PTPシート及びPTPシート製造装置
【課題】検査精度の向上を図ることのできるPTPシート、及び、これを製造するためのPTPシート製造装置を提供する。
【解決手段】PTP包装機は、帯状の容器フィルム3にポケット部2を形成するポケット部形成装置、当該ポケット部2に錠剤5を投入する錠剤投入装置、ポケット部2を塞ぐようにして帯状のカバーフィルム4を取着する加熱ローラ等を備えることにより、ポケット部2の底部2aにおいて、内側に向け突出した凸部2bを有したPTPシート1を製造する。
【解決手段】PTP包装機は、帯状の容器フィルム3にポケット部2を形成するポケット部形成装置、当該ポケット部2に錠剤5を投入する錠剤投入装置、ポケット部2を塞ぐようにして帯状のカバーフィルム4を取着する加熱ローラ等を備えることにより、ポケット部2の底部2aにおいて、内側に向け突出した凸部2bを有したPTPシート1を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を収容するPTPシート及びこれを製造するためのPTPシート製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、錠剤を収容するPTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された容器フィルムと、その容器フィルムにポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、錠剤のヒビ割れ等に関する検査が行われる。PTPシートは、一般に容器フィルムがPP(ポロプロピレン)等の透明な樹脂材料により形成され、カバーフィルムが透光性を有しないアルミニウム等の金属材料により形成されているため、従来では、ポケット部に錠剤が充填された後、カバーフィルムが取着される前段階において、透過光を利用した検査が行われていた。例えば、照射手段から容器フィルムに対し光が照射され、その反対側において、一方の錠剤片と他方の錠剤片との間を透過する光を検出したか否かにより、錠剤のヒビ割れ等の有無を検査することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年では、遮光性や防湿性等の向上を図るといった観点から、容器フィルムまでもアルミニウム等により形成されることが多くなっている(例えば、特許文献2参照)。かかる場合、従来のような透過光を利用した検査を行うことができないため、反射光を利用した検査を行うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−209195号公報
【特許文献2】特開2007−275936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しなしながら、図12に示すように、ポケット部70内において、ヒビ割れた錠剤75の一方の錠剤片75aと他方の錠剤片75bとが成形直後の状態のままくっついている場合、反射光を利用した検査では、錠剤75のヒビ割れた部分76を筋状の暗部として検出するため、透過光を利用した検査に比べ、錠剤75のヒビ割れた部分76を検出しにくい。
【0007】
さらに、反射光を利用した検査においては、錠剤のヒビ割れだけでなく、例えば錠剤に付着した毛髪等の異物や、予め形成された錠剤の割線等に関しても、筋状の暗部として検出されるため、検出されたものがヒビ割れなのか、そうではないのか判別することが困難であった。
【0008】
結果として、検査精度が低下するおそれがあった。
【0009】
尚、上記不具合は、容器フィルムがアルミニウム等の金属材料により形成されている場合のみならず、遮光性を有する樹脂材料等により形成されている場合にも起こり得るものである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検査精度の向上を図ることのできるPTPシート、及び、これを製造するためのPTPシート製造装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートであって、
前記ポケット部の底部において、ポケット部内側に向け突出した凸部を備えたことを特徴とするPTPシート。
【0013】
上記手段1によれば、ポケット部の底部に、ポケット部内側(カバーフィルムが取着された側)に向け突出した凸部が設けられている。したがって、当該ポケット部に投入された錠剤は、その中央部付近がポケット部底部の凸部によって支えられ、その周縁部付近が底部から浮いた状態でポケット部内に収容されることとなる。これにより、ポケット部にヒビ割れの入った錠剤が投入された場合、当該錠剤はその自重によりポケット部内において各錠剤片ごとに明確に分離されやすくなる。このようにヒビ割れた錠剤の各錠剤片がポケット部内において分離されることで、反射光を利用した検査を行うにあたり、錠剤のヒビ割れを、異物や割線と明確に区別して検出することができる。結果として、検査精度の向上を図ることができる。
【0014】
手段2.前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする手段1に記載のPTPシート。
【0015】
ここで、「アルミニウムを主材料として形成されている」とは、アルミニウム単体で形成されている場合は勿論のこと、樹脂フィルム層が介在されたアルミラミネートフィルムをも含む趣旨である。
【0016】
アルミニウムを主材料として容器フィルムを形成した場合には、ポリプロピレン(PP)やポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料から形成した場合に比べて、塑性変形しやすく元の形状に復元しにくいことから、ポケット部の潰れ変形が起こりやすくなる。これに対し、ポケット部に上記凸部を設けることで、ポケット部の強度を向上させることができる。結果として、PTPシート集積時等における外部からの圧力や、カバーフィルムの加熱貼着後におけるポケット部の内外気圧差によるポケット部の潰れ変形を防止することができる。
【0017】
手段3.前記凸部は、少なくともその頂部が断面略円弧状に湾曲したものであることを特徴とする手段1又は2に記載のPTPシート。
【0018】
上記手段3によれば、頂部が平坦な凸部に比べ、上記手段1の作用効果をより高めることができる。
【0019】
手段4.錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートを製造するためのPTPシート製造装置であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部の底部に、ポケット部内側に向け突出した凸部を形成するための凸部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部に投入された前記錠剤を検査する検査手段と、
前記ポケット部に前記錠剤が投入された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜くシート打抜手段とを備えていることを特徴とするPTPシート製造装置。
【0020】
上記手段4によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0021】
手段5.前記ポケット部形成手段として、
前記容器フィルムを挟持する第1型及び第2型と、
前記第1型及び第2型において、前記ポケット部に対応する位置に形成された孔部と、
前記第1型の孔部から前記第2型の孔部内へ出没可能に設けられ、前記容器フィルムを押圧して前記ポケット部を形成するポケット部形成型とを有してなるポケット部形成装置を備え、
前記凸部形成手段として、
前記ポケット部形成型の成形面のうち、前記ポケット部の凸部に対応した位置に設けられた形成用凹部と、
前記第2型の孔部内に設けられ、前記ポケット部形成型の突出時において前記容器フィルムを挟んで前記ポケット部形成型の形成用凹部に当接する形成用凸部とを備えたことを特徴とする手段4に記載のPTPシート製造装置。
【0022】
上記手段5によれば、ポケット部の形成と同時に、その底部に凸部を形成することができるため、生産効率の向上を図ることができる。
【0023】
手段6.前記形成用凸部が、前記ポケット部形成型の動作に追従して変位可能に構成されていることを特徴とする手段5に記載のPTPシート製造装置。
【0024】
上記手段6によれば、形成用凸部が固定されている構成に比べて、当該形成用凸部の製造誤差等を吸収でき、ポケット部の凸部をより適正な形状で形成することができる。
【0025】
手段7.前記第1型の孔部からの前記ポケット部形成型の突出量を変更可能としたことを特徴とする手段6に記載のPTPシート製造装置。
【0026】
上記手段7によれば、深さの異なる多様なポケット部を形成することができ、汎用性を高めることができる。なお、ポケット部形成型の突出量を変更する構成としては、例えばポケット部形成型のストローク量を変更する構成や、ポケット部形成型自体を別なものに取り替える構成などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPフィルムを示す斜視図であり、(c)は、PTPシートの部分拡大断面図である。
【図2】PTP包装機の全体構成を説明するための概略図である。
【図3】ポケット部形成装置の概略構成を示す部分断面図である。
【図4】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図5】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図6】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図7】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図8】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図9】ポケット部に正常な錠剤が収容された状態を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【図10】ポケット部にヒビ割れの入った錠剤が収容された状態を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【図11】別の実施形態のポケット部の形状を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【図12】従来のポケット部及びそこにヒビ割れの入った錠剤が収容された状態を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1(a)〜(c)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3の裏側に取着されたカバーフィルム4とを有している。本実施形態における容器フィルム3及びカバーフィルム4はいずれもアルミラミネートフィルムにより形成されている。
【0030】
PTPシート1は、容器フィルム3及びカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図1(b)参照)が打抜かれることで、シート状に製造される。
【0031】
図1(c)に示すように、各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。本実施形態では、錠剤5として平面視略円形状のレンズ錠が収容される。また、これに対応して、ポケット部2も平面視略円形に形成されている。
【0032】
さらに、各ポケット部2の底部2aには、内側に向け突出した凸部2bが設けられている。本実施形態における凸部2bは、平面視略円形状に形成されるとともに、断面略円弧状に湾曲形成されている。
【0033】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTPシート製造装置としてのPTP包装機8の概略について説明する。
【0034】
図2に示すように、PTP包装機8の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。
【0035】
PTP包装機8においては、ロール状に巻回された容器フィルム3が間欠的に移送されるようになっており、容器フィルム3の移送経路に沿って、ポケット部形成手段としてのポケット部形成装置14が配置されている。
【0036】
このポケット部形成装置14により、容器フィルム3に上記ポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、冷間加工により、容器フィルム3の移送動作間のインターバルにて行われる。
【0037】
さらに、ポケット部2が形成された容器フィルム3の移送経路に沿って、投入手段としての錠剤投入装置16、検査手段としての検査装置17、フィルム受けローラ18が配設されている。
【0038】
錠剤投入装置16は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を自由落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される。
【0039】
検査装置17は、照明手段としての照明装置17aや、撮像手段としてのカメラ17b等を備えている(図9参照)。図9に示すように、照明装置17a及びカメラ17bは、ポケット部2の開口部側(図9上側)に配置されている。このような構成の下、照明装置17aから照射される光が錠剤5等を照らし、錠剤5等から反射した光がカメラ17bによって撮像される。そして、検査装置17は、カメラ17bにより撮像された画像データに基づき、錠剤5のヒビ割れの有無、異物の混入等に係る検査を行う。
【0040】
また、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。
【0041】
ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、フィルム受けローラ18の方へと案内されている。フィルム受けローラ18には、加熱ローラ19が圧接可能となっており、両ローラ18,19間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ローラ18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3の裏側にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填されたPTPフィルム6が製造される。フィルム受けローラ18及び加熱ローラ19により本実施形態における取着手段が構成される。
【0042】
フィルム受けローラ18の下流では、PTPフィルム6の移送経路に沿って、ミシン目形成装置22、刻印装置23及びシート打抜装置24が順に配設されている。ミシン目形成装置22は、PTPフィルム6の所定位置にミシン目を形成する機能を有する。刻印装置23はPTPフィルム6の所定位置にロットナンバー等の識別情報を示す刻印を付す機能を有する。シート打抜装置24は、PTPフィルム6をPTPシート1単位に打抜くシート打抜手段としての機能を有する。
【0043】
前記シート打抜装置24の下流側には、シート打抜装置24からの端材25を貯留するためのスクラップ用ホッパ26が設けられている。また、シート打抜装置24の下側には、打抜かれたPTPシート1を移送するためのコンベア28が設けられている。打ち抜かれたPTPシート1は、前記コンベア28によって、完成品用ホッパ29に移送される。その後、完成品用ホッパ29に収容されたPTPシート1は、2枚1組で互いのポケット部2同士を向き合うようにしてセットされた上で、複数組ずつ集積され積上げられる。最終的には、バンド(結束)工程や、製袋工程へと案内され、箱詰めされる。但し、検査装置17によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシート1は、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0044】
なお、容器フィルム3やPTPフィルム6は、図2に示すように複数のローラを介して搬送されるようになっている。これらローラのうち、ポケット部2の膨出側に面するローラ18,31,32,33,34,35は、そのローラ表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、フィルム受けローラ18等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、基本的にはポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2がフィルム受けローラ18等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0045】
PTP包装機8の概略は以上のとおりであるが、以下においてポケット部形成装置14について詳しく説明する。
【0046】
図3に示すように、ポケット部形成装置14は、第1型としての下型41及び第2型としての上型42を備えている。固定状態にある支持台43上には、筒状の下型チャンバ44が固定されており、該下型チャンバ44上に下型41が固定されている。かかる下型41には、ポケット部2の位置に対応する位置に複数の孔部45が形成されている。
【0047】
支持台43には、複数の挿通孔が形成されており、該挿通孔にはベアリング機構を介して棒状のスライダ46が上下動可能に挿通されている。スライダ46は、カム機構50によって所定のストローク間を上下動可能となっている。スライダ46の上端には、プレート47が固定されているとともに、該プレート47上にはプラグ基部48が載置固定されている。
【0048】
該プラグ基部48は、前記孔部45に挿通可能でかつ上方へ延びる成形プラグ49を有している。成形プラグ49が本実施形態におけるポケット部形成型を構成する。成形プラグ49の先端形状は、ポケット部2の内面形状とほぼ同等となっている。つまり、成形プラグ49の先端部には、ポケット部2の底部2aの凸部2bを形成するための形成用凹部49aが形成されている。形成用凹部49aは、凸部2bに対応して断面略円弧状に形成されている。
【0049】
また、プレート47、プラグ基部48及び成形プラグ49は、カム機構50の駆動によるスライダ46の上下動によって、上下動可能となっている。
【0050】
一方、容器フィルム3の上方には、上板51が設けられている。上板51の下面にはプレート52が固定されており、該プレート52に前記上型42が固定されている。
【0051】
上板51、プレート52及び上型42は、カム機構54によって上下動可能となっている。そして、上型42を降下させ、固定状態にある下型41に対し当接させることにより、両型41,42によって容器フィルム3が挟持される。
【0052】
上型42にも、下型41と同様の孔部53が形成されている。各孔部53には、プッシャ55が上下動可能に収容されている。プッシャ55は、下側に向け凸となる断面凸型形状をなす。
【0053】
また、各孔部53の開口部付近には、プッシャ55の抜け落ちを規制する規制部53aが形成されている(図4等参照)。プッシャ55とプレート52との間には、弾性体としてのコイルばね56が収縮状態で収容されている。これにより、プッシャ55は通常時、下方へ付勢された状態となっている。
【0054】
また、プッシャ55の先端部には、ポケット部2の底部2aの凸部2bを形成するための形成用凸部55aが形成されている。形成用凸部55aの先端面は、凸部2bに対応して断面略円弧状に形成されている。成形プラグ49の形成用凹部49aと、プッシャ55の形成用凸部55aとにより、本実施形態における凸部形成手段が構成される。
【0055】
次に、容器フィルム3に対しポケット部2を形成する工程について説明する。
【0056】
通常時、すなわち容器フィルム3の搬送中においては、上型42は下型41から離間し、上方に位置している(図4参照)。この状態において、成形プラグ49は孔部45内に退避しており、容器フィルム3から下方に離れた状態となっている。
【0057】
そして、容器フィルム3の搬送が停止されると、上型42が降下し、当該上型42と下型41とによって容器フィルム3が挟持される(図5参照)。
【0058】
続いて、成形プラグ49が上昇を開始し、容器フィルム3を押圧していく(図6参照)。成形プラグ49が所定量上昇すると、容器フィルム3が成形プラグ49の形成用凹部49aと、プッシャ55の形成用凸部55aと間に挟まれた状態となる。つまり、容器フィルム3が成形プラグ49の先端部の成形面に沿った形状となり、ポケット部2の底部2a及び凸部2bに相当する部分が形成される。
【0059】
この状態のまま、成形プラグ49は、コイルばね56の付勢力に抗してプッシャ55を押し上げつつ、さらに上昇し、予め設定された位置にて停止する(図7参照)。これにより、所定の深さを有するポケット部2が容器フィルム3に形成される。
【0060】
その後、上型42が上昇して下型41から離間してから、成形プラグ49が孔部45内に退避して、ポケット部2の形成工程が終了する(図8参照)。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ポケット部2の底部2aに凸部2bが設けられる。これにより、錠剤投入装置16からポケット部2に投入された正常な錠剤5は、図9に示すように、その中央部付近がポケット部2の底部2aの凸部2bによって支えられ、その周縁部付近が底部2aから浮いた状態でポケット部2内に収容されることとなる。一方、図10に示すように、ヒビ割れの入った錠剤5がポケット部2に投入された場合には、当該錠剤5はその自重によりポケット部2内において各錠剤片5a,5bごとに明確に分離されやすい。さらに、本実施形態では、ポケット部2の凸部2bが断面略円弧状に湾曲した形状となっていることから、上記作用効果をより高めることができる。
【0062】
結果として、検査装置17において検査を行うにあたり、錠剤5のヒビ割れを、異物や割線と明確に区別して検出することができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0063】
加えて、アルミニウムよりなる容器フィルム3は、PPやPVC等の樹脂材料から形成したものに比べ、塑性変形しやすく元の形状に復元しにくいことから、ポケット部2が潰れ変形しやすいが、本実施形態のようにポケット部2に凸部2bを設けることで、ポケット部2の強度を向上させることができる。結果として、PTPシート1の集積時等における外部からの圧力や、カバーフィルム4の加熱貼着後におけるポケット部2の内外気圧差によるポケット部2の潰れ変形を防止することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、ポケット部2の形成と同時に、その底部2aに凸部2bを形成することができるため、生産効率の向上を図ることができる。さらに、プッシャ55が、成形プラグ49の動作に追従して変位可能に構成されていることで、成形プラグ49やプッシャ55の製造誤差等を吸収できるため、ポケット部2の凸部2bをより適正な形状で形成することができる。
【0065】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では、平面視略円形状の錠剤5、ポケット部2及び凸部2bを例示しているが、錠剤5、ポケット部2及び凸部2bの形状は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、錠剤5、ポケット部2又は凸部2bが、平面視で略楕円形状、略長円形状、略菱形形状等のものであってもよい。
【0067】
(b)上記実施形態の凸部2bは断面略円弧状に湾曲したものであるが、凸部2bの形状はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、凸部2bの頂部が平坦なものであってもよい。また、上記実施形態の凸部2bよりも湾曲率の大きな凸部や、突出量の大きな凸部、階段状に形成された凸部などを採用してもよい。
【0068】
(c)各フィルム3,4の材料は、アルミニウムを主材料とした金属材料に限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。さらに、遮光性を有するものであれば、金属材料に限らず、例えば合成樹脂材料等を採用してもよい。
【0069】
(d)上記実施形態では、プッシャ55が成形プラグ49の動作に追従して上下動可能に構成されているが、これに限らず、プッシャ55が上型42の孔部53内に固定された構成としてもよい。
【0070】
(e)上記実施形態では、ポケット部形成装置14により、ポケット部2の形成と同時に、凸部2bを形成する構成となっているが、これに限らず、ポケット部2の形成前又は形成後において、別途、凸部2bを形成する工程(装置)を備えた構成としてもよい。
【0071】
(f)下型41の孔部45からの成形プラグ49の突出量を変更可能な構成としてもよい。このようにすれば、深さの異なる多様なポケット部2を形成することができ、汎用性を高めることができる。なお、成形プラグ49の突出量を変更する構成例としては、例えば成形プラグ49のストローク量を変更する構成や、成形プラグ49自体を別なものに交換する構成などが挙げられる。
【0072】
同様に、成形プラグ49及びプッシャ55を、それぞれ形成用凹部49a及び形成用凸部55aの形状の異なるものに交換することで、ポケット部形成装置14全体を交換することなく、様々な形状のポケット部2及び凸部2bに対応することができる。
【0073】
さらには、プッシャ55を取外すことで、凸部2bの省略されたポケット部2を形成することもできる。
【0074】
(g)ポケット部形成装置14の上流側において加熱装置を備えた構成としてもよい。このような構成とすることで、PTP包装機8が、容器フィルム3をアルミニウム製のみならず、例えばPPやPVC等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によっても製造可能に構成された包装機(兼用機)となる。勿論、アルミニウム製の容器フィルム3を形成する場合には加熱装置は使用されない。
【0075】
(h)上記実施形態では、カム機構54により上型42を上下動させるよう構成されているが、これに限らず、シリンダ等の他のアクチュエータを用いても差し支えない。
【符号の説明】
【0076】
1…PTPシート、2…ポケット部、2a…底部、2b…凸部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、8…PTP包装機、14…ポケット部形成装置、16…錠剤投入装置、17…検査装置、18…フィルム受けローラ、19…加熱ローラ、24…シート打抜装置、41…下型、42…上型、45…孔部、49…成形プラグ、49a…形成用凹部、53…孔部、55…プッシャ、55a…形成用凸部、56…コイルばね。
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を収容するPTPシート及びこれを製造するためのPTPシート製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、錠剤を収容するPTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された容器フィルムと、その容器フィルムにポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、錠剤のヒビ割れ等に関する検査が行われる。PTPシートは、一般に容器フィルムがPP(ポロプロピレン)等の透明な樹脂材料により形成され、カバーフィルムが透光性を有しないアルミニウム等の金属材料により形成されているため、従来では、ポケット部に錠剤が充填された後、カバーフィルムが取着される前段階において、透過光を利用した検査が行われていた。例えば、照射手段から容器フィルムに対し光が照射され、その反対側において、一方の錠剤片と他方の錠剤片との間を透過する光を検出したか否かにより、錠剤のヒビ割れ等の有無を検査することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年では、遮光性や防湿性等の向上を図るといった観点から、容器フィルムまでもアルミニウム等により形成されることが多くなっている(例えば、特許文献2参照)。かかる場合、従来のような透過光を利用した検査を行うことができないため、反射光を利用した検査を行うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−209195号公報
【特許文献2】特開2007−275936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しなしながら、図12に示すように、ポケット部70内において、ヒビ割れた錠剤75の一方の錠剤片75aと他方の錠剤片75bとが成形直後の状態のままくっついている場合、反射光を利用した検査では、錠剤75のヒビ割れた部分76を筋状の暗部として検出するため、透過光を利用した検査に比べ、錠剤75のヒビ割れた部分76を検出しにくい。
【0007】
さらに、反射光を利用した検査においては、錠剤のヒビ割れだけでなく、例えば錠剤に付着した毛髪等の異物や、予め形成された錠剤の割線等に関しても、筋状の暗部として検出されるため、検出されたものがヒビ割れなのか、そうではないのか判別することが困難であった。
【0008】
結果として、検査精度が低下するおそれがあった。
【0009】
尚、上記不具合は、容器フィルムがアルミニウム等の金属材料により形成されている場合のみならず、遮光性を有する樹脂材料等により形成されている場合にも起こり得るものである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検査精度の向上を図ることのできるPTPシート、及び、これを製造するためのPTPシート製造装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートであって、
前記ポケット部の底部において、ポケット部内側に向け突出した凸部を備えたことを特徴とするPTPシート。
【0013】
上記手段1によれば、ポケット部の底部に、ポケット部内側(カバーフィルムが取着された側)に向け突出した凸部が設けられている。したがって、当該ポケット部に投入された錠剤は、その中央部付近がポケット部底部の凸部によって支えられ、その周縁部付近が底部から浮いた状態でポケット部内に収容されることとなる。これにより、ポケット部にヒビ割れの入った錠剤が投入された場合、当該錠剤はその自重によりポケット部内において各錠剤片ごとに明確に分離されやすくなる。このようにヒビ割れた錠剤の各錠剤片がポケット部内において分離されることで、反射光を利用した検査を行うにあたり、錠剤のヒビ割れを、異物や割線と明確に区別して検出することができる。結果として、検査精度の向上を図ることができる。
【0014】
手段2.前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする手段1に記載のPTPシート。
【0015】
ここで、「アルミニウムを主材料として形成されている」とは、アルミニウム単体で形成されている場合は勿論のこと、樹脂フィルム層が介在されたアルミラミネートフィルムをも含む趣旨である。
【0016】
アルミニウムを主材料として容器フィルムを形成した場合には、ポリプロピレン(PP)やポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料から形成した場合に比べて、塑性変形しやすく元の形状に復元しにくいことから、ポケット部の潰れ変形が起こりやすくなる。これに対し、ポケット部に上記凸部を設けることで、ポケット部の強度を向上させることができる。結果として、PTPシート集積時等における外部からの圧力や、カバーフィルムの加熱貼着後におけるポケット部の内外気圧差によるポケット部の潰れ変形を防止することができる。
【0017】
手段3.前記凸部は、少なくともその頂部が断面略円弧状に湾曲したものであることを特徴とする手段1又は2に記載のPTPシート。
【0018】
上記手段3によれば、頂部が平坦な凸部に比べ、上記手段1の作用効果をより高めることができる。
【0019】
手段4.錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートを製造するためのPTPシート製造装置であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部の底部に、ポケット部内側に向け突出した凸部を形成するための凸部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部に投入された前記錠剤を検査する検査手段と、
前記ポケット部に前記錠剤が投入された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜くシート打抜手段とを備えていることを特徴とするPTPシート製造装置。
【0020】
上記手段4によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0021】
手段5.前記ポケット部形成手段として、
前記容器フィルムを挟持する第1型及び第2型と、
前記第1型及び第2型において、前記ポケット部に対応する位置に形成された孔部と、
前記第1型の孔部から前記第2型の孔部内へ出没可能に設けられ、前記容器フィルムを押圧して前記ポケット部を形成するポケット部形成型とを有してなるポケット部形成装置を備え、
前記凸部形成手段として、
前記ポケット部形成型の成形面のうち、前記ポケット部の凸部に対応した位置に設けられた形成用凹部と、
前記第2型の孔部内に設けられ、前記ポケット部形成型の突出時において前記容器フィルムを挟んで前記ポケット部形成型の形成用凹部に当接する形成用凸部とを備えたことを特徴とする手段4に記載のPTPシート製造装置。
【0022】
上記手段5によれば、ポケット部の形成と同時に、その底部に凸部を形成することができるため、生産効率の向上を図ることができる。
【0023】
手段6.前記形成用凸部が、前記ポケット部形成型の動作に追従して変位可能に構成されていることを特徴とする手段5に記載のPTPシート製造装置。
【0024】
上記手段6によれば、形成用凸部が固定されている構成に比べて、当該形成用凸部の製造誤差等を吸収でき、ポケット部の凸部をより適正な形状で形成することができる。
【0025】
手段7.前記第1型の孔部からの前記ポケット部形成型の突出量を変更可能としたことを特徴とする手段6に記載のPTPシート製造装置。
【0026】
上記手段7によれば、深さの異なる多様なポケット部を形成することができ、汎用性を高めることができる。なお、ポケット部形成型の突出量を変更する構成としては、例えばポケット部形成型のストローク量を変更する構成や、ポケット部形成型自体を別なものに取り替える構成などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPフィルムを示す斜視図であり、(c)は、PTPシートの部分拡大断面図である。
【図2】PTP包装機の全体構成を説明するための概略図である。
【図3】ポケット部形成装置の概略構成を示す部分断面図である。
【図4】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図5】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図6】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図7】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図8】ポケット部の形成工程を説明するためのポケット部形成装置の部分拡大断面図である。
【図9】ポケット部に正常な錠剤が収容された状態を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【図10】ポケット部にヒビ割れの入った錠剤が収容された状態を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【図11】別の実施形態のポケット部の形状を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【図12】従来のポケット部及びそこにヒビ割れの入った錠剤が収容された状態を示す容器フィルムの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1(a)〜(c)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3の裏側に取着されたカバーフィルム4とを有している。本実施形態における容器フィルム3及びカバーフィルム4はいずれもアルミラミネートフィルムにより形成されている。
【0030】
PTPシート1は、容器フィルム3及びカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図1(b)参照)が打抜かれることで、シート状に製造される。
【0031】
図1(c)に示すように、各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。本実施形態では、錠剤5として平面視略円形状のレンズ錠が収容される。また、これに対応して、ポケット部2も平面視略円形に形成されている。
【0032】
さらに、各ポケット部2の底部2aには、内側に向け突出した凸部2bが設けられている。本実施形態における凸部2bは、平面視略円形状に形成されるとともに、断面略円弧状に湾曲形成されている。
【0033】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTPシート製造装置としてのPTP包装機8の概略について説明する。
【0034】
図2に示すように、PTP包装機8の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。
【0035】
PTP包装機8においては、ロール状に巻回された容器フィルム3が間欠的に移送されるようになっており、容器フィルム3の移送経路に沿って、ポケット部形成手段としてのポケット部形成装置14が配置されている。
【0036】
このポケット部形成装置14により、容器フィルム3に上記ポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、冷間加工により、容器フィルム3の移送動作間のインターバルにて行われる。
【0037】
さらに、ポケット部2が形成された容器フィルム3の移送経路に沿って、投入手段としての錠剤投入装置16、検査手段としての検査装置17、フィルム受けローラ18が配設されている。
【0038】
錠剤投入装置16は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を自由落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される。
【0039】
検査装置17は、照明手段としての照明装置17aや、撮像手段としてのカメラ17b等を備えている(図9参照)。図9に示すように、照明装置17a及びカメラ17bは、ポケット部2の開口部側(図9上側)に配置されている。このような構成の下、照明装置17aから照射される光が錠剤5等を照らし、錠剤5等から反射した光がカメラ17bによって撮像される。そして、検査装置17は、カメラ17bにより撮像された画像データに基づき、錠剤5のヒビ割れの有無、異物の混入等に係る検査を行う。
【0040】
また、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。
【0041】
ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、フィルム受けローラ18の方へと案内されている。フィルム受けローラ18には、加熱ローラ19が圧接可能となっており、両ローラ18,19間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ローラ18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3の裏側にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填されたPTPフィルム6が製造される。フィルム受けローラ18及び加熱ローラ19により本実施形態における取着手段が構成される。
【0042】
フィルム受けローラ18の下流では、PTPフィルム6の移送経路に沿って、ミシン目形成装置22、刻印装置23及びシート打抜装置24が順に配設されている。ミシン目形成装置22は、PTPフィルム6の所定位置にミシン目を形成する機能を有する。刻印装置23はPTPフィルム6の所定位置にロットナンバー等の識別情報を示す刻印を付す機能を有する。シート打抜装置24は、PTPフィルム6をPTPシート1単位に打抜くシート打抜手段としての機能を有する。
【0043】
前記シート打抜装置24の下流側には、シート打抜装置24からの端材25を貯留するためのスクラップ用ホッパ26が設けられている。また、シート打抜装置24の下側には、打抜かれたPTPシート1を移送するためのコンベア28が設けられている。打ち抜かれたPTPシート1は、前記コンベア28によって、完成品用ホッパ29に移送される。その後、完成品用ホッパ29に収容されたPTPシート1は、2枚1組で互いのポケット部2同士を向き合うようにしてセットされた上で、複数組ずつ集積され積上げられる。最終的には、バンド(結束)工程や、製袋工程へと案内され、箱詰めされる。但し、検査装置17によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシート1は、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0044】
なお、容器フィルム3やPTPフィルム6は、図2に示すように複数のローラを介して搬送されるようになっている。これらローラのうち、ポケット部2の膨出側に面するローラ18,31,32,33,34,35は、そのローラ表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、フィルム受けローラ18等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、基本的にはポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2がフィルム受けローラ18等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0045】
PTP包装機8の概略は以上のとおりであるが、以下においてポケット部形成装置14について詳しく説明する。
【0046】
図3に示すように、ポケット部形成装置14は、第1型としての下型41及び第2型としての上型42を備えている。固定状態にある支持台43上には、筒状の下型チャンバ44が固定されており、該下型チャンバ44上に下型41が固定されている。かかる下型41には、ポケット部2の位置に対応する位置に複数の孔部45が形成されている。
【0047】
支持台43には、複数の挿通孔が形成されており、該挿通孔にはベアリング機構を介して棒状のスライダ46が上下動可能に挿通されている。スライダ46は、カム機構50によって所定のストローク間を上下動可能となっている。スライダ46の上端には、プレート47が固定されているとともに、該プレート47上にはプラグ基部48が載置固定されている。
【0048】
該プラグ基部48は、前記孔部45に挿通可能でかつ上方へ延びる成形プラグ49を有している。成形プラグ49が本実施形態におけるポケット部形成型を構成する。成形プラグ49の先端形状は、ポケット部2の内面形状とほぼ同等となっている。つまり、成形プラグ49の先端部には、ポケット部2の底部2aの凸部2bを形成するための形成用凹部49aが形成されている。形成用凹部49aは、凸部2bに対応して断面略円弧状に形成されている。
【0049】
また、プレート47、プラグ基部48及び成形プラグ49は、カム機構50の駆動によるスライダ46の上下動によって、上下動可能となっている。
【0050】
一方、容器フィルム3の上方には、上板51が設けられている。上板51の下面にはプレート52が固定されており、該プレート52に前記上型42が固定されている。
【0051】
上板51、プレート52及び上型42は、カム機構54によって上下動可能となっている。そして、上型42を降下させ、固定状態にある下型41に対し当接させることにより、両型41,42によって容器フィルム3が挟持される。
【0052】
上型42にも、下型41と同様の孔部53が形成されている。各孔部53には、プッシャ55が上下動可能に収容されている。プッシャ55は、下側に向け凸となる断面凸型形状をなす。
【0053】
また、各孔部53の開口部付近には、プッシャ55の抜け落ちを規制する規制部53aが形成されている(図4等参照)。プッシャ55とプレート52との間には、弾性体としてのコイルばね56が収縮状態で収容されている。これにより、プッシャ55は通常時、下方へ付勢された状態となっている。
【0054】
また、プッシャ55の先端部には、ポケット部2の底部2aの凸部2bを形成するための形成用凸部55aが形成されている。形成用凸部55aの先端面は、凸部2bに対応して断面略円弧状に形成されている。成形プラグ49の形成用凹部49aと、プッシャ55の形成用凸部55aとにより、本実施形態における凸部形成手段が構成される。
【0055】
次に、容器フィルム3に対しポケット部2を形成する工程について説明する。
【0056】
通常時、すなわち容器フィルム3の搬送中においては、上型42は下型41から離間し、上方に位置している(図4参照)。この状態において、成形プラグ49は孔部45内に退避しており、容器フィルム3から下方に離れた状態となっている。
【0057】
そして、容器フィルム3の搬送が停止されると、上型42が降下し、当該上型42と下型41とによって容器フィルム3が挟持される(図5参照)。
【0058】
続いて、成形プラグ49が上昇を開始し、容器フィルム3を押圧していく(図6参照)。成形プラグ49が所定量上昇すると、容器フィルム3が成形プラグ49の形成用凹部49aと、プッシャ55の形成用凸部55aと間に挟まれた状態となる。つまり、容器フィルム3が成形プラグ49の先端部の成形面に沿った形状となり、ポケット部2の底部2a及び凸部2bに相当する部分が形成される。
【0059】
この状態のまま、成形プラグ49は、コイルばね56の付勢力に抗してプッシャ55を押し上げつつ、さらに上昇し、予め設定された位置にて停止する(図7参照)。これにより、所定の深さを有するポケット部2が容器フィルム3に形成される。
【0060】
その後、上型42が上昇して下型41から離間してから、成形プラグ49が孔部45内に退避して、ポケット部2の形成工程が終了する(図8参照)。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ポケット部2の底部2aに凸部2bが設けられる。これにより、錠剤投入装置16からポケット部2に投入された正常な錠剤5は、図9に示すように、その中央部付近がポケット部2の底部2aの凸部2bによって支えられ、その周縁部付近が底部2aから浮いた状態でポケット部2内に収容されることとなる。一方、図10に示すように、ヒビ割れの入った錠剤5がポケット部2に投入された場合には、当該錠剤5はその自重によりポケット部2内において各錠剤片5a,5bごとに明確に分離されやすい。さらに、本実施形態では、ポケット部2の凸部2bが断面略円弧状に湾曲した形状となっていることから、上記作用効果をより高めることができる。
【0062】
結果として、検査装置17において検査を行うにあたり、錠剤5のヒビ割れを、異物や割線と明確に区別して検出することができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0063】
加えて、アルミニウムよりなる容器フィルム3は、PPやPVC等の樹脂材料から形成したものに比べ、塑性変形しやすく元の形状に復元しにくいことから、ポケット部2が潰れ変形しやすいが、本実施形態のようにポケット部2に凸部2bを設けることで、ポケット部2の強度を向上させることができる。結果として、PTPシート1の集積時等における外部からの圧力や、カバーフィルム4の加熱貼着後におけるポケット部2の内外気圧差によるポケット部2の潰れ変形を防止することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、ポケット部2の形成と同時に、その底部2aに凸部2bを形成することができるため、生産効率の向上を図ることができる。さらに、プッシャ55が、成形プラグ49の動作に追従して変位可能に構成されていることで、成形プラグ49やプッシャ55の製造誤差等を吸収できるため、ポケット部2の凸部2bをより適正な形状で形成することができる。
【0065】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0066】
(a)上記実施形態では、平面視略円形状の錠剤5、ポケット部2及び凸部2bを例示しているが、錠剤5、ポケット部2及び凸部2bの形状は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、錠剤5、ポケット部2又は凸部2bが、平面視で略楕円形状、略長円形状、略菱形形状等のものであってもよい。
【0067】
(b)上記実施形態の凸部2bは断面略円弧状に湾曲したものであるが、凸部2bの形状はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、凸部2bの頂部が平坦なものであってもよい。また、上記実施形態の凸部2bよりも湾曲率の大きな凸部や、突出量の大きな凸部、階段状に形成された凸部などを採用してもよい。
【0068】
(c)各フィルム3,4の材料は、アルミニウムを主材料とした金属材料に限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。さらに、遮光性を有するものであれば、金属材料に限らず、例えば合成樹脂材料等を採用してもよい。
【0069】
(d)上記実施形態では、プッシャ55が成形プラグ49の動作に追従して上下動可能に構成されているが、これに限らず、プッシャ55が上型42の孔部53内に固定された構成としてもよい。
【0070】
(e)上記実施形態では、ポケット部形成装置14により、ポケット部2の形成と同時に、凸部2bを形成する構成となっているが、これに限らず、ポケット部2の形成前又は形成後において、別途、凸部2bを形成する工程(装置)を備えた構成としてもよい。
【0071】
(f)下型41の孔部45からの成形プラグ49の突出量を変更可能な構成としてもよい。このようにすれば、深さの異なる多様なポケット部2を形成することができ、汎用性を高めることができる。なお、成形プラグ49の突出量を変更する構成例としては、例えば成形プラグ49のストローク量を変更する構成や、成形プラグ49自体を別なものに交換する構成などが挙げられる。
【0072】
同様に、成形プラグ49及びプッシャ55を、それぞれ形成用凹部49a及び形成用凸部55aの形状の異なるものに交換することで、ポケット部形成装置14全体を交換することなく、様々な形状のポケット部2及び凸部2bに対応することができる。
【0073】
さらには、プッシャ55を取外すことで、凸部2bの省略されたポケット部2を形成することもできる。
【0074】
(g)ポケット部形成装置14の上流側において加熱装置を備えた構成としてもよい。このような構成とすることで、PTP包装機8が、容器フィルム3をアルミニウム製のみならず、例えばPPやPVC等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によっても製造可能に構成された包装機(兼用機)となる。勿論、アルミニウム製の容器フィルム3を形成する場合には加熱装置は使用されない。
【0075】
(h)上記実施形態では、カム機構54により上型42を上下動させるよう構成されているが、これに限らず、シリンダ等の他のアクチュエータを用いても差し支えない。
【符号の説明】
【0076】
1…PTPシート、2…ポケット部、2a…底部、2b…凸部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、8…PTP包装機、14…ポケット部形成装置、16…錠剤投入装置、17…検査装置、18…フィルム受けローラ、19…加熱ローラ、24…シート打抜装置、41…下型、42…上型、45…孔部、49…成形プラグ、49a…形成用凹部、53…孔部、55…プッシャ、55a…形成用凸部、56…コイルばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートであって、
前記ポケット部の底部において、ポケット部内側に向け突出した凸部を備えたことを特徴とするPTPシート。
【請求項2】
前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のPTPシート。
【請求項3】
前記凸部は、少なくともその頂部が断面略円弧状に湾曲したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTPシート。
【請求項4】
錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートを製造するためのPTPシート製造装置であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部の底部に、ポケット部内側に向け突出した凸部を形成するための凸部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部に投入された前記錠剤を検査する検査手段と、
前記ポケット部に前記錠剤が投入された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜くシート打抜手段とを備えていることを特徴とするPTPシート製造装置。
【請求項5】
前記ポケット部形成手段として、
前記容器フィルムを挟持する第1型及び第2型と、
前記第1型及び第2型において、前記ポケット部に対応する位置に形成された孔部と、
前記第1型の孔部から前記第2型の孔部内へ出没可能に設けられ、前記容器フィルムを押圧して前記ポケット部を形成するポケット部形成型とを有してなるポケット部形成装置を備え、
前記凸部形成手段として、
前記ポケット部形成型の成形面のうち、前記ポケット部の凸部に対応した位置に設けられた形成用凹部と、
前記第2型の孔部内に設けられ、前記ポケット部形成型の突出時において前記容器フィルムを挟んで前記ポケット部形成型の形成用凹部に当接する形成用凸部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載のPTPシート製造装置。
【請求項6】
前記形成用凸部が、前記ポケット部形成型の動作に追従して変位可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のPTPシート製造装置。
【請求項7】
前記第1型の孔部からの前記ポケット部形成型の突出量を変更可能としたことを特徴とする請求項6に記載のPTPシート製造装置。
【請求項1】
錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートであって、
前記ポケット部の底部において、ポケット部内側に向け突出した凸部を備えたことを特徴とするPTPシート。
【請求項2】
前記容器フィルム及び前記カバーフィルムがアルミニウムを主材料として形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のPTPシート。
【請求項3】
前記凸部は、少なくともその頂部が断面略円弧状に湾曲したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTPシート。
【請求項4】
錠剤を収容するための複数のポケット部を備え、遮光性を有する容器フィルムと、前記ポケット部を塞ぐようにして前記容器フィルムに取着されたカバーフィルムとを備えたPTPシートを製造するためのPTPシート製造装置であって、
帯状に搬送される前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部の底部に、ポケット部内側に向け突出した凸部を形成するための凸部形成手段と、
前記ポケット部に前記錠剤を投入する投入手段と、
前記ポケット部に投入された前記錠剤を検査する検査手段と、
前記ポケット部に前記錠剤が投入された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜くシート打抜手段とを備えていることを特徴とするPTPシート製造装置。
【請求項5】
前記ポケット部形成手段として、
前記容器フィルムを挟持する第1型及び第2型と、
前記第1型及び第2型において、前記ポケット部に対応する位置に形成された孔部と、
前記第1型の孔部から前記第2型の孔部内へ出没可能に設けられ、前記容器フィルムを押圧して前記ポケット部を形成するポケット部形成型とを有してなるポケット部形成装置を備え、
前記凸部形成手段として、
前記ポケット部形成型の成形面のうち、前記ポケット部の凸部に対応した位置に設けられた形成用凹部と、
前記第2型の孔部内に設けられ、前記ポケット部形成型の突出時において前記容器フィルムを挟んで前記ポケット部形成型の形成用凹部に当接する形成用凸部とを備えたことを特徴とする請求項4に記載のPTPシート製造装置。
【請求項6】
前記形成用凸部が、前記ポケット部形成型の動作に追従して変位可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のPTPシート製造装置。
【請求項7】
前記第1型の孔部からの前記ポケット部形成型の突出量を変更可能としたことを特徴とする請求項6に記載のPTPシート製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−219114(P2011−219114A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88238(P2010−88238)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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