説明

JAK2核酸における変異の検出法

本発明は腫瘍性疾患患者由来無細胞体液サンプル中のJAK2核酸の検出法、および、核酸が1つもしくはそれ以上の変異または1つの変異および1つの欠失を含むか否かの測定法に関する。方法は、キナーゼ活性に影響を与えるJAK2遺伝子の変異を伴う細胞を有する患者の診断に有用である。それらの変異の検出を用いて、患者の治療法の決定、または治療および管理のための患者の階層化を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は癌検出の分野、より具体的には腫瘍性疾患(例えば骨髄増殖性疾患)患者に有用な診断法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
以下の本発明の背景に関する記載は、単に読者の本発明に関する理解を促進するために提供するものであり、本発明の従前の技術を記述または構成すると認めるものではない。
【0003】
非CML骨髄増殖性疾患(MPD)(例えば真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、および慢性特発性骨髄線維症(IMF))、および分類不能型骨髄増殖性疾患(MPD-NC)を含むある種の腫瘍性疾患は血液細胞の異常増加を特徴とする。例えばVainchenkerおよびConstantinescu,Hematology(American Society of Hematology),195-200(2005)参照。この増加は一般に、骨髄にある多能性造血幹細胞の偶発突然変異によって開始される(同文献)。突然変異により、幹細胞は特定の系列の血液細胞を正常よりはるかに多く生成し、それによって赤血球細胞、巨核球、顆粒球、および単球などの細胞の過剰生成が起こる。MPD患者に共通する症状には脾腫大、肝腫大、白血球、赤血球、および/または血小板数の増加、凝血(血栓)、脱力感、目まい、および頭痛がある。PV、ET、およびIMFのような疾患は白血病の前兆であり得るが、(例えば急性転化に至るまでの)病態変化の速度は各疾患によって異なる(同文献)。
【0004】
多くのMPDに関与する特定の遺伝子およびそれに付随する突然変異(単数または複数)は知られていない。しかしながら、細胞質性非受容体型チロシンキナーゼであるヤヌスキナーゼ2(JAK2)遺伝子の変異が多くのMPDで同定されている。例えばこの変異は97%に上るPV患者、また、ETまたはIMF患者の40%以上で報告されている。例えば以下参照:Baxterら,Lancet 365:1054-1060(2005);Jamesら,Nature 438:1144-1148(2005);Zhaoら,J. Biol. Chem. 280(24):22788-22792(2005);Levineら,Cancer Cell, 7:387-397 (2005);Kralovicsら,New Eng. J. Med. 352(17):1779-1790(2005);Jonesら, Blood 106:2162-2168(2005);Steensmaら,Blood 106:1207-2109 (2005)。
【0005】
ヤヌスキナーゼはサイトカイン・シグナリングに関与するチロシンキナーゼ・ファミリーである。例えばJAK2キナーゼは膜結合型サイトカイン受容体(例えばエリスロポエチン受容体(EpoR))およびシグナル伝達経路の下流要素(例えばSTAT5(シグナル伝達・転写活性化因子5;Signal Transducers and Activators of Transcription protein 5))間の介在物質として作用する。例えば以下参照:Schindler,C.W.,J. Clin Invest. 109:1133-1137(2002);TefferiおよびGilliland,Mayo Clin. Proc. 80:947-958(2005);GiordanettoおよびKroemer,Protein Engineering,15(9):727-737(2002)。サイトカイン受容体/リガンド複合体がそれに結合するJAK2キナーゼをリン酸化すると、JAK2が活性化される(同文献)。その後JAK2はその基質分子(例えばSTAT5)をリン酸化および活性化し、これが核に入り、他の調節タンパク質と相互作用して転写に作用を及ぼす(同文献;Nelson,M.E.,およびSteensma,D.P.,Leuk.Lymphoma 47:177-194(2006))。
【0006】
JAK2変異体では、617番アミノ酸のバリン(コドン“GTC”)がフェニルアラニン(コドン“TTC”)で置換されている(“V617F変異体”)。Baxterら,Lancet 365:1054-1060(2005)。617番アミノ酸は第12エクソンに位置するが、そこには偽キナーゼ (JH2(Jakホモロジー2ドメイン)と呼ばれる自己阻害(または負調節)ドメイン)が含まれる(同文献;Jamesら,Nature 438:1144-1148(2005))。このドメインはキナーゼ活性を有さないが、キナーゼ活性を有するJH1(Jakホモロジー1)ドメインと相互作用する。Baxterら, Lancet 365:1054-1060 (2005)。野生型タンパク質では2つのドメインが好適に接触することによって適切なキナーゼ活性および調節が行われる;しかし、V617F変異によって2つのドメインの接触は不適切となり、その結果、変異型JAK2タンパク質では構成的キナーゼ活性がもたらされる。同文献。
【0007】
種々の異なるアプローチおよび多くの証拠により、JAK2 V617F変異は、もし存在すれば、MPDの発病機序に関与することが示唆されている。例えばKaushansky, Hematology(Am Soc Hematol Educ Program),533-7(2005)参照。変異は血液サンプル、骨髄、および口腔サンプルから検出されており(例えば以下参照:Baxterら,Lancet 365:1054-1060(2005);Jamesら,Nature 438:1144-1148(2005);Zhaoら,J. Biol. Chem. 280(24):22788-22792(2005);Levineら,Cancer Cell,7:387-397(2005);Kralovicsら,New Eng. J. Med. 352(17):1779-1790 (2005))、ホモ接合体およびヘテロ接合体細胞集団がMPD患者で報告されている。Baxterら,Lancet 365:1054-1060(2005)。
【0008】
本明細書において出願人は、JAK2 V617F変異の存在または非存在および接合状態(例えば野生型、ホモ接合性/ヘミ接合性、またはヘテロ接合性)によって一定の患者集団における生存率および寿命に差異があることを証明する。しかしながら、標準的な検出法を用いてサンプル(例えば血液細胞、骨髄細胞、または口腔細胞)由来細胞集団の接合状態の特性決定を行うことは困難である。これは、正常細胞由来の野生型JAK2配列が変異型と共に検出され、ホモ接合性またはヘミ接合性細胞集団を含有しうるサンプルはヘテロ接合性のように見えるためである。
【0009】
従って、変異を保有する患者をより簡単かつ正確に同定する方法、およびJAK2 V617F変異に関して患者細胞集団をホモ接合性、ヘミ接合性/ヘテロ接合性、または野生型として特性決定する方法が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は患者サンプル中の核酸の検出および特性決定のための方法に関する。特定の観点では、本発明は腫瘍性疾患患者の無細胞体液由来RNA中のJAK2変異の存在または非存在の測定に関する。
【0011】
ある観点では、本発明は患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する方法を提供する。関連する観点では、本発明は腫瘍性疾患患者の治療法を提供し、この方法は患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定し、その測定に基づいて患者を治療することを含む。別の態様では、本発明は腫瘍性疾患であると診断された患者が変異型JAK2キナーゼ活性を有する細胞を保有するか否かを測定する方法を提供し、方この法は患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定することを含む。他の観点では、本発明は腫瘍性疾患を診断する方法を提供し、この方法は患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定することを含む。別の態様では、本発明は腫瘍性疾患、例えば真性赤血球増加症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症、または分類不能型骨髄増殖性疾患であると診断された個体の予後診断を行う方法を提供し、この方法は個体の無細胞体液中のJAK2核酸における1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定し、変異状態を用いて個体の臨床転帰を予測することを含む。
【0012】
上記の本発明の観点の好ましい態様では、1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の判定を、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2と相対させることによって行ってもよい。他の好ましい態様では、1つまたはそれ以上の変異はキナーゼ活性に影響を及ぼす;より好ましくは1つまたはそれ以上の変異は活性化ドメインまたはより具体的にはJAK2の偽キナーゼドメインに位置する;好ましくは少なくとも1つの変異はコドン617に存在する;好ましくは変異はバリン以外のアミノ酸をコードする;より好ましくは変異によってV671Fアミノ酸変化が起こる。
【0013】
ある種の好ましい態様では、患者は骨髄増殖性疾患であると診断されている;より好ましくは患者は赤血球増加症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症、または分類不能型骨髄増殖性疾患であると診断されている。
【0014】
他の好ましい態様では、無細胞体液は血漿または血清である。ある態様では、JAK2核酸はRNAである。
【0015】
本発明の方法の更に別の好ましい態様では、1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定は、JAK2核酸の逆転写を含む;より好ましくは、1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定は、JAK2核酸の増幅を含む;好ましくは、1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定は、JAK2核酸の逆転写および増幅を含む;より好ましくは、1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定は、JAK2核酸を増幅させること、およびハイブリダイゼーション条件下でJAK2核酸を特異的に検出する能力のあるオリゴヌクレオチド・プローブと増幅された核酸をハイブリダイズさせることを含む;他の好ましい態様では、1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定は、JAK2核酸の増幅および増幅された核酸のシーケンシングを含む。
【0016】
ある好ましい態様では、本発明の方法は患者の無細胞体液が変異型JAK2核酸および野生型JAK2核酸を含有するか否かを測定することを含む;好ましくは変異型JAK2核酸と野生型JAK2核酸との比率を測定する;好ましくは診断または治療は1つまたはそれ以上の測定結果に基づく;好ましくは1つまたはそれ以上の測定結果に基づいて治療を実施する、見合わせる、または変更する。
【0017】
別の観点では、本発明は腫瘍性疾患、例えば真性赤血球増加症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症、または分類不能型骨髄増殖性疾患であると診断された個体の予後診断を行う方法を提供し、この方法は個体の無細胞体液中のJAK2核酸における1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定し、変異状態を用いて個体の臨床転帰を予測することを含む。あるアッセイ法では、サンプル中に存在する変異型JAK2核酸と野生型JAK2核酸との比率を測定して予後診断を行う。ある方法では、患者サンプルは変異型JAK2核酸を含有しないか、もしくは野生型JAK2核酸と比較して最小限の比率の変異型JAK2核酸を含有するか、または、サンプルは野生型JAK2核酸を含有しないか、もしくは変異型JAK2核酸と比較して最小限の野生型JAK2核酸を含有してもよい。ある場合には、変異状態はJAK2のヘミ接合またはホモ接合変異体である。臨床転帰は死亡であってもよい。ある態様では、変異状態を他の臨床パラメータと併せて、個体の臨床転帰を判定する。例えば他の臨床パラメータは個体の年齢または芽細胞数のパーセントであってもよい。
【0018】
“腫瘍性疾患”という用語は腫瘍のような新細胞の異常増殖を特徴とする症状を指す。新生物には固形腫瘍および非固形腫瘍、例えばカルシノーマ、肉腫、白血病などがある。腫瘍性疾患は悪性または良性のいずれであってもよい。
【0019】
“骨髄増殖性疾患”または“骨髄増殖性傷害”という用語は、造血幹細胞またはその子孫から生じる非リンパ球異形性または腫瘍性症状を含むことを意図する。“MPD患者"はMPDであると診断された患者を含む。“骨髄増殖性疾患”は特定の分類型の骨髄増殖性疾患(例えば真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)、および特発性骨髄線維症(IMF))を含むことを意図する。定義には好酸球増加症候群(HES)、慢性好中球性白血病(CNL)、骨髄様化生を合併する骨髄硬化(MMM)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病、慢性好塩基球性白血病、慢性好酸球性白血病、および全身性肥満細胞症(SM)も含まれる。“骨髄増殖性疾患”は分類不能型骨髄増殖性疾患(UMPDまたはMPD-NC)も含むことを意図する。
【0020】
本明細書で使用する“患者”という用語は医学的ケア、配慮、または治療を受ける者を指す。本明細書で使用する用語は、骨髄増殖性疾患のような疾患を診断された人、並びに疾患の症状を示しているかもしれないが未診断である人が含まれる。
【0021】
“サンプル”または“患者サンプル”は組織および体液のような生体サンプルを含むことを意図する。“体液”の非限定的な例として血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、胸膜液、涙、乳管液(lactal duct fluid)、リンパ液、喀痰、および精液がある。サンプルは“無細胞”の体液を含んでもよい。“無細胞体液”は全細胞物質の含有量が約1%(w/w)未満である。血漿または血清は無細胞体液の例である。サンプルには天然または合成起源の標本が含まれてもよい。
【0022】
本明細書で使用する“血漿”とは、血液中に含まれる無細胞液を指す。“血漿”は当該分野で公知の方法(例えば遠心分離、ろ過など)によって血液から全細胞物質を除去することによって得ることができる。本明細書で使用する“末梢血血漿”とは、末梢血サンプル由来の血漿を指す。
【0023】
本明細書で使用する“血清”とは、血漿または血液を凝固させ、凝固画分を除去した後に得られる血漿画分を含む。
【0024】
“核酸”または“核酸配列”という用語は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはポリヌクレオチド、およびそれらのフラグメントまたは部分を指し、これらは1本鎖または2本鎖であってもよく、センスまたはアンチセンス鎖であってもよい。核酸はDNAまたはRNAであってもよく、天然または合成起源のものであってもよい。例えば核酸はmRNAまたはcDNAであってもよい。核酸は(例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて)増幅された核酸であってもよい。
【0025】
“核酸供与源”という用語は、核酸(RNAまたはDNA)を含有する任意のサンプルを指す。標的核酸の特に好ましい供与源は生体サンプルであり、それらには、非限定的な例として血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳汁、リンパ液、喀痰、および精液がある。
【0026】
"アミノ酸配列"とはポリペプチドまたはタンパク質配列を指す。慣例法である“AAwt###AAmut”を用いて、ポリペプチドの###位にある野生型アミノ酸AAwtが変異型アミノ酸AAmutで置換されることによって生じる変異体を表す。
【0027】
“遺伝子"とは、RNA(非コード機能を有するRNA(例えばリボソームRNAまたは転移RNA)であるか、またはポリペプチドもしくはポリペプチド前駆体であってもよい)の生成に必要な制御配列およびコード配列を含むDNA配列を指す。RNAまたはポリペプチドは完全長コード配列にコードされるものであるか、または、所望の活性もしくは機能が保持される場合にはコード配列の一部にコードされるものであってもよい。
【0028】
“野生型”とは、遺伝子または遺伝子産物であって、天然に存在する供与源から単離された時のその遺伝子または遺伝子産物の特性を有するものを指す。野生型遺伝子は集団において最も高頻度で観察されるものであり、そのため適宜に遺伝子の“正常型”または“野生型”を指す。また“野生型”は、特定のヌクレオチド位置(単数または複数)における配列、または特定のコドン位置(単数または複数)における配列、または特定のアミノ酸位置(単数または複数)における配列も指す。例えば遺伝子はヌクレオチド位置1849またはコドン位置617において“野生型”であってもよい。本明細書で使用する“変異型”、“改変型”、または“多型”とは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して配列および/または機能性が改変された(すなわち特性が変化した)遺伝子または遺伝子産物を指す。また、“変異型”、“改変型”、または“多型”は特定のヌクレオチド位置(単数または複数)における配列、または特定のコドン位置(単数または複数)における配列、または特定のアミノ酸位置(単数または複数)における配列も指す。
【0029】
"変異"とは、核酸配列中に、正常型配列または野生型配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチドの変化を含むことを意味する。変異には置換、欠失、逆位、または挿入がある。コードされたポリペプチドに関して、変異は“サイレント”であってコードされたポリペプチド配列に変化をもたらさなくてもよく、または変異によってコードされたポリペプチド配列に変化が生じてもよい。例えば変異によって、コードされたポリペプチドに置換が起こってもよい。変異によって、コードされたポリペプチド配列にフレームシフトが起こってもよい。
【0030】
本明細書で使用する“コドン"という用語は、タンパク質合成の際にポリペプチド鎖に挿入される特定のアミノ酸を決定する遺伝子コードまたはタンパク質合成を停止させるシグナルを構成する、3つの隣接するヌクレオチドの配列(RNAまたはDNA)を指す。また、“コドン"という用語は、メッセンジャーRNA(これに元のDNAが転写される)中の3つのヌクレオチドの対応する(そして相補的な)配列を指すのにも用いられる。
【0031】
“相同性”または“相同な”という用語は、同一性の程度を指す。部分的相同性および完全相同性がある。部分的に相同な配列は、別の配列と比較して100%未満の同一性を有するものである。
【0032】
“ヘテロ接合性”とは、相同な染色体セグメント中の1つまたはそれ以上の遺伝子座において異なる対立遺伝子を有することをいう。本明細書で使用する“ヘテロ接合性”とは、1つまたはそれ以上の遺伝子座において異なる対立遺伝子が検出されるサンプル、細胞、細胞集団、または生物も指す。ヘテロ接合サンプルは、例えば核酸シーケンシングのような、当該分野で公知の方法によって測定することができる。例えば、シーケンシング電気泳動図が1つの遺伝子座に2つのピークを示し、両ピークがほぼ同じサイズであれば、サンプルはヘテロ接合性であるとみなされる。あるいは、一方のピークが他方より小さいが、より大きい方のピークのサイズの少なくとも約25%であれば、サンプルはヘテロ接合性であるとみなされる。ある態様では、より小さい方のピークはより大きい方のピークの少なくとも約15%である。他の態様では、より小さい方のピークはより大きい方のピークの少なくとも約10%である。他の態様では、より小さい方のピークはより大きい方のピークの少なくとも約5%である。他の態様では、より小さい方のピークは最少量で検出される。
【0033】
“ホモ接合性”とは、相同な染色体セグメント中の1つまたはそれ以上の遺伝子座において同一の対立遺伝子を有することをいう。“ホモ接合性”とは、1つまたはそれ以上の遺伝子座において同一の対立遺伝子が検出されるサンプル、細胞、細胞集団、または生物も指す。ホモ接合体サンプルは、例えば核酸シーケンシングのような、当該分野で公知の方法によって測定することができる。例えば、シーケンシング電気泳動図が特定の遺伝子座に単一のピークを示せば、サンプルはその遺伝子座に関して“ホモ接合性”であるとみなされる。
【0034】
“ヘミ接合性”という用語は、第2の対立遺伝子が欠失しているために、細胞または生物の遺伝子型に一度しか存在しない遺伝子または遺伝子セグメントを指す。本明細書で使用する“ヘミ接合性”とは、1つまたはそれ以上の遺伝子座での対立遺伝子が遺伝子型において一度しか検出されないサンプル、細胞、細胞集団、または生物も指す。
【0035】
本明細書で使用する“接合状態”という用語は、サンプル、細胞集団、または生物が当該分野で公知の試験方法および本明細書に記載する試験方法による測定でヘテロ接合性、ホモ接合性、またはヘミ接合性であると考えられることをいう。“核酸の接合状態”という用語は核酸の供与源がヘテロ接合性、ホモ接合性、またはヘミ接合性のいずれであると考えられるかを判定することを意味する。“接合状態“は配列中の1つのヌクレオチドの相違も指す。ある方法では、1つの変異に関するサンプルの接合状態をホモ接合野生型、ヘテロ接合(すなわち野生型対立遺伝子1つと変異型対立遺伝子1つ)、ホモ接合変異型、またはヘミ接合(すなわち1コピーの野生型または変異型対立遺伝子)に分類してもよい。臨床検査で慣例的に行われる血漿または細胞サンプルの直接シーケンシングでは信頼性のあるヘミ接合体およびホモ接合体の識別は為されないため、ある態様では、これらの種類をグループ化する。例えば野生型核酸が検出されないか、または最少量で検出されるサンプルを“ヘミ接合/ホモ接合変異体”と称する。好ましい態様では、“最少量”とは約1-2%である。他の態様では、最少量は約1-3%である。更に別の態様では、“最少量”は1%未満である。
【0036】
“実質的に全ての”という用語は約60-100%、より好ましくは約70-100%;より好ましくは約80-100%、より好ましくは約90-100%、そして更に好ましくは約95-100%を意味する。
【0037】
標的核酸に特異的なオリゴヌクレオチド(例えばプローブまたはプライマー)は、好適な条件下で標的核酸に“ハイブリダイズする”。本明細書で使用する“ハイブリダイゼーション”または“ハイブリダイズする”とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で1本鎖オリゴヌクレオチドが塩基対形成によって相補鎖とアニールする過程を指す。
【0038】
“特異的ハイブリダイゼーション”は、2つの核酸配列が高度の相補性を共有することを示す。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニール条件下で形成され、その後の洗浄段階後もハイブリダイズしたままである。当業者は核酸配列のアニールの許容条件を慣例的に決定することができ、これは例えば約6xSSCの存在中65℃である。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、一部には、洗浄段階が実施される温度で表してもよい。それらの温度は一般に、所定のイオン強度およびpHでの特定の配列の融解温度(Tm)より約5℃から20℃低くなるように選択する。Tmは、(所定のイオン強度およびpHにおいて)50%の標的配列が完全にマッチするプローブにハイブリダイズする温度である。Tmの計算式および核酸のハイブリダイゼーション条件は当該分野で公知である。
【0039】
標的核酸を特異的に増幅する(すなわち特定の標的核酸配列を増幅する)または特異的に検出する(すなわち特定の標的核酸配列を検出する)ためのプライマーまたはプローブとして使用するオリゴヌクレオチドは、一般に、標的核酸に特異的にハイブリダイズする能力を有する。
【0040】
検出されるJAK2核酸が完全長JAK2核酸配列のフラグメントまたは部分である場合、フラグメントまたは部分は偽キナーゼドメインの少なくとも約60%を含む;好ましくは、フラグメントまたは部分は偽キナーゼドメインの約70%を含む;より好ましくは、フラグメントまたは部分は偽キナーゼドメインの約80%、好ましくは偽キナーゼドメインの約90-95%を含む。JAK2核酸はキナーゼ活性(すなわちチロシンキナーゼ活性)を有するポリペプチドをコードするか、またはキナーゼ活性を有さないポリペプチドを含んでもよい。
【0041】
JAK2核酸配列に関して、“変異”とは、参照配列であるGenBankアクセッション番号NM004972(SEQ ID NO:1、図1)またはSEQ ID NO:2(図2)と比較して少なくとも1つの核酸変異を含むJAK2核酸配列を意味する。変異には置換、欠失、または挿入がある。JAK2核酸の変異によってコードされたポリペプチド配列が変更されてもよく、または変異はコードされたポリペプチド配列に関してサイレントであってもよい。ポリペプチド配列の変化をもらたすJAK2変異の非限定的な例としてV617Fがある。アミノ酸配列の変化の測定は、参照アミノ酸配列SEQ ID NO:3(図3)と比較して行ってもよい。
【0042】
JAK2変異における1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定に関連する“との相対によって測定する”という用語は、“と比較して”という用語と同義である。
【0043】
核酸における“1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定”は核酸の検出も含む。例えばJAK2の変異の存在または非存在の測定において、JAK2核酸の検出も行われる。1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在の測定方法には当該分野で公知の種々の方法、例えば1つまたはそれ以上の、JAK2 RNAのcDNAへの逆転写、JAK2核酸の増幅、JAK2核酸へのプローブまたはプライマーのハイブリダイゼーション、およびJAK2核酸のシーケンシングを含んでもよい。
【0044】
“オリゴヌクレオチド”という用語は、主に所定の間隔で配列された同一の単量体ユニットから成るバックボーン上に塩基の配列を有する分子であると理解される。塩基は、そのオリゴヌクレオチド塩基に相補的な塩基配列を有する核酸との結合に入り込めるような形態でバックボーン上に配列されている。最も一般的なオリゴヌクレオチドは糖リン酸ユニットのバックボーンを有する。2'位に水酸基を有さないオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびこの位置に水酸基を有するオリゴリボヌクレオチドを区別してもよい。オリゴヌクレオチドには、水酸基の水素が有機基(例えばアリル基)で置換された誘導体も含まれる。プライマーまたはプローブとして機能するこの方法のオリゴヌクレオチドは、一般に少なくとも約10-15ヌクレオチド長、より好ましくは約15-25ヌクレオチド長であるが、より短い、またはより長いオリゴヌクレオチドを方法に使用してもよい。正確なサイズは多くの因子に依存し、これはオリゴヌクレオチドの根本的な機能または用途に依存する。オリゴヌクレオチドの生成は任意の方法、例えば化学合成、DNA複製、逆転写、PCR、またはそれらの組み合わせによって行ってもよい。オリゴヌクレオチドを改変してもよい。例えば、検出可能なシグナルを生成する物質(例えばフルオロフォア)でオリゴヌクレオチドを標識してもよい。
【0045】
“プライマー”とは、プライマー伸長(例えばPCRのようなアプリケーションに伴うプライマーの伸長)が開始される条件下に配した時、合成の開始点として作用する能力のあるオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチド“プライマー”は精製した制限酵素消化物のように天然に存在するものであってもよいし、合成してもよい。
【0046】
“プローブ“とは、ハイブリダイゼーションを介して標的核酸と相互作用するオリゴヌクレオチドを指す。プローブは標的核酸配列と完全に相補的であるか、または部分的に相補的であってもよい。相補性のレベルは、一般にプローブの機能に基づく多くの因子に依存する。プローブ(単数または複数)を使用して、例えば標的の配列特性の効果によって核酸配列中の変異の存在または非存在を検出することができる。プローブは標識されているか、未標識であるか、または当該分野で公知の多くの方法のいずれかで修飾してもよい。プローブは標的核酸に特異的にハイブリダイズしてもよい。
【0047】
“標的核酸”は、プローブ・オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー・オリゴヌクレオチドと少なくとも部分的に相補的である配列を含有する核酸分子を指す。プローブは標的核酸に特異的にハイブリダイズしてもよい。
【0048】
JAK2に関連して本明細書で使用する“活性化ドメイン”という用語は、一般に細胞の活性化に関与するドメインを指す。活性化ドメインの例はキナーゼまたは偽キナーゼドメインである。
【0049】
本明細書で使用する“偽キナーゼドメイン”とは、ポリペプチドの一部またはポリペプチドの一部をコードする核酸であって、その部分が機能性キナーゼと相同性を示すが触媒活性を有さないものを指す。偽キナーゼドメインは“キナーゼ様ドメイン”とも称される。偽キナーゼドメインの一例はJAK2偽キナーゼドメイン(別名JH2ドメイン。SEQ ID NO:2、図2)である。
【0050】
“キナーゼドメイン”という用語は、ポリペプチドの一部またはポリペプチドの一部をコードする核酸であって、その部分がポリペプチドのキナーゼ活性(例えばチロシンキナーゼ活性)に必要であるものを指す。
【0051】
本発明のある方法では、変異は“JAK2キナーゼ活性に影響を与えてもよい”。JAK2キナーゼ活性への影響には、キナーゼ活性が上昇する、低下する、構成的になる、完全に停止する、またはより多くの、より少ない、もしくは異なる標的に影響を与えることがある。キナーゼ活性に影響を与える変異はキナーゼドメインまたはキナーゼドメインに関係するドメイン(例えばJAK2偽キナーゼドメイン)中に存在してもよい。
【0052】
本明細書で使用する“阻害剤”という用語は、好適に投与すると反応または活性を低下、抑制的に調節、または阻害する物質、分子、または薬剤を指す。
【0053】
“増幅”または“増幅する”という用語は、更なる核酸配列コピーの生成を指す。増幅は一般に当該分野で公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行う。“増幅反応系”という用語は、インビトロにおいて標的核酸配列のコピーを増加させる方法を指す。“増幅反応混合液”という用語は、標的核酸の増幅に使用する種々の試薬を含有する水溶液を指す。これらには酵素(例えば熱安定性ポリメラーゼ)、緩衝液、塩、増幅プライマー、標的核酸、およびヌクレオチド3リン酸があり、必要により少なくとも1つの標識したプローブおよび/または必要により増幅された標的核酸の融解温度を測定するための少なくとも1つの試薬(例えば、2本鎖核酸の存在下で蛍光の変化を示す蛍光インターカレート物質)が含まれる。
【0054】
本明細書で使用する“含む”という用語は、含有すると同じ意味である。
【0055】
本明細書で使用する“約”とは、定量的な用語でプラス/マイナス10%を意味する。
【0056】
本明細書で使用する“治療”または“治療する”という用語は、疾患または外傷を緩和することを意図する手段または適用によるケアを指す。疾病または疾患(例えば骨髄増殖性疾患)の治療によって疾病が改善されることが好ましいが、本明細書で使用する治療という用語は、手段または適用によって特定の疾病に伴う症状が必ずしも寛解されることを示唆、含意、または必要としない。患者の治療によって、有害な副作用が起こるか、または治療による改善を意図した疾病が悪化することさえありうる。
【0057】
本明細書で使用する“診断する”または“診断”という用語は、疾患、症候群、もしくは疾病の鑑別もしくは同定、または特定の疾患、症候群、もしくは疾病を有する人の鑑別もしくは同定をいう。
【0058】
“アッセイ”という用語は、定性的または定量的な分析または試験を意味する。
【0059】
本明細書で使用する“比率”という用語は、2つの類似のものの間の程度または数的関係を示す。例えばサンプル中の変異型および野生型核酸の相対量を、野生型と変異型核酸との比率で表してもよい。
【0060】
本明細書において、ポリヌクレオチドの配列の確認などで使用する“シーケンシング”という用語は、複数の塩基位置における塩基の同一性を確認する、または1つの位置における塩基の同一性を確認する方法を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
発明の詳細な説明
多くの骨髄増殖性疾患(“MPD”)に関与する特定の遺伝子および付随する変異(単数または複数)は知られていない。しかしながら、細胞質に存在する非受容体型チロシンキナーゼであるヤヌスキナーゼ2(JAK2)遺伝子の変異が多くのMPDで同定されている。例えばこの変異はPV患者の97%、ETまたはIMF患者の40%以上で報告されている。例えば以下参照:Baxterら,Lancet 365:1054-1060(2005);Jamesら,Nature 438:1144-1148(2005);Zhaoら,J. Biol. Chem. 280(24):22788-22792(2005);Levineら,Cancer Cell,7:387-397(2005);Kralovicsら,New Eng. J. Med. 352(17):1779-1790(2005)。
【0062】
ヤヌスキナーゼはサイトカイン・シグナリングに関与するチロシンキナーゼ・ファミリーである。例えばJAK2キナーゼは膜結合型サイトカイン受容体(例えばエリスロポエチン受容体(EpoR))およびシグナル伝達経路の下流要素(例えばSTAT5(シグナル伝達・転写活性化因子5;Signal Transducers and Activators of Transcription protein 5))間の介在物質として作用する。例えば以下参照:TefferiおよびGilliland,Mayo Clin. Proc. 80:947-958(2005);GiordanettoおよびKroemer,Protein Engineering,15(9):727-737(2002)。サイトカイン受容体/リガンド複合体がそれに結合するJAK2キナーゼをリン酸化すると、JAK2が活性化される(同文献)。その後JAK2はその基質分子(例えばSTAT5)をリン酸化および活性化し、これが核に入り、他の調節タンパク質と相互作用して転写に作用を及ぼす(同文献)。
【0063】
JAK2変異体では、617番アミノ酸のバリン(“GTC”コドン)がフェニルアラニン(“TTC”コドン)で置換されている(“V617F変異体”)。Baxterら,Lancet 365:1054-1060(2005)。617番アミノ酸は第12エクソンに位置するが、そこには偽キナーゼ (JH2(Jakホモロジー2ドメイン)と呼ばれる自己阻害(または負調節)ドメイン)が含まれる(同文献;Jamesら,Nature 438:1144-1148(2005))。このドメインはキナーゼ活性を有さないが、キナーゼ活性を有するJH1(Jakホモロジー1)ドメインと相互作用すると考えられている。Baxterら, Lancet 365:1054-1060 (2005)。野生型タンパク質において2つのドメインが好適に接触することによって適切なキナーゼ活性および調節が行われる;しかし、V617F変異によって2つのドメインの接触は不適切となり、その結果、変異型JAK2タンパク質では構成的キナーゼ活性がもたらされる。同文献。
【0064】
JAK2 V617F変異の存在は疾患の指標となりうる。更に、本発明の方法を用いて、JAK2 V617F変異の接合状態によって一定の患者集団に関して疾患の進行および患者の余命に関する予後診断を行うことができることを示す(下記)。また、患者サンプル中の変異型と野生型核酸との比率を用いて疾患の進行および治療効果などの実態をモニタリングしてもよい。
【0065】
サンプルの接合状態および野生型/変異型核酸の比率は当該分野で公知の方法(例えば配列特異的定量検出法)によって測定することができる。他の方法は、標準的なシーケンシング電気泳動図(例えばABIシーケンシング・システム(Applied Biosystems,Foster City,CA)から作製されるもの)から得られるシーケンシング・ピークの曲線下面積の測定を伴う。例えば電気泳動図上で特定のヌクレオチドを示す位置においてシングル・ピーク(例えば“G”)だけが存在する場合、これはサンプル中の核酸がその位置では単一のヌクレオチド、“G”だけを含有することを示す。その後、1つの対立遺伝子しか検出されないので、サンプルをホモ接合と分類することができる。電気泳動図上の同じ位置に2つのピーク、例えば“G"および“T"のピークが存在すれば、これはサンプルが2種の核酸を含有することを示す;すなわち、1つの種は当該のヌクレオチド位置に“G”を有し、他方は当該のヌクレオチド位置に“T”を有する。その後、1つより多い対立遺伝子が検出されるので、サンプルをヘテロ接合と分類することができる。
【0066】
2つのピークのサイズの測定を(例えばそれぞれの曲線下面積を測定することによって)行い、2つの異なる核酸種の比率を算出してもよい。野生型核酸と変異型核酸との比率を用いて疾患の進行のモニタリング、治療の決定、または診断を行うことができる。例えばJAK2 V617F変異を有する癌性細胞の数はMPDの経過に伴って変化しうる。ベースラインとなる比率を疾患の早期に確立し、後の測定で変異型核酸と野生型核酸の比がより高ければ、疾患が悪化しているか、または治療が無効であることを示している;すなわち、患者における変異を有する細胞の数が増加している可能性がある。変異型核酸と野生型核酸の比がより低ければ、治療が有効である、または疾患が進行していない;すなわち、患者における変異を有する細胞の数が減少している可能性がある。
【0067】
サンプル
本発明の方法は、種々のタイプの患者サンプルを用いて実施することができる。好ましい態様では、無細胞体液、例えば血漿または血清を使用する。血漿からのJAK2変異の検出は、血液または骨髄細胞からのJAK2変異の検出と少なくとも同程度、またはそれ以上の感度を有することが判明している。骨髄増殖性疾患患者30人由来の血漿および末梢血細胞の同時分析により、細胞におけるV617F変異が陽性であるサンプルは全て、血漿においてもこの変異が陽性であることが判明した。しかしながら、変異遺伝子座におけるヘミ接合性/ホモ接合性は血漿由来の配列でより明白であり、同じ患者の細胞では変異型および野生型配列の両方を示した。ヘテロ接合血漿サンプルでは(シーケンシング反応において)野生型(“G”)および変異型(“T”)ピークは同じ強度で示されるが、細胞サンプルでは変異型“T”ピークがより顕著であった。これは、本質的に細胞を含有しない血漿では腫瘍特異的核酸の濃度が高く、悪性および非悪性細胞集団の両方を含有する細胞サンプルではホモ接合およびヘミ接合細胞集団に関する情報がわずかしか得られないことを示唆している。従って、おそらくJAK2 V617F変異のクローン特性により、血漿サンプルからの変異の検出は細胞性サンプルを用いる検出法より優れていると考えられる。
【0068】
診断
以下の測定結果の1つまたはそれ以上を用いて患者を診断することができる:JAK2 V617F変異の存在または非存在の測定、サンプルの接合状態の測定、およびサンプル中の変異型と野生型JAK2核酸との比率の測定。例えば本発明の方法によってJAK2 V617F変異を保有することが確認された患者はMPD診断を確かにするための更なる試験が推奨されるかもしれず、または変異の検出を使用して、予備的に診断されたMPDの最終的な確認を行ってもよい(例えば患者がMPDの症状を示し、V617F変異の試験が陽性であれば、患者は最終的にMPD(例えばPV)であると診断される)。同様に、本発明の方法を使用してMPDの症状を示さない患者、例えばMPDのごく初期段階にある患者の診断を行ってもよい。また、治療中のMPD患者においてJAK2変異を検出してもよい;変異型と野生型JAK2核酸との比率またはサンプルの接合状態が治療中に変化すれば、別の診断が下されうる。
【0069】
治療
以下の測定結果の1つまたはそれ以上を用いて患者を治療することができる:JAK2 V617F変異の存在または非存在の測定、サンプルの接合状態の測定、およびサンプル中の変異型と野生型JAK2核酸との比率の測定。医師または治療実施者は1つまたはそれ以上の測定結果に基づいて治療または治療計画を実施する、見合わせる、または変更することができる。例えば、医師はJAK2変異タンパク質に対する特異的キナーゼ阻害剤を投与してもよく、これによって構成的キナーゼ活性が停止または減衰しうる。患者サンプル中に変異が存在する場合にこの治療を行う。逆に、変異が存在しなければ医師はそれらの治療を見合わせてもよい。
【0070】
更に、1つまたはそれ以上の測定結果は、患者の予後診断およびクオリティー・オブ・ライフの決断の助けとなりうる。例えば化学療法のような痛みと衰弱を伴う治療を継続するか否か、またはどのくらいの期間継続するかの決断を行いうる。
【0071】
更に、変異を有する癌性細胞の数はMPDの経過に伴って変化しうるものであり、JAK2変異の比率、接合状態、または存在もしくは非存在のモニタリングによって疾病状態または治療の有効性が明らかになりうる。例えば治療によって変異型癌性細胞数が低下するか、または、時間と共に疾患が悪化し、罹患細胞数が増加するかもしれない。従って、患者サンプルの接合状態および野生型/変異型核酸の比率の変化に基づいて治療を実施する、変更する、または見合わせることができる。
【0072】
方法
患者サンプルの回収および処理、核酸の単離または精製、そしてJAK2 V617F変異の存在または非存在の測定のための多くの方法が知られている。態様の一例として、サンプル調製から検出までを以下に記載する。しかしながら、理解されるように、当業者は記載する種々の個別の方法の段階を好適に選択し、組み合わせ、利用することができる。
【0073】
NucliSens抽出キット(Biomerieux,Marcy l'Etoile,フランス)を用いて患者の血漿または末梢血細胞から総核酸を抽出することができる。他の方法では、MagNA Pure LC mRNA HSキットおよびMag NA Pure LC装置(Roche Diagnostics社,Roche Applied Science,Indianapolis,IN)を用いて患者血液/骨髄サンプルからmRNAを抽出してもよい。次に、総核酸標本またはRNA標本を用いてRT-PCR反応を実施し、患者RNAの一部を特異的に増幅する。ワンステップRT-PCRシステムの一例はSuperscript III System(Invitrogen,Carlsbad,CA)である。RT-PCR反応の他の方法およびシステムは当該分野で公知であり、市販もされている。プライマー対を、目的の領域、例えばJAK2核酸のV617F変異を包含するように設計し、PCR産物を生成させる。非限定的な例として、JAK2のプライマー対は5'-GAC TAC GGT CAA CTG CAT GAA A-3'および5'-CCA TGC CAA CTG TTT AGC AA-3'(SEQ ID NO:5および6)であってもよい。得られるRT-PCR産物は273ヌクレオチド長である。次いで、RT-PCR産物を(例えばゲル精製によって)精製し、得られる精製産物のシーケンシングを行う。核酸のシーケンシング法は当該分野で公知である;シーケンシング法の一例としてABI Prism BIgDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Foster City,CA)がある。その後、JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在に関する分析を行ってもよい。シーケンシング結果を分析し、サンプル中に存在する野生型と変異型核酸との比率を測定する。
【0074】
血漿または血清の調製法
血漿および血清の調製法は当該分野で公知である。“フレッシュ”の血漿もしくは血清、または凍結(保存)/解凍した血漿もしくは血清のいずれを使用してもよい。凍結(保存)した血漿または血清は解凍および使用まで-20から-70℃の保存条件に保持すべきである。“フレッシュ"の血漿または血清は使用まで冷蔵または氷上に配し、できるだけ速やかに核酸(例えばRNA、DNA、または総核酸)の抽出を行う。方法の例を以下に記載する。
【0075】
血液は標準的な方法によって採取管(好ましくはシリコン処理したガラス)に採取してもよく、この採取管には血清調製の場合は抗凝固剤を含有させず、血漿調製の場合はEDTA、クエン酸ナトリウム、ヘパリン、もしくは同様の抗凝固剤を含有させる。保存のための血漿または血清を調製する場合、好ましい方法は、必須ではないが、まず血漿または血清を全血から分画してから凍結させる。これによって、凍結および解凍された細胞の分解物から放出される外来性の細胞内RNA(増幅アッセイの感度を低下させるか、またはポルフィリンおよびヘマチンのようなPCR阻害剤の放出によって増幅アッセイに干渉しうる)による不都合が低減される。遠心分離(好ましくは300-800倍重力で5-10分間の穏やかな遠心分離)によって“フレッシュ”の血漿または血清を全血から分画するか、または他の方法で分画してもよい。アポトーシス小体が分離・除去されるような高速の遠心分離は回避すべきである。ヘパリンはRT-PCRに干渉しうるため、ヘパリンを添加した血液はヘパリナーゼ処理をし、カルシウムを除去してから逆転写を行う必要がありうる。Imai,H.ら,J.Virol.Methods 36:181-184(1992)。従って、EDTAはPCR増幅が企図される血液標本に好適な抗凝固剤である。
【0076】
細胞および無細胞体液からの核酸抽出
総核酸、DNA、およびRNAを血液、血清、血漿、および骨髄、または他の造血組織から単離するための多くの方法が当該分野で知られている。
【0077】
実際、多くのプロトコールが報告され、また、キットおよびシステムが販売されている。非限定的な例として、それらのキット、システム、および報告されたプロトコールの例を以下に記載する。市販のキットには以下がある:Qiagen社製品、例えばQiaAmp DNA Blood MiniKit(カタログ番号51104,Qiagen,Valencia,CA)、QiaAmp RNA Blood MiniKit(カタログ番号52304,Qiagen,Valencia,CA);Promega社製品、例えばWizard Genomic DNA Kit(カタログ番号A1620,Promega社,Madison,WI)、Wizard SV Genomic DNA Kit(カタログ番号A2360,Promega社,Madison,WI)、SV Total RNA Kit(カタログ番号X3100,Promega社,Madison,WI)、PolyATract System(カタログ番号Z5420,Promega社,Madison,WI)、またはPurYield RNA System(カタログ番号Z3740, Promega社,Madison,WI)。
【0078】
他の方法には以下がある。全血サンプルまたは骨髄サンプルをACDまたはEDTA抗凝固剤中に採取するか、または凍結血漿サンプルを使用してもよい。血液は室温または冷蔵で保存してもよい。血漿は凍結保存してもよい。bioMerieux NucliSens miniMAGまたはEasy MAG Nucliec Acid Purification System(bioMerieux SA,Marcy l'Etoile,フランス)またはそれと同等のものを使用して総核酸を血漿サンプルから抽出してもよい。あるいはまた、MagNA Pure LC mRNA HS KitおよびMagNA Pure LC Instrument(Roche Diagnostics,Roche Molecular Systems社,Alameda,CA)またはそれと同等のものを使用してmRNAを血液/骨髄サンプルから抽出してもよい。
【0079】
Kantarjian,H.ら,Clin.Cancer Res.9:160-6(2003)に報告されている別の代表的な方法を以下に記載する。塩化アンモニウムバッファー処理を2サイクル行って、10-20mlの末梢血または1-3mlの骨髄から患者白血球を単離する。Trizol(Life Technologies社)を用いて、約1x106から1x107の白血球または骨髄単核球から総RNAを抽出する。例えば分光光度法(Beckman DU640B;Palo Alto,CA)によって、RNA濃度を測定した後、Cross,N.C.ら,Blood 82:1929-36,(1993)によって報告されている方法または当該分野で公知の方法(それらの一部を以下に記載する)を用いて、RNAをcDNAに転写させる。
【0080】
血漿または血清からのRNAの抽出
体液(例えば血漿または血清)からRNAを抽出するための多くの方法は当該分野で公知であり、任意の好適な方法を使用することができる。前述の哺乳類RNAまたはウィルスRNAの抽出のための方法、キット、またはシステムを、報告されているように、あるいは改変して、血漿または血清からの腫瘍誘導RNAまたは腫瘍関連RNAの抽出に適合させてもよい。例えば、Roche MagNA Pure RNA抽出システムおよび方法(Roche Diagnostics,Roche Molecular Systems社,Alameda,CA)を用いてもよい。または米国特許第6,916,634号に記載される方法を用いてもよい。更なるRNA抽出の例を以下に記載する。
【0081】
抽出に使用する血漿または血清の量は医療の目的によって異なるが、100μlから1mlの容量の血漿または血清で十分であるが、最低限または前癌状態の疾患ではより多くの容量が必要とされる。
【0082】
ガラスビーズ、シリカ粒子、またはケイ藻抽出
Boom, R.ら,J.Clin.Micro.28:495-503(1990)の方法に従って、またはそれを改変して、シリカ粒子、ガラスビーズ、またはケイ藻を用いてRNAを血漿または血清から抽出することができる。Cheung,R.C.ら,J Clin Micro.32:2593-2597(1994)によって改変された方法の適用について記載する。
【0083】
サイズ分画シリカ粒子を調製するために、60gの二酸化ケイ素(SiO2,Sigma Chemical社,St.Louis,Mo)を500mlの脱塩無菌再蒸留水に懸濁する。次いで、懸濁液を室温で24時間放置する。上清430mlを吸引除去し、脱塩無菌再蒸留水を500mlとなるまで添加して粒子を再懸濁する。更に5時間放置した後、上清440mlを吸引除去し、600μlのHCl(32% w/v)を添加して懸濁液をpH2に調整する。懸濁液をアリコートに分け、暗所で保存する。
【0084】
リシスバッファーを調製するために、120gのチオシアン酸グアニジン(GuSCN,Fluka Chemical,Buchs,スイス)を100mlの0.1Mトリス塩酸(Tris-HCl)(pH6.4)、22mlの0.2M EDTA(NaOHでpH8.0に調整)、および2.6gのTriton X-100(Packard Instrument社,Downers Grove,Ill.)に溶解する。その後溶液をホモジナイズする。
【0085】
洗浄バッファーの調製は、120gのチオシアン酸グアニジン(GuSCN)を100mlの0.1M Tris-HCl(pH6.4)に溶解して行う。
【0086】
100μlから250μl(最小限の疾患である場合は、より多くの量が必要とされる)の血漿または血清をシリカ懸濁液(上記で調製)40μlおよび900μlのリシスバッファー(上記で調製)と、Eppendorf5432攪拌機を用いて室温で10分間混合する。次いで混合液を12,000xgで遠心分離し、上清を吸引除去する。シリカ-RNAペレットを450μlの洗浄バッファー(上記で調製)で2回洗浄する。ペレットを1mlの70%(v/v)エタノールで2回洗浄する。1mlのアセトンでペレットの最終洗浄を行い、56℃のヒートブロック上で10分間乾燥する。ペレットを20から50μlのジエチルピロカーボネート処理した水に再懸濁し、56℃で10分間、RNAを溶出する。あるいはサンプルの溶出は、Boom,R.ら,J.Clin.Micro.29:1804-1811(1991)に報告されているように、10mM Tris-HCl、1mM EDTA(pH8.0)から成るTEバッファー(RNase阻害剤(RNAsin,0.5U/μl,Promega)含有。プロテイナーゼK(100ng/ml)含有または未含有)を用いて56℃で10分間行ってもよい。溶出後、サンプルを12,000xgで3分間遠心分離し、RNAを含有する上清を回収する。
【0087】
酸性グアニジンチオシアネート/フェノール/クロロホルム抽出
別法として、Chomczynski,P.およびSacchi, N.,Analytical Biochemistry 162:156-159,(1987)に報告されている酸性グアニジンチオシアネート/フェノール/クロロホルム抽出法を用いて,以下のように血漿または血清からRNAを抽出してもよい。
【0088】
変性溶液は4Mグアニジンチオシアネート、25mMクエン酸ナトリウム、pH7.0、0.5%サルコシル、および0.1M 2-メルカプトエタノールから成る。変性溶液は以下のように調製する:ストック溶液は、250gのグアニジンチオシアネート(GuSCN,Fluka Chemical)を293mlの脱塩無菌再蒸留水、17.6mlの0.75Mクエン酸ナトリウム、pH7.0、および26.4mlの10%サルコシルに65℃で溶解して調製する。0.36ml 2-メルカプトエタノール/50mlストック溶液を添加して変性溶液を調製する。
【0089】
100μlから1mlの体液を変性溶液1mlと混合する。次いで2M酢酸ナトリウム(pH4.0)0.1ml、フェノール1ml、およびクロロホルム/イソアミルアルコール(49:1)0.2mlを添加する(それぞれの試薬の添加後には撹拌を行う)。得られた混合液を10秒間激しく撹拌し、氷上で15分間冷却し、その後10,000xg、4℃で20分間、遠心分離する。水相を清浄な試験管に移し、1mlのイソプロパノールと混合する。混合液を-20℃で1-2時間冷却し、RNAを沈殿させる。10,000xgで20分間遠心分離した後、得られたRNAペレットを変性溶液0.3mlに溶解し、1容量のイソプロパノールで、-20℃で1時間再沈殿させる。10,000xg、4℃で10分間、更に遠心分離した後、75%エタノールを添加してRNAペレットを再懸濁し、沈降および真空乾燥を行い、5-25μlの0.5% SDSに65℃で10分間溶解する。これでRNA抽出物は更なる分析を行うことができる状態となる。
【0090】
別法として、酸性グアニジンチオシアネート/フェノール/クロロホルム抽出法の変法を用いてRNAを血漿または血清から抽出してもよい。例えば好ましい態様では、Chomczynski,P.,Biotech 15:532-537,(1993)に報告されているように、TRI reagent(単相グアニジンチオシアネート/フェノール溶液)を用いてRNAを血漿または血清から抽出してもよい。100μlから1mlの血漿または血清を、TRI ReagentTM(TRI Reagent,Sigma Trisolv(TM),BioTecx Laboratories,Houston,Tex.、TRIzol(TM),GIBCO BRL/Life Technologies,Gaithersburg,Md.)を用い、製造者の指示に従って処理する。現在当業界で実施されているような軽微な改変を行ってもよい。このように、100μlから1mlの血漿または血清を1mlのTRI Reagentと混合する。次いで0.2mlのクロロホルムを15秒間混合し、混合液を室温で3分間放置する。その後、混合液を12,000xg、4℃で15分間遠心分離する。上部の水相を除去し、これに0.5mlのイソプロパノールを混合した後、室温に5分間放置し、12,000xg、4℃で10分間遠心分離する。次いでRNAペレットを75%エタノール1mlと共に12,000xgで5分間遠心分離して洗浄する。ペレットを風乾し、11.2mlμlのRNAse未含有水に再懸濁する。
【0091】
Chomczynski,P.およびMackey,K.,BioTechniques 19:942-945,(1995)に報告されているようにTRI Reagent(TM)法の沈殿段階を改変したものによって、細胞外プロテオ脂質/RNA複合体中に存在しうる多糖およびプロテオグリカンによる汚染を下記のように低減させてもよい。
【0092】
100μlから1mlの体液を製造者の指示に従ってTRI Reagent(TM)と混合し、クロロホルムまたはブロモクロロプロパンのいずれかを用いて相分離し(Chomczynski,P.およびMackey,K.,Analytical Biochemistry 225:163-164,(1995))、10,000xgで15分間遠心分離する。水相を除去した後、0.25mlのイソプロパノール、次いで0.25mlの高塩濃度沈殿溶液(1.2M NaClおよび0.8Mクエン酸ナトリウム)と混合する。混合液を10,000xgで5分間遠心分離し、1mlの75%エタノールで洗浄する。その後、RNAペレットを真空乾燥し、5-25μlの0.5% SDSに65℃で10分間溶解する。
【0093】
別法
別法を用いてRNAを体液から抽出してもよく、それらには非限定的な例として塩化セシウム・グラジエントによる遠心分離(例えばChirgwin,J.M.ら,Biochemistry 18:5294-5299,(1979)の方法)およびゼラチンを用いる血漿または血清からの細胞外RNAの共沈殿(例えばFournie,G.J.ら,Analytical Biochemistry 158:250-256,(1986)の変法)によってRNAを抽出するものがある。
【0094】
循環細胞外デオキシリボ核酸(DNA)(腫瘍誘導または腫瘍関連細胞外DNAを含む)も血漿または血清中に存在する。Stroun,M.ら,Oncology 46:318-322,(1989)参照。このDNAは上記のRNA抽出法の際にも様々な程度で抽出されるので、RNA抽出物を更に精製し、痕跡量のDNAを除去してから更なるRNA分析に移行することが所望または必要とされうる。これはDNaseを用いて、例えばRashtchian,A.,PCR Methods Applic.4:S83-S91,(1994)に報告される方法によって以下のように行ってもよい。
【0095】
氷上に配した0.5ml遠心管中の1μgのRNAに1μlの10xDNase I反応バッファー(200μM Tris-HCl(pH8.4)、500mlμM KCl、25μM MgCl2、1 micromolar/mlウシ血清アルブミン)を添加する。これに1ユニットのDNase I(GIBCO/BRLカタログ番号18068-015)を添加する。次いでDEPC処理した蒸留水で容量を10μlとし、室温で15分間インキュベートする。その後、DNase Iを不活性化するために20mM EDTAを混合液に添加し、65℃で10分間加熱する。
【0096】
あるいはまた、更なるRNA分析のためのプライマーを、混入しているDNAではなくRNA産物を優先的に増幅するように、例えばRNAのスプライス部位にわたるプライマーまたはイントロンにわたるプライマーを使用して、構築してもよい。混入DNAを増幅せずにRNAを増幅するための別の方法には、Moore,R.E.ら,Nucleic Acids Res.18:1921,(1991)に報告されている方法、およびBuchman,G.W.ら,PCR Methods Applic.3:28-31,(1993)に報告されている方法(アダプタープライマーとしてdU含有オリゴヌクレオチドを使用)がある。
【0097】
核酸増幅および変異検出
組織、細胞、血漿、または血清から抽出した核酸を、当該分野で公知の核酸増幅法を用いて増幅することができる。多くのこれら増幅法を用いて、特定の標的配列と特異的に相互作用またはハイブリダイズするようにオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを設計するだけで、変異の存在を検出することもできる。非限定的な例として、これらの方法にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ネステッドPCR、リガーゼ連鎖反応がある。例えばAbravaya,K.ら,Nucleic Acids Research 23:675-682,(1995)、分岐DNAシグナル増幅、Urdea,M.S.ら,AIDS 7(suppl 2):S11-S 14,(1993)、増幅可能RNAレポーター、Qベータ複製、転写増幅、ブーメランDNA増幅、鎖置換活性化、サイクリングプローブ法、等温核酸配列増幅(NASBA)参照。Kievits,T.ら,J Virological Methods 35:273-286,(1991)、Invader Technology、または他の配列複製アッセイもしくはシグナル増幅アッセイ参照。
【0098】
RNAからcDNAへの逆転写
RNAからcDNAへの逆転写を用いる方法もある。認識されるように、逆転写および増幅の方法は、既に報告または推奨されている方法によって行ってもよく、それらの参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。種々の逆転写酵素を使用してもよく、それらには非限定的な例としてMMLV RT、MMLV RTのRNase H変異体(例えばSuperscriptおよびSuperscript II(Life Technologies,GIBCO BRL,Gaithersburg,Md.))、AMV RT、およびThermus Thermophilus由来の熱安定性逆転写酵素がある。例えば血漿または血清から抽出したRNAをcDNAに変換するのに使用できる1つの方法は(これが唯一の方法ではないが)、Superscript II Preamplification system(Life Technologies,GIBCO BRL,Gaithersburg,Md.;カタログ番号18089-011)から改変したプロトコールでRashtchian,A.,PCR Methods Applic.4:S83-S91,(1994)に報告されており、これを以下のように改変した。
【0099】
血漿または血清から抽出したRNAの1-5μgを 13μlのDEPC処理水に混合したものを清浄な遠心管に添加する。次いで1μlのオリゴ(dT)(0.5mg/ml)またはランダムヘキサマー溶液(50ng/μl)を添加し、穏やかに撹拌する。混合液を70℃で10分間加熱し、氷上で1分間インキュベートする。軽く遠心分離した後、2μlの10x合成バッファー(200mM Tris-HCl、pH8.4、500mM KCl、25mM塩化マグネシウム、1mg/ml BSA)、1μlのdNTP(各10mM)混合液、2μlの0.1M DDT、1μlのSuperScript II RT(200U/μl)(Life Technologies,GIBCO BRL,Gaithersburg,Md.)を添加する。穏やかに撹拌した後、軽く遠心分離して反応液を回収し、室温で10分間インキュベートする。試験管を42℃の水浴またはヒートブロックに移し、50分間インキュベートする。試験管を70℃で15分間インキュベートして反応を停止させ、氷上に配する。軽く遠心分離して反応液を回収し、1μlのRNase H(2ユニット)を添加し、37℃で20分間インキュベートした後、核酸増幅に移行する。
【0100】
核酸増幅
cDNA混合液に以下を添加する:8μlの10x合成バッファー(200mM Tris-HCl、pH8.4、500mM KCl、25mM塩化マグネシウム、1mg/ml BSA)、68μlの無菌再蒸留水、1μlの増幅プライマー1(10μM)、1μlの増幅プライマー2(10μM)、1μlのTaq DNAポリメラーゼ(2-5U/μl)。混合液を穏やかに撹拌して鉱油を重層する。混合液を94℃で5分間加熱し、残存するRNA/cDNAハイブリッドを変性させる。その後、自動サーマルサイクラーで以下のようにPCR増幅を行う:94℃、1分間;55℃、30-90秒;72℃、2分間を、15-50サイクル。
【0101】
サイクルのパラメータおよびマグネシウム濃度は増幅する特定の配列によって変化するが、最適な手順および方法は当該分野で公知である。
【0102】
また、プライマーは好適な制限酵素部位を含んでもよく、増幅産物を制限酵素で処理して変異型および野生型配列を更に識別できるようにしてもよい。
【0103】
別法
使用することができる別の核酸増幅法にはRT-PCRの変法(定量RT-PCRなど)、例えばWang,A.M.ら,PNAS USA 86:9717-9721,(1989)またはKaret,F.E.ら,Analytical Biochemistry 220:384-390,(1994)に報告されている方法を改変したものがある。
【0104】
使用することができる他の核酸増幅法または変異検出法はリガーゼ連鎖反応(LCR)であり、Wiedmannら,PCR Methods Appl.3:551-564,(1994)に報告されている。リガーゼ連鎖反応では、血漿または血清から抽出したRNAをcDNAに逆転写する。LCRは1塩基の変異を検出できる方法である。プライマーを2つのフラグメントとして合成し、2つのプライマーフラグメントの境界部位に変異を有する可能性のあるテンプレートにアニールさせる。テンプレート配列と完全に一致すれば、リガーゼによって2つのフラグメントはライゲートされる。プライマーがライゲートされた場合にのみ、その後のPCR反応によって増幅が起こる。制限部位を利用して変異型および野生型配列を識別することもできる。
【0105】
他の増幅法または変異検出法は対立遺伝子特異的PCR(ASPCR)である。ASPCRはテンプレートとプライマーの3'末端塩基のマッチまたはミスマッチを利用するものであり、当該分野で公知である。5,639,611参照。
【0106】
使用することができる他の増幅または変異検出法は分岐DNAシグナル増幅である。これは例えばUrdea,M.S.ら,AIDS 7(suppl 2):S11-S 14,(1993)に報告されている方法を以下のように改変したものである:RNAを血漿または血清から抽出した後、マイクロウェルに直接添加する。その後、Urderら(同文献)に記載されるように腫瘍関連RNAの検出を行う。これには目的の腫瘍関連RNAまたはcDNAに特異的な標的プローブ、および血漿または血清中の腫瘍関連RNAの量に比例する化学発光を用いる。方法の詳細はUrdea,M.S.ら,Nucleic Acids Research Symposium Series 24:197-200,(1991)に更に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0107】
使用することができる他の増幅または変異検出法は等温核酸配列増幅法(NASBA)であり、例えばKievits,T.ら,J Virological Methods 35:273-286,(1991)または Vandamme,A.M.ら,J.Virological Methods 52:121-132,(1995)に報告される方法を改変したものである。
【0108】
他の使用することができる定性的または定量的核酸増幅法には、非限定的な例としてQベータ複製、他の自己持続配列複製アッセイ、転写増幅アッセイ、および増幅可能RNAレポーター、ブーメランDNA増幅、鎖置換活性化、およびサイクリングプローブ法がある。
【0109】
別の変異検出法は核酸シーケンシングである。シーケンシングは任意の数の当該分野で公知の方法、キット、または系を用いて実施できる。ある例では色素ターミネーター化学およびABIシーケンサー(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いる。シーケンシングは一塩基測定法、例えば一ヌクレオチドプライマー伸長(“SNapShot”シーケンシング法)または対立遺伝子もしくは変異特異的PCRを伴ってもよい。
【0110】
本発明の多用途性を以下の実施例で例証するが、それらは本発明の好ましい態様を例証するものであり、特許請求の範囲または明細書をどのような点からも制限するものではない。
【実施例】
【0111】
1.血漿からのJAK2変異検出の感度の測定
血漿からのJAK2核酸の検出感度を以下のように測定した。HEL細胞系(92.1.7。American Type Culture Collection,Manassas,VAから入手)はJAK2 V617F変異のみを保有する(野生型対立遺伝子は保有しない)が、これを10%ウシ胎仔血清含有RPMI 1640に維持した。ライゼートを調製し、正常(JAK2野生型)個体由来の血漿と種々の濃度で合一した。
【0112】
NucliSense Extraction Kit(bioMerieux社,Durham,NC)を用い、製造者の指示に従って混合液から総RNAを抽出した。PCRプライマー対を設計し、JAK2遺伝子のアミノ酸671をコードする領域にわたって増幅を行った。PCRおよびシーケンシングに使用するプライマー配列は以下である:JAK2-F(5-GAC TAC GGT CAA CTG CAT GAA A-3')SEQ ID NO:5、およびJAK2-R(5'-CCA TGC CAA CTG TTT AGC AA-3')SEQ ID NO: 6。SuperScript IIIワンステップRT-PCRシステムを用い、Platinum Taq(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して、25μLの反応容量でワンステップRT-PCRを実施した。RT-PCRに使用した濃度は以下である:1x反応バッファー、順向きJAK2プライマーおよび逆向きJAK2プライマー(各400nM)、1ユニットのSuperscript III、および5μLのRNAプライマー。サーマルサイクラーの条件は以下である:55℃30秒間(逆転写)の後94℃2分間、そして94℃15秒間、60℃30秒間、68℃1分間を40サイクル、最終段階で68℃7分間。
【0113】
Multiscreen PCRプレート(Millipore,Billerica,MA)を用いて293塩基対産物をろ過精製した後、ABI Prism Big Dye Terminator V3.1 Cycle Sequencing KitおよびABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用い、GenBankアクセッション番号NM004972のJAK2配列を参照配列として使用して順向き、逆向きの2方向でシーケンシングを行った。
【0114】
結果:
わずか5 HEL細胞/ml血漿からのライゼートを含有する混合液での2方向シーケンシングでJAK2 V617F変異核酸を検出できた(データ未掲載)。
【0115】
2.MPD患者由来細胞および血漿の同時分析
骨髄増殖性疾患患者30人からの血漿および末梢血細胞の同時分析を以下のように行った。
当該分野で公知の方法により、血液および血漿を採取および調製した。末梢血細胞を全血から単離した。EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)を含有する試験管中で遠心分離して血漿を調製し、アッセイまで-70℃で保存した。
実施例1に記載したように、RNAの単離、増幅、および2方向シーケンシングを行った。
【0116】
結果:
臨床検査で慣例的に行われている血漿または細胞サンプルの直接シーケンシングではヘミ接合およびホモ接合を識別する信頼性が低いため、これらを群に分類した。すなわち、V617F変異に相当するヌクレオチドにおいて野生型配列が全く、または最小限しか認められないサンプルを“ヘミ接合性/ホモ接合性”と称する。
【0117】
細胞でV617F変異陽性を示したサンプルは全て、血漿でもこの変異の陽性を示した。しかしながら、変異座におけるヘミ接合性/ホモ接合性は血漿から得た配列でより明白であり、同じ患者の細胞では変異型および野生型配列の両方が示された。ヘテロ接合性血漿サンプルは野生型(“G”)および変異型(“T")ピークを等しい強度で示したが、細胞サンプルでは変異型“T"ピークの顕著さがより低かった。これは、本質的に細胞を含有しない血漿は腫瘍特異的核酸の濃度が高いが、細胞サンプルは悪性および非悪性(例えばJAK2の野生型対立遺伝子を保有するリンパ球)の両方の細胞集団を含有しており、ホモ接合性およびヘミ接合性細胞集団に関する情報がわずかしか、またはほとんど得られないことを示唆している。
【0118】
3.骨髄増殖性疾患患者86人からの血漿の試験
種々の慢性骨髄増殖性疾患に罹患した86人の異なる患者由来の血漿サンプルで、上記のようにJAK2 V617F変異の存在について試験を行った。患者は、標準的な臨床知見、細胞遺伝学、およびRT-PCR分析に基づいてMPDであると診断された。コントロールとして、31人の正常個体由来の血漿についても、変異の試験を行った。
【0119】
86人の患者は、種々のMPDに伴う異なる症状を示した。血漿を採取した時点での患者86人の疾病状態および特性の概要を以下の表1および2に示す。この集団の年齢中位数は61歳であり、56%が男性であった(表1)。他の悪性腫瘍の既往歴が患者の21%で認められ、患者の50%は脾腫大を示した。骨髄芽球の顕著な増加は認められた患者もいたが、患者の88%で芽球が5%未満であり、93%では10%未満であった。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
結果:
この場合も、V617F変異に相当するヌクレオチドにおいて野生型配列が全く、または最小限しか認められないサンプルを“ヘミ接合性/ホモ接合性”と称する。
【0123】
全体として、患者サンプルの51%(44/86)でV617F変異陽性であった。これらのうち43%(19/44)はヘミ接合性/ホモ接合性であり、57%(25/44)はV617F変異型JAK2配列および野生型JAK2配列の両方を示した。31検体のコントロールサンプルではV617F変異配列は検出されなかった。結果は、PVおよびIMF患者のほとんどは変異を保有するが、ETおよびMPD-NC患者の多くは保有しないことを示している。結果の概要を以下の表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
2方向直接シーケンシングを用いて、IMF患者の56%(22/39)がV617F変異を示し、V617F陽性IMF患者の41%(9/22)がヘミ接合性/ホモ接合性であった(表3)。PV患者ではより高い割合の88%(14/16)がV617F変異を示し、更に重要なことに、V617F変異陽性患者の50%(7/14)がヘミ接合性/ホモ接合性であった(表3)。ET患者では、患者の25%(2/8)がJAK2変異を有し、その半数(1/2)がヘミ接合性/ホモ接合性であった(表3)。その他の慢性MPD患者群(MPD-NC)でJAK2変異の試験を行った。それらは細胞遺伝学(例えばFISH)ではフィラデルフィア染色体陰性であり、分子的研究ではBCR-ABL陰性であった。これらの患者のほとんどはフィラデルフィア陰性CMLまたは慢性好中球性白血病であり、慢性MPD/骨髄異形性疾患を有する患者はわずかであった。この群では患者の26%(6/23)でV617F変異が検出され、3分の1(2/6)がヘミ接合性/ホモ接合性であった(表3)。
【0126】
4.患者の症状/生存率とV617F変異の相関関係
V617F変異の接合状態が異なる患者群間の臨床特性の差異の有意性を、カテゴリーデータのカイ二乗またはクラスカル・ワリス検定、および連続データのt検定によって分析した。生存率曲線の推定値を、カプラン・マイヤー積極限法に従って、またMDACCへの照会の時期から算出した。生存期間をlog-rank検定で比較した。
【0127】
ヘテロ接合性患者と比較して、ヘミ接合性/ホモ接合性V617F患者は有意な脾腫大を有し(P=0.0001)、単球のパーセンテージがより高く(P=0.03)、白血球数がより高く(P=0.001)、ビリルビン・レベルがより高く(P=0.02)、そして、ヘテロ接合性または野生型患者より悪性腫瘍の既往歴を有する可能性がより高かった(P=0.047)(表4)。これらの結果は、V617F変異のヘミ接合性またはホモ接合性患者の方が悪性度の高い疾患を有することを示唆している。
【0128】
【表4】

【0129】
生存率は、ヘテロ接合性およびヘミ接合性/ホモ接合性患者間で有意差はなかった(P=0.20;データ未掲載)。しかしながら、一部の患者では生存率およびV617F変異間に3つの相関関係が認められた。第1に、芽球数が20%未満である慢性期患者(84人)では、ヘテロ接合性患者の生存率は野生型患者より有意に高かったが(P=0.04)、ヘミ接合性/ホモ接合性患者の生存率は野生型患者と統計学的に差がなかった(P=0.05)。すなわち、野生型患者はヘテロ接合性患者より高いパーセンテージで死亡し、ホモ接合性およびヘミ接合性患者の死亡率は野生型患者に匹敵するものであった。
【0130】
第2に、65歳未満の患者では、ヘテロ接合性、ヘミ接合性、またはホモ接合性V617F変異保有者は変異を保有しない患者(野生型患者)より生存率が高いと考えられる(P=0.05;n=54)。
【0131】
第3に、分類不能型骨髄増殖性疾患(MPD-NC)患者はPV、ET、およびIMF患者より疾患の悪性度が高く、生存日数が短い傾向にあった(P=0.02)。これらの患者のほとんどは慢性好中球性白血病またはPh陰性慢性骨髄性(myelogeneous)白血病であった。骨髄異形成を伴うMPD患者はほとんどいなかった。興味深いことに、V617F変異(ヘテロ接合性、ヘミ接合性、またはホモ接合性)を有するMPD-NC患者の生存期間は、変異を保有しないMPD-NC患者より長いと考えられた(P=0.05)。
【0132】
要約すれば、血漿のような無細胞体液はJAK2変異検出のための信頼性の高い供与源であり、これを使用して患者がヘテロ接合性、ヘミ接合性、またはホモ接合性変異細胞系を有するか否かに関する情報を得るべきである。更に、JAK2 V617F変異によって、変異を保有しない患者より総体的な転帰および生存期間が良好である、臨床的に重要なMPD患者群が明確になる。
【0133】
本明細書に記載する全ての出版物、特許出願、特許、およびその他の文献は参照によりその全体が、そのそれぞれが個々に参照によって組み込まれるのと同じ程度に、本明細書に組み込まれる。不一致がある場合は本明細書(定義を含む)が優先される。
【0134】
実施例および代替となる態様に関連して本発明について記述したが、当業者に認識されるように、本発明の意図および範囲から逸脱することなく形式および詳細の変更を行ってもよい。例えば、異なる例および代替となる態様が1つまたはそれ以上の利点を与える1つまたはそれ以上の特長を包含していることを記載したが、記載した特長を、記載する代表的な態様または他の代替となる態様と置き換えるか、またはそれらと併せてもよいことが意図される。本発明の技術は相対的に複雑なため、技術における全ての変更を予見することはできない。代表的な態様および代替となる態様に関して記述し、別記の特許請求の範囲にも記載した本発明は、明らかに可能な限り広範であることが意図される。例えば、特に記載しない限り、1つの特定の要素について記載する請求項は複数のそれら特定要素も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】JAK2の核酸配列である。
【図2】JAK2偽キナーゼドメイン領域の核酸配列である。
【図3】JAK2のアミノ酸配列である。
【図4】JAK2偽キナーゼドメイン領域のアミノ酸配列である。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の無細胞体液由来のJAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定することを含む方法。
【請求項2】
SEQ ID NO:1との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つまたはそれ以上の変異がキナーゼ活性に影響を及ぼす、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1つまたはそれ以上の変異がJAK2の偽キナーゼドメインに位置する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
SEQ ID NO:2との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
無細胞体液が血漿または血清である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの変異がコドン617にある、請求項1記載の方法。
【請求項8】
変異の少なくとも1つによってV617Fアミノ酸変化が生ずる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
JAK2核酸がRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
患者が該測定段階以前に骨髄増殖性疾患であると診断されている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
測定段階が患者の無細胞体液由来JAK2核酸を増幅することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
測定段階が、患者の無細胞体液由来核酸を増幅し、そして増幅した核酸をJAK2核酸を特異的に検出する能力のあるオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズさせることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
該体液中の変異型JAK2核酸と野生型JAK2核酸との比率を測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
JAK2核酸が変異型JAK2核酸および野生型JAK2核酸を含むか否かを測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
JAK2核酸変異の測定を用いて予後診断または治療目的で個体を階層化する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
腫瘍性疾患患者を治療する方法であって、患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定し、そして測定結果に基づいて患者を治療することを含む上記方法。
【請求項17】
腫瘍性疾患が骨髄増殖性疾患である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
患者が真性赤血球増加症患者である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
患者が本態性血小板血症患者である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
患者が特発性骨髄線維症患者である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
患者が分類不能型骨髄増殖性疾患を有する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
該1つまたはそれ以上の変異がキナーゼ活性に影響を及ぼす、請求項16記載の方法。
【請求項23】
SEQ ID NO:1との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項16記載の方法。
【請求項24】
1つまたはそれ以上の変異がJAK2の偽キナーゼドメインにある、請求項16記載の方法。
【請求項25】
SEQ ID NO:2との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項16記載の方法。
【請求項26】
1つまたはそれ以上の変異がコドン617にある、請求項16記載の方法。
【請求項27】
1つまたはそれ以上の変異によってV617Fアミノ酸変化が生ずる、請求項16記載の方法。
【請求項28】
体液中の変異型JAK2核酸と野生型JAK2核酸との比率を測定し、そして測定結果に基づいて患者を治療することを更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項29】
JAK2核酸が変異型JAK2核酸および野生型JAK2核酸を含有するか否かを測定し、そして測定結果に基づいて患者を治療することを更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項30】
無細胞体液が血漿または血清である、請求項16記載の方法。
【請求項31】
測定段階が、患者の無細胞体液由来JAK2核酸を増幅し、そして増幅した核酸のシーケンシングを行うことを含む、請求項16記載の方法。
【請求項32】
測定段階が、患者の無細胞体液由来核酸を増幅し、そして増幅した核酸をJAK2核酸を特異的に検出する能力のあるオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズさせることを含む、請求項16記載の方法。
【請求項33】
測定結果に基づいて治療を実施する、見合わせる、または変更する、請求項16記載の方法。
【請求項34】
1つの変異型JAK2対立遺伝子が検出され、他の対立遺伝子が欠失していると判定される、請求項16記載の方法。
【請求項35】
腫瘍性疾患であると診断された患者が変異型JAK2キナーゼ活性を含む細胞を有するか否かを測定する方法であって、患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定することを含む上記方法。
【請求項36】
腫瘍性疾患が骨髄増殖性疾患である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
骨髄増殖性疾患が真性赤血球増加症である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
骨髄増殖性疾患が本態性血小板血症である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
骨髄増殖性疾患が特発性骨髄線維症である、請求項36記載の方法。
【請求項40】
骨髄増殖性疾患が分類不能型骨髄増殖性疾患である、請求項36記載の方法。
【請求項41】
腫瘍性疾患を診断する方法であって、患者の無細胞体液由来JAK2核酸中の1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定することを含む上記方法。
【請求項42】
SEQ ID NO:1との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
SEQ ID NO:2との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
1つまたはそれ以上の変異がキナーゼ活性に影響を与える、請求項41記載の方法。
【請求項45】
1つまたはそれ以上の変異が偽キナーゼドメインにある、請求項41記載の方法。
【請求項46】
1つまたはそれ以上の変異がコドン617におけるバリンをコードしない変異を含む、請求項41記載の方法。
【請求項47】
変異型JAK2核酸と野生型JAK2核酸との比率を測定し、測定結果に基づいて患者を診断することを更に含む、請求項41記載の方法。
【請求項48】
JAK2核酸が変異型JAK2核酸および野生型JAK2核酸を含むか否かを測定し、測定結果に基づいて患者を診断することを更に含む、請求項41記載の方法。
【請求項49】
1つまたはそれ以上の変異によってV617Fアミノ酸変化が生ずる、請求項41記載の方法。
【請求項50】
コドン617におけるバリンをコードしない変異がV617Fである、請求項46記載の方法。
【請求項51】
JAK2核酸がRNAを含む、請求項41記載の方法。
【請求項52】
測定がJAK2 RNAの逆転写を含む、請求項41記載の方法。
【請求項53】
測定がJAK2核酸の増幅を含む、請求項41記載の方法。
【請求項54】
増幅したJAK2核酸を、増幅したJAK2核酸に特異的なオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせることを更に含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
増幅したJAK2核酸のシーケンシングを更に含む、請求項53記載の方法。
【請求項56】
無細胞体液が血漿または血清を含む、請求項41記載の方法。
【請求項57】
腫瘍性疾患が骨髄増殖性疾患である、請求項41記載の方法。
【請求項58】
骨髄増殖性疾患が真性赤血球増加症である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
骨髄増殖性疾患が本態性血小板血症である、請求項57記載の方法。
【請求項60】
骨髄増殖性疾患が特発性骨髄線維症である、請求項57記載の方法。
【請求項61】
骨髄増殖性疾患が真性赤血球増加症、本態性血小板血症、または特発性骨髄線維症と分類されない骨髄増殖性疾患である、請求項57記載の方法。
【請求項62】
腫瘍性疾患であると診断された個体の予後診断を行う方法であって、個体の無細胞体液中のJAK2核酸における1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定し、そして変異状態を用いて個体の臨床転帰を予測することを含む上記方法。
【請求項63】
該腫瘍性疾患が、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、特発性骨髄線維症、および分類不能型骨髄増殖性疾患から成る群から選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
SEQ ID NO:1との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項62記載の方法。
【請求項65】
1つまたはそれ以上の変異がキナーゼ活性に影響を与える、請求項62記載の方法。
【請求項66】
1つまたはそれ以上の変異がJAK2の偽キナーゼドメインに位置する、請求項62記載の方法。
【請求項67】
SEQ ID NO:2との相対によって1つまたはそれ以上の変異の存在または非存在を測定する、請求項62記載の方法。
【請求項68】
無細胞体液が血漿または血清である、請求項62記載の方法。
【請求項69】
1つまたはそれ以上の変異がコドン617にある、請求項62記載の方法。
【請求項70】
1つまたはそれ以上の変異によってV617Fアミノ酸変化が生ずる、請求項62記載の方法。
【請求項71】
JAK2核酸がRNAである、請求項62記載の方法。
【請求項72】
測定段階が患者の無細胞体液由来JAK2核酸を増幅することを含む、請求項62記載の方法。
【請求項73】
測定段階が、患者の無細胞体液由来核酸を増幅し、そして増幅した核酸をJAK2核酸を特異的に検出する能力のあるオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズさせることを含む、請求項62記載の方法。
【請求項74】
該体液中の変異型JAK2核酸と野生型JAK2核酸との比率を測定することを更に含む、請求項62記載の方法。
【請求項75】
変異状態がヘミ接合性またはホモ接合性JAK2変異である、請求項62記載の方法。
【請求項76】
変異状態と他の臨床パラメータを併用して個体の臨床転帰を判定する、請求項62記載の方法。
【請求項77】
他の臨床パラメータが年齢および芽細胞数のパーセントから成る群から選択される、請求項76記載の方法。
【請求項78】
臨床転帰が死亡である、請求項62記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−534038(P2009−534038A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506727(P2009−506727)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/066807
【国際公開番号】WO2007/124309
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】