説明

IR吸収感光性光学的可変性インク組成物及び方法

水溶性で感光性の光学的可変性(POV)インクは、赤外線吸収特性の改良により改良されたOCR可読性を示す。このインクは、可視及び紫外線の両方で見ることができて物理的に一致するポジ及びネガ画像を有する画像を生成することができる。新しいインクは、IR吸収剤及び他の適切な原料に加えて、少なくとも2つの種類の着色剤を含有する。第1の着色剤は、蛍光-励起電磁線で励起されると固有の発光帯内の光を放出する蛍光染料又は顔料を含む。第2の着色剤は、カーボンブラック赤外線吸収組成物を単独か、又は暗色をもたらすような方法で第1の着色剤の固有の発光帯よりも長波長の又は更に第1の着色剤の発光波長に重なる光吸収帯を有する1種以上の染料又は顔料と共に含む。インクは、可視画像と蛍光画像の間の強い負の相関を保持しながら、IR放射の存在下でより高いコントラストをもたらすように調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい感光性の光学的可変性(POV)インクに関し、より詳細には、改良された赤外線吸収特性のためにOCR可読性が改良された画像を印刷することができる水溶性POVインクに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のPOVインクは、インクジェット印刷に用いるのに有用であり、ある一定の範囲のセキュリティ用途がある。これらは、他のインクと異なる種類のセキュリティマーキングを生成することができる。POVインクは、確実な供給源又は認可された供給元から入手可能である場合には、偽造品製造に対する大きな障壁を呈し、赤外線のために正確さに欠点があるOCR読取装置で読み取ることが必要な場合が多い。本発明は、POVインクのセキュリティ機能を有し、同時に広く用いられているレーザベースシステムによる改良されたOCR処理を有するインクジェットインクを提供する。
【0003】
本発明のインクは、感光性で光学的に可変性であり、これは、短波長光で励起されると特定の波長範囲で蛍光を発する印刷された視覚的に黒又は濃灰色の機械読み取り可能な情報を有するマーキングを提供することができることを意味する。印刷された画像は、可視スペクトルの赤色領域を含む全可視スペクトルにわたって可視光吸収を示し、この赤色インクは、典型的な自動走査システムに不可視である。この種類のインクは、例えば、米国特許公開第2003/0041774号、米国特許公開第2002/0195586号、同一出願人であるJudith D、Auslanderの名前で2004年6月22日に出願されて同時係属出願の「インクジェット印刷に有用な感光性の光学的可変性インク組成物」という名称の米国特許出願第10/873,319号、及び同一出願人であるJudith D.Auslander及びMike Chenの名前で2004年6月22日に出願されて、同時係属出願の「署名保護された感光性の光学的可変性インク組成物及び方法」という名称の米国特許出願第10/873,321号に説明されている。これらのインクは、クラフト又はマニラのような濃色の紙を含む実質的に全ての従来の基体上で満足できるPCS(印刷コントラスト信号)を達成することになる。PCSという用語は、印刷反射率差(PRD)と基体反射率の比率を意味し、PRDは、紙の反射率とインクの反射率の間の差である。これら及び他の郵便用語には、米国郵政公社(USPS)によって定義された意味が与えられる。これらのインクは、情報を有するチケット、タグ、ラベル、郵便料証印、及び同様のセキュリティマーキングの様々な種類の自動検出装置に用いることができる。
【0004】
改良された赤外線吸収特性によってOCR可読性を改良した有効なセキュリティを提供する付加的なPOVインクにが必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
本発明の別の目的は、新しい感光性光学的可変性インクを提供することである。
【0006】
本発明の目的は、OCR機器による可読性が良好なセキュリティマーキングに有効な新しいインクを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、独特な光学的及び物理的浸透性を有する安全インクを提供して改良された赤外線吸収特性によって、改良されたOCR可読性を提供する際にその利用性を強化することである。
【0008】
本発明の別の目的は、インクジェット印刷で印刷することができ、OCR可読性を改良した新しい種類のPOVインクを提供することである。
【0009】
上記及び他の目的は、インク組成物、それを用いる方法、及び得られる製品を提供する本発明によって達成される。
【0010】
本発明のインクは、水性であり、蛍光-励起電磁線に曝されると蛍光を示す暗色の機械読み取り可能なマーキングを生成することができ、インクジェット印刷に用いるのに適切な粘性及び表面張力を有するものである。これらは、(a)蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯内の光を放出する蛍光染料及び/又は顔料を含む第1の着色剤、(b)カーボンブラック赤外線吸収組成物を単独か、又は暗色、好ましくは黒色をもたらすような方法で第1の着色剤の固有の発光帯よりも長い波長か又は同じく第1の着色剤の発光波長に重なる光吸収帯を有する1種以上の染料又は顔料と共に含む第2の着色剤、及び(c)インクジェット印刷によりインクを予め決定されたパターンで基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量の水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクルを含む。
【0011】
本発明の方法は、インクジェットプリンタに上述のインクを設けて、このインクで適切な基体上に画像を印刷することにより、可視及び蛍光成分を有する画像を印刷する工程を含む。好ましい実施形態では、本方法は、画像に紫外線で照射して得られる反転画像を読み取る工程と、画像に可視光を照射して可視画像を光学的に文字認識する工程とを含むことになる。
【0012】
本発明のインク及びそれを用いる方法、並びに得られる製品は、いくつかの好ましい態様を有し、その多くは、以下に説明して添付の図面に示している。
【0013】
本発明は、特に添付図面に照らして読む時に以下の説明からより良く理解され、その利点が更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、インクジェット印刷を含む様々な印刷手段により画像を印刷することができる新しい感光性の光学的可変性(POV)インクに関する。「感光性の光学的可変性」という用語は、インクが、印刷された視覚的に黒又は濃灰色の機械読み取り可能な情報を有するマーキングであって、短波長光で励起されると特定の波長範囲で蛍光を発するマーキングを提供することができることを意味する。印刷された画像は、可視スペクトルの赤色領域を含む全可視スペクトルを通して可視光吸収を示し、赤色インクは、典型的な自動走査システムに不可視である。この種類のインクは、例えば、米国特許公開第2003/0041774号、米国特許公開第2002/0195586号、同一出願人でJudith D.Auslander及びMike Chenの名前で2004年6月22に出願されて同時係属出願中の「インクジェット印刷に有用な感光性の光学的可変性インク組成物」という名称の米国特許出願第10/873,319号、及びJudith D、Auslanderの名前で2004年6月22日に出願されて同一出願人で同時係属出願中の「署名保護された感光性の光学的可変性インク組成物及び方法」という名称の米国特許出願第10/873,321号に説明されている。本明細書に説明するインクに関しては、本発明のインクは、可視及び紫外線の両方で見て物理的に一致するポジ及びネガ画像を有することができる画像を生成することができる。しかし、本発明のインクは、付加的な機能性を提供し、赤外線吸収性の改良によってOCR可読性を改良するものである。
【0015】
本発明のインクは、いくつかのインクジェット印刷作業に用いて可視暗色及び蛍光画像を与えることができる。図1は、本発明のインクを基体上に印刷することによって可能になった可視及び蛍光の両方の画像を示しており、印刷した基体の画像の一方が可視光の照明下での反射であり、同じ印刷した基体の画像の一方が紫外線励起下での蛍光である。郵便料金証明の領域へのPOVセキュリティマーキングの用途は、紫外線を照らすとスペクトルの赤色領域で蛍光を発する黒色郵便料金証印である。図1は、データマトリックスバーコードを含むPOVセキュリティマーキングの機械走査画像102及び104を示している。反射で走査した画像102は、マーキングを可視光で照らすことによって得られたものである。黒色インクが低反射率であることにより、セキュリティマーキングの印刷区域に対応する走査画像に暗色区域が得られる。蛍光で走査した画像104は、紫外線(UV)照明下で可視赤色蛍光発光を見ることによって得られる。走査画像104は、UV光で照らすとセキュリティマーキングが可視光を放ち、印刷区域に対応する走査画像の明るい区域をもたらすことを示している。画像102及び104を比較すると、蛍光を発する画像は、反射画像のネガであり、すなわち、2つの画像の間に強い負の相関関係があることを示している。
【0016】
すなわち、本発明のインクは、紫外線のような短い波長の光で励起されると蛍光を発し、約700nmを超える波長及び特に780nm以上の波長で有意な照明を提供する光源を特に用いるOCR機能を必要とする用途に非常に有効に用いられる可視の暗色印刷物を生成する感光性の光学的可変性(POV)インクである。
【0017】
本発明のインクは、少なくとも2つの区別可能な着色剤部分を含み、固有の特性を備えてOCR処理性が改良された一致する可視及び蛍光画像という目標を達成する。
【0018】
第1の着色剤部分は、蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯で光を放つ蛍光顔料及び/又は染料を含むことになる。赤色の蛍光が好ましい。蛍光染料は、インクを可視色にするのに必要な寄与をすると共に機械検出可能な蛍光画像を生じるのに有効な濃度で配合に存在することになる。第1の着色剤に適切な蛍光染料には、とりわけ、例えば、米国特許公開第2003/0041774号、米国特許公開第2002/0195586号、及びJudith D.Auslander及びMike Chenの名前で2004年6月22日に出願されて同一出願人で同時係属出願の「インクジェット印刷に有用な感光性の光学的可変性インク組成物」という名称の米国特許出願第10/873,319号、及びJudith D.Auslanderの名前で2004年6月22日に出願されて同一出願人で同時係属出願の「署名保護された感光性の光学的可変性インク組成物及び方法」という名称の米国特許出願第10/873,321号によって説明されている本明細書の目的を満たす染料がある。従って、本発明は、水溶性であると共にポリマー組み込みの蛍光染料を用いることができる。説明した文献は、代表的な組成物を列挙しており、使用濃度を例示して説明している。この技術的詳細の開示は、本明細書において引用により組み込まれている。
【0019】
好ましい水溶性蛍光染料には、赤色蛍光及びインク組成物のインクに暗色を生じさせる適切な強度の可視色を特徴とする染料が含まれる。この部類の最も好ましい染料は、赤色〜緑色の可視色を有し、390〜680nmの範囲の光を放つことによって蛍光を発する。好ましい黄色又はオレンジの蛍光染料成分は、陰イオン性クマリン、陽イオン性クマリン、陰イオン性ナフタルイミド染料、ピラニン(陰イオン性ピレン染料)、中性、陰イオン性及び陽イオン性ペリレン染料、及び陰イオン性キサンテン染料のような発色系に基づくことができる。いくつかの好ましい黄色又はオレンジの蛍光染料は、例えば、米国特許公開第2002/0195586号の図13に示すような陰イオン性クマリン、陽イオン性クマリン、クマリンスルホン酸、陰イオン性ナフタルイミド、中性ペリレン、陽イオン性ペリレン、陰イオン性ピロニン、及び陰イオン性ナフタルイミド染料である。有用な赤色及び紫の蛍光染料には、例えば、米国特許公開第2002/0195586号の図14に示すような陰イオン性キサンテン染料、ビスピロメタンホウ素錯体、陽イオン性及び双性イオンピロニン、及びスルホローダミンB(SRB)が含まれる。アシッドレッド52は、適切な水溶性マゼンタ染料である。アシッドレッド52染料は、通常用いる時には、水中で満足できる溶解性はあるが、水堅牢度は非常に低い。従って、マゼンタアシッドレッド52染料の不利な点は、このような染料を含むインクは、水に曝されると滲み出すことである。有用な黄色及びオレンジ染料には、アシッドイエロー7、クマリンスルホン酸、陽イオン性クマリン、陰イオン性クマリン、中性、陰イオン性及び陽イオン性ペリレン染料、陰イオン性ナフタルイミド染料、及びピラニン染料が含まれる。これらの染料の重要な特性は、蛍光特性に優れた暗色インクを形成する機能である。効果のあるものとして、これら及び米国特許公開第2003/0041774号に特定される他の染料を用いることができる。
【0020】
黒色インクにするためには、本発明の着色剤混合物は、全可視スペクトルにわたって390nm〜約1200nmを吸収すべきである。紫外線の望ましい領域である580〜630nmに同時に赤色蛍光を得るために、組成物は、蛍光-励起電磁線、例えばUV光を効率的に吸収し、好ましくは580と630nmの間で効率的に蛍光を発するべきである。第1の着色剤染料は、暗色、好ましくは黒色をもたらすような方法で第1の着色剤の固有の発光帯よりも長い波長か又は更に第1の着色剤の発光波長に重なる光吸収帯を有する本発明の第2の着色剤と組み合わせて、これらの判断基準を満たすように選択される。本発明のインクは、第2の着色剤の成分として後に説明される本発明により上述の配合物のPOVインクに添加されるカーボンブラック赤外線吸収組成物が存在するために黒色インクとして特に有効である。
【0021】
第2の着色剤は、機械検出可能な蛍光画像を妨げることなくインクが可視色であるのに必要な寄与をするのに有効な濃度で配合物中に存在することになる。第2の着色剤は、本質的にカーボンブラック赤外線吸収組成物を含む。更に、これらはまた、上述の米国特許公開第2003/0041774号及び第2002/0195586号、及び本出願人に譲渡された現在特許出願中の米国特許出願第10/873,319号及び第10/873,321号に説明する染料及び/又は顔料のいずれかを含有することができる。本発明のインクは、一般的に、適用する時にインク組成物中の第2の着色剤の質量で約1〜約5%、更に綿密には、2〜4%の濃度で(乾燥固体質量に基づく)第2の着色剤を用いる。染料及び/又は顔料は、紙への固有の浸透率を有することになり、この群の好ましいメンバは、インクジェット印刷による印刷後に水に濡れることによって有意に鮮鋭度を失うことにならない。本発明によるカーボンブラックを用いなければ、約780nmを超える波長でインクの吸光度は不良であることになる。カーボンブラックが存在することにより、長波長での吸光度が大幅に改良することになり、インクをOCR向け画像の印刷目的に対してより良いものにする。
【0022】
カーボンブラック赤外線吸収剤は、印刷、好ましくはインクジェット印刷によるインクビヒクル内に完全にかつ安定に分散されるものであることになる。これは、単独の暗色顔料又は着色剤とすることができ、この場合、ある程度まで蛍光が消光する傾向があることになるが、状況によってはこれは有利である場合がある。適切なカーボンブラック顔料には、とりわけ、Sun Jetsperse LJD 3207、Orient Bonjet Black(CW−1及びCW−2)、及びDegussa IDIS 31kカーボンブラック、及びインクジェット印刷インクに適切なものとして製造業者により処方及び/又は供給された他の顔料がある。これらのカーボンブラックは、水ベースのインクに分散される機能及びインクジェットインクに有効な純度を特徴とし、一般的に、インク配合物の質量で分散剤の10%未満、例えば約2〜約7%を構成することになる。
【0023】
本発明のインクの第2の着色剤に用いるのに適切な光学的着色剤には、とりわけ、例えばYu他に付与された米国特許第6,494,943号に説明するような水分散性コロイド状顔料、及び例えば米国特許公開第2003/0041774号に説明するような1種以上の適切な着色水溶性染料がある。Yu他の特許に広い意味で記載される顔料は、1種以上の望ましいパラメータ及び/又は特徴を有する着色顔料であると定義されている。これらのパラメータ及び/又は特徴には、a)粒径が約10nm〜約300nmであること、b)アキュサイザー数が、0.5μm(ミクロン)よりも大きな固体の15%で1010粒子/ml分散剤未満であること、c)10%固体の着色顔料を有する液体媒体100ml中にある時に3μm(ミクロン)ナイロンアブソルートフィルタを通って濾過されるような濾過性、d)着色顔料純度が抽出可能材料に基づいて約80%よりも大きいこと、及び/又はe)上記特徴が、25℃で少なくとも1週間50%を超えて変化しないような安定性が含まれる。同様に、本発明の好ましい顔料は、これらの特徴の1つ又はそれよりも多くを有することを特徴とすることができる。これらに加えて、顔料は、安定性を維持するために分散剤が必要である。好ましいコロイド状顔料の1つは、カボットブルー顔料分散剤、Cyan COJ 250としてカボット(Cabot)コーポレーションから入手可能である。この種の顔料は、染料の範囲まで滲み出すことにならず、しかも本発明の配合物中では、セキュリティ及び他の値の証印を押したマーキングに非常に望ましい浸透度及び水堅牢度を生じることになる。
【0024】
また、第2の着色剤は、例えば、米国特許公開第2003/0041774号に説明するように、1つ又はそれよりも多くの適切に着色した水溶性染料を含むことも好ましいことになる。これらには、インクジェット用途に精製された酸性及び直接染料、例えば、CI Acid Blue 9、Duasyn Blue FRL−SF(Direct Blue 199)、Projetfast Cyan 2、Direct Blue 307、又は消散係数が10,000よりも大きく水溶性のあらゆる青色染料のような青色染料が含まれる。更に、染料は、可読性を維持するために印刷したインクを適切に暗色にすると共に、機械可読性をもたらすために適切な蛍光を与えながら可視範囲に望ましい色、暗度、又は色相を生じるように選択された上述の染料の1つとすることができる。
【0025】
上述の着色剤及び均等物に加えて、本発明のインク組成物は、インクジェット印刷により予め決定されたパターンでインクを基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量で水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクルを含むことになる。これらの成分に典型的なものは、上述の特許公開に説明されているものである。これらのインク組成物に用いられる着色剤のためのインク担体は、少なくとも65%の水を含む。
【0026】
蛍光安定剤は、(時に蛍光を高めることによって)一定の蛍光レベルを維持するのに有効な濃度で用いることができる。低粘性インクの蛍光は、インクが紙に浸透する時に低減する可能性があるために、一定レベルの蛍光を維持するのを助けるのに有効な添加剤を含むことが好ましい。以下の溶媒、すなわち、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ホルムアミド、メチルフェニルスルホキシド、N−メチルピロリジノン、4−メチルモルホリン−N−オキシド(MMNO)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等は、蛍光を高めることができる。これらの溶媒の全ては、誘電定数が高いか(>約20)又はヒルデブランド溶解パラメータ値が高い(δ>10MPa1/2)双極性非プロトン溶媒の特徴を有する。
【0027】
このリストからは、4メチルモルホリン−N−オキシド(MMNO)が、長期間蛍光を増大させる最高の機能を有しており、蛍光が消光する傾向がなく、純粋な時には吸湿性で高沸点の固体である。(一般的に、50〜60%水溶液として供給される。)MMNOは、セルロースに対する公知の溶媒であり、紙の繊維への浸透を助け、それによって選択的に長持ちするように蛍光を増大することができる。極性のある低分子量の樹脂(PLMWR)は、多くの場合にあまり大きな程度ではないが、上述のFS材料と異なる機構で蛍光を高めて安定させる利点がある。ポリビニルピロリドン(MW15000)及びポリエチレングリコールのような極性のある樹脂が有利である。極性染料に対して良好な溶媒特徴を備えた他の水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリN,N−ジメチルヒダントイン、ポリアクリレート等である。
【0028】
BTG(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)のようなグリコールエーテルは、水と他の有機溶媒との間を架橋し、内部水素結合により色及び蛍光を増強し、紙への浸透度を改善することなどの複数の有利な効果を有することができる。最も効率的なグリコールは、BTGであった。用いることができる適切なグリコールには、次のものが含まれる。すなわち、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル(BTG)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル(DB)、ジエチレングリコールメチルエーテル(DM)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)等である。
【0029】
トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、N,Nジメチルエタノールアミン、N,Nジエチルエタノールアミン、N,Nジプロピルエタノールアミンなどのようなアミンは、染料の凝集を防ぎ、不堅牢(fugitive)対イオンとして乾燥中に蒸発することを防ぎ、従って、水堅牢度を改善し、並びに水/グリコール/エーテル混合物での溶解性を改善するのに有用とすることができる。更に、アミンは、長期放置の間に一定の粘性を維持し、並びに流動性及び容易な再分散性を維持するのにも役立つ。更に、アミンは、印刷中又は印刷中断後の再開時にノズルの目詰まりを引き起こさず、従って、高度な排出安定性を維持する。
【0030】
本発明のインク組成物は、好ましい形態で以下に示されており、これらの形態及び他の形態は、好ましくは両方ともOCR用途での可読性が改良された機械読み取り可能な可視及び蛍光画像をインクジェット印刷するのに非常に有効である。可視画像は、正常なヒト視力で明瞭に見え、視覚範囲の光で様々な画像読取機械に用いるのに有効である。更に、画像は、着色染料又は顔料が存在するために消光しても十分に蛍光性であり、可視画像の実質的なネガである機械読み取り可能な蛍光画像を生じる。望ましくは、関連のスペクトル範囲(SROI)内、例えば、390〜680nm(可視範囲)では、インク反射率は、紙反射率の50%未満である。
【0031】
本発明のインクは、インクジェット印刷により像様に適用することができ、可視及び蛍光-励起電磁線に曝されると機械読み取り式画像を提供することができる。インクジェット印刷で有効に用いられるインクでは、適切な低粘性を有し、しかも十分な蛍光及び可視光反射率を達成して乾燥すると認識可能な画像をもたらすのに十分な固形分を有するべきである。好ましくは、乾燥インクは、各種基体上にOCR可読性が改良された機械読み取り可能な画像を生じることになる。
【0032】
インクは、インクジェット印刷によりインクを予め決定されたパターンで基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量の水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクルを含有することになる。粘性は、一般的に約15cps未満とされることになる。熱インクジェット印刷では、粘性は、25℃でHaake ViscoTesterで測定すると1〜5cps、好ましくは2〜4cpsの範囲内であり、表面張力は、25℃でFisher Surface Tensiomatで測定すると20〜約80dyne/cm、好ましくは30〜50dyne/cmを示す必要がある。圧電手段によるインクジェット印刷では、粘性は、上述の方法で測定する時に、1.5〜15cps、好ましくは2〜12cpsの範囲とすべきである。
【0033】
本発明の好ましいインクは、短波長又は長波長のUV光で励起されると、視覚的暗色(中性黒色)及び赤色蛍光信号を有することになる。印刷コントラスト信号PCS(PCRとも呼ばれる)は、USPSからの封筒反射率計(Envelope Reflectance Meter)で測定すると、白色及びクラフト紙では赤色又は緑色フィルタを用いると0.35よりも大きいことが好ましい。赤色フィルタを用いた白色紙では、0.45よりも大きな値、例えば0.48及びそれよりも大きく、例えば0.48〜0.6が望ましく、本質的には緑色フィルタを用いても同じ値である。クラフト紙では、緑色フィルタで0.35よりも大きく、例えば0.37〜0.5であり、赤色フィルタで0.45以上、例えば0.43〜0.6であることが好ましい。本明細書で挙げたこれに用いる試験法及び他のデータは、例えば米国特許公開第2003/0041774号に説明されている。
【0034】
PRDは、赤色及び緑色フィルタを用いると、白色及びクラフト紙に対しては0.25よりも大きいことが好ましい。白色紙に対しては、赤色フィルタを用いると、0.60以上とすることができ、緑色フィルタでは、0.55以上とすることができる。クラフト紙に対しては、赤色フィルタを用いると、0.30以上とすることができ、緑色フィルタでは、0.25以上とすることができる。従って、可視成分の光学密度は、OCRスキャナなどを用いて自動走査することができるほど十分に高い。蛍光成分は、フェーシング機器で郵便を一定方向にし、好ましくは緑色燐光切手を区別するのに用いるのに適切である。発光は、UV光で励起される時に580〜640nmの範囲の波長である。蛍光強度は、少なくとも7PMUとする必要があり、例えば、固体印刷領域に対して(39〜69)燐光物質メータ単位((Phosphor Meter Unit(PMU))、及びドローダウンに対して50〜98PMUであり、蛍光成分は、溶媒(担体)で基体に運搬し、適切な蛍光信号強度を生じることができる。カーボンブラックが存在すると、長波長での吸光度が大幅に改良し、可視画像と蛍光画像の間の強い負の相関を保持しながら、インクをOCR向け画像の印刷目的により良くすることになる。
【0035】
本発明の方法は、上述のインクをインクジェットプリンタに供給し、適切な基体上にこのインクで画像を印刷することにより、可視及び蛍光成分を有する画像を印刷する工程を含む。好ましい実施形態では、本方法は、画像を紫外線で照らしてかつ得られる反転画像を読み取る工程と、照射光のスペクトル範囲の光で読み取るように設計された機器を用いて、画像に可視光を照射して可視画像を光学的文字認識(OCR)に付す工程とを含むことになる。本発明の利点は、カーボンブラックを含まないインクと比較してOCR可読性が改良し、蛍光画像と可視光画像の間に依然として強い負の相関が存在することである。
【0036】
以下の実施例は、本発明を更に例示して説明するために示されるものであり、いかなる意味においても制限するものと解釈されるものではない。特に示さなければ、全ての部及びパーセントは質量によるものである。
【実施例1】
【0037】
本発明によるカーボンブラックを備えたいくつかのインクと対照としてカーボンブラックを含まないインクとを比較するために一連のインクを調製する。インクは、以下の材料で調製した。








【0038】

【0039】

図2は、上に配合を示す一連の異種インクの波長に対する吸光度を示すグラフである。カーボンブラックを含まないインクは、約780nmよりも大きな波長で本質的に吸光度がなく、カーボンブラックを含めば、インクは、良好な吸光度を維持することが見られる。
【0040】
また、上の表に示すインクには、粘性及び分離に関する安定性も試験した。
粘性試験に基づいて、次のことが判断された:
Degussa Carbon Black 31 kを備えたインクが最も安定である。
Orientカーボンブラック(CW−1及びCW−2)を備えたインクも安定である。
Acryjet Carbon Black 357を備えたインクが最も安定でない。
インクは、乱すことなく所定の期間にわたって瓶に入れることによって分離の安定性を試験した。瓶の上部及び下部からのインクを別々に用いてドローダウンが行われた。室温で1ヶ月間及び60℃のオーブンで65時間にわたって定着したインクに対するスペクトルが示された。
カーボンブラックを含まない対照(図3)、及びClariant HOSTAJET BLK VP2676(図4)及びDegussa Carbon Black 31 k(図5)を備えたインクの吸収図を比較のために作成した。
Degussa Carbon Black 31 kを備えたインクが最も安定であった。
Acryjet Carbon Black 357を備えたインクが最も不安定であった。完全分離が発生した場合は、スペクトルは作らなかった。
【実施例2】
【0041】
本発明による別のインクを以下の材料で調製した。
【0042】

【0043】






【0044】

【実施例3】
【0045】
本発明による別のインクは、以下の材料で調製した。
【0046】

【0047】

インクは、良好な印刷画像でノズルを故障させずにGEMメータを用いて25日を超えて試験した。完全画像を備えた少なくとも20の印刷物をパージすることなく生成することができ、全てのノズルは、20回印刷した後に良好であった。このインクは、上述の同時係属出願の特許出願第10/873,321号の主題である独特の署名を与えるユーロピウムベースの組成物をLumilux CD380成分中に用いている。
【0048】
以上の説明は、当業者が本発明を実施することを可能にするものである。これは、当業者がこの説明を読むと明らかになると考えられる可能な修正及び変形の全てを詳述することを意図していない。しかし、これらの修正及び変形は、上記の説明に見られ、そうでなければ特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲に含まれることが意図されている。特許請求の範囲は、内容に特に矛盾しなければ本発明に意図する目的を満たすのに有効なあらゆる配置又は順序の指示した要素及び工程を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のインクを基体上に印刷することによって可能になった可視及び蛍光画像の両方を示す図であり、可視光による照明下での反射における印刷された基体の一つ、及び紫外線励起下での蛍光である、同じ印刷された基体の一つである。
【図2】カーボンブラックを含むか又は含まない異種POVインクに関する波長に対する吸光度を示すグラフである。
【図3】基線の安定性を示すためにカーボンブラックを含まない対照インクの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】Clariant HOSTAJET BLK VP2676カーボンブラックを備えたインクの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】Clariant Degussa Carbon Black 31 kカーボンブラックを備えたインクの吸収スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
102 反射で走査したPOVセキュリティマーキングの機械走査画像
104 蛍光で走査したPOVセキュリティマーキングの機械走査画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光-励起電磁線に曝されると蛍光を示す暗色の機械読み取り可能な画像を含む安全なマーキングを提供することができ、インクジェット印刷に用いるのに適切な粘性及び表面張力を有する水性インクであって、
(a)蛍光-励起電磁線により励起されると固有の発光帯内の光を放出する蛍光染料及び/又は顔料を含む第1の着色剤、
(b)カーボンブラック赤外線吸収組成物を単独か、又は暗色、好ましくは黒色をもたらすような方法で前記第1の着色剤の前記固有の発光帯よりも長波長の又は更に該第1の着色剤の発光波長に重なる光吸収帯を有する1種以上の染料又は顔料と共に含む第2の着色剤、及び
(c)インクジェット印刷によって予め決定されたパターンでインクを基体に適用するのに有効なインク粘性及び表面張力を達成するのに十分な量の水及び水溶性ビヒクルを含む水性液体ビヒクル、
を含むことを特徴とするインク。
【請求項2】
前記着色剤が、蛍光と乾燥時のインクの他の成分による消光との間の正味の影響が、少なくとも7PMUの燐光物質メータ読取値を与えるように選択される請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記第2の着色剤が、コロイド状顔料を含む請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記着色剤が、白色封筒基体上にドローダウンした後で乾燥した画像が、50から99+PMUの蛍光強度を示すように選択される請求項1に記載のインク。
【請求項5】
乾燥インクジェット画像が、15cps未満の粘性を示す請求項1に記載のインク。
【請求項6】
可視及び蛍光成分を有する安全な画像を印刷する方法であって、
請求項1に記載のインクをインクジェットプリンタに供給する工程、及び
適切な基体上に前記インクで画像を印刷する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記画像に紫外線を照射して、得られる反転画像を読み取る工程、及び
前記画像に可視光を照射して、該照射光のスペクトル範囲の光で読み取るように設計された機器を用いて該可視画像に光学的文字認識を付す工程、
を更に含む請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−503642(P2008−503642A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518115(P2007−518115)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/020997
【国際公開番号】WO2006/009701
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(506118537)ピットニイ ボウズ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】