説明

PDP用前面フィルタの製造方法

【課題】複数の光学フィルタを電磁波遮蔽材上に積層するPDP用前面フィルタの製造方法であって、光学フィルタ積層体中の各光学フィルタ層の位置ズレ、各光学フィルタのカールといった問題が生じないPDP用前面フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の帯状の光学フィルタおよび離型シートを接着剤層を介してロール・トゥ・ロール方式で積層し、光学フィルタ側から刃を入れて、各光学フィルタ及び各接着剤層の切断端面が一致するように枚葉に裁断し、この枚葉積層体から離型シートを剥がしたものを、黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域として露出状態で存在するように積層することを特徴とするPDP用前面フィルタの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の光学フィルタと電磁波遮蔽フィルタとを積層した、画像コントラストが良好なPDP用前面フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の大型化、薄型化に伴い、プラズマディスプレイ(PDP)が注目を集めている。
PDPは、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、画像光の透過性は維持した上で、漏洩する電磁波を遮蔽するための電磁波遮蔽部材を設けるのが一般的である。
なお、本発明において単に電磁波という場合は、周波数が上記範囲を中心とするKHz〜GHz帯近辺の電磁波のことをいう。赤外線、可視光線、紫外線、X線等は含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する)。
【0003】
また、PDP用フィルタには、電磁波遮蔽性とともに、外来光反射防止、近赤外線吸収、コントラスト向上等の光学フィルタ機能が求められる
【0004】
したがって、PDP用前面フィルタは、通常、少なくとも電磁波遮蔽材層と複数の光学フィルタ層とを含み、それらが接着剤層を介して積層されたものである。
特許文献1には、PDP用前面フィルタの通常の製造方法として、透明基材上に金属層のパターンが形成された電磁波遮蔽材上に粘着剤層を介して近赤外線吸収層を周辺部の金属層パターンが露出するように貼り合わせ、次に、近赤外線吸収層上に第2の粘着剤層を介して反射防止膜を周辺部の金属層パターンが露出するように貼り合わせる製造方法が記載されている。すなわち、電磁波遮蔽材、近赤外線吸収層、反射防止膜はそれぞれ、積層工程に先立って、各画面寸法別に裁断して枚葉化したものが積層されている。
【0005】
しかしながら、このように複数の予め枚葉化された光学フィルタ同士を積層することは、各光学フィルタ層間の面内方向の位置ズレが生じ、粘着剤層の露出(塵埃の付着、不用意な接着を引き起こす)、積層体の面積が各光学フィルタ層の面積より大きくなることにより電磁波遮蔽材の接地領域が目減りするといった問題があり、また、積層する複数の光学フィルタがカールして取り扱いが難しいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−9484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数の枚葉化光学フィルタを電磁波遮蔽材上に積層する従来のPDP用前面フィルタの製造方法では、上記のように、積層体中の各光学フィルタ層の位置ズレ、各光学フィルタのカールといった問題が生じるが、これらの問題を生じないPDP用前面フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、電磁波遮蔽材の導電パターン層による外光反射、及びそれによる画像明暗コントラストの低下、画像の白化のないPDP用前面フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、帯状シートの形態からなる複数の光学フィルタおよび帯状シートの形態からなる離型シートを接着剤層を介して積層するに際して、巻取(ロール)から帯状シートを巻き出して供給し、積層し、その後、再び巻取(ロール)に巻き取る加工方式(以下、かかる積層方式をロール・トゥ・ロール方式とも略称する)を適用して積層し、得られた帯状積層体の光学フィルタ側表面から刃を押し入れて、各光学フィルタ及び各接着剤層の切断端面が一致するように枚葉に裁断し、この枚葉積層体から離型シートを剥がしたものを、黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域として露出状態で存在するように積層することにより、問題が解決しうることを見出した。また、特定の表面微細構造を有する黒化処理導電性パターン層の電磁波遮蔽材を用いることにより、外光反射防止性が良好となることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)帯状シートの形態からなる、複数の光学フィルタおよび離型シートを接着剤層を介して、巻取から帯状シートを巻き出して供給し、積層し、その後、再び巻取に巻き取る加工方式を適用して積層し、最外面のうちの一方の面に前記複数の光学フィルタのいずれか1つが位置し、他方の面に前記離型シートが位置し、且つ各構成層の層間には前記接着剤層が位置するような積層形態の帯状積層体を得る工程、
該積層体の一方の面の光学フィルタ側から刃を入れて、各光学フィルタ、各接着剤層及び離型シートの切断端面が一致するように枚葉に裁断する工程、
この枚葉積層体から離型シートを剥がしたものを、黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域として露出状態で存在するように積層する工程を順次行なう、
ことを特徴とするPDP用前面フィルタの製造方法、
(2)前記黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層が、金属粒子とバインダー樹脂を含み、該導電性パターン層の表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出しており、該金属粒子露出部分がその表面に溝状凹部及び微小突起を有するものである上記(1)に記載のPDP用前面フィルタの製造方法、
(3)上記(1)に記載の製造方法により得られたPDP用前面フィルタ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、いずれも帯状シート形態から成る、複数の光学フィルタおよび離型シートを接着剤層を介してロール・トゥ・ロール方式で積層し、各光学フィルタ及び各接着剤層の切断端面が一致するように枚葉に裁断するので、積層体中の各光学フィルタ層の面内方向での位置ズレがなく、電磁波遮蔽材の接地領域が目減りすることがない。また、ロール・トゥ・ロール方式の積層では、帯状の光学フィルタを引っ張って積層するので、従来の枚葉積層のように光学フィルタがカールするという問題もない。さらに、該帯状積層体の光学フィルタ側の表面から刃を入れるので、粘着剤層端部に離型シートが食い込むということがなく、離型シートの剥離が円滑に行える。
また、特定の表面微細構造を有する黒化処理導電性パターン層の電磁波遮蔽材を用いれば、外光反射、及びそれによる画像明暗コントラストの低下、画像の白化のないPDP用前面フィルタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A)は、本発明の製法におけるロール・トゥ・ロール方式の光学フィルタ(離型シートつき)積層体を枚葉に裁断したものであり、図1(B)は、離型シートを剥がした光学フィルタ積層体を電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に積層したPDP用前面フィルタの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明で好適に用いられる黒化処理電磁波遮蔽材の一例を模式的に示した拡大断面図である。図2(B)は、当該黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層表面に露出した金属粒子の表面構造を模式的に示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔PDP用前面フィルタの製造方法〕
本発明に係るPDP用前面フィルタは、(1)帯状シートの形態から成る複数の光学フィルタを接着剤層を介してロール・トゥ・ロール方式で積層し、(2)その積層体を枚葉に裁断して各光学フィルタ及び各接着剤層の切断端面が一致した積層体を得、(3)これを黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域として露出状態で存在するように積層することにより製造され、たとえば、図1(B)のような層構成のPDP用前面フィルタである。
以下、本発明のPDP用前面フィルタの製造方法について説明する。
【0012】
(帯状光学フィルタの積層)
帯状シートの形態から成る複数の光学フィルタおよび帯状シートの形態から成る1層の離型シートを接着剤層を介してロール・トゥ・ロール方式で積層する。
本発明においては、帯状の光学フィルタA40をロールから巻き出し、その1面にロールコータ、バーコータ、コンンマコータ等の塗工機によって接着剤を塗布して接着剤層a50を形成し、別のロールから巻き出した帯状の光学フィルタB60を光学フィルタA40とともに1対の加圧ローラ間を通すことによって光学フィルタAの接着剤塗布面に貼り合わせる。光学フィルタA40と光学フィルタB60の積層体の光学フィルタB側の面に接着剤を塗布して接着剤層b70を形成し、ロールから巻き出した離型シート80を光学フィルタBの接着剤塗布面に貼り合わせ、ロールに巻き取る。かくして、光学フィルタA、光学フィルタBおよび離型シートが接着剤層を介して積層された帯状積層体が得られる。該積層体においては、一方の最外面には光学フィルタA40が、もう一方の最外面には離型シート80が位置する(枚葉裁断後の図ではあるが、積層順序については、図1(A)参照)。なお、光学フィルタは2枚に限らず、必要に応じた枚数を積層すればよい。
【0013】
(帯状光学フィルタ積層体の裁断)
得られた光学フィルタA40、光学フィルタB60および離型シート80の接着剤層を介した帯状積層体は、ロールから巻き出して、光学フィルタA側から刃を入れて、各光学フィルタ及び各接着剤層の切断端面が一致するように枚葉(1画面分に対応)に裁断する。裁断には、炭素鋼、セラミックス等からなる刃を所望の枚葉形状(切り抜き形状)の輪郭線に沿って配置し固定してなる抜き型を使用する。光学フィルタA側から該抜き型を押圧して刃を入れると、接着剤として特に粘着剤を使用した場合に、粘着剤層端部に離型シートの切断端部が食い込むということがなく、離型シートが容易に剥離できる。一方、離型シート80側から抜き型を押圧して刃を入れると、接着剤として特に粘着剤を使用した場合に、粘着剤層端部に離型シートの切断端部が喰い込む現象が頻発する。離型シート切断端部が粘着剤層中に喰い込むと、離型シートを剥離した際、本来、光学フィルタ側に残るべき粘着剤層までも一緒に剥離すると云う不具合を生じる。故に、特に、接着剤として粘着剤を使用する場合、該帯状積層体に刃を押し入れる方向は、光学フィルタA側からが好ましい。
【0014】
(光学フィルタ積層体の電磁波遮蔽材上への積層)
こうして得られた光学フィルタの枚葉積層体の離型シート80を剥がし、その露出した接着剤面を黒化処理電磁波遮蔽材30の導電性パターン層20上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域31として露出状態で存在するように積層する。接地領域31の幅は5〜15mmであることが好ましい。
かくして、図1(B)の如き、光学フィルタA40、接着剤層a50、光学フィルタB60、接着剤層b70の端部が一致した積層体が、黒化処理電磁波遮蔽材30の導電性パターン層20上に該電磁波遮蔽材の周縁領域を接地領域31として露出させた状態で積層された、本発明のPDP用前面フィルタ100が得られる。
なお、電磁波遮蔽材の透明基材10の裏面には、図示は略すが、リワーク性(一旦接着した後、必要に応じ、再剥離可能な性質)を有する粘着剤層が設けられることにより、PDP用前面フィルタをPDPパネルに貼り付けることができる。
【0015】
〔各構成部材の説明〕
次にPDP用前面フィルタを構成する各構成部材について説明する。
【0016】
(光学フィルタ)
本発明においてロール・トゥ・ロール方式で接着剤層を介して積層される光学フィルタとしては、反射防止剤層、防眩層、コントラスト向上層、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層などが挙げられる。これら光学フィルタは単一層であってもよいし、透明基材を支持基材として、その上にフィルタ機能を有する層を積層した形態でもよい。
【0017】
PDP用前面フィルタの最も外側(観察者側)には、反射防止剤層又は防眩層のいずれか、或いは、両者を併用して設けることにより、外光の反射を防止する。
反射防止剤層としては、例えば、低屈性率層と高屈折率層とを該低屈折率層が最表面に位置するようにして交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式法で、或いは塗工等の湿式法も利用して形成することができる。なお、低屈折率層は隣接する直下の層に比べて相対的に屈折率が低い層であり、その材料としては、ケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層隣接する層に比べて相対的に屈折率が高い層であり、その材料には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。
また、防眩フィルタとしては、樹脂バインダー中にシリカなどの無機フィラーを添加した塗膜形成や、或いはエンボス版等を用いた賦形加工により、層表面に外光を乱反射する微細凹凸を設けた層として形成することができる。樹脂バインダーの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、熱硬化性或いは電離放射線硬化性のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好適に使用される。
【0018】
コントラスト向上層は、いわゆるミクロルーバ層であって、次のような構造である。
層の面方向に沿った所定方向に直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な断面が幅広の下底を観察者側に向ける台形となる形状の、光を透過する「レンズ部」と、該レンズ部と平行な方向に直線状に連なり、その延長方向に対して垂直な断面が幅広の下底をPDP側に向ける楔型となる形状の、光を吸収する「光吸収部」とを、交互に多数噛み合わせて配列したものである。
レンズ部は、通常、透明な電離放射線硬化樹脂で構成され、楔型の溝部である光吸収部には、カーボンブラック等の黒色顔料と透明バインダーをインキ化した黒化インキが充填される。
【0019】
近赤外線吸収層としては、近赤外線吸収剤を有する市販フィルム(例えば、東洋紡績社製、商品名No2832)を用いたり、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂へ含有させた組成物を透明基材上に塗布して積層してもよい。なお、近赤外線吸収色素は、下記するように接着剤層(粘着剤層)に含有させてもよい。
近赤外線吸収色素としては、プラズマディスプレイパネルが放出するキセノンガス放電に起因して生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するものを用いる。該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、更に10%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収フィルタは、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有することが望ましい。
近赤外線吸収色素としては、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化スズ、酸化インジウム、酸化タングステン系化合物等の無機系近赤外線吸収色素、を1種、又は2種以上を併用することができる。
ネオン光吸収層としては、テトラアザポルフィリン系化合物等のネオン原子が発する波長590nm近傍の光を吸収する色素を、バインダー樹脂へ含有させた組成物を透明基材上に塗布して積層することにより得られる。
紫外線吸収層としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、微粒子状酸化セリウム等の紫外線吸収色素(紫外線吸収剤)を、1種又は2種以上バインダー樹脂へ含有させた組成物を透明基材上に塗布して積層することにより得られる。
【0020】
(接着剤層)
接着剤層は、光学フィルタ同士、光学フィルタと電磁波遮蔽材、或いは電磁波遮蔽材とPDPパネルとを接着することが可能な層であれば、その種類等は特に限定されるものではなく、各種の天然又は合成樹脂が使用でき、硬化形態としては熱又は電離放射線硬化樹脂などが適用できる。
好適に用いられる接着剤は、粘着剤と呼称される形態のものである。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
当該接着剤層中に、上述の近赤外線吸収色素を含有させて近赤外線吸収層と兼用させたり、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の紫外線吸収剤を含有させて紫外線吸収層と兼用させたり、テトラアザポルフィリン系等のネオン光吸収色素を含有させてネオン光吸収層と兼用させたりさせてもよい。
【0021】
(電磁波遮蔽材)
電磁波遮蔽材として用いられる材料及び形態は特に限定されず、PDP用の公知の電磁波遮蔽層を用いることができる。樹脂フィルムからなる透明基材に接着剤で貼り合わせた銅箔等の金属箔をエッチングしてメッシュ状にしたもの、透明基材上に銀粒子等を含む導電インキによる導電性パターンを設けたもの等が挙げられる。しかし、金属箔あるいは導電性パターン層表面近傍の銀粒子等が外光を反射して画面を白化し、画像コントラストを低下させるので、通常、黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき等の黒化層で被覆される。
本発明では、このように黒化処理した電磁波遮蔽材が用いられる。
また、電磁波遮蔽材は、その平面方向において、接地領域を、画像表示領域周縁部の全周に形成する。すなわち、本発明において、電磁波遮蔽材周縁部の複数の光学フィルタの枚葉積層体が積層されていない部分である。接地領域は、前面フィルタをPDPへ設置した場合にアースをとり易くするために設けられる。
以下、本発明で好ましく用いられる電磁波遮蔽材である、透明基材上に銀粒子等を含む導電インキによる導電性パターンを設けたものの構成について説明する。
【0022】
透明基材10は、可視光線領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよいが、本発明ではロール・トゥ・ロールでの加工方式を採用するので、フレキシブルな樹脂フィルムが使用される。
樹脂フィルムの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
【0023】
透明基材10の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。
【0024】
導電性パターン層20は、図2(A)に図示の如く、金属粒子1及びバインダー樹脂2を含み、透明基材10上、又は、図示は略すが、該透明基材上にプライマー層を形成する場合には該プライマー層上に、所定のパターンで設けられた層である。
パターン形状としてはメッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(所定パターンの全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。
なお、線幅は、より高透明のものを得るために、より一層微細化することが求められている。この観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0025】
また、導電性パターン層20の厚さは、その導電性パターン層の抵抗値によっても異なるが、導電性能と該導電性パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電性パターン層20は、金属粒子1とバインダー樹脂2を含む導電性組成物(導電性インキ或いは導電性ペースト)を、後述する印刷法により透明基材10上又はプライマー層上に形成することで得ることができる。
【0026】
導電性組成物を構成する金属粒子1は、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子である。
金属粒子の形状は、正多面体状、截頭多面体状等の各種の多面体状、球状、回転楕円体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。
金属粒子の大きさは、好ましくは、平均粒子径が0.1〜10μm程度のものを用いる。得られる導電性パターン層の電気抵抗を低く(好ましくは、表面抵抗率が0.8Ω/□以下)して良好な導電性を得るためには、平均粒子径は小さい方が好ましく、この観点からは平均粒子径0.1〜3μmが好ましい。
導電性組成物中の金属粒子の含有量は、好適な導電性の発現、導電性パターン層の機械的強度の維持、及び印刷適性を兼ね備える為には、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、金属粒子を40〜99質量部、より好ましくは90〜97質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
なお、観察により粒子径を測定する場合、粒子形状が球の場合は、その直径が粒子径である。また、粒子形状が非球形状の場合は、該粒子の外接球の直径をもって粒子径とする。
【0027】
導電性組成物を構成するバインダー樹脂2としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。なお、後述の電気抵抗低減化処理を施す場合は、酸又は温水にて溶解することのない非水溶性樹脂を用いる。かかるバインダー樹脂を例示すると、熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として後述する物を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を挙げることができ、これらを1種単独で、或いは2種以上混合して用いる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。紫外線(乃至可視光線)硬化型の電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
【0028】
本発明で好ましく用いられる上記態様の電磁波遮蔽材においては、透明基材10と導電性パターン層20との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設けることが好ましい。
該プライマー層は、透明基材及び導電性パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電性パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層である。
更に、導電性パターン層の形成を後述の如き特定の凹版印刷法で行なう場合には、該プライマー層は、流動性を保持できる状態で透明基材上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層となり、最終的な導電部材が形成されたときに固化している層である。
かかる透明プライマー層を構成する材料としては、電離放射線重合性化合物から成る電離放射線硬化性樹脂が好適に用いられ、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、かかるプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー、エポキシ系プレポリマー等のカチオン重合系プレポリマー等が挙げられる。
【0029】
プライマー層の厚さ(導電性パターン層の非形成部の厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。
【0030】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0031】
導電性パターン層が有する所定パターンは、例えば、シルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等の公知の各種印刷法によって形成することができる。
また、透明基材と導電性パターン層との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設ける場合には、電磁波遮蔽材の製造方法としては、WO2008/149969号パンフレットに記載される、特定のプライマーを用いた凹版印刷法が推奨される。
【0032】
当該凹版印刷法は、所定のパターンで形成された版面に、導電性組成物を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電性組成物を掻き取って該凹部内に導電性組成物を充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで圧着して、凹部内の導電性組成物とプライマー層とを空隙無く密着させ、その状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上に導電性組成物を転移させて、印刷するものである。
【0033】
かかる凹版印刷により得た電磁波遮蔽材を、更に、(i)温水処理として、水分存在下、且つ比較的高温下にて処理する、及び/又は(ii)酸処理として、酸に接触させることによって、該導電性パターンの体積抵抗率、更には表面抵抗率が低下し、導電性能が向上する。
電気抵抗低減化効果、作業性の点から、(ii)の酸処理の後、引き続いて(i)の温水処理を行うことが好ましい。
【0034】
電磁波遮蔽材の導電性パターン層の黒化処理は、前記の如く、通常、黒化ニッケルめっき、銅−コバルト合金めっき等の黒色メッキによって行われる。しかし、黒化度(外光反射防止性能)は、黒化層の表面微細構造、材料等に大きく依存し、黒化度を高めると電磁波遮蔽性は低下する傾向にあった。これは、一般に材料、特に金属材料において、材料自体の特性を制御して表面の反射率を下げる為には(材料自体の色を黒くする為には)自由電子の電磁場に対する応答性、即ち自由電子の密度及び移動度を低下させる必要がある。しかし、自由電子の密度及び移動度を低下させると、今度は電場をかけた際の電子の移動量(電流)が低下する結果、電気抵抗が増大する結果となるためである。別の言い方をすれば、材料の可視光線に対する反射率を下げると、これに伴ってkHz〜GHz帯域の電磁波に対する反射率も低下する傾向があるためである。また、これらの黒色メッキ液は、廃液中の重金属回収処理が必要になるという問題もある。
しかるに、本発明者らは、導電インキで形成されたパターンに対して黒化度と電磁波遮蔽性とが両立する黒化処理技術を見出した。すなわち、材料自体の色を黒色化するのではなく、材料表面の幾何学的微細構造を特定の形態にすることによって、kHz〜GHz帯域の電磁波に対する反射率(遮蔽性)を維持したまま、表面の可視光線反射率を低減化させることを見出し、これを利用したものである。具体的には、金属粒子とバインダー樹脂を含む該導電性パターン層の表面において金属粒子の一部がバインダー樹脂から露出しており、該金属粒子露出部分がその表面に溝状凹部及び微小突起を有する構造とすることである。
【0035】
導電性パターン層20は、図2(A)の断面図に模式的に示すように、表面において、金属粒子1の一部分がバインダー樹脂2から露出し、該金属粒子露出部分は、図2(B)の斜視図に示すように、その表面に溝状凹部1a及び微小突起1bを有する。該金属粒子露出部分における金属粒子1の露出割合は、該金属粒子表面の十分な黒化及び該金属粒子の導電性パターン層20からの脱落防止との兼ね合いから、該金属粒子の全体積の10〜60%、好ましくは20〜50%の範囲である。
また、かかる溝状凹部の形態は、好ましくは、該金属粒子露出部表面に溪谷状に走行する形態、分岐した形態、或いは溪谷状に走行し且つ分岐した形態を呈する。
この金属粒子露出部分の幾何学的な表面構造により、導電性パターン層表面の鏡面反射性が低下して該表面が暗色(黒色)を呈している。
金属粒子1の金属粒子径dmは0.1〜10μmであり、微小突起径dpは該金属粒子径よりも小さく、0.01〜0.1μmであって、1/1000≦dp/dm≧1/10の関係を有する。なお、粒子径dm、dpは、粒子が非球の場合、外接球の直径と定義する。
微小突起1bは、金属粒子1と独立した微粒子の付着、或いは金属粒子自体の突起のいずれであってもよい。また、微小突起1bは、金属粒子1と同材料、異材料のいずれであってもよい。また、微小突起1bの形状は、例えば、球、回転楕円体、多角形、或いは針状形状、乃至その一部分(半球等)である。
微小突起1bの突起数は、10〜1000個/1金属粒子露出部分であり、好ましくは、100〜1000個/1金属粒子露出部分である。
【0036】
導電性パターン層表面における、かかる金属粒子露出部分の表面構造は、次のようにしてつくりだすことができる。
複数の溝状凹部の構造は、金属粒子1が銀粒子の場合にできやすい。金属粒子を製造する際の条件を制御することによって、製造された多数の金属粒子の中からかかる溝状凹部のものを選別することによって、或いは両者を併用することによって、この様な溝状凹を有する金属粒子を得ることができる。
そして、金属粒子及びバインダー樹脂を含み、表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出している導電性パターン層が形成された導電部材を、例えば、テルルが溶解された塩酸水溶液、或いはBayer社から商品名NIGROSIN WLF(登録商標)で市販されているC.I. Acid Black2(C.I.No.50420)が溶解された塩酸水溶液などの金属黒化処理液に浸漬することにより、金属粒子露出部分に微小突起が形成され、水洗、乾燥を経て、本願で好ましい態様の黒化処理電磁波遮蔽材を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
〔反射防止層の準備〕
表面に易接着処理が施された幅1000mmで厚さ100μmの帯状ロール巻の2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製、A4300)からなる透明基材を給紙部にセットした巻取から繰り出し、該PETフィルムの易接着処理面上に、高屈折率層と低屈折率層を順次形成した反射防止フィルタを形成した。ここで、高屈折率層は、ジルコニア超微粒子を紫外線硬化性樹脂中に分散させた組成物(JSR(株)製、商品名「KZ7973」)を該PETフィルム上に塗工し、乾燥硬化せしめて、厚さ3μm、屈折率1.69の硬化物層とし、低屈折率層は、該高屈折率層上に、フッ素樹脂系の紫外線硬化性樹脂(JSR(株)製、商品名「TM086」)を塗工し、乾燥硬化せしめて、厚さ100nm、屈折率1.41の硬化物としてなる、反射防止層を準備した。
【0039】
〔コントラスト向上層の製造〕
厚さ188μmで連続帯状の透明2軸延伸PETフィルムから成る支持体としての透明基材の一方の表面に、液状のウレタンアクリレート系のプレポリマー及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体、及びベンゾフェノン系光開始剤の混合液とから成る液状紫外線硬化樹脂を硬化後の膜厚が155μmとなる様に塗布した。次に、ロール金型表面の面方向に沿って円周方向に直線状に連なり、その延長方向と直交する断面が、高さ150μm、版表面側底辺の長さが30μm、版から遠い側の底辺の長さが6μmの台形となる溝状凸部を、60μm周期で複数條互いに平行に配列した凸條群(暗色部と同形状且つ逆凹凸)を形成されたロール金型とPETフィルムとの間に、塗布した紫外線硬化樹脂を挟んだ状態で水銀灯からの紫外線を照射することにより、該紫外線硬化樹脂を架橋硬化せしめて透明樹脂層とし、しかる後ロール金型を離型することにより、該透明樹脂層表面に、該透明樹脂層表面の面方向に沿って一方向に直線状に連なり、その延長方向と直交する断面が、高さ150μm、透明樹脂層表面側底辺の長さが30μm、PETフィルム側の底辺の長さが6μmの台形となる凹條溝群を表面に有する透明樹脂層(レンズ部)を該透明基材の一方の面上に形成した。なお、凹條溝は暗色材料が充填されて遮光する機能を有するので、遮光溝ともいう。
次に、透明アクリル系の紫外線硬化性プレポリマー100質量部中に、最小粒径が2μmで最大粒径が3μmの黒い球状ビーズ状粒子50質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュア184、チバスペシャリティケミカルズ社製)2質量部を混合して黒色で液状の紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。この黒色液状組成物を透明樹脂層の遮光溝に塗工し、次いで該塗膜を鉄製ドクターブレードでスキージし該(凹條)遮光溝外の該黒色液状組成物のみを掻き取り除去し、該凹條溝内のみに該黒色液状組成物を充填して暗色部(光吸収部)を形成することで、コントラスト向上層(ミクロルーバ層)を完成した。
【0040】
〔電磁波遮蔽材の製造〕
先ず、透明基材として、表面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの帯状ロール巻の2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムを用いた。
供給部にセットしたPETフィルムを巻取から繰り出し、斜線版のグラビアリバースロールコート方式で、下記組成の紫外線硬化性樹脂組成物から成るプライマーを該PETフィルムの易接着処理面に厚み14μmにコーティングした。
(紫外線硬化性樹脂組成物の組成)
エポキシアクリレートプレポリマー:35質量部
ウレタンアクリレートプレポリマー:12質量部
フェノキシエチルアクリレートからなる単官能アクリレートモノマー:44質量部
エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能アクリレー トモノマー:9質量部
光重合開始剤 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ス ペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
導電性組成物として、下記組成の銀ペーストインキを用意した。
(導電性組成物(銀ペースト)の組成)
金属粒子(平均粒子径1μmの鱗片状銀粒子(播磨化成社製、商品名「SV300 0」)):93質量部
バインダー樹脂(熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂):7質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート):25質量部
なお、鱗片状銀粒子は、鱗片形状を有し、粒子径0.1〜3μmの範囲の粒子から成る平均粒子径1μmの銀粒子であり、その表面に複数の溝状凹部を有している。該粒子径は、顕微鏡観察した各粒子の外接球の直径として求めた。
【0041】
以下の如く導電部材を製造した。
凹版として、金属の中空円筒(中空鉄芯表面に銅層を被覆)の表面に、平面視形状が正方格子となるメッシュ状の版凹部パターンが形成された凹版ロールを用意した。該メッシュ状凹部は、線幅20μm、版深25μm、繰り返し周期(ピッチ)300μmで多数平行配列してなる凹溝群の2群を、互いに交差角度90度で交差させたパターンを該中空円筒表面の前面に刻設して成る。
充填容器に満たされた銀ペーストインキをピックアップロールにより版表面にコーティングし、余剰インキをドクターブレードにより掻き取った版面と、プライマー層が形成された透明基材(PETフィルム)のプライマー層側とをニップロールで圧着し、引続き高圧水銀灯を配置してなる紫外線照射ゾーン間を走行する間に、プライマー層の紫外線硬化樹脂を硬化させた。その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転移形成される。このようにして得られた転移フィルムを、120℃の乾燥ゾーンを通過させて銀ペーストの溶剤を蒸発させ、プライマー層上にメッシュパターンからなる導電性パターン層を形成し、導電部材を得た。
次いで、電気抵抗低減化処理として、導電部材を、気温80℃、相対湿度90%の雰囲気中で48時間放置した後、室温雰囲気(気温23℃、相対湿度50%)中に取り出した。
印刷された該導電性パターン層の厚み(メッシュ非形成部のプライマー層表面を基準にして測定)は23μmであり、版深と印刷厚みの比で計算した転移率は、(メッシュパターン厚み23μm/版深25μm)×100=92%であったが、実際には銀ペーストインキの転写後の流動、溶剤乾燥による体積收縮があるため、転写直後には、ほぼ100%に近い転移がなされていると推定される。
また、導電性パターン層表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−48000、日立ハイテクノロジーズ社製)による観察を行ったところ、全表面にわたって金属粒子の一部分がバインダー樹脂から該金属粒子が露出していた。各露出金属粒子は全体積のうちの10〜40%の範囲でバインダー樹脂層から露出していた。
且つ、導電性パターン層断面のSEM観察を行ったところ、該金属粒子の分布は、該導電性パターン層の頂部に行くほど密になり、逆にプライマー層側に行くほど粗になる様な粗密で分布していることが認められた。メッシュ線條部に直交する主切断面内において、単位断面積当たりの金属粒子の個数は、プライマー層と隣接する部分では、平均1個/μm2に対し、頂部近傍では平均3個/μm2であった。
また、電子顕微鏡観察により、該導電性パターン層の頂部の隣接金属粒子同士の間隔(距離)、及びプライマー層との界面近傍の隣接金属粒子同士の間隔を測定し、それぞれの平均を求めた結果、頂部の平均金属粒子間隔が0.5μm、プライマー層との界面近傍の平均金属粒子間隔は1.5μmであった。
また、得られた導電部材の導電性パターン層の表面抵抗率は0.45Ω/□であった。
【0042】
〔導電性パターン層表面の黒化処理〕
次に、金属黒化処理液として、二酸化テルル0.17重量%(テルル濃度として0.078重量%)、塩酸0.45重量%、硫酸34.3重量%の水溶液を用い、該金属黒化処理液に上記導電部材を処理温度25℃条件下、30秒間浸漬し、水洗して乾燥し、実施例1の電磁波遮蔽材を得た。
該電磁波遮蔽材の導電性パターン層の外観は銀色から黒く変色し、該電磁波遮蔽材の導電性パターン層側の面からの反射率は処理前と比較して5%低下した。反射率はJIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製、商品名)を用いて測定した。
また、導電性パターン層の表面抵抗値に変化は見られず、透過色度における色味変化も見られなかった。
また、SEMにより上記電磁波遮蔽材の導電性パターン層表面の観察を行ったところ、金属粒子露出部分がその表面に複数の溝状凹部と多数の平均10nm程度の微小突起(微粒子)を有する構造であることが確認された(図2(B))。更に、該黒化層に含まれる元素についてエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X−ray Fluorescence Spectrometer)(商品名:Genesis XM2、EDAX社製)を用いて分析を行ったところ、Cl元素とAg元素が確認された。
【0043】
〔PDP用前面フィルタの製造〕
上記で準備した、ロールにした帯状の反射防止層シートをロールから巻き出し、その一方の面にロールコータによってアクリル系粘着剤を乾燥時膜厚が25μmの厚さで塗布して接着剤層aを形成し、上記で製造した、同じくロールにした帯状のコントラスト向上層シートをロールから巻き出して、前記帯状の反射防止層シートとともに1対の加圧ロール間を通すことによって反射防止層シートの接着剤塗布面に反射防止層シートの透明基材側がコントラスト向上シートの透明樹脂層及び暗色部側と対向する向きで貼り合わせた。反射防止層(光学フィルタA)シートとコントラスト向上層(光学フィルタB)シートの積層体の光学フィルタB側の面に前記と同じアクリル系接着剤を25μmの厚さで塗布して接着剤層bを形成し、巻取から巻き出した帯状の離型シートを光学フィルタBの接着剤塗布面に1対の加圧ロール間を通すことによって貼り合わせ、ロールに巻き取った。かくして、光学フィルタA、光学フィルタBおよび離型シートが接着剤層を介してロール・トゥ・ロールで積層された帯状積層体が得られた。
【0044】
得られた光学フィルタA、光学フィルタBおよび離型シートの帯状積層体は、ロールから巻き出して、光学フィルタA側から刃を押し入れて、各光学フィルタ及び各接着剤層の切断端面が一致するように平面視形状が長方形の枚葉(1画面分)に裁断した。裁断には炭素鋼からなる刃を長方形の輪郭形状に沿って配置して固定した抜き型を使用し、油圧機構で該抜き型を駆動して、押圧して、刃を押し入れた。粘着剤層端部に離型シートの切断端部が食い込むということがなかった。離型シートが容易に剥離できた。
【0045】
こうして得られた光学フィルタの枚葉積層体の離型シートを剥がして(離型シートは容易に剥離できた)光学機能シートを得た。この光学機能シートの露出した接着剤面を上記で製造した、帯状の黒化処理電磁波遮蔽材をロールから繰り出し、その導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域として露出状態で存在するように位置合わせして積層し、電磁波遮蔽材の接地領域部の中央で裁断した。
かくして、光学フィルタA、接着剤層a、光学フィルタB、接着剤層bの端部が一致した積層体が、黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域を接地領域として露出させた状態で積層された、図1(B)の断面図の如きPDP用前面フィルタが得られた。
このPDP用前面フィルタは、接地領域の幅が設計値(5mm)どおりに確保され、また切断端部での接着剤層の露出もなく、且つ外光反射防止性は良好であった。
【0046】
(比較例1)
実施例1で製造した反射防止層(光学フィルタA)、コントラスト向上層(光学フィルタB)を光学フィルタAが光学フィルタBよりも長さ、幅とも2mmずつ小さいサイズでそれぞれ枚葉に裁断した。これらの枚葉を実施例1と同樣のアクリル系粘着剤を介して積層することで、光学フィルタAの外輪郭全周が光学フィルタBよりも内側に位置する、即ち光学フィルタAが光学フィルタBよりも突出しない枚葉積層体を得た(光学フィルタA、光学フィルタBの側端は面一ではない)。
この枚葉積層体をその外輪郭よりも4mm内側の位置に沿って裁断することによって、所定寸法(1画面分)となるように裁断し、実施例1と同樣のアクリル系粘着剤を介して、実施例1の黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域を接地領域として露出させた状態で積層した。
すなわち、実施例1に比して、光学フィルタ枚葉積層体を裁断する工程が増えている。また、枚葉積層体の周囲4mm幅の分が廃棄されて無駄となった。
【0047】
(比較例2)
実施例1で製造した反射防止層(光学フィルタA)、コントラスト向上層(光学フィルタB)を同一サイズ(且つ1画面分のサイズ)で枚葉に裁断した。それぞれの一面に実施例1と同樣の粘着剤層を形成し、光学フィルタAと光学フィルタBを積層し、これを黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域を接地領域として露出させた状態で積層した。
しかしながら、光学フィルタAと光学フィルタBの貼り合わせ位置が面内で最大2mmズレ、光学フィルタAの突出部が電磁波遮蔽材の接地領域(アースがとれる領域)を減少させる結果となった。また、光学フィルタAの突出部の接着剤層が露出しているので、塵埃の付着等の問題がある。
【0048】
(比較例3)
黒化処理しない電磁波遮蔽材を用いた他は、実施例1と同様にしてPDP用前面フィルタを得た。しかしながら、導電性パターン層表面近傍の銀粒子が外光を反射して、画像明暗コントラストが低下し、画像の白化がみられた。
【符号の説明】
【0049】
1 金属粒子
1a 溝状凹部
1b 微小突起(微粒子)
2 バインダー樹脂
10 透明基材
20 導電性パターン層
30 電磁波遮蔽材
31 接地領域
40 光学フィルタA
50 接着剤層a
60 光学フィルタB
70 接着剤層b
80 離型シート
100 PDP用前面フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状シートの形態からなる、複数の光学フィルタおよび離型シートを接着剤層を介して、巻取から帯状シートを巻き出して供給し、積層し、その後、再び巻取に巻き取る加工方式を適用して積層し、最外面のうちの一方の面に前記複数の光学フィルタのいずれか1つが位置し、他方の面に前記離型シートが位置し、且つ各構成層の層間には前記接着剤層が位置するような積層形態の帯状積層体を得る工程、
該積層体の一方の面の光学フィルタ側から刃を入れて、各光学フィルタ、各接着剤層及び離型シートの切断端面が一致するように枚葉に裁断する工程、
この枚葉積層体から離型シートを剥がしたものを、黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層上に該電磁波遮蔽材の周縁領域が接地領域として露出状態で存在するように積層する工程を順次行なう、
ことを特徴とするPDP用前面フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記黒化処理電磁波遮蔽材の導電性パターン層が、金属粒子とバインダー樹脂を含み、該導電性パターン層の表面において金属粒子の一部分がバインダー樹脂から露出しており、該金属粒子露出部分がその表面に溝状凹部及び微小突起を有するものである請求項1に記載のPDP用前面フィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により得られたPDP用前面フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−53234(P2012−53234A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195098(P2010−195098)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】