説明

PGEシンターゼおよびその活性をモジュレートする方法及び手段

【課題】コーディング核酸から提供された、単離されたPGEシンターゼの提供。
【解決手段】コーディング核酸から提供された、単離されたPGEシンターゼ、及びその製造および使用する方法。PGEシンターゼ活性のモジュレーター、特にインヒビターについてのアッセイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PGEシンターゼ活性をモジュレートすることに関する。特に、本発明は、PGEシンターゼおよびそれをコードするDNAの同定、PGEシンターゼ活性をモジュレートする、特に阻害することができる物質についてのアッセイに基づく。PGEは炎症(熱および疼痛を含む症状)を生成することが知られている効力のある化合物であり、そしてその産生の阻害は炎症、関節炎、癌、アルツハイマー病の治療、アポトーシスのモジュレート、および疼痛の治療において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンエンドペルオキシドH2(PGH2)は、シクロオキシゲナーゼ(cox)−1または−2の作用によりアラキドン酸から生成される。cox−1は多数の細胞および組織、例えば、血小板、内皮、胃および腎臓において構成的に発現されるが、cox−2タンパク質は炎症部位において炎症前サイトカイン、例えば、インターロイキン−1βにより誘導されることができる。
【0003】
coxに関する最近の概観については、下記の文献を参照のこと:Smith、W.(1997)Avances in Experimental Medicine & Biology 400B、989−1011;Herschmann、H. R.(1996)Biochimica et Biophysica Acta 1299、125−40;Dubois、R. 他(1988)Faseb J. 12、1063−1073。シクロオキシゲナーゼの下流において、それらの生成物PGH2はさらに種々の生理学的に重要なエイコサノイド、例えば、PGF、PGE2、PGD2、PGI2(プロスタサイクリン)およびトロンボキサン(TX)A2に代謝されることができる(Smith、W. L.(1992)Am. J. Physiol. 263、F181−F191)。
【0004】
ヒツジ小胞性腺によりPGE1およびPGFの生合成についてのメカニズム(アラキドン酸の代わりにジホモ−γ−リノレン酸を使用して生成される)(Hamberg、M.およびSamuelsson、N.(1967)J. Biol. Chem. 242、5336−5343)は、環状エンドペルオキシド(Samuelsson、B.(1965)J. Am. Chem. Soc. 87、3011−3013)(後にPGH2と表示された)を介して進行すると仮定された(Hamberg、M.およびSamulesson、B.(1973)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70、899−903;Hamberg、M. 他(1974)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 71、345−349;Nugteren、D. H.およびHazelhof、E.(1973)Biochim. Biophys. Acta 326、448−461)。
【0005】
簡単に述べると、シクロオキシゲナーゼにより触媒される反応はアラキドン酸からの13−プロ−S水素原子の立体特異的吸収を包含する。これは下記の反応に導く:炭素ラジカルの形成、この炭素ラジカルは位置C−11における分子状酸素により捕捉される;9,11−エンドペルオキシドの生成;位置C−8とC−12との間におけるトランス脂肪族側鎖との結合;C−15へのラジカル再配置および酸素の第2分子との反応。次の工程において、C−15における生ずるペルオキシ基をヒトロペルオキシ基に還元し、PGG2を生成する。このヒトロペルオキシ基を引き続いてシクロオキシゲナーゼのペルオキシダーゼ活性により還元して(還元剤、例えば、グルタチオンの存在において)こうしてPGH2を生成することができる。
【0006】
PGH2のPGE2への異性化に関係する1またはそれ以上の酵素はよく知られていない。ヒツジおよびウシの精嚢、すなわち、高いPGEシンターゼ活性を含有することが知られている器官、からミクロソームPGEシンターゼを精製する試みがなされた(Ogino、N. 他(1977)Journal of Biological Chemistry 252、890−5;Moonen、P. 他(1982)Methods in Enzymology 86、84−91)。これらの研究において、ミクロソームPGEシンターゼを可溶化し、部分的に精製できることが示された。酵素活性は、また、グルタチオンに依存したが、精製過程の間に急速に不活性化された。
【0007】
ヒツジ精嚢から部分的に精製されたPGEシンターゼに対して発生させたIGG1(hei−7)およびIGG1(hei−26)と表示する2つのモノクローナル抗体は、ヒツジ精嚢からの、それぞれ、17.5および180kDaの分子量を有する2つのタンパク質を免疫沈降させることができた(Tanaka、Y. 他(1987)J. Biol. Chem. 262、1374−1381)。両方のこれらの沈降したタンパク質はグルタチオン依存性PGEシンターゼ活性を有するが、グルタチオンS−トランスフェラーゼ活性をもたないことが見出された。興味深いことには、IGG1(hei−7)抗体は、また、シクロオキシゲナーゼの共沈を引き起こし、17.5kDaのタンパク質およびcoxタンパク質はミクロソーム膜の同一側に存在することが証明された。
【0008】
17.5kDaのタンパク質はPGH2について40μMのKmを示し、これはミクロソームPGEシンターゼを研究する他の研究者らが記載した値に類似した(Moonen、P. 他(1982)Methods in Enzymology 86、84−91)。対照的に、より大きいタンパク質はPGH2について150μMのKmを示した。細胞質ゾルのグルタチオンS−トランスフェラーゼのスーパーファミリーに属する、追加のタンパク質は、また、PGE、PGDおよびPGFシンターゼ活性を有することが記載された(Urade、Y. 他(1995)J. Lipid Med. 12、257−273)。最近、グルタチオン依存性PGFシンターゼ活性を有するヒツジ精嚢からミクロソームの16.5kDaタンパク質が精製された(Burgess、J. R.およびReddy、C. C.(1997)Biochem. & Mol. Biol. Int. 41、217−226)。
【0009】
酵素(プロスタグランジンエンドペルオキシドレダクターゼ)は、また、クメンヒドロペルオキシドの還元を触媒することができたが、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(種々のグルタチオンS−トランスフェラーゼの典型的な基質)は基質ではなかった。また、ミクロソームのPGEシンターゼ活性は種々のラット器官において測定され(Watanabe、K. 他(1997)Biochemical & Biophysical Research Commnunications 235、148−52)そして高いグルタチオン依存性活性が精管、生殖補助器官および腎臓において見出された。グルタチオン独立性ミクロソームPGEシンターゼ活性は心臓、脾臓および子宮において観測された。
【0010】
したがって、PGE生合成に関係する酵素は、種々の炎症性疾患を治療する薬剤を開発するための新規なターゲットを提供する。しかしながら、前述の論考から明らかなように、従来、純粋なPGEシンターゼ、およびそれを提供する手段を得ることにおいて誰も成功しなかった。
オックスフォード・バイオメディカル(Oxford Biomedical)は、ヒツジPGEシンターゼの部分的に精製された調製物を販売している(カタログNo. PE 02)。その調製物を分析すると、それはむしろ粗製であり、多数の成分の混合物を含むことが示される。
【0011】
PGEシンターゼの精製における特定の困難は、そのタンパク質が膜タンパク質であり、一般に均質に精製することが非常に困難であるという事実、およびその酵素活性が可溶化後に非常に不安定であるという事実である。また、本明細書に記載する研究において、そのタンパク質は非常に高い酵素活性を有することが証明され、タンパク質の量が細胞内で非常に低く、精製を困難とすることが示された。
【0012】
Urade他(1995)J. Lipid Med. 12、257−273には、「PGEシンターゼの性質についてほどんど知られていない」と記載されている。なおより最近、William Smith、″Molecular Biology of Prostanoid Biosynthetic Enzymes and Receptors″、Advances in Experimental Medicine & Biology、400B:989−1011、1997、には、「PGEシンターゼの物語は混乱させるものであった」ことが記載されており、PGE生成が独特のタンパク質に起因しなかったことが指摘されている。
【0013】
後述する本発明者らの研究は、ヒトPGEシンターゼがエイコサノイドおよびグルタチオンの代謝に関係する膜関連14〜18kDaのタンパク質から成るタンパク質のスーパーファミリーの1メンバーであることを証明する。PGEシンターゼは、アミノ酸配列レベルでミクロソームのグルタチオンS−トランスフェラーゼ1と38%の同一性を示す。ヒトcDNAならびに予測されたアミノ酸配列は、1997年に公衆用データベースにMGST1−L1(GenBank受け入れ番号AF027740)ならびにp53誘導PIG12(GenBank受け入れ番号AF010316)の名称で受託された。従来、これらのcDNA配列に対して機能は帰属されてきていない。
【0014】
Poluyak他(1997)Nature 389:300−305は、発現がP53によりアップレギュレートされる配列をクローニングすることによって、彼らが「PIG12」と呼ぶものを同定した。彼らは「PIG12は遺伝子のミクロソームのグルタチオンS−トランスフェラーゼの新規なメンバーである」と述べているが、実際の機能を同定していない。彼らのPIG12が実際にヒトPGEシンターゼであったという示唆は確かに存在しない。
【0015】
要約すると、試みられたコーディング配列のクローニングの潜在的開始点をアミノ酸配列決定により提供できる形態および量において、PGEシンターゼは従来提供されてきていない。さらに、本発明者らが今回PGEシンターゼをコードすると証明したデータベース上の配列が、実際にPGEシンターゼをコードするという示唆は存在しなかった。
【発明の概要】
【0016】
本発明者らの研究に照らして、本発明は、種々の関係において、特にPGEシンターゼ活性をモジュレート、ことに阻害、できる物質をアッセイおよびスクリーニングする方法において、精製されたPGEシンターゼを種々の面において使用することを提供する。精製されたPGEシンターゼは、エンコーディング核酸からの組換え発現によりつくることができる。それは真核生物または原核生物の発現系において発現させることができ、そして自然グルコシル化を欠如することができる。PGEシンターゼのモジュレーターとして同定された物質は、炎症、関節炎、癌または他の細胞増殖異常性、アルツハイマー病の抑制または治療において、アポトーシスのモジュレートにおいて、そして疼痛の治療において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、PGH2とのインキュベーション後に生成した生成物の逆相HPLCクロマトグラムの結果を示す(時間(分)に対して計数/分(CPM)をプロットした)。 図1のAは、停止溶液と混合したPGEシンターゼ膜画分を使用して得られた結果を示す。 図1のBは、緩衝液を使用して得られた結果を示す。 図1のCは、PGEシンターゼ膜画分を使用して得られた結果を示す。BおよびCは、停止溶液の添加前に2分間インキュベートした。生成物を放射性検出により検出した。最初の20分は、水、アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(70:30:0.007、体積)を移動相として1ml/分の流速で使用する無勾配溶離を表す。次いで、直線の勾配を100%の移動相から100%のメタノールに10分にわたって適用し、これを実験の残部について持続した。
【図2】図2は、膜タンパク質濃度に対するPGH2生成の依存性を図解し、PGH2の量(pmol)をmg/mlのタンパク質に対してプロットした。
【図3】図3は、PGH2生成についての時間経過を示し、PGH2の量(pmol)を時間(分)に対してプロットした。充填円はグルタチオンとインキュベートしたPGEシンターゼである;白抜き円はグルタチオンを含まないPGEシンターゼである;充填三角形はグルタチオンを含む緩衝液である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記の略号を本明細書において使用する:
PGG1、プロスタグランジンG1:15(S)−ヒドロペルオキシ−9α,11α−ペルオキシドプロスタ−13−エン酸;
PGG2、プロスタグランジンG2:15(S)−ヒドロペルオキシ−9α,11α−ペルオキシドプロスタ−5−シス−13−トランス−ジエン酸;
PGG3、プロスタグランジンG3:15(S)−ヒドロペルオキシ−9α,11α−ペルオキシドプロスタ−5,13,17−トリエン酸;
PGH1、プロスタグランジンH1:15(S)−ヒドロキシ−9α,11α−ペルオキシドプロスタ−13−エン酸;
PGH2、プロスタグランジンH2:15(S)−ヒドロキシ−9α,11α−ペルオキシドプロスタ−5−シス−13−トランス−ジエン酸;
【0019】
PGH3、プロスタグランジンH3:15(S)−ヒドロキシ−9α,11α−ペルオキシドプロスタ−5,13,17−トリエン酸;
PGE2、プロスタグランジンE2:11α,15(S)−ジヒドロキシ−9−ケトプロスタ−5−シス−13−トランス−ジエン酸;
PGF、プロスタグランジンF:9α,11α,15(S)−トリヒドロキシプロスタ−5−シス−13−トランス−ジエン酸;
PGD2、プロスタグランジンD2:9α,15(S)−ジヒドロキシ−11−ケトプロスタ−5−シス−13−トランス−ジエン酸;
PG12、プロスタサイクリン:6,9α−エポキシ−11α,15(S)−ジヒドロキシプロスタ−5−シス−13−トランス−ジエン酸;
【0020】
TXA2、トロンボキサンA2:9α,11α,−エポキシ−15(S)−ジヒドロキシトロンバ−シス−13−トランス−ジエン酸;
12−HHT:12(S)−ヒドロキシ−8,10−トランス−5−シス−ヘプタデカトリエン酸;PGEシンターゼ:プロスタグランジンHシンターゼ;
RP−HPLC:逆相高性能液体クロマトグラフィー;
LT:ロイコトリエン;
LTA4、ロイコトリエンA4:5(S)−トランス−5,6−オキシド−7,9−トランス−11,14−シス−エイコサテトラエン酸;
【0021】
LTC4、ロイコトリエンC4:5(S)−ヒドロキシ−6(R)−S−グルタチオニル−7,9−トランス−11,14−シス−エイコサ−テトラエン酸;
FLAP:5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質;
MGST:ミクロソームのグルタチオンS−トランスフェラーゼ;
NSAID:非ステロイド抗炎症性薬剤。
【0022】
本発明は、純粋なPGEシンターゼを提供する。本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を包含する。
本発明の単離されたポリペプチドは、細胞の中に一緒に見出されるような他のポリペプチドと自然にアソシエートした物質を含まないまたは実質的に含まない、単離された形態として本発明において定義されるものである。もちろん、ポリペプチドは希釈剤またはアジュバントとともに処方することができ、なお実際的目的で単離することができる−例えば、ポリペプチドは、通常、イムノアッセイにおいて使用するためのマイクロタイタープレートを被覆するために使用する場合、ゼラチンまたは他の担体と混合されるであろう。
【0023】
ポリペプチドは、自然にまたは異種真核細胞の系により、グルコシル化するか、あるいはグルコシル化されないことができる(例えば、原核細胞における発現により産生される場合)。用語「自然のグルコシル化を欠如する」は、グルコシル化をもたない(例えば、原核細胞における産生後)か、あるいは自然のパターンでないグルコシル化のパターン、例えば、特定の宿主細胞型(これはCHO細胞であることができる)における発現により付与されたパターンを有するポリペプチドに関して使用することができる。
【0024】
本発明のポリペプチドは、例えば、細胞からのポリペプチドの分泌を促進するためにシグナル配列を付加するか、あるいはポリペプチドの精製を促進するためにヒスチジン残基を付加することによって、修飾することができる。組換えタンパク質のN末端またはC末端に(例えば)6つのヒスチジン結果を組込んだ、融合タンパク質を発生させることができる。このようなヒスチジンタグは、金属イオン、ニッケルまたはコバルトを含有する商業的に入手可能なカラム(Clontech、米国カリフォルニア州パロアルト)を使用することによって、タンパク質の精製に使用することができる。これらのタグは、また、商業的に入手可能な6つのヒスチジン残基に対して向けられたモノクローナル抗体(Clontech、米国カリフォルニア州パロアルト)を使用するタンパク質の検出に有用である。
【0025】
また、アミノ酸配列の変異型、対立遺伝子、誘導体または突然変異体であるポリペプチド、例えば、配列番号2に対して少なくとも70%の配列の同一性、例えば、少なくとも80%、90%、95%、98%または99%の配列の同一性を有するポリペプチドは本発明により提供される。アミノ酸配列の変異型、対立遺伝子、誘導体または突然変異体は、1またはそれ以上(例えば、1〜20、例えば、2、3、4、または5〜10)のアミノ酸の付加、置換、欠失および挿入の1またはそれ以上により配列番号2に記載するものと異なるアミノ酸配列を有することができる。
【0026】
配列番号2のアミノ酸配列は、配列番号1のヒトヌクレオチド配列によりコードされる。本発明のポリペプチドは、ヒト配列の対立遺伝子によりコードされるもの、他の哺乳動物、特に霊長類の相同体、ならびに下にさらに説明するこのようなポリペプチドのフラグメントを包含する。PGEシンターゼタンパク質の一次配列は、配列番号2のそれに実質的に類似し、そして当業者に入手可能な日常的技術により決定することができる。本質的に、このような技術は、プローブとして配列番号1に由来するポリヌクレオチドを使用して、他の種におけるPGEシンターゼ遺伝子の配列を回収し、決定することを包含する。
【0027】
このために広範な種類の技術、例えば、適当なmRNA源を使用して遺伝子のPCR増幅およびクローニング、または哺乳動物からのcDNAライブラリー、例えば、前述の源の1つのからのcDNAライブラリーを獲得し、このライブラリーを本発明のポリヌクレオチドでストリンジェント条件下にプロービングし、そしてその哺乳動物のPGEシンターゼタンパク質のすべてまたは一部分をコードするcDNAを回収することを包含する方法である。部分的cDNAが得られる場合、全長のコード配列はプライマー伸長技術により決定することができる。
【0028】
ポリペプチドの「活性部分」は、前記全長のポリペプチドより小さいが、その本質的に生物学的活性を保持するペプチドを意味する。特に、活性部分はグルタチオンの存在においてPGHからのPGEの合成を触媒する能力を保持する。
【0029】
こうして適当な活性部分は、配列番号2の中央セグメント、例えば、残基約30〜130を含む。PGEシンターゼタンパク質の関係する触媒領域は、MGST1およびLTC4シンターゼとの類似性に基づいて中央セグメントに存在することが期待される:機能を喪失させないでアミノ酸1〜41をタンパク質分解によりMGST1から除去することができる(Andersson他(1994)Biochim. Biophys. Acta 1204:298−304);タンパク質の機能を変更しないでLTC4シンターゼとFLAPとの間でC末端のセグメントを交換することができる(Lam他(1997)J. Biol. Chem. 272:13923−13928)。
【0030】
本発明の1つの活性部分は、配列番号2のアミノ酸30〜152を含むか、あるいはそれらのアミノ酸から成る。他の活性部分は、配列番号2のアミノ酸1〜130を含むか、あるいはそれらのアミノ酸から成る。なお他の活性部分は、配列番号2のアミノ酸30〜130を含むか、あるいはそれらのアミノ酸から成る。
本発明は、本発明において提供されるPGEシンターゼの活性部分を含むポリペプチドを包含し、前記ポリペプチドは異種アミノ酸、例えば、他のタンパク質の同定可能な配列またはドメイン、またはヒスチジンタグまたは他のタグ配列を含むことができ、そして本発明はPGEシンターゼの活性部分から本質的に成るポリペプチドを包含する。
【0031】
本発明によるポリペプチドは、例えば、コードする核酸からの発現による産生後、単離および/または精製(例えば、抗体を使用して)することができる。本発明によるポリペプチドは、また、化学的合成により、例えば、段階的方法において、完全にまたは部分的に発生させることができる。単離および/または精製されたポリペプチドは、少なくとも1つの追加の成分、例えば、希釈剤を含むことができる、組成物の処方において使用することができる。
【0032】
本発明によるポリペプチドは、その活性または機能に影響を与えるか、あるいはモジュレートする分子についてのスクリーニングにおいて使用することができる。このような分子は、療法(予防を包含することができる)の関係において有効であることがある。これは下記において詳細に説明する。
本発明のポリペプチドは顕現標識で標識化することができる。顕現標識は、ポリペプチドを検出可能とする、任意の適当な標識であることができる。適当な標識は、放射性同位体、例えば、125I、酵素、抗体、ポリヌクレオチドおよびリンカー、例えば、ビオチンを包含する。
【0033】
前述したように、本発明のポリペプチドを産生する好ましい方法は、適当な発現系においてコードする核酸を使用してポリペプチドを組換え的に産生することである。それ以上の面において、本発明は、PGEシンターゼの産生においてPGEシンターゼをコードする核酸を使用することを提供する。
本発明の核酸は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび配列番号2に対して少なくとも70%の配列の同一性を有するポリペプチドをコードする配列を含む核酸を包含する。好ましくは、いずれの場合においても配列の同一性の程度は、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、95%、98%または99%である。
【0034】
本発明において有用な核酸は、さらに、配列番号1の核酸配列またはその補体に対して少なくとも70%の相同性、より好ましくは少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、95%、98%または99%の配列の相同性を有する配列を含む核酸配列を包含する。
本発明の核酸は配列番号2のアミノ酸配列をコードすることができ、この場合においてそれは、遺伝暗号の縮重により許容されるように、配列番号1および異なるヌクレオチド配列を含むか、あるいは配列番号2と異なるアミノ酸配列を有する、PGEシンターゼ活性をもつポリペプチドを含むことができる。
【0035】
本発明の1つの面を配列番号1またはその補体と少なくとも特定した%の相同性を有する核酸により表わす場合、配列番号1の実際の配列またはその補体を排除することができる。種々の態様において、本発明は、ポリペプチドPGEシンターゼ活性、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその対立遺伝子変異型をコードする天然に存在しない核酸、またはその天然に存在しないポリペプチドの突然変異体、変異型または誘導体を提供する。
【0036】
PGEシンターゼ遺伝子のすべてまたは一部分をコードする核酸配列は、本明細書に記載されている情報および参考文献およびこの分野において知られている技術を使用して容易に製造することができる(例えば、下記の文献を参照のこと:Sambrook、FritschおよびManiatis、″Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989、およびAusubel他、Short Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、1992)。これらの技術下記のものを包含する:
【0037】
(i)このような核酸の試料、例えば、ゲノム源からの試料を増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用すること、
(ii)化学的プロセス、または
(iii)cDNA配列の調製。
本明細書に記載する野生型配列を、例えば、部位特異的突然変異誘発により、修飾して、修飾されたポリペプチドを発現させるか、あるいは核酸を発現させるために使用する宿主細胞においてコドンの採択を考慮することができる。
【0038】
一般に、プライマーとして使用する短い配列は合成手段により製造される。合成手段は、一度に1つのヌクレオチドの、所望の核酸配列の段階的製造を包含する。自動化技術を使用してこれを達成する技術は、この分野において容易に入手可能である。
【0039】
より大きいポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を使用して製造される。これは下記の工程を包含する:mRNAの領域またはクローニングしようとするmRNAをコードするゲノム配列に対する本発明において提供される配列の情報に基づいてプライマー(例えば、約15〜20ヌクレオチド)の対をつくり、プライマーを哺乳動物細胞(これは、例えば、ヒト細胞系統A549、上皮細胞、骨肉腫由来細胞系統、骨芽細胞、ヒト白血球、繊維芽細胞、内皮細胞、生殖系の細胞、糸球体間質細胞および他の腎細胞)から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域を増幅させる条件下にポリメラーゼ連鎖反応を実行し、増幅されたフラグメント(例えば、アガロースゲル上で反応混合物を精製する)そして増幅されたDNAを回収する。増幅されたDNAを適当なクローニングベクターの中にクローニングすることができるように、適当な制限酵素認識部位を含有するように、プライマーを設計することができる。
【0040】
このような技術を使用して、本明細書に記載する配列のすべてまたは一部分を得ることができる。また、類似する方法において、哺乳動物、例えば、ヒト細胞、例えば、一次細胞、例えば、肝臓細胞、組織培養細胞またはライブラリー、例えば、ファージ、コスミド、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)またはPAC(P1/P2ファージ人工染色体)ライブラリーからのゲノムDNAを使用して出発して、PGEシンターゼ遺伝子およびそのイントロンおよびプロモーター領域を含有するゲノムクローンを得ることができる。
【0041】
本発明の配列に対して100%相同的ではないが、本発明の範囲内に入るポリヌクレオチドは、多数の方法により得ることができる。
本明細書に記載するPGEシンターゼ遺伝子の他のヒト変異型(例えば、対立遺伝子型)は、例えば、ヒト組織からのcDNAまたはゲノムDNAライブラリーをプロービングすることによって得ることができる。
【0042】
さらに、遺伝子の他の動物、特に哺乳動物(例えば、マウス、ラットまたはウサギ、ヒツジ、ヤギ、雌牛、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、または霊長類)の相同体を得ることができる。このような配列は次のようにして得ることができる:分裂する細胞または組織から作られたcDNAライブラリーまたは他の動物種からゲノムDNAライブラリーをつくるか、または獲得し、中程度または高いストリンジェンシイ条件(例えば、固体支持体(フィルター)上のハイブリダイゼーションのために、50%のホルムアミド、5×SSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストランおよび20μg/mlのサケ精子DNAを含有する溶液中で42℃において一夜のインキュベーション、次いで0.03Mの塩化ナトリウムおよび0.03Mのクエン酸ナトリウム(すなわち、0.2×SSC)中で約50℃〜約60℃における洗浄)下に核酸のすべてまたは一部分を含むプローブで、このようなライブラリーをプロービングする。
【0043】
こうして、本発明は、前述のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下に配列番号1に記載するヌクレオチド配列に対してハイブリダイゼーションする、単離された核酸を使用することができる。このような核酸は、例えば、サザンブロットまたは中期拡大において、PGEシンターゼ遺伝子を検出するプローブとして使用するために適当である。
【0044】
あるいは、このようなポリヌクレオチドは、配列番号1の配列またはその対立遺伝子変異型の部位特異的突然変異誘発により得ることができる。これは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現されている特定の宿主細胞について、コドン採択を最適にするために、サイレントコドン変化を配列に対して必要とする場合、有用であることがある。制限酵素認識部位を導入するために、あるいはポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの性質または機能を変更するために、他の配列変化を必要とすることがある。例えば、保存的置換を行うために要求される、特定のコード変化を表すために、それ以上の変化が望ましいことがある。
【0045】
クローニングの関係において、1またはそれ以上の遺伝子フラグメントを結合して全長のコード配列を発生させることが必要であることがある。また、全長のコードする核酸分子が得られていない場合、完全な分子の一部分を表す小さい分子を使用して全長のクローンを得ることができる。部分的cDNAクローンからインサートを調製し、cDNAライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。
【0046】
単離された全長のクローンを発現ベクターの中にサブクローニングし、そして、例えば、リポータープラスミドを使用して、適当な宿主細胞の中にトランスフェクトすることによって、活性をアッセイすることができる。好ましくは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供できる制御配列に、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドを作用可能に連鎖する、すなわち、ベクターは発現ベクターである。用語「作用可能に連鎖」は、記載する成分が意図する方法で機能できる関係にある、並列位置を意味する。コード配列の発現が制御配列とコンパティブルである条件下に達成されるような方法において、コード配列に「作用可能に連鎖された」制御配列を結合する。
【0047】
適当な調節配列、例えば、プロモーター配列、ターミネーターフラグメント、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適当ならば他の配列を含有する、適当なベクターを選択するか、あるいは構築することができる。ベクターは、適当ならば、プラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、ファージミドまたはバキュロウイルス、コスミド、YAC、BAC、またはPACであることができる。
【0048】
ベクターは、複製起点、必要に応じて前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターおよび必要に応じてプロモーターのレギュレーターを有することができる。ベクターは、1またはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合においてアンピシリン耐性遺伝子または哺乳動物ベクターのためのネオマイシン耐性遺伝子を含有することができる。ベクターはin vitroにおいて、例えば、RNAの調製のために使用することができるか、あるいは宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために使用することができる。
【0049】
ベクターは、また、in vivoにおいて、例えば、遺伝子療法において使用するように適合させることができる。種々の異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングしかつ発現させる系はよく知られている。適当な宿主細胞は、細菌、真核細胞、例えば、哺乳動物および酵母、およびバキュロウイルス系を包含する。異種ポリペプチドの発現のためのこの分野において入手可能な哺乳動物細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベイビーハムスター腎細胞、COS細胞およびその他を包含する。
【0050】
それ以上の詳細については、例えば、下記の文献を参照のこと:Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Sambrook他、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞の中へのDNAの導入および遺伝子発現、およびタンパク質の分析において、核酸を操作する、多数の既知の技術およびプロトコルは、下記の文献詳細に記載されている:Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel他、編、John Wiley & Sons、1992。
【0051】
ベクターを前述したように適当な宿主細胞の中に形質転換して、本発明のポリペプチドを発現させることができる。こうして、それ以上の面において、本発明は、本発明によるポリペプチドを製造する方法を提供する。この方法は、ポリペプチドをコードするコード配列のベクターによる発現を可能とする条件下に、前述したように形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、そして発現されたポリペプチドを回収する。
【0052】
本発明のポリペプチドの製造後、それをPGEシンターゼ活性について試験することができる。これは、例えば、ポリペプチドをPGH2および還元されたグルタチオンとインキュベートして、PGE産生を測定することによって達成することができる。PGEは存在量の定量を可能とする逆相高性能液体クロマトグラフィー(R−P HPLC)により検出することができる。
【0053】
単離された/純粋なPGEシンターゼは種々の関係において使用することができる。
炎症および医学的意味の他の関係においてPGEは重要であるので、本発明の重要な面は、特にPGEシンターゼ活性をモジュレートすることによって、PGE産生に影響を与えることができる物質を同定することに関する。PGEシンターゼ活性を阻害してPGE産生レベルを低下させることは、最も重要である。
【0054】
PGEはin vivoおよびin vitroの両方において疼痛を引き起こすことがよく知られている(Bley他(1998)Trends in Pharmacological Sciences 19、141−147)。プロスタグランジンEレセプター(EP3)は、また、機能的熱応答についてきわめて重要であることが証明された(Ushikubi他(1998)Nature 395:281−284)。
【0055】
炎症および炎症性疾患、例えば、関節炎におけるプロスタグランジンの役割は、また、種々のシクロオキシゲナーゼインヒビターの使用を通して文献によく記載されてきている(非ステロイド抗炎症薬剤、NSAID、例えば、アスピリン(Vane & Botting(1998)American J. of Med. 104(3A);2S−8S)。これに関して、PGEは最も効力のある前炎症性プロスタグランジンとして認識されており(Moncada他(1973)Nature 246:217−9)これは現在使用されているNSAIDと比較して副作用を少なくして、PGEシンターゼの阻害によりこの化合物を特異的に除去して炎症反応を抑制することができる。
【0056】
いくつかの報告は結腸直腸癌に対するNSAIDの有意な抗腫瘍作用を証明した(Giovannucci他(1994)Annals of Internal Medicine 121:241−6;Giardiello他(1995)Europiean Journal of Cancer 31A:1071;Williams他(1997)Journal of Clinical Investigation 100:1325−9)。PGEは癌細胞の増殖を促進し(Qiao他(1995)Biochimica et Biophysica Acta 1258:215−23)ならびにプログラミングされた細胞死を阻害し(Ottonello他(1998)Experimental Hematology 26:895−902;Goetz他(1995)Journal of Immunology 154:1041−7)、癌細胞の増殖を全体的に支持する(Sheng他(1998)Cancer Research 58:362−6)。こうしてPGE生成を阻害すると、癌細胞集団のアポトーシスを増加させると同時に増殖を遅延する。NSAIDのこの阻害作用は、また、他の癌の症状、例えば、非小細胞肺癌において観測された(Hida他(1998)Anticancer Research 18:775−82)。
【0057】
プロスタグランジンは、また、アルツハイマー病に関係づけられた。いくつかの臨床試験において、NSAIDのユーザーは後天性アルツハイマー病の半分程度に少ないリスクを経験することが証明された(Dubois他(1998)Faseb J. 12:1063−1073)。これと一致して、他の観測は炎症プロセスがこの疾患に寄与することがあることを示唆している(Aisen(1997)Gerontology 43:143−9)。
種々のそれ以上の面において、本発明は、スクリーニングおよびアッセイの方法および手段、およびそれらにより同定された物質、特にPGEシンターゼのインヒビターに関する。
【0058】
こうして、本発明のそれ以上の面において、本発明は、ポリペプチドまたはペプチドと相互作用しおよび/またはそれに結合しおよび/またはポリペプチドまたはペプチドの機能または活性を阻害する物質、例えば、ペプチドまたは化合物、または本発明のポリペプチドまたはペプチドと相互作用しおよび/またはそれに結合する他の物質、例えば、ポリペプチドまたはペプチド、についてスクリーニングまたは検索しおよび/またはそれを獲得/同定する方法において、ポリペプチドまたはペプチド(特に開示した本発明のポリペプチドのフラグメント、および/またはそのコードする核酸)の使用を提供する。
【0059】
例えば、本発明の1つの面に従う方法は、本発明のポリペプチドまたはペプチドを準備し、そしてそれを物質と接触させることを含み、前記物質はポリペプチドまたはペプチドと物質との間の結合を生ずることがある。結合は、この分野において入手可能な多数の技術の任意のものにより、定性的および定量的に、測定することができる。
種々の面において、本発明は、本発明のポリペプチドと相互作用しまたはそれに結合しおよび/またはその活性の1またはそれ以上をモジュレートする物質についてアッセイする方法を提供することに関する。
【0060】
本発明の1つの面は、下記の工程を含んでなるアッセイを提供する:
(a) 本発明によるポリペプチドまたはペプチドおよび推定上の結合性分子または他の被験物質と接触させ、そして
(b) ポリペプチドまたはペプチドと被験物質との間の相互作用または結合を測定する。
本発明のポリペプチドまたはペプチドと相互作用する物質を、前述したように単離しおよび/または精製し、製造しおよび/またはポリペプチドまたはペプチドの活性をモジュレートするために使用することができる。
【0061】
前述したように2分子間の結合を試験するか、あるいはPGEシンターゼ活性を試験する(下を参照)本発明のアッセイのために全体のタンパク質を使用することは不必要である。フラグメントを発生させ、そして当業者に知られている任意の適当な方法において使用することができる。フラグメントを発生させる適当な方法は、エンコードDNAからのフラグメントの組換え発現を包含するが、これらに限定されない。
【0062】
このようなフラグメントは、コードするDNAを準備し、発現すべき部分のいずれかの側において適当な制限酵素認識部位を同定し、そして前記部分をDNAから切断することによって発生させることができる。次いで、この部分を標準的商業的に入手可能な発現系において適当なプロモーターに作用可能に連鎖させることができる。他の組換えアプローチは、適当なPCRプライマーを使用してDNAの関係する部分を増幅することである。また、この分野においてよく知られているペプチド合成法を使用して、小さいフラグメント(例えば、約20または30アミノ酸まで)を発生させることができる。
【0063】
当業者は日常的技量および知識を使用して、本発明のアッセイの正確なフォーマットを変更することができる。例えば、in vitroにおいてポリペプチドを検出可能な標識で標識化し、それを固体支持体上に固定化された他のポリペプチドと接触させることによって、ポリペプチド間の相互作用を研究することができる。適当な検出可能な標識は、組換え的に産生されたペプチドおよびポリペプチドの中に組込むことができる35S−メチオニンを包含する。組換え的に産生されたペプチドおよびポリペプチドは、また、抗体で標識化できるエピトープを含有する融合タンパク質として発現させることができる。
【0064】
固体支持体上に固定化されるタンパク質は、固体支持体に結合したそのタンパク質に対する抗体を使用するか、あるいはそれ自体知られている技術に従い、固定化することができる。好ましいin vitro相互作用は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を含む融合タンパク質を利用することができる。これはグルタチオンアガロースビーズ上に固定化することができる。
【0065】
前述の型のin vitroアッセイフォーマットにおいて、固定化GST融合タンパク質に結合する標識化ペプチドまたはポリペプチドの量を減少させる能力について、被検化合物をアッセイすることができる。これはSDS−ポリアクリルアミドゲルの電気泳動によりグルタチオン−アガロースビーズを分画することによって決定することができる。あるいは、ビーズをリンスして非結合タンパク質を除去し、例えば、適当なシンチレーションカウンターの中に存在する標識の量を計数することによって、結合したタンパク質の量を決定することができる。
【0066】
PGEシンターゼのポリペプチドまたはフラグメントと相互作用しおよび/またはそれに結合する被検化合物の能力の測定を使用して、PGEシンターゼ活性のモジュレーターの候補として被検化合物を同定することができる。一般に、次いで本発明のポリペプチドまたはフラグメントに結合する被検化合物の能力を同定した後、1またはそれ以上のアッセイ工程は、被検化合物がPGEシンターゼ活性をモジュレートすることができるかどうかを決定することを包含する。
【0067】
当然、被験物質がPGEシンターゼと結合または相互作用するかどうかについての知識が存在しない場合、PGEシンターゼ活性をモジュレートする被験物質の能力を決定することを包含するアッセイを実行することができるが、以前の結合/相互作用アッセイを「粗い」スクリーンとして使用して多数の物質を試験し、PGEシンターゼ活性をモジュレートする能力の決定を包含する機能的アッセイについて、候補の数をより取り扱い易いレベルに減少させることができる。
【0068】
粗いスクリーンについてのそれ以上の可能性は、PGEシンターゼを発現する(自然にまたは組換え的に)適当な細胞系統によるPGE産生に影響を与える物質の能力を試験することである。また、本発明によるアッセイはin vivoアッセイの形態を取ることができる。in vivoアッセイは細胞系統、例えば、酵母系統において実行することができ、ここで関係するポリペプチドまたはペプチドは細胞の中に導入された1またはそれ以上のベクターから発現される。粗いスクリーンについてのなおそれ以上の可能性は、PGEシンターゼ(ヒトまたは他の哺乳動物)を含む不純タンパク質調製物によるPGE産生に影響を与える物質の能力を試験することである。
【0069】
しかしながら、究極的に、本発明の好ましいアッセイは、本発明の単離/精製されたポリペプチドのPGEシンターゼ活性をモジュレートする被検化合物の能力を決定することを包含する(全長のPGEシンターゼまたはその活性部分を包含する)。
【0070】
ポリペプチドの活性をモジュレートする物質についてスクリーニングする方法は、1またはそれ以上の被験物質をポリペプチドと適当な反応媒質中で接触させ、処理したポリペプチドの活性を試験し、その活性を1またはそれ以上の被験物質で未処理の匹敵する反応媒質中のポリペプチドの活性と比較することを含むことができる。処理したポリペプチドと未処理ポリペプチド間の活性の差は、1またはそれ以上の関係する被験物質のモジュレート作用を示す。
【0071】
それ以上の面において、下記の工程を含むアッセイ法が提供される:
(a) PGEシンターゼ活性を有する単離されたポリペプチドおよび被検化合物を、還元されたグルタチオンおよびPGH2の存在において、PGEシンターゼが常態で産生される条件下に、インキュベートし、そして
(b) PGEの産生を決定する。
PGEシンターゼのPGH2基質は、シクロオキシゲナーゼおよびアラキドン酸がアッセイ媒質の中に提供されてPGH2を産生するように、シクロオキシゲナーゼおよびアラキドン酸をインキュベートすることによって得ることができる。
【0072】
さらに、PGEシンターゼは環状エンドペルオキシドから9−ケト,11αヒドロキシプロスタグランジンが立体特異的に生成する反応を触媒し、それゆえ適当な生成物の産生の測定により、PGEシンターゼ活性および被検化合物の活性に対する作用の測定において、PGEシンターゼの他の基質を使用することができる。
基質 生成物
PGH2 PGE2
PGH1 PGE1
PGH3 PGE3
PGG2 15(S)ヒドロペルオキシPGE2
PGG1 15(S)ヒドロペルオキシPGE1
PGG3 15(S)ヒドロペルオキシPGE3
【0073】
こうして、本発明のより一般的面は、下記の工程を含むアッセイ法を提供する:
(a) PGEシンターゼ活性を有する単離されたポリペプチドおよび被検化合物を、PGEシンターゼの環状エンドペルオキシド基質の存在において、PGEシンターゼが常態で環状エンドペルオキシド基質がその9−ケト,11αヒドロキシ型の生成物に変換する反応を触媒する条件下に、インキュベートし、そして
(b) 前記生成物の産生を決定する。
前述したように、基質は前述の基質の任意のものまたは当業者が意図する任意の他の適当な基質であることができる。それはPGH2であることができ、ことのとき生成物はPGEである。
【0074】
PGEシンターゼのインヒビターは、被検化合物を適用しない対照実験と比較してPGEまたは他の生成物(使用する基質に依存する)の産生の減少を測定することによって同定することができる(またはPGEシンターゼインヒビターであることが推測される候補物質はそれ自体確証可能である)。
HPLC、紫外線分光測定、放射線検出、またはラジオイムノアッセイ(例えば、PGE検出のための商業的に入手可能なRIAキット)を使用して、生成物を測定することができる。ガスクロマトグラフィー(GC)または質量分析(MS)、またはTLCと放射線走査との組合わせにより、生成物の産生を分析することができる。
【0075】
組合わせライブラリー技術(Schultz、JS(1996)Biotechnol. Prog. 12:729−743)は、潜在的に非常に大きい数の異なる基質をポリペプチドの活性をモジュレートする能力について試験する効率よい方法を提供する。
本発明のアッセイに添加することができる被験物質または被検化合物の量は、通常、使用する化合物の型に依存して手探り法により決定されるであろう。典型的には、約0.1nM〜10μMの濃度の被検化合物(例えば、推定上のインヒビター)を使用することができる。ペプチドが被験物質であるとき、より高い濃度を使用することができる。
【0076】
使用できる化合物は、薬剤スクリーニングプログラムにおいて使用される天然または合成の化合物であることができる。いくつかの特性決定されたまたは特性決定されていない成分を含有する植物の抽出物を使用することもできる。
他の候補のインヒビター化合物は、ポリペプチドまたはペプチドのフラグメントの三次元構造のモデル化および合理的薬剤設計を使用して、特定の分子の形状、サイズおよび電荷の特性を有する潜在的インヒビター化合物を提供することにに基づくことができる。
【0077】
ポリペプチド活性をモジュレートするか、あるいは影響を与える物質を同定した後、この物質をさらに研究することができる。さらに、それを製造しおよび/または組成物、例えば、薬物、医薬組成物または薬剤の製造、すなわち、調製または処方において使用することができる。これらは個体に投与することができる。
【0078】
こうして、本発明は、種々の面において、本明細書に開示するものに従い、ポリペプチド活性のモジュレーターとして同定された物質、および本発明の方法により得られた物質ばかりでなく、かつまたこのような物質を含んでなる医薬組成物、薬物、薬剤または他の組成物、このような組成物を、例えば、前述の炎症または細胞成長異常または他の疾患または症状の治療(これは予防的治療を包含することができる)のために、患者に投与することを含んでなる方法、例えば、前述の炎症または細胞成長異常または他の疾患または症状の治療(これは予防的治療を包含することができる)のために、投与する組成物の製造におけるこのような物質の使用、および物質を薬学上許容される賦形剤、ベヒクルまたは担体、および必要に応じて他の成分と混合することを含んでなる医薬組成物を製造する方法に拡張される。
【0079】
PGEシンターゼ活性のモジュレーターを使用して同定される物質は、事実ポリペプチドまたは非ペプチドであることができる。非ペプチドは多数のin vivo薬学的使用のためにしばしば好ましい。したがって、物質(特にペプチドである場合)の模倣物または模擬物は薬学的使用のために設計することができる。既知の薬学的に活性な模倣物の設計は、「先導」化合物をベースとする医薬の開発に対する既知のアプローチである。
【0080】
これは次に場合に好ましい。活性化合物が異なるか、あるいは合成に費用がかる場合、あるいはそれが特定の投与方法に不適当である場合、例えば、ペプチドが消化管中のプロテアーゼにより急速に分解する傾向があるので、ペプチドは経口投与のために活性剤としてよく適さない。ターゲット特性について多数の分子を不規則的にスクリーニングすることを回避するために、模倣物の設計、合成および試験を使用することができる。
【0081】
所定のターゲット特性を有する化合物から模倣物を設計するとき、普通に使用されているいくつかの工程が存在する。第1に、ターゲット特性を決定するとき重大でありおよび/または重要である化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合において、これはペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変化させることによって、例えば、各残基を引き続いて置換することによって実施することができる。化合物の活性領域を構築する、これらの部分または残基は「薬作用発生団」として知られている。
【0082】
いったん薬作用発生団が見出されたとき、その構造は、その物理的性質、例えば、立体化学、結合、サイズおよび/または電荷に従い、ある範囲の源、例えば、分光技術、X線回折データおよびNMRを使用してモデル化される。このモデル化プロセスにおいて、コンピューター解析、類似性マッピング(これは、原子間結合よりむしろ、薬作用発生団の電荷および/または体積をモデル化する)および他の技術を使用することができる。
【0083】
このアプローチの変形において、リガンドおよびその結合相手の三次元構造をモデル化する。リガンドおよび/または結合相手が結合のときコンフォメーションを変化させ、このモデルによりこの模倣物の設計を考慮することができる場合、これは特に有用であることがある。
【0084】
次いで、薬作用発生団を模擬する化学的基をグラフトさせることできる鋳型分子を選択する。模倣物が合成容易であり、薬学上許容され、in vivoで分解しないと同時に先導化合物の生物学的活性を保持するように、鋳型分子およびその上にグラフトさせる化学的基を好都合に選択することができる。次いで、このアプローチにより見出される1またはそれ以上の模倣物をスクリーニングして、それらがターゲット特性を有するかどうかを決定するか、あるいはそれらがターゲット特性をどの程度阻害するかどうかを決定することができる。次いで、それ以上の最適化または修飾を実施して、in vivoまたは臨床試験のための1またはそれ以上の最終模倣物に到達することができる。
【0085】
スクリーニング法を使用してポリペプチドの活性をモジュレートする能力を有するとして同定された物質の模倣物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明によるポリペプチドの活性をモジュレートすることができるポリペプチド、ペプチドまたは物質はキットで提供することができ、例えば、その内容物を外部の環境から保護する適当な容器の中にシールすることができる。このようなキットは使用説明書を含むことができる。
本発明のそれ以上の面および態様は、当業者にとって明らかであろう。下記の実験は、本発明の面および態様の支持および例示を提供する。
この明細書に記載するすべての文献は引用することによって本明細書の一部とされる。
【実施例】
【0086】
実験
前述したように、本明細書に開示する本発明者らの研究以前において、MGST1−L1(GenBank受け入れ番号AF027740)ならびにp53誘導PIG12(GenBank受け入れ番号AF010316)として表示された遺伝子バンクデータベース中のcDNAがヒトPGEシンターゼをコードするという示唆は存在しなかった。Polyak他(前掲)は、PIG12 cDNAが他の(まだ他のと言うことができる)ミクロソームのグルタチオンS−トランスフェラーゼをコードするように思われると、単に記載しただけである。
【0087】
本発明者らは、配列番号1のコード配列を使用して、細菌発現系においてPGEシンターゼ(配列番号2)として同定されたタンパク質を発現させた。大腸菌(E. coli)における異種発現後、両方の細胞質ゾル画分および膜画分を調製した。ウサギ抗血清をPGEシンターゼの内部ペプチドに対して発生させ、そしてウェスタンブロット分析において、PGEシンターゼを発現する細菌からの膜画分中で15kDaのタンパク質が特異的に検出された。
【0088】
細菌膜および細胞質ゾルの画分を、還元されたグルタチオンの存在または非存在下に、PGH2とインキュベートした。195nmにおける紫外線吸収を使用するRP−HPLCならびにオンライン放射能検出により、生成物(PGF、PGE2、PGD2および12−HHT)を分析した。細胞質ゾル画分ではなく、膜画分は高いグルタチオン依存的PGEシンターゼ活性(0.25μmol/分/mg)を有することが見出された。
【0089】
インターロイキン−1βによるシクロオキシゲナーゼ−2の誘導を研究するモデルとして、A549細胞を使用した。A549細胞をインターロイキン−1β(1ng/ml)の存在において24時間成長させたとき、PGEシンターゼタンパク質の有意な誘導がウェスタンブロット分析により観測された。また、ヒツジ精嚢から単離された、商業的に入手可能な部分的に精製されたPGEシンターゼ活性中で、抗血清は16kDaのタンパク質を特異的に認識した。
【0090】
材料および方法
材料
ウサギ抗ヒトPGEシンターゼ抗血清を下記の合成ペプチドに対して発生させた:キーホールリンペットヘモシアニン結合CRSDPDVERSLRAHRN(配列番号3)(Invitrogen、スイス国ルンド)。このペプチド抗原はPGEシンターゼのアミノ酸59〜74に対応する(注:Cysの包含がペプチド合成を妨害する場合、Cys68はSerで置換された)。
【0091】
セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗ウサギ抗体をアマーシャム・ファーマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech、英国)から購入した。また、フィルム(ハイパーフィルムECL)を同一源から入手した。オリゴヌクレオチドをケボ(Kebo)研究所(スイス国)から入手した。Pfu DNAポリメラーゼをストラタジーン(Stratagene、米国カリフォルニア州)。PGH2および3H−PGH2はカイマン・ケミカル(Cayman Chemical、米国)から購入した。PGE2、PGD2および12−HHTをバイオモル(Biomol、米国ペンシルベニア州)。グルタチオンおよびインターロイキン−1βをシグマ・アルドリッヒ・インコーポレーテッド(Sigma−Aldrich,Inc.)から入手した。
【0092】
HPLC溶媒をラトバーン・ケミカルス(Rathburn Chemicals、スコットランド)から入手した。ヒツジ精嚢から単離された、部分的に精製されたPGEシンターゼをオックスフォード・バイオメディカル・リサーチ・インコーポレーテッド(Oxford Biochemical Research,Inc.、米国ミシガン州)から入手した。細胞系統A549はベーリンガー・インゲルヘイム・ビオウィッタカー(Boehringer Ingelheim Biowhittaker、ベルギー国)。細胞培地および抗生物質は、ギブコBRL、ライフテクノロジー(Gibco BRL,Life Technologiy、スイス国)から入手した。プロテアーゼインヒビター混合物(Comlete(商標))は、ベーリンガー・マンヘイム・スカンジナビア(Boehringer Mannheim Scandinavia、スイス国)から入手した。
【0093】
PGEシンターゼの単離およびクローニング
GenBank受け入れ番号R76492を有するESTクローン143735は、以前に、GenBank受け入れ番号AF027740によりコードされる「ミクロソームのグルタチオンS−トランスフェラーゼ1−様1」(MGST1−L1)として同定された。同一遺伝子産物は、また、GenBank受け入れ番号AF010316によりコードされる「p53誘導PIG12」として特性決定された。
【0094】
ESTクローン143735のヌクレオチド配列19〜477に対応するPGEシンターゼのコード配列を、PCRにより増幅した。適当な制限部位(NdeI−HindIII)を生成物の5'および3'末端の中に組込むように、オリゴヌクレオチドプライマーを構築した。
プライマー1(センス):5'−GAGAGACATATGCCTGCCCACAGCCTG−3'
(下線はNdeI部位である)
プライマー2(アンチセンス):5'−GAGAGAAAGCTTCACAGGTGGCGGGCCGC−3'
(下線はHindIII部位である)
両方のプライマーにおいて、GAGAGAはちょうど追加のフランキングヌクレオチドである。
【0095】
1×Pfu緩衝液中の0.2mMのdNTP、0.5μMのそれぞれのプライマー、70ngの鋳型、2.5単位のPfuポリメラーゼ(製造業者により供給される)を使用して、PCRを実行した。温度サイクルは次の通りであった:45秒、94℃;45秒、60℃;および45秒、72℃;反復25回。しかしながら、最初の変性期間は4分であり、そして最後のエクステンション期間は10分であった。PCR生成物をアクリルアミドゲル電気泳動により単離し、ゲルから精製し、NdeIおよびHindIIIで切断した。
【0096】
生ずる生成物をゲル精製し、細菌の発現ベクターpSP19T7LTの中に結合させた(Weinander、R. 他(1995)Biochemical Journal 311、861−6)。結合したプラスミドをDH5aTMコンピテント細胞の中に形質転換した。プラスミドを多数のクローンから単離し、NdeIおよびHindIIIで切断し、次いでアクリルアミドゲル電気泳動によりインサートのサイズを確証した。
【0097】
色素ターミネーターサイクル配列決定キットを使用して、アプライド・バイシステムス(Applied Biosystems)373A自動化DNA配列決定装置により、選択したインサートを配列決定した。
PGEシンターゼの正しいコード配列を含有する発現構築物を、大腸菌(E. coli)BL21(プラスミドpLys SLを収容する)の中に形質転換した(Studier、F. W.(1991)Journal of Molecular Biology 219、37−44)。グリセロールの素材を調製し、発現実験のための出発物質として連続的に使用するために−70において貯蔵した。
【0098】
大腸菌(E. coli)中の発現
細菌グリセロール素材の小さいアリコート(1〜2μl)を、37℃において2×YT中で一夜成長させた。サーモスタット制御の水浴の中に入れた5リットルのフラスコ中で、アンピシリン(75μg/ml)およびクロラムフェニコール(10μg/ml)を含有するテリフィックブロス培地の2リットルの中に、培養物を1:100に希釈した。空気を泡立てて通入することによって培養物を酸素化し、OD600が0.4〜1.2になるまで成長させた。この時点において、1mMのイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドの添加により発現を誘導し、温度を30℃にスイッチし、培養物をさらに4時間成長させた。
【0099】
その後、細胞をペレット化し、100mlのTSEG緩衝液(15mMのTris−HCl、pH8.0、0.25Mのスクロース、0.1mMのEDTA、1mMのグルタチオン)の中に再懸濁させた。リゾチームを0.2mg/mlの最終濃度に添加し、この混合物をおだやかに4℃において30分間撹拌した。次いで最大出力の40〜60%においてMSEソニプレプ(Soniprep)150ソニファイアーからの6×30秒の超音波パルスにより、細胞を溶解した。細胞破片を10分間の5000×gにおける遠心により除去した。次いで、上清を1時間250,000×gにおいて遠心し、膜のペレットを最後的に10mMのリン酸カリウム、pH7.0、20%のグリセロール、0.1mMのEDTA、1mMのグルタチオンの中に再懸濁させた。製造業者の使用説明書(Bio−Rad)に従いクーマッシータンパク質アッセイにより、全タンパク質濃度を測定した。
【0100】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティング
試料を希釈し、SDSを含有する試料緩衝液中で2分間沸騰させた(Laemmli、U. K.(1970)Nature 227、680−5)。14%のポリアクリルアミドゲル(Novex)を通してタンパク質を分離し、PVDF(Pall)上にエレクトロブロットした(Towbin、H. 他(1979)PNAS USA 76、4350−4)。前染色標準(Novex)を使用して、転移効能を可視化した。次いで、0.1%(v/v)のTweenおよび5%(w/v)の脱脂粉乳を含有するTris緩衝化生理食塩水(100mMのTris−HCl、pH7.5、150mMのNaCl)中で25℃において1時間、膜をソーキングした。
【0101】
膜を引き続いて0.1%のT−TBS中で2回洗浄し、次いで0.05%(v/v)のT−TBSおよび2%(w/v)の脱脂粉乳中で示した抗血清(1:2000希釈)と25℃において1時間インキュベートした。いくつかの洗浄工程(2×1分、1×15分および3×5分)後、ブロットを0.05%(v/v)のT−TBSおよび2%(w/v)の脱脂粉乳中でセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギ抗体(1:2000希釈)と25℃において1時間インキュベートした。洗浄工程を反復し、引き続いて増強された化学発光検出を製造業者の使用説明書(ECL plus、Amersham Pharmacia Biotech、英国)に従い実行した。
【0102】
細胞培養
熱不活性化胎仔ウシ血清(10%)、ファンギゾン(2.5μg/ml)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したRPMI 1640中で37℃において5%CO2雰囲気中で、A549細胞を培養した。細胞を75cm2のフラスコ中で0.15×106/mlの濃度に播種した。3日後、コンフルエンスに到達し、細胞をPBS中で2回洗浄し、次いで5%CO2雰囲気中で37℃において15分間1.5mlの1×トリプシン/EDTA溶液(GibcoBRL)を使用して分離した。その後、3mlの培地を添加してトリプシンをクエンチし、細胞をさらに希釈し、ちょうど記載したように適当な数/cm2で再播種した。
【0103】
A549細胞におけるPGEシンターゼの発現に対するIL−1βの作用を研究するために、5mlの培地中の1×106細胞を25cm2のフラスコの中にプレートし、24時間インキュベートした。引き続いて、細胞をPBS中で3回洗浄し、次いで5mlの胎仔ウシ血清(2%)、β(1ng/ml)を含有するRPMI 1640を添加し、さらに24時間インキュベートした。収集のために、細胞をPBS中で2回洗浄し、0.5mlの1×トリプシン/EDTA溶液中で37℃において15分間トリプシン処理した。1mlの培地を添加し、細胞を500×gにおいて10分間遠心し、次いでPBS中で2回洗浄した。50μlのリン酸カリウム緩衝液(0.1M、pH7.4)および1×CompleteTMプロテアーゼインヒビターカクテルから成る均質化緩衝液の中に、細胞を再懸濁させた。試料を2×10秒超音波処理し、次いで50μlの沸騰する2×Laemmli緩衝液を添加し、試料をさらに2分間沸騰させた。
【0104】
PGEシンターゼ酵素活性
2.5mMの還元されたグルタチオンを含有する無機リン酸カリウム緩衝液(0.1M、pH7.4)の中に、タンパク質試料を希釈した。0.1μCiの3H PGH2を含むか、あるいは含まない10μMのPGH2を添加することによって、反応(全体積=100μl)を開始し、60μlのアセトニトリル/HClで停止し、pHを3.2に低下させた。PGF、PGE2またはPGD2のいずれかの生成を測定するために、逆相HPLCと紫外線検出(195nm)との組合わせおよび/またはオンラインβ−RAM検出器(Inus System,Inc.)を使用する放射能検出により、アリコート(60μl)を分析した。
【0105】
逆相HPLCカラムはウォーターズ(Waters)から入手したNova−Pak C18(3.9×150mm、4μmの粒度)であった。移動相は水、アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(70:30:0.007、体積)であり、流速は1ml/分であった。
12−HHTを分析するために、メタノール、水および酢酸(70:30:0.01、体積)の移動相を使用し、236nmにおける紫外線検出を実施した。それぞれ、195および236nmにおける溶離したピーク下の面積を積分することによって、生成したPGE2および12−HHTの量を定量した。
【0106】
結果
PGEシンターゼの同定
ヒトPGEシンターゼ(配列番号2)のアミノ酸配列は、MGST1と38%のアミノ酸配列の同一性を有する。さらに、MGST1およびPGEシンターゼは同様なヒドロパシーのプロファイルおよび高いpI:s(>10)を表示する。
【0107】
PGEシンターゼの発現
細菌発現系を使用して、PGEシンターゼを発現させた。タンパク質の発現を証明するために、ペプチド抗血清をPGEシンターゼ(アミノ酸セグメント59〜74)に対して発生させた。
PGEシンターゼを発現する細菌からの膜画分および細胞質ゾル画分の両方を、SDS−PAGEおよびウェスタンブロットにより分析した。対照として、ラットMGST1を発現する膜画分を含めた。すべてのレーンにおいて、5μgの全タンパク質を分析した。PGEシンターゼに対する抗ペプチド抗血清、対応する前免疫血清、および10-6Mのペプチド抗原の存在において希釈した抗ペプチド抗血清を使用して、結果を得た。暴露時間は2分であった。
【0108】
抗血清は、PGEシンターゼを発現する細菌からの膜画分中の15kDaのバンドを認識した。このバンドは対応する細胞質ゾル画分の中に見出されなかった。さらに、抗血清は同一発現系を使用して発現されたラットMGST1を認識しなかった。
10-6Mの抗原(ペプチド)の存在において希釈した抗ペプチド抗血清はPGEシンターゼを検出する能力を喪失したので、PGEシンターゼの検出は特異的であった。
【0109】
プロスタグランジンEシンターゼ活性
PGEシンターゼを発現する細菌から単離された膜画分(0.02mgの全タンパク質/ml)を、PGH2(1μCiの3H PGH2を含む10μM)および還元されたグルタチオン(2.5mM)の存在において2分間インキュベートした。
PGH2のインキュベーション後形成した生成物について、逆相HPLCクロマトグラムをプロットした(時間(分)に対して計数/分(CPM)をプロットする)。
第1A図は、停止溶液と混合したPGEシンターゼ膜画分を使用して得られた結果を示す。
【0110】
第1B図は、緩衝液を使用して得られた結果を示す。
第1C図は、PGEシンターゼ膜画分を使用して得られた結果を示す。結果を第1B図および第1C図に示す実験における材料を停止溶液の添加前に2分間インキュベートした。生成物を放射性検出により検出した。最初の20分は、水、アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(70:30:0.007、体積)を移動相として1ml/分の流速で使用する無勾配溶離を表す。次いで、直線の勾配を100%の移動相から100%のメタノールに10分にわたって適用し、これを実験の残部について持続した。
【0111】
第1C図は、これらの条件下に形成した放射能標識化生成物のRP−HPLCプロファイルを示す。合成PGE2の溶離時間に対応する12.3分において溶離する、1つの主要なピークが生成した。このピークの材料を収集し、誘導化し、GC/MSにより分析して、PGE2としてその同一性を確証した。12−HHTの保持時間に対応する31.5分において溶離した、小さいピークがまた生成した。
【0112】
これらの生成物の非酵素の生成を第1B図に示す。このクロマトグラムにおいて、PGE2に対応するピークはPGEシンターゼを発現する細菌からの膜の存在下に生成したピークの25%より低い。その代わりに、形成した主要な生成物は31.5分に溶離する12−HHT、ならびにPGD2の保持時間に対応する、14.9分の保持時間を有する他の小さいピークに対応する。停止溶液とプレミックスした膜画分を含有する緩衝液に基質を添加したとき、第1A図におけるクロマトグラムはゼロ時間のインキュベーションを示す。PGE2はほとんど検出されず、主要生成物のピークは12−HHTの保持時間に対応する。
【0113】
膜をインキュベーション前に2分間沸騰した場合、PGE2形成(第1C図)は壊滅した。また、その代わりラットMGST1を発現する細菌から得られた膜画分を使用して、PGEシンターゼ活性は観測されなかった。インキュベーション前に膜画分をN−エチルマレイミド(1mM)で5分間処理した場合、酵素活性は壊滅した。PGEシンターゼを発現する細菌からの細胞質ゾル画分において、活性は観測されなかった。そのうえ、MGST2を発現するSf9細胞から得られたミクロソームにおいて、活性は観測されなかった。
【0114】
第2図は、タンパク質濃度の関数としてPGE2の生成を証明する。この実験において、PGEシンターゼを発現する細菌から得られた膜画分の種々の希釈物を、PGH2(10μM)およびGSH(2.5mM)の存在下に2分間インキュベートした。上記材料および方法に記載するように、PGE2生成をRP−HPLCおよび195nmにおける紫外線検出により分析し、定量した。
0.015mg/mlまでのタンパク質濃度を使用して、直線関係が見出された。その後、添加したPGH2がPGE2にほとんど完全に変換するために、勾配は急速に傾斜する。
【0115】
第3図は、GSH(2.5mM)の存在または非存在下に膜画分(0.02mg/ml)をPGH2(10μM)とインキュベートした後、PGE2生成の時間関数を証明する。PGEシンターゼを発現する細菌から得られた膜画分(0.02mg/ml)を、グルタチオンの存在(充填円)または非存在(白抜き円)下に示した時間の間PGH2とインキュベートした。充填三角形は、PGH2とのインキュベーション後における非酵素的(緩衝液のみ)PGE2を表す。生成物の形成をRP−HPLCにより分析し、195nmにおける紫外線紫外線吸収によりPGE2を検出し、定量した。
【0116】
最初の60秒のみ)インキュベーション間に、直線関係が得られる。その後、基質の消耗のために、曲線の勾配は傾斜する。
第3図は、また、活性がグルタチオンの存在に依存的であることを示す。直線の条件(減法バックグラウンドの形成)下の特異的活性は、600pmol/1.2分/0.002mgの膜画分(すなわち、250nmol/分/mg)であった。
【0117】
IL−1βによるPGEシンターゼの誘導
A549細胞を使用してcox−2誘導を研究し、また、インターロイキン−1βで処理後にA549細胞はそれらのPGE2解放を有意に増加することが報告された。このサイトカインによりPGEシンターゼをまた調節できるか否かを研究するために、A549細胞を1ng/mlのIL−1βの存在下に24時間培養した。引き続いて、正常細胞ならびにIL−1βで処理した細胞をSDS−PAGEおよび引き続いてウェスタンブロッティングによりPGEシンターゼ発現について分析した。
【0118】
IL−1βの存在(1ng/ml)または非存在下に24時間成長させた0.2×106細胞に対応する全タンパク質をSDS−PAGEにより分画し、PVDFに移した。膜をPGEシンターゼ抗血清と、または抗原性ペプチド(10-6M)を含有するPGEシンターゼ抗血清とインキュベートした。また、商業的に入手可能なヒツジ精嚢から部分的に精製されたPGEシンターゼ(6μg)ならびにヒトPGEシンターゼを発現する細菌からの膜画分(5μg)を分析した。
【0119】
PGEシンターゼはIL−1βにより誘導された。IL−1β処理細胞を負荷したレーンにおいて、15kDのバンドは細菌中で発現されたPGEシンターゼと共移動するように思われた。抗血清を抗原性ペプチド(1μM)と混合した場合、認識は低下し、IL−1β処理A549細胞におけるPGEシンターゼの特異的検出を証明する。非処理A549細胞において、有意に少ない量のPGEシンターゼが検出された。
【0120】
ヒツジ精嚢に由来する部分的に精製されたPGEシンターゼ中の免疫反応性16kDaのタンパク質の同定
商業的に入手可能な、雄ヒツジ精嚢から部分的に精製された、不純PGEシンターゼ調製物を、ヒトPGEシンターゼ抗血清に対する交差反応性について試験した。ウェスタンブロッティングの結果から、16kDaのタンパク質バンドは6μgのこの試料を負荷したレーンにおいて出現することが明らかにされた。ペプチドを吸収した抗血清を使用すると、このバンドは低下し、特異的認識を示唆した。タンパク質はサイズが多少異なり、拡散するように思われ、これによりある種の転写後の修飾が示唆される。
【0121】
PGEシンターゼ活性のアッセイ
初期の研究において、プロスタグランジンをRP−HPLCにより分離し、紫外線分光光度測定により検出できることが証明された(Terrago他(1981)Prostaglndins 21(1):101−12;Powell(1985)Anal. Biochem. 148(1):59−69)。PGE2のモル吸光係数は192.5nmにおいて16,500であった(Terrago他(1981)Prostaglndins 21(1):101−12)。192.5nmおよび195nmにおける吸収の間の差は限界的であった(Terrago他(1981)Prostaglndins 21(1):101−12)。しかしながら、RP−HPLC条件を使用する我々の結果(後述する)は、有意にいっそう安定な基線を証明し、より高い波長において雑音は低かった。
【0122】
PGH2の主生成物はPGF、PGE2およびPGD2であった。記載したRP−HPLC条件を使用して、保持時間はPGF、PGE2およびPGD2について、それぞれ、19.0、23.8および28.6分であった。内部標準を得るために、我々は11β−PGE2および16,16−ジメチルPGE2を試験した。後者の化合物は疎水性であり過ぎ、記載した無勾配系において使用することができなかった。対照的に、11β−PGE2は、ほとんどPGE2からの基線分離で、25.3分の保持時間で溶離された。11−β PGE2とPGE2との間の紫外線吸収関係を研究するために、等しい量(GC−MSにより定量して)をRP−HPLCにより分析し、195nmにおける紫外線吸収により分析した。2つの化合物は同一紫外線吸収特性を示した。
【0123】
固相抽出の回収率および再現性を試験するために、既知量の11−β PGE2およびPGE2を試料緩衝液中で希釈し、停止溶液(鉄塩化物を含有しない)の添加および引き続くアセトニトリル(33%の最後コーン(cone))の分析により酸性化し、分析した(全試料の10%(v/v))。あるいは、停止溶液の添加後、試料を固相抽出により抽出し、次いで対応する画分(全試料の10%(v/v))を分析した。抽出前および後の11−β PGE2およびPGE2の量を比較し、回収率は85〜90%であった。
【0124】
PGE2を定量するために、PGE2の標準曲線を作った。曲線は0.9pmol〜706pmolの範囲にわたって直線であった(R2=0.9997、k=0.0012)。定量のために、抽出標準ならびに内部標準の両方の技術を日常的に使用し、後者の法はまた製造の間の損失を説明する。
【0125】
PGH2を使用するPGEシンターゼをアッセイするとき、多少の困難に直面することがある。基質は非常に不安定性であり、37℃において約5分の半減期で、約3のE/D比でPGE2とPGD2との混合物に非酵素的に分解する(Hamberg他(1974)Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)71:345−349;NugterenおよびChrist−Hazelhof(1980)In Adv. in Prostaglandin and Thromboxane Res. 6、B. Samuelsson、P. W. RamellおよびR. Paoletti、編、Raven Press、New York、129−137)。また、PGEシンターゼの触媒反応は非常に高速であり、これは基質消耗が数秒以内で容易に起こり、こうして定量分析を妨害するからである。反応を停止させた後、結果を妨害しないように、残りのPGH2をまた生成物から容易に分離しなくてはならない。基質のこれらの性質を処理するために、次のようにしてアッセイを実施することができる。
【0126】
PGE2の非酵素的生成を最小するために、基質(PGH2)を使用するまでCO2−氷(−78℃)上に常に保持し、酵素反応をPGH2および還元されたグルタチオン(GSH)の存在下に0℃において実施した。残留するPGH2をHHTに変換するFeCl2を含有する、停止溶液を使用した(HambergおよびSamuelsson(1974)Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)71(9):3400−4)。また、生成物は有機溶媒中で非常に安定である(NugterenおよびChrist−Hazelhof(1980)In Adv. in Prostaglandin and Thromboxane Res. 6、B. Samuelsson、P. W. RamellおよびR. Paoletti、編、Raven Press、New York、129−137)ので、停止後直ちに固相抽出により試料を抽出し、溶出物をアセトニトリルの中に保持した。
【0127】
アッセイ法
2.5mMの還元されたグルタチオン(GSH)を含有する無機リン酸カリウム緩衝液(0.1M、pH7.4)の中に、タンパク質試料を希釈した。4μlのアセトン中に溶解したPGH2(0.284mM)をエッペンドルフ管に添加し、CO2−氷(−78℃)上に保持した。インキュベーション前に、基質および試料の両方を2分の温度平衡化間に湿った氷(または37℃)上に移した。PGH2を含有する管に100μlの試料を添加することによって、反応を開始した。400μlの停止溶液(25mMのFeCl2、50mMのクエン酸および2.7μMの11−β PGE2)の添加により反応を停止させ、pHを3に低下させ、全濃度を20mMのFeCl2、40mMのクエン酸および2.1μMの11−β PGE2とした。
【0128】
C18−クロモボンドカラムを使用して、固相抽出を直ちに実施した。試料を500μlのアセトニトリルで溶離し、その後1mlのH2Oを添加した。PGE2および11−β PGE2の生成を決定するために、アリコート(150μl)をRP−HPLCと195nmにおける紫外線検出により分析した。逆相HPLCカラムはNova−Pak C18(3.9×150mm、4μmの粒度、Watersから入手した)であり、移動相は水、アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(72:28:0.007、体積)であった。流速は0.7ml/分であり、生成物をピーク面積の積分により定量した。
【0129】
考察
MGST1−L1は、配列レベル(38%のアミノ酸の同一性)ならびに構造的特性(疎水性プロファイル)の両方について類似性を示すMGST1に対する相同体として同定された。
【0130】
MGST1−L1は細菌発現系を使用して発現された。PGEシンターゼ活性について試験したとき、MGST1−L1を発現する細菌からの膜は、通常存在するPGEシンターゼ活性、すなわち、ヒツジ精嚢(Moonen、P. 他(1982)Methods in Enzymology 86:84−91)およびラット輸精管(Watanabe、K. 他(1997)Biochemical & Biophysical Research Commnunications 235:148−52)から単離されたミクロソームの中に存在するPGEシンターゼ活性、の最高レベルに対応する、有意なPGEシンターゼ活性(0.25μmol/分/mg)を示した。
【0131】
事実、細菌膜タンパク質の1%がMGST1−L1であると推定すると、推定される比活性は106のM−1S−1範囲のKcat/Kmに対応する25μmol/分/mgとなる。このような高いKcat/Km値は極めて効率よい酵素の特質である(W. H. Freeman & Co.、New York)。PGH2の短い半減期および競合経路の存在を考慮すると、生理学的に関係する活性は高度に効率よいことが理解される。
【0132】
タンパク質の発現およびまたPGEシンターゼタンパク質の発現は、IL−1β処理後、A549細胞(ヒト肺腺癌細胞系統)においてアップレギュレートされる。cox−2および関係する酵素、例えば、細胞質ゾルのホスホリパーゼA2の調節を研究するために、A549細胞は多数の研究者らに使用されてきている。結果は発表されたデータと一致し、A549細胞のインターロイキン−1β処理に応答したcox−2のアップレギュレーションおよびPGE2生合成の数倍の増加を証明する(Huang、M. 他(1998)Cancer Res. 58:1208−1216;Mitchell、J. 他(1994)British J. of Pharmacol. 113:1008−1014)。
【0133】
cox−2に関するこれらの発見と組み合わせると、このデータが示すように、PGEシンターゼおよびcox−2は共調節され、そしてPGE2生合成は両方のこれらの酵素の存在に依存することがある。したがって、誘導可能なPGEシンターゼ活性は、また、リポ多糖刺激ラット腹膜マクロファージ腹膜マクロファージにおいて記載され、これはcox−2発現と一致し、そしてPGE2の利益となるように生成物の形成を変化させる(Naraba、H. 他(1998)Journal of Immunology 160:2974−82;Matsumoto、H. 他(1997)Biochemical & Biophysical Research Commnunications 230:110−4)。
【0134】
結腸直腸癌細胞系統(DLD−1)(Polyak、K. 他(1997)Nature 389:300−305)におけるp53発現後noPGEシンターゼ(PIG12)の誘導は、また、癌およびアポトーシスにおけるcoxおよびPGEシンターゼの役割を理解するために重要であることがある。また、シクロオキシゲナーゼ−2は、癌増殖に対する種々のNSAIDにより観測された有益な作用を通して、結腸癌に関係づけられた(Dubois、R. 他(1998)Faseb J. 12:1063−1073)。
【0135】
要約すると、最初のミクロソームグルタチオン従属的PGEシンターゼが同定され、特性決定され、肺癌細胞系統において前炎症性インターロイキン−1βによりアップレギュレートされることが証明された。このサイトカインは、また、PGE2を産生するcox−2および細胞の能力をアップレギュレートする。既に前述したように、これは種々の領域、例えば、炎症、癌およびアポトーシスにおける薬剤開発のための新規なターゲットとしてPGEシンターゼを提供する。
発明の要約
〔1〕 PGEシンターゼでありかつ配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、単離された純粋なポリペプチド。
〔2〕 PGEシンターゼでありかつ配列番号2のアミノ酸配列の一部分から成る、単離された純粋なポリペプチド。
〔3〕 前記一部分が配列番号2のアミノ酸30〜152を含む、第2項に記載のポリペプチド。
〔4〕 前記一部分が配列番号2のアミノ酸1〜130を含む、第2項に記載のポリペプチド。
〔5〕 前記一部分が配列番号2のアミノ酸30〜130を含む、第2項に記載のポリペプチド。
〔6〕 PGEシンターゼでありかつ配列番号2のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、単離された純粋なポリペプチド。
〔7〕 配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、第6項に記載のポリペプチド。
〔8〕 アミノ酸配列の異種配列に融合した、第1〜7項のいずれか一項に記載のポリペプチド。
〔9〕 PGEシンターゼ活性の候補モジュレーターを同定するアッセイ法において、
(a) 請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドと推定上の結合性分子または他の被験物質とを接触させ;そして
(b) 前記ポリペプチドと前記被験物質との間の相互作用または結合を測定し、これによりPGEシンターゼ活性の候補のモジュレーターを同定する、
ことを含んでなる方法。
〔10〕 PGEシンターゼ活性をモジュレートする能力についてPGEシンターゼの同定された候補モジュレーターを試験することをさらに含む、第9項に記載の方法。
〔11〕 前記候補モジュレーターをPGEシンターゼ活性のインヒビターとして同定する、第10項に記載の方法。
〔12〕 前記インヒビターを、少なくとも1つの追加の成分を含んでなる組成物に処方することをさらに含む、第11項に記載の方法。
〔13〕 前記組成物が薬学上許容される賦形剤を含んでなる、第12項に記載の方法。
〔14〕 PGEシンターゼ活性のモジュレーターを同定するアッセイ法において、
(a) PGEシンターゼの環状エンドペルオキシド基質の存在において、環状エンドペルオキシド基質がその9−ケト,11αヒドロキシ型の生成物に変換する反応をPGEシンターゼが常態で触媒する条件下に、PGEシンターゼ活性を有する第1〜8項のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドおよび被検化合物をインキュベートし;そして
(b) 前記生成物の産生を測定する;
ことを含んでなる方法。
〔15〕 還元されたグルタチオンおよびPGH2の存在においてPGEが常態で産生される条件下に前記ポリペプチドおよび被検化合物をインキュベートし、そして前記方法がPGEの産生を測定することを含む、第14項に記載の方法。
〔16〕 被験物質をPGEシンターゼ活性のモジュレーターとして同定する、第14項または第15項に記載の方法。
〔17〕 被験物質をPGEシンターゼ活性のインヒビターとして同定する、第16項に記載の方法。
〔18〕 前記モジュレーターを、少なくとも1つの追加の成分を含んでなる組成物に処方することをさらに含む、第16項または第17項に記載の方法。
〔19〕 組成物が薬学上許容される賦形剤を含んでなる、第18項に記載の方法。
〔20〕 PGEシンターゼ活性のモジュレーターを得るか、あるいは同定する方法における、第1項〜第8項のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
〔21〕 PGEシンターゼ活性のインヒビターを得るか、あるいは同定する、第20項に記載の使用。
〔22〕 第10項〜第19項のいずれか一項に記載の方法により得られた、PGEシンターゼ活性のモジュレーターまたは前記モジュレーターを含んでなる組成物。
〔23〕 PGEシンターゼ活性を有するポリペプチドを製造する方法において、
(a) 適当な発現系において第1項〜第8項のいずれか一項に記載のPGEシンターゼであるポリペプチドをコードする核酸からの発現を引き起こして、ポリペプチドを組換え生産し;
(b) 組換え生産されたポリペプチドをPGEシンターゼ活性について試験する;
ことを含んでなる方法。
〔24〕 前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、第23項に記載の方法。
〔25〕 前記核酸が配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる、第24項に記載の方法。
〔26〕 前記組換え生産されたポリペプチドを単離する、第23項〜第25項のいずれか一項に記載の方法。
〔27〕 単離されたポリペプチドをPGH2および還元されたグルタチオンとインキュベートしたときのPGE産生を測定することによって、前記ポリペプチドをPGEシンターゼ活性について試験する、第26項に記載の方法。
〔28〕 組換え生産されたポリペプチドを、少なくとも1つの追加の成分を含んでなる組成物に処方する、第26項または第27項に記載の方法。
〔29〕 請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードし、かつコードされたポリペプチドの発現のための調節配列に作用可能に連鎖されているヌクレオチド配列を含んでなる、前記ポリペプチドの製造において使用するために適当な核酸構築物。
〔30〕 前記コード化ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、第29項に記載の核酸構築物。
〔31〕 前記核酸が配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる、第30項に記載の核酸構築物。
〔32〕 PGEシンターゼである前記コード化ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列の一部分から成る、第29項に記載の核酸構築物。
〔33〕 PGEシンターゼである前記コード化ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、第29項に記載の核酸構築物。
〔34〕 前記コード化ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、第33項に記載の核酸構築物。
〔35〕 第29項〜害34項のいずれか一項に記載の核酸構築物で形質転換された宿主細胞。
〔36〕 PGEシンターゼであるポリペプチドを製造する方法における、第29項〜第34項のいずれか一項に記載の核酸構築物の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PGEシンターゼでありかつ配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、単離された純粋なポリペプチド。
【請求項2】
PGEシンターゼでありかつ配列番号2のアミノ酸配列の一部分から成る、単離された純粋なポリペプチド。
【請求項3】
前記一部分が配列番号2のアミノ酸30〜152を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記一部分が配列番号2のアミノ酸1〜130を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記一部分が配列番号2のアミノ酸30〜130を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
PGEシンターゼでありかつ配列番号2のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、単離された純粋なポリペプチド。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
アミノ酸配列の異種配列に融合した、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
PGEシンターゼ活性を有するポリペプチドを製造する方法において、
(a) 適当な発現系において請求項1〜8のいずれか一項に記載のPGEシンターゼであるポリペプチドをコードする核酸からの発現を引き起こして、ポリペプチドを組換え生産し;
(b) 組換え生産されたポリペプチドをPGEシンターゼ活性について試験する;
ことを含んでなる方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸が配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組換え生産されたポリペプチドを単離する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単離されたポリペプチドをPGH2および還元されたグルタチオンとインキュベートしたときのPGE産生を測定することによって、前記ポリペプチドをPGEシンターゼ活性について試験する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
組換え生産されたポリペプチドを、少なくとも1つの追加の成分を含んでなる組成物に処方する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードし、かつコードされたポリペプチドの発現のための調節配列に作用可能に連鎖されているヌクレオチド配列を含んでなる、前記ポリペプチドの製造において使用するために適当な核酸構築物。
【請求項16】
前記コード化ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる、請求項15に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記核酸が配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる、請求項16に記載の核酸構築物。
【請求項18】
PGEシンターゼである前記コード化ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列の一部分から成る、請求項15に記載の核酸構築物。
【請求項19】
PGEシンターゼである前記コード化ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する、請求項15に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記コード化ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、請求項19に記載の核酸構築物。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の核酸構築物で形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
PGEシンターゼであるポリペプチドを製造する方法における、請求項15〜20のいずれか一項に記載の核酸構築物の使用。
【請求項23】
PEGシンターゼ活性を有するポリペプチドを製造しそして試験する方法において、
(a)適当な発現系でポリペプチドをコードする核酸を発現させて当該ポリペプチドを組換え生産し、ここで当該ポリペプチドは、
配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチド、
配列番号2のアミノ酸配列からなる又はそれを含んで成るポリペプチド、及び
配列番号2のアミノ酸1−130又は30−130又は30−152からなる又はそれを含んで成るポリペプチド、
から成る群から選択されるPGEシンターゼであり;そして
(b)前記組換え生産されたポリペプチドを、PGEシンターゼ活性について、PGEシンターゼがサイクリックエンドパーオキサイド基質のその生成物への転換を正常に触媒する条件下で、サイクリックエンドパーオキサイド基質の9−ケト,11αヒドロキシ形である生成物の生産を決定することにより試験する;
ことを含んで成る方法。
【請求項24】
前記核酸が、配列番号1にヌクレオチド配列を含んで成る、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組換え生産されたポリペプチドを単離する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリペプチドをPGH2および還元されたグルタチオンとインキュベートしたときのPGE産生を測定することによって、前記ポリペプチドをPGEシンターゼ活性について試験する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
組換え生産されたポリペプチドを、少なくとも1つの追加の成分を含んでなる組成物に処方する、請求項23または25に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリペプチドが、当該ポリペプチドが生産された細胞から調製された膜画分に存在する、請求項23または25に記載の方法。
【請求項29】
試験基質の存在下及び非存在下でPGEシンターゼ活性を決定することを盛る含んで成る、請求項23また28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115205(P2010−115205A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−11053(P2010−11053)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【分割の表示】特願2000−581189(P2000−581189)の分割
【原出願日】平成11年11月2日(1999.11.2)
【出願人】(501185028)カロリンスカ インスティチュテート イノベーションズ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】