説明

LEDパッケージ

【課題】 LEDパッケージにおける放熱や熱膨張の問題を解決し、LEDパッケージを現在のものよりも大光量を得られるパッケージとでき、同時にコストも抑えることを課題とする。
【解決手段】 LED素子を有するLED発光部と、電極部と、ヒートシンク部からなるLEDについて、前記電極部と前記ヒートシンク部管の絶縁層を剛性率が低く、ヒートシンク部の熱膨張に追従可能なセラミックスを主とする材料を用いることで解決した。セラミックスを主とする材料はセラミックス粒子の相と、その周囲を取り囲む無機結合相からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(LED)を用いた発光装置のパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを用いた発光装置は照明、光源、テレビなどに幅広く用いられている。
【0003】
それらの発光装置は、従来の放電灯、蛍光灯やフィラメントを用いた発光よりも省電力にて遜色ない発光を行なうことができ、エネルギー的に有利である。特に携帯電話や携帯用GPS地図、携帯用ゲーム機などは、持ち歩きが前提であるために電池にて駆動する。消費電力を抑えることはそれらの電池部分を軽量かつ小容量にすることができ、小型化や軽量化、電池以外の機能のための空間を確保することに有用である。
【0004】
このようにLEDは、省電力をその特徴とするが、同様にフィラメントや蛍光灯などに比べて長寿命という利点がある。そのために高所や交差点などの特に取替えのしにくい場所へ用いるのは有利である。
【0005】
一方で、LEDの普及が進んでいない分野もある。
【0006】
体育館や駅構内などの照明用や、競技場、球場、屋外施設、空港や港湾に用いられる屋外灯、自動車用のヘッドライトなどがこれにあたる。これらの省電力は望ましいが、一方で大光量を必要とする。同時に照明の取替えが煩雑となるために、長寿命が望まれる。
【0007】
従来のLEDパッケージの一例を図6に示す。
【0008】
LEDパッケージは主としてLED素子を有する発光部、素子へ電力を供給する電極部、発光部と電極部を電気的に接合するリードまたはバンプを構成として含む。電極部とヒートシンク部はガラスエポキシ樹脂などの絶縁体樹脂にて絶縁されている。
【0009】
このようなLEDパッケージからより多くの光量を取出すには、LED素子へ供給する電流値を上げれば大光量が得られる。ところが、問題として電流値を上げることにより、素子からはより多くの熱が発生することになり、LED素子が高温となり発光効率が著しく落ちるという問題がある。
【0010】
この問題を解決するために、発光部と直接または間接的にヒートシンクを設けることができる。ヒートシンクはCuやAlなどの金属材料を主とする、安価で熱伝導性の良い材料が用いられる。
【0011】
このヒートシンクを設けることである程度までの放熱は行なうことができ、LED素子を高熱から保護することは多くの場合可能である。
【0012】
前記ヒートシンクは発光部と比較して大きな表面積及び容量を持たなければ、十分にその効果を発揮できずに発光部を中心として熱を効果的に逃がすことができなくなる。そのために、ヒートシンクは発光部と比較して通常10〜数百倍の面積を持つのが一般的である。
【0013】
ここで、LED素子と電極は変質しにくく電気抵抗が低いAuのような材質のワイヤーが用いられる。製造的には、ヒートシンク上に発光部と電極パターンを設け、それらをつなぐワイヤーをボンディングし、必要に応じて発光部を中心に樹脂封止する工程となる。ところが、直接電極を金属製のヒートシンクに直接パターンニングすることは、電流がヒートシンクへ流れてしまうため、できない。これを避けるには、電極とヒートシンクの間に絶縁体を挟むか、ヒートシンクの材質を絶縁性の物質に変える必要が生じる。
【0014】
前者を選択するには、ヒートシンクとして絶縁性である樹脂かセラミックスを用いることが考えられるが、このうち樹脂はLEDの素子からの発光が大光量になるほど、その光および発生する熱により劣化が進み、LEDパッケージの寿命が短くなる上に、後述する反射率が低下するために適さない。
【0015】
一方、セラミックスを選択する場合は、前述の樹脂の劣化のような問題はないが、問題となるのは、これらセラミックスの熱膨張率である。熱膨張率はCuが16.6(ppm/K)、Alが23(ppm/K)に対して、Alが7.5(ppm/K)、Siが3.5(ppm/K)、ZrOが10.5(ppm/K)、AlNが5(ppm/K)と著しく低い。そのために、LEDパッケージの使用中に例えば常温より温度が150℃上昇すれば、直線距離が3mmでCuのヒートシンクとAlの絶縁層であれば、両者間に約4μmの長さの違いが生じる。ヒートシンク上にAlの膜を設け、昇温、降温のたびにこの長さが差として生じることは、両者を剥離をさせるのに十分である。剥離が起これば、そこから水分などがヒートシンクと封止樹脂間に入り込み、急激な昇温や降温にさらされるために、やがて封止樹脂とヒートシンクの剥離を生じさせる。結局、ヒートシンクをCuやAlなどの金属とした場合には、絶縁性セラミックスの熱膨張率がそれらの熱膨張率より小さいために、長期間の使用ができない。
【0016】
次に後者を選択した場合であるが、絶縁体でかつ熱伝導率が十分に高い材質はAlN系セラミックス以外に実用できるものは見つかっていない。一般に入手できるAlNセラミクスの熱伝導率は高いもので180〜250W/m・Kのものもあり、熱伝導率の面ではヒートシンク材として使用できる。しかしながら、AlN系セラミックスはCuやAlに対して極めて高価であり、安価に量産されるLEDパッケージにはその価格が障碍となり採用できない。
【0017】
以上をまとめると、現状では安価な絶縁性ヒートシンク材と、熱膨張がCuやAlなどの金属と近似した絶縁性セラミックスのいずれも工業的に得ることができず、大光量向けのLEDの普及は滞っている状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平05−299699
【特許文献2】特開平11−346029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決すべき課題は、大光量用LED発光装置に用いるLEDパッケージにおける電極部とヒートシンク部間の絶縁や熱膨張率差の問題を解決し、大光量を有するLEDパッケージを安価に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の本発明は、少なくともLED素子を有するLED発光部と、LED素子に電力を供給する電極部と、LED発光部で発生した熱を放熱するヒートシンク部とを有し、前記電極部と前記ヒートシンク部を絶縁層にて絶縁したLEDパッケージであって、前記ヒートシンク部の広面に前記LED発光部と、前記絶縁層を介して前記電極部とを設けた構造を有し、前記絶縁層に剛性率が低く、ヒートシンク部の熱膨張に追従可能なセラミックスを主とする材料を用いたLEDパッケージである。本発明のLEDパッケージは大光量に対応するために、ヒートシンクを用いる。また、そのヒートシンクは、効率よい放熱のためにある程度の面積を必要とする。そのため、パッケージはヒートシンク上にLED発光素子を含む発光部および発光部に電力供給する電極部を設ける構造が効率がよい。その際には、ヒートシンク部に絶縁性のセラミックス(たとえば窒化アルミ)を使用していない場合は、ヒートシンクに電流が流れてしまうために、電極部との間を絶縁する必要がある。絶縁層はヒートシンク材の熱膨張に対応するために、特に両者が接合されている場合、熱膨張に追従可能なセラミックスを主とする材料を用いることにより、両者を絶縁すると同時にヒートシンク部が熱膨張しても、ヒートシンク部、絶縁層、電極部のいずれも剥離や割れなどの破壊を起こさずに使用することができる。
接合は、同時に熱処理や焼付け、インクジェットやスクリーン印刷による固定、一方を塗布後に乾燥することによる一体化など、一定のせん断強度を有するように一体化できれば材料の形態および相性に合わせて選択可能である。
【0021】
請求項3に記載の本発明は、前記接合のせん断接合強度が100kPa以上である請求項2に記載のLEDパッケージである。ヒートシンク部と絶縁層、絶縁層と電極部のせん断接合強度は100kPa以上がよい。100kPaよりも低ければ、製造中や搬送中、使用中問わずに前記部材間に剥離が生じる恐れがあるためである。
【0022】
請求項4に記載の本発明は、前記絶縁層の剛性率が前記せん断接合強度の1000倍以下である請求項3に記載のLEDパッケージである。絶縁層の剛性率は、その値が高ければ変形が容易でないために、LEDパッケージに温度変化がある際は絶縁層の熱膨張係数とヒートシンクの熱膨張係数が一致するか、極めて近くなければ、熱膨張係数が大きい方に接続面を介して引張られることになる。そのために、絶縁層はヒートシンク部との相対的な膨張または収縮に対して追従するのが望ましく、そのためには剛性率を低くする必要がある。
【0023】
前記絶縁層の剛性率がせん断接合強度の1000倍以上である場合、前記絶縁層とヒートシンク部との間に温度差が生じた際、熱膨張の差に伴う前記絶縁層のひずみ量が小さくなり、その結果前記絶縁層の応力の吸収能力が低下する結果、前記絶縁層とヒートシンク部との界面におけるせん断応力が大きくなりすぎ、前期絶縁層とヒートシンク界面において剥離が生じてしまう可能性が増大する。
【0024】
請求項5に記載の本発明は、前記絶縁層の剛性率が10GPa以下である請求項3に記載のLEDパッケージである。
【0025】
絶縁層の剛性率が高ければ、ヒートシンク部の熱膨張による引張りに追従することができず、絶縁層とヒートシンク部の熱膨張差により、密接に接した両者が剥離する。ヒートシンク部に例えば安価な金属であるアルミニウムや銅などを主とする材料を用いると、これらはセラミックス材料からなる絶縁層の熱膨張係数よりも大きな熱膨張係数を有する。
【0026】
ヒートシンク部と絶縁層の熱膨張係数が例えば1×10−6(K−1)の差があれば、接している部分の長さ1mmごとに、
1(mm)×1×10−6(K−1)×1(K)=1×10−6(mm)
の長さの差が生じる。熱膨張係数の差が10×10−6(K−1)、温度が常温から100K離れれば、その値は接している長さ1mmあたり 1×10−3(mm)=1(μm)となり、絶縁層の熱膨張量とは別にこの長さ伸張(または収縮)する材料でなければ絶縁層及びヒートシンクの破壊、もしくは両者の剥離が生じることになる。もちろん、これは前記条件の場合であり、これよりも絶縁層の伸縮が必要な条件もありえる。そのために必要な絶縁層の剛性率は10GPa以下である。少なくとも10GPa以下とすることで、用いられているヒートシンク材や温度条件、長さ、いずれにも破壊や剥離することなく追従することができ、現状のLEDパッケージはもとより、実現されうるあらゆる大きさのLEDパッケージで前記破損もしくは剥離を生じない。
【0027】
絶縁層の剛性率の下限値は特に設けておらず、0でも構わないが、そのようなセラミックスは有り得ないために、実際はセラミックスの物性の限界により絶縁層の剛性率の下限は制限される。
【0028】
請求項6に記載の本発明は前記セラミックスを主とする材料がセラミックス粒子の相と、その周囲を取り囲む無機結合相を有する請求項1から請求項5のいずれかに記載のLEDパッケージである。
【0029】
このように前記セラミックスを主とする材料を、セラミックス粒子の相と、無機結合相の少なくとも2相とすることは、一方の相を熱膨張に追従可能な相とし、もう一方の相については後述する各種機能を持たせた相とすることができる。このように相の機能を分担させることにより、前記セラミックスを主とする材料を、各種機能を持ちつつ熱膨張に追従可能な材料とすることができる。
【0030】
請求項7に記載の本発明は、前記無機結合相が金属アルコキシドの加水分解および脱水重合により形成された無機材質からなる請求項6に記載のLEDパッケージである。
【0031】
このように前記無機結合相を金属アルコキシドの加水分解および脱水重合により形成された無機材質とすることは、前記セラミックスを主とする材料の剛性率を低下させる機能を有する。剛性率を低くすることにより、ヒートシンク部および電極部との剥離が生じなくなる。
【0032】
図5に模式図を示すように、LED発光部から発生した光は、直接照射したい対象に向かう部分(a)もあるが、LED発光部からは全方向に向かって発光しているために図中の(d)や(e)のようにそのほかの方向に向かう光は照射したい対象に直接到達しない。ここで、図中3の絶縁層が光を吸収しやすい材質であれば、光の多くの部分が照射対象には到達しなくなり、効率が悪化する。これに対処するには、絶縁層および設ける場合にはリフレクタを極力反射率の高い(=光を吸収しにくい)材質とすればよい。そうすることにより、(d)や(e)のように絶縁層に照射された光も反射により照射対象に向かう量を増やすことができる(d’)。
【0033】
請求項8に記載の本発明は前記金属アルコキシドを成す金属元素がAl、Mg、Si、Ti、Zrのいずれか1種またはそれ以上である請求項7に記載のLEDパッケージである。
【0034】
これらの金属元素が適している理由は以下の通りである。
【0035】
Alアルコキシドの加水分解・縮合重合により生成される白色の材質は、剛性率が50MPa以下と低く、かつLED素子から発する光を好適に反射することができる(=反射率が1に近い)ため、これを絶縁相としてLEDパッケージに用いることが適している。この絶縁層を用いることにより、熱膨張に起因する他部材との剥離がなく、かつ光取り出し効率の良いLEDパッケージとすることができる。
【0036】
Mgアルコキシドの加水分解・縮合重合により生成される白色の材質は、剛性率が50MPa以下と低く、かつ反射率が1に近いために、これをLEDパッケージに用いることで、熱膨張に起因する他部材との剥離がなく、かつ光取り出し効率の良いLEDパッケージとすることができる。
【0037】
Siアルコキシドの加水分解・縮合重合により生成される透明の材質は、剛性率が50MPa以下と低く、かつ透明であるため、前記セラミックス粒子を反射率が1に近い(==反射率が1に近い)材料から選択し、これをLEDパッケージに用いることで、熱膨張に起因する他部材との剥離がなく、かつ光取り出し効率の良いLEDパッケージとすることができる。
【0038】
Tiアルコキシドの加水分解・縮合重合により生成される白色の材質は、剛性率が50MPa以下と低く、かつ可視光領域においてLED素子から発する光の反射率が1に近いために、これをLEDパッケージに用いることで、熱膨張に起因する他部材との剥離がなく、かつ光取り出し効率の良いLEDパッケージとすることができる。
【0039】
Zrアルコキシドの加水分解・縮合重合により生成される白色の材質は、剛性率が50MPa以下と低く、反射率も1に近いために、LED素子から発する光を好適に反射することができるため、これをLEDパッケージに用いることで、熱膨張に起因する他部材との剥離がなく、かつ光取り出し効率の良いLEDパッケージとすることができる。

なお、これら金属アルコキシドを成す金属元素は単一で用いても良いが、2種以上の混合によっても用いることができ、その際にできる無機結合相はそれら金属アルコキシドの特性を併せたものとなる。
【0040】
請求項9に記載の本発明は前記セラミックス粒子がAlN、Al2O、Al(OH)、BN、BaSO、CaCO、MgO、Mg(OH)、ZrO、TiO、ZnO、ZnS、(PbCOPb(OH)のいずれか1種または2種以上を含み、前記絶縁体層の380〜780nmの光の平均反射率が80%以上である請求項6に記載のLEDパッケージである。
【0041】
前記平均反射率は、硫酸バリウムの反射率を100%とした相対値であり、島津製作所製の紫外可視光分光光度計UV3150を用いて測定した。前記絶縁体層の380〜780nmの光の平均反射率が80%以上という値は、この方法にて得られた数値である。また、以後単に「平均反射率」と表記してこの方法による値を記載する。
【0042】
セラミックスは前記セラミックス粒子がAlN、Al、Al(OH)、BN、BaSO、CaCO、CaSO、MgO、Mg(OH)、ZrO、TiO、ZnO、ZnS、(PbCOPb(OH)(白鉛)のいずれか1種または2種以上からなるが、これは例えば前記セラミックス粒子がAlN、Al、Al(OH)、BN、BaSO、CaCO、MgO、Mg(OH)、ZrO、TiO、ZnO、ZnS、(PbCOPb(OH)それぞれの高純度単体組成はもちろんのこと、これらに助剤や安定化剤を添加した低純度の組成や、これらの化合物も含む。
【0043】
前記セラミックス粒子として、これらのセラミックスが適している理由は以下の通りである。
【0044】
AlNは熱伝導率が180W/mK以上と高いため、LEDパッケージの放熱をさらに向上させる機能を付加する。
【0045】
Al、MgOは熱伝導率がそれぞれ30W/mK、41W/mKと極端に低くなく、かつ光の反射率が高いため、放熱性、光取り出し効率のバランスの取れたLEDパッケージとすることができる。特にMgOは平均反射率が99%以上と高く、殆ど光を吸収せず、効率よく反射する。
【0046】
BNは熱伝導率が40〜60W/mKと高く、反射率も100%に近く、且つ剛性率も低いため放熱性、光取り出し効率、他部材との非剥離性のバランスの取れたLEDパッケージとすることができる。
【0047】
Al(OH)、BaSO、CaCO、CaSO、Mg(OH)、ZrO、TiO、ZnO、ZnSはいずれも白色度が大きく、光取り出し効率の優れたLEDパッケージとすることができる。特にBaSOや(PbCOPb(OH)は平均反射率が99%以上と極めて高く、LEDパッケージの光の取り出し効率を上げることができる。
【0048】
請求項10および11に記載の本発明は、前記ヒートシンク部が金属を主成分とする材質からなる請求項1から請求項9のいずれかに記載のLEDパッケージ、および、特にその金属がCuかAlのいずれかであるLEDパッケージである。LEDパッケージに用いるヒートシンク部には、熱伝導率が高い材料を用いる必要がある。特に本発明は大光量のLED照明を中心に発明されたものであるために、その熱伝導はより高いものが要求される。同時に、様々な用途に実用されるためにはコストを低く抑える必要もある。
【0049】
これらの要求に耐える材料は、金属または金属を主成分とする材料である。特にCuは熱伝導率が398(W/m・K)と優れており、材料の価格も低いためにコスト的にも有利である。同様にAlも熱伝導率が237(W/m・K)と優れており、材料の価格も低いためにコスト的にも有利である。なお、CuまたはAlはいずれも高純度である必要はなく、熱伝導率が極端に低くない範囲において、それぞれの合金を使用してもよい。
【0050】
請求項12および13に記載の本発明は少なくともLED搭載面にLED素子から直接照射対象に向かわない光を反射し、照射対象方向へ向かう光量を増やす目的の光反射体であるリフレクタが設けられた請求項1から請求項11のいずれかに記載のLEDパッケージ、およびそのリフレクタの光の380〜780nmの光の平均反射率が80%以上であるLEDパッケージである。
【0051】
LED発光部にリフレクタを設けることは、光を照射したい対象物への投光量を増やせる結果、発光効率の高いLEDパッケージとすることができ、またリフレクタの可視光反射率を80%以上、より好ましくは90%以上とすることにより、さらに効率の高いLEDパッケージとすることができる。
【0052】
請求項14に記載の本発明は前記LED発光部と、その周囲の絶縁層と、前記LED発光部に近接する電極部の少なくとも一部が、樹脂またはガラスにより封止された請求項1から請求項13のいずれかに記載のLEDパッケージである。
【0053】
このように前記LED発光部と、その周囲の絶縁層と、前記LED発光部に近接する電極部の少なくとも一部を樹脂またはガラスにより封止することは、外部の環境からLED発光部を保護し、その寿命を長くする効果を有する。
【発明の効果】
【0054】
本発明はLEDパッケージにおける放熱や熱膨張の問題を解決し、LEDパッケージを現在のものよりも大光量を得られるパッケージとでき、同時にコストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第一の形態(断面)
【図2】第一の形態(上面より)
【図3】第二の形態(断面)
【図4】第二の形態(上面より)
【図5】光の照射模式図
【図6】従来のLEDパッケージの模式図
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明のLEDパッケージは以下の構造とすることにより得られる。
【0057】
LED素子は光量を増やすためには高電力を供給する必要がある。高電力化により生じる問題は、発生する熱の問題と、熱膨張による各部材間の相対的な変形である。このことは安価なヒートシンク材料(Cu、Alなど。導電性がある)と、ヒートシンク材と絶縁して設けられる電極間の絶縁層の熱膨張率が大きく異なることに起因する。
【0058】
本発明では絶縁層の材質を、剛性率が低い材質を使用することでこの問題を解決した。
【0059】
パッケージの基部を構成するヒートシンク部上に各部材を設置した構造である。
【0060】
図1および図2に示す第一の形態では、ヒートシンク部2の一広面上にLED発光部とLED発光部以外の部分には、剛性率が低くヒートシンク部2の熱膨張に追従可能なセラミックを主とする絶縁層3を設けている。この絶縁層3の働きにより、ヒートシンク部2上に電極箔または電極パターン4を形成することができる。電極パターン4はパッケージ外部の電源より電力を供給され(6)、LED発光部1に供給することでLED素子を発光させる。LED素子の発光とともに発生した熱は、LED発光部1をヒートシンク上2に固定するボンディング材(図示せず)を介してヒートシンク部2に伝達して放熱される。ヒートシンク部2の温度上昇に伴いヒートシンク部2は膨張する。ヒートシンク部2上に設けられた絶縁層3はヒートシンク部3とともに熱膨張するが、この際に剛性率が高い、すなわち変形しにくい材質であると絶縁層3が破断するか、ヒートシンク部2との剥離が生じる。そのために絶縁層3を剛性率が低い、特に10GPa以下の材質で構成することが適当である。この剛性率であれば、ヒートシンク部2の膨張に従って追従するために、絶縁層3の破断もヒートシンク部2との剥離も生じることがない。
【0061】
絶縁層3はペースト状またはゲル状の前駆体材料を塗布し、乾燥固化させることによって形成できる。この前駆体材料は請求項7または請求項8に列記した金属アルコキシドの一部または全部が加水分解された状態のものを含んでいることが好ましく、乾燥固化は加水分解された金属アルコキシドが脱水重合を完了する温度以上で熱処理することが好ましい。この工程で絶縁層3とヒートシンク部2を接合できるが、両者を一定のせん断接合強度を持ち接合できるのであれば、接合方法はこの方法に限定されるものではない。
【0062】
電極部4はこの絶縁層の上面(ヒートシンクと反対面)に設けることができる。電極の一端は電源と、もう一端はLED発光部側と接続されている。LED発光部との接続は電気的に接続できて、耐熱性や耐候性に優れた材料で行なえばよい。最も簡便で適しているのは金属ワイヤーボンディングによる接合(5)である。
【0063】
図3および図4示す第二の形態では、ヒートシンク部2上に絶縁層3を設け、この絶縁層3の上面(ヒートシンク側の裏面)に電極部4を設ける。電極はLED素子に電力を供給するために少なくとも互いに接していない電極を、2部を設ければよい。LED素子発光部1はその2部に跨る状態で設置する。この構造の利点は、電極とLED素子を直接接合するのが容易であり、第一の形態のようにボンディングワイヤー5を使用する必要がない。比較的不利な点としては、LED素子から発生した熱がヒートシンク部2に伝わる際に電極部4及び絶縁層3を介する点である。LED発光部1をヒートシンク部2に直接設置する場合に比べると、放熱特性がやや劣る。
【0064】
以下に部材ごとに説明を加える。
【0065】
(LED発光部)
LED発光部1が有するLED素子は、特に限定するものではなく、大容量のLEDを中心として紫外光、近紫外光、青色などどの波長を中心に発光するかに関わらず使用することができる。この際の大容量というのは消費電力として10W程度のものから20W程度、またはそれ以上のものを指す。
太陽光に近い光を求める場合には、近紫外光や青色を中心に発光するLED素子を用い、黄色の光を示す蛍光体をLED素子にコートすることで得ることができる。また、各種センサーや殺菌用光源、樹脂硬化用の光源などとして用いる場合には、紫外光を中心に発光するLED素子を用いればよい。
LED発光部のヒートシンク部への固定はボンディング材を介して行う。ボンディング材としてはAu、Ag、Cu、Al、ハンダ、スズ等を含むものが適している。
【0066】
(電極部)
電極部4は配線6を通じて外部からの電力をLED発光部に供給する。電極の材質はAu、Ag、Cuなど電気抵抗率の低い一般的な導電材料を用いればよい。
【0067】
電極は絶縁層上にインクジェット形式やスクリーン印刷にて金属成分をパターンニングすることにより得られる。また、別の方法としては絶縁層上に金属箔を接着する方法でもよい。これらの方法で絶縁層上に電極部を接合できる。
また、図1および図2に示す形態のように、電極とLED素子との接合にワイヤーを用いて接続してもよい。ワイヤーはAuの線が最もよいが、費用面で制限がある場合は電気抵抗が低く、耐久性のある他の金属線も使用できる。
【0068】
(絶縁層)
絶縁層3は、正負電極間の短絡を絶ち、LED素子に正常な電力を供給できるようにする。さらに本発明では、絶縁層の材質には剛性率が低く、ヒートシンク部の熱膨張に追従可能なセラミックスを用いる。このことは電流のONおよびOFFにより生じるLEDパッケージの加熱および冷却に伴う、絶縁層とヒートシンク間の熱膨張差により生じる応力、およびあるいは絶縁層と電極間の熱膨張差により生じる応力を緩和し、各部材の破壊や部在韓の剥離を防ぎ、繰り返し使用に対する信頼性を向上させることができる。
【0069】
LED素子からの発光は、照射対象方向に直接向かう光もあるが、いくらかの割合でパッケージ内の各部材に反射、吸収された上で照射対象方向に向かう光もある。一定の発光および電力で照射対象へ向かう光量を上げるには、各部材の光の反射率を上げ、吸収を抑えることにより、効率よく照射対象への光量を上げることができる。リフレクタはこの作用を狙って備えたものである。
【0070】
図5に示すように本発明の形態で、照射対象に直接向かわない光が多く照射される部分は絶縁層部分と電極部分である。このうち面積の大部分を占める絶縁層の反射率は、照射対象に直接向かわない光の大部分が照射されている。そのために、絶縁層の反射率は光量を確保する上で重要な因子となる。吸収される光量が大きければ、同じ明るさを出すためにより高い電力が必要となり、その結果発熱も大きくなるためである。絶縁層の反射率を上げるためには、絶縁相中のセラミック粒子の材質を反射率の高い材質とすればよい。反射率が高く、前記無機結合相やヒートシンク部、電極部材料と化学反応を起こさない物質をセラミック粒子として用いることが好ましい。セラミック粒子として適当なのは酸化マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、白鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの単体で平均反射率が高い材質である。これらをセラミックス粒子として用いることにより、380〜780nmの光の平均反射率が80%以上より好ましくは90%以上の絶縁体を得ることができる。
また、前述の第二の形態では、電極上にLED素子を設置する構造であり、LED素子で発生した熱の伝達が、LED素子〜絶縁層〜ヒートシンク と伝達するために、絶縁層自体も熱伝導率が高いほうが望ましい。熱伝導率を上げるには絶縁層中の前記フィラーをAlNのような熱伝導率の高い物質を選択することで実現できる。
【0071】
(ヒートシンク部)
ヒートシンク部2には前述のように熱伝導率の高い金属を用いる。ヒートシンクはその表面積が大きいほど冷却効果が上がるために、素子を搭載していない面、主に裏面には表面積を上げるために凹凸のある形状としてもよい。面積を広げるために大きくしてもよいが、素材の費用がかかることと、スペースを多く使うことから制限を受けることも多い。
ヒートシンクの材料としては安価で熱伝導率の高いCuやAlまたはそれらを主とする合金が適している。
【0072】
(リフレクタ)
リフレクタ7はLED素子の発光の吸収を少なくし、パッケージ外部に放射する光量を上げるために有効である。本発明ではリフレクタを必須の要件として挙げていない。これは、リフレクタを設けることによりコストが上がることがあり、また、パッケージスペースの都合上リフレクタを設ける十分なスペースが確保できないことがあるからである。光量の面だけから述べればリフレクタを設ける方が望ましい。そのために、用途やコストによって設けるか設けないかを選択すればよい。
【0073】
なお、リフレクタに必要な要件としては、耐熱性が十分であること、光の反射率が高いこと、化学的安定性が高く耐久性があること等が挙げられる。その意味では上で説明した絶縁層と同材質をその表面に用いてもよい。また、図1や図3に描いているように、形状はLEDパッケージの構造に合わせて、照射対象方向に光が照射されるように適宜選択すべきである。
【符号の説明】
【0074】
1 LED発光部
2 ヒートシンク部
3 絶縁層
4 電極部
5 ボンディングワイヤー
6 電源への配線
7 リフレクタ
8 樹脂などの絶縁層
9 光を照射したい対象
10 LEDパッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
LED素子を有するLED発光部と、
LED素子に電力を供給する電極部と、
LED発光部で発生した熱を放熱するヒートシンク部
とを有し、前記電極部と前記ヒートシンク部を絶縁層にて絶縁したLEDパッケージであって、
前記ヒートシンク部の広面に前記LED発光部と、前記絶縁層を介して前記電極部とを設けた構造を有し、
前記絶縁層に剛性率が低く、ヒートシンク部の熱膨張に追従可能なセラミックスを主とする材料を用いた
LEDパッケージ。
【請求項2】
前記電極部と絶縁層、および、絶縁層とヒートシンク部が接合されている請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項3】
前記接合のせん断接合強度がいずれも100kPa以上である請求項2に記載のLEDパッケージ。
【請求項4】
前記絶縁層の剛性率が前記せん断接合強度の1000倍以下である請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項5】
前記絶縁層の剛性率が10GPa以下である請求項3に記載のLEDパッケージ。
【請求項6】
前記セラミックスを主とする材料がセラミックス粒子の相と、その周囲を取り囲む無機結合相を有する請求項1から請求項5のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【請求項7】
前記無機結合相が金属アルコキシドの加水分解および脱水重合により形成された無機材質からなる請求項6に記載のLEDパッケージ。
【請求項8】
前記金属アルコキシドを成す金属元素がAl、Mg、Si、Ti、Zrのいずれか1種またはそれ以上である請求項7に記載のLEDパッケージ。
【請求項9】
前記セラミックス粒子がAlN、Al2O、Al(OH)、BN、BaSO、CaCO、MgO、Mg(OH)、ZrO、TiO、ZnO、ZnS、(PbCOPb(OH)のいずれか1種または2種以上を含み、前記絶縁体層の380〜780nmの光の平均反射率が80%以上である請求項6に記載のLEDパッケージ。
【請求項10】
前記ヒートシンク部が金属を主成分とする材質からなる請求項1から請求項9のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【請求項11】
請求項10に記載の金属が特にCuまたはAlである請求項10に記載のLEDパッケージ。
【請求項12】
少なくともLED搭載面にLED素子から直接照射対象に向かわない光を反射し、照射対象方向へ向かう光量を増やす目的の光反射体であるリフレクタが設けられた請求項1から請求項11のいずれかに記載のLEDパッケージ。
【請求項13】
前記リフレクタの380〜780nmの光の平均反射率が80%以上である請求項12に記載のLEDパッケージ。
【請求項14】
前記LED発光部と、その周囲の絶縁層と、前記LED発光部に近接する電極部の少なくとも一部が、樹脂またはガラスにより封止された請求項1から請求項13のいずれかに記載のLEDパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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