを端末装置Aに送信する(ステップS28)。
【0029】
一方、端末装置Aは、ステップS28でNOTIFYメッセージを受信すると200OKメッセージをSIPサーバ20に送信し、NOTIFYメッセージ受理を通知する(ステップS29)。するとSIPサーバ20は、ステップS29で受信した200OKメッセージを端末装置Bに送信する(ステップS30)。
他方、端末装置Aは、ステップS28において200OKメッセージを確認し、ステップS1からステップS6において確立した保留を切断するためBYE切断メッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS31)。このBYE切断メッセージを受信したSIPサーバ20は、端末装置Bに対してBYE切断メッセージを送信する(ステップS32)。このBYE切断メッセージを受信した端末装置Bは、200OKメッセージをSIPサーバに送信してBYE切断メッセージ受理を通知する(ステップS33)。するとSIP33は、端末装置Aに対して200OKメッセージ(F34)を送信する(ステップS34)。
【0030】
このようにして端末装置Aと端末装置Bとの間の通話はパーク装置30と端末装置Bに転送される(パークイン完了)。
次に、このようにしてパークインした端末装置Aと端末装置Bとのパークを解除して、再び端末装置Aと端末装置Bとの通話を復帰(パークアウト)させる場合について、図3に示すパークアウト処理シーケンスに基づいて説明する。
【0031】
まず、端末装置Aは、パークインされている呼を確保するために端末装置Aが備えるPARKキー(図示せず)を押下する。すると端末装置Aは、INVITEメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS35)。このメッセージを受けたSIPサーバ20は、INVITEメッセージをパーク装置30に送信する(ステップS36)。
するとパーク装置30は、ステップS36にてINVITEメッセージを受信すると、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信してINVITEメッセージ受理を通知する(ステップS37)。そして、SIPサーバ20は、ステップS37でパーク装置30がINVITEメッセージを受理したことを示す200OKメッセージを端末装置Aに送信する(ステップS38)。この200OKメッセージを受信した端末装置Aは、ACK了解メッセージを送信し、パーク装置30との通話了解を通知する(ステップS39)。
【0032】
するとSIPサーバ20は、パーク装置30にACK了解メッセージを送信する(ステップS40)。これによりパーク装置30と端末装置Aとの間は通話状態に移行する。
次いでパーク装置30は、端末装置Bにパーク中の通話を転送するためにREFER転送メッセージを送信する(ステップS41)。このときREFER転送メッセージ内には、Refer−Toに端末装置AのURI(例えばSIP:KT1@PROXY)を設定する。そしてSIPサーバ20は、REFER転送メッセージを端末装置Bに送信する(ステップS42)。
【0033】
このとき端末装置Bは、ステップS41のREFER転送メッセージを受信すると202AcceptedメッセージをSIPサーバ20に送信してREFER転送メッセージ受理を通知する(ステップS43)。するとSIPサーバ20は、パーク装置30に対して、この202Acceptedメッセージを送信する(ステップS44)。
一方、端末装置Bは、ステップS43でSIPサーバ20に202Acceptedメッセージを送信した後、REFER転送メッセージ内のRefer−Toに設定されているURI(例えばSIP:KT1@PROXY)に従って、INVITEメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS45)。そしてSIPサーバ20は、INVITEメッセージを端末装置Aに送信する(ステップS46)。
【0034】
端末装置Aは、ステップS46でのINVITEメッセージを受信すると、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信してINVITEメッセージ受理を通知する(ステップS47)。するとSIPサーバ20は、ステップS47において受信した200OKメッセージを端末装置Bに送信する(ステップS48)。この200OKメッセージを受信した端末装置Bは、ACK了解メッセージをSIPサーバ20に送信し、端末装置Aとの通話了解を通知する(ステップS49)。するとSIPサーバ20は、端末装置AにACK了解メッセージを送信する(ステップS50)。そうして端末装置Aと端末装置Bとの間は通話状態に移行する。
【0035】
次いで端末装置Aは、ステップS35からステップS40によって確立した通話を切断するためにBYE切断メッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS51)。このメッセージを受けたSIPサーバ20は、BYE切断メッセージをパーク装置30に送信する(ステップS52)。するとパーク装置30は、この通話の切断を了解する200OKメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS53)。ステップS35で200OKメッセージを受信したSIPサーバ20は、200OKメッセージを端末装置Aに送信する(ステップS54)。
【0036】
一方、端末装置Bは、ステップS45によって転送が完了したことをパーク装置30に通知するべく、NOTIFYメッセージを送信する(ステップS55)。このNOTIFYメッセージは、REFER転送メッセージに対する200OKメッセージを設定するものである。そして、SIPサーバ20は、このNOTIFYメッセージをパーク装置30に送信する(ステップS56)。
【0037】
パーク装置30は、ステップS56でNOTIFYメッセージを受信すると、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信し、NOTIFYメッセージ受理を通知する(ステップS57)。するとSIPサーバ20は、ステップS57で受信した200OKメッセージを端末装置Aに送信する(ステップS58)。
パーク装置30は、ステップS58で200OKメッセージを受信するとステップS17からステップS22によって確立したパーク保留を解除するためBYE切断メッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS59)。このメッセージを受けたSIPサーバ20は、BYE切断メッセージを端末装置Bに送信する(ステップS60)。すると端末装置Bは、BYE切断メッセージ受理を通知するべく、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS61)。次いでSIPサーバ20は、ステップS61で受信した200OKメッセージをパーク装置30に送信する(ステップS62)。このようにしてパークインされていた通話は、端末装置Aと端末装置Bとの間の通話状態に移行しパーク状態が解除される(パークアウト完了)。
【0038】
かくして本発明のパーク装置は、上述したようにSIPサーバ20を介してSIPプロトコルにおけるRefer機能を利用し、端末装置の間の通信をパーク装置30と一方の端末装置との通話として転送してパーク機能を実現している。このためSIPプロトコルに規定される通信規約に反することなくパーク機能を実現することができる。したがってパーク機能を有しないIP電話装置が同一ネットワーク1に混在してもかまわない。また既存のIP電話端末10を用いてパーク機能を実現するには、該IP電話端末10のソフトウェアの一部を改変するだけでよい。
【0039】
次に本発明のIP電話システムの別の実施形態に関し、この別の実施形態を示す図4を用いて説明する。この別の実施形態が上述した実施形態と異なるところは、SIPサーバ20内にあったパーク装置30を分けると共に、このパーク装置30を複数台、ネットワーク1に接続して構成した点にある。ちなみにパークインおよびパークアウトの処理シーケンスは、上述した図2および図3に示す処理シーケンスと同様である。
【0040】
そこでこのように構成された本発明のIP電話システムの別の実施形態におけるSIPサーバ20の他の機能およびパーク装置30内の機能については、上述した実施形態と同様であり、それぞれ同符号を付すと共に、その説明を省略する。
さて、本発明の別の実施形態にかかるIP電話システムにおけるパーク装置30は、概略的にはネットワーク1に接続される複数のIP電話端末10と同様なソフトウェア構造をとっている。そして、ネットワーク1に接続される各パーク装置30には、それぞれ異なる重複しないパーク番号が予め割り付けられたものとなっている。そして、パークインまたはパークアウトの際、IP電話端末10から出力されるパーク番号と一致するパーク装置30が、係るパークインまたはパークアウト処理を実行する。具体的には、上述したステップS7〜S10,S13,S14,S35およびステップS36において送信するメッセージにパーク番号を載せ、そのパーク番号と一致するパーク装置30にパーク処理を行わせればよい。このようにすることで、複数のパーク処理を同時に行うことが可能となる。
【0041】
詳しくは、上述した図2に示すパークイン時の処理シーケンスを参照しながら、異なる点について言及する。ちなみに以下の説明において、上述した図2または図3に示す処理シーケンスと異なる部位については、ステップ番号に添え字[a]を付与するこことし、特に図示は行わないこととする。
さて、ステップS7において端末装置Aは、SIPサーバ20に対してパーク装置への通話転送を行うべく任意のパーク番後を付与したINVITEメッセージを送信する(ステップS7a)。次いでSIPサーバ20は、このINVITEメッセージを受け、複数のパーク装置30に対してステップS7aで付与されたパーク番号を含むINVITEメッセージを送信する(ステップS8a)。各パーク装置30は、ステップS8aで送信されたINVITEメッセージに含まれるパーク番号と、予めパーク装置30毎に割り付けられたパーク番号とが一致するかを判定する。そして、パーク番号が一致したパーク装置30は、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信し、パーク番号を含むINVITEメッセージ受理を通知する(ステップS9a)。SIPサーバ20は、ステップS9aでパーク装置30から送信されたINVITEメッセージ受理通知(200OK)をパーク番号を含むメッセージとして端末装置Aに送信する(ステップS10a)。
【0042】
また、図2のステップS13において端末装置Aは、端末装置Bに対してパーク装置30との間の通話を転送するため、前述したパーク番号を含むREFER転送メッセージをSIPサーバ20に送信する(ステップS13a)。このときREFER転送メッセージ内のRefer−Toに、パーク装置のURI(SIP:パーク装置@PROXY)を設定する。するとSIPサーバ20は、端末装置Bに対してパーク番号を含むREFER転送メッセージを送信する(ステップS14a)。
【0043】
一方、図3のパークアウト処理シーケンスを示す図においてステップS35で端末装置Aは、INVITEメッセージと共に、パークイン時に指定したパーク番号をSIPサーバ20に送信する(ステップS35a)。このメッセージを受けたSIPサーバ20は、ステップS35で端末装置Aが送出したパーク番号を含むINVITEメッセージを各パーク装置30に送信する(ステップS36a)。パーク装置30は、ステップS36にてINVITEメッセージを受信すると、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信してINVITEメッセージ受理を通知する(ステップS37)。各パーク装置30は、ステップS36aで送信されたINVITEメッセージに含まれるパーク番号と、予めパーク装置30毎に割り付けられたパーク番号とが一致するかを判定する。そして、パーク番号が一致したパーク装置30は、200OKメッセージをSIPサーバ20に送信し、パーク番号を含むINVITEメッセージ受理を通知する(ステップS37a)。
【0044】
かくしてこのように構成された本発明の別の実施形態に係るIP電話システムによれば、複数のパーク装置30にそれぞれ異なるパーク番号を予め付与すると共に、このパーク番号と一致するパーク番号を送出したIP電話端末10のパーク処理を行っている。このため、同時に複数のIP電話端末10から出されるパーク要求に対応することが可能となる。
【0045】
尚、本発明のIP電話システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るIP電話システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】図1に示すIP電話システムにおいて、パークイン処理の一例を示すシーケンス図。
【図3】図2に示すIP電話システムにおいて、パークアウト処理の一例を示すシーケンス図。
【図4】本発明の別の実施形態に係るIP電話システムの概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0047】
1 ネットワーク
10 電話端末
11 インタフェース
12 呼制御実行部
13 入力部
14 表示部
15 端末制御部
20 サーバ
21 インタフェース
22 呼制御実行部
23 データベース
24 ユーザ登録管理部
30 パーク装置
31 パーク制御部
32 パーク管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネット・プロトコルに準拠した複数のIP電話端末と、これら複数のIP電話端末における接続管理を所定の通信プロトコルに基づいて制御するサーバとがネットワークに接続されたIP電話システムであって、
前記サーバは、上記ネットワークに接続された前記複数のIP電話端末の接続情報を保持するユーザ情報テーブルと、
このユーザ情報テーブルに保持された前記接続情報の登録更新処理および読み出し処理を行うユーザ登録管理部と、
このユーザ登録管理部を介して読み出された前記ユーザ情報に基づき前記複数のIP電話端末に対する呼制御を行う呼制御実行部と、
前記IP電話端末間で通話状態にある第一のIP電話端末からのパーク指示を受けて、第二のIP電話端末との接続を切断すると共に、切断された第二のIP電話端末と上記サーバとを接続してパーク保留する一方、上記パーク指示を出した第一の前記IP電話端末からパーク解除指示があったとき、前記第二のIP電話端末と上記サーバとのパーク保留を解除すると共に、前記第一のIP電話端末と前記第二のIP電話端末との接続を復元するパーク装置と
を備えることを特徴とするIP電話システム。
【請求項2】
前記パーク装置は、前記IP電話端末間で行われる通信毎に割付される個別の識別番号により前記パーク指示を出した上記IP電話端末を識別するパーク管理テーブルと、
このパーク管理テーブルに保持された前記識別番号に相当する前記IP電話端末のパーク指示に従い、該IP電話端末が行う通信を保留または復帰させるパーク制御部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のIP電話システム。
【請求項3】
インターネット・プロトコルに準拠した複数のIP電話端末と、これら複数のIP電話端末における接続管理を所定の通信プロトコルに基づいて制御するサーバおよび各IP電話端末からのパーク指示を受けて該IP電話端末間のパーク制御をする複数のパーク装置とがネットワークに接続されたIP電話システムであって、
前記サーバは、上記ネットワークに接続された前記複数のIP電話端末の接続情報を保持するユーザ情報テーブルと、
このユーザ情報テーブルに保持された前記接続情報の登録更新処理および読み出し処理を行うユーザ登録管理部と、
このユーザ登録管理部を介して読み出された前記ユーザ情報に基づき前記複数のIP電話端末に対する呼制御を行うサーバ呼制御実行部と
を具備し、
前記各パーク装置は、互いに異なる所定のパーク番号を保持するパーク管理テーブルと、
前記複数のIP電話端末に対する呼制御を行うパーク呼制御実行部と、
前記IP電話端末間で通話状態にある第一のIP電話端末からのパーク番号およびパーク指令を受けて、このパーク番号と前記パーク管理テーブルに保持したパーク番号とが一致したとき、第二のIP電話端末との接続を切断すると共に、切断された第二のIP電話端末と上記サーバとを接続してパーク保留する一方、上記パーク指示を出した第一の前記IP電話端末からパーク番号およびパーク解除指示を受けて、このパーク番号と前記パーク管理テーブルに保持したパーク番号とが一致したとき、前記第二のIP電話端末と上記サーバとのパーク保留を解除すると共に、前記第一のIP電話端末と前記第二のIP電話端末との接続を復元するパーク制御部と
を備えることを特徴とするIP電話システム。
【請求項4】
前記所定の通信プロトコルは、セッション・イニシエーション・プロトコル(RFC3261)に基づくものである請求項1または2に記載のIP電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−217256(P2006−217256A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27841(P2005−27841)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】