L−オルニチンフェニルアセテートおよびその製造方法
本明細書で開示するのは、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートおよびその製造方法である。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、形態I、II、IIIおよびVまたはその混合物であってよい。結晶形態は、肝性脳症などの肝臓障害を有する対象を治療するために処方することができる。したがって、いくつかの実施形態は、処方物、およびL−オルニチンフェニルアセテートを投与する方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月3日出願の米国仮出願番号第61/166,676号に関する優先権の特典を請求するものである。その優先権書類全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本出願は、薬剤化学、生化学および医学の分野に関する。具体的には、本出願はL−オルニチンフェニルアセテート塩ならびにその製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(説明)
高アンモニア血症は肝疾患の特質であり、血流中における過剰なアンモニアを特徴とする。肝性脳症は進行性高アンモニア血症の主要な臨床的帰結であり、これは、急性または慢性の肝不全を悪化させる可能性のある複雑な神経精神症候群である。それは、脳機能の変化のささいな兆候から、明白な精神医学的および/または神経学的症状、さらには深い昏睡にわたる広範な神経精神症状を含む精神状態の変化を特徴とする。未代謝アンモニアの蓄積が肝性脳症の発病に関わる主な要因であると考えられているが、他の機序も関連している可能性がある。
【0004】
L−オルニチン一塩酸塩および他のL−オルニチン塩は、高アンモニア血症および肝性脳症の治療で使用するのに利用することができる。例えば、米国特許出願公開第2008/0119554号(その全体を参照により本明細書に組み込む)は、肝性脳症の治療用のL−オルニチンおよび酢酸フェニルの組成物を記載している。L−オルニチンは酵素的変換法で調製されている。例えば、米国特許第5,405,761号および同第5,591,613号(両方のその全体を参照により本明細書に組み込む)は、L−オルニチン塩を生成するアルギニンの酵素的変換を記載している。酢酸フェニルナトリウムは市販されており、また、急性高アンモニア血症の治療用の注射剤としても入手することができる。注射剤はAMMONULとして市販されている。
【0005】
塩の形態は分解特性の改善を示すことができるが、特定の塩、特にナトリウムまたはクロリド塩は、肝性脳症などの肝疾患に伴う疾患を有する患者を治療する場合、望ましくない可能性がある。例えば、高いナトリウム摂取は腹水、体液過剰および電解質平衡異常を起こす傾向がある肝硬変患者には危険であり得る。同様に、特定の塩は浸透圧が高い、すなわち溶液が高張性であるため、静脈内で投与するのが困難である。高い濃度の過剰塩は、静脈内投与のために溶液を大量に希釈する必要があり得、これは、過度の体液過剰をもたらす。したがって、体液過剰および電解質平衡異常がよく見られる肝性脳症または他の状態の治療に好都合なL−オルニチンおよび酢酸フェニル塩の調製の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は約202℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:単位格子寸法:a=6.594(2)Å、b=6.5448(18)Å、c=31.632(8)Å、α=90°、β=91.12(3)°、γ=90°;結晶系:単斜晶系;および空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は式[C5H13N2O2][C8H7O2]で表される。
【0009】
いくつかの実施形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0010】
いくつかの実施形態は、水および/またはエタノールの分子を含む結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、熱重量分析で測定して約11重量%の前記分子を含む。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約35℃での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶は約203℃の融点を有する。
【0011】
いくつかの実施形態は、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:単位格子寸法:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°;結晶系:単斜晶系;および空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は式[C5H13N2O2][C8H7O2]EtOH.H2Oで表される。
【0012】
いくつかの実施形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶形態は約203℃の融点を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0015】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶形態は約196℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は薬学的に許容される担体を含む。
【0016】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:少なくとも約50重量%の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩および少なくとも約0.01重量%の安息香酸またはその塩を含む組成物を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも約0.10重量%の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は5重量%以下の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は1重量%以下の安息香酸またはその塩を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも10ppmの銀をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも20ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも25ppmの銀をさらに含む。いくつかの実施形態では、600ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、組成物は100ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は65ppm以下の銀を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、水中50mg/mLの組成物は体液と等張性である。いくつかの実施形態では、その等張液は、約280〜約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、その組成物は約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する。
【0021】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:L−オルニチン塩、安息香酸塩および溶媒を混合して中間溶液を生成させるステップと;酢酸フェニルを前記中間溶液と混合するステップと;少なくとも70重量%の結晶性L−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物を単離するステップとを含むL−オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、その方法は、酢酸フェニルを混合する前に、前記中間溶液から塩の少なくとも一部を除去するステップであって、前記塩がL−オルニチン塩でないステップを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、塩の少なくとも一部を除去する前に、塩酸を加えるステップを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、L−オルニチン、安息香酸塩および溶媒を混合するステップは:L−オルニチン塩を水に分散して第1の溶液を生成させるステップと;安息香酸塩をDMSOに分散して第2の溶液を生成させるステップと;前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して前記溶液を生成させるステップとを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも約0.10重量%の安息香酸塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は5重量%以下の安息香酸塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は1重量%以下の安息香酸塩を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、L−オルニチン塩はL−オルニチン塩酸塩である。いくつかの実施形態では、安息香酸塩は安息香酸銀である。
【0026】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも10ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも20ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも25ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は600ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は100ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は65ppm以下の銀を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、酢酸フェニルはアルカリ金属塩中にある。いくつかの実施形態では、そのアルカリ金属塩は酢酸フェニルナトリウムである。
【0028】
いくつかの実施形態では、その組成物は100ppm以下のナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は20ppm以下のナトリウムを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、L−オルニチンはハライド塩中にある。いくつかの実施形態では、そのハライド塩はL−オルニチン塩酸塩である。
【0030】
いくつかの実施形態では、その組成物は0.1重量%以下のクロリドを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は0.01重量%以下のクロリドを含む。
【0031】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、本明細書で開示する方法のいずれかによって得られる組成物を含む。
【0032】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、少なくとも中間塩が沈澱するまでL−オルニチン塩を含む溶液のpH値を増大させるステップであって、前記中間塩がL−オルニチン塩でないステップと;中間塩を前記溶液から単離するステップと;フェニル酢酸を前記溶液と混合するステップと;L−オルニチンフェニルアセテート塩を前記溶液から単離するステップとを含むL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、そのpH値を少なくとも8.0まで増大させる。いくつかの実施形態では、そのpH値を少なくとも9.0まで増大させる。いくつかの実施形態では、pH値を増大させるステップは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロミドまたはその組合せからなる群から選択されるpH調節剤を添加するステップを含む。
【0034】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、治療有効量の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩を投与することによって、対象の高アンモニア血症を治療または改善する方法を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は経口で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態I、形態II、形態III、形態Vからなる群から選択され:形態Iは、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態IIは、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態IIIは、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態Vは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0037】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態Iである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態IIである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態IIIである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態Vである。
【0038】
いくつかの実施形態では、形態I、形態II、形態IIIおよび形態Vからなる群から選択される少なくとも2つの結晶形態を投与する。いくつかの実施形態では、その少なくとも2つの結晶形態を、ほぼ同じ時間に投与する。
【0039】
いくつかの実施形態では、その結晶形態を日に1〜3回投与する。いくつかの実施形態では、治療有効量は約500mg〜約50gの範囲である。
【0040】
いくつかの実施形態では、対象は、肝性脳症を有することが特定されている。いくつかの実施形態では、対象は、高アンモニア血症を有することが特定されている。
【0041】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:L−オルニチン塩、銀酢酸フェニルおよび溶媒を混合して溶液を生成させるステップであって、そのL−オルニチン塩がアルカリ金属塩であるステップと;L−オルニチンフェニルアセテートを前記溶液から単離するステップとを含む、L−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法を含む。
【0042】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、治療有効量の、L−オルニチンフェニルアセテートを含む溶液を静脈内投与することを含む高アンモニア血症を治療または改善する方法であって、前記治療有効量が、500mL以下の前記溶液を含む方法を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、その溶液は少なくとも約25mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む。いくつかの実施形態では、その溶液は少なくとも約40mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む。いくつかの実施形態では、その溶液は300mg/mL以下を含む。いくつかの実施形態では、その溶液は体液と等張性である。
【0044】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、L−オルニチンフェニルアセテートを圧縮する方法であって、準安定型のL−オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変化を誘発するステップを含む方法を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、準安定型は無定形である。いくつかの実施形態では、その準安定型は、約4.9°、13.2°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0046】
いくつかの実施形態では、その圧力は、予め決められた時間印加される。いくつかの実施形態では、その予め決められた時間は約1秒以下である。いくつかの実施形態では、その圧力は少なくとも約500psiである。
【0047】
いくつかの実施形態では、その相変化は、圧力を印加した後、約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する組成物をもたらす。
【0048】
いくつかの実施形態では、その相変化は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す組成物をもたらす。
【0049】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、準安定型のL−オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変化を誘発することによって得られる組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】形態Iの粉末X線回折パターンである。
【図2】形態Iについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図3】形態Iの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図4】形態Iのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図5】形態Iについての動的蒸気収着結果を示す。
【図6】形態IIの粉末X線回折パターンである。
【図7】形態IIについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図8】形態IIの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図9】形態IIのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図10】形態IIについての動的蒸気収着結果を示す。
【図11】形態IIIの粉末X線回折パターンである。
【図12】形態IIIについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図13】形態IIIの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図14】形態IIIのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図15】形態IIIについての動的蒸気収着結果を示す。
【図16】形態Vの粉末X線回折パターンである。
【図17】形態Vについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図18】形態Vの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図19】形態Vのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図20】形態Vについての動的蒸気収着結果を示す。
【図21】L−オルニチンベンゾエートのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図22】L−オルニチンフェニルアセテートのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書で開示するのは、L−オルニチンフェニルアセテート塩、特に、結晶形態の前記塩を製造する方法である。これらの方法は、経済的プロセスを用いて、薬学的に許容される形態のL−オルニチンフェニルアセテートの大規模な生産を可能にする。さらに、形態I、II、IIIおよびVを含む結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートも開示する。L−オルニチンフェニルアセテート塩は、ごくわずかな付随ナトリウム負荷をもたない静脈内投与を可能にし、したがって、必要なi.v.流体の量を最少化する。
【0052】
本出願は、新規な結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩ならびにL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造し使用するための方法に関する。この塩は、相当量のナトリウムまたはクロリドなしで有利に長期安定性を示す。結果として、L−オルニチンフェニルアセテートは、L−オルニチンおよび酢酸フェニルの他の塩と比べて改善された安全性プロファイルを提供することが期待される。また、L−オルニチンフェニルアセテートは他の塩と比べて低い等張性を示す。そのため、より高い濃度で静脈内に投与することができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症の治療のための大幅な臨床的改善を提供することが期待される。
【0053】
本出願はまた、L−オルニチンフェニルアセテートの種々の多形体にも関する。様々な結晶形態の出現(多形性)は、いくつかの分子および分子錯体の特性である。L−オルニチンフェニルアセテートなどの塩錯体は、融点、X線回折パターン、赤外吸収指紋およびNMRスペクトルのような独特の物理的特性を有する様々な固体をもたらすことができる。多形体の物理的特性の違いは、バルク固体中の隣接する分子(錯体)の配向および分子間相互作用からもたらされる。したがって、多形体は、同じ活性薬剤成分を共有するが、多形体ファミリーにおける他の形態と比べて独特の有利および/または不利な物理化学的特性を有する独特の固体であってよい。
【0054】
L−オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、L−オルニチンフェニルアセテート塩を製造する方法を含む。L−オルニチンフェニルアセテートは、例えばL−オルニチンベンゾエートなどの中間塩を介して製造することができる。スキーム1に示すように、式IのL−オルニチン塩を式IIの安息香酸塩と反応させて中間体L−オルニチンベンゾエートを得ることができる。
【0055】
【化1】
【0056】
L−オルニチンの様々な塩を、式Iの化合物において使用することができ、したがって、式IのXは、安息香酸またはフェニル酢酸以外の、L−オルニチンと塩を形成できる任意のイオンであってよい。Xは、これに限定されないが、ハライド(例えば、フロリド、クロリド、ブロミドおよびアイオダイド)などの単原子アニオンであってよい。Xは、これらに限定されないが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ビトレート(bitrate)、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロネート(glucuronate)、サッカラート、ギ酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)、リン酸塩などの多原子アニオンであってもよい。いくつかの実施形態では、Xは一価イオンである。いくつかの実施形態では、Xはクロリドである。
【0057】
同様に、式IIの安息香酸塩は特に限定されず、したがって、式IIのYは、安息香酸と塩を形成できる適切な任意のイオンであってよい。いくつかの実施形態では、Yは、アルカリ金属イオン(例えば、Li+、Na+およびK+)および他の一価イオン(例えば、Ag+)などの単原子カチオンであってよい。Yはまた、アンモニウム、L−アルギニン、ジエチルアミン、コリン、エタノールアミン、1H−イミダゾール、トロラミンなどの多原子カチオンであってもよい。いくつかの実施形態ではYは無機イオンである。いくつかの実施形態ではYは銀である。
【0058】
L−オルニチンおよび安息香酸の他の可能な多くの塩をそれぞれ式IおよびIIの化合物に用いることができ、当業者はこれらを容易に調製することができる。例えば、Bighley L.D.ら、“Salt forms of drugs and absorption、” In:Swarbrick J.、Horlan J.C., eds. Encyclopedia of pharmaceutical technology、第12巻.New York:Marcel Dekker、Inc.、452〜499頁(その全体を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0059】
中間体L−オルニチンベンゾエート(すなわち、式III)は、式IおよびIIの化合物を含む溶液を混合することによって調製することができる。例として、式IおよびIIの化合物を、水とジメチルスルホキシド(DMSO)にそれぞれ別個に溶解することができる。次いで、この2つの溶液を混合して、L−オルニチンと安息香酸を反応して式IIIの塩を形成させることができる。あるいは、2つの塩化合物を、直接溶解して単一の溶液にすることができる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸を別々の溶媒に溶解し、続いて混合する。いくつかの実施形態では、L−オルニチンを水溶液に溶解させ、安息香酸を有機溶媒に溶解させ、続いてL−オルニチンの溶液と安息香酸の溶液を混合する。
【0060】
L−オルニチンと安息香酸塩を混合する場合に使用できる溶媒の非限定的な例には、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロヘキサン、エタノール、アセトン、酢酸、1−プロパノール、炭酸ジメチル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、酢酸エチル(EtOAc)、トルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、ジイソプロピルエーテル、ニトロメタン、水、1,4ジオキサン、tジエチルエーテル(tdiethyl ether)、エチレングリコール、酢酸メチル(MeOAc)、メタノール、2−ブタノール、クメン、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、3−メチル−1−ブタノール、アニソールおよびその組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンベンゾエート溶液は水を含む。いくつかの実施形態では、L−オルニチンベンゾエート溶液はDMSOを含む。
【0061】
L−オルニチンと安息香酸塩を混合したら、対イオンXおよびYは沈殿物を形成することができ、これは、ろ過、遠心分離などの公知の方法を用いて混合溶液から除去できる。いくつかの実施形態では、Xはクロリドであり、Yは銀であり、この反応によってAgClを有する沈殿物が生成される。スキーム1は、式IおよびIIの化合物を塩として示しているが、遊離ベースのL−オルニチンと安息香酸を混合してL−オルニチンベンゾエートの中間体を形成させるのも本出願の範囲内である。したがって、沈殿物を生成させて単離するのは任意選択である。
【0062】
混合するL−オルニチンと安息香酸塩の相対量は限定されないが、L−オルニチンと安息香酸のモル比は任意選択で約10:90〜90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンベンゾエートのモルは約30:70〜30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸塩のモル比は約40:60〜60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸塩のモル比は約1:1である。
【0063】
XとYがどちらも無機イオンである(例えば、XおよびYがそれぞれクロリドおよび銀である)実施形態では、追加の量のX含有塩を加えて、対イオンYのさらなる沈殿を促すことができる。例えば、Xがクロリドであり、Yが銀である場合、L−オルニチン塩酸塩と安息香酸銀のモル比を1:1より大きくして、銀に対して過剰のクロリドが存在するようにすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸のモル比は約1:1より大きい。それでも、L−オルニチン塩(例えば、L−オルニチン塩酸塩)から得るために、追加のクロリド塩は必要ではない。例えば、塩酸の希釈溶液を溶液に加えて、銀をさらに除去することができる。追加のX含有塩をいつ加えるかは特に限定されないが、AgClを最初に単離する前にそれを加えることが好ましい。
【0064】
スキーム2に示すように、L−オルニチンベンゾエートを、式IVの酢酸フェニル塩と反応してL−オルニチンフェニルアセテートを生成させることができる。例えば、酢酸フェニルナトリウムを、L−オルニチンベンゾエートの溶液と混合してL−オルニチンフェニルアセテートを生成させることができる。酢酸フェニルの種々の塩を用いることができ、したがって、式IVのZは、安息香酸またはL−オルニチン以外の、酢酸フェニルと塩を形成できる任意のカチオンであってよい。いくつかの実施形態では、Zは、アルカリ金属イオン(例えば、Li+、Na+およびK+)および他の一価イオン(例えば、Ag+)などの単原子カチオンであってよい。Zは、アンモニウム、L−アルギニン、ジエチルアミン、コリン、エタノールアミン、1H−イミダゾール、トロラミンなどの多原子カチオンであってもよい。いくつかの実施形態ではZは無機イオンである。いくつかの実施形態ではZはナトリウムである。
【0065】
混合するL−オルニチンと酢酸フェニル塩の相対量もやはり限定されないが;L−オルニチンと酢酸フェニルのモル比は任意選択で約10:90〜90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと酢酸フェニルのモル比は約30:70〜30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと酢酸フェニルのモル比は約40:60〜60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸のモル比は約1:1である。
【0066】
【化2】
【0067】
次いで、式VのL−オルニチンフェニルアセテートを、公知の手法を用いて溶液から単離することができる。例えば、L−オルニチンフェニルアセテートが結晶化するまで溶媒を蒸発させるか、あるいは、溶液からL−オルニチンフェニルアセテートが沈殿するまでL−オルニチンフェニルアセテート溶液中に混和性のアンチソルベントを加えることによって単離することができる。L−オルニチンフェニルアセテートを単離するための可能な別の手段は、L−オルニチンフェニルアセテートが沈殿するまで溶液の温度を調節する(例えば、温度を低下させる)ことである。後段の節でさらに詳細に論じるように、L−オルニチンフェニルアセテートを単離する方法は、得られる結晶形態に影響を及ぼす。
【0068】
単離されたL−オルニチンフェニルアセテートを、乾燥などの様々な追加の工程にかけることができる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートを、続いて希薄HCl溶液と混合して残留銀を沈殿させることができる。L−オルニチンフェニルアセテートを、上記に開示したのと同様の方法を用いて溶液から再度単離することができる。
【0069】
当業者に理解されるように、L−オルニチンフェニルアセテートは、本出願の教示にしたがってL−オルニチンベンゾエート以外の中間塩を用いて同様に調製することができる。したがって、例えばL−オルニチンまたはその塩(例えば、L−オルニチン塩酸塩)を、酢酸を含む溶液と混合することができる。次いでL−オルニチン酢酸塩をフェニル酢酸またはその塩(例えば、酢酸フェニルナトリウム)と混合してL−オルニチンフェニルアセテートを得ることができる。スキーム4は、中間塩としてL−オルニチン酢酸塩を用いてL−オルニチンフェニルアセテートを生成させるプロセスの例を示す。いくつかの実施形態では、中間塩はL−オルニチンの薬学的に許容される塩であってよい。例えば、中間体L−オルニチン塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ビトレート、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)またはリン酸塩であってよい。中間体の遊離酸は、フェニル酢酸より弱い酸であることが好ましい。いくつかの実施形態では、中間体は、フェニル酢酸のpKa値より高いpKa値を示すアニオン成分を有するL−オルニチン塩である。L−オルニチン酢酸塩についての例としては、酢酸およびフェニル酢酸はそれぞれ約4.76および4.28のpKa値を示す。
【0070】
【化3】
【0071】
いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートは、L−オルニチンベンゾエートなどの中間塩を生成することなく調製することもできる。スキーム4は、中間塩なしでL−オルニチンフェニルアセテートを調製するプロセスの例を示す。溶液から塩が沈殿するまで、L−オルニチン塩の溶液(例えば、スキーム4において式Iの化合物で例示される)にpH調節剤を加えることができる。その塩はL−オルニチン塩ではない。例として、溶液から塩化ナトリウムが沈殿してL−オルニチンの遊離塩基がもたらされるまで、ナトリウムメトキシド(NaOMe)をL−オルニチン塩酸塩の溶液に加えることができる。沈殿物は任意選択で、ろ過、遠心分離などの公知の手法を用いて溶液から単離することができる。L−オルニチンの遊離塩基(例えば、スキーム4において式I−aの化合物で例示される)を、フェニル酢酸またはその塩(例えば、スキーム4において式IVの化合物で例示される)と混合してL−オルニチンフェニルアセテートを得ることができる。次いで、式VのL−オルニチンフェニルアセテートを、上記したように単離することができる。
【0072】
【化4】
【0073】
pH調節剤は、塩基性化合物またはその無水前駆体および/または化学的に保護された塩基を含むことができる。pH調節剤の非限定的な例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロミドおよびその組合せが含まれる。加えるpH調節剤の量はやはり特に限定されないが;L−オルニチンとpH調節剤のモル比は任意選択で約10:90〜90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンとpH調節剤のモル比は約30:70〜30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンとpH調節剤のモル比は約40:60〜60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンとpH調節剤のモル比は約1:1である。いくつかの実施形態では、pH調節剤を加えて、pH値を少なくとも約8.0;少なくとも約9.0;または少なくとも約9.5に調節することができる。
【0074】
L−オルニチンフェニルアセテートを生成させる別の方法には、いくつかの実施形態では、L−オルニチンのアルカリ金属塩を酢酸フェニル塩と反応させる方法が含まれる。例として、L−オルニチン塩酸塩を銀酢酸フェニルおよび溶媒と混合することができる。次いで、AgClを沈殿させ、任意選択で溶液から単離することができる。残留L−オルニチンフェニルアセテートを、公知の方法を用いて単離することもできる。この方法は、上記したのと概ね同じ手順および条件を用いて遂行することができる。例えば、L−オルニチンと酢酸フェニルの相対モル量は、10:90〜90:10;30:70〜70:30;40:60〜60:40;または約1:1であってよい。また、L−オルニチンフェニルアセテートは、溶媒を蒸発させ、アンチソルベントを加え、かつ/または温度を低下させて単離することができる。
【0075】
L−オルニチンフェニルアセテートの組成物
L−オルニチンフェニルアセテートの組成物も本明細書で開示する。本出願の組成物は、少量の無機塩、特にアルカリ金属塩および/またはハライド塩を有することが有利であり、したがって、肝性脳症を有する患者への経口および/または静脈内投与に特に適している。その一方、これらの組成物は、他の塩(例えば、L−オルニチン塩酸塩と酢酸フェニルナトリウムの混合物)と比べて類似した安定性プロファイルを示すことができる。いくつかの実施形態では、組成物を、本出願で開示する方法の1つによって得ることができる。例えば、中間体としてL−オルニチンベンゾエートを用いる開示方法のどれによっても、本出願の組成物を得ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート(例えば、本明細書で開示する形態I、II、IIIおよび/またはV)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約20重量%の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート(好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートから本質的になる。いくつかの実施形態では、組成物は、形態I、II、IIIおよびVの少なくとも2つ(例えば、2つ、3つまたは4つの形態)の混合物を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は形態IIを含む。例えば、組成物は、少なくとも約20%;少なくとも約50%;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくとも約99%の形態IIを含むことができる。同様に、組成物は、例えば形態I、IIIまたはVも含むことができる。組成物は任意選択で、少なくとも約20%;少なくとも約50%;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくとも約99%の形態I、II、IIIおよび/またはVを含むことができる。
【0078】
無定形のL−オルニチンフェニルアセテートも本出願の範囲内である。無定形を調製するための様々な方法が当業界で知られている。例えば、L−オルニチンフェニルアセテートの溶液を、凍結乾燥によって真空下で乾燥して無定形組成物を得ることができる。P.C.T出願WO2007/058634を参照されたい。これは英語で公開されており、米国を指定している。凍結乾燥の方法についての開示を参照により本明細書に組み込む。
【0079】
組成物は、少量(もしあれば)のアルカリおよびハロゲンイオンまたは塩、特にナトリウムおよびクロリドを有することが好ましい。いくつかの実施形態では、その組成物は、約100ppm以下(好ましくは約20ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下)のアルカリ金属を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約100ppm以下(好ましくは約20ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下)のナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約0.1重量%以下(好ましくは約0.01重量%以下)のハライドを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約0.1重量%以下(好ましくは約0.01重量%以下)のクロリドを含む。
【0080】
アルカリ金属およびハライドの含量を減少させると、濃厚な等張液を調製するのに適した組成物が提供される。したがって、これらの組成物は、例えばL−オルニチン塩酸塩と酢酸フェニルナトリウムの混合物を投与するのに比べて、より簡単に静脈内で投与することができる。いくつかの実施形態では、水の中のL−オルニチンフェニルアセテートの約45〜約55mg/mL溶液(好ましくは約50mg/mL)が体液と等張性である(例えば、溶液は約280〜約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を示す)。
【0081】
組成物は、L−オルニチンフェニルアセテート組成物の製造プロセス中に生成した中間塩からの残留量のアニオンも含む可能性がある。例えば、本明細書で開示する方法のいくつかによって、安息香酸またはその塩を有する組成物がもたらされる。いくつかの実施形態では、その組成物は、少なくとも約0.01重量%(好ましくは少なくとも約0.05重量%、より好ましくは約0.1重量%)の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約3重量%以下(好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下)の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.01%〜約3重量%(好ましくは約0.1%〜約1%)の範囲の塩またはその酸を含む。その塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ビトレート、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)またはリン酸塩から選択される。
【0082】
同様に、酢酸塩中間体を用いて調製される組成物は、残留量の酢酸または酢酸塩を有することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約0.01重量%(好ましくは少なくとも約0.05重量%、より好ましくは約0.1重量%)の酢酸または酢酸塩を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約3重量%以下(好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下)の酢酸または酢酸塩を含む。
【0083】
組成物は少量の銀も含むことができる。本明細書で開示する方法の例は、例えば、安息香酸銀を使用するが、それでも、驚くほど少量の銀しか含まない組成物が得られる。したがって、いくつかの実施形態では、組成物は約600ppm以下(好ましくは約100ppm以下、より好ましくは約65ppm以下)の銀を含む。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約10ppmの銀(あるいは少なくとも約20または25ppmの銀)を含む。
【0084】
医薬組成物
本出願のL−オルニチンフェニルアセテートの組成物は、対象に(例えば、ヒト)に投与するように処方することもできる。L−オルニチンフェニルアセテート、したがって本明細書で開示する組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤と一緒に投与するように処方することができる。したがってL−オルニチンフェニルアセテートは、薬剤技術分野で慣行的であるような薬学的に許容される標準的な担体および/または添加剤を含む医薬品として処方することができる。その処方物の正確な特性は、所望の投与経路を含むいくつかの要素に依存することになる。一般に、L−オルニチンフェニルアセテートは、経口、静脈内、胃内、皮下、血管内または腹腔内投与用に処方する。
【0085】
薬剤用の担体または賦形剤は、例えば水または等張液、例えば水または生理食塩水の中の5%デキストロースであってよい。固体経口剤形は、活性化合物と一緒に、賦形剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはバレイショデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;起泡性混合物;染料;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸;および、一般に、薬剤処方物に使用される非毒性で薬理学的に不活性な物質を含むことができる。そうした医薬製剤は、例えば、混合、顆粒化、錠剤化、糖コーティングまたは膜コーティングプロセスによって公知の仕方で製造することができる。
【0086】
経口投与用の液体分散製剤は、シロップ剤、乳剤または懸濁剤であってよい。シロップ剤は、担体、例えばサッカロースまたはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールと一緒にしたサッカロースを含むことができる。
【0087】
懸濁剤および乳剤は、担体、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含むことができる。筋肉注射用の懸濁剤または液剤は、L−オルニチンフェニルアセテートと一緒に、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、望むなら適切な量のリドカイン塩酸塩を含むことができる。
【0088】
医薬品は、L−オルニチンフェニルアセテートおよび薬学的に許容される担体から本質的になってよい。したがって、そうした医薬品は、L−オルニチンおよび酢酸フェニルに加えて、他のアミノ酸を実質的に含有しない。さらに、そうした医薬品は、L−オルニチンフェニルアセテートの他には他の塩をごくわずかな量しか含まない。
【0089】
経口処方物は一般に、約500mg〜約100gの範囲のL−オルニチンフェニルアセテートの投薬量を含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、経口処方物は、約500mg〜約50gの範囲の本明細書で開示するL−オルニチンフェニルアセテート組成物を含む。いくつかの実施形態では、経口処方物は、アルカリ金属塩およびハライドを実質的に含まない(例えば、痕跡量以下のアルカリ金属塩およびハライドしか含まない)。
【0090】
静脈用処方物も一般に、約500mg〜約100g(好ましくは約1g〜約50g)の範囲のL−オルニチンフェニルアセテートの投薬量を含むことができる。いくつかの実施形態では、静脈用処方物は、アルカリ金属塩およびハライドを実質的に含まない(例えば、痕跡量以下のアルカリ金属塩およびハライドしか含まない)。いくつかの実施形態では、静脈用処方物は、約5〜約300mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテート濃度(好ましくは約25〜約200mg/mL、より好ましくは約40〜約60mg/mL)を有する。
【0091】
組成物または前記組成物を含む医薬品は任意選択で、密封した包装にすることができる。密封した包装物は、水分および/または外気がその組成物または医薬品と接触するのを軽減するまたは防止することができる。いくつかの実施形態では、その包装物は気密シールを含む。いくつかの実施形態では、その包装物は、真空下または不活性ガス(例えば、アルゴン)でその密封包装物内に密封される。したがって、包装物は、包装物内に貯蔵された組成物または医薬品の分解速度を抑制または低下させることができる。種々のタイプの密封包装物が当業界で公知である。例えば、米国特許第5,560,490号(その全体を参照により本明細書に組み込む)は医薬品用の密封包装の例を開示している。
改善された密度を有する組成物
【0092】
出願人らは、驚くべきことに、形態I(以下で説明する)を有する組成物に、形態II(以下で説明する)への転移を誘発するのに十分な圧力を印加することによって、より高い密度を有する組成物を得ることができることを見出した。例えば、3トンの力を形態Iおよび形態IIに90分間印加すると、それぞれ1.197kg/m3および1.001kg/m3の密度が得られる。驚くべきことに、こうした条件下で形態Iは形態IIに転移する。したがって、より高い密度は、出発原料とは異なった結晶形態によって説明されるようである。
【0093】
したがって、その組成物に、形態IIへの転移を誘発するのに十分な圧力を印加することによって、形態Iを有するL−オルニチンフェニルアセテート組成物の密度を増大させる方法を本明細書で開示する。相変化を誘発させるための適切な力または圧力の量は、力または圧力が印加される時間量とともに変化し得る。したがって、当業者は、本出願の教示にしたがって、相変化を誘発するのに適した圧力および時間の量を決定することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも約1トン(好ましくは少なくとも約2トン、より好ましくは約3トン)の力を印加する。いくつかの実施形態では、少なくとも約500psi(好ましくは少なくとも約1000psi、より好ましくは少なくとも約2000psi)の圧力を印加する。
【0094】
圧力を印加する時間量は特に限定されず、上記で論じたように、それは、時間量に応じて変わってくる。例えば、典型的な錠剤サイズのパンチに大きな力(例えば、10トン)を印加する場合、その時間は約1秒以下であってよい。いくつかの実施形態では、圧力印加のための時間は予め決められた時間である。その時間は、例えば、約0.1秒間;約1秒間;少なくとも約1分間;少なくとも約5分間;または少なくとも約20分間であってよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約10重量%の形態Iを含む。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約30重量%の形態Iを含む。
【0096】
特定の理論に拘泥するわけではないが、出願人らは、より高い密度は、少なくとも一部は形態I中に存在するエタノール溶媒和物成分からもたらされると考える。溶媒和物に圧力を印加すると、欠陥(例えば、粒界)がより少ない密な構造を形成するのを容易にすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒和物成分を有するL−オルニチンフェニルアセテート組成物の密度を増大させる方法は、形態IIへの転移を誘発するのに十分な圧力を組成物に印加することを含む。いくつかの実施形態では、その圧力は少なくとも約500psi(好ましくは少なくとも約1000psi、より好ましくは少なくとも約2000psi)である。いくつかの実施形態では、圧力を印加する時間は、予め決められた時間である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約10%(好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%)の溶媒和物形態を含む。
【0097】
したがって、本明細書で開示するL−オルニチンフェニルアセテートの組成物は、例えば、結晶形態を沈殿させて得られる組成物と比べて、より高い密度を有することができる。いくつかの実施形態では、その組成物は、少なくとも約1.1kg/m3(好ましくは少なくとも約1.15kg/m3、より好ましくは少なくとも約1.18kg/m3)の密度を有する。いくつかの実施形態では、その組成物は、約1.3kg/m3以下(好ましくは約1.25kg/m3以下、より好ましくは約1.22kg/m3以下)の密度を有する。いくつかの実施形態では、その組成物は約1.2kg/m3の密度を有する。
L−オルニチンフェニルアセテートの結晶形態
【0098】
結晶形態、特に結晶形態I、形態II、形態IIIおよび形態VのL−オルニチンフェニルアセテートも本明細書で開示する。いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートを、上記に開示した方法を用いて得、次いでこれを本明細書で開示する方法のいずれかを用いて結晶化することができる。
【0099】
形態I
結晶形態Iを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0100】
したがって、例えば、結晶形態Iは一般に、制御された条件下で、L−オルニチンフェニルアセテートを結晶化させることによって得ることができる。例として、低温(例えば、4℃または−21℃)でエタノールを加えることによって、飽和溶液からL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させることができる。エタノールを加えると結晶形態Iをもたらす溶液のための溶媒の例には、これらに限定されないが、シクロヘキサノン、1−プロパノール、炭酸ジメチル、N−メチルピロリジン(NMP)、ジエチルエーテル、2−ブタノール、クメン、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、3−ネチル−1−ブタノール(3-nethyl-l-butanol)およびアニソールが含まれる。
【0101】
したがって、上記に開示したL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセスの関連では、そのプロセスは、特定の単離方法を用いて形態Iを提供することができる。例えば、エタノールを低温で加えることによって、L−オルニチンフェニルアセテートを単離させて形態Iを得ることができる。
【0102】
実験方法の部でさらに詳細に説明する様々な手法を用いて、結晶形態Iの特性評価をした。図1は粉末X線回折(XRPD)で測定した形態Iの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態Iは約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの特性ピーク)を有する。
【0103】
当業界ではよく理解されているように、X線回折パターンを異なる機器で測定した場合の実験的な変動性のため、2シータ(2θ)値が0.2°内(すなわち、±0.2°)で一致すれば、そのピーク位置は同等であると見なされる。例えば、米国薬局方は、10個の最強回折ピークの角度設定が±0.2°以内で標準物質のそれと一致し、かつ、そのピークの相対強度が20%を超えて変動しなければ、その同一性は確認されたものとすると述べている。したがって、本明細書で示す位置の0.2°以内のピーク位置は同一であると見なす。
【0104】
図2は、形態Iについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は35℃での吸熱を示しており、これは多分、形態IIへと脱溶媒和および/または脱水していることと関連している。約203℃での第2の転移は結晶の融点を示している。脱溶媒和および/または脱水転移の存在の可能性を調べるため、形態Iを熱重量的重量/示差熱分析(TG/DTA)で分析した。これを図3に示す。形態Iは約35℃で11.28%の重量損失を示しており、したがって、これらの結果は、形態Iが約35℃で脱溶媒和および/または脱水転移を示していることをさらに示唆している。約203℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約35℃で吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、TGAで測定して約35℃で約11%の重量損失を示す。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約203℃の融点を示す。
【0105】
図4は、形態Iについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分によって、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;1.2、0.25、0.5、0.5、1.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位とのプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図5は、形態Iについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約0.2重量%の水の取り込みを示す。DVA分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態Iは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形態Iは、非吸湿性であり、広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0106】
40℃/75%RHでの形態Iの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転移が起こったことを示した。形態Iはまた、高温(例えば、80℃または120℃)でも、真空をかけてもかけなくても、7日または14日後、形態IIに転換される。したがって、形態Iは準安定性である。
【0107】
−20℃および−123℃での形態Iの構造を決定するために単結晶X線回折(SXRD)も用いた。その結果を表1および表2にまとめる。その結果から、形態Iが、単位格子内にエタノールおよび水分子を有する溶媒和物であることが確認される。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式C5H28N2O6で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式[C5H13N2O2][C8H7O2]EtOH.H2Oで表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°の単位格子寸法;単斜晶系およびP21空間群を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
形態II
結晶形態IIを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0111】
したがって、例えば、結晶形態IIは、制御された条件下で結晶化させることによって調製することができる。結晶形態IIは、例えばL−オルニチンフェニルアセテートの飽和有機溶液を蒸発させることによって調製することができる。形態IIを得るのに使用できる有機溶液の非限定的例には、エタノール、アセトン、ベンゾニトリル、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトニトリル(MeCN)、酢酸メチル(MeOAc)、ニトロメタン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフランおよびトルエンが含まれる。これらに限定されないが、1,4ジオキサン、1−ブタノール、シクロヘキサン、IPA、THF、MEK、MeOAcおよび水などの他の溶媒は、形態Iと形態IIの混合物をもたらすことができる。
【0112】
形態IIは、IPAなどのL−オルニチンフェニルアセテートのためのアンチソルベントを加えて、飽和有機溶液からL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させることによっても得ることができる。形態IIは、広い温度範囲(例えば、室温、4℃および−21℃)にわたって沈殿させることができる。飽和有機溶液に適した溶媒の非限定的な例には、シクロヘキサノン、1−プロパノール、炭酸ジメチル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、2−ブタノール、クメン、酢酸イソブチル、3−メチル−1−ブタノールおよびアニソールが含まれる。あるいは、ここに挙げた同じ溶媒(例えば、シクロヘキサノン)を、L−オルニチンフェニルアセテートの溶液を生成させるのに用いることができ、形態IIは、周囲条件でエタノールを加えることによって沈殿させることができる。別の例として、形態IIは、上記に挙げた有機溶媒を用いてL−オルニチンフェニルアセテートのスラリーを形成させ、25℃と40℃の間を4時間ごとに約18サイクル(すなわち72時間)繰り返すことによっても得ることができる。
【0113】
したがって、上記に開示したL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセスの関連では、そのプロセスは、特定の単離方法を用いて形態IIを提供することができる。例えば、IPAを加えるか、または有機溶媒を蒸発させることによってL−オルニチンフェニルアセテートを単離して形態IIを得ることができる。
【0114】
図6は、XRPDで測定した形態IIの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態IIは約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.12°θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの特性ピーク)を有する。
【0115】
図7は、形態IIについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は約202℃の融点を示しており、形態Iの融点とほぼ同じである。これは、約35℃超で加熱すると、形態Iが形態IIに転移したことを示唆している。図8に示すように、形態IIも、やはりTG/DTAを用いて分析した。これは、残留溶媒に伴う約9.7%の重量損失を示している。約202℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約202℃の融点を示す。
【0116】
40℃/75%RHでの形態IIの7日間安定性試験では、観測できる相変化を得ることはできなかった。実際、高温、様々なpH、紫外線または酸素に曝露しても、形態IIは14日間安定であった。したがって、形態IIは安定であると考えられる。
【0117】
図9は、形態IIについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分から、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;7.0、1.4、2.9、3.0、5.9)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位とのプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図10は、形態IIについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約0.3重量%の水の取り込みを示す。DVA分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態IIは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形態IIは、非吸湿性であり、広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0118】
23℃および−123℃での形態IIの構造を決定するために単結晶X線回折(SXRD)も用いた。結果を表3および表4にまとめる。その結果は、形態IIは無水であり、したがって構造的に形態Iと異なっていることを示している。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式C13H20N2O4で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式[C5H13N2O2][C8H7O2]で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:a=6.594(2)Å、α=90°、b=6.5448(18)Å、β=91.12(3)°、c=31.632(8)Å、γ=90°の単位格子寸法;単斜晶系;およびP21空間群を有する単結晶X線結晶学的解析を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
形態III
結晶形態IIIを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0122】
したがって、例えば、形態IIIは、L−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液を、約−21℃の冷却した温度環境に置くことによって得ることができる。この溶液はアセトンと水の混合液である(例えば、等体積部のアセトンと水)。別の例として、2−ブタノール中のL−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液にIPAを加えて周囲条件で完結させると、形態IIIを得ることができる。さらに、形態IIIは、例えば酢酸イソブチル中のL−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液にIPAを加えて約−21℃の低温で完結させることによって得ることができる。
【0123】
したがって、上記に開示したL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセスの関連では、そのプロセスは、特定の溶媒および単離方法を用いて形態IIIを提供することができる。例えば、L−オルニチンフェニルアセテートを、アセトンと水の混合液中で生成させ、続いて約−21℃の冷却環境に置いて形態IIIを生成させることができる。
【0124】
図11は、XRPDで測定した形態IIIの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態IIIは約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの特性ピーク)を有する。
【0125】
図12は、形態IIIについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は約203℃の融点を示しており、形態Iおよび形態IIの融点とほぼ同じである。さらに、形態IIIは約40℃での吸熱を示す。図13に示すように、形態IIIもTG/DTAで分析した。これは、融点前での有意の重量損失を示していない。したがって、形態IIIは無水であると特徴づけることができる。約203℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約203℃の融点を示す。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは無水である。
【0126】
40℃/75%RHでの形態IIIの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転移が起こったことを示している。これに対して、形態IIは、真空下であっても真空下でなくても、高温で7日間または10日間安定である。したがって、形態IIIはたぶん準安定性である。しかし、形態Iより安定である。
【0127】
図14は、形態IIIについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分から、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;4.2、0.8、1.7、1.7、3.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位との両方におけるプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図15は、形態IIIについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約2.0重量%の水の取り込みを示す。DVS分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態IIIは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形態IIIは、形態IおよびIIと比べてより大きい水の取り込みを示すが;形態IIIはそれでも、非吸湿性であり、室温で広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0128】
形態V
結晶形態Vを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0129】
したがって、例えば、形態Vは、L−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液を、約−21℃の冷却した温度環境に置くことによって得ることができる。この溶液はシクロヘキサノンである。別の例として、溶媒を蒸発させると、同じ飽和溶液によって形態Vが得られる。
【0130】
形態Vはまた、溶媒としてジイソプロピルエーテルを含むL−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液から形成される。例えば、約1〜2のジイソプロピルエーテルとIPAの溶媒比を有する飽和溶液は、約4℃の冷却した温度環境に置くと形態Vをもたらす。同様に、溶媒ジイソプロピルエーテルだけを含む溶液は、約−21℃の冷却した温度環境に置くと形態Vをもたらすことができる。
【0131】
図16は、XRPDで測定した形態Vの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態Vは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの特性ピーク)を有する。
【0132】
図17は、形態Vについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は約196℃の融点を示しており、これは他の形態の融点より低い。形態Vはまた約174℃での吸熱も示す。図18に示すように、形態Vも熱重量分析(TGA)を用いて分析した。これは、融点前での有意の重量損失を示していない。したがって、形態Vは無水であると特徴づけることができる。約196℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約196℃の融点を示す。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは無水である。
【0133】
図19は、形態Vについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分から、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;4.2、0.8、1.7、1.7、3.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位との両方におけるプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図19は、形態Vについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約0.75重量%の水の取り込みを示す。DVS分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態Vが形態IIに転移していることが示唆されるが、その化学組成は変化していなかった。したがって、形態Vは、非吸湿性であるが、広範な湿度にわたって安定でないと特徴づけることができる。
【0134】
40℃/75%RHでの形態Vの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転移が起こったことを示しているが、化学組成は変化していなかった。したがって、形態Vはたぶん準安定性である。
【0135】
肝臓代償不全または肝性脳症の治療方法
L−オルニチンフェニルアセテート、およびそれに応じた本明細書で開示するL−オルニチンフェニルアセテートの組成物のいずれかを、肝臓代償不全または肝性脳症の発症を治療または改善するために対象に投与することができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートを、対象、例えば誘発事象に続く慢性の肝疾患に苦しむ患者の状態を改善するために投与することができる。別の例として、L−オルニチンフェニルアセテートを、肝臓代償不全または肝性脳症の発症と闘うかまたはそれを遅延させるために投与することができる。
【0136】
L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症を治療するために対象に組み合わせて投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症に苦しむ患者の状態を改善するために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症に伴う症状を緩和させるために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症と闘うために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードの可能性を防止または軽減するために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードの重症度を軽減するために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードを遅延させるために投与することができる。
【0137】
肝臓代償不全および肝性脳症の発症は一般に、「誘発事象」(または「急性発作」)を伴う。そうした誘発事象には、胃腸出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水が含まれる。そうした急性発作の発症は、入院に至る可能性がある。患者は、これらの急性発作の1つまたはこれらの急性発作の組合せに苦しむ可能性がある。
【0138】
急性発作起こすかまたは起こしたことが疑われる患者を、L−オルニチンフェニルアセテートを用いて本発明にしたがって治療して、肝臓が代償不全状態へと進行する可能性を防止または軽減させる。その結果として、L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症などの肝臓代償不全の医学的結果の可能性を防止または軽減させることができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝機能を保持するために使用することができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートの使用は、肝疾患を有する患者の生活にまで拡大される。一実施形態では、高アンモニア血症などの胃腸出血、ヒポイソリューケミア(hypoisoleucemia)および出血後の期間の低タンパク質合成の代謝結果がもたらされるのを防止する。
【0139】
一般に、対象の治療は、誘発事象(急性発作)が発現しているかまたはその発現が疑われた後、できるだけ速やかに開始される。対象の治療は、急性発作が繰り返される前に開始されることが好ましい。対象の治療は、最初の急性発作に続いて開始されることがより好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートで治療される対象は、誘発事象(急性発作)が発現しているかまたはその発現の疑いがあることが特定されている。
【0140】
治療は通常、急性発作が始まった後、早急になされる。治療は、例えば内科医などの医者、診療補助者または看護婦によって、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、開始され得る。治療は、対象が入院したら開始することができる。したがって、治療を、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、6時間以内、3時間以内、2時間以内または1時間以内に開始することができる。したがって、対象の治療を、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、1〜48時間、例えば1〜36時間または1〜24時間で開始することができる。
【0141】
治療は、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、最大で8週間、例えば最大で6週間、最大で4週間または最大で2週間行うことができる。したがって、治療は、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、最大で48時間、例えば最大で36時間または最大で24時間行うことができる。一般に、治療は、急性誘発事象からの回復が明らかになる時まで行う。
【0142】
L−オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症を治療または改善するためにも用いることができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートは、過剰の血中アンモニア濃度を有すると特定された患者、または過剰の血中アンモニアの症状を示す患者に投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症のリスクを低下させるためにも投与することができる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートは、無期限に毎日投与することができる。例えば、1日の服用量を、一生患者に投与するか、または、患者に高アンモニア血症のリスクがもはや見られないと内科医が判断するまで投与することができる。いくつかの実施形態では、治療有効量のL−オルニチンフェニルアセテートを投与すると、高アンモニア血症のリスクが軽減される。いくつかの実施形態では、治療有効量のL−オルニチンフェニルアセテートを、高アンモニア血症の予防のために経口で投与する。
【0143】
治療有効量のL−オルニチンフェニルアセテートを対象に投与する。当業者には容易に分かるように、投与されるインビボでの有用な投薬量および具体的な投与方式は、年齢、体重、苦痛の重症度および治療を受ける哺乳類種、使用する具体的な化合物ならびにそのためにこれらの化合物を用いる具体的な使用に応じて変わってくる(例えば、Finglら、1975年、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”を参照されたい。特に1章、1頁を参照して、この全体を参照により本明細書に組み込む)。当業者は、所望の結果を実現するのに必要な投薬量レベルである有効な投薬量レベルの判定を、慣用的な薬理学的方法を用いて実施することができる。一般に、生産物のヒトへの臨床的応用は、低い投薬量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増大させてゆく。あるいは、許容されるインビトロでの試験を用いて、確立された薬理学的方法を用いて本発明により特定された組成物の有用な用量および投与経路を確立することができる。
【0144】
L−オルニチンフェニルアセテートの典型的な用量は、約0.02〜約1.25g/kg体重(好ましくは約0.1〜約0.6g/kg体重)であってよい。したがって、投薬量は約500mg〜約50g(好ましくは約5g〜約40g、より好ましくは約10g〜約30g)であってよい。
【0145】
単一の日用量を投与することができる。あるいは、複数用量、例えば2、3、4または5用量を投与することができる。そうした複数用量を、1か月、2週間または1週間にわたって投与することができる。いくつかの実施形態では、単一用量、または2、3、4または5用量などの複数用量を毎日投与することができる。
【0146】
実施例および実験方法
追加の実施形態を、以下の実施例でさらに詳細に開示する。これらは、特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0147】
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析は、Bruker D8 advanceまたはSeimens D5000を用いて、サンプルを4°〜50°2θでスキャニングして実施した。Bruker D8装置を用いた実施形態では、約5mgのサンプルを、XRPDゼロバックグラウンドの単一96ウェルプレートサンプル保持器上で穏やかに圧縮した。次いで、サンプルを、Bruker D8−Discover回折計に透過モードでロードし、以下の実験条件を用いて分析した。
オペレーター D8−Discover
生データ由来 BRUKERバイナリV3(.RAW)
走査軸 Gonio
開始位置[°2θ] 4.0000
終了位置[°2θ] 49.9800
ステップサイズ[°2θ] 0.0200
走査ステップ時間[s] 39.1393
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0000
発散スリットタイプ 固定型
発散スリットサイズ[°] 2.0000
試料長さ[mm] 10.00
受光スリットサイズ[mm] 0.1000
測定温度[℃] 25.00
陽極材料 Cu
K−α1[Å] 1.54060
K−α2[Å] 1.54443
K−β[Å] 1.39225
K−A2/K−A1比 0.50000
発電機設定 40mA、40kV
回折計タイプ 不明
回折計数 0
ゴニオメーター半径[mm] 250.00
焦点距離(Dist. Focus)−発散スリット[mm] 91.00
入射ビームモノクロメーター なし
回転 なし
【0148】
Seimens D5000装置を用いた実施形態では、約5mgのサンプルを、保持用グリースの薄層を含むスライドガラス上に穏やかに圧縮した。次いでサンプルを反射モードで稼働するSeimens D5000回折計にロードし、回転させながら、以下の実験条件を用いて分析した。
生データ由来 SiemensバイナリV2(.RAW)
開始位置[°2θ] 3.0000
終了位置[°2θ] 50.000
ステップサイズ[°2θ] 0.0200
走査ステップ時間[s] 0.8
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0000
発散スリットタイプ 固定型
発散スリットサイズ[°] 1.0000
試料長さ[mm] さまざま
受光スリットサイズ[mm] 0.2000
測定温度[℃] 20.00
陽極材料 Cu
K−α1[Å] 1.54060
K−α2[Å] 1.54443
K−β[Å] 1.39225
K−A2/K−A1比 0.50000(公称)
発電機設定 40mA、40kV
回折計タイプ d5000
回折計数 0
ゴニオメーター半径[mm] 217.50
入射ビームモノクロメーター なし
回折ビームモノクロメーター(黒鉛)
回転 有り
【0149】
単結晶X線回(SXRD)
すべての測定を、Mo−Kα放射線で操作するBruker Smart Apex回折計を用いて実施した。別段の指定のない限り、データは、2θおよびφの3つの別個の設定で集めた60ω−スキャン10sイメージで得た。
【0150】
示差走査熱量測定(DSC)
約5mgのサンプルを、アルミ製DSCパン中に量り込み、穴のあいたアルミふた(密閉せずに)でシールした。次いで、サンプルパンをSeiko DSC6200(冷却器付き)にロードし、冷却し、25℃で保持した。安定した熱流応答が得られたら、サンプルと標準品を10℃/分の走査速度で約250℃に加熱し、得られる熱流応答をモニターした。分析する前に、装置を、インジウム参照標準品を用いて温度と熱流について較正した。サンプル分析を、熱事象の温度を開始温度の値とするMuse測定ソフトウェアで実施し、メーカーの仕様書にしたがって測定した。
【0151】
熱重量分析重量/示差熱分析(TG/DTA)
約5mgのサンプルを、アルミ製パン中に量り込み、熱重量/示差熱同時分析器(DTA)にロードし、室温で保持した。次いで、サンプルを、10℃/分の速度で25℃から300℃まで加熱した。その間、サンプル重量の変化を熱事象(DTA)とともにモニターした。パージガスとして窒素を20cm3/分の流量で使用した。分析する前に、装置を、100mg参照重量とインジウム参照標準品をそれぞれ用いて温度と熱流について較正した。
【0152】
動的蒸気収着(DVS)
約10mgのサンプルを金網式蒸気収着バランスパンに入れ、Scientific and Medical Systems(SMS)より入手したDVS−I動的蒸気収着バランスにロードした。次いで、サンプルを、重量変化が認められなくなるまで0%の湿度環境に保持して乾燥した。次いで、サンプルを、各ステップで安定重量が達成されるまで(99.5%、ステップが完了するまで)サンプルを保持しながら、10%の増分で0から90%の相対湿度(RH)の傾斜プロファイルにかけた。収着サイクルが完了した後、同じ手順を用いてサンプルを乾燥した。サンプルの吸湿特性を測定できるようにするために、収着/脱着サイクルの間の重量変化をプロットした。
【0153】
1H核磁気共鳴(NMR)
1H NMRはBruker AC200を用いて実施した。各サンプルのNMRをd−H2Oで実施し、各サンプルを約5mgの濃度で調製した。L−オルニチンベンゾエートおよびL−オルニチンフェニルアセテートについてのNMRスペクトルを、それぞれ図21および図22に示す。
【0154】
溶解度近似
おおよそ、25mg部のサンプルをバイアルに入れ、適切な溶媒系を5倍の体積増分で加えた。各添加の間に、その溶解について混合物をチェックし、溶解が明らかでなかった場合、混合物を50℃に加温し、再度チェックした。溶解が認められるか、または、100倍の体積の溶媒が加えられるまでこの手順を続行した。
【0155】
HPLC溶解度測定
各溶媒のスラリーを調製し、サンプルを25℃で約48時間振とうさせた。次いで、フィルターを通して各サンプルを取り出し、ろ液を分析用のHPLCバイアルに移した。データから、各溶媒についてのL−オルニチンフェニルアセテートの溶解度を決定した。
【0156】
温度サイクル実験
溶解度近似により集めた情報を用いて、サンプルのスラリーを24の選択された溶媒系で調製した。スラリーを、4時間サイクルで72時間、40℃または25℃での温度サイクルにかけた。固体を、何らかの明白な分解の兆候(すなわち、色の変化)がないか目視でチェックし、分解していなかったら、ろ過により単離した。分析する前に、固体を周囲条件で約24時間乾燥させた。
【0157】
急速冷却(Crash Cooling)実験
急速冷却実験を、サンプルの飽和溶液を、4℃および−21℃の環境で約48時間、24の選択された溶媒系中に置いて実施した。固体物質をすべて回収し、分析する前に、固体を周囲条件で約24時間乾燥させた。
【0158】
蒸発実験
蒸発実験を、周囲条件でサンプルの飽和溶液を自由に蒸発させて実施した。次いで、乾燥するまで蒸発させた後、固体物質を回収して分析した。
【0159】
アンチソルベント添加実験
アンチソルベント添加実験を、アンチソルベントをサンプルの飽和溶液に加えて実施した。さらなる沈殿が無くなるまで添加を続行し、サンプルを24時間様々な温度、高周囲温度、4℃または−21℃に調節した。次いで固体を単離し、周囲条件で約24時間かけて乾燥して分析した。
【0160】
偏光顕微鏡法(PLM)
高解像度Leicaカメラおよび画像キャプチャソフトウェア(Firecam V.1.0)を備えたLeica Leitz DMRB偏光型光学顕微鏡を用いて、結晶性(複屈折)の存在を判定した。別段の言及のない限り、画像はすべて10×対物レンズを用いて記録した。
【0161】
銀分析
銀分析はすべてAgilent7500ce ICP−MSで実施した。
【0162】
固有溶解速度
物質を金型(直径12mm)に入れ、液圧プレスで5トンの圧力を約2分間金型にかけることによって、約100mgの各形態を圧縮してディスクにした。溶解装置Sotax AT7はEP2およびUSP2で適合するものであり、ここでは、パドルを用いて媒体を攪拌した。各形態を、静止ディスクモード(すなわち、ディスクを時間=0秒の時点で加え、媒体の底部に沈めた)で、以下のpH条件下、すなわち;1.0、4.5および6.7で試験した。1cm3の分量の媒体を、溶解ポットから10、20、30、40、50、60、70、80および120秒の時点で抜き出し、HPLCでAPI濃度を試験した。溶解曲線をプロットし、曲線上の最初の6点または7点から、固有溶解速度曲線を算出した。すべての試験を37℃、150rpmのパドル速度で実施した。
HPLC−UV 装置詳細
装置: Agilent 1200
カラム: Gemini C18、5μm、150.0×4.6mm
カラム温度: 40℃
移動相A: リン酸緩衝液
移動相B: アセトニトリル
溶出: 勾配法
λ: 210nm
注入量: 10μL
流量: 1mL/分
【0163】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
サンプルを含む溶液の小スポットを、プレートの基底から約1cmの位置に塗布した。次いでプレートを、メタノール:酢酸エチル(95:5)の混合溶媒を入れたTLC槽(密封容器)中に浸漬させる。溶媒は毛細管作用によりプレート上を移動しサンプル混合物と出会い、この混合物は溶解され、混合溶媒によりプレートの上方へ運ばれる。スポット数を記録し、各スポットについてRf値を算出した。
【0164】
赤外(IR)
赤外線分光分析をBruker ALPHA P分光計で実施した。十分な量の物質を、分光計のプレート上の中心に置き、以下のパラメーターを用いてスペクトルを得た:
分解能: 4cm−1
バックグラウンド走査時間: 16スキャン
サンプル走査時間: 16スキャン
データ収集: 4000〜400cm−1
結果スペクトル: 透過
ソフトウェア: OPUSバージョン6
【0165】
安定性試験:pH1、4、7、10および14の環境
スラリー(過飽和溶液:溶解がそれ以上認められなくなるまで約250μlのpH溶液および固体を加え、約100mgの固体がスラリー中に存在した)を、各形態について、様々なpH環境、すなわち;1、4、7、10および13.2で調製した。スラリーを14日間絶えず振とうさせ、7日目と14日目に測定を行った。各pHについて適切な緩衝液を調製した。さらに詳細に以下で説明する。
【0166】
pH値1を有する緩衝液を、372.75mgの塩化カリウムを25mlの脱イオン水に溶解して0.2M溶液を得ることによって調製した。続いて、67mlの0.2M塩酸(これは5M溶液から調製した;10mlを40mlの脱イオン水に加えて1M溶液を得、これをさらに希釈した;20mlを80mlの脱イオン水に加えて所定の0.2M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0167】
pH値4を有する緩衝液を、1.02gのフタル酸水素カリウムを50mlの脱イオン水に溶解して0.1M溶液を得ることによって調製した。
【0168】
pH値7を有する緩衝液を、680.00mgの一塩基性リン酸カリウムを50mlの脱イオン水に溶解して0.1M溶液を得ることによって調製した。続いて、29.1mlの0.1M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;5mlを45mlの脱イオン水に加えて所定の0.1M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0169】
pH値10を有する緩衝液を、210.00mgの重炭酸ナトリウムを50mlの脱イオン水に溶解して0.05M溶液を得ることによって調製した。続いて、10.7mlの0.1M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;5mlを45mlの脱イオン水に加えて所定の0.1M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0170】
pH値13.2を有する緩衝液を、372.75mgの塩化カリウムを25mlの脱イオン水に溶解して0.2M溶液を得ることによって調製した。続いて、66mlの0.2M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;20mlを80mlの脱イオン水に加えて所定の0.2M溶液を得た)を加えて、pHを13にした。次いで1M水酸化ナトリウムを滴下して所望のpHを得た。
【実施例1】
【0171】
結晶形態の沈澱化
L−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液に、上記したような温度サイクル、急速冷却、蒸発またはアンチソルベント添加を施した。沈殿物をPLMおよびXRPDで分析して結晶形態(もしあれば)を判定した。結果を表5にまとめる。
【0172】
沈殿試験により、6つの独特の結晶形態、形態I〜VIを特定した。しかし、形態IVおよびVIは酢酸の溶液から得られ、NMR結果よりこれらの例がL−オルニチン酢酸塩であることが確認された。その一方、試験540〜611では、もともとエタノールアンチソルベントを添加して単離したL−オルニチンフェニルアセテートのサンプルを用いた。これらの例の多くは、エタノール溶媒和物である形態Iをもたらした。したがって、これらのサンプルは、もともと残留エタノールを含んでいたと考えられる。したがって、もとのサンプルが残留エタノールを含んでいない場合、形態Iは特定の条件についてそれを再現することはできない。
【0173】
【表5】
【実施例2】
【0174】
固有溶解試験
形態I、IIおよびIIIについての固有溶解速度を1.0、4.5および6.7のpH条件で測定した。結果を下記表6に再現する。それぞれの場合、3分未満で完全な溶解が達成された。驚くべきことに、形態IIについては、pHとともに固有溶解速度が増大するpH依存性が観察された。これに対して、形態IおよびIIIは、pHとは独立した速度で溶解するようである。
【0175】
【表6】
【実施例3】
【0176】
溶解度試験
上記に開示した方法にしたがって、L−オルニチンフェニルアセテートの溶解度の概略値を得た。24の溶媒系を試験した:1,4ジオキサン、1−ブタノール、エタノール、アセトン、ベンゾニトリル、シクロヘキサン、DCM、DMSO、EtOAc、ヘプタン、IPA、IPA(1%H2O)、MeCN、MeCn(1%H2O)、MEK、MeOAc、メタノール、MIBK、ニトロメタン、THF、THF(1%H2O)、トルエンおよび水。L−オルニチンフェニルアセテートは、水への溶解性を示したが、L−オルニチンフェニルアセテートは、残りの溶媒系にはほぼ不溶性であった。
【0177】
L−オルニチンフェニルアセテートの水スラリーも調製し、スラリーをろ過した。ろ液濃度をHPLCで分析した。結果はL−オルニチンフェニルアセテートの溶解度が約1.072mg/mLであることを示す。
【0178】
HPLCによる溶解度測定は、5つの溶媒:エタノール、アセトン、メタノール、DMSOおよびIPAについても実施した。これらの結果を表7にまとめる。
【0179】
【表7】
【0180】
これらの結果は、アセトンとIPAの両方が、アンチソルベントとしてL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させるのに適していることを示している。これに対して、測定可能な溶解度を有する溶媒は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させるのには好都合ではない。
【0181】
最後に、HPLCを用いてIPAと水の様々な混合液へのL−オルニチンフェニルアセテートの溶解度を測定した。結果を表8に示す。
【0182】
【表8】
【実施例4】
【0183】
L−オルニチンフェニルアセテートを作製するための小規模回分プロセス
約8.4g(0.049モル)のL−オルニチンHClを42mLのH2Oに溶解させ、別途、約11.4gの安息香酸銀を57mLのDMSOに溶解させた。続いて、安息香酸銀溶液をL−オルニチンHCl溶液に加えた。2つの混合物を一緒にすると発熱的沈殿により、中間体のクリーム状白色固体(AgCl)が得られた。固体を真空ろ過により除去すると、ろ液(溶液中のL−オルニチンベンゾエート)が得られた。200mLのIPAをろ液に加え、混合物を4℃に冷却した。約3時間後に結晶性固体(L−オルニチンベンゾエート)が沈澱した。これを真空ろ過により単離した。収率:60%
【0184】
7.6g(0.03モル)のL−オルニチンベンゾエートを38mLのH2Oに溶解し、約4.4gの酢酸フェニルナトリウムを22mLのH2Oに溶解した。続いて、酢酸フェニルナトリウム溶液をL−オルニチンベンゾエート溶液に加え、約10分間攪拌した。約240mLのIPA(8:2 IPA:H2O)を加え、溶液を30分間攪拌し、次いで4℃に冷却した。4℃で約3時間後に結晶性固体が沈澱した(L−オルニチンフェニルアセテート)。真空ろ過により沈殿物を単離し、48〜144mLのIPAで洗浄した。収率:57%。
【実施例5】
【0185】
L−オルニチンフェニルアセテートを作製するための大規模回分プロセス
L−オルニチンフェニルアセテートの2つの別個のバッチを以下のようにして調製した。
【0186】
約75KgのL−オルニチン一塩酸塩を227kgの水に溶解した。得られた溶液に、266kgのDMSOに溶解した102Kgの安息香酸銀を室温で2時間以内に加えた。最初に、激しい発熱が観察され、塩化銀が沈澱してきた。次いで、溶液を含む受器を、反応マスに加えた14KgのDMSOで洗浄した。生成した塩化銀を除去するために、反応マスを、10kgのセライト(Celite)と1mmのGAFフィルターで作製したレンズフィルターでろ過した。ろ過後、フィルターを追加の75kgの水で洗浄した。次いで反応マスを35±2℃で加熱し、80kgの酢酸フェニルナトリウムを加えた。この時点で、反応マスを35±2℃で少なくとも30分間攪拌した。
【0187】
最終APIを沈澱させるために、353kgのイソプロピルアルコールを反応マスに加えた。次いで反応マスを6時間以内に0±3℃に冷却し、1時間攪拌し、次いで生成物を遠心分離機で単離した。
【0188】
約86kgの最終湿潤生成物を得た。次いで、生成物を40±5℃で約6.5〜8時間かけて乾燥して約75kgのL−オルニチンフェニルアセテートを得た。収率:63.25。表9に最終生成物に関する測定をまとめる。
【0189】
【表9】
【実施例6】
【0190】
L−オルニチンフェニルアセテート中の銀含量の低減
実施例5からのバッチ2は多量の銀(157ppm)を示した。したがって、銀含量を低減させるための手順を試験した。9つの試行を実施した;それぞれ概略、バッチ2からの約20gのL−オルニチンフェニルアセテートを1.9部の水に溶解するステップと、次いで10.8部のIPAを加えるステップを含む。結晶形態はろ過により0℃で単離した。
【0191】
4つの試行については、8.0mgまたは80mgの重金属捕捉剤SMOPEX102またはSMOPEX112をその水溶液に加え、2時間攪拌した。捕捉剤は、銀含量を126ppm未満に低減することはできなかった。その一方、他の試行では上記に開示した一般条件を施して銀含量は179ppmに減少した。さらに他の試行では、L−オルニチンフェニルアセテートを、結晶化させるのではなく、IPAの溶液中にスラリー化した。この試行でも銀含量を144ppm未満に低減することはできなかった。
【0192】
最後の3つの試行では、希薄HClを溶液に加えて残留量の銀をAgClとして沈澱させた。次いで沈殿物を の前にろ過により除去した。3つの試行は:(1)20℃で1.0gの0.33%HCl;(2)30℃で1.0gの0.33%HCl;および(3)20℃で0.1gの3.3%HClを加えることを含んだ。3つの試行により、銀含量はそれぞれ30ppm、42ppmおよび33ppmに低減され、各試行により90%超のL−オルニチンフェニルアセテートが得られた。したがって、HClの添加は、残留する銀の量を低減させるのに効果的であった。
[実施例6]
【0193】
中間塩なしでL−オルニチンフェニルアセテートを調製するためのプロセス
一般的手順として、L−オルニチン塩酸塩を溶媒に懸濁させた。次いで反応マスを加熱し、塩基、ナトリウムメトキシドを加えた。NaClが生成し、これをろ過により系から除去した。反応マスを冷却し、L−オルニチンフェニルアセテートを生成させるためにモル当量のフェニル酢酸を反応マスに加えた。最終生成物を単離し、洗浄し乾燥した。このプロセスについての試行のまとめを表10に示す。
【0194】
【表10】
【0195】
得られたL−オルニチンフェニルアセテートは多量のクロリド(少なくとも約1重量%)を示すことが分かった。これは同様の量のナトリウムを含むと推定される。試行2、4および5についての収率は約50%であった。
【実施例7】
【0196】
形態I、IIおよびIIIの熱安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを高い温度で保存した。指定した条件の概要を表11に示す。600psiに真空をかけて減圧を達成した。その物質のいかなる変化も測定するため、最終組成物をXRPD、NMR、IRおよびHPLCにより試験した。
【0197】
最も顕著には、形態IIIは真空下、120℃で形態IIに転移しないが、これらの条件下での形態IおよびIIと比べてより顕著な化学的分解を示す。その一方、形態IIIは形態IIに転移し、真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。
【0198】
形態Iは、すべての試行において形態IIに転移したが、非常に興味深いことに、形態Iは真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。したがって、形態Iからの転移は、形態IIと同じような化学的安定性を示さない。これは、その物質が容易に形態IIに転移することを考慮すると驚くべきことである。
【0199】
すべての試行において、形態IIは安定であり、化学的に分解しなかった。したがって、形態IIは最も安定な形態である。その一方、形態IIIは形態Iより安定であるがどちら形態も、真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。
【0200】
【表11】
【0201】
化学的分解を示す試行(例えば、表11からの試行10)についてのHPLC結果を表12にまとめる。それぞれの分解物質は、1.9、2.2、2.4および2.7の相対保持時間(RRT)で共通ピークを示す。これは、様々な形態について分解経路が共通していることを示唆している。
【0202】
【表12】
【実施例8】
【0203】
形態I、IIおよびIIIの酸素安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを、100%酸素環境中に7日間または14日間保存し、NMRおよびIRで分析した。結果は、形態IおよびIIが14日後でも分解の兆候を見せていないことを立証している。IR結果だけは形態IIIについて7日間で完了した。これらの結果は有意の分解が認められないことを確認するものである。すべてのサンプルについてのTLC結果は、類似したRf値を有する単一スポットを示した。
【実施例9】
【0204】
形態I、IIおよびIIIのUV安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを紫外線(UV)照射に7日間または14日間曝露した。CAMAGユニバーサルUVランプで、サンプルに、254mμの設定で照射した。NMRおよびIR結果では、14日後で形態IおよびIIの分解は認められない。同様に、形態IIIは、NMRおよびIRで測定して7日後で分解は認められない。すべてのサンプルについてのTLC結果は、類似したRf値を有する単一スポットを示した。
【実施例10】
【0205】
形態I、IIおよびIIIのpH安定性試験
形態I、IIおよびIIIのスラリーを、水を用いて生成させ、pH値を1.0、4.0、7.0、10.0および13.2に調節した。スラリーを7日間または14日間保存し、次いで固体をろ過により除去した。すべてのサンプルにおいて形態Iは形態IIに転移した。NMRおよびIR結果は、形態IおよびIIが様々なpHで14日間でも分解しなかったことを示しており、同様にHPLC結果は、これらのサンプルについて約98%以上の純度であることを示している。NMRおよびIR結果によって、形態IIIも7日後、やはり分解していないことが示された。HPLC試験は約95%以上の純度を示しているが、IR結果は7日間の試験で形態IIIが形態IIに転換したことを示している。すべてのサンプルについてのTLC結果は、類似したRf値を有する単一スポットを示した。
【実施例11】
【0206】
形態I、IIおよびIIIの圧縮試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルに、Moore液圧プレスを用いて3トンの力を約90分間かけた。得られた錠剤の質量、直径および厚さを測定して密度を求めた。錠剤を、NMRおよびIRによっても分析した。形態Iは、1.197kg/m3の密度を有する形態IIの組成物に転移した。形態IIは転移を示さず、1.001kg/m3の最終密度を有した。最後に、形態IIIは転移を示さず、1.078kg/m3の最終密度を有した。
【実施例12】
【0207】
酢酸中間体を介してL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセス
25mgのL−オルニチンHClを5倍体積のH2Oに溶解し、次いで過剰の酢酸(約5倍体積)を加えてスラリーを生成させた。スラリーを、25℃から40℃の温度サイクルに、4時間ごとに約3日間かける。1当量のフェニル酢酸(L−オルニチンに対して)を加え、約4〜6時間攪拌する(場合により加熱して)。アンチソルベントとしてIPAを用い、70:30(IPA:H2O)の比を得るのに十分な量加える。真空ろ過により単離し、80℃で約4〜8時間乾燥して残留酢酸を除去する。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月3日出願の米国仮出願番号第61/166,676号に関する優先権の特典を請求するものである。その優先権書類全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本出願は、薬剤化学、生化学および医学の分野に関する。具体的には、本出願はL−オルニチンフェニルアセテート塩ならびにその製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(説明)
高アンモニア血症は肝疾患の特質であり、血流中における過剰なアンモニアを特徴とする。肝性脳症は進行性高アンモニア血症の主要な臨床的帰結であり、これは、急性または慢性の肝不全を悪化させる可能性のある複雑な神経精神症候群である。それは、脳機能の変化のささいな兆候から、明白な精神医学的および/または神経学的症状、さらには深い昏睡にわたる広範な神経精神症状を含む精神状態の変化を特徴とする。未代謝アンモニアの蓄積が肝性脳症の発病に関わる主な要因であると考えられているが、他の機序も関連している可能性がある。
【0004】
L−オルニチン一塩酸塩および他のL−オルニチン塩は、高アンモニア血症および肝性脳症の治療で使用するのに利用することができる。例えば、米国特許出願公開第2008/0119554号(その全体を参照により本明細書に組み込む)は、肝性脳症の治療用のL−オルニチンおよび酢酸フェニルの組成物を記載している。L−オルニチンは酵素的変換法で調製されている。例えば、米国特許第5,405,761号および同第5,591,613号(両方のその全体を参照により本明細書に組み込む)は、L−オルニチン塩を生成するアルギニンの酵素的変換を記載している。酢酸フェニルナトリウムは市販されており、また、急性高アンモニア血症の治療用の注射剤としても入手することができる。注射剤はAMMONULとして市販されている。
【0005】
塩の形態は分解特性の改善を示すことができるが、特定の塩、特にナトリウムまたはクロリド塩は、肝性脳症などの肝疾患に伴う疾患を有する患者を治療する場合、望ましくない可能性がある。例えば、高いナトリウム摂取は腹水、体液過剰および電解質平衡異常を起こす傾向がある肝硬変患者には危険であり得る。同様に、特定の塩は浸透圧が高い、すなわち溶液が高張性であるため、静脈内で投与するのが困難である。高い濃度の過剰塩は、静脈内投与のために溶液を大量に希釈する必要があり得、これは、過度の体液過剰をもたらす。したがって、体液過剰および電解質平衡異常がよく見られる肝性脳症または他の状態の治療に好都合なL−オルニチンおよび酢酸フェニル塩の調製の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は約202℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:単位格子寸法:a=6.594(2)Å、b=6.5448(18)Å、c=31.632(8)Å、α=90°、β=91.12(3)°、γ=90°;結晶系:単斜晶系;および空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は式[C5H13N2O2][C8H7O2]で表される。
【0009】
いくつかの実施形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0010】
いくつかの実施形態は、水および/またはエタノールの分子を含む結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、熱重量分析で測定して約11重量%の前記分子を含む。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約35℃での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶は約203℃の融点を有する。
【0011】
いくつかの実施形態は、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:単位格子寸法:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°;結晶系:単斜晶系;および空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は式[C5H13N2O2][C8H7O2]EtOH.H2Oで表される。
【0012】
いくつかの実施形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶形態は約203℃の融点を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0015】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶形態は約196℃の融点を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は薬学的に許容される担体を含む。
【0016】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:少なくとも約50重量%の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩および少なくとも約0.01重量%の安息香酸またはその塩を含む組成物を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも約0.10重量%の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は5重量%以下の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は1重量%以下の安息香酸またはその塩を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも10ppmの銀をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも20ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも25ppmの銀をさらに含む。いくつかの実施形態では、600ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、組成物は100ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は65ppm以下の銀を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、水中50mg/mLの組成物は体液と等張性である。いくつかの実施形態では、その等張液は、約280〜約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、その組成物は約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する。
【0021】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:L−オルニチン塩、安息香酸塩および溶媒を混合して中間溶液を生成させるステップと;酢酸フェニルを前記中間溶液と混合するステップと;少なくとも70重量%の結晶性L−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物を単離するステップとを含むL−オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、その方法は、酢酸フェニルを混合する前に、前記中間溶液から塩の少なくとも一部を除去するステップであって、前記塩がL−オルニチン塩でないステップを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、塩の少なくとも一部を除去する前に、塩酸を加えるステップを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、L−オルニチン、安息香酸塩および溶媒を混合するステップは:L−オルニチン塩を水に分散して第1の溶液を生成させるステップと;安息香酸塩をDMSOに分散して第2の溶液を生成させるステップと;前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して前記溶液を生成させるステップとを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも約0.10重量%の安息香酸塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は5重量%以下の安息香酸塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は1重量%以下の安息香酸塩を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、L−オルニチン塩はL−オルニチン塩酸塩である。いくつかの実施形態では、安息香酸塩は安息香酸銀である。
【0026】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも10ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも20ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも25ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は600ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は100ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は65ppm以下の銀を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、酢酸フェニルはアルカリ金属塩中にある。いくつかの実施形態では、そのアルカリ金属塩は酢酸フェニルナトリウムである。
【0028】
いくつかの実施形態では、その組成物は100ppm以下のナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は20ppm以下のナトリウムを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、L−オルニチンはハライド塩中にある。いくつかの実施形態では、そのハライド塩はL−オルニチン塩酸塩である。
【0030】
いくつかの実施形態では、その組成物は0.1重量%以下のクロリドを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は0.01重量%以下のクロリドを含む。
【0031】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、本明細書で開示する方法のいずれかによって得られる組成物を含む。
【0032】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、少なくとも中間塩が沈澱するまでL−オルニチン塩を含む溶液のpH値を増大させるステップであって、前記中間塩がL−オルニチン塩でないステップと;中間塩を前記溶液から単離するステップと;フェニル酢酸を前記溶液と混合するステップと;L−オルニチンフェニルアセテート塩を前記溶液から単離するステップとを含むL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、そのpH値を少なくとも8.0まで増大させる。いくつかの実施形態では、そのpH値を少なくとも9.0まで増大させる。いくつかの実施形態では、pH値を増大させるステップは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロミドまたはその組合せからなる群から選択されるpH調節剤を添加するステップを含む。
【0034】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、治療有効量の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩を投与することによって、対象の高アンモニア血症を治療または改善する方法を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は経口で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態I、形態II、形態III、形態Vからなる群から選択され:形態Iは、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態IIは、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態IIIは、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態Vは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示す。
【0037】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態Iである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態IIである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態IIIである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態Vである。
【0038】
いくつかの実施形態では、形態I、形態II、形態IIIおよび形態Vからなる群から選択される少なくとも2つの結晶形態を投与する。いくつかの実施形態では、その少なくとも2つの結晶形態を、ほぼ同じ時間に投与する。
【0039】
いくつかの実施形態では、その結晶形態を日に1〜3回投与する。いくつかの実施形態では、治療有効量は約500mg〜約50gの範囲である。
【0040】
いくつかの実施形態では、対象は、肝性脳症を有することが特定されている。いくつかの実施形態では、対象は、高アンモニア血症を有することが特定されている。
【0041】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:L−オルニチン塩、銀酢酸フェニルおよび溶媒を混合して溶液を生成させるステップであって、そのL−オルニチン塩がアルカリ金属塩であるステップと;L−オルニチンフェニルアセテートを前記溶液から単離するステップとを含む、L−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法を含む。
【0042】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、治療有効量の、L−オルニチンフェニルアセテートを含む溶液を静脈内投与することを含む高アンモニア血症を治療または改善する方法であって、前記治療有効量が、500mL以下の前記溶液を含む方法を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、その溶液は少なくとも約25mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む。いくつかの実施形態では、その溶液は少なくとも約40mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む。いくつかの実施形態では、その溶液は300mg/mL以下を含む。いくつかの実施形態では、その溶液は体液と等張性である。
【0044】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、L−オルニチンフェニルアセテートを圧縮する方法であって、準安定型のL−オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変化を誘発するステップを含む方法を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、準安定型は無定形である。いくつかの実施形態では、その準安定型は、約4.9°、13.2°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0046】
いくつかの実施形態では、その圧力は、予め決められた時間印加される。いくつかの実施形態では、その予め決められた時間は約1秒以下である。いくつかの実施形態では、その圧力は少なくとも約500psiである。
【0047】
いくつかの実施形態では、その相変化は、圧力を印加した後、約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する組成物をもたらす。
【0048】
いくつかの実施形態では、その相変化は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す組成物をもたらす。
【0049】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、準安定型のL−オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変化を誘発することによって得られる組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】形態Iの粉末X線回折パターンである。
【図2】形態Iについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図3】形態Iの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図4】形態Iのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図5】形態Iについての動的蒸気収着結果を示す。
【図6】形態IIの粉末X線回折パターンである。
【図7】形態IIについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図8】形態IIの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図9】形態IIのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図10】形態IIについての動的蒸気収着結果を示す。
【図11】形態IIIの粉末X線回折パターンである。
【図12】形態IIIについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図13】形態IIIの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図14】形態IIIのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図15】形態IIIについての動的蒸気収着結果を示す。
【図16】形態Vの粉末X線回折パターンである。
【図17】形態Vについての示差走査熱量測定結果を示す。
【図18】形態Vの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
【図19】形態Vのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図20】形態Vについての動的蒸気収着結果を示す。
【図21】L−オルニチンベンゾエートのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図22】L−オルニチンフェニルアセテートのサンプルから得られた1H核磁気共鳴スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書で開示するのは、L−オルニチンフェニルアセテート塩、特に、結晶形態の前記塩を製造する方法である。これらの方法は、経済的プロセスを用いて、薬学的に許容される形態のL−オルニチンフェニルアセテートの大規模な生産を可能にする。さらに、形態I、II、IIIおよびVを含む結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートも開示する。L−オルニチンフェニルアセテート塩は、ごくわずかな付随ナトリウム負荷をもたない静脈内投与を可能にし、したがって、必要なi.v.流体の量を最少化する。
【0052】
本出願は、新規な結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩ならびにL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造し使用するための方法に関する。この塩は、相当量のナトリウムまたはクロリドなしで有利に長期安定性を示す。結果として、L−オルニチンフェニルアセテートは、L−オルニチンおよび酢酸フェニルの他の塩と比べて改善された安全性プロファイルを提供することが期待される。また、L−オルニチンフェニルアセテートは他の塩と比べて低い等張性を示す。そのため、より高い濃度で静脈内に投与することができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症の治療のための大幅な臨床的改善を提供することが期待される。
【0053】
本出願はまた、L−オルニチンフェニルアセテートの種々の多形体にも関する。様々な結晶形態の出現(多形性)は、いくつかの分子および分子錯体の特性である。L−オルニチンフェニルアセテートなどの塩錯体は、融点、X線回折パターン、赤外吸収指紋およびNMRスペクトルのような独特の物理的特性を有する様々な固体をもたらすことができる。多形体の物理的特性の違いは、バルク固体中の隣接する分子(錯体)の配向および分子間相互作用からもたらされる。したがって、多形体は、同じ活性薬剤成分を共有するが、多形体ファミリーにおける他の形態と比べて独特の有利および/または不利な物理化学的特性を有する独特の固体であってよい。
【0054】
L−オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、L−オルニチンフェニルアセテート塩を製造する方法を含む。L−オルニチンフェニルアセテートは、例えばL−オルニチンベンゾエートなどの中間塩を介して製造することができる。スキーム1に示すように、式IのL−オルニチン塩を式IIの安息香酸塩と反応させて中間体L−オルニチンベンゾエートを得ることができる。
【0055】
【化1】
【0056】
L−オルニチンの様々な塩を、式Iの化合物において使用することができ、したがって、式IのXは、安息香酸またはフェニル酢酸以外の、L−オルニチンと塩を形成できる任意のイオンであってよい。Xは、これに限定されないが、ハライド(例えば、フロリド、クロリド、ブロミドおよびアイオダイド)などの単原子アニオンであってよい。Xは、これらに限定されないが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ビトレート(bitrate)、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロネート(glucuronate)、サッカラート、ギ酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)、リン酸塩などの多原子アニオンであってもよい。いくつかの実施形態では、Xは一価イオンである。いくつかの実施形態では、Xはクロリドである。
【0057】
同様に、式IIの安息香酸塩は特に限定されず、したがって、式IIのYは、安息香酸と塩を形成できる適切な任意のイオンであってよい。いくつかの実施形態では、Yは、アルカリ金属イオン(例えば、Li+、Na+およびK+)および他の一価イオン(例えば、Ag+)などの単原子カチオンであってよい。Yはまた、アンモニウム、L−アルギニン、ジエチルアミン、コリン、エタノールアミン、1H−イミダゾール、トロラミンなどの多原子カチオンであってもよい。いくつかの実施形態ではYは無機イオンである。いくつかの実施形態ではYは銀である。
【0058】
L−オルニチンおよび安息香酸の他の可能な多くの塩をそれぞれ式IおよびIIの化合物に用いることができ、当業者はこれらを容易に調製することができる。例えば、Bighley L.D.ら、“Salt forms of drugs and absorption、” In:Swarbrick J.、Horlan J.C., eds. Encyclopedia of pharmaceutical technology、第12巻.New York:Marcel Dekker、Inc.、452〜499頁(その全体を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0059】
中間体L−オルニチンベンゾエート(すなわち、式III)は、式IおよびIIの化合物を含む溶液を混合することによって調製することができる。例として、式IおよびIIの化合物を、水とジメチルスルホキシド(DMSO)にそれぞれ別個に溶解することができる。次いで、この2つの溶液を混合して、L−オルニチンと安息香酸を反応して式IIIの塩を形成させることができる。あるいは、2つの塩化合物を、直接溶解して単一の溶液にすることができる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸を別々の溶媒に溶解し、続いて混合する。いくつかの実施形態では、L−オルニチンを水溶液に溶解させ、安息香酸を有機溶媒に溶解させ、続いてL−オルニチンの溶液と安息香酸の溶液を混合する。
【0060】
L−オルニチンと安息香酸塩を混合する場合に使用できる溶媒の非限定的な例には、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロヘキサン、エタノール、アセトン、酢酸、1−プロパノール、炭酸ジメチル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、酢酸エチル(EtOAc)、トルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、ジイソプロピルエーテル、ニトロメタン、水、1,4ジオキサン、tジエチルエーテル(tdiethyl ether)、エチレングリコール、酢酸メチル(MeOAc)、メタノール、2−ブタノール、クメン、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、3−メチル−1−ブタノール、アニソールおよびその組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンベンゾエート溶液は水を含む。いくつかの実施形態では、L−オルニチンベンゾエート溶液はDMSOを含む。
【0061】
L−オルニチンと安息香酸塩を混合したら、対イオンXおよびYは沈殿物を形成することができ、これは、ろ過、遠心分離などの公知の方法を用いて混合溶液から除去できる。いくつかの実施形態では、Xはクロリドであり、Yは銀であり、この反応によってAgClを有する沈殿物が生成される。スキーム1は、式IおよびIIの化合物を塩として示しているが、遊離ベースのL−オルニチンと安息香酸を混合してL−オルニチンベンゾエートの中間体を形成させるのも本出願の範囲内である。したがって、沈殿物を生成させて単離するのは任意選択である。
【0062】
混合するL−オルニチンと安息香酸塩の相対量は限定されないが、L−オルニチンと安息香酸のモル比は任意選択で約10:90〜90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンベンゾエートのモルは約30:70〜30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸塩のモル比は約40:60〜60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸塩のモル比は約1:1である。
【0063】
XとYがどちらも無機イオンである(例えば、XおよびYがそれぞれクロリドおよび銀である)実施形態では、追加の量のX含有塩を加えて、対イオンYのさらなる沈殿を促すことができる。例えば、Xがクロリドであり、Yが銀である場合、L−オルニチン塩酸塩と安息香酸銀のモル比を1:1より大きくして、銀に対して過剰のクロリドが存在するようにすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸のモル比は約1:1より大きい。それでも、L−オルニチン塩(例えば、L−オルニチン塩酸塩)から得るために、追加のクロリド塩は必要ではない。例えば、塩酸の希釈溶液を溶液に加えて、銀をさらに除去することができる。追加のX含有塩をいつ加えるかは特に限定されないが、AgClを最初に単離する前にそれを加えることが好ましい。
【0064】
スキーム2に示すように、L−オルニチンベンゾエートを、式IVの酢酸フェニル塩と反応してL−オルニチンフェニルアセテートを生成させることができる。例えば、酢酸フェニルナトリウムを、L−オルニチンベンゾエートの溶液と混合してL−オルニチンフェニルアセテートを生成させることができる。酢酸フェニルの種々の塩を用いることができ、したがって、式IVのZは、安息香酸またはL−オルニチン以外の、酢酸フェニルと塩を形成できる任意のカチオンであってよい。いくつかの実施形態では、Zは、アルカリ金属イオン(例えば、Li+、Na+およびK+)および他の一価イオン(例えば、Ag+)などの単原子カチオンであってよい。Zは、アンモニウム、L−アルギニン、ジエチルアミン、コリン、エタノールアミン、1H−イミダゾール、トロラミンなどの多原子カチオンであってもよい。いくつかの実施形態ではZは無機イオンである。いくつかの実施形態ではZはナトリウムである。
【0065】
混合するL−オルニチンと酢酸フェニル塩の相対量もやはり限定されないが;L−オルニチンと酢酸フェニルのモル比は任意選択で約10:90〜90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと酢酸フェニルのモル比は約30:70〜30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと酢酸フェニルのモル比は約40:60〜60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンと安息香酸のモル比は約1:1である。
【0066】
【化2】
【0067】
次いで、式VのL−オルニチンフェニルアセテートを、公知の手法を用いて溶液から単離することができる。例えば、L−オルニチンフェニルアセテートが結晶化するまで溶媒を蒸発させるか、あるいは、溶液からL−オルニチンフェニルアセテートが沈殿するまでL−オルニチンフェニルアセテート溶液中に混和性のアンチソルベントを加えることによって単離することができる。L−オルニチンフェニルアセテートを単離するための可能な別の手段は、L−オルニチンフェニルアセテートが沈殿するまで溶液の温度を調節する(例えば、温度を低下させる)ことである。後段の節でさらに詳細に論じるように、L−オルニチンフェニルアセテートを単離する方法は、得られる結晶形態に影響を及ぼす。
【0068】
単離されたL−オルニチンフェニルアセテートを、乾燥などの様々な追加の工程にかけることができる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートを、続いて希薄HCl溶液と混合して残留銀を沈殿させることができる。L−オルニチンフェニルアセテートを、上記に開示したのと同様の方法を用いて溶液から再度単離することができる。
【0069】
当業者に理解されるように、L−オルニチンフェニルアセテートは、本出願の教示にしたがってL−オルニチンベンゾエート以外の中間塩を用いて同様に調製することができる。したがって、例えばL−オルニチンまたはその塩(例えば、L−オルニチン塩酸塩)を、酢酸を含む溶液と混合することができる。次いでL−オルニチン酢酸塩をフェニル酢酸またはその塩(例えば、酢酸フェニルナトリウム)と混合してL−オルニチンフェニルアセテートを得ることができる。スキーム4は、中間塩としてL−オルニチン酢酸塩を用いてL−オルニチンフェニルアセテートを生成させるプロセスの例を示す。いくつかの実施形態では、中間塩はL−オルニチンの薬学的に許容される塩であってよい。例えば、中間体L−オルニチン塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ビトレート、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)またはリン酸塩であってよい。中間体の遊離酸は、フェニル酢酸より弱い酸であることが好ましい。いくつかの実施形態では、中間体は、フェニル酢酸のpKa値より高いpKa値を示すアニオン成分を有するL−オルニチン塩である。L−オルニチン酢酸塩についての例としては、酢酸およびフェニル酢酸はそれぞれ約4.76および4.28のpKa値を示す。
【0070】
【化3】
【0071】
いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートは、L−オルニチンベンゾエートなどの中間塩を生成することなく調製することもできる。スキーム4は、中間塩なしでL−オルニチンフェニルアセテートを調製するプロセスの例を示す。溶液から塩が沈殿するまで、L−オルニチン塩の溶液(例えば、スキーム4において式Iの化合物で例示される)にpH調節剤を加えることができる。その塩はL−オルニチン塩ではない。例として、溶液から塩化ナトリウムが沈殿してL−オルニチンの遊離塩基がもたらされるまで、ナトリウムメトキシド(NaOMe)をL−オルニチン塩酸塩の溶液に加えることができる。沈殿物は任意選択で、ろ過、遠心分離などの公知の手法を用いて溶液から単離することができる。L−オルニチンの遊離塩基(例えば、スキーム4において式I−aの化合物で例示される)を、フェニル酢酸またはその塩(例えば、スキーム4において式IVの化合物で例示される)と混合してL−オルニチンフェニルアセテートを得ることができる。次いで、式VのL−オルニチンフェニルアセテートを、上記したように単離することができる。
【0072】
【化4】
【0073】
pH調節剤は、塩基性化合物またはその無水前駆体および/または化学的に保護された塩基を含むことができる。pH調節剤の非限定的な例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロミドおよびその組合せが含まれる。加えるpH調節剤の量はやはり特に限定されないが;L−オルニチンとpH調節剤のモル比は任意選択で約10:90〜90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンとpH調節剤のモル比は約30:70〜30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンとpH調節剤のモル比は約40:60〜60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L−オルニチンとpH調節剤のモル比は約1:1である。いくつかの実施形態では、pH調節剤を加えて、pH値を少なくとも約8.0;少なくとも約9.0;または少なくとも約9.5に調節することができる。
【0074】
L−オルニチンフェニルアセテートを生成させる別の方法には、いくつかの実施形態では、L−オルニチンのアルカリ金属塩を酢酸フェニル塩と反応させる方法が含まれる。例として、L−オルニチン塩酸塩を銀酢酸フェニルおよび溶媒と混合することができる。次いで、AgClを沈殿させ、任意選択で溶液から単離することができる。残留L−オルニチンフェニルアセテートを、公知の方法を用いて単離することもできる。この方法は、上記したのと概ね同じ手順および条件を用いて遂行することができる。例えば、L−オルニチンと酢酸フェニルの相対モル量は、10:90〜90:10;30:70〜70:30;40:60〜60:40;または約1:1であってよい。また、L−オルニチンフェニルアセテートは、溶媒を蒸発させ、アンチソルベントを加え、かつ/または温度を低下させて単離することができる。
【0075】
L−オルニチンフェニルアセテートの組成物
L−オルニチンフェニルアセテートの組成物も本明細書で開示する。本出願の組成物は、少量の無機塩、特にアルカリ金属塩および/またはハライド塩を有することが有利であり、したがって、肝性脳症を有する患者への経口および/または静脈内投与に特に適している。その一方、これらの組成物は、他の塩(例えば、L−オルニチン塩酸塩と酢酸フェニルナトリウムの混合物)と比べて類似した安定性プロファイルを示すことができる。いくつかの実施形態では、組成物を、本出願で開示する方法の1つによって得ることができる。例えば、中間体としてL−オルニチンベンゾエートを用いる開示方法のどれによっても、本出願の組成物を得ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート(例えば、本明細書で開示する形態I、II、IIIおよび/またはV)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約20重量%の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート(好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートから本質的になる。いくつかの実施形態では、組成物は、形態I、II、IIIおよびVの少なくとも2つ(例えば、2つ、3つまたは4つの形態)の混合物を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は形態IIを含む。例えば、組成物は、少なくとも約20%;少なくとも約50%;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくとも約99%の形態IIを含むことができる。同様に、組成物は、例えば形態I、IIIまたはVも含むことができる。組成物は任意選択で、少なくとも約20%;少なくとも約50%;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくとも約99%の形態I、II、IIIおよび/またはVを含むことができる。
【0078】
無定形のL−オルニチンフェニルアセテートも本出願の範囲内である。無定形を調製するための様々な方法が当業界で知られている。例えば、L−オルニチンフェニルアセテートの溶液を、凍結乾燥によって真空下で乾燥して無定形組成物を得ることができる。P.C.T出願WO2007/058634を参照されたい。これは英語で公開されており、米国を指定している。凍結乾燥の方法についての開示を参照により本明細書に組み込む。
【0079】
組成物は、少量(もしあれば)のアルカリおよびハロゲンイオンまたは塩、特にナトリウムおよびクロリドを有することが好ましい。いくつかの実施形態では、その組成物は、約100ppm以下(好ましくは約20ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下)のアルカリ金属を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約100ppm以下(好ましくは約20ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下)のナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約0.1重量%以下(好ましくは約0.01重量%以下)のハライドを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約0.1重量%以下(好ましくは約0.01重量%以下)のクロリドを含む。
【0080】
アルカリ金属およびハライドの含量を減少させると、濃厚な等張液を調製するのに適した組成物が提供される。したがって、これらの組成物は、例えばL−オルニチン塩酸塩と酢酸フェニルナトリウムの混合物を投与するのに比べて、より簡単に静脈内で投与することができる。いくつかの実施形態では、水の中のL−オルニチンフェニルアセテートの約45〜約55mg/mL溶液(好ましくは約50mg/mL)が体液と等張性である(例えば、溶液は約280〜約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を示す)。
【0081】
組成物は、L−オルニチンフェニルアセテート組成物の製造プロセス中に生成した中間塩からの残留量のアニオンも含む可能性がある。例えば、本明細書で開示する方法のいくつかによって、安息香酸またはその塩を有する組成物がもたらされる。いくつかの実施形態では、その組成物は、少なくとも約0.01重量%(好ましくは少なくとも約0.05重量%、より好ましくは約0.1重量%)の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約3重量%以下(好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下)の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.01%〜約3重量%(好ましくは約0.1%〜約1%)の範囲の塩またはその酸を含む。その塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ビトレート、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)またはリン酸塩から選択される。
【0082】
同様に、酢酸塩中間体を用いて調製される組成物は、残留量の酢酸または酢酸塩を有することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約0.01重量%(好ましくは少なくとも約0.05重量%、より好ましくは約0.1重量%)の酢酸または酢酸塩を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約3重量%以下(好ましくは約1重量%以下、より好ましくは約0.5重量%以下)の酢酸または酢酸塩を含む。
【0083】
組成物は少量の銀も含むことができる。本明細書で開示する方法の例は、例えば、安息香酸銀を使用するが、それでも、驚くほど少量の銀しか含まない組成物が得られる。したがって、いくつかの実施形態では、組成物は約600ppm以下(好ましくは約100ppm以下、より好ましくは約65ppm以下)の銀を含む。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約10ppmの銀(あるいは少なくとも約20または25ppmの銀)を含む。
【0084】
医薬組成物
本出願のL−オルニチンフェニルアセテートの組成物は、対象に(例えば、ヒト)に投与するように処方することもできる。L−オルニチンフェニルアセテート、したがって本明細書で開示する組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤と一緒に投与するように処方することができる。したがってL−オルニチンフェニルアセテートは、薬剤技術分野で慣行的であるような薬学的に許容される標準的な担体および/または添加剤を含む医薬品として処方することができる。その処方物の正確な特性は、所望の投与経路を含むいくつかの要素に依存することになる。一般に、L−オルニチンフェニルアセテートは、経口、静脈内、胃内、皮下、血管内または腹腔内投与用に処方する。
【0085】
薬剤用の担体または賦形剤は、例えば水または等張液、例えば水または生理食塩水の中の5%デキストロースであってよい。固体経口剤形は、活性化合物と一緒に、賦形剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはバレイショデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;起泡性混合物;染料;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸;および、一般に、薬剤処方物に使用される非毒性で薬理学的に不活性な物質を含むことができる。そうした医薬製剤は、例えば、混合、顆粒化、錠剤化、糖コーティングまたは膜コーティングプロセスによって公知の仕方で製造することができる。
【0086】
経口投与用の液体分散製剤は、シロップ剤、乳剤または懸濁剤であってよい。シロップ剤は、担体、例えばサッカロースまたはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールと一緒にしたサッカロースを含むことができる。
【0087】
懸濁剤および乳剤は、担体、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含むことができる。筋肉注射用の懸濁剤または液剤は、L−オルニチンフェニルアセテートと一緒に、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、望むなら適切な量のリドカイン塩酸塩を含むことができる。
【0088】
医薬品は、L−オルニチンフェニルアセテートおよび薬学的に許容される担体から本質的になってよい。したがって、そうした医薬品は、L−オルニチンおよび酢酸フェニルに加えて、他のアミノ酸を実質的に含有しない。さらに、そうした医薬品は、L−オルニチンフェニルアセテートの他には他の塩をごくわずかな量しか含まない。
【0089】
経口処方物は一般に、約500mg〜約100gの範囲のL−オルニチンフェニルアセテートの投薬量を含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、経口処方物は、約500mg〜約50gの範囲の本明細書で開示するL−オルニチンフェニルアセテート組成物を含む。いくつかの実施形態では、経口処方物は、アルカリ金属塩およびハライドを実質的に含まない(例えば、痕跡量以下のアルカリ金属塩およびハライドしか含まない)。
【0090】
静脈用処方物も一般に、約500mg〜約100g(好ましくは約1g〜約50g)の範囲のL−オルニチンフェニルアセテートの投薬量を含むことができる。いくつかの実施形態では、静脈用処方物は、アルカリ金属塩およびハライドを実質的に含まない(例えば、痕跡量以下のアルカリ金属塩およびハライドしか含まない)。いくつかの実施形態では、静脈用処方物は、約5〜約300mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテート濃度(好ましくは約25〜約200mg/mL、より好ましくは約40〜約60mg/mL)を有する。
【0091】
組成物または前記組成物を含む医薬品は任意選択で、密封した包装にすることができる。密封した包装物は、水分および/または外気がその組成物または医薬品と接触するのを軽減するまたは防止することができる。いくつかの実施形態では、その包装物は気密シールを含む。いくつかの実施形態では、その包装物は、真空下または不活性ガス(例えば、アルゴン)でその密封包装物内に密封される。したがって、包装物は、包装物内に貯蔵された組成物または医薬品の分解速度を抑制または低下させることができる。種々のタイプの密封包装物が当業界で公知である。例えば、米国特許第5,560,490号(その全体を参照により本明細書に組み込む)は医薬品用の密封包装の例を開示している。
改善された密度を有する組成物
【0092】
出願人らは、驚くべきことに、形態I(以下で説明する)を有する組成物に、形態II(以下で説明する)への転移を誘発するのに十分な圧力を印加することによって、より高い密度を有する組成物を得ることができることを見出した。例えば、3トンの力を形態Iおよび形態IIに90分間印加すると、それぞれ1.197kg/m3および1.001kg/m3の密度が得られる。驚くべきことに、こうした条件下で形態Iは形態IIに転移する。したがって、より高い密度は、出発原料とは異なった結晶形態によって説明されるようである。
【0093】
したがって、その組成物に、形態IIへの転移を誘発するのに十分な圧力を印加することによって、形態Iを有するL−オルニチンフェニルアセテート組成物の密度を増大させる方法を本明細書で開示する。相変化を誘発させるための適切な力または圧力の量は、力または圧力が印加される時間量とともに変化し得る。したがって、当業者は、本出願の教示にしたがって、相変化を誘発するのに適した圧力および時間の量を決定することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも約1トン(好ましくは少なくとも約2トン、より好ましくは約3トン)の力を印加する。いくつかの実施形態では、少なくとも約500psi(好ましくは少なくとも約1000psi、より好ましくは少なくとも約2000psi)の圧力を印加する。
【0094】
圧力を印加する時間量は特に限定されず、上記で論じたように、それは、時間量に応じて変わってくる。例えば、典型的な錠剤サイズのパンチに大きな力(例えば、10トン)を印加する場合、その時間は約1秒以下であってよい。いくつかの実施形態では、圧力印加のための時間は予め決められた時間である。その時間は、例えば、約0.1秒間;約1秒間;少なくとも約1分間;少なくとも約5分間;または少なくとも約20分間であってよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約10重量%の形態Iを含む。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約30重量%の形態Iを含む。
【0096】
特定の理論に拘泥するわけではないが、出願人らは、より高い密度は、少なくとも一部は形態I中に存在するエタノール溶媒和物成分からもたらされると考える。溶媒和物に圧力を印加すると、欠陥(例えば、粒界)がより少ない密な構造を形成するのを容易にすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒和物成分を有するL−オルニチンフェニルアセテート組成物の密度を増大させる方法は、形態IIへの転移を誘発するのに十分な圧力を組成物に印加することを含む。いくつかの実施形態では、その圧力は少なくとも約500psi(好ましくは少なくとも約1000psi、より好ましくは少なくとも約2000psi)である。いくつかの実施形態では、圧力を印加する時間は、予め決められた時間である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約10%(好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%)の溶媒和物形態を含む。
【0097】
したがって、本明細書で開示するL−オルニチンフェニルアセテートの組成物は、例えば、結晶形態を沈殿させて得られる組成物と比べて、より高い密度を有することができる。いくつかの実施形態では、その組成物は、少なくとも約1.1kg/m3(好ましくは少なくとも約1.15kg/m3、より好ましくは少なくとも約1.18kg/m3)の密度を有する。いくつかの実施形態では、その組成物は、約1.3kg/m3以下(好ましくは約1.25kg/m3以下、より好ましくは約1.22kg/m3以下)の密度を有する。いくつかの実施形態では、その組成物は約1.2kg/m3の密度を有する。
L−オルニチンフェニルアセテートの結晶形態
【0098】
結晶形態、特に結晶形態I、形態II、形態IIIおよび形態VのL−オルニチンフェニルアセテートも本明細書で開示する。いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートを、上記に開示した方法を用いて得、次いでこれを本明細書で開示する方法のいずれかを用いて結晶化することができる。
【0099】
形態I
結晶形態Iを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0100】
したがって、例えば、結晶形態Iは一般に、制御された条件下で、L−オルニチンフェニルアセテートを結晶化させることによって得ることができる。例として、低温(例えば、4℃または−21℃)でエタノールを加えることによって、飽和溶液からL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させることができる。エタノールを加えると結晶形態Iをもたらす溶液のための溶媒の例には、これらに限定されないが、シクロヘキサノン、1−プロパノール、炭酸ジメチル、N−メチルピロリジン(NMP)、ジエチルエーテル、2−ブタノール、クメン、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、3−ネチル−1−ブタノール(3-nethyl-l-butanol)およびアニソールが含まれる。
【0101】
したがって、上記に開示したL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセスの関連では、そのプロセスは、特定の単離方法を用いて形態Iを提供することができる。例えば、エタノールを低温で加えることによって、L−オルニチンフェニルアセテートを単離させて形態Iを得ることができる。
【0102】
実験方法の部でさらに詳細に説明する様々な手法を用いて、結晶形態Iの特性評価をした。図1は粉末X線回折(XRPD)で測定した形態Iの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態Iは約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの特性ピーク)を有する。
【0103】
当業界ではよく理解されているように、X線回折パターンを異なる機器で測定した場合の実験的な変動性のため、2シータ(2θ)値が0.2°内(すなわち、±0.2°)で一致すれば、そのピーク位置は同等であると見なされる。例えば、米国薬局方は、10個の最強回折ピークの角度設定が±0.2°以内で標準物質のそれと一致し、かつ、そのピークの相対強度が20%を超えて変動しなければ、その同一性は確認されたものとすると述べている。したがって、本明細書で示す位置の0.2°以内のピーク位置は同一であると見なす。
【0104】
図2は、形態Iについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は35℃での吸熱を示しており、これは多分、形態IIへと脱溶媒和および/または脱水していることと関連している。約203℃での第2の転移は結晶の融点を示している。脱溶媒和および/または脱水転移の存在の可能性を調べるため、形態Iを熱重量的重量/示差熱分析(TG/DTA)で分析した。これを図3に示す。形態Iは約35℃で11.28%の重量損失を示しており、したがって、これらの結果は、形態Iが約35℃で脱溶媒和および/または脱水転移を示していることをさらに示唆している。約203℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約35℃で吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、TGAで測定して約35℃で約11%の重量損失を示す。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約203℃の融点を示す。
【0105】
図4は、形態Iについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分によって、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;1.2、0.25、0.5、0.5、1.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位とのプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図5は、形態Iについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約0.2重量%の水の取り込みを示す。DVA分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態Iは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形態Iは、非吸湿性であり、広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0106】
40℃/75%RHでの形態Iの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転移が起こったことを示した。形態Iはまた、高温(例えば、80℃または120℃)でも、真空をかけてもかけなくても、7日または14日後、形態IIに転換される。したがって、形態Iは準安定性である。
【0107】
−20℃および−123℃での形態Iの構造を決定するために単結晶X線回折(SXRD)も用いた。その結果を表1および表2にまとめる。その結果から、形態Iが、単位格子内にエタノールおよび水分子を有する溶媒和物であることが確認される。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式C5H28N2O6で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式[C5H13N2O2][C8H7O2]EtOH.H2Oで表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°の単位格子寸法;単斜晶系およびP21空間群を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
形態II
結晶形態IIを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0111】
したがって、例えば、結晶形態IIは、制御された条件下で結晶化させることによって調製することができる。結晶形態IIは、例えばL−オルニチンフェニルアセテートの飽和有機溶液を蒸発させることによって調製することができる。形態IIを得るのに使用できる有機溶液の非限定的例には、エタノール、アセトン、ベンゾニトリル、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトニトリル(MeCN)、酢酸メチル(MeOAc)、ニトロメタン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、テトラヒドロフランおよびトルエンが含まれる。これらに限定されないが、1,4ジオキサン、1−ブタノール、シクロヘキサン、IPA、THF、MEK、MeOAcおよび水などの他の溶媒は、形態Iと形態IIの混合物をもたらすことができる。
【0112】
形態IIは、IPAなどのL−オルニチンフェニルアセテートのためのアンチソルベントを加えて、飽和有機溶液からL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させることによっても得ることができる。形態IIは、広い温度範囲(例えば、室温、4℃および−21℃)にわたって沈殿させることができる。飽和有機溶液に適した溶媒の非限定的な例には、シクロヘキサノン、1−プロパノール、炭酸ジメチル、N−メチルピロリドン(NMP)、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、2−ブタノール、クメン、酢酸イソブチル、3−メチル−1−ブタノールおよびアニソールが含まれる。あるいは、ここに挙げた同じ溶媒(例えば、シクロヘキサノン)を、L−オルニチンフェニルアセテートの溶液を生成させるのに用いることができ、形態IIは、周囲条件でエタノールを加えることによって沈殿させることができる。別の例として、形態IIは、上記に挙げた有機溶媒を用いてL−オルニチンフェニルアセテートのスラリーを形成させ、25℃と40℃の間を4時間ごとに約18サイクル(すなわち72時間)繰り返すことによっても得ることができる。
【0113】
したがって、上記に開示したL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセスの関連では、そのプロセスは、特定の単離方法を用いて形態IIを提供することができる。例えば、IPAを加えるか、または有機溶媒を蒸発させることによってL−オルニチンフェニルアセテートを単離して形態IIを得ることができる。
【0114】
図6は、XRPDで測定した形態IIの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態IIは約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.12°θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの特性ピーク)を有する。
【0115】
図7は、形態IIについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は約202℃の融点を示しており、形態Iの融点とほぼ同じである。これは、約35℃超で加熱すると、形態Iが形態IIに転移したことを示唆している。図8に示すように、形態IIも、やはりTG/DTAを用いて分析した。これは、残留溶媒に伴う約9.7%の重量損失を示している。約202℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約202℃の融点を示す。
【0116】
40℃/75%RHでの形態IIの7日間安定性試験では、観測できる相変化を得ることはできなかった。実際、高温、様々なpH、紫外線または酸素に曝露しても、形態IIは14日間安定であった。したがって、形態IIは安定であると考えられる。
【0117】
図9は、形態IIについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分から、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;7.0、1.4、2.9、3.0、5.9)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位とのプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図10は、形態IIについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約0.3重量%の水の取り込みを示す。DVA分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態IIは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形態IIは、非吸湿性であり、広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0118】
23℃および−123℃での形態IIの構造を決定するために単結晶X線回折(SXRD)も用いた。結果を表3および表4にまとめる。その結果は、形態IIは無水であり、したがって構造的に形態Iと異なっていることを示している。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式C13H20N2O4で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは式[C5H13N2O2][C8H7O2]で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:a=6.594(2)Å、α=90°、b=6.5448(18)Å、β=91.12(3)°、c=31.632(8)Å、γ=90°の単位格子寸法;単斜晶系;およびP21空間群を有する単結晶X線結晶学的解析を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
形態III
結晶形態IIIを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0122】
したがって、例えば、形態IIIは、L−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液を、約−21℃の冷却した温度環境に置くことによって得ることができる。この溶液はアセトンと水の混合液である(例えば、等体積部のアセトンと水)。別の例として、2−ブタノール中のL−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液にIPAを加えて周囲条件で完結させると、形態IIIを得ることができる。さらに、形態IIIは、例えば酢酸イソブチル中のL−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液にIPAを加えて約−21℃の低温で完結させることによって得ることができる。
【0123】
したがって、上記に開示したL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセスの関連では、そのプロセスは、特定の溶媒および単離方法を用いて形態IIIを提供することができる。例えば、L−オルニチンフェニルアセテートを、アセトンと水の混合液中で生成させ、続いて約−21℃の冷却環境に置いて形態IIIを生成させることができる。
【0124】
図11は、XRPDで測定した形態IIIの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態IIIは約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの特性ピーク)を有する。
【0125】
図12は、形態IIIについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は約203℃の融点を示しており、形態Iおよび形態IIの融点とほぼ同じである。さらに、形態IIIは約40℃での吸熱を示す。図13に示すように、形態IIIもTG/DTAで分析した。これは、融点前での有意の重量損失を示していない。したがって、形態IIIは無水であると特徴づけることができる。約203℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約203℃の融点を示す。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは無水である。
【0126】
40℃/75%RHでの形態IIIの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転移が起こったことを示している。これに対して、形態IIは、真空下であっても真空下でなくても、高温で7日間または10日間安定である。したがって、形態IIIはたぶん準安定性である。しかし、形態Iより安定である。
【0127】
図14は、形態IIIについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分から、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;4.2、0.8、1.7、1.7、3.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位との両方におけるプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図15は、形態IIIについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約2.0重量%の水の取り込みを示す。DVS分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態IIIは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形態IIIは、形態IおよびIIと比べてより大きい水の取り込みを示すが;形態IIIはそれでも、非吸湿性であり、室温で広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0128】
形態V
結晶形態Vを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能である。
【0129】
したがって、例えば、形態Vは、L−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液を、約−21℃の冷却した温度環境に置くことによって得ることができる。この溶液はシクロヘキサノンである。別の例として、溶媒を蒸発させると、同じ飽和溶液によって形態Vが得られる。
【0130】
形態Vはまた、溶媒としてジイソプロピルエーテルを含むL−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液から形成される。例えば、約1〜2のジイソプロピルエーテルとIPAの溶媒比を有する飽和溶液は、約4℃の冷却した温度環境に置くと形態Vをもたらす。同様に、溶媒ジイソプロピルエーテルだけを含む溶液は、約−21℃の冷却した温度環境に置くと形態Vをもたらすことができる。
【0131】
図16は、XRPDで測定した形態Vの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる形態Vは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの特性ピーク)を有する。
【0132】
図17は、形態Vについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。これらの結果は約196℃の融点を示しており、これは他の形態の融点より低い。形態Vはまた約174℃での吸熱も示す。図18に示すように、形態Vも熱重量分析(TGA)を用いて分析した。これは、融点前での有意の重量損失を示していない。したがって、形態Vは無水であると特徴づけることができる。約196℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは約196℃の融点を示す。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートは無水である。
【0133】
図19は、形態Vについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積分から、L−オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;4.2、0.8、1.7、1.7、3.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位との両方におけるプロトン交換のため観察されなかった。その一方、図19は、形態Vについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約0.75重量%の水の取り込みを示す。DVS分析(示していない)に続くXRPD結果によって、形態Vが形態IIに転移していることが示唆されるが、その化学組成は変化していなかった。したがって、形態Vは、非吸湿性であるが、広範な湿度にわたって安定でないと特徴づけることができる。
【0134】
40℃/75%RHでの形態Vの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転移が起こったことを示しているが、化学組成は変化していなかった。したがって、形態Vはたぶん準安定性である。
【0135】
肝臓代償不全または肝性脳症の治療方法
L−オルニチンフェニルアセテート、およびそれに応じた本明細書で開示するL−オルニチンフェニルアセテートの組成物のいずれかを、肝臓代償不全または肝性脳症の発症を治療または改善するために対象に投与することができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートを、対象、例えば誘発事象に続く慢性の肝疾患に苦しむ患者の状態を改善するために投与することができる。別の例として、L−オルニチンフェニルアセテートを、肝臓代償不全または肝性脳症の発症と闘うかまたはそれを遅延させるために投与することができる。
【0136】
L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症を治療するために対象に組み合わせて投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症に苦しむ患者の状態を改善するために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症に伴う症状を緩和させるために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症と闘うために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードの可能性を防止または軽減するために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードの重症度を軽減するために投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードを遅延させるために投与することができる。
【0137】
肝臓代償不全および肝性脳症の発症は一般に、「誘発事象」(または「急性発作」)を伴う。そうした誘発事象には、胃腸出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水が含まれる。そうした急性発作の発症は、入院に至る可能性がある。患者は、これらの急性発作の1つまたはこれらの急性発作の組合せに苦しむ可能性がある。
【0138】
急性発作起こすかまたは起こしたことが疑われる患者を、L−オルニチンフェニルアセテートを用いて本発明にしたがって治療して、肝臓が代償不全状態へと進行する可能性を防止または軽減させる。その結果として、L−オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症などの肝臓代償不全の医学的結果の可能性を防止または軽減させることができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、肝機能を保持するために使用することができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートの使用は、肝疾患を有する患者の生活にまで拡大される。一実施形態では、高アンモニア血症などの胃腸出血、ヒポイソリューケミア(hypoisoleucemia)および出血後の期間の低タンパク質合成の代謝結果がもたらされるのを防止する。
【0139】
一般に、対象の治療は、誘発事象(急性発作)が発現しているかまたはその発現が疑われた後、できるだけ速やかに開始される。対象の治療は、急性発作が繰り返される前に開始されることが好ましい。対象の治療は、最初の急性発作に続いて開始されることがより好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートで治療される対象は、誘発事象(急性発作)が発現しているかまたはその発現の疑いがあることが特定されている。
【0140】
治療は通常、急性発作が始まった後、早急になされる。治療は、例えば内科医などの医者、診療補助者または看護婦によって、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、開始され得る。治療は、対象が入院したら開始することができる。したがって、治療を、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、6時間以内、3時間以内、2時間以内または1時間以内に開始することができる。したがって、対象の治療を、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、1〜48時間、例えば1〜36時間または1〜24時間で開始することができる。
【0141】
治療は、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、最大で8週間、例えば最大で6週間、最大で4週間または最大で2週間行うことができる。したがって、治療は、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、最大で48時間、例えば最大で36時間または最大で24時間行うことができる。一般に、治療は、急性誘発事象からの回復が明らかになる時まで行う。
【0142】
L−オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症を治療または改善するためにも用いることができる。したがって、L−オルニチンフェニルアセテートは、過剰の血中アンモニア濃度を有すると特定された患者、または過剰の血中アンモニアの症状を示す患者に投与することができる。L−オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症のリスクを低下させるためにも投与することができる。いくつかの実施形態では、L−オルニチンフェニルアセテートは、無期限に毎日投与することができる。例えば、1日の服用量を、一生患者に投与するか、または、患者に高アンモニア血症のリスクがもはや見られないと内科医が判断するまで投与することができる。いくつかの実施形態では、治療有効量のL−オルニチンフェニルアセテートを投与すると、高アンモニア血症のリスクが軽減される。いくつかの実施形態では、治療有効量のL−オルニチンフェニルアセテートを、高アンモニア血症の予防のために経口で投与する。
【0143】
治療有効量のL−オルニチンフェニルアセテートを対象に投与する。当業者には容易に分かるように、投与されるインビボでの有用な投薬量および具体的な投与方式は、年齢、体重、苦痛の重症度および治療を受ける哺乳類種、使用する具体的な化合物ならびにそのためにこれらの化合物を用いる具体的な使用に応じて変わってくる(例えば、Finglら、1975年、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”を参照されたい。特に1章、1頁を参照して、この全体を参照により本明細書に組み込む)。当業者は、所望の結果を実現するのに必要な投薬量レベルである有効な投薬量レベルの判定を、慣用的な薬理学的方法を用いて実施することができる。一般に、生産物のヒトへの臨床的応用は、低い投薬量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増大させてゆく。あるいは、許容されるインビトロでの試験を用いて、確立された薬理学的方法を用いて本発明により特定された組成物の有用な用量および投与経路を確立することができる。
【0144】
L−オルニチンフェニルアセテートの典型的な用量は、約0.02〜約1.25g/kg体重(好ましくは約0.1〜約0.6g/kg体重)であってよい。したがって、投薬量は約500mg〜約50g(好ましくは約5g〜約40g、より好ましくは約10g〜約30g)であってよい。
【0145】
単一の日用量を投与することができる。あるいは、複数用量、例えば2、3、4または5用量を投与することができる。そうした複数用量を、1か月、2週間または1週間にわたって投与することができる。いくつかの実施形態では、単一用量、または2、3、4または5用量などの複数用量を毎日投与することができる。
【0146】
実施例および実験方法
追加の実施形態を、以下の実施例でさらに詳細に開示する。これらは、特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0147】
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析は、Bruker D8 advanceまたはSeimens D5000を用いて、サンプルを4°〜50°2θでスキャニングして実施した。Bruker D8装置を用いた実施形態では、約5mgのサンプルを、XRPDゼロバックグラウンドの単一96ウェルプレートサンプル保持器上で穏やかに圧縮した。次いで、サンプルを、Bruker D8−Discover回折計に透過モードでロードし、以下の実験条件を用いて分析した。
オペレーター D8−Discover
生データ由来 BRUKERバイナリV3(.RAW)
走査軸 Gonio
開始位置[°2θ] 4.0000
終了位置[°2θ] 49.9800
ステップサイズ[°2θ] 0.0200
走査ステップ時間[s] 39.1393
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0000
発散スリットタイプ 固定型
発散スリットサイズ[°] 2.0000
試料長さ[mm] 10.00
受光スリットサイズ[mm] 0.1000
測定温度[℃] 25.00
陽極材料 Cu
K−α1[Å] 1.54060
K−α2[Å] 1.54443
K−β[Å] 1.39225
K−A2/K−A1比 0.50000
発電機設定 40mA、40kV
回折計タイプ 不明
回折計数 0
ゴニオメーター半径[mm] 250.00
焦点距離(Dist. Focus)−発散スリット[mm] 91.00
入射ビームモノクロメーター なし
回転 なし
【0148】
Seimens D5000装置を用いた実施形態では、約5mgのサンプルを、保持用グリースの薄層を含むスライドガラス上に穏やかに圧縮した。次いでサンプルを反射モードで稼働するSeimens D5000回折計にロードし、回転させながら、以下の実験条件を用いて分析した。
生データ由来 SiemensバイナリV2(.RAW)
開始位置[°2θ] 3.0000
終了位置[°2θ] 50.000
ステップサイズ[°2θ] 0.0200
走査ステップ時間[s] 0.8
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0000
発散スリットタイプ 固定型
発散スリットサイズ[°] 1.0000
試料長さ[mm] さまざま
受光スリットサイズ[mm] 0.2000
測定温度[℃] 20.00
陽極材料 Cu
K−α1[Å] 1.54060
K−α2[Å] 1.54443
K−β[Å] 1.39225
K−A2/K−A1比 0.50000(公称)
発電機設定 40mA、40kV
回折計タイプ d5000
回折計数 0
ゴニオメーター半径[mm] 217.50
入射ビームモノクロメーター なし
回折ビームモノクロメーター(黒鉛)
回転 有り
【0149】
単結晶X線回(SXRD)
すべての測定を、Mo−Kα放射線で操作するBruker Smart Apex回折計を用いて実施した。別段の指定のない限り、データは、2θおよびφの3つの別個の設定で集めた60ω−スキャン10sイメージで得た。
【0150】
示差走査熱量測定(DSC)
約5mgのサンプルを、アルミ製DSCパン中に量り込み、穴のあいたアルミふた(密閉せずに)でシールした。次いで、サンプルパンをSeiko DSC6200(冷却器付き)にロードし、冷却し、25℃で保持した。安定した熱流応答が得られたら、サンプルと標準品を10℃/分の走査速度で約250℃に加熱し、得られる熱流応答をモニターした。分析する前に、装置を、インジウム参照標準品を用いて温度と熱流について較正した。サンプル分析を、熱事象の温度を開始温度の値とするMuse測定ソフトウェアで実施し、メーカーの仕様書にしたがって測定した。
【0151】
熱重量分析重量/示差熱分析(TG/DTA)
約5mgのサンプルを、アルミ製パン中に量り込み、熱重量/示差熱同時分析器(DTA)にロードし、室温で保持した。次いで、サンプルを、10℃/分の速度で25℃から300℃まで加熱した。その間、サンプル重量の変化を熱事象(DTA)とともにモニターした。パージガスとして窒素を20cm3/分の流量で使用した。分析する前に、装置を、100mg参照重量とインジウム参照標準品をそれぞれ用いて温度と熱流について較正した。
【0152】
動的蒸気収着(DVS)
約10mgのサンプルを金網式蒸気収着バランスパンに入れ、Scientific and Medical Systems(SMS)より入手したDVS−I動的蒸気収着バランスにロードした。次いで、サンプルを、重量変化が認められなくなるまで0%の湿度環境に保持して乾燥した。次いで、サンプルを、各ステップで安定重量が達成されるまで(99.5%、ステップが完了するまで)サンプルを保持しながら、10%の増分で0から90%の相対湿度(RH)の傾斜プロファイルにかけた。収着サイクルが完了した後、同じ手順を用いてサンプルを乾燥した。サンプルの吸湿特性を測定できるようにするために、収着/脱着サイクルの間の重量変化をプロットした。
【0153】
1H核磁気共鳴(NMR)
1H NMRはBruker AC200を用いて実施した。各サンプルのNMRをd−H2Oで実施し、各サンプルを約5mgの濃度で調製した。L−オルニチンベンゾエートおよびL−オルニチンフェニルアセテートについてのNMRスペクトルを、それぞれ図21および図22に示す。
【0154】
溶解度近似
おおよそ、25mg部のサンプルをバイアルに入れ、適切な溶媒系を5倍の体積増分で加えた。各添加の間に、その溶解について混合物をチェックし、溶解が明らかでなかった場合、混合物を50℃に加温し、再度チェックした。溶解が認められるか、または、100倍の体積の溶媒が加えられるまでこの手順を続行した。
【0155】
HPLC溶解度測定
各溶媒のスラリーを調製し、サンプルを25℃で約48時間振とうさせた。次いで、フィルターを通して各サンプルを取り出し、ろ液を分析用のHPLCバイアルに移した。データから、各溶媒についてのL−オルニチンフェニルアセテートの溶解度を決定した。
【0156】
温度サイクル実験
溶解度近似により集めた情報を用いて、サンプルのスラリーを24の選択された溶媒系で調製した。スラリーを、4時間サイクルで72時間、40℃または25℃での温度サイクルにかけた。固体を、何らかの明白な分解の兆候(すなわち、色の変化)がないか目視でチェックし、分解していなかったら、ろ過により単離した。分析する前に、固体を周囲条件で約24時間乾燥させた。
【0157】
急速冷却(Crash Cooling)実験
急速冷却実験を、サンプルの飽和溶液を、4℃および−21℃の環境で約48時間、24の選択された溶媒系中に置いて実施した。固体物質をすべて回収し、分析する前に、固体を周囲条件で約24時間乾燥させた。
【0158】
蒸発実験
蒸発実験を、周囲条件でサンプルの飽和溶液を自由に蒸発させて実施した。次いで、乾燥するまで蒸発させた後、固体物質を回収して分析した。
【0159】
アンチソルベント添加実験
アンチソルベント添加実験を、アンチソルベントをサンプルの飽和溶液に加えて実施した。さらなる沈殿が無くなるまで添加を続行し、サンプルを24時間様々な温度、高周囲温度、4℃または−21℃に調節した。次いで固体を単離し、周囲条件で約24時間かけて乾燥して分析した。
【0160】
偏光顕微鏡法(PLM)
高解像度Leicaカメラおよび画像キャプチャソフトウェア(Firecam V.1.0)を備えたLeica Leitz DMRB偏光型光学顕微鏡を用いて、結晶性(複屈折)の存在を判定した。別段の言及のない限り、画像はすべて10×対物レンズを用いて記録した。
【0161】
銀分析
銀分析はすべてAgilent7500ce ICP−MSで実施した。
【0162】
固有溶解速度
物質を金型(直径12mm)に入れ、液圧プレスで5トンの圧力を約2分間金型にかけることによって、約100mgの各形態を圧縮してディスクにした。溶解装置Sotax AT7はEP2およびUSP2で適合するものであり、ここでは、パドルを用いて媒体を攪拌した。各形態を、静止ディスクモード(すなわち、ディスクを時間=0秒の時点で加え、媒体の底部に沈めた)で、以下のpH条件下、すなわち;1.0、4.5および6.7で試験した。1cm3の分量の媒体を、溶解ポットから10、20、30、40、50、60、70、80および120秒の時点で抜き出し、HPLCでAPI濃度を試験した。溶解曲線をプロットし、曲線上の最初の6点または7点から、固有溶解速度曲線を算出した。すべての試験を37℃、150rpmのパドル速度で実施した。
HPLC−UV 装置詳細
装置: Agilent 1200
カラム: Gemini C18、5μm、150.0×4.6mm
カラム温度: 40℃
移動相A: リン酸緩衝液
移動相B: アセトニトリル
溶出: 勾配法
λ: 210nm
注入量: 10μL
流量: 1mL/分
【0163】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
サンプルを含む溶液の小スポットを、プレートの基底から約1cmの位置に塗布した。次いでプレートを、メタノール:酢酸エチル(95:5)の混合溶媒を入れたTLC槽(密封容器)中に浸漬させる。溶媒は毛細管作用によりプレート上を移動しサンプル混合物と出会い、この混合物は溶解され、混合溶媒によりプレートの上方へ運ばれる。スポット数を記録し、各スポットについてRf値を算出した。
【0164】
赤外(IR)
赤外線分光分析をBruker ALPHA P分光計で実施した。十分な量の物質を、分光計のプレート上の中心に置き、以下のパラメーターを用いてスペクトルを得た:
分解能: 4cm−1
バックグラウンド走査時間: 16スキャン
サンプル走査時間: 16スキャン
データ収集: 4000〜400cm−1
結果スペクトル: 透過
ソフトウェア: OPUSバージョン6
【0165】
安定性試験:pH1、4、7、10および14の環境
スラリー(過飽和溶液:溶解がそれ以上認められなくなるまで約250μlのpH溶液および固体を加え、約100mgの固体がスラリー中に存在した)を、各形態について、様々なpH環境、すなわち;1、4、7、10および13.2で調製した。スラリーを14日間絶えず振とうさせ、7日目と14日目に測定を行った。各pHについて適切な緩衝液を調製した。さらに詳細に以下で説明する。
【0166】
pH値1を有する緩衝液を、372.75mgの塩化カリウムを25mlの脱イオン水に溶解して0.2M溶液を得ることによって調製した。続いて、67mlの0.2M塩酸(これは5M溶液から調製した;10mlを40mlの脱イオン水に加えて1M溶液を得、これをさらに希釈した;20mlを80mlの脱イオン水に加えて所定の0.2M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0167】
pH値4を有する緩衝液を、1.02gのフタル酸水素カリウムを50mlの脱イオン水に溶解して0.1M溶液を得ることによって調製した。
【0168】
pH値7を有する緩衝液を、680.00mgの一塩基性リン酸カリウムを50mlの脱イオン水に溶解して0.1M溶液を得ることによって調製した。続いて、29.1mlの0.1M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;5mlを45mlの脱イオン水に加えて所定の0.1M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0169】
pH値10を有する緩衝液を、210.00mgの重炭酸ナトリウムを50mlの脱イオン水に溶解して0.05M溶液を得ることによって調製した。続いて、10.7mlの0.1M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;5mlを45mlの脱イオン水に加えて所定の0.1M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0170】
pH値13.2を有する緩衝液を、372.75mgの塩化カリウムを25mlの脱イオン水に溶解して0.2M溶液を得ることによって調製した。続いて、66mlの0.2M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;20mlを80mlの脱イオン水に加えて所定の0.2M溶液を得た)を加えて、pHを13にした。次いで1M水酸化ナトリウムを滴下して所望のpHを得た。
【実施例1】
【0171】
結晶形態の沈澱化
L−オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液に、上記したような温度サイクル、急速冷却、蒸発またはアンチソルベント添加を施した。沈殿物をPLMおよびXRPDで分析して結晶形態(もしあれば)を判定した。結果を表5にまとめる。
【0172】
沈殿試験により、6つの独特の結晶形態、形態I〜VIを特定した。しかし、形態IVおよびVIは酢酸の溶液から得られ、NMR結果よりこれらの例がL−オルニチン酢酸塩であることが確認された。その一方、試験540〜611では、もともとエタノールアンチソルベントを添加して単離したL−オルニチンフェニルアセテートのサンプルを用いた。これらの例の多くは、エタノール溶媒和物である形態Iをもたらした。したがって、これらのサンプルは、もともと残留エタノールを含んでいたと考えられる。したがって、もとのサンプルが残留エタノールを含んでいない場合、形態Iは特定の条件についてそれを再現することはできない。
【0173】
【表5】
【実施例2】
【0174】
固有溶解試験
形態I、IIおよびIIIについての固有溶解速度を1.0、4.5および6.7のpH条件で測定した。結果を下記表6に再現する。それぞれの場合、3分未満で完全な溶解が達成された。驚くべきことに、形態IIについては、pHとともに固有溶解速度が増大するpH依存性が観察された。これに対して、形態IおよびIIIは、pHとは独立した速度で溶解するようである。
【0175】
【表6】
【実施例3】
【0176】
溶解度試験
上記に開示した方法にしたがって、L−オルニチンフェニルアセテートの溶解度の概略値を得た。24の溶媒系を試験した:1,4ジオキサン、1−ブタノール、エタノール、アセトン、ベンゾニトリル、シクロヘキサン、DCM、DMSO、EtOAc、ヘプタン、IPA、IPA(1%H2O)、MeCN、MeCn(1%H2O)、MEK、MeOAc、メタノール、MIBK、ニトロメタン、THF、THF(1%H2O)、トルエンおよび水。L−オルニチンフェニルアセテートは、水への溶解性を示したが、L−オルニチンフェニルアセテートは、残りの溶媒系にはほぼ不溶性であった。
【0177】
L−オルニチンフェニルアセテートの水スラリーも調製し、スラリーをろ過した。ろ液濃度をHPLCで分析した。結果はL−オルニチンフェニルアセテートの溶解度が約1.072mg/mLであることを示す。
【0178】
HPLCによる溶解度測定は、5つの溶媒:エタノール、アセトン、メタノール、DMSOおよびIPAについても実施した。これらの結果を表7にまとめる。
【0179】
【表7】
【0180】
これらの結果は、アセトンとIPAの両方が、アンチソルベントとしてL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させるのに適していることを示している。これに対して、測定可能な溶解度を有する溶媒は、結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートを沈殿させるのには好都合ではない。
【0181】
最後に、HPLCを用いてIPAと水の様々な混合液へのL−オルニチンフェニルアセテートの溶解度を測定した。結果を表8に示す。
【0182】
【表8】
【実施例4】
【0183】
L−オルニチンフェニルアセテートを作製するための小規模回分プロセス
約8.4g(0.049モル)のL−オルニチンHClを42mLのH2Oに溶解させ、別途、約11.4gの安息香酸銀を57mLのDMSOに溶解させた。続いて、安息香酸銀溶液をL−オルニチンHCl溶液に加えた。2つの混合物を一緒にすると発熱的沈殿により、中間体のクリーム状白色固体(AgCl)が得られた。固体を真空ろ過により除去すると、ろ液(溶液中のL−オルニチンベンゾエート)が得られた。200mLのIPAをろ液に加え、混合物を4℃に冷却した。約3時間後に結晶性固体(L−オルニチンベンゾエート)が沈澱した。これを真空ろ過により単離した。収率:60%
【0184】
7.6g(0.03モル)のL−オルニチンベンゾエートを38mLのH2Oに溶解し、約4.4gの酢酸フェニルナトリウムを22mLのH2Oに溶解した。続いて、酢酸フェニルナトリウム溶液をL−オルニチンベンゾエート溶液に加え、約10分間攪拌した。約240mLのIPA(8:2 IPA:H2O)を加え、溶液を30分間攪拌し、次いで4℃に冷却した。4℃で約3時間後に結晶性固体が沈澱した(L−オルニチンフェニルアセテート)。真空ろ過により沈殿物を単離し、48〜144mLのIPAで洗浄した。収率:57%。
【実施例5】
【0185】
L−オルニチンフェニルアセテートを作製するための大規模回分プロセス
L−オルニチンフェニルアセテートの2つの別個のバッチを以下のようにして調製した。
【0186】
約75KgのL−オルニチン一塩酸塩を227kgの水に溶解した。得られた溶液に、266kgのDMSOに溶解した102Kgの安息香酸銀を室温で2時間以内に加えた。最初に、激しい発熱が観察され、塩化銀が沈澱してきた。次いで、溶液を含む受器を、反応マスに加えた14KgのDMSOで洗浄した。生成した塩化銀を除去するために、反応マスを、10kgのセライト(Celite)と1mmのGAFフィルターで作製したレンズフィルターでろ過した。ろ過後、フィルターを追加の75kgの水で洗浄した。次いで反応マスを35±2℃で加熱し、80kgの酢酸フェニルナトリウムを加えた。この時点で、反応マスを35±2℃で少なくとも30分間攪拌した。
【0187】
最終APIを沈澱させるために、353kgのイソプロピルアルコールを反応マスに加えた。次いで反応マスを6時間以内に0±3℃に冷却し、1時間攪拌し、次いで生成物を遠心分離機で単離した。
【0188】
約86kgの最終湿潤生成物を得た。次いで、生成物を40±5℃で約6.5〜8時間かけて乾燥して約75kgのL−オルニチンフェニルアセテートを得た。収率:63.25。表9に最終生成物に関する測定をまとめる。
【0189】
【表9】
【実施例6】
【0190】
L−オルニチンフェニルアセテート中の銀含量の低減
実施例5からのバッチ2は多量の銀(157ppm)を示した。したがって、銀含量を低減させるための手順を試験した。9つの試行を実施した;それぞれ概略、バッチ2からの約20gのL−オルニチンフェニルアセテートを1.9部の水に溶解するステップと、次いで10.8部のIPAを加えるステップを含む。結晶形態はろ過により0℃で単離した。
【0191】
4つの試行については、8.0mgまたは80mgの重金属捕捉剤SMOPEX102またはSMOPEX112をその水溶液に加え、2時間攪拌した。捕捉剤は、銀含量を126ppm未満に低減することはできなかった。その一方、他の試行では上記に開示した一般条件を施して銀含量は179ppmに減少した。さらに他の試行では、L−オルニチンフェニルアセテートを、結晶化させるのではなく、IPAの溶液中にスラリー化した。この試行でも銀含量を144ppm未満に低減することはできなかった。
【0192】
最後の3つの試行では、希薄HClを溶液に加えて残留量の銀をAgClとして沈澱させた。次いで沈殿物を の前にろ過により除去した。3つの試行は:(1)20℃で1.0gの0.33%HCl;(2)30℃で1.0gの0.33%HCl;および(3)20℃で0.1gの3.3%HClを加えることを含んだ。3つの試行により、銀含量はそれぞれ30ppm、42ppmおよび33ppmに低減され、各試行により90%超のL−オルニチンフェニルアセテートが得られた。したがって、HClの添加は、残留する銀の量を低減させるのに効果的であった。
[実施例6]
【0193】
中間塩なしでL−オルニチンフェニルアセテートを調製するためのプロセス
一般的手順として、L−オルニチン塩酸塩を溶媒に懸濁させた。次いで反応マスを加熱し、塩基、ナトリウムメトキシドを加えた。NaClが生成し、これをろ過により系から除去した。反応マスを冷却し、L−オルニチンフェニルアセテートを生成させるためにモル当量のフェニル酢酸を反応マスに加えた。最終生成物を単離し、洗浄し乾燥した。このプロセスについての試行のまとめを表10に示す。
【0194】
【表10】
【0195】
得られたL−オルニチンフェニルアセテートは多量のクロリド(少なくとも約1重量%)を示すことが分かった。これは同様の量のナトリウムを含むと推定される。試行2、4および5についての収率は約50%であった。
【実施例7】
【0196】
形態I、IIおよびIIIの熱安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを高い温度で保存した。指定した条件の概要を表11に示す。600psiに真空をかけて減圧を達成した。その物質のいかなる変化も測定するため、最終組成物をXRPD、NMR、IRおよびHPLCにより試験した。
【0197】
最も顕著には、形態IIIは真空下、120℃で形態IIに転移しないが、これらの条件下での形態IおよびIIと比べてより顕著な化学的分解を示す。その一方、形態IIIは形態IIに転移し、真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。
【0198】
形態Iは、すべての試行において形態IIに転移したが、非常に興味深いことに、形態Iは真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。したがって、形態Iからの転移は、形態IIと同じような化学的安定性を示さない。これは、その物質が容易に形態IIに転移することを考慮すると驚くべきことである。
【0199】
すべての試行において、形態IIは安定であり、化学的に分解しなかった。したがって、形態IIは最も安定な形態である。その一方、形態IIIは形態Iより安定であるがどちら形態も、真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。
【0200】
【表11】
【0201】
化学的分解を示す試行(例えば、表11からの試行10)についてのHPLC結果を表12にまとめる。それぞれの分解物質は、1.9、2.2、2.4および2.7の相対保持時間(RRT)で共通ピークを示す。これは、様々な形態について分解経路が共通していることを示唆している。
【0202】
【表12】
【実施例8】
【0203】
形態I、IIおよびIIIの酸素安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを、100%酸素環境中に7日間または14日間保存し、NMRおよびIRで分析した。結果は、形態IおよびIIが14日後でも分解の兆候を見せていないことを立証している。IR結果だけは形態IIIについて7日間で完了した。これらの結果は有意の分解が認められないことを確認するものである。すべてのサンプルについてのTLC結果は、類似したRf値を有する単一スポットを示した。
【実施例9】
【0204】
形態I、IIおよびIIIのUV安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを紫外線(UV)照射に7日間または14日間曝露した。CAMAGユニバーサルUVランプで、サンプルに、254mμの設定で照射した。NMRおよびIR結果では、14日後で形態IおよびIIの分解は認められない。同様に、形態IIIは、NMRおよびIRで測定して7日後で分解は認められない。すべてのサンプルについてのTLC結果は、類似したRf値を有する単一スポットを示した。
【実施例10】
【0205】
形態I、IIおよびIIIのpH安定性試験
形態I、IIおよびIIIのスラリーを、水を用いて生成させ、pH値を1.0、4.0、7.0、10.0および13.2に調節した。スラリーを7日間または14日間保存し、次いで固体をろ過により除去した。すべてのサンプルにおいて形態Iは形態IIに転移した。NMRおよびIR結果は、形態IおよびIIが様々なpHで14日間でも分解しなかったことを示しており、同様にHPLC結果は、これらのサンプルについて約98%以上の純度であることを示している。NMRおよびIR結果によって、形態IIIも7日後、やはり分解していないことが示された。HPLC試験は約95%以上の純度を示しているが、IR結果は7日間の試験で形態IIIが形態IIに転換したことを示している。すべてのサンプルについてのTLC結果は、類似したRf値を有する単一スポットを示した。
【実施例11】
【0206】
形態I、IIおよびIIIの圧縮試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルに、Moore液圧プレスを用いて3トンの力を約90分間かけた。得られた錠剤の質量、直径および厚さを測定して密度を求めた。錠剤を、NMRおよびIRによっても分析した。形態Iは、1.197kg/m3の密度を有する形態IIの組成物に転移した。形態IIは転移を示さず、1.001kg/m3の最終密度を有した。最後に、形態IIIは転移を示さず、1.078kg/m3の最終密度を有した。
【実施例12】
【0207】
酢酸中間体を介してL−オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセス
25mgのL−オルニチンHClを5倍体積のH2Oに溶解し、次いで過剰の酢酸(約5倍体積)を加えてスラリーを生成させた。スラリーを、25℃から40℃の温度サイクルに、4時間ごとに約3日間かける。1当量のフェニル酢酸(L−オルニチンに対して)を加え、約4〜6時間攪拌する(場合により加熱して)。アンチソルベントとしてIPAを用い、70:30(IPA:H2O)の比を得るのに十分な量加える。真空ろ過により単離し、80℃で約4〜8時間乾燥して残留酢酸を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物。
【請求項2】
前記結晶形態が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記結晶形態が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記結晶形態が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項2及び3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記結晶形態が約202℃の融点を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記結晶形態が、およそ以下の結晶パラメーター、すなわち:
単位格子寸法:a=6.594(2)Å、b=6.5448(18)Å、c=31.632(8)Å、α=90°、β=91.12(3)°、γ=90°;
結晶系:単斜晶系;および
空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記結晶形態が式[C5H13N2O2][C8H7O2]で表される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記結晶形態が、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記結晶形態が、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記結晶形態が、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項8及び9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記結晶形態が水および/またはエタノール分子を含む、請求項1および8〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記結晶形態が、熱重量分析で測定して約11重量%の前記分子を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記結晶形態が、示差走査熱量測定により約35℃での吸熱を含むと特徴づけられる、請求項1および8〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
約203℃での融点をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記結晶形態が、およそ以下の結晶パラメーター、すなわち:
単位格子寸法:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°;
結晶系:単斜晶系;および
空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す、請求項1および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記結晶形態が、式[C5H13N2O2][C8H7O2]EtOH.H2Oで表される、請求項1および8〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記結晶形態が、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記結晶形態が、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記結晶形態が、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項17及び18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記結晶形態が、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱を含むと特徴づけられる、請求項1および17〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
約203℃での融点をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記結晶形態が、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記結晶形態が、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記結晶形態が、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記結晶形態が、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱を含むと特徴づけられる、請求項1および22〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記結晶形態が約196℃の融点を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも約50重量%の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩;および
少なくとも約0.01重量%の安息香酸またはその塩
を含む組成物。
【請求項29】
少なくとも約0.10重量%の安息香酸またはその塩を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
5重量%以下の安息香酸またはその塩を含む、請求項28及び29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
1重量%以下の安息香酸またはその塩を含む、請求項28及び29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
少なくとも10ppmの銀をさらに含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも20ppmの銀をさらに含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
少なくとも25ppmの銀をさらに含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
600ppm以下の銀を含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
100ppm以下の銀を含む、請求項32〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
65ppm以下の銀を含む、請求項32〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
水中で50mg/mLの前記組成物が体液と等張性である、請求項32〜37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
等張液が、約280〜約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を有する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する、請求項32〜39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
L−オルニチン塩、安息香酸塩および溶媒を混合して中間溶液を生成させるステップと;
酢酸フェニルを前記中間溶液と混合するステップと;
少なくとも70重量%の結晶性L−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物を単離するステップと
を含むL−オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法。
【請求項42】
前記酢酸フェニルを混合する前に、前記中間溶液から塩の少なくとも一部を除去するステップであって、前記塩がL−オルニチン塩ではないステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記塩の少なくとも一部を除去する前に、塩酸を加えるステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記L−オルニチン、安息香酸塩および溶媒を混合するステップが:
L−オルニチン塩を水に分散して第1の溶液を生成させるステップと;
安息香酸塩をDMSOに分散して第2の溶液を生成させるステップと;
前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して前記溶液を生成させるステップと
を含む請求項41及び42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が少なくとも約0.10重量%の安息香酸塩を含む、請求項41〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が5重量%以下の安息香酸塩を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が1重量%以下の安息香酸塩を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記L−オルニチン塩がL−オルニチン塩酸塩である、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記安息香酸塩が安息香酸銀である、請求項41〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が少なくとも10ppmの銀をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が少なくとも20ppmの銀を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物が少なくとも25ppmの銀を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が600ppm以下の銀を含む、請求項49〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物が100ppm以下の銀を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物が65ppm以下の銀を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記酢酸フェニルがアルカリ金属塩中にある、請求項41〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記アルカリ金属塩が酢酸フェニルナトリウムである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物が100ppm以下のナトリウムを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が20ppm以下のナトリウムを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記L−オルニチンがハライド塩中にある、請求項41〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記ハライド塩がL−オルニチン塩酸塩である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が0.1重量%以下のクロリドを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が0.01重量%以下のクロリドを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
請求項41〜63のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物。
【請求項65】
少なくとも中間塩が沈澱するまで、L−オルニチン塩を含む溶液のpH値を増大させるステップであって、前記中間塩がL−オルニチン塩でないステップと;
中間塩を前記溶液から単離するステップと;
フェニル酢酸を前記溶液と混合するステップと;
L−オルニチンフェニルアセテート塩を前記溶液から単離するステップと
を含むL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法。
【請求項66】
pH値を少なくとも8.0まで増大させる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
pH値を少なくとも9.0まで増大させる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
pH値を増大させるステップが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロミドまたはその組合せからなる群から選択されるpH調節剤を添加するステップを含む、請求項65〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
治療有効量の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩を投与することによって、対象の高アンモニア血症を治療または改善する方法。
【請求項70】
前記結晶形態を経口で投与する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記結晶形態が形態I、形態II、形態III、形態Vからなる群から選択され:
前記形態Iが、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;
前記形態IIが、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;
前記形態IIIが、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;
前記形態Vが、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示す、請求項69および70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記結晶形態が形態Iである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記結晶形態が形態IIである、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記結晶形態が形態IIIである、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記結晶形態が形態Vである、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
形態I、形態II、形態IIIおよび形態Vからなる群から選択される少なくとも2つの結晶形態を投与する、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも2つの結晶形態をほぼ同じ時間に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記結晶形態を日に1〜3回投与する、請求項71〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記治療有効量が約500mg〜約50gの範囲である、請求項71〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、肝性脳症を有することが特定されている、請求項71〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記対象が、高アンモニア血症を有することが特定されている、請求項71〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
L−オルニチン塩、銀酢酸フェニルおよび溶媒を混合して溶液を生成させるステップであって、前記L−オルニチン塩がアルカリ金属塩であるステップと;
L−オルニチンフェニルアセテートを前記溶液から単離するステップと
を含むL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法。
【請求項83】
治療有効量の、L−オルニチンフェニルアセテートを含む溶液を静脈内に投与することを含む高アンモニア血症を治療または改善する方法であって、前記治療有効量が、500mL以下の前記溶液を含む方法。
【請求項84】
前記溶液が、少なくとも約25mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記溶液が、少なくとも約40mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む、請求項83及び84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記溶液が、300mg/mL以下を含む、請求項83〜85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記溶液が体液と等張性である、請求項83〜86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
L−オルニチンフェニルアセテートを圧縮する方法であって、準安定型のL−オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変化を誘発するステップを含む方法。
【請求項89】
前記準安定型が無定形である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記準安定型が、約4.9°、17.4、13.2°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
圧力を、予め決められた時間印加する、請求項88〜90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記予め決められた時間が約1秒以下である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記圧力が少なくとも約500psiである、請求項88〜92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記相変化が、圧力を印加した後、約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する組成物をもたらす、請求項88〜93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記相変化が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す組成物をもたらす、請求項88〜94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
請求項88〜95のいずれか一項に記載の方法にしたがって調製された組成物。
【請求項1】
結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物。
【請求項2】
前記結晶形態が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記結晶形態が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記結晶形態が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項2及び3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記結晶形態が約202℃の融点を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記結晶形態が、およそ以下の結晶パラメーター、すなわち:
単位格子寸法:a=6.594(2)Å、b=6.5448(18)Å、c=31.632(8)Å、α=90°、β=91.12(3)°、γ=90°;
結晶系:単斜晶系;および
空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記結晶形態が式[C5H13N2O2][C8H7O2]で表される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記結晶形態が、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記結晶形態が、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記結晶形態が、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項8及び9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記結晶形態が水および/またはエタノール分子を含む、請求項1および8〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記結晶形態が、熱重量分析で測定して約11重量%の前記分子を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記結晶形態が、示差走査熱量測定により約35℃での吸熱を含むと特徴づけられる、請求項1および8〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
約203℃での融点をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記結晶形態が、およそ以下の結晶パラメーター、すなわち:
単位格子寸法:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°;
結晶系:単斜晶系;および
空間群:P21を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す、請求項1および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記結晶形態が、式[C5H13N2O2][C8H7O2]EtOH.H2Oで表される、請求項1および8〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記結晶形態が、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記結晶形態が、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記結晶形態が、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項17及び18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記結晶形態が、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱を含むと特徴づけられる、請求項1および17〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
約203℃での融点をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記結晶形態が、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記結晶形態が、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記結晶形態が、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記結晶形態が、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱を含むと特徴づけられる、請求項1および22〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記結晶形態が約196℃の融点を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
少なくとも約50重量%の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩;および
少なくとも約0.01重量%の安息香酸またはその塩
を含む組成物。
【請求項29】
少なくとも約0.10重量%の安息香酸またはその塩を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
5重量%以下の安息香酸またはその塩を含む、請求項28及び29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
1重量%以下の安息香酸またはその塩を含む、請求項28及び29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
少なくとも10ppmの銀をさらに含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも20ppmの銀をさらに含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
少なくとも25ppmの銀をさらに含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
600ppm以下の銀を含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
100ppm以下の銀を含む、請求項32〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
65ppm以下の銀を含む、請求項32〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
水中で50mg/mLの前記組成物が体液と等張性である、請求項32〜37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
等張液が、約280〜約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を有する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する、請求項32〜39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
L−オルニチン塩、安息香酸塩および溶媒を混合して中間溶液を生成させるステップと;
酢酸フェニルを前記中間溶液と混合するステップと;
少なくとも70重量%の結晶性L−オルニチンフェニルアセテートを含む組成物を単離するステップと
を含むL−オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法。
【請求項42】
前記酢酸フェニルを混合する前に、前記中間溶液から塩の少なくとも一部を除去するステップであって、前記塩がL−オルニチン塩ではないステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記塩の少なくとも一部を除去する前に、塩酸を加えるステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記L−オルニチン、安息香酸塩および溶媒を混合するステップが:
L−オルニチン塩を水に分散して第1の溶液を生成させるステップと;
安息香酸塩をDMSOに分散して第2の溶液を生成させるステップと;
前記第1の溶液と前記第2の溶液を混合して前記溶液を生成させるステップと
を含む請求項41及び42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物が少なくとも約0.10重量%の安息香酸塩を含む、請求項41〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が5重量%以下の安息香酸塩を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が1重量%以下の安息香酸塩を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記L−オルニチン塩がL−オルニチン塩酸塩である、請求項41〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記安息香酸塩が安息香酸銀である、請求項41〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が少なくとも10ppmの銀をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が少なくとも20ppmの銀を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物が少なくとも25ppmの銀を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が600ppm以下の銀を含む、請求項49〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物が100ppm以下の銀を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物が65ppm以下の銀を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記酢酸フェニルがアルカリ金属塩中にある、請求項41〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記アルカリ金属塩が酢酸フェニルナトリウムである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物が100ppm以下のナトリウムを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が20ppm以下のナトリウムを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記L−オルニチンがハライド塩中にある、請求項41〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記ハライド塩がL−オルニチン塩酸塩である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が0.1重量%以下のクロリドを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が0.01重量%以下のクロリドを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
請求項41〜63のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物。
【請求項65】
少なくとも中間塩が沈澱するまで、L−オルニチン塩を含む溶液のpH値を増大させるステップであって、前記中間塩がL−オルニチン塩でないステップと;
中間塩を前記溶液から単離するステップと;
フェニル酢酸を前記溶液と混合するステップと;
L−オルニチンフェニルアセテート塩を前記溶液から単離するステップと
を含むL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法。
【請求項66】
pH値を少なくとも8.0まで増大させる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
pH値を少なくとも9.0まで増大させる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
pH値を増大させるステップが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロミドまたはその組合せからなる群から選択されるpH調節剤を添加するステップを含む、請求項65〜67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
治療有効量の結晶形態のL−オルニチンフェニルアセテート塩を投与することによって、対象の高アンモニア血症を治療または改善する方法。
【請求項70】
前記結晶形態を経口で投与する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記結晶形態が形態I、形態II、形態III、形態Vからなる群から選択され:
前記形態Iが、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;
前記形態IIが、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;
前記形態IIIが、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;
前記形態Vが、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示す、請求項69および70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記結晶形態が形態Iである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記結晶形態が形態IIである、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記結晶形態が形態IIIである、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記結晶形態が形態Vである、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
形態I、形態II、形態IIIおよび形態Vからなる群から選択される少なくとも2つの結晶形態を投与する、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも2つの結晶形態をほぼ同じ時間に投与する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記結晶形態を日に1〜3回投与する、請求項71〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記治療有効量が約500mg〜約50gの範囲である、請求項71〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、肝性脳症を有することが特定されている、請求項71〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記対象が、高アンモニア血症を有することが特定されている、請求項71〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
L−オルニチン塩、銀酢酸フェニルおよび溶媒を混合して溶液を生成させるステップであって、前記L−オルニチン塩がアルカリ金属塩であるステップと;
L−オルニチンフェニルアセテートを前記溶液から単離するステップと
を含むL−オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法。
【請求項83】
治療有効量の、L−オルニチンフェニルアセテートを含む溶液を静脈内に投与することを含む高アンモニア血症を治療または改善する方法であって、前記治療有効量が、500mL以下の前記溶液を含む方法。
【請求項84】
前記溶液が、少なくとも約25mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記溶液が、少なくとも約40mg/mLのL−オルニチンフェニルアセテートを含む、請求項83及び84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記溶液が、300mg/mL以下を含む、請求項83〜85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記溶液が体液と等張性である、請求項83〜86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
L−オルニチンフェニルアセテートを圧縮する方法であって、準安定型のL−オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変化を誘発するステップを含む方法。
【請求項89】
前記準安定型が無定形である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記準安定型が、約4.9°、17.4、13.2°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
圧力を、予め決められた時間印加する、請求項88〜90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記予め決められた時間が約1秒以下である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記圧力が少なくとも約500psiである、請求項88〜92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記相変化が、圧力を印加した後、約1.1〜約1.3kg/m3の範囲の密度を有する組成物をもたらす、請求項88〜93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記相変化が、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す組成物をもたらす、請求項88〜94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
請求項88〜95のいずれか一項に記載の方法にしたがって調製された組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−522803(P2012−522803A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503725(P2012−503725)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029708
【国際公開番号】WO2010/115055
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(506164729)オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029708
【国際公開番号】WO2010/115055
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(506164729)オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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