説明

Lrp4/Corinドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞マーカー

神経細胞移植治療においては、安全性の面では目的の細胞種のみからなる細胞群、そして腫瘍形成の危険性を考慮すれば分裂停止後の神経細胞が好ましいと考えられる。さらに、移植先での生存、正しいネットワーク形成能等を考慮するとより早期の前駆細胞により治療効果が増大されると期待される。
本発明により、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞に特異的に発現する遺伝子Lrp4が同定された。細胞における該Lrp4の発現を指標とすることにより、安全面、生存率及びネットワーク形成能の面でもパーキンソン病を含む神経変性疾患に対する移植治療に適した細胞を選択することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞(progenitor)において発現している遺伝子としてLrp4を同定した。該遺伝子の発現、または該遺伝子によりコードされる膜貫通蛋白質の発現を検出することにより、パーキンソン病(PD)等の神経変性疾患の移植治療において用いることができるドーパミン産生ニューロン前駆細胞を効率的に分離することができる。
【背景技術】
ドーパミン系は、哺乳動物の脳において重要な運動調節、ホルモン分泌調節、情動調節等に関与する非常に重要な系である。従って、ドーパミン作動性神経伝達における異常は、様々な神経系の障害を引き起こす。例えば、パーキンソン病(PD)は、中脳黒質のドーパミン産生ニューロンの特異的な脱落が原因で起こる錐体外路系の神経変性疾患である(HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 第2巻 第23版,Isselbacher et al.編,McGraw−Hill Inc.,NY(1994)pp.2275−7)。パーキンソン病の治療法としては、産生されるドーパミン量の低下を補うためにL−DOPA(3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)を経口投与する方法が主に採られているが、効果の持続性が良くないことが知られている。
パーキンソン病治療において、最近では失われたドーパミン産生ニューロンを補うために、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含む6〜9週齢の中絶胎児の中脳腹側領域を移植する治療法も試みられている(米国特許第5690927号;Spencer et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1541−8;Freed et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1549−55;Widner et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1556−63;Kordower et al.(1995)N.Engl.J.Med.332:1118−24;Defer et al.(1996)Brain 119:41−50;Lopez−Lozano et al.(1997)Transp.Proc.29:977−80)。しかし、現在のところ、この方法では細胞の供給面、倫理面(Rosenstain(1995)Exp.Neurol.33:106;Turner et al.(1993)Neurosurg.33:1031−7)で問題があると共に、感染汚染の危険性、免疫学的な移植片拒絶(Lopez−Lozano et al.(1997)Transp.Proc.29:977−80;Widner and Brudin(1988)Brain Res.Rev.13:287−324)、胎児組織が糖分解よりも脂質代謝に主に依存しているための生存率の低さ(Rosenstein(1995)Exp.Neurol.33:106)等の様々な面で問題が指摘されている。
倫理面や供給不足の問題を解決するために、例えばブタ由来の皮質、線条、及び中脳細胞を用いる方法も提案されている(例えば、特表平10−508487号公報;特表平10−508488号公報;特表平10−509034号公報参照)。この方法においては、拒絶反応を抑制するため、細胞表面上の抗原(MHCクラスI抗原)を改変するという煩雑な操作が必要とされる。移植片拒絶を解消する方法としては、例えば、セルトーリ細胞を同時に移植することにより、局在的に免疫抑制する方法も提案されている(特表平11−509170号公報;特表平11−501818号公報;Selawry and Cameron(1993)Cell Transplant 2:123−9)。MHCがマッチする血縁者、他人の骨髄、骨髄バンク、及び臍帯血バンク等から移植細胞を得ることも可能であるが、患者自身の細胞を用いることができれば、余計な操作や手間なしに拒絶反応の問題も解決することができる。
そこで、中絶胎児由来の細胞に代えて、胚性幹細胞(ES)細胞、骨髄間質細胞などの非神経系細胞からのin vitroにおけるドーパミン産生ニューロンの分化系の移植材料としての利用が有望視されている。実際、ラットパーキンソン病モデルの病変線条へのES細胞移植により機能的なドーパミン産生ニューロンが形成されたとの報告もある(Kim et al(2002)Nature 418:50−56)。将来的にはES細胞若しくは患者本人の持つ神経幹細胞からの再生治療の重要性が増してくるものと思われる。
神経組織の損傷の治療においては脳機能の再構築が必要となり、周囲の細胞と適切なリンクを形成する(ネットワーク形成)ために成熟した細胞ではなくニューロンへとin vivoにおいて分化し得る細胞を移植する必要がある。ニューロン前駆細胞の移植において上述した供給面以外で問題となるのは、前駆細胞が不均一な細胞集団へと分化する可能性がある点である。例えば、パーキンソン病の治療においては、カテコールアミン含有ニューロンの中でもドーパミン産生ニューロンを選択的に移植することが必要である。これまで、パーキンソン病の治療に用いることが提案されている移植細胞としては、線条体(Lindvall et al.(1989)Arch.Neurol.46:615−31;Widner et al.(1992)N.Engl.J.Med.327:1556−63)、ヒト胎児神経由来の不死化セルライン(特表平8−509215号公報;特表平11−506930号公報;特表2002−522070号公報)、NT2Z細胞の有糸分裂後ヒトニューロン(特表平9−5050554号公報)、ニューロン始原細胞(特表平11−509729号公報)、ドパミン等のカテコールアミンを産生するように外来遺伝子によりトランスフェクトされた細胞、骨髄ストロマ細胞(特表2002−504503号公報;特表2002−513545号公報)、遺伝子改変されたES細胞(Kim et al(2002)Nature 418:50−56)等が挙げられる。しかしながらいずれも、ドーパミン産生ニューロンまたはドーパミン産生ニューロンへと分化する細胞のみを含むものではない。
未分化な細胞集団からドーパミン産生ニューロンを選択的に濃縮・分離する方法としては、ドーパミン産生ニューロンで発現するチロシンハイドロキシラーゼ(TH)等の遺伝子のプロモーター/エンハンサーの制御下で蛍光蛋白質を発現するレポーター遺伝子を細胞集団の各細胞に導入し、蛍光を発する細胞を分離することにより、ドーパミン産生ニューロンを生きたまま可視化して濃縮・分離、または同定する方法(特開2002−51775号公報)が提案されている。この方法は、外来遺伝子の導入という煩雑な工程を不可欠とするものであり、さらに、遺伝子治療に用いることを目的とする場合、レポーター遺伝子の存在は毒性、免疫原性の面からも問題である。
【発明の開示】
現時点でのPD移植治療における大きな問題の一つは、中絶胎児の中脳腹側領域あるいはin vitroで分化誘導したドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、いずれも多種の細胞の混合物である点である。神経回路形成における安全性を考えると、目的の細胞種のみを分離してから用いるのが望ましい。また、腫瘍形成の危険性を考慮すれば、分裂停止後の神経細胞を分離してから使用することが良いと考えられる。さらに、細胞の移植先の脳内での生存や、正しくネットワーク形成する能力を考えると、より早期の前駆細胞を分離することにより治療効果を増大させ得ると期待される。そこで、本発明者は、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子の単離を試みた。そして既に、分裂停止直後の神経前駆細胞で一過性に発現する遺伝子の一つとして、新規遺伝子65B13の単離に成功し、特許出願した(特願2002−307573号)。
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子を単離するために、E12.5マウス中脳腹側領域を背腹方向にさらに2つの領域に切り分けて、ドーパミン産生ニューロンを含む最も腹側の領域に特異的に発現する遺伝子をサブトラクション法(N−RDA;representational difference analysis法;RDA法(Listsyn NA(1995)Trends Genet.11:303−7)を改良(「DNA断片の量の均一化方法及びサブストラクション法」特願2001−184757(出願日2001/6/19))により同定した。単離した断片の一つはLrp4/CorinをコードするcDNA断片であった。Lrp4はII型膜貫通蛋白質をコードしている(図1)。
in situハイブリダイゼーションによる発現解析の結果、Lrp4は中脳ではドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞に特異的に発現すると考えられた(図4及び5)。Lrp4は胎生期から成人期にかけての心臓に発現しており、血圧調整ホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の切断を行うと考えられているII型膜貫通プロテアーゼである。ANPは前駆型であるpro−ANPの状態で発現し、細胞外に分泌された後にLrp4より細胞膜表面上で切断され、活性型ANPとなると考えられている。これまで、増殖中のドーパミン産生ニューロン前駆細胞で特異的に発現する膜蛋白質をコードする遺伝子は報告されていない。細胞膜表面に発現するLrp4蛋白質に対する抗体は、Lrp4発現細胞の分離に非常に効果的であると考えられる。例えば、抗Lrp4抗体を用いて、中脳腹側領域またはin vitroで分化誘導したドーパミン産生ニューロンを含む培養細胞から、Lrp4発現細胞を分離することで、純粋なドーパミン産生ニューロン前駆細胞を得ることができる(図6)。
さらに、該前駆細胞をそのまま、またはin vitroで増殖させた後に移植することも可能である。本発明の前駆細胞は脳内の最適な場所で分化成熟していく可能性やin vivoでさらに前駆細胞が増殖する可能性もあり、長期的な治療効果が期待できる。また、Lrp4発現細胞をin vitroで分化、成熟させた後に移植を行えば、in vivoで何らかの理由でドーパミン産生ニューロンへの分化が行われない場合にも、治療効果が期待できる。腫瘍化等の危険性を考慮すれば、in vitroで増殖させたLrp4発現細胞を分化誘導した後に、65B13等の分裂停止後のニューロンマーカーを用いて分離した細胞を移植すればより高い安全性が期待できる。いずれの方法でもLrp4発現細胞を分離して移植治療に用いることで、目的の細胞種のみを分離しているので安全性が高く、また、最も初期の前駆細胞を用いることができるため、生存率やネットワーク形成能等の面でも高い治療効果が期待される。分離直後の初期の前駆細胞で最高の治療効果を得られない場合があったとしても、本発明のマーカーにより分離される前駆細胞はin vitroで培養する等して成熟させることもできるため、最適な分化段階の材料を調製することを可能にする(図6)。
一方、純粋なドーパミン産生ニューロン前駆細胞を得ることは、ドーパミン産生ニューロンに特異的な遺伝子の単離等、パーキンソン病治療のターゲット探索にも有効である。特に増殖前駆細胞を得られるということは、ドーパミン産生ニューロンの成熟過程の研究や、成熟を指標にしたスクリーニング系だけでなく、前駆細胞をin vitroまたはin vivoで増殖させる薬剤のスクリーニングや、in vivoで前駆細胞から分化を誘導する薬剤(in vivoでの再生治療薬剤)のスクリーニング等にも有用である。
より具体的には、本発明は
[1] 以下の(1)〜(5)の塩基配列から選択される配列を含むドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞マーカーポリヌクレオチドプローブ、
(1)配列番号:1または2の塩基配列に相補的な塩基配列
(2)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列
(3)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠く配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列
(4)配列番号:1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
(5)上記(1)〜(4)の配列中の少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列
[2] 以下の(1)〜(6)から選択されるポリペプチドに対する抗体、
(1)配列番号:1または2の塩基配列によりコードされるポリペプチド
(2)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(3)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠くアミノ酸配列からなるポリペプチド
(4)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(5)配列番号:1または2の塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるポリペプチド
(6)上記(1)〜(5)のポリペプチドの断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチド
[3] ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法であって、上記[1]記載のポリヌクレオチドとドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法、
[4] ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法であって、上記[2]記載の抗体とドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法、
[5] 以下の工程を含むドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法、
(1)上記[3]または[4]記載のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択する方法によりドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択する工程
(2)上記(1)において選択された前駆細胞を培養する工程
(3)上記(2)において培養された前駆細胞を、分裂停止後のニューロンマーカーを用いてスクリーニングする工程
[6] 上記[3]〜[5]記載の方法により選択された分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞、
[7] ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及び前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離方法であって、上記[6]記載の前駆細胞または該前駆細胞から分化、誘導若しくは増殖された細胞を用い、該細胞において特異的に発現している遺伝子を検出、単離する工程を含む方法、並びに
[8] 成熟を指標としたスクリーニング方法であり、上記[6]記載の前駆細胞に対し、被験物質を接触させる工程、及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を含む方法、
に関する。
<マーカーポリヌクレオチドプローブ>
本発明のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞マーカーポリヌクレオチドプローブは、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択及び/または検出するマーカーとして使用されるものである。該プローブとして使用されるポリヌクレオチドは、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に発現するLrp4ポリペプチドをコードする配列番号:1または2の塩基配列に相補的な塩基配列を含むものである。配列番号:1はマウスLrp4 cDNAの塩基配列、そして配列番号:2はヒトLrp4 cDNAの塩基配列であり、それぞれGenBankに登録された配列である(マウス:Accession No.NM_016869;ヒト:Accession No.XM_035037)。
ここで、「マーカーポリヌクレオチドプローブ」とは、Lrp4の発現、特に転写されたmRNAを検出することができればよく、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の塩基または塩基対からなる重合体を指す。二本鎖cDNAも組織in situハイブリダイゼーションでプローブとして利用可能であることが知られており、本発明のマーカーにはそのような二本鎖cDNAも含まれる。組織中のRNAの検出において特に好ましいプローブとなるマーカーポリヌクレオチドプローブとしては、RNAプローブ(リボプローブ)を挙げることができる。また、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブは、天然以外の塩基、例えば、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’−0−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−0−メチルプソイドウリジン、β−D−ガラクトシルキュェオシン、2’−0−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルキュェオシン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルリオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5オキシ酢酸、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キュェオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−0−メチル−5−メチルウリジン、2’−0−メチルウリジン、ワイブトシン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン等を必要に応じて含んでいてもよい。
さらに、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブは、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現するLrp4ポリペプチドをコードする配列番号:3または4記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列を含む。配列番号:3または4記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、配列番号:1または2に記載された塩基配列に加えて、遺伝子暗号の縮重により配列番号:1または2記載の配列とは異なる塩基配列を含むものである。本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブはまた、配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において、膜貫通領域を欠く配列をコードする塩基配列に対して相補的な配列を含むものを包含する。配列番号:3または4記載のアミノ酸配列中、シグナル配列は存在せず、マウスLrp4(配列番号:3)では113−135アミノ酸残基、ヒトLrp4(配列番号:4)では46−68アミノ酸残基の部分が膜貫通領域を形成している。なお、配列番号:3及び4に記載の配列も各々GenBankに登録されている。
ここで、或る「塩基配列に対して相補的」とは、塩基配列が鋳型に対して完全に対になっている場合のみならず、そのうちの少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上(例えば、97%または99%)が対になっているものも含む。対になっているとは、鋳型となるポリヌクレオチドの塩基配列中のAに対しT(RNAの場合はU)、TまたはUに対しA、Cに対しG、そしてGに対しCが対応して鎖が形成されていることを意味する。そして或るポリヌクレオチド同士の塩基配列レベルでの相同性は、BLASTアルゴリズム(Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−8;Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−7)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいた塩基配列についてのプログラムとして、BLASTN(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10)が開発されており、マーカーポリヌクレオチドプローブ配列の相同性の決定に使用することができる。具体的な解析方法については、例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
さらに、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブには、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に特異的に発現するLrp4ポリペプチドをコードする配列番号:1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むポリヌクレオチドが包含される。Lrp4については配列番号:1または2で示される塩基配列を有するものが公知であるが、そのアルタナティブアイソフォーム、及びアレリック変異体が存在する可能性があり、そのようなアイソフォームやアレリック変異体に相補的な配列を有するものも本発明のマーカーポリペプチドとして利用することができる。このようなアイソフォーム及びアレリック変異体は、配列番号:1または2の塩基配列を含むポリヌクレオチドをプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。cDNAライブラリーの作成方法については、『Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを利用してもよい。
より具体的に、cDNAライブラリーの作製においては、まず、Lrp4を発現する細胞、臓器、組織等からグアニジン超遠心法(Chirwin et al.(1979)Biochemistry 18:5294−9)、AGPC法(Chomczynski and Sacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−9)等の公知の手法により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia)等を用いてmRNAを精製する。QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia)のような、直接mRNAを調製するためのキットを利用してもよい。次に得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業)のようなcDNA合成のためのキットも市販されている。その他の方法として、cDNAはPCRを利用した5’−RACE法(Frohman et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8998−9002;Belyavsky et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:2919−32)により合成、及び増幅させてもよい。また、全長率の高いcDNAライブラリーを作製するために、オリゴキャップ法(Maruyama and Sugano(1994)Gene 138:171−4;Suzuki(1997)Gene 200:149−56)等の公知の手法を採用することもできる。上述のようにして得られたcDNAは、適当なベクター中に組み込む。
本発明におけるハイブリダイゼーション条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」、「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」等の条件を挙げることができる。より詳細には、Rapid−hyb buffer(Amersham Life Science)を用いた方法として、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、プローブを添加して1時間以上68℃に保ってハイブリッド形成させ、その後、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を3回、最後に、1×SSC、0.1%SDS中、50℃で20分の洗浄を2回行うことも考えられる。その他、例えばExpresshyb Hybridization Solution(CLONTECH)中、55℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行い、標識プローブを添加し、37〜55℃で1時間以上インキュベートし、2×SSC、0.1%SDS中、室温で20分の洗浄を3回、1×SSC、0.1%SDS中、37℃で20分の洗浄を1回行うこともできる。ここで、例えば、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションや2度目の洗浄の際の温度を上げることにより、よりストリンジェントな条件とすることができる。例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの温度を60℃、さらにストリンジェントな条件としては68℃とすることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、Lrp4のアイソフォーム、アレリック変異体、及び対応する他種生物由来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989);特にSection9.47−9.58)、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987−1997);特にSection6.3−6.4)、『DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University(1995);条件については特にSection2.10)等を参照することができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、配列番号:1または2の塩基を含む塩基配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。このような同一性は、上述の相同性の決定と同様にBLASTアルゴリズム(Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−8;Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−7)によって決定することができる。上述の塩基配列についてのプログラムBLASTNの他に、このアルゴリズムに基づいたアミノ酸配列についての同一性を決定するプログラムとしてBLASTX(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10)等が開発されており、利用可能である。具体的な解析方法については先に挙げたように、http://www.ncbi.nlm.nih.gov.等を参照することができる。
その他、遺伝子増幅技術(PCR)(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 6.1−6.4)により、Lrp4のアイソフォームやアレリック変異体等、Lrp4と類似した構造及び機能を有する遺伝子を、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の動物のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから、配列番号:1または2に記載の塩基配列を基に設計したプライマーを利用して得ることができる。
ポリヌクレオチドの塩基配列は、慣用の方法により配列決定して確認することができる。例えば、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション法(Sanger et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)等による確認が可能である。また、適当なDNAシークエンサーを利用して配列を解析することも可能である。
さらに、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブには、上記(1)配列番号:1または2の塩基配列に相補的な配列、(2)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な配列、(3)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域部分を欠く配列をコードする塩基配列に相補的な配列、及び(4)配列番号:1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列の各塩基配列中の少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドが含まれる。
このような少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドは、Lrp4 mRNAの発現を検出するためのプローブ、増幅して検出を行うためのプライマーとして利用することができる。通常、プローブとして使用する場合には15〜100、好ましくは15〜35個の塩基より構成されていることが望ましく、プライマーとして使用する場合には、少なくとも15、好ましくは30個の塩基より構成されていることが望ましい。プライマーの場合には、3’末端側の領域を標的とする配列に対して相補的な配列に、5’末端側には制限酵素認識配列、タグ等を付加した形態に設計することができる。このような少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列からなるポリヌクレオチドは、Lrp4ポリヌクレオチドに対してハイブリダイズすることができる。
本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブは、Lrp4を発現する細胞より上述のハイブリダイゼーション法、PCR法等により調製することができる。また、Lrp4の公知の配列情報に基づいて、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブは化学合成により製造することもできる。特に組織中のRNAの検出に好ましいとされるリボプローブは、例えば、プラスミドベクターpSP64にクローニングしたLrp4遺伝子またはその一部を逆方向に挿入し、挿入した配列部分をランオフ転写することにより得ることができる。pSP64はSP6プロモーターを含むものであるが、その他、ファージT3、T7プロモーター及びRNAポリメラーゼを組合せてリボプローブを作成する方法も公知である。
<抗体>
本発明により、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞を脳組織、または培養細胞より選択するために利用することができる抗体が提供される。本発明の抗体にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(scFV)(Huston et la.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83;The Pharmacology of Monoclonal Antibody,vol.113,Rosenburg and Moore ed.,Springer Verlag(1994)pp.269−315)、ヒト化抗体、多特異性抗体(LeDoussal et al.(1992)Int.J.Cancer Suppl.7:58−62;Paulus(1985)Behring Inst.Mitt.78:118−32;Millstein and Cuello(1983)Nature 305:537−9;Zimmermann(1986)Rev.Physiol.Biochem.Pharmacol.105:176−260;Van Dijk et al.(1989)Int.J.Cancer 43:944−9)、並びに、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fv等の抗体断片が含まれる。さらに、本発明の抗体は必要に応じ、PEG等により修飾されていてもよい。その他、本発明の抗体は、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合蛋白質、GST、緑色蛍光蛋白質(GFP)等との融合蛋白質として製造することにより二次抗体を用いずに検出できるようにしてもよい。また、ビオチン等により抗体を標識することによりアビジン、ストレプトアビジン等を用いて抗体の回収を行い得るように改変してもよい。
本発明の抗体は、(1)配列番号:1または2の塩基配列によりコードされるポリペプチド、(2)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(3)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠くアミノ酸配列からなるポリペプチド、(4)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、(5)配列番号:1または2の塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるポリペプチド、並びに(6)前記(1)〜(5)のポリペプチドの断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチドのいずれかに対して特異的な抗体である。
本発明の抗体は、Lrp4ポリペプチド若しくはその断片、またはそれらを発現する細胞を感作抗原として利用することにより製造することができる。また、Lrp4ポリペプチドの短い断片はウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、卵白アルブミン等のキャリアに結合した形で免疫原として用いてもよい。また、Lrp4のポリペプチドまたはその断片と共に、アルミニウムアジュバント、完全(または不完全)フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバント等の公知のアジュバントを抗原に対する免疫応答を強化するために用いてもよい。
本発明における「Lrp4ポリペプチド」はペプチド重合体であり、配列番号:3または4記載のアミノ酸配列を有する蛋白質を好ましい例として挙げることができる。Lrp4ポリペプチドを構成するアミノ酸残基は天然に存在するものでも、また修飾されたものであっても良い。さらに、Lrp4ポリペプチドには膜貫通領域部分を欠く蛋白質、及びその他のペプチド配列により修飾された融合蛋白質が含まれる。
本発明において、Lrp4ポリペプチドは、Lrp4ポリペプチドの抗原性を有すればよく、配列番号:3または4のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなる変異ポリペプチドで、元のポリペプチドと同じ生物学的活性が維持されることは公知である(Mark et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5662−6;Zoller and Smith(1982)Nucleic Acids Res.10:6487−500;Wang et al.(1984)Science 224:1431−3;Dalbadie−McFarland et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6409−13)。そして、このような配列番号:3または4のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列を有するLrp4の抗原性を維持したポリペプチドは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを公知の『Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.』(Cold Spring Harbor Press(1989))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987−1997);特にSection8.1−8.5)、Hashimoto−Goto et al.(1995)Gene 152:271−5、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−92、Kramer and Fritz(1987)Method.Enzymol.154:350−67、Kunkel(1988)Method.Enzymol.85:2763−6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製し、適宜発現させることにより得ることができる。
Lrp4ポリペプチド断片は、上記Lrp4ポリペプチドの一部と同一であり、少なくとも8アミノ酸残基以上(例えば、8、10、12、または15アミノ酸残基以上)からなるポリペプチド断片である。特に好ましい断片としては、アミノ末端、カルボキシル末端、膜貫通ドメインを欠失したポリペプチド断片を挙げることができる。αヘリックス及びαヘリックス形成領域、α両親媒性領域、βシート及びβシート形成領域、β両親媒性領域、基質結合領域、高抗原指数領域、コイル及びコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、ターン及びターン形成領域、並びに表面形成領域を含む断片がLrp4のポリペプチド断片に含まれる。本発明におけるLrp4のポリペプチド断片は、Lrp4ポリペプチドの抗原性さえ有すればどのような断片であってもよい。ポリペプチドの抗原決定部位は、蛋白質のアミノ酸配列上の疎水性/親水性を解析する方法(Kyte−Doolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−22)、二次構造を解析する方法(Chou−Fasman(1978)Ann.Rev.Biochem 47:251−76)により推定し、さらにコンピュータープログラム(Anal.Biochem.151:540−6(1985))、または短いペプチドを合成しその抗原性を確認するPEPSCAN法(特表昭60−500684号公報)等により確認することができる。
Lrp4ポリペプチド、及びポリペプチド断片は、Lrp4を発現する細胞・組織等を原料として、その物理的性質等に基づいて単離することができる。また、公知の遺伝子組換え技術により、また化学的な合成法により製造することもできる。例えば、Lrp4ポリペプチドをin vitroで製造する場合、in vitroトランスレーション(Dasso and Jackson(1989)Nucleic Acids Res.17:3129−44)等の方法に従って、細胞を含まない試験管内の系でポリペプチドを製造することができる。それに対して、細胞を用いてポリペプチドを製造する場合、まず所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当なベクターに組み込み、適当な宿主細胞を選択し該ベクターによる形質転換を行い、形質転換された細胞を培養することにより所望のポリペプチドを得ることができる。
適当なベクターとして、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、クローニング用ベクター、発現ベクター等の種々のベクターを挙げることができる(Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(1989);Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987))。ベクターは、導入された宿主細胞内で所望のポリヌクレオチドが発現されるように制御配列を有し、ポリヌクレオチドは該制御配列下に結合される。ここで「制御配列」とは、宿主細胞が原核生物であればプロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネーターを含み、真核生物の場合は、プロモーター及びターミネーターであり、場合によってトランスアクチベーター、転写因子、転写物を安定化するポリAシグナル、スプライシング及びポリアデニル化シグナル等が含まれる。このような制御配列は、それに連結されたポリヌクレオチドの発現に必要とされるすべての構成成分を含むものである。ベクターは、選択可能なマーカーを含んでいてもよい。さらに、細胞内で発現されたポリペプチドを小胞体内腔、グラム陰性菌を宿主とする場合ペリプラズム内、または細胞外へと移行させるために必要とされるシグナルペプチドを目的のポリペプチドに付加するようにして発現ベクターへ組み込むこともできる。このようなシグナルペプチドとして、異種蛋白質由来のシグナルペプチドを利用することができる。さらに、必要に応じリンカーの付加、開始コドン(ATG)、終止コドン(TAA、TAGまたはTGA)の挿入を行ってもよい。
in vitroにおけるポリペプチドの発現を可能にするベクターとしては、pBEST(Promega)を例示することができる。また、原核細胞宿主における発現に適した種々のベクターが公知であり(『微生物学基礎講座8 遺伝子工学』(共立出版)等参照)、原核細胞を宿主として選択した場合、当業者であれば選択した宿主に適したベクター、ベクターの宿主への導入方法を適宜選ぶことができる。その他、酵母等の真菌類、高等植物、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、種々の培養系細胞(COS、Hela、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ細胞)、ミエローマ、Vero、Namalwa、Namalwa KJM−1、HBT5637(特開昭63−299号公報)等)もLrp4ポリペプチド及びその抗原性断片を発現させる宿主として利用することができ、各細胞に適したベクター系、ベクターの宿主細胞への導入手法も公知である。さらに、動物の生体内(Susumu(1985)Nature 315:592−4;Lubon(1998)Biotechnol.Annu.Rev.4:1−54等参照)、及び植物体において外来蛋白質を発現させる方法も公知でありLrp4ポリヌクレオチドを発現させるために利用することができる。
ベクターへのDNAの挿入は、制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応により行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 11.4−11.11;Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(1989)Section 5.61−5.63)。また必要に応じ、使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、発現効率の高い塩基配列を選択し、Lrp4ポリペプチドコード発現ベクターを設計することができる(Grantham et al.(1981)Nucleic Acids Res.9:r43−74)。Lrp4ポリペプチドを産生する宿主は、Lrp4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞内に含むものであるが、該ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム上の天然に存在する位置になければよく、該ポリヌクレオチド自身のプロモーター支配下にあっても、ゲノム中に組み込まれていても、染色体外の構造として保持されていても良い。
宿主細胞の培養は、選択した細胞に適した公知の方法により行う。例えば、動物細胞を選択した場合には、DMEM(Virology 8:396(1959)、MEM(Science 122:501(1952))、RPMI1640(J.Am.Med.Assoc.199:519(1967))、199(Proc.Soc.Biol.Med.73:1(1950))、IMDM等の培地を用い、必要に応じウシ胎児血清(FCS)等の血清を添加し、pH約6〜8、30〜40℃において15〜200時間前後の培養を行うことができる。その他、必要に応じ途中で培地の交換を行ったり、通気及び攪拌を行ったりすることができる。
通常、遺伝子組換え技術により製造されたLrp4ポリペプチドは、まず、ポリペプチドが細胞外に分泌される場合には培地を、特にトランスジェニック生物の場合には体液等を、細胞内に産生される場合には細胞を溶解して溶解物の回収を行う。そして、蛋白質の精製方法として公知の塩析、蒸留、各種クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、ゲル濾過、限外濾過、再結晶、酸抽出、透析、免疫沈降、溶媒沈澱、溶媒抽出、硫安またはエタノール沈澱等を適宜組合せることにより所望のポリペプチドを精製する。クロマトグラフィーとしては、アニオンまたはカチオン交換等のイオン交換、アフィニティー、逆相、吸着、ゲル濾過、疎水性、ヒドロキシアパタイト、ホスホセルロース、レクチンクロマトグラフィー等が公知である(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual,Marshak et al.ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996))。HPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。また、例えば、GSTとの融合蛋白質とした場合にはグルタチオンカラムを、ヒスチジンタグを付加した融合蛋白質とした場合にはニッケルカラムを用いた精製法も利用できる。Lrp4ポリペプチドを融合蛋白質として製造した場合には、必要に応じて精製後にトロンビンまたはファクターXa等を使用して不要な部分を切断することもできる。
また、天然由来のポリペプチドを精製して取得してもよい。例えば、Lrp4ポリペプチドに対する抗体を利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより精製することもできる(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987)Section 16.1−16.19)。さらに、精製したポリペプチドを必要に応じキモトリプシン、グルコシダーゼ、トリプシン、プロテインキナーゼ、リシルエンドペプチダーゼ等の酵素を用いて修飾することも可能である。一方、Lrp4のポリペプチド断片は、上述のLrp4ポリペプチドと同じような合成及び遺伝子工学的な手法に加えて、ペプチダーゼのような適当な酵素を用いてLrp4ポリペプチドを切断して製造することもできる。
ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択するためのポリクローナル抗体は、例えば、上述のようにして精製されたLrp4のポリペプチドまたはその断片を所望によりアジュバントと共に哺乳動物に免疫し、免疫した動物より血清を得る。ここで用いる哺乳動物は、特に限定されないが、ゲッ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が一般的である。マウス、ラット、ハムスター等のゲッ歯目、ウサギ等のウサギ目、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等のサル等の霊長目の動物が挙げられる。動物の免疫化は、感作抗原をPhosphate−Buffered Saline(PBS)または生理食塩水等で適宜希釈、懸濁し、必要に応じアジュバントを混合して乳化した後、動物の腹腔内または皮下に注射して行われる。その後、好ましくは、フロイント不完全アジュバントに混合した感作抗原を4〜21日毎に数回投与する。抗体の産生は、血清中の所望の抗体レベルを慣用の方法により測定することにより確認することができる。最終的に、血清そのものをポリクローナル抗体として用いても良いし、さらに精製して用いてもよい。具体的な方法として、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987)Section 11.12−11.13)を参照することができる。
また、モノクローナル抗体を産生するためには、まず、上述のようにして免疫化した動物より脾臓を摘出し、該脾臓より免疫細胞を分離し、適当なミエローマ細胞とポリエチレングリコール(PEG)等を用いて融合してハイブリドーマを作成する。細胞の融合は、Milsteinの方法(Galfre and Milstein(1981)Methods Enzymol.73:3−46)に準じて行うことができる。ここで、適当なミエローマ細胞として特に、融合細胞を薬剤により選択することを可能にする細胞を挙げられる。このようなミエローマを用いた場合、融合されたハイブリドーマは、融合された細胞以外は死滅するヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液(HAT培養液)で培養して選択する。次に、作成されたハイブリドーマの中から、本発明のポリペプチドまたはその断片に対して結合する抗体を産生するクローンを選択する。その後、選択したクローンをマウス等の腹腔内に移植し、腹水を回収してモノクローナル抗体を得る。また、具体的な方法として、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987)Section 11.4−11.11)を参照することもできる。
ハイブリドーマは、その他、最初にEBウイルスに感染させたヒトリンパ球をin vitroで免疫原を用いて感作し、感作リンパ球をヒト由来のミエローマ細胞(U266等)と融合し、ヒト抗体を産生するハイブリドーマを得る方法(特開昭63−17688号公報)によっても得ることができる。また、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物を感作して製造した抗体産生細胞を用いても、ヒト抗体を得ることができる(WO92/03918;WO93−02227;WO94/02602;WO94/25585;WO96/33735;WO96/34096;Mendez et al.(1997)Nat.Genet.15:146−56等)。ハイブリドーマを用いない例としては、抗体を産生するリンパ球等の免疫細胞に癌遺伝子を導入して不死化する方法が挙げられる。
また、遺伝子組換え技術により抗体を製造することもできる(Borrebaeck and Larrick(1990)Therapeutic Monoclonal Antibodies,MacMillan Publishers LTD.,UK参照)。そのためには、まず、抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマまたは抗体産生細胞(感作リンパ球等)からクローニングする。得られた遺伝子を適当なベクターに組み込み、宿主に該ベクターを導入し、宿主を培養することにより抗体を産生させる。このような組換え型の抗体も本発明の抗体に含まれる。代表的な組換え型の抗体として、非ヒト抗体由来可変領域及びヒト抗体由来定常領域とからなるキメラ抗体、並びに非ヒト抗体由来相補性決定領域(CDR)、及び、ヒト抗体由来フレームワーク領域(FR)及び定常領域とからなるヒト化抗体が挙げられる(Jones et al.(1986)Nature 321:522−5;Reichmann et al.(1988)Nature 332:323−9;Presta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−6;Methods Enzymol.203:99−121(1991))。
抗体断片は、上述のポリクローナルまたはモノクローナル抗体をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することにより製造し得る。または、抗体断片をコードする遺伝子を用いて遺伝子工学的に製造することも可能である(Co et al.,(1994)J.Immunol.152:2968−76;Better and Horwitz(1989)Methods Enzymol.178:476−96;Pluckthun and Skerra(1989)Methods Enzymol.178:497−515;Lamoyi(1986)Methods Enzymol.121:652−63;Rousseaux et al.(1986)121:663−9;Bird and Walker(1991)Trends Biotechnol.9:132−7参照)。
多特異性抗体には、二特異性抗体(BsAb)、ダイアボディ(Db)等が含まれる。多特異性抗体は、(1)異なる特異性の抗体を異種二機能性リンカーにより化学的にカップリングする方法(Paulus(1985)Behring Inst.Mill.78:118−32)、(2)異なるモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを融合する方法(Millstein and Cuello(1983)Nature 305:537−9)、(3)異なるモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子(4種のDNA)によりマウス骨髄腫細胞等の真核細胞発現系をトランスフェクションした後、二特異性の一価部分を単離する方法(Zimmermann(1986)Rev.Physio.Biochem.Pharmacol.105:176−260;Van Dijk et al.(1989)Int.J.Cancer 43:944−9)等により作製することができる。一方、Dbは遺伝子融合により構築され得る二価の2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーの抗体断片であり、公知の手法により作製することができる(Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−8;EP404097;WO93/11161参照)。
抗体及び抗体断片の回収及び精製は、プロテインA及びGを用いて行う他、抗体以外のポリペプチドの製造の場合と同様に上記した蛋白質精製技術によっても行い得る(Antibodies:A Laboratory Manual,Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988))。例えば、本発明の抗体の精製にプロテインAを利用する場合、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia)等のプロテインAカラムが公知であり、使用可能である。得られた抗体の濃度は、その吸光度を測定することにより、または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等により決定することができる。
抗体の抗原結合活性は、吸光度測定、蛍光抗体法、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ELISA等により測定することができる。ELISA法により測定する場合、本発明の抗体をプレート等の担体に固相化し、次いでLrp4ポリペプチドを添加した後、目的とする抗体を含む試料を添加する。ここで、抗体を含む試料としては、抗体産性細胞の培養上清、精製抗体等が考えられる。続いて、本発明の抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートのインキュベーションを行う。その後、プレートを洗浄し、二次抗体に付加された標識を検出する。即ち、二次抗体がアルカリホスファターゼで標識されている場合には、p−ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を添加して吸光度を測定することで、抗原結合活性を測定することができる。また、抗体の活性評価に、BIAcore(Pharmacia)等の市販の系を使用することもできる。
<ドーパミン産生ニューロンの選択方法>
本発明により分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択的に均一な集団として選択する方法が提供された。分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブまたは抗体を用いて選択することができる。ここで、「選択」という用語は、或る試料中におけるドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞の存在を検出すること、及び、存在を検出しさらに分離または単離することの両方を含むものである。より具体的には、本発明は、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブとドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含むドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択する方法を提供するものである。該方法においては、マーカーポリヌクレオチドプローブを好ましくは放射性同位体または非放射性化合物で標識しておく。例えば、標識するための放射性同位体としては、35S、H等を挙げることができる。放射標識したマーカーポリヌクレオチドプローブを用いた場合、エマルションオートラジオグラフィーにより銀粒子を検出することによりマーカーと結合するRNAを検出することができる。また、マーカーポリヌクレオチドプローブ標識のための非放射性同位体としては、ビオチン、ジゴキシゲニン等が例示される。ビオチン標識マーカーの検出は、例えば、蛍光、または、アルカリ性ホスファターゼ若しくは西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素を標識したアビジンを用いて行うことができる。一方、ジゴキシゲニン標識マーカーの検出には、蛍光、または、アルカリ性ホスファターゼ若しくは西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素を標識した抗ジゴキシゲニン抗体を使用することができる。酵素標識を使用する場合には、酵素の基質と共にインキュベートし、安定な色素をマーカー位置に沈着させることで検出を行う。特に蛍光を利用した、in situハイブリッド形成法(FISH)が簡便であり、特に好ましいものである。
また、本発明により、本発明のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択するための抗体とドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含むドーパミン産生ニューロンの選択方法が提供される。即ち、ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を含むことが予測される細胞試料と本発明の抗体とを接触させ、抗体に結合する細胞を選択することでLrp4ポリペプチドを発現している細胞、即ち、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を取得できる(図6参照)。細胞との接触前に、抗体を適当な担体に固定化して用いることも可能である。または、細胞と抗体とを接触させ、結合させた後、抗体のアフィニティーによる精製を行うことで、該抗体と結合した細胞を選択的に回収することもできる。例えば、本発明の抗体がビオチンと結合されている場合には、アビジンやストレプトアビジンを結合したプレートやカラムに対して添加することにより精製を行うことができる。その他、例えば、磁性粒子を抗体に結合し、該抗体及び抗体に結合したLrp4を細胞表面上に発現している細胞を磁石を利用して回収することもできる。また、セルソーター、及び蛍光等により標識した抗Lrp4抗体を使用して、フローサイトメトリーによりLrp4を発現するドーパミン産生ニューロンを選択することもできる。
さらに、本発明により、本発明のマーカーポリヌクレオチドプローブまたは抗体を使用して選択されたドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を培養し、培養した前駆細胞を分裂停止後のニューロンマーカーを用いてスクリーニングすることにより、腫瘍化する危険性の低い移植治療に特に適したドーパミン産生ニューロン前駆細胞を得ることができる。分裂停止後のニューロンマーカーとしては、例えば65B13を挙げることができる。例えば、65BB13ポリペプチドに対する抗体を培養したドーパミン産生ニューロン前駆細胞と接触させて65B13ポリペプチドを発現している細胞を選択することにより分裂停止直後のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択することができる。また、65B13はIgドメイン接着分子様の構造を有する。培養細胞中で65B13発現させた場合、65B13を発現させた細胞同士は接着するのに対し、65B13を発現させていない細胞とは接着しない。そのため、65B13を介した接着はホモフィリックな結合と考えられている。そこで、65B13ポリペプチドの細胞外領域部分の接着を利用した65B13発現ドーパミン産生ニューロン前駆細胞のスクリーニングも可能である。
Lrp4発現ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞及び65B13発現ドーパミン産生ニューロン前駆細胞の選択及び/またはスクリーニングは、各々Lrp4または65B13に対するプロモーターを利用して行うこともできる(例えば、特開2002−51775号公報参照)。例えば、後述するLrp4の発現領域解析により得られるプロモーター部分に対し、GFP等の検出可能なマーカーをコードする遺伝子を連結した構築物を含むベクターを細胞に対してトランスフェクションすることができる。その他、Lrp4遺伝子座へマーカーをコードする遺伝子をノックインすることができる。どちらの場合にも、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的にマーカー遺伝子の発現が検出されることとなり、特異的な細胞の選択が可能となる。65B13についてもLrp4と同様の方法によりスクリーニングが可能である。65B13については、例えば、特願2002−307573号明細書に記載の配列を参照することができる。
ここで使用する細胞試料は好ましくは、中脳腹側領域の細胞、またはin vitroで分化誘導されたドーパミン産生ニューロンを含む培養培地である。in vitroにおけるドーパミン産生ニューロンの分化誘導は、公知のES細胞、骨髄間質細胞、神経由来の不死化セルライン(特表平8−509215号公報;特表平11−506930号公報;特表2002−522070号公報)、ニューロン始原細胞(特表平11−509729号公報)等の細胞を出発材料として、公知の方法により行うことができる。通常、ドーパミン産生ニューロンは、脳のドーパミン産生ニューロン領域から得た組織を神経組織由来の支持細胞層と共培養することにより分化させることができる。さらに、線条体及び皮質等の通常非ドーパミン産生神経組織からドーパミン産生細胞を誘導する方法も知られている(特表平10−509319号公報)。また、低酸素条件下での培養により、より多くドーパミン産生ニューロンを含む細胞が得られるとの報告もある(特表2002−530068号公報)。本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞の選択に用いる細胞試料は、これらを含む如何なる方法により分離または培養された細胞群であってもよい。
また、本発明の抗体またはポリペプチドを固定する担体としては、細胞に対して無害なものである必要がある。例えば、合成または天然の有機高分子化合物、ガラスビーズ、シリカゲル、アルミナ、活性炭等の無機材料、及びこれらの表面に多糖類、合成高分子等をコーティングしたものが考えられる。担体の形状には特に制限はなく、膜状、繊維状、顆粒状、中空糸状、不織布状、多孔形状、ハニカム形状等が挙げられ、その厚さ、表面積、太さ、長さ、形状、大きさを種々変えることにより接触面積を制御することができる。
<ドーパミン産生ニューロン前駆細胞>
このようにしてLrp4の発現を指標として獲得された細胞は、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞であることから、従来の雑多な細胞集団または外来遺伝子を導入したドーパミン産生ニューロンと比べて、安全性、生存率、ネットワーク形成能の面でPD等の神経変性疾患の移植治療に好ましいものである。Lrp4の発現を指標として獲得された細胞は、そのまま、またはin vitroで増殖させた後に移植に使用することができる(図6)。本発明のLrp4の発現を指標として選択されるドーパミン産生ニューロン前駆細胞は増殖中の前駆細胞であることから、脳内の最適な場所で分化成熟していく可能性、またin vivoにおいてさらに前駆細胞が増殖する可能性があることから、より長期的な治療効果が期待される。さらに、本方法により得られた本発明の細胞(群)は、分裂停止前の前駆細胞であることから、in vitroにおいて培地等の条件を選択することにより適当な段階まで分化させることも可能であり、種々の神経移植治療の材料としても好ましいものである。例えば、前述したように、Lrp4の発現を指標として選択された細胞について、さらに細胞分裂停止直後のマーカー(例えば、65B13)を指標とした選択を行うことにより、より移植の上では安全性の高い細胞を得ることもできる。
本発明の方法により得られたニューロン前駆細胞の移植では、1×10〜1×10個、さらに好ましくは5〜6×10個のニューロンを移植する。第1の方法としては、細胞の懸濁液を脳に移植する定位脳固定術(stereotaxic surgery)が挙げられる。また、ミクロ手術(microsurgery)により細胞を移植しても良い。ニューロン組織の移植方法については、Backlund等(Backlund et al.(1985)J.Neurosurg.62:169−73)、Lindvall等(Lindvall et al.(1987)Ann.Neurol.22:457−68)、Madrazo等(Madrazo et al.(1987)New Engl.J.Med.316:831−4)の方法を参照することができる。
さらに、本発明の細胞は、ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及び前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離、PD治療のターゲット探索、ドーパミン産生ニューロンの成熟過程の解明、並びに成熟を指標としたスクリーニング等にも利用することができる。
<遺伝子発現レベルの比較>
本発明の抗体を用いて得られた分裂停止前のドーパミン産生ニューロン前駆細胞は、該細胞において特異的に発現している遺伝子を単離する材料として使用することができる。さらに、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を分化、誘導、または増殖させた細胞に特異的に発現している遺伝子を調べ、単離することもできる。また、分化/誘導/増殖させた細胞と元の前駆細胞とにおいて発現レベルに差違のある遺伝子を調べることによりドーパミン産生ニューロンの生体内における分化に必要とされる遺伝子を調べることもできる。このような遺伝子はドーパミン産生ニューロンにおける何等かの欠陥が病因となっている疾病の治療対象候補となり得るので、当該遺伝子を決定し、単離することは非常に有用である。
本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞と該細胞から分化/誘導/増殖された細胞若しくはその他の細胞、または該分化/誘導/増殖された細胞とその他の細胞との間での遺伝子の発現レベルの比較は、慣用の細胞in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、RNAドットブロットハイブリダイゼーション、逆転写PCR、RNase保護アッセイ、DNAマイクロアレイハイブリダイゼーション、遺伝子発現の連続解析(SAGE;serial analysis of gene expression)(Velculescu et al.(1995)Science 270:484−7)、差し引きハイブリダイゼーション(subtractive hybridization)、代表差違分析(representation difference analysis;RDA)(Lisitsyn(1995)Trends Genet.11:303−7)等により行うことができる。
細胞in situハイブリダイゼーションでは、特定のRNA配列に特異的な標識プローブを用い細胞から調製した総RNAまたはpolyARNAに対してハイブリダイゼーションを行うことにより、個々の細胞におけるRNAのプロセッシング、輸送、細胞質への局在化が起こる場所等を調べることができる。また、RNAの大きさをゲル電気泳動等によりサイズ分画して決定することもできる。また、定量的な蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)及びデジタル画像顕微鏡を用いれば、RNA転写産物をin situで視覚的に捉えることも可能であり(Femino et al.(1998)Science 280:585−90)、本発明において利用することができる。
遺伝子発現の解析で逆転写PCRを用いた場合、特定遺伝子の発現を大まかに定量することができる。本方法では、1つのRNA転写産物の種々のアイソフォームを検出及び解析することも可能である。逆転写PCRにおいてはまず、エキソン特異性プライマーを用いた逆転写PCRを行い、予想された産物以外の増幅産物が検出された場合、それらを解析することにより選択的スプライシングにより生じるmRNAアイソフォームを同定することが可能である。例えば、Pykett et al.(1994)Hum.Mol.Genet.3:559−64等に記載の方法を参照することができる。特に大まかな発現パターンを迅速に解析することが求められる場合、本発明のPCRを利用した本方法は、その速さ、感度の高さ、簡便さの点からも望ましいものである。
DNAチップを使用することにより、遺伝子発現スクリーニングの能率を向上させることができる。ここで、DNAチップとは、ガラス等の担体表面上にオリゴヌクレオチドまたはDNAクローン等を高密度に固定した小型のアレイである。例えば、多重発現スクリーニングを行うためには、各目的遺伝子に対するcDNAクローンまたは該遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドをチップに対して固定化し、マイクロアレイを作製する。次に本発明のドーパミン特異的ニューロン前駆細胞、または該細胞より分化/誘導/増殖された細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素処理を行い、cDNAを得る。次に、得られたcDNA試料を蛍光タグ等のタグにより標識し、マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションを行う。その結果、総標識cDNA中、細胞内で活発に発現している遺伝子の割合が高くなり、あまり発現されていない遺伝子の割合は低くなる。即ち、標識cDNAとチップ上のcDNAクローンまたはオリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成を表す蛍光シグナルの強度は、標識cDNA内での各配列の発現の度合いを示すことなり、遺伝子発現の定量を可能成らしめる。
また、縮重PCRプライマーを用いた逆転写PCRを行うmRNAディファレンシャルディスプレイにより、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞、または該細胞から分化/誘導/増殖された細胞について多数の遺伝子の発現を同時に解析することもできる。まず、特定のmRNAのpolyA尾部に3’末端の1または2つの塩基を変更した修飾オリゴdTプライマーを準備し、本発明の前駆細胞または該細胞から分化/増殖された細胞、及び、発現を比較する対照細胞から単離した総RNAに対して逆転写酵素反応を行う(Liang et al.(1993)Nucleic Acids Res.21:3269−75)。変更した塩基が「G」であれば、polyA尾部の直前にCを持つmRNAを選択的に増幅することができ、また「CA」であれば、TGを直前に持つmRNAを増幅することができる。次に、第2のプライマーとして、10塩基程度の長さの任意の配列を有するものを用意し、修飾オリゴdTプライマー及び第2のプライマーを使用してPCR増幅反応を行う。増幅産物を泳動距離の長いポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、サイズ分画する。このような方法により、本発明の細胞と対照細胞とで各細胞に特異的に発現しているmRNA由来のcDNAは、一方の試料を泳動した場合にのみ検出されるバンドとして検出することができる。この方法では、同定されていない遺伝子の発現についても解析することができる。
SAGE分析は、多数の転写産物の発現を同時に検出することができ、また検出に特殊な装置を必要としない点で好ましい分析方法の一つである。まず、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞または該細胞から分化/誘導/増殖された細胞よりpolyARNAを慣用の方法により抽出する。次に、ビオチン化オリゴdTプライマーを用い、前記RNAをcDNAに変換し、4塩基認識制限酵素(アンカー用酵素;AE)で処理する。これにより、AE処理断片はその3’末端にビオチン基を含んだ形となる。次に、AE処理断片をストレプトアビジンに結合させる、結合されたcDNAを2画分に分け、それぞれの画分を別々の2本鎖オリゴヌクレオチドアダプター(リンカー)A及びBに連結する。このリンカーは、(1)アンカー用酵素の作用で生じる突出部の配列と相補的な配列を有する1本鎖突出部、(2)タグ用酵素(tagging enzyme;TE)となるIIS型制限酵素(認識部位より20bp以下の離れた定位置の切断を行う)の5’塩基認識配列、及び(3)PCR用特異的プライマーを構成するのに十分な追加配列より構成される。ここで、リンカーを連結したcDNAをタグ用酵素で切断することにより、リンカー結合型の状態でcDNA配列部分のみが短鎖配列タグとなる。次に、リンカーの異なる2種類のプールを互いに連結し、リンカーA及びBに特異的プライマーを使用してPCR増幅する。その結果、増幅産物はリンカーA及びBに結合した2つの隣接配列タグ(ダイタグ;ditag)を含む多様な配列の混在物として得られる。そこで、増幅産物をアンカー用酵素により処理し、遊離したダイタグ部分を通常の連結反応により鎖状に連結し、クローニングを行う。クローニングにより得られたクローンの塩基配列を決定することにより、一定長の連続ダイタグの読み出しを得ることができる。このようにしてクローンの塩基配列を決定し、配列タグの情報が得られれば、それぞれのタグに該当するmRNAの存在を同定することができる。
差し引きハイブリダイゼーションは、種々の組織または細胞間で発現の差違のある遺伝子のクローニングによく用いられる方法であるが、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞、またはそれから分化/誘導/増殖された細胞において特異的に発現している遺伝子をクローニングするのにも使用することができる。まず、本発明の前記細胞のうちの試験する細胞のDNA試料を調製する(以下、テストDNAと呼ぶ)。次に、比較する細胞のDNA(以下、ドライバーDNAと呼ぶ)を調製する。テストDNAとドライバーDNAとを逆に用いることもできる。いずれにせよ、テストDNAに存在し、ドライバーDNAに存在しない遺伝子の存在が検出される。次に、調製したテストDNA及び大過剰量のドライバーDNAを混合し、変性させ一本鎖DNAとした後にアニーリングさせる。アニーリング条件を調節することにより、ドライバーDNA中には存在しない特異的な配列をテストDNA由来のDNAのみからなる二本鎖DNAとして単離することができる。より詳細な方法については、Swaroop et al.(1991)Nucleic Acids Res.19:1954及びYasunaga et al.(1999)Nature Genet.21:363−9等を参照することができる。
RDA法は、PCRを利用した、ドライバーDNAに存在しないテストDNA中の配列を選択的に増幅することを可能とする方法であり、上述のその他の方法と同様に本発明において用いることができる。より詳細な手順については、Lisitsyn(1995)Trends Genet.11:303−7及びSchutte et al.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:5950−4を参照することができる。
以上のようにして検出、単離されたドーパミン産生ニューロン前駆細胞、または該細胞を分化、誘導、または増殖させた細胞に特異的な遺伝子を上述の各種公知の方法によりベクター等に挿入し、配列決定、発現解析を行うこともできる。
<前駆細胞の成熟を指標としたスクリーニング>
本発明により、本発明のドーパミン産生ニューロン前駆細胞に対し、被験物質を接触させる工程、及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を含む、スクリーニング方法が提供される。本方法によりスクリーニングされる化合物は、ドーパミン産生ニューロンの分化、増殖等を調節する機能を示すことから、ドーパミン産生ニューロンにおける何等かの欠陥が病因となっている疾病の治療対象候補となり得、有用と考えられる。
ここで、「被験物質」とはどのような化合物であってもよいが、例えば、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、合成ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)抽出液、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物等由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーが挙げられる。
細胞の分化や増殖は、被験物質と接触させない場合における細胞の状態と比較することにより検出することができる。細胞の分化や増殖は、顕微鏡下において形態学的な観察を行うこと、または、細胞で産生されるドーパミン等の物質を検出、定量して検出してもよい。
<Lrp4の発現領域解析>
Lrp4の発現制御領域は、Lrp4の遺伝子配列を利用してゲノムDNAから公知の方法によってクローニングすることができる。例えば、S1マッピング法のような転写開始点の特定方法(細胞工学 別冊8 新細胞工学実験プロトコール,東京大学医科学研究所制癌研究部編,秀潤社(1993)pp.362−374)が公知であり、利用できる。一般に、遺伝子の発現制御領域は、遺伝子の5’末端の15〜100bp、好ましくは30〜50bpをプローブDNAとして利用して、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることによりクローニングすることができる(本発明においては、配列番号:1または2の塩基全部またはその1部)。このようにして得られるクローンは、10kbp以上の5’非翻訳領域を含むものであるので、次にエキソヌクレアーゼ等により処理し短縮化または断片化する。最後に、短縮された発現制御領域の候補を含む配列部分をレポーター遺伝子を利用して、その発現の有無、強さ、制御等について評価し、Lrp4の発現制御領域の活性維持のための最小必要単位を決定することができる。
遺伝子の発現制御領域は、Neural Network等のプログラム(http://www.fruitfly.org./seq_tools/promoter.html;Reese et al.,Biocomputing:Proceedings of the 1996 Pacific Symposium,Hunter and Klein ed.,World Scientific Publishing Co.,Singapore,(1996))を用いて予測することもできる。さらに、発現制御領域の活性最小単位を予測するプログラム(http://biosci.cbs.umn.edu./software/proscan/promoterscan.htm;Prestridge(1995)J.Mol.Biol.249:923−32)も公知であり、用いることができる。
このようにして単離された、Lrp4遺伝子の発現領域は、in vivoで分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞特異的に所望の蛋白質を産生するのに利用することもできる。
<Lrp4に対するリガンド>
Lrp4ポリペプチドは膜貫通ドメインを有することから、天然において細胞膜中に埋め込まれた状態で存在すると考えられる。Lrp4は、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞で発現されていることから、前駆細胞の増殖制御やニューロンの分化、成熟に関与していることが考えられる。従って、Lrp4に対するアゴニストやアンタゴニスト等の機能を示す可能性があるリガンドは、ドーパミン産生ニューロンのin vivo、ex vivo及びin vitroにおける分化を制御するのに利用できる可能性がある。Lrp4ポリペプチドに対するリガンドの同定においては、まず、Lrp4ポリペプチドと候補化合物とを接触させ、結合の有無を検定する。この際、Lrp4ポリペプチドを担体に固定したり、細胞膜に埋めこまれた状態に発現させて用いることもできる。候補化合物としては特に制限はなく、遺伝子ライブラリーの発現産物、海洋生物由来の天然成分、各種細胞の抽出物、公知化合物及びペプチド、植物由来の天然成分、生体組織抽出物、微生物の培養上清、並びにファージディスプレイ法等によりランダムに製造されたペプチド群(J.Mol.Biol.222:301−10(1991))等が含まれる。また、結合の検出を容易にするために、候補化合物は標識しても良い。
<Lrp4の発現抑制>
本発明により、Lrp4が分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞で一過性に発現されることが明らかにされたことから、Lrp4が前駆細胞の増殖制御やニューロンの分化、成熟に関与していることが考えられた。従って、Lrp4遺伝子の発現を阻害するものは、ドーパミン産生ニューロンのin vivo、ex vivo及びin vitroにおける分化を制御するのに利用できる可能性がある。遺伝子の発現を阻害し得るものとして、例えば、アンチセンス、リボザイム及び2本鎖RNA(small interfering RNA;siRNA)が挙げられる。従って、本発明はこのようなアンチセンス、リボザイム及び2本鎖RNAを提供するものである。
アンチセンスが標的遺伝子の発現を抑制する機構としては、(1)3重鎖形成による転写開始阻害、(2)RNAポリメラーゼにより形成される局所的開状ループ構造部位とのハイブリッド形成による転写抑制、(3)合成中のRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、(4)イントロン−エキソン接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(5)スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(6)mRNAとのハイブリッド形成による、mRNAの細胞質への移行抑制、(7)キャッピング部位またはポリA付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、(8)翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、(9)リボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、(10)mRNA翻訳領域またはポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプペプチド鎖の伸長抑制、並びに(11)核酸と蛋白質の相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制が挙げられる(平島及び井上『新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現』日本生化学会編、東京化学同人、pp.319−347(1993))。
本発明のLrp4アンチセンス核酸は、上述の(1)〜(11)のどの機構により遺伝子発現を抑制する核酸であってもよく、即ち、発現を阻害する目的の遺伝子の翻訳領域のみならず、非翻訳領域の配列に対するアンチセンス配列を含むものであってもよい。アンチセンス核酸をコードするDNAは、その発現を可能とする適当な制御配列下に連結して使用され得る。アンチセンス核酸は、標的とする遺伝子の翻訳領域または非翻訳領域に対して完全に相補的である必要はなく、効果的に該遺伝子の発現を阻害するものであればよい。このようなアンチセンス核酸は、少なくとも15bp以上、好ましくは100bp以上、さらに好ましくは500bp以上であり通常3000bp以内、好ましくは2000bp以内、より好ましくは1000bp以内の鎖長を有し、標的遺伝子の転写産物の相補鎖に対して好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上同一である。このようなアンチセンス核酸は、Lrp4ポリヌクレオチドを基に、ホスホロチオネート法(Stein(1988)Nucleic Acids Res.16:3209−21)等により調製することができる。
リボザイムとは、RNAを構成成分とする触媒の総称であり、大きくラージリボザイム(large ribozyme)及びスモールリボザイム(small liboyme)に分類される。ラージリボザイムは、核酸のリン酸エステル結合を切断し、反応後に5’−リン酸と3’−ヒドロキシル基を反応部位に残す酵素である。ラージリボザイムは、さらに(1)グアノシンによる5’−スプライス部位でのトランスエステル化反応を行うグループIイントロンRNA、(2)自己スプライシングをラリアット構造を経る二段階反応で行うグループIIイントロンRNA、及び(3)加水分解反応によるtRNA前駆体を5’側で切断するリボヌクレアーゼPのRNA成分に分類される。それに対して、スモールリボザイムは、比較的小さな構造単位(40bp程度)であり、RNAを切断して、5’−ヒドロキシル基と2’−3’環状リン酸を生じさせる。スモールリボザイムには、ハンマーヘッド型(Koizumi et al.(1988)FEBS Lett.228:225)、ヘアピン型(Buzayan(1986)Nature 323:349;Kikuchi and Sasaki(1992)Nucleic Acids Res.19:6751;菊地洋(1992)化学と生物30:112)等のリボザイムが含まれる。リボザイムは、改変及び合成が容易になため多様な改良方法が公知であり、例えば、リボザイムの基質結合部を標的部位の近くのRNA配列と相補的となるように設計することにより、標的RNA中の塩基配列UC、UUまたはUAを認識して切断するハンマーヘッド型リボザイムを作ることができる(Koizumi et al.(1988)FEBS Lett.228:225;小泉誠及び大塚栄子(1990)蛋白質核酸酵素35:2191;Koizumi et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:7059)。ヘアピン型のリボザイムについても、公知の方法に従って設計、製造が可能である(Kikuchi and Sasaki(1992)Nucleic Acids Res.19:6751;菊地洋(1992)化学と生物30:112)。
本発明のアンチセンス核酸及びリボザイムは、細胞内における遺伝子の発現を制御するために、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルス由来のベクター、リポソーム等を利用した非ウイルスベクター、またはnaked DNAとしてex vivo法またはin vivo法により遺伝子治療に用いることもできる。
1998年に、線虫においてRNA同士が邪魔し合い働きを失う現象(RNA干渉)が観察された(Fire et al.(1998)Nature 391:806−11)。RNA干渉とは、二本鎖の人工RNAを細胞に導入することにより、同じ塩基配列を有するRNAが分解される現象である。その後の研究により、RNA干渉等のRNAサイレンシングの現象は、欠陥を持つmRNAの排除、並びにトランスポゾン、ウイルス等の寄生体に対する防御のための細胞機構であることが示唆されている。現在では、多くの遺伝子の発現を抑制するためのツールとして、二本鎖RNA(small interfering RNA;siRNA)が利用されており、病気の原因遺伝子等の発現抑制をsiRNAを用いて行うことにより病気を治療・予防する方法も検討されている。本発明のsiRNAは、Lrp4のmRNAの転写を阻害する限り、特に限定されない。通常、siRNAは、標的mRNAの配列に対するセンス鎖及びアンチセンス鎖の組合せであり、少なくとも10個から標的mRNAと同じ個数までのヌクレオチド長を有する。好ましくは、15〜75個、より好ましくは18〜50個、さらに好ましくは20〜25個のヌクレオチド長である。
Lrp4発現を抑制するために、siRNAは公知の方法により細胞に導入することができる。例えば、siRNAを構成する二本のRNA鎖を、一本鎖上にコードするDNAを設計し、該DNAを発現ベクターに組み込み、細胞を該発現ベクターで形質転換し、siRNAをヘアピン構造を有する二本鎖RNAとして細胞内で発現させることができる。トランスフェクションにより持続的にsiRNAを産生するプラスミド発現ベクターも設計されている(例えば、RNAi−Ready pSIREN Vector、RNAi−Ready pSIREN−RetroQ Vector(BD Biosciences Clontech))。
siRNAの塩基配列は、例えば、Ambion website(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)のコンピュータープログラムを用いて設計することができる。機能的siRNAをスクリーニングするためのキット(例えば、BD Knockout RNAi System(BD Biosciences Clontech))等も市販されており利用可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、Lrp4の構造を模式的に示す図である。TM:膜貫通ドメイン、FRI:frizzeledドメイン、LDLa:LDLレセプタードメイン、SR:スカベンジャーレセプタードメイン、Pro:セリンプロテアーゼドメイン。
図2は、Lrp4及びShhのmRNAのE12.5マウス後脳腹側及び脊髄における発現をin situハイブリダイゼーション法により解析した結果を示す写真である。
図3は、Lrp4、Shh、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、及びNCAMのmRNAのE12.5マウス中脳腹側における発現をin situハイブリダイゼーション法により解析した結果を示す写真である。
図4は、Lrp4の中脳における発現パターンを模式的に示す図である。VZ:ventricular zone、ML:mantle layer。
図5は、ドーパミン産生ニューロンの発生から成熟までの間におけるLrp4、65B13、TH、NCAM及びDATの発現時期を模式的に示す図である。
図6は、抗Lrp4抗体を用いたドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞の分離及び活用法を示す模式図である。
図7は、Lrp4のmRNAのE12.5マウス中枢神経系における発現をin situハイブリダイゼーション法により解析した結果を示す写真である。A:矢状面;B:Aの枠内部分の拡大写真;C:Aの赤線位置での断面。D:Lrp4、Shh及びチロシンヒドロキシラーゼ(TH)のmRNAのE12.5マウス中脳腹側における発現を示す。
図8は、ES細胞からのin vitroドーパミン産生ニューロン分化系におけるLrp4の発現について示す。上は、ES細胞からのドーパミン産生ニューロンの分化を模式的に示す図である。下の写真は、SDIA法によりES細胞よりドーパミン産生ニューロンを分化誘導し、時間を追ってLrp4の発現をRT−PCR法で調べた結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味でも限定するものではない。
1.ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子の単離及び配列解析
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的な遺伝子を単離するために、E12.5マウス中脳腹側領域を背腹方向にさらに二つの領域に切り分けて、ドーパミン産生ニューロンを含む最も腹側の領域に特異的に発現する遺伝子をサブトラクション(N−RDA)法により同定した。単離した断片の一つはLrp4/CorinをコードするcDNA断片であった。Lrp4はII型膜貫通蛋白質をコードしている(図1)。
(1)N−RDA法
(1)−1.アダプターの調製
下記のオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、100μMに調製した。

(1)−2.cDNA合成
日本SLCより入手したマウス12.5日胚より中脳腹側を切り出し、さらに背腹方向に2つの領域に切り分けた。RNeasy mini kit(Qiagen)を用いて全RNAを調製し、cDNA synthesis kit(TAKARA)を用いて二本鎖cDNAを合成した。制限酵素RsaIで消化したのち、ad2を付加し、ad2Sをプライマーとして、15サイクルのPCRでcDNAを増幅した。増幅条件は72℃で5分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を15サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。N−RDAのPCRはすべて以下の反応液組成で行った。
10×ExTaq 5μl
2.5mM dNTP 4μl
ExTaq 0.25μl
100μM primer 0.5μl
cDNA 2μl
蒸留水 38.25μl
(1)−3.Driverの作製
ad2Sで増幅したcDNAをさらに5サイクルのPCRで増幅した。増幅条件は94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を5サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。Qiaquick PCR purification kit(Qiagen)を用いてcDNAを精製し、RsaI消化した。1回のサブトラクションに3μgずつ使用した。
(1)−4.Testerの作製
ad2Sで増幅したcDNAをさらに5サイクルのPCRで増幅した。増幅条件は94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を5サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。Qiaquick PCR purification kit(Qiagen)を用いてcDNAを精製し、RsaI消化した。60ngのRsaI消化cDNAにad3を付加した。
(1)−5.サブトラクション1回目
上記3及び4で作製したTesterおよびDriverを混合し、エタノール沈殿した後に、1xPCR buffer 1μlに溶解した。98℃5分の後、1xPCR buffer+1M NaCl 1μlを加えた。さらに98℃5分の後、68℃で16時間ハイブリダイズさせた。
ハイブリダイズさせたcDNAをad3Sをプライマーとして10サイクルのPCRで増幅した後(72℃で5分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を10サイクル行った)、Mung Bean Nuclease(TAKARA)で消化し、Qiaquick PCR purification kitで精製した。さらに13サイクルのPCRで増幅した。増幅条件は94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を13サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。
(1)−6.均一化
サブトラクション1回目で増幅したcDNA 8ngに2xPCR buffer 1μlを加えた。98℃5分の後、1xPCR buffer+1M NaCl 2μlを加えた。さらに98℃5分の後、68℃で16時間ハイブリダイズさせた。
ハイブリダイズさせたcDNAをRsaIで消化し、Qiaquick PCR purification kitで精製した。これをad3Sをプライマーとして11サイクルのPCRで増幅した後(94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を11サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした)RsaIで消化し、ad4を付加した。
(1)−7.サブトラクション2回目
上記6でad4を付加したcDNA 20ngをTesterとして、上記3のDriverと混合し、さらに、上記5と同様の方法でサブトラクションを行った。最終的にRsaI消化したcDNAにad5を付加した。
(1)−8.サブトラクション3回目
上記7でad5を付加したcDNA 2ngをTesterとして、上記3のDriverと混合し、さらに、上記5と同様の方法でサブトラクションを行った。最終的にRsaI消化したcDNAにad13を付加した。
(1)−9.サブトラクション4回目
上記8でad13を付加したcDNA 2ngをTesterとして、上記3のDriverと混合し、以下、上記5と同様の方法でサブトラクションを行った。増幅したcDNAをpCRII(Invitrogen)にクローニングし、ABI3100シーケンスアナライザーを用いて塩基配列を解析した。
2.Lrp4遺伝子の発現解析
次に、Lrp4遺伝子を用いて以下のプロトコールによりin situハイブリダイゼーションによる発現解析を行った。
まず、マウス12.5日胚をOCTで包埋し、厚さ16μmの新鮮凍結切片を作製した。スライドガラス上で乾燥させた後に4%PFAで室温30分間固定した。PBSで洗浄した後、ハイブリダイゼーション(1μg/mlDIG化RNAプローブ、50%ホルムアミド、5xSSC,1%SDS,50μg/ml yeast RNA,50μg/ml Heparin)を65度で40時間行った。その後、洗浄(50%ホルムアミド、5xSSC,1%SDS)を65度で行い、RNase処理(5μg/ml RNase)を室温5分間行った。0.2xSSCで65度の洗浄、1xTBSTで室温の洗浄ののち、ブロッキング(Blocking reagent:Roche)を行った。アルカリフォスファターゼ標識抗DIG抗体(DAKO)を反応させ、洗浄(1xTBST、2mM Levamisole)の後、NBT/BCIP(DAKO)を基質として発色させた。
in situハイブリダイゼーションによる発現解析の結果、ドーパミン産生ニューロンの発生する時期であるE12.5で、Lrp4は中脳から後脳、脊髄にかけての腹側中心部に特異的発現していることが示された。後脳から脊髄にかけては、Shhと同様の発現パターンを示し、オーガナイザー領域である底板(floor plate)に特異的であることが明らかになった(図2及び7)。中脳ではShh発現領域の中でもより中心部にのみ発現が見られた(図3及び7)。
ニューロンの成熟マーカーであるNCAMと比較した結果、Lrp4発現細胞はNCAM陰性の脳室領域(Ventricular Zone(VZ))内の増殖前駆細胞であった。さらにドーパミンニューロンのマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase;TH)の発現と比較すると、THは外套層(mantle layer(ML))にのみ発現しているので、同一の細胞で両者の発現が認められることはないものの、背−腹軸方向での発現領域は完全に一致していた(図3及び7)。一般に神経管(neural tube)内の神経細胞は、まずVZ内で増殖し、分化開始とともに分裂を停止し、その後すぐ外側のMLに移動したのちに成熟することが知られている。従って、ドーパミン産生ニューロンの前駆細胞は、TH発現領域のすぐ内側のVZ内で増殖し、分裂停止後に外側に移動してからTHを発現すると考えられる。即ち、Lrp4は中脳ではドーパミン産生ニューロンの前駆細胞に特異的に発現すると考えられる(図4及び5)。
3.ES細胞より分化誘導したドーパミン産生ニューロンにおけるLrp4の発現
次にES細胞をin vitroでドーパミン産生ニューロンに分化誘導させた場合にLrp4が発現するかどうか検討した。
まず、SDIA法(Kawasaki et.al.(2000)Neuron 28(1):31−40)によりES細胞よりドーパミンニューロンへの分化誘導を行った(図8上参照)。誘導後4、6、8、10、12日後にそれぞれ細胞を回収し、RNeasy mini kit(Qiagen)を用いてtotal RNAを回収し、RT−PCRを行った。RT−PCRにおいては、最初に1μgのtotal RNAに対して、RNA PCR kit(TaKaRa)を用いてcDNA合成を行った。このうち10ng、1ng、0.1ng相当分のcDNAを鋳型に用いて以下の反応系でPCRを行った。
10×ExTaq 2μl
2.5mM dNTP 1.6μl
ExTaq 0.1μl
100μMプライマー 各0.2μl
cDNA 1μl
蒸留水 14.9μl
94℃で2分インキュベートした後、94℃で30秒、65℃で30秒、及び72℃で2分の反応を35サイクル行い、最後に72℃で2分インキュベートした。
以下の配列のプライマーを使用した。


そして、RT−PCRによる発現解析の結果、Lrp4はES細胞(CCE)およびストローマ細胞(PA6)には発現していないが、分化誘導の結果、THと同様に4日目から発現が誘導されることが明らかになった(図8)。従って、胎児中脳由来のドーパミンニューロン増殖前駆細胞だけでなく、in vitroでES細胞より分化誘導したドーパミンニューロン増殖前駆細胞を分離する際にもLrp4はマーカーとして有用である。
【産業上の利用の可能性】
本発明により、分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞に特異的、且つ一過性に発現する遺伝子Lrp4が同定された。細胞における該Lrp4の発現を指標とすることにより、安全面、生存率及びネットワーク形成能の面でもパーキンソン病を含む神経変性疾患に対する移植治療に適した細胞を選択することが可能となった。また、分裂停止前のニューロン増殖前駆細胞を選択的に得られるため、成熟した細胞の求められる治療等において使用する場合であっても、in vitroで最適な状態へと容易に分化させることができる。さらに、本発明の遺伝子を用いて得られるドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞により、該細胞に特異的に発現している遺伝子を単離することが可能となった。該細胞は、パーキンソン病等の神経変性疾患に対する医薬を開発する上でも有用と考えられる。分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞という、ニューロン形成における初期の前駆細胞は、さらに、ニューロンの成熟過程、即ち、成熟過程に関与する種々の因子を明らかにするのに役立つ。このような因子の解明は、神経変性疾患の治療に大きく貢献することが予期される。さらに、該細胞の成熟を指標として、その過程を調節(阻害または促進)するような物質のスクリーニングに用いることもできる。
【配列表】



































【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(5)の塩基配列から選択される配列を含むドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞マーカーポリヌクレオチドプローブ。
(1)配列番号:1または2の塩基配列に相補的な塩基配列
(2)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列
(3)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠く配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列
(4)配列番号:1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
(5)上記(1)〜(4)の配列中の少なくとも連続した15塩基を含む塩基配列
【請求項2】
以下の(1)〜(6)から選択されるポリペプチドに対する抗体。
(1)配列番号:1または2の塩基配列によりコードされるポリペプチド
(2)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(3)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において膜貫通領域を欠くアミノ酸配列からなるポリペプチド
(4)配列番号:3または4記載のアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(5)配列番号:1または2の塩基配列に相補的な配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるポリペプチド
(6)上記(1)〜(5)のポリペプチドの断片であり、少なくとも8アミノ酸残基を有するポリペプチド
【請求項3】
ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法であって、請求項1記載のポリヌクレオチドとドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
【請求項4】
ドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法であって、請求項2記載の抗体とドーパミン産生ニューロン前駆細胞を含むと考えられる細胞試料とを接触させる工程を含む方法。
【請求項5】
以下の工程を含むドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞を選択する方法。
(1)請求項3または4記載のドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択する方法によりドーパミン産生ニューロン前駆細胞を選択する工程
(2)上記(1)において選択された前駆細胞を培養する工程
(3)上記(2)において培養された前駆細胞を、分裂停止後のニューロンマーカーを用いてスクリーニングする工程
【請求項6】
請求項3乃至5記載の方法により選択された分裂停止前のドーパミン産生ニューロン増殖前駆細胞。
【請求項7】
ドーパミン産生ニューロン前駆細胞特異的遺伝子及び前駆細胞からドーパミン産生ニューロンへの各成熟段階に特異的な遺伝子の単離方法であって、請求項6記載の前駆細胞または該前駆細胞から分化、誘導若しくは増殖された細胞を用い、該細胞において特異的に発現している遺伝子を検出、単離する工程を含む方法。
【請求項8】
成熟を指標としたスクリーニング方法であり、請求項6記載の前駆細胞に対し、被験物質を接触させる工程、及び接触による前駆細胞の分化または増殖を検出する工程を含む方法。

【国際公開番号】WO2004/065599
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508128(P2005−508128)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000629
【国際出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】