OAローラおよびOAローラ用コーティング剤

【課題】コーティング剤に粘度調整剤を加えることによる問題を生じない上、金属製のローラ本体の外周面に形成したコーティング層が短期間で摩耗したり変形したりベルト等に貼り付いたり剥離したりせず長期間に亘って良好な特性を維持できるOAローラと、前記OAローラのコーティング層を形成するのに適する上、貯蔵安定性にも優れたOAローラ用コーティング剤を提供する。
【解決手段】OAローラは、ローラ本体の外周面に、硬化性のバインダ樹脂、顔料、アミノ樹脂、および粘度調整剤としての、前記バインダ樹脂100質量部あたり1〜8質量部のアタパルジャイトを含むコーティング剤を塗布したのちバインダ樹脂を硬化、架橋反応させて形成されたコーティング層を備える。OAローラ用コーティング剤は、前記バインダ樹脂、顔料、アミノ樹脂、および前記所定量のアタパルジャイトを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のローラ本体の外周面にコーティング層を備え、例えば静電式複写機等のOA機器において駆動ローラ等として用いられるOAローラと、前記OAローラのコーティング層を形成するためのOAローラ用コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等のOA機器においては、紙送りベルト、転写ベルト、中間転写ベルト等を回転駆動させるための駆動ローラ等のOAローラが多用されている。
かかるOAローラとしては、金属製のローラ本体の外周面を、ベルト等に対する滑りを防止するためにコーティング層で被覆したり、あるいは前記コーティング層の表面を粗面化処理したりしたものを用いることがある(例えば特許文献1〜3等参照)。
【0003】
しかし近年の、静電式複写機等における印刷速度の高速化に伴い、前記従来の処理を施したOAローラではベルトとの滑りを長期間に亘って有効に防止することができず、比較的短期間で滑りが発生するといった問題を生じるようになってきている。
この原因としては、駆動ローラ等がベルト等と長時間に亘って繰り返し接触することによって、粗面化した外周面が摩耗して摩擦力が低下したり、コーティング層が剥離してローラ本外の外周面から失われたりすることが考えられる。
【0004】
また前記滑りの問題の他にも、例えば高温、高湿環境等の使用環境下での静電式複写機等の停止時にコーティング層が部分的に変形したりベルト等に貼り付いたり、貼り付いたコーティング層がローラ本体の外周面から剥離したり、剥離した破片が静電式複写機等の他の部分に侵入して形成画像に影響を及ぼしたりするといった問題も生じやすくなってきている。
【0005】
そこで発明者は、コーティング層のもとになる、ウレタン樹脂等の硬化性のバインダ樹脂を含むコーティング剤に、前記バインダ樹脂の架橋剤を加えることで硬化後のバインダ樹脂の架橋密度を高めることを検討した。これにより、コーティング層が部分的に変形したりベルト等に貼り付いたりするのを防止することができる。
またコーティング剤に種々の顔料を加えることも検討した。
【0006】
例えばクレー等の体質顔料を加えると、バインダ樹脂の硬化時における膜の収縮を緩和し、硬化後のコーティング層の、金属製のローラ本体の外周面に対する密着性を高めて剥離を防止することが可能となる。
また、例えば酸化亜鉛ウィスカ等の、針状の突起を有する顔料を加えると、前記突起がコーティング層の表面からミクロな突起として突出して、ベルトとの引っ掻き効果によってOAローラの摩擦係数を向上するとともに、前記高い摩擦係数を長期間に亘って維持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−236627号公報
【特許文献2】実用新案登録第3000760号公報
【特許文献3】特開2002−326733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが顔料の種類によっては、調製したコーティング剤を貯蔵している間に、比較的短期間で、前記顔料が分離、沈殿しやすいという問題があった。特に比重の大きい顔料ほどこの傾向が顕著であった。
そこで発明者は、顔料の種類等に拘らずその分離、沈殿を防止してコーティング剤の貯蔵安定性を向上するため、コーティング剤に粘度調整剤、いわゆる揺変性付与剤を含有させて揺変性(チキソトロピック性)を付与することを検討した。
【0009】
コーティング剤に揺変性を付与すると、貯蔵時等の、せん断応力を加えない静止時には、前記コーティング剤は高粘度の状態を維持するため、顔料の分離、沈殿を防止することが可能となる。
そこで様々な粘度調整剤を検討したが、その多くは、例えば高温、高湿環境下でコーティング層から滲出(ブリード)したり、コーティング層の密着性を低下させたり、コーティング層の摩擦係数を低下させたり、あるいはコーティング剤の調製時に気泡を生じさせてコーティング層の外観を低下させたりしやすいといった問題があった。
【0010】
このうちブリードが発生すると、前記高温、高湿環境等の使用環境下での静電式複写機等の停止時にコーティング層がベルト等に貼り付いたり、貼り付いたコーティング層がローラ本体の外周面から剥離したり、剥離した破片が静電式複写機等の他の部分に侵入して形成画像に影響を及ぼしたりするといった問題を生じる。
また、ブリード成分に静電式複写機等の稼動によるトナーや紙粉等が付着し、特にローラとベルトとの間に堆積しやすくなって、形成画像に影響を及ぼしたりもする。
【0011】
本発明の目的は、コーティング剤に粘度調整剤を加えることによる前記様々な問題を生じることがない上、金属製のローラ本体の外周面に形成したコーティング層が短期間で摩耗したり変形したり、あるいはベルト等に貼り付いたり剥離したりすることもなく、長期間に亘って良好な特性を維持できるOAローラを提供することにある。
また本発明の目的は、前記OAローラのコーティング層を形成するのに適する上、粘度調整剤を含むため貯蔵安定性にも優れたOAローラ用コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、発明者は、粘度調整剤についてさらに検討した。その結果、前記粘度調整剤として、粘土鉱物の1種であるアタパルジャイト(含水珪酸アルミニウム・マグネシウム)の微細な粉末を用いればよいことを見出した。
アタパルジャイトは、コーティング層中では固形であって層中を移動することはない。しかも微細な繊維状の形態を有しているため、コーティング剤中に混入させると繊維が絡まりあって強い粘性(揺変性)を発現させることができる。
【0013】
そのためアタパルジャイトは、特に高温、高湿環境下でコーティング層から滲出(ブリード)したり、コーティング層の密着性を低下させたり、コーティング層の摩擦係数を低下させたり、あるいはコーティング剤の調製時に気泡を生じさせてコーティング層の外観を低下させたりすることなしに、コーティング剤に良好な揺変性を付与して顔料の分離、沈殿を防止する働きをする。よって前記様々な問題を生じることなしに、コーティング剤の貯蔵安定性を向上できる。
【0014】
したがって本発明は、金属製のローラ本体の外周面に、硬化性を有するバインダ樹脂、顔料、および前記バインダ樹脂の架橋剤としてのアミノ樹脂を含むコーティング剤を塗布したのち、前記バンダイ樹脂を硬化および架橋反応させて形成されたコーティング層を備えたOAローラであって、前記コーティング剤は、前記バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下のアタパルジャイトを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また本発明は、金属製のローラ本体の外周面にコーティング層を備えたOAローラの、前記コーティング層を形成するためのAOローラ用コーティング剤であって、硬化性を有するバインダ樹脂、顔料、および前記バインダ樹脂の架橋剤としてのアミノ樹脂を含むとともに、前記バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下のアタパルジャイトを含むことを特徴とするものである。
【0016】
本発明において、アタパルジャイトの含有割合がバインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下の範囲に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち含有割合が前記範囲未満では、アタパルジャイトを含有させることによる、コーティング剤に揺変性を付与して顔料の分離、沈殿を防止する効果が得られないため、前記コーティング剤の貯蔵安定性が低下する。
【0017】
一方、含有割合が前記範囲を超える場合には粘性(揺変性)が高くなりすぎて、コーティング剤の調製時に脱泡(消泡)が悪くなってコーティング層の外観が低下したり、コーティング層の摩擦係数が低下したりする。
前記アタパルジャイトとしては、平均粒径1μm以下の微細な粉末を用いるのが好ましい。かかるアタパルジャイトの微細な粉末は、粘度調整剤としての機能に特に優れている。
【0018】
前記バインダ樹脂は水系ウレタン樹脂であるのが好ましい。前記水系ウレタン樹脂を含むコーティング剤は、溶媒として水を用いて形成できるため、環境に及ぼす負荷を低減できる。
また顔料としては、体質顔料を含んでいるのが好ましい。体質顔料は、バインダ樹脂の硬化時に膜が収縮するのを防止する効果に優れている。
【0019】
また顔料としては、針状の突起を有する顔料を含んでいるのが好ましい。前記顔料の針状の突起は、コーティング層の表面からミクロな突起として突出して、ベルトとの引っ掻き効果によりOAローラの摩擦係数を向上するとともに、前記高い摩擦係数を長期間に亘って維持する効果に優れている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コーティング剤に粘度調整剤を加えることによる前記様々な問題を生じることがない上、金属製のローラ本体の外周面に形成したコーティング層が短期間で摩耗したり変形したり、あるいはベルト等に貼り付いたり剥離したりすることもなく、長期間に亘って良好な特性を維持できるOAローラを提供することができる。
また本発明によれば、前記OAローラのコーティング層を形成するのに適する上、粘度調整剤を含むため貯蔵安定性にも優れたOAローラ用コーティング剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のOAローラにおけるコーティング層の表面の、ベルトに対する摩擦係数μを測定するために用いる装置の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、金属製のローラ本体の外周面に、硬化性を有するバインダ樹脂、顔料、および前記バインダ樹脂の架橋剤としてのアミノ樹脂を含むコーティング剤を塗布したのち、前記バンダイ樹脂を硬化および架橋反応させて形成されたコーティング層を備えたOAローラであって、前記コーティング剤は、前記バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下のアタパルジャイトを含むことを特徴とするものである。
【0023】
また本発明は、金属製のローラ本体の外周面にコーティング層を備えたOAローラの、前記コーティング層を形成するためのOAローラ用コーティング剤であって、硬化性を有するバインダ樹脂、顔料、および前記バインダ樹脂の架橋剤としてのアミノ樹脂を含むとともに、前記バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下のアタパルジャイトを含むことを特徴とするものである。
【0024】
前記バインダ樹脂としては、硬化性を有し、かつ架橋剤としてのアミノ樹脂と反応させることで架橋密度を高めることができる種々の樹脂が使用可能であり、特に水系ウレタン樹脂が好ましい。前記水系ウレタン樹脂を含むコーティング剤は、溶媒として水を用いて形成できるため、環境に及ぼす負荷を低減できる。
前記水系ウレタン樹脂としては、これに限定されないが、例えばポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水系エマルションである三洋化成工業(株)製のパーマリン(登録商標)UA−300、UA−310、UA−368、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂の水溶液である同社製のパーマリンUA−50、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂のエマルションである同社製のパーマリンUA−150、UC−20、同じくポリエーテル系ポリウレタン樹脂のエマルションである第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス(登録商標)E−4000等の1種または2種以上が挙げられる。
【0025】
アミノ樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等の、水系ウレタン樹脂の架橋剤として機能しうる種々のアミノ樹脂が挙げられる。
前記アミノ樹脂としては、これに限定されないが、例えばメチル化高イミノメラミン樹脂の溶液であるサイテック社製のサイメル(登録商標)323、325、327、328、385、部分メチル化メラミン樹脂の溶液である同社製のサイメル370、373、3749、n−ブチル化メラミン樹脂の溶液である三井化学(株)製のユーバン(登録商標)120、あるいはメチルエーテル化メラミン樹脂の溶液である日立化成(株)製のメラン(登録商標)552等の1種または2種以上が挙げられる。
【0026】
前記アミノ樹脂の含有割合は、バインダ樹脂100質量部あたり15質量部以上、特に25質量部以上であるのが好ましく、55質量部以下、特に45質量部以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、アミノ樹脂を含有させることによる、バインダ樹脂の架橋密度を高めて、コーティング層が、特に高温、高湿環境下で部分的に変形したりベルト等に貼り付いたり、貼り付いたコーティング層がローラ本体の外周面から剥離したりするのを防止する効果が不十分になるおそれがある。
【0027】
また含有割合が前記範囲を超える場合には、逆にバインダ樹脂の架橋密度が高くなりすぎるとともにコーティング層が硬くなりすぎるため、表面の摩擦係数が低下してベルト等との滑りを生じやすくなるおそれがある。
また前記いずれの場合においても、コーティング層の、ローラ本体の外周面に対する密着性が僅かに低下する傾向もある。
【0028】
なおバインダ樹脂として、先に説明したエマルションや水溶液を用いるとともに、アミノ樹脂として、先に説明した溶液を用いる場合、前記アミノ樹脂の含有割合は、前記エマルションや水溶液中の固形分(バインダ樹脂)100質量部あたりの、溶液中の固形分(アミノ樹脂)の質量部である。
顔料としては、先に説明したバインダ樹脂の硬化時に膜が収縮するのを防止する効果に優れた体質顔料が好ましい。
【0029】
前記体質顔料としては、例えばカオリン等のクレーや、あるいは沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ等の1種または2種以上が挙げられる。
また顔料としては、針状の突起を有する顔料も好ましい。
前記針状の突起を有する顔料としては、特に中心から2以上の針状の突起が放射状に突出した立体形状を有する顔料、例えば中心から4つの針状の突起が互いに等角度で4方に突出したいわゆるテトラピック状の顔料等が好ましい。
【0030】
前記顔料としては、例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、ホウ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、二ホウ化チタン、石膏、アルミナ、クリソタイル、セピオライトまたはゾノトライト等の1種または2種以上が挙げられる。また、沖縄県産の星の砂などの混合物であってもよい。
【0031】
中でも、前記テトラピック状を呈する酸化亜鉛ウィスカが好ましい。
前記顔料は、2以上の突起の少なくとも1つがコーティング層中に埋まってアンカー効果を発揮するため、ベルトの刺激や磨耗による顔料の脱落を防止できる上、残りの突起がコーティング層の表面からミクロな突起として突出してベルトとの引っ掻き効果によりOAローラの摩擦係数を向上するとともに、前記高い摩擦係数を長期に亘って維持するために機能する。そのため、より長期間に亘ってOAローラの良好な特性を維持することができる。ただし前記顔料は、全体が1本の針状であってもよい。
【0032】
顔料としては、前記体質顔料、針状の突起を有する顔料等、複数種の機能の異なる顔料を併用するのが好ましい。その場合には、前記各顔料の機能の相乗効果によって、より一層長期間に亘ってOAローラの良好な特性を維持することができる。
顔料の含有割合は、バインダ樹脂100質量部あたり25質量部以上、特に45質量部以上であるのが好ましく、120質量部以下、特に100質量部以下であるのが好ましい。2種以上の顔料を併用する場合には、併用する2以上の顔料の合計の含有割合が、前記範囲内であるのが好ましい。
【0033】
含有割合が前記範囲未満では、顔料を含有させることによる、バインダ樹脂の硬化時に膜の収縮を緩和して、硬化後のコーティング層の、金属製のローラ本体の外周面に対する密着性を高めて剥離を防止する効果等が不十分になるおそれがある。
また含有割合が前記範囲を超える場合には、コーティング層が脆くなって却ってローラ本体の外周面から剥離しやすくなるおそれがある。
【0034】
なおバインダ樹脂として、先に説明したエマルションや水溶液を用いる場合、顔料の含有割合は、前記エマルションや水溶液中の固形分(バインダ樹脂)100質量部あたりの顔料の質量部である。
アタパルジャイトとしては、コーティング剤の粘度調整剤として機能して、前記コーティング剤に揺変性を付与して、顔料の分離、沈殿を防止しうる種々の形状、状態等を有するものがいずれも使用可能である。
【0035】
中でも粉末状のアタパルジャイト、特に平均粒径1μm以下の微細な粉末状のアタパルジャイトが、前記機能に優れるため好適に使用される。
平均粒径の下限値は特に限定されないが、コーティング剤に含有させる際の取扱性等を考慮すると0.05μm以上であるのが好ましい。
また、かかる取扱性と、コーティング剤の粘度調整剤として機能との兼ね合い等を考慮するとアタパルジャイトの平均粒径は、前記範囲内でも0.1μm前後であるのがさらに好ましい。
【0036】
なおアタパルジャイトの平均粒径を、本発明は、例えばレーザー回折・散乱法等によって求められる粒度分布のメジアン径D50でもって表すこととする。
前記アタパルジャイトとしては、これに限定されないが、例えば林化成(株)製の商品名アタゲル50(平均粒径D50=0.1μm)、アタゲル40(平均粒径D50=0.1μm)等の1種または2種が挙げられる。
【0037】
アタパルジャイトの含有割合は、バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下に限定される。
含有割合が前記範囲未満では、アタパルジャイトを含有させることによる、コーティング剤に揺変性を付与して顔料の分離、沈殿を防止する効果が得られないため、前記コーティング剤の貯蔵安定性が低下する。
【0038】
一方、含有割合が前記範囲を超える場合には粘性(揺変性)が高くなりすぎて、コーティング剤の調製時に脱泡(消泡)が悪くなってコーティング層の外観が低下したり、コーティング層の摩擦係数が低下したりする。
なお、コーティング層にこれらの問題を生じさせることなしに、コーティング剤の貯蔵安定性をできるだけ向上することを考慮すると、アタパルジャイトの含有割合は、前記範囲内でも2.5質量部以上であるのが好ましく、7.5質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0039】
コーティング剤には、前記各成分に加えて、さらに消泡剤、分散安定剤、表面張力調整剤等の従来公知の各種添加剤を、任意の割合で含有させることもできる。
コーティング剤は、先に説明したように溶媒として水を用いた水系とするのが、環境に及ぼす負荷を低減する上で望ましい。
例えばバインダ樹脂として、先に説明したように水系のエマルションまたは水溶液の状態で供給されるものを用いる場合には、前記エマルションまたは水溶液に、前記所定の含有割合となるように顔料、アミノ樹脂、およびアタパルジャイトを添加するとともに必要に応じてその他の添加剤を加えることで、前記水系のコーティング剤が得られる。
【0040】
また、さらに必要に応じて水、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒等を加えてコーティング剤の粘度を調整してもよい。
前記コーティング剤は、粘度調整剤としてのアタパルジャイトの添加により揺変性が付与されており、貯蔵時等の、せん断応力を加えない静止時には高粘度の状態を維持するため、顔料の分離、沈殿を防止して、貯蔵安定性を向上することができる。
【0041】
しかもアタパルジャイトは、他の粘度調整剤のように高温、高湿環境下でコーティング層から滲出(ブリード)したり、コーティング層の密着性を低下させたり、コーティング層の摩擦係数を低下させたり、あるいはコーティング剤の調製時に気泡を生じさせてコーティング層の外観を低下させたりしないという利点も有している。
前記コーティング剤を、例えばアルミニウム、銅、真鍮、ステンレス鋼等の金属からなる円筒状ないし円柱状のローラ本体の外周面に、スプレーコート法等の任意の塗布方法によって塗布したのち乾燥させて水等の溶媒を除去し、さらに加熱してバインダ樹脂を硬化反応させるとともに、架橋剤としてのアミノ樹脂の作用によって架橋反応させることでコーティング層が形成されてOAローラが得られる。
【0042】
かかるOAローラは、前記のようにアタパルジャイト以外の他の粘度調整剤を用いた際の様々な問題を生じない上、金属製のローラ本体の外周面に形成したコーティング層が短期間で摩耗したり変形したり、あるいはベルト等に貼り付いたり剥離したりすることもなく、長期間に亘って良好な特性を維持することができる。
前記OAローラの表面の、組み合わせるベルトに対する摩擦係数μは0.3以上、特に0.6以上であるのが好ましい。摩擦係数μが前記範囲未満ではベルトとの間で滑りを生じやすくなり、前記ベルトを良好に駆動できないおそれがある。
【0043】
なお本発明では摩擦係数μを、図1に示す装置を用いて、オイラーのベルト式に準拠した測定方法によって測定した値でもって表すこととする。
先に説明したように金属製のローラ本体1の外周面にコーティング層2を形成したOAローラ3を、前記ローラ本体1の中心軸4を水平方向に向けた状態で、図中に二点鎖線の矢印で示す方向に回転可能に保持する。またOAローラ3の近傍には、前記OAローラ3の中心軸4との距離を一定に維持した状態で荷重計5を配設する。
【0044】
次に、一端に質量W(g)の錘6を取り付けたベルト7の他端を前記荷重計5に接続するとともに、前記ベルト7の錘6側の一端をOAローラ3よりも下側に垂れ下がらせた状態で、前記ベルト7を、中心軸4を中心とする中心角度θ(°)の範囲に亘って前記OAローラ3のコーティング層2の表面に接触させる。
そしてOAローラ3を前記二点鎖線の矢印で示す方向に一定の速度で回転させた際に生じる荷重F(g)を荷重計5によって測定し、前記荷重F(g)と、錘6の質量W(g)、中心角度θ(°)とから式(1):
μ=(1/θ)ln(F/W) (1)
によって摩擦係数μを求める。
【0045】
コーティング層のもとになるコーティング剤の塗布厚みは20μm以上であるのが好ましく、100μm以下であるのが好ましい。
塗布厚みが前記範囲未満では、厚みが均一なコーティング層を形成できないおそれがある。
また塗布厚みが前記範囲を超える場合にはタレ等を生じてコーティング層の外観が悪くなるおそれがあり、また乾燥性等の作業性が低下するおそれがある。
【0046】
前記本発明のOAローラは、例えば静電式複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等のOA機器において紙送りベルト、転写ベルト、中間転写ベルト等を回転駆動させるための駆動ローラ等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下の実施例、比較例におけるコーティング剤の調製、OA用ローラの作製、および試験を、特記した以外は23±5℃、相対湿度55±5%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂の水系〔エマルション前出の三洋化成工業(株)製のパーマリンUA−300、固形分濃度38質量%〕に、メチル化高イミノメラミン樹脂のイソブタノール溶液〔前出のサイテック社製のサイメル327、固形分濃度88〜92質量%〕、体質顔料としてのクレー〔含水カオリン系、BASF社製のASP−170〕、針状の突起を有する顔料としての酸化亜鉛ウィスカ〔テトラピック状、パナソニック(株)製のパナテトラ(登録商標)〕、および粘度調整剤としてのアタパルジャイト〔前出の林化成(株)製の商品名アタゲル50、平均粒径D50=0.1μm〕を配合してコーティング剤を調製した。
【0048】
前記コーティング剤における、バインダ樹脂としてのポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(パーマリンUA−300の固形分)100質量部あたりの、メチル化高イミノメラミン樹脂(サイメル327の固形分)の含有割合は36質量部、クレーの含有割合は30質量部、酸化亜鉛ウィスカの含有割合は35質量部、アタパルジャイトの含有割合は2.5質量部とした。
【0049】
前記コーティング剤を、外径24φ、長さ220mmのアルミニウム(A6063)製のローラ本体の外周面にスプレーコート法によって塗布し、室温で30分間程度で静置して乾燥させ、次いで90℃で10分間の予備乾燥をしたのち140℃で15分間加熱してバインダ樹脂を硬化および架橋反応させてコーティング層を形成して、OAローラを作製した。
【0050】
〈比較例1〉
アタパルジャイトを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、OAローラを作製した。
〈実施例2、3、比較例2〉
バインダ樹脂としてのポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部あたりの、アタパルジャイトの含有割合を5質量部(実施例2)、7.5質量部(実施例2)、10質量部(比較例2)としたこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、OAローラを作製した。
【0051】
〈比較例3〉
アタパルジャイトに代えて、変性ウレア系の粘度調整剤〔ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK(登録商標)−420〕を配合したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、OAローラを作製した。前記粘度調整剤の配合割合は、バインダ樹脂としてのポリカーボネート系ポリウレタン樹脂100質量部あたり0.5質量部とした。
【0052】
〈促進貯蔵安定性試験〉
300mlの容器内に、前記実施例、比較例で調製したいずれか1種のコーティング剤を8分目まで入れ、容器を密閉して50℃の恒温槽内で1ヶ月間静置した。
次いで容器ごと恒温槽から取り出し、室温になるまで冷却させた後、分離、沈殿の有無を観察し、下記の基準で貯蔵安定性を評価した。
【0053】
○:分離、沈殿は全く見られなかった。貯蔵安定性良好。
△:分離、沈殿は見られたが、スパチュラを入れて簡単にかく拌しただけで、容易に再分散させることができた。貯蔵安定性通常。
×:硬い沈殿があり、スパチュラを入れてかく拌しても、容易に再分散させることはできなかった。貯蔵安定性不良。
【0054】
〈高温、高湿試験〉
前記各実施例、比較例で作製したOAローラの外周面を構成するコーティング層の表面に、ポリイミド製のベルトを直接に接触させた状態で、前記ベルトをOAローラの外周面に巻き付けて、温度60℃、相対湿度80%の高温、高湿環境下で7日間静置したのち状態を観察して、下記の基準でコーティング層を評価した。
【0055】
○:コーティング層は、部分的に変形したりベルト等に貼り付いたりしていなかった。
×:コーティング層は、部分的に変形したりベルト等に貼り付いたりしていた。
〈密着性試験〉
前記各実施例、比較例で作製したOAローラの、コーティング層の密着性を、日本工業規格JIS K5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に所載の試験方法に則って試験し、試験結果を評価した。すなわち試験結果を、JIS K5600−5−6の表1に従って6段階に分類し、分類0〜2が密着性良好、分類3〜5が密着性不良と判定した。
【0056】
〈コーティング層の外観評価〉
前記各実施例、比較例で作製したOAローラの、コーティング層の外観を観察して、下記の基準で評価した。
○:全く異常なし。外観良好。
△:10倍の拡大鏡を用いたところ小さな泡跡が見られたが、肉眼では異常は見られなかった。外観通常。
【0057】
×:肉眼でも泡跡がみられた。外観不良。
〈摩擦係数測定〉
前記各実施例、比較例で作製したOAローラの、コーティング層の表面の、前記ポリイミド製のベルトに対する摩擦係数を、先に説明した図1の装置を用いて測定した結果から、前記式(1)によって求めた。
【0058】
以上の結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の比較例1の結果より、コーティング剤に、粘度調整剤としてのアタパルジャイトを含有させない場合には、顔料の分離、沈殿が発生して貯蔵安定性が低下することが判った。また比較例3の結果より、アタパルジャイト以外の粘度調整剤を含有させた場合には、貯蔵安定性は改善されるものの、高温、高湿環境下で前記粘度調整剤がブリードしてベルト等に貼りつく等の他の問題を生じることが判った。
【0061】
これに対し実施例1〜3の結果より、粘度調整剤としてアタパルジャイトを含有させることで、前記ブリード等の問題が発生するのを防止しながら、コーティング剤に良好な貯蔵安定性を付与できることが判った。
ただし比較例2の結果より、アタパルジャイトの含有割合が、バインダ樹脂100質量部あたり8質量部を超える場合には、過剰のアタパルジャイトがコーティング剤の調製時に気泡を生じさせてコーティング層の外観を低下させたり、コーティング層の摩擦係数を低下させたりするため、前記含有割合は8質量部以下である必要があることが判った。
【0062】
さらに実施例1〜3を比較すると、アタパルジャイトの含有割合は、前記範囲内でも2.5質量部以上であるのが好ましく、7.5質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0063】
F 荷重
W 質量
θ 中心角度
1 ローラ本体
2 コーティング層
3 OAローラ
4 中心軸
5 荷重計
6 錘
7 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のローラ本体の外周面に、硬化性を有するバインダ樹脂、顔料、および前記バインダ樹脂の架橋剤としてのアミノ樹脂を含むコーティング剤を塗布したのち、前記バンダイ樹脂を硬化および架橋反応させて形成されたコーティング層を備えたOAローラであって、前記コーティング剤は、前記バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下のアタパルジャイトを含むことを特徴とするOAローラ。
【請求項2】
前記アタパルジャイトは、平均粒径1μm以下の粉末である請求項1に記載のOAローラ。
【請求項3】
前記バインダ樹脂は、水系ウレタン樹脂である請求項1または2に記載のOAローラ。
【請求項4】
前記顔料は、体質顔料を含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のOAローラ。
【請求項5】
前記顔料は、針状の突起を有する顔料を含んでいる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のOAローラ。
【請求項6】
金属製のローラ本体の外周面にコーティング層を備えたOAローラの、前記コーティング層を形成するためのコーティング剤であって、硬化性を有するバインダ樹脂、顔料、および前記バインダ樹脂の架橋剤としてのアミノ樹脂を含むとともに、前記バインダ樹脂100質量部あたり1質量部以上、8質量部以下のアタパルジャイトを含むことを特徴とするOAローラ用コーティング剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−149735(P2012−149735A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10190(P2011−10190)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】