説明

Nav1.8の短い干渉核酸阻害のための組成物および方法

【課題】疼痛の処置方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、Na1.8ナトリウムチャネル遺伝子からmRNAのRNAi誘導性の分解を引き起こす、一本鎖、または二本鎖のいずれかの短い干渉核酸;このような短い干渉核酸を含む薬学的組成物;このような短い干渉核酸を含む組み換えベクター;mRNAの翻訳を阻害するための方法;ポリペプチドの発現を阻害するための方法;細胞における膜電位をブロックするための方法;細胞におけるナトリウム電流をブロックするための方法;および、慢性疼痛を阻害するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2004年10月27日に出願された米国仮特許出願番号第60/622,484号の米国特許法119(e)の下の優先権の利益を主張し、この出願の開示は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【0002】
(本発明の背景)
(本発明の分野)
本発明は、Na1.8ナトリウムチャネル遺伝子からmRNAのRNAi誘導性の分解を引き起こす、一本鎖、または二本鎖の短い干渉核酸;このような短い干渉核酸などを含む薬学的組成物;このような短い干渉核酸などを含む組み換えベクター;mRNAの翻訳を阻害するための方法;ポリペプチドの発現を阻害するための方法;細胞における膜電位をブロックするための方法;細胞におけるナトリウム電流をブロックするための方法;および慢性疼痛を阻害するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
慢性疼痛は、AIDS、癌化学療法、糖尿病によって誘発されるものであれ、末梢神経に対する直接の物理的外傷によるものであれ、末梢神経障害の主要な症状である。このような神経障害性疼痛は、しばしば高度な衰弱をもたらし、かつ治療的なインターベンションに対する耐性がある。
【0004】
神経障害性疼痛の動物モデルは、神経障害状態の維持における顕著な特徴が、損傷後の末梢神経における感覚求心性ニューロンの異常な、持続する過度の興奮状態であることを示した。さらに、一般的な臨床上の知見は、リドカインなどの広域スペクトルのナトリウムチャネル遮断薬が、急速に神経障害性疼痛を抑え得ることである。しかしながら、神経障害性疼痛における個々のナトリウムチャネルのサブタイプの相対的な寄与は、はっきりしないままである。
【0005】
電位開口型ナトリウムチャネルは、ニューロンにおける活動電位の惹起および伝播に不可欠である。さらに、それらのチャネルは、ニューロンの興奮状態の調節に関与する。それゆえ、電位開口型ナトリウムチャネルは、末梢神経系および中枢神経系の両方の全体にわたり侵害受容情報を伝達することにおいて重要な役割を演じる。末梢神経傷害は、傷害部位の周囲の主要な求心神経の膜にナトリウムチャネルを蓄積させる。この蓄積は、傷害された求心神経および傷害されてない隣接する求心神経の両方において、反復的な放出および興奮状態の増加を引き起こす。この興奮状態の増加は、神経障害性疼痛の発現にとって不可欠であるようである。
【0006】
ナトリウムチャネルの少なくとも10の異なるアイソフォームが、脳、ニューロンおよび横紋筋において識別された。ナトリウムチャネルの主要成分は、このチャネルの細孔を形成する260キロダルトンのαサブユニットである。このαサブユニットは、4つの相同なドメイン、DI、DII、DIIIおよびDIVから構成され、これらの各々は、6つの膜貫通セグメント、S1〜S6から構成される。ほとんどのナトリウムチャネルは、30キロダルトンの平均分子量を有する補助βサブユニット、β1〜β4を伴う。これらのβサブユニットは、それらのチャネルの発現および開口のレベルを調節する。
【0007】
3つのナトリウムチャネルアイソフォーム、Na1.7、Na1.8およびNa1.9は、主にPNSにおいて発現される。Na1.7は、末梢神経系に広く存在し、結果として、シュワン細胞および神経内分泌細胞における、あらゆる種類の後根神経節ニューロンに存在する。Na1.7は、ナノモル量のテトロドトキシンを知覚しうる。Na1.8は、後根神経節および三叉神経節の感覚求心性の神経およびニューロンにだけ存在する。このNa1.8チャネルは、50μMより大きいIC5Oを有するテトロドトキシンに対する高度の耐性がある。Na1.9もまた、後根神経節および三叉神経節の細繊維において発現され、そして、ナノモル濃度のテトロドトキシンに対する耐性もあるが、約40μMのテトロドトキシンにより、最大の半分までブロックされる。
【0008】
疼痛処置における治療標的を求める最近の関心は、成人の後根神経節ニューロンに見られるテトロドトキシン耐性ナトリウムチャネルに集中した。これらのニューロンのかなりの部分が、疼痛を感知する「傷害受容器」であることは公知である。このようなナトリウムチャネルの1つは、正式にPN3、または末梢神経ナトリウムチャネル3型として知られるNa1.8である。このチャネルは、慢性疼痛状態の後根神経節においてアップレギュレートされることが発見された。さらに、Na1.8の生物物理特性は、このチャネルを、損傷後の末梢ニューロンの持続する反復性の放出を維持する有望な候補とする。さらに、後根神経節の感覚ニューロンの周辺に限定されるNa1.8の発現は、このチャネルの遮断が、最小限の副作用で神経障害性疼痛からの解放を可能にし得ることを示す。しかしながら、この解放の可能性は、現在入手可能なナトリウムチャネル遮断薬が、ナトリウムチャネルのサブタイプ間を区別しないので、薬理学的に試験することができない。
【0009】
神経障害性疼痛の動物モデルにおけるNa1.8発現のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる標的化が、このチャネルの選択的に減じられた発現が、神経障害性疼痛からの解放を可能にし得るかどうかを試験するために採用された。Porrecaら(非特許文献1)を参照のこと。アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドを使用したNa1.8発現の阻害はまた、他の動物の疼痛モデルにおける慢性疼痛を阻害することが発見された。Yoshimuraら(非特許文献2);およびKhasarら(非特許文献3)を参照のこと。さらにデータは、Na1.8に対して特異的なアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる後根神経節ニューロンにおけるNa1.8タンパク質の選択的ノックダウンが、脊髄神経結紮損傷により引き起こされる痛感過敏症および異痛を防止したことを示す。Kimら(非特許文献4)を参照のこと。上記データは、幾つかの末梢神経性状態および炎症状態におけるNa1.8の病態生理学的役割を示す。
しかしながら、治療としてのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの使用は、インビボにおけるアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの不安定さ、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの限られた効用、および「標的を外れた」効果を生じるアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの傾向により制限される。Na1.8を特異的にブロックし得る低分子は識別されなかったので、疼痛の処置においてNa1.8を調節する別の方法に対する必要が引き続きある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「A comparison of the potential role of the tetrodotoxin−insensitive sodium channels,PN3/SNS and NaN/SNS2,in rat models of chronic pain」,Proc.Nat.Acad.Sci.,1999,vol.96,pp.7640−7644
【非特許文献2】「The involvement of the tetrodotoxin−resistant sodium channel Nav1.8(PN3/SNS) in a rat model of visceral pain」,J.Neuroscience,2001,vol.21,pp.8690−8696
【非特許文献3】「A tetrodotoxin−resistant sodium current mediates inflammatory pain in the rat」,Neuroscience Letters,1998,vol.256,no.1,pp.17−20
【非特許文献4】「An experimental model for peripheral neuorathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat」,Pain,1992,vol.50,pp.355−363
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、Na1.8の発現を特異的にノックダウンするための短い干渉核酸およびsiRNAを提供することにより上記必要を充たす。siRNAの使用は、siRNAが高度の標的特異性を有し、標的を外れた障害を減じ、かつ高いレベルの抑圧を達成するので、魅力的である。短い干渉RNA、または低分子量干渉RNAを意味するsiRNAは、RNA干渉(RNAi)の1形態である。RNAiは、細胞における特定mRNAを分解して、コードされたタンパク質のレベルをノックアウト、またはノックダウンすることにより、遺伝子機能を調査するために使用される技術である。siRNAの作用メカニズムは、多段階プロセスを伴うと考えられる。まず、二重鎖RNA(dsRNA)が、RNaseIIIファミリーのメンバーによって認識され、そして、21個〜23個のヌクレオチドのsiRNAへと分割される。次に、それらのsiRNAはが、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるRNAi標的化複合体へと組み込まれる。RISCは、標的mRNAを認識する、二重機能のヘリカーゼおよびRNaseである。標的mRNAを認識した後、上記RISCは、このmRNAと結合し、そして、上記siRNAのアンチセンス鎖が上記標的mRNAに対し、相補的塩基対形成(ワトソン−クリック塩基対形成)によって結合することを可能とするsiRNAを解放する。この解放は、上記mRNAの加水分解および崩壊を引き起こし、タンパク質発現の減少をもたらす。その上に、siRNAは、どうやら再利用されるようであり、結果として、1つのsiRNA分子が、約1000のmRNA分子の切断を誘発し得る。それゆえ、siRNA媒介性RNAiは、標的遺伝子の発現を阻害するための現在利用可能な他の技術よりも効率的である。
【0012】
本明細書中で開示されたすべての参考文献、刊行物、特許出願および特許は、その全体が、本明細書により参考として援用される。
【0013】
(本発明の概要)
本発明は、短い干渉核酸、特に上記Na1.8ナトリウムチャネル遺伝子からmRNAのRNA誘導性の分解を標的とし、そして、この分解を引き起こす短い干渉核酸、および、このような短い干渉核酸を使用する方法に関する。
【0014】
本発明の一実施形態は、以下:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸を提供する。この単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸は、さらに3’オーバーハング(overhang)を含み得る。上記短い干渉核酸のいずれか1つ以上および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物もまた提供される。
【0015】
本発明の別の実施形態は、以下:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含み、かつこれらに対する相補的なヌクレオチド配列をさらに含む、単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸を提供する。この単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸は、さらに3’オーバーハングを含み得る。上記短い干渉核酸のいずれか1つ以上および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物もまた提供される。
【0016】
別の実施形態は、以下:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含み、かつ、これらに対する相補的なヌクレオチド配列をさらに含む、単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸を提供し、ここで、上記ヌクレオチド配列および相補的なヌクレオチド配列は、ハイブリダイズして二重鎖を形成する。上記ヌクレオチド配列および相補的なヌクレオチド配列は、各々、さらに3’オーバーハングを含み得る。上記二重鎖のいずれか1つ以上および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物もまた提供される。
【0017】
さらなる実施形態は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む、単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸を提供し、ここで、上記センス鎖およびアンチセンス鎖はハイブリダイズして二重鎖を形成し、上記センス鎖は標的配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列を含み、そして、上記標的配列は、以下:配列番号12〜配列番号577からなる群より選択される。上記センス鎖およびアンチセンス鎖は、各々、さらに3’オーバーハングを含み得る。上記二重鎖のいずれか1つ以上および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物もまた提供される。
【0018】
本発明の一実施形態は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、組み換えベクターを提供する。
【0019】
別の実施形態は、mRNAのポリペプチドへの翻訳を阻害するための方法を提供し、この方法は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、1つ以上の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸と、Na1.8 mRNAを発現し得る細胞とを接触させる工程を包含する。
【0020】
別の実施形態は、ポリペプチドの発現を阻害するための方法を提供し、この方法は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、1つ以上の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸と、Na1.8ポリペプチドを発現し得る細胞とを接触させる工程を包含する。
【0021】
別の実施形態は、細胞におけるNa1.8に由来する膜電位をブロックするための方法を提供し、この方法は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、1つ以上の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸と、Na1.8ポリペプチドを発現する細胞とを接触させる工程を包含する。
【0022】
さらなる実施形態は、細胞におけるNa1.8に由来するナトリウムイオンフラックスをブロックするための方法を提供し、この方法は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、1つ以上の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸と、Na1.8ポリペプチドを発現する細胞とを接触させる工程を包含する。
【0023】
さらなる実施形態は、慢性疼痛を阻害するための方法を提供し、この方法は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、1つ以上の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む有効量の薬学的組成物を、この薬学的組成物の投与を必要とする被験体に投与する工程を包含する。上記単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸は、さらに3’オーバーハングを含み得る。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下の短い干渉核酸などが提供される:
(項目1)
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11の配列番号からなる群より選択されるヌクレオチド配列、またはそれらのアナログを含む、単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸。
(項目2)
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号9および配列番号10からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、項目1に記載の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸。
(項目3)
さらに3’オーバーハングを含む、項目1に記載の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸。
(項目4)
項目1または項目3のいずれかに記載の短い干渉核酸、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目5)
項目1または項目3のいずれかに記載の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸であって、さらに、該短い干渉核酸に相補的なヌクレオチド配列を含む、短い干渉核酸。
(項目6)
さらに3’オーバーハングを含む、項目5に記載の相補的なヌクレオチド配列。
(項目7)
項目5または項目6のいずれかに記載の短い干渉核酸および相補的なヌクレオチド配列、ならびに、薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目8)
前記ヌクレオチド配列と前記相補的なヌクレオチド配列とがハイブリダイズして二重鎖を形成する、項目5に記載の単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸。
(項目9)
前記ヌクレオチド配列が、さらに3’オーバーハングを含み、かつ前記相補的なヌクレオチド配列が、さらに3’オーバーハングを含む、項目8に記載の二重鎖。
(項目10)
項目8または項目9のいずれかに記載の二重鎖、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目11)
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸であって、該センス鎖と該アンチセンス鎖とがハイブリダイズして二重鎖を形成し、該センス鎖が、実質的に標的配列と同一であるヌクレオチド配列を含み、そして、該標的配列が、配列番号12〜配列番号577からなる群より選択される、短い干渉核酸。
(項目12)
前記センス鎖が、さらに3’オーバーハングを含み、かつ前記アンチセンス鎖が、さらに3’オーバーハングを含む、項目11に記載の二重鎖。
(項目13)
項目11または項目12のいずれかに記載の二重鎖、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目14)
項目1または項目3に記載のヌクレオチド配列を含む、組み換えベクター。
(項目15)
mRNAのポリペプチドへの翻訳を阻害するための方法であって、項目1または項目3に記載の短い干渉核酸と、Na1.8 mRNAを発現し得る細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目16)
ポリペプチドの発現を阻害するための方法であって、項目1または項目3に記載の短い干渉核酸と、Na1.8ポリペプチドを発現し得る細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目17)
細胞における膜電位をブロックするための方法であって、項目1または項目3に記載の短い干渉核酸と、Na1.8ポリペプチドを発現し得る細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目18)
細胞におけるナトリウム電流をブロックするための方法であって、項目1または項目3に記載の短い干渉核酸と、Na1.8ポリペプチドを発現し得る細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目19)
慢性疼痛を阻害するための方法であって、項目4、項目7、項目10または項目13のいずれかに記載の薬学的組成物の有効量を、この組成物を必要とする被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目20)
慢性疼痛を阻害するための医薬の製造における、項目1または項目3に記載の1つ以上の短い干渉核酸の使用。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に引用されるすべての文献は、その全体が参考として援用される。
【0025】
(定義)
本願において使用される場合、「アンチセンス鎖」という用語は、センス鎖と相補的である核酸配列を意味する。
【0026】
本願において使用される場合、「慢性疼痛」という用語は、長期間継続する疼痛を意味する。
【0027】
本願において使用される場合、「相補的な」という用語は、別のヌクレオチド配列とワトソン−クリック塩基対形成を示す(すなわち、プリンがピリミジンに結合する)、ヌクレオチド配列を意味する。例えば、ヌクレオチド配列が、センス鎖を表し得る一方で、それと相補的なヌクレオチド配列は、アンチセンス鎖を表し得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「二重鎖」という用語は、センス鎖およびアンチセンス鎖のようなハイブリダイズした2つの相補的な核酸配列を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「発現する」および「発現」という用語は、核酸の転写および翻訳がポリペプチドを生成する分子生物学的なプロセス、すなわち、遺伝情報が遺伝子からタンパク質へと流れるプロセス、および遺伝子の効果が発現される分子生物学的なプロセスを意味する。
【0030】
「相同性」および「相同的な」という用語は、2つの核酸配列間の比較をいい、これらの配列が、整列および比較される場合、「相同性」および「相同的な」という用語は、類似性を示す。2つの核酸配列間の相同性は、配列比較により決定されても、ハイブリダイゼーション条件に基づいて決定されてもよい。ヌクレオチド配列の相同性は、ヌクレオチドの挿入または欠失を考慮するために最適に整列されるときに、2つの配列(またはその相補鎖)におけるヌクレオチド残基が同一である場合に観察される。相同性はまた、1つのヌクレオチド配列が、選択的なハイブリダイゼーション条件の下で、別の配列にハイブリダイズする場合にも存在する。相同性を確立するためのハイブリダイゼーションにおいて採用される条件のストリンジェンシーは、塩濃度、温度、有機溶媒の存在および他のパラメータなどの要素に依存する。
【0031】
本願において使用される場合、「ノックダウン」という用語は、mRNAの発現レベルを減少し、結果として、mRNAのタンパク質への翻訳が減縮されることを意味する。
【0032】
本願において定義される「ノックアウト」という用語は、mRNAの発現を妨害し、結果として、mRNAのタンパク質への翻訳が生じないことを意味する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「mRNA」という用語は、メッセンジャーRNAを意味する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「膜電位」という用語は、細胞膜の両側にわたる電荷の差を意味する。
【0035】
本願において使用される場合、「疼痛」という用語は、通常は疾患、傷害、またはストレスの結果である、微かな不快さから極端な苦痛もしくは激痛までの範囲の身体における不快な感覚などの肉体的な痛み;または思考の不快さ、精神的な苦痛、苦悩、不安もしくは悲嘆などの精神的な痛みを意味する。
【0036】
本願において使用される場合、「RNAi」という用語は、RNA干渉を意味し、このRNA干渉は、細胞または生体における特定mRNA標的を分解し、これによりそのコードされるタンパク質のレベルをノックアウトするか、またはノックダウンすることにより、遺伝子機能を調査するために使用される技術である。これはまた、RNAサイレンシングとも呼ばれる。
【0037】
本願において使用される場合、「センス鎖」という用語は、核酸のコーディング鎖を意味する。
【0038】
本願において使用される場合、「siRNA」という用語は、短い干渉リボ核酸か、または低分子量干渉リボ核酸のいずれかを意味し、これは、RNA干渉のRNAサイレンシングメカニズムの型の1つである。
【0039】
本願において定義される「短い干渉核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)か、リボ核酸(RNA)のいずれか、またはそれらの両方の組み合わせの短い干渉性のストレッチを意味する。この用語はまた、これらの核酸への修飾および従来にない(non−traditional)塩基も含む。好ましくは、短い干渉核酸は、siRNAである。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「ナトリウム電流」という用語は、細胞の膜電位のナトリウムイオンの効果に起因する部分を意味する。
【0041】
「被験体」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を意味する。
【0042】
本願において使用される場合、「トランスフェクトする」という用語は、ウイルスの使用などを通して、細胞への核酸の導入を意味する。
【0043】
本願において定義される「転写」という用語は、一本鎖RNAが二本鎖DNAから合成される分子生物学的なプロセスを意味する。
【0044】
本願において使用される場合、「翻訳」という用語は、ポリペプチドがmRNAから合成される分子生物学的なプロセスを意味する。
【0045】
本明細書中で定義される「処置」という用語は、任意の臨床上望ましい、または有益な効果(1つ以上の症状の軽減、疾患または障害の退行、疾患または障害の進行の遅滞または停止を含むが、それらに限定されない)をもたらす、疾患または障害に対する治療的、予防的、または抑制的な手段を意味する。
【0046】
(Na1.8の特徴づけ)
Na1.8ナトリウムチャネルは、1つのαサブユニットおよび少なくとも1つのβサブユニットを含む。Na1.8の完全なオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、当該分野において公知である。例えば、ラットNa1.8に対する核酸配列およびアミノ酸配列は両方とも、それぞれ、米国特許番号第6,451,554号の配列番号1および配列番号2において見られ得る。Na1.8およびそのサブユニットに対する核酸配列およびアミノ酸配列はまた、以下の表1に示されるように、GenBank(登録商標)データベースにおいても見られ得る。
【0047】
【表1】

ヒトNa1.8遺伝子は、ラットNa1.8遺伝子と、高度の相同性(約82%)を有する。それゆえ、ラットNa1.8ナトリウムチャネルをノックダウンし得るラットNa1.8の短い干渉核酸に対応する、ヒトNa1.8の短い干渉核酸は、ヒトNa1.8ナトリウムチャネルのノックダウンに有効であるように思われる。
【0048】
(核酸)
Na1.8 mRNAを標的とする短い干渉リボ核酸を含む組成物および方法は、慢性疼痛の処置のためにNa1.8ナトリウムチャネルの発現をノックダウンまたはノックアウトするために有利に使用される。特に、本発明の短い干渉リボ核酸は、Na1.8 mRNAのRNAi媒介性の破壊を引き起こす。
【0049】
Na1.8ナトリウムチャネルは、慢性疼痛状態における後根神経節においてアップレギュレートされる。それゆえ、Na1.8 mRNAの発現ならびにNa1.8の機能をノックダウンまたはノックアウトし得る短い干渉核酸配列は、慢性疼痛をブロックまたは処置することに有用であるはずである。
【0050】
それゆえ、本発明は、単離されたか、または組み換えの短い干渉核酸を提供する。本明細書中に使用される場合、「単離された」という用語は、通常は細胞において、または組み換え発現系において見られる、他の成分から実質的に分離された、RNA分子もしくはDNA分子などの核酸、または混合ポリマーを意味する。これらの成分としては、リボゾーム、ポリメラーゼ、血清成分および隣接ゲノム配列が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、このようにその天然に存在する環境から単離された短い干渉核酸を含み、そして、組み換えの、もしくはクローン化された短い干渉核酸単離体、および化学的に合成されたアナログ、または異種の系によリ生物学的に合成されたアナログを含む。実質的に純粋な分子は、分子の単離された形態を含む。
【0051】
単離された核酸は、一般に、分子の均質な組成物であるが、いくつかの実施形態においては、微細な異種性を含んでいてもよい。このような異種性は、代表的には、核酸コーディング配列の末端、または、所望の生物学的な機能もしくは活性に重要ではない領域において見られる。
【0052】
「組み換え」の短い干渉核酸は、その製造方法または構造のいずれかによって規定される。従って、いくつかの組み換え核酸は、操作または選択のいずれかにおいて、人間の介入を必要とする組み換えDNA技術を使用して作製される。他の組み換え核酸は、互いに本来は連続しない2つの断片を融合することによって作製される。加工されたベクター、ならびにあらゆる合成オリゴヌクレオチドプロセスを用いて誘導された配列を含む核酸が包含される。
【0053】
短い干渉核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。一本鎖の短い干渉核酸は、センス鎖を含み、一方で、二本鎖の短い干渉核酸は、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む。好ましくは、二本鎖の短い干渉核酸におけるセンス鎖とアンチセンス鎖とは、ワトソン−クリック塩基対形成の相互作用によってハイブリダイズして二重鎖を形成するか、または、一本鎖ヘアピン領域によって接続される。後者の型のsiRNAのヘアピン領域は、「ダイサー(Dicer)」タンパク質またはその等価物によって細胞内で切断され、2つの個々に塩基対形成したRNA分子のsiRNAを形成すると考えられる。
【0054】
短い干渉核酸は、17ヌクレオチド長〜29ヌクレオチド長、好ましくは、19ヌクレオチド長〜25ヌクレオチド長、より好ましくは、21ヌクレオチド長〜23ヌクレオチド長の範囲であり得、そして、最も好ましくは21ヌクレオチド長である。
【0055】
好ましくは、短い干渉核酸は、siRNAである。すなわち、配列中の全てのヌクレオチドが、リボヌクレオチド塩基である。
【0056】
しかし、本発明はまた、低分子量干渉核酸のアナログを包含する。短い干渉核酸のアナログは、1以上のヌクレオチド塩基の付加、欠失、変更、置換または修飾を含む。例えば、短い干渉核酸は、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基もしくは非伝統塩基、また
はこれらのいずれかの組み合わせを含むように、変更、置換または修飾され得る。
【0057】
好ましくは、本発明の短い干渉核酸の一方、または両方の鎖は、3’オーバーハングを含む。本明細書に使用される場合、「3’オーバーハング」は、短い干渉核酸鎖の3’末端から伸長する少なくとも1つの不対ヌクレオチドをいう。この3’オーバーハングは、1個〜6個のヌクレオチド(リボヌクレオチド、またはデオキシリボヌクレオチドを含む)、好ましくは1個〜5個のヌクレオチド、より好ましくは1個〜4個のヌクレオチド、特に好ましくは2個〜4個のヌクレオチドの範囲であり得、そして最も好ましくは2個のヌクレオチドであり得る。
【0058】
本発明の別の実施形態において、二重鎖のセンス鎖およびアンチセンス鎖は両方とも3’オーバーハングを含む。このオーバーハングの長さは、その二重鎖の各々の鎖に対して同じであっても、異なっていてもよい。最も好ましくは、3’オーバーハングは、その二重鎖の両鎖に存在し、そして、各々の鎖に対するオーバーハングは、2ヌクレオチド長である。例えば、その二重鎖の各鎖は、ジチミジル酸(「tt」)、またはジウリジル酸(「uu」)の3’オーバーハングを含み得る。
【0059】
上記短い干渉核酸の安定性を向上させるために、この3’オーバーハングはまた、分解に対しても安定化され得る。1つの実施形態において、3’オーバーハングは、アデノシンヌクレオチドまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含めることにより安定化される。あるいは、修飾アナログによるピリミジンヌクレオチドの置換(例えば、2’−デオキシチミジンでの3’オーバーハング中のウリジンヌクレオチドの置換)は、許容され、そして、RNAi分解の有効性に影響しない。特に、2’−デオキシチミジンにおいて2’ヒドロキシルが存在しないことは、組織培養培地における3’オーバーハングのヌクレアーゼ耐性をかなり向上させる。
【0060】
上記短い干渉核酸は、Na1.8標的mRNAを標的とする。本明細書に使用される場合、「Na1.8標的mRNAを標的とする」短い干渉核酸は、センス鎖が、標的mRNAの配列と同一か、または実質的に同一であるヌクレオチド配列を有し、かつこのmRNAのRNAi媒介性の分解を誘導し得る、一本鎖または二本鎖のいずれかの短い干渉核酸を意味する。勿論、二本鎖siRNAのアンチセンス鎖は、このsiRNAおよび標的mRNAのセンス鎖の両方と相補的である配列を有する。
【0061】
本明細書に使用される場合、標的配列と「実質的に同一である」短い干渉核酸は、標的配列と1個〜4個のヌクレオチド異なる核酸配列である。例えば、短い干渉核酸は、標的mRNAのRNAi媒介性の分解が、この短い干渉核酸により誘発されるかぎり、標的配列と1個、2個、3個、または4個のヌクレオチド異なるセンス鎖を含み得る。
【0062】
本明細書に使用される場合、「標的mRNA」、または「標的配列」は、ヒトNa1.8 mRNA、Na1.8mの変異体もしくは選択的スプライシング形態、または同族Na1.8遺伝子に由来するmRNAを意味する。本明細書に使用される場合、「変異体」という用語は、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド置換、またはヌクレオチド修飾を有することにより上記標的mRNAと異なる短い干渉核酸を意味する。これらの変更は、例えば、以下:上記短い干渉核酸の末端、またはこの短い干渉核酸の内部ヌクレオチドの1つ以上などへの非ヌクレオチド質の付加;上記短い干渉核酸にヌクレアーゼ消化に対する耐性を有させる修飾;またはデオキシリボヌクレオチドでの短い干渉核酸における1つ以上のヌクレオチドの置換を含み得る。本明細書に使用される場合、「同族」という用語は、別の哺乳動物種に由来する核酸を意味する。ヒトNa1.8 mRNAは、そのそれぞれの同族、または変異体と共通する標的配列を含み得ると理解される。それゆえ、このような共通する標的配列を含む短い干渉核酸は、この共通する標的配列を含む異なるRNA型のRNAi媒介性の分解を誘導し得る。
【0063】
本発明の短い干渉核酸は、任意の標的mRNA配列における約19個〜25個の隣接ヌクレオチドの任意のストレッチの標的とされ得る。短い干渉核酸に対する標的配列を選択するための技術は、当該分野で公知である。さらに、標的mRNAに関する標的配列は、開始コドンから50個のヌクレオチド〜100個のヌクレオチド下流に、すなわち、3’方向に向かって始まる、標的mRNAに対応する所定のcDNAから選択され得る。しかしながら、この標的配列は、5’もしくは3’非翻訳領域に、または開始コドンの近くの領域に位置し得る。Na1.8 cDNA配列における適切な標的配列は、実施例1で与えられる。
【0064】
本発明の短い干渉核酸は、部分的に精製された核酸、実質的に純粋な核酸、合成核酸、または組み換え生成された核酸を含み得る。本明細書に定義される「実質的に純粋な」という用語は、他の混入タンパク質、他の混入核酸および元々の起源となる生体に由来する他の生物学的因子、または組み換えDNA発現系にない短い干渉核酸を意味する。純粋性は、標準的な方法で分析され得、そして、代表的には少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも95%の純粋性を超える。この純粋性評価は、大量基準、またはモル基準で為され得る。
【0065】
本発明の短い干渉核酸は、当業者に公知の多数の技術のいずれか1つを使用して入手され得る。さらに、この短い干渉核酸はまた、2つの別個の相補的な核酸分子としても、または2つの相補的な領域を有する1つの核酸分子としても合成され得る。例えば、本発明の短い干渉核酸は、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト(phosphoramidite)および従来のDNA/RNA合成装置、または他の周知の方法を使用して化学的に合成される。さらに、この短い干渉核酸は、Proligo(Hamburg,Germany)、Dharmacon Research(Lafayette,CO,USA)、Pierce Chemical(Perbio Science,Rockford,IL,USAの一部門)、Glen Research(Sterling,VA,USA)、ChemGenes(Ashland,MA,USA)およびCruachem(Glasgow,UK)などの市場供給者により、生成され得る。
【0066】
あるいは、短い干渉核酸はまた、任意の適切なプロモーターを使用して、環状DNAプラスミド、または線形DNAプラスミドなどの組み換え発現ベクターからも、発現され得る。組み換え発現ベクターは、代表的には、短い干渉核酸の1つをコードする核酸を含む自己複製DNA構築物または自己複製RNA構築物であり、この短い干渉核酸は、通常は適合性のある宿主細胞における核酸の発現を調節し得る適切な遺伝子制御エレメントと作動可能に連結される。遺伝子制御エレメントは、原核生物プロモーター系、または真核生物プロモーター発現制御系を含み得、そして、代表的には、転写プロモーター、転写の開始を制御する任意のオペレーター、mRNA発現のレベルを高める転写プロモーター、適切なリボゾーム結合部位、翻訳開始部位、ポリアデニル化部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳を終了する配列を含み得る。発現ベクターはまた、このベクターが、宿主細胞から独立して複製することを可能にする複製起点、または抗体に対する耐性を付与する遺伝子などの選択遺伝子も含み得る。
【0067】
本発明において使用され得るベクターは、微生物プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組み込み可能なDNA断片、および宿主のゲノムへの核酸の組み込みを促進し得る他のビヒクルを含む。プラスミドは、一般に使用されるベクターの形態であるが、相当する機能を果たし、当該分野で公知であるか、または公知になるあらゆる他のベクターの形態が、本明細書での使用に適切である。例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,N.Y.、1985および補遺、ならびにRodriguezら編、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Buttersworth,Boston,MA,1988を参照のこと。
【0068】
プラスミドからの本発明の短い干渉核酸を発現させるための適切なプロモーターは、例えば、U6プロモーター、H1 RNA pol III プロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーターを含む。他の適切なプロモーターの選択は、当該分野の技術の範囲内である。本発明の組み換えプラスミドはまた、特定の組織における、または特定の細胞内環境における短い干渉核酸の発現のための、誘導性もしくは調節可能なプロモーターも含み得る。
【0069】
組み換えプラスミドから発現された短い干渉核酸は、標準的な技術により培養細胞発現系から単離されても、細胞内で発現されてもよい。本発明の短い干渉核酸は、2つの別個の相補的なRNA分子か、または2つの相補的な領域を有する1つのRNA分子のいずれかとして、組み換えプラスミドから発現され得る。本発明の短い干渉核酸を発現させるために適切であるプラスミドの選択、短い干渉核酸を発現させるための核酸配列をこのプラスミドに挿入するための方法、およびその組み換えプラスミドを目的の細胞に送達するための方法は、当該分野の技術の範囲内である。例えば、Tuschl、Nat.Biotechnol,2002,vol.20、pp.446−448;Brummelkampら、Science,2002,vol.296、pp.550−553;Miyagishiら、Nat.Biotechnol,2002,vol.20,pp.497−500;Paddisonら、Genes Dev.,2002,vol.16,pp.948−958;Leeら、Nat.Biotechnol,2002,vol.20,pp.500−505;Paulら、Nat.Biotechnol,2002,vol.20,pp.505−508;およびSuiら、Proc.Natl.Acad.Sci.vol.99,2002,pp5515−5520を参照のこと。
【0070】
一例として、プラスミドは、ヒトU6RNAプロモーターの制御下のポリT終止配列と作動可能に結合したセンスRNA鎖コーディング配列およびヒトU6RNAプロモーターの制御下のポリT終止配列と作動可能に結合したアンチセンスRNA鎖コーディング配列を含み得る。
【0071】
本明細書に使用される場合、「と作動可能に結合した」という用語は、センス鎖またはアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、別の配列に隣接することを意味する。好ましくは、センス鎖またはアンチセンス鎖をコードする配列は、5’方向においてポリT終止シグナルに直接的に隣接する。それゆえ、プラスミドからセンス配列またはアンチセンス配列を転写する間、このポリT終止シグナルは、転写を終了させるように作用する。
【0072】
本明細書に使用される場合、「プロモーターの制御下」という用語は、センス鎖またはアンチセンス鎖をコードする核酸配列が、このプロモーターの3’末端に位置し、結果として、このプロモーターがセンス鎖またはアンチセンス鎖のコーディング配列の転写を開始し得ることを意味する。
【0073】
短い干渉核酸の発現は、原核生物細胞または真核生物細胞のいずれかにおいて従来の方法で実行され得る。原核生物としては、グラム陰性生物およびグラム陽性生物の両方、例えば、大腸菌およびB.subtilisが挙げられる。より高等な真核生物細胞としては、非哺乳動物起源(例えば、昆虫細胞および鳥類)および哺乳動物起源(例えば、ヒト、霊長類およびげっ歯類)の両方の動物細胞から確立された組織培養細胞株が挙げられる。多くの適切な宿主細胞が、当該分野において公知である。好ましい宿主細胞は、HEK293細胞および神経芽種/DRG細胞系ND7/23である。
【0074】
本発明の短い干渉核酸はまた、組み換えウイルスベクターからも発現され得る。本発明の組み換えウイルスベクターは、本発明の短い干渉核酸をコードする配列および短い干渉核酸配列を発現させるための任意の適切なプロモーターを含む。ウイルスベクターから短い干渉核酸を発現させるために適切なプロモーターとしては、例えば、U6プロモーター、H1 RNA pol IIIプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーターが挙げられる。他の適切なプロモーターの選択は、当該分野の技術の範囲内である。本発明の組み換えウイルスベクターはまた、特定の組織において、または特定の細胞内環境において、短い干渉核酸の発現に対して、誘導性または調節可能であるプロモーターをも含み得る。本発明の短い干渉核酸をインビボで細胞に送達するための組み換えウイルスベクターの使用は、実施例5においてより詳細に議論される。
【0075】
本発明の短い干渉核酸は、2つの別個の相補的な核酸分子か、2つの相補的な領域を有する1つの核酸分子のいずれかとして、組み換えウイルスベクターから発現され得る。
【0076】
発現されるべき短い干渉核酸分子についてのコーディング配列を受容し得る任意のウイルスベクター(例えば、アデノウイルス(AV)、アデノ関連ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ヘルペスウイルスなどに由来するベクター)が使用され得る。さらに、ウイルスベクターの向性はまた、他のウイルスに由来するエンベロープタンパク質、または他の表面抗原を有するベクターを偽型することによっても改変され得る。
【0077】
本発明における使用のために適切である組み換えウイルスベクターの選択、短い干渉核酸を発現させる核酸配列をこのベクターに挿入するための方法、およびウイルスベクターを目的の細胞に送達するための方法は、当該分野の技術の範囲内である。例えば、Domburg、Gene Therap.,1995,vol.2,pp.301−310;Eglitis、Biotechniques,1988,vol.6,pp.608−614;Miller、Hum Gene Therap.,1990,vol.1,pp.5−14;およびAnderson、Nature,1998,vol.392,pp.25−30を参照のこと。
【0078】
好ましいウイルスベクターは、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスに由来するベクターである。特に好ましい実施形態において、本発明の短い干渉核酸は、U6プロモーターを含む組み換えアデノウイルスベクターからの一本鎖核酸分子として発現される。好ましいウイルスベクターはまた、ヘルペスウイルスベクターでもある。例えば、Burton、E.A.ら、Curr.Opin.Mol.Ther.,2005 Aug,7(4):326−36およびYeomans D.D.ら、Hum Gene Therap.,2005 Feb,16(2):271−7を参照のこと。制限ではなく一例として、上記発現された一本鎖核酸分子は、一本鎖のヘアピン領域によってつながれた2つの相補的な領域を含み得る。この一本鎖核酸分子は、さらに3’ハングオーバーを含み得る。
【0079】
(インビボ方法およびインビトロ方法)
標的mRNAのRNAi媒介性の分解を引き起こす短い干渉核酸の能力は、細胞におけるRNA、またはタンパク質のレベルを測定するための標準的な技術を使用して評価され得る。例えば、短い干渉核酸は、培養細胞に送達され得、そして、標的mRNAのレベルは、ノーザンブロット法、すなわち、ドットブロッティング技術により、または定量RT−PCRにより、測定され得る。あるいは、培養細胞におけるNa1.8タンパク質のレベルは、ELISA、またはウェスタンブロット法により測定され得る。標的mRNAレベル、またはタンパク質レベルに対する、本発明の短い干渉核酸の効果を測定するための適切な細胞培養系は、以下の実施例2に記載される。
【0080】
既に議論されたように、本発明の短い干渉核酸は、Na1.8 mRNA、またはその選択的スプライシング形態、変異体もしくは同族のRNAi媒介性の分解を標的とし、これを引き起こす。本発明の短い干渉核酸による標的mRNAの分解は、Na1.8遺伝子からの機能的遺伝子産物の生成を減少させる。このように、本発明は、被験体におけるNa1.8の発現を阻害するための方法、mRNAの翻訳を阻害するための方法、ポリペプチドの発現を阻害するための方法、細胞における膜電位に由来するNa1.8をブロックするための方法、および細胞におけるナトリウム電流に由来するNa1.8をブロックするための方法を提供する。本発明の方法において、ブロックは、膜電位に由来するNa1.8、またはナトリウム電流に由来するNa1.8における、消滅または減少を含むが、それらに限定されない。これらの方法は、実施例において、より徹底的に詳説されるが、これらの方法は全て、幾つかの共通の特性を共有する。
【0081】
上記方法の各々の工程は、細胞と短い干渉核酸とを接触させる工程を含む。インビボにおいて、この接触工程は、薬学的組成物中の短い干渉核酸を被験体に投与する工程を包含する。インビトロにおいて、この接触工程は、細胞および短い干渉核酸が相互に接触し得るように、この細胞および短い干渉核酸を物理的に密接に近接にさせる工程を包含する。この接触工程は、短い干渉核酸が細胞に入ることを可能にし、そして、Na1.8ナトリウムチャネル遺伝子からmRNAのRNAi誘導性の分解を引き起こす。
【0082】
好ましくは、上記接触工程は、配列番号1〜配列番号11の短い干渉核酸を利用する。配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号10および配列番号11の短い干渉核酸が好ましい。配列番号2および配列番号5の短い干渉核酸は、より好ましい。配列番号1および配列番号3の短い干渉核酸は、最も好ましい。制限ではなく一例として、以下:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11の1つ以上の短い干渉核酸もまた、本発明の方法において利用され得る。制限ではなく一例として、以下:配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号10および配列番号11の1つ以上の短い干渉核酸はまた、本発明の方法において使用され得る。その上、本発明の方法を実施する際、本発明の1つ以上の短い干渉核酸は、細胞または被験体に同時に、または連続的に投与され得ることが理解される。本発明は、さらに1つ以上のタンパク質および/または標的核酸と複合体化された本発明の短い干渉核酸と、1つ以上の本発明の短い干渉核酸を含む細胞とを提供する。
【0083】
(薬学的組成物)
本発明の短い干渉核酸およびsiRNAは、慢性疼痛を処置するために治療的に使用され得る。本発明の種々の化合物は、薬学的組成物内に組み込まれ得る。例えば、薬学的組成物は、一本鎖の短い干渉核酸、3’ハングオーバーを有する一本鎖の短い干渉核酸、二本鎖の短い干渉核酸、または各鎖が3’ハングオーバーを有する二本鎖の短い干渉核酸を含み得る。好ましくは、薬学的組成物は、配列番号1〜配列番号11の短い干渉核酸を含む。配列番号2および配列番号5の短い干渉核酸は、より好ましいが、配列番号1および配列番号3の短い干渉核酸が、最も好ましい。配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11の1つ以上の短い干渉核酸もまた、本発明の薬学的組成物において利用され得る。制限ではなく一例として、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号10および配列番号11の1つ以上の短い干渉核酸は、本発明の薬学的組成物において使用され得る。
【0084】
このような物質の治療的な投与のための代表的なプロトコルは、当該分野で周知である。本発明の組成物が単純な溶液で投与され得るとしても、これらの組成物は、より代表的には、キャリア、好ましくは薬学的に受容可能なキャリアなどの他の物質との組み合わせで投与される。「薬学的に受容可能なキャリア」という用語は、被験体に本発明の組成物を送達するのに適切な、任意の適合性があり、非毒性の物質を意味する。例えば、滅菌水、アルコール、脂肪、蝋および不活性固体は、キャリアに含まれ得る。緩衝剤および分散剤などの薬学的に受容可能なアジュバントもまた、上記薬学的組成物中に組み込まれ得る。一般に、このような薬物の非経口投与に有用である組成物は、周知である;例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company,Easton,PA,1990,第7版。
【0085】
治療処方物が投与され得る。処方物は、代表的には、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアとともに、少なくとも1つの活性成分を含む。処方物は、経口、経直腸、経鼻腔、経皮、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に適切である処方物を含み得る。処方物は、簡便に単位投薬形態で提供され得、そして薬学の分野において周知の任意の方法で調製され得る。例えば、Gilmanら編、The Pharmacological Bases of Therapeutics,第8版,Pergamon Press,1990;およびRemington’s Pharmaceutical Science、前出、Easton,Penn;Avisら編、Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Dekker,New York,1993;Liebermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Dekker,New York,1990;およびLiebermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Dekker,New York,1990を参照のこと。
【0086】
一例として、任意の本発明の短い干渉核酸またはベクターは、経皮送達可能であり得る。この経皮組成物は、クリーム、ローション、エアロゾルおよび/または乳濁液の形態を取り得、そして、この目的のためには当該分野においてconventionalである、マトリクスまたはレザバ型の経皮パッチに含まれ得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton,PA,1990,第17版を参照のこと。
【0087】
治療用途において必要とされる投薬レジメンは、治療物質の作用を変更し得る種々の因子(例えば、患者の状態、体重、性別および食事、あらゆる感染の重症度、投与時間および他の臨床上の因子)を考慮して、その主治医により決定される。しばしば、処置投薬量は、安全性および有効性を最適化するために低レベルから上方に滴定される。一般に、毎日の投薬量は、体重1キログラム当たり100μg〜500μgの範囲に入る。代表的には、投薬量の範囲は、体重1キログラム当たり150μg〜250μgである。好ましくは、投薬量の範囲は、体重1キログラム当たり200μgである。投薬量は、より小さな分子のサイズと、短縮する可能性のある投与後の半減期(クリアランス時間)とを考慮して調整され得る。本発明の組成物の「有効量」は、被験体における慢性疼痛を改善する量である。
【0088】
慢性疼痛は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む:約2ヶ月または約3ヶ月間存在する疼痛、日常の医療管理によって完全には解放されない疼痛、または通常の回復期間を超えて継続する疼痛。慢性疼痛の例としては、慢性神経障害性疼痛および慢性炎症性疼痛が挙げられるが、それらに限定されない。慢性神経障害状態および/または慢性炎症状態の例としては、ヘルペス後神経痛、痛みを伴う糖尿病性神経障害、神経根障害、神経圧迫傷害(例えば、手根管症候群、三叉神経痛、腫瘍関連神経圧迫)、上部および下部背痛(例えば、椎間板ヘルニア傷害、硬直性脊椎炎、または未知の病状から生じる症例)、複合型局部疼痛症候群I型およびII型、神経外傷痛(例えば、幻肢痛、手足の切断に起因する他の疼痛状態)、神経根剥離傷害、HIV関連疼痛、化学療法計画から生じる神経障害、網膜疾患、坐骨神経痛、異常痛覚過敏、痛覚過敏、および継続する灼熱痛(例えば、術後痛を含むが、それに限定されない創傷関連痛)、関節痛、慢性関節リウマチおよび骨関節炎、線維筋痛、火傷の痛み、神経炎、坐骨痛、腱炎、骨痛、偏頭痛、尿生殖器痛ならびに膀胱反射亢進に起因する神経障害状態が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0089】
本発明は、本発明の例示として提供される、以下の非限定的な実施例を参照してより良く理解され得る。以下の実施例は、本発明をより十分に例示するために示され、決して本発明の広い範囲を限定するものと理解されるべきではない。格別に示されることがなければ、固体混合物中の固体、液体中の液体、および液体中の固体に対して以下に与えられる割合は、各々、wt/wt、vol/volおよびwt/vol基準に基づく。一般に、細胞培養中は、無菌状態が維持される。
【0090】
(材料および一般的な方法)
例えば、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,1982;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,NY,1989,Vols 1−3;Ausbelら、Biology,Greene Publishing Associates,Brooklyn,NY;またはAusbelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene/Wiley,New York,1987および補遺;ならびにInnisら編、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,NY,1990に記載されるような標準的な分子生物学的方法を使用する。
【0091】
(実施例1)
この実施例は、Na1.8に対するsiRNAの設計を示す。ラットNa1.8コーディング配列およびヒトNa1.8コーディング配列の両方に対する推定siRNA配列を、Tuschlの予言則を使用して識別した。Tuschlら、「Targeted mRNA degradation by double−stranded RNA in vitro」,Genes Dev.,vol.13,no.24,pp.3191−3197、Dec.15、1999;およびElbashirら、「Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells」、Nature,vol.411,pp.494−498,2001を参照のこと。表2は、ヒトNa1.8コーディング配列に対する推定siRNA配列を識別する。また、その標的配列、その遺伝子における各標的配列の位置、およびこの標的配列におけるグアニン/シトシンの割合も示す。表3は、ラットNa1.8コーディング配列に対する推定siRNA配列を識別する。また、その標的配列およびその遺伝子における各標的配列の位置も示す。
【0092】
【表2−1】

【0093】
【表2−2】

【0094】
【表2−3】

【0095】
【表2−4】

【0096】
【表2−5】

【0097】
【表2−6】

【0098】
【表2−7】

【0099】
【表3−1】

【0100】
【表3−2】

【0101】
【表3−3】

【0102】
【表3−4】

【0103】
【表3−5】

【0104】
【表3−6】

【0105】
【表3−7】

上記siRNA配列のうち、5個を、インビトロにおいてNa1.8の発現および機能をノックダウンする能力を試験するために選択した。この5個のsiRNAは、全5874ヌクレオチドのNa1.8コーディング配列の異なる領域を包含するように選択した。各配列がそのゲノム内で位置するヌクレオチドの位置を含め、この5個のsiRNA配列を、以下の表4に示す。
【0106】
【表4】

(実施例2)
上記5個の選択されたsiRNA配列(配列番号1〜配列番号5)を、Qiagen Inc.,Valencia,CAにより合成した。次いで、本発明者らは、Na1.8 cDNAをpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミド(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングして、pcDNA−Na1.8コントロール発現プラスミドを生成した。このコントロールプラスミドをHEK293細胞(Microbix Biosystems,Inc.,Ontario,Canada M8Z3A8)にトランスフェクトさせると、これらの細胞は、高いレベルのNa1.8のRNAおよびタンパク質の発現を示した。Na1.8 RNAの発現を、製造業者の指示に従って、Taqman(登録商標)定量RT−PCRにより検出した。HEK293細胞におけるNa1.8タンパク質の発現を、Na1.8特異的ペプチド抗体、SOD1(AnaSpec,San Jose,Foster City,CA)を使用して、ウェスタン免疫ブロット分析により検出した。公開されたペプチド配列を、SOD1抗体を作製するために使用した。Novakovicら、「Distribution of the tetrodotoxin−resistant sodium channel PN3 in rat sensory neurons in normal and
neuropathic conditions」、J.Neurosicence,vol.18,no.6,pp.2174−2187,1998を参照のこと。
【0107】
(Na1.8 RNAのノックダウン)
上記5個の化学的に合成したsiRNA(配列番号1〜配列番号5)を、個別に、上記pcDNA−Na1.8コントロール発現プラスミドとともに、HEK293細胞へと同時にトランスフェクトした。このトランスフェクトした細胞における最終的なsiRNA濃度を、25nMに維持した。トランスフェクトの24時間後、これらの細胞を溶解し、そして、全RNAを、製造業者の指示に従って、RNAeasyミニカラム(Qiagen,Valencia,CA)を使用して溶解産物から精製した。個々のsiRNAを同時にトランスフェクトした細胞、またはコントロール細胞のいずれかから精製した全RNAを、Na1.8特異的Taqman(登録商標)プライマーおよびプローブセット(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用する、定量RT−PCR分析に使用した。あらゆるラットNa1.8特異的プライマーは、この点に関して機能するべきである。PCRプライマーの設計は、当該分野で公知である。
【0108】
siRNAをトランスフェクトした細胞におけるNa1.8 RNAの発現レベルを、コントロール細胞におけるRNA発現と比較した。pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドをトランスフェクトしたコントロール細胞は、100%のrNa1.8 RNA相対的発現レベルを示した。pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドおよび配列番号1のsiRNAを共に同時にトランスフェクトしたsiRNA 1細胞は、20%のrNa1.8 RNA相対的発現レベルを示した。pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドおよび配列番号2のsiRNAを同時にトランスフェクトしたsiRNA 2細胞は、65%のrNa1.8 RNA相対的発現レベルを示した。pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドおよび配列番号3のsiRNAを同時にトランスフェクトしたsiRNA 3細胞は、30%のrNa1.8 RNA相対的発現レベルを示した。pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドおよび配列番号4のsiRNAを同時にトランスフェクトしたsiRNA 4細胞は、115%のrNa1.8 RNA相対的発現レベルを示した。pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドおよび配列番号5のsiRNAを同時にトランスフェクトしたsiRNA 5細胞は、70%のrNa1.8 RNA相対的発現レベルを示した。
【0109】
siRNA 1またはsiRNA 3のいずれかを同時にトランスフェクトした細胞が、高いレベルのNa1.8 RNAサイレンシングを示した一方で、siRNA 2またはsiRNA 5のいずれかを同時にトランスフェクトした細胞は、適度なレベルのNa1.8 RNAサイレンシングを示した。Na1.8 RNA発現におけるノックダウンは、siRNA 4を同時にトランスフェクトした細胞には見られなかった。
【0110】
(Na1.8タンパク質のノックダウン)
上記5個の化学的に合成したsiRNA(配列番号1〜配列番号5)を、個別に、pcDNA−Na1.8コントロール発現プラスミドとともに、HEK293細胞へと同時にトランスフェクトした。このトランスフェクトした細胞における最終的なsiRNA濃度を、25nMに維持した。トランスフェクトの24時間後、これらの細胞を、変性溶解緩衝剤中で溶解し、そして、この溶解産物を、変性12%TBEゲル(Invitrogen,Carsbad,CA)上で泳動させた。このゲルを、ニトロセルロースシートへブロットさせ、そして、Na1.8特異的抗体−SOD1(AnaSpec,San Jose,CA)でプローブした。
【0111】
pcDNA3.1−Na1.8コントロール発現プラスミドをトランスフェクトした細胞(すなわち、コントロール細胞)からの溶解産物は、高いレベルのNa1.8タンパク質の発現を示した。pcDNA−Na1.8コントロール発現プラスミドと、siRNA 1またはsiRNA 3のいずれかとを同時にトランスフェクトした細胞からの溶解産物は、Na1.8タンパク質の発現のほとんど完全な消滅を示した。pcDNA−Na1.8コントロール発現プラスミドと、siRNA 2またはsiRNA 5のいずれかとを同時にトランスフェクトした細胞からの溶解産物は、適度なレベルのNa1.8タンパク質発現を示した。pcDNA−Na1.8コントロール発現プラスミドとsiRNA 4とを同時にトランスフェクトした細胞からの溶解産物は、Na1.8タンパク質発現における減少を示さなかった。
【0112】
(実施例3)
次に、本発明者らは、siRNAが、Na1.8ナトリウムチャネルを機能的にノックダウンできるかどうかを測定した。この測定は、FlexStation(登録商標)アッセイ(Nolecular Devices,Sunnyvale,CA)および電位固定測定法を使用して行なった。本発明者らは、レトロウイルスの組み込みによって、神経芽細胞種/DRG融合細胞株ND7/23(European Collection of Cell Cultures,Wiltshire,UK)においてNa1.8コーディング配列を安定して発現させた。上記ND7/23細胞株は、European Collection of Cell Cultures番号92090903号により識別される、マウス神経芽細胞種およびラットニューロンのハイブリッドである。このND7/23−Na1.8細胞株は、FlexStation(登録商標)膜電位分析および全細胞電位固定測定法の両方において、首尾一貫して高いレベルのNa1.8ナトリウム電流を示した。
【0113】
(FlexStation(登録商標)アッセイ)
本発明者らは、上記5個の選択されたsiRNA配列(配列番号1〜配列番号5)を、個別に、ND7/23−Na1.8細胞株にトランスフェクトした。このsiRNAによるNa1.8の機能的なノックダウンを、製造業者の指示に従って、FlexStation(登録商標)における膜電位分析を使用して確認した。FlexStation(登録商標)における読み取りは、個々のsiRNAによるトランスフェクトの1日後に行なった。
【0114】
コントロール細胞の発光レベルを、siRNA 1〜5を個別にトランスフェクトした細胞の発光レベルと比較した。全ての細胞に、Na1.8コーディング配列をトランスフェクトした。コントロール細胞は、175,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号1のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 1細胞は、48,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号2のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 2細胞は、70,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号3のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 3細胞は、45,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号4のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA
4細胞は、151,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号5のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 5細胞は、80,000単位の発光レベルを示した。
【0115】
siRNA 1およびsiRNA 3が、Na1.8に由来する膜電位をブロックした一方で、siRNA 2および siRNA 5は、膜電位における適度なブロックレベルを示した。siRNA 4は、膜電位における最小限のブロックレベルを示すか、全くブロックを示さなかった。個々のsiRNAによる膜電位におけるブロックレベルは、上記HEK系におけるsiRNAによるタンパク質サイレンシングおよびRNAサイレンシングの両方のレベルに類似した。この実験の別の例において、コントロール細胞は、198,698単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号1のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 1細胞は、46,068単位(コントロールシグナルの23%に対応する)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号2のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 2細胞は、71,523単位(コントロールの36%に対応する)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号3のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 3細胞は、42,422単位(コントロールの21%に対応する)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号4のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 4細胞は、151,067単位(コントロールの76%に対応する)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号5のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 5細胞は、80,567単位(コントロールの41%に対応する)の発光レベルを示した。
【0116】
(電位固定測定法(Voltage clamp measurement))
さらにNa1.8ナトリウム電流の機能的なノックダウンを確認するために、本発明者らは、引き続いてsiRNA 1をトランスフェクトしたND7/23−Na1.8コントロール細胞において全細胞電位固定測定法を実施した。簡単に述べると、ND7/23−Na1.8細胞を、非サイレンシングsiRNAを擬似的にトランスフェクトした(すなわち、コントロール細胞)か、またはsiRNA 1をトランスフェクトした(すなわち、siRNA 1細胞)。このsiRNA 1の濃度を、25nMに維持した。緑色蛍光タンパク質(GFP)(Clontech,Palo Alto,CA)を同時にトランスフェクトすることにより識別させた、トランスフェクトに成功した細胞を、全細胞電位固定測定法のために使用した。測定は、トランスフェクトの24時間後およびトランスフェクトの48時間後の両方において行なった。
【0117】
トランスフェクトの24時間後において、コントロール細胞が、−900の最高振幅を示した一方で、siRNA細胞は、−175の最高振幅を示した。トランスフェクトの48時間後において、コントロール細胞が、−775の最高振幅を示した一方で、siRNA細胞は、−175の最高振幅を示した。それゆえ、本発明者らは、siRNA 1をトランスフェクトした細胞におけるナトリウム電流のほとんど完全なブロックを観察した。実際、このブロックは、85%以上の大きさであった。さらに、Na1.8ブロックの特異性を、siRNA 1で処理したND7/23−Na1.8細胞において、テトロドトキシン感応電流におけるブロックが見られなかったという観察により確認した。
【0118】
別の例において、トランスフェクトの24時間後において、コントロール細胞(サンプルサイズ=10)が、−912pAの平均最高全細胞Na1.8電流振幅を示した一方で、siRNA 1細胞(サンプルサイズ=11)は、−169pAの平均最高振幅を示した。このように、トランスフェクトの24時間後には、siRNA 1は、Na1.8電流振幅はコントロールの18.5%に減少した。さらに、意図的なテトロドトキシン耐性Na1.8ナトリウムチャネルに対するsiRNA 1の効果の特異性を、トランスフェクトの24時間後または48時間後のいずれかにおいて、siRNA 1で処理したND7/23−Na1.8細胞において、バックグラウンドとなるテトロドトキシン感応Na1.8ナトリウム電流における減少が見られなかったという観察により、確認した。
【0119】
(実施例4)
高いレベルのNa1.8ノックダウンを示すバックアップsiRNAを識別するために、本発明者らは、siRNA 1およびsiRNA 3を含むNa1.8コーディング配列の領域において、6個のさらなるsiRNA(配列番号6〜配列番号11)を設計した。これらの6個のさらなるsiRNAは、実施例1において概略されたのと同じ手順を使用して設計し、そして、以下の表5で示されるように、以下:
【0120】
【表5】

の配列を有する。
【0121】
6個のさらなるsiRNA:配列番号6〜配列番号11を、ND7/23におけるNa1.8に由来する膜電位をノックダウンする能力について選別した。実施例3における手順と類似した手順を使用して、コントロール細胞の発光レベルを、siRNA 6〜siRNA 11を個別にトランスフェクトした細胞の発光レベルと比較した。これらのコントロール細胞は、175,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号6のsiRNAをトランスフェクトされたsiRNA 6細胞は、85,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号7のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 7細胞は、50,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号8のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 8細胞は、45,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号9のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 9細胞は、43,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号10のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 10細胞は、10,000単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号11のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 11細胞は、35,000単位の発光レベルを示した。実施例2および実施例3における手順と類似した手順を使用して、本発明者らは、6個全てのsiRNAが、Na1.8発現および機能をブロックし得、有効なsiRNAのコレクションをもたらしたことを決定した。
【0122】
別の例において、上記コントロール細胞は、198,698単位の発光レベルを示した。引き続いて配列番号6のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 6細胞は、86,105単位(コントロール細胞の43%)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号7のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 7細胞は、50,237単位(コントロール細胞の25%)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号8のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 8細胞は、44,038単位(コントロール細胞の22%)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号9のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 9細胞は、46,917単位(コントロール細胞の24%)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号10のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 10細胞は、21,847単位(コントロール細胞の7%)の発光レベルを示した。引き続いて配列番号11のsiRNAをトランスフェクトしたsiRNA 11細胞は、30,587単位(コントロール細胞の15%)の発光レベルを示した。
【0123】
(実施例5)
(Na1.8 siRNAのアデノウイルス送達)
長期間にわたる細胞へのsiRNA送達およびNa1.8機能のノックダウンのために、本発明者らは、siRNA発現を駆動するアデノウイルスベクターを設計した。簡単に述べると、この構築物は、U6プロモータカセットの制御下で、siRNA 3(配列番号3)を発現するように設計した。次いで、このsiRNA 3発現カセットを、E1欠失pTG4213アデノウイルス骨格(Transgene,SA,France)へとクローニングした。
【0124】
実施例3からのND7/23−Na1.8細胞を、1e粒子/mlの濃度でsiRNA 3アデノウイルスベクター構築物を感染させた。コントロール細胞を、U6プロモータカセットを含むコントロールアデノウイルスを、同じ濃度で感染させた。感染細胞は、Taqman(登録商標)アッセイ、またはFlexStation(登録商標)アッセイのいずれかを実行するために、全RNA精製のために溶解させた。
【0125】
Taqman(登録商標)アッセイのために、感染細胞を、感染の6、8および10日後(dpi)に溶解し、そして、溶解産物から精製したRNAを、定量RT−PCR分析によりNa1.8発現を測定するために使用した。感染の6日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAの割合として発現したNa1.8 RNA発現は、18%であった。感染の8日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAの割合として発現したNa1.8 RNA発現は、22%であった。感染の10日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAの割合として発現したNa1.8 RNA発現は、30%であった。
【0126】
FlexStation(登録商標)アッセイのために、感染細胞を、感染の2、4、6、8および10日後(dpi)において、FlexStation(登録商標)上のNa1.8に由来する膜電位を測定するために使用した。各時点において、siRNA 3アデノウイルスベクター構築物を感染細胞における膜電位におけるノックダウンを、コントロールのアデノウイルス感染細胞における膜電位と比較した。感染の2日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAと比較したナトリウム電流の割合は、45%であった。感染の4日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAと比較したナトリウム電流の割合は、15%であった。感染の6日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAと比較したナトリウム電流の割合は、8%であった。感染の8日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAと比較したナトリウム電流の割合は、8%であった。感染の10日後において、非サイレンシングアデノウイルスsiRNAと比較したナトリウム電流の割合は、4%であった。
【0127】
ウイルス−siRNA構築物に伴って見られたRNA発現における減少が、Na1.8ナトリウムチャネル活性の機能における減少を表したものであることをさらに確認するために、本発明者らは、数回の全細胞電位固定実験を実行して、感染後の種々の時間において、Na1.8媒介性の電流を直接測定した。これらの実験の各々において、電流振幅は、コントロール非サイレンシングsiRNA構築物、またはアデノウイルス−siRNA構築物のいずれかを事前に感染させたND7/23−Na1.8細胞のサンプルで測定した。非サイレンシングウイルス構築物による感染の4日後において、全平均(10細胞をサンプルにした)全細胞Na1.8電流が、−821pAであった一方、siRNA−ウイルス感染細胞において測定した電流は、−101pA(12.3%のコントロールに対応する)であった。非サイレンシングウイルス構築物による感染の6日後において、全平均(10細胞をサンプルにした)全細胞Na1.8電流が、−932pAであった一方、siRNA−ウイルス感染細胞において測定した電流は、−247.7pA(26.6%のコントロールに対応する)であった。非サイレンシングウイルス構築物による感染の10日後において、全平均(10細胞をサンプルにした)全細胞Na1.8電流が、−976.7pAであった一方、siRNA−ウイルス感染細胞において測定した電流は、−542.7pA(55.6%のコントロールに対応する)であった。
【0128】
このように、Taqman(登録商標)およびFlexStation(登録商標)ならびに電位固定アッセイは、Na1.8 RNA発現および少なくとも8dpiの間継続したNa1.8に由来する膜電位のノックダウンを示した。siRNA発現アデノウイルスによる感染は、Na1.8発現およびNa1.8機能の少なくとも80%のノックダウンを引き起こした。このように、高いレベルの継続されたNa1.8ブロックを、siRNA送達のためのウイルスベクターを使用して示した。
【0129】
(実施例6)
(慢性的な痛みを有するラットモデルにおけるNa1.8 siRNAの効果)
Na1.8−siRNAの効果を、siRNA 3を使用して、慢性疼痛を有するラットモデルにおいて調べた。後足触覚を、等級化されたフォン−フライマイクロフィラメント(=ベースライン感度)を使用して、ラットのコホートにおいて測定した。次いで、これらのラットを、標準的な縫合材料を使用して生じさせた緩い結紮傷害の後に、中腿における左坐骨神経の露出を必然的に伴う外科手順に供した。この傷を閉じ、これらの動物を、あらゆるその後の行動評価の前に、少なくとも1週間、上記処置から回復させた。上記処置に起因する神経外傷が、左後足における触覚過敏(触覚異痛と呼ばれる状態)を引き起こした。異痛の程度を、ベースライン測定のために使用するのと同じフォン−フライマイクロフィラメント処置を使用して定量した。これらの測定を、処置日の13日後に行なった。異痛に関するsiRNA 3(配列番号3)の効果を測定するために、このsiRNAを、恒久的なくも膜下留置カテーテルを通して、脊髄の周りのくも膜下腔に二重鎖として送達した。2μgのsiRNA 3の2回の別々の注射を、3日間にわたって毎日行い、コントロールラットには、同じ時間のプロトコルを用いて、ビヒクルのみの同一の注射を与えた。
【0130】
これらの実験で使用するラットのベースライン後足感度は、13グラム〜15グラムの間の力であった。上記神経外傷の13日後、ラットの後足感度を各ラットにつき再決定し、そして、siRNA群と名付けたコホートにおいては1.2±0.4gであり、コントロールコホートおいては2.1±0.4gであることを発見した(薬物処置された群においては、コホートサイズ=6ラット、コントロール群においては、コホートサイズ=5ラット)。それゆえ、神経傷害が、慢性神経性疼痛状態を誘発する傷害に苦しむヒト被験体に見られる痛みに典型的な、ひどい痛みを伴う触覚過敏(異痛)を引き起した。通常の評価は、この痛みを伴う異痛状態が、ビヒクルのみの注射を受けたラットのコントロールコホートにおいて、13日〜21日維持される(代表的には、<2.1g)ことを示した。対照的に、13日目の評価の直後に開始し、siRNA 3の注射を3日間受けたラットは、痛みを伴う異痛(16日目には、8.1±2.1gとの評価)の明白な逆転を示した。siRNA 3で処置されたラットは、測定を行なったその後の数日間にわたり、コントールと比較して首尾一貫して改善された疼痛スコア(例えば、実験的に誘発された慢性疼痛状態の改善)を示した。
【0131】
(配列表)
【表6−1】

【0132】
【表6−2】

【0133】
【表6−3】

【0134】
【表6−4】

【0135】
【表6−5】

【0136】
【表6−6】

【0137】
【表6−7】

【0138】
【表6−8】

【0139】
【表6−9】

【0140】
【表6−10】

【0141】
【表6−11】

【0142】
【表6−12】

【0143】
【表6−13】

【0144】
【表6−14】

【0145】
【表6−15】

【0146】
【表6−16】

【0147】
【表6−17】

【0148】
【表6−18】

【0149】
【表6−19】

【0150】
【表6−20】

【0151】
【表6−21】

【0152】
【表6−22】

【0153】
【表6−23】

【0154】
【表6−24】

【0155】
【表6−25】

【0156】
【表6−26】

【0157】
【表6−27】

【0158】
【表6−28】

【0159】
【表6−29】

【0160】
【表6−30】

【0161】
【表6−31】

【0162】
【表6−32】

【0163】
【表6−33】

【0164】
【表6−34】

【0165】
【表6−35】

【0166】
【表6−36】

【0167】
【表6−37】

【0168】
【表6−38】

【0169】
【表6−39】

【0170】
【表6−40】

【0171】
【表6−41】

【0172】
【表6−42】

【0173】
【表6−43】

【0174】
【表6−44】

【0175】
【表6−45】

【0176】
【表6−46】

【0177】
【表6−47】

【0178】
【表6−48】

【0179】
【表6−49】

【0180】
【表6−50】

【0181】
【表6−51】

【0182】
【表6−52】

【0183】
【表6−53】

【0184】
【表6−54】

【0185】
【表6−55】

【0186】
【表6−56】

【0187】
【表6−57】

【0188】
【表6−58】

【0189】
【表6−59】

【0190】
【表6−60】

【0191】
【表6−61】

【0192】
【表6−62】

【0193】
【表6−63】

【0194】
【表6−64】

【0195】
【表6−65】

【0196】
【表6−66】

【0197】
【表6−67】

【0198】
【表6−68】

【0199】
【表6−69】

【0200】
【表6−70】

【0201】
【表6−71】

【0202】
【表6−72】

【0203】
【表6−73】

【0204】
【表6−74】

【0205】
【表6−75】

【0206】
【表6−76】

【0207】
【表6−77】

【0208】
【表6−78】

【0209】
【表6−79】

【0210】
【表6−80】

【0211】
【表6−81】

【0212】
【表6−82】

【0213】
【表6−83】

【0214】
【表6−84】

【0215】
【表6−85】

【0216】
【表6−86】

【0217】
【表6−87】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2011−15695(P2011−15695A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199379(P2010−199379)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2007−539118(P2007−539118)の分割
【原出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】