N,O−アミドマロネート白金錯体
【課題】精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体の提供。
【解決手段】本発明は、白金がアミドマロネートの単一のN,O−キレートまたはO,O−キレートを形成するように配位した、精製された白金錯体に関する。このキレートおよびその薬学的に受容可能な処方物は、癌の処置に有用である。白金キレートは、さらに、水溶性を増加し、そして/またはキレートの腫瘍標的化を補助する、1つ以上の官能基に結合され得る。腫瘍標的化部分の例としては、1つ以上の白金キレートが、身体内で切断され得るリンカーを介してポリマー骨格に結合するポリマーならびに腫瘍組織および/または腫瘍血管系において濃縮または上方制御されるレセプターに対して高い親和性を有する分子が挙げられる。
【解決手段】本発明は、白金がアミドマロネートの単一のN,O−キレートまたはO,O−キレートを形成するように配位した、精製された白金錯体に関する。このキレートおよびその薬学的に受容可能な処方物は、癌の処置に有用である。白金キレートは、さらに、水溶性を増加し、そして/またはキレートの腫瘍標的化を補助する、1つ以上の官能基に結合され得る。腫瘍標的化部分の例としては、1つ以上の白金キレートが、身体内で切断され得るリンカーを介してポリマー骨格に結合するポリマーならびに腫瘍組織および/または腫瘍血管系において濃縮または上方制御されるレセプターに対して高い親和性を有する分子が挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
2000年1月4日に出願し、そして本明細書中に参考として援用される、仮出願米国出願第60/174,435号からの優先権が主張される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
シスプラチンの抗腫瘍活性の発見(Rosenburgら,1969)後、癌の処置のための白金錯体の使用に関する分野において大量の研究が行われた。白金化合物の抗腫瘍活性は、反応性モノ−またはジ−アクア錯体(これは、鎖内および鎖間のDNA架橋を腫瘍細胞において形成し得る)を形成するインビボでの不安定な塩素配位子の喪失から生じると考えられる。これらの架橋は、細胞死をもたらし得る。シスプラチン(cDDPまたはシス−ジアミンジクロロ白金(II))は、ヒト被験体における使用について承認されている白金化合物のうちで最も広範に使用されており、そして固形腫瘍(精巣、卵巣ならびに頭部および頸部を含む)のための、ならびに扁平上皮癌および小細胞肺癌に対する使用において他の薬剤と組み合わせた処置が示されている(Surら,1983)。
【0003】
しかし、その毒性に起因して、シスプラチンの使用には重大な制限が存在する。腎毒性および聴器毒性は代表的に、その用量を制限する毒性である。この問題があるので、多くの研究者が、治療指数(毒性に起因する耐えられ得る最大用量と、効力を提供する用量との間の比)が改善された新たな化合物を見出すことを期待して、新規の低分子白金キレートを作製し、そして試験した。白金キレート構造における変化もまた、白金治療が有効であり得る腫瘍型の範囲を広げ得、そして/または毒性プロフィールを変更し得る。上記のように、不安定な脱離基が殺腫瘍活性のために必要とされるが、これらの官能基はまた、この分子の毒性に寄与し得る。英国におけるInstitute for Cancer Researchで行われた研究は、塩素原子を他の脱離基で置換することによって、より低い腎毒性を有する化合物が入手され得ること実証した(Harrap,1985)。この研究によって、カルボプラチン(2つの配位した塩化物イオンが1,1−シクロブタン−ジカルボン酸のキレートによって置換されたシスプラチンアナログ)の発見がもたらされた。このキレート基は、シスプラチンの塩素原子と比較してそれほど不安定性ではない。その結果、シスプラチンと比較して、より高い用量のカルボプラチンが、同様の殺腫瘍効果のために必要とされるが、カルボプラチンは、より高い治療指数を有し、そして用量を制限する毒性は、腎毒性ではなく骨髄抑制(myelosuppression)である。
【0004】
オキサリプラチンは、欧州においてヒトへの使用が承認された別の低分子白金キレートである。この白金キレートは、シスプラチンの不安定でない(アミン)配位子および不安定な配位子の両方における変化の効果を調査する研究の結果であった。オキサリプラチンでは、配位したアンモニア配位子は、トランス−1R,2R−ジアミノシクロヘキサン(DACH)キレートによって置換されており、一方、不安定な塩素配位子は、シュウ酸キレートによって置換されている。オキサリプラチン(および他のDACH白金化合物)が、NCIヒト腫瘍スクリーニングにおいてシスプラチンおよびカルボプラチンと比較した場合に異なる活性スペクトルを有すること(Paullら,1989)が示されており、そしてオキサリプラチンは結腸直腸癌の処置のためにその後開発された。オキサリプラチンの用量を制限する毒性は、感覚ニューロン障害である。
【0005】
他の多くの低分子白金錯体が、潜在的な化学療法剤として調査されているが、せいぜい、効力および治療指数のわずかな改善しか達成されていない。これらのより新たな低分子白金キレートの多くは不活性であるかまたは処方に問題があり(例えば、低い水溶性または乏しい水性安定性)、そして大部分が、腎毒性、神経毒性、骨髄抑制、悪心および嘔吐を含めた、重篤な毒性副作用を誘発する。承認された白金錯体の治療指数を改善する多数の試みは、組合せ治療(例えば、シスプラチンとパクリタキセルとの同時投与;(Posnerら,2000))または処方の変更(例えば、リポソーム中への封入(Steerenbergら,1988))のいずれかを含んでいた。現在承認されている白金キレートと比較して治療指数がさらに改善された、新たな白金キレートについての明確な必要が残っている。このようなキレートは、理想的には水溶性であり、そして水性環境において安定であるが、腫瘍細胞においてはDNAを架橋し得る種を提供し、そして最終的に腫瘍細胞死を引き起こすに十分に不安定である。
【0006】
さらに、治療指数の改善は、腫瘍細胞に対する白金錯体の標的化によって達成され得る。従来の低分子白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン)は、腫瘍細胞に対して特異的には標的化されず、そして静脈内投与後に、これらは、腫瘍細胞中に拡散するのと同じくらい容易に正常細胞中に拡散し得る。また、これらの用量は、迅速にクリアランスされる。注射3時間後には、血漿中のシスプラチン由来の白金の90%が不可逆的にタンパク質に結合する(Physican’s.Desk Ref.1997)。シスプラチンおよびカルボプラチンについては、用量のうちのそれぞれ25%および65%が12時間以内に腎臓に分泌される(DeVitaら,1993)。治療指数の改善は、白金錯体が、腫瘍に対して正常細胞よりも容易に送達されるのであれば、および/または腫瘍細胞によって正常細胞よりも容易に取り込まれるのであれば、可能であり得る。
【0007】
文献で大量に報告されている、腫瘍を標的化する1つの方法は、ポリマーまたは他の高分子構造体への化学療法化合物の不安定な付着を含む。腫瘍細胞におけるポリマーおよびナノ粒子(nanoparticle)の濃度が、静脈内投与後の正常組織におけるそれらの濃度を超えることが実証されている(Seymour 1992;Veroneseら,1999)。この好ましい腫瘍蓄積のための機構は、「増強された透過性および残留」(すなわち、「EPR」)効果と命名されている(Seymourら,1995)。本質的に、腫瘍内皮細胞は、正常な内皮細胞よりも「漏出性」であり、それゆえ、ポリマーおよびナノ粒子は、正常組織の場合よりも容易に腫瘍における内皮細胞層を通過する。従って、静脈内投与後、ポリマーおよびナノ粒子は、正常細胞の細胞外流体に対してよりもずっと容易に、腫瘍細胞の細胞外流体に進入し得る。さらに、腫瘍細胞における細胞外流体のリンパドレナージは、正常細胞と比較してずっと効率が低い。これらの2つの要因は、低分子の自由に分散し得る分子と比較し、正常な組織と比較して、腫瘍におけるポリマーおよびナノ粒子のより高い濃度を説明する。
【0008】
EPR効果を通じた腫瘍への化学療法剤の受動的標的化を提供する構築物のいくつかの例が既に存在する。例えば、ドキソルビシンが、直鎖状ポリマー骨格であるポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド(ポリ(HPMA))へと、リソソーム酵素によって切断されるように設計されたテトラペプチドを介して付着された。この水溶性結合体は、「PK1」と命名され、そしてその化学的性質、前臨床試験および臨床評価を記載する、多数の刊行物の主題であった(例えば、Seymourら,1990;Pimmら,1996;Duncanら,1998;Thomsonら,1999;Minkoら,2000)。同様に、HPMAは、これらの化学療法分子の腫瘍への送達の増強のために、パクリタキセルおよびカンプトテシンに結合体化された(Fraierら,1998;Caiolfaら,2000)。パクリタキセルおよびカンプトテシンの両方が、腫瘍標的化および薬物の水溶性を改善することを目的として、他の水溶性ポリマーに付着されている(例えば、Liら,2000およびConoverら,1998)。
【0009】
ポリマー−白金結合体を用いて、白金錯体の溶解度を増大させ、全身毒性を減少させ、そして腫瘍をEPR効果によって標的化することによって、癌を処置する際に患者に利益を与え得ることが提唱されている(Duncan,1992)。ポリマー−白金結合体のいくつかの例が報告されている。例えば、米国特許第5,965,118号は、リソソーム酵素によって潜在的に切断され得るペプチドを介してHPMAポリマー骨格へと結合された種々の白金キレートを記載する(Gianasiら,1999もまた参照のこと)。さらなる例としては、ポリホスファーゼン白金(II)結合体(Sohnら,1997;米国特許第5,665,343号)、ポリ(グルタメート)白金錯体(Schechterら,1987)および他のもの(Bogdanov,Jr.ら,1996;Hanら,1994;Johnssonら,1996;Fiebigら,1996);Filipova−Voprsalovaら,1991;Fujiら,1996;Neuseら,1995;Schechterら,1989)が挙げられる。
【0010】
本発明者らの知る限りでは、ポリマー白金結合体の上記の報告は、ポリマーへの白金錯体形成の構造についても性質についても良好な証拠を提供しないが、大部分は、白金錯体の構造について特定の根拠のない仮定をする。以前のこれらの全ての例では、白金がポリマーに1より多くの方法で結合することが可能であり、従って、混合された錯体の可能性を生じる。また、pHは、不活性(ヒドロキソ配位子)または非常に毒性な(アクア配位子)であり得る他の白金錯体の形成をもたらし得る錯体の形成において制御されていない。従って、白金が任意の1つのポリマーから異なる放出速度で放出されること、および(形成される錯体の混合物はバッチの間で変動し得るので)白金の放出速度がバッチ毎に異なり、毒性および効力の両方における未制御のバッチ毎のバリエーションを生じることが可能である。このようなバリエーションは、癌の処置におけるこれらの結合体の使用には受け入れられない。好ましい状況は、腫瘍に対する白金化合物の改善された送達のためにEPR効果を利用する場合に、癌の処置のために有益である放出速度を与える、ポリマーに対する白金の、十分に規定され、よく制御された錯体形成を有することである。
【0011】
EPR効果を利用した受動的腫瘍標的化に加えて、「能動的」機構を利用して腫瘍に対して白金錯体を標的化することも可能であり得る。これは、例えば、正常組織と比較して腫瘍においてアップレギュレートされるレセプターに結合する部分へと白金錯体をカップリングし、それゆえ正常組織と比較して腫瘍組織における白金のレベルの上昇を生じることによって達成され得る。このようなアップレギュレートされた広範な種々のレセプターが公知である(例えば、Heppelerら,2000;Schlaeppiら,1999;Sudimackら,2000;Dubowchikら,1999;Weiner,1999;Buolamwini,1999)。標的化剤の例としては、モノクローナル抗体、ペプチド、ソマトスタチンアナログ、葉酸誘導体、レクチンおよび多価陰イオン性多糖が挙げられる。
【0012】
しかし、本発明者らの知識によれば、腫瘍組織に対する白金の増加した送達のついてのレセプター標的機構の有用性についてほとんど報告された例はない。しかし、モノクローナル抗体(McIntoshら、1997;Hataら、1992)、ステロイド(Gustら、1995;DiZioら、1992、Gibsonら、1990)および葉酸(Vitolsら、1987)と結合体化した白金の研究はいずれも、臨床において評価されていない。
【0013】
ポリマーの受動標的化を、レセプターアビド化合物(receptor−avid compound)の活性標的化と組み合わせることが可能である。これは、「PK2」、すなわちHPMAポリマーを有する化合物、酵素切断可能なペプチドを介してポリマーに結合したドキソルビシンによって例示され、これは、ガラクトース、すなわち、アシアロ糖蛋白レセプターに対して強力な親和性を有する糖質と結合体化され、これは、肝臓内で高度に濃縮される(Julyan、1999)。本発明者らの知識によれば、活性標的化と受動標的化とを合わせるこのアプローチは、白金キレートを用いて探求されていない。
【0014】
本発明は、初期の不安定なO,O−アミドマロネートcis−ジアミン白金(II)錯体を、純粋かつ単離可能なN,O−アミドマロネートcis−ジアミン白金(II)錯体を再配列することを可能にする条件の予測できない発見に基づく。O,O−Ptキレートは、反応性cis−ジアミン白金(II)種がアミドマトネートと反応する際に、はじめに形成される。以下で議論される報告は、このような反応において、N,O−キレートが、単離も精製もされないマイナー生成物として形成されないし、見出されもしないことを示す。本明細書中において、純粋なN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)が単離されるのを可能にする一般的条件が、記載される。さらに、このようなN,O−キレートは、癌の処置のための優先的な生物学的活性、具体的には改良された治療指数を有する。癌の処置のためのこのようなN,O−アミドマロネートキレートの有利な特性は、以前に報告されていない。さらに、本明細書中に記載される非熱力学的に安定な錯体のN,O−キレートへのほぼ完全な変換は、一貫した効力および毒性プロファイルによって製造され得る腫瘍を処置するための低分子およびポリマー化合物を提供する。
【0015】
任意の薬学的生成物について、その同一性および純度の正確な測定が必要である。本発明および関連分野に対して、白金錯体の正確な性質を検証し、そして不純物を同定することが最も重要である。なぜなら、不純な白金錯体は、精製の際に消滅する見込みのある生物学的活性を示した例があるからである(Talebianら、1991およびAppletonら、2000)。
【0016】
本発明の場合、白金錯体の正確な性質を同定するための最良の方法は、NMR分光法、具体的には195Pt NMRおよび15N NMR分光法である(Applenton2000)。いずれの技術によっても、白金錯体の同一性は、前分離の必要なしに作成される。この研究の場合、195Pt NMR分光法は、選択の方法である。なぜなら、それは十分な感度を提供し、15N NMR分光法に必要とされる同位体富化の必要性が避けられるからである。195Pt核は、スピン1/2であり、13C核の感受性のほぼ20倍の感受性を有し、15,000ppmの化学シフト範囲にわたって共鳴を示す。この化学シフトは、白金リガンドの同一性およびジオメトリに対して非常に敏感である。195Ptは、約10mM白金以上の実践的な感度限界を有する。cis−ジアミン白金(II)錯体についての化学シフトの例として、シスプラチンの−2168ppm、カルボプラチンの−1723ppm、ジアクアの−1584ppm、モノアクア−モノクロロの−1841ppm、O,O−アミノマロネートの−1732ppm、N,O−アミノマロネートの−2156ppm、およびN−アセチルグリシンのN,O−キレートの−2020ppmが挙げられる(Appleton1990;Gibson1990;Appleton2000)。対応するDACH−Pt錯体は、さらなる高磁場に現れる。
【0017】
cis−ジアミン白金(II)種の、遊離アミン含有アミノマロネートとの反応が、報告されている。Gandolfi(Gandolfiら、米国特許第4,614,811号;Gandolfiら、1987)は、cis−ジアミン白金(II)種およびアミノマロネートとの間の錯体の調製および抗腫瘍活性を報告した。この報告された構造は、図2aに示されるような全てO,O−キレートであった。後に、O,O−Ptキレートが最初に形成されたが、pH=5で数時間内に、図2bに示される熱力学的なN,O−アミノマロネートcis−ジアミン白金(II)に異性化することが、明確に示された。さらに、Appletonは、pHが非常に低い(2未満)場合、脱炭酸反応が起こり、対応するN,O−グリシン錯体を得ることを示した。pHが非常に高い(9を超える)場合、白金エステルの加水分解が起こった。純粋なN,O−アミノマロネート錯体の生物学的活性の文献報告は、公知ではない。しかし、密接に関連した、十分に精製されたN,O−アスパラギン酸cis−ジアミンPt(II)錯体の報告(Talebian1991)は、たとえ細胞傷害活性があったとしても、ほとんど示さなかった。
【0018】
図3(遊離アミンを有しない)に示されるようなアミドマロネートのcis−ジアミン白金(II)の場合、Tsujiharaの米国特許第4,882,447号は、多くの1,2−ジアミンシクロヘキサン白金(II)のO,O−アミドマロネート錯体(すなわち、DACH−白金(II))の調製および生物学的活性を報告する。O,O−Ptキレート化を検証するデータは、記載されていない。一連のアミドマロネートDACH−白金(II)は、図3aに示されたものと同様のO,O−Ptキレートとしてのみ存在することが報告された(Talebianら、1990)。ポリホスファゼンベースのアミドマロネートは、単に、O,O−キレートとして示され(図3a)、同様のグルタミン酸ベースの物質を通して、ほとんど等量の2種のキレートを示すことを確証した分光学的データはなかった。しかし、一連のステロイドベースのアミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体(図3、R=ステロイド)は、O,O−PtアミドマロネートキレートおよびN,O−Ptアミドマロネートキレートの混合物(それぞれ、図3aおよび図3b)であることが示され、O,O−異性体は、優先された(Gibsonら、1990)。2種の分離は記載されていないが、おそらく熱またはより長い反応時間で、N,O−キレートが好まれ得ることが予想された。しかし、本発明は、アミドマロネートcis−ジアミン白金錯体のO,O−PtからN,O−Ptへの転換を行うのにさらなる成分が必要とされる。
【0019】
要約すると、アミドマロネートのcis−ジアミン白金(II)錯体の場合、初期O,O−Ptキレートは、迅速にN,O−Ptキレートに異性化する、しかし、アミドマロネートのcis−ジアミン錯体の場合、O,O−Ptキレートのみが見出されるか、または両方のキレートの混合物中で、O,O−Ptが優先する。アミドマロネートの純粋なN,O−キレートの調製について全く報告がなされていない。従って、cis−ジアミン白金(II)錯体のアミドマロネートととのN,O−キレートの調製および有用な生物学的活性が、本明細書中で提供される。さらに、O,O−キレートの選択的調製が、記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
本発明は、精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体に関する。この錯体は、結合したポリマーであり得る。この錯体は、有効量の精製されたN,O−アミドマロネートジアミン錯体を患者へ投与する工程を包含する、白金感受性の新生物形成を処置する方法において有用である。
【0021】
より詳細には、本発明は、腫瘍処置における使用のための組成物に関し、この組成物は、以下:
【0022】
【化4】
の形態のcis−ジアミンN,O−アミドマロネート白金種を含み、
ここで、R1は、H、アルキル、水可溶性基、キャリアまたは腫瘍に対して種を標的化するのに有用な標的基であり;R2およびR3は、アミンであり;R4は、Hまたはカチオンであり;そしてここで、上記種は、抗腫瘍活性を有するか、または抗腫瘍活性を有するようにインビボで転化される。この錯体中のカチオンは、アンモニウムイオン、アルカリ、またはアルカリ土類金属であり得る。好ましいカチオンは、ナトリウムである。
【0023】
特定の場合、N,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体は、上記組成物を含み得、ここで、R1は、1〜5000キロダルトンの分子量のN−アルキルメタクリルアミドユニットの合成ポリマーであり、以下:
【0024】
【化5】
の形態を有し、
ここで、m=0およびn=100であるか、またはm:nの比は、0.1〜99.9であり;R5は、HまたはCH3であり;R6は、C1〜C6ヒドロキシアルキル基であり、そしてR7は、生理学的条件下で切断され得る、Gly−(W)p−Glyを有するオリゴペプチドであり、ここで、pは、0〜3であり、Wは、アミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせであり、このC末端は、アミドマロネート基のアミドである。
【0025】
上記のN,O−アミドマロネート白金錯体の重要な実施形態において、R2およびR3の両方とも、NH3である。これらは、しばしば、好ましくは、1,2−ジアミノシクロヘキサンの第一アミン基である。
【0026】
これらの錯体に含まれる白金は、+2酸化状態または+4酸化状態にあり得る。上記のR1は、Hまたはアルキルのいずれかであるが、葉酸レセプターを標的化するのに有用な、ステロイドまたは葉酸または葉酸誘導体もしくはアナログでもあり得る。
【0027】
ポリマーN,O−アミドマロネート白金錯体のポリマーは、本明細書中で記載される他のポリマー、すなわち、ポリグルタミン酸、モノ−もしくはポリサッカリドまたはポリサッカリドの側鎖を有し得る。
【0028】
本発明はまた、白金ジアミン化合物の安定性を改良する方法に関する。この方法は、白金化合物の精製されたN,O−アミドマロネート錯体を形成する工程を包含する。
【0029】
本発明の重要な局面は、腫瘍処置における使用のための組成物に関し、この組成物は、腫瘍部位に蓄積するよう設計され、白金化合物との錯化のためのポリマーに沿って間隔をあけられた側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドからなるポリマー白金錯体を含み、この側鎖は、(i)一方端でそのポリマーに結合し、そして他方端において、少なくとも主に、N,O−アミドマロネート錯体を介して白金化合物に結合したオリゴペプチドからなり、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断され、抗腫瘍活性を有するか、または抗腫瘍活性を有するようにインビボで転化される白金化合物を生成するように設計された少なくとも1つの連結を含む。
【0030】
このようなN−アルキルアクリルアミドポリマーは、好ましくは、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである。N−アルキルアクリルアミドポリマーは、0.1と約99.9との間のm:n比の2個の繰り返し単位を有するコポリマーであり得る。
【0031】
本発明の組成物はまた、オリゴペプチド側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドユニットの繰り返し単位を含む。これらのオリゴヌクレオチド鎖は、白金化合物を結合し得る近位基内で終端し得る。
【0032】
本発明の組成物において、有用なポリマーは、ポリマーが以下:
【0033】
【化6】
の形態のコポリマーである形態のコポリマーであり得、
ここで、R1は、HまたはCH3であり、R2は、低級アルキルもしくは低級ヒドロキシアルキル基であり、そしてR3は、オリゴペプチド側鎖である。このポリマーにおいて、R1は、CH3であり、R2は、2−ヒドロキシプロピルであり、R3は、Gly−Phe−Leu−Gly−AmaまたはGly−Gly−Amaである。本発明の治療的用途において、ポリマー白金化合物は、非経口投与に適切な水性媒体に溶解される。
【0034】
本発明の重要な局面は、白金化合物に供される固体腫瘍を処置する方法であり、この方法は、白金化合物と錯化するためのポリマーに沿って間隔をあけられた側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドポリマーからなるポリマー−白金錯体を調製する工程であって、この側鎖が、(i)一方端でそのポリマーに結合し、そして他方端において、少なくとも主に、N,O−アミドマロネート錯体を介して白金化合物に結合したオリゴペプチドからなり、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断され、抗腫瘍活性を有するか、または抗腫瘍活性を有するようにインビボで転化される白金化合物を生成するように設計された少なくとも1つの連結を含む、工程;ならびに、薬学的に有効な量の錯体を被験体に非経口投与する工程、を包含する。1つの好ましい実施形態における上記N−アルキルアクリルアミドポリマーは、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである。別の重要な実施形態において、N−アルキルアクリルアミドポリマーは、1,000ダルトンと5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するコポリマーである。このコポリマーは、0.1と約99.9との間のm:nの比の2つの繰り返し単位mおよびnを含む。このような繰り返し単位は、N−アルキルアクリルアミドユニットおよび、白金化合物に結合し得る近位端を有するオリゴペプチド側鎖を有するユニットを含む。オリゴペプチドが使用される場合、上記オリゴペプチドは、好ましくは、Gly−(W)p−Glyであり、ここで、pは0〜3であり、Wは、アミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせである。1つの重要な実施形態において、オリゴペプチドは、Gly−Phe−LeuまたはGly−Glyである。
【0035】
本発明は、白金ジアミン化合物が、被験体にこの化合物を含む薬学的に受容可能な溶液を非経口的に投与することによって腫瘍を処置するために使用される際に、白金ジアミン化合物の治療指数を向上する方法を包含し、この方法は、上記投与の前に、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位、および上記白金化合物とN,O連結を介して錯化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位からなるコポリマーと、白金化合物とを錯化する工程を包含する。
【0036】
別の観点から、本発明は、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位、および上記白金化合物とN,O連結を介して錯化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位からなるコポリマーと、上記化合物とを錯化する工程を包含する、白金ジアミン化合物の安定性を改善する方法に関する。
【0037】
従って、本発明の目的は、インビボで改善された抗腫瘍活性を有する新規のポリマー−白金錯体を提供することである。
【0038】
1局面において、本発明は、腫瘍部位で蓄積するよう設計されたポリマー−白金化合物を含む、腫瘍処置における使用のための組成物に関する。この化合物は、骨格に結合した白金含有側鎖を有する合成ポリマー骨格からなる。この側鎖(i)は、生分解性リンカー、例えば、一方端またはその付近にて骨格に結合し、他方端またはその付近にて白金化合物に結合したオリゴペプチドからなる。このリンカーは、抗腫瘍活性を有するか、または有するようにインビボで転化される白金化合物を生じる選択された生理学的条件下で切断するように設計される少なくとも1つの連結を含む。オリゴペプチドは、通常のアミノ酸(例えば、アミドマロネートなど)またはαアミノ酸以外を含み得る。
【0039】
1つの実施形態において、この合成ポリマーは、約1,000〜5,000,000ダルトンの間の原子量を有する、N−アルキルアクリルアミドまたはメタクリルアミド(つまり、全「n」型単量体)のホモポリマーである。
【0040】
別の実施形態において、この合成ポリマーは、1,000〜5,000,000ダルトンの間の原子質量を有するコポリマーであり、m:nの割合が約0.1〜99.9の間である、2つの単量体のmおよびnを含む。
【0041】
1つの実施形態において、この単量体は、N−アルキルアクリルアミドまたはメタクリルアミド単体、および白金化合物と連結し得る近位な末端基に終端するオリゴペプチド側鎖を運ぶ単体から構成される。
【0042】
1つ実施形態において、ポリマー−白金化合物におけるポリマーは、以下の形態のコポリマーである:
【0043】
【化7】
ここで、R1はHまたはCH3であり、R2は下位アルキルまたは下位ヒドロキシアルキル基であり、かつR3はオリゴペプチド側鎖である。
【0044】
別の実施形態において、このオリゴペプチドは、Gly−(W)p−Glyの形態のオリゴペプチドであり、ここでpは、0〜3であり得、そして(W)は任意のアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせであり得る。1つの実施形態において、このペプチドは、Gly−Phe−Leu−Glyであり、そして白金化合物との連結のためのカルボキシル、ジアミンまたはマロニル部分に終端する。PheまたはLeuは、好ましい実施形態において(L)アミノ酸である。別の実施形態において、このペプチドは、近位なカルボニル末端基に終端しているGly−Glyである。D−アミノ酸含有オリゴペプチドが、生分解性であるという点において、これらはオリゴペプチドの一部分または全てでもあり得る。
【0045】
好ましい実施形態において、R1はCH3であり、R2は2−ヒドロキシプロピルであり、かつR3はGly−Phe−Leu−Gly−[X]であり、ここで[X]は、ジアミン、カルボキシル基またはマロニル部分である。
【0046】
このポリマー−白金化合物は、非経口投与に適した薬学的に受容可能な培養液中に溶解される。
【0047】
別の局面において、本発明は、被験体において固形腫瘍に対して白金化合物を標的化する方法を含む。この方法は、幹に沿って間隔のあいた側鎖を有する合成ポリマー幹から構成されたポリマー−白金化合物を調製する工程を包含する。この側鎖は、(i)一方の末端において幹に連結し、そして他方の末端において白金化合物に連結したオリゴペプチドから構成され、そして(ii)選択された生理学的条件下において、坑腫瘍活性を有するか、または坑腫瘍活性を有するためにインビボで転換される白金化合物を得るために切断されるべく設計される、少なくとも1つの連鎖を含む。この化合物は、薬学的に有効な量において、被験体に非経口で投与される。
【0048】
別の局面において、この化合物が、被験体に対する化合物を含む、非経口で薬学的に受容可能な溶液を投与することによって、腫瘍を処置するために使用される場合、本発明は、白金化合物の治療学的指標を増強する方法を含む。この化合物を投与する前に、この方法は、白金化合物と混合可能な近位の末端基に終端するオリゴペプチド側鎖を有する、N−アルキルアクリルアミドの第一単量体および第二単量体から構成されたコポリマーを有する白金化合物を混合する工程を包含する。
【0049】
別の局面において、本発明は、この白金化合物と混合可能な近位の末端基に終端するオリゴペプチド側鎖を有する、N−アルキルアクリルアミドの第一単量体および第二単量体から構成されたコポリマーを有する化合物を混合することによる、白金化合物の溶解性および/または安定性に関与する方法を含む。このポリマー−白金錯体は、生理学的条件下において、非錯体の白金化合物よりも、より可溶性であり、そして/またはより安定している。好ましい白金錯体は、−およびO−を介して結合され、最も好ましくは、アミノマロネート残基は、ポリマーに対して生分解性連鎖に連結される。
【0050】
これらの対象および他の対象、ならびに本発明の特徴は、本発明の以下の詳細な記載を添付の図面と共に読む場合に、さらに十分に理解される。
【0051】
化学療法薬剤を含む、治療薬剤のポリマーに基づく送達は、考慮すべき注意を受け続ける(Duncanら(1999)、Seymour)。代表的には、確立した薬理学的実在は、生物学的挿入ポリマーに化学的に連結され、従ってその分布、排除および毒物学的特性を大いに変化させる。腫瘍学的な適用について、この技術は、増強した透過性および保持(EPR)効果を介して腫瘍間隙での細胞障害性薬剤の濃度を増加させる可能性を提供する(Seymourら)。ACCESS Pharmaceuticalは、白金と合金にしたポリマー治療の広範なクラスの権利を有する。AP 5280と命名されたこれらの1つは、シス−ジアンミン白金(II)(cis−diammineplatinum(II))のアミノマロネート(aminomalonato)キレートを有する、90:10のN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)のコポリマー、およびGly−Phe−Leu−Glyのメタクリルアミドである。この最適化したリンカーを組み込むことは、このポリマー由来の白金含有フラグメントを、腫瘍プロテアーゼによる切断を介して放出する可能性を提供する。このコポリマー−リンカー−キレート結合の概念、ならびに初期合成研究および生物学的研究は、Duncanら(1999)によって示されている。臨床的評価のために、この物質のさらなる発展への挑戦は、ヒトに使用するために規制当局の許可を保証するために必要な、必須の活性、安定性および薬学的特性を有する、構造的に特徴づけられた生成物のための拡張可能な手順を定義することである。
【0052】
AP 5280の合成は、初期にジエチルアミノマロネートを中間体のポリ(HPMA)GFLG−ONpにおけるp−ニトロフェノールに置換することによって達成され、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtが得られる。この後者はけん化され、次いでシス−(NH3)2Pt(H2O2)2+で白金と合金され、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2が得られた。その後、初期O,O−PtキレートのN,O−Ptキレートへの再配列はコントロールされる。本発明者らはまた、HPMAおよびMA−GFLG−Ama−diEtモノマーからポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを作製した(Polymer Lab)。これらのモノマーを、種々の量のラジカル鎖転移薬剤(つまり、p−ニトロフェノール)を用いて重合することによって、この分子量は制御される(注意:この分子量の制御方法は、文献において周知である)。次いで、これらのポリマーは、けん化され、白金と合金され、そして際配列され、記載されるようなN,O−キレートが得られた。低分子量の不純物からの精製は、末端の凍結乾燥による最終処方生成物の単離を用いて、接線方向の流体を濾過することによって達成される。N,O−Ptキレート(92%未満)の同定および精製は、O,O−キレート(−1733ppm)または他のPt種のような8%未満のPt存在を有する、195PtNMR分光学(−2056ppm)によって確認される。この最終生成物は、8.0±0.5%のPt(wt/wt)を含み、そしてMW=24.4kDaを有する。37℃で24時間を越えて、水中においては、AP 5280は、ポリマー遊離白金種として1%より十分小さい(<<1%)白金含有量を放出し、そしてクロライドの生理学的濃度を含む培養液中に2%未満の白金を放出する。AP 5280の有効性は、s.c.B16F10マウスの腫瘍モデルにおいて評価され、このモデルは、3mg/kgにおけるシスプラチンの活性に相当する、20mg Pt/kgにおいて活性を示す。カルボプラチン(45または60mg/kg)を越える活性は、200mg Pt/kg(全用量IV、qd x5)において、AP 5280を用いて達成される。重要な局面において、図Aは、AP 5280の手順についての工程の概要を示す。
例えば、本願発明は、以下の項目を含む。
(項目1) 精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体。
(項目2) ポリマー結合N,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体。
(項目3) 白金感受性新形成を処置する方法であって、有効量の精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体を患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目4) 腫瘍の処置における使用のための組成物であって、以下の式:
【化1】
のシスジアミンN,O−アミドマロネート白金種を含み、
ここで、R1は、H、アルキル、水可溶化基、担体または該白金種を腫瘍に標的化するのに有用な標的化基であり;R2およびR3は、アミンであり;R4は、Hまたはカチオンであり;そして該白金種が、抗腫瘍活性を有するか、またはインビボで変換されて抗腫瘍活性を有する、組成物。
(項目5) 項目4に記載の組成物であって、ここで、前記カチオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、組成物。
(項目6) 項目4に記載の組成物であって、ここで、前記カチオンが、ナトリウムである、組成物。
(項目7) 項目4に記載の組成物であって、ここで、R1が、分子量1〜5000キロダルトンのN−アルキルメタクリルアミド単位の合成ポリマーであり、そして以下の式:
【化2】
であり、
ここで、m=0およびn=100またはm:nの比が0.1〜99.9であり;R5が、HまたはCH3であり;R6が、C1〜C6ヒドロキシアルキル基であり、そしてR7が、Gly−(W)p−Glyの配列を有する、生理学的条件下で切断可能なオリゴペプチド鎖であり、ここで、pが0〜3であり、Wがアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせであり、C末端が項目1に記載のアミドマロネート基のアミドである、組成物。
(項目8) 項目4に記載の組成物であって、ここでR2およびR3が、NH3である、組成物。
(項目9) 項目4に記載の組成物であって、ここでR2およびR3が、1,2−ジアミノシクロヘキサンの一級アミン窒素である、組成物。
(項目10) 項目4または7に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+2の酸化状態である、組成物。
(項目11) 項目4または7に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+4の酸化状態である、組成物。
(項目12) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、Hまたはアルキルである、組成物。
(項目13) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、ステロイドである、組成物。
(項目14) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、葉酸レセプターを標的化するのに有用である葉酸誘導体または葉酸アナログである、組成物。
(項目15) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、ポリグルタミン酸の側鎖である、組成物。
(項目16) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、モノサッカリドまたはポリサッカリドの側鎖である、組成物。
(項目17) 白金ジアミン化合物の安定性を改善するための方法であって、白金化合物の精製されたN,O−アミドマロネート錯体を形成する工程を包含する、方法。
(項目18) 腫瘍の処置における使用のための組成物であって、以下:
ポリマー−白金錯体であって、該ポリマー−白金錯体が、腫瘍部位に蓄積するように設計され、そして白金化合物を錯体化するためにポリマーに沿って間隔を開けて配置された側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドポリマーを含み、該側鎖が、(i)一端において該ポリマーに結合され、他端において少なくとも主にN,O−アミドマロネート錯体を介して該白金化合物に結合されたオリゴペプチドを含み、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断されて、抗腫瘍活性を有するかまたはインビボで変換されて抗腫瘍活性を有する白金化合物を生じるように設計された少なくとも1つの連結を含む、ポリマー−白金錯体、
を含む、組成物。
(項目19) 項目18に記載の組成物であって、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである、組成物。
(項目20) 項目18に記載の組成物であって、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するコモポリマーであり、該コポリマーが、約0.1と約99.9との間の比m:nで2つの繰り返し単位mおよびnを含む、組成物。
(項目21) 項目20に記載の組成物であって、ここで、前記繰り返し単位が、N−アルキルアクリルアミド単位および前記オリゴペプチド側鎖を保持する単位を含み、該オリゴペプチドが、前記白金化合物に結合し得る近位末端基で終わっている、組成物。
(項目22) 項目18に記載の組成物であって、ここで、前記ポリマーが、以下の式:
【化3】
のコポリマーであり、
ここで、R1が、HまたはCH3であり、R2が、低級アルキル基または低級ヒドロキシアルキル基であり、そしてR3が、オリゴペプチド側鎖である、組成物。
(項目23) 項目22に記載の組成物であって、ここで、前記オリゴペプチドが、Gly−(W)p−Glyであり、ここで、pが0〜3であり、Wがアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせである、組成物。
(項目24) 項目22に記載の組成物であって、ここで、前記オリゴペプチドの近位末端が、アミドマロネートである、組成物。
(項目25) 項目22に記載の組成物であって、ここで、R1がCH3であり、R2が、2−ヒドロキシプロピルであり、そしてR3がGly−Phe−Leu−Gly−AmaまたはGly−Gly−Amaである、組成物。
(項目26) 項目18に記載の組成物であって、ここで、前記ポリマー−白金化合物が、非経口投与に適した水性媒体中に溶解される、組成物。
(項目27) 被験体の固形腫瘍を白金化合物で処置するための方法であって、該方法が、ポリマー−白金錯体を調製する工程および薬学的に有効な量の該化合物を該被験体に非経口的に投与する工程を包含し、該ポリマー−白金錯体が、白金化合物を錯体化するためにポリマーに沿って間隔を開けて配置された側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドポリマーを含み、該側鎖が、(i)一端において該ポリマーに結合され、他端においてN,O−アミドマロネート錯体を介して該白金化合物に結合されたオリゴペプチドを含み、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断されて、抗腫瘍活性を有するかまたはインビボで変換されて抗腫瘍活性を有する白金化合物を生じるように設計された少なくとも1つの連結を含む、方法。
(項目28) 項目27に記載の方法であって、ここで、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである、方法。
(項目29) 項目27に記載の方法であって、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するコモポリマーであり、該コポリマーが、約0.1と約99.9との間の比m:nで2つの繰り返し単位mおよびnを含む、方法。
(項目30) 項目29に記載の方法であって、ここで、前記繰り返し単位が、N−アルキルアクリルアミド単位および前記オリゴペプチド側鎖を保有する単位を含み、該オリゴペプチドが、前記白金化合物に結合し得る近位末端基で終わっている、方法。
(項目31) 項目27に記載の方法であって、ここで、前記オリゴペプチドが、Gly−(W)p−Glyであり、ここで、pが0〜3であり、Wがアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせである、方法。
(項目32) 項目27に記載の方法であって、ここで、前記オリゴペプチドが、Gly−Phe−Leu−GlyまたはGly−Glyである、方法。
(項目33) 白金ジアミン化合物を、該化合物を含む薬学的に受容可能な溶液を被験体に非経口的に投与することによって腫瘍を処置するために使用する場合に、該白金ジアミン化合物の治療指数を高める方法であって、以下:
該投与の前に、該白金化合物を、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位およびN,O連結を介して該白金化合物を錯体化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位を含むコポリマーで錯体化する工程、
を包含する、方法。
(項目34) 白金ジアミン化合物の安定性を改善する方法であって、以下:
該化合物を、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位およびO,N連結を介して該白金化合物を錯体化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位を含むコポリマーで錯体化する工程、
を包含する、方法。
(項目35) ポリグルタメートまたは別の天然または合成ポリマーに結合された、O,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体。
(項目36) 項目35に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+2の酸化状態である、組成物。
(項目37) 項目35に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+4の酸化状態である、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンの構造ならびにアミドマロネート−シス−ジアンミン白金(II)(amidomalonate−cis−diammineplatinum(II))のO,O−キレートおよびN,O−Ptキレートの基本的構造を示す(注意:シスプラチンはまた、cDDPおよびシス−ジクロロジアンミン白金(II)(cis−diamminedichlorocplatinum(II))として公知である)。
【図2A】図2Aは、アミノマロネート−シス−ジアミン白金(II)のO,O−Ptキレートの構造を示す。
【図2B】図2Bは、アミノマロネート−シス−ジアミン白金(II)のN,O−Ptキレートの構造を示す。
【図3A】図3Aは、アミドマロネート−シス−ジアミン白金(II)のO,O−Ptキレートの構造を示す。
【図3B】図3Bは、アミドマロネート−シス−ジアミン白金(II)のN,O−Ptキレートの構造を示す。
【図4】図4は、ポリ(HPMA)−GFLG−Yの調製物および構造を示し、ここでY=ONpまたはAma−diEtである。Y=ONpの場合、より狭い部分での多分散を有する下位の分子量ポリマーが形成される。ONp基または添加したp−ニトロフェノールがない場合、より上位の分子量ポリ(HPMA)ポリマーが見い出される。この351kDaの物質は、任意のONpエステル、および任意の添加したp−ニトロフェノールなしの反応系から生じる。ONpエステルなしに、p−ニトロフェノールが重合のために添加される場合、より小さいHPMAポリマーは、より狭くそしてより均一な分子量分布を有して得られる。
【図5】図5は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2N,O−キレートを調製するために用いられる工程を示す。例において得られる多数のこれらの同様な工程および状態は、小さな分子であるか、またはポリマーに結合したアミドマロネート−シス−ジアミン白金(II)種の他のN,O−キレートの形成に適応可能である。
【図6】図6は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtの調製の間のp−ニトロフェノールの放出を示す。これは、置換反応が小さな分子を用いてモニターされた1つの方法を示す。
【図7】図7は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のO,O−キレートおよびN,O−キレートの構造と共に、それらに対応する195PtNMRスペクトルを示す。これらのスペクトルは、2つのキレートのピーク位置におけるキレート転換および差異を図解的に示す。O,O−キレートのスペクトルは、このスペクトルが約85%のO,O−キレートおよび15%のN,O−キレートからなることを示す。N,O−キレートのスペクトルは、このスペクトルが約10%のO,O−キレートおよび90%のN,O−キレートからなることを示す。より高温、またはより長い反応時間が用いられた場合、O,O−キレートは検出不可能である。
【図8】図8は、図5の工程Cの間のO,O−キレートおよびN,O−キレートのパーセントのプロットを示す。これは、O,O−キレート形成が1〜2時間以内で完了することを示す。
【図9】図9は、75mMホスフェート(pH=7.4、100mM NaCl)対時間における、O,O−キレートのN,O−キレートへの転換のプロットを示す。これは、これらの状態において、100%の白金がN,O−キレートとして存在することを示す。
【図10】図10は、O,O−キレートのN,O−キレートへの転換における塩化物イオン濃度の影響を示す。約60mMのNaCl濃度におけるキレート転換率は、同じである。
【図11】図11は、O,O−キレートのN,O−キレートへの転換における硝酸塩、アセテートおよびヨウ化物の影響を示す。3つの陰イオンの全てが、キレート転換に影響を与えるが、異なる割合である。
【図12】図12は、実施例23のB16黒色腫の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで生理食塩水は、コントロールとして用いられ、シスプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートは、そのMTDの十分下位に投薬された。
【図13】図13は、実施例24のB16黒色腫の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで生理食塩水は、コントロールとして用いられ、シスプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のO,O−キレートは、そのMTDの近位に投薬された。
【図14】図14は、実施例25のB16黒色腫の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで生理食塩水は、コントロールとして用いられ、カルボプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートは、そのMTDの近位に投薬された。
【図15】図15は、実施例26のヒト異種移植の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで等浸透圧性グルコースは、コントロールとして用いられ、カルボプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートは、そのMTDの十分に下部、および近位に投薬された。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(発明の詳細な説明)
本発明の中心的な実施形態は、特定の型の白金(II)錯体(すなわち、図3b)の精製され、そして十分に特徴付けられた組成物であり、この錯体において、アミドマロネート基が、アミドマロネートのアミド窒素およびアミドマロネートのカルボキシレートのうちの1つの酸素によって、白金にキレートされ、そしてここで、中心白金に対する2つの他の利用可能な配位子部位が、アンミンまたはアミンである。このような錯体は、癌の処置において有用な化学療法剤であり得る。
【0055】
本発明の重要な局面において、N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体のカルボニルアミドに結合したR基(図3bを参照のこと)は、H、アルキル基、本発明の種を可溶化するために有用な基、ポリマー、本発明の錯体とポリマーとの間を結合するために有用な基、高分子、またはN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体を腫瘍に標的化するために有用な実体への結合のようなものであり得る。
【0056】
アミドカルボニルのR基がH、単純なアルキル、または水可溶化基である、本発明は、有用であり得る。なぜなら、本発明のN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体は、好ましい治療指数を有するからである。本実施例は、本発明のN,O−キレートが低い毒性および良好なインビトロ活性を有することを示すので、このような単純な低分子バージョンのN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体は、有用であり得る。これらのO,O−キレートの対応物は、生物学的活性を有することが公知であり、そして本発明は、O,O−Ptアミドマロネートキレートが生理学的条件下で迅速にN,O−Ptキレートに転化することを示す。水可溶化基をR基としてかまたはR基の一部として組み込むことによって、より好ましい処方物および投薬が達成され得る。このような水可溶化基としては、炭水化物、ポリエチレングリコール、四級アミン(すなわち、ベタイン)および当業者に公知の他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
アミドカルボニルのR基がポリマーである、本発明は、有用であり得る。なぜなら、このポリマーが、EPR効果による腫瘍の標的化を提供し得、そして水溶性を増加させ得るからである。このポリマーは、合成物または天然物であり得る。合成ポリマーとしては、ポリアクリルアミド(ポリメタクリルアミドを含む)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール(直鎖または分枝鎖)およびポリアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。ポリアミノ酸としては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、およびポリリジンが挙げられる。これらのポリアミノ酸におけるポリマー骨格は、αアミン基およびαカルボキシル基のアミドであっても、側鎖のカルボキシルまたはアミン基とのアミドであってもよい。他のものが、当業者に明らかであり得る。天然ポリマーとしては、アルブミンのようなタンパク質、およびヘパリン、コンドロイチン6−硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサンのような多糖類などが挙げられる。他のものが、当業者に明らかであり得る。各ポリマー鎖は、1つ以上の白金キレートに結合し得る。ポリマーとアミドマロネート基との間の連結は、ジカルボン酸(例えば、コハク酸)を使用してポリマーのアミン基とアミノマロン酸のアミンとの間を架橋して、ポリマーのカルボキシル基をアミドマロネートで置換することによるか、またはハロゲン化アルキル置換基を用いて多糖類のヒドロキシル基とアミドマロネートとの間にエーテルを形成することによって、作製され得る。他の可能性が、当業者に明らかであり得る。
【0058】
アミドカルボニルのR基が、N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体を腫瘍に対して標的化するために有用な基を含む、本発明は、本発明の錯体の治療指数をさらに増加させるために有用であり得る。標的化剤としては、モノクローナル抗体、ペプチド、ステロイド、ソマトスタチンアナログ、葉酸の誘導体およびアナログ、レクチン、ならびにポリアニオン性多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のこの特定の範囲内で、本発明のN,O−アミドマロネートジアミン白金(II)錯体と標的化基との間に、共有結合が形成される。次いで、このような標的化錯体が患者に投与される場合に、この標的化剤は、本発明の錯体を腫瘍に指向する。これは、本発明の白金錯体の殺腫瘍効果を増加させ、そして全身毒性を減少させると予測される。このような標的化された錯体の1つの例は、葉酸のγ−カルボキシレートをジエチルアミノマロネートで置換して、葉酸−Ama−diEt種を与えることによって、作製され得る。次いで、この例において与えられる手順に従って、これは葉酸−Ama=Pt(NH3)2N,O−Ptキレートに転化される。この白金は、+2または+4のいずれの酸化状態でもあり得る。
【0059】
1つの好ましい実施形態において、アミドマロネートのアミドカルボニル基のR基は、「ポリ(HPMA)−GG−」であり、Ama基が近位のG(グリシン)に結合している。特に好ましい実施形態において、アミドカルボニルのR基は、25kDaのMWを有する「ポリ(HPMA)−GFLG」である。別の好ましい実施形態は、アミドカルボニルのR基が「ポリ(Glu−Ama)」であるものである。
【0060】
本発明のN,O−アミドマロネートジアミン白金(II)種のアミンは、同一であるかまたは異なり得る。本発明に関して、アミンは、NH3(すなわち、アンミン)、一級、二級、および三級アミンであり得る。これらのアミンは、複素環式および/または芳香族であり得る。図3bは、R’がアルキル基またはアリール基である場合の、2つの一級アミンを有するような錯体を示す;R’がHである場合には、これはNH3すなわちアンミンである。これら2つのアミンは、別個の実体であり得るか、または単一の実体の2つの部分であり得る。二級アミンおよび三級アミンのそれぞれ2つまたは3つのR基は、同じであるかまたは異なり得、n−アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、これらの組み合わせおよび当業者に公知の他の類似の基であり得る。また、アミンのアルキル基およびアミンは、これらが白金錯体と適合性であることを条件として、他の官能基をもまた有し得る。このような適合性の基としては、アルコール、エーテル、四級アミン、ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、三級アミド、エステル、および当業者に公知の他の官能基が挙げられる。非適合性の官能基としては、チオール、チオエーテルなどが挙げられ得る。
【0061】
N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)組成物の特に好ましい実施形態は、2つのアミンがそれぞれNH3部分であるものである。別の好ましい実施形態は、2つのアミンが1,2−ジアミノシクロヘキサンの一級アミンであるものである。特に好ましいものは、トランス−1R,2R−ジアミノシクロヘキサン立体異性体である(Nojiら、1981)。
【0062】
別の好ましい実施形態において、本発明は、精製したN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体を患者に投与することによって、白金感受性新形成を処置するために使用される。この用量は腹腔内(IP)、静脈内(IV)、または経口的に投与され得、IPおよびIVの経路が好ましい。これは、水、等張液、または患者への投与に適した何らかの他の媒体に溶解され得る。
【0063】
本発明の重要な局面は、本発明のN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体および関連する錯体の純度および同一性がいかにして決定され得るかを教示する。純度および同一性のこのような決定は、安全性および効力を確実にするために、薬学的製品に対して必要である。同一性および純度の決定のための中心的なものは、1H核および195Pt核のNMR分光法である。1H NMRから、小さな水素含有不純物が見られ得、そして0.05%(wt/wt)まで低いレベルまで、同定され得る。この錯体の同一性は、部分的には、1H NMR分光法によって同様に確認され得る。例えば、多くの実施例が、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2調製物の帰属とともに、プロトンピークを列挙する。さらに、O,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートが、5ppmと6ppmとの間のピークの存在から、区別され得る。このピークは、O,O−キレートおよびN,O−キレートに対してそれぞれ5.8ppmおよび5.2ppmの近くに出現する。白金錯体の正確な性質の同定は、195Pt NMR分光法によって最良に決定される。なぜなら、白金共鳴の化学シフトは、その配位子およびそれらの配置に非常に感受性であるからである。アミドマロネートシス−ジアンミン白金(II)のO,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートに関して、共鳴がそれぞれ−1733ppmおよび−2055ppmにおいて出現し、アナログに関しては、対応する共鳴は、それぞれ約−1850〜−1900ppmおよび−2350〜−2400ppmに出現する。また、他の所望でない白金種が見られ得、そして同定され得る。例えば、実施例3におけるポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のO,O−Ptキレートのスペクトルは、他の2つの白金のピークの存在を示す。
【0064】
他の分析技術が、同一性および純度に関して、NMRスペクトルを補充および確認する。元素分析から、白金、ナトリウム、塩素、およびホスフェートの量が測定される。[実際の結果は、約9%のPtを含み、そして塩素またはホスフェートをほとんどまたは全く含まない、予測されたものに適合する。ナトリウムに関しては、N,O−キレートは、予測された量の1.0%のNaを有することが測定される。O,O−キレートは、ナトリウムをほとんど有さない。]カールフィッシャー滴定を使用して、水を測定する。なぜなら、最終生成物がしばしば凍結乾燥されるからである。ポリマーの大きさおよびその分子量分布を、分析用SECによって決定する。遊離の低分子白金種の量および生理学的条件下(すなわち、PBS37℃)で放出される白金の量を決定する。なぜなら、遊離の白金種は、所望より高い毒性を導き得るからである。例えば、本明細書中に記載されるO,O−Ptキレートは、N,O−キレートよりずっと少量の白金種を放出する。これに対応して、O,O−Ptキレートは、インビボにおいて、本発明のN,O−Ptキレートよりずっと毒性が高い。
【0065】
本発明の別の局面は、本発明の白金錯体が、ヒトへの投与に適切なレベルまで精製されることを教示する。いくつかの滅菌濾過を組み込み、そして全プロセスに沿って重要な工程においては滅菌環境を使用することに、注意が払われる(図5を参照のこと)。このことは、本発明の滅菌された最終生成物を確実にすることを補助する。不純物のレベルは、限外濾過によって、薬学的に受容可能なレベルまで低減される。このことを、塩化物、ホスフェート、および限外濾過可能な白金に関して最終生成物を分析することによって、確認した。いくつかの実施例によって示されるように、このような塩および小さな白金種のレベルは非常に低く、そして十分に、必要な純度レベルの範囲内である。また、TFFの間の精製を、白金、リンおよび塩化物に対する透過性を分析することによって、確認した。
【0066】
本発明の特に重要な局面は、O,O−キレートからN,O−キレートへの転化がいかにして起こるか、およびいかにして起こらないかを教示する。実験DおよびEの結果の比較は、より高い温度のみでは、キレートの転化を引き起こさないことを示す。なぜなら、実験Dにおいては有意なキレート転化が起こらなかったが、実験EにおいてはN,Oキレートへの完全な転化が起こったからである。これらの反応物の両方が、同じ時間だけ加熱された。NaClおよびリン酸緩衝液を含む方のみが、キレート転化を示した。このキレート転化を、図7にグラフで示す。この図から見られ得るように、37℃のPBS中で16時間後にも、依然としていくらかのO,O−Ptキレートが残っている。より高い温度および/またはより長い曝露時間を使用する場合には、O,O−Ptキレートは検出されないであろう。実験EおよびFにおいて得られた結果の比較は、より高い温度が、キレート転化の速度を増大させることを明らかにする。なぜなら、50℃で5時間後には転化は完了したが、37℃で16時間後にはいくらかのO,O−キレートが依然として残っていたからである。実験FおよびGは、類似のイオン強度および温度における、37℃で16時間後に関して、pHが重要であることを示す。より低いpHに曝露された材料は、より高いpHにおけるものより多くのO,O−キレートを含んだ。最後に、実験Hは、低濃度の緩衝液単独の影響が、キレート転化が起こることを可能にすることを示す。
【0067】
本発明の別の教示は、特定の最低濃度のNaClが、アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体のO,O−キレートからN,O−キレートへの効率的な転化のために必要とされることを示す。図10によって示されるように、キレート転化は、より高いNaCl濃度が使用される場合には進行しなかった(10mMのリン酸緩衝液が使用されたことが注目されるべきである。リン酸がキレート転化を引き起こし得ること、およびより高い濃度のリン酸が、調製的なキレート転化を引き起こすために使用されることが、認識される)。
【0068】
本発明の別の重要な局面は、NaClおよびリン酸塩以外の塩類がキレート変換を行い得ることを示す。図11は、ナイトレート、アセテート、およびアイオダイドのような種々のアニオン類がすべてこのキレート変換を行うことを示す。白金に対して良好ではあるが不安定なリガンドであるアイオダイドは、所定の時間で最高のキレート変換を示した。その一方、アセテートは最小を示した。興味深いことに、ナイトレート(白金に対して弱いリガンド)が、非常に効率的なキレート変換を行った。これらの結果は、NaIが多くの有機溶媒中に可溶であるので有用であり、そしてそれは、非水系キレート変換においてキレート変換を行うために用いられ得る。その一方、高濃度のナイトレートは、その他の所望されないリガンドがキレートし得る系においてキレート変換を行うために用いられ得る。同様に、このキレート変換は、重炭酸緩衝液において円滑に進行した。臭化物、硫酸塩、スルフォン酸塩などのその他の金属類のその他の塩もまた、このキレート変換を行うことが予期される。
【0069】
本発明の1つの有用な局面では、4+酸化状態にある白金が、2+状態の代わりに本発明の複合体のコアを形成する。より高い酸化の本発明の複合体は有用であり得る。なぜなら、それらは、置換に不活性であるからである。従って、そうでなければ、分子の別の部分または所望されない生物学的標的と反応し得る、本発明の4+状態にある白金が調製され得る。さらに、4+酸化状態にある白金は、白金化学的療法の経口投与のために用いられている。4+複合体の合成は、過酸化物、過酸、ハロゲン化合物、および当業者に公知のその他の試薬を用いた酸化に際し、対応する2+複合体からであり得る。
【0070】
図10により示されるように、123mMより大きいNaCl濃度は、キレート変換の速度に有意な影響をもたない。しかし、60mM NaClでは、キレート変換の程度は、完全なようではなかった。これは、その他のイオン、特にアニオン類が、キレート変換の速度において役割を演じ得ることを示す。
【0071】
これらの結果は、25kDaのO,O−Ptキレート(0.8−1.0μM Pt)および25kDaのN,O−Ptキレート(3.4μM Pt)に対するIC50値、ならびにシスプラチン(0.5μM Pt)およびカルボプラチン(2.4μM Pt)のそれらが、同じ低マイクロモル濃度範囲に入ることを示す。これは、このインビトロアッセイにより示されるように、これらの試薬のすべてが類似の細胞障害性能力を提示してB16F10メラノーマ細胞の増殖を阻害することを示す。このアッセイはさらに、このポリマーの分子量が実質的に増加するとき、この細胞障害性能力が保持されることを示す。なぜなら、45kDaのO,O−Ptキレート(1.0μM)および90kDaのO,O−Ptキレート(0.9μM)もまた、この低範囲内に入るからである。従って、対応するより大きな分子量アナログのN,O−Ptキレートは、それらの高いインビトロ細胞障害性を保持し得ることが予測される。対照的に、このアッセイは、より大きな分子量の非白金化ポリマーの細胞障害性は非常に低い(大きさでコントロール値に匹敵する)ことを示す。これらのデータは、新たに産生されたアナログを、インビボ評価により関与させる前に、高細胞障害性能力を保持することに対して慣用的にスクリーニングするための、このインビトロ系の有用性を示す。
【0072】
本発明の1つの好適な実施形態において、分子量における広範な分布をカバーする置換されたHPMAキャリアへの白金の結合は、代表的な哺乳動物腫瘍細胞系において、従来の抗腫瘍白金薬剤により所有される細胞障害性に等しいか、またはそれより大きい、実質的な細胞障害性活性を、これらキャリアに与える(表3)。対照的に、これもまた分子量における広範な分布をカバーする置換されたHPMAは、そのような細胞障害性活性はない(表3)。本発明の1つの好適な局面は、このような上記細胞障害性活性が、所望のように、部分的には、上記広範な分子量分布を有する代表的な置換されたHPMAへの、O,O−、N,O−、およびDACH連結白金成分からなる、広範な種類の白金複合体により与えられるという点でさらにより広範に証明される。
【0073】
本発明の1つの好適な実施形態では、代表的なO,O−Ptキレートの好適なN,O−Ptキレートへの変換は、予期されないように、かつ所望のように上記代表的なN,O−Ptキレートに、顕著な耐性の増大を付与し、それによって、所望されるように、顕著により高い用量の治療的抗腫瘍白金成分の全身投与を可能にする(表4)。
【0074】
本発明の1つの好適な実施形態では、従来薬剤(3mg/kgのシスプラチン)と比較して、顕著に有利な治療指標は、ポリマーキャリアへの代表的な白金複合体の結合により達成される(17.5mgPt/kgで投与されるN,O−Pt複合体の実質的により低い全身障害性)。ここで、両方の治療養生法は、生理食塩水コントロール群の増殖と比較して同程度の腫瘍増殖減少を与える(図12)。
【0075】
図13に示される結果は、本発明の1つの好適な局面をさらに示し、ここでは、抗腫瘍活性が、ポリマーキャリアに連結された治療的白金複合体から得られることが広く期待される。この例では、代表的なO,O−Ptキレートの活性が、生理食塩水コントロール群の腫瘍増殖に対して腫瘍増殖阻害を生じることが示される。上記O,O−Ptキレートにより与えられるこの増殖阻害は、従来のシスプラチン療法のそれより有意により明白ではない。図12に示されるN,O−Ptキレートにより与えられるより好ましい腫瘍増殖阻害活性をともに考慮すると、O,O−Ptキレートのそれに対するN,O−Ptキレートの予期せぬ明白な活性が強力に示される。
【0076】
本発明の1つの好適な実施形態では、強力かつ予期せぬ治療利点が、腫瘍増殖阻害活性において、毎日の×5(qd×5)養生法について、代表的な従来の白金薬剤(シスプラチン)に対する比較により(両者は、最大許容用量で投与される)、上記N,O−Ptキレートによって付与される(図14)。
【0077】
本発明の1つの好適な実施形態では、上記N,O−Ptキレートは、先の例(図12−15)の実質的に異なるB16メラノーマモデルに対して、ヒト扁平上皮乳頭腫瘍細胞異種移植片における広範かつ予期せぬ範囲の腫瘍増殖活性を与えることが強力に示された(図15)。この代表的なヒト異種移植片モデルでは、上記N,O−Ptキレート65または400mgPt/kgで、等張グルコースコントロール群の腫瘍増殖に対し、従来の白金薬剤(カルボプラチン)により与えられる強力な活性に相当する活性を与えた。本発明のさらなる好適な局面では上記N,O−Ptキレートの65mgPt/kgの用量で、65mgPt/kgのカルボプラチンの投与から生じる障害性、またはより高い用量400mg Pt/kgの上記N,O−Ptキレートの投与から生じるそれより実質的に少ない全身障害性が観察される。
【0078】
(用語の定義)
用語「精製された」は、1つの化学的形態において、95%以上の白金が存在し、しかも反応物質、白金以外の金属のキレート、副産物、塩、遊離リガンド、および/または分解産物(もしあれば)のようなその他の所望されない物質が、全体の1%(wt/wt)を超えないように低減され、そしてここで、このような不純物の任意の1つが0.5%より多くない複合体をいう。癌を治療する目的に、動物またはヒト被験体にこの精製された白金複合体を投与するために、この精製された白金複合体は、この精製された白金複合体の安定かつ薬学的に受容可能な処方物を提供するために安全と一般にみなされる認可された薬学的賦形剤および材料と処方され得る。
【0079】
治療的に効果的な量は、腫瘍後退を引き起こす量である。これは、1mg/kg〜1gm/kg体重であると考えられる。
【0080】
用語アクリルアミドポリマーは、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドを含む。
【0081】
用語「複合体」は、中心の金属原子がリガンドにより取り囲まれる種を示す。
【0082】
キレートは、複合体の金属原子と環を形成するリガンドをいう。
【0083】
用語「アミン(ammine)」はNH3をいい、その一方用語「アミン(amine)」は、NH3、1級、2級、3級アミンを含み、それらは、脂肪族、芳香族、および/または異環であり得る。
【0084】
用語「アマ(Ama)」は、文脈に応じてアミノマロネートまたはアミドマロネートをいう。用語「アミドマロネート」は、2−アミノマロン酸のアミドをいう。それは、酸または塩形態であり得る。
【0085】
腫瘍を「標的するために有用な」群の本発明の複合体は、その他の組織より腫瘍に活性薬物のより多くを送達するものである。このような標的化は、EPRにより得られる受動的標的化、または抗体、レクチン、葉酸などへの接合により示されるような能動的標的化を含む。
【0086】
用語「ポリマー結合N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)複合体」は、ポリマーに共有結合している本発明の複合体をいう。請求項4の「カチオン」は、H+、アルカリ、アルカリ土類、およびアンモニウムカチオンをいう。用語「アミノ酸」は、天然および非天然αアミノ酸、ならびにβアラニン、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、p−アミノ安息香酸などのようなアミノ酸を含む。
【0087】
用語「近位端」は、ポリマーバックボーンの近傍に連結していないオリゴペプチドリンカーの端部をいう。
【0088】
葉酸誘導体は、葉酸と本発明の複合体のような目的の別の分子との結合体である。葉酸アナログは、メトトレキセート、アメトプテリン、およびプテリンカルボキシレートのような葉酸の近縁化学的関連物の部分である。
【0089】
用語「ポリサッカライドの側鎖」は、アミドマロネートを形成するため、またはアミドマロネートへの連結の部分として有用な官能基をいう。当業者にとって、カルボキシレート、アミンおよびヒドロキシ基でさえ、アミドマロネートを付着すめために用いられ得る。1つ以上の白金複合体が、この側鎖により各ポリサッカライドに結合され得る。
【0090】
用語「ポリ(Glu)−Ama−diEt」は、カルボキシル側鎖のフラクション(すなわち15%)のみがAma−diEt基により置換されたポリマーを示す。同様に、用語「ポリ(Glu)−Ama=Pt(NH3)2」は、すべてまたは大部分のAma基がcis−ジアミン白金(II)に配位しているO,O−またはN,O−アミドマロネート白金キレートを示す。
【0091】
用語「ポリ(Glu−Ama−diEt)」は、すべてのカルボキシ側鎖がAma−diEt基により置換されたポリマーをいう。用語「ポリ(Glu−Ama)=Pt(NH3)2」は、Ama基のほんの一部分(すなわち10%)がcis−ジアミン白金(II)種に配位しているO,O−またはN,O−アミドマロネート白金キレートを示す。
【0092】
(略語)
Ama、アミノマロネートまたはアミドマロネート;
Ama−diEt、ジエチルアミノマロネートまたはジエチルアミドマロネート;
AP5280、は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2N,O−キレート 25kDa物質である;
DACH、ジアミノシクロヘキサン;
DCC、ジシクロヘキシルカルボジイミド;
DMAP、N,N−ジメチルアミノピリジン;
DMF、ジメチルホルムアミド;
EDC、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドハイドメロクロライド;
FID、自由誘導減衰;
HOBt、ヒドロキシベンゾトリアゾール;
HPA、(2−ヒドロキシプロピルアミン);
MA、メタクロイル;
MTD、最大許容用量、薬物誘導障害性から生じる死滅がない評価された最高の用量;
N,O−Pt、アミド、カルボキシキレート;
O,O−Pt、ジカルボキシキレート;
ONp、p−ニトロフェノールエステル;
ポリ(HPMA)−GFLG、HPMAおよびgly−Phe−leu−glyのメタクリルアミドのコポリマー;
RCF、相対的遠心力、
TFF、タンジェンシャルフロー濾過;
(材料および方法)
(I.化学品)
シスプラチン、ピリジン、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、ジエチルアミノマロネートHCl塩、ジエチルN−アセトアミドマロネート、AgNO3、NaOH、1R,2R−ジアミノシクロヘキサン、ポリグルタメートNa塩、KI、PBS混合物は、Sigma−Aldrich USAにより供給された。溶媒は、HPLCグレードおよびACSグレードの試薬またはより良好な品質であった。イオン交換樹脂AG501−X8(D)H+、HO−形態、AG50W−X8H+、およびChelex 100 Biotechグレードは、Bio−Rad Laboratoriesにより供給された。クラス1の水は、Milli−Qウォーターシステムから自家調製した。K2PtCl4は、All−Chemie Ltd.Mt.Pleasant,SCにより供給された。フィルターエイド289ポンプは、Schleicher and Schuellからであった。ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt 45kDa、およびポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt 351kDaは、Polymer Laboratories、Shropshire、UKにより合成された。アミノ酸分析およびMALDI−TOF−MSは、Peptide Technologies Corp.Gaithersburg,MDにより実施された。
【0093】
(II.装置および機器)
スケール0.2μmに依存して滅菌濾過を、25mm Whatman GD/XPVDFシリンジフィルター、MilliporeからのGP Expressメンブレンを備えたSteritop媒体ボトルフィルター、またはMilliporeからのPVDFメンブレンを備えたMillipakインラインフィルターのいずれかを用いて実施した。UV光を備えた層流フードを滅菌操作に用いた。pHは、4および10で校正されたゲル電極を備えたBeckman Phi−34pHメーターで測定した。凍結乾燥固体中の静電気は、SIMCO,Hatfield,PAからの静電場メーターによりガイドされるように、AldrichからのZerostat銃により中和した。白金は、3%HNO3中30−60ppmに希釈されたサンプルおよび標準に対し、Jobin YvonJY24分光計を用いるICP−OESにより分析した。水分は、EM ScienceからのAquastar C2000を用いるKarl Fisher滴定により測定した。Na、ClおよびPの元素分析は、Desert Analytics,Tucson,AZにより実施した。1H NMRスペクトルは、Varian,Inc.からの400MHz Unity/Inovaシステム上で得た。195PtNMRスペクトルは、Varianからの300MHz Mercuryシステム上で得た。凍結乾燥は、VirtusからのFreezemobile 12EL上で実施した。
【0094】
(II.パーセントO,O−およびN,O−キレートのためのアリコート精製)
反応混合物の時限アリコート中のO,O−およびN,O−キレートのパーセントは、195Pt NMRスペクトル分析のみを行うべき場合、約100mg、または%Ptおよび%水分が測定されるべき場合、約200mgを生じるよう十分な反応混合物(濃度に依存して4−15mL)を取り出すことにより測定した。このアリコートは、Milliporeからの5kDa Biomaxメンブレンを備えたCentricon Plus−20遠心フィルターを用いる限外濾過により精製した。充填されたデバイスを、推奨されたRCFで約0.5mL未満が残存するまで回転した。アリコートについて報告された時間は、最初の遠心分離が開始した瞬間である。濾液を棄て、保持液を15−18mlの水で希釈し、そしてこのサンプルを先のように遠心分離した。これをもう1回繰り返し、そして保持液を凍結乾燥し、分析用のサンプルを得た。この技法はまた、アミドマロネート基をもつポリマーを含む0.1−2gの反応物の精製のために用いた。
【0095】
(III.PBSからの白金放出)
経時的に放出された小白金種のパーセントは、約30mgのポリマー白金結合体を正確に秤量し、そして15mLのリン酸緩衝化生理食塩水(10mMリン酸、123mM Cl−)中に溶解することにより測定し、そして37℃の水浴中でインキュベートした。示された時間で、2.0mLのアリコートを、3kDaの公称分子量カットオフをもつ遠心フィルター(MilliporeからのCentricon YM−3)にトランスファーし、そして即座に1.5mlより多い濾液が蓄積するまで回転した。これらの時限濾液および当初の溶液は、ICP−OESによって白金を分析した。所定時間に存在する小白金種のパーセントは、式:(濾液中のPt ppm/ストック溶液中のPt ppm)*100により決定した。
【0096】
(IV.サイズ排除クロマトグラフィー)
N,O−Ptキレートを、35℃のカラムオーブン内に2つのPL Aquagel−OH混合型の8μmカラム(Polymer Labs製)およびRI検出器を備えるHPLC装置から構成されるSECシステムにおいて分析した。移動相(これは、MeOH/H2Oと10.0mMのLiClO4との35/65混合物からなる)を、1.0mL/分の流速でポンプ注入した。各分析に30分を必要とした。カラムをPEO/PEG標準を用いてキャリブレートし、そして結果を保持時間の逆数の関数としてlog(Mp)の4次多項式にフィットさせた。MwおよびMnについて記録した値は、移動相に溶解した2mg/mLのサンプルの100μlの、3回の測定の平均を示す。O,O−Ptキレートおよびポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを、Mendichiら、1996の方法に従って分析した。
【0097】
(V.タンジェンシャルフローフィルトレーション)
約2gよりも大きいスケールで、O,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートのポリマーを、5kDの見かけの分子量のカットオフ値を有するBiomaxポリエーテルスルホンから作製した0.05〜0.1m2の面積を有する膜を用いるタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)により精製した。濾過の前に、この系を洗浄し、そして推奨される流速で30〜60分間0.1N NaOHをポンプ注入することにより消毒した。腐食物質を取り出し、そして新鮮な1型水(Milli−Q水)を、保持液(retentate)および浸透液(permeate)のpHが中性(pH<8)になるまで循環させた。浸透液の流速を、2.0バールのインレット圧および0.35バールのアウトレット圧で測定した。Milli−Q系由来の新鮮な1型水を、補給水として用いた。
(VI.NMR分析)
195Pt NMRスペクトルを、Bancroftら、1990の方法に従って、5mmチューブ内の、93/7H2O/D2O中の0.70mLの濾過した溶液から得た。十分なサンプル(80〜120mg)を用いて、白金が約50mM以上である溶液を得た。プローブを、各サンプルについて調製する。90°のパルス幅、5.12ミリ秒の取り込み時間、100kHzのスペクトルウィンドウ(spectral window)、および遅延なし、を用いた。トランスミッタ(transmitter)を、O,O−キレートとN,O−キレートとの中間(−1896ppm)に置いた。50,000〜250,000の間の遷移(20〜90分)が、代表的に、35/1を越える十分なs/n比を獲得するために必要とされた。得られたFIDを、平坦なベースラインが得られるまで漸増的に左にシフトさせ、100Hzの線の広幅化を適用し、そして2048を満たすフーリエ変換を適用した後、処理した。積分領域を設定し、そしてスペクトルのベースラインを、VNMRソフトウェアv6.1によるスプラインフィットに供した。サンプルは、95/5H2O/D2O、100mMHCl中のK2PtCl4の100mMのサンプル(−1624ppm)を外部標準とした。これを用いて、90°のパルス幅およびT1もまた測定した。90°のパルス、2T1の取り込み時間および3T1の遅延を用いると、128の遷移は、「gestn」命令を用いる標準サンプルについて、30/1を越えるs/nを与えた。
【0098】
13C NMRスペクトルを、195Pt NMRに用いたのと同じサンプルについて獲得した。0.50秒の取り込み時間、3.0秒の遅延、約70°のパルス幅、および5000〜10000の遷移を、3.5Hzの線の広幅化を適用して、収集した。100を越えるs/nを代表的に得た。水性サンプルは、93/7D2O中の1,4−ジオキサン(67.19ppm)を外部標準とした。他のサンプルは、溶媒ピークを標準とした。
【0099】
1H NMRスペクトルは、TMSまたはTMSPを標準とし、そして標準的パラメーターを用いて獲得した。HODシグナルの前飽和を頻繁に用いた。カップリング定数(J)は、ヘルツである。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、好ましいバージョンおよびこれを作製する方法を含む本発明の実施形態をさらに例示する;しかし、これらの例は、本発明の限定と解釈されない。
【0101】
(実施例1)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(約25kDa)の調製)
オーブン乾燥した、磁性攪拌子を有する1L丸底フラスコに、隔壁(septa)を装着し、そして減圧下で冷却した。一旦、冷却した後、窒素を導入し、隔壁を取り出し、そして29.79g(140.8mmol)のジエチルアミノマロネートHCl塩を添加した。隔壁を再び置き、そして800mLの無水ピリジンをフラスコに挿管注入(cannulate)した。溶解後、50gのポリ(HPMA)−GFLG−ONp(米国特許第5,965,118号の化合物I、図1A)の3分の1を添加した。ほぼ溶解したときに、50gのONp−ポリマーの、次ぎの3分の1を、上記のように導入した。この手順を、50gのONp−ポリマーの全てが添加されるまで繰り返した。
【0102】
反応の程度を、C18カラム、316nmのUV検出、およびpH4.5/MeCN移動相を用いて、遊離および総量のp−ニトロフェノールについて、HPLCアッセイによりモニターした。アリコートを、塩基加水分解(pH=12、5分)の後、遊離のONpおよび総量について分析した。約23℃で攪拌をしながら20〜24時間後、反応が図6に示されるように完了したことを見出した。
【0103】
反応混合物を、水浴中で3時間40〜45℃に加熱し、室温に冷却し、そしてピリジンを40℃未満で、減圧除去した。残渣を、無水EtOHに溶解して、25%wt/vol.の溶液を得た。粗精製物を、2.5Lの乾燥EtOAcおよび0.5Lのジエチルエーテルを用いて沈殿させた。混合物を、3〜5時間攪拌して、次いで、中目のガラスフリット(medium glass frit)を介して濾過した。残渣を、100mL未満のエーテルを用いて3回洗浄し、そしてラバーダム下で乾燥して、57〜59gの淡黄色固体を得た。この固体を、500mLのEtOHに溶解し、そして1gのろ過ケーキあたり3.1gのAG501−X8(D)IX樹脂(H+および−OH形態)を添加した。混合物を2.5時間穏やかに攪拌し、次いで、ろ過して、樹脂を取り除いた。EtOHの容量を、25%(wt/vol.)溶液まで減少させ、そして上記のように沈殿させた。純粋な生成物を収集し、そして上記のように洗浄して、45〜46g(約90%)の淡黄色固体を得た。この物質の1H NMRスペクトルは、Ama−diEt基に特徴的なピークを含み、1%未満のEtOHおよびEtOAcの各々を除いて低分子は無かったことを示した(Pinciroliら、1997):アミノ酸分析(gly:HPA:leu:pheのモル比):3.1:7.1:1.0:1.2;1H NMR(D20)δ7.2−7.4(br s,5,ArH),4.66(br s,1,α−H−phe),4.31(br s,5,α−H leu,&OCH2CH3),4.1−3.8(高いおよび低いm,約13,−NHCH2CH(OH)CH3および−NHCH2CO2−)3.3−2.9(m,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,−CH2−(ポリマー骨格),CH2&CH(leu)),1.20(br s,約31,−NHCH2CH(OH)CH3,および−OCH2CH3),0.99(s,CH3−(ポリマー骨格)),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3)。
(実施例2)
(シス−ジアミンジアクア白金(II)ジニトレートの調製)
シスプラチン(8.996g、29.98mmol)、AgNO3(9.959g、58.62mmol)、3−5滴の5%HNO3、および190mLの水を、ホイルで覆った低化学作用性メディウム瓶中で約23℃で一晩攪拌し、次いで60〜65℃で3.5時間加熱した。室温まで冷却後、混合物を0.22μmフィルターを介してろ過した。pHは約2であった。PtおよびAg分析(ICP−OES)は、代表的に、約15,000〜25,000ppmのPtおよび4〜14ppmのAgを含むことを示した。各調製物を、Ptについて分析し、そして使用の直前に55℃にて5分間過熱し、次いで、室温まで冷却した。
【0104】
シス−ジアミンジアクア白金(II)ジニトレートのジ−15Nイソトポリペプチドマーの調製は、195PtNMRの−1582ppmのトリプレットを示した。これは、Appletonら、1989により報告された−1580ppmの文献値に厳密に一致する。
(実施例3)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2O,O−キレートの調製)
(1.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtの加水分解)
攪拌子を有する1Lメディウム瓶において、45gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(19.35mmol Ama−diEt残基)を200mLの水に添加した。激しい攪拌の後、135mlの水を添加して、12〜13%(wt/v)混合物を得た。1〜2時間の溶解の際、27mL(54mmol)の2N NaOHを添加して、pHを12.5〜12.7に上昇させた。pHを30分間、この範囲に維持し、次いで、45gのAG501−X8(D)IX樹脂(H+および−OH)を添加した。pH7未満のとき、樹脂を滅菌ろ過により取り出した。濾液のpHを2N NaOHを用いて7.6に上昇させて、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−(Co2−Na+)の溶液を得た。
(2.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2、O,O−キレートの調製)
実施例3のポリ(HPMA)−GFLG−Ama−(Co2−Na+)2のpH=7.6溶液に、実施例2に従って調製したシス−[Pt(NH3)2(H2O)2]2+・2NO3−の、199mLの590.9mM(22,940ppm Pt)溶液を一度に加えて、5.0±0.1のpHを有する反応混合物を得た。一晩の攪拌の間、pHを約4.2まで下げ、そして少量の沈殿を形成させた。16〜18時間後、17gのChelex 100樹脂を添加し、そして1.5時間攪拌した。ろ過の前に、約0.5gのフィルター助剤パルプを添加し、そして分散させた。混合物を粗目のガラスフリット介してろ過した。約125mgを含むこの濾液のアリコートを取り出し、0.2μmの膜を介してろ過し、そして遠心分離限外濾過により精製した。保持液を凍結乾燥して、約110mgを得た。あるいは、反応混合物を、実施例4に記載されるように、TFFにより精製してもよい。1H NNM(D2O)δ7.6および7.55(br s,交換,NH),7.4および7.3(br s,5,ArH),5.9(br s,部分的に交換,0.2,NH−Ama)4.65(br s,1,α−H−phe),4.37(br s,1,α−H−leu),4.05(sh,NH3またはCH2(gly)),4.1−3.8(高いおよび低い,約13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(brm,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,−CH2−(ポリマー骨格),CH2&CH(leu)),1.20および1.19(s,約27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,CH3−(ポリマー骨格),0.9(sh,6,leu−CH3);13C NMR(93/7 H2O/D2O)δ180.1,179.8,179.6,175.0,174.2,173.3,171.5,171.1,170.7,136.6,129.8,129.4,127.8,66.5,66.3,59.6,55.6,54.7,53.0,47.9,46.7,46.0,45.6,43.1,40.5,37.8,24.9,23.1,21.6;195Pt NMR(93/7 H2O/D2O)δ−1587,−1733,−2020,および−2056(それぞれ、1:38:1:4の面積比を有する)。分析は、この物質が、約9%のPt、5〜10%の水、および0.02%Naを含むことを示す。
(実施例4)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2、N,O−キレート(AP5280)の調製)
(1.O,O−キレートからN,O−キレートへの転換)
実施例3からのChelex100のろ過により約1Lの濾液を得た後、溶液を、NaClおよび75mM リン酸(pH7.4)中で、5.85g(100mmol)のNaCl、16.35g(61mmol)のNaHPO4・7、および1.93g(14mmol)のNaH2PO4を添加することにより100mMにした。pHを、1N NaOHまたは5%HNO3を用いて7.4に調整した。この溶液をろ過し、そして0.22μmの滅菌膜を介して、滅菌メディウム瓶へと、同じ濃度の緩衝液を用いて洗浄して、1.5Lの溶液を得、そして0.22μm膜スクリューキャップを用いてキャップした。この溶液を水浴で37〜38℃に温め、次いで、オーブン中で22時間、37℃に置いた。この時点での、限外濾過により精製したアリコートの195Pt NMR分析は、白金キレートが、95%以上のN,O−キレートおよび5%未満のO,O−キレートであることを示した(図7を参照のこと)。
(2.N,O−キレートのTFF精製および凍結乾燥)
上記からの1.2LのN,O−キレートを、TFFにより方法の節に記載のように精製した。保持液(透明な暗赤色溶液)を、滅菌ろ過し、そして凍結乾燥して、41.4g(92%)の赤褐色の固体を得た:%Pt=7.9±0.15%,5.6%,1.07%Na,<.05%P,0.07%Cl;1H NMR(D2O)δ7.4および7.3(br s,5,ArH),5.23(br s,部分的に交換,CH(Ama)),4.65(br s,1,α−H−phe),4.37(br s,l,α−H−leu),4.05(sh,NH3またはCH2(gly)),4.1−3.8(高いおよび低いm,約13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(m,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,−CH2−(ポリマー骨格),CH2&CH(leu)),1.20および1.19(s,約27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,CH3−ポリマー骨格),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3);13C NMR(93/7 H2O/D2O)δ186.5,185.0,180.1,179.9,179.6,176.3,175.2,175.0,174.6,174.4,174.0,173.9,173.2,171.4,171.0,136.6,129.8,129.4,127.8,71.0,66.5,66.3,55.6,54.7,52.8,47.9,46.0,45.6,41.8,40.5,37.9,24.8,23.1,21.5,20.9,20.7,18.7,17.3;195Pt NMR(93/7 H2O/D2O,64.4MHz)δ−1733(v br s,O,O−キレート),−2056(s,N,O−キレート),O,O−対N,Oの比は、それぞれ、<5:>95;SEC Mp=24.5,MW=24.3kDa,M=15.7
kDa、およびMw/Mn=1.55;Pt放出(PBS中、37℃,0.6%(3h),2.0%(24h))。
【0105】
(実施例5)
(O,O−キレートの形成)
実施例3の白金処理(platination)反応の間の有意なO,O−Ptキレートの形成を、上記に記載されるアリコート精製および195Pt分析を用いて研究した。このような研究の1つからのデータのプロットを、図8に示す。示されるように、反応は、最大量の、90%のO,O−キレート(1時間)を用いて、迅速に進行した。反応が進行した場合、O,O−キレートの量は減少し、そしてN,O−キレートの量は増加し、その結果、20時間で、80%のO,O−キレートおよび20%のN,O−キレートが存在する。従って、O,O−キレート物質を必要とする場合、TFF精製(実施例4)は、シス−ジアミンジアクア白金(II)カチオンの添加の約1時間後に開始するべきである。
【0106】
(実施例6)
(実施例4の条件下でのO,O−PtキレートからN,O−Ptキレートへの転換の時間経過)
実施例4に記載のキレート転換の間、アリコートを、種々の時間間隔で得た。これを、遠心分離限外濾過で直ぐに精製し、そして凍結乾燥した。これらを引き続いて、93/7H2O/D2O中に新たに溶解し、そして195Pt NMR分析により分析した。ピーク面積比を、各時間点でのスペクトルから獲得した。これを、次いで、%N,O−キレートに変換し、そして図9にプロットした。アリコートの組成は、少なくとも24時間安定であった。
【0107】
(実施例7)
(O,O−キレートの選択的形成)
O,O−キレートを選択的に調製する方法を、アミドマロネート基あたりのシス−ジアミンアクア白金(II)カチオンの当量を変化させた場合に観察した。各反応A〜Cは、2.0gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを用いて開始した。Ptの数が等しい場合を除いて、反応を実施例3のように行った。反応混合物を凍結乾燥し、そして同じSephadex G−10カラム(2.5x60cm)を用いてSECにより精製した。表1に示すように、1当量未満のPtを用いた場合、2当量の白金処理剤を用いた場合よりも、より高い比率のO,O−キレートを見出した。
【0108】
(表1.異なる当量のAma基あたりのPtでの白金処理の間のO,O−キレートおよびN,O−キレートの形成の%)
【0109】
【表1】
(実施例8)
(O,O−キレートからN,O−キレートへの変換:pH、温度、および緩衝液の効果)
実施例3に記載される調製物から単離し、そしてTFFまたはSECにより精製した有意なO,O−キレート物質を、実施例4において用いた温度、緩衝液、およびpHから変更した温度、緩衝液、およびpHに供した。代表的には、10mg/mLの濃度のポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2の有意なO,O−Ptキレートを用いた。結果を表2に示す。
【0110】
(表2.実施例4のO,O−キレートのN,O−キレートへの転換の程度に対する温度、緩衝液、およびpHの研究からの結果)
【0111】
【表2】
aリン酸塩緩衝化生理食塩水は、10mMのリン酸塩、100mMのNaCl、および2.7mMのKClであった
(実施例9)
(PBS中でのO,O−キレートからM,O−キレートへの転換:Cl−濃度の効果)
O,O−キレートからM,O−キレートへの転換の割合に対する種々の塩化物濃度が有し得る効果を調べ、そしてこれらの結果を図10に示す。約1gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2主要O,O−キレートを、10mMリン酸塩緩衝液(pH=7.4)に、10mg/mLで溶解し、そして37℃で放置した。1:05時間後、アリコート(10mM Phos.)を取り、そしてこの溶液の残りを、十分なNaClを含む4つの容器に分配して、60mM、123mM、250mM、および500mMのNaClを得た。1.5時間後(10mMリン酸塩緩衝液に溶解して2;35時間後)、これらのアリコートを、遠心限外濾過によって精製し、そしてN,O−キレートの%を、195Pt NMR分光法によって決定した。
【0112】
(実施例10)
(PBS中でのO,O−キレートからN,O−キレートへの転換:他のアニオンの効果)
塩化物アニオンは、白金(II)に対する非常に弱いかまたは非常に強いリガンドのいずれでもないので、塩化物より弱いかまたは強いリガンドのO,O−キレートからM,O−キレートへの転換に対する効果を調べた。実施例9で使用されたO,O−キレートの同じ10mMのリン酸塩(pH=7.4)溶液を使用して、NaNO3、NaOAc、およびNaIの123mMの溶液を作製した。これらのリガンドは、各々、白金(II)種に対して非常に弱いリガンド、強いリガンド、および非常に強いリガンドである(Appletonら、1984)。
【0113】
(実施例11)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt=DACH,O,O−キレートの調製)
(1.シス−ジアクア−1R,2R−DACH白金II(シス−(H2O)2Pt−lR,2R−DACH)の調製)
Gandolfi(Gandolfiら、1987)の方法を使用して、シス−ジアクア−1R,2R DACH白金(II)を調製した。125mLのErl.フラスコ(3.65g(8.79mmol)のK2PtCl4および37mLの水を含む)を加温して、赤茶色の溶液を得、これに6mLの水中の5.84g(35.2mmol)のKIの溶液を添加して、暗赤色の溶液を得た。周囲温度に冷却する際に、0.962gの1R,2R−ジアミノシクロヘキサンを添加し、そして黄色沈澱が直ちに形成された。25℃での3時間の攪拌後、この混合物を4℃で一晩放置した。この沈澱を回収し、そして冷水、EtOH、およびエーテルで洗浄して、4.98g(97%)の(シス−I2Pt−1R,2R−DACH))を得た。次に、1.00g(1.776mmol)のシス−I2Pt−1R,2R−DACH、0.5898g(3.472mmol)のAgNO3、および16mLの水を、遮光された容器内で組合せ、そして周囲温度で一晩攪拌し、次いで60〜65℃で3.5時間攪拌した。周囲温度への冷却の際に、AgClを濾過によって除去し、そして少量の水で1回洗浄した。濾液のICP−OESによる分析は、それが、13,500ppmのPt(69.1mM)シス−(H2O)Pt−1R,2R−DACHを含むことを示した。
【0114】
(2.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt=DACH,O,O−キレートの調製)
出発物質である2.80gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(1.232mmolのAma−diEt基)を加水分解し、そして中和して、実施例3に記載されるようなポリ(HPMA)−GFLG−Ama−(CO2Na)2のpH=7.6の溶液を得た。この溶液に、1.48mmolのシス−(H2O)2Pt−1R,2R−DACHジニトレート塩を上記からの水溶液として添加し、そして周囲温度で一晩攪拌した。この反応混合物は沈澱を含み、この沈澱を、0.1gのフィルター補助パルプの添加の後に滅菌濾過によって除去した。次いで、この反応系の1/3を、上記のように、0.3gのChelex樹脂で90分間処理し、滅菌濾過し、次いで遠心限外濾過によって精製した。このサンプルを凍結乾燥して、0.71グラムの赤茶色の固体を得た。8.7%のPt、4.2%のH2O;1H NMR(D2O,400MHz)7.7および7.6(br s,〜5,NH),7.4および7.3(br s,5,ArH),5.86(s,1.6),4.65(br s,1,αH−phe),4.39(br s,1,αH−leu),4.1−3.8(br m,4,−NHCH2CO2−)3.95(br s,9,NHCH2CH(OH)CH3,),3.35−2.9(m,20,NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.6−2.3.(br s,N−CH−DACH),2.25−1.2(m,ポリマー骨格の−CH2−,leuのCH2&CH,およびDACH),1.45−0.8(br sおよびm,〜97,−NHCH2CH(OH)CH3,ポリマー骨格のCH3−,leu−CH3,およびDACH);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ180.0,175.2,174.1,173.3,171.8,170.7,136.8,129.9,129.5,128.6,128.0,66.5,66.3,63.4,55.5,54.7,52.8,47.9,46.7,46.0,45.6,43.5,40.5,37.4,32.4,24.8,23.2,21.5,20.9,20.8,18.6,17.6,および17.2;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ約−1900(v br s,かろうじて認知可能,O,O−Pt=DACH,−);PBS中でのPt放出,37C:3時間で6.0%,24時間で10.9%。
【0115】
(実施例12)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt=DACH,N,O−キレートの調製)
実施例11からの反応混合物の残りの2/3を0.6gのChelex樹脂と共に、90分間攪拌し、そして次いで滅菌濾過した。この透明な溶液を、110mMのNaClおよび80mMのリン酸塩、ならびにpH=7.4にした。これを、37〜38℃に22時間維持し、次いで遠心限外濾過によって精製し、そして凍結乾燥して、1.33gの赤茶色の固体を得た。8.1%のPt、7.1%のH2O;1H NMR(D2O,400MHz)7.4および7.3(br s,5,ArH),5.17(s,0.3),4.65(br s,1,αH−phe),4.38(brs,l,αH−leu),4.1−3.8(br m,4,−NHCH2CO2−)3.95(br s,9,−NHCH2CH(OH)CH3,),3.35−2.9(m,20,NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.6−2.2.(br m,N−CH−DACH),2.25−1.2(m,ポリマー骨格の−CH2−,CH2,leuのCH,およびDACH),1.45−0.8(br sおよびm,〜100,−NHCH2CH(OH)CH3,ポリマー骨格のCH3−,leu−CH3,およびDACH);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ186.8,185.3,180.0,175.1,174.6,174.1,173.5,171.5,171.1,136.7,129.9,129.5,127.9,70.2,66.5,66.3,64.2,63.3,61.0,55.6,54.7,52.9,47.9,56.7,46.0,45.6,44.2,43.3,41.2,40.5,37.9,32.7,24.8,24.6,23.1,21.5,20.9,20.7,18.6,17.3;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ −2293,−1900にピークなし,および他のピークなし。PBS中でのPt放出,37℃:3時間で2.0%、24時間で2.1%。
【0116】
(実施例13)
(ポリ(グルタメート)−Ama−diEtの調製)
Li(Liら、1998)の手順を適合して、ポリグルタメートの遊離カルボキシレートの約15%を置換した。0.5g(3.29mmolの−CO2基)のポリグルタメートおよび攪拌子を含むボトルに、104mg(0.493mmol)のジエチルアミノマロネートHCl塩、3mgのDMAP、および10mLの無水DNM(HPLCグレード、4Aシーブスで>48時間)を、ドライボックス中で添加し、そして攪拌して、濁った混合物を得た。次いで、315mg(1.36mmol)のDCCを添加し、ボトルの口に隔壁を挿入し、エーテル中の1.0M HClの2mLを添加し、そしてこの混合物を周囲温度で一晩攪拌した。その後、約15mLのCHCl3を添加し、そしてこの濁った混合物を、3850RCFで15分間遠心分離した。上清を破棄し、そして白色のゲル物質を2.5%のNaHCO3と共に30分間攪拌した。この混合物を前のように遠心分離し、そして上清を凍結乾燥して、1.91gの白色固体を得、この固体の1H NMRは、DMF、EtOH、DCC/DCUの存在、ならびにポリグルタメートおよびジエチルアミドマロネート、ならびにジエチルアミノマロネートのピークを示した。(4.3ppm(gluのα−CHおよび−OCH2CH3)および2.4ppm(gluのCH2)でのピーク面積は、約1:1であり、ここでポリグルタメートにおけるのと同様に、それらは各々、1:2である。)この物質を水に溶解し、そして遠心限外濾過によって精製して、216gの白色固体を得、この固体の1H NMRスペクトルは、DCC/DUCの存在を示した。また、D2O中の溶液へのNaODの添加は、ポリ(glu)−Ama−diEt 1gあたり0.67mmolのAma−diEt基に対応するEtOHを遊離する。さらに精製することなく、これを実施例14において使用した。
【0117】
(実施例14)
(ポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2,O,O−キレートおよびN,O−キレートの調製)
(1.ポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2のO,O−キレートの調製)
攪拌子を含む20mLのバイアル中の4mLの水に、実施例13からの188mg(0.126mmol Ama−diEt当量)のポリ(glu)−Ama−diEtを添加した。一旦溶解した後、pHを12.4〜12.8に20分間上昇させ、次いで0.2gのAG−50W−X8 H+ IX樹脂を添加した。2分以内にpHが6に下がった。この樹脂を、粗ガラスフリットを通す濾過によって除去し、次いで濾液を滅菌濾過した。濾液のpHを、新しい2NのNaOHで7.1に上昇させ、そして実施例2に従って調製した、1.3mLの、シス−ジアンミンジアクア白金(II)2NO3−の19,000ppmのPt溶液(0.126mmol)を添加した。これを35分間攪拌し、次いで、上記のように遠心限外濾過によって精製した。18mLに濃縮し、そして各々15mLの水での3回の洗浄の後、この保持液(retentate)を凍結乾燥して、182mgの白色固体を得、この白色固体の195Pt NMRスペクトルは、各々、約1:4の比の2つのピーク、−1595ppmおよび−1732ppmを示した。−1732での主ピークは、シス−ジアンミン白金(II)のO,O−アミドマロネートキレートである。この物質をさらに精製する試みにより、おそらくシス−ジアンミンPtによるグルタメートカルボキシレートの架橋に起因するゼラチン状塊を得、このため、この物質は、実施例4および関連する実施例のキレート転換条件に供された。
【0118】
(2.ポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートの調製)
上のポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2,O,O−キレートを、110mMのNaCl、85mMのリン酸塩、pH=7.4にされたサンプルを用いて、実施例4のO,O−キレートからN,O−キレートへの転換条件に供した。38℃で約22時間の後、これを遠心限外濾過によって精製し、そして保持液を、凍結乾燥して、163mgの白色固体を得、この固体は、15.5%のPt(0.77mmol Pt/gポリマー)、0.035%のPを含んだ;186.9,183.6,182.8,182.1(p−glu),180.0,175.3,174.2(p−glu),173.6,172.5,171.0,170.7,155.7,72.1,63.6,62.7,60.4,25.4,54.2(p−glu),53.5,51.6,34.2(p−glu),32.1,31.4,30.8,28.6(p−glu),26.0,25.5,25.0;195Pt NMR(93/3 H2O/D2O)δ 1595 (v br s,22%,(NH3)2Pt(RCO2)および(RCO2,H2Oおよび/またはHO))および−2053(br s,78%,アミドマロネートのN,O−キレート)。
【0119】
(実施例15)
(ポリ(glu−AmadiEt)の調製)
Danishefsky(DanishefsIkyら、1971)の手順を適合して、ポリグルタメートの全てのカルボキシル基を置換した。0.5g(3.29mmolの−CO2Na基)のポリグルタメートおよび攪拌子を含むボトルに、1.39g(6.58mmol)のジエチルアミノマロネートHCl塩、1.89g(9.862mmol)のEDC、0.503g(3.287mmol)のHOBtおよび20〜25mLの無水DMF(HPLCグレード、4Aシーブスで>48時間)をドライボックス中で添加し、そして攪拌して、濁った混合物を得た。周囲温度で一晩攪拌した後、この混合物を150mLの水に注いで、白色固体の沈澱を得た。(4.3ppm(gluのα−CHおよび−OCH2CH3)および2.4ppm(gluのCH2)でのピーク面積は、約1:1であり、ここでポリグルタメートにおけるのと同様に、それらは各々、1:2である。)この物質を、水に溶解し、濾過によって回収し、そして水で洗浄した。減圧下で3日間乾燥した後、0.79g(84%)の固体物質を得た。1H NMR(CDCl3)δ 8.25(v br s,1,NH−glu),7.24
(br s,1,NH−Ama),5.16(d,1,J=5.7,CH−Ama),4.22および4.1(mおよびbr s,OCH2CH3およびCH−gly)2.65,2.33,および2.18(br s,4,CH2CH2−glu),ならびに1.26(br t,6,OCH2CH3);13C NMR(CDCl3)δ 175.9,171.9,166.5,62.4,56.8,56.4,32.5,26.3,および13.9。さらに精製することなく、これを実施例16で使用した。
【0120】
(実施例16)
(ポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,O,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートの調製)
0.79g(2.75mmolのAma−diEt基)のポリ(gluAmadiEt)の、約30mLのEtOHスラリーを、新たな40mM NaOHと合わせた。pHを12.3−12.6に維持し、そして混合物を、加温し、そして30分間超音波処理した。この混合物は多少濁っていた。pHを、1.8gのH+ IX樹脂を用いて、7.26に減少させ、滅菌濾過して、かすかに黄色の溶液を得た。容積を、約30mLに減圧下で減少させ、4.2mLの、シス−ジアンミンジアクア白金(II)ジニトレートの18,400ppm Pt(0.39mmol)溶液を添加して、pH=5.97の溶液を得た。これを、5% HNO3を用いて5.0に減少させ、そして周囲温度で1時間攪拌した。
【0121】
(1.ポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,O,O−Ptキレートの単離)
1時間の攪拌後、ポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2反応混合物のサンプルを凍結乾燥して、90mgの白色固体を得、この固体の1H NMRスペクトルは、67%のみのエチルエステルが加水分解されたことを示した:10.3%のPt;1H NMR(D2O)δ 5.93(s,0.1交換された,CH−ama),4.4−4.1(m,3.4,CH−glu,OCH2CH3、およびNH3?),2.46(br s,2,CH2CH2),2.07(br
s,2,CH2CH2),および1.25(br q,2,OCH2CH3);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ 175.1,175.0,174.8,174.5,173.8,171.1,171.0,170.8,170.5,63.6,60.7,60.4,60.0,53.7,31.9,27.8,および14.0;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ −1734(O,O−Pt,86%)および−2034(N,O−Pt,14%)。
【0122】
(2.O,O−PtキレートからN,O−Ptキレートへの転換およびポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレートの単離)
残り32mLのポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,O,O−Ptキレート溶液を、207mgのNaCl、76mgのNaH2PO4 1H2O、および588mgのNa2HPO4 7H2Oを添加することによって、110mM NaCl、85mMリン酸塩にした。pHを7.4に調節し、この溶液を滅菌濾過し、そして42℃で16時間インキュベートした。この溶液は、多少濁っていた。次いで、これを再濾過し、次いで遠心限外濾過によって精製した。保持液を凍結乾燥して、約600mgの明るい黄色の固体を得た:11.4%のPt,1H NMR(D2O)δ 5.2(br s,0.1交換された,CH−ama),4.59 (br s,0.2),4.4−4.1(m,2.5,CH−glu,およびOCH2CH3)、4.00および3.85(br s,0.25),2.47(br s,2,CH2CH2),2.06(br s,2,CH2CH2)、および1.25(br q,2,OCH2CH3);13C
NMR(H2O/D2O 93/7)δ 175.1,174.8,174.4,173.7,171.0,170.8,170.5,63.5,63.1,62.7,53.7,32.2,31.8,27.9,14.0;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ −1730(O,O−Pt,8%)および−2053(N,O−Pt,92%)。
【0123】
(実施例17)
(N−アセトアミドマロネート=Pt(NH3)2 O,O−キレートおよびN,O−キレートの調製)
20mLのバイアル中で、800mg(3.68mmol)のN−アセトアミドマロネートを、8mLの水および2.0mLの2N NaOHとともに攪拌した。3分以内に、pH=12.6のかすかに黄色の溶液を得た。30分後、H+
IX樹脂を添加し、そしてpHを7.0に下げた。この樹脂を濾過によって除去し、pHを7.5に上げ、そして23.5mLの、シス−ジアンミンジアクア白金(II)ジニトレートの28,375ppmのPt(3.63mmol)溶液。pHを4.4に下げた。2滴の2N NaOHの添加の際に、白色固体を形成した。この混合物を濾過し、そしてサンプルをD2Oにおいて10%にし、そして195Pt NMR分光法によって分析した。−1734のピークのみが明確であった。
【0124】
この濾液を、KIが100mM、そしてKHCO3が50mMになるようにし、そして滅菌濾過した。そのpHは、7.7〜7.9であった。これを、40℃で18時間放置した。形成した橙色の沈澱を濾過によって除去し、そして濾液を減圧下でストリッピングした。残渣を、20mLのアセトンと共に、1時間攪拌した。一部分を濾過し、7%D2Oにし、そして195Pt NMR分光法によって分析した。−2057ppmの1つのピークのみが明確であった。
【0125】
(実施例18)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(45kDaおよび350kDa)の調製)
1.MA−GFLG−Ama−diEtの調製
約25gのMA−GFLG−ONpを、DMF溶液中1.2当量のジエチルアミノマロネートHCl塩、3当量TEA、1当量HOBtで50℃で約16時間処理した。DMFを真空中で除去し、そして残渣をジエチルエーテルでスラリーとし、一晩4℃まで冷却した。生成物を濾過によって採集し、エーテルで洗浄し、そして真空中で乾燥し、MA−GFLG−Ama−diEtを得た。この正体および純度を1H NMRスペクトル法およびHPLCによって確認した。1H
NMR(DMSO−d6)δ8.74(d,1,J=7.3,NH−Ama),8.14(t,1,J=5.9,CH2−gly),8.11(d,1,J=8.2,αCH leu),8.03(t,1,J=8.2,CH2gly),8.01(d,1,J=8.2,NH−phe),7.3−7.0(m,5,ArH),5.70(s,1, =CH2),5.37(t,1,J=1.6, =CH2),5.09(d,1,J=7.3,CH−Ama−diEt),4.53(m,1, pheのαCH),4.32(m,4,OCH2CH3),3.9−3.7(m,3,CH2−gly).3.63および3.59(dd,1,J=16,3,5.8),3.1−3.0および2.83−2.73(m,2,CH2−phe),2.51,(m,3,J=1.7,CH3−C=CH2),1.59(m,1,J=6.5,CH2CH(CH3)2,1.49(t,2,J=7.5,CH2CH(CH3)2),1.216および1.214(2 t,6,J=7.2,OCH2CH3),0.88(d,3,J=6.6,CH2CH(CH3)2),および0.84(d,3,J=6.5,CH2CH(CH3)2)。
【0126】
2.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(約45kD)の調製
コンデンサを伴う容器に、12.7wt%のHPMAモノマーおよびMA−GFLG−Ama−diEtモノマー(90/10比)のそれぞれ、0.6wt%純粋AIBN、10mol% p−ニトロフェノール(全モノマーのうち)、および86wt%アセトンを加えた。混合物を、窒素バブルを用いて30分以上の間脱気し、次いで50℃で65時間加熱した。固体生成物ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを濾過によって採集し、そしてエーテルで洗浄した。これを約25%wt/volのabs.EtOH中で再溶解し、次いで8容量のEtOAcで沈殿させた。得られた固体を濾過によって採集し、エーテルで洗浄し、そして真空中で乾燥し、約20gのオフホワイト色の粉末を得た。これの1H NMRスペクトルは、25kDa型と非常に類似していた。Mw=44.5kDa、PDI=1.76、バイモーダル(nimodal)。アミノ酸分析:(11mol/mgポリマー)2.7:8.1:0.9:0.9のgly:2−ヒドロキシプロピルアミン:leu:phe(それぞれ);MALDI−TOF−MS(NBAマトリックス) m/z M+40−45kDa、M+2 14−16kDa。
【0127】
(3.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(約350kD)の調製)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtの45kDバッチの手順を、p−ニトロフェノールを省いたことを除いて繰り返した。約25gの白色粉末が得られた。これの1H NMRスペクトルは、ピークはより広いものであったが、25kDa型と非常に類似していた。Mw=351kDa、PDI=3.95、トリモーダル(trimodal)。
【0128】
(実施例19)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2、N,O−キレート 45kDaの調製)
攪拌子を含む250媒体ボトルに、72mLの水および15.5g(6.82mmol Ama−diEt基)のポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtをそれぞれ添加した。力強い攪拌が確立されると、48mLの水をさらに添加し、そして混合物を約1時間攪拌し、淡紫色の溶液を得た。この溶液に12mLの新鮮な2M NaOHを添加し、そしてpHは12.6に上昇した。pHを30分間12.4〜12.8に維持し、次いで15.4gの混合床IX樹脂(AG 501−X8(D)、H+形態、−OH形態)を添加した。3分後、pHは5.0に低下し、この樹脂を滅菌Steritop 150mLフィルタによる濾過によって除去した。濾液のpHを新鮮な2N NaOHで7.60にまで上げ、そして8.14mmol(64mL、24,200ppm Pt)の新たに調製したジアミン−ジアクア白金(II)溶液を1つ分添加した。添加後、pHは5.1であり、そして一晩攪拌した。その後、pHは、4.42であり、そして5.10g Chelex 100樹脂を添加した。pHは5.33に上昇し、そして混合物を90分間攪拌した。樹脂を粗ガラスフリットによる濾過によって除去し、460mLの溶液を得た。濾液を、2.96g NaCl、1.08g NaH2PO4 H2O、および7.66g Na2HPO4 7H2Oの添加により、NaCl中110mM、ホスフェート中80mMとした。2N NaOHおよび5% HNO3を用いてpHを7.4に調整し、次いでSteritopフィルタを通して滅菌した媒体ボトルに滅菌濾過し、生物学的安全フード内でメンブレンキャップをかぶせた。これを39℃湯浴中に20分間置き、次いでインキュベータオーブン中に37〜38℃で置いた。
【0129】
37〜38℃で22時間後、溶液をTFFによって精製した。この溶液を5%wt/volに濃縮し、7容量の透過液を採集し、次いでこの透過液がわずかに色づいたときに保持液を8〜10%に濃縮した。保持液を、Millipak 20フィルタを通して滅菌した凍結乾燥フラスコに滅菌濾過した。凍結乾燥後、11.2g(66%)のオフホワイト色の固体を得た:8.89% Pt、5.4% H2O、1.03% Na、0.05% Cl、<0.05% P;1H
NMR(D2O)δ7.4および7.3(br s,5,ArH),5.23(br s,部分交換,AmaのCH),4.66(br s,1,α−H−phe),4.37(br s,1,α−H−leu),4.05(sh, glyのNH3またはCH2),4.1−3.8(高いsおよび短いm,〜13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(m,18,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,ポリマーバックボーンの−CH2−,leuのCH2およびCH),1.20および1.19(s,〜27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,ポリマーバックボーンのCH3),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ186.7,71.0,および他のピークは全て実施例4について報告のとおり;196Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ−2055(100%)。
【0130】
(実施例20)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2, N,O−キレート >351kDaの調製)
攪拌子を備えた500mL媒体ボトルに、120mL水および20g(8.80mmol Ama−diEt)ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(351kDa)をそれぞれ添加した。力強い攪拌が確立されると、100mLの水を添加し、そして全てのポリマーが溶解したときに混合物を2時間攪拌し、無色の溶液を得た。pH電極を挿入し、そして14mLの新鮮な2N NaOHを添加した。pHは12.74に上昇し、これを30分間12.4〜12.8の間に保持した。その後、19.9gの混合床(H+形態、−OH形態)IX樹脂(AG501−X8(D))を添加し、そして3分以内に、pHは6に低下した。この混合物をSteritopボトルトップフィルタを通して滅菌濾過し、そしてそのpHを2N NaOHおよび5%HNO3で7.63に調整した。1つ分において、85.5mLの新たに調製したジアミンジアクア白金(II)溶液の24,200ppm Pt溶液(10.6mmol)を添加し、5.02のpHを得た。この溶液は、粒子の大きさに起因してわずかに曇っているようであった。これを室温で一晩攪拌した。この間にpHは、4.25に低下し、そして6.77g Chelex 100樹脂を添加した。pHは5.33に上昇し、そして90分の攪拌後、0.2gのフィルタ補助パルプを添加した。混合物を粗ガラスフリットを通して滅菌濾過した。この溶液725mLを、4.661g(79.8mmol)NaCl、12.24g(45.7mmol)Na2HPO4 12H2O、1.703g(10.1mmol)NaH2PO4 1H2Oのそれぞれの添加により、NaCl中110mMおよびホスフェート中85mMとした。pHを7.4に調整し、次いでSteritopフィルタを通して1L媒体ボトルに通過させた。このボトルをメンブレンキャップで封鎖し、そして湯浴中に40℃で20分間置き、次いでインキュベータオーブン中に37〜38℃で置いた。約22時間後、内容物を上記のようにTFFによる精製に供した。NMR分光法を約50mgで実施した。これは、より濃縮した溶液では粘性でありすぎたからである。保持液の凍結乾燥により、19.9gの白色固体を得た:7.95%Pt,7.0%H2O,1.03%Na,0.09%Cl,<0.05%P;1H NMR(D2O)δ7.4および7.3(br s,5,ArH),5.23(br s,部分交換,AmaのCH),4.65(br s,1,α−H−phe),4.38(br s,1,α−H−leu),4.05(sh, glyのNH3またはCH2),4.1−3.8(高いsおよび短いm,〜13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(m,18,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,ポリマーバックボーンの−CH2−,leuのCH2およびCH),1.20および1.19(s,〜27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,ポリマーバックボーンのCH3),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ186.7,71.0,および他のピークは全て実施例4について報告のとおり;196PtNMR(H2O/D2O 93/7)δ−2055(100%).;SECトリモーダル,Mp=468kDa,147kDa Mn=66.3kDa,PDI=13.8;Pt放出:0.68%(3h)、2.28%(24h)。
【0131】
(実施例21)
(O,O−キレートおよびN,O−キレートのインビトロ活性)
組織培養物における活性の特徴づけ。種々のO,O−Ptキレートアナログの相対的細胞傷害性活性を、B16F10メラノーマ細胞の組織培養物を用いるクロノジェニック(clonogenic)(コロニー形成)アッセイによってインビトロで評価した。このようにして、アナログの活性をシスプラチンおよびカルボプラチン(活性のある従来の白金剤)の活性と比較した。N,O−Ptキレートへの変換の効果もまた評価した。簡潔に述べると、細胞を培養皿に播種し、そして付着させた。この培養物を、所望の濃度の試験剤を含有する培地中で7日間インキュベートした。固定後、50より多い細胞を含む細胞塊の数をコロニーとして記録した。各濃度の試験剤を三連でアッセイした。三連の皿のにおけるコロニーの平均数を、コントロール(試験剤なし)の皿におけるコロニーの平均数で割り、各濃度の試験剤について生存値%を得た。試験剤の各々のIC50(増殖の50%阻害を生じる濃度)を、50%生存点をすぐ上回るおよび下回るデータ値を用いて、直線回帰分析を行うことによって決定した。
【0132】
(表3.アミドマロネートのO,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートについてのクロノジェニックアッセイからの細胞傷害性結果)
【0133】
【表3】
(実施例22)
(寛容化および最大耐用量研究)
AP5280(すなわちポリ(HPMA)−GFKG−Ama=Pt(NH3)2)のN,O−Ptキレート形態に対してO,O−Ptキレート形態を比較する単回用量IV研究は、マウスにおける最大耐用量(MTD)がそれぞれ、O,O−Ptキレートについては80〜100mg Pt/kg、N,O−Ptキレートについては400mg Pt/kgであることを示し、これは、安全性領域の増大がポリマー結合N,O−Ptキレートにより与えられることを示す。これらの研究のために、MTDを、マウスの死亡が薬物誘導傷害性から生じなかった、評価した最も高い用量であると定義した。
【0134】
両キレートの多回用量の寛容(いずれかのキレートを毎日5用量与えたB16メラノーマ腫瘍を有する10匹のマウスの群の最大平均体重損失によって表される)を、表1に示す。これらのデータはまた、N,O−PtキレートがO,O−Ptキレートの等価用量(17.5mgPt/kg)で傷害性がないこと、および等価の平均重量損失を生じるためには、N,O−Ptキレートは、実質的により高い用量(>240mgPt/kg)が必要であることを示す。
【0135】
(表4.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,O,O−およびN,O−Ptキレート、25kDaの毎日5回投与について体重減少平均パーセントとして表されるAP5280の寛容化)
【0136】
【表4】
(実施例23)
(s.c.B16メラノーマモデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレート,25kDa(N,O−Pt)対シスプラチンおよび生理食塩水コントロールの腫瘍増殖阻害を、雌C57BL/6マウスにおいて評価した。N,O−Ptキレートおよびシスプラチンをそれぞれ17.5mg Pt/kgおよび3mg/kgで、qd×5のスケジュールで投与した。このN,O−キレート用量は、そのMTDを十分に下回る。一方、シスプラチン用量は、そのMTDの近傍である。処置群当たり10匹の動物に対し、106のB16F10マウスメラノーマ細胞を右側の背部の横腹にs.c.接種した。移植後6日目を始めとして、毎日、腫瘍の大きさを軽いメトフラン(Methfurane)麻酔下でカリパスによって測定した。生じた腫瘍の重さ(mg)を、式(W2×L)/2(ここで、Wは、短い方の腫瘍寸法の長さであり、そしてLは、長い方の寸法の長さである(mm))によって概算した。腫瘍が50mgより大きな大きさであったとき、各動物において処置を開始した。各研究動物は個々に従い、各動物についての処置の1日目は、腫瘍の大きさが投与の開始を示した日に対応した。全ての試験化合物を、尾静脈を介してIV投与し、そして体重20g当たり0.2〜0.3mLの容量で投与した。投与容量を確立するために投与前に毎日、およびその後研究の終了まで毎日、動物を観察し、そしてその体重を量った。結果を図12に示す。
【0137】
(実施例24)
(s.c.B16メラノーマモデルにおける腫瘍増殖阻害:O,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,O,O−Ptキレート,25kDa(O,O−Pt)対シスプラチンおよび生理食塩水コントロールの腫瘍増殖阻害を、雌C57BL/6マウスにおいて評価した。O,O−Ptキレートおよびシスプラチンをそれぞれ17.5mg Pt/kgおよび3mg/kgで、qd×5のスケジュールで投与した。このO,O−キレート用量は、シスプラチン用量と同様に、そのMTDの近傍である。本研究を実施例23に記載のとおり実施した。結果を図13に示す。
【0138】
(実施例25)
(s.c.B16メラノーマモデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレート,25kDa(N,O−Pt)対カルボプラチンおよび生理食塩水コントロールの腫瘍増殖阻害を、雌C57BL/6マウスにおいて評価した。N,O−Ptキレートおよびカルボプラチンをそれぞれ200mg Pt/kgおよび65mg/kgで、qd×5のスケジュールで投与した。このN,O−キレート用量は、カルボプラチン用量と同様に、そのMTDの近傍である。それ以外には、本研究を実施例23に記載のとおり実施した。結果を図14に示す。
【0139】
(実施例26)
(s.c.扁平上皮細胞異種移植モデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレート,25kDa(N,O−Pt)対カルボプラチンおよびビヒクルコントロール(等張グルコース)の腫瘍増殖阻害を、処置群当たり7匹のBALB/c nu/nuマウスの群において評価した。ヒト扁平上皮腫瘍細胞(UMSCC10b)を4つの部位(左側および右側の肩ならびに左側および右側の横腹)に移植した(1部位当たり106細胞)。N,O−Ptキレートおよびカルボプラチンをそれぞれ400mg Pt/kgおよび65mg/kgで単回IP注射として投与した。このN,O−キレート用量は、カルボプラチン用量と同様に、そのMTDの近傍である。腫瘍が50mgの群平均に達したとき、全てのマウスに試験レジメを行った。結果を図15に示す。
【0140】
本明細書中に記載の種々の成分、要素、および組み合わせの構築および操作において、または本明細書中に記載の方法の工程もしくは工程の順序においては、上記の特許請求の範囲において定義されるような本発明の精神および範囲を逸脱することなく、変更がなされ得る。
【0141】
以下の引用文献を、本願を補足する詳細のために、本明細書中に参考として援用する。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
【表7】
【0145】
【表8】
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
【0148】
【表11】
【0149】
【表12】
【0150】
【表13】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
2000年1月4日に出願し、そして本明細書中に参考として援用される、仮出願米国出願第60/174,435号からの優先権が主張される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
シスプラチンの抗腫瘍活性の発見(Rosenburgら,1969)後、癌の処置のための白金錯体の使用に関する分野において大量の研究が行われた。白金化合物の抗腫瘍活性は、反応性モノ−またはジ−アクア錯体(これは、鎖内および鎖間のDNA架橋を腫瘍細胞において形成し得る)を形成するインビボでの不安定な塩素配位子の喪失から生じると考えられる。これらの架橋は、細胞死をもたらし得る。シスプラチン(cDDPまたはシス−ジアミンジクロロ白金(II))は、ヒト被験体における使用について承認されている白金化合物のうちで最も広範に使用されており、そして固形腫瘍(精巣、卵巣ならびに頭部および頸部を含む)のための、ならびに扁平上皮癌および小細胞肺癌に対する使用において他の薬剤と組み合わせた処置が示されている(Surら,1983)。
【0003】
しかし、その毒性に起因して、シスプラチンの使用には重大な制限が存在する。腎毒性および聴器毒性は代表的に、その用量を制限する毒性である。この問題があるので、多くの研究者が、治療指数(毒性に起因する耐えられ得る最大用量と、効力を提供する用量との間の比)が改善された新たな化合物を見出すことを期待して、新規の低分子白金キレートを作製し、そして試験した。白金キレート構造における変化もまた、白金治療が有効であり得る腫瘍型の範囲を広げ得、そして/または毒性プロフィールを変更し得る。上記のように、不安定な脱離基が殺腫瘍活性のために必要とされるが、これらの官能基はまた、この分子の毒性に寄与し得る。英国におけるInstitute for Cancer Researchで行われた研究は、塩素原子を他の脱離基で置換することによって、より低い腎毒性を有する化合物が入手され得ること実証した(Harrap,1985)。この研究によって、カルボプラチン(2つの配位した塩化物イオンが1,1−シクロブタン−ジカルボン酸のキレートによって置換されたシスプラチンアナログ)の発見がもたらされた。このキレート基は、シスプラチンの塩素原子と比較してそれほど不安定性ではない。その結果、シスプラチンと比較して、より高い用量のカルボプラチンが、同様の殺腫瘍効果のために必要とされるが、カルボプラチンは、より高い治療指数を有し、そして用量を制限する毒性は、腎毒性ではなく骨髄抑制(myelosuppression)である。
【0004】
オキサリプラチンは、欧州においてヒトへの使用が承認された別の低分子白金キレートである。この白金キレートは、シスプラチンの不安定でない(アミン)配位子および不安定な配位子の両方における変化の効果を調査する研究の結果であった。オキサリプラチンでは、配位したアンモニア配位子は、トランス−1R,2R−ジアミノシクロヘキサン(DACH)キレートによって置換されており、一方、不安定な塩素配位子は、シュウ酸キレートによって置換されている。オキサリプラチン(および他のDACH白金化合物)が、NCIヒト腫瘍スクリーニングにおいてシスプラチンおよびカルボプラチンと比較した場合に異なる活性スペクトルを有すること(Paullら,1989)が示されており、そしてオキサリプラチンは結腸直腸癌の処置のためにその後開発された。オキサリプラチンの用量を制限する毒性は、感覚ニューロン障害である。
【0005】
他の多くの低分子白金錯体が、潜在的な化学療法剤として調査されているが、せいぜい、効力および治療指数のわずかな改善しか達成されていない。これらのより新たな低分子白金キレートの多くは不活性であるかまたは処方に問題があり(例えば、低い水溶性または乏しい水性安定性)、そして大部分が、腎毒性、神経毒性、骨髄抑制、悪心および嘔吐を含めた、重篤な毒性副作用を誘発する。承認された白金錯体の治療指数を改善する多数の試みは、組合せ治療(例えば、シスプラチンとパクリタキセルとの同時投与;(Posnerら,2000))または処方の変更(例えば、リポソーム中への封入(Steerenbergら,1988))のいずれかを含んでいた。現在承認されている白金キレートと比較して治療指数がさらに改善された、新たな白金キレートについての明確な必要が残っている。このようなキレートは、理想的には水溶性であり、そして水性環境において安定であるが、腫瘍細胞においてはDNAを架橋し得る種を提供し、そして最終的に腫瘍細胞死を引き起こすに十分に不安定である。
【0006】
さらに、治療指数の改善は、腫瘍細胞に対する白金錯体の標的化によって達成され得る。従来の低分子白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチン)は、腫瘍細胞に対して特異的には標的化されず、そして静脈内投与後に、これらは、腫瘍細胞中に拡散するのと同じくらい容易に正常細胞中に拡散し得る。また、これらの用量は、迅速にクリアランスされる。注射3時間後には、血漿中のシスプラチン由来の白金の90%が不可逆的にタンパク質に結合する(Physican’s.Desk Ref.1997)。シスプラチンおよびカルボプラチンについては、用量のうちのそれぞれ25%および65%が12時間以内に腎臓に分泌される(DeVitaら,1993)。治療指数の改善は、白金錯体が、腫瘍に対して正常細胞よりも容易に送達されるのであれば、および/または腫瘍細胞によって正常細胞よりも容易に取り込まれるのであれば、可能であり得る。
【0007】
文献で大量に報告されている、腫瘍を標的化する1つの方法は、ポリマーまたは他の高分子構造体への化学療法化合物の不安定な付着を含む。腫瘍細胞におけるポリマーおよびナノ粒子(nanoparticle)の濃度が、静脈内投与後の正常組織におけるそれらの濃度を超えることが実証されている(Seymour 1992;Veroneseら,1999)。この好ましい腫瘍蓄積のための機構は、「増強された透過性および残留」(すなわち、「EPR」)効果と命名されている(Seymourら,1995)。本質的に、腫瘍内皮細胞は、正常な内皮細胞よりも「漏出性」であり、それゆえ、ポリマーおよびナノ粒子は、正常組織の場合よりも容易に腫瘍における内皮細胞層を通過する。従って、静脈内投与後、ポリマーおよびナノ粒子は、正常細胞の細胞外流体に対してよりもずっと容易に、腫瘍細胞の細胞外流体に進入し得る。さらに、腫瘍細胞における細胞外流体のリンパドレナージは、正常細胞と比較してずっと効率が低い。これらの2つの要因は、低分子の自由に分散し得る分子と比較し、正常な組織と比較して、腫瘍におけるポリマーおよびナノ粒子のより高い濃度を説明する。
【0008】
EPR効果を通じた腫瘍への化学療法剤の受動的標的化を提供する構築物のいくつかの例が既に存在する。例えば、ドキソルビシンが、直鎖状ポリマー骨格であるポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド(ポリ(HPMA))へと、リソソーム酵素によって切断されるように設計されたテトラペプチドを介して付着された。この水溶性結合体は、「PK1」と命名され、そしてその化学的性質、前臨床試験および臨床評価を記載する、多数の刊行物の主題であった(例えば、Seymourら,1990;Pimmら,1996;Duncanら,1998;Thomsonら,1999;Minkoら,2000)。同様に、HPMAは、これらの化学療法分子の腫瘍への送達の増強のために、パクリタキセルおよびカンプトテシンに結合体化された(Fraierら,1998;Caiolfaら,2000)。パクリタキセルおよびカンプトテシンの両方が、腫瘍標的化および薬物の水溶性を改善することを目的として、他の水溶性ポリマーに付着されている(例えば、Liら,2000およびConoverら,1998)。
【0009】
ポリマー−白金結合体を用いて、白金錯体の溶解度を増大させ、全身毒性を減少させ、そして腫瘍をEPR効果によって標的化することによって、癌を処置する際に患者に利益を与え得ることが提唱されている(Duncan,1992)。ポリマー−白金結合体のいくつかの例が報告されている。例えば、米国特許第5,965,118号は、リソソーム酵素によって潜在的に切断され得るペプチドを介してHPMAポリマー骨格へと結合された種々の白金キレートを記載する(Gianasiら,1999もまた参照のこと)。さらなる例としては、ポリホスファーゼン白金(II)結合体(Sohnら,1997;米国特許第5,665,343号)、ポリ(グルタメート)白金錯体(Schechterら,1987)および他のもの(Bogdanov,Jr.ら,1996;Hanら,1994;Johnssonら,1996;Fiebigら,1996);Filipova−Voprsalovaら,1991;Fujiら,1996;Neuseら,1995;Schechterら,1989)が挙げられる。
【0010】
本発明者らの知る限りでは、ポリマー白金結合体の上記の報告は、ポリマーへの白金錯体形成の構造についても性質についても良好な証拠を提供しないが、大部分は、白金錯体の構造について特定の根拠のない仮定をする。以前のこれらの全ての例では、白金がポリマーに1より多くの方法で結合することが可能であり、従って、混合された錯体の可能性を生じる。また、pHは、不活性(ヒドロキソ配位子)または非常に毒性な(アクア配位子)であり得る他の白金錯体の形成をもたらし得る錯体の形成において制御されていない。従って、白金が任意の1つのポリマーから異なる放出速度で放出されること、および(形成される錯体の混合物はバッチの間で変動し得るので)白金の放出速度がバッチ毎に異なり、毒性および効力の両方における未制御のバッチ毎のバリエーションを生じることが可能である。このようなバリエーションは、癌の処置におけるこれらの結合体の使用には受け入れられない。好ましい状況は、腫瘍に対する白金化合物の改善された送達のためにEPR効果を利用する場合に、癌の処置のために有益である放出速度を与える、ポリマーに対する白金の、十分に規定され、よく制御された錯体形成を有することである。
【0011】
EPR効果を利用した受動的腫瘍標的化に加えて、「能動的」機構を利用して腫瘍に対して白金錯体を標的化することも可能であり得る。これは、例えば、正常組織と比較して腫瘍においてアップレギュレートされるレセプターに結合する部分へと白金錯体をカップリングし、それゆえ正常組織と比較して腫瘍組織における白金のレベルの上昇を生じることによって達成され得る。このようなアップレギュレートされた広範な種々のレセプターが公知である(例えば、Heppelerら,2000;Schlaeppiら,1999;Sudimackら,2000;Dubowchikら,1999;Weiner,1999;Buolamwini,1999)。標的化剤の例としては、モノクローナル抗体、ペプチド、ソマトスタチンアナログ、葉酸誘導体、レクチンおよび多価陰イオン性多糖が挙げられる。
【0012】
しかし、本発明者らの知識によれば、腫瘍組織に対する白金の増加した送達のついてのレセプター標的機構の有用性についてほとんど報告された例はない。しかし、モノクローナル抗体(McIntoshら、1997;Hataら、1992)、ステロイド(Gustら、1995;DiZioら、1992、Gibsonら、1990)および葉酸(Vitolsら、1987)と結合体化した白金の研究はいずれも、臨床において評価されていない。
【0013】
ポリマーの受動標的化を、レセプターアビド化合物(receptor−avid compound)の活性標的化と組み合わせることが可能である。これは、「PK2」、すなわちHPMAポリマーを有する化合物、酵素切断可能なペプチドを介してポリマーに結合したドキソルビシンによって例示され、これは、ガラクトース、すなわち、アシアロ糖蛋白レセプターに対して強力な親和性を有する糖質と結合体化され、これは、肝臓内で高度に濃縮される(Julyan、1999)。本発明者らの知識によれば、活性標的化と受動標的化とを合わせるこのアプローチは、白金キレートを用いて探求されていない。
【0014】
本発明は、初期の不安定なO,O−アミドマロネートcis−ジアミン白金(II)錯体を、純粋かつ単離可能なN,O−アミドマロネートcis−ジアミン白金(II)錯体を再配列することを可能にする条件の予測できない発見に基づく。O,O−Ptキレートは、反応性cis−ジアミン白金(II)種がアミドマトネートと反応する際に、はじめに形成される。以下で議論される報告は、このような反応において、N,O−キレートが、単離も精製もされないマイナー生成物として形成されないし、見出されもしないことを示す。本明細書中において、純粋なN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)が単離されるのを可能にする一般的条件が、記載される。さらに、このようなN,O−キレートは、癌の処置のための優先的な生物学的活性、具体的には改良された治療指数を有する。癌の処置のためのこのようなN,O−アミドマロネートキレートの有利な特性は、以前に報告されていない。さらに、本明細書中に記載される非熱力学的に安定な錯体のN,O−キレートへのほぼ完全な変換は、一貫した効力および毒性プロファイルによって製造され得る腫瘍を処置するための低分子およびポリマー化合物を提供する。
【0015】
任意の薬学的生成物について、その同一性および純度の正確な測定が必要である。本発明および関連分野に対して、白金錯体の正確な性質を検証し、そして不純物を同定することが最も重要である。なぜなら、不純な白金錯体は、精製の際に消滅する見込みのある生物学的活性を示した例があるからである(Talebianら、1991およびAppletonら、2000)。
【0016】
本発明の場合、白金錯体の正確な性質を同定するための最良の方法は、NMR分光法、具体的には195Pt NMRおよび15N NMR分光法である(Applenton2000)。いずれの技術によっても、白金錯体の同一性は、前分離の必要なしに作成される。この研究の場合、195Pt NMR分光法は、選択の方法である。なぜなら、それは十分な感度を提供し、15N NMR分光法に必要とされる同位体富化の必要性が避けられるからである。195Pt核は、スピン1/2であり、13C核の感受性のほぼ20倍の感受性を有し、15,000ppmの化学シフト範囲にわたって共鳴を示す。この化学シフトは、白金リガンドの同一性およびジオメトリに対して非常に敏感である。195Ptは、約10mM白金以上の実践的な感度限界を有する。cis−ジアミン白金(II)錯体についての化学シフトの例として、シスプラチンの−2168ppm、カルボプラチンの−1723ppm、ジアクアの−1584ppm、モノアクア−モノクロロの−1841ppm、O,O−アミノマロネートの−1732ppm、N,O−アミノマロネートの−2156ppm、およびN−アセチルグリシンのN,O−キレートの−2020ppmが挙げられる(Appleton1990;Gibson1990;Appleton2000)。対応するDACH−Pt錯体は、さらなる高磁場に現れる。
【0017】
cis−ジアミン白金(II)種の、遊離アミン含有アミノマロネートとの反応が、報告されている。Gandolfi(Gandolfiら、米国特許第4,614,811号;Gandolfiら、1987)は、cis−ジアミン白金(II)種およびアミノマロネートとの間の錯体の調製および抗腫瘍活性を報告した。この報告された構造は、図2aに示されるような全てO,O−キレートであった。後に、O,O−Ptキレートが最初に形成されたが、pH=5で数時間内に、図2bに示される熱力学的なN,O−アミノマロネートcis−ジアミン白金(II)に異性化することが、明確に示された。さらに、Appletonは、pHが非常に低い(2未満)場合、脱炭酸反応が起こり、対応するN,O−グリシン錯体を得ることを示した。pHが非常に高い(9を超える)場合、白金エステルの加水分解が起こった。純粋なN,O−アミノマロネート錯体の生物学的活性の文献報告は、公知ではない。しかし、密接に関連した、十分に精製されたN,O−アスパラギン酸cis−ジアミンPt(II)錯体の報告(Talebian1991)は、たとえ細胞傷害活性があったとしても、ほとんど示さなかった。
【0018】
図3(遊離アミンを有しない)に示されるようなアミドマロネートのcis−ジアミン白金(II)の場合、Tsujiharaの米国特許第4,882,447号は、多くの1,2−ジアミンシクロヘキサン白金(II)のO,O−アミドマロネート錯体(すなわち、DACH−白金(II))の調製および生物学的活性を報告する。O,O−Ptキレート化を検証するデータは、記載されていない。一連のアミドマロネートDACH−白金(II)は、図3aに示されたものと同様のO,O−Ptキレートとしてのみ存在することが報告された(Talebianら、1990)。ポリホスファゼンベースのアミドマロネートは、単に、O,O−キレートとして示され(図3a)、同様のグルタミン酸ベースの物質を通して、ほとんど等量の2種のキレートを示すことを確証した分光学的データはなかった。しかし、一連のステロイドベースのアミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体(図3、R=ステロイド)は、O,O−PtアミドマロネートキレートおよびN,O−Ptアミドマロネートキレートの混合物(それぞれ、図3aおよび図3b)であることが示され、O,O−異性体は、優先された(Gibsonら、1990)。2種の分離は記載されていないが、おそらく熱またはより長い反応時間で、N,O−キレートが好まれ得ることが予想された。しかし、本発明は、アミドマロネートcis−ジアミン白金錯体のO,O−PtからN,O−Ptへの転換を行うのにさらなる成分が必要とされる。
【0019】
要約すると、アミドマロネートのcis−ジアミン白金(II)錯体の場合、初期O,O−Ptキレートは、迅速にN,O−Ptキレートに異性化する、しかし、アミドマロネートのcis−ジアミン錯体の場合、O,O−Ptキレートのみが見出されるか、または両方のキレートの混合物中で、O,O−Ptが優先する。アミドマロネートの純粋なN,O−キレートの調製について全く報告がなされていない。従って、cis−ジアミン白金(II)錯体のアミドマロネートととのN,O−キレートの調製および有用な生物学的活性が、本明細書中で提供される。さらに、O,O−キレートの選択的調製が、記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
本発明は、精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体に関する。この錯体は、結合したポリマーであり得る。この錯体は、有効量の精製されたN,O−アミドマロネートジアミン錯体を患者へ投与する工程を包含する、白金感受性の新生物形成を処置する方法において有用である。
【0021】
より詳細には、本発明は、腫瘍処置における使用のための組成物に関し、この組成物は、以下:
【0022】
【化4】
の形態のcis−ジアミンN,O−アミドマロネート白金種を含み、
ここで、R1は、H、アルキル、水可溶性基、キャリアまたは腫瘍に対して種を標的化するのに有用な標的基であり;R2およびR3は、アミンであり;R4は、Hまたはカチオンであり;そしてここで、上記種は、抗腫瘍活性を有するか、または抗腫瘍活性を有するようにインビボで転化される。この錯体中のカチオンは、アンモニウムイオン、アルカリ、またはアルカリ土類金属であり得る。好ましいカチオンは、ナトリウムである。
【0023】
特定の場合、N,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体は、上記組成物を含み得、ここで、R1は、1〜5000キロダルトンの分子量のN−アルキルメタクリルアミドユニットの合成ポリマーであり、以下:
【0024】
【化5】
の形態を有し、
ここで、m=0およびn=100であるか、またはm:nの比は、0.1〜99.9であり;R5は、HまたはCH3であり;R6は、C1〜C6ヒドロキシアルキル基であり、そしてR7は、生理学的条件下で切断され得る、Gly−(W)p−Glyを有するオリゴペプチドであり、ここで、pは、0〜3であり、Wは、アミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせであり、このC末端は、アミドマロネート基のアミドである。
【0025】
上記のN,O−アミドマロネート白金錯体の重要な実施形態において、R2およびR3の両方とも、NH3である。これらは、しばしば、好ましくは、1,2−ジアミノシクロヘキサンの第一アミン基である。
【0026】
これらの錯体に含まれる白金は、+2酸化状態または+4酸化状態にあり得る。上記のR1は、Hまたはアルキルのいずれかであるが、葉酸レセプターを標的化するのに有用な、ステロイドまたは葉酸または葉酸誘導体もしくはアナログでもあり得る。
【0027】
ポリマーN,O−アミドマロネート白金錯体のポリマーは、本明細書中で記載される他のポリマー、すなわち、ポリグルタミン酸、モノ−もしくはポリサッカリドまたはポリサッカリドの側鎖を有し得る。
【0028】
本発明はまた、白金ジアミン化合物の安定性を改良する方法に関する。この方法は、白金化合物の精製されたN,O−アミドマロネート錯体を形成する工程を包含する。
【0029】
本発明の重要な局面は、腫瘍処置における使用のための組成物に関し、この組成物は、腫瘍部位に蓄積するよう設計され、白金化合物との錯化のためのポリマーに沿って間隔をあけられた側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドからなるポリマー白金錯体を含み、この側鎖は、(i)一方端でそのポリマーに結合し、そして他方端において、少なくとも主に、N,O−アミドマロネート錯体を介して白金化合物に結合したオリゴペプチドからなり、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断され、抗腫瘍活性を有するか、または抗腫瘍活性を有するようにインビボで転化される白金化合物を生成するように設計された少なくとも1つの連結を含む。
【0030】
このようなN−アルキルアクリルアミドポリマーは、好ましくは、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである。N−アルキルアクリルアミドポリマーは、0.1と約99.9との間のm:n比の2個の繰り返し単位を有するコポリマーであり得る。
【0031】
本発明の組成物はまた、オリゴペプチド側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドユニットの繰り返し単位を含む。これらのオリゴヌクレオチド鎖は、白金化合物を結合し得る近位基内で終端し得る。
【0032】
本発明の組成物において、有用なポリマーは、ポリマーが以下:
【0033】
【化6】
の形態のコポリマーである形態のコポリマーであり得、
ここで、R1は、HまたはCH3であり、R2は、低級アルキルもしくは低級ヒドロキシアルキル基であり、そしてR3は、オリゴペプチド側鎖である。このポリマーにおいて、R1は、CH3であり、R2は、2−ヒドロキシプロピルであり、R3は、Gly−Phe−Leu−Gly−AmaまたはGly−Gly−Amaである。本発明の治療的用途において、ポリマー白金化合物は、非経口投与に適切な水性媒体に溶解される。
【0034】
本発明の重要な局面は、白金化合物に供される固体腫瘍を処置する方法であり、この方法は、白金化合物と錯化するためのポリマーに沿って間隔をあけられた側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドポリマーからなるポリマー−白金錯体を調製する工程であって、この側鎖が、(i)一方端でそのポリマーに結合し、そして他方端において、少なくとも主に、N,O−アミドマロネート錯体を介して白金化合物に結合したオリゴペプチドからなり、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断され、抗腫瘍活性を有するか、または抗腫瘍活性を有するようにインビボで転化される白金化合物を生成するように設計された少なくとも1つの連結を含む、工程;ならびに、薬学的に有効な量の錯体を被験体に非経口投与する工程、を包含する。1つの好ましい実施形態における上記N−アルキルアクリルアミドポリマーは、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである。別の重要な実施形態において、N−アルキルアクリルアミドポリマーは、1,000ダルトンと5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するコポリマーである。このコポリマーは、0.1と約99.9との間のm:nの比の2つの繰り返し単位mおよびnを含む。このような繰り返し単位は、N−アルキルアクリルアミドユニットおよび、白金化合物に結合し得る近位端を有するオリゴペプチド側鎖を有するユニットを含む。オリゴペプチドが使用される場合、上記オリゴペプチドは、好ましくは、Gly−(W)p−Glyであり、ここで、pは0〜3であり、Wは、アミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせである。1つの重要な実施形態において、オリゴペプチドは、Gly−Phe−LeuまたはGly−Glyである。
【0035】
本発明は、白金ジアミン化合物が、被験体にこの化合物を含む薬学的に受容可能な溶液を非経口的に投与することによって腫瘍を処置するために使用される際に、白金ジアミン化合物の治療指数を向上する方法を包含し、この方法は、上記投与の前に、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位、および上記白金化合物とN,O連結を介して錯化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位からなるコポリマーと、白金化合物とを錯化する工程を包含する。
【0036】
別の観点から、本発明は、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位、および上記白金化合物とN,O連結を介して錯化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位からなるコポリマーと、上記化合物とを錯化する工程を包含する、白金ジアミン化合物の安定性を改善する方法に関する。
【0037】
従って、本発明の目的は、インビボで改善された抗腫瘍活性を有する新規のポリマー−白金錯体を提供することである。
【0038】
1局面において、本発明は、腫瘍部位で蓄積するよう設計されたポリマー−白金化合物を含む、腫瘍処置における使用のための組成物に関する。この化合物は、骨格に結合した白金含有側鎖を有する合成ポリマー骨格からなる。この側鎖(i)は、生分解性リンカー、例えば、一方端またはその付近にて骨格に結合し、他方端またはその付近にて白金化合物に結合したオリゴペプチドからなる。このリンカーは、抗腫瘍活性を有するか、または有するようにインビボで転化される白金化合物を生じる選択された生理学的条件下で切断するように設計される少なくとも1つの連結を含む。オリゴペプチドは、通常のアミノ酸(例えば、アミドマロネートなど)またはαアミノ酸以外を含み得る。
【0039】
1つの実施形態において、この合成ポリマーは、約1,000〜5,000,000ダルトンの間の原子量を有する、N−アルキルアクリルアミドまたはメタクリルアミド(つまり、全「n」型単量体)のホモポリマーである。
【0040】
別の実施形態において、この合成ポリマーは、1,000〜5,000,000ダルトンの間の原子質量を有するコポリマーであり、m:nの割合が約0.1〜99.9の間である、2つの単量体のmおよびnを含む。
【0041】
1つの実施形態において、この単量体は、N−アルキルアクリルアミドまたはメタクリルアミド単体、および白金化合物と連結し得る近位な末端基に終端するオリゴペプチド側鎖を運ぶ単体から構成される。
【0042】
1つ実施形態において、ポリマー−白金化合物におけるポリマーは、以下の形態のコポリマーである:
【0043】
【化7】
ここで、R1はHまたはCH3であり、R2は下位アルキルまたは下位ヒドロキシアルキル基であり、かつR3はオリゴペプチド側鎖である。
【0044】
別の実施形態において、このオリゴペプチドは、Gly−(W)p−Glyの形態のオリゴペプチドであり、ここでpは、0〜3であり得、そして(W)は任意のアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせであり得る。1つの実施形態において、このペプチドは、Gly−Phe−Leu−Glyであり、そして白金化合物との連結のためのカルボキシル、ジアミンまたはマロニル部分に終端する。PheまたはLeuは、好ましい実施形態において(L)アミノ酸である。別の実施形態において、このペプチドは、近位なカルボニル末端基に終端しているGly−Glyである。D−アミノ酸含有オリゴペプチドが、生分解性であるという点において、これらはオリゴペプチドの一部分または全てでもあり得る。
【0045】
好ましい実施形態において、R1はCH3であり、R2は2−ヒドロキシプロピルであり、かつR3はGly−Phe−Leu−Gly−[X]であり、ここで[X]は、ジアミン、カルボキシル基またはマロニル部分である。
【0046】
このポリマー−白金化合物は、非経口投与に適した薬学的に受容可能な培養液中に溶解される。
【0047】
別の局面において、本発明は、被験体において固形腫瘍に対して白金化合物を標的化する方法を含む。この方法は、幹に沿って間隔のあいた側鎖を有する合成ポリマー幹から構成されたポリマー−白金化合物を調製する工程を包含する。この側鎖は、(i)一方の末端において幹に連結し、そして他方の末端において白金化合物に連結したオリゴペプチドから構成され、そして(ii)選択された生理学的条件下において、坑腫瘍活性を有するか、または坑腫瘍活性を有するためにインビボで転換される白金化合物を得るために切断されるべく設計される、少なくとも1つの連鎖を含む。この化合物は、薬学的に有効な量において、被験体に非経口で投与される。
【0048】
別の局面において、この化合物が、被験体に対する化合物を含む、非経口で薬学的に受容可能な溶液を投与することによって、腫瘍を処置するために使用される場合、本発明は、白金化合物の治療学的指標を増強する方法を含む。この化合物を投与する前に、この方法は、白金化合物と混合可能な近位の末端基に終端するオリゴペプチド側鎖を有する、N−アルキルアクリルアミドの第一単量体および第二単量体から構成されたコポリマーを有する白金化合物を混合する工程を包含する。
【0049】
別の局面において、本発明は、この白金化合物と混合可能な近位の末端基に終端するオリゴペプチド側鎖を有する、N−アルキルアクリルアミドの第一単量体および第二単量体から構成されたコポリマーを有する化合物を混合することによる、白金化合物の溶解性および/または安定性に関与する方法を含む。このポリマー−白金錯体は、生理学的条件下において、非錯体の白金化合物よりも、より可溶性であり、そして/またはより安定している。好ましい白金錯体は、−およびO−を介して結合され、最も好ましくは、アミノマロネート残基は、ポリマーに対して生分解性連鎖に連結される。
【0050】
これらの対象および他の対象、ならびに本発明の特徴は、本発明の以下の詳細な記載を添付の図面と共に読む場合に、さらに十分に理解される。
【0051】
化学療法薬剤を含む、治療薬剤のポリマーに基づく送達は、考慮すべき注意を受け続ける(Duncanら(1999)、Seymour)。代表的には、確立した薬理学的実在は、生物学的挿入ポリマーに化学的に連結され、従ってその分布、排除および毒物学的特性を大いに変化させる。腫瘍学的な適用について、この技術は、増強した透過性および保持(EPR)効果を介して腫瘍間隙での細胞障害性薬剤の濃度を増加させる可能性を提供する(Seymourら)。ACCESS Pharmaceuticalは、白金と合金にしたポリマー治療の広範なクラスの権利を有する。AP 5280と命名されたこれらの1つは、シス−ジアンミン白金(II)(cis−diammineplatinum(II))のアミノマロネート(aminomalonato)キレートを有する、90:10のN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)のコポリマー、およびGly−Phe−Leu−Glyのメタクリルアミドである。この最適化したリンカーを組み込むことは、このポリマー由来の白金含有フラグメントを、腫瘍プロテアーゼによる切断を介して放出する可能性を提供する。このコポリマー−リンカー−キレート結合の概念、ならびに初期合成研究および生物学的研究は、Duncanら(1999)によって示されている。臨床的評価のために、この物質のさらなる発展への挑戦は、ヒトに使用するために規制当局の許可を保証するために必要な、必須の活性、安定性および薬学的特性を有する、構造的に特徴づけられた生成物のための拡張可能な手順を定義することである。
【0052】
AP 5280の合成は、初期にジエチルアミノマロネートを中間体のポリ(HPMA)GFLG−ONpにおけるp−ニトロフェノールに置換することによって達成され、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtが得られる。この後者はけん化され、次いでシス−(NH3)2Pt(H2O2)2+で白金と合金され、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2が得られた。その後、初期O,O−PtキレートのN,O−Ptキレートへの再配列はコントロールされる。本発明者らはまた、HPMAおよびMA−GFLG−Ama−diEtモノマーからポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを作製した(Polymer Lab)。これらのモノマーを、種々の量のラジカル鎖転移薬剤(つまり、p−ニトロフェノール)を用いて重合することによって、この分子量は制御される(注意:この分子量の制御方法は、文献において周知である)。次いで、これらのポリマーは、けん化され、白金と合金され、そして際配列され、記載されるようなN,O−キレートが得られた。低分子量の不純物からの精製は、末端の凍結乾燥による最終処方生成物の単離を用いて、接線方向の流体を濾過することによって達成される。N,O−Ptキレート(92%未満)の同定および精製は、O,O−キレート(−1733ppm)または他のPt種のような8%未満のPt存在を有する、195PtNMR分光学(−2056ppm)によって確認される。この最終生成物は、8.0±0.5%のPt(wt/wt)を含み、そしてMW=24.4kDaを有する。37℃で24時間を越えて、水中においては、AP 5280は、ポリマー遊離白金種として1%より十分小さい(<<1%)白金含有量を放出し、そしてクロライドの生理学的濃度を含む培養液中に2%未満の白金を放出する。AP 5280の有効性は、s.c.B16F10マウスの腫瘍モデルにおいて評価され、このモデルは、3mg/kgにおけるシスプラチンの活性に相当する、20mg Pt/kgにおいて活性を示す。カルボプラチン(45または60mg/kg)を越える活性は、200mg Pt/kg(全用量IV、qd x5)において、AP 5280を用いて達成される。重要な局面において、図Aは、AP 5280の手順についての工程の概要を示す。
例えば、本願発明は、以下の項目を含む。
(項目1) 精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体。
(項目2) ポリマー結合N,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体。
(項目3) 白金感受性新形成を処置する方法であって、有効量の精製されたN,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体を患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目4) 腫瘍の処置における使用のための組成物であって、以下の式:
【化1】
のシスジアミンN,O−アミドマロネート白金種を含み、
ここで、R1は、H、アルキル、水可溶化基、担体または該白金種を腫瘍に標的化するのに有用な標的化基であり;R2およびR3は、アミンであり;R4は、Hまたはカチオンであり;そして該白金種が、抗腫瘍活性を有するか、またはインビボで変換されて抗腫瘍活性を有する、組成物。
(項目5) 項目4に記載の組成物であって、ここで、前記カチオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、組成物。
(項目6) 項目4に記載の組成物であって、ここで、前記カチオンが、ナトリウムである、組成物。
(項目7) 項目4に記載の組成物であって、ここで、R1が、分子量1〜5000キロダルトンのN−アルキルメタクリルアミド単位の合成ポリマーであり、そして以下の式:
【化2】
であり、
ここで、m=0およびn=100またはm:nの比が0.1〜99.9であり;R5が、HまたはCH3であり;R6が、C1〜C6ヒドロキシアルキル基であり、そしてR7が、Gly−(W)p−Glyの配列を有する、生理学的条件下で切断可能なオリゴペプチド鎖であり、ここで、pが0〜3であり、Wがアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせであり、C末端が項目1に記載のアミドマロネート基のアミドである、組成物。
(項目8) 項目4に記載の組成物であって、ここでR2およびR3が、NH3である、組成物。
(項目9) 項目4に記載の組成物であって、ここでR2およびR3が、1,2−ジアミノシクロヘキサンの一級アミン窒素である、組成物。
(項目10) 項目4または7に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+2の酸化状態である、組成物。
(項目11) 項目4または7に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+4の酸化状態である、組成物。
(項目12) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、Hまたはアルキルである、組成物。
(項目13) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、ステロイドである、組成物。
(項目14) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、葉酸レセプターを標的化するのに有用である葉酸誘導体または葉酸アナログである、組成物。
(項目15) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、ポリグルタミン酸の側鎖である、組成物。
(項目16) 項目4に記載の組成物であって、ここでR1が、モノサッカリドまたはポリサッカリドの側鎖である、組成物。
(項目17) 白金ジアミン化合物の安定性を改善するための方法であって、白金化合物の精製されたN,O−アミドマロネート錯体を形成する工程を包含する、方法。
(項目18) 腫瘍の処置における使用のための組成物であって、以下:
ポリマー−白金錯体であって、該ポリマー−白金錯体が、腫瘍部位に蓄積するように設計され、そして白金化合物を錯体化するためにポリマーに沿って間隔を開けて配置された側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドポリマーを含み、該側鎖が、(i)一端において該ポリマーに結合され、他端において少なくとも主にN,O−アミドマロネート錯体を介して該白金化合物に結合されたオリゴペプチドを含み、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断されて、抗腫瘍活性を有するかまたはインビボで変換されて抗腫瘍活性を有する白金化合物を生じるように設計された少なくとも1つの連結を含む、ポリマー−白金錯体、
を含む、組成物。
(項目19) 項目18に記載の組成物であって、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである、組成物。
(項目20) 項目18に記載の組成物であって、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するコモポリマーであり、該コポリマーが、約0.1と約99.9との間の比m:nで2つの繰り返し単位mおよびnを含む、組成物。
(項目21) 項目20に記載の組成物であって、ここで、前記繰り返し単位が、N−アルキルアクリルアミド単位および前記オリゴペプチド側鎖を保持する単位を含み、該オリゴペプチドが、前記白金化合物に結合し得る近位末端基で終わっている、組成物。
(項目22) 項目18に記載の組成物であって、ここで、前記ポリマーが、以下の式:
【化3】
のコポリマーであり、
ここで、R1が、HまたはCH3であり、R2が、低級アルキル基または低級ヒドロキシアルキル基であり、そしてR3が、オリゴペプチド側鎖である、組成物。
(項目23) 項目22に記載の組成物であって、ここで、前記オリゴペプチドが、Gly−(W)p−Glyであり、ここで、pが0〜3であり、Wがアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせである、組成物。
(項目24) 項目22に記載の組成物であって、ここで、前記オリゴペプチドの近位末端が、アミドマロネートである、組成物。
(項目25) 項目22に記載の組成物であって、ここで、R1がCH3であり、R2が、2−ヒドロキシプロピルであり、そしてR3がGly−Phe−Leu−Gly−AmaまたはGly−Gly−Amaである、組成物。
(項目26) 項目18に記載の組成物であって、ここで、前記ポリマー−白金化合物が、非経口投与に適した水性媒体中に溶解される、組成物。
(項目27) 被験体の固形腫瘍を白金化合物で処置するための方法であって、該方法が、ポリマー−白金錯体を調製する工程および薬学的に有効な量の該化合物を該被験体に非経口的に投与する工程を包含し、該ポリマー−白金錯体が、白金化合物を錯体化するためにポリマーに沿って間隔を開けて配置された側鎖を有するN−アルキルアクリルアミドポリマーを含み、該側鎖が、(i)一端において該ポリマーに結合され、他端においてN,O−アミドマロネート錯体を介して該白金化合物に結合されたオリゴペプチドを含み、そして(ii)選択された生理学的条件下で切断されて、抗腫瘍活性を有するかまたはインビボで変換されて抗腫瘍活性を有する白金化合物を生じるように設計された少なくとも1つの連結を含む、方法。
(項目28) 項目27に記載の方法であって、ここで、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、約1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するホモポリマーである、方法。
(項目29) 項目27に記載の方法であって、前記N−アルキルアクリルアミドポリマーが、1,000ダルトンと約5,000,000ダルトンとの間の分子量を有するコモポリマーであり、該コポリマーが、約0.1と約99.9との間の比m:nで2つの繰り返し単位mおよびnを含む、方法。
(項目30) 項目29に記載の方法であって、ここで、前記繰り返し単位が、N−アルキルアクリルアミド単位および前記オリゴペプチド側鎖を保有する単位を含み、該オリゴペプチドが、前記白金化合物に結合し得る近位末端基で終わっている、方法。
(項目31) 項目27に記載の方法であって、ここで、前記オリゴペプチドが、Gly−(W)p−Glyであり、ここで、pが0〜3であり、Wがアミノ酸または任意のアミノ酸の組み合わせである、方法。
(項目32) 項目27に記載の方法であって、ここで、前記オリゴペプチドが、Gly−Phe−Leu−GlyまたはGly−Glyである、方法。
(項目33) 白金ジアミン化合物を、該化合物を含む薬学的に受容可能な溶液を被験体に非経口的に投与することによって腫瘍を処置するために使用する場合に、該白金ジアミン化合物の治療指数を高める方法であって、以下:
該投与の前に、該白金化合物を、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位およびN,O連結を介して該白金化合物を錯体化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位を含むコポリマーで錯体化する工程、
を包含する、方法。
(項目34) 白金ジアミン化合物の安定性を改善する方法であって、以下:
該化合物を、N−アルキルアクリルアミド第1繰り返し単位およびO,N連結を介して該白金化合物を錯体化するアミドマロネート末端基を有するオリゴペプチド側鎖を有する第2繰り返し単位を含むコポリマーで錯体化する工程、
を包含する、方法。
(項目35) ポリグルタメートまたは別の天然または合成ポリマーに結合された、O,O−アミドマロネート白金ジアミン錯体。
(項目36) 項目35に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+2の酸化状態である、組成物。
(項目37) 項目35に記載の組成物であって、ここで、前記白金が、+4の酸化状態である、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンの構造ならびにアミドマロネート−シス−ジアンミン白金(II)(amidomalonate−cis−diammineplatinum(II))のO,O−キレートおよびN,O−Ptキレートの基本的構造を示す(注意:シスプラチンはまた、cDDPおよびシス−ジクロロジアンミン白金(II)(cis−diamminedichlorocplatinum(II))として公知である)。
【図2A】図2Aは、アミノマロネート−シス−ジアミン白金(II)のO,O−Ptキレートの構造を示す。
【図2B】図2Bは、アミノマロネート−シス−ジアミン白金(II)のN,O−Ptキレートの構造を示す。
【図3A】図3Aは、アミドマロネート−シス−ジアミン白金(II)のO,O−Ptキレートの構造を示す。
【図3B】図3Bは、アミドマロネート−シス−ジアミン白金(II)のN,O−Ptキレートの構造を示す。
【図4】図4は、ポリ(HPMA)−GFLG−Yの調製物および構造を示し、ここでY=ONpまたはAma−diEtである。Y=ONpの場合、より狭い部分での多分散を有する下位の分子量ポリマーが形成される。ONp基または添加したp−ニトロフェノールがない場合、より上位の分子量ポリ(HPMA)ポリマーが見い出される。この351kDaの物質は、任意のONpエステル、および任意の添加したp−ニトロフェノールなしの反応系から生じる。ONpエステルなしに、p−ニトロフェノールが重合のために添加される場合、より小さいHPMAポリマーは、より狭くそしてより均一な分子量分布を有して得られる。
【図5】図5は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2N,O−キレートを調製するために用いられる工程を示す。例において得られる多数のこれらの同様な工程および状態は、小さな分子であるか、またはポリマーに結合したアミドマロネート−シス−ジアミン白金(II)種の他のN,O−キレートの形成に適応可能である。
【図6】図6は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtの調製の間のp−ニトロフェノールの放出を示す。これは、置換反応が小さな分子を用いてモニターされた1つの方法を示す。
【図7】図7は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のO,O−キレートおよびN,O−キレートの構造と共に、それらに対応する195PtNMRスペクトルを示す。これらのスペクトルは、2つのキレートのピーク位置におけるキレート転換および差異を図解的に示す。O,O−キレートのスペクトルは、このスペクトルが約85%のO,O−キレートおよび15%のN,O−キレートからなることを示す。N,O−キレートのスペクトルは、このスペクトルが約10%のO,O−キレートおよび90%のN,O−キレートからなることを示す。より高温、またはより長い反応時間が用いられた場合、O,O−キレートは検出不可能である。
【図8】図8は、図5の工程Cの間のO,O−キレートおよびN,O−キレートのパーセントのプロットを示す。これは、O,O−キレート形成が1〜2時間以内で完了することを示す。
【図9】図9は、75mMホスフェート(pH=7.4、100mM NaCl)対時間における、O,O−キレートのN,O−キレートへの転換のプロットを示す。これは、これらの状態において、100%の白金がN,O−キレートとして存在することを示す。
【図10】図10は、O,O−キレートのN,O−キレートへの転換における塩化物イオン濃度の影響を示す。約60mMのNaCl濃度におけるキレート転換率は、同じである。
【図11】図11は、O,O−キレートのN,O−キレートへの転換における硝酸塩、アセテートおよびヨウ化物の影響を示す。3つの陰イオンの全てが、キレート転換に影響を与えるが、異なる割合である。
【図12】図12は、実施例23のB16黒色腫の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで生理食塩水は、コントロールとして用いられ、シスプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートは、そのMTDの十分下位に投薬された。
【図13】図13は、実施例24のB16黒色腫の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで生理食塩水は、コントロールとして用いられ、シスプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のO,O−キレートは、そのMTDの近位に投薬された。
【図14】図14は、実施例25のB16黒色腫の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで生理食塩水は、コントロールとして用いられ、カルボプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートは、そのMTDの近位に投薬された。
【図15】図15は、実施例26のヒト異種移植の腫瘍増殖阻害の研究からのプロットを示し、ここで等浸透圧性グルコースは、コントロールとして用いられ、カルボプラチンは、そのMTDの近位に投薬され、そしてポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートは、そのMTDの十分に下部、および近位に投薬された。
【発明を実施するための形態】
【0054】
(発明の詳細な説明)
本発明の中心的な実施形態は、特定の型の白金(II)錯体(すなわち、図3b)の精製され、そして十分に特徴付けられた組成物であり、この錯体において、アミドマロネート基が、アミドマロネートのアミド窒素およびアミドマロネートのカルボキシレートのうちの1つの酸素によって、白金にキレートされ、そしてここで、中心白金に対する2つの他の利用可能な配位子部位が、アンミンまたはアミンである。このような錯体は、癌の処置において有用な化学療法剤であり得る。
【0055】
本発明の重要な局面において、N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体のカルボニルアミドに結合したR基(図3bを参照のこと)は、H、アルキル基、本発明の種を可溶化するために有用な基、ポリマー、本発明の錯体とポリマーとの間を結合するために有用な基、高分子、またはN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体を腫瘍に標的化するために有用な実体への結合のようなものであり得る。
【0056】
アミドカルボニルのR基がH、単純なアルキル、または水可溶化基である、本発明は、有用であり得る。なぜなら、本発明のN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体は、好ましい治療指数を有するからである。本実施例は、本発明のN,O−キレートが低い毒性および良好なインビトロ活性を有することを示すので、このような単純な低分子バージョンのN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体は、有用であり得る。これらのO,O−キレートの対応物は、生物学的活性を有することが公知であり、そして本発明は、O,O−Ptアミドマロネートキレートが生理学的条件下で迅速にN,O−Ptキレートに転化することを示す。水可溶化基をR基としてかまたはR基の一部として組み込むことによって、より好ましい処方物および投薬が達成され得る。このような水可溶化基としては、炭水化物、ポリエチレングリコール、四級アミン(すなわち、ベタイン)および当業者に公知の他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
アミドカルボニルのR基がポリマーである、本発明は、有用であり得る。なぜなら、このポリマーが、EPR効果による腫瘍の標的化を提供し得、そして水溶性を増加させ得るからである。このポリマーは、合成物または天然物であり得る。合成ポリマーとしては、ポリアクリルアミド(ポリメタクリルアミドを含む)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール(直鎖または分枝鎖)およびポリアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。ポリアミノ酸としては、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、およびポリリジンが挙げられる。これらのポリアミノ酸におけるポリマー骨格は、αアミン基およびαカルボキシル基のアミドであっても、側鎖のカルボキシルまたはアミン基とのアミドであってもよい。他のものが、当業者に明らかであり得る。天然ポリマーとしては、アルブミンのようなタンパク質、およびヘパリン、コンドロイチン6−硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン、キトサンのような多糖類などが挙げられる。他のものが、当業者に明らかであり得る。各ポリマー鎖は、1つ以上の白金キレートに結合し得る。ポリマーとアミドマロネート基との間の連結は、ジカルボン酸(例えば、コハク酸)を使用してポリマーのアミン基とアミノマロン酸のアミンとの間を架橋して、ポリマーのカルボキシル基をアミドマロネートで置換することによるか、またはハロゲン化アルキル置換基を用いて多糖類のヒドロキシル基とアミドマロネートとの間にエーテルを形成することによって、作製され得る。他の可能性が、当業者に明らかであり得る。
【0058】
アミドカルボニルのR基が、N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体を腫瘍に対して標的化するために有用な基を含む、本発明は、本発明の錯体の治療指数をさらに増加させるために有用であり得る。標的化剤としては、モノクローナル抗体、ペプチド、ステロイド、ソマトスタチンアナログ、葉酸の誘導体およびアナログ、レクチン、ならびにポリアニオン性多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のこの特定の範囲内で、本発明のN,O−アミドマロネートジアミン白金(II)錯体と標的化基との間に、共有結合が形成される。次いで、このような標的化錯体が患者に投与される場合に、この標的化剤は、本発明の錯体を腫瘍に指向する。これは、本発明の白金錯体の殺腫瘍効果を増加させ、そして全身毒性を減少させると予測される。このような標的化された錯体の1つの例は、葉酸のγ−カルボキシレートをジエチルアミノマロネートで置換して、葉酸−Ama−diEt種を与えることによって、作製され得る。次いで、この例において与えられる手順に従って、これは葉酸−Ama=Pt(NH3)2N,O−Ptキレートに転化される。この白金は、+2または+4のいずれの酸化状態でもあり得る。
【0059】
1つの好ましい実施形態において、アミドマロネートのアミドカルボニル基のR基は、「ポリ(HPMA)−GG−」であり、Ama基が近位のG(グリシン)に結合している。特に好ましい実施形態において、アミドカルボニルのR基は、25kDaのMWを有する「ポリ(HPMA)−GFLG」である。別の好ましい実施形態は、アミドカルボニルのR基が「ポリ(Glu−Ama)」であるものである。
【0060】
本発明のN,O−アミドマロネートジアミン白金(II)種のアミンは、同一であるかまたは異なり得る。本発明に関して、アミンは、NH3(すなわち、アンミン)、一級、二級、および三級アミンであり得る。これらのアミンは、複素環式および/または芳香族であり得る。図3bは、R’がアルキル基またはアリール基である場合の、2つの一級アミンを有するような錯体を示す;R’がHである場合には、これはNH3すなわちアンミンである。これら2つのアミンは、別個の実体であり得るか、または単一の実体の2つの部分であり得る。二級アミンおよび三級アミンのそれぞれ2つまたは3つのR基は、同じであるかまたは異なり得、n−アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリール、これらの組み合わせおよび当業者に公知の他の類似の基であり得る。また、アミンのアルキル基およびアミンは、これらが白金錯体と適合性であることを条件として、他の官能基をもまた有し得る。このような適合性の基としては、アルコール、エーテル、四級アミン、ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、三級アミド、エステル、および当業者に公知の他の官能基が挙げられる。非適合性の官能基としては、チオール、チオエーテルなどが挙げられ得る。
【0061】
N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)組成物の特に好ましい実施形態は、2つのアミンがそれぞれNH3部分であるものである。別の好ましい実施形態は、2つのアミンが1,2−ジアミノシクロヘキサンの一級アミンであるものである。特に好ましいものは、トランス−1R,2R−ジアミノシクロヘキサン立体異性体である(Nojiら、1981)。
【0062】
別の好ましい実施形態において、本発明は、精製したN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体を患者に投与することによって、白金感受性新形成を処置するために使用される。この用量は腹腔内(IP)、静脈内(IV)、または経口的に投与され得、IPおよびIVの経路が好ましい。これは、水、等張液、または患者への投与に適した何らかの他の媒体に溶解され得る。
【0063】
本発明の重要な局面は、本発明のN,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体および関連する錯体の純度および同一性がいかにして決定され得るかを教示する。純度および同一性のこのような決定は、安全性および効力を確実にするために、薬学的製品に対して必要である。同一性および純度の決定のための中心的なものは、1H核および195Pt核のNMR分光法である。1H NMRから、小さな水素含有不純物が見られ得、そして0.05%(wt/wt)まで低いレベルまで、同定され得る。この錯体の同一性は、部分的には、1H NMR分光法によって同様に確認され得る。例えば、多くの実施例が、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2調製物の帰属とともに、プロトンピークを列挙する。さらに、O,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートが、5ppmと6ppmとの間のピークの存在から、区別され得る。このピークは、O,O−キレートおよびN,O−キレートに対してそれぞれ5.8ppmおよび5.2ppmの近くに出現する。白金錯体の正確な性質の同定は、195Pt NMR分光法によって最良に決定される。なぜなら、白金共鳴の化学シフトは、その配位子およびそれらの配置に非常に感受性であるからである。アミドマロネートシス−ジアンミン白金(II)のO,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートに関して、共鳴がそれぞれ−1733ppmおよび−2055ppmにおいて出現し、アナログに関しては、対応する共鳴は、それぞれ約−1850〜−1900ppmおよび−2350〜−2400ppmに出現する。また、他の所望でない白金種が見られ得、そして同定され得る。例えば、実施例3におけるポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2のO,O−Ptキレートのスペクトルは、他の2つの白金のピークの存在を示す。
【0064】
他の分析技術が、同一性および純度に関して、NMRスペクトルを補充および確認する。元素分析から、白金、ナトリウム、塩素、およびホスフェートの量が測定される。[実際の結果は、約9%のPtを含み、そして塩素またはホスフェートをほとんどまたは全く含まない、予測されたものに適合する。ナトリウムに関しては、N,O−キレートは、予測された量の1.0%のNaを有することが測定される。O,O−キレートは、ナトリウムをほとんど有さない。]カールフィッシャー滴定を使用して、水を測定する。なぜなら、最終生成物がしばしば凍結乾燥されるからである。ポリマーの大きさおよびその分子量分布を、分析用SECによって決定する。遊離の低分子白金種の量および生理学的条件下(すなわち、PBS37℃)で放出される白金の量を決定する。なぜなら、遊離の白金種は、所望より高い毒性を導き得るからである。例えば、本明細書中に記載されるO,O−Ptキレートは、N,O−キレートよりずっと少量の白金種を放出する。これに対応して、O,O−Ptキレートは、インビボにおいて、本発明のN,O−Ptキレートよりずっと毒性が高い。
【0065】
本発明の別の局面は、本発明の白金錯体が、ヒトへの投与に適切なレベルまで精製されることを教示する。いくつかの滅菌濾過を組み込み、そして全プロセスに沿って重要な工程においては滅菌環境を使用することに、注意が払われる(図5を参照のこと)。このことは、本発明の滅菌された最終生成物を確実にすることを補助する。不純物のレベルは、限外濾過によって、薬学的に受容可能なレベルまで低減される。このことを、塩化物、ホスフェート、および限外濾過可能な白金に関して最終生成物を分析することによって、確認した。いくつかの実施例によって示されるように、このような塩および小さな白金種のレベルは非常に低く、そして十分に、必要な純度レベルの範囲内である。また、TFFの間の精製を、白金、リンおよび塩化物に対する透過性を分析することによって、確認した。
【0066】
本発明の特に重要な局面は、O,O−キレートからN,O−キレートへの転化がいかにして起こるか、およびいかにして起こらないかを教示する。実験DおよびEの結果の比較は、より高い温度のみでは、キレートの転化を引き起こさないことを示す。なぜなら、実験Dにおいては有意なキレート転化が起こらなかったが、実験EにおいてはN,Oキレートへの完全な転化が起こったからである。これらの反応物の両方が、同じ時間だけ加熱された。NaClおよびリン酸緩衝液を含む方のみが、キレート転化を示した。このキレート転化を、図7にグラフで示す。この図から見られ得るように、37℃のPBS中で16時間後にも、依然としていくらかのO,O−Ptキレートが残っている。より高い温度および/またはより長い曝露時間を使用する場合には、O,O−Ptキレートは検出されないであろう。実験EおよびFにおいて得られた結果の比較は、より高い温度が、キレート転化の速度を増大させることを明らかにする。なぜなら、50℃で5時間後には転化は完了したが、37℃で16時間後にはいくらかのO,O−キレートが依然として残っていたからである。実験FおよびGは、類似のイオン強度および温度における、37℃で16時間後に関して、pHが重要であることを示す。より低いpHに曝露された材料は、より高いpHにおけるものより多くのO,O−キレートを含んだ。最後に、実験Hは、低濃度の緩衝液単独の影響が、キレート転化が起こることを可能にすることを示す。
【0067】
本発明の別の教示は、特定の最低濃度のNaClが、アミドマロネート−ジアミン白金(II)錯体のO,O−キレートからN,O−キレートへの効率的な転化のために必要とされることを示す。図10によって示されるように、キレート転化は、より高いNaCl濃度が使用される場合には進行しなかった(10mMのリン酸緩衝液が使用されたことが注目されるべきである。リン酸がキレート転化を引き起こし得ること、およびより高い濃度のリン酸が、調製的なキレート転化を引き起こすために使用されることが、認識される)。
【0068】
本発明の別の重要な局面は、NaClおよびリン酸塩以外の塩類がキレート変換を行い得ることを示す。図11は、ナイトレート、アセテート、およびアイオダイドのような種々のアニオン類がすべてこのキレート変換を行うことを示す。白金に対して良好ではあるが不安定なリガンドであるアイオダイドは、所定の時間で最高のキレート変換を示した。その一方、アセテートは最小を示した。興味深いことに、ナイトレート(白金に対して弱いリガンド)が、非常に効率的なキレート変換を行った。これらの結果は、NaIが多くの有機溶媒中に可溶であるので有用であり、そしてそれは、非水系キレート変換においてキレート変換を行うために用いられ得る。その一方、高濃度のナイトレートは、その他の所望されないリガンドがキレートし得る系においてキレート変換を行うために用いられ得る。同様に、このキレート変換は、重炭酸緩衝液において円滑に進行した。臭化物、硫酸塩、スルフォン酸塩などのその他の金属類のその他の塩もまた、このキレート変換を行うことが予期される。
【0069】
本発明の1つの有用な局面では、4+酸化状態にある白金が、2+状態の代わりに本発明の複合体のコアを形成する。より高い酸化の本発明の複合体は有用であり得る。なぜなら、それらは、置換に不活性であるからである。従って、そうでなければ、分子の別の部分または所望されない生物学的標的と反応し得る、本発明の4+状態にある白金が調製され得る。さらに、4+酸化状態にある白金は、白金化学的療法の経口投与のために用いられている。4+複合体の合成は、過酸化物、過酸、ハロゲン化合物、および当業者に公知のその他の試薬を用いた酸化に際し、対応する2+複合体からであり得る。
【0070】
図10により示されるように、123mMより大きいNaCl濃度は、キレート変換の速度に有意な影響をもたない。しかし、60mM NaClでは、キレート変換の程度は、完全なようではなかった。これは、その他のイオン、特にアニオン類が、キレート変換の速度において役割を演じ得ることを示す。
【0071】
これらの結果は、25kDaのO,O−Ptキレート(0.8−1.0μM Pt)および25kDaのN,O−Ptキレート(3.4μM Pt)に対するIC50値、ならびにシスプラチン(0.5μM Pt)およびカルボプラチン(2.4μM Pt)のそれらが、同じ低マイクロモル濃度範囲に入ることを示す。これは、このインビトロアッセイにより示されるように、これらの試薬のすべてが類似の細胞障害性能力を提示してB16F10メラノーマ細胞の増殖を阻害することを示す。このアッセイはさらに、このポリマーの分子量が実質的に増加するとき、この細胞障害性能力が保持されることを示す。なぜなら、45kDaのO,O−Ptキレート(1.0μM)および90kDaのO,O−Ptキレート(0.9μM)もまた、この低範囲内に入るからである。従って、対応するより大きな分子量アナログのN,O−Ptキレートは、それらの高いインビトロ細胞障害性を保持し得ることが予測される。対照的に、このアッセイは、より大きな分子量の非白金化ポリマーの細胞障害性は非常に低い(大きさでコントロール値に匹敵する)ことを示す。これらのデータは、新たに産生されたアナログを、インビボ評価により関与させる前に、高細胞障害性能力を保持することに対して慣用的にスクリーニングするための、このインビトロ系の有用性を示す。
【0072】
本発明の1つの好適な実施形態において、分子量における広範な分布をカバーする置換されたHPMAキャリアへの白金の結合は、代表的な哺乳動物腫瘍細胞系において、従来の抗腫瘍白金薬剤により所有される細胞障害性に等しいか、またはそれより大きい、実質的な細胞障害性活性を、これらキャリアに与える(表3)。対照的に、これもまた分子量における広範な分布をカバーする置換されたHPMAは、そのような細胞障害性活性はない(表3)。本発明の1つの好適な局面は、このような上記細胞障害性活性が、所望のように、部分的には、上記広範な分子量分布を有する代表的な置換されたHPMAへの、O,O−、N,O−、およびDACH連結白金成分からなる、広範な種類の白金複合体により与えられるという点でさらにより広範に証明される。
【0073】
本発明の1つの好適な実施形態では、代表的なO,O−Ptキレートの好適なN,O−Ptキレートへの変換は、予期されないように、かつ所望のように上記代表的なN,O−Ptキレートに、顕著な耐性の増大を付与し、それによって、所望されるように、顕著により高い用量の治療的抗腫瘍白金成分の全身投与を可能にする(表4)。
【0074】
本発明の1つの好適な実施形態では、従来薬剤(3mg/kgのシスプラチン)と比較して、顕著に有利な治療指標は、ポリマーキャリアへの代表的な白金複合体の結合により達成される(17.5mgPt/kgで投与されるN,O−Pt複合体の実質的により低い全身障害性)。ここで、両方の治療養生法は、生理食塩水コントロール群の増殖と比較して同程度の腫瘍増殖減少を与える(図12)。
【0075】
図13に示される結果は、本発明の1つの好適な局面をさらに示し、ここでは、抗腫瘍活性が、ポリマーキャリアに連結された治療的白金複合体から得られることが広く期待される。この例では、代表的なO,O−Ptキレートの活性が、生理食塩水コントロール群の腫瘍増殖に対して腫瘍増殖阻害を生じることが示される。上記O,O−Ptキレートにより与えられるこの増殖阻害は、従来のシスプラチン療法のそれより有意により明白ではない。図12に示されるN,O−Ptキレートにより与えられるより好ましい腫瘍増殖阻害活性をともに考慮すると、O,O−Ptキレートのそれに対するN,O−Ptキレートの予期せぬ明白な活性が強力に示される。
【0076】
本発明の1つの好適な実施形態では、強力かつ予期せぬ治療利点が、腫瘍増殖阻害活性において、毎日の×5(qd×5)養生法について、代表的な従来の白金薬剤(シスプラチン)に対する比較により(両者は、最大許容用量で投与される)、上記N,O−Ptキレートによって付与される(図14)。
【0077】
本発明の1つの好適な実施形態では、上記N,O−Ptキレートは、先の例(図12−15)の実質的に異なるB16メラノーマモデルに対して、ヒト扁平上皮乳頭腫瘍細胞異種移植片における広範かつ予期せぬ範囲の腫瘍増殖活性を与えることが強力に示された(図15)。この代表的なヒト異種移植片モデルでは、上記N,O−Ptキレート65または400mgPt/kgで、等張グルコースコントロール群の腫瘍増殖に対し、従来の白金薬剤(カルボプラチン)により与えられる強力な活性に相当する活性を与えた。本発明のさらなる好適な局面では上記N,O−Ptキレートの65mgPt/kgの用量で、65mgPt/kgのカルボプラチンの投与から生じる障害性、またはより高い用量400mg Pt/kgの上記N,O−Ptキレートの投与から生じるそれより実質的に少ない全身障害性が観察される。
【0078】
(用語の定義)
用語「精製された」は、1つの化学的形態において、95%以上の白金が存在し、しかも反応物質、白金以外の金属のキレート、副産物、塩、遊離リガンド、および/または分解産物(もしあれば)のようなその他の所望されない物質が、全体の1%(wt/wt)を超えないように低減され、そしてここで、このような不純物の任意の1つが0.5%より多くない複合体をいう。癌を治療する目的に、動物またはヒト被験体にこの精製された白金複合体を投与するために、この精製された白金複合体は、この精製された白金複合体の安定かつ薬学的に受容可能な処方物を提供するために安全と一般にみなされる認可された薬学的賦形剤および材料と処方され得る。
【0079】
治療的に効果的な量は、腫瘍後退を引き起こす量である。これは、1mg/kg〜1gm/kg体重であると考えられる。
【0080】
用語アクリルアミドポリマーは、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドを含む。
【0081】
用語「複合体」は、中心の金属原子がリガンドにより取り囲まれる種を示す。
【0082】
キレートは、複合体の金属原子と環を形成するリガンドをいう。
【0083】
用語「アミン(ammine)」はNH3をいい、その一方用語「アミン(amine)」は、NH3、1級、2級、3級アミンを含み、それらは、脂肪族、芳香族、および/または異環であり得る。
【0084】
用語「アマ(Ama)」は、文脈に応じてアミノマロネートまたはアミドマロネートをいう。用語「アミドマロネート」は、2−アミノマロン酸のアミドをいう。それは、酸または塩形態であり得る。
【0085】
腫瘍を「標的するために有用な」群の本発明の複合体は、その他の組織より腫瘍に活性薬物のより多くを送達するものである。このような標的化は、EPRにより得られる受動的標的化、または抗体、レクチン、葉酸などへの接合により示されるような能動的標的化を含む。
【0086】
用語「ポリマー結合N,O−アミドマロネート−ジアミン白金(II)複合体」は、ポリマーに共有結合している本発明の複合体をいう。請求項4の「カチオン」は、H+、アルカリ、アルカリ土類、およびアンモニウムカチオンをいう。用語「アミノ酸」は、天然および非天然αアミノ酸、ならびにβアラニン、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、p−アミノ安息香酸などのようなアミノ酸を含む。
【0087】
用語「近位端」は、ポリマーバックボーンの近傍に連結していないオリゴペプチドリンカーの端部をいう。
【0088】
葉酸誘導体は、葉酸と本発明の複合体のような目的の別の分子との結合体である。葉酸アナログは、メトトレキセート、アメトプテリン、およびプテリンカルボキシレートのような葉酸の近縁化学的関連物の部分である。
【0089】
用語「ポリサッカライドの側鎖」は、アミドマロネートを形成するため、またはアミドマロネートへの連結の部分として有用な官能基をいう。当業者にとって、カルボキシレート、アミンおよびヒドロキシ基でさえ、アミドマロネートを付着すめために用いられ得る。1つ以上の白金複合体が、この側鎖により各ポリサッカライドに結合され得る。
【0090】
用語「ポリ(Glu)−Ama−diEt」は、カルボキシル側鎖のフラクション(すなわち15%)のみがAma−diEt基により置換されたポリマーを示す。同様に、用語「ポリ(Glu)−Ama=Pt(NH3)2」は、すべてまたは大部分のAma基がcis−ジアミン白金(II)に配位しているO,O−またはN,O−アミドマロネート白金キレートを示す。
【0091】
用語「ポリ(Glu−Ama−diEt)」は、すべてのカルボキシ側鎖がAma−diEt基により置換されたポリマーをいう。用語「ポリ(Glu−Ama)=Pt(NH3)2」は、Ama基のほんの一部分(すなわち10%)がcis−ジアミン白金(II)種に配位しているO,O−またはN,O−アミドマロネート白金キレートを示す。
【0092】
(略語)
Ama、アミノマロネートまたはアミドマロネート;
Ama−diEt、ジエチルアミノマロネートまたはジエチルアミドマロネート;
AP5280、は、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2N,O−キレート 25kDa物質である;
DACH、ジアミノシクロヘキサン;
DCC、ジシクロヘキシルカルボジイミド;
DMAP、N,N−ジメチルアミノピリジン;
DMF、ジメチルホルムアミド;
EDC、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドハイドメロクロライド;
FID、自由誘導減衰;
HOBt、ヒドロキシベンゾトリアゾール;
HPA、(2−ヒドロキシプロピルアミン);
MA、メタクロイル;
MTD、最大許容用量、薬物誘導障害性から生じる死滅がない評価された最高の用量;
N,O−Pt、アミド、カルボキシキレート;
O,O−Pt、ジカルボキシキレート;
ONp、p−ニトロフェノールエステル;
ポリ(HPMA)−GFLG、HPMAおよびgly−Phe−leu−glyのメタクリルアミドのコポリマー;
RCF、相対的遠心力、
TFF、タンジェンシャルフロー濾過;
(材料および方法)
(I.化学品)
シスプラチン、ピリジン、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、ジエチルアミノマロネートHCl塩、ジエチルN−アセトアミドマロネート、AgNO3、NaOH、1R,2R−ジアミノシクロヘキサン、ポリグルタメートNa塩、KI、PBS混合物は、Sigma−Aldrich USAにより供給された。溶媒は、HPLCグレードおよびACSグレードの試薬またはより良好な品質であった。イオン交換樹脂AG501−X8(D)H+、HO−形態、AG50W−X8H+、およびChelex 100 Biotechグレードは、Bio−Rad Laboratoriesにより供給された。クラス1の水は、Milli−Qウォーターシステムから自家調製した。K2PtCl4は、All−Chemie Ltd.Mt.Pleasant,SCにより供給された。フィルターエイド289ポンプは、Schleicher and Schuellからであった。ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt 45kDa、およびポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt 351kDaは、Polymer Laboratories、Shropshire、UKにより合成された。アミノ酸分析およびMALDI−TOF−MSは、Peptide Technologies Corp.Gaithersburg,MDにより実施された。
【0093】
(II.装置および機器)
スケール0.2μmに依存して滅菌濾過を、25mm Whatman GD/XPVDFシリンジフィルター、MilliporeからのGP Expressメンブレンを備えたSteritop媒体ボトルフィルター、またはMilliporeからのPVDFメンブレンを備えたMillipakインラインフィルターのいずれかを用いて実施した。UV光を備えた層流フードを滅菌操作に用いた。pHは、4および10で校正されたゲル電極を備えたBeckman Phi−34pHメーターで測定した。凍結乾燥固体中の静電気は、SIMCO,Hatfield,PAからの静電場メーターによりガイドされるように、AldrichからのZerostat銃により中和した。白金は、3%HNO3中30−60ppmに希釈されたサンプルおよび標準に対し、Jobin YvonJY24分光計を用いるICP−OESにより分析した。水分は、EM ScienceからのAquastar C2000を用いるKarl Fisher滴定により測定した。Na、ClおよびPの元素分析は、Desert Analytics,Tucson,AZにより実施した。1H NMRスペクトルは、Varian,Inc.からの400MHz Unity/Inovaシステム上で得た。195PtNMRスペクトルは、Varianからの300MHz Mercuryシステム上で得た。凍結乾燥は、VirtusからのFreezemobile 12EL上で実施した。
【0094】
(II.パーセントO,O−およびN,O−キレートのためのアリコート精製)
反応混合物の時限アリコート中のO,O−およびN,O−キレートのパーセントは、195Pt NMRスペクトル分析のみを行うべき場合、約100mg、または%Ptおよび%水分が測定されるべき場合、約200mgを生じるよう十分な反応混合物(濃度に依存して4−15mL)を取り出すことにより測定した。このアリコートは、Milliporeからの5kDa Biomaxメンブレンを備えたCentricon Plus−20遠心フィルターを用いる限外濾過により精製した。充填されたデバイスを、推奨されたRCFで約0.5mL未満が残存するまで回転した。アリコートについて報告された時間は、最初の遠心分離が開始した瞬間である。濾液を棄て、保持液を15−18mlの水で希釈し、そしてこのサンプルを先のように遠心分離した。これをもう1回繰り返し、そして保持液を凍結乾燥し、分析用のサンプルを得た。この技法はまた、アミドマロネート基をもつポリマーを含む0.1−2gの反応物の精製のために用いた。
【0095】
(III.PBSからの白金放出)
経時的に放出された小白金種のパーセントは、約30mgのポリマー白金結合体を正確に秤量し、そして15mLのリン酸緩衝化生理食塩水(10mMリン酸、123mM Cl−)中に溶解することにより測定し、そして37℃の水浴中でインキュベートした。示された時間で、2.0mLのアリコートを、3kDaの公称分子量カットオフをもつ遠心フィルター(MilliporeからのCentricon YM−3)にトランスファーし、そして即座に1.5mlより多い濾液が蓄積するまで回転した。これらの時限濾液および当初の溶液は、ICP−OESによって白金を分析した。所定時間に存在する小白金種のパーセントは、式:(濾液中のPt ppm/ストック溶液中のPt ppm)*100により決定した。
【0096】
(IV.サイズ排除クロマトグラフィー)
N,O−Ptキレートを、35℃のカラムオーブン内に2つのPL Aquagel−OH混合型の8μmカラム(Polymer Labs製)およびRI検出器を備えるHPLC装置から構成されるSECシステムにおいて分析した。移動相(これは、MeOH/H2Oと10.0mMのLiClO4との35/65混合物からなる)を、1.0mL/分の流速でポンプ注入した。各分析に30分を必要とした。カラムをPEO/PEG標準を用いてキャリブレートし、そして結果を保持時間の逆数の関数としてlog(Mp)の4次多項式にフィットさせた。MwおよびMnについて記録した値は、移動相に溶解した2mg/mLのサンプルの100μlの、3回の測定の平均を示す。O,O−Ptキレートおよびポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを、Mendichiら、1996の方法に従って分析した。
【0097】
(V.タンジェンシャルフローフィルトレーション)
約2gよりも大きいスケールで、O,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートのポリマーを、5kDの見かけの分子量のカットオフ値を有するBiomaxポリエーテルスルホンから作製した0.05〜0.1m2の面積を有する膜を用いるタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)により精製した。濾過の前に、この系を洗浄し、そして推奨される流速で30〜60分間0.1N NaOHをポンプ注入することにより消毒した。腐食物質を取り出し、そして新鮮な1型水(Milli−Q水)を、保持液(retentate)および浸透液(permeate)のpHが中性(pH<8)になるまで循環させた。浸透液の流速を、2.0バールのインレット圧および0.35バールのアウトレット圧で測定した。Milli−Q系由来の新鮮な1型水を、補給水として用いた。
(VI.NMR分析)
195Pt NMRスペクトルを、Bancroftら、1990の方法に従って、5mmチューブ内の、93/7H2O/D2O中の0.70mLの濾過した溶液から得た。十分なサンプル(80〜120mg)を用いて、白金が約50mM以上である溶液を得た。プローブを、各サンプルについて調製する。90°のパルス幅、5.12ミリ秒の取り込み時間、100kHzのスペクトルウィンドウ(spectral window)、および遅延なし、を用いた。トランスミッタ(transmitter)を、O,O−キレートとN,O−キレートとの中間(−1896ppm)に置いた。50,000〜250,000の間の遷移(20〜90分)が、代表的に、35/1を越える十分なs/n比を獲得するために必要とされた。得られたFIDを、平坦なベースラインが得られるまで漸増的に左にシフトさせ、100Hzの線の広幅化を適用し、そして2048を満たすフーリエ変換を適用した後、処理した。積分領域を設定し、そしてスペクトルのベースラインを、VNMRソフトウェアv6.1によるスプラインフィットに供した。サンプルは、95/5H2O/D2O、100mMHCl中のK2PtCl4の100mMのサンプル(−1624ppm)を外部標準とした。これを用いて、90°のパルス幅およびT1もまた測定した。90°のパルス、2T1の取り込み時間および3T1の遅延を用いると、128の遷移は、「gestn」命令を用いる標準サンプルについて、30/1を越えるs/nを与えた。
【0098】
13C NMRスペクトルを、195Pt NMRに用いたのと同じサンプルについて獲得した。0.50秒の取り込み時間、3.0秒の遅延、約70°のパルス幅、および5000〜10000の遷移を、3.5Hzの線の広幅化を適用して、収集した。100を越えるs/nを代表的に得た。水性サンプルは、93/7D2O中の1,4−ジオキサン(67.19ppm)を外部標準とした。他のサンプルは、溶媒ピークを標準とした。
【0099】
1H NMRスペクトルは、TMSまたはTMSPを標準とし、そして標準的パラメーターを用いて獲得した。HODシグナルの前飽和を頻繁に用いた。カップリング定数(J)は、ヘルツである。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、好ましいバージョンおよびこれを作製する方法を含む本発明の実施形態をさらに例示する;しかし、これらの例は、本発明の限定と解釈されない。
【0101】
(実施例1)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(約25kDa)の調製)
オーブン乾燥した、磁性攪拌子を有する1L丸底フラスコに、隔壁(septa)を装着し、そして減圧下で冷却した。一旦、冷却した後、窒素を導入し、隔壁を取り出し、そして29.79g(140.8mmol)のジエチルアミノマロネートHCl塩を添加した。隔壁を再び置き、そして800mLの無水ピリジンをフラスコに挿管注入(cannulate)した。溶解後、50gのポリ(HPMA)−GFLG−ONp(米国特許第5,965,118号の化合物I、図1A)の3分の1を添加した。ほぼ溶解したときに、50gのONp−ポリマーの、次ぎの3分の1を、上記のように導入した。この手順を、50gのONp−ポリマーの全てが添加されるまで繰り返した。
【0102】
反応の程度を、C18カラム、316nmのUV検出、およびpH4.5/MeCN移動相を用いて、遊離および総量のp−ニトロフェノールについて、HPLCアッセイによりモニターした。アリコートを、塩基加水分解(pH=12、5分)の後、遊離のONpおよび総量について分析した。約23℃で攪拌をしながら20〜24時間後、反応が図6に示されるように完了したことを見出した。
【0103】
反応混合物を、水浴中で3時間40〜45℃に加熱し、室温に冷却し、そしてピリジンを40℃未満で、減圧除去した。残渣を、無水EtOHに溶解して、25%wt/vol.の溶液を得た。粗精製物を、2.5Lの乾燥EtOAcおよび0.5Lのジエチルエーテルを用いて沈殿させた。混合物を、3〜5時間攪拌して、次いで、中目のガラスフリット(medium glass frit)を介して濾過した。残渣を、100mL未満のエーテルを用いて3回洗浄し、そしてラバーダム下で乾燥して、57〜59gの淡黄色固体を得た。この固体を、500mLのEtOHに溶解し、そして1gのろ過ケーキあたり3.1gのAG501−X8(D)IX樹脂(H+および−OH形態)を添加した。混合物を2.5時間穏やかに攪拌し、次いで、ろ過して、樹脂を取り除いた。EtOHの容量を、25%(wt/vol.)溶液まで減少させ、そして上記のように沈殿させた。純粋な生成物を収集し、そして上記のように洗浄して、45〜46g(約90%)の淡黄色固体を得た。この物質の1H NMRスペクトルは、Ama−diEt基に特徴的なピークを含み、1%未満のEtOHおよびEtOAcの各々を除いて低分子は無かったことを示した(Pinciroliら、1997):アミノ酸分析(gly:HPA:leu:pheのモル比):3.1:7.1:1.0:1.2;1H NMR(D20)δ7.2−7.4(br s,5,ArH),4.66(br s,1,α−H−phe),4.31(br s,5,α−H leu,&OCH2CH3),4.1−3.8(高いおよび低いm,約13,−NHCH2CH(OH)CH3および−NHCH2CO2−)3.3−2.9(m,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,−CH2−(ポリマー骨格),CH2&CH(leu)),1.20(br s,約31,−NHCH2CH(OH)CH3,および−OCH2CH3),0.99(s,CH3−(ポリマー骨格)),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3)。
(実施例2)
(シス−ジアミンジアクア白金(II)ジニトレートの調製)
シスプラチン(8.996g、29.98mmol)、AgNO3(9.959g、58.62mmol)、3−5滴の5%HNO3、および190mLの水を、ホイルで覆った低化学作用性メディウム瓶中で約23℃で一晩攪拌し、次いで60〜65℃で3.5時間加熱した。室温まで冷却後、混合物を0.22μmフィルターを介してろ過した。pHは約2であった。PtおよびAg分析(ICP−OES)は、代表的に、約15,000〜25,000ppmのPtおよび4〜14ppmのAgを含むことを示した。各調製物を、Ptについて分析し、そして使用の直前に55℃にて5分間過熱し、次いで、室温まで冷却した。
【0104】
シス−ジアミンジアクア白金(II)ジニトレートのジ−15Nイソトポリペプチドマーの調製は、195PtNMRの−1582ppmのトリプレットを示した。これは、Appletonら、1989により報告された−1580ppmの文献値に厳密に一致する。
(実施例3)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2O,O−キレートの調製)
(1.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtの加水分解)
攪拌子を有する1Lメディウム瓶において、45gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(19.35mmol Ama−diEt残基)を200mLの水に添加した。激しい攪拌の後、135mlの水を添加して、12〜13%(wt/v)混合物を得た。1〜2時間の溶解の際、27mL(54mmol)の2N NaOHを添加して、pHを12.5〜12.7に上昇させた。pHを30分間、この範囲に維持し、次いで、45gのAG501−X8(D)IX樹脂(H+および−OH)を添加した。pH7未満のとき、樹脂を滅菌ろ過により取り出した。濾液のpHを2N NaOHを用いて7.6に上昇させて、ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−(Co2−Na+)の溶液を得た。
(2.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2、O,O−キレートの調製)
実施例3のポリ(HPMA)−GFLG−Ama−(Co2−Na+)2のpH=7.6溶液に、実施例2に従って調製したシス−[Pt(NH3)2(H2O)2]2+・2NO3−の、199mLの590.9mM(22,940ppm Pt)溶液を一度に加えて、5.0±0.1のpHを有する反応混合物を得た。一晩の攪拌の間、pHを約4.2まで下げ、そして少量の沈殿を形成させた。16〜18時間後、17gのChelex 100樹脂を添加し、そして1.5時間攪拌した。ろ過の前に、約0.5gのフィルター助剤パルプを添加し、そして分散させた。混合物を粗目のガラスフリット介してろ過した。約125mgを含むこの濾液のアリコートを取り出し、0.2μmの膜を介してろ過し、そして遠心分離限外濾過により精製した。保持液を凍結乾燥して、約110mgを得た。あるいは、反応混合物を、実施例4に記載されるように、TFFにより精製してもよい。1H NNM(D2O)δ7.6および7.55(br s,交換,NH),7.4および7.3(br s,5,ArH),5.9(br s,部分的に交換,0.2,NH−Ama)4.65(br s,1,α−H−phe),4.37(br s,1,α−H−leu),4.05(sh,NH3またはCH2(gly)),4.1−3.8(高いおよび低い,約13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(brm,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,−CH2−(ポリマー骨格),CH2&CH(leu)),1.20および1.19(s,約27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,CH3−(ポリマー骨格),0.9(sh,6,leu−CH3);13C NMR(93/7 H2O/D2O)δ180.1,179.8,179.6,175.0,174.2,173.3,171.5,171.1,170.7,136.6,129.8,129.4,127.8,66.5,66.3,59.6,55.6,54.7,53.0,47.9,46.7,46.0,45.6,43.1,40.5,37.8,24.9,23.1,21.6;195Pt NMR(93/7 H2O/D2O)δ−1587,−1733,−2020,および−2056(それぞれ、1:38:1:4の面積比を有する)。分析は、この物質が、約9%のPt、5〜10%の水、および0.02%Naを含むことを示す。
(実施例4)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2、N,O−キレート(AP5280)の調製)
(1.O,O−キレートからN,O−キレートへの転換)
実施例3からのChelex100のろ過により約1Lの濾液を得た後、溶液を、NaClおよび75mM リン酸(pH7.4)中で、5.85g(100mmol)のNaCl、16.35g(61mmol)のNaHPO4・7、および1.93g(14mmol)のNaH2PO4を添加することにより100mMにした。pHを、1N NaOHまたは5%HNO3を用いて7.4に調整した。この溶液をろ過し、そして0.22μmの滅菌膜を介して、滅菌メディウム瓶へと、同じ濃度の緩衝液を用いて洗浄して、1.5Lの溶液を得、そして0.22μm膜スクリューキャップを用いてキャップした。この溶液を水浴で37〜38℃に温め、次いで、オーブン中で22時間、37℃に置いた。この時点での、限外濾過により精製したアリコートの195Pt NMR分析は、白金キレートが、95%以上のN,O−キレートおよび5%未満のO,O−キレートであることを示した(図7を参照のこと)。
(2.N,O−キレートのTFF精製および凍結乾燥)
上記からの1.2LのN,O−キレートを、TFFにより方法の節に記載のように精製した。保持液(透明な暗赤色溶液)を、滅菌ろ過し、そして凍結乾燥して、41.4g(92%)の赤褐色の固体を得た:%Pt=7.9±0.15%,5.6%,1.07%Na,<.05%P,0.07%Cl;1H NMR(D2O)δ7.4および7.3(br s,5,ArH),5.23(br s,部分的に交換,CH(Ama)),4.65(br s,1,α−H−phe),4.37(br s,l,α−H−leu),4.05(sh,NH3またはCH2(gly)),4.1−3.8(高いおよび低いm,約13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(m,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,−CH2−(ポリマー骨格),CH2&CH(leu)),1.20および1.19(s,約27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,CH3−ポリマー骨格),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3);13C NMR(93/7 H2O/D2O)δ186.5,185.0,180.1,179.9,179.6,176.3,175.2,175.0,174.6,174.4,174.0,173.9,173.2,171.4,171.0,136.6,129.8,129.4,127.8,71.0,66.5,66.3,55.6,54.7,52.8,47.9,46.0,45.6,41.8,40.5,37.9,24.8,23.1,21.5,20.9,20.7,18.7,17.3;195Pt NMR(93/7 H2O/D2O,64.4MHz)δ−1733(v br s,O,O−キレート),−2056(s,N,O−キレート),O,O−対N,Oの比は、それぞれ、<5:>95;SEC Mp=24.5,MW=24.3kDa,M=15.7
kDa、およびMw/Mn=1.55;Pt放出(PBS中、37℃,0.6%(3h),2.0%(24h))。
【0105】
(実施例5)
(O,O−キレートの形成)
実施例3の白金処理(platination)反応の間の有意なO,O−Ptキレートの形成を、上記に記載されるアリコート精製および195Pt分析を用いて研究した。このような研究の1つからのデータのプロットを、図8に示す。示されるように、反応は、最大量の、90%のO,O−キレート(1時間)を用いて、迅速に進行した。反応が進行した場合、O,O−キレートの量は減少し、そしてN,O−キレートの量は増加し、その結果、20時間で、80%のO,O−キレートおよび20%のN,O−キレートが存在する。従って、O,O−キレート物質を必要とする場合、TFF精製(実施例4)は、シス−ジアミンジアクア白金(II)カチオンの添加の約1時間後に開始するべきである。
【0106】
(実施例6)
(実施例4の条件下でのO,O−PtキレートからN,O−Ptキレートへの転換の時間経過)
実施例4に記載のキレート転換の間、アリコートを、種々の時間間隔で得た。これを、遠心分離限外濾過で直ぐに精製し、そして凍結乾燥した。これらを引き続いて、93/7H2O/D2O中に新たに溶解し、そして195Pt NMR分析により分析した。ピーク面積比を、各時間点でのスペクトルから獲得した。これを、次いで、%N,O−キレートに変換し、そして図9にプロットした。アリコートの組成は、少なくとも24時間安定であった。
【0107】
(実施例7)
(O,O−キレートの選択的形成)
O,O−キレートを選択的に調製する方法を、アミドマロネート基あたりのシス−ジアミンアクア白金(II)カチオンの当量を変化させた場合に観察した。各反応A〜Cは、2.0gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを用いて開始した。Ptの数が等しい場合を除いて、反応を実施例3のように行った。反応混合物を凍結乾燥し、そして同じSephadex G−10カラム(2.5x60cm)を用いてSECにより精製した。表1に示すように、1当量未満のPtを用いた場合、2当量の白金処理剤を用いた場合よりも、より高い比率のO,O−キレートを見出した。
【0108】
(表1.異なる当量のAma基あたりのPtでの白金処理の間のO,O−キレートおよびN,O−キレートの形成の%)
【0109】
【表1】
(実施例8)
(O,O−キレートからN,O−キレートへの変換:pH、温度、および緩衝液の効果)
実施例3に記載される調製物から単離し、そしてTFFまたはSECにより精製した有意なO,O−キレート物質を、実施例4において用いた温度、緩衝液、およびpHから変更した温度、緩衝液、およびpHに供した。代表的には、10mg/mLの濃度のポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2の有意なO,O−Ptキレートを用いた。結果を表2に示す。
【0110】
(表2.実施例4のO,O−キレートのN,O−キレートへの転換の程度に対する温度、緩衝液、およびpHの研究からの結果)
【0111】
【表2】
aリン酸塩緩衝化生理食塩水は、10mMのリン酸塩、100mMのNaCl、および2.7mMのKClであった
(実施例9)
(PBS中でのO,O−キレートからM,O−キレートへの転換:Cl−濃度の効果)
O,O−キレートからM,O−キレートへの転換の割合に対する種々の塩化物濃度が有し得る効果を調べ、そしてこれらの結果を図10に示す。約1gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2主要O,O−キレートを、10mMリン酸塩緩衝液(pH=7.4)に、10mg/mLで溶解し、そして37℃で放置した。1:05時間後、アリコート(10mM Phos.)を取り、そしてこの溶液の残りを、十分なNaClを含む4つの容器に分配して、60mM、123mM、250mM、および500mMのNaClを得た。1.5時間後(10mMリン酸塩緩衝液に溶解して2;35時間後)、これらのアリコートを、遠心限外濾過によって精製し、そしてN,O−キレートの%を、195Pt NMR分光法によって決定した。
【0112】
(実施例10)
(PBS中でのO,O−キレートからN,O−キレートへの転換:他のアニオンの効果)
塩化物アニオンは、白金(II)に対する非常に弱いかまたは非常に強いリガンドのいずれでもないので、塩化物より弱いかまたは強いリガンドのO,O−キレートからM,O−キレートへの転換に対する効果を調べた。実施例9で使用されたO,O−キレートの同じ10mMのリン酸塩(pH=7.4)溶液を使用して、NaNO3、NaOAc、およびNaIの123mMの溶液を作製した。これらのリガンドは、各々、白金(II)種に対して非常に弱いリガンド、強いリガンド、および非常に強いリガンドである(Appletonら、1984)。
【0113】
(実施例11)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt=DACH,O,O−キレートの調製)
(1.シス−ジアクア−1R,2R−DACH白金II(シス−(H2O)2Pt−lR,2R−DACH)の調製)
Gandolfi(Gandolfiら、1987)の方法を使用して、シス−ジアクア−1R,2R DACH白金(II)を調製した。125mLのErl.フラスコ(3.65g(8.79mmol)のK2PtCl4および37mLの水を含む)を加温して、赤茶色の溶液を得、これに6mLの水中の5.84g(35.2mmol)のKIの溶液を添加して、暗赤色の溶液を得た。周囲温度に冷却する際に、0.962gの1R,2R−ジアミノシクロヘキサンを添加し、そして黄色沈澱が直ちに形成された。25℃での3時間の攪拌後、この混合物を4℃で一晩放置した。この沈澱を回収し、そして冷水、EtOH、およびエーテルで洗浄して、4.98g(97%)の(シス−I2Pt−1R,2R−DACH))を得た。次に、1.00g(1.776mmol)のシス−I2Pt−1R,2R−DACH、0.5898g(3.472mmol)のAgNO3、および16mLの水を、遮光された容器内で組合せ、そして周囲温度で一晩攪拌し、次いで60〜65℃で3.5時間攪拌した。周囲温度への冷却の際に、AgClを濾過によって除去し、そして少量の水で1回洗浄した。濾液のICP−OESによる分析は、それが、13,500ppmのPt(69.1mM)シス−(H2O)Pt−1R,2R−DACHを含むことを示した。
【0114】
(2.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt=DACH,O,O−キレートの調製)
出発物質である2.80gのポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(1.232mmolのAma−diEt基)を加水分解し、そして中和して、実施例3に記載されるようなポリ(HPMA)−GFLG−Ama−(CO2Na)2のpH=7.6の溶液を得た。この溶液に、1.48mmolのシス−(H2O)2Pt−1R,2R−DACHジニトレート塩を上記からの水溶液として添加し、そして周囲温度で一晩攪拌した。この反応混合物は沈澱を含み、この沈澱を、0.1gのフィルター補助パルプの添加の後に滅菌濾過によって除去した。次いで、この反応系の1/3を、上記のように、0.3gのChelex樹脂で90分間処理し、滅菌濾過し、次いで遠心限外濾過によって精製した。このサンプルを凍結乾燥して、0.71グラムの赤茶色の固体を得た。8.7%のPt、4.2%のH2O;1H NMR(D2O,400MHz)7.7および7.6(br s,〜5,NH),7.4および7.3(br s,5,ArH),5.86(s,1.6),4.65(br s,1,αH−phe),4.39(br s,1,αH−leu),4.1−3.8(br m,4,−NHCH2CO2−)3.95(br s,9,NHCH2CH(OH)CH3,),3.35−2.9(m,20,NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.6−2.3.(br s,N−CH−DACH),2.25−1.2(m,ポリマー骨格の−CH2−,leuのCH2&CH,およびDACH),1.45−0.8(br sおよびm,〜97,−NHCH2CH(OH)CH3,ポリマー骨格のCH3−,leu−CH3,およびDACH);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ180.0,175.2,174.1,173.3,171.8,170.7,136.8,129.9,129.5,128.6,128.0,66.5,66.3,63.4,55.5,54.7,52.8,47.9,46.7,46.0,45.6,43.5,40.5,37.4,32.4,24.8,23.2,21.5,20.9,20.8,18.6,17.6,および17.2;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ約−1900(v br s,かろうじて認知可能,O,O−Pt=DACH,−);PBS中でのPt放出,37C:3時間で6.0%,24時間で10.9%。
【0115】
(実施例12)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt=DACH,N,O−キレートの調製)
実施例11からの反応混合物の残りの2/3を0.6gのChelex樹脂と共に、90分間攪拌し、そして次いで滅菌濾過した。この透明な溶液を、110mMのNaClおよび80mMのリン酸塩、ならびにpH=7.4にした。これを、37〜38℃に22時間維持し、次いで遠心限外濾過によって精製し、そして凍結乾燥して、1.33gの赤茶色の固体を得た。8.1%のPt、7.1%のH2O;1H NMR(D2O,400MHz)7.4および7.3(br s,5,ArH),5.17(s,0.3),4.65(br s,1,αH−phe),4.38(brs,l,αH−leu),4.1−3.8(br m,4,−NHCH2CO2−)3.95(br s,9,−NHCH2CH(OH)CH3,),3.35−2.9(m,20,NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.6−2.2.(br m,N−CH−DACH),2.25−1.2(m,ポリマー骨格の−CH2−,CH2,leuのCH,およびDACH),1.45−0.8(br sおよびm,〜100,−NHCH2CH(OH)CH3,ポリマー骨格のCH3−,leu−CH3,およびDACH);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ186.8,185.3,180.0,175.1,174.6,174.1,173.5,171.5,171.1,136.7,129.9,129.5,127.9,70.2,66.5,66.3,64.2,63.3,61.0,55.6,54.7,52.9,47.9,56.7,46.0,45.6,44.2,43.3,41.2,40.5,37.9,32.7,24.8,24.6,23.1,21.5,20.9,20.7,18.6,17.3;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ −2293,−1900にピークなし,および他のピークなし。PBS中でのPt放出,37℃:3時間で2.0%、24時間で2.1%。
【0116】
(実施例13)
(ポリ(グルタメート)−Ama−diEtの調製)
Li(Liら、1998)の手順を適合して、ポリグルタメートの遊離カルボキシレートの約15%を置換した。0.5g(3.29mmolの−CO2基)のポリグルタメートおよび攪拌子を含むボトルに、104mg(0.493mmol)のジエチルアミノマロネートHCl塩、3mgのDMAP、および10mLの無水DNM(HPLCグレード、4Aシーブスで>48時間)を、ドライボックス中で添加し、そして攪拌して、濁った混合物を得た。次いで、315mg(1.36mmol)のDCCを添加し、ボトルの口に隔壁を挿入し、エーテル中の1.0M HClの2mLを添加し、そしてこの混合物を周囲温度で一晩攪拌した。その後、約15mLのCHCl3を添加し、そしてこの濁った混合物を、3850RCFで15分間遠心分離した。上清を破棄し、そして白色のゲル物質を2.5%のNaHCO3と共に30分間攪拌した。この混合物を前のように遠心分離し、そして上清を凍結乾燥して、1.91gの白色固体を得、この固体の1H NMRは、DMF、EtOH、DCC/DCUの存在、ならびにポリグルタメートおよびジエチルアミドマロネート、ならびにジエチルアミノマロネートのピークを示した。(4.3ppm(gluのα−CHおよび−OCH2CH3)および2.4ppm(gluのCH2)でのピーク面積は、約1:1であり、ここでポリグルタメートにおけるのと同様に、それらは各々、1:2である。)この物質を水に溶解し、そして遠心限外濾過によって精製して、216gの白色固体を得、この固体の1H NMRスペクトルは、DCC/DUCの存在を示した。また、D2O中の溶液へのNaODの添加は、ポリ(glu)−Ama−diEt 1gあたり0.67mmolのAma−diEt基に対応するEtOHを遊離する。さらに精製することなく、これを実施例14において使用した。
【0117】
(実施例14)
(ポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2,O,O−キレートおよびN,O−キレートの調製)
(1.ポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2のO,O−キレートの調製)
攪拌子を含む20mLのバイアル中の4mLの水に、実施例13からの188mg(0.126mmol Ama−diEt当量)のポリ(glu)−Ama−diEtを添加した。一旦溶解した後、pHを12.4〜12.8に20分間上昇させ、次いで0.2gのAG−50W−X8 H+ IX樹脂を添加した。2分以内にpHが6に下がった。この樹脂を、粗ガラスフリットを通す濾過によって除去し、次いで濾液を滅菌濾過した。濾液のpHを、新しい2NのNaOHで7.1に上昇させ、そして実施例2に従って調製した、1.3mLの、シス−ジアンミンジアクア白金(II)2NO3−の19,000ppmのPt溶液(0.126mmol)を添加した。これを35分間攪拌し、次いで、上記のように遠心限外濾過によって精製した。18mLに濃縮し、そして各々15mLの水での3回の洗浄の後、この保持液(retentate)を凍結乾燥して、182mgの白色固体を得、この白色固体の195Pt NMRスペクトルは、各々、約1:4の比の2つのピーク、−1595ppmおよび−1732ppmを示した。−1732での主ピークは、シス−ジアンミン白金(II)のO,O−アミドマロネートキレートである。この物質をさらに精製する試みにより、おそらくシス−ジアンミンPtによるグルタメートカルボキシレートの架橋に起因するゼラチン状塊を得、このため、この物質は、実施例4および関連する実施例のキレート転換条件に供された。
【0118】
(2.ポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2のN,O−キレートの調製)
上のポリ(グルタメート)−Ama=Pt(NH3)2,O,O−キレートを、110mMのNaCl、85mMのリン酸塩、pH=7.4にされたサンプルを用いて、実施例4のO,O−キレートからN,O−キレートへの転換条件に供した。38℃で約22時間の後、これを遠心限外濾過によって精製し、そして保持液を、凍結乾燥して、163mgの白色固体を得、この固体は、15.5%のPt(0.77mmol Pt/gポリマー)、0.035%のPを含んだ;186.9,183.6,182.8,182.1(p−glu),180.0,175.3,174.2(p−glu),173.6,172.5,171.0,170.7,155.7,72.1,63.6,62.7,60.4,25.4,54.2(p−glu),53.5,51.6,34.2(p−glu),32.1,31.4,30.8,28.6(p−glu),26.0,25.5,25.0;195Pt NMR(93/3 H2O/D2O)δ 1595 (v br s,22%,(NH3)2Pt(RCO2)および(RCO2,H2Oおよび/またはHO))および−2053(br s,78%,アミドマロネートのN,O−キレート)。
【0119】
(実施例15)
(ポリ(glu−AmadiEt)の調製)
Danishefsky(DanishefsIkyら、1971)の手順を適合して、ポリグルタメートの全てのカルボキシル基を置換した。0.5g(3.29mmolの−CO2Na基)のポリグルタメートおよび攪拌子を含むボトルに、1.39g(6.58mmol)のジエチルアミノマロネートHCl塩、1.89g(9.862mmol)のEDC、0.503g(3.287mmol)のHOBtおよび20〜25mLの無水DMF(HPLCグレード、4Aシーブスで>48時間)をドライボックス中で添加し、そして攪拌して、濁った混合物を得た。周囲温度で一晩攪拌した後、この混合物を150mLの水に注いで、白色固体の沈澱を得た。(4.3ppm(gluのα−CHおよび−OCH2CH3)および2.4ppm(gluのCH2)でのピーク面積は、約1:1であり、ここでポリグルタメートにおけるのと同様に、それらは各々、1:2である。)この物質を、水に溶解し、濾過によって回収し、そして水で洗浄した。減圧下で3日間乾燥した後、0.79g(84%)の固体物質を得た。1H NMR(CDCl3)δ 8.25(v br s,1,NH−glu),7.24
(br s,1,NH−Ama),5.16(d,1,J=5.7,CH−Ama),4.22および4.1(mおよびbr s,OCH2CH3およびCH−gly)2.65,2.33,および2.18(br s,4,CH2CH2−glu),ならびに1.26(br t,6,OCH2CH3);13C NMR(CDCl3)δ 175.9,171.9,166.5,62.4,56.8,56.4,32.5,26.3,および13.9。さらに精製することなく、これを実施例16で使用した。
【0120】
(実施例16)
(ポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,O,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートの調製)
0.79g(2.75mmolのAma−diEt基)のポリ(gluAmadiEt)の、約30mLのEtOHスラリーを、新たな40mM NaOHと合わせた。pHを12.3−12.6に維持し、そして混合物を、加温し、そして30分間超音波処理した。この混合物は多少濁っていた。pHを、1.8gのH+ IX樹脂を用いて、7.26に減少させ、滅菌濾過して、かすかに黄色の溶液を得た。容積を、約30mLに減圧下で減少させ、4.2mLの、シス−ジアンミンジアクア白金(II)ジニトレートの18,400ppm Pt(0.39mmol)溶液を添加して、pH=5.97の溶液を得た。これを、5% HNO3を用いて5.0に減少させ、そして周囲温度で1時間攪拌した。
【0121】
(1.ポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,O,O−Ptキレートの単離)
1時間の攪拌後、ポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2反応混合物のサンプルを凍結乾燥して、90mgの白色固体を得、この固体の1H NMRスペクトルは、67%のみのエチルエステルが加水分解されたことを示した:10.3%のPt;1H NMR(D2O)δ 5.93(s,0.1交換された,CH−ama),4.4−4.1(m,3.4,CH−glu,OCH2CH3、およびNH3?),2.46(br s,2,CH2CH2),2.07(br
s,2,CH2CH2),および1.25(br q,2,OCH2CH3);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ 175.1,175.0,174.8,174.5,173.8,171.1,171.0,170.8,170.5,63.6,60.7,60.4,60.0,53.7,31.9,27.8,および14.0;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ −1734(O,O−Pt,86%)および−2034(N,O−Pt,14%)。
【0122】
(2.O,O−PtキレートからN,O−Ptキレートへの転換およびポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレートの単離)
残り32mLのポリ(glu−Ama)=Pt(NH3)2,O,O−Ptキレート溶液を、207mgのNaCl、76mgのNaH2PO4 1H2O、および588mgのNa2HPO4 7H2Oを添加することによって、110mM NaCl、85mMリン酸塩にした。pHを7.4に調節し、この溶液を滅菌濾過し、そして42℃で16時間インキュベートした。この溶液は、多少濁っていた。次いで、これを再濾過し、次いで遠心限外濾過によって精製した。保持液を凍結乾燥して、約600mgの明るい黄色の固体を得た:11.4%のPt,1H NMR(D2O)δ 5.2(br s,0.1交換された,CH−ama),4.59 (br s,0.2),4.4−4.1(m,2.5,CH−glu,およびOCH2CH3)、4.00および3.85(br s,0.25),2.47(br s,2,CH2CH2),2.06(br s,2,CH2CH2)、および1.25(br q,2,OCH2CH3);13C
NMR(H2O/D2O 93/7)δ 175.1,174.8,174.4,173.7,171.0,170.8,170.5,63.5,63.1,62.7,53.7,32.2,31.8,27.9,14.0;195Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ −1730(O,O−Pt,8%)および−2053(N,O−Pt,92%)。
【0123】
(実施例17)
(N−アセトアミドマロネート=Pt(NH3)2 O,O−キレートおよびN,O−キレートの調製)
20mLのバイアル中で、800mg(3.68mmol)のN−アセトアミドマロネートを、8mLの水および2.0mLの2N NaOHとともに攪拌した。3分以内に、pH=12.6のかすかに黄色の溶液を得た。30分後、H+
IX樹脂を添加し、そしてpHを7.0に下げた。この樹脂を濾過によって除去し、pHを7.5に上げ、そして23.5mLの、シス−ジアンミンジアクア白金(II)ジニトレートの28,375ppmのPt(3.63mmol)溶液。pHを4.4に下げた。2滴の2N NaOHの添加の際に、白色固体を形成した。この混合物を濾過し、そしてサンプルをD2Oにおいて10%にし、そして195Pt NMR分光法によって分析した。−1734のピークのみが明確であった。
【0124】
この濾液を、KIが100mM、そしてKHCO3が50mMになるようにし、そして滅菌濾過した。そのpHは、7.7〜7.9であった。これを、40℃で18時間放置した。形成した橙色の沈澱を濾過によって除去し、そして濾液を減圧下でストリッピングした。残渣を、20mLのアセトンと共に、1時間攪拌した。一部分を濾過し、7%D2Oにし、そして195Pt NMR分光法によって分析した。−2057ppmの1つのピークのみが明確であった。
【0125】
(実施例18)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(45kDaおよび350kDa)の調製)
1.MA−GFLG−Ama−diEtの調製
約25gのMA−GFLG−ONpを、DMF溶液中1.2当量のジエチルアミノマロネートHCl塩、3当量TEA、1当量HOBtで50℃で約16時間処理した。DMFを真空中で除去し、そして残渣をジエチルエーテルでスラリーとし、一晩4℃まで冷却した。生成物を濾過によって採集し、エーテルで洗浄し、そして真空中で乾燥し、MA−GFLG−Ama−diEtを得た。この正体および純度を1H NMRスペクトル法およびHPLCによって確認した。1H
NMR(DMSO−d6)δ8.74(d,1,J=7.3,NH−Ama),8.14(t,1,J=5.9,CH2−gly),8.11(d,1,J=8.2,αCH leu),8.03(t,1,J=8.2,CH2gly),8.01(d,1,J=8.2,NH−phe),7.3−7.0(m,5,ArH),5.70(s,1, =CH2),5.37(t,1,J=1.6, =CH2),5.09(d,1,J=7.3,CH−Ama−diEt),4.53(m,1, pheのαCH),4.32(m,4,OCH2CH3),3.9−3.7(m,3,CH2−gly).3.63および3.59(dd,1,J=16,3,5.8),3.1−3.0および2.83−2.73(m,2,CH2−phe),2.51,(m,3,J=1.7,CH3−C=CH2),1.59(m,1,J=6.5,CH2CH(CH3)2,1.49(t,2,J=7.5,CH2CH(CH3)2),1.216および1.214(2 t,6,J=7.2,OCH2CH3),0.88(d,3,J=6.6,CH2CH(CH3)2),および0.84(d,3,J=6.5,CH2CH(CH3)2)。
【0126】
2.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(約45kD)の調製
コンデンサを伴う容器に、12.7wt%のHPMAモノマーおよびMA−GFLG−Ama−diEtモノマー(90/10比)のそれぞれ、0.6wt%純粋AIBN、10mol% p−ニトロフェノール(全モノマーのうち)、および86wt%アセトンを加えた。混合物を、窒素バブルを用いて30分以上の間脱気し、次いで50℃で65時間加熱した。固体生成物ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtを濾過によって採集し、そしてエーテルで洗浄した。これを約25%wt/volのabs.EtOH中で再溶解し、次いで8容量のEtOAcで沈殿させた。得られた固体を濾過によって採集し、エーテルで洗浄し、そして真空中で乾燥し、約20gのオフホワイト色の粉末を得た。これの1H NMRスペクトルは、25kDa型と非常に類似していた。Mw=44.5kDa、PDI=1.76、バイモーダル(nimodal)。アミノ酸分析:(11mol/mgポリマー)2.7:8.1:0.9:0.9のgly:2−ヒドロキシプロピルアミン:leu:phe(それぞれ);MALDI−TOF−MS(NBAマトリックス) m/z M+40−45kDa、M+2 14−16kDa。
【0127】
(3.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(約350kD)の調製)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtの45kDバッチの手順を、p−ニトロフェノールを省いたことを除いて繰り返した。約25gの白色粉末が得られた。これの1H NMRスペクトルは、ピークはより広いものであったが、25kDa型と非常に類似していた。Mw=351kDa、PDI=3.95、トリモーダル(trimodal)。
【0128】
(実施例19)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2、N,O−キレート 45kDaの調製)
攪拌子を含む250媒体ボトルに、72mLの水および15.5g(6.82mmol Ama−diEt基)のポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEtをそれぞれ添加した。力強い攪拌が確立されると、48mLの水をさらに添加し、そして混合物を約1時間攪拌し、淡紫色の溶液を得た。この溶液に12mLの新鮮な2M NaOHを添加し、そしてpHは12.6に上昇した。pHを30分間12.4〜12.8に維持し、次いで15.4gの混合床IX樹脂(AG 501−X8(D)、H+形態、−OH形態)を添加した。3分後、pHは5.0に低下し、この樹脂を滅菌Steritop 150mLフィルタによる濾過によって除去した。濾液のpHを新鮮な2N NaOHで7.60にまで上げ、そして8.14mmol(64mL、24,200ppm Pt)の新たに調製したジアミン−ジアクア白金(II)溶液を1つ分添加した。添加後、pHは5.1であり、そして一晩攪拌した。その後、pHは、4.42であり、そして5.10g Chelex 100樹脂を添加した。pHは5.33に上昇し、そして混合物を90分間攪拌した。樹脂を粗ガラスフリットによる濾過によって除去し、460mLの溶液を得た。濾液を、2.96g NaCl、1.08g NaH2PO4 H2O、および7.66g Na2HPO4 7H2Oの添加により、NaCl中110mM、ホスフェート中80mMとした。2N NaOHおよび5% HNO3を用いてpHを7.4に調整し、次いでSteritopフィルタを通して滅菌した媒体ボトルに滅菌濾過し、生物学的安全フード内でメンブレンキャップをかぶせた。これを39℃湯浴中に20分間置き、次いでインキュベータオーブン中に37〜38℃で置いた。
【0129】
37〜38℃で22時間後、溶液をTFFによって精製した。この溶液を5%wt/volに濃縮し、7容量の透過液を採集し、次いでこの透過液がわずかに色づいたときに保持液を8〜10%に濃縮した。保持液を、Millipak 20フィルタを通して滅菌した凍結乾燥フラスコに滅菌濾過した。凍結乾燥後、11.2g(66%)のオフホワイト色の固体を得た:8.89% Pt、5.4% H2O、1.03% Na、0.05% Cl、<0.05% P;1H
NMR(D2O)δ7.4および7.3(br s,5,ArH),5.23(br s,部分交換,AmaのCH),4.66(br s,1,α−H−phe),4.37(br s,1,α−H−leu),4.05(sh, glyのNH3またはCH2),4.1−3.8(高いsおよび短いm,〜13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(m,18,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,ポリマーバックボーンの−CH2−,leuのCH2およびCH),1.20および1.19(s,〜27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,ポリマーバックボーンのCH3),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ186.7,71.0,および他のピークは全て実施例4について報告のとおり;196Pt NMR(H2O/D2O 93/7)δ−2055(100%)。
【0130】
(実施例20)
(ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2, N,O−キレート >351kDaの調製)
攪拌子を備えた500mL媒体ボトルに、120mL水および20g(8.80mmol Ama−diEt)ポリ(HPMA)−GFLG−Ama−diEt(351kDa)をそれぞれ添加した。力強い攪拌が確立されると、100mLの水を添加し、そして全てのポリマーが溶解したときに混合物を2時間攪拌し、無色の溶液を得た。pH電極を挿入し、そして14mLの新鮮な2N NaOHを添加した。pHは12.74に上昇し、これを30分間12.4〜12.8の間に保持した。その後、19.9gの混合床(H+形態、−OH形態)IX樹脂(AG501−X8(D))を添加し、そして3分以内に、pHは6に低下した。この混合物をSteritopボトルトップフィルタを通して滅菌濾過し、そしてそのpHを2N NaOHおよび5%HNO3で7.63に調整した。1つ分において、85.5mLの新たに調製したジアミンジアクア白金(II)溶液の24,200ppm Pt溶液(10.6mmol)を添加し、5.02のpHを得た。この溶液は、粒子の大きさに起因してわずかに曇っているようであった。これを室温で一晩攪拌した。この間にpHは、4.25に低下し、そして6.77g Chelex 100樹脂を添加した。pHは5.33に上昇し、そして90分の攪拌後、0.2gのフィルタ補助パルプを添加した。混合物を粗ガラスフリットを通して滅菌濾過した。この溶液725mLを、4.661g(79.8mmol)NaCl、12.24g(45.7mmol)Na2HPO4 12H2O、1.703g(10.1mmol)NaH2PO4 1H2Oのそれぞれの添加により、NaCl中110mMおよびホスフェート中85mMとした。pHを7.4に調整し、次いでSteritopフィルタを通して1L媒体ボトルに通過させた。このボトルをメンブレンキャップで封鎖し、そして湯浴中に40℃で20分間置き、次いでインキュベータオーブン中に37〜38℃で置いた。約22時間後、内容物を上記のようにTFFによる精製に供した。NMR分光法を約50mgで実施した。これは、より濃縮した溶液では粘性でありすぎたからである。保持液の凍結乾燥により、19.9gの白色固体を得た:7.95%Pt,7.0%H2O,1.03%Na,0.09%Cl,<0.05%P;1H NMR(D2O)δ7.4および7.3(br s,5,ArH),5.23(br s,部分交換,AmaのCH),4.65(br s,1,α−H−phe),4.38(br s,1,α−H−leu),4.05(sh, glyのNH3またはCH2),4.1−3.8(高いsおよび短いm,〜13,−NHCH2CH(OH)CH3,−NHCH2CO2−)3.35−2.9(m,18,−NHCH2CH(OH)CH3およびphe−CH2),2.25−1.2(m,ポリマーバックボーンの−CH2−,leuのCH2およびCH),1.20および1.19(s,〜27,−NHCH2CH(OH)CH3),0.99(s,ポリマーバックボーンのCH3),0.93および0.87(shおよびs,6,leu−CH3);13C NMR(H2O/D2O 93/7)δ186.7,71.0,および他のピークは全て実施例4について報告のとおり;196PtNMR(H2O/D2O 93/7)δ−2055(100%).;SECトリモーダル,Mp=468kDa,147kDa Mn=66.3kDa,PDI=13.8;Pt放出:0.68%(3h)、2.28%(24h)。
【0131】
(実施例21)
(O,O−キレートおよびN,O−キレートのインビトロ活性)
組織培養物における活性の特徴づけ。種々のO,O−Ptキレートアナログの相対的細胞傷害性活性を、B16F10メラノーマ細胞の組織培養物を用いるクロノジェニック(clonogenic)(コロニー形成)アッセイによってインビトロで評価した。このようにして、アナログの活性をシスプラチンおよびカルボプラチン(活性のある従来の白金剤)の活性と比較した。N,O−Ptキレートへの変換の効果もまた評価した。簡潔に述べると、細胞を培養皿に播種し、そして付着させた。この培養物を、所望の濃度の試験剤を含有する培地中で7日間インキュベートした。固定後、50より多い細胞を含む細胞塊の数をコロニーとして記録した。各濃度の試験剤を三連でアッセイした。三連の皿のにおけるコロニーの平均数を、コントロール(試験剤なし)の皿におけるコロニーの平均数で割り、各濃度の試験剤について生存値%を得た。試験剤の各々のIC50(増殖の50%阻害を生じる濃度)を、50%生存点をすぐ上回るおよび下回るデータ値を用いて、直線回帰分析を行うことによって決定した。
【0132】
(表3.アミドマロネートのO,O−PtキレートおよびN,O−Ptキレートについてのクロノジェニックアッセイからの細胞傷害性結果)
【0133】
【表3】
(実施例22)
(寛容化および最大耐用量研究)
AP5280(すなわちポリ(HPMA)−GFKG−Ama=Pt(NH3)2)のN,O−Ptキレート形態に対してO,O−Ptキレート形態を比較する単回用量IV研究は、マウスにおける最大耐用量(MTD)がそれぞれ、O,O−Ptキレートについては80〜100mg Pt/kg、N,O−Ptキレートについては400mg Pt/kgであることを示し、これは、安全性領域の増大がポリマー結合N,O−Ptキレートにより与えられることを示す。これらの研究のために、MTDを、マウスの死亡が薬物誘導傷害性から生じなかった、評価した最も高い用量であると定義した。
【0134】
両キレートの多回用量の寛容(いずれかのキレートを毎日5用量与えたB16メラノーマ腫瘍を有する10匹のマウスの群の最大平均体重損失によって表される)を、表1に示す。これらのデータはまた、N,O−PtキレートがO,O−Ptキレートの等価用量(17.5mgPt/kg)で傷害性がないこと、および等価の平均重量損失を生じるためには、N,O−Ptキレートは、実質的により高い用量(>240mgPt/kg)が必要であることを示す。
【0135】
(表4.ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,O,O−およびN,O−Ptキレート、25kDaの毎日5回投与について体重減少平均パーセントとして表されるAP5280の寛容化)
【0136】
【表4】
(実施例23)
(s.c.B16メラノーマモデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレート,25kDa(N,O−Pt)対シスプラチンおよび生理食塩水コントロールの腫瘍増殖阻害を、雌C57BL/6マウスにおいて評価した。N,O−Ptキレートおよびシスプラチンをそれぞれ17.5mg Pt/kgおよび3mg/kgで、qd×5のスケジュールで投与した。このN,O−キレート用量は、そのMTDを十分に下回る。一方、シスプラチン用量は、そのMTDの近傍である。処置群当たり10匹の動物に対し、106のB16F10マウスメラノーマ細胞を右側の背部の横腹にs.c.接種した。移植後6日目を始めとして、毎日、腫瘍の大きさを軽いメトフラン(Methfurane)麻酔下でカリパスによって測定した。生じた腫瘍の重さ(mg)を、式(W2×L)/2(ここで、Wは、短い方の腫瘍寸法の長さであり、そしてLは、長い方の寸法の長さである(mm))によって概算した。腫瘍が50mgより大きな大きさであったとき、各動物において処置を開始した。各研究動物は個々に従い、各動物についての処置の1日目は、腫瘍の大きさが投与の開始を示した日に対応した。全ての試験化合物を、尾静脈を介してIV投与し、そして体重20g当たり0.2〜0.3mLの容量で投与した。投与容量を確立するために投与前に毎日、およびその後研究の終了まで毎日、動物を観察し、そしてその体重を量った。結果を図12に示す。
【0137】
(実施例24)
(s.c.B16メラノーマモデルにおける腫瘍増殖阻害:O,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,O,O−Ptキレート,25kDa(O,O−Pt)対シスプラチンおよび生理食塩水コントロールの腫瘍増殖阻害を、雌C57BL/6マウスにおいて評価した。O,O−Ptキレートおよびシスプラチンをそれぞれ17.5mg Pt/kgおよび3mg/kgで、qd×5のスケジュールで投与した。このO,O−キレート用量は、シスプラチン用量と同様に、そのMTDの近傍である。本研究を実施例23に記載のとおり実施した。結果を図13に示す。
【0138】
(実施例25)
(s.c.B16メラノーマモデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレート,25kDa(N,O−Pt)対カルボプラチンおよび生理食塩水コントロールの腫瘍増殖阻害を、雌C57BL/6マウスにおいて評価した。N,O−Ptキレートおよびカルボプラチンをそれぞれ200mg Pt/kgおよび65mg/kgで、qd×5のスケジュールで投与した。このN,O−キレート用量は、カルボプラチン用量と同様に、そのMTDの近傍である。それ以外には、本研究を実施例23に記載のとおり実施した。結果を図14に示す。
【0139】
(実施例26)
(s.c.扁平上皮細胞異種移植モデルにおける腫瘍増殖阻害:N,O−Ptキレート)
ポリ(HPMA)−GFLG−Ama=Pt(NH3)2,N,O−Ptキレート,25kDa(N,O−Pt)対カルボプラチンおよびビヒクルコントロール(等張グルコース)の腫瘍増殖阻害を、処置群当たり7匹のBALB/c nu/nuマウスの群において評価した。ヒト扁平上皮腫瘍細胞(UMSCC10b)を4つの部位(左側および右側の肩ならびに左側および右側の横腹)に移植した(1部位当たり106細胞)。N,O−Ptキレートおよびカルボプラチンをそれぞれ400mg Pt/kgおよび65mg/kgで単回IP注射として投与した。このN,O−キレート用量は、カルボプラチン用量と同様に、そのMTDの近傍である。腫瘍が50mgの群平均に達したとき、全てのマウスに試験レジメを行った。結果を図15に示す。
【0140】
本明細書中に記載の種々の成分、要素、および組み合わせの構築および操作において、または本明細書中に記載の方法の工程もしくは工程の順序においては、上記の特許請求の範囲において定義されるような本発明の精神および範囲を逸脱することなく、変更がなされ得る。
【0141】
以下の引用文献を、本願を補足する詳細のために、本明細書中に参考として援用する。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
【表7】
【0145】
【表8】
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
【0148】
【表11】
【0149】
【表12】
【0150】
【表13】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−137046(P2011−137046A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−86844(P2011−86844)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2001−550236(P2001−550236)の分割
【原出願日】平成13年1月4日(2001.1.4)
【出願人】(501491044)アクセス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86844(P2011−86844)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【分割の表示】特願2001−550236(P2001−550236)の分割
【原出願日】平成13年1月4日(2001.1.4)
【出願人】(501491044)アクセス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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