説明

MRI装置

【課題】同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI画像を生成するMRI装置において、被検者の撮像時の負担を軽減すると共に、画像診断に最適なMRI画像を提供すること。
【解決手段】MRI装置10は、非対称パルス波形設定部61、パルス印加制御部62及び信号受信・画像再構成部63を有する。非対称パルス波形設定部61は、前後非対称のRFパルスの波形を設定する。パルス印加制御部62は、RFパルスの波形に従ったパルス印加を制御する。信号受信・画像再構成部63は、パルス印加に基づき受信される信号を基に画像を再構成する。再構成された画像は表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI(magnetic resonance imaging)画像を生成するMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをそのラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から被検体の断面のMRI画像を再構成する撮像法を用いる装置である。
【0003】
MRI装置を用いて水(自由水)励起によって受信されるMR信号を基にMRI画像を生成する場合、断面内に在る脂肪(結合水)は化学シフトに因ってアーチファクト等の原因になるから、脂肪からのMR信号はなるべく収集しないようにする脂肪抑制の技術が必要不可欠となる。一方、脂肪励起によって受信されるMR信号を基にMRI画像を生成する場合、断面内に在る水は化学シフトに因ってアーチファクト等の原因になるから、水からのMR信号はなるべく収集しないようにする水抑制の技術が必要不可欠となる。これら脂肪抑制や水抑制を行なうために、従来、各種のパルスシーケンスを使用する手法が知られている。その一つに周波数選択励起パルスで脂肪又は水からの信号抑制を行なう方法がある。その方法では、周波数選択励起パルスとして、例えば、水又は脂肪のフリップ角比が1−2−1系列や、1−3−3−1系列の連続したRF波(バイノミアルパルス(binomial pulse)を用いる。
【0004】
なお、本発明に関連する従来技術として、次のような文献が開示されている。
【特許文献1】特開2002−248092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術において、水励起及び脂肪励起の特性を上げようとするとTE(echo time)及びTR(repetition time)等が長くなることで全体の撮像時間が長くなり、被検者に負担がかかっていた。
【0006】
また、従来技術によると、場合によっては、サセプタビリティ(磁化率)が弱くなることで水と脂肪との分離特性が向上しない。また、パルス長が長くなる程S/Nが低下するという問題が発生していた。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、被検者の撮像時の負担を軽減できるMRI装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、画像診断に最適なMRI画像を提供できるMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るMRI装置は、上述した課題を解決するために、前後非対称のRFパルスの波形を設定する波形設定部と、前記RFパルスの波形に従ったパルス印加を制御する印加制御部と、前記パルス印加に基づき受信される信号を基に画像を再構成する再構成部と、前記画像の表示を制御する表示制御部と、を有する。
【0010】
本発明に係るMRI装置は、上述した課題を解決するために、同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI画像を生成するMRI装置において、前記バイノミアルパルスの波形内の波数が3以上の場合、前記バイノミアルパルスの波形から一部分の波形を削除し、残部分の波形に、前記一部分の波形を基に演算される強度分を加算することで変形バイノミアルパルスの波形を生成して設定する波形設定部と、前記波形設定部によって設定される前記変形バイノミアルパルスの波形に従ったパルス印加を制御する印加制御部と、を有する。
【0011】
本発明に係るMRI装置は、上述した課題を解決するために、同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI画像を生成するMRI装置において、前記バイノミアルパルスの波形のうち一部分の波形がない残部分の波形に、前記一部分の波形に用いられるべき強度又はフリップ角を分配した変形バイノミアルパルスの波形を設定する波形設定部と、前記波形設定部によって設定される前記変形バイノミアルパルスの波形に従ったパルス印加を制御する印加制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るMRI装置によると、被検者の撮像時の負担を軽減できる。
【0013】
また、本発明に係るMRI装置によると、画像診断に最適なMRI画像を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るMRI装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るMRI装置の実施形態のハードウェア構成を示す概略図である。
【0016】
図1は、同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI画像を生成するための本実施形態のMRI装置10を示す。このMRI装置10は、大きくは、撮像系11と制御系12とから構成される。
【0017】
MRI装置10の撮像系11には、架台(図示しない)が備えられ、その架台内に、静磁場磁石21と、この静磁場磁石21の内部であって静磁場磁石21と同軸上に筒状のシムコイル22と、静磁場磁石21の内部で筒状に形成される傾斜磁場コイルユニット23とを収容する。また、撮像系11には、RFコイル24と、患者Pを架台内に進退させる寝台機構25とが設けられる。
【0018】
一方、MRI装置10の制御系12には、静磁場電源31、傾斜磁場電源33、シムコイル電源32、送信器34、受信器35、シーケンスコントローラ(シーケンサ)36及びコンピュータ37が設けられる。
【0019】
静磁場磁石21は、静磁場電源31と接続される。静磁場電源31から供給された電流によって撮像領域(FOV:field of view)に静磁場を形成させる。
【0020】
シムコイル22はシムコイル電源32と接続され、シムコイル電源32からシムコイル22に電流を供給して、静磁場を均一化する。
【0021】
傾斜磁場コイルユニット23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成される。また、傾斜磁場コイルユニット23の内側には寝台機構25の天板26が設けられ、その天板26には患者Pが載置される。天板26は、寝台機構25によって移動させられる。
【0022】
また、傾斜磁場コイルユニット23は、傾斜磁場電源33と接続される。傾斜磁場コイルユニット23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源33のX軸傾斜磁場電源33x、Y軸傾斜磁場電源33y及びZ軸傾斜磁場電源33zとそれぞれ接続される。
【0023】
そして、X軸傾斜磁場電源33x、Y軸傾斜磁場電源33y及びZ軸傾斜磁場電源33zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成する。
【0024】
RFコイル24はマルチコイルによって構成され、送信器34及び受信器35と接続される。RFコイル24は、送信器34から高周波信号を受けて患者Pの撮像部位(被検体)にラーモア周波数(共鳴周波数)の高周波(RF:radio frequency)信号を送信する機能と、撮像部位内部の原子核スピンの高周波信号による励起に伴って発生したNMR(nuclear magnetic resonance)信号を受信して受信器35に与える機能を有する。なお、RFコイル24の送受方式としては、送信コイルと受信コイルとを1つのコイルで兼用する方式の他、送信コイルと受信コイルに別々のコイルを用いる方式も存在する。そして、図1に示すMRI装置10では、RFコイル24の一例として送信コイルと受信コイルとを1つのコイルで兼用する方式である頭部用コイルを例示している。
【0025】
一方、制御系12のシーケンスコントローラ36は、寝台機構25、傾斜磁場電源33、送信器34及び受信器35と接続される。シーケンスコントローラ36は、図示しないプロセッサ、例えばCPU(central processing unit)及びメモリを備えており、寝台機構25、傾斜磁場電源33、送信器34及び受信器35を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源33に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する。
【0026】
また、シーケンスコントローラ36は、記憶した所定のシーケンスに従って寝台機構25を駆動させることによって、天板26を架台に対してZ軸方向に進退させる。さらに、シーケンスコントローラ36は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源33、送信器34及び受信器35を駆動させることによって、架台内にX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる。
【0027】
送信器34は、シーケンスコントローラ36から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える。一方、受信器35は、RFコイル24から受けたNMR信号に所要の信号処理を実行すると共にA/D(analog to digital)変換することにより、受信器35からデジタル化されたNMR信号である生データ(raw data)を生成する。また、生成した生データをシーケンスコントローラ36に与える。シーケンスコントローラ36は、受信器35からの生データを受けてコンピュータ37に与える。
【0028】
コンピュータ37は、プロセッサとしてのCPU51、メモリ52、HD(hard disk)53、IF(interface)54、表示装置55及び入力装置56等、コンピュータとしての基本的なハードウェアから構成される。CPU51は、共通信号伝送路としてのバスBを介して、コンピュータ37を構成する各ハードウェア構成要素52,53,54,55及び56に相互接続されている。また、コンピュータ37は、IF54を介して病院基幹のLAN(local area network)等のネットワークNに相互通信可能に接続されることで、ネットワークN上の図示しない画像管理装置(サーバ)から後述する過去の画像を取得することができる。
【0029】
なお、コンピュータ37には、各種アプリケーションプログラムやデータを記憶したメディアから各種アプリケーションプログラムやデータを読み込むドライブを具備する場合もある。
【0030】
CPU51は、メモリ52に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU51は、HD53に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されIF54で受信されてHD53にインストールされたプログラムを、メモリ52にロードして実行する。
【0031】
メモリ52は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備え、BIOS(basic input/output system)、IPL(initial program loading)及び画像を記憶したり、CPU51のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いたりする記憶装置である。
【0032】
HD53は、磁性体を塗布又は蒸着した金属のディスクによって構成され、読み取り装置(図示しない)に着脱不能で内蔵されている。HD53は、コンピュータ37にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)やMRI画像等の画像データを記憶する記憶装置である。また、OSに、ユーザに対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置56によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0033】
IF54は、各規格に応じた通信制御を行なう通信制御装置である。IF54により、コンピュータ37は、ネットワークN網に接続することができる。
【0034】
表示装置55は、D/A(digital to analog)変換回路及びモニタ等を含み、モニタを介してMRI画像等を表示する。
【0035】
入力装置56としては、技師等のオペレータによって操作が可能なキーボード及びマウス等が挙げられ、操作に従った入力信号がCPU51に送られる。
【0036】
図2は、本実施形態のMRI装置10の機能を示すブロック図である。
【0037】
図1に示すCPU51(又はシーケンスコントローラ36のCPU)がプログラムを実行することによって、図2に示すように、非対称パルス波形設定部61、パルス印加制御部62及び信号受信・画像再構成部63として機能する。
【0038】
非対称パルス波形設定部61は、前後非対称のRFパルス(以下、「非対称パルス」という。)の波形、例えば、励起中心までのフリップ角の増加割合と、励起中心以降のフリップ角の減少割合とが異なる非対称パルスの波形を設定する機能を有する。例えば、非対称パルス波形設定部61は、非対称パルスの波形を設定するために、バイノミアルパルス波形設定部61a、変形バイノミアルパルス波形生成部61b及び変形バイノミアルパルス波形設定部61cを有する。
【0039】
バイノミアルパルス波形設定部61aは、入力装置56を介したオペレータの操作に従って、所望のバイノミアルパルスの波形を設定する機能を有する。
【0040】
図3は、バイノミアルパルスの波形の一例を示す図である。
【0041】
図3に示すように、バイノミアルパルスの波形として、自由水又は結合水のフリップ角(共鳴周波数の強度)比が1−1系列、1−2−1系列、1−3−3−1系列、1−4−6−4−1系列、1−5−10−10−5−1系列、1−6−15−20−15−6−1系列等が存在する。
【0042】
また、図2に示す変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、バイノミアルパルス波形設定部61aによって設定されるバイノミアルパルスの波形内の波数が3以上の場合、バイノミアルパルスの波形から一部分(削除部分)の波形を削除し、残部分(加算部分)の波形に、削除部分の波形を基に演算されるフリップ角分を加算することで変形バイノミアルパルスの波形を生成する機能を有する。例えば、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、加算部分の波形に、削除部分の波形を基に演算されるフリップ角分を均等に加算して総フリップ角をバイノミアルパルスの波形に合わせることで、変形バイノミアルパルスの波形を生成する構成とする。また、例えば、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、加算部分の波形に、削除部分の波形を基に演算されるフリップ角分を割合的に加算して総フリップ角をバイノミアルパルスの波形に合わせることで、変形バイノミアルパルスの波形を生成する構成とする。
【0043】
なお、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、バイノミアルパルスの波形を構成する波数が奇数の場合、バイノミアルパルスの波形のうち先頭から励起中心までの波によって加算部分の波形を形成する。一方、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、バイノミアルパルスの波形を構成する波数が偶数の場合、バイノミアルパルスの波形のうち先頭から励起中心直後までの波によって加算部分の波形を形成する。なお、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、バイノミアルパルスの波形を構成する波数が偶数の場合、バイノミアルパルスの波形のうち半分の波によって加算部分の波形を形成してもよい。
【0044】
図4は、変形バイノミアルパルスの波形の生成例を説明するための図である。また、図5乃至図7は、変形バイノミアルパルスの波形の一例を示す図である。
【0045】
図4に示す1−3−3−1系列のバイノミアルパルスの波形内の波数は偶数である。よって、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、1−3−3−1系列のバイノミアルパルスの波形に基づく総フリップ角と、変形バイノミアルパルスの波形に基づく総フリップ角とを等しくするために、削除部分の波形を加算部分に均等に加算した上で、フリップ角比が(4/3)−(10/3)−(10/3)系列の変形バイノミアルパルスの波形(図5に図示)を生成する。
【0046】
また、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、1−3−3−1系列のバイノミアルパルスの波形に基づく総フリップ角と、変形バイノミアルパルスの波形に基づく総フリップ角とを等しくするために、削除部分の波形を加算部分に割合的に加算した上で、フリップ角比が(8/7)−(24/7)−(24/7)系列の変形バイノミアルパルスの波形(図6に図示)を生成する。
【0047】
加えて、図4に示す1−4−6−4−1系列のバイノミアルパルスの波形内の波数は奇数である。よって、変形バイノミアルパルス波形生成部61bは、1−4−6−4−1系列のバイノミアルパルスの波形に基づく総フリップ角と、変形バイノミアルパルスの波形に基づく総フリップ角とを等しくするために、削除部分の波形を加算部分に均等に加算した上で、フリップ角比が(8/3)−(17/3)−(23/3)系列の変形バイノミアルパルスの波形(図7に図示)を生成する。
【0048】
さらに、図2に示す変形バイノミアルパルス波形設定部61cは、変形バイノミアルパルス波形生成部61bによって複数のフリップ角比の変形バイノミアルパルスの波形が生成される場合、入力装置56を介したオペレータの操作に従って、所望の変形バイノミアルパルスの波形を設定する機能を有する。ここで、変形バイノミアルパルス波形設定部61cは、バイノミアルパルス波形設定部61aによって設定されるバイノミアルパルスの波形と、変形バイノミアルパルス波形生成部61bによって生成される変形バイノミアルパルスの波形とを共に表示装置55のモニタを介して表示させ、その中から、所望のバイノミアルパルスの波形又は変形バイノミアルパルスの波形を選択できるようにしてもよい。
【0049】
パルス印加制御部62は、シーケンスコントローラ36を介して送信器34を制御して、非対称パルス波形設定部61によって設定される非対称パルスの波形に従った周波数選択励起パルスの印加を制御する機能を有する。
【0050】
図8は、バイノミアルパルスの波形に従ったパルスシーケンスの一例を示す図である。なお、図8は、フリップ角比が1−3−3−1系列のバイノミアルパルスの波形を含むパルスシーケンスを示している。また、図9は、自由水の共鳴周波数のバイノミアルパルスの波形に従ったパルスシーケンスを基に撮像を行なって再構成されるMRI画像の一例を示す図である。なお、図9は、フリップ角比が1−1系列及び1−3−3−1系列のバイノミアルパルスの波形を含むパルスシーケンスを基に撮像を行なって再構成されるMRI画像の一例をそれぞれ示す図である。
【0051】
フリップ角比が1−1系列のバイノミアルパルスの波形に従ったパルスシーケンスによると、図9の左側のMRI画像上に示すように、3ヶ所(図中の破線部分)の脂肪の消え残りが現われている。また、フリップ角比が1−3−3−1系列のバイノミアルパルスの波形に従ったパルスシーケンスによると、図9の右側のMRI画像上に示すように脂肪は消滅するが、パルス長が長いためにS/N(signal to noise)が低下する。
【0052】
図10は、非対称パルス波形設定部61によって設定される非対称パルスの波形に従ったパルスシーケンス(フィールドエコー法)の一例を示す図である。なお、図10は、変形バイノミアルパルス波形設定部61cによって設定される(8/7)−(24/7)−(24/7)系列の変形バイノミアルパルスの波形を含むパルスシーケンスを示している。
【0053】
図10に示すように、変形バイノミアルパルスの波形を含むパルスシーケンスを採用することにより、図8に示すバイノミアルパルスの波形を含むパルスシーケンスと比較してパルス長が短縮される結果、TE及びTRが短縮されることになり、その分、撮像時間が短縮される。
【0054】
また、図2に示す信号受信・画像再構成部63は、シーケンスコントローラ36を介して受信器35を制御して、NMR信号の受信を制御する機能を有する。また、信号受信・画像再構成部63は、受信されるNMR信号を基にMRI画像を再構成する機能を有する。信号受信・画像再構成部63によって再構成されるMRI画像は、HD53等の記憶装置に記憶されたり、表示装置55のモニタを介して表示されたりする。
【0055】
図11は、自由水の共鳴周波数の非対称パルスの波形に従ったパルスシーケンスを基に撮像を行なって再構成されるMRI画像の一例を示す図である。なお、図11は、(8/7)−(24/7)−(24/7)系列の変形バイノミアルパルスの波形を含むパルスシーケンスを基に撮像を行なって再構成されるMRI画像の一例を示す図である。
【0056】
図11に示すように、図9の左側のMRI画像上に現われていた脂肪の消え残りが消滅しており、水励起使用時の分離特性の向上、サセプタビリティによるMRI画像の画質の劣化(脂肪抑制効果の低下)の問題点が改善される。また、変形バイノミアルパルスによるとバイノミアルパルスと比較してパルス長が短縮されるので、図11に示すように、図9の右側のMRI画像と比較して、S/Nの低下を抑止することができる。
【0057】
ここで、図10に示すパルスシーケンスにて水励起を行なった場合のMRI画像を用いてMRI装置10の動作における効果を説明したが、MRI装置10によると、脂肪励起使用時の分離特性の向上、サセプタビリティによる画質の劣化(水抑制効果の低下)の問題点をも改善しうる。
【0058】
なお、MRI装置10によると、RFコイル24がマルチコイルによって構成されているので、マルチコイルを被検者の関心領域に配置して、マルチコイルから並列的にNMR信号を受信して処理するMRI画像を再構成するパラレルイメージング(PI:parallel imaging)法を併用して撮像を行なうことができる。PI法によれば、MRI画像の再構成に必要な位相エンコードの数を表面コイルの数の分だけ減らすことができるため撮影時間を短縮することができる。
【0059】
また、MRI装置10によると、RFコイル24がマルチコイルによって構成されているので、マルチコイルを被検者の関心領域に配置して、マルチコイルから並列的にRFパルスを送信するトランスミットセンス(transmit sense)法を併用して撮像を行なうことができる。
【0060】
また、撮像のタイミングで、図2に示すバイノミアルパルス波形設定部61aによってバイノミアルパルスを設定した後、変形バイノミアルパルス生成部61bによって変形バイノミアルパルスを生成する構成としてMRI装置10を説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、MRI装置10は、予め、変形バイノミアルパルス生成部61bによって各種バイノミアルパルスに対して変形バイノミアルパルスを生成して対応付けて記憶しておき、撮像のタイミングで、バイノミアルパルス波形設定部61aによってバイノミアルパルスが設定されると、設定されたバイノミアルパルスに対応付けられる変形バイノミアルパルスを読み出して設定する構成としてもよい。
【0061】
本実施形態のMRI装置10によると、パルス長が短縮される結果、TE及びTRが短縮されて撮像時間を短縮できるので、被検者の撮像時の負担を軽減することができる。
【0062】
また、本実施形態のMRI装置10によると、画像診断に最適なMRI画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るMRI装置の実施形態のハードウェア構成を示す概略図。
【図2】本実施形態のMRI装置の機能を示すブロック図。
【図3】バイノミアルパルスの波形の一例を示す図。
【図4】変形バイノミアルパルスの波形の生成例を説明するための図。
【図5】変形バイノミアルパルスの波形((4/3)−(10/3)−(10/3))の一例を示す図。
【図6】変形バイノミアルパルスの波形((8/7)−(24/7)−(24/7))の一例を示す図。
【図7】変形バイノミアルパルスの波形((8/3)−(17/3)−(23/3系列))の一例を示す図。
【図8】バイノミアルパルスの波形に従ったパルスシーケンスの一例を示す図。
【図9】自由水の共鳴周波数のバイノミアルパルスの波形に従ったパルスシーケンスを基に撮像を行なって再構成されるMRI画像の一例を示す図。
【図10】非対称パルスの波形に従ったパルスシーケンスの一例を示す図;及び
【図11】自由水の共鳴周波数の非対称パルスの波形に従ったパルスシーケンスを基に撮像を行なって再構成されるMRI画像の一例を示す図。
【符号の説明】
【0064】
10 MRI装置
11 撮像系
12 制御系
36 シーケンスコントローラ
37 コンピュータ
51 CPU
52 メモリ
61 非対称パルス波形設定部
61a バイノミアルパルス波形設定部
61b 変形バイノミアルパルス波形生成部
61c 変形バイノミアルパルス波形設定部
62 パルス印加制御部
63 信号受信・画像再構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後非対称のRFパルスの波形を設定する波形設定部と、
前記RFパルスの波形に従ったパルス印加を制御する印加制御部と、
前記パルス印加に基づき受信される信号を基に画像を再構成する再構成部と、
前記画像の表示を制御する表示制御部と、
を有することを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
前記波形設定部は、励起中心までのフリップ角の増加割合と、前記励起中心以降のフリップ角の減少割合とが異なる前記RFパルスの波形を設定する構成とすることを特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記波形設定部は、波数が3以上である所望のバイノミアルパルスの波形を設定する第1波形設定部と、前記バイノミアルパルスの波形から一部分の波形を削除し、残部分の波形に、前記一部分の波形を基に演算されるフリップ角分を加算することで、前記RFパルスとしての変形バイノミアルパルスの波形を生成して設定する第2波形設定部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記第2波形設定部は、前記バイノミアルパルスの波形を構成する波数が奇数の場合、前記バイノミアルパルスの波形のうち先頭から前記励起中心までの波によって前記残部分の波形を形成する一方、前記波数が偶数の場合、前記バイノミアルパルスの波形のうち先頭から前記励起中心直後までの波によって前記残部分の波形を形成する構成とすることを特徴とする請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記第2波形設定部は、前記残部分の波形に、前記一部分の波形から演算される前記フリップ角分を均等に加算して総フリップ角を前記バイノミアルパルスの波形に合わせることで、前記変形バイノミアルパルスの波形を生成する構成とすることを特徴とする請求項3に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記第2波形設定部は、前記残部分の波形に、前記一部分の波形から演算される前記フリップ角分を割合的に加算して総フリップ角を前記バイノミアルパルスの波形に合わせることで、前記変形バイノミアルパルスの波形を生成する構成とすることを特徴とする請求項3に記載のMRI装置。
【請求項7】
同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI画像を生成するMRI装置において、
前記バイノミアルパルスの波形内の波数が3以上の場合、前記バイノミアルパルスの波形から一部分の波形を削除し、残部分の波形に、前記一部分の波形を基に演算される強度分を加算することで変形バイノミアルパルスの波形を生成して設定する波形設定部と、
前記波形設定部によって設定される前記変形バイノミアルパルスの波形に従ったパルス印加を制御する印加制御部と、
を有することを特徴とするMRI装置。
【請求項8】
同一核種の励起にバイノミアルパルスを利用することでMRI画像を生成するMRI装置において、
前記バイノミアルパルスの波形のうち一部分の波形がない残部分の波形に、前記一部分の波形に用いられるべき強度又はフリップ角を分配した変形バイノミアルパルスの波形を設定する波形設定部と、
前記波形設定部によって設定される前記変形バイノミアルパルスの波形に従ったパルス印加を制御する印加制御部と、
を有することを特徴とするMRI装置。
【請求項9】
前記印加制御部は、自由水の共鳴周波数に従って前記パルス印加を制御する構成とすることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項10】
前記印加制御部は、結合水の共鳴周波数に従って前記パルス印加を制御する構成とすることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項11】
マルチコイルとしてのRFコイルを用いることによって、前記再構成部は、前記マルチコイルから並列的に前記信号を受信する構成とすることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項12】
マルチコイルとしてのRFコイルを用いて、前記マルチコイルから並列的に前記RFパルスを送信する構成とすることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載のMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−131623(P2009−131623A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278251(P2008−278251)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】