説明

LANケーブル保持器具

【課題】LANケーブルをその使用条件である最小曲げ半径以上に保持しつつ、同時にケーブル引っ張り等の外部からの過負荷によるコネクタの破壊やコネクタを実装しているプリント板のフットパターン剥離等による断線を防止することにある。
【解決手段】筐体2の開口部2a内に露出したコネクタ1にプラグを差し込まれて接続されるLANケーブル6を保持するLANケーブル保持器具5であって、LANケーブル6を挿通される筒状のケーブル通路5bを有し、そのケーブル通路5bに挿通されたLANケーブル6をそのLANケーブルの最小曲げ半径以上の曲げ半径で少なくともそのLANケーブルの曲がりの半径方法内側から保持するケーブル引出し部5aと、筐体2と別体に形成され、筐体2の開口部2aの近傍に固定されて、ケーブル引出し部5aを支持するとともにコネクタ1を掛止する固定部5cと、を具えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LAN(Local Area Network:ローカルエリアネットワーク)ケーブルを接続される通信機器やコンピュータ関連等の装置に用いられ、LANケーブルの使用条件である最小曲げ半径以上でLANケーブルを保持してLANケーブルを保護するとともに、LANケーブルの引っ張りによるコネクタの破損や装置内部のコネクタを実装したプリント板のフットパターンの破損などによる接続不良から装置を保護するLANケーブル保持器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器やコンピュータ関連装置は、電子回路部品や装置の小型化及びプリント板の高密度実装化が進み、LANケーブル用のコネクタを含めて、プリント板実装部品のSMD(Surface Mount Device:表面実装タイプ)化率がどんどん高くなる一方で、SMD化によりコネクタ単体の取付け強度が下がっており、一層の品質・信頼性の向上が求められている。
【0003】
組立製造性を見ると、高密度実装への対応と製造コスト低減からSMD部品は必要不可欠な部品であり、自動機による部品実装が出来ないと高密度実装もコスト低減も進まず、何より製造品質の確保が出来なくなる。
【0004】
SMD部品は、プリント板表面のフットパターンに載せて半田する構造であるため、IMD(Insert Mount Device:差込み実装タイプ)部品のようにプリント板の取付け用穴(スルホール)に半田固定する構造に比べると取付け強度が低い。このため、SMD化したコネクタにケーブル引張時に過負荷がかかった場合は、プリント板のフットパターンへの半田付け強度のみでコネクタを固定しているだけなので、フットパターンの剥離による断線やコネクタの取付け端子破損による断線の発生が懸念される。
【0005】
またSMD部品は、プリント板の表面に載せて半田固定する構造のため、半田が溶けてプリント板のフットパターンとSMD部品の取付け端子との間に行き渡り、その後固まって固定されるまでに、SMD部品がプリント板表面で動いたり取付け端子が浮いてしまったりすることがある。このため、SMD化したコネクタでは、筐体のコネクタ受け形状が近過ぎると、組立時にコネクタが筐体と干渉してプリント板のフットパターン剥離やコネクタの取付け端子破損を生じさせる結果となることから、適切な形状とクリアランスを設けなければならないが、逆にクリアランスが多過ぎると後述するようなコネクタの保護構造が機能しなくなるため、クリアランスの設計が容易ではない。
【0006】
ちなみに、IMD部品の場合は、スルホール穴への半田付けで充分な取付け強度が得られていたが、IMD部品では実装面積(実際の部品取付け面に加えて、実装用のスルホール穴があるため半田付け面も必要になる)が大きく、近年の電子部品の小型化及びプリント板への高密度実装が実現できなくなるばかりでなく、プリント板の実装工程も工程が増えたり手付け半田作業が発生したりする場合があり、製造コストの低減を阻害し製造品質の低下につながるという不都合がある。
【0007】
ところで、図4(a),(b)は、通信機器の一種として電話機を例示する平面図および底面図であり、図4(b)に示すようにこの電話機の底面にも、イーサネット(登録商標)接続のLAN用およびパーソナルコンピュータ(PC)用に、LANケーブルのプラグを装着し得る二個のコネクタ1がSMD部品として設けられている。
【0008】
図5(a),(b)および(c)は、上記のようなコネクタ1と電話機等の装置の筐体との間の、コネクタの保護のない従来の構造を示す正面図、同図のA−A断面図およびB−B断面図であり、従来はこの図5に示すように、電話機等の装置の筐体2に、その装置の内部のプリント板3上に表面実装したストレートタイプ(プラグ差込み口がプリント板の真上に向くタイプ)のコネクタ1の周囲に隙間tが空くように開口部としてのコネクタ穴2aを形成して、筐体2がコネクタ1自体に干渉しない構造としており、LANケーブルを引っ張る外力はコネクタ1に直接加わっていた。
【0009】
図6(a),(b)および(c)は、図5に示すと同様のストレートタイプのコネクタ1と電話機等の装置の筐体との間の、コネクタの保護を図る場合の構造を示す正面図、同図のC−C断面図およびD−D断面図であり、この図6に示す構造では、装置の筐体2のコネクタ穴2aに、コネクタ1を外力から保護するための突起形状部2bを設け、外力によりコネクタ1が引っ張られると筐体2の突起形状部2bにコネクタ1がぶつかるようにしてコネクタ1を保護するが、コネクタ1/筐体2/プリント板3などの寸法バラツキや組立寸法バラツキなどを考慮する必要があるため、コネクタ1と筐体2のコネクタ穴2aや突起形状部2bとの間にある程度のクリアランスを設けている。
【0010】
図7(a),(b)および(c)は、ライトアングルタイプ(プラグ差込み口がプリント板と平行に向くタイプ)のコネクタ4と電話機等の装置の筐体2との間の、コネクタの保護を図る場合の構造を示す正面図、同図のE−E断面図およびF−F断面図であり、この図7に示す構造では、装置の筐体2のコネクタ穴2aに、コネクタ4を外力から保護するための突起形状部2bを設けるとともに、筐体2のコネクタ穴2aの背後に、コネクタ4を外力から保護するためのリブ2cを設け、外力によりコネクタ1が引っ張られると筐体2の突起形状部2bおよびリブ2cにコネクタ4がぶつかるようにしてコネクタ4を保護するが、ここでもコネクタ4/筐体2/プリント板3などの寸法バラツキや組立寸法バラツキなどを考慮する必要があるため、コネクタ4と筐体2のコネクタ穴2aや突起形状部2bやリブ2cとの間にある程度のクリアランスを設けている。
【0011】
しかしながら、これらのクリアランスは、LANケーブルを引っ張る外力によるコネクタ破損からコネクタ1,4を保護できる最大寸法以下で無ければならず、それゆえ構造設計の難易度が高くなっていた。
【0012】
一方、LANケーブルについては、コネクタ1,4へ接続するだけになっていたため、LANケーブル使用条件の最小曲げ半径以上に保持していないので、LANケーブルを引っ張るなどした場合に、最小曲げ半径より小さい曲げ半径となってしまう場合がある。そこで、LANケーブルを保護するために従来、例えば特許文献1に記載された如き構造が知られている。
【特許文献1】特開2001−85869
【0013】
この従来の構造は、装置の筐体の底部の固定構造部分に設けた円弧状に延在する溝内にLANケーブルを固定することで、LANケーブル使用条件の最小曲げ半径以上に保持するとともに、LANケーブルから受ける外力を抑えてプラグとコネクタとの接触安定性を向上させるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、LAN製品以外の接続ケーブルは最小曲げ半径等の使用制限が無かったため、装置筐体にケーブルを保持する構造を設けることで容易にケーブル及びコネクタを保護することができたが、LAN製品の場合には、例えば上記特許文献1記載のもののようにLANケーブルの固定を装置の筐体の固定構造部分で行うこととすると、最小曲げ半径の制限から、装置外観が大きくなってデザイン上の制約となってしまうという不都合があり、装置外観が大きいとケース材料も多く必要となり、環境面への負荷も高くなるという不都合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のLANケーブル保持器具は、筐体開口部内に露出したコネクタにプラグを差し込まれて接続されるLANケーブルを保持するLANケーブル保持器具において、前記LANケーブルを挿通される筒状のケーブル通路を有し、そのケーブル通路に挿通された前記LANケーブルをそのLANケーブルの最小曲げ半径以上の曲げ半径で少なくともそのLANケーブルの曲がりの半径方法内側から保持するケーブル引出し部と、前記筐体と別体に形成され、前記筐体開口部の近傍に固定されて、前記ケーブル引出し部を支持するとともに前記コネクタまたは前記プラグを掛止する固定部と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
かかるLANケーブル保持器具にあっては、LANケーブルを挿通される筒状のケーブル通路を有するケーブル引出し部が、そのケーブル通路に挿通されたLANケーブルをそのLANケーブルの最小曲げ半径以上の曲げ半径で少なくともそのLANケーブルの曲がりの半径方法内側から保持し、また、筐体と別体に形成されて筐体開口部の近傍に固定された固定部が、LANケーブルを挿通された上記ケーブル引出し部を支持するとともにコネクタまたはそのLANケーブルのプラグを適宜掛止する。
【0017】
従って、この発明のLANケーブル保持器具によれば、ケーブル引出し部の筒状のケーブル通路にLANケーブルを挿通するとともに、そのLANケーブルの端部のプラグを、筐体開口部内に露出したコネクタに差し込み、次いで、筐体と別体に形成されてそのケーブル引出し部を支持する固定部を、上記コネクタまたはLANケーブルのプラグに対し少なくともLANケーブルの引っ張り方向に実質上隙間なく位置するように、筐体開口部の近傍にネジあるいは引っ掛け爪等で固定することにより、LANケーブルの使用条件を容易に満たすとともに、LANケーブルの引っ張りや不慮の電話機落下などで生じるコネクタへの過負荷を当該ケーブル保持器具と装置筐体とで受け止めることができるので、LANケーブルをその使用条件である最小曲げ半径以上に保持しつつ、同時にケーブル引っ張り等の外部からの過負荷によるコネクタ(特にSMD部品)の破壊やコネクタを実装しているプリント板のフットパターン剥離等による断線を防止することができる。
【0018】
なお、この発明においては、前記ケーブル引出し部は、前記固定部に固定されるとともに、円弧状に延在する前記ケーブル通路を有するものでも良く、このようにすれば、LANケーブル保持器具を装置筐体と別体に形成された別部品にすることで、装置筐体にLANケーブル保持構造を設ける必要が無くなり、装置の外観デザインの制約条件が少なくなるとともに、コネクタ用の筐体開口部を筐体底面部に設ける場合にLANケーブル保持器具を取付けられる高さ(空間)を考慮するのみで良いため、装置の外観デザインの自由度を高くすることができる。
【0019】
また、この発明においては、前記ケーブル引出し部は、前記固定部に固定されるとともに、ラッパ状に延在する前記ケーブル通路を有するものでも良く、あるいは、前記ケーブル引出し部は、前記固定部に回転可能に支持されるとともに、円弧状に延在する前記ケーブル通路を有するものでも良く、これらのようにすれば、LANケーブル使用条件の最小曲げ半径以上にLANケーブルを保持するとともに、ケーブル引っ張り時などの過負荷によるコネクタの取付け端子破損やプリント板のコネクタ実装用フットパターンの剥離等による接続不良を防止しつつ、LANケーブル接続時の配線ルートの自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a),(b),(c)および(d)は、この発明のLANケーブル保持器具の一実施例を示す正面図、(a)のG−G線に沿う断面図、(a)のH−H線に沿う断面図および斜視図であり、図中、符号1はLANケーブル用のストレートタイプのSMD部品であるコネクタ、2は電話機等の装置の筐体をそれぞれ示す。また符合5はこの実施例のLANケーブル保持器具を示す。
【0021】
コネクタ1は、筐体2内に取り付けられたプリント板3上に表面実装されて、筐体2の開口部としてのコネクタ穴2a内に周囲に隙間を空けて露出しており、この実施例のLANケーブル保持器具5は、図1に示すように、そのコネクタ1に図示しないプラグを差し込まれて接続されるLANケーブル6を保持するためのもので、LANケーブル6を挿通される断面角筒状のケーブル通路5bを有し、そのケーブル通路5bに挿通されたLANケーブル6をそのLANケーブル6の最小曲げ半径以上の曲げ半径で周囲から保持するケーブル引出し部5aと、筐体2と別体に形成され、筐体2のコネクタ穴2aの近傍に固定されて、ケーブル引出し部5aを支持するとともにコネクタ1と当接してそれを掛止するブラケット状の固定部5cと、を具えてなる。
【0022】
ここで、ケーブル引出し部5aは、図1(b),(c)に示すように、固定部5cと一体に形成されることで固定部5cに固定されており、またケーブル通路5bは、図1(b)に示すように、LANケーブル6の周囲を囲繞しつつ円弧状に延在していて、その半径方向内側の円弧状の断面形状の半径は、LANケーブル6の最小曲げ半径以上とされている。そして固定部5cは、図1(b)に示すように、筐体2に設けられたネジ穴2dと螺合するネジ7によって筐体2に締着固定されている。
【0023】
この実施例のLANケーブル保持器具5によれば、ケーブル引出し部5aの角筒状のケーブル通路5bにLANケーブル6を挿通するとともに、そのLANケーブル6の端部のプラグを、筐体2のコネクタ穴2a内に露出したコネクタ1に差し込み、次いで、筐体2と別体に形成されてそのケーブル引出し部5aを支持する固定部5cを、コネクタ1に対しLANケーブル6の引っ張り方向に当接するように筐体2のコネクタ穴2aの近傍にネジ7で固定することにより、LANケーブル6の使用条件を容易に満たすとともに、LANケーブル6の引っ張りや不慮の電話機落下などで生じるコネクタ1への過負荷を当該ケーブル保持器具5と装置の筐体2とで受け止めることができるので、LANケーブル6をその使用条件である最小曲げ半径以上に保持しつつ、同時にケーブル引っ張り等の外部からの過負荷によるコネクタ1の破壊やコネクタ1を実装しているプリント板3のフットパターン剥離等による断線を防止することができる。
【0024】
しかもこの実施例のLANケーブル保持器具5によれば、ケーブル引出し部5aは、固定部5cと一体に形成されることで固定部5cに固定されるとともに、円弧状に延在するケーブル通路5bを有していることから、LANケーブル保持器具5が筐体2と別体に形成された別部品であることで、筐体2にLANケーブル保持構造を設ける必要が無くなり、装置の外観デザインの制約条件が少なくなるとともに、図4に示す電話機のように、コネクタ1を露出させるためのコネクタ穴2aを筐体2の底面部に設ける場合にLANケーブル保持器具5を取り付けられる高さ(空間)を考慮するのみで良いため、装置の外観デザインの自由度を高くすることができる。
【0025】
図2(a),(b),(c)および(d)は、この発明のLANケーブル保持器具の他の一実施例を示す正面図、(a)のI−I線に沿う断面図、(a)のJ−J線に沿う断面図および斜視図であり、図中、符号1はLANケーブル用のストレートタイプのSMD部品であるコネクタ、2は電話機等の装置の筐体をそれぞれ示す。また符合8はこの実施例のLANケーブル保持器具を示す。
【0026】
先の実施例と同様、コネクタ1は、筐体2内に取り付けられたプリント板3上に表面実装されて、筐体2の開口部としてのコネクタ穴2a内に周囲に隙間を空けて露出しており、この実施例のLANケーブル保持器具8は、図2に示すように、そのコネクタ1に図示しないプラグを差し込まれて接続されるLANケーブル6を保持するためのもので、LANケーブル6を挿通される断面円筒状のケーブル通路8bを有し、そのケーブル通路8bに挿通されたLANケーブル6をそのLANケーブル6の最小曲げ半径以上の曲げ半径でLANケーブル6の曲がりの半径方向内側から保持するケーブル引出し部8aと、筐体2と別体に形成され、筐体2のコネクタ穴2aの近傍に固定されて、ケーブル引出し部8aを支持するとともにコネクタ1と当接してそれを掛止するブラケット状の固定部8cと、を具えてなる。
【0027】
ここで、ケーブル引出し部8aは、図2(b),(c)に示すように、固定部8cと一体に形成されることで固定部8cに固定されており、またケーブル通路8bは、図2(b),(c)に示すように、固定部8cから遠ざかるに連れて拡径するラッパ状に延在していて、その円弧状の断面形状の半径は、LANケーブル6の最小曲げ半径以上とされている。そして固定部8cは、図2(b)に示すように、先の実施例と同様、筐体2に設けられたネジ穴と螺合するネジ7によって筐体2に締着固定されている。
【0028】
この実施例のLANケーブル保持器具8によっても、先の実施例と同様、LANケーブル6の使用条件を容易に満たすとともに、LANケーブル6の引っ張りや不慮の電話機落下などで生じるコネクタ1への過負荷を当該ケーブル保持器具8と装置の筐体2とで受け止めることができるので、LANケーブル6をその使用条件である最小曲げ半径以上に保持しつつ、同時にケーブル引っ張り等の外部からの過負荷によるコネクタ1の破壊やコネクタ1を実装しているプリント板3のフットパターン剥離等による断線を防止することができる。
【0029】
しかもこの実施例のLANケーブル保持器具8によれば、ケーブル引出し部8aは、固定部8cと一体に形成されることで固定部8cに固定されるとともに、ラッパ状に延在するケーブル通路8bを有していることから、LANケーブル保持器具8が筐体2と別体に形成された別部品であることで、筐体2にLANケーブル保持構造を設ける必要が無くなり、装置の外観デザインの制約条件が少なくなるとともに、図4に示す電話機のように、コネクタ1を露出させるためのコネクタ穴2aを筐体2の底面部に設ける場合にLANケーブル保持器具8を取り付けられる高さ(空間)を考慮するのみで良いため、装置の外観デザインの自由度を高くすることができ、さらに、LANケーブル使用条件の最小曲げ半径以上にLANケーブル6を保持しつつ、LANケーブル6の引き出し方向を適宜に変え得るので、LANケーブル接続時の配線ルートの自由度を向上させることができる。
【0030】
図3(a),(b),(c)および(d)は、この発明のLANケーブル保持器具のさらに他の一実施例を示す正面図、(a)のK−K線に沿う断面図、(a)のL−L線に沿う断面図およびケーブル引出し部の二つの状態を示す斜視図であり、図中、符号1はLANケーブル用のストレートタイプのSMD部品であるコネクタ、2は電話機等の装置の筐体をそれぞれ示す。また符合9はこの実施例のLANケーブル保持器具を示す。
【0031】
先の実施例と同様、コネクタ1は、筐体2内に取り付けられたプリント板3上に表面実装されて、筐体2の開口部としてのコネクタ穴2a内に周囲に隙間を空けて露出しており、この実施例のLANケーブル保持器具9は、図3に示すように、そのコネクタ1に図示しないプラグを差し込まれて接続されるLANケーブル6を保持するためのもので、LANケーブル6を挿通される断面角筒状のケーブル通路9bを有し、そのケーブル通路9bに挿通されたLANケーブル6をそのLANケーブル6の最小曲げ半径以上の曲げ半径で周囲から保持するケーブル引出し部9aと、筐体2と別体に形成され、筐体2のコネクタ穴2aの近傍に固定されて、ケーブル引出し部9aを支持するとともにコネクタ1と当接してそれを掛止するブラケット状の固定部9cと、を具えてなる。
【0032】
ここで、ケーブル引出し部9aは、図3(b),(c)に示すように、固定部9cと別体に形成されるとともに基部に円形の外周溝9dを有し、その外周溝9dで固定部9cのリング状の内周フランジ9eと図中矢印で示すように360度回動可能に嵌まり合うことで固定部9cに支持されており、またケーブル通路9bは、図3(b)に示すように、LANケーブル6の周囲を囲繞しつつ円弧状に延在していて、その半径方向内側の円弧状の断面形状の半径は、LANケーブル6の最小曲げ半径以上とされている。そして固定部9cは、図3(b)に示すように、先の実施例と同様、筐体2に設けられたネジ穴と螺合するネジ7によって筐体2に締着固定されている。なお、図示例では、ケーブル引出し部9aは、固定部9cの内側から内周フランジ9e内に挿通された、外周フランジを持つ円筒状部品9fを基部側の端部に挿入されて接着されることで、固定部9cと360度回動可能に嵌まり合っている。
【0033】
この実施例のLANケーブル保持器具9によっても、先の実施例と同様、LANケーブル6の使用条件を容易に満たすとともに、LANケーブル6の引っ張りや不慮の電話機落下などで生じるコネクタ1への過負荷を当該ケーブル保持器具9と装置の筐体2とで受け止めることができるので、LANケーブル6をその使用条件である最小曲げ半径以上に保持しつつ、同時にケーブル引っ張り等の外部からの過負荷によるコネクタ1の破壊やコネクタ1を実装しているプリント板3のフットパターン剥離等による断線を防止することができる。
【0034】
しかもこの実施例のLANケーブル保持器具9によれば、ケーブル引出し部9aは、その基部を固定部8cに回動可能に支持されるとともに、円弧状に延在するケーブル通路9bを有していることから、LANケーブル保持器具9が筐体2と別体に形成された別部品であることで、筐体2にLANケーブル保持構造を設ける必要が無くなり、装置の外観デザインの制約条件が少なくなるとともに、図4に示す電話機のように、コネクタ1を露出させるためのコネクタ穴2aを筐体2の底面部に設ける場合にLANケーブル保持器具9を取り付けられる高さ(空間)を考慮するのみで良いため、装置の外観デザインの自由度を高くすることができ、さらに、LANケーブル使用条件の最小曲げ半径以上にLANケーブル6を保持しつつ、図3(d)に示すように、ケーブル引出し部9aの向きを適宜に変え得るので、LANケーブル接続時の配線ルートの自由度を向上させることができる。
【0035】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、LANケーブルのプラグがコネクタから突出するものの場合には、固定部は、そのLANケーブルのプラグに当接してプラグごとコネクタを掛止するものでも良い。また固定部は、筐体開口部の近傍に引っ掛け爪で固定しても良い。そしてこの発明のLANケーブル保持器具は、ライトアングルタイプのコネクタ4に適用しても良く、その場合でもストレートタイプのコネクタ1の場合と同様の作用効果をもたらすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
かくしてこの発明のLANケーブル保持器具によれば、LANケーブルをその使用条件である最小曲げ半径以上に保持しつつ、同時にケーブル引っ張り等の外部からの過負荷によるコネクタの破壊やコネクタを実装しているプリント板のフットパターン剥離等による断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a),(b),(c)および(d)は、この発明のLANケーブル保持器具の一実施例を示す正面図、(a)のG−G線に沿う断面図、(a)のH−H線に沿う断面図および斜視図である。
【図2】(a),(b),(c)および(d)は、この発明のLANケーブル保持器具の他の一実施例を示す正面図、(a)のI−I線に沿う断面図、(a)のJ−J線に沿う断面図および斜視図である。
【図3】(a),(b),(c)および(d)は、この発明のLANケーブル保持器具のさらに他の一実施例を示す正面図、(a)のK−K線に沿う断面図、(a)のL−L線に沿う断面図およびケーブル引出し部の二つの状態を示す斜視図である。
【図4】(a),(b)は、通信機器の一種として電話機を例示する平面図および底面図である。
【図5】(a),(b)および(c)は、コネクタと電話機等の装置の筐体との間の、コネクタの保護のない従来の構造を示す正面図、同図のA−A断面図およびB−B断面図である。
【図6】(a),(b)および(c)は、図5に示すと同様のストレートタイプのコネクタと電話機等の装置の筐体との間の、コネクタの保護を図る場合の構造を示す正面図、同図のC−C断面図およびD−D断面図である。
【図7】(a),(b)および(c)は、ライトアングルタイプのコネクタと電話機等の装置の筐体との間の、コネクタの保護を図る場合の構造を示す正面図、同図のE−E断面図およびF−F断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ストレートタイプのコネクタ
2 筐体
2a コネクタ穴
2b 突起形状部
2c リブ
2d ネジ穴
3 プリント板
4 ライトアングルタイプのコネクタ
5,8,9 LANケーブル保持器具
5a,8a,9a
5b,8b,9b
5c,8c,9c
6 LANケーブル
7 ネジ
9d 外周溝
9e 内周フランジ
9f 円筒状部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体開口部内に露出したコネクタにプラグを差し込まれて接続されるLANケーブルを保持するLANケーブル保持器具において、
前記LANケーブルを挿通される筒状のケーブル通路を有し、そのケーブル通路に挿通された前記LANケーブルをそのLANケーブルの最小曲げ半径以上の曲げ半径で少なくともそのLANケーブルの曲がりの半径方法内側から保持するケーブル引出し部と、
前記筐体と別体に形成され、前記筐体開口部の近傍に固定されて、前記ケーブル引出し部を支持するとともに前記コネクタまたは前記プラグを掛止する固定部と、
を具えてなる、LANケーブル保持器具。
【請求項2】
前記ケーブル引出し部は、前記固定部に固定されるとともに、円弧状に延在する前記ケーブル通路を有することを特徴とする、請求項1記載のLANケーブル保持器具。
【請求項3】
前記ケーブル引出し部は、前記固定部に固定されるとともに、ラッパ状に延在する前記ケーブル通路を有することを特徴とする、請求項1記載のLANケーブル保持器具。
【請求項4】
前記前記ケーブル引出し部は、前記固定部に回転可能に支持されるとともに、円弧状に延在する前記ケーブル通路を有することを特徴とする、請求項1記載のLANケーブル保持器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−352012(P2006−352012A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179374(P2005−179374)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】