説明

PLC制御対象の動作シミュレーションシステム

【課題】PLC制御対象の動作を、対象となる機械装置を用いることなくPCでシミュレーションしてソフトの動作確認をすることができるようにしたPLC制御対象の動作シミュレーションシステムを提供すること。
【解決手段】主制御装置、収集データ表示装置、データ記録装置及び要求データ表示装置からなる搬送コントローラに、ストッカー制御装置とPLCとを直列的に接続し、これにPLCプログラムのテストを行うテストプログラムを接続して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLC制御対象の動作シミュレーションシステムに関し、特に、PLC(Programable Logic Controller)制御対象の動作を、対象となる機械装置を用いることなくPC(Personal Computer)でシミュレーションしてPLCによるソフトの動作確認をすることができるようにしたPLC制御対象の動作シミュレーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、新規に製造された機械装置、これは特に限定されるものではないが、例えば液晶パネルの搬送装置(カセットストッカー)においては、液晶パネル搬送装置の加工機械装置部分と、該加工機械装置部分を予め定めたプログラムに沿って駆動するようにしたPLC(プログラム制御回路)とを個別に設計製作し、かつ該加工機械装置部分とPLCとを組み合わせて所要の動作をして稼働するようにしている。
ところで、PLCによる機械装置部分の作動が正確に動作するか否かの動作確認テストを行う場合、PLCが制御する対象の動作を作業者(人)が操作する方法と、エミュレータコンピュータを用いた方法とが提案されている。
【0003】
PLCが制御する対象の動作を作業者(人)が操作する方法においては、PLCに機械装置が液晶パネル製造工程の各操作を行う動作指令を出したことを表示するランプと、該ランプの点灯を作業者が確認して操作するようにした操作スイッチとを接続し、作業者が点灯した各ランプを確認した後、当該スイッチを押すことでPLCに応答信号を返すようにしている。
【0004】
したがって、作業者(人)が各動作毎に一々操作するので膨大な時間が掛かるとともに、この作業者による操作と実際の機械装置とのタイミングが異なる。さらには実際の機械装置と同じように各動作毎にテストするようにするとスイッチ類及びランプの数が膨大なものとなり、テスト装置が複雑高価になり、かつスイッチ及びランプ以外の模擬ができないので、実際の機械装置と同じようにテストできず、また全く同じ動作を繰り返して再現できないという問題があった。
【0005】
また、エミュレータコンピュータを用いた方法においては、PLC内で動作するプログラムの動作をコンピュータで模擬するようにしたもので、動作指令を出したことを表示するランプと、該ランプの点灯を確認して押すスイッチをコンピュータの画面に表示し、キーボードやマウスで操作するようにしている。
【0006】
したがって、この方法ではPLCが制御する対象の動作を人が操作する方法と同じように、作業者による操作が必要とするのでその操作に時間が掛かるとともに、この操作と実際の機械装置とのタイミングが異なるようになり、さらにはスイッチ及びランプ以外の模擬ができないので、実際の機械装置と同じようにテストできず、また全く同じ動作を再現できないという問題があった。
また、エミュレートしているため、実際にPLC内で動作している場合と差異ができるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、PLC制御対象の動作テスト方法の有する問題点に鑑み、PLC制御対象の動作を、対象となる機械装置を用いることなくPCでシミュレーションしてソフトの動作確認をすることができるようにしたPLC制御対象の動作シミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムは、主制御装置、収集データ表示装置、データ記録装置及び要求データ表示装置からなる搬送コントローラに、ストッカー制御装置とPLCとを直列的に接続し、これにPLCプログラムのテストを行うテストプログラムを接続して構成したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、PLCプログラムのテストを行うテストプログラムを、入出力表示回路と簡易シンボルとより構成することができる。
【0010】
また、入出力表示回路に、各入出力のオン/オフ状態を表示し、かつ該状態表示を所定周期で更新可能にするとともに、釦操作にてPLC入出力のオン/オフ状態を変更できるようにすることができる。
【0011】
また、簡易シンボルを、コマンドと、そのコマンドの演算の対象となる値や変数で構成することができる。
【0012】
また、コマンドの演算の対象となる値や変数を1ステップとし、このステップの集合を実行コードとし、各装置の動作に対応した実行コードを簡易シンボルの組み合わせにより作成し、各装置の模擬を行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムによれば、主制御装置、収集データ表示装置、データ記録装置及び要求データ表示装置からなる搬送コントローラに、ストッカー制御装置とPLCとを直列的に接続し、これにPLCプログラムのテストを行うテストプログラムを接続して構成することにより、実機と同様のタイミングで、かつ短時間で確実にテストすることができる。
【0014】
また、PLCプログラムのテストを行うテストプログラムを、入出力表示回路と簡易シンボルとより構成することにより、テストプログラムの開発を短期間で行うことができる。
【0015】
また、入出力表示回路に、各入出力のオン/オフ状態を表示し、かつ該状態表示を所定周期で更新可能にするとともに、釦操作にてPLC入出力のオン/オフ状態を変更できるようにすることにより、同じ動作を何度でも繰り返して行うことができる。
【0016】
また、簡易シンボルを、コマンドと、そのコマンドの演算の対象となる値や変数で構成することにより、テストプログラムの開発を短期間で行うことができる。
【0017】
また、コマンドの演算の対象となる値や変数を1ステップとし、このステップの集合を実行コードとし、各装置の動作に対応した実行コードを簡易シンボルの組み合わせにより作成し、各装置の模擬を行うようにすることにより、テストプログラムの開発を短期間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1〜図5に、本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムを、液晶パネル製造ラインに適用した一実施例を示す。
特に限定されるものではないが、例えば液晶パネル製造ラインは、図2に示すように、搬送ラインRに沿って複数の搬送装置CS(以下、「カセットストッカー」と言う)を配設し、かつ該各搬送装置CS(カセットストッカー)の片側或いは図示のようにその両側に複数の加工機械装置EQを配置するとともに、これらカセットストッカーCS1,CS2,・・・CSn間を、前記搬送ラインRに沿って走行するように配設した搬送台車OHVにて液晶用カセットを搬送し、各カセットストッカーCS1,CS2,・・・CSnによる工程を経て所定の液晶パネルを製造するようにしている。
そして、この搬送ラインRに沿って走行する搬送台車OHVの走行制御、各カセットストッカー内に配設したスタッカークレーン、コンベア等の制御等を、主制御装置MC、収集データ表示装置MT、データ記録装置DL及び要求データ表示装置RTからなる搬送コントローラTCSにて行うようにしている。
【0020】
各カセットストッカーCS1,CS2,・・・CSnには、それぞれそれに対応するストッカー制御装置CSCを配設して各カセットストッカーCS1,CS2,・・・CSnを制御して、前記各カセットストッカーCS1,CS2,・・・CSnにてそれぞれ予め定めた加工を施すようにするとともに、第1加工工程を経た後、次のカセットストッカーへ移送して第2の加工工程へと順次加工を施して最終的に所要の液晶パネルを製造するようにしている。
また、各カセットストッカーCS1,CS2,・・・CSnに配設しているストッカー制御装置CSCには、それぞれのストッカーを予め定めた動作を個別的に、かつ選択的に行うようにしたPLCプログラムを組み込む。
【0021】
ストッカー制御装置CSCを制御するPLCプログラムは、図1に示すように、該PLCプログラムのテストを行う入出力表示回路(I/O BOX)と簡易シンボルとより構成する。
また、この入出力表示回路に、各入出力のオン/オフ状態を表示し、かつ該状態表示を所定周期で更新可能にするとともに、釦操作にてPLC入出力のオン/オフ状態を変更できるようにする。
入出力表示回路の機能としては、特に限定されるものではないが、例えば各I/OのON/OFF状態を表示したり、I/OのON/OFF状態表示を500msec周期で更新するようにしたり、さらにはON釦(青)或いはOFF釦(白)を押すことにより、PLC入力のON/OFF状態を変更できるようにして、これをストッカー制御装置CSCを制御するPLCプログラムに接続するPCのディスプレイに表示するようにする。
また、入出力表示回路に、各入出力のオン/オフ状態を表示し、かつ該状態表示を所定周期で更新可能にするとともに、釦操作にてPLC入出力のオン/オフ状態を変更できるようにすることができ、これにより同じ動作を何度でも繰り返して容易に行うことができるものとなる。
また、PLCプログラムのテストを行うテストプログラムを、入出力表示回路と簡易シンボルとより構成することにより、テストプログラムの開発を短期間で行うことができるものとなる。
【0022】
また、簡易シンボルを、コマンドと、そのコマンドの演算の対象となる値や変数で構成し、コマンドの演算の対象となる値や変数(オペランド)を1ステップとし、このステップの集合を実行コードとし、各装置の動作に対応した実行コードを簡易シンボルの組み合わせにより作成し、各装置の模擬を簡易に行うようにする。
この1つの実行コードを処理する単位をタスクとし、マルチタスクで処理を行うようにする。このマルチタスクでの処理としては、サーボモータの模擬、IDコントローラの模擬、カセットストッカー内の各装置を組み合わせた搬送一連の流れの模擬等を行えるようにする。
なお、この簡易シンボルのコマンドの一覧を、特に限定されるものではないが、例えば図3に示すようにし、またPLCシミュレーションの実行コードを、図4に示すようにすることができる。
【0023】
次に、本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムの作用を、特に限定されるものではないが、例えばシャッターの開閉動作を図5に基づいて説明する。
ストッカー制御装置CSCを制御するPLCプログラム及びPLCプログラムに接続したPCをスタートさせると、搬送物の搬送有りセンサーにて検知(ON)すると、PLC内のシャッター制御プログラム及びPC内に組み込まれたシャッターシミュレーションプログラムに従って作動する。
【0024】
この場合、PLCプログラムでは、これがスタートすると搬送物有りセンサーがONになると、シャッター開閉用のモータを開方向に回動するよう指示し、これとともに、次に搬送物有りセンサーがOFFするまで、該モータを開方向にONするよう指令する。そして、搬送物有りセンサーがONすると、シャッター開閉用のモータを停止(OFF)するように指令し、PLCプログラムを終了する。
【0025】
また、PLCプログラムと同時にスタートしたPC内に組み込まれたシャッターシミュレーションプログラムは、PCのスタートにより搬送物有りセンサーがONするものとなり、シャッター開閉用のモータを開方向にONするか否かを検知し、モータ開方向にONするとともに、次にシャッター閉センサーがOFFか否かを検知するようになる。そして、シャッター閉センサーOFFの状態で、シャッター開センサーがONになるまで、逐次シャッター開時間を計測しており、該シャッター開センサーがONになるまで継続し、シャッター開センサーがONになるとプログラムは終了停止する。
【0026】
このように、PLC内のシャッター制御プログラム及びPC内のシャッターシミュレーションプログラムは、それぞれ予め組み込まれたプログラムに従って起動されるが、シャッター制御プログラム、シャッターシミュレーションプログラム間には逐次信号を互いにやり取りして連絡されるようになっている。
例えば、図5に示すように、PC内の搬送物有りセンサーONを検知した場合、この信号をPLCプログラムに伝達され、搬送物有りセンサーがONか否かを検知し、またPLCプログラム内のシャッター開閉用のモータを開方向にONになるならば、この信号をPC内プログラムのモータ開方向ONに伝達するようにしている。さらに、PC内プログラムのシャッター開センサーがONになると、この信号をPLCプログラムのシャッター開センサーONに伝達するようにし、これにより、実機の制御装置を接続することなく、PLCによる制御プログラムのソフトの動作確認を、PC内に組み込まれたシャッターシミュレーションプログラムに従って行うことができるようになっている。
【0027】
以上、本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムについて、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムは、PLC制御対象の動作を、対象となる機械装置を用いることなくPCでシミュレーションしてPLCによるソフトの動作確認をすることができるようにするという特性を有していることから、液晶パネルの製造ラインの用途に好適に用いることができるほか、例えば、複数の装置をプログラムに沿って順次自動運転するようにした自動製造装置や自動倉庫の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のPLC制御対象の動作シミュレーションシステムの一実施例を示す説明図である。
【図2】本発明を液晶パネル製造ラインに応用したシステム構成図である。
【図3】簡易シンボルのコマンドの一覧表である。
【図4】PLCシミュレータの実行コードの説明図である。
【図5】本発明をシャッターの開閉動作に適用した動作シミュレーションの説明図である。
【符号の説明】
【0030】
R 搬送ライン
EQ 製造装置
OHV 搬送台車
TCS 搬送コントローラ
MC 主制御装置
MT 収集データ表示装置
DL データ記録装置
RT 要求データ表示装置
CSC ストッカー制御装置
CS1,CS2,・・・CSn カセットストッカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主制御装置、収集データ表示装置、データ記録装置及び要求データ表示装置からなる搬送コントローラに、ストッカー制御装置とPLCとを直列的に接続し、これにPLCプログラムのテストを行うテストプログラムを接続して構成したことを特徴とするPLC制御対象の動作シミュレーションシステム。
【請求項2】
PLCプログラムのテストを行うテストプログラムを、入出力表示回路と簡易シンボルとより構成したことを特徴とする請求項1記載のPLC制御対象の動作シミュレーションシステム。
【請求項3】
入出力表示回路に、各入出力のオン/オフ状態を表示し、かつ該状態表示を所定周期で更新可能にするとともに、釦操作にてPLC入出力のオン/オフ状態を変更できるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のPLC制御対象の動作シミュレーションシステム。
【請求項4】
簡易シンボルを、コマンドと、そのコマンドの演算の対象となる値や変数で構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のPLC制御対象の動作シミュレーションシステム。
【請求項5】
コマンドの演算の対象となる値や変数を1ステップとし、このステップの集合を実行コードとし、各装置の動作に対応した実行コードを簡易シンボルの組み合わせにより作成し、各装置の模擬を行うようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のPLC制御対象の動作シミュレーションシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−203947(P2008−203947A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36274(P2007−36274)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】