説明

IZM−2ゼオライトベース触媒及び炭化水素原料の水素化転化/水素化分解法

本発明は、少なくとも1種のIZM−2ゼオライトと、少なくとも1種の無定形マトリクスと、白金およびパラジウムを除く周期律表の第VIB族および第VIII族の元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化−脱水素化元素とを含む触媒に関する。触媒はまた、場合によっては、リン、ホウ素およびケイ素から選ばれる制御された量の少なくとも1種のドーピング元素と、場合による元素周期律表の第VB族からの少なくとも1種の元素と、場合による第VIIA族からの元素とを含有する。本発明はまた、この触媒を用いる水素化分解および水素化処理方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の結晶化IZM−2固体を含む基材と、周期律表の第VIB族および/または第VIII族非貴金属からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含有する活性相とを含む触媒であって、硫化相触媒である触媒に関する。
【0002】
本発明はまた、この触媒を実行する水素化分解、水素化転化、及び水素化処理の方法に関する。
【0003】
特に、本発明は、炭化水素原料であって、例えば、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物および/またはナフテン化合物および/またはパラフィン化合物を含有し、場合によっては、金属および/または窒素および/または酸素および/または硫黄を含有するもの(フィッシャー−トロプシュ法によって得られた原料を除く)の水素化分解に関する。
【0004】
水素化分解法の目的は、基本的には、燃料、即ち、沸点27〜150℃を有するガソリン留分、沸点150〜250℃を有する灯油留分、及び沸点250〜380℃を有する軽油留分の製造である。
【背景技術】
【0005】
重質ガソリン留分の水素化分解は、分離困難な過剰な重質原料から、処理者が探し求めるより軽質なフラクション(軽質ガソリン、ジェット燃料、軽油等)を製造してその製造を需要の構造に適合させることを可能にする非常に重要な精製方法である。所定の水素化分解法はまた、オイルのための優れたベースを提供することができるより高度に精製された残渣を提供する。接触分解に関して、接触水素化分解の利点は、非常に良好な品質の中間留分、ジェット燃料および軽油を提供することにある。逆に、製造されたガソリンは、接触分解から得られたオクタン価よりはるかに低いオクタン価を有する。
【0006】
水素化分解は、3つの主要な要素:用いられる操作条件、用いられる触媒のタイプおよび炭化水素化された原料は1または2工程で水素化分解され得るという事実からその柔軟性を導き出す方法である。
【0007】
水素化分解方法において用いられる水素化分解触媒は、全て、酸機能を水素化機能と組み合わせる二機能性タイプのものである。酸機能は、基材によって提供され、基材の表面積は、一般的には150〜800m/gの間で変動し、表面酸性度を示し、例えば、ハロゲン化(特に、塩素含有またはフッ素含有の)アルミナ、ホウ素および酸化アルミニウムの組み合わせ、無定形シリカ−アルミナおよびゼオライトである。水素化機能は、元素周期律表の第VIB族からの1種以上の金属または第VIB族からの少なくとも1種の金属と少なくとも1種の第VIII族金属の組み合わせのいずれかによって提供される。
【0008】
2つの機能;酸機能及び水素化機能の間のバランスは、触媒の活性と選択性を左右するパラメータの1つである。弱い酸機能と強い水素化機能は、不活性な触媒を提供し、一般的に上昇した温度(390〜400℃以上)および低い供給原料空間速度(触媒単位体積当たりおよび時間当たりの処理されるべき原料の体積で表されるHVDは一般的には2以下)で操作するが、中間留分に関して非常に良好な選択性を備えている。逆に、強い酸機能と弱い水素化機能は、活性であるが中間留分(ジェット燃料および軽油)に関して良くない選択性を示す触媒を提供する。
【0009】
一つのタイプの従来の水素化分解触媒は、中程度に酸性の無定形基材、例えば、シリカ−アルミナをベースとする。これらの系は、良好な品質の中間留分および場合によってはオイルベースを製造するために用いられる。これらの触媒は、例えば、一工程法において用いられる。これらの無定形基材ベースの触媒の欠点は、それらの低い活性である。
【0010】
例えば構造型FAUのYゼオライトを含む触媒または例えばβ型ゼオライトを含む触媒は、一方では、シリカ−アルミナの触媒活性より優れた触媒活性を示すが、中間留分(ジェット燃料および軽油)に関してより低い選択性を示す。
【0011】
大多数のゼオライトおよび結晶化ミクロ細孔固体についておよび水素化活性相について本出願人によって行われた調査研究により、驚くべきことに、少なくとも1種の結晶化IZM−2固体を含む基材と、周期律表の第VIB族および/または第VIII族非貴金属からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含有する活性相と、場合によっては、少なくとも1種のマトリクスと、ホウ素、ケイ素およびリンによって形成される群から選択される少なくとも1種のドーピング元素と、場合によっては、元素周期律表の第VB族からの少なくとも1種の元素、好ましくはニオブと、場合によっては、第VIIA族元素、好ましくはフッ素とを含む、炭化水素原料の水素化分解用触媒であって、硫化物相触媒である触媒は、水素化分解、水素化転化および水素化処理に関して高い活性、すなわち、転化のレベルを提供することを発見するに至った。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴付け手順)
触媒の全体的な組成は、粉末状態にある触媒についての蛍光X線または触媒の酸攻撃(acidic attack)後の原子吸光によって決定され得る。
【0013】
なお、「径」という語は、球や押出物のみに対して一意的に用いられるものではなく、より広くいかなる形態の粒子にも用いられる;事実、用語「径」は測定がなされる粒子の代表的な長さを表す。
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、触媒であって、
− 少なくとも1種の結晶化IZM−2固体を含む基材であって、表:
【0015】
【表1A】

【0016】
(表中、ss=非常に強い、s=強い、m=中程度、mw=中程度に弱い、w=弱い、ww=非常に弱い)
に列挙される放射線を少なくとも含むX線回折パターンを示し;
− 無水ベースで、酸化物のモルに関して、一般式:XO:aY:bM2/nOによる化学組成によって表され、式中、Xは少なくとも1種の四価元素を表し、Yは少なくとも1種の三価元素を表し、Mは、価数nの少なくとも1種のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属であり、a及びbはそれぞれY及びM2/nOのモル数を表し、aは0〜0.5であり、bは0〜1である、基材;および
− 周期律表の第VIII族非貴金属からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含有する活性相
を含み、硫化物相触媒である、触媒に関する。
【0017】
(水素化分解及び水素化異性化の触媒)
本発明によると、前記触媒は、周期律表の第VIB族からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素および/または第VIII族非貴金属からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含有する活性相を含む。
【0018】
好ましくは、本発明は、周期律表の第VIB族からの元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含む触媒に関する。
【0019】
好ましくは、前記触媒は、触媒の全質量に対する重量%で、0.1〜40重量%、非常に好ましくは1.5〜35重量%、一層より好ましくは3〜25重量%の質量含有量の第VIB族金属(単数または複数)を含む。
【0020】
好ましくは、本発明は、周期律表の第VIII族非貴金属からの元素によって形成された群から選ばれる少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含む触媒に関する。
【0021】
好ましくは、前記触媒は、触媒の全質量に対する重量%で、0〜25重量%、好ましくは0.1〜20重量%、一層より好ましくは0.1〜15重量%の質量含有量の第VIII族非貴金属(単数または複数)を含む。
【0022】
触媒はまた、有利には、以下を含有し得る:
− ケイ素、ホウ素およびリンからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素:0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、一層より好ましくは0.1〜10重量%(ゼオライトの骨格中に含有されるケイ素を含まない);および場合によってはまた
− 第VB族から選択される少なくとも1種の元素、好ましくは、ニオブ:0〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%、一層より好ましくは0.1〜40重量%;および場合によっては、
− 第VIIA族から選択される少なくとも1種の元素、好ましくはフッ素:0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、一層より好ましくは0.1〜10重量%。
【0023】
好ましくは、本発明による触媒は、IZM−2ゼオライトおよび酸化物タイプの多孔質無機マトリクスをベースとする基材を含み、前記基材は、以下を含む:
− IZM−2ゼオライト:0.1〜99.8重量%、好ましくは0.1〜80重量%、一層より好ましくは0.1〜70重量%、非常に好ましくは0.1〜50重量%;
− 少なくとも1種の酸化物タイプの多孔質無機マトリクス:0.2〜99.9重量%、好ましくは1〜99重量%。
【0024】
本発明はまた、前記触媒による炭化水素原料の水素化分解方法および水素化処理方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(水素化相の特徴)
本発明によると、前記触媒は、周期律表の第VIB族からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素および/または第VIII族非貴金属からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含有する活性相を含む。
【0026】
好ましくは、本発明は、周期律表の第VIB族からの元素によって形成される群から選択される少なくとも1種の水素化−脱水素化元素、好ましくは、タングステンおよびモリブデンによって形成される群から選択される金属を、単独でまたは混合物で利用されて含む触媒に関する。
【0027】
好ましい実施形態によると、周期律表の第VIB族からの元素によって形成される群から選ばれる水素化−脱水素化元素はモリブデンである。
【0028】
他の好ましい実施形態によると、周期律表の第VIB族からの元素によって形成される群から選ばれる水素化−脱水素化元素はタングステンである。
【0029】
好ましくは、本発明は、周期律表の第VIII族からの非貴金属元素によって形成される群から選択される少なくとも1種の水素化−脱水素化元素、好ましくは、コバルトおよびニッケルによって形成される群から選択される金属を、単独でまたは混合物で利用されて含む触媒に関する。
【0030】
好ましい実施形態によると、第VIII族非貴金属元素によって形成される群から選択される水素化−脱水素化元素はコバルトである。
【0031】
好ましい実施形態によると、第VIII族非貴金属元素によって形成される群から選択される水素化−脱水素化元素はニッケルである。
【0032】
有利には、以下の金属の組合せの使用がなされる:ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、鉄−モリブデン、鉄−タングステン、ニッケル−タングステン、コバルト−タングステン;好ましい組合せは:ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、コバルト−タングステン、ニッケル−タングステンであり、一層より有利には、ニッケル−モリブデンおよびニッケル−タングステンである。
【0033】
3種の金属の組合せを用いることも可能であり、例えば、ニッケル−コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン−タングステン、ニッケル−コバルト−タングステンである。
【0034】
有利には、以下の金属の組合せの使用がなされる:ニッケル−ニオブ−モリブデン、コバルト−ニオブ−モリブデン、鉄−ニオブ−モリブデン、ニッケル−ニオブ−タングステン、コバルト−ニオブ−タングステン、鉄−ニオブ−タングステン;好ましい組合せは、ニッケル−ニオブ−モリブデン、コバルト−ニオブ−モリブデンである。4種の金属の組合せを用いることも可能であり、例えば、ニッケル−コバルト−ニオブ−モリブデンである。
【0035】
(結晶化IZM−2固体)
本発明によると、本発明による触媒の基材は、少なくとも1種の結晶化IZM−2固体を含み、該固体は、無水ベースで、酸化物モルに関して、一般式:XO:aY:bM2/nOで表される化学組成を有し、式中、Xは少なくとも1種の四価元素を表し、Yは少なくとも1種の三価元素を表し、Mは少なくとも1種のn価のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であり、a及びbはそれぞれY及びM2/nOのモル数を表し、aは0〜0.5であり、bは0〜1である。
【0036】
本発明によると、触媒の基材において用いられる結晶化IZM−2固体は、表1に列挙される放射線を少なくとも含むX線回折パターンを示す。この新規結晶化IZM−2固体は新しい結晶構造を有する。
【0037】
この回折パターンは、有利には、銅のKα1放射線(λ=1.5406Å)での粉末の従来の方法を用いた回折計によるX線結晶写真分析によって得られる。角度2θによって表される、回折ピークの位置から、サンプルの特徴的な格子面間隔(reticular equidistance)dhklが、ブラッグ則によって計算される。dhklによる測定誤差Δ(dhkl)は、ブラッグの法則を用いて、2θの測定に割り当てられる絶対誤差Δ(2θ)の関数として計算される。±0.02°の絶対誤差Δ(2θ)が一般に許容される。dhklの各値に割り当てられる相対強度Irelは、対応する回折ピークの高さに従って測定される。本発明による結晶化IZM−2固体のX線回折パターンは、表1に与えられるdhklの値に放射線を少なくとも含む。dhkl値の列は、格子面間隔(inter-reticular distance)の平均値をオングストローム(Å)で示す。これらの値のそれぞれは、±0.6〜0.01Åの測定誤差Δ(dhkl)によって修正されなければならない。
【0038】
【表1B】

【0039】
相対強度Irelは、X線回折パターンの最大強度の放射線に100の値を割り当てられる相対強度スケールと関連して与えられ得る:ff<15;15≦f<30;30≦mw<50;50≦m<65;65≦s<85;ss≧85。
【0040】
本発明による触媒の基材において用いられる結晶化IZM−2固体は、有利には、図1によって与えられる焼成された形態でのそのX線回折パターンによって特徴付けられる新しい結晶の基本または形態的(topological)構造を有する。
【0041】
前記IZM−2固体は、有利には、無水ベースで表され、酸化物モルに関して、以下の一般式によって規定される化学組成を有する:XO:aY:bM2/nO。ここで、Xは少なくとも1種の四価元素を表し、Yは少なくとも1種の三価元素を表し、Mは少なくとも1種のn価のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属である。以上に提供される前記式において、aはYのモル数を表し、aは、0〜0.5、非常に好ましくは0〜0.05、一層より好ましくは0.0016〜0.02であり、bはM2/nOのモル数を表し、0〜1、好ましくは0〜0.5、一層より好ましくは0.005〜0.5である。
【0042】
好ましくは、Xは、ケイ素、ゲルマニウム、チタン、及びこれらの四価元素の少なくとも2種の混合物から選ばれ、非常に好ましくはXはケイ素であり、Yは好ましくはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、及びガリウムから選ばれ、非常に好ましくはアルミニウムである。Mは好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びこれらの金属の少なくとも2種の混合物から選ばれ、非常に好ましくはナトリウムである。好ましくは、Xは、ケイ素を表し、前記結晶化IZM−2固体は、Yが前記IZM−2固体の組成から欠いている場合全体的にケイ酸性の固体である。元素Xとして、複数の元素Xの混合物を採用することも有利であり、特には、ケイ素と、ゲルマニウムおよびチタンから選択される別の元素X、好ましくはゲルマニウムとの混合物である。それ故に、ケイ素が別の元素Xと混合されて存在する場合、前記結晶化化IZM−2固体は、それがその焼成された形態である場合、表1において記載されるX線回折パターンと同じX線回折パターンを示す結晶化メタロケイ酸塩である。一層より好ましくは、元素Yの存在下に、Xは、ケイ素であり、Yはアルミニウムである:前記結晶化IZM−2固体は、それがその焼成された形態である場合、表1に記載されるX線回折パターンと同一のX線回折パターンを示す結晶化アルミノケイ酸塩である。
【0043】
より一般的には、本発明による方法において実施される触媒の基材において用いられる前記IZM−2固体は、有利には、以下の一般式によって表される化学組成を有する:XO:aY:bM2/nO:cR:dHO。ここで、Rは2つの四級窒素原子を含む有機種を表し、Xは少なくとも1種の四価元素を表し、Yは少なくとも1種の三価元素を表し、Mはn価のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属である;a、b、c、及びdはそれぞれY、M2/nO、R、及びHOのモル数を表し、aは0〜0.5であり、bは0〜1であり、cは0〜2であり、dは0〜2である。この式及びa、b、c、及びdによって取られる値は、前記IZM−2固体が好ましくはその焼成された形態であるものである。
【0044】
より具体的には、前記IZM−2固体は、その粗製合成状態で、有利には、一般式(I):XO:aY:bM2/nO:cR:dHOにより表される化学組成を有する。ここで、Rは2つの四級窒素原子を含む有機種を表し、Xは少なくとも1種の四価元素を表し、Yは少なくとも1種の三価元素を表し、Mはn価のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属である;a、b、c、及びdはそれぞれY、M2/nO、R、及びHOのモル数を表し、aは0〜0.5であり、bは0〜1であり、cは0.005〜2、好ましくは0.01〜0.5であり、dは0.005〜2、好ましくは0.01〜1である。
【0045】
前記結晶化IZM−2固体のその粗製合成形態にある化学組成を規定する上記式(I)において、aの値は0〜0.5、非常に好ましくは0〜0.05、一層より好ましくは0.0016〜 0.02である。好ましくはbは0〜1であり;非常に好ましくはbは0〜0.5、一層より好ましくはbは0.005〜0.5である。cの値は0.005〜2、有利には0.01〜0.5である。dによって想定される値は、0.005〜2、好ましくは0.01〜1である。
【0046】
その粗製合成物の形態、すなわち、合成段階から直接得られた、当業者に周知のあらゆる焼成工程の前の形態において、前記IZM−2固体は、有利には、2つの四級窒素原子を有する有機種R、例えば、以降に記載されるもの、あるいはその分解生成物、あるいはその前駆体等を少なくとも含む。本発明の好ましい態様によると、上記の式(I)において、要素Rは、1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンであり、その構造式は、以降に提供される。構造化剤として作用する前記有機種Rは、当該技術において知られる従来のルート、例えば、加熱および/または化学処理を介して除去され得る。
【0047】
前記結晶化IZM−2固体を調製する方法は、有利には、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種の酸化物Yの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種のn価のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の少なくとも1種の源、および、2つの四級窒素原子を含む少なくとも1種の有機種Rを含む水性混合物を反応させることに存し、混合物は、好ましくは、以下のモル組成を有する:
XO/Y:少なくとも2、好ましくは少なくとも20、より好ましくは60〜600
O/XO:1〜100、好ましくは10〜70
R/XO:0.02〜2、好ましくは0.05〜0.5
2/nO/XO:0〜1、好ましくは0.005〜0.5。
【0048】
ここで、Xはケイ素、ゲルマニウム、及びチタンによって形成される群から選ばれる1種以上の四価元素であり、好ましくはケイ素であり、Yはアルミニウム、鉄、ホウ素、インジウム、及びガリウムによって形成される群から選ばれる1種以上の三価元素であり、好ましくはアルミニウムであり、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びこれら金属のうち2種以上の混合物から選ばれる1種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であり、好ましくはナトリウムである。
【0049】
前記結晶化IZM−2固体の調製方法によると、Rは、有利には、有機構造化剤として作用する2つの四級窒素原子を有する有機種である。好ましくは、Rは窒素含有化合物である1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンである。前記結晶化IZM−2固体の合成のための構造化有機種中に存在する四級アンモニウムカチオンと結合するアニオンは、有利には、アセタートアニオン、スルファートアニオン、カルボキシラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオン、ハロゲン化物アニオン(例えばフッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン)、ヒドロキシドアニオンおよびそれらの複数種の組合せから選択される。好ましくは、結晶化IZM−2固体の合成のための構造化種中に存在する四級アンモニウムカチオンと結合するアニオンは、ヒドロキシドアニオンおよび臭化物アニオンから選択される。前記結晶化IZM−2固体の構造化剤として使用される前記窒素含有有機種は、有利には、当業者に公知のあらゆる方法によって合成される。1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物の合成のために、1モルの1,6−ジブロモヘキサンと少なくとも2モルのN−メチルピペリジンとが、有利には、エタノール中で混合される。通常、この混合物は、3〜10時間の期間にわたって還流させられる。ろ過、エーテル系溶媒、例えばジエチルエーテルによる沈殿、次いで、エタノール/エーテル混合液中での再結晶の後、1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物が得られる。1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二水酸化物は、好ましくは、周囲温度における、1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物の酸化銀AgOによる水溶液の処理によって得られる。
【0050】
前記結晶化IZM−2固体の調製方法を実施するために用いられる元素X源は、有利には、元素Xを含みかつこの元素を水溶液中に活性な形態で遊離させ得るあらゆる化合物であり得る。有利には、元素Xがケイ素である場合、シリカ源は、ゼオライトの合成において一般に用いられるもののいずれかであり得、例えば、粉体形態の固体シリカ、ケイ酸、コロイダルシリカ、溶解シリカまたはテトラエトキシシラン(tetraethoxysilane:TEOS)である。粉体形態のシリカの中で、有利には、沈降シリカ、特に、アルカリ金属ケイ酸塩溶液からの沈殿によって得られるもの(例えば、aerosil(登録商標)シリカ)、熱分解(pyrogenated)シリカ(例えば「CAB-O-SIL(登録商標)」)およびシリカゲルが用いられ得る。種々の粒子サイズを有する(例えば、10〜15nmまたは40〜50nmの平均等価径を有する)コロイダルシリカ、例えば、「LUDOX(登録商標)」等の登録商標の下で販売されているものが用いられ得る。好ましくは、ケイ素源は、LUDOX(登録商標)AS-40である。
【0051】
元素Y源(場合によっては、前記結晶化IZM−2固体の調製方法を実施するために用いられる)は、有利には、元素Yを含みかつこの元素を水溶液中に活性な形態で遊離させ得るあらゆる化合物であり得る。Yがアルミニウムである好ましい場合において、アルミナ源は、好ましくは、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム塩(例えば、塩化物、硝酸塩、水酸化物、または硫酸塩)、アルミニウムアルコキシド、又は適正なアルミナ(好ましくは水和形態または水和可能な形態)、例えば、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、ガンマアルミナまたはアルファ三水和物またはベータ三水和物である。上記に挙げられた供給源の混合物も用いられ得る。
【0052】
n価のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属Mの供給源について、有利には前記金属Mのハロゲン化物が用いられるが、好ましくは、前記金属Mの水酸化物である。
【0053】
前記IZM−2固体の調製方法を行うために、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種の酸化物Yの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種のn価のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の少なくとも1種の源、2つの四級窒素原子を有する少なくとも1種の有機種Rを含む水性混合物は、少なくとも1種の水酸化物イオン源をさらに含むことが好ましい。前記水酸化物イオン源は、有利には、水酸化物形態にある場合の構造化有機種Rに由来し、すなわち、1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二水酸化物であるか、または、水酸化物形態にある場合のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mの源に由来し、例えば、水酸化ナトリウムである。
【0054】
従って、前記結晶化IZM−2固体の調製方法の好ましい実施形態によると、酸化ケイ素、場合によるアルミナ、1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物、及び水酸化ナトリウムを含む水性混合物が反応させられる。本発明による方法の他の好ましい実施形態によると、酸化ケイ素、場合によるアルミナ及び1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二水酸化物を含む水性混合物が反応させられる。
【0055】
前記結晶化IZM−2固体の調製方法は、有利には、少なくとも1種の酸化物XOの少なくとも1種の源、場合による少なくとも1種の酸化物Yの少なくとも1種の源、少なくとも1種の有機種R、場合による少なくとも1種のn価のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の少なくとも1種の源を含有するゲルと呼ばれる水性反応混合物を調製することに存する。前記試薬の量の調節は、有利には、このゲルに、式(I)XO:aY:bM2/nO:cR:dHO(式中、a、b、cおよびdは、cおよびdが0超である場合上記に規定された基準に合致する)の粗合成形態の結晶化IZM−2固体へのその結晶化を可能にする組成を与えるようになされる。次いで、ゲルは、前記結晶化IZM−2固体が形成されるまで水熱処理に付される。ゲルは、有利には、自己生成圧力下に場合によってはガス、例えば窒素を加えながら、120〜200℃、好ましくは140〜180℃、一層より好ましくは160〜175℃の温度での水熱条件下に、固体IZM−2結晶がその粗合成形態で形成されるまで置かれる。結晶を得るために要する時間は、通常、ゲル中の試薬の組成、攪拌、及び反応温度に応じて、1時間〜数ヶ月の間で変動する。好ましくは、結晶化期間は、2時間から21日の間で変動する。反応処理は、一般的には攪拌しながらまたは攪拌なしで行われるが、好ましくは、攪拌下に行われる。
【0056】
結晶形成に要求される時間および/または総結晶化期間を短縮するために反応混合物に種(seed)を加えることが有利であり得る。不純物を損ねて前記結晶化IZM−2固体の形成を促進するために種を用いることも有利であり得る。このタイプの種は、有利には、結晶固体、特にIZM−2固体の結晶を含む。結晶種は、一般的に、反応混合物中に用いられる酸化物XOの質量の0.01〜10%の割合で加えられる。
【0057】
前記IZM−2固体の結晶化をもたらす水熱処理工程の終了時に、固相は、有利には、ろ過され、洗浄され、乾燥させられ、その後、焼成される。焼成工程は、有利には、100〜1,000℃、好ましくは400〜650℃の温度で、数時間から数日にわたる期間、好ましくは、3〜48時間の期間にわたって行われる1回以上の加熱工程によって行われる。好ましくは、焼成は、2回の連続的加熱工程において行われる。
【0058】
前記焼成工程の終了時に、得られた前記IZM−2固体は、有利には、表1に列挙された放射線を少なくとも含むX線回折パターンを示すものである。それは、粗合成形態のIZM−2固体中に存在する水も有機種Rも含まない。
【0059】
焼成の後、本発明による結晶の基材の組成に入るIZM−2固体は、有利には、IZM−2固体のアンモニウム型を得るように、少なくとも1回の処理によって、少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液により交換される。アンモニウム型のIZM−2固体は、一旦焼成された後に、IZM−2固体の(H)酸型につながる。この交換工程は、触媒の調製のあらゆる段階において、すなわち、IZM−2固体を調製する工程の後、(ペレット化によるまたは多孔質無機バインダによる)IZM−2固体の形状化の工程の後、または、水素化脱水素化金属を導入する工程の後に行われ得る。好ましくは、交換工程は、IZM−2固体の形状化の工程の後に行われる。
【0060】
本発明による方法において用いられる触媒の基材の組成物に入る前記IZM−2固体は、有利には、少なくとも一部、好ましくはほぼ全体的に、酸型、すなわち、(H)酸型である。M/Y原子比は、一般的には、有利には0.1未満、好ましくは0.05未満、一層より好ましくは0.01未満である。
【0061】
本発明により実施されるIZM−2ゼオライトは、少なくとも一部、水素(H)型またはアンモニウム(NH)型である。場合によっては、ゼオライトの一部は、カチオン型であり得、前記カチオンは、第IA族、第IB族、第IIA族、第IIB族、第IIIA族、第IIIB族(希土類を含む)、Sn、PdおよびSiによって形成される群から選択される。H−IZM−2によって表される水素型または一部水素型のIZM−2ゼオライトは、合成粗製IZM−2ゼオライトの焼成処理および/またはイオン交換によって得られる。
【0062】
IZM−2ゼオライトの中で、通常、IZM−2ゼオライトであって、そのケイ素/アルミニウム(Si/Al)の全体原子比は、約3超であるものを用いることが好ましく、一層より好ましくは、IZM−2ゼオライトであって、そのSi/Al比は5〜200であり、一層より好ましくは10〜150であるものである。これらのIZM−2ゼオライトであって、前記のSi/Al比を有するものは、合成の際に、または、当業者に知られたあらゆる合成後手順により、すなわち、例えば、脱アルミニウム化、再アルミニウム化、脱ケイ素化、または、交換手順により得られ得る。ゼオライトの調製および1回以上の処理並びに形状化は、それ故に、これらの触媒の調製のための工程を構成し得る。
【0063】
(酸化物タイプの無定形または低結晶性の細孔質無機マトリクスの特徴)
細孔質の通常は無定形の無機マトリクスは、一般的に、少なくとも1種の耐火性酸化物からなる。前記マトリクスは、通常、アルミナ、シリカ、クレー、酸化チタン、酸化ホウ素、及びジルコニアによって形成される群から選択される。マトリクスは、前記に挙げられた酸化物の少なくとも2種の混合物からなっていもよく、例えば、シリカ−アルミナである。アルミン酸塩を選択することも可能である。好ましくは、当業者に知られたすべての形態のアルミナを含有するマトリクスの使用がなされ、例えば、ガンマアルミナである。
【0064】
有利には、アルミナおよびシリカの混合物、アルミナおよびシリカ−アルミナの混合物の使用がなされてもよい。
【0065】
本発明はまた、前記触媒による炭化水素原料の水素化分解法及び炭化水素原料の水素化処理法に関する。
【0066】
(触媒の調製)
本発明による触媒を調製するための好ましい方法は、以下の工程を含む:
本発明により実施されるIZM−2ゼオライトは、当業者に知られたあらゆる方法を用いて、基材または触媒の調製のあらゆる段階において、導入され得る。本発明により実施されるIZM−2ゼオライトは、上述の通り、少なくとも一部水素型(H)またはアンモニウム型(NH)である。
【0067】
ゼオライトは、例えば、粉末、粉砕粉末、懸濁液、脱凝集(deagglomeration)処理を経た懸濁液であってよく、何等の限定を伴うものではない。それ故に、例えば、ゼオライトは、酸性化または非酸性化された懸濁液中に、基材を目的とする最終ゼオライト含有量に調節された濃度で置かれ得る。
【0068】
この懸濁液(通常スリップ(slip)と呼ばれる)は、次いで、マトリクスの前駆体と混合される。
【0069】
好ましい実施形態によると、ゼオライトは、マトリクスを構成する要素による基材の形状化の間に導入され得る。例えば、本発明のこの好ましい態様によると、IZM−2ゼオライトは、基材を形状化させる工程の間に湿潤アルミナゲルに加えられる。
【0070】
本発明における基材の形状化のための好ましい方法の一つは、少なくとも1種のIZM−2ゼオライトを湿潤アルミナゲルと数十分間にわたって混練することおよびその後にこうして得られたペースト状物をダイに通過させて0.4〜4mmの径を有する押出物を成形することに存する。
【0071】
他の好ましい調製態様によると、ゼオライトは、マトリクスの合成の間に導入され得る。例えば、本発明のこの好ましい態様によると、IZM−2ゼオライトは、アルミニウム−ケイ素マトリクスの合成の間に加えられる;ゼオライトは、酸性媒体中のアルミナ化合物と全体的に可溶なシリカ化合物とからなる混合物に加えられ得る。
【0072】
基材は当業者に知られるあらゆる手順によって形状化され得る。形状化は、有利には、例えば、押出、ペレット化、(「油滴」)滴凝固(drop coagulation)法、回転板造粒または当業者に周知の任意の他の方法によって行われ得る。
【0073】
少なくとも1回の焼成が、有利には、調製のいずれか1つの工程の後に行われ得る。焼成処理は、通常、空気下に、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは約350〜1,000℃の温度で行われる。
【0074】
第VIB族元素、および場合による第VIII族元素(白金およびパラジウムを除く)、および、リン、ホウ素、及びケイ素から選ばれる元素、および場合による第VB族および第VIIB族元素は、場合により、それらの全体または一部において、調製のあらゆる段階で、マトリクスの合成の間に、好ましくは、基材の形状化の間にまたは非常に好ましくは、基材の形状化の後に、当業者に知られるあらゆる方法によって導入され得る。それらは、基材の形状化の後、基材の乾燥および焼成の前または後に、導入され得る。
【0075】
本発明の好ましい態様によると、第VIB族元素、および場合による第VIII族元素(白金及びパラジウムを除く)、および、場合によるリン、ホウ素、及びケイ素から選ばれる元素、および場合による第VB族および第VIIB族元素の全体又は一部は、基材の形状化の間、例えば、IZM−2ゼオライトを湿潤アルミナゲルと混練する工程の間に導入され得る。
【0076】
本発明の他の好ましい態様によると、第VIB族元素、および場合による第VIII族元素(白金およびパラジウムを除く)、および場合によるリン、ホウ素、ケイ素から選択される元素、および場合による第VB族および第VIIB族元素の全部または一部は、形状化され焼成された基材を含浸させるための1回以上の操作を経由して、これらの元素の前駆体を含有する溶液を経由して導入され得る。好ましくは、基材は、水溶液によって含浸させられる。基材は、好ましくは、当業者に周知の「乾式」含浸法として知られているものによって含浸させられる。
【0077】
本発明の触媒が第VIII族金属(白金及びパラジウムを除く)を含有する場合、第VIII族金属は、好ましくは、形状化されかつ焼成された基材を含浸させるための1回以上の操作を経由して、第VIB族からの元素の後、またはこれと同時に導入される。
【0078】
本発明の他の好ましい態様によると、ホウ素およびケイ素も、例えばホウ素塩およびシリコーンタイプのケイ素化合物を含有する溶液を用いながら、同時に沈着させられ得る。
【0079】
ニオブの含浸は、シュウ酸および場合によるシュウ酸アンモニウムをシュウ酸ニオブ溶液に添加することによって促進され得る。当業者に周知であるように、溶解性を向上させるためおよびニオブの含浸を促進するために他の化合物が用いられ得る。
【0080】
少なくとも1種のドーピング元素P、B、及び/又はSiが導入される場合、その分布およびその位置決めは、キャスタン・マイクロプローブ処理(Castaing microprobing)(種々の元素の分布プロファイル)、触媒の成分のX線分析と併用した透過型電子顕微鏡法等の手順によってまたは電子マイクロプローブにより触媒中に存在する元素の分布マッピングを確立することによって測定され得る。
【0081】
押出物に沿って均質な濃度CMo、CNi、C、及びCを示す触媒を調製することは興味深い。コア部および周辺部のCMo、CNi、C、及びCの異なる濃度を示す触媒を調製することも興味深い。これらの触媒は、「皿状」または「ドーム状」分布プロファイルとして知られているものを示す。他のタイプの分布は、活性相元素が表面に分布している外被(crust)分布である。一般的に言って、CMo、CNi、C、及びCの濃度のコア部/縁部の比は0.1〜3である。本発明の変形例では、それは0.8〜1.2である。本発明の他の変形例では、C濃度のコア部/縁部の比は0.3〜0.8である。
【0082】
例えば、モリブデン及びタングステンの源の中で、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびタングステン酸およびその塩、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸およびその塩、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸およびその塩の使用がなされ得る。酸化物およびアンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸アンモニウムの使用が好ましくはなされる。
【0083】
用いられ得る第VIII族非貴金属元素源は、当業者に周知である。例えば、非貴金属について、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物およびフッ化物)、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩)、および炭酸塩の使用がなされることになる。
【0084】
好ましいリン源は、オルトリン酸HPOであるが、その塩やエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適している。前駆体は、例えば、リン酸と窒素を含有する塩基性有機化合物、例えば、アンモニア、一級および二級アミン、環状アミン、ピリジン族およびキノリンの化合物およびピロール族の化合物との混合物の形態で導入され得る。タングストリン酸又はタングストモリブデン酸も使用され得る。
【0085】
リン含有量は、溶解したおよび/または基材上の混合化合物、例えば、タングステン−リンまたはモリブデン−タングステン−リンを形成するように調節される(それにより、本発明の範囲を限定しない)。これらの混合型化合物は、ヘテロポリアニオンであってよい。これらの化合物は、例えば、アンダーソン型ヘテロポリアニオンであってよい。Pの形態で計算されるリンの質量含有量は0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは0.2〜2重量%、一層より好ましくは0.2〜1重量%である。
【0086】
ホウ素源はホウ酸であってよく、好ましくはオルトホウ酸HBO、二ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、又はホウ酸エステルである。ホウ素は、例えば、ホウ酸、過酸化水素、および窒素含有塩基性化合物、例えば、アンモニア、一級および二級アミン、環状アミン、ピリジン族およびキノリンの化合物、ピロール族の化合物の混合物の形態で導入され得る。
【0087】
大多数のケイ素源が用いられ得る。それ故に、オルトケイ酸エチルSi(OEt)、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン、シリコーン乳剤、ケイ酸塩のハロゲン化物、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiF、フルオロケイ酸ナトリウムNaSiFが用いられ得る。ケイモリブデン酸及びその塩、並びにケイタングステン酸及びその塩も有利には用いられる。ケイ素は、例えば、水/アルコール混液に溶解したケイ酸エチルの含浸により、加えられ得る。溶液は、例えば、水に懸濁したシリコーンまたは水に懸濁したケイ酸型ケイ素化合物を含浸させることにより加えられ得る。
【0088】
用いられ得る第VB族元素源は、当業者に周知である。例えば、ニオブ源のうち、酸化物(例えば、五酸化二ニオブNb)、ニオブ酸Nb・HO、水酸化ニオブおよびポリオキソニオブ酸塩、式Nb(OR1)のニオブアルコキシド(式中、R1はアルキル基)、シュウ酸ニオブNbO(HC、ニオブ酸アンモニウムの使用がなされ得る。シュウ酸ニオブまたはニオブ酸アンモニウムが好ましくは用いられる。
【0089】
用いられ得る第VIIA族元素源は、当業者に周知である。例えば、フッ化物およびイオンが、フッ化水素酸またはその塩の形態で導入され得る。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。後者の場合、塩は、有利には、有機化合物とフッ化水素酸との間の反応による反応混合物中に形成される。フッ化物アニオンを水中に放出することができる加水分解可能な化合物、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiF、四フッ化ケイ素SiFまたは四フッ化ナトリウムNaSiFを用いることも可能である。フッ素は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウムの水溶液を含浸させることにより導入され得る。
【0090】
本発明により用いられる触媒は、球または押出物の形態である。しかしながら、触媒が、0.5〜5mm、より特定的には0.7〜2.5mmの径を有する押出物の形態であることは有利である。形状は、円筒形状(中空であっても中空でなくてもよい)、捻れた円筒形状、多葉状(例えば2、3、4または5葉状)、環状である。円筒形状が好ましくは用いられるが、任意の他の形状が用いられ得る。本発明による触媒は、場合によっては、粉砕粉末状、錠剤状、環状体状、ボール状、車輪状の形態で製造されかつ採用され得る。
【0091】
本発明によると、本発明の触媒の第VIB族および/または第VIII族金属は、硫化物の形態で存在する(硫化処理は、後述される)。
【0092】
本発明はまた、上記触媒を用いた炭化水素原料の水素化分解法に関する。
【0093】
(水素化分解法)
本発明はまた、本発明による触媒を用いた炭化水素留分の処理方法に関する。
【0094】
より具体的には、本発明は、本発明による触媒を用いた炭化水素原料の水素化分解及び/又は水素化転化方法、並びに水素化処理方法に関する。
【0095】
本発明による水素化分解及び/又は水素化転化方法、並びに水素化処理法は、水素の存在下、200℃超の温度、1MPa超の圧力下に操作し、空間速度は0.1〜20h−1であり、導入される水素の量は、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5,000L/Lであるようにされる。
【0096】
本発明による触媒は、有利には、炭化水素留分の水素化分解および/または水素化転化に用いられる。
【0097】
本発明による触媒は、炭化水素原料の水素化処理に用いられ得る;前記水素化処理方法は、単独でまたはゼオライトまたはアルミナ−シリカベースの水素化分解触媒(好ましくはニッケルおよびタングステンを含む)による水素化分解および/または水素化転化方法の上流に置かれ得る。
【0098】
(触媒の硫化処理)
本発明によると、原料の注入の前に、本発明による方法において用いられる触媒は、予め、硫化処理に付され、これにより、少なくとも一部において金属種を硫化物に変換することが可能になり、その後に、処理されるべき原料と接触させられる。硫化することによるこの活性化処理は、当業者に周知であり、文献において既に記載されているあらゆる方法を用いて、現場(in situ)、すなわち、反応器中または現場外(ex situ)のいずれかにおいて行われ得る。
【0099】
当業者に周知の従来の硫化方法は、硫化水素(高純度のものまたは例えば水素/硫化水素混合物の流れ下)の存在下に、150〜800℃、好ましくは250〜600℃の温度で、一般的には通過床(passed-through bed)を有する反応帯域内で触媒を加熱することに存する。
【0100】
(原料)
上記の本発明による方法を用いて非常に広範囲の原料が処理され得る。それらは、一般的には少なくとも20体積%、多くの場合少なくとも80体積%の、340℃超で沸騰する化合物を含有する。
【0101】
原料は、例えば、LCO(light cycle oil(接触分解単位装置(catalytic cracking unit)から得られる軽質軽油))、常圧留出液、真空下の留出液、例えば、粗製物質または転化単位装置(FCC、コーカー(coker)、ビスブレーキング)の直接蒸留によって得られる軽油、並びに、オイルベースの芳香族抽出単位装置に由来する原料または潤滑油ベースの溶剤脱ろうによって得られる原料、または、固定床またはAR(atmospheric residues:常圧残渣)および/またはRUV(residues under vacuum:真空下の残渣)および/または脱アスファルト油により沸騰している床における脱硫または水素化転化の方法に由来する留出液原料であり得るか、または、原料は、脱アスファルト油、または、上記に挙げられた原料のあらゆる混合物であり得る。前述のリストは、何等の制限も伴わない。フィッシャー−トロプシュ方法によって得られるパラフィンは除外される。一般的に、原料の沸点T5は、340℃超、より一層良好には、370℃超であり、すなわち、原料中に存在する化合物の95%の沸点は、340℃超であり、一層より良好には370℃超である。
【0102】
本発明による方法において処理される原料の窒素含有量は、通常500重量ppm超、好ましくは500〜10,000重量ppm、より好ましくは700〜4,000重量ppm、一層より好ましくは1,000〜4,000重量ppmである。本発明による方法において処理される原料の硫黄含有量は、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、一層より好ましくは0.5〜3重量%である。
【0103】
原料は、場合によっては、金属を含有し得る。本発明による方法において処理される原料の累積するニッケルおよびバナジウムの含有量は、好ましくは1重量ppm未満である。
【0104】
アスファルテン含有量は、一般的に3,000重量ppm未満、好ましくは1,000重量ppm未満、一層より好ましくは200重量ppm未満である。
【0105】
(保護床(guard bed))
原料が樹脂型化合物及び/又はアスファルテン型化合物を含むならば、水素化分解、水素化転化、及び/又は水素化処理の触媒とは異なる触媒又は吸着床上に、原料を予め通すことが有利である。本発明により用いられるこのような触媒又は保護床は、球または押出物の形態である。しかしながら、触媒は0.5〜5mm、より特定的には0.7〜2.5mmの径を有する押出物の形態であることが有利である。形状は、円筒形(中空であっても中空でなくてもよい)、捻れた円筒形、多葉(例えば2、3、4、又は5葉)、環状等である。円筒形の形状が好ましく用いられるが、任意の他の形状が用いられ得る。
【0106】
原料中の汚染物および/または毒物の存在を良好にするために、保護触媒は、他の好ましい実施形態では、そのボイド率を増加させるようにより特有の幾何学的形状を有し得る。これらの触媒のボイド率は、0.2〜0.75である。それらの外径は、1〜35mmの間で変動し得る。可能な粒子形状の例は、以下を含む(このリストは何等の限定を伴わない):中空円筒形状、中空リング状、ラシヒ(Raschig)リング状、鋸歯中空円筒形状(serrated hollow cylinder)、銃眼付中空円筒形状(crenellated hollow cylinder)、ペンタリング車輪状(penta-ring cartwheel)、多孔円筒状(multi-holed cylinder)等。
【0107】
これらの触媒または保護床は、活性な相または不活性な相によって含浸させられ得る。好ましくは、触媒は、水素化−脱水素化相によって含浸させられる。非常に好ましくは、CoMoまたはNiMo相が用いられる。
【0108】
これらの触媒または保護床は、マクロ多孔性を示し得る。保護床は、Norton-Saint-Gobainによって販売されるもの、例えば、Macro Trap(登録商標)保護床であり得る。保護床は、Axensによって、ACTファミリー:ACT077、ACT935、ACT961、HMC841、HMC845、HMC941、HMC945等で販売されるものであり得る。これらの触媒を、少なくとも2つの可変な高さの異なる床で重ね合わせることが特に有利であり得る。最も高いボイド率を有する触媒が、好ましくは、触媒反応器の入口にある第1の触媒床(単数または複数)において用いられる。これらの触媒のために少なくとも2つの異なる反応器を用いることも有利であり得る。
【0109】
本発明による好ましい保護床は、HMC類及びACT961である。
【0110】
(操作条件)
温度、圧力、水素リサイクル率、毎時体積速度等の操作条件は、原料の性質、所望の生成物の量および処理者が所有する設備に応じて可変であり得る。水素化分解/水素化転化または水素化処理の触媒は、一般的に、水素の存在下に、上記の原料と、200℃超、多くの場合250〜480℃、有利には320〜450℃、好ましくは330〜435℃の温度で、1MPa超、多くの場合2〜25MPa、好ましくは3〜20MPaの圧力下に接触させられ、空間速度は、0.1〜20h−1、好ましくは0.1〜6h−1、好ましくは0.2〜3h−1であり、導入される水素の量は、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5,000L/L、ほとんどの場合100〜2,000L/Lであるようにされる。
【0111】
本発明による方法において用いられるこれらの操作条件は、一般的に、340℃未満、より良好には370℃未満の沸点を有する生成物への通過当たりの転化率15重量%超、一層より好ましくは20〜95重量%が達成されることを可能にする。
【0112】
(実施形態)
本発明による触媒を実施する水素化分解および/または水素化転化方法は、穏やかな水素化分解(soft hydrocracking)から高圧水素化分解にわたる圧力および転化の領域をカバーする。用語「穏やかな水素化分解」は、中程度の転化率、一般的には、40%未満の転化率をもたらし、低い圧力、一般的には2〜6MPaで機能する水素化分解のことである。
【0113】
本発明の触媒は、単独で、単一のまたは複数の固定床触媒床において、1以上の反応器内で、一工程水素化分解スキームとして知られているもので、未転化フラクションの液体のリサイクルを伴ってまたは伴わないで、場合によっては、本発明の触媒の上流に置かれる水素化精製触媒と組み合わされて用いられ得る。
【0114】
本発明の触媒は、単独で、単一または複数の沸騰床反応器において、一工程水素化分解スキームとして知られているもので、未転化フラクションの液体リサイクルを伴ってまたは伴わないで、場合によっては、本発明の触媒の上流の固定床または沸騰床反応器中に置かれた水素化精製触媒と組み合わされて用いられ得る。
【0115】
沸騰床は、安定な触媒の活性を維持するために、使用済み触媒を除去し、新しい触媒を毎日添加しながら操作する。
【0116】
(「一工程」方法)
一工程水素化分解として知られているものは、まず第一におよび一般的に、広範な水素化精製を含む。この広範な水素化精製の目的は、原料の広範な水素化脱窒および脱硫を行うことである。その後、前記原料は、適正な水素化分解触媒上に送られる。この広範な水素化精製は、特に、水素化分解触媒がゼオライトを含む場合に行われる。原料のこの広範な水素化精製により、原料のより軽質なフラクションへの限定された転化のみがなされるが、この軽質なフラクションは、不十分なままであり、したがって、より活性な水素化分解触媒上に補完されなければならない。しかしながら、2つのタイプの触媒の間に分離は起こらないことは留意されるべきである。反応器の出口における流出物の全ては、適正な水素化分解触媒上に注入され、形成された生成物が分離されるのは、その後だけである。この水素化分解のバージョンは、ワンススルー水素化分解(once-through hydrocracking)と呼ばれるものであり、原料のより広範な転化を考慮して未転化フラクションの反応器の方へのリサイクルを示す変形例を有している。
【0117】
(固定床「一工程」方法)
低含有量のシリカを有する触媒の場合、触媒組成物中に含まれる基材の重量によるシリカ含有量は、5〜30%、好ましくは5〜20%である。
【0118】
高含有量のシリカを有する触媒の場合、触媒組成物中に含まれる基材の重量によるシリカ含有量は、20〜80%、好ましくは30〜60%である。
【0119】
本発明による触媒が、例えばYゼオライトベースの水素化分解ゼオライト触媒の上流で用いられるならば、有利には、上記のような重量による低含有量のシリカを有する触媒の使用がなされることになる。それは有利には、水素化精製触媒と組み合わされて用いられ得る。水素化精製触媒は、本発明の触媒の上流に置かれる。
【0120】
本発明による触媒がアルミナ−シリカベースまたはゼオライトベースの水素化分解触媒の上流で、同一の反応器内の異なる触媒床においてまたは異なる反応器において用いられる場合、転化率は、一般的に(または好ましくは)50重量%未満、好ましくは40重量%未満である。
【0121】
本発明による触媒は、ゼオライト触媒の上流または下流で用いられ得る。ゼオライトの下流で、それは、PAHが分解されることを可能にする。用語「PAH」は、特に、研究「Hydrocracking, Science and Technology」(J.Scherzer著、出版M. Dekker Incorporated, 1996)において記載されるような多芳香族炭化水素(polyaromatic hydrocarbon)のことである。
【0122】
(沸騰床「一工程」方法)
本発明による触媒は、単独で、1つ以上の反応器において用いられ得る。このタイプの方法内で、有利には、直列の複数の反応器の使用がなされ得、本発明による触媒を含むこの沸騰床反応器は、少なくとも1種の固定床または沸騰床の水素化精製触媒を含む1つ以上の反応器によって先行される。
【0123】
本発明による触媒が水素化精製触媒の下流で用いられる場合、この水素化精製触媒によって引き起こされる原料の一部の転化率は、一般的に(好ましくは)、30重量%未満、好ましくは25重量%未満である。
【0124】
(中間分離を伴う固定床「一工程」方法)
本発明による触媒はまた、水素化精製帯域と、アンモニアの部分的除去(例えばホットフラッシュによる)を可能にする帯域と、水素化分解触媒を含む帯域とを含む一工程水素化分解方法として知られているものにおいて用いられ得る。中間留出液および場合によりオイルベースの製造のために一工程において炭化水素原料を水素化分解するためのこの方法は、少なくとも1つの第1の水素化精製反応帯域と、第1の反応帯域からの流出物の少なくとも一部の水素化分解が操作される少なくとも1つの第2の反応帯域とを含む。この方法はまた、アンモニアを、第1の帯域を出る流出物から不完全に分離することを含む。この分離は、有利には、中間のホットフラッシュによって行われる。第2の反応帯域において操作される水素化分解は、原料中に存在する量未満である量のアンモニアの存在下に、好ましくは窒素の重量で1,500ppm未満、より好ましくは1,000重量ppm未満、一層より好ましくは800重量ppm未満で行われる。本発明の触媒は、好ましくは、水素化分解反応帯域において、本発明の触媒の上流に置かれた水素化精製触媒と組み合わされてまたは組み合わされないで用いられる。
【0125】
本発明による触媒はまた、第1の(転化予備処理)反応帯域において、単独で、または、本発明による触媒の上流に置かれる従来の水素化精製触媒との組合せで、1つ以上の触媒床で、1つ以上の反応器において用いられ得る。
【0126】
(低酸性触媒上での予備水素化精製を伴う「一工程」水素化分解方法)
本発明による触媒は、
− 第1の水素化精製反応帯域:当該反応帯域中で、原料は、フランス特許No.2 840 621において規定される標準活性試験において、シクロヘキサン転化度:10質量%未満を示す少なくとも1種の水素化精製触媒と接触させられる;および
− 第2の水素化分解反応帯域:当該反応帯域中で、水素化精製工程から得られた流出物の少なくとも一部が、標準活性試験において、シクロヘキサン転化度:10質量%超を示す少なくとも1種の水素化分解触媒と接触させられる;
を含み、本発明による触媒は、2つの反応帯域の少なくとも一方中に存在する、水素化分解方法において用いられ得る。
【0127】
水素化精製触媒の触媒体積の比率は、一般的に、全触媒体積の20〜45%を示す。
【0128】
第1の反応帯域から得られた流出物は、少なくとも一部、好ましくはその全体において、前記方法の第2の反応帯域に導入される。気体の中間分離は、上記のように行われ得る。
【0129】
第2の反応帯域の出口における流出物は、最終分離として知られているもの(例えば、常圧蒸留と、場合により続けて行われる、真空下の蒸留)に付され、ガスが分離される。少なくとも1つの残留液体フラクションが得られ、このものは、基本的には生成物を含んでおり、その沸点は、一般的に340℃超であり、これは、少なくとも部分的に、中間留出液を製造する目的で、本発明による方法の第2の反応帯域の上流に、好ましくは、アルミナ−シリカベースの水素化分解触媒の上流にリサイクルされる。
【0130】
340℃未満または370℃未満の沸点を有する生成物への転化率は、少なくとも50重量%である。
【0131】
(「二工程」方法)
2つの反応帯域の間で中間分離を伴う二工程水素化分解スキームとして知られているものでは、所与の工程において、本発明の触媒は、一方または両方の反応器において、本発明の触媒の上流に置かれた水素化精製触媒と組み合わされてまたは組み合わされないで用いられ得る。
【0132】
二工程水素化分解は、第1工程を含み、その目的は、「一工程」方法におけるように、原料を水素化精製することであるが、その転化度、一般的には約40〜60%を達成することでもある。第1工程から得られた流出物は、続いて、大抵中間分離と呼ばれる可能にする分離(蒸留)を経、その目的は、転化生成物を未転化フラクションから分離することである。二工程水素化分解方法の第2の工程において、第1工程の間に転化されていない原料の部分のみが処理される。この分離は、二工程水素化分解方法が中間留出液(灯油+ディーゼル)に関して一工程方法より選択的であることを可能にする。実際に、転化生成物の中間分離は、水素化分解触媒上での第2工程中のナフサおよび気体によるその「過分解(overcracking)」を妨げる。さらに、第2工程において処理される原料の未転化部分は、一般的に、非常に低い含有量のNH、窒素含有有機化合物を、一般的には、20重量ppm未満、さらには10重量ppm未満で含むことが留意されるべきである。
【0133】
一工程方法として知られているものの場合において記載される固定床または沸騰床の触媒床の構成は、本発明による触媒が単独でまたは従来の水素化精製触媒との組合せで用いられているかに拘わらず、二工程スキームとして知られているものの第1工程において用いられ得る。
【0134】
一工程方法として知られているもののためおよび二工程水素化分解方法の第1工程のために、本発明による好ましい触媒は、第VIII非貴金属元素をベースとするドーピング触媒であり、一層より好ましくはニッケルおよびタングステンベースの触媒であり、好ましいドーピング元素はリンである。
【0135】
二工程水素化分解方法の第2工程において用いられる触媒は、好ましくは、第VIII族貴金属元素をベースとするドーピングされた触媒であり、一層より好ましくは白金および/またはパラジウムをベースとする触媒であり、好ましいドーピング元素はリンである。
【0136】
(本発明による炭化水素原料の水素化処理/水素化精製)
本発明による触媒は、ガソリン留分、石炭から得られる留分または天然ガスから製造された炭化水素等の炭化水素含有原料の水素化処理および水素化精製に、より具体的には、芳香族化合物および/またはオレフィン化合物および/またはナフテン化合物および/またはパラフィン化合物を含有する炭化水素原料の水素化、水素化脱窒、水素化脱酸素、水素化脱芳香族および水素化脱金属に用いられ、前記原料は、場合によっては、金属および/または窒素および/または酸素および/または硫黄を含有する。
【0137】
より具体的には、水素化処理方法において採用される原料は、ガソリン、軽油、真空下の軽油、常圧残渣、真空下の残渣、常圧留出液、真空下の留出液、重質燃料、オイル、ワックスおよびパラフィン、使用済みオイル、脱アスファルト残渣または粗製物質、熱または接触転化方法に由来する原料およびその混合物である。それらは、一般的に、硫黄、酸素および窒素および/または少なくとも1種の金属等のヘテロ原子を含有する。
【0138】
上述の通り、本発明の触媒は、大多数の水素化精製または水素化処理の用途において用いられ得る。これらの方法において適用され得る操作条件は通常:200〜450℃、好ましくは250〜440℃の温度、1〜25MPa、好ましくは1〜18MPaの圧力、0.1〜20h−1、好ましくは0.2〜5h−1の毎時体積速度、一般的に80〜5,000L/L、ほとんどの場合100〜2,000L/Lの水素/原料比(液体原料の体積当たりの標準温度および圧力条件下に測定される水素の体積で表される)である。
【0139】
(実施例)
(実施例1−本発明による触媒に用いられるIZM−2ゼオライトの調製)
本発明による触媒において用いられるIZM−2ゼオライトの調製は、最初に、構造化剤1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物の調製を経る。50gの1,6−ジブロモヘキサン(0.20モル、99%、Alfa Aesar)を、50gのN−メチルピペリジン(0.51モル、99%、Alfa Aesar)及び200mLのエタノールを含有する1Lフラスコに加える。反応媒体を攪拌し、5時間にわたって還流させる。続いて、混合物を周囲温度に冷却し、次いでろ過する。混合物を、300mLの冷ジエチルエーテルに注ぎ、次いで、生じた沈殿をろ過し、100mLのジエチルエーテルにより洗浄する。得られた固体を、エタノール/エーテル混合液中で再結晶させた。得られた固体を、真空下に12時間にわたって乾燥させた。71gの白色固体(すなわち、収率80%)を得た。生成物は、予想された1H NMRを有している。
【0140】
1H-NMR(D2O, ppm/TMS): 1.27(4H, m); 1.48(4H, m); 1.61(4H, m); 1.70(8H, m); 2.85(6H, s); 3.16(12H, m).
本発明による触媒において用いられるIZM−2固体を、続いて、以下の方法で調製する:Aldrichによって販売される商用語Ludox(登録商標)AS-40の下に知られているシリカのコロイド懸濁液20.269gを、0.32gのアルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)、0.634gの水酸化ナトリウム(Prolabo)、9.95gの1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物および68.82gの脱イオン水からなる溶液に組み入れる。混合物のモル組成は以下の通りである:SiO;0.0125Al;0.08NaO;0.17 1,6−ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン二臭化物;33.33HO。混合物を30分間にわたって激しく攪拌した。次いで、混合物を、均一化の後、オートクレーブに移す。オートクレーブを、攪拌しながら(250rpm)、9日にわたり170℃に加熱する。得られた結晶生成物をろ過し、脱イオン水中で洗浄し(中性pHを達成するため)、次いで、100℃で終夜乾燥させた。次いで、固体を、マッフル炉に導入し、そこで、焼成を行った:焼成サイクルは、200℃までの昇温、続く、2時間にわたって維持される200℃の段階、550℃への昇温、続く、8時間にわたって維持される550℃の段階、次いで、周囲温度への復帰を含む。焼成固体生成物を、X線回折により分析し、IZM−2固体からなるとして確認した。
【0141】
(実施例2:本発明による触媒において用いられるH−IZM−2ゼオライトを含む基材の調製)
IZM−2ゼオライトを含有する本発明による触媒基材を、同じ基材をベースとする種々の触媒を調製することができるように大量に製造した。IZM−2ゼオライト(実施例と同様に調製された)は、29.8に等しい全Si/Al原子比および0.25に等しいNa/Al原子比を有している。
【0142】
このIZM−2ゼオライトを、4回のイオン交換に付す。この交換は、各交換についてNHNOの10N溶液中、約100℃で4時間にわたり行う。このようにして得られた固体を、NH−IZM−2により示し、これは、Si/Al比=29.8およびNa/Al比=0.013を有している。
【0143】
IZM−2ゼオライトを含有する本発明による触媒基材を、以下の方法で製造する:19.5gのNH−IZM−2ゼオライトを、超微細平板状ベーマイトまたはCondea Chemie GmbH社により名称SB3の下に販売されるアルミナゲル固体からなるマトリクス80.5gと混合する。次いで、この粉末混合物を、66重量%の硝酸を含有する水溶液(乾燥ゲルの重量(グラム)当たり酸7重量%)と混合し、次いで、15分間にわたって混練する。次いで、混練されたペースト状物を、1.2mm径を有するダイを通じて押し出す。次いで、押出物を、500℃で2時間にわたり空気下に焼成する。500℃での焼成の後、ゼオライトは、今やH−IZM−2の形態にあり、Al−IZM−2基材は終結させられる。
【0144】
(実施例3:IZM−2ゼオライトを含有する本発明による触媒の調製)
実施例2において調製された基材押出物に、七モリブデン酸アンモニウムおよび硝酸ニッケルの混合物の溶液によって乾式含浸させ、最後に、空気下に550℃、現場(in situ)で反応器において焼成した。得られたNiMo−IZM−2触媒の重量による酸化物含有量を、表1に提示する。
【0145】
実施例2からの基材押出物に、七モリブデン酸アンモニウム、硝酸ニッケルおよびオルトリン酸の混合物の溶液によって乾式含浸させ、最後に、空気下に550℃において現場(in situ)で反応器において焼成した。NiMoP−Al−IZM−2触媒の重量による酸化物含有量を、表1に提示する。
【0146】
次いで、希フッ化水素酸溶液の含浸によってフッ素をこの触媒に加え、約1重量%のフッ素を沈着させるようにした。120℃での終夜乾燥および550℃での2時間にわたる乾燥空気下の焼成の後、NiMoPF−Al−IZM−2触媒を得る。得られたNiMoPF−IZM−2触媒の重量による酸化物含有量を、表1に提示する。
【0147】
【表1C】

【0148】
(実施例4:IZM−2ゼオライトおよびシリカ−アルミナを含有する基材の調製)
本発明者らは、共沈によって、2重量%のSiOおよび98重量%のAlの組成を有するシリカ−アルミナ粉末を製造した。次いで、このシリカ−アルミナおよび実施例1からのNH−IZM−2ゼオライトを含有する、水素化分解触媒の基材を製造した。この目的のために、実施例1からのNH−IZM−2ゼオライト19.7重量%を上記の調製されたシリカ−アルミナからなるマトリクス80.3重量%と混合して得たものを使用した。次いで、この粉末混合物を、66%の硝酸を含有する水溶液(乾燥ゲルの重量(グラム)当たり酸7重量%)と混合し、次いで、15分間にわたって混練した。この混練の終了時に、得られたペースト状物を、径が1.4mmに等しい円筒形オリフィスを有するダイに通した。続けて、押出物を、120℃で終夜乾燥させ、次いで、550℃で2時間にわたり空気下に焼成した。
【0149】
(実施例5:IZM−2ゼオライトおよびシリカ−アルミナを含有する本発明による触媒の調製)
実施例4からのシリカ−アルミナおよびIZM−2ゼオライトを含有する基材押出物に、七モリブデン酸アンモニウム、硝酸ニッケルおよびオルトリン酸の混合物の水溶液を乾式含浸させ、120℃で空気下に終夜乾燥させ、最後に、空気下に550℃で焼成する。得られたNiMoP−SiAl−IZM−2触媒の重量による酸化物含有量を、表2に提示する。
【0150】
続けてフッ素をこの触媒に、希フッ化水素酸溶液の含浸によって加えて、約1重量%のフッ素を沈着させるようにした。120℃での終夜乾燥および550℃での2時間にわたる乾燥空気下の焼成の後、NiMoPF−SiAl−IZM−2触媒を得た。得られたNiMoPF−SiAl−IZM−2触媒の重量による酸化物含有量を表2に提示する。
【0151】
【表2】

【0152】
(実施例6:真空下の蒸留の水素化分解触媒の比較)
触媒(その調製は、前述の実施例において記載されている)を、高転化率(60〜100%)水素化分解条件下に用いる。石油原料は、水素化処理された真空下の留出液であり、その主な特徴を、表3に提示する。
【0153】
【表3】

【0154】
この原料を、HRK558触媒上での真空下留出液の水素化処理によって得た。HRK558触媒は、Axens社によって販売され、第VIB族元素および第VIII族元素をアルミナ上に沈着させて含む。
【0155】
0.6重量%のアニリンおよび2重量%のジメチルジスルフィドを、原料に加えて、第2の水素化分解工程中に存在するHSおよびNHの分圧のシミュレーションを行った。こうして調製された原料を、水素化分解試験単位装置に注入した。この水素化分解試験単位装置は、原料が上昇移動する(上向流)固定床反応器を含むものであり、この固定床反応器に80mLの触媒が導入される。触媒を、n−ヘキサン/DMDS+アニリンの混合物によって320℃までで硫化する。あらゆる現場(in situ)または現場外(ex-situ)硫化方法が適していることが留意されるべきである。硫化が行われた時点で、表3に記載された原料は変換され得る。試験単位装置の操作条件を、表4に提示する。
【0156】
【表4】

【0157】
触媒性能のレベルは、70%の粗転化レベルが達成されることを可能にする温度およびガソリンおよびジェット燃料(灯油)の収率によって表される。安定化期間、一般的には少なくとも48時間が観察された時点で、これらの触媒性能レベルを触媒上で測定する。
【0158】
粗転化(crude conversion:CC)は、以下に等しいとして想定される:
CC=流出物の「380℃」の重量%
ここで、「380℃」は、380℃以下の温度で蒸留されたフラクションを示す。
【0159】
ガソリン収率(27−150)(以降、Pet Yldのことである)は、流出物中の27〜150℃の沸点を有する化合物の重量%に等しい。ジェット燃料収率(灯油,150−250,以降、Kero Yldのことである)は、流出物中の150〜250℃の沸点を有する化合物の重量%に等しい。軽油収率(250−380)は、流出物中の250〜380℃の沸点を有する化合物の重量%に等しい。
【0160】
反応温度は、70重量%に等しい粗転化率CCを達成するように固定される。以下の表7は、上記の実施例において記載された触媒についての反応温度および軽質留出液および中間留出液の収率を列挙する。
【0161】
【表5】

【0162】
表5により、IZM−2ゼオライトを含有し、本発明の方法を用いて調製され、本発明による方法において用いられる触媒は、活性であり、全て、380℃への転化に対して70重量%の転化レベルが、高い留出液収率等で得られることを可能にする温度をもたらすことが証明される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と活性相とを含む触媒であって、
− 該基材は、少なくとも1種の結晶化IZM−2固体を含み、該結晶化IZM−2固体は、表:
【表1】

(表中、ss=非常に強い、s=強い、m=中程度、mw=中程度に弱い、w=弱い、ww=非常に弱い、である)
において列挙される放射線を少なくとも含むX線回折パターンを示し、
− 無水ベースで、酸化物のモルに関して、一般式:XO:aY:bM2/nOによって表される化学組成を有し、ここで、Xは、少なくとも1種の四価元素を示し、Yは、少なくとも1種の三価元素を示し、Mは、少なくとも1種のn価のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属であり、aおよびbは、それぞれ、YおよびM2/nOのモル数を示し、aは0〜0.5であり、bは0〜1であり、
− 該活性相は、周期律表の第VIB族からの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素および/また第VIII族非貴金属はからの少なくとも1種の水素化−脱水素化元素を含有し、
硫化物相触媒である、触媒。
【請求項2】
Xはケイ素である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
Yはアルミニウムである、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
第VIB族金属の質量含有量は、触媒の全質量に対して0.1〜40重量%である、請求項1〜3のうちの1つに記載の触媒。
【請求項5】
第VIII族非貴金属の金属の質量含有量は、触媒の全質量に対して0〜25重量%である、請求項1〜4のうちの1つに記載の触媒。
【請求項6】
第VIB族元素は、タングステンおよびモリブデンによって形成される群から選択され、単独でまたは混合物において利用される、請求項1〜5のうちの1つに記載の触媒。
【請求項7】
第VIII族非貴金属元素は、コバルトおよびニッケルによって形成される群から選択され、単独でまたは混合物において利用される、請求項1〜6のうちの1つに記載の触媒。
【請求項8】
酸化物タイプの無定形若しくは低結晶性の細孔性無機バインダをさらに含有する、請求項1〜7のうちの1つに記載の触媒。
【請求項9】
請求項1〜8のうちの1つに記載の触媒を用いる炭化水素原料の水素化分解および/または水素化転化方法。
【請求項10】
一工程方法として知られるものを用いて行われる、請求項9に記載の水素化分解および/または水素化転化方法。
【請求項11】
二工程方法として知られているものを用いて行われる、請求項9に記載の水素化分解および/または水素化転化方法。
【請求項12】
請求項1〜8のうちの1つに記載の触媒を用いる炭化水素原料の水素化処理方法。
【請求項13】
水素の存在下、200℃超の温度で、1MPa超の圧力下に操作し、空間速度は0.1〜20h−1であり、導入される水素の量は、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5,000L/Lであるようにされる、請求項9〜12のうちの1つに記載の方法。
【請求項14】
炭化水素原料は、LCO(light cycle oil:接触分解単位装置から得られる軽質軽油)、常圧留出液、真空下の留出液、潤滑油ベースの芳香族化合物抽出単位装置に由来するかまたは潤滑油ベースの溶媒脱ろうによって得られる原料、固定床またはAR(常圧残渣)および/またはRUV(真空下の残渣)および/または脱アスファルト油により沸騰する床における脱硫または水素化転化方法に由来する留出液、脱アスファルト油によって形成される群から選択され、単独でまたは混合物において利用される、請求項9〜13のうちの1つに記載の方法。

【公表番号】特表2011−530397(P2011−530397A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521610(P2011−521610)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000942
【国際公開番号】WO2010/015736
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】