説明

LNG気化設備

【課題】LNG受入基地のコスト削減及び敷地面積の縮小を図ることの可能なLNG気化設備を提供する。
【解決手段】LNG気化設備の構成として、LNGタンクの底部に設置され、凍結防止液の流通によって前記底部の凍結を防ぐ底部ヒータと、前記底部ヒータから送出される前記凍結防止液を加熱する加熱器と、前記加熱器によって加熱された前記凍結防止液と前記LNGタンクから払い出されたLNGとの熱交換によって前記LNGの気化を行い、熱交換後の前記凍結防止液を前記底部ヒータへ再循環させる気化器とを具備する、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG気化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)の受け入れ、貯蔵及び気化などを行う設備群をLNG受入基地と呼ぶ。従来のLNG受入基地において、LNGタンクに貯蔵されたLNGは、インタンク型の払出ポンプによってタンク外へ払い出された後、ポット型のLNG昇圧ポンプによって所望の圧力まで昇圧され、最終的に気化器によって気化された後、火力発電所などのガスユーザへ送出される。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、気化器動力の半分以上を占める海水ポンプの電力使用量を削減することで、全エネルギー消費量の低減を実現したLNG気化システムが開示されている。また、下記特許文献2には、LNGタンクからLNGを安全に払い出して気化させた後、これを需要圧まで昇圧する気化ガス設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−240194号公報
【特許文献2】特開2010−31904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来のLNG受入基地には、海水とLNGとの熱交換によってLNGを気化させるタイプの気化器が設置されることが多い。しかしながら、近年ではLNGタンクを海岸から遠く離れた奥地に設置したいとの市場要求もあり、今後、LNGの気化に海水を利用できない状況が多く発生すると想定される。LNGを気化させるためには、海水以外の熱媒体とLNGとを熱交換させれば良いが、新たに熱媒体の供給設備を追加することは全体の設備コストの増加を招くことになるため、設備コストの増加を最小限に抑えつつ、海水を利用しない気化設備の開発が要求されていた。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、海水を利用せずにLNGを気化でき、且つ設備コストの増加を最小限に抑えることの可能なLNG気化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、LNG気化設備に係る第1の解決手段として、LNGタンクの底部に設置され、凍結防止液の流通によって前記底部の凍結を防ぐ底部ヒータと、前記底部ヒータから送出される前記凍結防止液を加熱する加熱器と、前記加熱器によって加熱された前記凍結防止液と前記LNGタンクから払い出されたLNGとの熱交換によって前記LNGの気化を行い、熱交換後の前記凍結防止液を前記底部ヒータへ再循環させる気化器と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、LNG気化設備に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記気化器からNG需要設備へ送出されるNG流量を計測するNG流量計と、前記気化器へ流入する前記凍結防止液の温度を気化器入口温度として計測する第1の温度計と、前記底部ヒータへ流入する前記凍結防止液の温度を底部ヒータ入口温度として計測する第2の温度計と、前記気化器入口温度及び前記底部ヒータ入口温度が前記NG流量に応じて設定された管理温度となるように前記加熱器を制御する制御装置と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、LNG気化設備に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記加熱器は、前記LNGタンクから排出されたBOGを燃料とするバーナ及び電気ヒータを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、LNG気化設備に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、前記気化器及び前記加熱器は、前記LNGタンクの屋根に付設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、LNG気化設備に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、前記凍結防止液はエチレングリコールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るLNG気化設備によれば、LNGタンクの底部ヒータに使用される凍結防止液をLNGの気化に利用するため、海水を利用せずにLNGを気化することができ、また、凍結防止液の流通によってLNGタンクの底部の凍結を防ぐ底部ヒータは、従来からLNGタンクに付設されていたものであるため、新たに熱媒体の供給設備を追加する必要はなく、設備コストの増加を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるLNG気化設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるLNG気化設備の概略構成図である。この図1に示すように、本実施形態におけるLNG気化設備は、LNGタンク1、気化器2A、2B、2C、ブラインタンク3、ポンプ4、底部ヒータ5、加熱器6A、6B、6C、バルブ7A、7B、7C、NG流量計8、第1の温度計9、第2の温度計10、及び制御装置11から構成されている。なお、図1において、実線は流体(気体、或いは液体)の流れを示しており、点線は電気信号の流れを示している。
【0015】
LNGタンク1は、LNGタンカーから受け入れ配管(図示省略)を介して移送されたLNGを貯蔵する固定式の二重殻構造タンクである。なお、図1では図示を省略しているが、このLNGタンク1の内部には、貯蔵されているLNGをタンク外へ(気化器2A、2B、2Cへ)払い出す払出ポンプが設置されている。
【0016】
気化器2A、2B、2Cは、LNGタンク1の屋根に付設された熱交換器であり、加熱器6A、6B、6Cによって加熱されたエチレングリコール(凍結防止液)EGとLNGタンク1から払い出されたLNGとの熱交換によってLNGの気化を行うものである。これら気化器2A、2B、2Cは、熱交換によって得られた天然ガス(NG)を不図示のNG需要設備へ送出すると共に、熱交換後のエチレングリコールEGをブラインタンク3及びポンプ4を経由して底部ヒータ5へ再循環させる。なお、図1では説明の便宜上、3つの気化器2A、2B、2CがLNGタンク1の屋根に付設された状態を示しているが、気化器の設置数はこれに限定されない。
【0017】
ブラインタンク3は、気化器2A、2B、2Cから送出されるエチレングリコールEGを一時的に蓄えるバッファ用タンクである。ポンプ4は、ブラインタンク3から送出されるエチレングリコールEGを一定圧力で底部ヒータ5へ圧送するものである。底部ヒータ5は、LNGタンク1の底部に設置され、エチレングリコールEGの流通によってLNGタンク1の底部の凍結を防ぐものである。
【0018】
加熱器6A、6B、6Cは、LNGタンク1の屋根に付設されており、底部ヒータ5からバルブ7A、7B、7Cを介して送出される低温のエチレングリコールEGを加熱し、加熱後のエチレングリコールEGを気化器2A、2B、2Cへ送出する。これら加熱器6A、6B、6Cは、LNGタンク1から不図示のBOGコンプレッサへ排出されるBOG(Boil Off Gas)の一部を燃料とするバーナ(6A、6B、6C)及び電気ヒータ(6A、6B、6C)を含んでいる。なお、図1では説明の便宜上、3つの加熱器6A、6B、6CがLNGタンク1の屋根に付設された状態を示しているが、加熱器の設置数はこれに限定されない。
【0019】
バルブ7A、7B、7Cは、制御装置11から入力される制御信号によって開度が制御される制御弁であり、それぞれ加熱器6A、6B、6Cに流入するエチレングリコールEGの流量を規制する役割を担っている。
【0020】
NG流量計8は、気化器2A、2B、2CからNG需要設備へ送出されるNG流量Lを計測し、その計測結果を示すNG流量信号を制御装置11に出力する。第1の温度計9は、気化器2A、2B、2Cへ流入するエチレングリコールEGの温度を気化器入口温度T1として計測し、その計測結果を示す第1の温度信号を制御装置11に出力する。第2の温度計10は、底部ヒータ5へ流入するエチレングリコールEGの温度を底部ヒータ入口温度T2として計測し、その計測結果を示す第2の温度信号を制御装置11に出力する。
【0021】
制御装置11は、バルブ7A、7B、7Cの開度を制御すると共に、NG流量計8から入力されるNG流量信号、第1の温度計9から入力される第1の温度信号及び第2の温度計10から入力される第2の温度信号に基づき、気化器入口温度T1及び底部ヒータ入口温度T2がNG流量Lに応じて設定された管理温度となるように加熱器6A、6B、6Cを制御する。この制御装置11によるLNG気化設備の制御方法は以下の通りである。
【0022】
まず、制御装置11は、バルブ7A、7B、7Cを常時開に制御することで、加熱器6A、6B、6Cの各々に流入するエチレングリコールEGの流量を一定に保持する。また、気化器入口温度T1及び底部ヒータ入口温度T2の管理温度は、NG流量Lが増えるほど高くなるように設定されている。つまり、制御装置11は、NG需要設備へ送出されるNG流量Lが増えるほど、エチレングリコールEGに与える熱量が大きくなるように(換言すれば気化器入口温度T1及び底部ヒータ入口温度T2が高くなるように)加熱器6A、6B、6Cを制御する。
【0023】
具体的には、制御装置11は、NG流量Lが比較的小さい場合(つまり、気化器入口温度T1及び底部ヒータ入口温度T2の管理温度が比較的低い場合)、加熱器6A、6B、6Cのバーナ6A、6B、6Cを優先的に作動させる一方、NG流量Lが大きくなった場合(つまり、気化器入口温度T1及び底部ヒータ入口温度T2の管理温度が比較的高くなった場合)、バーナ6A、6B、6Cに加えて電気ヒータ6A、6B、6Cも作動させる。
【0024】
これにより、気化器入口温度T1及び底部ヒータ入口温度T2は、NG流量Lに応じて設定された管理温度に保たれ、気化器2A、2B、2CにはLNGとの熱交換に必要な熱量を持つエチレングリコールEGが流入し、底部ヒータ5にはLNGタンク1の底部凍結を防ぐのに必要な熱量を持つエチレングリコールEGが流入することになる。
【0025】
以上のように、本実施形態におけるLNG気化設備によれば、LNGタンク1の底部ヒータ5に使用されるエチレングリコールEGをLNGの気化に利用するため、海水を利用せずにLNGを気化することができ、また、エチレングリコールEGの流通によってLNGタンク1の底部の凍結を防ぐ底部ヒータ5は、従来からLNGタンク1に付設されていたものであるため、新たに熱媒体の供給設備を追加する必要はなく、設備コストの増加を最小限に抑えることができる。
【0026】
また、気化器2A、2B、2C及び加熱器6A、6B、6CをLNGタンク1の屋根に付設することにより、各設備を設置する敷地面積を小さくして配管長を短くすることができるため、設備コストの削減に寄与することができる。さらに、上記のように、LNGタンク1内で発生したBOGを、バーナ6A、6B、6CによるエチレングリコールEGの加熱に積極的に利用し、電気ヒータ6A、6B、6Cを補助的に利用することにより、LNG気化設備の省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態の変更が可能であることは勿論である。例えば、本発明は上記実施形態の他、以下のような変形例が挙げられる。
【0028】
(1)上記実施形態では、LNGタンク1の屋根に気化器2A、2B、2C及び加熱器6A、6B、6Cを付設する構成を例示したが、本発明はこれに限らず、これら気化器及び加熱器をLNGタンク1の側壁に付設する構成を採用しても良い。また、気化器及び加熱器は必ずしもLNGタンク1に付設する必要はなく、LNGタンク1から離れた位置に設置しても良い。
【0029】
(2)上記実施形態では、底部ヒータ5に流通させる凍結防止液としてエチレングリコールEGを用いた場合を例示したが、本発明はこれに限らず、凍結防止液としてグリセリンなどの他の液体を用いても良い。
【0030】
(3)上記実施形態では、BOGを燃料とするバーナ6A、6B、6C及び電気ヒータ6A、6B、6Cを含む加熱器6A、6B、6Cを例示したが、本発明はこれに限らず、バーナや電気ヒータ以外の加熱手段を利用する加熱器を用いても良い。
【符号の説明】
【0031】
1…LNGタンク、2A、2B、2C…気化器、3…ブラインタンク、4…ポンプ、5…底部ヒータ、6A、6B、6C…加熱器、7A、7B、7C…バルブ、8…NG流量計、9…第1の温度計、10…第2の温度計、11…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGタンクの底部に設置され、凍結防止液の流通によって前記底部の凍結を防ぐ底部ヒータと、
前記底部ヒータから送出される前記凍結防止液を加熱する加熱器と、
前記加熱器によって加熱された前記凍結防止液と前記LNGタンクから払い出されたLNGとの熱交換によって前記LNGの気化を行い、熱交換後の前記凍結防止液を前記底部ヒータへ再循環させる気化器と、
を具備することを特徴とするLNG気化設備。
【請求項2】
前記気化器からNG需要設備へ送出されるNG流量を計測するNG流量計と、
前記気化器へ流入する前記凍結防止液の温度を気化器入口温度として計測する第1の温度計と、
前記底部ヒータへ流入する前記凍結防止液の温度を底部ヒータ入口温度として計測する第2の温度計と、
前記気化器入口温度及び前記底部ヒータ入口温度が前記NG流量に応じて設定された管理温度となるように前記加熱器を制御する制御装置と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のLNG気化設備。
【請求項3】
前記加熱器は、前記LNGタンクから排出されたBOGを燃料とするバーナ及び電気ヒータを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のLNG気化設備。
【請求項4】
前記気化器及び前記加熱器は、前記LNGタンクの屋根に付設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のLNG気化設備。
【請求項5】
前記凍結防止液はエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のLNG気化設備。

【図1】
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【公開番号】特開2012−141032(P2012−141032A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527(P2011−527)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】