説明

LEDユニット

【課題】LEDユニット中央付近に設けられる使用頻度の高いLEDの放熱性を向上させ、このLEDを長寿命化させると共に、LED全体の寿命を均一化することができるLEDユニットを提供する。
【解決手段】複数のLED1と、長尺状に形成され、LED1が実装される実装面を有し、左右方向に沿って冷媒を流す流路31,32を内部に有する放熱部材2とを備え、流路31,32は、放熱部材2の左右方向における中央に冷媒の流入口51,52が形成され、放熱部材2の左右方向における中央に冷媒の流入口51,52が形成され、放熱部材2の左端と右端とに冷媒の流出口61,62が形成される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電ランプやレーザ発振器などを光源として用いた光源装置が提供されているが、近年、低消費電力化や長寿命化などを目的として、放電ランプなどの代わりにLED(発光ダイオード)を光源として用いたLEDユニットが提案されている。
【0003】
光源装置では、放電ランプなどを用いた従来の光源装置と同程度の光量が得られるように、複数のLEDを用いている。そして、LEDに通電してLEDを発光させると、LEDが発熱する。このとき、LEDの数が少なければ問題ないが、上記光源装置のように、複数のLEDを用いたものでは、LEDによる発熱量が増大する。そして、LEDの寿命は負の温度係数を有しているため、発熱量が増えると、LEDの寿命が短くなってしまう。そこで、上記のような光源装置では、放熱部材上に複数のLEDを実装し、放熱部材内に冷却水などの冷媒を流してLEDを冷却することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、LEDユニットの用途としては、例えば、紫外線を放射するLEDを用いた光源装置(紫外線硬化装置)が挙げられる。このような光源装置は、紫外線を受光することによって硬化する紫外線硬化材、例えば紫外線硬化型インクに対して、紫外線を照射し紫外線硬化型インクを硬化(乾燥)させる印刷を行う印刷システムなどに利用される。
【0005】
図7に、上記印刷システムに用いられる従来のLEDユニットの概略構成図を示す。なお、図7の上下左右を上下左右方向と規定して、以下説明する。
【0006】
従来のLEDユニットは、紫外線を照射する複数のLED1と、左右方向の長さがL1の長尺状に形成され、上面においてLED1が左右方向に並んで実装される放熱部材102とで構成されている。
【0007】
また、放熱部材102は、LED1の冷却に用いる冷媒(冷却水)を流すための流路103を内部に備えている。流路103は、放熱部材102の左右方向に沿って設けられている。すなわち、流路103の左右方向の長さもL1となる。また、放熱部材2は、右面に流路103に冷媒を流入させるための流入口105が設けられ、左面に冷媒を流路103から流出させるための流出口106が設けられている。
【0008】
また、冷媒を流路103に流入させるポンプ機能を有し、冷媒を冷却するチラー4が、流入口105,流出口106に接続されている。そして、図7の矢印に示すように、チラー4より吐出された冷媒が、流入口105を介して流路103に流入し、流路103を通過して流出口106を介して流出し、再びチラー4に流入して冷媒を冷却する、冷媒の循環路が構成される。
【0009】
そして、LED1が点灯することによって発生した熱は、放熱部材102を介して流路103に流れる冷媒に伝熱される。暖められた冷媒はチラー4によって冷却され、再び流路103に流れる。それによって、LED1から発生する熱を放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−66387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図8に、流路103内における冷媒温度の分布を示す。流路103を通過する前後で冷媒の温度を比較した場合、冷媒は、流路103を通過する際にLED1の点灯によって発生する熱を吸収するため、流路103を通過後のほうが冷媒の温度が高くなる。すなわち、冷媒が流入口105から流出口106に向かうにつれて冷媒温度が上昇するので、流出口106に近付くにつれてLED1の放熱性が低下する。
【0012】
また、図9(a)に、放熱部材102に実装された各LED1の照射エリアA1における照射強度の分布を示す。図9(a)に示すように、照射エリアA1の両端付近は、照射強度が不十分であり、印刷に使用することができないため、無効照射エリアA2となる。したがって、照射エリアA1から両端の無効照射エリアA2を除いた照射エリアが、印刷に使用することができる有効照射エリアA3となる。
【0013】
図9(b)に、各LED1によって紫外線が照射される印刷原反71〜73の概略図を示す。図9(b)は、各印刷原反71〜73の幅を示す断面図である。印刷原反71〜73は、互いに幅が異なっており、印刷原反71、72、73の順に幅が広くなる。なお、印刷原反73は、有効照射エリアA3に収まる幅寸法である。
【0014】
また、上記のLEDユニットを備える光源装置を用いた印刷システムは、印刷原反71〜73に紫外線を照射して印刷を行う際、印刷原反71〜73の幅に応じてLED1の照射範囲を可変とする構成を備えている。また、印刷原反71〜73を印刷システムにセットする際、各印刷原反71〜73の幅方向の中心P1が、放熱部材102(LEDユニット)の左右方向の中心P2に対向するように、印刷原反71〜73を印刷システムにセットする。
【0015】
そのため、幅の広い印刷原反73に印刷する場合、放熱部材102上の全てのLED1を点灯させ、幅の狭い印刷原反71に印刷する場合、放熱部材102の左右方向の中央付近に実装されたLED1(以下、LED1[中央部]と称す)を点灯させる。
【0016】
したがって、幅の異なるいずれの印刷原反71〜73に対して紫外線を照射して印刷を行う場合であっても、LED1[中央部]を点灯させる必要がある。そのため、LED1[中央部]の使用頻度が高くなるのでLED1[中央部]が高温になり、LED1[中央部]の寿命が短くなるという問題があった。したがって、LED101[中央部]の放熱性を向上させる必要があった。
【0017】
しかし、放熱部材102の両端に冷媒の流入口105,流出口106が設けられているため、冷媒がLED1[中央部]の直下に到達した時点で、冷媒の温度が上昇しているので、LED1[中央部]は十分な放熱性を得ることができなかった。
【0018】
さらに、流入口105,流出口106付近に実装されたLED1は、使用頻度が低いので寿命が長く、特に流入口105付近に実装されたLED1は、冷媒温度が低いのでさらに寿命が長くなっていた。そのため、LED1[中央部]と、流入口105,流出口106付近に実装されたLED1とで寿命のバラツキが大きくなるという問題があった。
【0019】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、LEDユニット中央付近に設けられる使用頻度の高いLEDの放熱性を向上させ、このLEDを長寿命化させると共に、LED全体の寿命を均一化することができるLEDユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のLEDユニットは、1乃至複数のLEDと、長尺状に形成され、前記LEDが実装される実装面を有し、長手方向に沿って冷媒を流す流路を内部に有する放熱部材とを備え、前記流路は、前記放熱部材の長手方向における略中央に前記冷媒の流入口が形成され、前記放熱部材の長手方向における一端側と他端側とに前記冷媒の流出口が形成されることを特徴とする。
【0021】
このLEDユニットにおいて、前記放熱部材は、前記実装面を有し、前記流路を内部に有する複数の放熱ユニットが互いに前記長手方向に沿って連結されることで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明では、LEDユニット中央付近に設けられる使用頻度の高いLEDの放熱性を向上させ、このLEDを長寿命化させると共に、LED全体の寿命を均一化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態のLEDユニットの概略構成図である。
【図2】同上の放熱部材2の上面を示す図である。
【図3】同上の放熱ユニット21の上面を示す図である。
【図4】同上の放熱ユニット21の断面を示す図である。
【図5】同上の冷媒温度の変化を示す図である。
【図6】同上の放熱ユニット21の概略構成図である。
【図7】従来のLEDユニットの概略構成図である。
【図8】同上の冷媒温度の変化を示す図である。
【図9】(a)同上の照射エリアにおける照射強度を示す図である(b)印刷原反の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(実施形態)
本実施形態のLEDユニットは、例えば、紫外線を照射するLED1を備える光源装置(紫外線硬化装置)に用いられる。このような光源装置は、紫外線を受光することによって硬化する紫外線硬化材、例えば紫外線硬化型インクに対して、紫外線を照射し紫外線硬化型インクを硬化(乾燥)させる印刷を行う印刷システムなどに利用される。
【0026】
本実施形態のLEDユニットの概略構成図を図1に示す。なお、図1の上下左右を上下左右方向と規定して、以下説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のLEDユニットは、紫外線を照射する複数のLED1と、左右方向の長さがL1の長尺状に形成され、LED1が実装される実装面を有し、左右方向に沿って冷媒を流す流路31,32を内部に有する放熱部材2とで構成されている。
【0028】
LED1は、紫外領域にピーク波長を有する紫外線発光ダイオードである。そして、図2に示すように、放熱部材2の上面に実装面が形成され、複数のLED1が左右方向1列に並べて実装されている。
【0029】
放熱部材2は、6個の放熱ユニット21が左右方向において互いに連結されることで構成されている。
【0030】
図3に放熱ユニット21の上面図を示す。放熱ユニット21は、熱伝導性が高い銅等の金属で矩形板状に形成されており、複数のLED1が左右方向1列に並べて実装される実装面を上面に備えている。また、放熱ユニット21は、LED1の冷却に用いる冷媒(冷却水)を流すための流路3を内部に備えている。図4に示すように、流路3は、円筒状に形成されており、放熱ユニット21の左右方向に沿って設けられている。
【0031】
なお、放熱ユニット21同士を連結し、さらに流路3同士を連結する場合、配管連結部材8を用いて流路3同士を連結する。それによって、流路3同士を確実に連結することができ、連結箇所において冷媒が漏れるのを防止することができる。
【0032】
そして、6個の放熱ユニット21を左右方向に連結して、放熱部材2を構成する。なお、放熱ユニット21を個別に識別するために、図1における左から順に放熱ユニット211〜216と称す。
【0033】
また、本実施形態では、放熱ユニット211〜213に設けられた各流路3を配管連結部材8を用いて連結して、左右方向の長さL2の流路31を構成する。同様に、放熱ユニット214〜216に設けられた各流路3を配管連結部材8を用いて連結して、左右方向の長さL2の流路32を構成する。なお、流路31と流路32とは接続されておらず、流路31と流路32との間には、隔壁22が設けられている。すなわち、放熱部材2は、左右方向の中央において、左右に分割した2つの流路31,32を備えている。
【0034】
また、流路31,32には、冷媒を流入させるための流入口51,52と、冷媒を流出させるための流出口61,62が接続されている。
【0035】
流入口51,52は、冷媒を下方向から流路31,32に流入させるための流路を内部に有する筒状の部材である。流入口51は、上面が、流路31の右端に位置する放熱ユニット213下面の右端に接するように設けられている。また、流入口52は、上面が、流路32の左端に位置する放熱ユニット214下面の左端に接するように設けられている。すなわち、放熱ユニット21の両端からL2(L1/2)に位置する箇所を挟んで左右に流入口51,52が隣接して設けられている。なお、本実施形態では、流入口51,52が上記位置に設けられている状態を、放熱部材2の左右方向の中央に流入口51,52が設けられているとする。
【0036】
また、流出口61,62は、流路31,32を通過した冷媒を下方向に流出させるための流路を内部に有する筒状の部材である。流出口61は、右面の上部が、流路31の左端に位置する放熱ユニット211の左面に接するように設けられている。また、流出口62は、左面の上部が、流路32の右端に位置する放熱ユニット216の右面に接するように設けられている。
【0037】
そして、流入口51,52および流出口61,62に、チラー4が図示しない流路を介して接続されている。チラー4は、流入口51,52の両方に冷媒を流入させるポンプ機能を有しており、流出口61,62から流出された冷媒を冷却し、再び流入口51,52を介して流路31,32に冷媒を流入させる。すなわち、図1の矢印に示すように、冷媒の循環路は、循環路「チラー4→流入口51→流路31→流出口61→チラー4」と、循環路「チラー4→流入口52→流路32→流出口62→チラー4」との2つで構成される。
【0038】
本実施形態の流路31,32内における冷媒の温度分布を図5に示す。本実施形態では、放熱部材2の左右方向の中央に流入口51,52が設けられているため、流入口51,52付近における冷媒温度が最も低くなる。そのため、放熱部材2の中央付近に実装されたLED1[中央部]の放熱性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態のLEDユニットが用いられる印刷ユニットは、印刷原反の幅に応じてLED1の照射範囲を可変とする構成を備えている。幅の広い印刷原反に印刷する場合、放熱部材2上の全てのLED1を点灯させ、幅の狭い印刷原反に印刷する場合、LED1[中央部]を点灯させる。すなわち、使用頻度が高いLED1[中央部]の放熱性を向上させることによって、LED1[中央部]を長寿命化することができる。
【0040】
また、流出口61,62付近における冷媒温度は、流入口51,52付近の冷媒温度に対して上昇しているが、本実施形態の流出口61,62付近の冷媒温度は、従来の流出口106付近の冷媒温度よりも低い。従来のLEDユニットは、放熱部材102の両端に流入口105,流出口106が設けられるので、流路103の左右方向の長さがL1となる(図7参照)。一方、本実施形態のLEDユニットは、放熱部材2の左右方向の中央に流入口51,52が設けられ、放熱部材2の両端に流出口61,62が設けられるので、流路31,32の左右方向の長さL2=L1/2となる。
【0041】
したがって、長さL2の流路31を通過する際に冷媒が吸収する総熱量は、長さL1の流路103を通過する場合よりも少なくなるので、流出口61付近の冷媒温度は、従来の流出口106付近の冷媒温度よりも低くなる。同様に、長さL2の流路32を通過する際に冷媒が吸収する総熱量は、長さL1の流路103を通過する場合よりも少なくなるので、流出口61付近の冷媒温度は、従来の流出口106付近の冷媒温度よりも低くなる。そのため、放熱部材2の両端付近に実装されたLED1の放熱性も従来より向上する。
【0042】
さらに、放熱部材2の両端付近に実装されたLED1は、幅が広い印刷原反に印刷する場合にのみ点灯させるので使用頻度が低く、照射エリアが無効照射エリアA2に含まれるので、冷媒温度上昇による影響は少ない(図9(a)(b)参照)。
【0043】
従来のLEDユニットは、使用頻度が低く、照射エリアが無効照射エリアA2に該当する、放熱部材102の右端に実装されていたLED1が最も放熱性が高かった。しかし、本実施形態のLEDユニットは、放熱部材2の中央付近に実装され、使用頻度が高いLED1[中央部]の放熱性が最も高い。そのため、本実施形態のLEDユニットは、LED1全体の寿命のバラツキが低減され、寿命が均一化される。
【0044】
なお、本実施形態では、放熱部材2(放熱ユニット213,214)の下面に流入口51,52が設けられ、放熱部材2の両端(放熱ユニット211左面,放熱ユニット216右面)に流出口61,62が設けられている。しかし、流入口51,52および流出口61,62が設けられる位置は、上記に限定するものではなく、流路31,32の各両端に接続することができる位置であればよい。
【0045】
なお、本実施形態では、放熱部材2の左右方向の中央に流入口51,52が設けられているが、本実施形態の上記効果が得られるのであれば、放熱部材2の左右方向の中央から、左右方向にずれた略中央に流入口51,52が設けられていてもよい。
【0046】
また、本実施形態の放熱部材2は、6個の放熱ユニット21が連結されることで構成されている。そのため、放熱ユニット21に実装されたLED1の寿命や故障等によって交換する必要がある場合、その放熱ユニット21のみを交換することができるので、放熱部材2全体を交換する必要がなく、作業が容易となり、コストを低減させることができる。
【0047】
また、本実施形態の放熱部材2は、6個の放熱ユニット21が連結されており、放熱ユニット213の右端に流入口51が設けられ、放熱ユニット214の左端に流入口52が設けられている。
【0048】
しかし、放熱部材2が奇数個の放熱ユニット21が連結して構成されている場合、図6に示すように、左右方向の中央に位置する放熱ユニット21に対して、左右方向の中央に流入口51,52を設ける。また、この放熱ユニット21の流路3を左右方向に分割する隔壁23を設け、流路31,32を構成する。このような構成によって、放熱部材2の左右方向の中央に流入口51,52を設けることができ、使用頻度が高いLED1[中央部]の放熱性が向上し、LED1[中央部]を長寿命化させ、LED1全体の寿命を均一化することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 LED
2 放熱部材
4 チラー
8 配管連結部材
21(211〜216) 放熱ユニット
22 隔壁
31,32 流路
51,52 流入口
61,62 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1乃至複数のLEDと、
長尺状に形成され、前記LEDが実装される実装面を有し、長手方向に沿って冷媒を流す流路を内部に有する放熱部材とを備え、
前記流路は、前記放熱部材の長手方向における略中央に前記冷媒の流入口が形成され、前記放熱部材の長手方向における一端側と他端側とに前記冷媒の流出口が形成されることを特徴とするLEDユニット。
【請求項2】
前記放熱部材は、前記実装面を有し、前記流路を内部に有する複数の放熱ユニットが互いに前記長手方向に沿って連結されることで構成されることを特徴とする請求項1記載のLEDユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−74422(P2012−74422A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216188(P2010−216188)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】