説明

PIPD紙およびそれから製造された部品

本発明は、20〜100重量パーセントのポリピリドビスイミダゾール繊維とバインダー材料とを含んでなる、構造用部品として有用な紙であって、(i)立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度および(ii)平方メートル当たり10〜150グラムの坪量を有し、そして少なくとも15重量%のフェノール樹脂を含浸させたときに、少なくとも100(N/cm)(g/m)の比引張剛性を有する、重量%が紙および樹脂の総重量を基準としている紙に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本件出願は、その開示が参照により本明細書に援用される、2005年12月21日出願の米国仮特許出願第60/753,060号明細書の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ポリピリドビスイミダゾール繊維とバインダー材料とを含有する紙およびそれから製造された構造用部品に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能紙はアラミド繊維から製造されてきた。例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3を参照されたい。幾つかのアラミド紙は樹脂を含浸させられてきた。例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7を参照されたい。
【0004】
外側スキン間の構造コアとして機能する繊維物品は普通、「サンドイッチパネル」のタイプとして知られている。普通に使用される一サンドイッチパネルは、軽量ボックス構成で使用される波形パネルである。別のコア構造はハニカムコアである。ハニカムコアは、互いに直線的に接着されたセル壁によって分離された複数の中空円柱状ハニカムセルを有する。アラミド繊維は、耐燃性、剛性、強度および強靱性を構造体に与えるために幾つかのコア構造体に使用されてきた。例えば、特許文献8および特許文献9を参照されたい。
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,999,788号明細書
【特許文献2】米国特許第3,756,908号明細書
【特許文献3】米国特許第4,472,241号明細書
【特許文献4】米国特許第4,698,267号明細書
【特許文献5】米国特許第4,729,921号明細書
【特許文献6】米国特許第5,223,094号明細書
【特許文献7】米国特許第5,314,742号明細書
【特許文献8】米国特許第5,137,768号明細書
【特許文献9】米国特許第6,544,622号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改善された特性の構造用部品に有用な紙に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態では、本発明は、20〜100重量パーセントのポリピリドビスイミダゾール繊維と場合によりバインダー材料とを含んでなる、構造用部品として有用な紙であって、(i)立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度および(ii)平方メートル当たり10〜150グラムの坪量を有し、そして少なくとも15重量%のフェノール樹脂を含浸させたときに、少なくとも100(N/cm)(g/m)の比引張剛性を有し、ここで、重量%は紙および樹脂の総重量を基準としている紙に関する。
【0008】
ある種の実施形態では、バインダー材料はフェノール樹脂である。ポリピリドビスイミダゾールポリマー以外からのフィブリド、パルプ、熱可塑性樹脂フロックおよび熱可塑性樹脂粉末だけでなく、他の樹脂をこの紙のためのバインダー材料として使用することができる。
【0009】
好ましい一ポリピリドビスイミダゾール繊維はPIPDである。幾つかの実施形態では、紙は70〜90重量パーセントPIPD繊維を有する。
【0010】
幾つかの紙は、フェノール樹脂含浸後に110〜150(N/cm)/(g/m)の比引張剛性を有する。
【0011】
幾つかの紙は1〜20秒のガーレイ・ヒル多孔性(Gurley Hill porosity)を有する。他の紙は5〜12秒のガーレイ・ヒル多孔性を有する。
【0012】
ある種の紙は立方センチメートル当たり0.6〜1.2グラムの密度を有する。幾つかの紙は平方メートル当たり15〜65グラムの坪量を有する。
【0013】
幾つかの紙は、導電性フィラー、酸化防止剤、顔料、および触媒のうちの少なくとも1つをさらに含んでなる。
【0014】
幾つかの実施形態では、PIPD繊維はフロックの形態にある。他の実施形態では、PIPD繊維はパルプの形態にある。他の実施形態では、PIPD繊維はPIPDフロックとPIPDパルプとのブレンドである。
【0015】
本明細書に記載される紙を含んでなる構造コアもまた提供される。幾つかのコア構造体はハニカムコア構造体である。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載される紙を含んでなる折り畳み紙コア、プリント配線盤、またはサンドイッチパネルに関する。
【0017】
さらなる実施形態は、ポリピリドビスイミダゾール繊維のスラリーを形成し、そして、1つもしくはそれ以上のステップで水の少なくとも一部を除去して紙を形成することを含んでなる紙の製造方法であって、紙が(i)立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度、(ii)平方メートル当たり10〜150グラムの坪量、および(iii)フェノール樹脂含浸後に少なくとも100(N/cm)(g/m)の比引張剛性を有する方法に関する。
【0018】
幾つかの実施形態では、紙は、スラリーから水の一部を除去して湿った紙を形成し、次に湿った紙を乾燥させることによって製造される。
【0019】
幾つかの実施形態では、紙の製造方法は、形成されたシートの周囲温度または高温でのカレンダー加工を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
幾つかの実施形態では、本発明は、20〜100重量パーセントのポリピリドビスイミダゾール繊維と場合によりバインダー材料とを含んでなる、構造用部品として有用な紙であって、(i)立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度および(ii)平方メートル当たり10〜150グラムの坪量を有し、そして少なくとも15重量%のフェノール樹脂を含浸させたときに、少なくとも100(N/cm)(g/m)の比引張剛性を有し、ここで重量%は紙および樹脂の総重量を基準としている紙に関する。
【0021】
幾つかの実施形態では、紙は30〜97重量パーセントのポリピリドビスイミダゾール繊維を含んでなる。
【0022】
本発明の目的のためには、「紙」は、フォアドリニール(Fourdrinier)機または傾斜ワイヤ機などの、抄紙機で製造できる平らなシートである。好ましい実施形態では、これらのシートは、水懸濁液からレイドダウンされ、そしてそれら自身の親和力、摩擦、絡み合い、バインダー、またはそれらの組み合わせによって一緒に接合されたランダムに配向した短い繊維の網状構造よりなる一般に薄い繊維シートである。
【0023】
本発明のフロックは、ステープルファイバーより短い、短い長さの繊維を意味する。フロックの長さは約0.5〜約15mmであり、4〜50マイクロメートルの直径であり、好ましくは1〜12mmの長さおよび8〜40マイクロメートルの直径を有する。約1mm未満であるフロックは、それが使用される材料の強度を有意に増大させない。約15mmより大きいフロックまたは繊維はしばしば、個々の繊維が絡み合うようになるかもしれず、そして材料またはスラリーの全体にわたって十分におよび一様に分配され得ないので、うまく機能しない。フロックは一般に、従来の繊維切断装置を用いて連続的な紡糸フィラメントまたはトウを特定の長さ片へカットすることによって製造される。一般に、この切断は、繊維の有意なまたはいかなるフィブリル化もなしに行われる。
【0024】
フィブリドは、紙でバインダーとして使用することができる非顆粒の繊維状またはフィルム様粒子である。好ましくは、それらは320℃より上の融点または分解点を有する。フィブリドは繊維ではないが、それらがウェブによって連結された繊維様領域を有するという点においてそれらは繊維状である。フィブリドは0.2〜1mmの平均長さおよび5:1〜10:1の最大寸法対最小寸法の比を有する。フィブリドウェブの厚さ寸法は1もしくは2ミクロン未満であり、典型的にはミクロンの約何分の1である。フィブリドは、乾燥させられる前に、ウェットで使用することができ、製品の他の原料または部品の回りに物理的に絡まったバインダーとして沈着させることができる。フィブリドは、ポリマー溶液が単一工程で沈澱させられ、そして剪断される米国特許第3,018,091号明細書に開示されているタイプのフィブリル化装置の使用をはじめとする任意の方法によって製造することができる。
【0025】
本発明はポリピリドビスイミダゾール繊維を利用する。この繊維は、高強度のものである剛性ロッドポリマーから製造される。この繊維のポリピリドビスイミダゾールポリマーは、少なくとも20dl/gまたは少なくとも25dl/gまたは少なくとも28dl/gの固有粘度を有する。かかる繊維には、PIPD繊維(M5(登録商標)繊維としても知られ、ポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)から製造される繊維)が含まれる。PIPD繊維は下の構造をベースにしている:
【0026】
【化1】

【0027】
ポリピリドビスイミダゾール繊維は、ポリベンゾイミダゾール繊維がポリビベンゾイミダゾールであるという点において、周知の商業的に入手可能なPBI繊維すなわちポリベンゾイミダゾール繊維とは区別することができる。ポリビベンゾイミダゾール繊維は剛性ロッドポリマーではなく、ポリピリドビスイミダゾールと比較されたときに低い繊維強度および低い引張弾性率を有する。
【0028】
PIPD繊維は、約310GPa(2100グラム/デニール)の平均弾性率および約5.8Gpa(39.6グラム/デニール)以下の平均靱性を有する可能性があると報告されてきた。これらの繊維は、ブルー(Brew)ら著、Composites Science and Technology 59(1999)、1109ページ;ファンデルジャグト(Van der Jagt)、ビューカース(Beukers)著、Polymer 40(1999)、1035ページ;シッケマ(Sikkema)著、Polymer 39(1998)、5981ページ;クロップ(Klop)、ラムマース(Lammers)著、Polymer 39(1998)、5987ページ;ハーゲマン(Hageman)ら著、Polymer 40(1999)、1313ページによって記載されてきた。
【0029】
剛性ロッド・ポリピリドイミダゾールポリマーの一製造方法は、シッケマらに付与された米国特許第5,674,969号明細書に詳細に開示されている。ポリピリドイミダゾールポリマーは、乾燥原料とポリリン酸(PPA)溶液との混合物を反応させることによって製造されてもよい。乾燥原料は、ポリピリドビスイミダゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでなってもよい。本発明の布に使用される剛性ロッド繊維を製造するために使用されるポリピリドビスイミダゾールポリマーは、少なくとも25、好ましくは少なくとも100の繰り返し単位を有するべきである。
【0030】
本発明の目的のためには、ポリピリドイミダゾールポリマーの相対分子量は、メタンスルホン酸などの好適な溶媒でポリマー製品を0.05g/dlのポリマー濃度に希釈し、そして30℃で1つもしくはそれ以上の希薄溶液粘度を測定することによって好適にキャラクタリゼーションされる。本発明のポリピリドイミダゾールポリマーの分子量増加は、1つもしくはそれ以上の希釈溶液粘度測定によって好適に監視され、そしてそれらと相互に関係づけられる。従って、相対粘度(「V相対」または「η相対」または「n相対」)および固有粘度(「V固有」または「η固有」または「n固有」)の希薄溶液測定は典型的にはポリマー分子量を監視するために用いられる。希薄ポリマー溶液の相対粘度および固有粘度は、式
固有=ln(V相対)/C
(ここで、lnは自然対数関数であり、Cはポリマー溶液の濃度である)
に従って関係づけられる。V相対は、ポリマー溶液粘度対ポリマーを含まない溶媒のそれの単位なしの比であり、こうしてV固有は逆濃度の単位で、典型的にはグラム当たりのデシリットル(「dl/g」)として表される。従って、本発明のある種の態様では、メタンスルホン酸中0.05g/dlのポリマー濃度で、30℃で少なくとも約20dl/gの固有粘度を有するポリマー溶液を提供すると特徴づけられるポリピリドイミダゾールポリマーが製造される。本明細書に開示される本発明に由来するより高い分子量のポリマーは粘稠なポリマー溶液を生成するので、メタンスルホン酸中の約0.05g/dlポリマーの濃度が適量の時間で固有粘度を測定するために有用である。
【0031】
本発明で有用な模範的ピリドビスイミダゾール形成モノマーには、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、またはそれらの任意の組み合わせをはじめとする、様々な酸が含まれる。好ましくは、ピリドビスイミダゾール形成モノマーには、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が含まれる。ある種の実施形態では、ピリドイミダゾール形成モノマーはリン酸化されていることが好ましい。好ましくは、リン酸化ピリドイミダゾール形成モノマーは、ポリリン酸および金属触媒の存在下に重合させられる。
【0032】
金属粉末を、最終ポリマーの分子量を構築することを助けるために用いることができる。金属粉末には典型的には、鉄粉、スズ粉末、バナジウム粉末、クロム粉末、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0033】
ピリドビスイミダゾール形成モノマーおよび金属粉末は混合され、次に混合物はポリリン酸と反応させられてポリピリドイミダゾールポリマー溶液を形成する。追加のポリリン酸を必要ならばポリマー溶液に加えることができる。ポリマー溶液は典型的には、ダイまたは紡糸口金を通して押し出されてまたは紡糸されてフィラメントを製造するまたは紡糸する。
【0034】
PIPDパルプは、パルプが高い含水率を有することを意味する、水への高い親和力を有する。これは、水を同程度に吸収しない、そして静的問題に苦しむ他の高性能パルプに普通に関連した凝集および欠陥をもたらす静的効果を排除するのを助けると考えられる。加えて、PIPDパルプおよびPIPDフロックは両方とも、粘着性という驚くべき属性を有する、すなわち、本パルプから専らまたは本フロックから専ら形成された紙は、高性能繊維から製造された先行技術紙から予想されるより驚くほど高い強度を有する。理論によって縛られたくないが、このより高い強度はパルプおよびフロックの一片の表面間の水素結合によると考えられる。
【0035】
PIPDパルプは、当業者に周知の従来のパルプ製造法で製造することができる。例えば、スモック、ゲリー A(Smook,Gary A.)、コクレック、M.J.(Kocurek,M.J.)著、「パルプおよび紙技術者ハンドブック(Handbook for Pulp & Paper Technologists)」、パルプおよび紙工業技術協会、カナダ国パルプおよび紙協会(Technical Association of the Pulp and Paper Industry;Canadian Pulp and Paper Association);ならびにヘインズ(Haines)らに付与された米国特許第5,171,402号明細書および米国特許第5,084,136号明細書を参照されたい。
【0036】
PIPD繊維に加えて、本発明の紙組成物は、PIPD以外の他のポリマーからの溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、フレーク、および繊維;フィブリド;ならびにパルプの形態での熱硬化性および熱可塑性樹脂よりなる群から選択されるバインダー材料を含む。バインダー材料は、製紙プロセス中にまたはその後に紙組成物に導入することができる。こうして、形成されたおよびカレンダー加工された紙に、製紙プロセスが完了した後に樹脂溶液、エマルジョン、懸濁液または粉末を含浸させることができる。
【0037】
好ましい実施形態では、フェノール樹脂、エポキシ樹脂または他の樹脂は、本発明の紙に容易に含浸させられる。樹脂が含浸される能力の一尺度は、ある設定された体積の空気がいかに速く紙を通過するかを測定するガーレイ・ヒル多孔性によって測定されるような紙の多孔性によって表される。1〜20秒のガーレイ・ヒル多孔性を有する本発明の紙は、樹脂を容易に含浸すると考えられる。他の実施形態では、5〜12秒のガーレイ・ヒル多孔性を有する本発明の紙は特に好ましい。
【0038】
同様に、本発明の紙は、立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度を有し、幾つかの実施形態では、立方センチメートル当たり0.6〜1.2グラムの密度を有する。
【0039】
例えば、PIPDパルプからの紙は、次の工程を含んでなる方法によって製造することができる:(a)PIPDパルプの水性分散系を調製すること、(b)水性分散系を製紙金型キャビティで希釈すること、(c)水性分散系から水を排出させて湿った紙を生成すること、(d)得られた紙を脱水し、乾燥させること、および(e)紙を物理的特性試験のために順化させること。
【0040】
本明細書に記載される紙は構造用複合材料に有用である。紙からのかかる構造体の構成は当業者によってよく知られている。本明細書に記載される紙を使用する構造体には、ハニカムコア構造体、折り畳み紙コア、プリント配線盤、およびサンドイッチパネルが含まれる。
【0041】
構造用複合材料での利用のためには、本発明の紙は、異なる樹脂をさらに含浸させることができる。幾つかの樹脂が製紙の工程でまたはその後に紙構造体のためのバインダーとして既に使用されている場合、追加の樹脂は同じまたは異なるものであることができるが、第1のものと相溶性である。
【0042】
試験方法
次に続く非限定的な実施例で、様々な報告される特性および性質を測定するために次の試験方法を用いた。ASTMは、米国材料試験協会(American Society of Testing Materials)を意味し、TAPPIはパルプ製紙業界技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)を意味する。
【0043】
紙の厚さおよび坪量は、対応してASTM D645およびASTM D646に従って測定した。厚さ測定値を紙の見掛け密度の計算に用いた。
【0044】
紙の密度(見掛け密度)は、ASTM D202に従って測定した。
【0045】
引張強度および弾性率は、ASTM D828に従って試験検体2.54cm幅および18cmのゲージ長を使用してインストロン(Instron)タイプ試験機で本発明の紙および複合材料について測定した。
【0046】
パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、パルプの希薄懸濁液が排水されるかもしれない速度の尺度であり、TAPPI試験方法T227に従って測定した。
【0047】
繊維長さは、オプテスト・イクイップメント社(OpTest Equipment Inc.)によって製造された繊維品質分析計(Fiber Quality Analyzer)を用いてTAPPI試験方法T271に従って測定した。
【0048】
紙についてのガーレイ空気多孔性(抵抗)は、TAPPI T460に従って1.22kPaの圧力差を用いて紙のおおよそ6.4平方センチメートル円形区域についてシリンダー変位の100ミリリットル当たりの秒単位での空気抵抗を測定することによって求めた。
【0049】
引張剛性は、ASTM D828に従って試験検体2.54cm幅および18cmのゲージ長を使用してインストロン−タイプ試験機で本発明の紙について測定した。比引張剛性は、引張剛性を紙の坪量で割ることによって計算される数学量として求めた。
【実施例】
【0050】
実施例1〜3は、パルプの形態でPIPD繊維を含有する紙の製造および特性を実証する。その組成物がPIPDパルプを含む、全ての紙の引張強度は、境界方程式:
引張強度≧0.00057X
(ここで、Xは%単位での紙の全固形分中のPIPDパルプの容量部分であり、Yはg/m単位での紙の坪量である)を満たした。PIPDパルプ・ベース紙の高い強度は、製紙でおよび最終用途への紙のさらなる加工でかなりの利点をそれらに与えた(より軽い坪量へ行くことおよび/またはより簡単な、かつ、より安価な装置を用いることが可能である)。メタ−アラミドフィブリドがかかるバインダーとして働いている、実施例3に示されるように、追加のバインダーを製紙工程で使用することは依然として可能である。しかしながら、PIPD繊維ベース紙のケースでは、それは任意であり、絶対に必要なものであるわけではない。
【0051】
実施例4〜6は、実施例1〜3からの形成紙をベースとするカレンダー加工紙の製造を実証する。多くの複合材料用途向けには、高密度紙が望ましく、カレンダー加工は当該密度を達成する方法である。
【0052】
実施例7〜9は、PIPDパルプおよびそのパラ−アラミドフロックとの組成物をベースとする樹脂含浸紙(比較的小さい樹脂含有率の)を実証する。比較例Aでは、パラ−アラミドフロックおよびメタ−アラミドフィブリドの市販組成物をベースとする樹脂含浸紙を記載する。ほぼ同じ樹脂含有率で、PIPDパルプ・ベース紙は同じまたはより高い剛性およびはるかにより高い強度を与えることを理解することができる。
【0053】
比較例Aは、このケース対実施例9で紙組成物中のより高いパラ−アラミドフロックでさえ、樹脂含浸シートの剛性および強度が実施例9と比較する場合に依然としてより低いことを示す。
【0054】
実施例1
3.2g(乾燥重量)の約200mlのCSFのPIPDパルプを、300mlの水と共にウェアリング・ブレンダー(Waring Blender)に入れ、1分間かき混ぜた。分散系をおおよそ21×21cmのハンドシート金型に注ぎ込み、追加の5000gの水と混合した。ウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に入れ、麺棒で手動により平らに置き、ハンドシート乾燥機中190℃で乾燥させた。最終紙の組成および特性を表1に示す。
【0055】
実施例2
1.6g(乾燥重量)の約300mlのCSFのPIPDパルプを、800mlの水と共にウェアリング・ブレンダーに入れ、1分間かき混ぜた。1.6gのパラ−アラミドフロックを約2500g水と共に実験室パルプ粉砕機に入れ、3分間かき混ぜた。パラ−アラミドフロックは、約0.16テックスの線密度および約0.67cmのカット長を有するポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)フロック(商品名ケブラー(KEVLAR)(登録商標)49でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)によって販売される)であった。
【0056】
両分散系を、おおよそ21×21cmハンドシート金型に一緒に注ぎ込み、追加の5000gの水と混合した。ウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に入れ、麺棒で手動により平らに置き、ハンドシート乾燥機中190℃で乾燥させた。最終紙の組成および特性を表1に示す。
【0057】
実施例3
0.64g(乾燥重量)の約300mlのCSFのPIPDパルプを、800mlの水と共にウェアリング・ブレンダーに入れ、1分間かき混ぜた。2.24gのパラ−アラミドフロックと0.32g(乾燥重量基準)のCSF約40mlの未乾燥メタ−アラミドフィブリドとを約2500g水と共に実験室パルプ粉砕機に入れ、3分間かき混ぜた。パラ−アラミドフロックは、約0.16テックスの線密度および約0.67cmのカット長を有するポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)フロック(商品名ケブラー(登録商標)49でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーによって販売される)であった。メタ−アラミドフィブリドは、米国特許第3,756,908号明細書に記載されているようにポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から製造した。
【0058】
両分散系を、おおよそ21×21cmハンドシート金型に一緒に注ぎ込み、追加の5000gの水と混合した。ウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に入れ、麺棒で手動により平らに置き、ハンドシート乾燥機中190℃で乾燥させた。最終紙の組成および特性を表1に示す。
【0059】
実施例4〜6
乾燥後に、それぞれ、実施例1〜3で製造した紙サンプルを、約300℃の温度および約1200N/cmの線圧で金属−金属カレンダーのニップにてカレンダー加工した。最終紙の特性を表1に示す。
【0060】
実施例7〜9
樹脂含浸紙を、溶剤ベースのフェノール樹脂(デュレッツ・コーポレーション(Durez Corporation)製のプリオフェン(PLYOPHEN)23900)の実施例4〜6からの紙への含浸、引き続く吸取紙での表面からの過剰分の樹脂の除去および次の通り昇温することによるオーブン中での硬化によって製造した:室温から82℃までの加熱およびこの温度での15分間の保持、121℃への昇温およびこの温度でのもう15分間の保持、そして182℃への昇温およびこの温度での60分間の保持。最終含浸紙の特性を表2に示す。
【0061】
比較例A
0.64g(乾燥重量の)の約40mlのCSFのメタ−アラミドフィブリドおよび2.56gのパラ−アラミドフロックを、約2500ml水と共に実験室パルプ粉砕機に入れ、3分間かき混ぜた。メタ−アラミドフィブリドは、米国特許第3,756,908号明細書に記載されているようにポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)から製造した。パラ−アラミドフロックは、実施例2と同じものであった。分散系をおおよそ21×21cmのハンドシート金型に注ぎ込み、追加の5000gの水と混合した。ウェット−レイド・シートを形成した。シートを2片の吸取紙の間に入れ、麺棒で手動により平らに置き、ハンドシート乾燥機中190℃で乾燥させた。その後、紙を、約300℃の温度および約1200N/cmの線圧で金属−金属カレンダーのニップにてカレンダー加工し、そして実施例7〜9に記載したようにフェノール樹脂を含浸させた。最終含浸紙の組成および特性を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜100重量パーセントのポリピリドビスイミダゾール繊維と場合によりバインダー材料とを含んでなる、構造用部品として有用な紙であって、(i)立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度および(ii)平方メートル当たり10〜150グラムの坪量を有し、そして少なくとも15重量%のフェノール樹脂を含浸させたときに、少なくとも100(N/cm)(g/m)の比引張剛性を有し、ここで重量%は紙および樹脂の総重量を基準としている紙。
【請求項2】
バインダー材料がポリピリドビスイミダゾール以外のポリマーからの溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、フレーク、および繊維;フィブリド;ならびにパルプの形態での熱硬化性および熱可塑性樹脂よりなる群から選択される請求項1に記載の紙。
【請求項3】
ポリピリドビスイミダゾール繊維がPIPDである請求項1に記載の紙。
【請求項4】
フェノール樹脂含浸後、110〜150(N/cm)/(g/m)の比引張剛性を有する請求項1に記載の紙。
【請求項5】
1〜20秒のガーレイ・ヒル多孔性を有する請求項1に記載の紙。
【請求項6】
5〜12秒のガーレイ・ヒル多孔性を有する請求項5に記載の紙。
【請求項7】
70〜90重量パーセントPIPD繊維を有する請求項3に記載の紙。
【請求項8】
立方センチメートル当たり0.6〜1.2グラムの密度を有する請求項1に記載の紙。
【請求項9】
導電性フィラー、酸化防止剤、顔料、および触媒のうち少なくとも1つをさらに含んでなる請求項1に記載の紙。
【請求項10】
PIPD繊維がフロックの形態で紙へ導入される請求項1に記載の紙。
【請求項11】
PIPD繊維がパルプの形態で紙へ導入される請求項1に記載の紙。
【請求項12】
PIPD繊維がPIPDフロックとPIPDパルプとのブレンドとして紙へ導入される請求項1に記載の紙。
【請求項13】
請求項1に記載の紙を含んでなる構造コア。
【請求項14】
請求項1に記載の紙を含んでなるハニカムコア。
【請求項15】
請求項1に記載の紙を含んでなる折り畳み紙コア。
【請求項16】
請求項1に記載の紙を含んでなるプリント配線盤。
【請求項17】
請求項1に記載の紙を含んでなるサンドイッチパネル。
【請求項18】
ポリピリドビスイミダゾール繊維と場合によりバインダーとのスラリーを形成し、そして
1つもしくはそれ以上の工程で水の少なくとも一部を除去して紙を形成すること
を含んでなる紙の製造方法であって、
紙が(i)立方センチメートル当たり0.08〜1.5グラムの密度および(ii)平方メートル当たり10〜150グラムの坪量を有し、そして紙が、少なくとも15重量%のフェノール樹脂を含浸させたときに、少なくとも100(N/cm)(g/m)の比引張剛性を有し、ここで重量%は紙および樹脂の総重量を基準としている方法。
【請求項19】
形成された紙を周囲温度または高温でカレンダー加工することをさらに含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ポリピリドビスイミダゾール繊維がPIPDである請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−521624(P2009−521624A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547731(P2008−547731)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/062314
【国際公開番号】WO2007/076364
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】