説明

MCM−22型モレキュラーシーブの製造方法

MCM−22型のモレキュラーシーブの製造方法であって、(a)少なくとも1つの4価元素のイオン源と、少なくとも1つのアルキル金属水酸化物源と、少なくとも1つの構造規制剤と、水と、任意に少なくとも1つの3価イオン源とからなり、モル比で表す組成がY:X=10から無限大、HO:Si=1から20、OH:Si=0.001から2、M:Si=0.001から2、R:Si=0.001から0.34(Yは4価元素、Xは3価元素、Mはアルキル金属)で表される混合物を調製するステップと、(b)混合物を、温度範囲が160℃から250℃の結晶化条件下で72時間未満処理し、モレキュラーシーブを生成させるステップと、(c)モレキュラーシーブを回収するステップとを備える方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はMCM−22型モレキュラーシーブの製造方法と、このMCM−22型モレキュラーシーブを用いた炭化水素転換反応に関する。
【背景技術】
【0002】
天然および合成モレキュラーシーブは、種々の炭化水素の転換反応において触媒作用を示すことが知られている。ある種のモレキュラーシーブ(例えばゼオライト、AlPO、あるいはメソポーラスな物質)は、多孔質で整列した結晶性のケイ酸アルミニウム塩であり、X線回折(XRD)により決定される明確な結晶構造を有する。結晶性モレキュラーシーブの内部には、多数のチャネルあるいは孔で連通した多数のキャビティがある。特定のモレキュラーシーブでは、これらのキャビティや孔は寸法が一定である。これらの孔の寸法は、特定の寸法の分子を受容して吸着する一方、これより寸法が大きい分子を受け入れないため、モレキュラーシーブは「分子篩」としても知られており、工業的な種々の用途に用いられている。
【0003】
このような天然および合成モレキュラーシーブには、種々の正イオンを含有する結晶性ケイ酸塩が含まれる。このようなケイ酸塩は、SiOと、周期律表(IUPAC 1997)第IIIA族元素(例えばAlO)とで構成される酸化物の強固な3次元骨格として表される。四面体構造は酸素原子を共有して架橋されており、全ての第IIIA族元素(例えばアルミニウム)とケイ素原子との比率は1:2である。
第IIIA族元素(例えばアルミニウム)を含有する四面体構造中のイオン原子価は、結晶中に例えばプロトン、アルカリ金属やアルカリ土類金属カチオンを内包することでバランスする。これは、第IIIA族元素(例えばアルミニウム)と、H、Ca2+/2、Sr2+/2、Na、K、Liなどの種々のカチオンとの比が1:1となることに表われている。
【0004】
触媒に用いられるモレキュラーシーブには、天然由来の、あるいは合成の結晶性モレキュラーシーブが含まれる。このようなゼオライトの例には、大孔径ゼオライト、中間径ゼオライト、小径ゼオライトが含まれる。これらのゼオライトとそのアイソタイプは、本願に参照として組み入れられるW.H.Meier、D.H.OlsonとCh.Baerlocherらの“Atlas of Zeolite Framework Types”(Elsevier、第5版、2001年)に記載されている。
大孔径ゼオライトは一般に、孔径が少なくとも約7Åであり、LTL,VFI,MAZ,FAU,OFF,*BEA,とMOR型骨格のゼオライトが含まれる(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature)。大孔径ゼオライトの例は、マザイト(mazzite)、オフレタイト(offretite)、ゼオライトL、VPI−5、ゼオライトY、ゼオライトX、オメガ、およびベータである。
一般に中間径ゼオライトは孔径が約5Åから約7Å未満であり、例えばMFI、MEL、EUO、MTT、MFS、AEL、AFO、HEU、FER、MWWと、TON型骨格のゼオライトが含まれる(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature)。中間径ゼオライトの例には、ZSM−5、ZSM−1l、ZSM−22、MCM−22、シリカライト1、シリカライト2も含まれる。
一般に小径ゼオライトは孔径が約3Åから約5.0Å未満であり、例えば、CHA、ERI、KPI、LEV、SODと、LTA型骨格のゼオライトが含まれる(IUPAC Commission of Zeolite Nomenclature)。小径ゼオライトの例には、ZK−4、ZSM−2、SAPO−34、SAPO−35、ZK−14、SAPO−42、ZK−21、ZK−22、ZK−5、ZK−20、ゼオライトA、チャバザイト(chabazite)、ゼオライトT、グメリナイト(gmelinite)、ALPO−17、およびクリノプチロライト(clinoptilolite)などが含まれる。
【0005】
米国特許第4439409号は、PSH−3と呼ばれる物質の結晶性モレキュラーシーブ組成物と、その製造方法を開示している。この製造方法では、ヘキサメチレンイミンと、MCM−56(米国特許第5362697号)の合成において構造規制剤として作用する有機物質とを含む水熱反応混合物を用いている。ヘキサメチレンイミンはまた、結晶性モレキュラーシーブのMCM−22(米国特許第4954325号)とMCM−49(米国特許第5236575号)の合成に用いられることが開示されている。
ゼオライトSSZ−25(米国特許第4826667号)と呼ばれるモレキュラーシーブ組成物は、アダマンタン4級アンモニウムイオンを含む水熱反応混合物から合成される。米国特許第6077498号には、ITQ−1と呼ばれる結晶性モレキュラーシーブ組成物と、この組成物を1または複数の有機物添加剤を含む水熱反応混合物から合成する方法を開示している。
【0006】
ここで用いる「MCM−22型物質」(あるいは「MCM−22の物質」、あるいは「MCM−22型のモレキュラーシーブ」)という用語には、1つ以上の下記のモレキュラーシーブが含まれる。
(i)共通の一次結晶構成単位セルで構成されるモレキュラーシーブであって、単位セルがMWW骨格トポロジーを有するモレキュラーシーブ。(単位セルは原子の立体的配列であり、三次元空間に置かれたとき結晶構造を形成する。このような結晶構造は「Atlas of Zeolite Framework Types(15版、2001年)」に開示されており、本願に参照として組み込まれる。)
(ii)共通の二次構成単位で構成されるモレキュラーシーブであって、MWW骨格トポロジーの単位セルを二次元に置いたとき単位セル1つ分の厚みの単層となり、好ましくは厚みがc−単位セル1つ分であるモレキュラーシーブ。
(iii)共通の二次構成単位で構成される1以上の単位セル厚みの層からなるモレキュラーシーブであって、単位セル厚みの単層が少なくとも2層積み重なるか、充填されるか、結合されて構成されているモレキュラーシーブ。このような二次構成単位の積み重なりは、規則的であっても、不規則であっても、ランダムであっても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
(iv)MWW骨格トポロジーを有する単位セルが、規則的またはランダムに、二次元的または三次元的に組み合わされて構成されたモレキュラーシーブ。
【0007】
MCM−22型物質は、格子面間隔(d−spacing)の最大が2.4±0.25, 3.57±0.07、および3.42±0.07Å(焼成された状態、あるいは合成後未精製の状態で測定)にあるX線回折パターンを有することで特徴付けられる。MCM−22型物質はまた、格子面間隔の最大が12.4±0.25, 6.9±0.015、3.57±0.07Å、および3.42±0.07Å(焼成された状態、あるいは未精製の状態で測定)にあるX線回折パターンを有することで特徴付けられる。
モレキュラーシーブの分析に用いられるX線回折のデータは、銅のK−α二重線を入射放射線として用いる標準的方法により、シンチレーションカウンターとコンピュータを備えるX線回折装置を用いて得ることができる。
MCM−22型物質に属する物質には、MCM−22(米国特許第4954325号に開示されている)、PSH−3(米国特許第4439409号に開示されている)、SSZ−25(米国特許第4826667号に開示されている)、ERB−1(欧州特許第0293032号に開示されている)、ITQ−1(米国特許第6077498号に開示されている)、ITQ−2(国際公開パンフレットWO97/17290に開示されている)、ITQ−30(国際公開パンフレットWO2005/118476に開示されている)、MCM−36(米国特許第5250277号に開示されている)、MCM−49(米国特許第5236575号に開示されている)、MCM−56(米国特許第5362697号に開示されている)が含まれる。これらの特許文献は本願に参照として組み込まれる。
【0008】
従来のモルデナイトなどの大孔径ゼオライトのアルキル化触媒との比較において、上記のMCM−22型のモレキュラーシーブは、12員環の表面ポケットを有し、この表面ポケットがモレキュラーシーブの内部にある10員環の内部孔と連通しない点で区別される。
【0009】
IZA−SCによりMWWトポロジーに分類されるゼオライト物質は、10員環と12員環の2つの孔システムを有する多層の物質である。前記のAtlas of Zeolite Framework Typesはこの同一のトポロジーを有する物質を5つの異なる名称に分類している。これらは、MCM−22、ERB−1、ITQ−1、PSH−3、およびSSZ−25である。
【0010】
MCM−22型のモレキュラーシーブは、種々の炭化水素転換反応に用いることができる。MCM−22型のモレキュラーシーブの例は、MCM−22、MCM−49、MCM−56、ITQ−1、PSH−3、SSZ− 25、およびERB−1である。これらのモレキュラーシーブは芳香族のアルキル化に用いることができる。
例えば、米国特許第6936744号には、モノアルキル化芳香族化合物、特にクメンを製造するための方法であって、ポリアルキル化芳香族化合物と、アルキル化可能な芳香族化合物とを、一部が液相の状態でアルキル転移触媒と接触させて、モノアルキル化芳香族化合物を生成させるステップを備え、アルキル転移触媒が少なくとも2つの異なる結晶性モレキュラーシーブから成り、このモレキュラーシーブはゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト、およびX線回折パターンの格子面間隔の最大が12.4±0.25,6.9±0.15,3.57±0.07,および3.42±0.07Åに表れる物質から選択される方法が開示されている。
【0011】
MCM−22、MCM−49、およびMCM−56を含むMCM−22型のモレキュラーシーブは炭化水素の転換反応において、種々の用途に用いられる。しかしこれらのモレキュラーシーブは高価であり、また製造に時間を要する。このため、生産性の高いMCM−22型のモレキュラーシーブ、特にMCM−22の製造方法が必要とされている。本願発明人らは、MCM−22型のモレキュラーシーブを製造する際の配合処方と結晶化条件を改良することにより、生産性を改善できることを見出した。この改良により結晶化時間が短縮され、原料の使用量が削減され、および/または生産性が向上する結果、製造コストが低下する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
ひとつの実施形態では、この発明はMCM−22型のモレキュラーシーブの製造方法に関する。この方法は、
(a)少なくとも1つの4価イオン源と、少なくとも1つのアルキル金属水酸化物源と、少なくとも1つの構造規制剤(R)と、水と、任意に少なくとも1つの3価イオン源とからなり、モル比で表す組成が下記で表される混合物を調製するステップと、
Y:X = 10から無限大
O:Y = 1から20
OH:Y = 0.001から2
:Y = 0.001から2
R:Y = 0.001から0.34
(Yは4価元素、Xは3価元素、Mはアルキル金属)
(b)前記混合物を、温度範囲が約160℃から約250℃の結晶化条件下で72時間未満処理し、前記モレキュラーシーブを生成させるステップと、
(c)前記モレキュラーシーブを回収するステップとを備える。
【0013】
別の実施形態では、この発明はMCM−22型のモレキュラーシーブを結晶化させる方法に関する。この方法は、
(a)少なくとも1つの4価イオン源と、少なくとも1つのアルキル金属水酸化物と、少なくとも1つの構造規制剤(R)と、水と、任意に少なくとも1つの3価イオン源とからなり、モル比で表す組成が下記で表される混合物を調製するステップと、
Y:X = 10から無限大
O:Y = 1から20
OH:Y = 0.001から2
:Y = 0.001から2
R:Y = 0.001から0.34
(Yは4価元素、Xは3価元素、Mはアルキル金属)
(b)前記混合物を、温度範囲が約160℃から約250℃で、重量時間生産量が少なくとも0.001時間−1の結晶化条件下で72時間未満処理し、前記モレキュラーシーブを生成させるステップとを備える。
【0014】
また別の実施形態では、この発明は以下の製造方法で製造されたMCM−22型のモレキュラーシーブに関する。この製造方法は、
(a)少なくとも1つの4価元素源と、少なくとも1つのアルキル金属水酸化物と、少なくとも1つの構造規制剤(R)と、水と、任意に少なくとも1つの3価元素源とからなり、モル比で表す組成が下記で表される混合物を調製するステップと、
Y:X = 10から無限大
O:Y = 1から20
OH:Y = 0.001から2
:Y = 0.001から2
R:Y = 0.001から0.34
(Yは4価元素、Xは3価元素、Mはアルキル金属)
(b)前記混合物を、温度範囲が約165℃から約250℃で、重量時間生産量が少なくとも0.001時間−1の結晶化条件下で72時間未満処理し、前記モレキュラーシーブを生成させるステップとを備える。
【0015】
別の実施形態では、この発明は、炭化水素の転換反応に関する。この反応は、
(a)炭化水素原料を、前記のこの発明の方法または以下説明する方法で製造されたMCM−22型のモレキュラーシーブに転換条件下で接触させて製品を生成させるステップと、
(b)前記製品を取り出すステップとを備える。
【0016】
この発明の種々の側面が、以下の詳細な説明と図面、および請求項により明らかになろう.
【0017】
本願に引用した全ての特許、特許出願、試験方法、先行文献、記事、刊行物、マニュアル、その他の文献は、それが許される法域において、本願と矛盾しない範囲で本願に参照として引用される。
【0018】
本願に数値の上限と下限が記載されている場合、全ての下限と上限の組合せが考慮される。
【0019】
本願で「骨格タイプ」というときは、「Atlas of Zeolite Framework Types」(Ch. Baerlocher、 W.H.Meier、D.H.Olson著、Elsevier社、第4版、2001年)に記載されている意味で用いる。
【0020】
MCM−22、MCM―49、およびMCM―56は、X線回折パターンにより互いに,あるいは他の結晶性物質と区別される。
【0021】
この発明のX線回折データは、ゲルマニウム半導体の検出器を備え、銅K−αを用いるScintag回折システムにより採取される。X線回折データは、2シータ(2θ)が0.02度で、各ステップの計測時間が10秒のステップスキャニングで記録される。ここで、シータ(θ)はブラッグ角である。内面格子間隔dは、Å単位で計算した。相対線強度I/Ioは、バックグラウンドに対し最も強い線の1/100単位で表し、プロフィールフィッティング法(または二次導関数)を用いて求めた。
線強度の、Lorentz効果および分極効果に対する補正は行なわなかった。
相対線強度は、VS=非常に強い(60から100)、S=強い(40から60)、M=中間(20から40)、およびW=弱い(0から20)で表した。なお、1本の線として表記される回折データでも、たとえば結晶相変化が相違する場合などに、複数の線が一部または全部重複したものである場合がある。
一般に、結晶相変化には、結晶構造の変化を伴わない単位セル定数の軽微な変化、および/または結晶の対称性の変化が含まれる。これらの軽微な効果は、相対強度の変化を含め、カチオン含有量の違い、骨格組成の違い、孔充填の程度や充填物の性質の違い、あるいは、熱および/または水熱反応の履歴の違いによっても生じる。他の回折パターンの違いは、物質の明白な相違を示し、MCM−22の場合には、他の類似の物質、例えばMCM―49、MCM―56、およびPSH―3との相違を示す。
【0022】
この発明のすべての結晶性物質は特有のX線回折パターンを有する。ナトリウムや他のカチオンは、実質的に同一のパターンを示し、内面格子間隔の軽微なシフトや相対強度の軽微な変化を伴う。他の軽微な変化は、特定のサンプルのYとX(例えば珪素とアルミニウム)の比、あるいは熱処理(例えば焼成)の程度の違いにより生じる。
【0023】
<公知のMCM−22>
公知のMCM−22結晶性物質は、モル比がX:(n)YOの組成を有する。ここで、Xはアルミニウム、ホウ素、鉄および/またはガリウムなどの4価元素であり、好ましくはアルミニウムである。Yはケイ素および/またはゲルマニウムなどの3価元素であり、好ましくはケイ素である。nは少なくとも約10であり、通常約10から約150、好ましくは約10から約60、より好ましくは約20から約40である。
未精製の状態で無水結晶を基準としたとき、この結晶性物質はnモルのYOに対し以下の式で表される。
(0.005〜0.l)MO:(l〜4)R:X:nYO
ここでMはアルカリまたはアルカリ土類金属、Rは有機基である。MとRは、合成時に用いられる物質に由来し、以下詳しく説明する後処理方法により容易に除去できる。
【0024】
焼成された状態では、公知のMCM−22結晶性物質は、表1に示すX線回折パターンにより他の公知の結晶性物質と区別される。
【表1】

詳しくは、表2に示す回折線で区別される。
【表2】

より詳しくは、表3に示す回折線で区別される。
【表3】

【0025】
この発明のMCM−22型のモレキュラーシーブ組成物は、未精製の物質のX線回折パターンにおいて、26.6から29度(2θ)の間に少なくとももう1つのピークを有する点が特徴である。この例として、比較例と実施例1のX線回折パターンを図1と図2に示す。
【0026】
米国特許第4954325号に開示された方法で製造されたMCM−22型のモレキュラーシーブのSEM像を図5に示す。米国特許第4954325号の方法で製造されたMCM−22型のモレキュラーシーブは、薄層で比較的不明瞭な六角板状のモルフォロジーを示し、小片の平均径は約1μm未満である。この発明に係るMCM−22型のモレキュラーシーブのSEM像を図6に示す。この発明のMCM−22型モレキュラーシーブ(図6)は、薄層で、図5のものより明瞭な六角板状のモルフォロジーを示し、実質的に同等の平均径を有する。
しかし、この発明のMCM−22の薄片は、米国特許第4954325号の方法で製造されたMCM−22よりも厚みが大きい。
【0027】
<公知のMCM−49>
公知のMCM−49結晶性物質は、モル比がX:(n)YOの組成を有する。ここで、Xはアルミニウム、ホウ素、鉄および/またはガリウムなどの4価元素であり、好ましくはアルミニウムである。Yはケイ素および/またはゲルマニウムなどの3価元素であり、好ましくはケイ素である。nは約35未満であり、例えば2から約35未満、通常10から約35未満、好ましくは15から約31である。
未精製の状態で無水結晶を基準としたとき、この結晶性物質はnモルのYOに対し以下の式で表される。
(0.1〜0.6)MO:(l〜4)R: X:nYO
ここでMはアルカリまたはアルカリ土類金属、Rは有機基である。MとRは、合成時に用いられる物質に由来し、以下詳しく説明する後処理方法により容易に除去できる。
【0028】
焼成された状態では、公知のMCM−49結晶性物質は、表4に示すX線回折パターンにより他の公知の結晶性物質と区別される。
【表4】

【0029】
公知のMCM−49の場合、13.15±0.26ÅのX線回折ピークは、12.49±0.24ÅのX線回折ピークから完全に分離しておらず、ショルダーが認められる。このため13.15±0.26Åのピークの正確な強度と位置を決めることは難しい。
【0030】
この発明における公知のMCM−49結晶性物質は、焼成された状態では単結晶相に変化し、不純物結晶相をほとんど、あるいは全く含まず、公知のMCM−22とは容易に区別できないが、他の公知の結晶性物質とは区別できるX線回折パターンを示す。焼成された状態の公知のMCM−49は、表5に示す回折線を示す。
【表5】

【0031】
<水熱反応混合物の配合処方>
合成ゼオライトは、必要な酸化物を含む、水性の水熱反応混合物(または合成混合物/合成ゲル)から調製される。所望の構造のゼオライトを合成するために、構造規制剤が水熱反応混合物に含まれている。
構造規制剤の使用について、「Zeolites、Vol. 3、1983年10月、282−291ページ」のLokらの「The Role of Organic Molecules in Molecular Sieve Synthesis」と題する記事に記載されている。
【0032】
水熱反応混合物の各成分を混合した後、水熱反応混合物は適切な結晶化条件下におかれる。この結晶化条件には、好ましくは撹拌しながら、水熱反応混合物を昇温することが含まれる。水熱反応混合物を室温で熟成することが好ましい場合もある。
【0033】
水熱反応混合物の結晶化が終了したら、結晶生成物は水熱反応混合物、特に水熱反応混合物の液状成分から回収される。この回収操作には、結晶を濾別し、この結晶を水洗する操作が含まれる。
しかし、結晶から水熱反応混合物残渣を完全に除去するために、高温、例えば500℃で、好ましくは酸素の存在下で焼成する。この焼成により、結晶から水が除去されるだけでなく、イオン交換するサイトとなるであろう結晶の孔を塞いでいる有機物の構造規制剤が、分解および/または酸化される。
【0034】
MCM−22型のモレキュラーシーブは、例えばナトリウムやカリウムなどのアルカリまたはアルカリ土類(M)と、カチオンと、アルミニウムなどの4価元素の酸化物Xと、例えばケイ素などの3価元素の酸化物Yと、以下詳細に説明する有機構造規制剤(R)と、水とを含む水熱反応混合物から調製される。水熱反応混合物は、酸化物のモル比で表したとき、以下の範囲の組成を有する。
【表6】

【0035】
MCM−49型のモレキュラーシーブは、例えばナトリウムやカリウムなどのアルカリまたはアルカリ土類(M)と、カチオンと、アルミニウムなどの4価元素の酸化物Xと、例えばケイ素などの3価元素の酸化物Yと、以下詳細に説明する有機構造規制剤(R)と、水とを含む水熱反応混合物から調製される。水熱反応混合物は、酸化物のモル比で表したとき、以下の範囲の組成を有する。
【表7】

【0036】
最終製品中に含まれる種々の元素は、市販品に由来するものでも、公知文献に開示されたものでもよい。合成混合物の調製も同様である。
【0037】
当業者であれば、上述の範囲の組成を有する合成混合物が、混合、添加、反応、あるいは他の混合物を調製する手段で得られる生成物であり、この生成物が上述の範囲の組成を有する混合物であることが理解できるであろう。
混合、添加、反応、あるいは他の混合物を調製する手段で得られる混合物が調製されたとき、この混合物に個々の原料成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。混合、添加、反応、あるいは他の混合物を調製する手段で得られる混合物が調製されたとき、この混合物には個々の原料成分による反応生成物が含まれている。
【0038】
アルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄などの4価元素XOのイオン源は、好ましくは硫酸アルミニウム、あるいは水酸化アルミニウムである。他のアルミニウム源は、例えば他の水溶性のアルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、例えばアルミニウムイソプロポキシド等のアルコキシド、例えばチップ状のアルミニウム金属である。
【0039】
アルカリ金属には、ナトリウム、またはカリウムが好ましい。ナトリウム源は、水酸化ナトリウムまたはアルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0040】
アルカリ金属には、ナトリウム、またはカリウムが好ましい。ナトリウム源は、水酸化ナトリウムまたはアルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0041】
構造規制剤Rは、シクロアルキルアミン、アザシクロアルカン、ジアザシクロアルカン、およびこれらの混合物からなり、アルキルは炭素数が5から8である群から選択される。構造規制剤Rの非限定的例示として、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ホモピペラジン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0042】
合成結晶性モレキュラーシーブのコストと品質に影響する因子は、構造規定剤の使用量である。一般に構造規定剤は、大部分の結晶性モレキュラーシーブの水熱反応混合物中の最も高価である。水熱反応混合物中の構造規定剤の量が少ないほど、最終製品であるモレキュラーシーブが安価になる。ここで用いる「低構造規定剤」という用語は、構造規定剤/4価成分の比が0.5未満、好ましくは0.34未満、さらにより好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満であることを意味する。
【0043】
この発明のひとつの実施形態では、R:Yのモル比の範囲は0,001から0.5、好ましくは0.001から0.34、より好ましくは0.001から0.3、さらに好ましくは0.001から0.2、最も好ましくは0.1から0.15である。
【0044】
結晶性モレキュラーシーブの合成に影響する因子のひとつは、水熱反応混合物中の固形成分量である。「固形成分量」という用語は、4価成分と3価成分(但し3価成分が存在する場合)の酸化物の重量を分子とし、水熱反応混合物中の水の重量を分母として、その重量比をパーセントで表したものを意味する。固形成分量は、水熱反応混合物中の酸化物の重量を、水熱反応混合物中の水の重量で割り算して、次のようにして求められる。
【式1】
【0045】

【0046】
ここで用いる「高固形分」という用語は、水熱反応混合物中の固形成分量少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも18wt%、より好ましくは少なくとも20wt%、さらにより好ましくは少なくとも25wt%、最も好ましくは少なくとも30wt%であることを意味する。
【0047】
水熱反応混合物は1つ以上の供給源から供給される。水熱反応混合物は、バッチで調製してもよいし、連続的に調製してもよい。新しい結晶物質の結晶のサイズと結晶化時間は、使用される水熱反応混合物の性状と結晶化条件により異なる。
【0048】
当業者であれば、この発明で製造されたMCM−22型モレキュラーシーブは、無定形の物質、非MWW骨格のトポロジーの単位格子(例えばMFI,MTW)、および/またはその他の不純物(例えば重金属、および/または有機炭化水素)を含んでいることが理解できるであろう。
この発明で製造されたMCM−22型モレキュラーシーブは、好ましくは実質的に非MCM−22型物質を含まない。ここに言う「実質的に非MCM−22型物質を含まない」とは、MCM−22型モレキュラーシーブは、不純物と純粋MCM−22型物質相の合計の重量に対し、不純物を好ましくは少量(50wt%未満)、好ましくは20wt%未満、より好ましくは10wt%未満、さらに好ましくは5wt%未満、最も好ましくは1wt%未満含有することを意味する。
【0049】
この発明の結晶性物質の結晶化は、静的条件または撹拌下で、例えばオートクレーブなどの反応容器内で行なわれる。
結晶化の温度範囲は約160℃から約250℃であり、その温度で結晶化が生じるのに十分な時間、例えば約3時間から約72時間、好ましくは約10時間から約48時間、最も好ましくは約10時間から約24時間行われる。その後、結晶は液から分離され回収される。
結晶化方法には、室温、または好ましくは中程度に昇温された温度での熟成期間が含まれ、次いでより昇温された温度で、水熱処理(水熱反応)が行われる。水熱処理において、温度の漸増減、あるいは段階的温度変化を行うこともできる。
【0050】
水熱反応は、例えば撹拌や、水平な軸の周囲での回転(タンブリング)等、あらゆる種類の撹拌手段を用いることができる。
【0051】
サイクルタイムや製品の品質などの、モレキュラーシーブの合成反応に影響を及ぼす他の因子は水熱反応の温度である。例えば200℃以上のような高温は水熱反応混合物中の構造規定剤を劣化させる。結晶化反応を高温で行なう場合、水熱反応混合物中の苛性反応物により一部の構造規定剤が劣化するため、より多くの構造規定剤が必要となる。
一般に、温度が高いほど、結晶化速度は速くなる。しかし、高温では高価な構造規定剤が劣化することにより、例えば最終製品に不純物が混入するなど、製品の品質に影響が出る。
ここで用いる「高温」という用語は、MCM−22型モレキュラーシーブの合成における結晶化温度の範囲が少なくとも約160℃から250℃未満であることを意味する。
【0052】
「生産量」という用語は、単位時間(時間)および水熱反応混合物の単位容積当りに製造される結晶性モレキュラーシーブの量(容積時間生産量)、あるいは単位時間(時間)および水熱反応混合物の単位重量当りに製造される結晶性モレキュラーシーブの量(重量時間生産量)の意味で用いる。
生産量が高いほど、反応器の単位容積および単位時間当りの結晶性モレキュラーシーブの生産量が多くなる。従って、同じ量の合成結晶性モレキュラーシーブに対する生産量が高い程、反応器(オートクレーブ)の容積を小さくできるか、あるいは、合成反応毎の時間を短くできる。
合成反応の容積時間生産量は、製造されたモレキュラーシーブの乾燥ケーキ(結晶化後120℃で24時間乾燥させた固体生成物)の重量を、水熱反応混合物の容積と、結晶化に要した時間(以後、「結晶化に要するサイクルタイム」という)とで割って求めることができる。
結晶化に要するサイクルタイムは、結晶化条件下で結晶化に要する時間であり、水熱反応混合物を熟成する時間、濾過、水洗、および生成物の乾燥に要する時間は含まれない。合成反応の容積時間生産量は次のようにして求められる。
【式2】
【0053】

【0054】
合成反応の重量時間生産量は、製造されたモレキュラーシーブの乾燥ケーキ(結晶化後120℃で24時間乾燥させた固体生成物)の重量を、水熱反応混合物の重量と、結晶化に要するサイクルタイムとで割り、次のようにして求めることができる。
【式3】
【0055】

【0056】
この発明のひとつの実施形態では、重量時間生産量は少なくとも0.001時間−1以上、好ましくは少なくとも0.002時間−1以上、より好ましくは0.004時間−1以上、最も好ましくは0.008時間−1以上である。
【0057】
合成反応の重量時間生産量は、固形成分量、合成ゲルに用いる種結晶の量、結晶化温度、結晶化時間、および/またはこれらの組み合わせにより調整することができる。重量時間生産量と、これらの合成条件は相互に関連している。ひとつの条件の変更は、他の条件に影響を及ぼす。例えば、結晶化温度と結晶化時間により重量時間生産量を増やす場合、固形成分量、および/または種結晶の量を増やす必要がある。
【0058】
この発明のひとつの実施形態では、MCM−22型モレキュラーシーブの製造方法はさらに、結晶化した後、水熱反応混合物中の水と(モレキュラーシーブ生成物に取り込まれていない)構造規制剤とを、蒸発/凝縮させて回収するステップを備える。
回収された構造規制剤の水溶液は他の合成反応に再使用することができる。蒸発/凝縮は、合成に用いたオートクレーブのバルブを開け、オートクレーブから放出された蒸気を凝縮し、液相にして回収することができる。凝縮された蒸気は、オートクレーブ中の構造規制剤の少なくとも一部を含んでおり、合成反応に再使用できる。
この発明のひとつの実施形態では、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも80wt%の、モレキュラーシーブ生成物に取り込まれていない構造規制剤が、この発明の蒸発/凝縮ステップで回収される。
【0059】
任意に、水熱反応混合物に種結晶を含有させることもできる。モレキュラーシーブの水熱反応混合物に種結晶を用いると、例えば、生成物の粒径の制御、有機鋳型分子の使用の不要化、合成反応の促進、目的とする骨格構造の製品中における割合の増加など、様々な利点があることはよく知られている。
この発明のひとつの実施形態では、結晶性モレキュラーシーブの合成は、水熱反応混合物の全重量に対し少なくとも0.0001wt、好ましくは0.001wt%、より好ましくは0.01wt%、さらに好ましくは0.1wt%、さらに好ましくは5wt%、任意に約5wt%から約20wt%の種結晶の存在下で行なわれる。
【0060】
ひとつの実施形態では、この発明の結晶性モレキュラーシーブは、MCM−22、MCM−49、MCM−56、およびMCM−22、MCM−49とMCM−56の混合相の少なくともいずれか1つを有する。
【0061】
この発明の発明者らは、MCM−22型モレキュラーシーブ(例えばMCM−22、MCM−49、および/またはMCM−56)を製造するための改良された処方を、高固形成分量と、低構造規定剤使用量と、任意に、高温と撹拌を含む改良された結晶化条件での結晶成長と、任意に、構造規定剤の回収、リサイクル、および再使用と、を組み合わせて見出した。
構造規定剤の回収、リサイクル、および再使用により、この発明の水熱反応混合物における、高価で毒性の高い構造規定剤(例えばHMI)の使用量が減る。
【0062】
モレキュラーシーブおよび/またはゼオライトの製造、改質、特性解析が、「Molecular Sieves − Principles of Synthesis and Identification」 (R. Szostak著, Blackie Academic & Professional社、London, 1998年、第2版)に記載されている。
またモレキュラーシーブに加え、主にシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウムなどの無定形物質が吸着剤および触媒担体として用いられている。スプレードライ、噴射造粒、ペレット化、押し出しなどの周知の技術が、触媒、吸着剤やイオン交換に用いられるミクロポーラスまたは他の種類の多孔質物質の、例えば球状粒子、押出し物、ペレット、錠剤の形状のマクロ構造体の製造に用いられている。
このような技術は「Catalyst Manufacture」(A. B. Stiles、T. A. Koch、Marcel Dekker社、New York、1995年刊)に記載されている。
【0063】
しかし、周知の技術を用いて、合成された未精製の物質中に含まれる金属カチオンの少なくとも一部が、イオン交換により他のイオンに置き換えられる。
好ましい交換後のカチオンには、金属イオン、水素イオン、例えばアンモニアイオンなどの水素前駆物質、およびこれらの組み合わせが含まれる。特に好ましいカチオンは、触媒活性を所望の炭化水素転換反応に適合させることができるものである。このようなカチオンには、水素、希土類金属、周期律表(IUPAC 2001)の第IIA族、第IIIA族、第IVA族、第IB族、第IIB族、第IIIB族、第IVB族、および第VIII族の金属が含まれる。
【0064】
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブが吸着体、あるいは有機化合物の転換反応の触媒として用いられるとき、少なくとも一部が脱水されていなければならない。脱水は、結晶性物質を空気または窒素雰囲気下で、大気圧下、減圧下、あるいは加圧下で、30分から48時間、200℃から595℃の範囲の温度に加熱して行うことができる。また脱水は、室温でケイ酸塩を真空化に置いて実施することもできるが、十分乾燥させるには時間を要する。
【0065】
触媒として用いられる場合、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブは有機成分を除去するために、熱処理される。
このMCM−22型モレキュラーシーブは、水素化に用いられる元素、例えばタングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、あるいはプラチナやパラジウムなどの貴金属等と組み合わせた触媒として用いることもできる。この場合、水素化−脱水素化機能が発揮される。
このような元素は、助触媒化により触媒組成物中に含ませることができ、例えばアルミニウム等のIIIA族元素との交換反応により触媒組成物中に含ませたり、含浸させたり、物理的に添加混合したりする方法を用いることができる。
このような元素は触媒組成物中に含浸、あるいは付着させることができ、例えばプラチナの場合、プラチナ金属を含有するイオンの溶液でケイ酸塩を処理する。この目的のために用いられるプラチナ化合物は、塩化白金酸、塩化第1白金、種々の白金アミン錯体などである。
【0066】
上記のMCM−22型モレキュラーシーブは、特に金属化、水素化、アンモニウム化された形態の場合、熱処理により他の有用な形態に転換させることができる。熱処理は一般に、ひとつ以上の前記の形態を、少なくとも370℃で少なくとも1分間、20時間以内加熱して行われる。熱処理を減圧下で行なうこともできるが、操作の容易さの観点から、大気圧下で行なうことが好ましい。熱処理は、最高約925℃の温度まで行なうことができる。
熱処理された生成物は、特にある種の炭化水素の転換反応用触媒に適している。特に金属化、水素化、アンモニウム化された形態の熱処理された生成物は、特にある種の有機物、例えば炭化水素の転換反応の触媒に適している。このような反応の非限定的な例は、米国特許第4954325号、4973784号、4992611号、4956514号、4962250号、4982033号、4962257号、4962256号、4992606号、4954663号、4992615号、4983276号、4982040号、4962239号、4968402号、5000839号、5001296号、4986894号、5001295号、5001283号、5012033号、5019670号、5019665号、5019664号、および5013422号に開示されており、本願に参照として組み込まれる。
【0067】
この発明により製造された結晶は、種々の粒径となるように加工される。粒子は一般に、粉末形状、顆粒形状、または押出し等の賦形された形状にされる。触媒を押出し等の賦形された形状にする場合、触媒を乾燥する前か、一部乾燥した状態で押出し加工する。
【0068】
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブは、ガス状または液状の多成分混合系から、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブに対し異なる吸着性を示す少なくとも1つの成分を分離するため等の吸着剤に用いることができる。すなわち、ガス状または液状の多成分混合系をこの発明のMCM−22型モレキュラーシーブに接触させることにより、多成分混合系から、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブに対し異なる吸着性を示す少なくとも1つの成分を選択的に分離することができる。
【0069】
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブは、分離プロセスや炭化水素転換反応の触媒などの、種々のプロセスの触媒として有用である。
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブ単独、あるいは1つ以上の他の触媒となる物質と組み合わせて触媒活性化される化学的転換反応の例には、以下が含まれる。
(i)温度が約340℃から約500℃、圧力が約101から約20200Kpa−a、重量空間速度が約2時間−1から約2000時間−1、芳香族炭化水素/オレフィンモル比が約1/1から約20/1の反応条件で、例えばベンゼン等の芳香族炭化水素を、例えばC14のような長鎖オレフィンによりアルキル化させて長鎖アルキル基を有する芳香族炭化水素を生成させる反応であり、この長鎖アルキル基を有する芳香族炭化水素がその後スルホン化され合成洗剤が提供される反応;
(ii)温度が約10℃から約125℃、圧力が約101から約3030Kpa−a、重量空間速度が約5時間−1から約50時間−1の反応条件で、気相のオレフィンと芳香族炭化水素によりアルキル鎖短を有する芳香族を生成させる反応であり、例えば、ベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンを生成させる反応;
(iii)温度が約315℃から約455℃、圧力が約3000から約6000Kpa−a、オレフィンの重量空間速度が約0.4時間−1から約0.8時間−1、改質油の重量空間速度が約1時間−1から約2時間−1、ガスリサイクルが燃料ガス供給量に対し約1.5から2.5容積/容積の比となる反応条件で、ベンゼンとトルエンを含む改質油を、Cオレフィンを含む燃料ガスでアルキル化させる反応であって、特にモノ−およびジ−アルキル化合物を生成させる反応;
(iv)温度が約160℃から約260℃、圧力が約2600から約3500Kpa−aの反応条件で、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素を、例えばC14オレフィンなどの長鎖オレフィンでアルキル化し、アルキル化された芳香族の潤滑油原料を生成させる反応;
(v)温度が約200℃から約250℃、圧力が約1500から約2300Kpa−a、全体の重量空間速度が約2時間−1から約10時間−1の条件で、フェノールを、オレフィンまたはこれに対応するアルコールでアルキル化する反応;
(vi)温度が約425℃から約760℃、圧力が約170から約15000Kpa−aの条件で軽質パラフィンをオレフィンと芳香族炭化水素に転換する反応;
(vii)温度が約175℃から約375℃、圧力が約800から約15000Kpa−aの条件で軽質オレフィンをガソリン、蒸留および潤滑油相当の炭化水素に転換する反応;
(viii)炭化水素を、初留点が約260℃以上でハイオクガソリンおよびガソリン相当の沸点留分に2段階水素化分解によりアップグレードする反応であって、温度が約340℃から約455℃、圧力が約3000から約18000Kpa−a、水素循環量が約176から約1760リットル/リットル、液体空間速度(LHSV)が約0.1時間−1から約10時間−1の条件で、第1段階でこの発明のMCM−22型モレキュラーシーブと第VIII族金属を組み合わせた触媒を用い、第1段階からの流出液をさらに反応させる第2段階でゼオライトベータと第VIII族金属を組み合わせた触媒を用いる反応;
(ix)水素化分解/脱ワックス複合プロセスであって、温度が約350℃から約400℃、圧力が約10000から約11000Kpa−a、液体空間速度が約0.1時間−1から約10時間−1、水素循環量が約528から約880リットル/リットルの条件で、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブおよび水素化成分の存在下、あるいは、このような触媒とゼオライトベータとを組み合わせた混合物の存在下に行なう反応;
(x)アルコールをオレフィンと反応させてエーテル混合物を生成させる反応であって、温度が約20℃から約200℃、圧力が約200から約20000Kpa−a、重量空間速度(オレフィングラム数/1時間当りゼオライトのグラム数)が約0.1時間−1から約200時間−1、アルコールとオレフィンの供給量モル比が約0.1/1から約5/1の転換条件下で、例えばメタノールをイソブテン、および/またはイソペンテンと反応させて、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、および/またはt−アミルメチルエーテル(TAM)を生成させる反応;
(xi)C9+の芳香族をともに供給して行なうトルエンの不均化反応であって、温度が約315℃から約595℃、圧力が約101から約7200Kpa−a、水素/炭化水素モル比が0(水素無添加)から約10、重量空間速度が約0.1時間−1から約30時間−1の条件で行なう反応;
(xii)薬学的に活性な物質である2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸、すなわちイブプロフィンを生成させる反応であって、イソブチルベンゼンをプロピレンオキサイドと反応させ中間体の2−(4−イソブチルフェニル)プロパノールとし、さらにアルコールを酸化して対応するカルボン酸にする反応;
(xiii)本願に参照として組み込まれるドイツ国特許DE3625693号に開示されているような、塩を含まない反応性染料含有溶液を製造するための染料の生成において、アミンとヘテロサイクルな繊維と反応する化合物との反応での酸結合剤としての使用;
(xiv)本願に参照として組み込まれる米国特許第4721807号に開示されているような2,6−トルエンジイソシアネート(2,6−TDI)をTDIの異性体から分離するための吸着剤として用い、2,6−TDIと2,4−TDIを含む供給混合物を、2,6−TDIを吸着させるためにKイオンでカチオン交換されたこの発明のMCM−22型モレキュラーシーブと接触させ、次いでトルエンを含む脱着剤で脱着させて2,6−TDIを回収する反応;
(xv)本願に参照として組み込まれる米国特許第4721806号に開示されているような2,4−TDIをその異性体から分離するための吸着剤として用い、2,6−TDIと2,4−TDIを含む供給混合物を、2,6−TDIを吸着させるためにNa,Ca,Li、および/またはMgイオンでカチオン交換されたこの発明のMCM−22型モレキュラーシーブと接触させ、次いでトルエンを含む脱着剤で脱着させて2,4−TDIを回収する反応;
(p)触媒でメタノールをガソリンに転換させる塔の90から200℃以上のボトム留分中のジュレン含量を減らすプロセスであって、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブと水素化金属とから成る触媒上で、ジュレン含むボトム留分と水素とを、温度が約230℃から約425℃、圧力が約457から約2200Kpa−aの条件で接触させる反応。
【0070】
ひとつの実施形態では、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブは、ベンゼンをアルキル化し、次いでアルキルベンゼンの過酸化物を生成させ、このルキルベンゼン過酸化物を開裂させてフェノールとケトンを併産するプロセスに用いられる。
このようなプロセスでは、この発明のMCM−22型モレキュラーシーブは第1ステップ、すなわちベンゼンのアルキル化に用いられる。このようなプロセスの例は、ベンゼンとプロピレンがフェノールとアセトンに転換されるプロセス、ベンゼンとC4のオレフィンがフェノールとメチルエチルケトンに転換されるプロセスである。
これらは、例えば国際特許出願PCT/EP2005/008557に記載されており、ベンゼン、プロピレンとC4のオレフィンがフェノール、アセトンとメチルエチルケトンに転換され、この場合はさらに、国際特許出願PCT/EP2005/008554に記載されているように、フェノールとアセトンをビスフェノールAに転換させることができる。また例えば国際特許出願PCT/EP2005/008551のように、ベンゼンをフェノールとシクロヘキサノン、あるいはベンゼンとエチレンをフェノールとメチルエチルケトンに転換することができる。
【0071】
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブは、モノアルキルベンゼンに対する選択性が要求されるベンゼンのアルキル化反応に有用である。さらにこの発明のMCM−22型モレキュラーシーブは、国際特許出願PCT7EP2005/008557に記載されているように、ベンゼンと、直鎖状ブテンがリッチなC4オレフィンとを含む供給原料からのsec−ブチルベンゼンの選択的製造に特に有用である。
好ましくは、この転換反応は、この発明の触媒とともにベンゼンとC4オレフィンとを供給し、温度が約60℃から約260℃、例えば約100℃から約200℃、圧力が7000Kpa−a未満、C4アルキル化剤基準の重量空間速度が約0.1から50時間−1、ベンゼンとC4アルキル化剤のモル比が約1から約50の条件で行なわれる。
【0072】
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブはまた、例えばポリアルキルベンゼンのアルキル転移用の触媒としても有用である。
【0073】
多く場合、新触媒に、有機転換反応に用いられる温度やその他の条件に耐えうる物質を組み込むことが好ましい。このような物質には、活性または不活性な物質、合成または天然由来のゼオライト、さらにクレイ、シリカおよび/またはアルミナ等の金属酸化物などの無機物質が含まれる。後者は、天然由来、あるいはゲル状の沈降物、またはシリカと金属酸化物の混合物を含むゲルである。
新触媒を他の物質と結合させて使用すると、すなわち新触媒を他の物質と組み合せるか、活性状態にある新触媒の合成時に共存させると、有機転換反応での触媒の転換率、および/または選択性を変化させることがある。不活性な物質は、所定のプロセスの転換率を調整するための希釈剤に適しており、他の反応速度を調整するための手段を用いることなく、経済的かつ安定的に製品を得ることができる。
触媒が実際に使用されるときの破砕強度を向上させるため、天然由来のクレイ、例えばベントナイトやカオリンなどの物質が組み込まれる。このような物質、すなわちクレイや金属酸化物は、触媒のバインダーとして機能する。触媒は、使用中に破砕されて粉末状になることを防ぐため、高い破砕強度を備えることが望ましい。このようなクレイのバインダーは、従来触媒の破砕強度を向上させる目的だけで使用されてきた。
【0074】
新触媒に含まれる天然由来のクレイは、モンモリロナイト型とカオリン型であり、デキシークレイ、マクナミークレイ、ジョージアクレイ、フロリダクレイとして知られているもの、その他主要鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、デクタイト、ナルサイト、またはアナウキサイトなどの、スベントナイト類とカオリン類が含まれる。このようなクレイは採掘された未処理の状態のままで、あるいは焼成、酸処理、化学修飾して用いられる。この発明の触媒組成物に用いられるバインダーには無機酸化物は含まれ、特にアルミナが好ましい。
【0075】
これらの物質に加え、新触媒は多孔性物質との組成物とすることができる。このような多孔性物質には、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、さらにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニアなどの3成分系などが含まれる。
【0076】
微細なMCM−22型モレキュラーシーブと無機酸化物質との相対比は、結晶性成分の量が約1から約90重量%、特に組成物がビーズ形状の場合は約2から約80重量%の広い範囲と成りうる。
【0077】
<実施例>
好ましい実施の態様を、以下の実施例に示す。
【0078】
この実施例では、未精製の物質のXRD回折パターンを、2θが2から40度の範囲で、銅のKα線用い、粉末X線回折装置により記録した。
【0079】
SEM像は、日立S4800Field Emission走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、印加電圧2keVで測定した。
【0080】
収率は、アルミニウムの全部と、ケイ素の85wt%がモレキュラーシーブ生成物に取り込まれると仮定して求めた。モレキュラーシーブ生成物は、約15wt%の水と構造規制剤を含有していた。
【0081】
結晶化度は2つのメインピーク、すなわち7.1と26(2θ)の強度の合計の、標準サンプル(比較例)の同じ2つのピークの強度の合計に対する比を100倍して求めた。
【0082】
<比較例>
水と、ヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma―Aldrich Company社製)と、シリカ(Ultrasil(登録商標)、Degussa Corp.社製)と、45wt%アルミン酸ナトリウム水溶液と、50wt%水酸化ナトリウム水溶液とで、水熱反応混合物を調製した。
水熱反応混合物の組成は、次の通りであった。
【表8】

【0083】
水熱反応混合物は、オートクレーブ中150℃で、250回転/分(RPM)で撹拌しながら72時間結晶化させた。結晶化の後、水熱反応混合物のスラリーを濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、120℃で乾燥させた。
未精製の物質は、表1と表2に示したX線回折パターン(図1)を有し、26°から29°(2θ)の間のピークは1本だけ(約26.5°)であった。得られたMCM−22結晶はSiO/Alモル比が〜23/1であった。
焼成後のMCM−22結晶は、表面積653m/g(微細孔表面積530m/g、外部表面積123m/g)であった。未精製の結晶のSEM像(図5)では、平均結晶厚みが約200から約300Åの板状モルフォロジーが認められた。板状結晶の平均径は約1μm未満と見積もられた。
焼成された物質は、メシチレン吸着量が約29.8mg/gで、メシチレン吸着速度は約68mg/g/分であった。
MCM−22物質の収率(モレキュラーシーブの乾燥重量を、水熱反応混合物の全重量で割った値)は約11.7wt%と見積もられた。重量時間生産量は約0.0019時間−1であった。
【0084】
<実施例1〜2>
水と、ヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma―Aldrich Company社製)と、シリカ(Ultrasil(登録商標)、Degussa Corp.社製)と、45wt%アルミン酸ナトリウム水溶液と、50wt%水酸化ナトリウム水溶液とで、水熱反応混合物を調製した。
水熱反応混合物の組成は、次の通りであった。
【表9】

【0085】
実施例1の水熱反応混合物は、オートクレーブ中170℃で、250回転/分(RPM)で撹拌しながら24時間結晶化させた。結晶化の後、実施例1の水熱反応混合物のスラリーを濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、120℃で乾燥させた。
未精製の物質は、表1と表2に示したX線回折パターン(図2)を有し、比較例1と対比したとき、26.6°から29°(2θ)の間に追加のピーク(26.9°)が認められた。
得られたMCM−22結晶の結晶化度は105%であった。結晶化度は2つのメインピーク(7.1と26での2θ)の強度の合計の、比較例の同じ2つのピークの強度の合計に対する比を100倍して求めた。
得られたMCM−22結晶のSiO/Alモル比は〜24/1であった。
焼成後のMCM−22結晶は、表面積612m/g(微細孔表面積528m/g、外部表面積84m/g)であった。未精製の結晶のSEM像(図6)では、平均結晶厚みが比較例より厚く、少なくとも約300Åの板状モルフォロジーが認められた。SEMで求めた平均結晶厚みは、約300Åから約500Åと見積もられた。板状結晶の平均径は、比較例と同等の、約1μm未満と見積もられた。
焼成された物質は、メシチレン吸着量が約24.7mg/gで、メシチレン吸着速度は約45mg/g/分であった。
MCM−22物質の収率(モレキュラーシーブの乾燥重量を、水熱反応混合物の全重量で割った値)は約16.7wt%と見積もられた。重量時間生産量は約0.0082時間−1であった。実施例1の重量時間生産量は、比較例の約525%であった。
【0086】
実施例2の水熱反応混合物は、オートクレーブ中180℃で、350回転/分(RPM)で撹拌しながら12時間結晶化させた。結晶化の後、実施例2の水熱反応混合物のスラリーを濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、120℃で乾燥させた。
未精製の物質は、典型的なMCM−22純粋相のトポロジーを示した。
得られたMCM−22結晶のSiO/Alモル比は〜23/1であった。
MCM−22物質の収率(モレキュラーシーブの乾燥重量を、水熱反応混合物の全重量で割った値)は約15.3wt%と見積もられた。重量時間生産量は約0.015時間−1であった。実施例1の重量時間生産量は、比較例の約780%であった。
【0087】
<実施例3〜4>
水と、ヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma―Aldrich Company社製)と、シリカ(Ultrasil(登録商標)、Degussa Corp.社製)と、45wt%アルミン酸ナトリウム水溶液と、50wt%水酸化ナトリウム水溶液とで、2種類の水熱反応混合物を調製した。
水熱反応混合物の組成は、次の通りであった。
【表10】

【0088】
生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、120℃で乾燥させた。
実施例3の、16、18、20、22および24時間反応後の未精製の生成物のX線回折パターンはMCM−22/MCM−49トポロジーを示し、各々の結晶化度は89、91、100、100、100%であった。
実施例4の、18、20、および22時間反応後の未精製の生成物のX線回折パターンはMCM−22/MCM−49トポロジーを示し、結晶化度はいずれも100%であった。
MCM−22物質の収率は、両実施例とも、約17wt%であった。
重量時間生産量は約0.01時間−1(実施例3)、約0.011時間−1(実施例4)であった。実施例3の重量時間生産量は、比較例の約520%であった。実施例4の重量時間生産量は、比較例の約580%であった。
【0089】
<実施例5〜7>
水と、ヘキサメチレンイミン(HMI)(Sigma―Aldrich Company社製)と、シリカ(Ultrasil(登録商標)、Degussa Corp.社製)と、45wt%アルミン酸ナトリウム水溶液と、50wt%水酸化ナトリウム水溶液とで、3種類の水熱反応混合物を調製した。
各水熱反応混合物の組成は、次の通りであった。
【表11】

【0090】
生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、120℃で乾燥させた。
実施例5の未精製の生成物のX線回折パターンは、MCM−22純粋相のトポロジーを示した。
実施例6の未精製の生成物のX線回折パターンは、MCM−22純粋相のトポロジーを示した。
実施例6のMCM−22結晶のSiO/Alモル比は27.5であった。
実施例7の未精製の生成物のX線回折パターンは、ZSM−5が混入したMCM−22のトポロジーを示した。ZSM−5の混入量は生成物の10%未満と見積もられた。
実施例7のMCM−22結晶のSiO/Alモル比は〜24であった。
MCM−22物質の収率は、約17.1wt%(実施例5)、約25.5wt%(実施例6)、約17wt%(実施例7)であった。
重量時間生産量は約0.008時間−1(実施例5)、約0.015時間−1(実施例6)、約0.01時間−1(実施例7)であった。
重量時間生産量は、比較例の約440%(実施例5)、約780%(実施例6)、約520%(実施例7)であった。
【0091】
<実施例8>
MCM−22/アルミナ触媒を、実施例5の乾燥生成物80重量部と、乾燥アルミナ(LaRoche Versal 300)20重量部とを混合して調整した。この混合物に水を添加し、触媒を押出物状に形成した。この押出物を使用する前に、120℃で乾燥した。この触媒を窒素中、540℃で焼成し、次いでアルミン酸ナトリウム水溶液でイオン交換し、空気中、540℃で焼成した。
【0092】
<実施例9>
実施例8で調製した触媒を用い、プロピレンによるベンゼンのアルキル化試験を、300mlオートクレーブ中で行った。
調製した触媒を触媒バスケットに入れ、260℃のオーブンで16時間乾燥させた。この触媒バスケットを300mlのオートクレーブに、外気に曝される時間が最小になるように、すばやく移し変えた。反応器内でこの触媒を181℃の乾燥窒素で2時間パージし、反応器内の空気と水分を除去した。ベンゼン156gを窒素により反応器内に移送し、130℃で1時間置き、触媒と平衡状態にした。プロピレン28gを2170KPa―aの窒素圧で反応器に移送した。
【0093】
プロピレンを添加した後、直ちに反応を開始し、オートクレーブを2170KPa―aの一定圧の窒素で保圧した。反応を4時間行い、この間に全てのプロピレンが消費された。
一定時間毎に少量の液サンプルをオートクレーブから採取し、ガスクロマトグラフィーでプロピレン、ベンゼン、クメン(IPB)、ジイソプロピルベンゼン(DIPB)、およびトリイソプロピルベンゼン(TIPB)の分析を行った。触媒の性能は、プロピレンとベンゼンの転換反応の熱力学的活動率により評価した。
クメン選択率は、DIPB/クメンの重量比(%表示)により計算した。この計算方法は、国際公開パンフレットWO03/006160に記載されている。結果を次の表に示す。
【表12】

【0094】
この触媒はベンゼンのアルキル化反応に対する活性と選択性を有する。
【0095】
本願について実施形態により説明したが、本願の発明の精神と範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者は種々の変更を容易になしうるであろう。したがって、特許請求の範囲が実施例と詳細な説明の記載に限定されることは意図されておらず、特許請求の範囲は、本願発明が内在するすべての特許性のある特徴と、本願の属する技術分野の当業者にとって均等とされる範囲を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、比較例の結晶性材料のX線回折パターンである。
【図2】図2は、実施例1の結晶性材料のX線回折パターンである。
【図3】図3は、実施例2の結晶性材料のX線回折パターンである。
【図4】図4は、実施例3の結晶性材料が24時間経過した後のX線回折パターンである。
【図5】図5は比較例の結晶性材料のSEM像である。
【図6】図6は実施例1の結晶性材料のSEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCM−22型のモレキュラーシーブの製造方法であって、
(a)少なくとも1つの4価元素のイオン源と、少なくとも1つのアルキル金属水酸化物源と、少なくとも1つの構造規制剤と、水と、任意に少なくとも1つの3価イオン源とからなり、モル比で表す組成が下記で表される混合物を調製するステップと、
Y:X=10から無限大
O:Si=1から20
OH:Si=0.001から2
:Si=0.001から2
R:Si=0.001から0.34
(Yは4価元素、Xは3価元素、Mはアルキル金属)
(b)前記混合物を、温度範囲が160℃から250℃の結晶化条件下で72時間未満処理し、前記モレキュラーシーブを生成させるステップと、
(c)前記モレキュラーシーブを回収するステップとを備える方法。
【請求項2】
重量時間生産量が少なくとも0.001時間−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重量時間生産量が少なくとも0.002時間−1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
重量時間生産量が少なくとも0.004時間−1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
重量時間生産量が少なくとも0.008時間−1である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が種結晶の存在下で行なわれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
合成混合物が、その全重量に対し0.0001から20wt%の種結晶または種結晶源を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)が165℃から210℃の温度範囲で行なわれる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が165℃から210℃の温度範囲で行なわれ、結晶化時間が48時間未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が170℃から210℃の温度範囲で行なわれる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
結晶化条件に、170℃から210℃の温度範囲と、24時間未満の結晶化時間とが含まれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)で混合物をかき混ぜる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
かき混ぜが、撹拌、および/または回転により行なわれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
構造規定剤の少なくとも一部を回収する、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
構造規定剤の回収が、
(a)反応した混合物から構造規定剤の少なくとも一部を蒸発させるステップと、
(b)気相の構造規定剤を凝縮させるステップとを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
凝縮させた構造規定剤の少なくとも一部を、モレキュラーシーブを製造するための合成混合物に再使用するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
モレキュラーシーブが、無水ベースのモル比がX:(n)YOの組成で表わされ、ここで、nが10から150で、Xは3価元素で、Yがケイ素である、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
モレキュラーシーブがMCM−22、MCM−49、MCM−56、MCM−22とMCM−49の混合相、MCM−22とMCM−56の混合相、MCM−56とMCM−49の混合相、MCM−22、MCM−49とMCM−56の混合相、の少なくともいずれか1である、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
合成混合物の固形成分量(4価成分の酸化物と、3価成分が存在する場合はその酸化物の重量とを分子とし、水熱反応混合物の全重量を分母として、その重量比をパーセントで表したもの)が少なくとも12wt%である、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
固形成分量が少なくとも20wt%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固形成分量が少なくとも30wt%である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)で生成するモレキュラーシーブに非MCM−22型のモレキュラーシーブが含まれていない、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
モレキュラーシーブが結晶性のMCM−22型のモレキュラーシーブである、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
4価元素がケイ素であり、4価元素のイオン源がシリカである、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
3価元素がアルミニウムであり、3価元素のイオン源がアルミナである、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1項に記載の方法で製造されたMCM−22型のモレキュラーシーブ。
【請求項27】
X線回折データが表1に示す値を有する請求項26に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項28】
無水ベースのモル比がX:(n)YOの組成で表わされ、ここで、nが10から150で、Xは3価元素で、Yがケイ素である、請求項26または請求項27に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項29】
モレキュラーシーブが結晶性のMCM−22型のモレキュラーシーブである、請求項26から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
(a)炭化水素原料を、請求項23から30のいずれか1項に記載のモレキュラーシーブ、または、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法で製造されたモレキュラーシーブに、転換条件下で接触させ製品を生成させるステップと、
(b)製品を取り出すステップとを備える、炭化水素転換プロセス。
【請求項31】
炭化水素原料が、CからC20の炭化水素、またはCからC20の酸素含有化合物を含む請求項30に記載の炭化水素転換プロセス。
【請求項32】
炭化水素転換が、エチレンとベンゼンからエチルベンゼンを生成させる炭化水素転換である、請求項31に記載の炭化水素転換プロセス。
【請求項33】
炭化水素転換が、プロピレンでベンゼンをアルキル化してクメンを生成させる炭化水素転換である、請求項31に記載の炭化水素転換プロセス。
【請求項34】
転換条件に、温度範囲100℃から950℃、圧力範囲101kPa−aから50000kPa−a、WHSV0.001から1000時間−1が含まれる、請求項30から33のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−526739(P2009−526739A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555246(P2008−555246)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/002073
【国際公開番号】WO2007/094937
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】