説明

O/D型乳化組成物

【課題】安定性、特に加温状態における安定性が高い微細な油滴を与えるO/D型乳化組成物を提供する。
【解決手段】 界面活性剤相(D相)が、多価アルコール(A)と、HLB10以上の親水性乳化剤(B)と、下記一般式(1)で表される有機酸モノグリセリドの塩(C)とを含有し、油相(O相)が、油溶性物質(O)とHLBが10未満の親油性乳化剤(P)とを含有することを特徴とするO/D型乳化組成物。
【化1】


(一般式(1)中、R−CO−は脂肪酸残基、Rは2つ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸から1個のカルボキシル基を除いた残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O/D型乳化組成物に関する。ここで、O/D型とは油相(O相)中に界面活性剤相(D相)が乳化して分散されていることを意味する。
【背景技術】
【0002】
エマルションは、加工食品、嗜好食品、健康食品などの食品、調理・調味料、各種飲料、飼料、化粧品、医薬品、塗料などの工業製品に広く利用されている。これらのエマルションを含む製品では、エマルションの安定性を高めるために、微細で均一な乳化滴をもつエマルションが求められている。
【0003】
エマルションの製造方法は種々知られているが、その中でも、微細な油滴の乳化物が得られるD(Detergent=界面活性剤)相乳化法が注目されている。D相乳化法は、先ず、乳化剤を多価アルコール又は多価アルコール水溶液に溶解し、これに油相を添加して乳化することによりO/D型乳化組成物を製造し、次いで、このO/D型乳化組成物を水性媒体で希釈することにより微細な水相中油型(O/W型)エマルションを得る方法である(非特許文献1)。
【0004】
そして、D相乳化法を利用した各種の食品が提案され(特許文献1〜4)、安定性に関しては、D相中にモノステアリン酸ジグリセリンエステル(HLB7.6)とジステアリン酸デカグリセリンエステル(HLB11.7)を含むO/D型乳化組成物を含む全卵液は冷凍しても安定であるとされ(特許文献2の実施例2)、D相中にHLBが6〜16の乳化剤を含むO/D型乳化組成物に卵、酢及び油を加えて得られる水相中油型エマルション(マヨネーズ)は、HLBが6〜16の乳化剤を卵、酢及び油と単に混合して得られる水相中油型エマルション(マヨネーズ)よりも安定性が高いとされ(特許文献3)、D相中にHLBが11〜16の乳化剤を含むO/D型乳化組成物は、酸性食品中でも油滴が安定であるとされている(特許文献4)。
【0005】
【非特許文献1】FragranceJournal,4,34−41(1993)
【特許文献1】特開平7−59545号公報
【特許文献2】特開2000−83624号公報
【特許文献3】特開2000−102356号公報
【特許文献4】特開2004−290104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記ののO/D型乳化組成物は、これを水性媒体と混合して得られるO/W型エマルションの油滴の安定性、特に加温状態における油滴の安定性の点において、未だ満足すべきものとは言い難い。
【0007】
本発明は上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、安定性、特に加温状態における安定性が高い微細な油滴を与えるO/D型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、多価アルコール相にHLB10以上の親水性乳化剤と有機酸モノグリセリドの塩を溶解させ、かつ、油相側にHLBが10未満の親油性乳化剤を溶解させることにより、安定性が高い微細な油滴を与えるO/D型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の要旨は、界面活性剤相(D相)が、多価アルコール(A)と、HLB10以上の親水性乳化剤(B)と、下記一般式(1)で表される有機酸モノグリセリドの塩(C)とを含有し、油相(O相)が、油溶性物質(O)とHLBが10未満の親油性乳化剤(P)とを含有することを特徴とするO/D型乳化組成物に存する。
【0010】
【化1】

(一般式(1)中、R−CO−は脂肪酸残基、Rは2つ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸から1個のカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【0011】
そして、本発明の第2の要旨は、上記のO/D型乳化組成物を含有することを特徴とする加工食品に存する。
【0012】
更に、本発明の第3の要旨は、HLB10以上の親水性乳化剤(B)と有機酸モノグリセリドの塩(C)を含む多価アルコール(A)と、HLBが10未満の親油性乳化剤(P)を含む油溶性物質(O)を混合することを特徴とするO/D型乳化組成物の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のO/D型乳化組成物は、水性媒体で希釈した場合に油滴の粒径が小さく安定性に優れたエマルションを与えるので、食品、医薬品、化粧品などの用途に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
多価アルコール(A)としては、通常、水溶性多価アルコールが使用され、特に、分子内に水酸基を3個以上有するものが好ましい。多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等のポリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトール、ショ糖、フラクトース、キシリトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルトトリオース、澱粉分解糖などの糖、これらの糖の還元アルコール等が挙げられる。これらは2以上を組み合わせて使用してもよい。また、多価アルコールは、水に溶解して50〜99.9重量%程度の水溶液として使用してもよい。
【0015】
HLBが10以上の親水性乳化剤(B)としては、例えば、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレエート等のグリセリンの重合度が通常4以上、好ましくは4〜12のポリグリセリン脂肪酸エステル;ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル;レシチン部分加水分解物、リゾレシチン等の水溶性リン脂質;糖脂質;サポニン等が挙げられる。これらは2以上を組み合わせて使用してもよい。特に、HLBが14以上の乳化剤を使用すると、得られるO/D型乳化組成物を水性媒体で希釈して得られるO/W型エマルションの乳化性がより良好となるので好ましい。HLBが10未満の乳化剤を使用した場合は、得られたO/D型乳化組成物を水性媒体で希釈した際に、安定性の良いエマルションが得られなかったり、全くエマルションとならない場合がある。
【0016】
有機酸モノグリセリドとしては、前記一般式(1)で表され、式中、R−CO−は脂肪酸残基である。脂肪酸(RCOOH)の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの炭素数8〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。これらの中では、炭素数16〜20の飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸は2種以上組み合わせて使用してもよい。風味の点からは、ステアリン酸を主成分(好ましくは80重量%以上)とするものが好ましい。
【0017】
一方、式中、Rは、2つ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸から1個のカルボキシル基を除いた残基である。多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられるが、これらの中では、食品用途に使用されるコハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。
【0018】
上記の有機酸モノグリセリドの「R」が有するカルボキシル基を中和して水溶性の有機酸モノグリセリドの塩(C)に変換する際に使用するアルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の他、加水分解によってアルカリ性を示す塩(アルカリ性塩)、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等のようなカリウム塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のようなナトリウム塩を使用することが出来る。特に、炭酸カリウムを使用すると有機酸モノグリセリド塩水溶液の粘度を低下させることが出来るので好ましい。有機酸モノグリセリド塩(C)としてはアルカリ金属塩が好ましい。
【0019】
有機酸モノグリセリドの中和反応は、アルカリ剤と共に加熱攪拌することにより簡単に行うことが出来る。アルカリ剤は有機酸モノグリセリドに対して当量中和できる量だけ添加するのが好ましい。アルカリ剤の添加量が少なすぎる場合は、有機酸モノグリセリドのカルボン酸部分のイオン化が不十分であるために水中で上手く分散せず、添加量が多すぎる場合は、水中に分散した際に系全体のpHに悪影響を及ぼすことがある。
【0020】
油溶性物質(O)としては、食品、飼料、化粧品、医薬品などの工業分野で利用される任意の油溶性物質を使用することが出来る。例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、油脂、ワックス、炭化水素、高級アルコール、テルペン、精油、脂溶性ビタミン、油溶性薬物、油溶性色素などが挙げられる。
【0021】
脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラヘキサエン酸、これらの幾何異性体などが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸エチル等上述の脂肪酸のエステル等が挙げられる。
【0022】
油脂は、脂肪酸のグリセリンエステルであり、通常、上記の脂肪酸混合物のグリセリンエステルである。油脂の具体例としては、魚油、牛脂、豚脂、乳脂、馬油、蛇油、卵油、卵黄油、タートル油、ミンク油などの動物性油脂類;大豆油、とうもろこし油、綿実油、なたね油、ごま油、シソ油、こめ油、ひまわり油、落花生油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、米胚芽油、小麦胚芽油、玄米胚芽油、ハトムギ油、ガーリックオイル、マカデミアンナッツ油、アボガド油、月見草油、フラワー油、つばき油、やし油、ひまし油、あまに油、カカオ油などの植物性油脂類:これらを水素添加またはエステル交換したもの;中鎖脂肪酸トリグリセライド等が挙げられる。
【0023】
ワックスは、脂肪酸と高級1価又は2価アルコールとのエステルであり、その具体例としては、ホホバ油、ライスワックス、プロポリス、みつろう、さらしみつろう、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、鯨ろう等が挙げられる。
【0024】
炭化水素としては、軽質流動パラフィン、重質流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン等の流動パラフィン類、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。
【0025】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラウリンアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールオクタコサノール等の炭素数8〜44の飽和または不飽和のアルコールが挙げられる。
【0026】
テルペンとしては、オイゲノール、ゲラニオール、メントール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール等が挙げられる。
【0027】
精油としては、アンブレットシード油、カラシ油、サフラン油、シトロネラ油、ベチバー油、バレリアン油、ヨモギ油、カミツレ油、しょう脳油、サッサフラス油、ホウショウ油、ローズウッド油、クラリーセージ油、タイム油、バジル油、カーネーション油、シダーウッド油、ヒノキ油、ヒバ油、クローブ油、テレピン油、パイン油、オレンジ油、レモングラス油、タラゴン油、ローレル葉油、カシア油、シナモン油、コショウ油、カラムス油、セージ油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアーミント油、パッチュリ油、ローズマリー油、ラバンジン油、ラベンダー油、クルクマ油、カルダモン油、ショウガ油、アンゲリカ油、アニス油、ウイキョウ油、パセリ油、セロリ油、カルバナム油、クミン油、コリアンダー油、ジル油、キャロット油、キラウェー油、ウィンターグリン油、ナツメグ油、ローズ油、シプレス油、ビャクダン油、オールスパイス油、グレープフルーツ油、ネロリ油、レモン油、ライム油、ベルガモット油、マンダリン油、オニオン油、ガーリック油、ビターアーモンド油、ゼラニウム油、ミモザ油、ジャスミン油、キンモクセイ油、スターアニス油、カナンガ油、イランイラン油、ユーカリ油等のエッセンシャルオイル;コショウ、ショウズク、ショウガ、パセリ、コリアンダー、ヒメウイキョウ、ピメンタ、バニラ、セロリ、チョウジ、ニクズク、パブリカ、イリスレジノイド、乳香樹などのオレオレジン又はレジノイドが挙げられる。
【0028】
脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、D、E、K、これらの誘導体が挙げられる。油溶性薬物としては、コエンザイムQ10、α―リポ酸、ルチン、ルテイン等が挙げられる。油溶性色素としては、アナトー色素、パプリカ色素、β-カロチン、クロロフィル、紅麹色素、ウコン色素などが挙げられる。
【0029】
上記の油溶性物質(O)は2以上を組み合わせて使用してもよい。また、油溶性物質(O)がO/D型乳化組成物を製造する温度において固体の場合には、その温度において液体の油溶性物質に溶解させて使用すればよい。
【0030】
HLBが10未満の乳化剤(P)としては、例えば、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステル;ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレエート等のジグリセリン脂肪酸エステル;トリグリセリンモノミリステート、トリグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンモノオレエート等のトリグリセリン脂肪酸エステル;炭素数12〜22の飽和または不飽和脂肪酸のモノグリセリドと有機酸(コハク酸、クエン酸またはジアセチル酒石酸)とのエステル等のモノグリセリド有機酸エステル;テトラグリセリンテトラリシノレエート等のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;ソルビタンミリスチン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンオレイン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル;プロピレングリコールミリスチン酸エステル、プロピレングリコールパリミチン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコールオレイン酸エステル等のプロピレングリコール脂肪酸エステル;ショ糖パルミチン酸ペンタエステル、ショ糖ステアリン酸ペンタエステル、ショ糖オレイン酸ペンタエステル等のショ糖脂肪酸ポリエステル;レシチン等のリン脂質が挙げられる。これらは2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
O/D型乳化組成物に占める親水性乳化剤(B)の割合は、通常0.5〜50重量、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。親水性乳化剤(B)が少なすぎると、O/D型乳化組成物を水性媒体で希釈しても、エマルションを形成しなかったり、安定性の良いエマルションを形成しないことがある。また、親水性乳化剤(B)が多すぎると、O/D型乳化組成物の粘度が高くなりすぎて、水性媒体で希釈してO/W型エマルションとするのが困難となる。また、エマルションを形成させても、これを食品、飲料などに使用した場合に、風味が悪くなる恐れがある。
【0032】
O/D型乳化組成物に占める有機酸モノグリセリドの塩(C)の割合は、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.3〜3重量%である。有機酸モノグリセリドの塩(C)が少なすぎると、O/D型乳化組成物を水性媒体で希釈した際に、安定性の良いエマルションを形成しないことがある。また、有機酸モノグリセリドの塩(C)が多すぎると、O/D型乳化組成物の粘度が高くなりすぎて、水性媒体で希釈してO/W型エマルションとするのが困難となったり、エマルションを不安定にすることがある。また、エマルションを形成させても、これを食品、飲料などに使用した場合に、風味が悪くなる恐れがある。
【0033】
O/D型乳化組成物に占める油溶性物質(O)の割合は、通常0.1〜99重量%、好ましくは1〜60重量%、更に好ましくは5〜40重量%である。油溶性物質(O)が少ない程に、O/D型乳化組成物の粘度が低く、水性媒体で希釈した際の乳化性も良好である。また、油溶性物質(O)が多すぎる場合は、乳化組成物の粘度が高くなり、水性媒体で希釈した際の乳化性、作業性が悪くなり、また、得られたO/W型エマルションの安定性が悪くなる恐れがある。
【0034】
O/D型乳化組成物における親水性乳化剤(B)、有機酸モノグリセリドの塩(C)と親油性乳化剤(P)の比率は、これらの種類にもよるが、(B):(C):(P)の重量比として、通常10:0.5〜10:0.5〜10、好ましくは10:0.5〜5:0.5〜5である。親油性乳化剤(P)が少なすぎる場合は水性媒体で希釈してO/W型エマルションとした際に油滴の粒子径を小さくする効果が十分に発現しない。一方、親油性乳化剤(P)が多すぎる場合は、エマルションが不安定になったり、これを食品や飲料に使用した場合に風味が悪くなる恐れがある。
【0035】
本発明のO/D型乳化組成物は、HLB10以上の親水性乳化剤(B)と有機酸モノグリセリドの塩(C)を含む多価アルコール(A)に、HLB10未満の親油性乳化剤(P)を含む油溶性物質(O)を添加・攪拌することにより得ることが出来る。具体的には、
HLB10以上の親水性乳化剤(B)と有機酸モノグリセリドの塩(C)を含む多価アルコール(A)を、通常50〜80℃の温度で、通常500〜20000rpm、好ましくは1000〜10000rpmで攪拌し、この中に、HLB10未満の親油性乳化剤(P)を含む油溶性物質(O)を少量ずつ添加した後、通常、上記の温度を保持したまま、通常500〜20000rpm、好ましくは1000〜10000rpm、通常1〜60分間、好ましくは5〜30分間の条件下に更に攪拌する。なお、多価アルコール(A)は多価アルコール水溶液であってもよい。また、有機酸モノグリセリドの塩(C)は、有機酸モノグリセリドとアルカリ剤(炭酸カリウム等のアルカリ金属塩)と共に添加し、本発明のO/D型乳化組成物の製造工程で形成してもよい。
【0036】
上記のようにして得られる本発明のO/D型乳化組成物は、D相が、多価アルコール(A)、HLB10以上の親水性乳化剤(B)及び有機酸モノグリセリドの塩(C)を含有し、油相(O相)が油溶性物質(O)及び親油性乳化剤(P)を含有するものである。そして、水性媒体で希釈してO/W型エマルションとした際、油滴の粒子径が小さくて安定性に優れる。
【0037】
本発明のO/D型乳化組成物は、その濃度が、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%となるように水性媒体と混合することにより、O/W型エマルションを与える。このようにして得られるO/W型エマルション中の油滴は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した平均粒子径が通常1.5μm以下である。平均粒径が0.5μm以下、特に0.15μm以下のものを得ることも容易である。このような微細な油滴からなるエマルションは安定性が特に高い。
【0038】
本発明のO/D型乳化組成物は、漬物、乾物、粉物、缶詰、冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、即席麺、ドライフーズ、加工乳などの加工食品;菓子などの嗜好食品;サプリメント、機能性食品、特別用途食品、病者用食品、高齢者用食品、育児用粉ミルク、特定保健用食などの健康食品などの食品;自己乳化性油脂、ケチャップ、マヨネーズ、タルタルソース、ウスターソース、ラー油、ひしお、魚醤、オイスターソース、豆板醤、XO醤、芝麻醤、豆鼓醤、甜面醤、香辛料、ハーブ、油脂、サラダドレッシング等の調理・調味料;酒、コーヒー、茶などの飲料などに使用することが出来る。本発明のO/D型乳化組成物から得られるO/W型エマルションは、高温(60℃)での安定性も良好であり、熱湯を加えて簡単に調理できる即席スープ等の加熱用食品、ホットミルクコーヒー、ホットミルクティー等の加温用飲料などにも好適に使用される。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明する。但し、これらの実施例は、本発明を何ら限定もしくは制限する意味のものではない。
【0040】
実施例1:
ソルビトール(日研化成製「D−ソルビット」、固形分70重量%)53.5重量部、脱塩水3重量部、デカグリセリンモノミリステート(HLB16、三菱化学フーズ製「M−7D」)3重量部、コハク酸モノグリセリド(花王製「ステップSS」)0.5重量部、炭酸カリウム0.005重量部を70℃で撹拌して均一溶液(I)を得た。一方、精製ヤシ油39重量部とショ糖オレイン酸エステル(HLB1、三菱化学フーズ製「O−170」)1重量部を70℃で撹拌して均一溶液(II)を得た。
【0041】
上記の均一溶液(I)を、温度70℃に保持しながら、ホモミキサー(TKロボミックス(攪拌翼径50mm)特殊機化製)を使用して5000rpmで攪拌し、ここに上記の均一溶液(II)を10ml/分の速度で添加した。添加終了後、更に8000rpmで5分間攪拌し、O/D型乳化組成物からなる自己乳化性油脂を得た。使用成分のリストを表1に示す。
【0042】
得られた自己乳化性油脂を、1重量%クエン酸水溶液または10重量%食塩水溶液に対して、自己乳化性油脂が10重量%となるように添加し、マグネットスターラーにて5分間攪拌混合して、O/W型エマルションを得た。得られたO/W型エマルションを25℃又は60℃で1週間静置保存し、平均粒子径をレーザ回折式粒度分布測定装置「HORIBALA920」により測定することによって、耐酸性、耐塩性および耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
【0043】
実施例2:
実施例1において、デカグリセリンモノミリステートの代わりにデカグリセリンモノパルミテート(HLB16、三菱化学フーズ製「P−8D」)5重量部を使用し、ソルビトールの使用量を51.5重量部に変更した他は、実施例1と同様に行い、O/D型乳化組成物からなる自己乳化性油脂を得た。使用成分のリストを表1に示し、自己乳化性油脂の評価結果を表2に示す。
【0044】
実施例3:
実施例1において、デカグリセリンモノミリステートの使用量を5重量部、ソルビトールの使用量を51.5重量部に変更し、精製ヤシ油の代わりに中鎖脂肪酸トリグリセリド(花王製「ココナードMT」)を使用し、ホモミキサーによる処理条件を10000rpmで10分間に変更した他は、実施例1と同様に行い、O/D型乳化組成物からなる自己乳化性油脂を得た。使用成分のリストを表1に示し、自己乳化性油脂の評価結果を表2に示す。
【0045】
比較例1:
実施例1において、コハク酸モノグリセリド及びアルカリ金属塩を使用せず、また、デカグリセリンモノミリステートの代わりにデカグリセリンモノパルミテート(HLB16、三菱化学フーズ製「P−8D」)5重量部を使用し、ソルビトールの使用量を52重量部に変更した他は、実施例1と同様に行い、O/D型乳化組成物からなる自己乳化性油脂を得た。得使用成分のリストを表1に示し、自己乳化性油脂の評価結果を表2に示す。
【0046】
比較例2:
実施例1において、コハク酸モノグリセリド及びアルカリ金属塩を使用せず、また、親水性乳化剤として、デカグリセリンモノミリステート(HLB16、三菱化学フーズ製「M−7D」)2.5重量部とデカグリセリンモノパルミテート(HLB16、三菱化学フーズ製「P−8D」)2.5重量部を使用し、ソルビトールの使用量を52重量部に変更した他は、実施例1と同様に行い、O/D型乳化組成物からなる自己乳化性油脂を得た。使用成分のリストを表1に示し、自己乳化性油脂の評価結果を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤相(D相)が、多価アルコール(A)と、HLB10以上の親水性乳化剤(B)と、下記一般式(1)で表される有機酸モノグリセリドの塩(C)とを含有し、油相(O相)が、油溶性物質(O)とHLBが10未満の親油性乳化剤(P)とを含有することを特徴とするO/D型乳化組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R−CO−は脂肪酸残基、Rは2つ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸から1個のカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【請求項2】
親水性乳化剤(B)のHLBが14以上である請求項1に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項3】
有機酸モノグリセリドがコハク酸モノグリセリドである請求項1又は2に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項4】
多価アルコールが3価以上のアルコールである請求項1〜3の何れかに記載のO/D型乳化組成物。
【請求項5】
O/D型乳化組成物に占める親水性乳化剤(B)の割合が0.5〜50重量%、有機酸モノグリセリドの塩(C)の割合が0.05〜10.0重量%である請求項1〜4の何れかに記載のO/D型乳化組成物。
【請求項6】
O/D型乳化組成物に占める親油性乳化剤(P)の割合が0.05〜10.0重量%である請求項1〜5の何れかに記載のO/D型乳化組成物。
【請求項7】
O/D型乳化組成物に占める油溶性物質(O)の割合が0.1〜99重量%である請求項1〜6の何れかに記載のO/D型乳化組成物。
【請求項8】
多価アルコール(A)に親水性乳化剤(B)と有機酸モノグリセリドの塩(C)を含有させた混合物と、油溶性物質(O)に親油性乳化剤(P)を含有させた混合物とを混合して調製したものである請求項1〜7の何れかに記載のO/D型乳化組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載のO/D型乳化組成物を含有することを特徴とする加工食品。
【請求項10】
HLB10以上の親水性乳化剤(B)と有機酸モノグリセリドの塩(C)を含む多価アルコール(A)と、HLBが10未満の親油性乳化剤(P)を含む油溶性物質(O)を混合することを特徴とするO/D型乳化組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−95253(P2009−95253A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267523(P2007−267523)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】