説明

MR機器の冷却装置

本発明は、MR機器内の超伝導コイル組立体を冷却する冷却方法に関し、超伝導コイル組立体10は、冷媒41、42によって冷却され、該冷媒は、冷却室20において前記超伝導コイル組立体と熱的に接触され、冷媒は冷蔵器50によって冷却される。本冷却方法は、冷却室の冷媒の少なくとも一部が、所定の温度を超えた場合、冷媒を冷却室から冷媒貯蔵器に輸送するステップ(S2)と、冷却室の冷媒の少なくとも一部の温度が、所定の温度以下となった場合、冷媒貯蔵器から冷却室に冷媒を供給するステップ(S4)と、を有する。本発明はさらに、本冷却方法を実行する冷却装置、およびそのような冷却装置を有するMR機器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MR機器内の超伝導コイル組立体を冷却する冷却装置に関し、当該冷却装置は、超伝導コイル組立体と熱的に接触する冷媒を収容するように適合された冷却室と、冷媒を冷却する冷蔵器を有する。また本発明は、各冷却装置を有するMR機器に関する。本発明はさらに、MR機器内の超伝導コイル組立体を冷却する冷却方法であって、超伝導コイル組立体は冷媒によって冷却され、該冷媒は冷却室において超伝導コイル組立体と熱的に接触され、冷媒は冷蔵器によって冷却される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の冷却装置は従来から知られており、米国特許第5,410,286号明細書に記載されている。そのような冷却装置は、超伝導コイル組立体の冷却用に用いられ、超伝導材料の温度は、コイル組立体の超伝導材料が超伝導特性を示す低温に維持される。この状態では、低温磁気コイルに電気抵抗は生じないため、コイルは強磁場を発生させ、これを維持することができる。温度の上昇は、即座にコイルの電気抵抗の増大につながるとともに、コイルに熱が発生することで温度の更なる上昇につながるため、温度を所定の低温範囲に維持する必要がある。通常コイルは、液体および/または気体状の冷媒の充填された冷却室内に収容される。コイルは、例えば大気圧で4Kの液温を有するヘリウムのような冷媒の液体槽中に埋没させることが好ましい。この方法は、一般にMRI磁石に用いられる超伝導材料に適している。液体ヘリウムをこの極低温に維持するため、冷蔵器によって、非理想断熱による熱輸送が補償される。通常冷蔵器は、十分な冷却能力を有するように適合され、ゼロボイルオフ作動が可能である。そのようなゼロボイルオフ作動では、冷蔵器は、普通に使用されるヘリウムを十分に冷却するだけの冷却容量を有し、温度は所定の範囲に維持される。
【0003】
しかしながら所与の環境では、冷却装置の冷却挙動に影響を及ぼすような突発的な事象が生じ得る。そのような場合、故障、出力低下、リークもしくは冷蔵器の部分的もしくは全体的な停止につながる現象、または冷媒への熱輸送の増大によって、冷却効率は低下しあるいは完全に機能が停止してしまう。
【0004】
そのような突発的な事象が生じた際は、冷媒の少なくとも一部の温度は上昇し、結果的に冷却室内の圧力が増大する。その結果、通常はヘリウムを冷却室から大気開放する必要が生じるが、これはある圧力を内部に加えなければ行えない。その結果、そのような突発的現象が生じる度に、ヘリウムのロスが生じることになる。コイルは常時液体ヘリウム内に埋没しておく必要があり、ヘリウムのこのようなロスを補うため、ある時間間隔で再充填のための操作を行わなければならない。このような再充填操作は、追加管理を強いることとなり、MR装置の点検による停止時間の増大につながる。その結果、装置効率は低下し、運転コストが増大する。
【0005】
さらに世界的にヘリウム資源には限りがあり、ヘリウムの消失は避けるべきである。
【特許文献1】米国特許第5,410,286号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冷媒の消失を低減させる冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求1に記載の本発明による冷却装置によって解決され、当該冷却装置は、冷却室との間に連通部を有する冷媒貯蔵器を有し、該冷媒貯蔵器は、冷却室内の冷媒の少なくとも一部が第1の所定の温度を超えた場合、前記冷却室から冷媒を回収し、冷却室内の冷媒の少なくとも一部が第2の所定の温度以下に維持された場合、前記冷却室に冷媒を供給する。
【0008】
本発明の冷媒貯蔵器を使用することにより、通常であれば噴出するような作動状態においても、冷媒の貯蔵を行うことが可能となる。従って冷媒の消失は回避される。また本発明の冷却装置は、異常な作動状態が解消された場合、直ちに冷却室に冷媒を供給することが可能であり、冷却装置は通常の作動状態を回復する。そのような通常作動条件では、通常冷蔵器の冷却能で、追加の冷媒を冷却することができる。追加の冷媒は、冷却室内の冷媒の温度よりも高い温度で、冷媒貯蔵器から冷却室に供給される。
【0009】
本発明の冷却装置は、閉じた系を提供し、従来技術では冷媒の排出による減圧が必要となる異常作動状態時には、冷媒は冷媒貯蔵器に輸送される。冷媒は、冷却室内の冷媒の温度よりも高い温度で冷媒貯蔵器に貯蔵することができる。冷却装置が通常の作動状態を回復した場合、あるいは系内に補助冷却機能が提供された場合、冷媒貯蔵器に貯蔵された冷媒は直ちに冷却室に輸送され、冷媒が冷却されて冷媒の温度は低下するため、冷却室内の冷媒温度は維持される。
【0010】
冷却装置は、ゼロボイルオフで作動させるのに十分な冷却能力を有するシステムに使用した場合、特に有意である。そのようなシステムでは、冷蔵器によって冷却室に導入される冷却能と、冷却室への熱輸送量の総和の差異により、および冷却室内の熱発生により、少なくとも冷却室の一部において冷媒温度の昇温低下が生じる。例えば、断熱材の不調による熱輸送の増大または冷却能の低下は、温度の上昇につながり、冷却室内の液体冷媒は気化する。これは冷媒貯蔵器への冷媒の輸送に直結する。従って冷却室全体としての温度上昇は、回避される。その結果、冷却能力が向上して冷却室内への熱輸送の総和を超えると、冷媒は直ちに再輸送され、冷却室において生じる熱は冷却室内の冷媒を気化し、気化した冷媒は冷却表面に凝縮される。
【0011】
本発明の好適実施例では、冷却室は、液体および気体状態で冷媒を収容するように適合され、連通部は冷却室の一部に接続され、該冷却室の一部は気体冷媒を収容するように適合される。この実施例は、超伝導コイル組立体を液体冷媒中に埋没しているような場合に特に有意である。冷蔵器の故障などによって異常な作動状態となったときでも、コイル材料の超伝導温度は維持されるからである。気体冷媒を収容する冷却室の一部と連通する連通部を提供することにより、冷媒貯蔵器に気体冷媒のみを輸送して、極低温の液体冷媒の輸送を回避することができる。従って冷却室内の圧力制御が容易となり、過度の冷媒の消失、特に液体冷媒の消失を防止することができる。
【0012】
本発明の別の実施例では、冷却室の冷媒の圧力から得られる信号によって、冷媒の回収および供給を制御する手段が提供される。
【0013】
本発明による冷却室に収容される冷媒は、従来技術の冷却装置と同様に、外部の大気圧より高圧となっている。従って、外界から冷却室に不純物が吸い込まれることは回避される。冷却室内の高圧を維持するため、冷却室は外界からシールされる。例えば冷却室において熱発生が増大するような、あるいは冷蔵器の冷却能が低下するような異常な作動状態が生じた場合、気体冷媒の膨張および/または液体冷媒の気体への相変化が生じる。この場合、冷却室内の圧力が増加し、冷媒の回収および供給を制御する信号の抽出が可能となる。この信号を用いることにより、冷媒貯蔵器への冷媒の輸送および冷媒貯蔵器から冷却室への供給は、冷却室内の冷媒圧力により容易に制御される。
【0014】
本発明の別の好適実施例では、冷蔵器は、冷媒と熱的に接触する冷却表面を有し、冷却表面は冷却室、特に冷却室の一部に延びる。この冷却室の一部は、気体冷媒を収容するように適合されている。冷蔵器の単純な配置で、冷却室内の冷媒を冷却することが可能となる。本実施例ではさらに、冷媒配管を外部冷却表面に接続するような他の冷蔵器配置の場合に必要となる複接続状態を避けることができる。冷却表面が、気体冷媒を収容する冷却室の一部に延びている限り、冷却室では簡単な内部冷却循環が可能となり、気体冷媒は冷却表面の周囲領域で冷却され、それにより気体冷媒は、冷却表面に凝縮され液体冷媒のプールに滴下される。
【0015】
別の好適実施例では、冷媒貯蔵器はガスタンクを有し、このガスタンクは所定の一定圧で冷媒を貯蔵する。冷媒貯蔵用のガスタンクを使用することにより、単純で安全な貯蔵ができる。高圧媒体を一定体積の密閉貯蔵器に貯蔵する際に常に問題となる、貯蔵器の破裂のリスクは、回避される。ガスタンクは、ガスタンクに導入される冷媒体積に応じて貯蔵体積を増大させることができるからである。また一定体積の貯蔵器の場合と同様、貯蔵器内の冷媒がある量を超えたときは、冷媒を貯蔵器から開放することができる。
【0016】
本発明の別の好適実施例では、冷媒貯蔵器は、冷却室との間に連通部を有し、圧縮された冷媒を回収する圧力タンクと、冷却室と圧力タンクとの間の連通部に設置され、冷却室から排出される冷媒を圧縮する圧縮手段と、冷却室と圧力タンクとの間の連通部に設置され、冷却室に供給される冷媒の圧力を低下させる圧力低下手段とを有する。冷媒の圧縮およびその冷媒の圧力タンクへの貯蔵により、小さな空間に多くの量の冷媒を貯蔵することができるため、冷却装置の小型化が可能となる。冷媒は、液体状態になるまで圧縮することができ、この液体状態で貯蔵することができる。その結果ガスタンクにおける貯蔵に比べて、多くの量の冷媒が小さな空間に貯蔵される。
【0017】
通常、冷却室の冷媒は大気圧よりわずかに高い圧力にされており、圧縮手段は、冷却室内の冷媒の圧力を超える圧力まで冷媒を圧縮するため、冷媒が冷却室に再輸送される前に、冷媒圧力を低下させる必要がある。圧力低下手段は、例えばバルブまたは絞り部によって、この圧力低下を行う。
【0018】
本発明の別の好適実施例では、冷媒貯蔵器は、冷媒を気体状態で収容するように適合される。この実施例は、安全で低コストな貯蔵器が必要な場合に好適である。気体状態の冷媒を貯蔵することにより、大気圧または大気圧よりわずかに高い圧力、また室温あるいは室温以下の室温付近の温度での貯蔵が可能となる。
【0019】
さらに別の好適実施例では、冷却室と冷媒貯蔵器は、冷媒としてヘリウムを収容するように適合される。ヘリウムは冷媒としての利用に特に適している。ヘリウムは、大気圧(約1013mbar)または大気圧よりもわずかに高い圧力では、約4K(絶対零度の4゜上)に液体/気体相変化温度があるからである。この温度は、各種超伝導材料が超伝導特性を示す温度まで各種超伝導体を冷却するには十分である。
【0020】
本発明の別の態様では、MR機器内の超伝導コイル組立体を冷却する冷却方法であって、超伝導コイル組立体は冷媒により冷却され、該冷媒は、冷却室において超伝導コイル組立体熱的に接触され、冷媒は冷蔵器によって冷却され、当該冷却方法は、前記冷却室の前記冷媒の少なくとも一部が、所定の温度を超えた場合、冷媒を前記冷却室から冷媒貯蔵器に輸送するステップと、前記冷却室の前記冷媒の少なくとも一部の温度が、前記所定の温度以下となった場合、前記冷媒貯蔵器から前記冷却室に冷媒を供給するステップと、を有する冷却方法が提供される。
【0021】
本発明の冷却方法は超伝導コイル組立体の安全な冷却を可能にし、異常な作動状態となったときでも、冷媒の消失がない。冷媒は、閉じた系内に維持される。本発明による冷却方法は、請求項1に関する特徴についての記載のような冷媒貯蔵器を冷却装置に追加設置することにより、既知の冷却装置で容易に行うことができる。これは、MR機器に含まれる超伝導材料の効果的な冷却方法を提供する。
【0022】
本発明の冷却方法は、前記冷媒が、前記冷却室内では気体および液体状態であって、気体状態での前記冷媒の前記輸送と供給は、前記冷却室内の前記冷媒の圧力から得られる信号によって制御され、前記冷媒は、前記冷却室において第1の所定の圧力を超えた場合、前記冷却室から前記冷媒貯蔵器に輸送され、前記冷媒は、前記冷却室における前記冷媒圧力が、第2の所定の圧力以下となった場合、前記冷媒貯蔵器から前記冷却室に供給される、ときには更に改善される。
【0023】
通常冷媒は、大気圧以上で大気圧近傍の第1の圧力で閉じた冷却室に収容されるため、冷却方法のこの実施例は特に好ましい。冷媒の一部にわずかな温度上昇が生じた場合でも、冷却室内部に圧力増加が生じる。この圧力増加によって、局部的な温度上昇を容易に検出することができる。冷媒の各部分が、所望の所定の温度以下にまで冷却されると、冷却室内部の圧力は、即座に第2の所定の圧力以下にまで戻る。この状態では、冷媒は冷却室に再輸送され、冷媒の前述の消失が補償される。第1および第2の所定の圧力は、同程度の圧力であっても良い。
【0024】
本発明による冷却方法の別の好適実施例では、輸送された冷媒は、圧縮されて冷却室の外部で圧縮状態で貯蔵され、減圧されて冷却室に供給される。この実施例では、冷媒が貯蔵器に導入される前に圧縮された場合、多くの冷媒を小さな空間に貯蔵することができるため、冷媒貯蔵器の小型化が可能となる。大部分のMR機器の冷却室は、大気圧近傍の圧力で作動するように調整されており、冷媒を冷却室に再輸送する前に、冷媒の減圧が必要である。圧縮はファンまたはブロワーで行うことができる。更なる高圧状態を得るため、圧縮機またはコンデンサを利用しても良い。減圧はバルブまたは絞り部によって行うことができるが、冷却室内部の圧力に応じて貯蔵器内部の圧縮速度が適合されるように、減圧を行う必要がある。冷媒が供給されたときに、冷却室内部の所定の圧力、通常は大気圧近傍の圧力を超えないように、減圧を行う必要がある。
【0025】
本発明の別の態様は、超伝導コイル組立体を有する超伝導磁石と、前記超伝導コイル組立体を冷却する前述のような冷却装置とを有するMR機器である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の好適実施例を以下、添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の第1の実施例は、円筒状冷却室20の内部に設置された超伝導コイル組立体10を有するMR結像装置を有する。コイル組立体10および冷却室20は、図1には断面で示されている。円筒状冷却室20は、円筒状検査空間30を覆い、円筒状検査空間30は、MRI装置で検査される人物を収容するように適合される。
【0028】
円筒状冷却室20は、冷却室20の上部に設置されたドーム21を有する。冷却室20には液体ヘリウム(41)が気体ヘリウム(42)とともに充填される。液体状態のヘリウム41量は、コイル組立体10が液体ヘリウム41に完全に浸漬する量とする。円筒状冷却室20の底部22には、完全に液体ヘリウムが充填され、一方冷却室20の上部23には、ある液面で液体ヘリウムが満たされ、その上部には気体状のヘリウム42が存在する。
【0029】
ドーム21は、気体冷媒がそこに捕集されるように設けられる。既知の物理的効果、およびこの気体ヘリウムのような流体の特性により、特にドームに捕集される気体ヘリウムは、液体ヘリウムおよび冷却室20の上部23に存在する気体ヘリウムの温度よりも高い温度を有する。
【0030】
冷蔵器50は、冷却室20の近傍に設置される。冷蔵器50は、冷却表面51を有し、この表面は、冷却室20のドーム21にまで延びている。冷却表面51の温度は、冷媒に要求される温度以下となるように制御され、コイル組立体10に超伝導特性が得られる。例えば、コイル組立体10の超伝導特性を発現させるために、液体ヘリウム温度を約4K以下にする必要がある場合、冷却表面51の温度は3.8Kとされる。ただし、ほとんどの超伝導材料の場合、液体ヘリウム温度は4.2乃至4Kで十分である。約4.2K以上の気体冷媒は冷却表面51で凝集され、重力によって滴下し、液体ヘリウムプール41に戻される。
【0031】
ドーム21の上部には第1の気体配管60の第1の端部が取り付けられ、この端部は冷却室20内で開放されている。気体配管60の第2の端部は、ガスタンク70に接続される。ガスタンク70には、大気圧に対して約300mmbarの圧力のヘリウムが貯蔵される。
【0032】
図1の配置では、気体配管60を介して冷却室20とガスタンク70間で、気体ヘリウムの自動輸送および再輸送が可能である。輸送および再輸送は、冷却室の圧力によって自動制御され、冷却室は大気圧に対して約300mpaで一定に維持される。冷蔵器の冷却容量が冷却室への熱輸送を超える場合は、冷却室内の圧力とガスタンク内の圧力の調整によって、ガスタンクへの冷媒の迅速な輸送が行われる。
【0033】
図2には、本発明の冷却装置の第2の実施例を示す。図2の実施例は、コイル組立体10、冷却室20、冷蔵器50および冷却室内の冷媒41、42については、図1の実施例と酷似している。図1と図2において同一の部品には、同一の参照符号を付してあり、これらについては詳細な説明はしない。
【0034】
図1の実施例とは異なり、図2の実施例では、2の気体配管60a’、a’’、b’、b’’が設けられる。第1の気体配管60a’の第1の部分は、ドーム21の上部に接続され、気体ヘリウムを圧縮機80に輸送するように配置される。圧縮機80は、気体ヘリウムを約100barまで圧縮するように設計される。圧縮ヘリウムは耐圧貯蔵器90に貯蔵される。この目的のため、第1の気体配管の第2の部分60a’’は、圧縮機80の圧力側をヘリウムガス貯蔵器90に接続する。
【0035】
第2の気体配管60b’、b’’は、ヘリウムガス貯蔵器90から冷却室20にヘリウムガスを輸送する役割を果たす。特に、ヘリウムガス貯蔵器90は、第2の気体配管60b’の第1の部分を介して圧力調整器100と接続される。圧力調整器100は、ヘリウムガスの圧力を大気圧に対して約300mbarに減圧する。圧力調整器100は、気体配管60b’’の第2の部分を介してドーム21の上部に接続される。従って減圧されたヘリウムガスは、ヘリウムガス貯蔵器90から冷却室20まで圧力調整器100を介して輸送される。
【0036】
通常、循環されるヘリウムガスの温度は、冷却室内のヘリウムガスの温度よりも高い。冷却されるヘリウムガスは、冷蔵器の冷却表面51に近接するドームに導入されるため、このガスは即座に冷却されて冷却表面51に凝集し、これにより超伝導コイル組立体10を必要な温度に冷却することが可能となる。
【0037】
圧力調整器100は、ドーム21内の気体圧力と一致する第2の気体配管60b’’の第2の部分の気体圧力に応じて、第2の気体配管60b'、b’’を開閉するように適合される。
【0038】
さらに圧力調整器100は、ドーム内の圧力に関する信号に応じて、圧縮機80を作動させまたは停止させるように適合される。例えば、第2の気体配管の第2の部分60b’’またはドーム21において、ある圧力、例えば大気圧に対して320mbarの圧力を超えた場合、圧縮機80が作動する。第2の所定の値、例えば大気圧に対して300bmarにまで圧力が低下した場合は、直ちに、圧縮機80が停止する。圧力が第3の所定の値、例えば大気圧に対して280mbarを下回った場合、直ちに圧力調整器によって第2の気体配管60bが開かれ、それにより冷却室にヘリウムガスが輸送される。
【0039】
ドーム21の圧力は、第1の気体配管60a’の第1の部分圧力と一致するため、代わりに圧力信号はこの部分から得ても良いことに留意する必要がある。
【0040】
図3には、本発明による冷却方法の好適実施例が示されており、冷媒は第1のステップS1において冷却室に収容される。このヘリウム冷媒が、D1の判断において、例えば大気圧に対して320mbarの圧力差を超える場合、ステップS2において前記ヘリウムの一部がヘリウム貯蔵器に輸送される。ステップS3では、D2の判断において、例えば冷却室と大気との圧力差が280mbar以下となるまで、ヘリウムはこのヘリウム貯蔵器に貯蔵される。この条件が満たされると、ステップS4により直ちに貯蔵器に貯蔵されたヘリウムの一部が、冷却室に戻される。
【0041】
あるいは、冷却室およびヘリウム貯蔵をそれぞれ配管で接続して、気体冷媒を連通させ、冷却室とヘリウム貯蔵器の圧力を常時一定に維持することも可能である。これによりいかなる制御手段も設けず、単に冷却室と貯蔵器の接続された空間内の圧力を合わせるだけで、ヘリウムの輸送および再輸送を容易に行うことができる。
【0042】
図4には、本発明による冷却方法の第2の好適実施例を示す。同様のステップS1および判断D1において、冷媒は貯蔵される。この判断は冷却室と大気との圧力差に応じて行われる。D1の条件が満たされた場合、冷媒はステップS2aにおいて、圧縮機に輸送される。次にステップS2bにおいて、冷媒は最大圧力が大気に対して100barとなるまで圧縮され、ステップS2cにおいて冷媒貯蔵器に輸送される。
【0043】
図3の実施例と同様に、ステップS3において図3と同様のD2の判断に基づいて、冷媒は貯蔵器に貯蔵され、ステップS4aにおいて、ヘリウムは絞り部に輸送される。この絞り部では、ステップS4bにおいて、冷媒は大気圧に対して300mbarの圧力まで減圧され、その後ステップS4cにおいて、冷却室に戻される。
【0044】
本発明はMR機器、特にゼロボイルオフ作動に適合された機器の冷却装置を提供する。冷却装置は、冷却装置の冷蔵器の冷却力が低下した場合、および冷却室への熱輸送が長期間継続された場合でも、冷媒のいかなる漏れも回避されるように調整されている。冷媒の再充填に必要なコストを削減することができる。冷媒として一般に利用される、例えばヘリウムのような有限な資源を、浪費することはない。本発明の方法は、冷媒の効率的な利用を可能にし、別途高価な設備を設置しなくても、従来のMR機器および新しく設計されるMR機器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施例の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施例の概略図である。
【図3】本発明の冷却方法の第1の好適実施例のフローチャートである。
【図4】本発明の冷却方法の第2の好適実施例のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR機器内の超伝導コイル組立体を冷却する冷却装置であって、
前記超伝導コイル組立体と熱的に接触する冷媒を収容するように適合された冷却室と、
前記冷媒を冷却する冷蔵器と、
を有し、当該冷却装置は、
前記冷却室との間に連通部を有する冷媒貯蔵器であって、
前記冷却室内の前記冷媒の少なくとも一部が、第1の所定の温度を超えた場合、前記冷却室から冷媒を回収し、
前記冷却室内の前記冷媒の少なくとも一部が、第2の所定の温度以下となった場合、前記冷却室に冷媒を供給する、
ように適合された冷媒貯蔵器を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷却室は、液体および気体状態の冷媒を収容するように適合され、前記連通部は、前記冷却室の一部に接続され、該冷却室の一部は、気体冷媒を収容するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷蔵器は、通常作動時に前記冷却室への熱輸送を補償するのに十分な冷却能力を有し、ゼロボイルオフ作動が可能であることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却室内の前記冷媒圧力から得られる信号によって、前記冷媒の回収および供給を制御する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷蔵器は、前記冷媒と熱的に接触する冷却表面を有し、該冷却表面は、前記冷却室まで延び、特に気体冷媒を収容するように適合された前記冷却室の一部にまで延びることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷媒貯蔵器は、前記冷媒を所定の一定圧力で貯蔵するガスタンクを有することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記冷媒貯蔵器は、
前記冷却室との間に連通部を有し、圧縮された前記冷媒を回収する圧力タンクと、
前記冷却室と前記圧力タンクとの間の連通部に設置され、前記冷却室から排出される前記冷媒を圧縮する圧縮手段と、
前記冷却室と前記圧力タンクとの間の連通部に設置され、前記冷却室に供給される前記冷媒の圧力を低下させる圧力低下手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記冷媒貯蔵器は、気体状態で前記冷媒を収容するように適合されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷却室および前記冷媒貯蔵器は、冷媒としてヘリウムを収容するように適合されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項10】
MR機器内の超伝導コイル組立体を冷却する冷却方法であって、前記超伝導コイル組立体は、冷媒によって冷却され、該冷媒は、冷却室において前記超伝導コイル組立体と熱的に接触され、前記冷媒は冷蔵器によって冷却され、当該冷却方法は、
前記冷却室の前記冷媒の少なくとも一部が、所定の温度を超えた場合、冷媒を前記冷却室から冷媒貯蔵器に輸送するステップと、
前記冷却室の前記冷媒の少なくとも一部の温度が、前記所定の温度以下となった場合、前記冷媒貯蔵器から前記冷却室に冷媒を供給するステップと、
を有する冷却方法。
【請求項11】
前記冷媒は、前記冷却室内では気体および液体状態であって、気体状態での前記冷媒の前記輸送と供給は、前記冷却室内の前記冷媒の圧力から得られる信号によって制御され、
前記冷媒は、前記冷却室において第1の所定の圧力を超えた場合、前記冷却室から前記冷媒貯蔵器に輸送され、
前記冷媒は、前記冷却室における前記冷媒圧力が、第2の所定の圧力以下となった場合、前記冷媒貯蔵器から前記冷却室に供給されることを特徴とする請求項10に記載の冷却方法。
【請求項12】
前記輸送された冷媒は圧縮されて、前記冷却室の外部で圧縮された状態で貯蔵され、前記輸送された冷媒は減圧されて、前記冷却室に供給されることを特徴とする請求項10に記載の冷却方法。
【請求項13】
超伝導コイル組立体を有する超伝導磁石と、前記超伝導コイル組立体を冷却する請求項1に記載の冷却装置とを有するMR機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502778(P2006−502778A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544534(P2004−544534)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004173
【国際公開番号】WO2004/036604
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】