説明

N−アルキル−N−メチル−3−ヒドロキシ−3−(2−チエニル)−プロピルアミンの製造方法

本発明は、主な工程として不斉水素化を、及び所望により一連のその後の工程を使用することによる工業規模でのキラル-N-置換-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンの改良製造方法に関する。ロジウム及び(2R,4R)-4-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノカルボニル-ピロリジンからなる触媒系を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業規模でのロジウム触媒不斉水素化による(S)-N-置換-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンの改良製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンは、医薬活性物質デュロキセチン又は(S)-N-メチル-3-(1-ナフチルオキシ)-3-チエニルプロピルアミンの価値ある合成用中間生成物であり、それは、抗うつ剤又は尿失禁用薬剤として医薬として使用されるノルエピネフリン及びセロトニン取り込み阻害薬に属し、商業上非常に興味深いものである。キラル(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンの化学構造を一般式Iに示す:
【0003】
【化1】

【0004】
(式中R1は、一つ以上のフェニル基で所望により置換されていてもよいC1-6アルキル基を示す)。
先行技術から公知のデュロキセチンの製造方法としては、2-アセチルチオフェンとジメチルアミン及びホルムアルデヒドとのマンニッヒ反応において、3-ジメチルアミノ-1-(2-チエニル)-プロパノンを得る反応、その後の還元、1-フルオロナフタレンとの反応及び光学活性酸でのラセミ化合物切断(racemate cleaving)又はEP 0 273 658によるキラル固定相でのクロマトグラフィー;又はキラルリガンド[(2R,2S)-(-)4-ジメチルアミノ-1,2-ジフェニル-3-メチル-2-ブタノール]の存在下、水素化リチウムアルミニウムでの不斉還元による光学活性アルコールの形成、EP 0 457 559による1-フルオロナフタレンとのその後の反応が挙げられる。
さらに、国際特許出願WO 03/070720は、3-N-ベンジル-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-プロパノンの、対応するN-アルコキシカルボニル-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-プロパノンへの転換、及びその次の、例えば、キラル・オキサザボリジン触媒を使用するそれらのエナンチオ選択的還元を提案している。
【0005】
さらに、T. Ohkumaら(Organic Letters 2000年、第2巻、No. 12、1749〜1751頁)は、tert-ブトキシドカリウムの存在下、キラル・ルテニウム触媒を使用する、3-ジメチルアミノ-1-(2-チエニル)-プロパノンのエナンチオ選択的水素化を記載している。
国際特許出願 WO 2004/011452は、ジアミンの存在下、キラル・ルテニウム触媒を使用する、置換3-アミノ-1-(2-チエニル)-プロパノンのエナンチオ選択的水素化を提案している。
しかし、得られる光学純度が不満足であるか、或いは、得ることが困難でありかつ多くの場合不安定である多量のキラル還元系をエナンチオ選択的還元に使用しなければならないため、先行技術に記載の方法は、工業規模での(S)-N-置換N-メチル-3-ヒドロキシ-(2-チエニル)-プロピルアミンの製造にあまり適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の本質的な目的の一つは、一般式Iの(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンを、高い光学及び化学純度で製造できる方法を提供することである。この方法において、望ましくない(R)-エナンチオマーでの薬剤デュロキセチンの汚染のリスクは最小限になると考えられる。
本発明の更なる目的は、一般式Iの実質的にエナンチオマー的に純粋の(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンを、容易に得られる出発材料から出発して、単純な手法で製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、一般式Iの(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンは、一般式IIの対応するN-アルキル-N-メチルアミノ-1-(2-チエニル)-プロパノンを、ジアミンの非存在下、触媒系としてロジウム及びキラル二座ホスフィンリガンドの存在下で不斉水素化にかけた場合、良好な収率及び非常に良好な光学純度において工業規模で得られることがここで見い出された。
本発明は、一般式Iの、キラルN-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン又はそれらの酸付加塩:
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1は、一つ以上のフェニル基により置換されていてもよいC1-6のアルキル基を示す)
を、一般式IIのプロキラル1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン又はそれらの酸付加塩:
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R1は、前記定義のとおりである)
から出発して製造する方法であって、一般式IIの化合物を、ロジウム、(2R,4R)-4-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノカルボニル-ピロリジン、所望により不活性希釈剤及び弱塩基からなる触媒系の存在下で、不斉水素化に供する前記方法に関する。弱塩基が、三級アミン、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩又は遊離塩基1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンであるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
用語「C1-6−アルキル」(他の基の一部であるものを含む)は、炭素数1〜6の分岐及び非分岐アルキル基を意味し、従って、用語「C1-6アルキル」は、炭素数1〜4の分岐及び非分岐アルキル基を意味する。炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。これらの例としては:メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチル又はヘキシルが挙げられる。所望により、略語Me、Et、n-Pr、i-Pr、n-Bu、i-Bu、t-Bu等を、前記基に使用してもよい。特に規定しない限り、定義プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルは、当該基の全ての考えられ得る異性体型を含む。従って、例えば、プロピルとしては、n-プロピル及びイソ-プロピルを含み、ブチルは、イソ-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等を含む。
【0013】
用語「一つ以上のフェニル基により所望により置換されている」は、一つ以上の隣接又は非隣接炭素原子上の一つ以上、好ましくは一つ、二つ又は三つの水素原子がフェニル基により置換されている分岐及び非分岐アルキル基を意味する。
R1が、メチル、エチル、イソ-プロピル、tert-ブチル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、ジフェニルメチル又はトリチル、具体的にはメチル又はベンジルを示す前記方法が好ましい。
前記方法は、プロキラル1-(N-N-ジメチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンから出発するキラルN-N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン又はそれらの酸付加塩、又はプロキラル1-(N-ベンジル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン又はそれらの酸付加塩、具体的には塩酸塩から出発するキラルN-ベンジル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミノ又はそれらの酸付加塩の製造に特に好ましい。
【0014】
好ましい方法において、不斉水素化は、0℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃、特に20℃〜40℃の温度範囲で行われる。
また、好ましくは、不斉水素化が、1バール超200バール以下、好ましくは10バール〜150バール、特に40〜120バールの圧力で行われる方法である。
使用される不活性希釈剤は、共にプロトン性溶媒、例えばアルコール及び/又は水又は非プロトン性極性溶媒、例えばエーテル及び/又はアミド又はラクタム及び/又はそれらの混合物であってもよい。水を、所望により、すべての溶媒に加えてもよい。使用されるプロトン性溶媒は、好ましくは、分岐又は非分岐のC1−C8アルカノールである。
【0015】
用語「C1-8-アルコール」は、1〜8の炭素原子及び1又は2のヒドロキシ基を有する分岐及び非分岐アルコールを意味する。従って、用語「C1-4アルコール」は、1〜4の炭素原子及び1又は2のヒドロキシ基を有する分岐及び非分岐アルキル基を意味する。炭素数1〜4のアルコールが好ましい。これらの例としては:メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、イソ-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソ-ペンタノール、ネオ-ペンタノール、又はヘキサノールが挙げられる。所望により、略語MeOH、EtOH、n-PrOH、i-PrOH、n-BuOH、i-BuOH、t-BuOH等を前記分子に関して使用してもよい。特に規定しない限り、定義プロパノール、ブタノール、ペンタオール及びヘキサノールは、当該基の考えられる全ての異性体型を含む。従って、例えば、プロパノールは、n-プロパノール及びイソ-プロパノールを含み、ブタノールは、イソ-ブタノール、sec-ブタノール及びtert-ブタノール等を含む。
【0016】
特に好ましくは、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール又はそれらの混合物を使用する。メタノールは、反応媒体として特に好ましく使用されるが、所望により、メタノール又は他のアルコール又は溶媒は水を含んでいてもよい。好適な非プロトン性溶媒は、極性エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジメトキシエチルエーテル又はアミド、例えばジメチルホルムアミド、又はラクトン、例えばN-メチルピロリドンである。好ましくは単に引火性の低い溶媒が使用される。
エナンチオ選択的水素化は、ジアミンの非存在下において行われる。
【0017】
反応は、弱塩基の存在下で好ましく行われる。使用される塩基は、共に固形形態及び溶液、例えば水溶液の形態において、有機塩基又は無機塩基であってもよい。好適な無機塩基は、基本的に反応性のアルカリ金属塩又はアルカリ金属水酸化物である。好ましくは、アルカリ金属炭酸水素塩又はアルカリ金属炭酸塩を、アルカリ金属水酸化物の他に使用する。最も好ましくは、Na2CO3、K2CO3、LiOH、NaOH、KOH又はNaHCO3が使用される。
好適な有機塩基は、三級アミン、具体的には三級アルキルアミン、三級アルキルアリールアミン又はピリジン又は多量に存在する遊離塩基1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンである。好ましくは分岐又は非分岐のC1-C6-アルキル基を有するトリアルキルアミンが使用される。トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンは例として特に好ましいことが立証された。所望により、反応は、例えば三級アミノ官能基を有する塩基性ポリマーの存在下で行われてもよい。
【0018】
好ましい方法は、1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン又はそれらの酸付加塩が、不斉水素化の間、ロジウム触媒に対して500:1〜100000:1、好ましくは750:1〜20000:1のモル比で使用されるものである。
触媒対基質のモル比、約1:2000において、(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンは、1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン塩酸塩から出発して、本発明による方法により、光学純度≧94%eeで得られる。
触媒の量を低減し、商業的に好ましい1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン塩酸塩を遊離体(educt)として使用することにより、(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン及びそれ故にデュロキセチンの製造コストを、新規方法により明らかに低減することができる。
【0019】
出発物質として使用されるべき1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンは、2-アセチルチオフェンを対応するN-アルキル-N-メチルアミン及びホルムアルデヒドとマンニッヒ反応において反応させることにより得られる。
さらに、新規方法を使用して、時空収率を、先行技術のものよりも向上させることが可能である。費用及び安全性の観点から、工業規模で(S)-N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンを製造することが特に好都合である。
本発明により、使用される触媒は、[Rh(COD)Cl]2(式中、CODはシクロオクタジエニル基を示す)及びキラルとしての(2R,4R)-4-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ)-メチル)-N-メチル-アミノカルボニルピロリジン(RR-MCCPM)、ニ座ホスフィンリガンド(PP*)である。
【0020】
この触媒の調製は先行技術から公知である[EP-A-0 251 164、EP-A-0 336 123]。また、触媒は、例えば、フェニル基を介してポリマーに結合したキラルリガンド(2R,4R)-4-ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノカルボニル)ピロリジンを有することにより、ポリマーに結合していてもよい。そのようなポリマー-結合リガンドの使用は、非ポリマー結合リガンドの同時使用を全体的に除外しない。そのようなポリマー結合触媒は、生成物の単純な精製に特に好都合である。
触媒は、[Rh(COD)Cl]2及びリガンドの前もって作られた酸素非含有溶液として使用されるか、又は保護気体雰囲気又は水素雰囲気中、酸素なしに、1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンの存在において、[Rh(COD)Cl]2及びリガンドからその場で製造されるかのいずれかである。
【0021】
水素化は、酸素なしに、好都合には不活性ガス下、好ましくは水素雰囲気下で一般的に行われる。しかし、水素化用の水素を、反応混合物より大気ガスからとることが可能であるべきことは、反応に必須ではない。また、水素は、好適な水素源からその場で溶液中で製造されてもよい。そのような水素源としては、例えばギ酸アンモニウム、ギ酸及び他のホルメート、金属イオン、例えばFe2+/Fe3+の存在下におけるヒドラジン及び先行技術から公知の他の水素源が挙げられる。
【0022】
不斉水素化が完了する反応時間は、一般的に、2〜48時間、好ましくは4〜36時間、及び特に好ましくは18〜24時間である。
反応は、通常の方法、例えば、所望により、触媒を所望により非活性化及び分離すること、残渣から溶媒を除去すること(及び)純粋な最終生成物を結晶化、蒸留、抽出又はクロマトグラフィにより単離することにより行ってもよい。
好ましくは、以下の工程は、生成物を作成し、単離するために行われる:
(i) 不斉水素化において得られた反応混合物を水と有機溶媒に分配する工程、
(ii) 水層のpHを0.51〜2に調整する工程、
(iii)水層を分離する工程、
(iv) 工程(i)〜(iii)を所望により繰り返す工程、
(v) 水層のpHを5.5〜10に調整する工程、
(vi) 水と有機溶媒に反応混合物を分配する工程、
(vii)工程(v)〜(vi)を所望により繰り返す工程、
(vii)形成された有機層を分離し、濃縮する工程。
【0023】
特に、エナンチオ選択的水素化後に生成物を形成し単離するために、得られる反応混合物を蒸発させ、得られる固形物を水と有機溶媒、特にトルエン又はジクロロメタンに分配する。水層のpHを、0〜2、好ましくは0.05〜1.8、特に0.1〜1.6に調整し、その後水層を分離する。有機層を、再び水と好ましく合わせ、酸性化し、再び分離する。合わせた水層をpH 5.5〜10、好ましくは6.0〜9.5、特に6.4〜9に調整し、溶媒と合わせ、抽出する。N-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンを、高い化学及び光学純度の固形物として溶媒の除去後に得る。
【0024】
エナンチマー純度は、好適な溶媒からの再結晶によりさらに上昇させることができる。
生成物のエナンチマー性を、非極性溶媒、例えばn-ペンタン、n-ヘプタン又はシクロヘキサンン、特にn-ヘプタンからの再結晶により99%を超えるまで増加させることは可能である。対応する酸付加塩、例えばオキザレート又はマンデレートも同様である。しかし、この場合、生成物を、極性溶媒、例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール又はイソプロパノールとトルエンの混合物から再結晶化する。
得られる生成物を、(a)1-フルオロナフタレンとの反応及びその後のアルキル基R1の切断又は(b)アルキル基R1の切断及びその後の1-フルオロナフタレンとの反応のいずれかにより、それ自体公知の方法においてデュロキセチンに変換する。
本発明による方法を、以下の実施例により説明する。当業者は、実施例が単に説明を意図しており、制限するものではないことを知っているであろう。
【実施例】
【0025】
実施例1
N-ベンジル-N-メチルアミン-ヒドロクロライドの製造
N-ベンジル-メチルアミン545g(4.5mol)をトルエン1600mlにとり、32%塩酸536g(4.7mol)を攪拌しながら注意深く加え、混合物を約80℃に加熱した。その後、水分離器を使用して還流した。約4時間後、水約300mlを分離し、結晶を沈殿させた。さらにトルエン200mlを加え、還流しながら水を再び分離した。水を除去した後、得られた懸濁液を周囲温度に冷ました。アセトン500mlを加え、混合物を約10℃に冷まし、結晶を分離し、アセトンで洗った。このようにして得られた湿った結晶を乾燥し、695.6g(理論値の98.0%)を生成した。
【0026】
実施例2
1-(N-ベンジル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン-ヒドロクロライドの製造
2-アセチルチオフェン464.2g(3.7mol)をエタノール283mlにとり、パラホルムアルデヒド110.3g(3.7mol)を攪拌しながら加え、混合物をエタノール116mlですすいだ。N-ベンジル-N-メチルアミン-ヒドロクロライド579.9g(3.7mol)を加え、形成したサスペンジョンを還流した。約45分後、結晶を沈殿させた。さらに15分後、サスペンジョンをエタノール200mlで希釈し、約10℃に冷ました。結晶を分離し、バッチにおいて、冷エタノールで洗った。湿った純粋な白色結晶を乾燥した。収率:814.4g(理論値の74.8%)、純度95%(HPLC)。
【0027】
実施例3
(S)-N-ベンジル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン
296g(0.95mol)の1-(N-ベンジル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン-ヒドロクロライド(95%)をメタノール6.1リットル中、窒素下で懸濁させ、ビス-(1,5-シクロオクタジエン)-ジロジウム(I)-ジクロライド72mg、(2R,4R)-4-ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノカルボニル)ピロリジン153mg(トルエン溶液として)及び炭酸水素ナトリウム610mgを加えた。得られたサスペンジョンを40℃で、水素圧50バールで約20時間水素化した。HPLCによるプロセスのモニタリングにより、>99%反応、0.2%遊離体が示された。
【0028】
反応混合物を蒸発させ、得られた固形物を水1.5Lと有機溶媒(トルエン又はジクロロメタン)1.5Lに分配した。pHを32%塩酸で約0.1(pH電極)に調整し、混合物を10分間激しく攪拌し、その後、水層を分離した。有機層を再び水0.9Lと合わせ、pH 0.1に調整し、攪拌し、水層を再び分離した。合わせた水層を、その後、45%水酸化ナトリウム溶液で正確にpH 6.4に調整し、その後、N-ベンジル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンを澄明な有機層として沈殿させ、分離した。残りの水層を溶媒0.9Lで再び抽出し、合わせた有機層を50℃、5mbarで蒸発させた。生成物は、無色油状物であった。化学純度98.5%(HPLC、0.2%遊離体、0.3% N-ベンジル-N-メチルアミン、0.2% 2-アセチルチオフェン)、エナンチオマー純度98%(NMR、ラセミ体との比較)。
【0029】
実施例4
1-(N,N-ジメチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンヒドロクロライドの製造
2-アセチルチオフェン252.4g(2.0mol)をイソプロパノール160ml中に溶解し、攪拌しながら、パラホルムアルデヒド60.1g(2.0mol)に加え、その後、ジメチルアミンヒドロクロライド163.1g(2.0mol)を加え、混合物をさらにイソプロパノール100mlですすいだ。得られた粘稠なサスペンジョンを約3時間還流した。サスペンジョンをさらにイソプロパノール400mlで希釈し、約15℃に冷まし、吸引ろ過し、バッチにおいてイソプロパノール400mlで洗い、その後、真空乾燥棚で60℃で一晩乾燥させた。収率265.6g(理論値の60.4%)、NMRによる純度>98%。
【0030】
実施例5
N,N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン
1-(N,N-ジメチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン-ヒドロクロライド70g(0.32mol)をメタノール630ml及び水70mlに、窒素下で懸濁し、ビス-(1.5-シクロオクタジエン)-ジロジウム(I)-ジクロライド16.5mg、(2R,4R)-4-ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノカルボニル)ピロリジン34.9mg及び炭酸水素ナトリウム140mgを加え、サスペンジョンを30℃、水素圧100バールで約20時間水素化した。
【0031】
その後、反応混合物を蒸発させ、得られた残渣を水350mlと有機溶媒250ml(トルエン又はジクロロメタン)に分配した。32%塩酸でpHを1.6に調整し、混合物を10分間攪拌し、その後水層を分離した。有機層を再び水250mlと合わせ、攪拌し、水層を再び分離した。合わせた水層を有機溶媒400ml及び45%水酸化ナトリウム溶液でpH 9.0に調整し、攪拌し、その後、その層を分離した。水層を溶媒200mlで再び抽出し、合わせた有機層を60℃、5mbarで蒸発させた。粗生成物の収量は50.0g(理論値の85%)、化学純度>98%(NMR)であった。
粗生成物をn-ヘプタン150mlから再結晶し、さらにn-ヘプタン50mlで洗い、40℃、5mbarで一晩乾燥させた。S-N,N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン46.8g(理論値の79%)を白色固形物として得た。純度>98%(NMR)、エナンチマー純度94%(HPLC)、融点76〜78℃。
【0032】
実施例6
S-N,N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンの一回目の再結晶
S-N,N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン2.5g、ee=97%(HPLC)をn-ヘプタン7.5mlから再結晶し、さらにn-ヘプタン10mlで洗い、40℃、5mbarで乾燥させた。生成物2.3g(92%)を得た。エナンチマー純度99.6%(HPLC)。
【0033】
実施例7
S-N,N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンのニ回目の再結晶
S-N,N-ジメチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン2.1g、ee=99.6%(HPLC)をn-ヘプタン6.3mlから再結晶し、さらにn-ヘプタン10mlで洗い、40℃、5mbarで乾燥させた。生成物1.9g(理論値の91%)を得た。エナンチオマー純度100%(HPLC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iで表されるキラルN-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミン又はそれらの酸付加塩:
【化1】

(式中、R1は、フェニルにより置換されていてもよいC1-6のアルキル基を示す)
を、一般式IIのプロキラル1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン又はそれらの酸付加塩:
【化2】

(式中、R1は、前記定義のとおりである)
から出発して製造する方法であって、一般式IIの化合物を、ロジウム、(2R,4R)-4-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノカルボニル-ピロリジン、所望により不活性希釈剤及び弱塩基からなる触媒系の存在下で、不斉水素化に供する前記方法。
【請求項2】
一般式IIの1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンのヒドロクロライドを遊離体として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化が、三級アミン、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩及び一般式IIの遊離塩基1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オンからなる群から選ばれる弱塩基の1当量未満の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
不斉水素化が、温度範囲0℃〜100℃で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
不斉水素化が、温度範囲0℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃で行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
不斉水素化が、1バール超200バール以下、好ましくは圧力10バール〜150バール、特に40〜120バールの圧力で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
不斉水素化が、プロトン性希釈剤中で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
不斉水素化が、希釈剤として分岐又は非分岐のC1-8-アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n-プロパノール及び/又はイソプロパノール中で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
不斉水素化用の希釈剤が水を含む、前記請求項7又は8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
一般式IIの1-(N-アルキル-N-メチルアミノ)-3-(2-チエニル)-プロパン-3-オン又はそれの酸付加塩を、不斉水素化におけるロジウム触媒に対して、500:1〜100000:1、好ましくは750:1〜20000:1、特に2000:1のモル比で使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ロジウム触媒を、不斉水素化用の予備調整溶液として使用する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
不斉水素化用のロジウム触媒をその場で製造する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
不斉水素化を、2〜48時間、好ましくは4〜36時間、特に約20時間の反応時間内で行う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程を、生成物を単離するために行う、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法:
(i) 不斉水素化において得られた反応混合物を水と有機溶媒に分配する工程、
(ii) 水層のpHを0.1〜2に調整する工程、
(iii)水層を分離する工程、
(iv) 工程(i)〜(iii)を所望により繰り返す工程、
(v) 水層のpHを5.5〜10に調整する工程、
(vi) 水と有機溶媒に反応混合物を分配する工程、
(vii)工程(v)〜(vi)を所望により繰り返す工程、
(vii)形成された有機層を分離し、濃縮する工程。
【請求項15】
単離した生成物又はそれらの酸付加塩を、エナンチオ純度を増加させるために、好適な溶媒から再結晶する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項記載の方法により製造されるキラルN-アルキル-N-メチル-3-ヒドロキシ-3-(2-チエニル)-プロピルアミンIを、
(a) 1-フルオロナフタレンと反応させ、アルキル基R1を切断するか、又は
(b) アルキル基R1を切断し、得られた生成物を1-フルオロナフタレンと反応させる、
デュロキセチンの製造方法。

【公表番号】特表2007−525532(P2007−525532A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501186(P2007−501186)
【出願日】平成17年2月26日(2005.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002047
【国際公開番号】WO2005/085192
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】