説明

N−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジンの合成及び単離法並びにそれを含む組成物

N−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジン(ABDNAZ)の合成及び単離法であって、DNAZを溶媒中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させてABDNAZ及びDNAZの塩を含む反応混合物を製造することによる方法。水及び追加量の溶媒を混合物に加えて、ABDNAZを含む有機相とDNAZの塩を含む水性相を形成させる。有機相と水性相を分離して、ABDNAZを含むABDNAZ/溶媒溶液と、DNAZの塩を含む水性相を製造する。非溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に加えて、ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物を製造する。ABDNAZをその後回収する。ABDNAZを含む組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2010年2月9日出願の米国特許出願第12/702,782号“N−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジンの合成及び単離法並びにそれを含む組成物(METHODS OF SYNTHESIZING AND ISOLATING N-(BROMOACETYL)-3,3-DINITROAZETIDINE AND A COMPOSITION INCLUDING THE SAME)”の出願日の利益を主張する。
【0002】
本発明の態様は、N−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジン(ABDNAZ)の合成及び単離法に関する。さらに詳しくは、本発明の態様は、従来法と比較して高純度及び高収率のABDNAZを製造するABDNAZの合成及び単離法に関する。本発明の態様は、ABDNAZを含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
ABDNAZのような環状ニトロ化合物は、がん治療におけるそれらの使用可能性について研究が進められている。ABDNAZの合成法は、ベドナルスキー(Bednarski)らによる米国特許第7,507,842号(“ベドナルスキー”)などに記載されている。ベドナルスキーでは、ABDNAZは、1−tert−ブチル−3,3−ジニトロアゼチジン(DNAZ)をブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させることによって合成されている。生成するABDNAZ1モル毎に1モルのDNAZの臭化水素塩(DNAZ HBr)も副産物として生成する。ABDNAZは、DNAZ HBrから、反応混合物を冷却し、ジクロロメタンを加え、そしてDNAZ HBrをろ過することによって単離される。固体のDNAZ HBrは、衝撃、摩擦、及びその他の外部刺激に敏感なので注意深く取り扱われねばならない。ジクロロメタンろ液を水洗し、乾燥させた後、ジクロロメタンを蒸発させて粗ABDNAZ混合物を得る。該生成物を順にジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させて、純度約98%のABDNAZを約75%の収率(ブロモアセチルブロミドを基にして)で得る。ABDNAZ中に残留している2%の不純物は、ブロモ酢酸、未反応DNAZ、及びDNAZ HBrを含むと考えられる。このABDNAZの製造法を本明細書中ではベドナルスキー法と呼ぶ。ベドナルスキー法は、まずまずの純度及び収率でABDNAZを提供するが、その純度は製薬学的使用には不十分である。さらに、ベドナルスキー法の最中に生成する固体のDNAZ HBrは爆発性化合物なので、これがABDNAZ製造の複雑さを増している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,507,842号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DNAZ HBrのような爆発性中間体の取扱いに伴う危険性を最小化又は削減する方法によってABDNAZを合成及び単離するのが望ましいであろう。得られるABDNAZは、ベドナルスキー法によって製造されるそれと比べて、同等又は高い収率及び純度を有するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様はABDNAZの製造法を含む。該方法は、DNAZを溶媒中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させて、ABDNAZとDNAZの塩とを含む反応混合物を製造することを含む。水及び追加量の溶媒を反応混合物に加えて、ABDNAZを含む有機相とDNAZの塩を含む水性相を形成させる。有機相と水性相を分離して、ABDNAZを含むABDNAZ/溶媒溶液と、DNAZの塩を含む水性相とを製造する。非溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に加え、ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物を製造する。その後、ABDNAZを回収する。
【0007】
本発明の別の態様はABDNAZの別の製造法を含む。該方法は、DNAZをジクロロメタン中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させて、ABDNAZとDNAZの臭化水素塩とを含む反応混合物を製造することを含む。水及び追加量のジクロロメタンを反応混合物に加えて、ジクロロメタン及びABDNAZを含む有機相と水及びDNAZの臭化水素塩を含む水性相を形成させる。有機相を水性相から分離し、ジクロロメタン及びABDNAZを含む有機相にエタノールを加える。ジクロロメタンを減圧下で蒸発させ、ABDNAZ/エタノール懸濁液を形成させる。次に、エタノールをABDNAZ/エタノール懸濁液からろ過する。
【0008】
本発明の更なる態様は、約99.5%より高い純度のN−ABDNAZ及び製薬学的に有効なビヒクルを含む組成物を含む。
本明細書は、本発明と見なされることを特に指摘し、明確に主張している特許請求の範囲で締め括られているが、本発明の利点は、以下の本発明の説明を添付の図面と併せて読むことにより、より容易に確認できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、1−tert−ブチル−3−ヒドロキシメチル−3−ニトロアゼチジン(HMNAZ)からDNAZを製造するための反応を示す。
【図2】図2は、DNAZからABDNAZを製造するための反応を示す。
【図3】図3は、DNAZと臭化水素(HBr)水溶液からDNAZのHBr塩(DNAZ HBr)を製造するための反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ABDNAZの合成及び単離法を開示する。ABDNAZがベドナルスキー法よりも高い収率で製造される。製造されるABDNAZは、ベドナルスキー法で製造されるものより高い純度も有する。さらに、本発明の方法は、衝撃及び摩擦感受性の固体爆発性中間体の取扱いも排除する。本発明の方法は、プロセスにおける作業の総数も削減する。
【0011】
本明細書において、用語“含む(comprising)”、“含む(including)”、“含有する”、“特徴とする”、及びそれらの文法的同等語は、追加的な未掲出の構成要素又は方法ステップを除外しない包括的又はオープンエンドな用語であるが、より制限的用語“〜からなる”及び“本質的に〜からなる”及びそれらの文法的同等語も含む。本明細書において、材料、構造、特徴又は方法行為に関する用語“〜でありうる(may)”は、本発明の態様の実施においてそれらが使用を想定されていることを示し、そのような用語は、それらと組み合わせて使用可能な他の互換的な材料、構造、特徴及び方法は除外されるべき又はされねばならないというような何らかの含意を回避するために、より制限的用語の“〜である(is)”よりも好んで(優先的に)使用される。
【0012】
ABDNAZは、図1に示されているように、1−tert−ブチル−3−ヒドロキシメチル−3−ニトロアゼチジン(HMNAZ)を酸化的ニトロ化して、1−tert−ブチル−3,3−ジニトロアゼチジン(DNAZ)を製造することによって合成できる。酸化的ニトロ化反応は、約30℃以下の温度で約3時間〜約74時間実施されうる。次に、図2に示されているように、DNAZを三フッ化ホウ素エーテラートの存在下、溶媒中でブロモアセチルブロミドと反応させて、ABDNAZ及びDNAZ HBrを製造することができる。ABDNAZに変換されるDNAZの半モル当量ごとに対し、DNAZのもう半モル当量は酸掃去剤として機能し、DNAZ HBrを形成する。本明細書において、用語“溶媒”は、DNAZ及びABDNAZが実質的に可溶で、ABDNAZの結晶化に使用される非溶媒と実質的に混和性の有機溶媒を意味及び包含する。溶媒と非溶媒は、溶媒が合成の次の時点で容易に除去されるように十分異なる沸点を有しうる。本明細書における態様では溶媒をジクロロメタンと記載しているが、所望の特性を有する他の有機溶媒も使用できる。例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、又はメチルtert−ブチルエーテルなどであるが、これらに限定されない。
【0013】
DNAZ HBrは、ABDNAZから水性抽出によって分離できる。ABDNAZはその後、非溶媒を加え、溶媒を除去することによって、溶媒から直接結晶化できる。本明細書において、用語“非溶媒”は、ABDNAZが実質的に不溶の有機溶媒を意味及び包含する。非溶媒と溶媒は互いに実質的に混和性でありうる。本明細書における態様では非溶媒をエタノールと記載しているが、所望の特性を有する他の有機溶媒、例えばメタノール、イソプロパノール、又はヘプタンなどのアルカンも使用できる。反応によって生成する副産物又は不純物は、ABDNAZよりも非溶媒に可溶でありうる。従って、副産物はその後の非溶媒の洗浄で除去される。このような様式によるABDNAZの回収は、ABDNAZの合成及び単離法全体で利用される再結晶及び洗浄作業の数を減らすことができる。
【0014】
酸化的ニトロ化反応において、HMNAZはDNAZを製造するための出発材料として使用できる。HMNAZは、パリッシュ・ケミカル・カンパニー(Parish Chemical Company)社(ユタ州バインヤード)から市販されている。HMNAZは最初に水酸化ナトリウム水溶液と反応させることができる。酸化的ニトロ化反応に使用される水酸化ナトリウム対HMNAZの比率は少なくとも1:1であろう。しかしながら、HMNAZの溶解を確実にするために、HMNAZに比べて過剰の水酸化ナトリウムを使用することもできる。非制限的例として、1モル当量のHMNAZあたり約3.5モル当量までの水酸化ナトリウムが使用できる。HMNAZと水酸化ナトリウムと水は、ニトロン酸塩水溶液を形成しうる。ニトロン酸塩水溶液は、酸化的ニトロ化反応中に発生する発熱を最小化及び制御するために希釈してよい。ニトロン酸塩の完全形成を確実にするため及び酸化的ニトロ化反応中の塩基性条件を維持するために過剰の水酸化ナトリウムも存在してよい。撹拌しながら水酸化ナトリウムを水に添加すると、水酸化ナトリウム溶液が生成する。本明細書中に記載のすべての撹拌作業に関し、試薬は、添加される試薬の量に応じて、オーバーヘッド撹拌機又は磁気撹拌棒を用いて撹拌できる。撹拌速度は、媒体中に添加された試薬を溶解又は懸濁するのに足る速度でありうる。水酸化ナトリウムの水への添加は発熱性なので、添加作業の実施前に水酸化ナトリウム溶液を約25℃に冷却するのがよい。HMNAZは、水酸化ナトリウム溶液を製造して4時間以内に水酸化ナトリウム溶液に添加することができる。この添加中、溶液は約20℃〜約27℃の温度に維持される。HMNAZを水酸化ナトリウム溶液と約1時間〜約2時間撹拌すると、ニトロン酸塩溶液が形成されうる。ニトロン酸塩溶液は、酸化的ニトロ化反応に使用される追加の試薬を添加する前に、準備を整えて約2時間まで又はそれより長く貯蔵できる。HMNAZの添加の少なくとも1時間後、ニトロン酸塩溶液は約10℃以下に冷却できる。
【0015】
亜硝酸ナトリウムとフェリシアン化カリウムの水溶液は、亜硝酸ナトリウムとフェリシアン化カリウムを水中に溶解することによって製造できる。亜硝酸ナトリウム/フェリシアン化カリウム溶液は、最大約3時間撹拌してよい。過剰の水を利用して希釈溶液を製造すれば、酸化的ニトロ化反応中にその後発生する発熱を氷浴を用いて容易に制御できる。フェリシアン化カリウムは、酸化的ニトロ化反応において、触媒濃度、例えばHMNAZに対して約5モル%〜約15モル%利用すればよい。亜硝酸ナトリウムは、HMNAZからDNAZへの完全変換を確実にするために、1モル当量のHMNAZあたり約1モル当量〜約4モル当量使用できる。亜硝酸ナトリウムとフェリシアン化カリウムは水溶液中で安定なので、互いに著しく反応しない。従って、亜硝酸ナトリウムとフェリシアン化カリウムの水溶液は準備を整えて約3時間まで貯蔵できる。
【0016】
亜硝酸ナトリウム/フェリシアン化カリウム溶液は、冷却された(約10℃以下)ニトロン酸塩溶液に添加できる。添加時に温度上昇(約0℃〜約15℃)が予想されるので、ニトロン酸溶液を冷却して、得られる最大発熱が約30℃を超えないようにする。しかしながら、両溶液とも希薄性のため、二つの溶液を合わせた場合に予想される最大発熱は、たとえ溶液を急速混合したとしても約20℃である。添加後、亜硝酸ナトリウム/フェリシアン化カリウム溶液とニトロン酸塩溶液の組合せは、約15℃以下、例えば約10℃〜約15℃に冷却されうる。次いで過硫酸ナトリウムを添加できる。過硫酸ナトリウムは、1モル当量のHMNAZあたり約1モル当量〜約2モル当量使用できる。過硫酸ナトリウムの添加は、ニトロン酸塩の分解を最小限にするために、亜硝酸ナトリウム/フェリシアン化カリウム溶液とニトロン酸塩溶液の混合後約30分以内に完了されうる。過硫酸ナトリウムの添加後、反応混合物の温度は、結果的発熱によって反応混合物の温度が約30℃より高くならないように、約15℃以下に維持されうる。反応混合物の温度は、約5℃〜約20℃の発熱が発生する前に、初期に約5℃降下しうる。反応混合物の温度は冷浴を用いて維持できる。冷浴は、反応混合物の温度上昇が停止したら除去できる。冷浴の除去後、酸化的ニトロ化反応は、少なくとも約1時間の撹拌に伴って進行しうる。酸化的ニトロ化反応が実施される周辺環境が温度変動を受ける場合、酸化的ニトロ化反応の温度が確実に約30℃より高くならないように、周辺環境の温度はモニターされうる。
【0017】
酸化的ニトロ化反応によりDNAZ及び水溶性副産物が生成する。DNAZは、二相性の酸化的ニトロ化反応溶液から、溶媒による多段洗浄を用いて抽出することができる。使用される溶媒の量は、DNAZを効果的に抽出するのに足る量でありうる。溶媒は、DNAZは実質的に可溶であるが、酸化的ニトロ化反応の副産物は実質的に不溶の有機溶媒であろう。簡便性及び便宜上、酸化的ニトロ化反応溶液からDNAZを抽出するのに使用される溶媒は、DNAZ、ブロモアセチルブロミド、及び三フッ化ホウ素エーテラートの反応が行われるのと同じ溶媒でよい。抽出による水性相(酸化的ニトロ化反応の副産物を含む)は廃棄してよいが、有機(溶媒)相は回収して一つにまとめる。抽出による水性相は、水に溶解した水酸化ナトリウム、フェリシアン化カリウム、亜硝酸ナトリウム、又は硫酸ナトリウムを含みうる。有機相はDNAZを含むので、無水硫酸ナトリウム又は無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤で乾燥されうる。有機相は本明細書ではDNAZ/溶媒溶液と呼ばれる。DNAZ/溶媒溶液の乾燥(すなわち実質的に水分を含まない)を確実にするために、固体の乾燥剤が溶液中で自由流動する(さらさらになる)まで十分な量の乾燥剤をDNAZ/溶媒溶液に加えることができる。乾燥剤は、DNAZ/溶媒溶液から減圧ろ過によって除去することができる。非制限的例として、ジクロロメタンが溶媒として使用される場合、DNAZ/ジクロロメタン溶液は、乾燥剤で乾燥する前に0.142%の水分を含むのに対し、乾燥後は0.091%の水分量となることが測定されている。酸化的ニトロ化反応によって、DNAZは約80%〜約100%の収率(HMNAZを基にして)で製造できる。DNAZの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定で、約97%より高い。
【0018】
次の作業を実施する前にDNAZを貯蔵することになる場合、溶媒の少なくとも一部を減圧下での蒸発などによって除去し、濃縮DNAZ/溶媒溶液を形成することができる。実質的にすべての溶媒が除去されると、得られるDNAZは周囲条件で液体状態になるであろう。本明細書中に記載の通り、減圧下での蒸発を含む作業は、真空レベルで及び各溶液又は懸濁液が約30℃以上の温度に約10時間以上暴露されない十分な時間実施できる。濃縮DNAZ/溶媒溶液又はDNAZは、約0℃〜約30℃の範囲の温度で約96時間まで又はそれ以上貯蔵できる。DNAZの分解は、約75℃より高い温度で起こることが知られているので、DNAZ/溶媒溶液は、分解がほとんど又は全く無いことを確実にするために、約30℃未満の温度で維持されうる。
【0019】
DNAZが原液で貯蔵されている場合、追加量の溶媒をDNAZに添加することができる。DNAZをABDNAZに変換する前に、DNAZ/溶媒溶液は、窒素などの無水不活性ガスでパージされ、水分の存在を最小限にすることができる。水は周囲環境の相対湿度由来の空中湿気として存在しうる。水は、存在すると、三フッ化ホウ素エーテラートの活性に影響を及ぼしうる又は加水分解反応に敏感なブロモアセチルブロミドと反応しうる。DNAZ/溶媒溶液は、図2に示されているように、三フッ化ホウ素エーテラートの存在下でブロモアセチルブロミドと反応してABDNAZを生成しうる。反応が起こると、大部分のABDNAZは溶媒中に溶解した状態で残るが、大部分のDNAZ HBrは固体として沈殿する。従って、ABDNAZ反応混合物は不均一である。三フッ化ホウ素エーテラートとブロモアセチルブロミドは、DNAZ/溶媒溶液に約15分以内に添加されうる。2モル当量のDNAZを溶媒中で1.5モル当量のブロモアセチルブロミドと反応させることができる。これに対し、ベドナルスキー法では1モル当量のDNAZあたり化学量論量のブロモアセチルブロミド(半モル当量)が使用された。本発明の方法では、触媒量の三フッ化ホウ素エーテラート、例えばDNAZに対して約5モル%〜約15モル%が使用されうる。本明細書中の態様には、三フッ化ホウ素エーテラートを添加後、ブロモアセチルブロミドを添加すると記載されているが、試薬は任意の順序で添加できる。三フッ化ホウ素エーテラートとブロモアセチルブロミドの添加は著しく発熱性でないため、そしてこの反応は加熱還流されるため、これらの試薬の添加速度は、得られるABDNAZの収率又は純度に実質的に影響しない。ABDNAZ反応混合物は、大部分のDNAZがABDNAZに変換されるまで約4時間〜約7時間、加熱されて穏やかに還流され撹拌されうる。熱はその時点で取り除かれる。これに対し、ベドナルスキー法では還流は2時間実施された。本発明の態様において、ABDNAZ反応混合物が加熱される温度は溶媒の沸点より低い。非制限的例として、ジクロロメタンを溶媒として使用する場合、ABDNAZ反応混合物は反応の経過中、約40℃未満に加熱されうる。ABDNAZ反応混合物は、衝撃、摩擦、及びその他の外部刺激に敏感な乾燥固体形のDNAZ HBrも含みうる。1モル当量のABDNAZあたり1化学量論的当量のDNAZ HBrが生成する。DNAZ HBrは白色/黄色固体であろう。ABDNAZ反応混合物は、HBr及び約20%までの未反応DNAZも含みうる。これは、以下に説明するように除去される。
【0020】
反応の完了後、追加量の溶媒及び水をABDNAZ反応混合物に添加し、約1時間〜約24時間撹拌することができる。添加される溶媒及び水の量は、DNAZ HBrを水に、何らかの沈殿ABDNAZがあればそれを溶媒中に溶解するのに十分な量でありうる。DNAZ HBrは水溶性なので、DNAZ HBrは水性相に分配されうるが、ABDNAZは有機(溶媒)相に残る。次に、有機及び水性相を従来の液液分離技術などによって分離し、水性相を廃棄することができる。ABDNAZを含む有機相を本明細書ではABDNAZ/溶媒溶液と呼ぶ。分離中、DNAZ HBrは水溶液中に残るので、DNAZ HBrは容易に処分できる。固体形のDNAZ HBrの取扱いをなくすることにより、ABDNAZは、非エネルギー的プロセスによって合成及び単離できる。その結果、ABDNAZの製造業者は、爆発性化合物を取り扱うための認定又は資格が不要になる。さらに、従来の装置及び設備を使用してABDNAZを製造できるので、その合成及び単離のコスト及び複雑さを削減する。これに対し、ベドナルスキー法では、固体のDNAZ HBrがろ過によって除去される。
【0021】
ABDNAZ/溶媒溶液を水で何度も洗浄して、あらゆる微量のDNAZ HBrを除去することができる。水洗中、追加の溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に加えれば、ABDNAZの結晶化を防止することができる。添加される水又は溶媒の量は、所望の化合物を除去又は抽出するのに十分な量でありうる。ABDNAZ/溶媒溶液の純度は、プロトン核磁気共鳴(H NMR)によってモニターし、実質的にすべてのDNAZ HBrが除去されたことを確認することができる。DNAZ HBrがABDNAZ/溶媒溶液中に残留している場合、ABDNAZ/溶媒溶液が実質的にDNAZ HBrを含まないと判定されるまで、追加の水洗を実施すればよい。使用される水の量は、所望の化合物を抽出するのに十分な量でありうる。非制限的例として、ABDNAZ/溶媒溶液は、水洗後は約0.4%未満のDNAZ HBrしか含まないであろう。ABDNAZ/溶媒溶液は、硫酸ナトリウムなどの乾燥剤を用い、その固体が溶液中で自由流動する(さらさらになる)まで乾燥させることができる。乾燥剤は減圧ろ過によって除去できる。ABDNAZ/溶媒溶液は、減圧下での蒸発などによって濃縮でき、ABDNAZ/溶媒溶液の約半量を除去することができる。
【0022】
ABDNAZを結晶化させるためには、十分量の非溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に加えて、ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物を形成させればよい。ABDNAZ/溶媒溶液への非溶媒の添加は、ABDNAZを非溶媒中で高純度で結晶化させること可能にする。ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物に残留する何らかの不純物は非溶媒に可溶でありうる。不純物は、DNAZ、DNAZ HBr、ブロモ酢酸、及び硫酸ナトリウムなどであるが、これらに限定されない。非溶媒は、ABDNAZが実質的に不溶で、溶媒の除去が容易に達成されるように溶媒より十分に高い沸点を有する有機溶媒でありうる。また、ABDNAZは、ABDNAZの結晶化に使用される温度で、実質的に非溶媒と非反応性でありうる。ABDNAZはヒト又は他の哺乳動物に投与されるので、非溶媒は相対的に非毒性の有機材料でありうる。
【0023】
ABDNAZ/溶媒溶液への非溶媒の添加は、ABDNAZの溶解性を変更しうる。具体的には、ABDNAZの溶解度は、非溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に添加すると低下しうる。ABDNAZのABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物中の溶解度は、例えば減圧下での溶媒の蒸発によって(すなわち回転蒸発器を使用して)溶媒を除去することにより、さらに変更できる。溶媒の除去速度は、ABDNAZの結晶化に影響しうる。溶媒が急速除去されると、ABDNAZは不純物をその中にトラップしたアモルファス性固体材料として形成されうる。これに対し、溶媒をゆっくり除去すると、ABDNAZはより純粋な形態で結晶化できる。溶媒が除去されると、ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物の体積は減少するので、ABDNAZの沈殿及びABDNAZ/非溶媒懸濁液の形成が可能になる。溶媒の除去は、ABDNAZ/非溶媒懸濁液中に残っている液体の量が、回転蒸発器の回転中ABDNAZの表面をちょうど覆うほどになったら停止できる。ABDNAZ/非溶媒懸濁液は約30分間約0℃に冷却され、ABDNAZの結晶が減圧ろ過などによって回収できる。ABDNAZは、透明の無色又は白色結晶として得られる。ABDNAZは、実質的にすべての不純物がABDNAZから除去されたことを確実にするために、追加量の冷却非溶媒で濯ぐことができる。次いで、非溶媒ろ液は廃棄されうる。ABDNAZは真空下で貯蔵できる。及び又は、ろ紙上のABDNAZに空気を約1時間〜約16時間通して、実質的に残留溶媒、非溶媒又は水が確実に残らないようにすることもできる。これに対し、ベドナルスキー法では、粗ABDNAZは、ジクロロメタンの蒸発によって単離される。次に、粗ABDNAZを二相性ジエチルエーテル濯ぎで洗浄し、純度約98%のABDNAZを得る。
【0024】
本発明の方法によって合成及び単離されたABDNAZは、約99.5%より高い純度を有しうる(HPLCによる測定)。これに対し、ベドナルスキー法によって合成及び単離されたABDNAZは純度約98%で、残りの2%は、ブロモ酢酸、未反応DNAZ、及びDNAZ HBrを含む。また、本発明の方法によって製造されたABDNAZは、色がベドナルスキー法によって製造されたABDNAZの帯黄色と比べてより白い。本発明の方法によって製造されたABDNAZの収率は、約80%〜約100%であろう(HMNAZからDNAZへの推定100%収率を基にして)。
【0025】
本発明の一態様では、ジクロロメタンが溶媒として使用され、エタノールが非溶媒として使用される。何らかの特定の理論に拘束されるのではないが、ジクロロメタンとエタノールの使用は、それらの沸点の差がジクロロメタンを低温で蒸発によって除去することを可能にする一方で、エタノールはABDNAZを結晶化するために残るため、ABDNAZの効果的な単離を提供すると考えられている。さらに、結晶化中の温度は、ABDNAZとエタノール間で実質的に反応が起こらないほど十分低い。本発明の方法で、ABDNAZを首尾よく結晶化させるためのエタノールの使用は予期せぬことであった。なぜならば、エタノールを高温で使用して(エタノールを還流して)ABDNAZを再結晶化しようとする以前の試みは、二つの新規不純物の形成をもたらしたからである。しかしながら、本発明の方法の結晶化中の温度は、ジクロロメタンを除去するほど十分高い。ABDNAZとエタノール間で反応の可能性があるとしても、エタノールは、ABDNAZが高い収率及び純度で製造されるので、再結晶化用の良好な非溶媒であることがわかった。さらに、エタノールは、ジクロロメタンに比べてヒト及び動物への毒性が実質的に低い。
【0026】
DNAZ HBrをABDNAZ反応混合物から効果的に除去するための水性抽出の能力は、DNAZ HBrは実質的に水に不溶であると予想されていたため、予想外であった。しかしながら、定性的実験で、DNAZ HBrは、ABDNAZよりも水に可溶であることが測定された。ABDNAZは、約0.3mg/ml〜約1.3mg/mlの水中溶解度、及び約30mg/mlのジクロロメタン中溶解度を有する。DNAZ HBrの水中でのかなりの溶解度は、DNAZ HBrの相当部分が、従来水に可溶でない非極性の炭素及び水素部分を含むため、驚くべきことであった。DNAZ HBrとABDNAZ間の構造的類似性に基づくと(図2参照)、DNAZ HBrとABDNAZは、溶媒中で類似の溶解性を有すると予想された。さらに、DNAZ HBrは、水性抽出が可能なほど水に十分可溶でないと考えられていた。塩ではあるが、DNAZ HBrの分子量の大部分は、ABDNAZよりも炭素及び水素原子に帰せられるので、二つの化合物は類似の水中溶解度を有することが示唆される。従ってABDNAZとDNAZ HBrの溶媒中対水中における著しく異なる溶解度は意外であった。
【0027】
水性抽出も思いがけず、製造されたABDNAZの収率及び純度を改良した。何らかの特定の理論に拘束されるのではないが、ABDNAZ反応混合物に対して実施される水性抽出は、ABDNAZ及びDNAZ HBrをそれぞれ有機相(溶媒)及び水性相(水)に別々に強制的に溶解させると考えられる。ABDNAZは水中よりも溶媒中に著しくより可溶であるので、ABDNAZは有機相に残る。反対に、DNAZ HBrは溶媒中よりも水中に著しくより可溶であるので、DNAZ HBrは水性相に分配される。ABDNAZとDNAZ HBrの溶媒中及び水中における溶解度は十分異なるので、最少量のABDNAZしか水性相にトラップされ得ず、最少量のDNAZ HBrしか溶媒中に溶解し得ない。従って、ABDNAZ/溶媒溶液から最終的に回収されるABDNAZは、比較的純粋であり、比較的高収率で単離できる。
【0028】
さらに、ABDNAZとDNAZ HBrの効果的な分離のために水性抽出を使用することは、ABDNAZが水に対してわずかに反応性であるため、思いも寄らぬことであった。ABDNAZを水に暴露すると、望ましくない加水分解副産物が生成すると予想された。しかしながら、水は、これらの条件下では、ABDNAZと実質的に反応することなく、DNAZ HBrを溶解することが観察された。
【0029】
ABDNAZとDNAZ HBrの分離に水性抽出及び水性洗浄を使用することの追加の利点は、ABDNAZ反応混合物から未反応DNAZを除去する可能性である。未反応DNAZは、ABDNAZ反応混合物中に最大約20%存在しうる。未反応DNAZは、図3に示されているように、水性HBrと反応して更なるDNAZ HBrを形成しうる。HBrは、ABDNAZ反応混合物中に、DNAZからABDNAZへの変換の副産物として存在しうる。あるいは、DNAZと反応する水性HBrは、HBr水溶液として供給されてもよい。HBr水溶液は、約1%HBr〜約48%HBrを含みうる。非制限的例として、ABDNAZ反応混合物又はABDNAZ/溶媒溶液に対して実施される水洗の一つを、HBr水溶液を含む洗浄で置換することもできる。生成する追加のDNAZ HBrは水溶性なので、DNAZ HBrは、その後の水性抽出又は水性洗浄によってABDNAZ反応混合物又はABDNAZ/溶媒溶液から容易に除去できる。本発明の方法のように、ABDNAZの合成及び単離の早期段階で未反応DNAZを除去すると、ベドナルスキー法と比べて、より高い純度及び収率でABDNAZを製造することが可能となる。ベドナルスキー法では、未反応DNAZはジクロロメタン中に残り、溶媒が真空下で除去されるとABDNAZ中にトラップされる。その後、DNAZは、二相性エーテル洗浄によって部分的にしか除去されない。最終的に、本発明の方法によってHMNAZからABDNAZを合成及び単離するために利用される結晶化及び洗浄作業の総数は、ベドナルスキー法のそれと比べて削減できる。
【0030】
本発明の方法によって製造されたABDNAZの治療有効量は、ベドナルスキーに記載されているように、医薬組成物に配合することができる。医薬組成物は、製薬学的に許容しうるビヒクル、ABDNAZ、及び所望により、湿潤剤又は乳化剤の少なくとも一つ、pH緩衝剤、助剤、安定剤、懸濁化剤、分散剤、可溶化剤、増粘剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、香味剤、又は保存剤を含みうる。医薬組成物は、ABDNAZの他に、製薬学的活性剤又は治療剤を含んでいてもよい。医薬組成物は、ベドナルスキーに記載されているように、異常細胞増殖を特徴とする疾患又は障害の治療又は予防のために、ヒト又はその他の哺乳動物などの患者に投与されうる。
【0031】
以下の実施例は、本発明の態様をさらに詳細に説明する役割を果たす。これらの実施例は、本発明の範囲に関して、包括的、排他的、又はそうでなければ制限的と解釈されてはならない。
【実施例】
【0032】
ABDNAZの合成及び単離に使用された溶媒及び試薬は、商業的供給源、例えばシグマ−アルドリッチ・コー(Sigma-Aldrich Co.)社(ミズーリ州セントルイス)又はパリッシュ・ケミカル・カンパニー社(ユタ州バインヤード)から購入した。水酸化ナトリウム、フェリシアン化カリウム、亜硝酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、ジクロロメタン、硫酸ナトリウム、及びエタノールは試薬グレードのものであった。三フッ化ホウ素エーテラートは再蒸留グレードのものであった。ブロモアセチルブロミドは純度98%であった。蒸留水がABDNAZの合成及び単離に使用された。HMNAZは98%以上の純度であった。
【0033】
ABDNAZは、医薬品安全性試験実施基準(GLP)に従って製造された。専用ガラス器具及び加工助剤がABDNAZの合成及び単離に使用された。使用された全装置(器具)は有機溶媒で濯いで清浄化された。
【0034】
別途記載のない限り、ABDNAZの合成及び単離は、連続的な反応又は作業間の休止時間(ダウンタイム)を最小限にして実施した。本明細書において、周囲の(ambient)”という用語は、大気圧及び約20℃〜約30℃の範囲の温度のことを言う。ABDNAZの合成及び単離中の分解を防止するために、各溶液又は懸濁液は30℃を超える温度に約10時間を超えて暴露されない。
【0035】
表1に示されている性質は、従来技術によって測定又は決定されたが、本明細書ではそれらの技術の詳細な説明は省く。ABDNAZの純度は、赤外(IR)、HPLC、又はNMRによって測定された。熱的安定性は、20℃/分の温度勾配(temperature ramp rate)を用いて示差走査熱量測定(DSC)によって測定された。熱的安定性は、溶融開始温度及び分解開始温度として報告される。融点は溶融開始温度として報告される。元素分析は従来技術によって測定された。
【0036】
実施例1
HMNAZからDNAZの合成
磁気撹拌棒を備えた三角フラスコに、水(400mL)、フェリシアン化カリウム(17.2g、52mmol)、及び亜硝酸ナトリウム(143.2g、2075mmol)を装入した。該溶液(本明細書中では“溶液A”と呼ぶ)を全固体が溶解するまで撹拌した(約15分)。
【0037】
磁気撹拌棒と熱電対を備えた丸底フラスコに、蒸留水(1470mL)、及び、撹拌しながら、水酸化ナトリウム(71.2g、1780mmol)を装入した。冷浴を用いて水酸化ナトリウム水溶液を周囲温度(20℃〜30℃)に戻し、HMNAZ(97.6g、519mmol)を加えた。該ニトロン酸塩溶液を周囲条件で約1時間〜約2時間撹拌した。この間にほとんどすべての固体は溶解した。この溶液を本明細書中では“溶液B”と呼ぶ。溶液Bを10℃に冷却し、溶液Aを加えた。約10℃〜約15℃の温度で、過硫酸ナトリウム(173.2g、727mmol)を丸底フラスコに約1分〜約2分間かけて導入した。発熱が収束し始めたら、冷浴を取り除き、反応混合物を周囲条件で約16時間撹拌した。得られた橙色/褐色液体を分液漏斗に加え、ジクロロメタンで抽出した(3×450mL)。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム(約100g)で乾燥させ、丸底フラスコに加え、回転蒸発器を用いて約450mLに濃縮した。
【0038】
実施例2
DNAZからABDNAZの合成
磁気撹拌棒及びウォーター・ジャケット付き還流冷却器を備えた三口丸底フラスコ(3L)に、DNAZのジクロロメタン溶液(実施例1に記載のように製造)を装入した。装置の窒素ガスパージを開始し、10分後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(6.37mL、52mmol)を加え、次いでブロモアセチルブロミド(33.77mL、388mmol)を加えた。冷却器頂部の小通気口を除いてフラスコを密封し、溶液を加熱して穏やかに還流した。6時間(±0.5時間)後、加熱を中止し、ジクロロメタン(1000mL)及び蒸留水(80mL)をこの順に不均一混合物に加えた。この二相系を全固体(DNAZ HBr)が溶解するまで16時間激しく撹拌した。次に、この二相系を分液漏斗に移した。水性相を除去し、有機相を追加の蒸留水で洗浄した(4×500mL)。有機層を硫酸ナトリウム(100g〜150g)で乾燥させた後、一口丸底フラスコに移した。該溶液を回転蒸発器上でその初期体積の約半分に濃縮した後、エタノール(250mL)を加えた。残りのジクロロメタンを回転蒸発器によって除去すると、透明の無色結晶の沈殿が起きた。フラスコを氷浴で30分間冷却した。沈殿物を減圧ろ過によって単離し、追加の冷エタノールで濯ぎ(5×150mL)、乾燥させて純粋なABDNAZを得た(56.04g、収率81%)。
【0039】
【化1】

【0040】
実施例3
表1に、本発明の方法によって製造されたABDNAZの2個のサンプルと、ベドナルスキー法によって製造されたABDNAZの性質をリストアップする。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示されているように、本発明の方法によって製造されたABDNAZは、ベドナルスキー法によって製造されたABDNAZと比べて少ない不純物を有していた(高純度)。純度のわずかな改良でさえ、しばしば達成が困難でありうるが、これらの改良は、化合物が医薬組成物に使用予定の場合、特に重要であろう。本発明の方法は、純ABDNAZを得るのに利用される工程作業数も削減し、乾燥固体爆薬DNAZ HBrの取扱いに伴う危険性も排除する。
【0043】
本発明は様々な修正及び代替形を取りうるが、例として特定の態様を図面に示し、本明細書中で詳細に記載してきた。しかしながら、本発明を開示された特定の形態に制限するつもりはないことは当然理解されるべきである。それどころか、本発明は、以下の添付の特許請求の範囲及びそれらの法的等価物によって定義されているような本発明の範囲内に入るすべての修正、等価物、及び代替を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジン(ABDNAZ)の製造法であって、
1−tert−ブチル−3,3−ジニトロアゼチジン(DNAZ)を溶媒中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させて、ABDNAZ及びDNAZの塩を含む反応混合物を製造し;
水及び追加量の溶媒を反応混合物に加えて、ABDNAZを含む有機相とDNAZの塩を含む水性相を形成させ;
有機相と水性相を分離して、ABDNAZを含むABDNAZ/溶媒溶液と、DNAZの塩を含む水性相を製造し;
非溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に加えて、ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物を製造し;そして
ABDNAZを回収する
ことを含む方法。
【請求項2】
DNAZを溶媒中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させてABDNAZ及びDNAZの塩を含む反応混合物を製造することが、DNAZ、ブロモアセチルブロミド、及び三フッ化ホウ素エーテラートを還流で約4時間〜約7時間の間反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DNAZを溶媒中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させてABDNAZ及びDNAZの塩を含む反応混合物を製造することが、DNAZをブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートとジクロロメタン中で反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
DNAZを溶媒中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させることが、2モル当量のDNAZをジクロロメタン中で1.5モル当量のブロモアセチルブロミドと反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水及び追加量の溶媒を反応混合物に加えて有機相と水性相を形成させることが、ジクロロメタン及び水を反応混合物に添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
非溶媒を加える前に、ABDNAZ/溶媒溶液を水で洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水を除去するために乾燥剤をABDNAZ/溶媒溶液に加え、そして乾燥剤を回収することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ABDNAZ/溶媒溶液から溶媒の少なくとも一部分を除去することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非溶媒をABDNAZ/溶媒溶液に加えることが、エタノールをABDNAZ/溶媒溶液に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ABDNAZの回収が、ABDNAZ/溶媒/非溶媒混合物から溶媒を除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ABDNAZの回収が、非溶媒を除去してABDNAZの結晶を製造することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
N−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジン(ABDNAZ)の製造法であって、
1−tert−ブチル−3,3−ジニトロアゼチジン(DNAZ)をジクロロメタン中でブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させて、ABDNAZ及びDNAZの臭化水素塩を含む反応混合物を製造し;
水及び追加量のジクロロメタンを反応混合物に加えて、ジクロロメタン及びABDNAZを含む有機相と水及びDNAZの臭化水素塩を含む水性相を形成させ;
有機相を水性相から分離し;
エタノールをジクロロメタン及びABDNAZを含む有機相に加え;
減圧下でジクロロメタンを蒸発させてABDNAZ/エタノール懸濁液を形成させ;そして
ABDNAZ/エタノール懸濁液からエタノールをろ過する
ことを含む方法。
【請求項13】
ABDNAZ/エタノール懸濁液からのエタノールのろ過が、HMNAZからDNAZの推定100%収率を基にして、約80%〜約100%の収率でABDNAZを製造することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ABDNAZ/エタノール懸濁液からのエタノールのろ過が、約99.5%より高い純度を有するABDNAZを製造することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
約99.5%より高い純度のN−(ブロモアセチル)−3,3−ジニトロアゼチジン(ABDNAZ)及び製薬学的に有効なビヒクルを含む組成物。
【請求項16】
組成物が、1−tert−ブチル−3,3−ジニトロアゼチジンの塩を実質的に含まない、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が、約0.4%未満の1−tert−ブチル−3,3−ジニトロアゼチジンしか含まない、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
組成物が、ブロモ酢酸を実質的に含まない、請求項15に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518925(P2013−518925A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552884(P2012−552884)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/021500
【国際公開番号】WO2011/100090
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(598174370)アライアント・テクシステムズ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Alliant Techsystems Inc.
【Fターム(参考)】