説明

PC部材の接合方法及び接合構造

【課題】現場でのコンクリート打設を不要にできると共に、架構の構成の自由度を高めることができるPC部材の接合方法を提供する。
【解決手段】上下に建て込まれPC梁40に接合されるプレキャストコンクリート製のPC柱20の接合方法であって、上下のPC柱20には、柱主筋22を挿入するための縦方向の柱主筋孔24と、柱主筋22を継手するためのスリーブ継手26とが設けられ、柱主筋22を、下側のPC柱20のスリーブ継手26に下端が挿し込まれ、上側のPC柱20のスリーブ継手26に上端が挿し込まれるように、下側のPC柱20のスリーブ継手26と上側のPC柱20のスリーブ継手26との間の貫通孔24に挿入し、下側のPC柱20のスリーブ継手26と、下側のPC柱20のスリーブ継手26と上側のPC柱20のスリーブ継手26との間の貫通孔24とに、グラウトを充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート(以下、PCという)部材を接合する方法、及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
PC梁と上下階のPC柱とを接合するPC部材の接合方法として、柱主筋及び梁主筋をそれぞれ挿通させるための縦方向の貫通孔及び横方向の貫通孔が形成されたPC仕口部を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該方法では、PC柱及び下階のPC梁を建て込んだ後に、PC仕口部を横方向にスライド移動させて建て込み、その後、柱主筋や梁主筋を、PC仕口部の貫通孔を通してPC梁と下階のPC柱のそれぞれの継手に挿入する。その後、上階のPC梁をPC仕口部の上に建て込む。これにより、現場でのコンクリート打設を要することなく、PC梁と上下階のPC柱とを接合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―22494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のPC部材の接合方法では、PC仕口部の上面から柱主筋が突出していることから、その上のPC柱については下降させてPC仕口部の上に建て込まなければならず、その結果、PC柱とは別体のPC仕口部を用いることを強いられている。従って、架構の構成の自由度が損なわれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、現場でのコンクリート打設を不要にできると共に、架構の構成の自由度を高めることができる、PC部材の接合方法、及び構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るPC部材の接合方法は、柱部及び仕口部の少なくとも一方を有するプレキャストコンクリート製の第1PC部材と、柱部及び仕口部の少なくとも一方を有し、横方向に移動させることにより梁部に接続されると共に、前記第1PC部材の上側に建て込まれるプレキャストコンクリート製の第2PC部材との接合方法であって、前記第1PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられると共に、該貫通孔に機械式継手が設けられ、前記第2PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられ、前記柱主筋の下端が、前記第1PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記柱主筋を、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通させ、前記第1PC部材の前記機械式継手と、前記柱主筋を挿通させた前記貫通孔とに、グラウトを充填する。
【0007】
上記PC部材の接合方法において、前記第1PC部材と前記第2PC部材とを、前記柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート製の第3PC部材を介して接合してもよい。
【0008】
上記PC部材の接合方法において、前記第2PC部材の前記貫通孔には機械式継手が設けられてもよく、前記柱主筋の上端が、前記第2PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記柱主筋を、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通させてもよい。
【0009】
また、上記PC部材の接合方法において、前記第1PC部材及び前記第2PC部材では、下部に前記機械式継手が設けられてもよい。
また、上記PC部材の接合方法において、前記第1PC部材及び前記第2PC部材では、上部に前記機械式継手が設けられてもよい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るPC部材の接合構造は、柱部及び仕口部の少なくとも一方を有するプレキャストコンクリート製の第1PC部材と、柱部及び仕口部の少なくとも一方を有し、梁部に接続されると共に、前記第1PC部材の上側に建て込まれたプレキャストコンクリート製の第2PC部材との接合構造であって、前記第1PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられると共に、該貫通孔に機械式継手が設けられ、前記第2PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられ、前記柱主筋の下端が、前記第1PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通され、前記第1PC部材の前記機械式継手と、前記柱主筋が挿通された前記貫通孔とに、グラウトが充填されている。
【0011】
上記PC部材の接合構造において、前記第1PC部材と前記第2PC部材とが、前記柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート製の第3PC部材を介して接合されてもよい。
【0012】
上記PC部材の接合構造において、前記第2PC部材の前記貫通孔には機械式継手が設けられてもよく、前記柱主筋の上端が、前記第2PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記柱主筋が、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記PC部材の接合方法、及び構造によれば、現場でのコンクリート打設を不要にできると共に、架構の構成の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す分解立面断面図である。
【図2】一実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す立面断面図である。
【図3】一実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を拡大して示す立面断面図である。
【図4】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す分解立面断面図である。
【図5】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す立面断面図である。
【図6】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を拡大して示す立面断面図である。
【図7】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す分解立面断面図である。
【図8】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す立面断面図である。
【図9】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す分解立面断面図である。
【図10】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す立面断面図である。
【図11】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す分解立面断面図である。
【図12】他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構を示す立面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構10を示す分解立面断面図である。また、図2は、架構10を示す立面断面図である。これらの図に示すように、架構10は、建物最外部に配置されるPC柱20と、建物内側に配置されるPC柱30と、各階のPC柱20及びPC柱30を接合するPC梁40とを備えている。上階のPC柱20は、下階のPC柱20の上に建て込まれる。また、上階のPC柱30は、下階のPC柱30の上に建て込まれる。
【0016】
PC梁40は、架構10のスパン長に亘る長さを有しており、梁主筋42が埋設されている。この梁主筋42の一端側は、PC梁40の一端面から突出している。また、PC梁40の他端側には、梁主筋孔44が、梁主筋42と同軸に形成され、この梁主筋孔44の奥部にはモルタルを充填するスリーブ式の機械式継手(以下、スリーブ継手という)46が埋設されている。このスリーブ継手46には、梁主筋42の他端が挿入されている。なお、梁主筋孔44にはシース管が埋設されているが必須ではない。
【0017】
PC柱30には、柱主筋32が埋設されている。この柱主筋32の上端は、PC柱30の上端面から突出している。また、PC柱30の下端には、スリーブ継手36が埋設されている。このスリーブ継手36は、柱主筋32と同軸に配されており、柱主筋32の下端がスリーブ継手36に挿入されている。また、PC柱30には、水平方向に貫通する梁主筋孔34が、梁主筋42と同軸に形成されている。なお、梁主筋孔34にはシース管が埋設されているが必須ではない。また、スリーブ継手36の下端は、PC柱30の下端面に対して面一となっているが必須ではなく、PC柱30の下端面より上側又は下側に位置していてもよい。
【0018】
上下のPC柱30は、下側のPC柱30の上端面から突出する柱主筋32が、上側のPC柱30の下端のスリーブ継手36に挿入された状態で組み合わされている。また、上下のPC柱30の間の目地、及びスリーブ継手36にグラウトが充填されている。これにより、上下の柱主筋32がスリーブ継手36により継手され、上下のPC柱30が接合されている。
【0019】
PC柱30とその左右両側の一対のPC梁40とは、一方(図中右側)のPC梁40から突出する梁主筋42が、PC柱30の梁主筋孔34を貫通して、他方(図中左側)のPC梁40のスリーブ継手46に挿入された状態で組み合わされている。また、PC柱30とPC梁40との間の目地、梁主筋孔34、44、及びスリーブ継手46にグラウトが充填されている。これにより、梁主筋42がPC梁40及びPC柱30に定着されると共に、左右の梁主筋42がスリーブ継手46により継手されている。また、PC柱30とその左右両側のPC梁40とが接合されている。
【0020】
PC柱20には、接続用鉄筋21が埋設されている。この接続用鉄筋21の一端は、PC柱20の側面から突出している。また、PC柱20は、鉛直方向に貫通する柱主筋孔24が形成され、柱主筋孔24の下端にはスリーブ継手26が埋設されている。なお、柱主筋孔24にはシース管が埋設されているが必須ではない。また、スリーブ継手26の下端は、PC柱20の下端面に対して面一となっているが必須ではなく、PC柱20の下端面より上側又は下側に位置していてもよい。
【0021】
PC柱20とPC梁40とは、PC柱20から突出する接続用鉄筋21が、PC梁40のスリーブ継手46に挿入された状態で組み合わされている。また、PC柱20とPC梁40との間の目地、梁主筋孔44、及びスリーブ継手46にグラウトが充填されている。これにより、接続用鉄筋21が、PC梁40に定着されると共に、梁主筋42とスリーブ継手46により継手されている。また、PC柱20とPC梁40とが接合されている。
【0022】
上下階のPC柱20は、各PC柱20と同程度の長さの柱主筋22が、下階のPC柱20の柱主筋孔24に挿通された状態で組み合わされている。ここで、柱主筋22の下端は、下階のPC柱20のスリーブ継手26内に位置し、柱主筋22の上端は、上階のPC柱20のスリーブ継手26内に位置している。また、下階のPC柱20のさらに下のPC柱20から突出した柱主筋22の上端が、下階のPC柱20の下端のスリーブ継手26内に位置している。
【0023】
また、下階のPC柱20とその下のPC柱20との間の目地、下階のPC柱20のスリーブ継手26及び柱主筋孔24にグラウトが充填されている。これにより、柱主筋22が下階のPC柱20に定着されると共に、その下のPC柱20に定着された柱主筋22と下階のPC柱20の下端のスリーブ継手26により継手されている。また、下階のPC柱20とその下のPC柱20とが接合されている。
【0024】
以上のような構成の架構10におけるPC柱30とPC梁40とPC柱20との接合方法について説明する。図1に示すように、建物内側では、PC梁40を建て込んだ後、上階のPC柱30を、下降させて下階のPC柱30の上に建て込む。この際、下階のPC柱30の上端面から突出した柱主筋32を、上階のPC柱30の下端に埋設されたスリーブ継手36内に配置する。
【0025】
その後、上階のPC梁40を、建て込み済みの上階のPC柱30の外側に建て込む。この際、該PC梁40を水平方向にスライドさせ、該PC梁40の端面から突出した梁主筋42を、上階のPC柱30の梁主筋孔34、上階のPC梁40の梁主筋孔44に貫通させて、その奥側のスリーブ継手46に挿入する。
【0026】
次に、建物最外部において、上階のPC柱20を、建て込み済みの下階のPC柱20の上、且つ、建て込み済みの上階のPC梁40の外側に建て込む。この際、下階のPC柱20の柱主筋孔24に柱主筋22を挿入していない状態で、上階のPC柱20を水平方向にスライドさせ、上階のPC柱20の側面から突出した接続用鉄筋21を、上階のPC梁40の梁主筋孔44に貫通させて、その奥側のスリーブ継手46に挿入する。
【0027】
そして、柱主筋22を、上階のPC柱20の柱主筋孔24を通して、下階のPC柱20の柱主筋孔24に挿通させる。この際、柱主筋22の下端を、下階のPC柱20のスリーブ継手26内に配置し、柱主筋22の上端を、下階のPC柱20から突出させて上階のPC柱20の下端のスリーブ継手26内に配置する。
【0028】
次に、図3に示すように、下階のPC柱20とそのさらに下のPC柱20とを接合し、上階のPC柱20と上階のPC梁40とを接合する。また、図示は省略しているが、上階のPC柱30と下階のPC柱30とを接合し、上階のPC柱30とその両側のPC梁40とを接合する。上下のPC柱30同士、及び、PC柱30とその両側のPC梁40との接合方法は次のとおりである。
【0029】
上下のPC柱30の間の目地の外周をシールした状態で、該目地に連通されたグラウト注入口から該目地にグラウトを圧入し、該目地、及びスリーブ継手36にグラウトを充填して硬化させる。これにより、上下の柱主筋32がスリーブ継手36により継手され、上下のPC柱30同士が接合される。
【0030】
また、PC柱30とその両側のPC梁40との間の目地の外周をシールした状態で、PC梁40のスリーブ継手46に連通されたグラウト注入口からスリーブ継手46にグラウトを圧入し、スリーブ継手46、梁主筋孔44、34及び部材間の目地にグラウトを充填して硬化させる。これにより、一方のPC梁40から突出する梁主筋42が、他方のPC梁40及びPC柱30に定着される。また、一方のPC梁40から突出した梁主筋42と、他方のPC柱40に埋設された梁主筋42とがスリーブ継手46により継手される。また、PC柱30とその両側のPC梁40とが接合される。
【0031】
また、PC柱20とPC梁40との接合方法は次のとおりである。PC柱20とPC梁40との間の目地49の外周をシールした状態で、PC梁40のスリーブ継手46に連通されたグラウト注入口からスリーブ継手46にグラウトを圧入し、スリーブ継手46、梁主筋孔44及び部材間の目地49にグラウト(図中ハッチングで示す)を充填して硬化させる。これにより、PC柱20から突出した接続用鉄筋21がPC梁40に定着される。また、PC柱20から突出した接続用鉄筋21と、PC梁40に埋設された梁主筋42とがスリーブ継手46により継手される。また、PC柱20とPC梁40とが接合される。
【0032】
そして、上下のPC柱20同士の接合方法は次のとおりである。なお、柱主筋22を挿入した下階のPC柱20のさらに下のPC柱20では、柱主筋孔24の上端までグラウトが充填されており、該PC柱20の柱主筋孔24に挿入されている柱主筋22は、該PC柱20に定着されている。
【0033】
柱主筋22を挿入した下階及びその下のPC柱20の間の目地29に連通されたグラウト注入口から、該目地29にグラウトを圧入し、該目地29、その上のスリーブ継手26及び柱主筋孔24にグラウト(図中ハッチングで示す)を充填して硬化させる。これにより、下階のPC柱20の柱主筋孔24に挿入された柱主筋22が、該PC柱20に定着される。また、下階及びその下のPC柱20に定着された柱主筋22同士が、下階のPC柱20の下端のスリーブ継手26により継手される。また、下階及びその下のPC柱20同士が接合される。なお、上階及び下階のPC柱20同士の接合は、上階のPC柱20の上にさらにPC柱20を建て込んだ後に、上述した方法により行う。
【0034】
以上、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、PC柱20に、柱主筋22を挿入するための縦方向の貫通孔である柱主筋孔24と、柱主筋22を継手するためのスリーブ継手26とを設け、該PC柱20を上下に組み合わせる。この際、柱主筋22を、下階のPC柱20のスリーブ継手26内に下端が位置し、上階のPC柱20のスリーブ継手26内に上端が位置するように、上下階のPC柱20のスリーブ継手26の間の柱主筋孔24に挿入する。そして、下階のPC柱20のスリーブ継手26と、柱主筋22を挿通させた下階のPC柱20の柱主筋孔24とにグラウトを充填して硬化させる。
【0035】
ここで、上階のPC柱20を建て込む際、下階のPC柱20の上端面から柱主筋22が突出していないため、上階のPC柱20を横方向にスライドさせて、上階のPC柱20から横方向に突出した接続用鉄筋21を、上階のPC梁40のスリーブ継手46に挿入することができる。これによって、現場でコンクリートを打設したり、仕口部と柱部とを別体にしたりすることなく、上下階のPC柱20とPC梁40とを接合することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、PC柱20の下端(下部)にスリーブ継手26を埋設している。ここで、スリーブ継手26を、柱主筋孔24の上端や中間部に埋設している場合には、柱主筋孔24にグラウトを充填する際、該スリーブ継手26の下端近傍でグラウトの上昇を止めなければならず、その作業は容易ではない。これに対して、本実施形態では、PC柱20の柱主筋孔24の上端までグラウトを充填すればよく、PC柱20の上端面にグラウトが出てくるまでグラウトの充填を続ければよいことから、その作業は容易である。
【0037】
図4は、他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構100を示す分解立面断面図である。また、図5は、架構100を示す立面断面図である。なお、架構100において、上述の実施形態に係る架構と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0038】
架構100は、上述の実施形態に係る架構10のPC柱20に替えてPC柱120を備えている。PC柱120には、接続用鉄筋21が埋設されている。この接続用鉄筋21の一端は、PC柱120の側面から突出している。また、PC柱120は、鉛直方向に貫通する柱主筋孔24が形成され、柱主筋孔24の上端にはスリーブ継手126が埋設されている。なお、スリーブ継手126の上端は、PC柱120の上端面に対して面一となっているが必須ではなく、PC柱120の上端面より上側又は下側に位置していてもよい。
【0039】
PC柱120とPC梁40とは、PC柱20から突出する接続用鉄筋21が、PC梁40のスリーブ継手46に挿入された状態で組み合わされる。また、PC柱120とPC梁40との間の目地、梁主筋孔44、及びスリーブ継手46にグラウトが充填されており、接続用鉄筋21がPC梁40に定着されている。また、接続用鉄筋21と梁主筋42とがスリーブ継手46により継手されている。また、PC柱120とPC梁40とが接合されている。
【0040】
上下階のPC柱120は、各PC柱120と同程度の長さの柱主筋22が、上階のPC柱120の柱主筋孔24に挿通された状態で組み合わされている。ここで、柱主筋22の下端は、上階のPC柱120から突出して下階のPC柱120のスリーブ継手26内に位置し、柱主筋22の上端は、上階のPC柱120のスリーブ継手26内に位置している。
【0041】
また、上下階のPC柱120の間の目地、下階のPC柱120のスリーブ継手126、及び上階のPC柱20の柱主筋穴24にグラウトが充填されている。これにより、柱主筋22が上階のPC柱120に定着されている。また、上下階の柱主筋22同士が、下階のPC柱120のスリーブ継手126により継手されている。また、上下階のPC柱120同士が接合されている。
【0042】
以上のような構成の架構100におけるPC柱30とPC梁40とPC柱120との接合方法について説明する。図4に示すように、建物内側では、上述の実施形態に係る架構10と同様の方法により、PC梁40を建て込んだ後、上階のPC柱30を下階のPC柱30の上に建て込み、PC梁40を、建て込み済みの上階のPC柱30の外側に建て込む。
【0043】
次に、建物最外部において、上階のPC柱120を、建て込み済みの下階のPC柱120の上、且つ、建て込み済みの上階のPC梁40の外側に建て込む。この際、下階のPC柱120の柱主筋孔24に柱主筋22を挿入した状態で、上階のPC柱120を水平方向にスライドさせ、上階のPC柱120の側面から突出した接続用鉄筋21を、上階のPC梁40の梁主筋孔44に貫通させて、その奥側のスリーブ継手46に挿入する。
【0044】
そして、柱主筋22を、上階のPC柱120の柱主筋孔24に挿し込む。この際、柱主筋22の下端を、上階のPC柱120から突出させて下階のPC柱120の上端のスリーブ継手126内に配置し、柱主筋22の上端を、上階のPC柱120の上端のスリーブ継手126内に配置する。
【0045】
次に、図6に示すように、上下階のPC柱120同士を接合し、上階のPC柱120と上階のPC梁40とを接合する。また、図示は省略しているが、上述の実施形態に係る架構10と同様の方法で、上下階のPC柱30同士を接合し、上階のPC柱30とその両側のPC梁40とを接合する。
【0046】
PC柱120とPC梁40との接合方法は、上述の実施形態におけるPC柱20とPC梁40との接合方法と同様である。そして、上下階のPC柱120同士の接合方法は次のとおりである。なお、下階のPC柱120の柱主筋孔24では、スリーブ継手126の下端近傍までグラウトが充填されており、下階のPC柱120の柱主筋孔24に挿入されている柱主筋22は、該PC柱120に定着されている。
【0047】
上階のPC柱120と下階のPC柱120との間の目地129に連通されたグラウト注入口から、該目地129にグラウトを圧入し、該目地129、その下のスリーブ継手126及び、その上の柱主筋孔24にグラウト(図中ハッチングで示す)を充填して硬化させる。この際、グラウトは、上階のPC柱120のスリーブ継手126の下端近傍まで充填する。これにより、上階のPC柱120の柱主筋孔24に挿通された柱主筋22が、該PC柱120に定着されると共に、下階のPC柱20に既に定着されている柱主筋22と、下階のPC柱120の上端のスリーブ継手126により継手される。また、上下階のPC柱120同士が接合される。
【0048】
以上、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、PC柱120に、柱主筋22を挿入するための縦方向の貫通孔である柱主筋孔24と、柱主筋22を継手するためのスリーブ継手126とを設け、該PC柱120を上下に組み合わせる。この際、柱主筋22を、下階のPC柱120のスリーブ継手126内に下端が位置し、上階のPC柱120のスリーブ継手126内に上端が位置するように、上下階のPC柱120のスリーブ継手126の間の柱主筋孔24に挿通させる。そして、下階のPC柱120のスリーブ継手126と、柱主筋22を挿通させた上階のPC柱120の柱主筋孔24とにグラウトを充填して硬化させる。
【0049】
ここで、上階のPC柱120を建て込む際、下階のPC柱120の上端面から柱主筋22が突出していないため、上階のPC柱120を横方向にスライドさせて、上階のPC柱120から横方向に突出した接続用鉄筋21を、上階のPC梁40のスリーブ継手46に挿入することができる。これによって、現場でコンクリートを打設したり、仕口部と柱部とを別体にしたりすることなく、上下階のPC柱120とPC梁40とを接合することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、PC柱120の上端(上部)にスリーブ継手126を埋設している。ここで、スリーブ継手126を、柱主筋孔24の下端や中間部に埋設している場合には、柱主筋22を、上階のPC柱120の柱主筋孔24を通して下階のPC柱120の柱主筋孔24まで挿入しなければならず、柱主筋22を奥側まで挿し込むための冶工具が必要になり、また、作業が煩雑になる。これに対して、本実施形態では、柱主筋22を、上階のPC柱120の柱主筋孔24に挿入すればよいことから、上記冶工具は不要であり、また、作業が容易である。
【0051】
図7は、他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構200を示す分解立面断面図である。また、図8は、架構200を示す立面断面図である。なお、架構200において、上述の各実施形態に係る架構と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0052】
架構200は、左右のPC梁240と、左右のPC梁240と上下のPC柱220との間に配されるPC部材230を備えている。PC部材230は、仕口部230Aと、その上下に設けられた柱部230B、230Cと、仕口部230Aの左右に設けられた梁部230D、230Eとが一体化された構成をしている。PC部材230の下端から上端までの長さは、PC柱220の下端から上端までの長さと同一である。
【0053】
PC部材230は、梁主筋242が埋設されている。この梁主筋242の一端側は、梁部230Dの端面から突出している。また、梁部230Eの端部には、スリーブ継手246が埋設されている。このスリーブ継手246には、梁主筋242の他端が挿入されている。
【0054】
また、PC部材230は、鉛直方向に貫通する柱主筋孔234が形成され、柱主筋孔234の下端にはスリーブ継手236が埋設されている。なお、柱主筋孔234にはシース管が埋設されているが必須ではない。また、スリーブ継手236の下端は、柱部230Cの下端面に対して面一となっているが必須ではなく、柱部230Cの下端面より上側又は下側に位置していてもよい。
【0055】
PC梁240は、梁主筋42が埋設されている。この梁42の一端側は、PC梁240の一端から突出している。また、PC梁240の他端には、スリーブ継手46が埋設されている。このスリーブ継手46には、梁主筋42の他端が挿入されている。
【0056】
PC部材230と左右のPC梁240とは、梁部230Dから突出する梁主筋242が、一方(図中左側)のPC梁240のスリーブ継手46に挿入され、他方(図中右側)のPC梁240から突出する梁主筋42が、梁部230Eのスリーブ継手246に挿入された状態で組み合わされる。
【0057】
また、一方のPC梁240と梁部230Dとの間の目地、当該PC梁240のスリーブ継手46にグラウトが充填されている。これにより、梁部230Dから突出する梁主筋242が、PC梁240に定着されると共に、一方のPC梁240に埋設された梁主筋42と継手されている。また、PC部材230と一方のPC梁240とが接合されている。また、他方のPC梁240と梁部230Eとの間の目地、梁部220Eのスリーブ継手246にグラウトが充填されている。これにより、他方のPC梁240から突出した梁主筋42が、PC部材230に定着されると共に、PC部材230に埋設された梁主筋242と継手されている。また、PC部材230と他方のPC梁240とが接合されている。
【0058】
また、PC部材230とその下のPC柱220とは、柱主筋22がPC柱220の柱主筋孔24に挿通された状態で組み合わされている。ここで、柱主筋22の上端は、PC部材230の下端のスリーブ継手236内に位置し、柱主筋22の下端は、PC柱220の下端のスリーブ継手26内に位置している。
【0059】
また、上階のPC柱220とその下のPC部材230との間の目地、上階のPC柱220の柱主筋孔24及びスリーブ継手26にグラウトが充填されている。これにより、柱主筋22が上階のPC柱220に定着されている。また、上階のPC柱220に定着された柱主筋22と、その下のPC部材230に定着された柱主筋22とが、上階のPC柱220の下端のスリーブ継手26により継手されている。また、上階のPC柱220とその下のPC柱230とが接合されている。
【0060】
以上のような構成の架構200におけるPC部材230と左右のPC梁240と上下のPC柱220との接合方法について説明する。図7に示すように、一方(図中左側)のPC梁240及びPC部材230の下のPC柱220を建て込んだ後、PC部材230をPC柱220の上に建て込み、他方(図中右側)のPC梁240を、建て込み済みのPC部材230の図中右側に建て込む。
【0061】
この際、PC柱220の柱主筋孔24に柱主筋22を挿入していない状態で、PC部材230を水平方向にスライドさせ、梁部230Dから突出した梁主筋242を、一方のPC梁240のスリーブ継手46に挿入する。また、他方のPC梁240を水平方向にスライドさせ、該PC梁240から突出した梁主筋42を、梁部230Eのスリーブ継手246に挿入する。
【0062】
そして、柱主筋22を、PC部材230の柱主筋孔234を通して、その下のPC柱220の柱主筋孔24に挿し込む。この際、柱主筋22の下端を、PC柱220の下端のスリーブ継手26内に配置し、柱主筋22の上端を、PC柱220から突出させてPC部材230の下端のスリーブ継手236内に配置する。
【0063】
次に、PC部材230と左右のPC梁240とを接合する。PC部材230と図中左側のPC梁240との接合方法は次のとおりである。梁部230DとPC梁240との間の目地の外周をシールした状態で、PC梁240のスリーブ継手46に連通されたグラウト注入口からスリーブ継手46にグラウトを圧入し、スリーブ継手46及び部材間の目地にグラウトを充填して硬化させる。これにより、梁部230Dから突出した梁主筋242が、PC梁240に定着されると共に、PC梁240に埋設された梁主筋42とスリーブ継手46により継手される。また、PC部材230と図中左側のPC梁240とが接合される。
【0064】
また、PC部材230と図中右側のPC梁240との接合方法は次のとおりである。梁部230EとPC梁240との間の目地の外周をシールした状態で、梁部230Eのスリーブ継手246に連通されたグラウト注入口からスリーブ継手246にグラウトを圧入し、スリーブ継手246及び部材間の目地にグラウトを充填して硬化させる。これにより、PC梁240から突出した梁主筋42が、PC部材230に定着されると共に、PC部材230に埋設された梁主筋242とスリーブ継手246により継手される。また、PC部材230と図中右側のPC梁240とが接合される。
【0065】
そして、上階のPC柱220とその下のPC部材230とを次のような方法で接合する。なお、上階のPC柱220の下のPC部材230では、柱主筋孔234の上端までグラウトが充填されており、該PC部材230の柱主筋孔234に挿入されている柱主筋22は、該PC部材230に定着されている。
【0066】
上階のPC柱220とその下のPC部材230との間の目地に連通されたグラウト注入口から、該目地にグラウトを圧入し、該目地、その上のスリーブ継手26及び柱主筋孔24にグラウトを充填して硬化させる。これにより、柱主筋22が、上階のPC柱220に定着されると共に、その下のPC部材230に定着された柱主筋22と、PC柱220の下端のスリーブ継手26により継手される。また、上階のPC柱220とその下のPC部材230とが接合される。なお、上階のPC柱220とその上のPC部材230とは、該PC部材230の上にさらにPC柱220を建て込んだ後に、上述した方法により接合する。
【0067】
以上、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、PC柱220と、その上に建て込むPC部材230とに、柱主筋22を挿入するための縦方向の貫通孔である柱主筋孔24、234と、柱主筋22を継手するためのスリーブ継手26、236とを設け、PC部材230とPC柱220とを上下に組み合わせる。この際、柱主筋22を、PC柱220のスリーブ継手26内に下端が位置し、PC部材230のスリーブ継手236内に上端が位置するように、PC柱220のスリーブ継手26とPC部材230のスリーブ継手236との間の柱主筋孔24に挿通させる。そして、PC柱20のスリーブ継手26と、柱主筋22を挿通させた柱主筋孔24とにグラウトを充填して硬化させる。
【0068】
ここで、PC部材230を建て込む際、PC柱220の上端面から柱主筋22が突出していないため、PC部材230を横方向にスライドさせて、PC部材230から横方向に突出した梁主筋242をPC梁240のスリーブ継手46に挿入することができる。これによって、現場でコンクリートを打設することなく、上下のPC柱220とPC梁240とを、仕口部230Aを有するPC部材230を介して接合することができる。
【0069】
また、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、PC柱220、PC部材230の下端(下部)にスリーブ継手26、236を埋設している。このため、PC柱220の柱主筋孔24の上端までグラウトを充填すればよく、PC柱220の上端面にグラウトが出てくるまでグラウトの充填を続ければよいことから、その作業は容易である。
【0070】
なお、スリーブ継手26、236は、PC柱220、PC部材230の上端(上部)に埋設してもよい。この場合、柱主筋22を、柱主筋孔24、234に挿入する作業が容易になる等の効果を得ることができる。
【0071】
図9は、他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構300を示す分解立面断面図である。また、図10は、架構300を示す立面断面図である。なお、架構300において、上述の各実施形態に係る架構と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0072】
架構300は、上下のPC柱220の間に配されるPC仕口部330を備えている。PC仕口部330には、接続用鉄筋331が埋設されている。この接続用鉄筋331の一端側はPC仕口部330の側面から突出している。また、PC仕口部330は、鉛直方向に貫通する柱主筋孔334が形成されている。なお、柱主筋孔334にはシース管が埋設されているが必須ではない。
【0073】
PC仕口部330とPC梁40とは、PC仕口部330から突出する梁主筋331が、PC梁40のスリーブ継手46に挿入された状態で組み合わされる。また、PC仕口部330とPC梁40との目地、PC梁40の梁主筋孔44及びスリーブ継手46にグラウトが充填されている。これにより、PC仕口部330から突出した梁主筋331が、PC梁40に定着されると共に、PC梁40に埋設された梁主筋42と継手されている。また、PC仕口部330とPC梁40とが接合されている。
【0074】
また、上下のPC柱220とその間のPC仕口部330とは、柱主筋322が、PC仕口部330の柱主筋孔334、下階のPC柱220の柱主筋孔24に挿通された状態で組み合わされている。ここで、梁主筋322の上端は、上階のPC柱220のスリーブ継手26内に位置し、梁主筋322の下端は、下階のPC柱220のスリーブ継手26内に位置している。
【0075】
また、下階のPC柱220とその上下のPC仕口部330との間の目地、下階のPC柱220のスリーブ継手26、その上の貫通孔24、及びPC仕口部330の貫通孔334にグラウトが充填されている。これにより、柱主筋322が、下階のPC柱220とその上のPC仕口部330とに定着されている。また、下階のPC柱220及びその上のPC仕口部330に定着された柱主筋322と、その下の柱主筋322とが、下階のPC柱220の下端のスリーブ継手26により継手されている。また、下階のPC柱220とその上下のPC仕口部330とが接合されている。
【0076】
以上のような構成の架構300におけるPC仕口部330とPC梁40と上下階のPC柱220との接合方法について説明する。図9に示すように、PC梁40及び下階のPC柱220を建て込んだ後、PC仕口部330を下階のPC柱220の上に建て込み、上階のPC柱220を、建て込み済みのPC仕口部330の上に建て込む。
【0077】
この際、下階のPC柱220の柱主筋孔24に柱主筋322を挿入していない状態で、PC仕口部330を水平方向にスライドさせ、その側面から突出した接続用鉄筋331を、PC梁40の梁主筋孔44に貫通させて、その奥側のスリーブ継手46に挿入する。
【0078】
そして、柱主筋322を、上階のPC柱220の柱主筋孔24を通して、PC仕口部330の柱主筋孔324、下階のPC柱220の柱主筋孔24に挿し込む。この際、柱主筋322の下端を、下階のPC柱220の下端のスリーブ継手26内に配置し、柱主筋322の上端を、PC仕口部330から突出させて上階のPC柱220の下端のスリーブ継手26内に配置する。
【0079】
次に、PC仕口部330とPC梁40と上下のPC柱220とを接合する。PC仕口部330とPC梁40との接合方法は次のとおりである。PC仕口部330とPC梁40との間の目地の外周をシールした状態で、PC梁40のスリーブ継手46に連通されたグラウト注入口からスリーブ継手46にグラウトを圧入し、スリーブ継手46、梁主筋孔44及び部材間の目地にグラウトを充填して硬化させる。これにより、PC仕口部330から突出した接続用鉄筋331が、PC梁40に定着されると共に、PC梁40に埋設された梁主筋42と継手される。また、PC仕口部330とPC梁40とが接合される。
【0080】
そして、下階のPC柱220とその上下のPC部材330との接合方法は次のとおりである。なお、下階のPC柱220の下のPC仕口部330では、柱主筋孔324の上端までグラウトが充填されており、該PC部材330の柱主筋孔324に挿入されている柱主筋322は、該PC仕口330に定着されている。
【0081】
下階のPC柱220とその下のPC仕口部330との間の目地に連通されたグラウト注入口から、該目地にグラウトを圧入し、該目地、その上のスリーブ継手26、柱主筋孔24、PC仕口部330と下階のPC柱220との目地、及びその上の柱主筋孔334にグラウトを充填して硬化させる。これにより、柱主筋322が、下階のPC柱220、その上のPC仕口部330に定着される。また、柱主筋322と、その下の柱主筋322とが、下階のPC柱220の下端のスリーブ継手26により継手される。また、下階のPC柱220とその上下のPC仕口部330とが接合される。なお、上階のPC仕口部230とその上のPC柱220とは、上階のPC柱220の上にさらにPC仕口部330を建て込んだ後に、上述した方法により接合する。
【0082】
以上、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、上下のPC柱220に、柱主筋322を挿入するための縦方向の貫通孔である柱主筋孔24と、柱主筋322を継手するためのスリーブ継手26とを設け、PC仕口部330に、柱主筋322を挿通させるための縦方向の貫通孔である柱主筋孔334を設け、上下のPC柱220とPC梁40とをPC仕口部330を介して組み合わせる。この際、柱主筋322を、下階のPC柱220のスリーブ継手26内に下端が位置し、上階のPC柱230のスリーブ継手26内に上端が位置するように、下階のPC柱220のスリーブ継手26と上階のPC柱220のスリーブ継手26との間の柱主筋孔24、334に挿通させる。そして、下階のPC柱220のスリーブ継手26と、その上の柱主筋孔24、334とにグラウトを充填して硬化させる。
【0083】
ここで、PC仕口部330を建て込む際、下階のPC柱220の上端面から柱主筋322が突出していないため、PC仕口部330を横方向にスライドさせて、PC仕口部330から横方向に突出した接続用鉄筋331を、PC梁40のスリーブ継手46に挿入することができる。これによって、現場でコンクリートを打設することなく、上下のPC柱220とPC梁40とを、PC仕口部330を介して接合することができる。
【0084】
また、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、上下のPC柱220の下端(下部)にスリーブ継手26を埋設している。このため、PC仕口部330の柱主筋孔334の上端までグラウトを充填すればよく、PC仕口部330の上端面にグラウトが出てくるまでグラウトの充填を続ければよいことから、その作業は容易である。
【0085】
なお、スリーブ継手26は、PC柱220の上端(上部)に埋設してもよい。この場合、柱主筋322を、柱主筋孔24に挿入する作業が容易になる等の効果を得ることができる。
【0086】
図11は、他の実施形態に係るPC部材の接合方法を用いて構築された架構400を示す分解立面断面図である。また、図12は、架構400を示す立面断面図である。なお、架構400において、上述の各実施形態に係る架構と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0087】
架構400は、上下のPC柱20の間に配されるPC柱420を備えている。PC柱420は、鉛直方向に貫通する梁主筋孔424が形成されている。なお、柱主筋孔424にはシース管が埋設されているが必須ではない。
【0088】
下階のPC柱20と上階のPC柱420、20とは、柱主筋422が、下階のPC柱20と上階のPC柱420に挿通された状態で組み合わされている。ここで、柱主筋422の下端は、下階のPC柱20のスリーブ継手26内に位置し、柱主筋422の上端は、上階のPC柱20のスリーブ継手26内に位置している。
【0089】
また、下階のPC柱20とその下のPC柱420との間の目地、下階のPC柱20と上階のPC柱420との間の目地、下階のPC柱20のスリーブ継手26、柱主筋孔24及び上階のPC柱420の柱主筋孔424にグラウトが充填されている。これにより、柱主筋422が下階のPC柱20、上階のPC柱420に定着されている。また、下階のPC柱20及び上階のPC柱420に定着された柱主筋422と、その下のPC柱20、420に定着された柱主筋422とが、下階のPC柱20のスリーブ継手26により継手されている。また、下階のPC柱20とその上下のPC柱420とが接合されている。
【0090】
以上のような構成の架構400におけるPC梁40と上下階のPC柱20とその間のPC柱420との接合方法について説明する。図11に示すように、PC梁40及び下階のPC柱20を建て込んだ後、PC柱420を下階のPC柱20の上に建て込み、上階のPC柱20を、建て込み済みの上階のPC柱420の上に建て込む。
【0091】
この際、下階のPC柱20の柱主筋孔24に柱主筋422を挿入していない状態で、上階のPC柱420を下階のPC柱20の上に建て込む。そして、上階のPC柱20を水平方向にスライドさせ、その側面から突出した接続用鉄筋21を、上階のPC梁40の梁主筋孔44に貫通させて、その奥側のスリーブ継手46に挿入する。
【0092】
そして、柱主筋422を、上階のPC柱20の柱主筋孔24を通して、上階のPC柱420の柱主筋孔424、下階のPC柱20の柱主筋孔24に挿通させる。この際、柱主筋422の下端を、下階のPC柱220の下端のスリーブ継手26内に配置し、柱主筋422の上端を、PC柱420から突出させて上階のPC柱20の下端のスリーブ継手26内に配置する。
【0093】
次に、PC梁40と上下のPC柱20とその間のPC柱420とを接合する。PC梁40とPC柱20との接合方法は、上述の実施形態に係る架構10、100と同様である。 そして、PC柱420と下階のPC柱20との接合方法は次のとおりである。なお、下階のPC柱20のさらに下のPC柱420では、柱主筋孔424の上端までグラウトが充填されており、該PC柱420の柱主筋孔424に挿入されている柱主筋422は、該PC柱420に定着されている。
【0094】
下階のPC柱20とその下のPC柱420との間の目地に連通されたグラウト注入口から、該目地にグラウトを圧入し、該目地、その上のスリーブ継手26、柱主筋孔24、上階のPC柱420と下階のPC柱20との間の目地、及びその上の柱主筋孔424にグラウトを充填して硬化させる。これにより、柱主筋422が、下階のPC柱20及び上階のPC柱420に定着される。また、該柱主筋422とその下の柱主筋422とが、下階のPC柱20の下端のスリーブ継手26により継手される。また、下階のPC柱20とその上下のPC柱420とが接合される。なお、上階のPC柱20と上階のPC柱420とは、上階のPC柱20の上にさらにPC柱420を建て込んだ後に、上述した方法により接合する。
【0095】
以上、本実施形態に係るPC部材の接合方法では、上下のPC柱20に、柱主筋422を挿通させるための縦方向の貫通孔である柱主筋孔24と、柱主筋422を継手するためのスリーブ継手26とを設け、PC柱420に、柱主筋422を挿通させるための縦方向の貫通孔である柱主筋孔424を設け、上下のPC柱20を、PC柱420を介して組み合わせる。この際、柱主筋422を、下階のPC柱20のスリーブ継手26内に下端が位置し、上階のPC柱20のスリーブ継手26内に上端が位置するように、下階のPC柱20のスリーブ継手26と上階のPC柱20のスリーブ継手26との間の柱主筋孔24、424に挿通させる。そして、下階のPC柱20のスリーブ継手26と、その上の柱主筋孔24、424とにグラウトを充填して硬化させる。
【0096】
ここで、上階のPC柱20を建て込む際、上階のPC柱420の上端面から柱主筋422が突出していないため、上階のPC柱20を横方向にスライドさせて、PC柱20から横方向に突出した接続用鉄筋21を、PC梁40のスリーブ継手46に挿入することができる。これによって、現場でコンクリートを打設することなく、上下階のPC柱20とPC梁40とを接合することができる。
【0097】
以上、上記各実施形態を例に挙げて説明したように、本発明に係るPC部材の接合方法によれば、梁が接合される上下階のPC柱同士を直接接合したり、仕口部、柱部、及び梁部を有し、梁が接合される上下階のPC部材同士を、PC柱を介して接合したり、上下階のPC柱同士を、梁が接合されるPC仕口部を介して接合したり、梁が接合される上下階のPC柱同士を、PC柱を介して接合したりする等、架構の構成を多様化できる。従って、本発明に係るPC部材の接合方法によれば、現場でのコンクリート打設を不要にできると共に、架構の構成の自由度を高めることができる。
【0098】
なお、上記各実施形態では、接続用鉄筋や梁主筋を、PC梁と接合されるPC柱やPC部材からPC梁側へ突出させ、PC梁にスリーブ継手を埋設したが、梁主筋をPC梁からPC柱やPC部材側へ突出させ、PC柱やPC部材にスリーブ継手を埋設してもよい。また、PC柱やPC部材に接続用鉄筋を挿通させるための貫通孔を形成し、PC柱やPC部材をPC梁の側方に建て込んだ後に、接続用鉄筋を、該貫通孔を通してPC梁のスリーブ継手に挿し込む等してもよい。この場合、接続用鉄筋とPC梁の梁主筋とを、ネジ式の機械式継手により継手する等してもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 架構、20 PC柱(第1PC部材、第2PC部材)、21 接続用鉄筋、22 柱主筋、24 柱主筋孔(貫通孔)、26 スリーブ継手(モルタルを充填するスリーブ式の機械式継手)、29 目地、30 PC柱、32 柱主筋、34 梁主筋孔(貫通孔)、36 スリーブ継手、40 PC梁(梁部)、42 梁主筋、44 梁主筋孔、46 スリーブ継手、49 目地、100 架構、120 PC柱(第1PC部材、第2PC部材)、126 スリーブ継手(モルタルを充填するスリーブ式の機械式継手)、200 架構、220 PC柱(第1PC部材)、230 PC部材(第2PC部材)、230A 仕口部、230B,C 柱部、230D,E 梁部、234 柱主筋孔(貫通孔)、236 スリーブ継手(モルタルを充填するスリーブ式の機械式継手)、240 PC梁(梁部)、242 梁主筋、244 梁主筋孔、246 スリーブ継手、300 架構、322 柱主筋、330 PC仕口部(第2PC部材)、331 接続用鉄筋、334 柱主筋孔(貫通孔)、400 架構、420 PC柱(第3PC部材)、422 柱主筋、424 柱主筋孔(貫通孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱部及び仕口部の少なくとも一方を有するプレキャストコンクリート製の第1PC部材と、柱部及び仕口部の少なくとも一方を有し、横方向に移動させることにより梁部に接続されると共に、前記第1PC部材の上側に建て込まれるプレキャストコンクリート製の第2PC部材との接合方法であって、
前記第1PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられると共に、該貫通孔に機械式継手が設けられ、
前記第2PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられ、
前記柱主筋の下端が、前記第1PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記柱主筋を、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通させ、
前記第1PC部材の前記機械式継手と、前記柱主筋を挿通させた前記貫通孔とに、グラウトを充填するPC部材の接合方法。
【請求項2】
前記第1PC部材と前記第2PC部材とを、前記柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート製の第3PC部材を介して接合する請求項1に記載のPC部材の接合方法。
【請求項3】
前記第2PC部材の前記貫通孔には機械式継手が設けられ、
前記柱主筋の上端が、前記第2PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記柱主筋を、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通させる請求項1又は請求項2に記載のPC部材の接合方法。
【請求項4】
前記第1PC部材及び前記第2PC部材では、下部に前記機械式継手が設けられている請求項3に記載のPC部材の接合方法。
【請求項5】
前記第1PC部材及び前記第2PC部材では、上部に前記機械式継手が設けられている請求項3に記載のPC部材の接合方法。
【請求項6】
柱部及び仕口部の少なくとも一方を有するプレキャストコンクリート製の第1PC部材と、柱部及び仕口部の少なくとも一方を有し、梁部に接続されると共に、前記第1PC部材の上側に建て込まれたプレキャストコンクリート製の第2PC部材との接合構造であって、
前記第1PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられると共に、該貫通孔に機械式継手が設けられ、
前記第2PC部材は、柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が設けられ、
前記柱主筋の下端が、前記第1PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通され、
前記第1PC部材の前記機械式継手と、前記柱主筋が挿通された前記貫通孔とに、グラウトが充填されているPC部材の接合構造。
【請求項7】
前記第1PC部材と前記第2PC部材とが、前記柱主筋を挿通させるための縦方向の貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート製の第3PC部材を介して接合されている請求項6に記載のPC部材の接合構造。
【請求項8】
前記第2PC部材の前記貫通孔には機械式継手が設けられ、
前記柱主筋の上端が、前記第2PC部材の前記機械式継手の内に位置するように、前記柱主筋が、前記第1PC部材の前記機械式継手より上側の前記貫通孔に挿通されている請求項6又は請求項7に記載のPC部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−57313(P2012−57313A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199211(P2010−199211)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】