説明

PAC−1(DUSP2)を使用する炎症性疾患の診断方法及び治療方法

本発明は一般的に、ヒト及び他の動物における慢性関節リウマチ及び喘息のような炎症性疾患の診断及び治療に関する。本発明はまた、ここに記載される治療方法において有用である酵素PAC-1(DUSP2)のアゴニスト及びアンタゴニストを同定する方法に関する。本発明は、候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の活性を測定する工程を含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1活性の変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、ヒト及び他の動物における慢性関節リウマチ及び喘息のような炎症性疾患の診断及び治療に関する。本発明はまた、ここに記載される治療方法において有用である酵素PAC-1(DUSP2)のアゴニスト及びアンタゴニストを同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性関節リウマチ(RA)のような慢性炎症性疾患は、数百万の人々が罹患している衰弱性疾患である。
【0003】
RAは、世界人口の約1-2%が罹患している全身性で慢性の炎症性疾患である。RAの発症は通常関節において最も重篤である。最も一般的な罹患関節は、手の近位指節関節と中手指節関節、及び足の中手指節関節である。肩、肘、膝、足根、及び手首もまたRAの一般的な標的である。RAに罹患した関節(「アクティブ」関節)は圧痛を感じるという特徴を有する。従って、RAの罹患者は痛みと動きにくさを経験する。RAのひどさと進行は罹患患者によってかなり様々である一方、一群としてのRA患者は、非罹患対照と比較して二倍の死亡率を有する。この期待生存値の減少は、現在のRA治療の副作用に部分的に依存しているようである。
【0004】
RAの初期段階では、罹患関節の滑膜は肥大して炎症を生じる。滑膜の肥大は、血管形成と新脈管形成を伴う。次いでこれは、プラズマ細胞、リンパ球、及びマクロファージによるこの領域への浸透を容易にする。炎症細胞がそこに蓄積するにつれ、滑膜は浮腫性となり過形成を生じる。好中球が滑液に侵入し、滑膜の表面でクラスターを形成する。フィブリン沈着も関節隙で生じる。滑液は体積を増やし、好中球、単核細胞、及び補助的な赤血球細胞の蓄積で濁る。
【0005】
慢性炎症は、滑膜の肥厚と関節表面への拡大を生じ、関節隙へ突出する絨毛を形成する。この異常で高度に血管化した構造はパンヌスと称される。パンヌスは下部の軟骨に侵入して破壊し、最も活発な軟骨の破壊はパンヌスと軟骨の間の界面で生じる。軟骨の破壊は、パンヌスの炎症性細胞によって分泌されるコラゲナーゼとメタロプロテイナーゼによって達成される。破壊は次第に軟骨下の骨、関節包、及び靭帯に拡大する。炎症性細胞と滑液細胞によって放出される破骨性分子は、滑膜が骨に浸透してジェンセルム小節の侵食、軟骨下の嚢腫、及び骨粗鬆症を形成することを可能にする。
【0006】
軟骨が破壊された後、パンヌスは全関節隙を充填し、反対側の骨を架橋している線維性バンドを覆う。この線維性強直は石灰化し、生成した骨性強直は反対側の骨に癒着して骨の機能性を妨害するようになる。
【0007】
RAは、特定の患者が抗核交代及びイムノグロブリンG(IgG)、コラーゲン、及び細胞骨格繊維状タンパク質のような自己タンパク質に向けられた抗体を有する自己免疫疾患である。リウマチ因子(RF)は、IgGのFc部分に結合する血清及び滑液に見出される自己抗体である。RFは、RAの病因において関連している。RFがIgGに結合する場合、補体活性化免疫複合体が形成される。活性化された補体は、免疫複合体に好中球及びマクロファージを引き付ける血管作用性で化学走性の物質の放出を引き起こす。これらの細胞が免疫複合体を飲み込んで破壊するにつれ、それらは、炎症とタンパク質分解を引き起こし、RA病因に寄与する他の細胞を引き付ける分子を放出する。RFは関節で合成され、IgGクラスのRFは自己会合性であるため、免疫複合体はしばしば関節に局在する。言うまでもなく、免疫複合体はある患者では循環しており、リウマチ小節、反応性アミロイドーシス、及び急性血管炎のようなRAの関節以外の発現を引き起こすと解される。
【0008】
RAが自己免疫起源であるという証拠は、ラットまたはマウスにトリのII型コラーゲンを注入すると、げっ歯類の内因性コラーゲンを認識する抗体の形成を生ずるという発見によって支持されている。「コラーゲン関節炎」として既知の生成した自己免疫反応は、関節の炎症のようなRAの生理学的症状を模倣している(Trentham等, J. Exp. Med., 146: 857 (1977); Coutenay等, Nature, 283: 666 (1980))。コラーゲン関節炎は、RAの研究のために十分に確立したモデル系である(Staines & Wooley, Br. J. Rheumatology, 1994, 33: 798 (1994))。
【0009】
RAを治療する主な方法は、免疫系を抑制するまたは炎症を減少する薬剤の投与を通じて行なわれる。炎症インヒビターの二つの主なクラスはコルチコステロイドと非ステロイド系抗炎症性薬剤(NSAID)である。
【0010】
コルチコステロイドはRAの劇的な短期的改善を達成できるが、重篤な副作用と薬剤の有効性の減少のため長期的な治療には望ましくないので、好ましいRA医薬ではない。短期的なコルチコステロイドの治療はまた、治療を停止した後に、重特性の増大をしばしば伴って、関節炎の症状が急激に再発するため、理想とは程遠い。プレドニゾンのようなコルチコステロイドはRAの臨床状の兆候を抑制できるが、前記薬剤はRA介在性の関節破壊を防止しない。更に、典型的なコルチコステロイドの副作用には、消化性潰瘍、高血圧、糖尿病、及び緑内障が含まれる。
【0011】
アスピリン、イブプラフェン、及びインドメタシンのようなNSAIDは、しばしばRAに対して処方されている。これらの薬剤は、プロスタグランジン合成を阻害することによりアクティブな間接において膨潤を減少できるが、関節隙の新党が微弱なため、高投与量の投与を必要とし、そのような高投与量は、胃腸の刺激、潰瘍、及び出血を生ずる傾向を有する。NSAIDは、炎症工程と関連しないプロスタグランジン調節工程に影響する。NSAIDはまた、強力な腎臓毒素でもあり、RAの治療のためには不適切である。
【0012】
重篤で活発なRAを有する患者は、シクロホスファミド、メトトレキセート、及びアザチオプリンのような免疫抑制剤で治療されても良い。それらは炎症を減少できる一方、これらの薬剤は患者の全免疫系に影響し、肝臓病、骨髄抑制、悪性腫瘍の増大した危険を含む重篤な副作用を有する。
【0013】
他のRA医薬は、ペニシラミン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、及び金塩を含む。全てのものは潜在的に重篤な副作用を有する。D-ペニシラミンは、骨髄抑制、蛋白尿、及びネフローゼを生じ得る。ペニシラミン治療から生ずる死亡も報告されている。ヒドロキシクロロキンまたはクロロキンで治療された患者は、不可逆的な腎臓損傷の兆候についてモニターしなければならない。金は、皮膚炎、腎障害、または肝炎の形態で毒性反応を減少でき、関節炎の治療での効力は疑問が残る。
【0014】
それ故RAのような慢性炎症性疾患についての治療方法が非常に所望されている。これらの疾患の兆候及び症状を阻害する、特に痛み、炎症、関節膨潤、及びこれらの疾患と関連する病変を減少する化合物についての必要性が存在する。
【0015】
活性化細胞のホスファターゼ(Phosphatase of Activated Cells;(PAC-1))は、MAPキナーゼホスファターゼである。特に、PAC-1は二重特異性ホスファターゼ(DUSP)のファミリーのメンバーであり、さもなければ二重特異性ホスファターゼ2(DUSP2)として既知である。DUSPが、ホスホトレオニン及びホスホチロシン残基の両者を脱リン酸化することによって標的キナーゼを不活性化すると解される。
【0016】
現在ではDUSPファミリーのメンバーで同定されたものが11あり、その組織分布、細胞内局在、基質特異性、及び転写コントロールにおいて全て異なるものである(Camps等, FASEB J., 14: 6 (2000); Theodosiou & Ashworth, Genome Biol., 3: 7 (2002))。DUSPは以下の三つの主たるカテゴリーに分類される:4のエキソンからなり、増殖またはストレスによって誘導され、核に局在するもの(DUSP1-5)、3のエキソンからなり、細胞質に局在し、転写によっては直接制御されないもの(DUSP6, 7, 9, 10)、並びに6のエキソンからなるもの(DUSP8及び16)。DUSP1-5は、触媒ドメインを含む保存されたカルボキシル末端と、基質認識に関与するより可変的なアミノ末端とで、約80%の相同性を有する。
【0017】
PAC-1は、有糸分裂介在性プロテイン(MAP)キナーゼスーパーファミリー(MAPK/ERK、SAPK/JNK、p38)のメンバーを負に制御すると解され、それらは細胞増殖と分化と関連する。
【非特許文献1】Trentham等, J. Exp. Med., 146: 857 (1977)
【非特許文献2】Coutenay等, Nature, 283: 666 (1980)
【非特許文献3】Staines & Wooley, Br. J. Rheumatology, 1994, 33: 798 (1994)
【非特許文献4】Camps等, FASEB J., 14: 6 (2000)
【非特許文献5】Theodosiou & Ashworth, Genome Biol., 3: 7 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明を導く研究では、本発明者は、慢性関節リウマチのような炎症性疾患における酵素PAC-1の役割を研究した。本発明者は、IgEで活性化したヒトマスト細胞において、PAC-1発現が実質的に増大することを示した。炎症性関節炎における自己抗体、可溶性メディエーター、及び他のエフェクター集団の間の細胞性リンクとして、マスト細胞が関連するために、この発見は重要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、第一の特徴点では、本発明は、候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の活性を測定する工程を含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1活性の変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法を提供する。
【0020】
このスクリーニング方法の好ましい実施態様では、前記化合物の存在下でのPAC-1活性の減少が、前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す。
【0021】
このスクリーニング方法の更なる実施態様では、PAC-1活性はPAC-1のホスファターゼ活性を測定することによって測定される。
【0022】
別の特徴点では、本発明は、候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の発現レベルを測定する工程を含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1発現の変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法を提供する。
【0023】
このスクリーニング方法の好ましい実施態様では、前記化合物の存在下でのPAC-1発現の減少が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す。
【0024】
この特徴点の更なる実施態様では、前記方法は、候補化合物にPAC-1を発現できる翻訳系を曝露する工程、及び前記化合物の存在下でのPAC-1の発現レベルを、前記化合物の不存在下での同様な条件下で達成されるレベルと比較する工程を含む。前記翻訳系は、セルフリー翻訳系であっても良い。別法として前記翻訳系は、真核生物細胞または原核生物細胞を含んでも良い。
【0025】
更なる特徴点では、本発明は、PAC-1の基質に対するPAC-1の結合を調節する候補化合物の能力を測定することを含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下での前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの変化が得前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法を提供する。
【0026】
このスクリーニング方法の好ましい実施態様では、前記化合物の存在下での前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す。
【0027】
この特徴点の一つの実施態様では、前記PAC-1の基質は、ERK、p38、及びJNKからなる群から選択される。
【0028】
更なる特徴点では、本発明は、候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の活性を測定することを含む、免疫応答を促進する化合物のスクリーニング方法であって、前記候補化合物の存在下でのPAC-1活性の変化が前記化合物が免疫応答を促進することを示す方法を提供する。
【0029】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記化合物の存在下でのPAC-1活性の増強または増大が前記化合物が免疫応答を促進することを示す。
【0030】
別の特徴点では、本発明は、候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の発現レベルを測定することを含む、免疫応答を促進する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1発現の変化が前記化合物が免疫応答を促進することを示す方法を提供する。
【0031】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記化合物の存在下でのPAC-1発現の増強または増大が前記化合物が免疫応答を促進することを示す。
【0032】
更なる特徴点では、本発明は、PAC-1の基質に対するPAC-1の結合を調節する候補化合物の能力を測定することを含む、免疫応答を促進する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下での前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの変化が前記化合物が免疫応答を促進することを示す方法を提供する。
【0033】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの増強または増大が前記化合物が免疫応答を促進することを示す。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、前記候補化合物は、PAC-1から由来するペプチドのようなペプチド、PAC-1ドミナントネガティブミュータント、PAC-1に対して向けられる抗体、小有機分子のようなPAC-1の非ペプチドインヒビター、PAC-1をコードするmRNAに対して向けられたアンチセンス化合物、リボザイムまたはDNAザイムのような抗PAC-1触媒分子、あるいはPAC-1発現を標的とする小干渉RNA(RNAi)分子からなる群から選択される。
【0035】
本発明の一つの実施態様では、前記候補化合物は、遺伝子ライブラリー、低分子量化合物ライブラリー(ChemBridge Research Laboratoriesの低分子量化合物ライブラリーのような)、細胞抽出物、微生物培養上清、細菌細胞成分等の発現産物から得られる。
【0036】
また別の特徴点では、本発明は、炎症を阻害または減少するのに有効な量で、PAC-1活性を調節する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における炎症性疾患の治療または防止方法を提供する。
【0037】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記方法は、炎症を阻害または減少するのに有効な量で、PAC-1活性を減少または阻害する化合物を被験者に投与する工程を含む。好ましくは前記化合物は、PAC-1活性を特異的に減少または阻害する。
【0038】
用語「PAC-1活性を特異的に減少または阻害する」は、前記化合物が他のDUSPの活性を特異的に減少または阻害することなくPAC-1活性を特異的に減少または阻害することを意味する。
【0039】
また別の特徴点では、本発明は、炎症を阻害または減少するのに有効な量で、機能的なPAC-1の発現のレベルを改変する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における炎症性疾患の治療または防止方法を提供する。
【0040】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記方法は、炎症を阻害または減少するのに有効な量で、機能的なPAC-1発現を減少または阻害する化合物を被験者に投与する工程を含む。好ましくは前記化合物は、PAC-1発現を特異的に減少または阻害する。
【0041】
用語「PAC-1発現を特異的に減少または阻害する」は、前記化合物が他のDUSPの発現を特異的に減少または阻害することなくPAC-1の発現を特異的に減少または阻害することを意味する。
【0042】
また別の特徴点では、本発明は、免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1の活性を改変する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における免疫抑制の治療または防止方法を提供する。
【0043】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記方法は、免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1活性を増大または増強する化合物を被験者に投与する工程を含む。好ましくは前記化合物は、PAC-1活性を特異的に増大または増強する。
【0044】
用語「PAC-1活性を特異的に増大または増強する」は、前記化合物が他のDUSPの活性を特異的に増大または増強することなくPAC-1活性を特異的に増大または増強することを意味する。
【0045】
また別の特徴点では、本発明は、免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1の発現のレベルを改変する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における免疫抑制の治療または防止方法提供する。
【0046】
この特徴点の好ましい実施態様では、前記方法は、免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1の発現を増大または増強する化合物を被験者に投与する工程を含む。好ましくは前記化合物は、PAC-1の発現を特異的に増大または増強する。
【0047】
用語「PAC-1の発現を特異的に増大または増強する」は、前記化合物が他のDUSPの発現を特異的に増大または増強することなくPAC-1活性を特異的に増大または増強することを意味する。
【0048】
当業者には容易に理解できるであろうように、本発明の方法は、PAC-1と相互作用にその活性を調節する抗体を含む化合物をデザインして選択する合理的な方法を提供する。大多数の場合、これらの化合物は、活性を増大するために更なる発展を必要とするであろう。特定の実施態様では、本発明の方法は、そのような更なる発展工程を含むことを企図される。例えば、本発明の実施態様は、医薬の製造において製薬組成物に前記化合物を取り込ませるような製造工程を更に含むことが企図される。
【0049】
従って、更なる特徴点では、前記方法は、ここに記載のヒト又は非ヒト動物に投与するための同定された化合物の製剤化を更に含む。
【0050】
本発明はまた、サンプル(例えば組織またはサンプル)におけるPAC-1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を検出するための方法に関する。そのような方法は例えば、炎症性疾患の予後及び診断評価の一部として、並びにそのような疾患に対する素因を示す被験者の同定のために利用できる。
【0051】
ここで使用される用語「診断」及び「診断する」、「診断した」、または「診断している」を制限することなく含むようなその変異型は、臨床状態の一次的な診断に制限されるものではないが、臨床状態のいずれかの一次的な診断または予後を含むと解釈されるべきである。例えば、ここに記載される「診断アッセイ」フォーマットは、炎症性疾患の再発のモニター、または前記疾患の治療の効力のモニターに等しく適用される。ここに記載されるアッセイの全てのそのような使用は、本発明によって包含される。
【0052】
好ましい実施態様では、本発明は、PAC-1タンパク質及び/またはmRNAの発現パターンを測定する工程を含む、PAC-1発現細胞と関連する疾患の診断方法を提供する。PAC-1発現細胞と関連する疾患の診断方法のまた別の実施態様は、抗PAC-1抗体を使用するPAC-1発現の検出工程を含む。そのような診断方法は、組成物、キット、及び患者がPAC-1が標的とされる治療のための候補であるかを測定するため別のアプローチの使用を包含する。
【0053】
一つの特定の実施態様では、本発明は、配列番号1または3に示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドと、生物学的サンプルを接触される工程を含む、生物学的サンプル中のPAC-1関連転写産物の検出方法を提供する。好ましくは、配列番号1または3に開示された配列に対する同一性パーセンテージは、少なくとも焼く85%または90%または95%であり、更により好ましくは少なくとも約98%または99%である。
【0054】
更なる好ましい実施態様では、本発明は、ハイブリダイゼーションが生じるのに十分な時間と条件下で、核酸プローブと、試験される被験者由来の生物学的サンプルを接触させる工程、及び次いでハイブリダイゼーションを検出する工程を含む、試験されるヒトまたは動物被験者における炎症性疾患の診断方法であって、炎症性疾患を有さないコントロール被験者について得られたハイブリダイゼーションと比較した、試験される被験者についてのプローブのハイブリダイゼーションのレベルの変化が、試験される被験者が炎症性疾患を有することを示し、前記核酸プローブが、
(i)配列番号1または3から得られる少なくとも約20の連続したヌクレオチドを含む配列;
(ii)配列番号1または3から得られる少なくとも約20の連続したヌクレオチドに対して、少なくとも低いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列;
(iii)配列番号1または3に対して少なくとも約80%同一である配列;
(iv)配列番号2または4に示されたアミノ酸配列をコードする配列;並びに
(v)(i)または(ii)または(iii)または(iv)に示された配列のいずれか一つに相補的である配列
からなる群から選択される配列を含む方法を提供する。
【0055】
ここで使用される用語「レベルの変化」は、アッセイされる数字のレベルの増加、増大、または上昇を含み、または別法としてアッセイされる数字のレベルの減少または低下を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施態様では、核酸の発現のレベルの増加、増大、または上昇は、炎症性疾患の指標である。
【0057】
古典的なハイブリダイゼーションフォーマット及び増幅フォーマットの両方、並びにその組み合わせは、本発明によって包含される。一つの実施態様では、前記ハイブリダイゼーションは、ラベルされたプローブと、試験される被験者由来の生物学的サンプル中の第二の核酸との間の核酸ハイブリダイゼーション反応を実施する工程、並びに前記ラベルを検出する工程を含む。別の実施態様では、前記ハイブリダイゼーションは、核酸増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施する工程を含み、ここでは前記プローブは核酸プライマーからなり、生物学的サンプル中の核酸の核酸コピーが増幅される。当業者には既知であるように、特にサンプル中のあまり豊富でないmRNA種の場合では、検出の特異性を増大するために、増幅は古典的な核酸ハイブリダイゼーション検出系に先行しても良い。
【0058】
好ましい実施態様では、前記ポリヌクレオチドは固体表面上に固定化される。
【0059】
関連する実施態様では、本発明は、PAC-1に特異的に結合する抗体と生物学的サンプルを接触させる工程を含む、生物学的サンプル中のPAC-1ポリペプチドの検出方法を提供する。
【0060】
好ましい実施態様では、本発明は、抗原抗体複合体を形成するのに十分な時間及び条件下で、抗体と試験される被験者由来の生物学的サンプルを接触させる工程、及び次いで前記複合体を検出する工程を含む、試験されるヒトまたは動物被験者における炎症性疾患の診断方法であって、炎症性疾患を有さないコントロール被験者について形成された抗原抗体複合体の量と比較した、試験される被験者についての抗原抗体複合体のレベルの変化が、試験される被験者が炎症性疾患を有することを示し、前記抗体が、配列番号2または4に示された配列と少なくとも約80%の同一性を有する配列の少なくとも約10の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する方法を提供する。
【0061】
一つの実施態様では、抗原抗体複合体のレベルの上昇、増大、または増加は、炎症性疾患の指標となる。
【0062】
本発明は、前記生物学的サンプルの供給源または性質によって制限されることはない。一つの実施態様では、前記生物学的サンプルは、炎症性疾患を治療するための治療摂生を受けている患者から由来する。別の好ましい実施態様では、前記生物学的サンプルは、炎症性疾患を有するまたは形成する疑いのある患者から由来する。
【0063】
好ましい実施態様では、前記生物学的組織サンプルは、マスト細胞、T細胞、または好酸球を含む。更なる実施態様では、前記組織サンプルは、滑液、血液、または肺痰であって良い。
【0064】
別の特徴点では、本発明は、炎症性疾患の治療上の処置の効力をモニターする方法であって、
(i)治療上の処置を受けている患者由来の生物学的サンプルを準備する工程;及び
(ii)配列番号1または配列番号3に示された配列に対して少なくとも約80%の同一性を有する配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドと前記生物学的サンプルを接触させることにより、前記生物学的中のPAC-1関連転写産物のレベルを測定し、それによって治療の効力をモニターする工程
を含む方法を提供する。
【0065】
好ましくは前記方法は、前記PAC-1関連転写産物のレベルを、治療上の処置を受ける前またはその早期の患者由来の生物学的サンプル中のPAC-1関連転写産物のレベルと比較する工程を更に含む。
【0066】
関連する実施態様では、本発明は、炎症性疾患の治療上の処置の効力をモニターする方法であって、
(i)治療上の処置を受けている患者由来の生物学的サンプルを準備する工程;及び
(ii)前記生物学的サンプルを抗体と接触させることにより、前記生物学的サンプル中のPAC-1ポリペプチドのレベルを測定し、前記抗体が、配列番号2または配列番号4に示されたポリヌクレオチド配列に特異的に結合し、それによって治療の効力をモニターする工程
を含む方法を提供する。
【0067】
好ましくは前記方法は、前記PAC-1ポリペプチドのレベルを、治療上の処置を受ける前またはその早期の患者由来の生物学的サンプル中のPAC-1ポリペプチドのレベルと比較する工程を更に含む。
【0068】
本発明はまた、本発明の方法を実施するための、ポリヌクレオチドプローブ及び/またはモノクローナル抗体、及び任意に定量的なスタンダードを含むキットを提供する。更に本発明は、ここに記載された疾患の治療のための臨床試験に関与する、薬剤の効力の評価方法及び患者の予後のモニター方法を提供する。
【0069】
明白なように、本発明の一つの特徴点の好ましい特性及び特徴は、本発明の他の特徴点に適用可能である。
【0070】
配列表の説明
配列番号1:ヒトPAC-1をコードするcDNA
配列番号2:ヒトPAC-1
配列番号3:げっ歯類PAC-1をコードするcDNA
配列番号4:げっ歯類PAC-1
配列番号5から66:ヒトPAC-1生産を下方調節したsiRNA分子の生産のためのポリヌクレオチド
配列番号67:Pac-1 siRNA
配列番号68から74:ヒトPAC-1生産を下方調節したsiRNA分子の生産のためのポリヌクレオチドのステムループ配列
配列番号75から85:ヒトPAC-1の抗原エピトープ
配列番号86:cDNA合成プライマー
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
一般的方法
特に他に記載がなければ、ここで使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有するように考慮される(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学におけるもの)。
【0072】
他に記載がなければ、本発明で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的方法は、当業者に既知である標準法である。そのような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (編者), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (編者), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995及び1996), 並びにF.M. Ausubel等, (編者), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, 現在までの全ての改訂版を含む), Ed Harlow and David Lane (1988), 並びにJ.E. Coligan等, (編者), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (現在までの全ての改訂版を含む)のようなソースの文献を通じて記載され説明され、これらは参考としてここに取り込まれる。
【0073】
PAC-1
ここで使用される用語「PAC-1」は、配列番号2または配列番号4に示されたヒトまたはマウスPAC-1ポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するいずれかのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を指す。好ましくは、配列番号2または4に対する同一性パーセンテージは、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、更により好ましくは少なくとも約99%である。用語「PAC-1」はまた、全長PAC-1の既知の生物学的活性、または全長PAC-1の既知の結合特異性を有するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質断片を含むように考慮される。
【0074】
PAC-1アンタゴニスト/アゴニスト
ここで考慮される化合物の範囲は、PAC-1の生物学的機能のPAC-1アゴニストまたはアンタゴニストを含む。これらの化合物の適切なタイプの例は、以下に記載される
【0075】
タンパク質またはペプチドインヒビター
別の実施態様では、前記候補化合物はタンパク質である。この文脈での用語「タンパク質」は、少なくとも二つの共有結合したアミノ酸を意味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びペプチドを含む。前記タンパク質は、天然に存在するアミノ酸及びペプチド結合、または合成ペプチド模倣構造体から形成されて良い。かくしてここで使用される用語「アミノ酸」または「ペプチド残基」は、天然に存在するアミノ酸と合成アミノ酸の両者を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン、及びノルロイシンは、本発明の目的のためのアミノ酸と考慮される。用語「アミノ酸」はまた、プロリン及びヒドロキシプロリンのようなイミノ酸残基をも含む。側鎖は(R)または(S)構造のいずれでもよい。好ましい実施態様では、アミノ酸は(S)または(L)構造で存在する。天然に存在しない側鎖が使用されたならば、非アミノ酸置換体が、例えばin vivoの分解を防止または遅延するために使用されて良い。
【0076】
更に好ましい実施態様では、前記候補化合物は、天然に存在するタンパク質、または天然に存在するタンパク質の断片である。かくして例えば、タンパク質を含む細胞抽出物、またはタンパク質性細胞抽出物のランダム若しくは選択的切断物が使用されて良い。この方法では、原核生物及び真核生物のタンパク質のライブラリーが形成されて良い。この実施態様で特に好ましくは、細菌、真菌、ウイルス、及び哺乳動物タンパク質のライブラリーであり、後者が特に好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0077】
更に好ましい実施態様では、前記候補化合物は、約5から約30アミノ酸のペプチドであり、約5から約20アミノ酸のペプチドが好ましく、約7から約15アミノ酸のペプチドが特に好ましい。前記ペプチドは、天然に存在するペプチドの切断物、ランダムペプチド、または「バイアス化」ランダムペプチドであって良い。用語「ランダム化」または文法的なその同等物は、各ペプチドが特にランダムアミノ酸からなることを意味する。一般的にこれらのランダムペプチドは化学的に合成されるため、それらはいずれかの位置でいずれかのアミノ酸を取り込んで良い。合成方法は、配列の長さに亘り可能な組み合わせの全てまたはほとんどの形成が可能なようにランダム化タンパク質を生成するようにデザインでき、かくしてランダム化候補生体活性タンパク質性化合物のライブラリーが形成される。
【0078】
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製及びスクリーニングは、当業者に周知である。そのようなコンビナトリアルケミカルライブラリーは、ペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号、Furka (1991) Int. J. Pept. Prot. Res., 37: 487-493, Houghton等, (1991) Nature, 354: 84-88参照)を含むがそれに制限されない。ペプチド合成は、本発明での使用について考慮されて企図される唯一のアプローチでは決してない。ケミカルダイバーシティーライブラリーの生成のための他の化学法もまた使用できる。そのような化学法は、ペプトイド(PCT公開番号WO 91/19735, 1991年12月26日)、コード化ペプチド(PCT公開番号WO 93/20242, 1993年10月14日)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO 92/00091, 1992年1月9日)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、及びジペプチドのようなダイバソマー(Hobbs等, (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 69096913)、ビニロガスポリペプチド(Hagihara等, (1992) J. Amer. Soc. 114: 6568)、Beta D Glucoseスキャホールディングを有するノンペプチダルペプチドミメティクス(Hirschmann等, (1992) J. Amer. Chem. Soc. 114: 92179248)、小化合物ライブラリーの類似有機合成(Chen等, (1994) J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661)、オリゴカルバマート(Cho等, (1993) Science 261: 1303)、及び/またはペプチジルホスホナート(Campbell等, (1994) J. Org. Chem. 59: 658)を含むがこれらに制限されない。一般的には、Gordon等, (1994) J. Med. Chem. 37: 1385、核酸ライブラリー、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリー(例えばVaughn等, (1996) Nature Biotechnology, 14(3): 309-314、及びPCT/US96/10287参照)、炭水化物ライブラリー(例えばLiang等, (1996) Science, 274: 1520-1522、及び米国特許第5,593,853号参照)、並びに小有機分子ライブラリー(例えばベンゾジアセピン、Baum (1993) C&EN, Jan 18, page 33、イソプレノイド、米国特許第5,569,588号、チアゾリジノン及びメタチアザノン、米国特許第5,549,974号、ピロリジン、米国特許第5,525,735号及び第5,519,134号、モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号、ベンゾジアセピン、米国特許第5,288,514号等)参照。
【0079】
コンビナトリアルライブラリーの調製のための装置は市販で入手可能である(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville Ky., Symphony, Rainin, Woburn, Mass., 433A Appliied Biosystems, Foster City, Calif., 9050 Plus, Milipore, Bedford, Mass参照)。
【0080】
一つの実施態様では、ペプチジルPAC-1インヒビターは、PAC-1配列(配列番号2または4)から由来するオリゴペプチド(約10-25アミノ酸長)として、化学的または組換え的に合成される。別法として、PAC-1断片が、プロテアーゼ、例えばトリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、またはペプシンを使用することによって、天然のまたは組換え的に生産されたPAC-1の切断により生産される。コンピューター分析(例えばMacVector, Omega, PGCene, Molecular Simulation, Inc.といった市販で入手可能なソフトウェアーを使用する)は、タンパク質分解性切断部位を同定するために使用される。タンパク質分解性または合成断片は、PAC-1機能を部分的または完全に阻害するのに必要な程度のアミノ酸残基数を含むことができる。好ましい断片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれ以上のアミノ酸長を含むであろう。
【0081】
タンパク質またはペプチドインヒビターは、PAC-1のドミナントネガティブミュータントであっても良い。用語「ドミナントネガティブミュータント」は、天然状態から突然変異しており、PAC-1が通常相互作用するタンパク質と相互作用して、内因性天然PAC-1が相互作用を形成するのを妨げるPAC-1ポリペプチドを指す。
【0082】
抗PAC-1抗体
本発明で使用される用語「抗体」は、PAC-1のエピトープ決定基を結合可能である完全分子、並びにFab、F(ab')2、及びFvのようなその断片を含む。これらの抗体断片は、抗原と選択的に結合するいくつかの能力を保持し、以下のように定義される:
【0083】
(1)Fab:抗体分子の一価抗原結合断片を含む断片は、完全な軽鎖及び一つの重鎖の一部を生ずるように、酵素パパインで完全な抗体を切断することによって生産できる;
【0084】
(2)Fab':抗体分子の断片は、完全な抗体をペプシンで処理し、その後還元し、完全な軽鎖と重鎖の一部を生ずるように得ることができる;二つのFab'断片が抗体分子当たり得られる;
【0085】
(3)(Fab')2:抗体の断片は、完全な抗体を酵素ペプシンで処理し、その後還元することなく得ることができる;F(Ab)2は、二つのジスルフィド結合により共に保持された二つのFab'断片のダイマーである;
【0086】
(4)Fvは、二つの鎖として発現された軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域を含む遺伝学的に操作された断片として定義される;並びに
【0087】
(5)一本鎖抗体("SCA")は、遺伝学的に融合した一本鎖分子として、適切なポリペプチドリンカーによって結合された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む、遺伝学的に操作された分子として定義される。
【0088】
抗体断片の作製方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Harloe and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)を参照、参考としてここに含まれる)。
【0089】
本発明の抗体は、免疫化抗原として完全なPAC-1またはその断片を使用して調製できる。動物を免疫化するために使用されるペプチドは、翻訳されたcDNAまたは化学合成から由来でき、精製され、所望であればキャリアータンパク質に接合される。ペプチドに化学的に結合されるそのような一般的に使用されるキャリアーは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)、及び破傷風毒素を含む。次いで結合したペプチドは、動物(例えばマウスまたはウサギ)を免疫化するために使用されて良い。
【0090】
所望であれば、ポリクローナル抗体は、例えば抗体が向けられたペプチドを結合したマトリックスに結合しそれから溶出することによって更に精製できる。当業者は、ポリクローナル抗体、並びにモノクローナル抗体の精製及び/または濃縮のための免疫学の分野において一般的な各種の技術を既知であろう(例えば、Coligan等, Unit 9, Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 1991参照、参考として取り込まれる)。
【0091】
モノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、及びEBVハイブリドーマ法のような、経代培養した細胞系による抗体分子の生産を提供するいずれかの方法を使用して調製されて良い(Kohler等, Nature 256, 495-497, 1975; Kozbor等, J. Immunol. Methods 81, 31-42, 1985; Cote等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 2026-2030, 1983; Cole等, Mol. Cell Niol. 62, 109-120, 1984)。
【0092】
当該技術分野で知られた方法は、PAC-1に対する結合を示す抗体を、抗体発現ライブラリーから同定して単離することが可能である。例えば、PACに対する結合を示す抗体結合ドメインの同定及び単離のための方法は、バクテリオファージベクターシステムである。このベクターシステムは、大腸菌においてマウス抗体レパートリーから(Huse等, Science, 246: 1275-1281, 1989)、及びヒト抗体レパートリーから(Mullinax等, Proc. Natl. Acad. Sci., 87: 8095-8099, 1990)、Fab断片のコンビナトリアルライブラリーを発現するために使用されている。この方法体系はまた、事前選択されたリガンドに対して結合を有するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞系に適用できる。所望のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマは、当業者によって十分に理解された方法を試用して各種の方法で生産でき、ここに繰り返すことはしない。これらの技術の詳細は、Monoclonal Antibodies-Hybridomas: A New Dimension in Biological Analysis, H. Kennett等により編集, Plenum Press, 1980;及び米国特許第4,172,124のような文献に記載されており、参考として取り込まれる。
【0093】
更に、「ヒト化」抗体の各種の組合せを有するキメラ抗体分子を生産する方法は、当該技術分野で既知であり、げっ歯類の可変領域をヒト定常領域と組み合わせること(Cabily等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 3273, 1984)、またはげっ歯類抗体相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークにグラフトすることをによる(Riechmann等, Nature 332: 323, 1988)ものを含む。
【0094】
一つの実施態様では、前記抗体は、配列番号75−85からなる群から選択されるがこれらに制限されない、ヒトPAC-1の領域の少なくとも一部に結合する。
【0095】
アンチセンス化合物
用語「アンチセンス化合物」は、PAC-1 mRNA分子の少なくとも一部に相補的で(Izant及びWeintraub, Cell 36: 1007-15, 1984; Izant及びWeintraub, Science 229 (4711): 345-52, 1985)、mRNA翻訳のような転写後の現象を妨げることが可能なDNAまたはRNA分子を包含する。PAC-1コードmRNAの少なくとも約15の連続したヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴマーは、容易に合成され、標的PAC-1生産細胞内に導入した場合、より大きな分子よる問題を生ずる可能性が低いようなので好ましい。アンチセンス法の使用は、当該技術分野で周知である(Marcus-Sakura, Anal. Biochem. 172: 289, 1988)。好ましいアンチセンス核酸は、配列番号2または配列番号4に示されたアミノ酸配列をコードする配列の少なくとも15の連続したヌクレオチドに相補的であるヌクレオチド配列を含むであろう。
【0096】
触媒性核酸
用語「触媒性核酸」は、別個の基質を特異的に認識し、この基質の化学的修飾を触媒するDNA分子またはDNA含有分子(「DNAザイム」として当該技術分野で既知である)あるいはRNAまたはRNA含有分子(「リボザイム」として当該技術分野で既知である)を指す。触媒性核酸中の核酸塩基は、A、C、G、T、及びUの塩基、並びにそれらの誘導体であることができる。これらの塩基の誘導体は当該技術分野で周知である。
【0097】
典型的に、触媒性核酸は、標的核酸の特異的認識のためのアンチセンス配列と、核酸切断酵素活性(「触媒ドメイン」としてここに称される)を含む。特異性を達成するために、好ましいリボザイム及びDNAザイムは、配列番号2または配列番号4に示されたアミノ酸配列をコードする配列の、少なくとも約12-15の連続したヌクレオチドに相補的であるヌクレオチド配列を含むであろう。
【0098】
本発明において特に有用であるリボザイムのタイプは、ハンマーヘッドリボザイム(Haseloff及びGerlach, Nature, 334: 585 (1988), Perriman等, Gene, 133: 157 (1992))、及びヘアピンリボザイム(Shippy等, Mol. Biotech. 12: 117 (1999))である。
【0099】
本発明のリボザイム及びリボザイムをコードするDNAは、当該技術分野で周知の方法を使用して化学的に合成することができる、リボザイムはまた、RNAポリメラーゼプロモーター、例えばT7 RNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼのためのプロモーターに実施可能に結合したDNA分子(転写の際にRNA分子を生成するもの)から調製できる。従って、本発明はまた、本発明のリボザイムをコードする核酸分子、即ちDNAまたはcDNAを提供する。ベクターが、前記DNA分子に実施可能に結合したRNAポリメラーゼプロモーターをも含む場合、RNAポリメラーゼ及びヌクレオチドとインキュベーションした際に、in vitroでリボザイムを生産できる。別の実施態様では、前記DNAは、発現カセットまたは転写カセットに挿入できる。合成後、前記RNA分子は、リボザイムを安定化し、それをRNアーゼに耐性とする能力を有するDNA分子にライゲーションすることにより修飾できる。別法として、リボザイムは、リポソームデリバリー系における使用のため、ホスホチオアナログに修飾できる。この修飾はさらに、エンドヌクレアーゼ活性に対してリボザイムを耐性にする。
【0100】
RNAインヒビター
dsRNAは、特定のタンパク質の生産を特異的に阻害するために特に有用である。理論によって制限されることを望まないが、Dougherty及びParks(Curr. Opin. Cell Biol. 7: 399 (1995))は、dsRNAがタンパク質生産を減少するために使用できるメカニズムのモデルを提供している。このモデルは、Waterhouse等(Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 13959 (1998))によって最近修正されて説明されている。この技術は、PAC-1タンパク質をコードするmRNAの場合に、興味ある遺伝子のmRNAに必須に同一である配列を含むdsRNA分子の存在に依存する。簡便には、dsRNAは、組換えベクターまたは宿主細胞中の単一のオープンリーディングフレームにおいて生産でき、センス及びアンチセンス配列は、それらがループ構造を形成する非関連配列を有するdsRNA分子を形成するようにハイブリダイズすることを可能にする非関連配列に隣接している。PAC-1に対して標的化された適切なdsRNA分子のデザイン及び生産は、当業者の能力の範囲内に十分あり、Dougherty及びParks (1995,上記参照)、Waterhouse等(1998、上記参照)、WO 99/32619、WO 99/53050、WO 99/49029、及びWO 01/34815が特に考慮される。
【0101】
ここで使用される用語「小干渉RNA(siRNA)」及び「RNAi」は、遺伝子産物を特異的に標的とし、それによってゼロのまたは低次形態の表現形を生ずる相同な二本鎖RNA(dsRNA)を指す。特にdsRNAは、PAC-1をコードする標的RNAから由来する短いヌクレオチド配列と、恐らく転写後のレベルで、標的遺伝子にアニリングしてその発現を妨げる自己相補性を有する短いヌクレオチド配列の二つの配列を含む。RNAi分子は、Fire等, Nature 391, 806-811, 1998に記載され、Sharp, Genes & Development, 13, 139-141, 1999にレビューされている。
【0102】
好ましいsiRNA分子は、標的mRNAの約19-21の連続したヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。好ましくは、PAC-1 mRNA中の標的配列は、ジヌクレオチドAAで開始し、約30-70%(好ましくは30-60%、より好ましくは40-60%、より好ましくは約45%-55%)のGC含量を含み、例えば標準的BLASTサーチによって測定すると、導入される動物のゲノム中のPAC-1以外のいずれのヌクレオチド配列とも高い同一性のパーセンテージを有さない。
【0103】
siRNAは好ましくは、細胞中の特にコード領域におけるヒトPAC-1の発現を下方調節可能である。げっ歯類及びヒトPAC-1コード遺伝子の間の高い保存性パーセンテージに鑑みて、これはsiRNAがヒトPAC-1コード遺伝子に特異的である必要性を示すことは考慮されるべきではない。ここに記載される細胞ベースのモデル及び動物モデルにおいては、siRNA分子が、特定の環境において、細胞中の内因性げっ歯類PAC-1、並びに異所的に発現されるヒトPAC-1の両者の発現を減少することが可能であって適切である。ヒトPAC-1に対するアンタゴニストの特定の活性の確認は、ヒトPAC-1を発現するように操作されているPAC-1-/-マウスから由来する細胞において、インヒビターの活性を評価することによって測定される。
【0104】
ここに例示されるように、PAC-1コード領域に対する好ましいsiRNAは、配列番号5−66のいずれか一つに示された21ヌクレオチド配列を含む。この特徴点では、配列番号5−35のそれぞれは、(i)ジヌクレオチドAAに隣接したまたはその下流のヒトPAC-1 mRNA標的配列に対応する19ヌクレオチド配列;及び(ii)3’-伸張ジヌクレオチドTTを含む。配列番号36−66のそれぞれは、配列番号5−35のそれぞれに含まれるヒトPAC-1 mRNA標的配列に相補的な19ヌクレオチド配列;及び(ii)3’-伸張ジヌクレオチドTTを含む。
【0105】
配列番号5−66に示された例示されたsiRNAから由来するステムループ構造を含むsiRNAを生産するために、センス鎖及びアンチセンス鎖を、介入ループ配列に隣接するように配置する。好ましいループ配列は、以下のものからなる群から選択される:
(i)CCC(配列番号68);
(ii)UUCG(配列番号69);
(iii)CCACC(配列番号70);
(iv)CUCGAG(配列番号71);
(v)AAGCUU(配列番号72);
(vi)CCACACC(配列番号73);及び
(vii)UUCAAGAGA(配列番号74)。
これらのループ配列のうち、配列番号74に示された配列は、細胞及び/または組織におけるヒトPAC-1発現を調節するために特に好ましい。
【0106】
ヒト細胞においてPAC-1生産を下流調節するために使用できるsiRNAの更なる例は、Yin等(Nature, 422: 527 (2003)、補足情報の部分を参照)に記載されており、配列番号67として提供される。
【0107】
小分子インヒビター
免疫系を調節する能力について、数多くの有機分子が評価されて良い。例えば、本発明の一つの実施態様では、適切な有機分子は、化学物質が個々的に評価されるケミカルライブラリー、または複数の化合物が一度に評価して、ほとんどの活性化合物を測定して単離する陽に解析するコンビナトリアルケミカルライブラリーのいずれかから選択されて良い。
【0108】
そのようなコンビナトリアルケミカルライブラリーの代表例は、Agrafiotis等, "System and method of automatically generating chemical compounds with desired properties", 米国特許第5,463,564号;Armstrong, R.W., "Synthesis of combinatorial arrays of organic compounds through the use of multiple component combinatorial array syntheses", WO 95/02566;Baidwin, J.J.等, "Sulfonamide derivatives and their use", WO 95/24186;Baldwin, J.J.等, "Combinatorial dihydrobenzopyran library", WO 95/30642;Brenner, S., "New kit for preparing combinatorial libraries", WO 95/16918;Chenera, B.等, "Preparation of library of resin-bound aromatic carbocyclic compounds", WO 95/16712;Ellman, J.A., "Solid phase and combinatorial synthesis of benzodiazepine compounds on a solid support", 米国特許第5,288,514号;Felder, E等, "Novel combinatorial compound libraries", WO 95/16209;Lerner. R.等, "Encoded combinatorial chemical libraries", WO 93/20242;Pavia, M,R,等, "A method for preparing and se4lecting pharmaceutically useful non-peptide compounds from a structually diverse universal library", WO 95/04277;Summerton, J.E.及びD.D. Weller, "Morpholino-subunit combinatorial library and method", 米国特許第5,506,337号;Holmes, C., "Methods for the Solid Phase Synthesis of Thiazolidinones, Metathiazanones, and Derivatives thereof", WO 96/00148;Phillips, G.B.及びG.P. Wei, "Solid-phase Synthesis of Benzimidazoles", Tet, Letters 37: 4887-90, 1996;uhland, B.等, "Solid-supported Combinatorial Synthesis of Structurally Diverse beta-Lactams", J. Amer. Chem. Soc. 111: 253-4, 1996;Look, G.C.等, "The Indetification of Cyclooxygenase-1 Inhibitors from 4-Thiazolidinone Combinatorial Libraries", Bioorg and Med. Chem. Letters 6: 707-12, 1996によって記載されたものを含む。
【0109】
二重特異性ホスファターゼ(DUSPS)の可逆的及び段階的な調節が可能である小分子インヒビターは、最近利用可能となっている。これらのインヒビターの多くは天然の産物に基づき、新規な治療剤に対する基礎を形成して良い。DUSPSのインヒビターの例は、Lyon等, 2002, Nature Reviews, Vol 1: 961-976に記載されており、その全内容は参考としてここに特に取り込まれる、本発明の文脈では、前記インヒビターは、DUSP2(PAC-1)に特異的であることが好ましい。
【0110】
PAC-1アゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法
組換えPAC-1の生産
PAC-1のインヒビターまたはアンタゴニストを同定するためにアッセイにおける使用のためのタンパク質を生成するために、PAC-1遺伝子をクローン化し、適切な発現系(大腸菌ベースの発現系のような)において発現し、発現されたタンパク質をアフィニティー精製ストラテジーを使用して回収して良い。数10−数100mg/リットルの収率が、この方法から期待できる。
【0111】
PAC-1遺伝子の配列は既知であり(配列番号1及び3)、マスト細胞または活性化T細胞から単離されたmRNAからPCRを使用してこの遺伝子を増幅するために、プライマーがデザインできる。PCRプライマーに導入された適切な制限部位を使用して、精製アフィニティータグ配列(例えば6xHis、GST、CBD)でフレーム中に、且つ強力なプロモーター(例えばT7、T7/lac、tac、trc、PL)の下流で、大腸菌発現プラスミド内に直接増幅された遺伝子をクローン化して良い。増幅工程及びクローニング工程の間で、ミューテーションが導入されていなかったことを確認するために遺伝子をシークエンスした後、組換え発現プラスミドを発現のため適切な宿主細胞にトランスフォームして良い。
【0112】
宿主細胞を所望の密度及び容量に生育させた後、発現を誘導して良い。最大の生産に到達した際に細胞を回収し、機械的または化学的手段により溶解し、必要であれば内容物を可溶化し、アフィニティー精製にかける。発現したタンパク質をアフィニティー樹脂(例えばNTAアガロース、GSTアガロース、セルロース)から溶出してよい。単一のアフィニティー精製工程の後に、タンパク質は〜90%の純度であろうと予測される。必要であれば更なる精製工程を実施できる。
【0113】
MAPキナーゼホスファターゼ活性に基づくスクリーニングプロトコール
PAC-1活性を含むMAPキナーゼホスファターゼ活性についてのアッセイの多くが記載されており、当業者に既知であろう。シグナル対ノイズの割合の観点で好ましいアッセイは、DiFMUP(Molecular Probes)と称される基質のリン酸化を使用する。これは、全てのセリン/トレオニンホスファターゼによってリン酸化され得る非特異的な基質である。DiFMUPは、リン酸基を損失した後蛍光を放射する。基質DiFMUPを使用する一つの利点は、市場で入手可能である他のホスファターゼがPACインヒビターの特異性を研究するために使用できる点である。
【0114】
蛍光は、355nmでの励起と460nmでの放射を使用して、96/384ウェルの蛍光プレートリーダーで測定される。
【0115】
Molecular Probeアッセイ系は、96ウェルフォーマットで現在利用可能である。このアッセイ系は、良好なシグナル対ノイズを得るために、基質(DiFMUP)の最適量、ホスファターゼの最適量、及び最も適切なバッファー条件を測定することによって改良されて良い。一つの適切なバッファーは、例えばトリス−HCl, pH8, NaCl 100mM, 及びDTT 5mMである。
【0116】
スクリーンの形成は典型的に、バイオアッセイパラメーターの最適化についての統計学的アプローチを展開し、最適化された条件下でバイオアッセイ実効性(シグナル:バックグランド比、プレート内及びプレート間生存能力等の観点で)の厳格な分析を含む。適切な質のコントロール法は、スクリーンの稼動の間で実効性の連続的な評価を可能にする最終アッセイ法に組み立てられて良い。例えば、上述の最適化されたアッセイは、小分子ライブラリーのスクリーニングのような、スクリーニング法を容易にするために、ハイスループットの半自動化384ウェルフォーマットに転換されて良い。
【0117】
天然産物ライブラリーのスクリーニング
一つの実施態様では、本発明は、更なる特徴づけのため、潜在的な候補としての生体活性化合物を検出するため、元々の及び分画化天然産物抽出物のライブラリーで示される小分子の化学的多様性をスクリーニングすることを含む。
【0118】
一次的なスクリーニングフェーズの間、100,000−250,000サンプルを試験することが一般的に可能である。0.1%−1%の範囲で頻繁にヒットの割合を有し、一次的なスクリーンで同定された生体活性サンプルの数は、通常数百から数千の範囲である。一次的なスクリーニングの方法は、自動化システムと結び付いた特別化したアッセイ技術の使用を含み、一日当たり50,000までの試験サンプルスループットを可能にする。例えば前記スクリーニング方法は、直線状の飛跡に搭載された正確な6軸のロボットアームを含むロボットスクリーニングシステムの使用を含む。そのようなシステムは、全ての器具及びハードウェアに結合しており、マイクロタイタープレートを前記システムのいずれかの位置に移動させることが可能である。ハードウェアは、サンプル及びアッセイプレートの貯蔵及び接近のためのプレートカルーセル、液体の取り扱いのためのロボットアームを有する自動化システム、プレートごとのマイクロプレートピペッティングシステム、プレートシェイカー、及びプレートウォッシャーを含む。このシステムはまた、蛍光測定、光測定、及び発光測定の検出が可能なプレートリーダーをも有する。ロボットスクリーニングシステムに加えて、迅速なマイクロプレートピペッティング、及びアッセイプレートからの各種のシグナル読み取りの検出のための数多くのスタンドアローンの装置を利用して良い。
【0119】
重複を避ける方法は、所望の特徴を有する活性化合物を最も多く含む一次的なスクリーンで同定されたヒットの小サブ集団を選択するために使用して良い。経験により、脱重複は、天然産物のドラッグデリバリーにおける重要な成功決定工程及び律速工程である。
【0120】
脱重複は以下のように実施されて良い。初期のPAC-1インヒビタースクリーンから得られた全てのヒットを、存在するべての活性化合物の相対的極性についての情報を生成するようにデザインされた高能力分画化法にかける。この情報に基づいて、一つ以上のこれらの初期分画において生体活性を示す全ての抽出物を、適切な極性範囲にわたって高解像度を提供するようにデザインされた短い勾配を使用してHPLC分離に進める。溶出物の結合したUV/可視検出で、一次的スクリーンと関連する二次的アッセイの両者で生体活性のため分画の試験、LC-MSによる活性分画の分析、全てのスクリーンヒットから得られる純粋なまたはほぼ純粋な活性HPLC分画についての薬理化学的及び生体活性データの集積を生成する。
【0121】
脱重複方法から生成した優先的なスクリーンヒットは、存在する活性化合物の単離と完全な化学的特徴付けに進んでよい。微生物抽出物の場合、適切な抽出物のスケールアップした量が、生産生物を再発酵することによって最初に調製されて良い。植物組織抽出物の場合、化学的な単離作業のための抽出物の更なる量を調製するために、乾燥した粉砕植物組織標本のほとんどの十分なストックが存在する。
【0122】
好ましい実施態様では、化学的単離プログラムは、生物学的活性の構造評価作業と更なるプロファイリングを実施するための各活性化合物の十分な純度(典型的に2-20mg)を目的とする。構造は、マススペクトロメトリー(MS)予備核磁気共鳴(NMR)データに基づいて主に決定されて良い。
【0123】
一次的なスクリーンとして形成された好ましいバイオアッセイはまた、偽のヒット(例えばアッセイ検出システムでの妨害のため)、非関連モードの作用のためのヒット(例えば機能的な細胞ベースのスクリーンでの細胞毒性)、または生物学的特異性の所望のプロファイルを示さないヒットを検出するようにデザインされたいくつかの二次的アッセイによってバックアップされる。ほとんどの二次的アッセイは、一次的なアッセイで同定されたヒット抽出物から由来する純粋なまたはほぼ純粋な活性分画に適用できる場合、脱重複方法の最後の段階で使用のために保存される。PP-1、PP-2A、PP-2B、及びPP-2Cのような多くの市場で入手可能なホスファターゼがこの目的のため有用であって良い。PAC-1アッセイで同定されたリードヒットの量応答性の阻害は、阻害の強度と効力を測定するために好ましくは実施される。
【0124】
PAC-1の発現に基づくスクリーニングプロトコール
PAC-1発現を阻害する候補化合物の能力のスクリーニング方法の例は、以下の工程を含んで良い:
(i)PAC-1を発現することが可能な細胞と候補化合物を接触させる工程;
(ii)候補化合物と接触された細胞におけるPAC-1の発現の量を測定し、この発現量を、調査される物質で接触されていない対応するコントロール細胞におけるPAC-1の発現(発現のコントロール量)の量と比較する工程;並びに
(iii)上記工程(ii)の結果に基づいてコントロール発現の量と比較したPAC-1の減少した発現量を示す候補化合物を選択する工程。
【0125】
このスクリーニング方法で使用される細胞は、天然遺伝子と組換え遺伝子の間の差異に関わらず、PAC-1を発現できるいずれかの細胞であって良い。更に、PAC-1の偏差は特に制限されない。前記細胞はヒト由来であっても良く、またはマウスのようなヒト以外の哺乳動物、若しくは他の生物から由来しても良い。適切なヒト細胞の例は、マスト細胞を含む造血細胞である。更に、PAC-1をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含むトランスフォーム化細胞を使用しても良い。
【0126】
候補化合物をPAC-1を発現できる細胞と接触させるための条件は制限されないが、適切な細胞を殺傷せず、PAC-1遺伝子が発現できる培養条件(温度、pH、培養組成等)から選択することが好ましい。
【0127】
用語「減少」は、発現のコントロール量と比較してのみではなく、PAC-1が全く発現されない場合をも包含する。特にこれは、PAC-1の発現量が実質的にゼロである場合を含む。
【0128】
PAC-1の発現量は、PAC-1遺伝子(mRNA)の発現の量を測定することによって、または生産されたPAC-1タンパク質の超を測定することによってのいずれかで評価できる。更に、PAC-1の量を測定する方法は、遺伝子(mRNA)の発現量、または生産されたタンパク質の量を直接測定する方法である必要はないが、これらの反映するいずれかの方法であって良い。
【0129】
特にPAC-1の発現量を測定するために(検出及びアッセイ)、PAC-1 mRNAの発現量が、DNAアレイ、またはノーザンブロット法のような周知の方法、並びに適切なPAC-1 mRNAのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを使用するRT-PCR法を利用して測定して良い。更に、PAC-1タンパク質の量は、抗PAC-1抗体を利用するウエスタンブロット法のような周知の方法を実施することによって測定されて良い。
【0130】
PAC-1の発現量の測定(検出及びアッセイ)は、PAC-1遺伝子の抑制領域に結び付いたレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコール−アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、β−グルクロニダーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、及びエクオリン遺伝子)のようなマーカー遺伝子を含む融合遺伝子を導入している細胞系を使用して、マーカー遺伝子から由来するタンパク質の活性を測定することにより実施されて良い。
【0131】
一つ以上の結合パートナーに対するPAC-1の結合に基づくスクリーニングプロトコール
一つの実施態様では、PAC-1アゴニストまたはアンタゴニストは、PAC-1基質に対するPAC-1の結合を妨害する候補化合物のためのスクリーニングにより同定される。PAC-1基質の例は、ERK、p38、及びJNKを含む。
【0132】
標準的な固相ELISAアッセイフォーマットは、タンパク質−タンパク質相互作用のアンタゴニストを同定するために特に有用である。この実施態様によれば、結合パートナーの一つ、例えばPAC-1基質(ERK、p38、またはJNK、またはその一部)を固体のマトリックス、例えばポリマー状ピンのアレイ若しくはガラスの支持体に固定化する。簡便には、固定化結合パートナーは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST;例えばCAP-ERK融合物)を含む融合ポリペプチドであり、GST部分は固相の支持体に対する前記タンパク質の固定化を容易にする。溶液中の第二の結合パートナー(例えばPAC-1)を、固定化したタンパク質に対して物理的に接触させ、タンパク質複合体を形成させ、この複合体を第二の結合パートナーに対して向けられた抗体を使用して検出する。抗体は一般的に、蛍光分子でラベルされており、または酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ)に接合されており、あるいは別法として、第一の抗体に結合する第二のラベル化抗体が使用できる。簡便には、第二の結合パートナーは、FLAGまたはオリゴヒスチジンペプチドタグ、あるいは他の適切な免疫学的ペプチドを有する誘導ポリペプチドとして発現され、前記ペプチドタグに対する抗体が、結合パートナーを検出するために使用される。別法として、オリゴHISタグ化タンパク質複合体がニッケルNTA樹脂(Qiagen)に対する結合によって検出でき、またはFLAGラベル化タンパク質複合体がFLAG M2アフィニティーゲル(Kodak)に対する結合により検出できる。ここに記載のアッセイフォーマットは、例えば結合ペプチドまたは融合タンパク質のマイクロアレイを使用するような、サンプルのハイスループットスクリーニングに変更可能であることは、当業者に明白であろう。
【0133】
米国特許第6,316,223号に記載されているようなトゥーハイブリッドアッセイもまた、基質の一つに対するPAC-1の結合を妨げる化合物を同定するために使用されて良い。このシステムの基本的なメカニズムは、酵母トゥーハイブリッドシステムと同様である。トゥーハイブリッドシステムでは、結合パートナーが、哺乳動物宿主細胞において二つの別個の融合タンパク質として発現される。この目的のため標準的なトゥーハイブリッドスクリーンを採用する際、第一の融合タンパク質は、結合パートナーの一方に融合するDNA結合ドメインからなり、第二の融合タンパク質は、他方の結合パートナーに融合した転写活性化ドメインからなる。DNA結合ドメインは、一つ以上のレポーター遺伝子の発現を制御するオペレーター配列に結合する。転写活性化ドメインは、結合パートナー間の機能的な相互作用を通じてプロモーターに作用する。その後、転写活性化ドメインは、細胞の基底の転写マシネリーと相互作用し、レポーター遺伝子(類)の発現を活性化し、その発現が測定できる。結合パートナー間のタンパク質−タンパク質相互作用を調節する候補生体活性剤は、宿主とインキュベートされた際、レポーター遺伝子(類)の転写を調節する能力によって同定される。アンタゴニストはレポーター遺伝子発現を妨害または減少する一方で、アゴニストはレポーター遺伝子発現を促進するであろう。小分子モジュレーターの場合では、これらは細胞培地に直接添加され、レポーター遺伝子発現が測定される。他方で、ペプチドモジュレーターは、宿主細胞内にトランスフェクトされる核酸から発現可能であり、レポーター遺伝子発現が測定される。実際に完全なペプチドライブラリーが、トランスフェクトされた細胞においてスクリーンできる。
【0134】
別法として、例えばVadal等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 10315-10320, 1996に記載されたような、逆トゥーハイブリッドスクリーンが、アンタゴニスト分子を同定するために使用されて良い。逆ハイブリッドスクリーンは、タンパク質−タンパク質相互作用を選択するために、例えばCYH2またはLYS2のようなカウンター選択可能なレポーター遺伝子を使用する点で、上述の正スクリーンとは異なる。細胞生存または増殖は、カウンター選択可能なレポーター遺伝子産物の非毒性の基質の存在下で減少または防止され、それは前記遺伝子産物によって毒性化合物に変換される。従って、相互作用のアンタゴニストの存在下のような、本発明のタンパク質−タンパク質相互作用が生じていない細胞は、毒性産物に変換されていないため基質の存在下で生き残る。例えば、ERKまたはp38またはJNKに結合するPAC-1の部分/断片は、GAL4のDNA結合ドメインと共なるように、DNA結合ドメイン融合物として発現される;PAC-1を結合するERKまたはp38またはJNLの部分は、適切な転写活性化ドメイン融合ポリペプチド(例えばGAL4転写活性化ドメインと共に)として発現される。融合ポリペプチドは、URA3カウンター選択可能なレポーター遺伝子と実施可能に連結して酵母において発現され、そこではURA3の発現は、GAL4 DNA結合ドメインと転写活性化ドメインの間での物理的関係を必要とする。この物理的関係は、レポーター遺伝子発現を、例えばGAL4が結合するヌクレオチド配列を含むプロモーターの制御下に置くことで達成される。レポーター遺伝子を発現する細胞は、ウラシルと5-フルオロオルト酸(5-FOA)の存在下で増殖しないが、これは5-FOAが毒性化合物に変換されるためである。候補ペプチドインヒビター(類)は、そのような細胞のライブラリーで発現され、お子ではウラシルと5-FOAの存在下で増殖する細胞が、例えば候補ペプチドインヒビター(類)をコードする核酸の分析のための更なる分析のため維持される。相互作用に拮抗する小分子は、前記小分子の存在下で前記細胞をインキュベートし、ウラシル及び5-FOAの存在下で細胞の増殖または生存が可能な細胞を選択することによって測定される。
【0135】
別法として、Karin等による米国特許第5,776,689号に記載されたようなタンパク質リクルートシステムが使用されて良い。標準的なタンパク質リクルートシステムでは、タンパク質-タンパク質相互作用が、転写因子ではないエフェクタータンパク質の特異的な細胞区画へのリクルートによって細胞で検出される。エフェクタータンパク質の細胞区画への移動の際に、エフェクタータンパク質は当該区画に存在するレポーター分子を活性化し、レポーター分子の活性化は、例えば細胞生存能力によって検出可能であり、タンパク質-タンパク質相互作用の存在を指摘する。
【0136】
とりわけ、タンパク質リクルートシステムの成分は、エフェクタータンパク質と結合パートナーの一つ(例えばERKまたはp38またはJNKまたはその一部)を含む第一の融合タンパク質をコードする第一の発現可能な核酸、及び細胞区画局在化ドメインと他の結合パートナー(例えばPAC-1またはその一部)を含む第二の融合タンパク質をコードする第二の発現可能な核酸を含む。内因性のエフェクタータンパク質の活性が欠損または不在である細胞系または細胞株(例えば酵母細胞または他の非哺乳動物細胞)もまた、タンパク質-タンパク質相互作用が不在である際に、レポーター分子が発現されないように必要とされる。
【0137】
結合パートナー間の相互作用の結果として、融合ポリペプチドの間で複合体が形成され、細胞区画局在化ドメイン(例えば細胞膜局在化ドメイン、核局在化ドメイン、ミトコンドリア膜局在化ドメイン等)によって介在される適切な細胞区画への複合体の移動が介在され、次いでエフェクタータンパク質がレポーター分子を活性化する。そのようなタンパク質リクルートシステムは、例えば哺乳動物、鳥類、昆虫、及び細菌細胞を含むいずれかのタイプの細胞で、各種のエフェクタータンパク質/レポーター分子システムを使用して実施できる。
【0138】
例えば、PAC-1と一つ以上の結合パートナーの間の相互作用が、細胞膜へのグアニンヌクレオチド交換因子(GEFまたはC3G)のリクルートを生じ、GEFまたはC3GがRasのようなレポーター分子を活性化し、それによってさもなければ特定の細胞培養条件下で生存しない細胞の生存を生ずる、酵母細胞ベースのアッセイが実施されている。この目的のための適切な細胞は、例えばSaccharomyces cerevisiae cdc25-2細胞を含み、それは機能的GEFがそこで発現されている場合のみ36℃で増殖する(Petitjean等, Genetics 124, 797-806, 1990)。GEFの細胞膜への移動は、細胞膜局在化ドメインによって容易となる。Rasの活性化は、例えば市場で入手可能なアッセイキット及び/または試薬を使用して、細胞内でサイクリックAMPレベルを測定することによって検出される。本発明のタンパク質−タンパク質相互作用のアンタゴニストを検出するために、試験化合物の存在下及び不存在下、または細胞における候補アンタゴニストペプチドの発現の存在下または不存在下で実施される。候補化合物または候補ペプチドの存在下での細胞の減少した生存または増殖は、前記ペプチドまたは化合物が、PAC-1と一つ以上の結合パートナーの間の相互作用のアンタゴニストであることを指摘する。
【0139】
細胞の生存の変化または増殖の変化が、候補化合物または候補ペプチドによるタンパク質−タンパク質相互作用の破壊に依存する、「逆」タンパク質リクルートシステムもまた考慮されている。例えば、GEFの存在下で活性化Rasを構成的に発現するNIH 3T3細胞が使用でき、細胞トランスフォーメーションの不在は、候補化合物またはペプチドによるタンパク質複合体の破壊を指摘する。対照的に、GEFの存在下で活性なRasを構成的に発現するNIH 3T3細胞は、トランスフォームした表現系を有する(Aronheim等, Cell. 78, 949-961, 1994)。
【0140】
また別の実施態様では、小分子は、Vidal及びEndoh, TIBS 17, 374-381, 1999に記載されたプレートアガー拡散アッセイの採用によって、基質の一つに対するPAC-1の結合を妨げる能力について試験され、この文献は参考としてここに取り込まれる。
【0141】
炎症のモデル
炎症のin vivoモデルは入手可能であり、治療剤として上記の通り同定したPAC-1アゴニストまたはアンタゴニストの効果を評価するのに使用することができる。例えば、リウマチ様関節炎の選択した候補化合物の抑制作用(予防効果、治療効果)はコラーゲン誘導型関節炎(Trentham et al.、J Exp Med 146:857(1977))、K/BxN血清誘導型関節炎(Kouskoff et al.、Cell 87:811(1996))、抗原誘導型関節炎またはアジュバント誘導型関節炎(Pearson、Proc Soc.Exp.Biblo.Med.91:95(1956))の動物(例えばマウス)モデルを使用する薬理学的効果試験で評価することができる。
【0142】
適切な動物モデルのさらなる例としては以下のものがある:敗血症の盲腸結紮穿刺(CLP)モデル(Huber-Lang,M.S.、et al.(2002)Faseb J 16(12):1567-74);RAのラットモデル(Woodruff,T.M.、et al.(2002)Arthritis Rheum 46(9):2476-85);敗血症のブタモデル(Mohr,M.、et al.(1998)Eur J Clin Invest 28(3):227-34);免疫複合体誘導型肺疾患;膵炎に伴う肺損傷(Bhatia,M.、et al.(2001)Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 280(5):G974-8);急性肺損傷;腎臓虚血再潅流損傷;コラーゲン誘導型関節炎;および実験気道疾患(喘息様モデル)。
【0143】
別の実施例では、候補化合物の皮内注射に際しての白血球浸潤を監視することができる(例えば、Van Damme,J.et al.、J.Exp.Med.、176:59-65(1992);Zachariae,C.O.C.et al.、J.Exp.Med.171:2177-2182(1990);Jose,P.J.et al.、J.Exp.Med.179:881-887(1994)参照)。一実施形態では、白血球(例えば、好酸球、顆粒球)の浸潤について皮膚生検を組織学的に評価する。候補化合物の不存在下での浸潤の程度と比較して候補化合物の存在下での浸潤の程度が低下していることは、抗炎症特性を示すものである。
【0144】
これらのモデル系で実証した候補化合物は、さらに構造分析することができ、その結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝学的手順により工業規模で製造することができる。
【0145】
治療法
本発明の方法で同定したPAC-1アゴニストまたはアンタゴニストは、炎症性疾患に治療的に使用することができる。本発明のPAC-1アゴニストまたはアンタゴニストと結び付けて本明細書で使用している用語「治療的に」は、予防的ならびに治療的投与の両方を示す。したがって、PAC-1アゴニスト/アンタゴニストは、炎症性疾患の可能性および/または重篤度を減少させるために危険性の高い患者に投与することができ、あるいは活性疾患、例えばリウマチ様関節炎を既に発症している患者に投与することができる。
【0146】
選択したPAC-1阻害剤は、アレルギー、粥腫発生、アナフィラキシー、悪性腫瘍、慢性および急性炎症、ヒスタミンおよびIgE-仲介型アレルギー反応、ショック、およびリウマチ様関節炎、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、同種異系移植片拒絶、線維症、喘息、炎症性糸球体症または任意の免疫複合体関連障害を治療するのに使用することができる。
【0147】
PAC-1機能の阻害剤で治療することができるヒトまたはその他の種の疾患または状態には、これらだけに限定するものではないが、以下のものがある:
(a)炎症性またはアレルギー性の疾患および状態、例えば、呼吸性アレルギー性疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、またはILDに伴うリウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎または皮膚筋炎);アナフィラキシーまたは過敏性応答、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対して)、昆虫刺傷アレルギー;炎症性腸疾患、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬および炎症性皮膚病、例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹;脈管炎(例えば、壊死性、皮膚および過敏性脈管炎);
(b)自己免疫疾患、例えば関節炎(例えば、リウマチ様関節炎、乾癬性関節炎)、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年型糖尿病、腎炎、例えば糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;
(c)移植片拒絶(例えば、移植において)、例えば、同種異系移植片拒絶または移植片対宿主疾患;
(d)アテローム性動脈硬化症;
(e)皮膚または器官の白血球浸潤を有する癌;
(f)阻害すべき望ましくない炎症性応答を治療することができるその他の疾患または状態、例えばこれらだけに限定するものではないが、再潅流損傷、発作、成人呼吸窮迫症候群、ある種の血液学的悪性疾患、サイトカイン誘導型毒性(例えば、敗血症性ショック、内毒素性ショック)、多発性筋炎、皮膚筋炎、類天疱瘡、アルツハイマー病およびサルコイドーシスを含む肉芽腫性疾患。
【0148】
PAC-1機能の促進剤で治療することができるヒトまたはその他の種の疾患または状態には、これらだけに限定するものではないが、免疫抑制、例えばAIDSなどの免疫不全症候群を有する個体、免疫抑制を引き起こす放射線療法、化学療法、自己免疫疾患療法またはその他の薬物療法(例えば、コルチコステロイド療法)を受けている個体におけるもの;および受容体機能の先天的不全またはその他の原因による免疫抑制がある。
【0149】
投与方法
候補化合物が低分子量化合物、ペプチドまたは抗体などのタンパク質の形態である場合、そのような形態で一般に使用する通常の医薬組成物(医薬製剤)に物質を配合することができる。そのような組成物は経口的または非経口的に投与することができる。一般に、以下の剤形および投与方法を利用することができる。
【0150】
その剤形には、固形製剤、例えば錠剤、丸剤、散剤、微粉末、顆粒剤およびカプセル剤、ならびに液体製剤、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルのような代表的な形態がある。これらの形態は投与経路により、前記経口剤形または種々の非経口剤形、例えば経鼻製剤、経皮製剤、直腸製剤(坐剤)、舌下製剤、経膣製剤、注射(静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮内)および点滴注射に分類することができる。例えば、経口製剤は、例えば錠剤、丸剤、散剤、微粉末、顆粒剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップなどであってよく、直腸製剤および経膣製剤には、特に錠剤、丸剤およびカプセル剤がある。経皮製剤はローションなどの液体製剤のみではなく、クリーム、軟膏などの半固形製剤であってもよい。
【0151】
注射剤は、溶液、懸濁液およびエマルジョン、ならびにビヒクル、滅菌水、水-プロピレングリコール、バッファ溶液、濃度0.4重量%の生理食塩水を例として挙げることができる。このような液体形態のこれらの注射剤は、凍結していても凍結乾燥していてもよい。凍結乾燥で得られる後者の製品は、注射など用の蒸留水で即時に再構成して投与する。医薬組成物(医薬製剤)の上記の形態は、PAC-1阻害作用を有する化合物および薬学的に許容できる担体を当技術分野で確立された方法で配合することによって調製できる。薬学的に許容できる担体としては、特に、種々の賦形剤、希釈剤、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、潤滑剤、分散剤がある。当技術分野で通常使用されるその他の添加剤も配合することができる。製造する医薬組成物の形態に応じて、そのような添加剤は、特に、種々の安定剤、殺真菌剤、バッファ、増粘剤、pH調整剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、香味剤、着色剤、張度調整または等張化剤、キレート剤および界面活性剤から慎重に選択することができる。
【0152】
そのような形態の医薬組成物は、対象の疾患、標的器官およびその他の因子に適した経路で投与することができる。例えば、静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内または気道を介して投与してもよい。罹患した組織に局所的に直接、または経口もしくは直腸的に投与してもよい。
【0153】
そのような医薬製剤の投与量および投与スケジュールは、特に、剤形、疾患またはその症状、および患者の年齢および体重によって変化し、一般的に述べることはできない。成人のヒトの活性成分の1日量について、通常の投与量は、約0.0001mgから約500mg、好ましくは約0.001mgから約100mgであってよく、この量は1日に1回、または1日に数回に分けて投与することができる。
【0154】
PAC-1阻害活性を有する物質がアンチセンス化合物などのポリヌクレオチドの形態である場合、組成物は遺伝子治療用の薬物または予防薬の形態で提供してもよい。近年、種々の遺伝子の使用について多くの報告が示されており、現時点で遺伝子治療は確立された技術である。
【0155】
遺伝子治療用の薬物は、対象のポリヌクレオチドをベクターに導入するか、適切な細胞をベクターでトランスフェクトすることによって調製することができる。すなわち、患者への投与の様式は2種の方法に大きく分けられる。(1)非ウイルスベクターを使用する場合に適用できる方法、および(2)ウイルスベクターを使用する場合に適用できる方法である。前記ベクターとしてウイルスベクターを使用する場合および非ウイルスベクターを使用する場合のそれぞれに関し、遺伝子治療用の薬物を調製する方法および投与方法の両方は、実験的プロトコルに関するいくつかの書籍で詳細に扱われている[例えば、"Bessatsu Jikken Igaku、Idenshi Chiryo-no-Kosogijutsu(Supplement to Experimental Medicine、Fundamental Techniques of Gene Therapy)、Yodosha、1996;Bessatsu Jikken Igaku:Idenshi Donyu & Hatsugen Kaiseki Jikken-ho(Supplement to Experimental Medicine:Experimental Protocols for Gene Transfer & Expression Analysis)、Yodosha、1997;Japanese Society for Gene Therapy(ed.):Idenshi Chiryo Kaihatsu Kenkyn Handbook(Research Handbook for Development of Gene Therapies)、NTS、1999、etc.]。
【0156】
非ウイルスベクターを使用する場合、抗PAC-1核酸を発現可能な任意の発現ベクターを使用することができる。適切な例としては、pCAGGS(Gene 108:193(1991))、pBK-CMV、pcDNA3.1およびpZeoSV(Invitrogen、Stratagene)がある。
【0157】
ポリヌクレオチドの患者への移入は、対象のポリヌクレオチドをそのような非ウイルスベクター(発現ベクター)に慣用の方法で挿入し、得られた組換え発現ベクターを投与することによって達成できる。そのようにすることによって、対象のポリヌクレオチドは患者の細胞または組織に導入することができる。
【0158】
より具体的には、ポリヌクレオチドを細胞に導入する方法には、特に、リン酸カルシウムトランスフェクション(共沈)技術およびガラス微小管を使用するDNA(ポリヌクレオチド)直接注射法がある。
【0159】
ポリヌクレオチドを組織に導入する方法には、特に、内部型リポソームまたは静電気型リポソームを使用するポリヌクレオチド移入技術、HVJ-リポソーム技術、修飾HVJ-リポソーム(HVJ-AVEリポソーム)技術、受容体仲介ポリヌクレオチド移入技術、ポリヌクレオチドをビヒクル(金属粒子)と一緒に細胞へパーティクルガンで移入することを含む技術、裸のDNA直接移入技術、正に帯電したポリマーを使用する移入技術がある。
【0160】
適切なウイルスベクターには、組換えアデノウイルスおよびレトロウイルスから導出したベクターがある。例としては、DNAウイルスまたはRNAウイルス、例えば無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、バシンラウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、仙台ウイルス、SV40、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などから導出されたベクターがある。特にアデノウイルスベクターは、その他のウイルスベクターよりも感染効率がはるかに高いことが知られており、この観点からアデノウイルスベクターが好ましくは使用される。
【0161】
ポリヌクレオチドの患者への移入は、対象のポリヌクレオチドをそのようなウイルスベクターに導入し、得られた組換えウイルスで所望の細胞を感染することによって達成できる。このようにして、対象のポリヌクレオチドを細胞に導入することができる。
【0162】
このように調製した遺伝子治療用の薬物を患者に投与する方法には、遺伝子治療用の薬物を直接身体に導入するin vivo技術、および一定の細胞をヒトの身体から取り出し、遺伝子治療用の薬物をその細胞にin vitroで導入し、その細胞をヒトの身体に戻すex vivo技術がある(Nikkei Science、April、1994 issue、20-45;Pharmaceuticals Monthly、36(1)、23-48、1994;Supplement to Experimental Medicine、12(15)、1994;Japanese Society for Gene Therapy(ed.):Research Handbook for Development of Gene Therapies、NTS、1991)。本発明が取り組んでいる炎症性疾患の予防または治療で使用するために、薬物は身体にin vivo技術で好ましくは導入する。
【0163】
in vivo法を使用する場合、薬物は対象の疾患、標的器官などに適した経路で投与することができる。例えば、静脈内、動脈内、皮下または筋肉内投与することができ、例えば、あるいは罹患した組織に局所的に直接投与してもよい。
【0164】
遺伝子治療用の薬物は、前記の投与経路に従って種々の医薬形態で提供することができる。注射形態の場合、例えば、注射剤はそれ自体確立された手順、例えば活性成分ポリヌクレオチドをバッファ溶液などの溶媒、例えばPBS、生理食塩水、滅菌水に溶解し、次いで必要に応じてフィルターを通して滅菌し、溶液を滅菌バイアルに満たすことによって調製することができる。必要に応じて、この注射剤には通常の担体などを補ってもよい。HVJ-リポソームなどのリポソームの場合、薬物は、懸濁液、凍結製剤および遠心力で濃縮した凍結製剤のような形態の種々のリポソーム封入製剤で提供することができる。
【0165】
さらに、罹患部位の近傍に遺伝子が容易に局所化できるように、持続放出性製剤(例えば、ミニペレット)を調製し、罹患部位の近傍に埋め込んでもよく、あるいは薬物は浸透圧ポンプなどで罹患部位に連続的かつ徐々に投与してもよい。
【0166】
遺伝子治療用の薬物のポリヌクレオチド含量は、治療する疾患、患者の年齢および体重、ならびにその他の因子に従って慎重に調整できるが、各ポリヌクレオチドに関する通常の投与量は、約0.0001から約100mg、好ましくは約0.001から約10mgである。この量は数日または2、3カ月間隔で好ましくは投与する。
【0167】
この明細書の全体にわたって、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載した要素、整数またはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を包含することを意味するが、任意のその他の要素、整数またはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を除外することは意味しないと理解されたい。
【0168】
本明細書に含めた文献、行為、材料、デバイス、物品などの任意の議論は本発明の背景を提供する目的のみのものである。任意またはすべてのこれらのものは、本願の各請求項の優先日前にオーストラリアに存在していたため、従来技術の根拠を形成するか、本発明に関連する分野における共通の一般知識であったという承認と理解するべきではない。
【0169】
次に、本発明を以下の実施例で説明する。これは決して制限を意図するものではない。本明細書で挙げた参考文献すべての教示は、参照により本明細書に援用する。
【実施例1】
【0170】
PAC-1発現のマイクロアレイ分析
方法
cRNAの調製および遺伝子チップハイブリダイゼーション:利用できるRNAの量に応じて、GeneChip Expression Analysis Technical Manual(Affymetrix、Santa Clara、CA)またはBaugh et al(Nucl.Acids Res.29:E29(2001))で公表されたcRNA法を使用してcRNAを調製した。GeneChip Expression Analysisプロトコルは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターGGC CAG TGA ATT GTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG AGG CGG-(dT)24(Geneworks、Australia)(配列番号86)を含有するポリ(T)プライマーを使用して20ugの総RNAからのcDNA合成を含む。cRNAはcDNAから転写し、BioArray High Yield RNA Transcript Labelling Kit(Enzo Diagnostics、Farmingdale、NY)を使用してビオチン化した。20μgのcRNAを94℃で35分間、断片化用バッファ(40mM トリスアセテート(pH8.1)、125mM KOAc、30mM MgOAc)中で加熱することによって断片化し、次いでハイブリダイゼーションした。
【0171】
Baugh et al(2001、上掲)の増幅のために、cDNAの合成体積はGeneChip Expression Analysis Technical Manualと異なったが、反応成分濃度、インキュベーション時間および温度は維持した。わずか500ngの出発RNAを使用したことに留意されたい;T4gp32およびRNAse阻害剤を第1のcDNA合成反応に組み入れて、それぞれ2.4mgおよび20uを得た。EDTAを使用する代わりに酵素を70℃での加熱によって不活化した。cDNAフェノール-クロロホルム抽出後にBioGel p-6カラム(Bio-Rad)でクロマトグラフィー処理し、NH4Oacなしのエタノールで析出した。ハイブリダイゼーションの前に15μgのcRNAを断片化した。
【0172】
次に、断片化cRNA、対照cRNA、格子並列オリゴヌクレオチドおよびブロッキング試薬を加えることによってハイブリダイゼーションカクテルを作製した。これらの混合物は、60rpmの一定の回転下で一夜(約16時間)、個々の試験3(Affymetrix)アレイに45℃でハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたアレイの洗浄および染色は、製造業者のプロトコルに従って、Affymetrix Fluidics Stationで実施した。蛍光シグナルをアレイ上でAgilent GeneArray Laser Scannerを使用して測定し、遺伝子の転写レベルを判定し、MicroArray Analysis Suite Software 5.0(Affymetrix)のアルゴリズムを使用して150に換算した。次いで、試験の3つの基準、すなわち150未満のバックグラウンド、GAPDHと3未満のB-アクチン3'/5'比およびサンプル間の同様の換算係数を満たすハイブリダイゼーションカクテルをU95Aアレイ上に付けた。IL4およびIL13刺激NHBEアレイ上の相対的なmRNA発現レベルは、対照NHBEアレイと比較して正または負の倍率変化として発現した。少なくとも2つの別個の実験で2倍以上の変化を示した遺伝子は示差的に発現したと考えられた。
【0173】
結果
表1は、以下の単一マイクロアレイ遺伝子チップを使用して得た結果を示す:
OA対照 滑液膜組織は、St Vincent's Hospital(Sydney、Australia)で手術を受けた変形性関節症(OA)患者から得た。この組織を使用して線維芽細胞様の滑膜細胞培養物を確立し、遺伝子発現を検査した。
OA TNF 変形性関節症(OA)患者からの滑膜細胞をサイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)-α10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激し、遺伝子発現を検査した。
RA対照 滑液膜組織は、St Vincent's Hospital(Sydney、Australia)で手術を受けたリウマチ様関節炎(RA)患者から得た。この組織を使用して線維芽細胞様の滑膜細胞培養物を確立し、遺伝子発現を検査した。
RA IL-1 リウマチ様関節炎(RA)患者からの滑膜細胞をサイトカインインターロイキン(IL)-1β10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激し、遺伝子発現を検査した。
RA TNF リウマチ様関節炎(RA)患者からの滑膜細胞をサイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)-α10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激し、遺伝子発現を検査した。
HMC1 HMC1は、白血病患者から導出した未成熟ヒトマスト細胞系である。
α4β7 α4β7、インテグリン接着分子は、腸組織内移動エフェクターメモリーT細胞のマーカーである。これらの細胞はヒト末梢血から細胞分類を使用して単離し、遺伝子発現を検査した。
BSCM対照 気管支平滑筋細胞(BSMC)はClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、遺伝子発現を検査した。
BSCM IL4 気管支平滑筋細胞(BSMC)はClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-4を用いて18時間37℃で活性化した。
BSCM IL13 気管支平滑筋細胞(BSMC)はClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-13を用いて18時間37℃で活性化した。
CLA 皮膚リンパ球抗原(CLA)は、皮膚組織内移動エフェクターメモリーT細胞のマーカーである。これらの細胞はヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。
MC対照 マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して6〜9週間にわたって成熟マスト細胞に分化した。その後、遺伝子発現を検査した。
MC抗IgE
Wk6 マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して6〜9週間にわたって成熟マスト細胞に分化した。成熟したら、細胞をまず4μg/mlのヒトIgE抗NPで18時間プライムし、次いでIgE受容体を架橋することによりマウス抗ヒトIgE5μg/mlで2時間活性化した。
NHBE18時間
対照 NHBE一次細胞系をClonetics(San Diego、CA)から購入し、それを使用してTh2サイトカインIL4およびIL13に反応したヒト肺上皮細胞挙動を示した。両方のNHBE細胞系、すなわちロット8F1142および7F1482はそれぞれ、18ヶ月齢および32歳の白人男性から単離した。
NHBE細胞は、ウシ下垂体抽出物52mg/l、ヒドロコルチゾン0.5mg/l、ヒト組換え表皮成長因子0.5mg/l、エピネフリン0.5mg/l、トランスフェリン10mg/l、インスリン5mg/l、レチノイン酸0.1mg/l、トリヨードトリオニン6.5mg/l、ゲンタマイシン50mg/lおよびアンホテリシンB(Clonetics)50mg/lを補充したClonetics気管支上皮成長培地(BEGM)で維持した。培地は3から4日毎に交換した。集密的になったら、細胞を1:3の比で継代培養し、0.025%トリプシン-EDTA(Gibco)を使用して細胞および中和のための100%ウシ胎児血清(Gibco)を除去した。
NHBE18時間
IL13 10ng/mlのインターロイキン(IL)-13を用いて18時間37℃で刺激した正常ヒト気管上皮(NHBE)細胞。
NHBE18時間
IL4 10ng/mlのインターロイキン(IL)-4を用いて18時間37℃で刺激した正常ヒト気管上皮(NHBE)細胞。
CCR7+ CCR7+(CD4+,CD45RO+)はセントラルメモリーT細胞を表し、ヒト末梢血から細胞分類法を使用して単離した。
CCR7- CCR7-(CD4+,CD45RO+)はエフェクターメモリーT細胞を表し、ヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。
CD57+ CD57+(CXCR5+,CD4+)はT甲状腺組織内移動細胞を表し、ヒト扁桃腺組織から細胞分類を使用して単離した。
CD57- CD57-(CXCR5+,CD4+)はT甲状腺組織内移動細胞ではなく、ヒト扁桃腺組織から細胞分類を使用して単離した。
CD8+
CCR7-
RO+ 細胞毒性エフェクターメモリー(CD8+,CCR7-,RO-)は、ヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。
CD8+
CCR7-
RO- 細胞毒性の高度に分化したT細胞(CD8+,CCR7-,RO+)は、ヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。
TH1ヒト CD4+ T細胞はヒト臍帯血から単離し、IL-12を使用し、IL-4を中和してin vitroで極性化した。
TH2ヒト CD4+ T細胞はヒト臍帯血から単離し、IL-4を使用し、IL-12およびインターフェロンγを中和してin vitroで極性化した。
対照
好酸球 好酸球は、ヒト末梢血から変更を加えたパーコール勾配法(Hansel et al.、1989、J Immunol Methods 122 97-103)を使用して単離した。
2時間
好酸球 好酸球は、ヒト末梢血からパーコール勾配法を使用して単離し、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)50ng/mlを用いて2時間37℃で刺激した。
週4
マスト細胞 マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して4週間にわたって成熟マスト細胞に分化した。その後、遺伝子発現を検査した。
週9
マスト細胞 マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して9週間にわたって成熟マスト細胞に分化した。その後、遺伝子発現を検査した。
【0174】
表2は、以下のマイクロアレイ比較遺伝子チップを使用して得た結果を示す:
遺伝子チップ-HuFL2
OA対照対RA対照 滑液膜組織は、St Vincent's Hospital(Sydney、Australia)で手術を受けた変形性関節症(OA)およびリウマチ様関節炎(RA)患者から得た。この組織を使用して線維芽細胞様の滑膜細胞培養物を確立した。遺伝子チップ研究に使用した培養物は37歳および38歳の女性の2つのひざの生検サンプルからの生検から導出した。この遺伝子チップは、OAおよびRA患者からの刺激していない滑膜細胞培養物の遺伝子発現を比較した。
OA TNF対OA対照 変形性関節症(OA)患者からの滑膜細胞をサイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)-α10ng/mlで(4時間37℃で)刺激した。この遺伝子チップは、OA患者からの刺激していない滑膜細胞培養物とTNF-αで刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
OA TNF対RA TNF この遺伝子チップは、TNF-αで刺激したOA患者からの滑膜細胞培養物とTNF-αで刺激したRA患者からの滑膜細胞培養物とを比較した。
RA IL-1対RA対照 RA患者からの滑膜細胞をサイトカインインターロイキン(IL)-1β10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、RA患者からの刺激していない滑膜細胞培養物とIL-1βで刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
RA TNF対RA IL-1β この遺伝子チップは、RA患者からのTNF-αで刺激した滑膜細胞とIL-1βで刺激した滑膜細胞との遺伝子発現を比較した。
BSMC IL-13対対照 気管支平滑筋細胞(BSMC)はClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-13を用いて18時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、IL-13で刺激したBSMCと刺激していないBSMCとの遺伝子発現を比較した。
遺伝子チップ-U95
CLA対α4β7 皮膚リンパ球抗原(CLA)は、皮膚組織内移動エフェクターメモリーT細胞のマーカーであり、α4β7、インテグリン接着分子は、腸組織内移動エフェクターメモリーT細胞のマーカーである。これらの細胞はヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。この遺伝子チップは、皮膚組織内移動(CLA)T細胞と腸組織内移動(α4β7)T細胞との遺伝子発現を比較する。
NHBE IL-13対対照 正常ヒト気管上皮(NHBE)細胞をClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-13を用いて18時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、IL-13で刺激したNHBEと刺激していないNHBEとの遺伝子発現を比較した。
NHBE IL-4対対照 正常ヒト気管上皮(NHBE)細胞をClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-4を用いて18時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、IL-4で刺激したNHBEと刺激していないNHBEとの遺伝子発現を比較した。
TNF RA対対照RA リウマチ様関節炎(RA)患者からの滑膜細胞をサイトカイン腫瘍壊死因子(TNF)-α10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、TNF-αで刺激したRA患者からの滑膜細胞と刺激していないRA滑膜細胞との遺伝子発現を比較した。
RA IL-1対RA対照 RA患者からの滑膜細胞をサイトカインインターロイキン(IL)-1β10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、RA患者からの刺激していない滑膜細胞培養物とIL-1βで刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
RA IL-4対RA対照 RA患者からの滑膜細胞を10ng/mlのサイトカインインターロイキン(IL)-4を用いて4時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、RA患者からの刺激していない滑膜細胞培養物とIL-4で刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
RA IL-1β対対照 RA患者からの滑膜細胞をサイトカインインターロイキン(IL)-1β10ng/mlを用いて4時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、RA患者からの刺激していない滑膜細胞培養物とIL-1βで刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
MC抗IgE Wk6対対照 マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して6週間にわたって成熟マスト細胞に分化した。成熟したら、細胞をまず4μg/mlのヒトIgE抗NPで18時間プライムし、次いでIgE受容体を架橋することによりマウス抗ヒトIgE5μg/mlで2時間活性化した。この遺伝子チップは、刺激していないマスト細胞とIgEで刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
BSCM IL4対対照 気管支平滑筋細胞(BSMC)はClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-4を用いて18時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、IL-4で刺激したBSMCと刺激していないBSMCとの遺伝子発現を比較した。
BSCM IL13対対照 気管支平滑筋細胞(BSMC)はClonetics(San Diego、CA)から商業的に入手し、10ng/mlのインターロイキン(IL)-13を用いて18時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、IL-13で刺激したBSMCと刺激していないBSMCとの遺伝子発現を比較した。
遺伝子チップ-U133
CCR7+対CCR7- セントラルメモリーT細胞を表すCCR7+(CD4+,CD45RO+)およびエフェクターメモリーT細胞を表すCCR7-(CD4+,CD45RO+)をヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。この遺伝子チップは、セントラルメモリーT細胞サブセット(CCR7+)とエフェクターメモリーT細胞サブセット(CCR7-)での遺伝子発現を比較する。
CD57+対CD57- T甲状腺組織内移動細胞を表すCD57+(CXCR5+,CD4+)およびCD57-(CXCR5+,CD4+)をヒト扁桃腺組織から細胞分類を使用して単離した。この遺伝子チップは、T甲状腺組織内移動細胞サブセット(CD57+)と非T甲状腺組織内移動細胞(CD57-)での遺伝子発現を比較する。
CD8+CCR7-RO-対CD8+CCR7-RO+ 細胞毒性エフェクターメモリー(CD8+,CCR7-,RO-)および細胞毒性の高度に分化したT細胞(CD8+,CCR7-,RO+)は、ヒト末梢血から細胞分類を使用して単離した。この遺伝子チップは、細胞毒性エフェクターメモリーT細胞(RO-)と細胞毒性の高度に分化した(RO+)T細胞での遺伝子発現を比較する。
Wk9対Wk4MC マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して時間をかけて成熟マスト細胞に分化した。この遺伝子チップは、4週齢のマスト細胞と9週齢のマスト細胞との遺伝子発現を比較する。
IgE対対照MC マスト細胞はヒト臍帯血からフィコール密度勾配を使用して導出し、幹細胞因子100ng/ml、インターロイキン-10(IL-10)10ng/mlおよび5ng/mlのIL-6を使用して7週間にわたって成熟マスト細胞に分化した。成熟したら、細胞をまず4μg/mlのヒトIgE抗NPで18時間プライムし、次いでIgE受容体を架橋することによりマウス抗ヒトIgE5μg/mlで2時間活性化した。この遺伝子チップは、刺激していないマスト細胞とIgEで刺激したものとの遺伝子発現を比較した。
2時間対対照好酸球 好酸球は、ヒト末梢血からパーコール勾配法を使用して単離した。好酸球は、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)50ng/mlを用いて2時間37℃で刺激した。この遺伝子チップは、PMAで活性化した好酸球と活性化していない好酸球との遺伝子発現を比較する。
TH1対TH2 CD4+ T細胞はヒト臍帯血から単離し、TH1についてはIL-12を使用し、IL-4を中和してin vitroで極性化し、IL-4を使用し、IL-12およびインターフェロンγを中和してin vitroで極性化した。次いで、TH1での遺伝子発現はTH2と比較した。
【0175】
表1に表した結果(マイクロアレイ単一チップ)は、PAC-1がその他のDUSPよりも狭く発現していることを示す。特に、PAC-1の発現はT細胞サブセット、活性化したマスト細胞および好酸球に限られている。DUSP1、4および5は、検査した細胞のタイプの広範囲にわたって発現している。
【0176】
表2は、すべての比較遺伝子チップを表し、DUSPの遺伝子発現の倍率変化を示す。比較遺伝子チップ分析は、PAC-1発現がOAと比較してRA対照滑膜細胞では11倍高く(OA対照対RA対照)、TNF-αで刺激したOA滑膜細胞と比較してTNF-αで刺激したRA滑膜細胞では15倍高い(OA TNF対RA TNF)ことを示す。PAC-1発現はTNF-αでRA滑膜細胞を活性化した後、10分の1に減少し(TNF RA対対照RA)、IL-1βで刺激した後、20分の1に減少する(IL-1β RA対対照)。さらに、PAC-1発現はヒトマスト細胞をIgEで活性化した後、9.6倍に増大し(IgE対対照マスト細胞)、ヒト好酸球をPMAで活性化した後、278倍に増大する(2時間対対照好酸球)。
【0177】
これらの結果は、PAC-1について変形性関節症よりもリウマチ様関節炎においての役割を実証し、PAC-1発現が活性化したRA滑膜細胞で減少していることを示す。さらに、この結果はPAC-1発現が活性化したマスト細胞および好酸球において増大していることを示し、それはPAC-1のこれらの細胞タイプでの役割を示している。
【実施例2】
【0178】
IgEで活性化したヒトマスト細胞でのPAC-1発現
方法
CBMC培養法:マスト細胞を臍帯血から確立された方法(Ochi,H.et al.J Exp Med、1999.190(2):p.267-80)を使用して導出した。簡単にいえば、単核白血球を臍帯血からフィコール密度勾配を使用して単離し、次いで幹細胞因子100ng/ml、10ng/mlのインターロイキン-10(IL-10)および5ng/mlのIL-6を補充した10%FBS、1%L-グルタミンおよび1%ペニシラン/ストレプトマイシンを含有するRPMI培地1ml当たり細胞2×106個で細胞を播種した。マスト細胞培養物を継代培養し、培地(上記の通り)1ml当たり細胞106個の濃度で毎週新しいフラスコに移した。マスト細胞顆粒を特異的に染色するトルイジンブルー異染染色でマスト細胞の成熟度を評価した。
【0179】
成熟顆粒マスト細胞をSelvan,R.S.et al J Biol Chem、1994.269(19):p.13893-8に従って活性化した。マスト細胞はまず4μg/mlのヒトIgE抗NPで18時間プライムし、次いでIgE受容体を架橋することによりマウス抗ヒトIgE5μg/mlで2時間活性化した。活性化したマスト細胞および対照マスト細胞を遠心分離で収集し、PBSで洗浄し、トリゾール試薬で溶解してRNAを抽出した。
【0180】
遺伝子発現を監視するリアルタイムPCR:Reverse-IT RTase Blend Kit(ABgene、UK)またはAvain骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(Promega、Madison、WI)を使用して、活性化したヒトマスト細胞RNAのcDNAを製造業者の指示書に従って作製した。どちらのcDNA調製法でもオリゴ-p(dt)15プライマー(Roche Molecular Biochemicals)を1uMで使用した。cDNA合成の後、cDNAテンプレート1ulを各PCRに使用した。Light Cycler-FastStart DNA Master SYBR Green I kit(Roche Molecular Biochemicals)を製造業者の仕様書に従って使用し、3mM MgCl2および1uMプライマーを使用して、リアルタイムPCRを実施した。
【0181】
1分間95℃の最初の変性後、95℃(15秒)、63℃(5秒)および72℃(10秒)で40サイクルにサンプルをかけた。各サイクルの最後で、蛍光を単一ステップによりチャネルF1で測定した。40番目のサイクル後、試験品を95℃に加熱し、65℃に15秒間冷却した。すべての加熱および冷却ステップは20℃/秒の傾斜で実施した。次いで、0.1℃/秒の速度で95℃まで加温し、蛍光を連続的に測定して(チャネルF1)、PCR産物の融解曲線を得た。倍率変化を計算(交点(crossing point)値を使用)する前に各遺伝子をハウスキーピング遺伝子GAPDHに標準化して、異なるサンプル間の変化を明らかにした。DUSPのPCR産物はサイズにより2%アガロースゲル上で確認した。
【0182】
結果
図1は、IgEで0〜6時間(n=1)活性化したヒト臍帯血由来マスト細胞でのDUSP1、DUSP2(PAC-1)、DUSP4およびDUSP5の発現を示す。DUSP2(PAC-1)は、その他のDUSPと比較して高い倍率変化を有し、1時間で250倍のピーク倍率変化があり、6時間で基準レベルまで低下する。
【実施例3】
【0183】
PAC-1タンパク質発現
ポリクローナル抗PAC-1抗体(Santa Cruz)を使用して免疫組織化学分析をして、ヒトRA滑膜でのPAC-1発現を検出した(データ示さず)。その結果は、RA滑膜の炎症を起こした組織でのPAC-1タンパク質の優先的な発現を示した。特に、RA滑膜のマクロファージで高いレベルのPAC-1発現が観察された。
【実施例4】
【0184】
マウスモデル研究
方法
遺伝子組換えマウスモデル、K/BxNの血清を使用する最近の研究で、偏在的に発現した抗原に対する自己抗体が、炎症性、肥厚性および浸食性滑膜炎を選択的に引き起こし得ることが最近の研究で分かった(Kouskoff et al Cell 87:811-822、1996)。現在の研究では、K/BxNの関節炎血清を野生型およびPAC-1欠損マウスに移して炎症性関節炎におけるPAC-1の機能的役割を調べた。
【0185】
結果
関節炎血清(K/BxN血清)を注射した野生型(WT)およびPAC-1欠損(PAC-1 -/-)マウスからの足関節組織の組織学的分析は、PAC-1欠損マウスが、野生型(WT)マウスで見られるような細胞浸潤または骨破壊を示さなかったことを示した(図2)。
【0186】
関節炎血清(K/BxN血清)を注射した野生型(WT)およびPAC-1欠損(PAC-1 -/-)マウスの足関節の厚さの測定および臨床スコアはまた、PAC-1欠損マウスが、野生型マウスで見られるような炎症性関節炎の症状を発症しないことを示した。
【0187】
この研究で使用したPAC-1 -/-マウスはB6/C57バックグラウンドに戻し交配し(合計9つの戻し交配)、上記の結果を再現した。これは、PAC-1欠損マウスで観察された効果が、PAC-1欠損マウスと野生型対照マウスとの間の任意の株の差異ではなく、PAC-1の欠如によるものであることを確認している。
【実施例5】
【0188】
PAC-1欠損マウスにおけるPAC-1基質の発現
標準的なウェスタンブロット法を実施して、PAC-1欠損マウスにおけるPAC-1基質p38およびERKの発現レベルを分析した。特に、PAC-1欠損マウスおよび野生型マウスから導出した活性化マクロファージからのタンパク質サンプルを抗p38および抗ERK抗体でプローブした。
【0189】
図3(A)は、PAC-1欠損マウスから導出したマクロファージでのp38のかなり減少した発現を示す。
【0190】
図3(B)は、PAC-1欠損マウスから導出したマクロファージでのERKの発現のわずかな減少を示す。
【0191】
これらの結果は、PAC-1がMAPキナーゼの単なる負の調節因子であると指摘する以前の報告に疑問を投げかける。
【実施例6】
【0192】
PAC-1欠損マウスマクロファージにおける炎症性仲介物質の産生
PAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージにおける炎症性仲介物質(亜酸化窒素(NO)、PGE2、亜酸化窒素シンターゼ(NOS-2)、COX-2、IL-6およびTNF-α)の産生を分析する実験を実施した。
【0193】
方法
屠殺する4日前に、C57/B6マウスおよびPAC-1-/-マウスに3%チオグリコレート2mlを含む腹腔内注射をした。無菌RPMI1640培地10mlで腹腔を洗浄することによって腹膜マクロファージを集めた。出血を避けるために腹膜液を注意深く吸引し、4℃で維持してマクロファージがプラスチックに付着するのを防止した。細胞を遠心分離で集め、洗浄し、次いで熱不活化FCS10%を補充したRPMI1640培地に懸濁した。細胞を組織培養プレートに2時間付着させることによって精製した。細胞2×106個/mlの腹膜マクロファージを1μg/mlのLPS、10ng/mgのIFNγで処理した。
【0194】
結果
18時間後、N)産生は、Griess試薬を使用して培地中の亜硝酸および硝酸を集積することによって分光光度法で判定した。PGE2レベルは、製造業者(Cayman)の指示に従って特異的酵素イムノアッセイシステム使用して、培養培地中で判定した。NOS-2およびCOX-2タンパク質発現はウェスタンブロッティングで分析した。等量のタンパク質(15μg/レーン)をロードし、12%SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。断片化したタンパク質をニトロセルロース膜にブロットした後、その膜を一夜ブロッキングバッファ(5%脱脂粉乳、10mMトリス、pH7.5、100mM NaCl、0.1%Tween20)でインキュベートし、次いでヤギポリクローナルCOX-2抗体(Santa Cruz Lab、CA)で1時間処理した。洗浄後、膜を西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギIgG抗体でインキュベートした。NOS-2を検出するために、膜をウサギポリクローナルiNOS抗体(Santa Cruz Lab、CA)で処理した。免疫反応性タンパク質を化学発光システム(ECL kit、Amersham)で検出した。標準ELISA法を使用してTNF-aおよびIL-6のレベルを検出した。
【0195】
図4(A)は、野生型マウスから導出した刺激したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージではNOの産生が減少していることを示す。
【0196】
図4(B)は、野生型マウスから導出した刺激したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージではPGE2の産生が減少していることを示す。
【0197】
図4(C)は、野生型マウスから導出した刺激したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージではNOS-2の産生が減少していることを示す。
【0198】
図4(D)は、野生型マウスから導出した刺激したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージではCOX-2の産生が減少していることを示す。
【0199】
図5(A)は、野生型マウスから導出した刺激したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージではTNF-αの産生が減少していることを示す。
【0200】
図5(B)は、野生型マウスから導出した刺激したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージではIL-6の産生が減少していることを示す。
【実施例7】
【0201】
PAC-1欠損マウスマクロファージにおける遺伝子発現のマイクロアレイ分析
PAC-1欠損マウスおよび野生型マウスから導出したマクロファージの遺伝子チップ発現分析を、本質的に実施例1に記載の通りの方法を使用して実施した。
【0202】
野生型マウスから導出したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出したマクロファージにおいて発現の増大を示した遺伝子としては、TYROBP、CD68、CD44およびRAB4aがある。
【0203】
野生型マウスから導出したマクロファージと比較してPAC-1欠損マウスから導出したマクロファージにおいて発現の減少を示した遺伝子としては、インターロイキン1β、CXCL2/MIP2a、CXCL1/GRO1、IL-6およびCOX2がある。
【0204】
この遺伝子チップ分析は、PAC-1欠損マウスから導出した刺激したマクロファージでは炎症性仲介物質の発現が減少していることを確認している。
【0205】
興味深いことに、PAC-1欠損マウスではDUSPファミリーのその他のメンバーの発現には観測可能な増大はない。
【0206】
当業者ならば、広範に記載した本発明の精神または範囲を逸脱することなく、特定の実施形態として示した本発明に多くの変化および/または修正を加えられることは理解されよう。したがって、これらの実施形態はあらゆる点で例示的であり、制限的ではないと考えられる。
【0207】
【表1】

【0208】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】図1は、0-6時間(n=1)のIgEで活性化されたヒト臍帯血由来のマスト細胞における二重特異性ホスファターゼ(DUSP1、DUSP2(PAC-1)、DUSP4、及びDUSP5)発現を示すグラフである。
【図2】図2は、関節炎の血清(K/BxN血清)で注射された(A)野生型(WT)及び(B)PAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスから由来する足根関節組織の組織学的分析の結果を示す写真である。野生型の血清で注射された野生型(WT)マウスから得られた足根関節組織の組織学的分析(C)は、コントロールとして含まれる。
【図3】図3は、野生型(WT)及びPAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスから由来する活性化マクロファージから得られたタンパク質サンプル中のPAC-1基質のウエスタンブロット分析の結果を示す写真である。(A)抗p38抗体を使用するp38のレベルの検出。(B)抗ERK抗体を使用するERKのレベルの検出。
【図4A】図4Aは、野生型(WT)及びPAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスの刺激化マクロファージにおける炎症メディエーターNOの生産を示す棒グラフである。
【図4B】図4Bは、野生型(WT)及びPAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスの刺激化マクロファージにおける炎症メディエーターPGE2の生産を示す棒グラフである。
【図4C】図4Cは、野生型(WT)及びPAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスの刺激化マクロファージにおける炎症メディエーターNOS-2の生産を示す棒グラフである。
【図4D】図4Dは、野生型(WT)及びPAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスの刺激化マクロファージにおける炎症メディエーターCOX-2の生産を示す棒グラフである。
【図5】図5は、野生型(WT)及びPAC-1欠損(PAC-1-/-)マウスの刺激化マクロファージにおける炎症メディエーターTNF-α(A)及びIL-6(B)の生産を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の活性を測定する工程を含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1活性の変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法。
【請求項2】
前記化合物の存在下でのPAC-1活性の減少が、前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PAC-1活性がPAC-1のホスファターゼ活性を測定することによって測定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の発現レベルを測定する工程を含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1発現の変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法。
【請求項5】
前記化合物の存在下でのPAC-1発現の減少が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
候補化合物にPAC-1を発現できる翻訳系を曝露する工程、及び前記化合物の存在下でのPAC-1の発現レベルを、前記化合物の不存在下での同様な条件下で達成されるレベルと比較する工程を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記翻訳系がセルフリー翻訳系である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記翻訳系が真核生物細胞または原核生物細胞を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
PAC-1の基質に対するPAC-1の結合を調節する候補化合物の能力を測定することを含む、炎症を抑制または減少する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下での前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの変化が得前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す方法。
【請求項10】
前記化合物の存在下での前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの変化が前記化合物が炎症を抑制または減少することを示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記PAC-1の基質がERK、p38、及びJNKからなる群から選択される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の活性を測定することを含む、免疫応答を促進する化合物のスクリーニング方法であって、前記候補化合物の存在下でのPAC-1活性の変化が前記化合物が免疫応答を促進することを示す方法。
【請求項13】
前記化合物の存在下でのPAC-1活性の増強または増大が前記化合物が免疫応答を促進することを示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
候補化合物の存在下及び不存在下でのPAC-1の発現レベルを測定することを含む、免疫応答を促進する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下でのPAC-1発現の変化が前記化合物が免疫応答を促進することを示す方法。
【請求項15】
前記化合物の存在下でのPAC-1発現の増強または増大が前記化合物が免疫応答を促進することを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
PAC-1の基質に対するPAC-1の結合を調節する候補化合物の能力を測定することを含む、免疫応答を促進する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物の存在下での前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの変化が前記化合物が免疫応答を促進することを示す方法。
【請求項17】
前記基質に対するPAC-1の結合のレベルの増強または増大が前記化合物が免疫応答を促進することを示す、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記候補化合物が、ペプチド、PAC-1ドミナントネガティブミュータント、PAC-1に対して向けられる抗体、小有機分子、PAC-1をコードするmRNAに対して向けられたアンチセンス化合物、抗PAC-1触媒分子、あるいはPAC-1発現を標的とする小干渉RNA(RNAi)分子からなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
炎症を阻害または減少するのに有効な量で、PAC-1活性を調節する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における炎症性疾患の治療または防止方法。
【請求項20】
炎症を阻害または減少するのに有効な量で、PAC-1活性を減少または阻害する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炎症を阻害または減少するのに有効な量で、機能的なPAC-1の発現のレベルを改変する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における炎症性疾患の治療または防止方法。
【請求項22】
炎症を阻害または減少するのに有効な量で、機能的なPAC-1発現を減少または阻害する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1の活性を改変する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における免疫抑制の治療または防止方法。
【請求項24】
免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1活性を増大または増強する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1の発現のレベルを改変する化合物を被験者に投与する工程を含む、被験者における免疫抑制の治療または防止方法。
【請求項26】
前記化合物が、免疫抑制を治療するのに有効な量で、PAC-1の発現を増大または増強する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
配列番号1または3に示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドと、生物学的サンプルを接触される工程を含む、生物学的サンプル中のPAC-1関連転写産物の検出方法。
【請求項28】
ハイブリダイゼーションが生じるのに十分な時間と条件下で、核酸プローブと、試験される被験者由来の生物学的サンプルを接触させる工程、及び次いでハイブリダイゼーションを検出する工程を含む、試験されるヒトまたは動物被験者における炎症性疾患の診断方法であって、炎症性疾患を有さないコントロール被験者について得られたハイブリダイゼーションと比較した、試験される被験者についてのプローブのハイブリダイゼーションのレベルの変化が、試験される被験者が炎症性疾患を有することを示し、前記核酸プローブが、
(i)配列番号1または3から得られる少なくとも約20の連続したヌクレオチドを含む配列;
(ii)配列番号1または3から得られる少なくとも約20の連続したヌクレオチドに対して、少なくとも低いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする配列;
(iii)配列番号1または3に対して少なくとも約80%同一である配列;
(iv)配列番号2または4に示されたアミノ酸配列をコードする配列;並びに
(v)(i)または(ii)または(iii)または(iv)に示された配列のいずれか一つに相補的である配列
からなる群から選択される配列を含む方法。
【請求項29】
核酸の発現のレベルの増加、増大、または上昇が、炎症性疾患の指標である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗原抗体複合体を形成するのに十分な時間及び条件下で、抗体と試験される被験者由来の生物学的サンプルを接触させる工程、及び次いで前記複合体を検出する工程を含む、試験されるヒトまたは動物被験者における炎症性疾患の診断方法であって、炎症性疾患を有さないコントロール被験者について形成された抗原抗体複合体の量と比較した、試験される被験者についての抗原抗体複合体のレベルの変化が、試験される被験者が炎症性疾患を有することを示し、前記抗体が、配列番号2または4に示された配列と少なくとも約80%の同一性を有する配列の少なくとも約10の連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する方法。
【請求項31】
抗原抗体複合体のレベルの上昇、増大、または増加が、炎症性疾患の指標となる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
炎症性疾患の治療上の処置の効力をモニターする方法であって、
(i)治療上の処置を受けている患者由来の生物学的サンプルを準備する工程;及び
(ii)配列番号1または配列番号3に示された配列に対して少なくとも約80%の同一性を有する配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドと前記生物学的サンプルを接触させることにより、前記生物学的中のPAC-1関連転写産物のレベルを測定し、それによって治療の効力をモニターする工程
を含む方法。
【請求項33】
炎症性疾患の治療上の処置の効力をモニターする方法であって、
(i)治療上の処置を受けている患者由来の生物学的サンプルを準備する工程;及び
(ii)前記生物学的サンプルを抗体と接触させることにより、前記生物学的サンプル中のPAC-1ポリペプチドのレベルを測定し、前記抗体が、配列番号2または配列番号4に示されたポリヌクレオチド配列に特異的に結合し、それによって治療の効力をモニターする工程
を含む方法。
【請求項34】
前記生物学的組織サンプルがマスト細胞、T細胞、または好酸球を含む、請求項27から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記生物学的サンプルが滑液、血液、または肺痰を含む、請求項27から33のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−518998(P2006−518998A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501360(P2006−501360)
【出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000168
【国際公開番号】WO2004/072298
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505303967)ジー2・セラピース・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】