説明

NBR組成物

【課題】高価な水素化NBRの代りに廉価なNBRを用い、それの耐圧縮永久歪特性を改善してシール材の加硫成形材料などとして有効に使用し得るNBR組成物を提供する。
【解決手段】NBRに比表面積(BET法)が30〜110m2/g、好ましくは30〜60m2/gのホワイトカーボンを添加したNBR組成物。かかるNBR組成物は、有機過酸化物およびイオウまたはイオウ供与性化合物よりなる加硫系によって加硫される。このNBR組成物は、高価な水素化NBRの加硫成形品に対応する耐圧縮永久歪特性を有する加硫成形品を与えるので、かかる特性が要求されるシール材、例えばOリング、ガスケット、パッキン、オイルシール等の加硫成形材料などとして有効に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNBR組成物に関する。さらに詳しくは、高価な水素化NBRに対応する耐圧縮永久歪特性を有するNBR組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料の耐熱性を向上させる手段として、白色充填剤であるシリカを配合することが知られており、本出願人もかかる方法の提案を行っている。また、それ以外にも、いくつかの提案がなされている。
【特許文献1】特許第3704986号公報
【特許文献2】特開昭61−225243号公報
【特許文献3】特開2004−75831号公報
【特許文献4】特開2005−272580号公報
【0003】
しかしながら、上記特許文献1では比表面積(窒素吸着法による)が200m2/g以下、好ましくは約30〜130m2/gのホワイトカーボンが用いられると規定はされているものの、それは水素化NBRについてであり、他の特許文献については、シリカの比表面積に対する記載は特にみられない。
【0004】
また、天然ゴムまたは天然ゴムに、比表面積が30m2/g以上のシリカ系補強性充填剤、アセチレンアルコール(アルキレンオキサイド付加物)および特定のオルガノポリシロキサンを配合したゴム組成物も提案されており、合成ゴムの例としてNBRや水素化NBRも挙げられてはいるが、その実施例では比表面積が230m2/gの沈降性シリカ(ニップシルLP)が用いられており、比表面積のより小さいものを用いることの意義は強調されていない。
【特許文献5】特許第2674630号公報
【0005】
さらに用途は異なるが、NBRにシリカ(BET法比表面積70〜160m2/g)を添加し、防振ゴム用途に用いるもの、NBR含有ブレンド材にシリカ(BET法比表面積50〜400m2/g)を添加し、ベルトやタイヤ用途に用いるものなども提案されているが、これらは耐圧縮永久歪特性が重要な要因となるシール材用途に向けられたものではない。
【特許文献6】特開2004−217849号公報
【特許文献7】特開2000−281839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高価な水素化NBRの代りに廉価なNBRを用い、それの耐圧縮永久歪特性を改善してシール材の加硫成形材料などとして有効に使用し得るNBR組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる本発明の目的は、NBRに比表面積(BET法)が30〜110m2/g、好ましくは30〜60m2/gのホワイトカーボンを添加したNBR組成物によって達成される。かかるNBR組成物は、有機過酸化物およびイオウまたはイオウ供与性化合物よりなる加硫系によって加硫される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るNBR組成物は、高価な水素化NBRに対応する耐圧縮永久歪特性を有するので、かかる特性が要求されるシール材、例えばOリング、ガスケット、パッキン、オイルシール等の加硫成形材料などとして有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
NBRとしては、一般に結合アクリロニトリル量が約15〜50%、好ましくは約18〜45%で、そのムーニー粘度ML1-+4(100℃)が約40〜90程度のものが用いられる。
【0010】
ホワイトカーボン(補強性シリカ)としては、ハロゲン化けい酸または有機けい素化合物の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOを空気酸化する方法などで製造される乾式法ホワイトカーボン、けい酸ナトリウムの熱分解法などで製造される湿式法ホワイトカーボンなどであって、比表面積(BET法による)が30〜110m2/g、好ましくは30〜60m2/gのものが用いられ、これらは一般にゴム工業用として上市されている市販品をそのまま用いることができる。比表面積がこれより小さいものは、ホワイトカーボンとしての補強性が得られなくなり、一方これより大きい比表面積をもつものは、加硫成形したOリング形状の試験片の圧縮永久歪の値がカーボンブラック配合の場合よりも大きくなってしまい、シリカ添加による耐熱性向上効果がみられなくなる。
【0011】
これらのホワイトカーボンは、NBR 100重量部当り20〜80重量部、好ましくは約30〜60重量部の割合で用いられる。これより少ない配合割合では、目的の一つとする耐熱性の改善効果が達成されず、一方これより多い割合で用いられると、組成物の粘度上昇によって混練が困難となるばかりではなく、耐圧縮永久歪特性の低下を免れない。
【0012】
ホワイトカーボンを配合したNBRは、NBR 100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜5重量部用いられる有機過酸化物によって架橋される。有機過酸化物としては、例えばジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレートなどが用いられる。
【0013】
有機過酸化物と共に、イオウまたはイオウ供与性化合物がNBR 100重量部当り約0.1〜2重量部、好ましくは約0.2〜1重量部の割合で用いられる。イオウ供与性化合物としては、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、4,4′-ジチオジモルホリン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、2-メルカプトイミダゾリン、高分子多硫化物等が用いられる。
【0014】
これらの有機過酸化物とイオウまたはイオウ供与性化合物とは、前者が約50〜99重量%、好ましくは約70〜95重量%の割合で、また後者が約50〜1重量%、好ましくは約30〜5重量%の割合で用いられる。後者の使用割合がこれ以下では、屈曲疲労性の悪いものしか得られず、一方これ以上の割合で後者が用いられると、加硫速度が遅くなり、成形時に所定の加硫度のゴムが得られないようになる。
【0015】
また、受酸剤として、2価金属の酸化物または水酸化物、例えばMgO、CaO、ZnO、Mg(OH)2、Ca(OH)2等が用いられ、あるいはハイドロタルサイトMg6Al2(OH)16CO3・nH2Oが用いられる。これらの受酸剤は、NBR 100重量部当り約3〜15重量部、好ましくは約5〜12重量部の割合で用いられる。
【0016】
NBR組成物中には、以上の成分以外に、それぞれのゴムの配合剤として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルトリメリテートなどの多官能性化合物、カーボンブラックなどの補強剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックスなどの加工助剤、老化防止剤、可塑剤などのゴム工業で一般的に使用されている配合剤が必要に応じて適宜添加されて用いられる。
【0017】
NBR組成物の調製は、インタミックス、ニーダ、バンバリーミキサなどの混練機あるいはオープンロールなどを用いて混練することによって行われ、それの加硫は、射出成形機、圧縮成形機、注入成形機等の加硫プレスなどを用い、一般に約150〜200℃で約3〜60分間程度加熱することによって行われ、必要に応じて約120〜200℃で約1〜24時間加熱する二次加硫が行われる。
【実施例】
【0018】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0019】
実施例1
NBR(バイエル社製品PERBUNAN2845) 100重量部
ホワイトカーボン(比表面積70〜110m2/g) 30 〃
老化防止剤RD(大内新興化学製品ノクラック224) 1 〃
酸化亜鉛 5 〃
イオウ 0.4 〃
ジクミルパーオキサイド 2 〃
加硫促進剤BZ(大内新興化学製品ノクセラーBZ) 1.5 〃
加硫促進剤DM(大内新興化学製品ノクセラーDM) 3 〃
以上の各成分をニーダおよびオープンロールで混練し、混練物について160℃、30分間のプレス加硫および150℃、3時間のオーブン加硫(二次加硫)を行い、加硫シート(150×150×2mm)および3.1mm径Oリングを得た。
【0020】
この加硫シートおよびOリングについて、次の各項目の測定を行った。
常態物性:JIS K-6253、JIS K-6251準拠
圧縮永久歪:JIS K6262準拠(120℃、25%圧縮)
【0021】
実施例2
実施例1において、ホワイトカーボンとして比表面積が30〜55m2/gのものが35重量部用いられた。
【0022】
比較例1
実施例1において、ホワイトカーボンとして比表面積が150m2/gのものが20重量部用いられた。
【0023】
比較例2
実施例1において、ホワイトカーボンの代りに、MTカーボンブラック65重量部が用いられた。
【0024】
比較例3
実施例1において、ホワイトカーボンの代りに、SRFカーボンブラック50重量部が用いられた。
【0025】
参考例
水素添加NBR(日本ゼオン製品ゼットポール2020) 100重量部
SRFカーボンブラック 40 〃
老化防止剤RD 1 〃
酸化亜鉛 5 〃
ジクミルパーオキサイド 4 〃
以上の各成分をニーダおよびオープンロールで混練し、混練物について160℃、30分間のプレス加硫および150℃、3時間のオーブン加硫(二次加硫)を行い、加硫シート(150×150×2mm)および3.1mm径Oリングを得、この試料について実施例1と同様の測定を行った。
【0026】
以上の各実施例、比較例および参考例で得られた結果は、次の表に示される。

測定項目 実−1 実−2 比−1 比−2 比−3 参考例
常態物性
硬さ (デュロA) 71 72 69 72 72 71
引張強さ (MPa) 14.6 15.7 15.3 16.3 23.1 23.8
伸び (%) 220 260 300 210 240 220
圧縮永久歪
70時間 (%) 22 18 31 24 28 18
140時間 (%) 30 27 40 40 42 26
300時間 (%) 49 46 57 65 68 35
500時間 (%) 63 57 71 75 78 46

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NBRに比表面積(BET法)が30〜110m2/gのホワイトカーボンを添加してなるNBR組成物。
【請求項2】
比表面積(BET法)が30〜60m2/gのホワイトカーボンが用いられた請求項1記載のNBR組成物。
【請求項3】
有機過酸化物およびイオウまたはイオウ供与性化合物が加硫系として用いられる請求項1または2記載のNBR組成物。
【請求項4】
シール材の加硫成形材料として用いられる請求項1、2または3記載のNBR組成物。
【請求項5】
請求項4記載のNBR組成物から加硫成形されたシール材。

【公開番号】特開2007−231061(P2007−231061A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51785(P2006−51785)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】