説明

NCOオリゴマー化のための触媒としてのスルホンアミドアニオン

本発明は、イソシアネートのオリゴマー化のための触媒としてのスルホンアミド塩の使用、ならびに、該触媒を用いるNCOオリゴマー化のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネートをオリゴマー化するための触媒としてのスルホンアミド塩の使用、ならびに、本発明の触媒を用いるNCOオリゴマー化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単量体ジイソシアネートは、その揮発性および毒物学的性質のゆえに、ポリウレタン被覆系における架橋剤として使用することができないので、一般的なアプローチは、単量体量の少ない比較的高分子量の誘導体、例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、ビウレット、ウレタンまたはアロファネートに基づく誘導体を使用することである。これらポリイソシアネートの概説およびその製造方法が、例えば、J.Prakt.Chem./Chem.Ztg. 1994、336、185-200に記載されている。
【0003】
通常は2個または3個のNCO官能基を互いに反応させることによるイソシアネートのオリゴマー化は、以下の式1〜3で示される構造を導く。ウレトジオン構造(タイプ1)およびイソシアヌレート構造(タイプ2)が、工業的に重要な構造である。
【化1】

[構造中、Xは炭素骨格である]。
【0004】
多数の共有性およびイオン性の触媒が、このオリゴマー化のための触媒として文献に記載されている[J.Prakt.Chem./Chem.Ztg. 1994、336、185-200]。しかし、共有性の構成を有する非荷電化合物は、塩様の化合物よりも相当に低い活性を示すので、所与の変換のためには、より多くの触媒を使用することが必要になるか、または反応時間を相応に長くすることが必要になる。
【0005】
独国特許出願公開DE-A-3100263、欧州特許出願公開EP-A-339396およびEP-A-330966は、イソシアネートのオリゴマー化のための塩様の構成を有する触媒を記載している(例えば、カルボキシレート、フッ化物および水酸化物)。これらの触媒は、イソシアヌレート(タイプ2)の形成に関しては高い選択性を示すが、二量体構造(タイプ1)はほとんど形成されないか、または全く形成されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここに、スルホンアミド塩が、同じように高活性なNCOオリゴマー化触媒であり、二量体化および/または三量体化生成物が得られ、特に環式脂肪族イソシアネートの場合に、二量体と三量体の比率を、単に硫黄および/または窒素上の置換基を変えることによって広範囲に変化させうることを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、イソシアネートをオリゴマー化するための、式(I)
【化2】

[式中、
およびRは、互いに独立して、同一または異なる脂肪族、環式脂肪族、芳香族または芳香脂肪族基であり、これらは所望により、分岐、置換および/またはヘテロ原子含有であってよく、
Ion(+)は、有機または無機カチオンである]
で示されるスルホンアミド塩の使用を提供するものである。
【0008】
好ましくは、
は、所望により分岐および/または置換した脂肪族または環式脂肪族C〜C24基であり、これが所望により、元素 酸素、硫黄または窒素からなる3個までのヘテロ原子を含み、
は、Rに対して既に上で一般的に規定した種類の基であり、そして
Ion(+)は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属カチオンまたはアンモニウムもしくはホスホニウムイオンである。
【0009】
好ましく使用される上記カチオン[Ion(+)]の例は、Li、Na、K、Mg2+およびCa2+ならびに以下の一般式(II)で示されるアンモニウムおよびホスホニウムカチオンである:
【化3】

[式中、
Eは、窒素またはリンであり、
、RおよびRは、互いに独立して、同一または異なる脂肪族、環式脂肪族または芳香脂肪族の所望によりヘテロ原子含有の基、あるいは水素原子であり、
は、R、RまたはRの上記規定に一致するか、あるいは以下の式(III)で示される:
【化4】

(式中、Xは、二価の所望によりヘテロ原子含有の脂肪族、環式脂肪族または芳香脂肪族C-C12基であり、
、R、RおよびEは、上記規定の通りである)]。
【0010】
特に好ましくは、
は、所望により分岐した脂肪族または環式脂肪族C-C18基であり、これが所望により、元素 酸素、硫黄、窒素からなる3個までのヘテロ原子を含み、そして/または所望により、ハロゲン、シアニド、ニトロ、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシおよび/またはジアルキルアミノ置換基を含み、
は、Rの特に好ましい種類に一致する基であるか、あるいは、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、インドール、インダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、イソチアゾール、ベンズイソオキサゾール、フラン、ベンゾフラン、チオフェンおよびベンゾチオフェンの群からの基(この基は所望により、ハロゲン、ニトロ、シアニド、カルボキシル、カルボキシアルキル、カルボキシアリール、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシおよびジアルキルアミノの群からの1またはそれ以上の置換基を含む)であり、そして
Ion(+)は、Li、Na、Kまたは一般式(II)[式中、Eは窒素またはリンであり、R、R、RおよびRは、互いに独立して、同一または異なる脂肪族、環式脂肪族または芳香脂肪族の、所望によりヘテロ原子含有のC-C18基である]で示される一価のアンモニウムもしくはホスホニウムカチオンである。
【0011】
さらに特に好ましくは、
は、Rに対して上記した特に好ましい種類の基であり、
は、Rに一致する基であるか、あるいは、フェニル、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、2-ピリミジニル、2-チアゾリル、2-ベンズチアゾリル、2-ピラジル、2-ピリジルおよび4-ピリジルの群からの基であり、そして
Ion(+)は、Ion(+)に対して上記した特に好ましい種類の一価カチオンである。
【0012】
さらに本発明は、イソシアネートをオリゴマー化するための方法であって、
(a)平均NCO官能価1を有する1またはそれ以上の有機化合物を、
(b)式(I)で示される1またはそれ以上のスルホンアミド塩を含む触媒、および
(c)所望による溶媒、
の存在下にオリゴマー化することからなる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の方法において、成分(a)に、当業者には既知であり、NCO官能価1、好ましくは2を有するあらゆる脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族および/または芳香族のイソシアネートを、個々にまたは互いとの任意の所望の混合物の形態で使用することができる。それらがホスゲンによって製造されたかまたはホスゲンを含まない方法によって製造されたかは重要ではない。
【0014】
好ましくは、3〜30個、好ましくは4〜20個の炭素原子の炭素骨格(存在するNCO基を差し引く)を有する上記した種類の脂肪族、環式脂肪族および/または芳香脂肪族イソシアネートを使用する。
【0015】
成分(a)の特に好ましい化合物は、脂肪族的および/または環式脂肪族的に結合したNCO基を有する上記種類に対応する。これらは、例えば、ビス(イソシアナトアルキル)エーテル、ビス-およびトリス-(イソシアナトアルキル)-ベンゼン、-トルエンおよび-キシレン、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート[例えばトリメチル-HDI(TMDI)、通常は2,4,4-異性体および2,2,4-異性体の混合物として]、ノナントリイソシアネート(例えば4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート)、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、ドデカントリイソシアネート、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)または3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)などである。
【0016】
成分(a)の特に好ましい化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチル-HDI(TMDI)、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)および/または2,4'-および/または4,4'-ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)またはこれらイソシアネートの混合物である。
単官能イソシアネートの相応の使用も同様に可能である。
【0017】
本発明の方法において、触媒(b)の量は、成分(a)の量を基準に、0.01〜10モル%、好ましくは0.05〜5モル%、より好ましくは0.1〜3モル%である。ここで、該モル%の数字は、使用する成分(a)のイソシアネートの、モルでの物質の全体量を指す。
本発明の方法の触媒(b)として、式(I)で示されるスルホンアミド塩のみを使用するのが好ましい。
【0018】
本発明の方法において、触媒(b)は、未溶解で化合物それ自体として、あるいは、溶液の形態で使用することができる。後者の場合には、分子またはイオン解離によって触媒を溶解するが、化学反応によって組成物および/またはスルホンアミドアニオンの分子構造を変えることがないように、溶媒を選択すべきである。それと同時に、溶媒は、NCO官能基に対して不活性でなければならないか、あるいは、尿素、ビウレット、ウレタンまたはアロファネート基の生成を伴ってのみイソシアネートと反応してよい。
【0019】
触媒(b)を溶液として使用するときには、OH官能価1を有する直鎖または分岐鎖のC-C20、好ましくはC-C10アルコールを使用するのが好ましい。これらは、例えば、メタノール、エタノール、1-および2-プロパノール、異性体ブタノール、2-エチルヘキサノール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、1,3-および1,4-ブタンジオールまたは1-メトキシ-2-プロパノールなどである。
本発明の1つの好ましい態様において、触媒(b)を溶液の形態で使用する。
【0020】
本発明の方法において、適切であれば、成分(c)として溶媒を使用することも可能であるが、所望により使用される触媒溶媒の他に、成分(c)としてさらなる溶媒を使用しないのが好ましい。
【0021】
本発明の方法は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜100℃の温度で行う。
本方法を、必要なら、加圧下または減圧下で行いうることが理解されるであろう。
本発明の方法を、連続的にまたはバッチ式で行うことができる。連続法は、例えば、チューブ反応器における製造またはタンクカスケードによる製造を包含し、一方、バッチ法は、例えば、1つのタンクまたは1つのフラスコにおける方法である。
【0022】
本発明の1つの好ましい態様において、NCOオリゴマー化を、最初に存在するNCO基の全体量を基準に、10〜60モル%の変換率まで行い、該オリゴマー化反応を停止させ、未反応イソシアネートを、例えば蒸留によって所望により減圧下で分離する。オリゴマー化したイソシアネートは、樹脂の形態で得られる。
【0023】
オリゴマー化反応の停止に適する方法には、原則的に当業者に既知である全ての方法が含まれる[J.Prakt.Chem./Chem.Ztg. 1994、336、185-190]。これらには、例えば抽出または濾過による触媒の除去(適切であれば、吸着性担体材料の補助を伴う)、熱処理および/または酸もしくは酸誘導体(例えば、ベンゾイルクロリド、フタロイルクロリド、亜ホスフィン酸、亜ホスホン酸もしくは亜リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸もしくはリン酸または上記リン酸の酸性エステル)の添加による触媒系の不活性化が含まれる。好ましい停止剤は、モノアルキルもしくはジアルキルホスフェート、例えば(ジ)ブチルホスフェート、(ジ)オクチルホスフェートもしくは(ジ)トリヘキシルホスフェート、硫酸もしくはその酸性エステル、または、スルホン酸(例えば、好ましくはメタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)もしくはスルホン酸エステル(例えばp-トルエンスルホン酸エステル)である。
【0024】
反応を停止させるのに必要な触媒毒の量は、活性な触媒の量によって決まる。一般的に言えば、最初に使用した触媒の量を基準に、70〜150モル%の停止剤が使用される。好ましくは、触媒の使用量を基準に、等モル量の停止剤を使用する。
【0025】
本発明の方法によって得られるポリイソシアネートを、当分野で普通の方法(例えば、薄膜蒸留、抽出、結晶化および/または分子蒸留など)によって単離および精製することができる。該ポリイソシアネートは、無色またはわずかにのみ着色した液体または固体として得られる。
【0026】
イソシアネートのオリゴマー化のための本発明に係る触媒の特別の利点は、イソシアヌレートの生成、および適切であればそれと同時のウレトジオンの生成に対する高い選択性である。これらはこの点で高活性であり、あるとしてもごくわずかにイミノオキサジアジンジオン分画が生成するにすぎない。特に環式脂肪族イソシアネートの場合に、本発明に係る触媒は、さらにNCO二量体を生成する傾向を示す(これは、イオン性触媒にとっては驚くほど高い)。
【0027】
本発明に従って製造したポリイソシアネートは、種々のポリマー(例えば、発泡もしくは未発泡プラスチックまたはポリウレタンペイントなど)の製造用に、特に、種々の材料(例えば、木材、プラスチック、皮革、金属、紙、コンクリート、組積造、セラミックおよび織物など)に適用するための1成分および2成分のポリウレタンペイント、コーティング、接着剤および補助剤の製造用に、様々な可能な用途を有する出発物質である。
【実施例】
【0028】
変換率は、変換されたイソシアネートの量を、使用したイソシアネートの全体量で割り、100を掛けることによって算出した。全ての他のパーセントの数字は、他に特記することがなければ、重量%であると理解すべきである。
本発明の実施例および比較例に記載した樹脂のNCO含量は、DIN53185に従って滴定により測定した。
使用した略語
DMSO:ジメチルスルホキシド
n-BuまたはBu:n-ブチル
i-PrOH:イソプロパノール
【0029】
ポリイソシアネート樹脂の動的粘度は、Haake (Karlsruhe、独国)からの粘度計 VT 550、コーンおよびプレート測定装備 PK 100を用いて23℃で測定した。異なる剪断速度での測定により、記載した本発明のポリイソシアネート混合物のレオロジーが、比較生成物のものと同様、理想的なニュートン流体のものに対応することを確かめた。従って、剪断速度を記載するのは不要である。
【0030】
イソシアネート変換率を測定するために、製造した反応混合物(20〜40mg)を、クロロホルム(3ml)に溶解し、ゲル透過クロマトグラフィー(カラム MZ-Gel Sdplus 500A 5μm、MZ-Analysentechnik、Mainz、独国)によって分析した。測定溶液の高レベルの希釈のゆえに、触媒を不活性化する必要はなかった。NCO変換率または樹脂収率を、単量体イソシアネートの測定量から算出することができる。
【0031】
次いで、使用した触媒の選択性の測定を、生成した構造タイプ1〜3を分析することによって行った。これは、反応混合物(30μl)を、KBrプレート間でのIR分光法による測定に付すことによって行った[分光計:Arid-Zone(Bomem、Quebec、カナダ)、スキャンカウント10、分解能2cm-1]。1760cm-1(構造タイプ1)、1690cm-1(構造タイプ2)および1780cm-1(構造タイプ3)における振動を用いて、構造タイプ1〜3の生成を示すことができる。1を超える構造タイプだけが生成するときには、13C-NMR測定を定量評価のために行い、生成物の量をシグナルの積分によって算出した。
【0032】
13C-NMR分析のために、各反応混合物(0.5ml)を、化学量論量(触媒の使用量を基準とする)のジ-n-ブチルホスフェートと混合し、触媒を不活性化し、さらなる反応を防止した。重水素化クロロホルムを添加して、約50重量%樹脂の濃度にした。測定は、DPX 400 (Bruker、Karlsruhe、独国)を用いて、13C共鳴振動数100MHzにおいて行った。ppm尺度のために使用した参照物質は、内部標準としてのテトラメチルシランであった。当該化合物の化学シフトのためのデータは、文献[Die Angewandte Makromolekulare Chemie 1986、141、173-183およびこれに挙げられている参照文献]から採用し、そして/またはモデル物質を測定に付すことによって得た。
【0033】
本発明の触媒の調製
実施例1:n-ブチル-N-n-プロピルスルホンアミドの製造
n-プロピルアミン(6.9ml、4.9g、84mモル)およびトリエチルアミン(11.6ml、8.5g、84mモル)を、室温で塩化メチレン(85ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(10.9ml、13.1g、84mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。20時間の撹拌後に、反応混合物を水(50ml)で2回洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンを留去し、残存する油状残留物を真空中で乾燥した。これにより、13.5gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0034】
実施例2:n-ブチル-N-(2-メトキシエチル)スルホンアミドの製造
2-メトキシエチルアミン(6.4ml、5.5g、73.7mモル)およびトリエチルアミン(10.2ml、7.4g、73.7mモル)を、室温で塩化メチレン(72ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(9.6ml、11.5g、73.7mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。室温で1時間の撹拌後に、反応混合物を水(100ml)で2回洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンを留去し、残存する油状残留物を真空中で乾燥した。これにより、12.4gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0035】
実施例3:n-ブチル-N-4-メチルピペラジニルスルホンアミドの製造
1-アミノ-4-メチルピペラジン(8.9ml、8.5g、73.7mモル)およびトリエチルアミン(10.2ml、7.4g、73.7mモル)を、室温で塩化メチレン(72ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(9.6ml、11.5g、73.7mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。室温で22時間の撹拌後に、反応混合物を水(100ml)で2回洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンを留去し、残存する油状残留物を真空中で乾燥した。これにより、11.6gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0036】
実施例4:n-ブチル-N-イソオキサゾロスルホンアミドの製造
3-アミノイソオキサゾール(6.2g、73.7mモル)およびトリエチルアミン(10.2ml、7.4g、73.7mモル)を、室温でTHF(72ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(9.6ml、11.5g、73.7mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。室温で22時間の撹拌後に、反応混合物を塩化メチレン(200ml)で希釈し、次いで、1N NaOH(200ml)で2回振盪することによって抽出した。水相を、濃HClを用いてpH1〜2に注意深く調節し、次いで塩化メチレン(100ml)で2回抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機相から溶媒を除き、油状残留物を真空中で乾燥した。これにより、7.8gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0037】
実施例5:n-ブチル-N-2-チアゾリルスルホンアミドの製造
2-アミノチアゾール(7.4g、73.7mモル)およびトリエチルアミン(10.2ml、7.4g、73.7mモル)を、室温でTHF(100ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(9.6ml、11.5g、73.7mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。室温で21時間の撹拌後に、さらなるn-ブタンスルホニルクロリド(4ml、4.8g、30.8mモル)を加え、撹拌を室温で20時間続けた。反応混合物を1N NaOH(100ml)で2回洗浄し、次いで中性(pH6〜7)になるまで水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで溶媒を除いた。得られた粗生成物(9.0g)を、tert-ブチルメチルエーテル(80ml)から再結晶させた。これにより、3.2gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0038】
実施例6:n-ブチル-N-モルホリノスルホンアミドの製造
N-アミノモルホリン(3.8g、36.9mモル)およびトリエチルアミン(5.1ml、3.7g、36.9mモル)を、室温で塩化メチレン(40ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(4.8ml、5.8g、36.9mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。室温で20時間の撹拌後に、反応混合物を水(50ml)で2回振盪することによって抽出し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた粗生成物(6.7g)を、tert-ブチルメチルエーテル(30ml)から再結晶させた。この標的化合物の構成をNMR分光法によって確かめた。
【0039】
実施例7:n-ブチル-N-ピラジノスルホンアミドの製造
アミノピラジン(7.0g、73.7mモル)およびトリエチルアミン(10.2ml、7.4g、73.7mモル)を、室温で塩化メチレン(72ml)に溶解した。同様に室温で、n-ブタンスルホニルクロリド(9.6ml、11.5g、73.7mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。室温で20時間の撹拌後に、このバッチを水(100ml)と混合し、次いで塩化メチレン(200ml)で2回抽出した。有機相を水(100ml)で1回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥した。塩化メチレン(200ml)中の粗生成物を、1N NaOH(200ml)で抽出した。水相を、濃HClを用いてpH1〜2に調節し、次いで塩化メチレン(200ml)で抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。これにより、4.0gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0040】
実施例8:n-ブチル-N-フェニルスルホンアミドの製造
アニリン(9.9ml、10.1g、108.4mモル)およびトリエチルアミン(15ml、11.0g、108.4mモル)を、50℃で塩化メチレン(108ml)に溶解した。同様に50℃で、n-ブタンスルホニルクロリド(14.1ml、17.0g、108.4mモル)を、この溶液に1時間かけて滴下した。50℃で15分間の撹拌後に、反応混合物を水(100ml)で2回抽出した。塩化メチレン(150ml)中の得られた粗生成物の溶液を、1N NaOH(150ml)で抽出した。水相を、濃HClを用いてpH1〜2に調節し、塩化メチレン(100ml)で2回抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸留によって塩化メチレンを除去することにより、17.0gの標的化合物が得られ、その構成をNMR分光法によって確かめた。
【0041】
実施例9:n-ブチル-N-n-プロピルスルホンアミドアニオンのテトラブチルアンモニウム塩の合成
メタノール(7.5ml)中の実施例1からのn-ブチル-N-n-プロピルスルホンアミド(6.7g、37.3mモル)の溶液を、室温で、30%濃度のNaメトキシド溶液(7.1ml、37.3mモル)に滴下した。撹拌を室温で1時間続け、次いで、イソプロパノール中のテトラブチルアンモニウムクロリドの61.4%濃度溶液(16.9g、37.3mモル)を滴下した。混合物を室温で1時間以上撹拌し、次いで、沈殿したNaClを濾去した。真空中で濾液から溶媒を除いた。残留物を真空中で乾燥して、最終的な溶媒残留物を除去した。これにより、14.1gの油状生成物が得られた。この標的化合物の構成をNMR分光法によって確かめた。
【0042】
実施例10〜15
実施例9と同様の操作により、実施例2、3および5〜8からのスルホンアミドのテトラブチルアンモニウム塩を製造し、NMR分光法によって特性を調べた。
【0043】
実施例16:n-ブチル-N-n-プロピルスルホンアミドアニオンのテトラブチルホスホニウム塩の合成
メタノール(7.5ml)中の実施例1からのn-ブチル-N-n-プロピルスルホンアミド(6.7g、37.3mモル)の溶液を、室温で、30%濃度のNaメトキシド溶液(7.1ml、37.3mモル)に滴下した。撹拌を室温で1時間続け、次いで、イソプロパノール中のテトラブチルホスホニウムクロリドの71.4%濃度溶液(15.4g、37.3mモル)を滴下した。混合物を室温で1時間以上撹拌し、次いで、沈殿したNaClを濾去した。真空中で濾液から溶媒を除いた。残留物を真空中で乾燥して、最終的な溶媒残留物を除去した。これにより、16.6gの油状生成物が得られた。この標的化合物の構成をNMR分光法によって確かめた。
【0044】
実施例17〜22
実施例16と同様の操作により、実施例2、3および5〜8からのスルホンアミドのテトラブチルホスホニウム塩を製造し、NMR分光法によって特性を調べた。
【0045】
実施例23:n-ブチル-N-フェニルスルホンアミドアニオンのトリ-n-ブチルテトラデシルホスホニウム塩の合成
メタノール(7ml)中の実施例8からのn-ブチル-N-フェニルスルホンアミド(2.2g、10.5mモル)の溶液を、室温で、30%濃度のNaメトキシド溶液(2ml、10.5mモル)に滴下した。撹拌を室温で1時間続け、次いで、トリ-n-ヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリド(4.6g、10.5mモル)を滴下した。混合物を室温で1時間以上撹拌し、次いで、沈殿したNaClを濾去した。真空中で濾液から溶媒を除いた。残留物を真空中で乾燥して、最終的な溶媒残留物を除去した。これにより、5.2gの油状生成物が得られた。この標的化合物の構成をNMR分光法によって確かめた。
【0046】
実施例24
実施例23と同様の操作により、実施例7からのスルホンアミドのトリ-n-ブチルテトラデシルホスホニウム塩を製造した。NMR分光法により特性を調べた。
【0047】
実施例25:n-ブチル-N-フェニルスルホンアミドアニオンのトリ-n-ヘキシルテトラデシルホスホニウム塩の合成
メタノール(7ml)中のn-ブチル-N-フェニルスルホンアミド(2.2g、10.5mモル)の溶液を、室温で、30%濃度のNaメトキシド溶液(2ml、10.5mモル)に滴下した。撹拌を室温で1時間続け、次いで、トリ-n-ヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリド(5.4g、10.5mモル)を滴下した。混合物を室温で1時間以上撹拌し、次いで、沈殿したNaClを濾去した。真空中で濾液から溶媒を除いた。残留物を真空中で乾燥して、最終的な溶媒残留物を除去した。これにより、6.3gの油状生成物が得られた。この標的化合物の構成をNMR分光法によって確かめた。
【0048】
実施例26
実施例25と同様の操作により、実施例7からのスルホンアミドのトリ-n-ヘキシルテトラデシルホスホニウム塩を製造した。この標的化合物の構成をNMR分光法によって確かめた。
【0049】
実施例27〜29:本発明のオリゴマー化反応
一般的指示
表1〜3の実施例27〜29に示した純粋な触媒の量を、隔壁シールを有するガラス容器に量って入れた。次いで、この容器を2回脱気し、アルゴンを満たした。次いで注射器を用いて、表1〜3の実施例27〜29に同様に示したジイソシアネートの量を、隔壁から添加した。
【0050】
触媒を溶液として使用する場合(実施例27のc、d、e、f;実施例28のc、d、h、i;実施例29のa、b、g、h)、隔壁シールを有する反応容器を2回脱気し、アルゴンを満たした。注射器を用いて、5mlの各ジイソシアネートを、このように準備した容器中に導入し、その後に、記載した溶媒中の対応する量の触媒を、撹拌しながら添加した。
【0051】
次いで、得られた反応混合物を、油浴または撹拌加熱ブロック(例えば、Variomag 反応ブロック、タイプ 48.2/RM;H&P Labortechnik GmbH、Oberschleissheim、独国)において、以下の表に示した条件下で反応させた。
次いで、上記のように分析を行った。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
比較例1〜3
HDI、IPDIおよびH12MDIの反応を、欧州特許出願公開EP-A-0010589に従い、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムのメタノール溶液(Triton B、Aldrich)を用いて、本発明の実施例の操作と同様にして行った。
【表4】

【0056】
【表5】


【表6】

【0057】
上記からわかるように、塩様の構成を有する水酸化テトラアルキルアンモニウムは、高活性であるが、生成物の混合物において低いウレトジオン分画を与えるのみである。HDI反応の場合、明らかに、イミノオキサジアジンジオン構造の形成を観察することができる。対照的に、本発明の触媒は、硫黄および窒素における置換パターンの関数として、非常に可変性の高いウレトジオン/イソシアヌレートの比率を、同様に非常に高い触媒活性と共に与える。さらに、直鎖脂肪族のHDIを反応させたときには、イソシアヌレート構造に対する非常に高い選択性が観察され、それと同時に、非対称トリマー(タイプ3)の形成が全くなかった。
【0058】
実施例30:方法の例
4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンの三量体化
4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(500g、1.91モル)を、真空(2mバール)中で30分間脱ガスし、次いで乾燥窒素を導入し、60℃に加熱した。撹拌しながら、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール中の実施例9の触媒の60%濃度溶液(2.3g、3.3mモル)を、反応混合物の温度が70℃を超えないような速度で1時間かけて添加した。触媒の添加終了後に、三量体化反応を、ジブチルホスフェート(0.7g、3.3mモル)の添加によって停止させた。混合物のNCO含量は25.8%であり、これは19.0%のオリゴマー化度に相当した。次いで、この透明な淡黄色の粗製溶液を、欧州特許出願公開EP-A-330966の実施例12に従って得たHDIに基づくイソシアヌレートポリイソシアネート(26.5g)と混合し、次いで実施例2に記載のように、薄膜蒸留によって過剰の4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを除いた。得られた固体樹脂を、1-メトキシプロパ-2-イルアセテートとキシロレン(1:1)の混合物で溶解し、70%の固体含量に調節した。これにより、NCO含量が10.4%であり、単量体4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン含量が0.2%であり、粘度(23℃)が6.060mPasである淡黄色の透明なポリイソシアネート溶液が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートをオリゴマー化するための、式(I):
【化1】

[式中、
およびRは、互いに独立して、同一または異なる脂肪族、環式脂肪族、芳香族または芳香脂肪族基であり、これらは所望により、分岐、置換および/またはヘテロ原子含有であってよく、
Ion(+)は、有機または無機カチオンである]
で示されるスルホンアミド塩の使用。
【請求項2】
が、所望により分岐した脂肪族または環式脂肪族C-C18基であり、これが所望により、元素 酸素、硫黄および窒素からなる3個までのヘテロ原子を含み、そして/または所望により、ハロゲン、シアニド、ニトロ、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシおよび/またはジアルキルアミノ置換基を含み、
が、Rに対して規定した基であるか、あるいは、フェニル、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、2-ピリミジニル、2-チアゾリル、2-ベンズチアゾリル、2-ピラジル、2-ピリジルまたは4-ピリジルであり、そして
Ion(+)が、Li、NaもしくはKまたは一般式(II):
【化2】

[式中、
Eは、窒素またはリンであり、
、R、RおよびRは、互いに独立して、同一または異なる脂肪族、環式脂肪族または芳香脂肪族の、所望によりヘテロ原子含有のC-C18基である]
で示される一価のアンモニウムもしくはホスホニウムカチオンである、
ことを特徴とする請求項1に記載のイソシアネートをオリゴマー化するための式(I)で示されるスルホンアミド塩の使用。
【請求項3】
イソシアネートをオリゴマー化するための方法であって、
(a)平均NCO官能価1を有する1またはそれ以上の有機化合物を、
(b)請求項1または2に記載の1またはそれ以上のスルホンアミド塩を含む触媒、および
(c)所望により溶媒、
の存在下にオリゴマー化することからなる方法。
【請求項4】
NCOオリゴマー化を、20〜100℃の温度で全NCO基の10〜60モル%が変換されるまで行い、次いで、オリゴマー化反応を触媒毒の添加によって停止させ、未反応の単量体イソシアネートを蒸留によって分離することを特徴とする、請求項3に記載のイソシアネートをオリゴマー化するための方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法によって得られるポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイソシアネート組成物から得られるコーティング、接着結合または成形品。
【請求項7】
請求項6に記載のコーティングで被覆された基材。

【公表番号】特表2007−501769(P2007−501769A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522278(P2006−522278)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008342
【国際公開番号】WO2005/017037
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】