PVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルター
【課題】本発明は、有機溶媒や水の透過性能が高く、10nm以下の径のナノ粒子の除去率が高いPVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターを提供することを課題とする。
【解決手段】網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔Cが設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔Cの最小径dが1nm以上10nm以下であるPVA多孔膜21を用いることによって前記課題を解決できる。
【解決手段】網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔Cが設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔Cの最小径dが1nm以上10nm以下であるPVA多孔膜21を用いることによって前記課題を解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(以下、PVAという。)は、水酸基を有する中性のポリマーであり、生体材料としての適合性が高く、医療分野での用途が大きい。また、結晶化により高いガスバリア性を示し、耐有機溶媒性も有することから工業的な重要性が高い。特に、PVAの共重合体は、ガスバリア性だけでなく、加工性も優れ、偏光フィルムやエンジニアリングプラスチックとしても利用されている。
【0003】
PVAの多孔膜は、主に中空糸の形態として透析などの医療用分離膜として開発されてきた。例えば、PVAの水溶液を二重ノズルから脱水性の塩類の水溶液に押し出すことで、チューブ状の膜が得られる。しかしながら、このような方法で多孔膜の細孔サイズを制御することは難しい。
【0004】
特許文献1、非特許文献1〜4にはPVAを用いた濾過フィルターについて記載がある。
特許文献1は、ポリビニルアルコール系中空繊維膜及びその製造方法に関するものであり、PVA中空糸における温度制御による細孔サイズ制御について記載されている。
細孔サイズの制御には、温度設定を厳密に行う方法が一般的である、例えば、PVAとポリエチレングリコールを含む紡糸原液を上限臨界共溶点以上に設定したノズルから該共溶点以下の凝固浴中に押し出すと、脱水性の塩を含む凝固浴中で紡糸原液のミクロ相分離が促進され、細孔サイズのシャープな中空糸膜が得られる。しかし、温度を低下させることで相分離を促進する方法では、溶融状態のPVAとポリエチレングリコール(ポア形成剤)が容易に長距離を移動するために、10nm以下で細孔サイズを制御することが困難であった(特許文献1)。
【0005】
非特許文献1には、表面に細孔をもつPVAの平膜を作製したことが記載されている。
PVAの多孔膜を平膜で作製する場合も、脱水性の塩を含む凝固浴中でPVAの相分離を利用している。例えば、デキストランとPVAの混合液をキャストして作製した100μmの厚みの膜を凝固浴中に浸すと、表面に数10nmの細孔を有する膜が得られる。しかしながら、100μmの厚みの膜で高い透過流束を得ることは困難であった(非特許文献1)。
【0006】
非特許文献2には、界面架橋によるPVAのナノ濾過膜を作製したことが記載されている。
1nm以下の細孔をもつPVAの多孔膜は、例えば、多孔性のポリスルフォン膜の支持体にPVA水溶液をしみ込ませ、グルタルアルデヒドで架橋することで得られている。界面でのPVAの架橋では、無機塩を阻止できるナノ濾過膜が得られている(非特許文献2)。
【0007】
非特許文献3には、熱架橋によりPVAの高透水性の限外濾過膜を作製したことが記載されている。非特許文献4は、PVA膜の様々な架橋技術に関する総説である。
PVAの多孔膜は、エレクトロスピニング法で作製したナノ繊維状の支持体にPVAとグルタルアルデヒドの混合液をキャストし、熱架橋することでも作製されている。しかし、この方法は、膜厚を500nmより薄くすることが困難であった(非特許文献3)。最近の架橋PVA膜の研究は、Boltoらによってまとめられている(非特許文献4)。
【0008】
これまでのPVAの多孔膜の研究を概観した場合、多くは相分離法を用いて製造されてきたが、1〜10nmの範囲で細孔サイズが制御されており、かつ膜厚が500nm以下である多孔膜が見出されていない。溶質に対する高い阻止率と、溶媒に対する高い透過流束を実現するには、この2つの条件を両立させることが重要であるが、多くのPVAの多孔膜は、数μm以上の膜厚を有する。キャスト法では、1μm以下の多孔膜を作製することが可能であるが、膜厚が500nm以下では、多孔性の支持体の表面をPVA膜で一様に覆うことが困難であった。
【0009】
特許文献2、非特許文献5〜8にはナノストランドについて記載がある。
特許文献2は、金属酸化物ナノファイバー及びその製造方法、並びに該ナノファイバーを用いたナノ複合材料に関するものであり、ナノストランドの基本特許である。ナノストランドが、複数の水酸基を有する糖などを吸着することが記載されている。非特許文献5は、ナノストランドの発見を説明した総説である。
【0010】
ナノストランドは、金属水酸化物の極細のナノファイバーであり、表面が著しく正に荷電しており、水に分散して存在できる。水酸化銅のナノストランドは、硝酸銅の希薄な水溶液に塩基を加えることで形成する。その直径は、約2.5nmであり、長さは数10μmに達する(非特許文献5)。ナノストランドは、アニオン性の色素や高分子を吸着するが、複数の水酸基をもつ糖などの有機化合物も吸着する(特許文献2)。このため、水中に存在するナノストランドは、その表面に複数の水酸基をもつPVAを吸着させ、PVA−ナノストランド複合体を形成する。
【0011】
非特許文献6には、ナノストランドとタンパク質の複合ファイバーから作製した自立膜が限外濾過膜となることが記載されている。非特許文献7には、ナノストランドに導電性高分子(ポリピロール、ポリアニリン)をコーティングし、濾過により自立膜が形成でき、これが限外濾過膜となることが記載されている。
【0012】
ナノストランドは、PVA以外にもタンパク質や共役高分子を吸着してナノファイバーを形成する。これらのナノファイバーを濾過すると、優れた限外濾過膜が得られることが既に報告されている(非特許文献6、7)。
【0013】
非特許文献8には、ナノストランドシートを利用して濾過法により架橋高分子の薄膜を作製し、これが優れた限外濾過膜となることが記載されている。
ナノストランドの水溶液を多孔性のフィルターで濾過すると、フィルターの表面にナノストランドのシートが得られる。このナノストランドのシートは、ナノ粒子や架橋高分子などの数nmの広がりをもつ物質を濾過することができ、これらの極薄のシートを与えることから、高分子薄膜の製造に広く用いられてきた(非特許文献8)。ナノストランドのシートは、PVAを濾過することもでき、部分的に架橋したPVAであれば、より容易に濾過することができる。その結果、極薄のPVA膜を形成できることは、非特許文献8からも容易に推定できる。
【0014】
しかしながら、ナノストランドシートを利用して作製した極薄のPVA膜を多孔化することは容易でなかった。PVA膜は、水で膨潤するため、透水性が必ずしも高くない。脱水条件下で加熱して結晶化すると、溶媒を殆ど通さなくなる。架橋密度を上げると、いわゆるゲル膜としての透水性が維持されるが、有機溶媒を透過させるような細孔を維持することが困難であった。
【0015】
PVA−ナノストランド複合体も、多孔性の支持体で濾過すると、極薄の高分子膜となる。しかしながら、この膜でも、膨潤したPVA鎖がナノストランドの隙間を埋めており、透水性が高くなかった。
【0016】
通常の工業用の限外濾過膜は、数μmの分離機能層を有する。このため、流束が小さく、濾過効率が低いという問題があった。さらに、細孔のサイズ分布がブロードであり、所定のサイズのナノ粒子の除去率が低いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平9−52030号公報
【特許文献2】特許第4314362号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Chuang,et al.、Polymer、41巻、5633−5641ページ、2000年.“The effect of polymeric additives on the structure and permeability of poly(vinyl alcohol) asymmetric membranes”
【非特許文献2】Jahanshahi,et al.、Desalination、257巻、129−136ページ、2010年.“Developing thin film composite poly(piperazine−amide) and poly(vinyl−alcohol) nanofiltration membranes”
【非特許文献3】Ma,et al.、Industrial & Engineering Chemistry Research、49、11978−11984ページ、2010年.“Thin−film nanofibrous composite ultrafiltration membranes based on polyvinyl alcohol barrier layer containing directional water channels”
【非特許文献4】Bolto,et al.、Progress in Polymer Science、34、969−981ページ、2009年.“Crosslinked poly(vinyl alcohol) membranes”
【非特許文献5】一ノ瀬泉、現代化学、450巻、49−53ページ、2008年 “水中に存在していた巨大カチオン”
【非特許文献6】Peng,et al.,Nature Nanotechnology,6巻,353−357ページ,2009年 “Ultrafast permeation of water through protein−based membranes”
【非特許文献7】Peng,et al.,Advanced Functional Materials,17巻,1849−1855ページ,2007年 “Mesoporous separation membranes of polymer−coated copper hydroxide nanostrands”
【非特許文献8】Wang,et al.,Advanced Materials,23巻,2004−2008ページ,2011年 “Ultrafiltration membranes composed of highly cross−linked cationic polymer gel: the network structure and superior separation performance”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、透水性が高く、10nm以下の径のナノ粒子の除去率が高いPVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本研究者は、上記事情を鑑みて、研究開発を行い、PVA−ナノストランド複合体を薄膜化して、エタノールに浸すことで、1nm以上10nm以下の細孔を有するPVA多孔膜が得られることを見出した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0021】
(1) 網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔が設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔の最小径が1nm以上10nm以下であることを特徴とするPVA多孔膜。
(2) 前記PVAが架橋剤により架橋されていることを特徴とする(1)に記載のPVA多孔膜。
(3) 前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする(2)に記載のPVA多孔膜。
【0022】
(4) PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有することを特徴とするPVA多孔膜の製造方法。
【0023】
(5) 前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させた後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする(4)に記載のPVA多孔膜の製造方法。
(6) 前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする(4)に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【0024】
(7) PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合することを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載のPVA多孔膜の製造方法。
(8) 前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする(7)に記載のPVA多孔膜の製造方法。
(9) (1)〜(3)のいずれか1に記載のPVA多孔膜が、多孔性材料からなるフィルター上に配置されていることを特徴とするPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
(10) 前記多孔性材料が、PC、PTFE又はCAのいずれか一の材料であることを特徴とする(9)に記載のPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
【発明の効果】
【0025】
本発明のPVA多孔膜は、網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔が設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔の最小径が1nm以上10nm以下である構成なので、500nm以下という極薄の膜が透過流束を高めて透水性を高くできるとともに、1nm以上10nm以下に制御した各細孔の最小径が細孔のサイズ分布を狭くでき、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くすることができる。
【0026】
本発明のPVA多孔膜の製造方法は、PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有する構成なので、骨組みとして形成したナノストランドに取り付けた膨潤PVAを凝集させてから、ナノストランドのみを除去することができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0027】
本発明のPVA多孔膜を有する濾過フィルターは、先に記載のPVA多孔膜が、多孔性材料からなるフィルター上に配置されている構成なので、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしたPVA多孔膜であっても、容易に取り扱うことができる。また、このフィルターの透過流束は、多孔性の支持体の表面に形成された極薄のPVA多孔膜によって支配され、著しく大きな透過速度を有する濾過フィルターとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルターの一例を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
【図2】図1(b)のB部拡大模式図である。
【図3】本発明の実施形態であるPVA多孔膜が得られるメカニズムの説明図である。
【図4】本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法を説明する工程図である。
【図5】本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法を説明する工程図である。
【図6】本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法を説明する工程図である。
【図7】実施例1での水酸化銅のナノストランドのSEM像である。
【図8】実施例1でのPVAが表面に吸着したナノストランドのSEM像である。
【図9】実施例1でのPVA−ナノストランド複合体の膜の断面SEM像である。
【図10】実施例1で作製したPVA多孔膜の表面SEM像である。
【図11】実施例1で作製したPVA多孔膜の断面SEM像である。
【図12】実施例1で作製したPVA多孔膜(M−1)の5nm金ナノ粒子の濾過性能である。
【図13】実施例1で作製したPVA多孔膜(M−3)の5nm金ナノ粒子の濾過性能である。
【図14】実施例2で作製したPVA多孔膜(M−11)の断面SEM像である。
【図15】実施例2で作製したPVA多孔膜(M−13)の断面SEM像である。
【図16】実施例3で作製したGA架橋−PVA多孔膜の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本発明の実施形態)
<PVA多孔膜を有する濾過フィルター>
まず、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルターについて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルターの一例を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
図1(a)に示すように、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、平面視略円形状である。しかし、これに限られず、平面視略矩形状、平面視略多角形状、平面視略楕円形状等としてもよい。
図1(b)に示すように、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、本発明の実施形態であるPVA多孔膜21が、多孔性材料からなるフィルター31上に配置されてなる。
【0030】
フィルター31に用いる多孔性材料には、幅広い材質、細孔サイズ、形状及び膜厚のものを利用できる。
多孔性材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はセルロースアセテート(CA)のいずれかの材料が好ましい。PC、PTFE又はCAのいずれかの材料を用いることにより、取り扱いを容易にでき、濾過フィルターの強度及び耐久性を高めることができる。
多孔性材料の孔径は数nm〜数μmのものを用いることができる。
【0031】
フィルター31は、必ずしも平膜である必要はない。例えば、中空糸等を用いてもよい。中空糸等の表面であっても、PVA−ナノストランド複合体の膜を形成することが可能であり、以下説明する製造方法により、PVA多孔膜21を形成できる。
【0032】
<PVA多孔膜>
次に、本発明の実施形態であるPVA多孔膜について説明する。
PVA多孔膜21の膜厚は、10nm以上500nm以下の範囲である。PVA多孔膜21の膜厚を10nm以上とすることにより、分離膜としての阻止性能を高くできるとともに、膜厚を500nm以下とすることにより、溶媒の透過速度を速くでき、濾過性能の高い濾過フィルターとして用いることができる。
PVA多孔膜21の膜厚を10nm未満とした場合には、分離膜としての阻止性能が低下する。また、PVA多孔膜における溶媒の透過速度は、膜の厚みに反比例して減少するが、前記膜厚を500nm超とした場合、透過速度の減少が顕著になる傾向がある。
なお、PVA多孔膜21の膜厚は、PVA−ナノストランド混合液の濾過量や該混合液中のPVA濃度によって制御できる。
【0033】
図2は、図1(b)のB部拡大模式図である。
図2に示すように、本発明の実施形態であるPVA多孔膜21は、凝集されたPVAが網目状に集積されてなる。PVAの高分子鎖間には、複数の細孔Cが形成されており、網目状に集積されたPVAは、PVA多孔膜を構成している。各細孔Cは、一面側から他面側に連通されている。一面側と他面側の間で、細孔Cの径は一定ではなく、大きくなったり、小さくなったりしている。
【0034】
細孔Cの最小径dは1nm以上10nm以下の範囲である。各細孔Cの最小径dを1nm以上10nm以下に制御することにより、細孔Cのサイズ分布を狭くすることができ、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くすることができる。
【0035】
PVAは、架橋剤により架橋されていてもよい。PVAを、架橋剤により架橋することによって、網目状の集積構造を強化することができ、より安定な、かつ、より強固な膜とすることができる。
前記架橋剤としては、グルタルアルデヒド(GA)又はテトラエトキシシラン(TEOS)が好ましい。これらの材料は、取り扱いが容易であり、PVAを容易に架橋できる。架橋剤により架橋したPVA多孔膜は、水への安定性も向上する。
【0036】
さらに、PVA多孔膜に水をしみ込ませることで、二酸化炭素の選択的な分離膜として利用できる。これは、PVA多孔膜の細孔に取り込まれた水が二酸化炭素を選択的に溶解するためである。従って、PVA多孔膜に、特定のガスを溶解しやすい物質を取り込ませると、ガス分離膜としての選択性が向上することが容易に予想できる。本発明のPVA多孔膜の主な用途としては、有機溶媒用の濾過フィルターを想定しているが、上記の理由により、水処理膜やガス分離膜への応用も可能である。
【0037】
<PVA多孔膜の製造方法>
次に、本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態であるPVA多孔膜が得られるメカニズムの説明図である。PVA多孔膜が得られるメカニズムは以下のように説明できる。
【0038】
(1)まず、ナノストランドは、表面に多くの正電荷を有しており、水中でPVAを吸着後も、正電荷を保持している。このため、沈殿や凝集を起こすことなく、濾過により一定の厚みの膜を与える。PVAが中性の高分子であるため、PVA−ナノストランド複合体の膜は、厚み10nmまで極薄にすることができる。
(2)PVA−ナノストランド複合体の膜においても、ナノストランドは均質に分散しており、ナノストランドの回りには、PVAが吸着している。
(3)図3(a)に示すように、PVAは、ナノストランドへの吸着性が弱く、一部は水和して膨潤状態にある。これにエタノールを接触させると、図3(b)に示すように、PVAが凝集する。
(4)PVAは、一部がナノストランドに吸着しているため、凝集の際、分子鎖が長距離を移動できず、ナノストランドの表面に凝集する。
(5)その後、酸でナノストランドを溶出すると、図3(c)に示すように、ネットワーク状に凝集したPVA多孔膜が得られる。
即ち、本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、ナノストランドを利用して、PVAの凝集状態を制御することにより、1nm以上10nm以下の細孔を有するPVA多孔膜を提供するものである。
【0039】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、PVA−ナノストランド混合液調製工程S1と、PVA−ナノストランド複合体の膜形成工程S2と、PVA−ナノストランド複合体の膜の有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液(以下、有機溶媒等という。)、及び酸接触工程S3と、を有する。
【0040】
(PVA−ナノストランド混合液調製工程S1)
PVA−ナノストランド混合液調製工程S1は、ナノストランド水溶液調製工程と、PVA−ナノストランド混合液調製工程と、を有する。
まず、図4(a)に示すように、例えば、アミノエタノール水溶液と硝酸銅水溶液を混合・攪拌後、放置して、ナノストランド水溶液を調製する。
【0041】
ナノストランドとしては、水酸化銅、水酸化カドミウム、水酸化亜鉛のナノストランドが好適に用いられるが、取り扱いの観点から、水酸化銅のナノストランドが最適である。
なお、ナノストランドの濃度は、合成に用いた銅塩の濃度に換算すると2mM前後が適当であり、合成に用いた塩基の濃度に換算すると0.5mM程度が適当である。
【0042】
次に、図4(b)に示すように、PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する。
PVA−ナノストランド混合液におけるPVAの濃度は、0.005〜0.2mg/mL程度が適当である。
PVAとしては、ケン化度が高いものが好ましい。ただし、本発明では、PVAの希薄な水溶液を調製できればよく、0.005mg/mL以上の溶解性があればよい。また、水への溶解性をもつものであれば、PVAの共重合体でもよい。
【0043】
PVA−ナノストランド混合液は、グルタルアルデヒド(GA)やテトラエトキシシラン(TEOS)などの架橋剤を含むPVA水溶液から作製してもよい。
PVAには、様々な架橋剤を利用できることが知られており、その具体例は、論文5の総説に記載されている。
【0044】
ナノストランドは、複数の水酸基をもつ化合物をその表面に吸着する。
このため、実証されている訳ではないが、複数の水酸基を有し、有機溶媒に接触させることで凝集する性質の水溶性ポリマーであれば、PVAの代わりに利用できることを容易に予測できる。
【0045】
(PVA−ナノストランド複合体の膜形成工程S2)
次に、図5に示すように、PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する。
該濾過時間は、数分から数10分である。
【0046】
表面に数μmの孔をもつ多孔性材料を用いる場合には、該多孔性材料の表面を予めナノストランドのシートで覆うことが好ましい。平滑なナノストランドのシート上に、平滑なPVA−ナノストランド複合体の膜を形成してから、ナノストランドシートを除去することにより、表面に数μmの孔をもつ多孔性材料からなるフィルター上にも、平滑なPVA−ナノストランド複合体の膜を形成することができる。
なお、ナノストランドシートを除去する際、吸引濾過することにより、フィルター上に安定に配置されたPVA−ナノストランド複合体の膜を形成することができる。
【0047】
(PVA−ナノストランド複合体の膜の有機溶媒等、及び酸接触工程S3)
次に、前記PVA−ナノストランド複合体の膜に有機溶媒等及び酸を接触させる。
有機溶媒等は、先に記載したように、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液である。
【0048】
PVA−ナノストランド複合体の膜に有機溶媒等及び酸を接触させる方法としては、濾過法、浸漬法等がある。
濾過法は、PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして用いて、有機溶媒等及び酸を透過させる方法である。
具体的には、図6(a)に示すように、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させる。
【0049】
PVA−ナノストランド複合体の膜に有機溶媒等を接触させることにより、図3(a)及び図3(b)に示したように、膨潤したPVAを凝集させることができる。
該有機溶媒等の役割は、PVA−ナノストランド複合体の膜から水を吸収することである。このような有機溶媒としては、エタノールが好適に用いられる。また、他の水と混和する有機溶媒(メタノール、プロパノール、THF、アセトン、アセトニトリル等)も好適に用いられる。ただし、THFなどは、多孔性の支持体を膨潤させたり溶解させたりする可能性があり、使用に注意を要する。
【0050】
有機溶媒の代わりに、脱水性の塩の水溶液を利用してもよい。脱水性の塩は、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等である。これら脱水性の塩の水溶液によっても、PVA−ナノストランド複合体の膜から水を吸収することができる。
PVA−ナノストランド複合体の膜から水を吸収することにより、膨潤したPVAを凝集させることができる。
【0051】
次に、図6(b)に示すように、PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして用いて、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる。
酸により、ナノストランドを除去することができ、PVA多孔膜を製造できる。
【0052】
なお、このPVAの凝集操作とナノストランドの除去操作を1段階で行ってもよい。つまり、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程のみとしてもよい。
PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして用いて、所定の濃度の酸を添加した有機溶媒等を通過させることにより、PVAの凝集を生じさせるとともに、酸でナノストランドを除去して、PVA多孔膜を製造できる。
50mM程度の塩酸のエタノール溶液を用いる場合、PVAの凝集がナノストランドの溶出よりも先に起こることが確認されている。そのため、1段階の操作であっても、PVAを凝集させた後、ナノストランドの除去を行うことができ、PVA多孔膜を形成できる。
【0053】
浸漬法は、PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒等及び酸に浸漬する方法である。濾過法と同様の原理により、PVA−ナノストランド複合体の膜において、PVAを凝縮させ、その後、ナノストランドを除去することにより、PVA多孔膜を形成できる。
【0054】
PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合してもよい。前記架橋剤としては、GA又はTEOSを挙げることができる。GAやTEOS等の架橋剤を含むPVAを用いた場合、ナノストランドの除去前後に加熱処理、酸処理等を行って、PVAの架橋度を大きくすることができる。
【0055】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔Cが設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔Cの最小径dが1nm以上10nm以下である構成なので、500nm以下という極薄の膜が有機溶媒や水の透過流束を高くできるとともに、1nm以上10nm以下に制御した各細孔の最小径が細孔のサイズ分布を狭く(シャープに)でき、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くすることができる。
具体的には、有機溶媒や水の流束は、80kPaの圧力差において20〜4000L/m2hの範囲にできる。また、10nm以下のナノ粒子をほぼ100%の除去率で分離でき、5nm以下のナノ粒子を90〜100%の除去率で分離できる。
更に、PVA多孔膜に水をしみ込ませることで、二酸化炭素の選択的な分離膜として利用でき、特定のガスを溶解しやすい物質を取り込ませると、ガス分離膜としての選択性を向上させることができ、ガス分離膜への応用も可能である。
【0056】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、前記PVAが架橋剤により架橋されている構成なので、網目状の集積構造を強化することができ、より安定な、かつ、より強固な膜とすることができる。これにより、例えば、水処理用の限外濾過膜やガス分離膜として利用できる。
【0057】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、前記架橋剤がGA又はTEOSである構成なので、網目状の集積構造を強化することができ、より安定な、かつ、より強固な膜とすることができる。これにより、例えば、水処理用の限外濾過膜やガス分離膜として幅広い応用分野に利用できる。
【0058】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有する構成なので、骨組みとして形成したナノストランドに取り付けた膨潤PVAを凝集させてから、ナノストランドのみを除去することができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0059】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させた後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程である構成なので、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液の透過の際に、PVAをナノストランドに凝集させて、相分離構造をナノスケールで制御することができ、その後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過の際に、ナノストランドを除去することができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0060】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程である構成なので、PVAの凝集操作とナノストランドの除去操作を1段階で行うことができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0061】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合する構成なので、架橋剤により架橋されているPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0062】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、前記架橋剤がGA又はTEOSである構成なので、GA又はTEOSにより架橋されているPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0063】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、PVA多孔膜21が、多孔性材料からなるフィルター31上に配置されている構成なので、PVA多孔膜の膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしても、容易に取り扱うことができる。
【0064】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、前記多孔性材料が、PC、PTFE又はCAのいずれか一の材料である構成なので、取り扱いを容易にでき、濾過フィルターの強度及び耐久性を高めることができる。また、前記多孔性材料がPVAとは異なる素材なので、限外濾過膜としての耐圧性などの材料特性を幅広く調整できる。
【0065】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
室温(20℃)において、4mMの硝酸銅水溶液50mLに1mMのアミノエタノール水溶液50mLを一気に混合し、約10秒間撹拌後、室温で7日間放置した。
この水溶液4mLを、径200nmの孔を有するポリカーボネート製フィルター(有効面積2.27cm2:以下、PC製フィルターという。)で濾過した。これにより、PC製フィルター上にナノストランド膜を形成した。
該フィルターのナノストランド膜側の表面に白金を約2nm蒸着後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、7日間放置した水溶液の中に水酸化銅のナノストランドが形成されていることを確認した(図7)。
【0067】
上記の方法で調製したナノストランドの水溶液4mLを撹拌しながら、PVA(分子量:約10万、ケン化度:99%)の1mg/mLの水溶液を所定量(30μL〜600μL)加え、さらに5分間撹拌した。
PVA−ナノストランド混合液の4mLを、PC製フィルターを用いて減圧下(大気圧との圧力差:80kPa)で濾過し、引き続き10分間、減圧下で放置した。これにより、PC製フィルター上にPVA−ナノストランド膜を形成した。
【0068】
このフィルターのPVA−ナノストランド膜側の表面に白金を約2nm蒸着後、走査型電子顕微鏡で観察した。
図8には、PVA水溶液の混合量が200μLである場合のPC製フィルターの表面の観察像を示す。
PVAがナノストランドの表面に吸着しているため、ナノストランド単独の場合(図7)と比較して、ファイバーの幅が大きくなっていることが確認できた。
図9には、図8の試料を切断し、PVA−ナノストランド複合体の膜断面を観察した結果を示す。この写真から、PVA−ナノストランド複合体が約100nmの一定の膜厚を有し、PC製フィルターの200nmの孔を覆っていることが確認できた。
【0069】
PVA−ナノストランド複合体の膜からナノストランドを除去し、PVA多孔膜を製造するために、以下の操作を行った。
まず、所定量のPVA水溶液を用いて作製した前記PVA−ナノストランド混合液(4mL)を80kPaの減圧下でPC製フィルターを用いて濾過し、引き続き10分間、減圧下で放置した。
次に、50mMの塩酸のエタノール溶液(5規定の塩酸水溶液40μLを4mLのエタノールで希釈して調製)の4mLを濾過し、ナノストランドを溶出させた。
【0070】
表1には、PVA水溶液の混合量、PVA−ナノストランド混合液の濾過量、得られたPVA多孔膜の膜厚、ならびにPVA多孔膜に生じた細孔のサイズをまとめた。実施例1で作製したPVA多孔膜の膜厚と細孔サイズである。
PVA−ナノストランド混合液の調製に用いたナノストランド水溶液の量は全て4mLであり、細孔サイズの確認は、3.5nmのミオグロビンと5nmの金ナノ粒子の阻止率から確認した。
表1に示すように、PVA多孔膜の膜厚は、PVA水溶液の混合量と伴に増加した。
【0071】
【表1】
【0072】
図10には、PVA水溶液の混合量を50μLとした場合のPVA多孔膜(表1のM−3に対応)の断面の走査電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
この像からPVA多孔膜が多くの細孔を持つことが確認できた。
また、図10における円形状の濃い部分は、PC製フィルターの孔に対応しており、この多孔膜がフィルターの200nmの孔を覆うように形成されていることが分かった。
図11には、200μLのPVA水溶液を混合することで製造されたPVA多孔膜の断面の観察像(表1のM−5に対応)を示す。
このPVA多孔膜の膜厚は、85nmであった。
【0073】
表1に示すように、実施例1において、5nmの金ナノ粒子を阻止できる最も薄いPVA多孔膜の厚みは16nmであった。
PVA水溶液の混合量が30μL以下の場合、支持体の200nmの孔を完全に覆うことができなかった。
【0074】
実施例1では、PVA多孔膜のナノ細孔のサイズを評価するために、金ナノ粒子の阻止率を評価した。
PVA多孔膜が水に溶解するため、金ナノ粒子の溶液は、市販のナノ粒子の水分散液をエタノールで50倍に希釈することで調製した。
【0075】
5nmの金ナノ粒子のエタノール溶液4mLを濾過した場合の濾過速度を表2にまとめた。実施例1で作製したPVA多孔膜のエタノールの透過性能である。
表2の膜の番号(M−1〜M−8)は、表1の番号に対応している。
M−1の膜では、減圧下(80kPa)でのエタノールの流束が846L/m2hであり、このような高速で金ナノ粒子を除去できる(図12を参照)ことが確認できた。
エタノールの流束は、膜厚の増加とともに減少した。
【0076】
【表2】
【0077】
図12は、表2のM−1の膜を用いて5nmの金ナノ粒子(エタノール溶液)を濾過した場合の紫外・可視吸収スペクトルの変化を示す。
濾過前の溶液(原液)が520nm付近の波長域に吸収極大をもつのに対し、濾過された溶液(濾過後)では、このピークが失われており、金ナノ粒子が除去されていることが分かった。
【0078】
図13には、表2のM−3の膜を用いて同様の実験を行った場合の濾過前後の吸収スペクトル変化を示す。
M−1からM−8の全てのPVA多孔膜において、直径5nmの金ナノ粒子の阻止率は、98〜100%であった。
【0079】
M−3では、エタノールに溶解したミオグロビン(10μg/mL)の阻止率を確認したところ、50%の阻止率が得られ、ミオグロビンのエタノール溶液の濾過速度は、80kPaの圧力差で、171L/m2hであった。
ミオグロビンは、直径約3.5nmのタンパク質である。
同様な結果は、他の膜でも得られており、本発明のPVA多孔膜は、直径3〜5nmのナノ細孔を有していることが確認できた。
【0080】
(実施例2)
PVA多孔膜は、様々な支持体の表面を覆うことができる。
実施例2では、耐有機溶媒性をもつポリテトラフルオロエチレン製フィルター(PTFE製フィルター)やセルロースアセテート製フィルター(CA製フィルター)の表面にPVA多孔膜を形成した。
フィルターには、有効面積2.27cm2のものを用いた。
【0081】
PTFE製フィルターの孔径は100nm、PC製フィルターの孔径は220nmである。
しかしながら、これらのフィルターの表面には数マイクロメートルの開口部を有する。
本実施例では、これらの支持体の開口部を一様な厚みのPVA多孔膜で覆うために、実施例1の方法により製造したナノストランドの水溶液10mLを濾過し、その表面にナノストランドのシートを形成させた。
【0082】
さらに、実施例1と同様な方法で製造したPVA−ナノストランド混合液(4mL)を80kPaの減圧下で濾過し、引き続き10分間、減圧下で放置した。
次に、50mMの塩酸のエタノール溶液(5規定の塩酸水溶液60μLを6mLのエタノールで希釈して調製)の6mLを濾過し、ナノストランドを溶出させた。
【0083】
表3には、PTFE製フィルターまたはCA製フィルターを用いて作製したPVA多孔膜についてまとめた。実施例2で作製したPVA多孔膜の膜厚と細孔サイズである。
【0084】
【表3】
【0085】
PTFE製フィルターの表面に形成されたPVA多孔膜の膜厚は、PVA水溶液の混合量と比例して増加した。
表3のPVA多孔膜の膜厚は、同じPVA水溶液の混合量における表1の結果と比較すると、5倍程度大きい。
この結果は、PTFE膜の表面に予め形成していたナノストランドのシートが、PVA−ナノストランド複合体の膜を形成するのに有効であり、混合したPVAの全量がPVA多孔膜になっていることを示している。
PVA多孔膜の細孔サイズは、いずれの膜も3〜5nmであった。
【0086】
図14には、PTFE製フィルターを支持体として用いて作製したPVA多孔膜(表3のM−11に対応)、図15にはCA製フィルターを支持体として用いて作製したPVA多孔膜(表3のM−13に対応)の断面の走査電子顕微鏡像を示す。
いずれの場合も、繊維状のフィルターの表面に平滑なPVA多孔膜が形成されていることが分かる。
【0087】
M−9からM−13の膜は、エタノールで希釈した5nmの金ナノ粒子を100%阻止する。
また、アセトンで希釈した金ナノ粒子であっても100%の阻止率が確認させている。
これらの結果は、本発明のPVA多孔膜が有機溶媒用の限外濾過膜として利用できることを示している。
【0088】
表4には、表3のM−11の膜を用いて様々な有機溶媒の透過実験を行い、その流束を計測した結果を示す。実施例2で作製したPVA多孔膜(M−11)の様々な有機溶媒の透過性能である。
【0089】
【表4】
【0090】
有機溶媒の流束は、ハーゲン・ポアズイユの式に従って、粘度に反比例して増加した。このことから、これらの有機溶媒がPVA多孔膜のナノ細孔を粘性流として透過することが確認できた。
200nmの膜厚を有するM−11の場合、最も高速の溶媒透過は、アセトンで観察され、その流束は、40kPaの圧力差で1488L/m2hであった。
この値は、1気圧の圧力差で3720L/m2hに対応する。
100nmの膜厚を有するM−9の膜では、さらに大きな速度で溶媒を透過させることができる。
【0091】
(実施例3)
PVAは水溶性であるため、PVA多孔膜を製造しても、水処理膜として利用することができない。
このため、実施例3ではPVAを架橋することで、水に安定なPVA多孔膜を製造した。
実施例1のPVAを用いて1wt%の水溶液を調製し、この水溶液0.5mLに撹拌しながら2wt%のグルタルアルデヒド(GA)水溶液0.5mLを加え、さらに4時間撹拌した。
このようにして得られたPVAとグルタルアルデヒドの混合水溶液を10倍に希釈し、PVA−GA溶液とした。
【0092】
上記のPVA−GA溶液100μLを実施例1の方法で調製したナノストランドの水溶液4mLに撹拌しながら加え、引き続き5分間撹拌させることで、PVA−GA−ナノストランド混合液を調製した。
一方、実施例2の方法でPTFE製フィルターの表面にナノストランドのシートを形成し、80kPaの減圧下で4mLのPVA−GA−ナノストランド混合液を濾過した。
引き続き10分間、減圧下で放置した後、実施例2の方法でナノストランドを溶出させ、100℃で5時間加熱した。
図16には、このようにして作製したGA架橋−PVA多孔膜の断面の走査電子顕微鏡像を示す。
【0093】
このGA架橋−PVA多孔膜の水の透水速度は、80kPaの圧力差で22L/m2hであり、水に分散させた直径5nmの金ナノ粒子を100%除去できることが確認された。
また、このGA架橋−PVA多孔膜を水に5分間浸漬し、多孔膜が濡れた状態において0.3MPaの圧力をかけて窒素ガスと二酸化炭素ガスの透過速度を測定したところ、窒素の透過速度が0.227GPU、二酸化炭素の透過速度が10.0GPUであった。
ガス透過の選択性は、44.1であった。
【0094】
(実施例4)
実施例4では、金属アルコキシドでPVAを架橋することで、水に安定なPVA多孔膜を製造した。
実施例1のPVAを用いて0.1wt%の水溶液を調製し、この水溶液1.0mLに撹拌しながら0.02mLのテトラエトキシシラン(TEOS)と0.1mLの塩酸水溶液(pH4)を加え、さらに4時間撹拌した。このようにしてPVA−TEOS溶液とした。
【0095】
上記のPVA−TEOS溶液560μLを実施例1の方法で調製したナノストランドの水溶液4mLに撹拌しながら加え、引き続き5分間撹拌させることで、PVA−TEOS−ナノストランド混合液を調製した。
次に、実施例1のPC製フィルターを用いて、80kPaの減圧下で、PVA−TEOS−ナノストランド混合液4mLを濾過した。
引き続き10分間、減圧下で放置した後、100℃で5時間加熱した。
さらにpH3の塩酸水溶液に1時間浸し、TEOS架橋−PVA多孔膜を作製した。
このTEOS架橋−PVA多孔膜の水の透水速度は、80kPaの圧力差で72.4L/m2hであり、水に分散させた直径5nmの金ナノ粒子を90%除去できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、PVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターに関するものであり、500nm以下の薄膜にして透水性を高くするとともに、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下にして、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くしたものであるので、有機溶媒用の限外濾過膜、水処理膜、ガス分離膜等に利用でき、色素や有機溶媒の回収、医薬品の製造等で利用可能性が大きく、各種分析産業、医薬品製造産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0097】
11…PVA多孔膜を有する濾過フィルター、21…PVA多孔膜、31…多孔性材料からなるフィルター、C…細孔、d…最小径。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(以下、PVAという。)は、水酸基を有する中性のポリマーであり、生体材料としての適合性が高く、医療分野での用途が大きい。また、結晶化により高いガスバリア性を示し、耐有機溶媒性も有することから工業的な重要性が高い。特に、PVAの共重合体は、ガスバリア性だけでなく、加工性も優れ、偏光フィルムやエンジニアリングプラスチックとしても利用されている。
【0003】
PVAの多孔膜は、主に中空糸の形態として透析などの医療用分離膜として開発されてきた。例えば、PVAの水溶液を二重ノズルから脱水性の塩類の水溶液に押し出すことで、チューブ状の膜が得られる。しかしながら、このような方法で多孔膜の細孔サイズを制御することは難しい。
【0004】
特許文献1、非特許文献1〜4にはPVAを用いた濾過フィルターについて記載がある。
特許文献1は、ポリビニルアルコール系中空繊維膜及びその製造方法に関するものであり、PVA中空糸における温度制御による細孔サイズ制御について記載されている。
細孔サイズの制御には、温度設定を厳密に行う方法が一般的である、例えば、PVAとポリエチレングリコールを含む紡糸原液を上限臨界共溶点以上に設定したノズルから該共溶点以下の凝固浴中に押し出すと、脱水性の塩を含む凝固浴中で紡糸原液のミクロ相分離が促進され、細孔サイズのシャープな中空糸膜が得られる。しかし、温度を低下させることで相分離を促進する方法では、溶融状態のPVAとポリエチレングリコール(ポア形成剤)が容易に長距離を移動するために、10nm以下で細孔サイズを制御することが困難であった(特許文献1)。
【0005】
非特許文献1には、表面に細孔をもつPVAの平膜を作製したことが記載されている。
PVAの多孔膜を平膜で作製する場合も、脱水性の塩を含む凝固浴中でPVAの相分離を利用している。例えば、デキストランとPVAの混合液をキャストして作製した100μmの厚みの膜を凝固浴中に浸すと、表面に数10nmの細孔を有する膜が得られる。しかしながら、100μmの厚みの膜で高い透過流束を得ることは困難であった(非特許文献1)。
【0006】
非特許文献2には、界面架橋によるPVAのナノ濾過膜を作製したことが記載されている。
1nm以下の細孔をもつPVAの多孔膜は、例えば、多孔性のポリスルフォン膜の支持体にPVA水溶液をしみ込ませ、グルタルアルデヒドで架橋することで得られている。界面でのPVAの架橋では、無機塩を阻止できるナノ濾過膜が得られている(非特許文献2)。
【0007】
非特許文献3には、熱架橋によりPVAの高透水性の限外濾過膜を作製したことが記載されている。非特許文献4は、PVA膜の様々な架橋技術に関する総説である。
PVAの多孔膜は、エレクトロスピニング法で作製したナノ繊維状の支持体にPVAとグルタルアルデヒドの混合液をキャストし、熱架橋することでも作製されている。しかし、この方法は、膜厚を500nmより薄くすることが困難であった(非特許文献3)。最近の架橋PVA膜の研究は、Boltoらによってまとめられている(非特許文献4)。
【0008】
これまでのPVAの多孔膜の研究を概観した場合、多くは相分離法を用いて製造されてきたが、1〜10nmの範囲で細孔サイズが制御されており、かつ膜厚が500nm以下である多孔膜が見出されていない。溶質に対する高い阻止率と、溶媒に対する高い透過流束を実現するには、この2つの条件を両立させることが重要であるが、多くのPVAの多孔膜は、数μm以上の膜厚を有する。キャスト法では、1μm以下の多孔膜を作製することが可能であるが、膜厚が500nm以下では、多孔性の支持体の表面をPVA膜で一様に覆うことが困難であった。
【0009】
特許文献2、非特許文献5〜8にはナノストランドについて記載がある。
特許文献2は、金属酸化物ナノファイバー及びその製造方法、並びに該ナノファイバーを用いたナノ複合材料に関するものであり、ナノストランドの基本特許である。ナノストランドが、複数の水酸基を有する糖などを吸着することが記載されている。非特許文献5は、ナノストランドの発見を説明した総説である。
【0010】
ナノストランドは、金属水酸化物の極細のナノファイバーであり、表面が著しく正に荷電しており、水に分散して存在できる。水酸化銅のナノストランドは、硝酸銅の希薄な水溶液に塩基を加えることで形成する。その直径は、約2.5nmであり、長さは数10μmに達する(非特許文献5)。ナノストランドは、アニオン性の色素や高分子を吸着するが、複数の水酸基をもつ糖などの有機化合物も吸着する(特許文献2)。このため、水中に存在するナノストランドは、その表面に複数の水酸基をもつPVAを吸着させ、PVA−ナノストランド複合体を形成する。
【0011】
非特許文献6には、ナノストランドとタンパク質の複合ファイバーから作製した自立膜が限外濾過膜となることが記載されている。非特許文献7には、ナノストランドに導電性高分子(ポリピロール、ポリアニリン)をコーティングし、濾過により自立膜が形成でき、これが限外濾過膜となることが記載されている。
【0012】
ナノストランドは、PVA以外にもタンパク質や共役高分子を吸着してナノファイバーを形成する。これらのナノファイバーを濾過すると、優れた限外濾過膜が得られることが既に報告されている(非特許文献6、7)。
【0013】
非特許文献8には、ナノストランドシートを利用して濾過法により架橋高分子の薄膜を作製し、これが優れた限外濾過膜となることが記載されている。
ナノストランドの水溶液を多孔性のフィルターで濾過すると、フィルターの表面にナノストランドのシートが得られる。このナノストランドのシートは、ナノ粒子や架橋高分子などの数nmの広がりをもつ物質を濾過することができ、これらの極薄のシートを与えることから、高分子薄膜の製造に広く用いられてきた(非特許文献8)。ナノストランドのシートは、PVAを濾過することもでき、部分的に架橋したPVAであれば、より容易に濾過することができる。その結果、極薄のPVA膜を形成できることは、非特許文献8からも容易に推定できる。
【0014】
しかしながら、ナノストランドシートを利用して作製した極薄のPVA膜を多孔化することは容易でなかった。PVA膜は、水で膨潤するため、透水性が必ずしも高くない。脱水条件下で加熱して結晶化すると、溶媒を殆ど通さなくなる。架橋密度を上げると、いわゆるゲル膜としての透水性が維持されるが、有機溶媒を透過させるような細孔を維持することが困難であった。
【0015】
PVA−ナノストランド複合体も、多孔性の支持体で濾過すると、極薄の高分子膜となる。しかしながら、この膜でも、膨潤したPVA鎖がナノストランドの隙間を埋めており、透水性が高くなかった。
【0016】
通常の工業用の限外濾過膜は、数μmの分離機能層を有する。このため、流束が小さく、濾過効率が低いという問題があった。さらに、細孔のサイズ分布がブロードであり、所定のサイズのナノ粒子の除去率が低いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平9−52030号公報
【特許文献2】特許第4314362号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Chuang,et al.、Polymer、41巻、5633−5641ページ、2000年.“The effect of polymeric additives on the structure and permeability of poly(vinyl alcohol) asymmetric membranes”
【非特許文献2】Jahanshahi,et al.、Desalination、257巻、129−136ページ、2010年.“Developing thin film composite poly(piperazine−amide) and poly(vinyl−alcohol) nanofiltration membranes”
【非特許文献3】Ma,et al.、Industrial & Engineering Chemistry Research、49、11978−11984ページ、2010年.“Thin−film nanofibrous composite ultrafiltration membranes based on polyvinyl alcohol barrier layer containing directional water channels”
【非特許文献4】Bolto,et al.、Progress in Polymer Science、34、969−981ページ、2009年.“Crosslinked poly(vinyl alcohol) membranes”
【非特許文献5】一ノ瀬泉、現代化学、450巻、49−53ページ、2008年 “水中に存在していた巨大カチオン”
【非特許文献6】Peng,et al.,Nature Nanotechnology,6巻,353−357ページ,2009年 “Ultrafast permeation of water through protein−based membranes”
【非特許文献7】Peng,et al.,Advanced Functional Materials,17巻,1849−1855ページ,2007年 “Mesoporous separation membranes of polymer−coated copper hydroxide nanostrands”
【非特許文献8】Wang,et al.,Advanced Materials,23巻,2004−2008ページ,2011年 “Ultrafiltration membranes composed of highly cross−linked cationic polymer gel: the network structure and superior separation performance”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、透水性が高く、10nm以下の径のナノ粒子の除去率が高いPVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本研究者は、上記事情を鑑みて、研究開発を行い、PVA−ナノストランド複合体を薄膜化して、エタノールに浸すことで、1nm以上10nm以下の細孔を有するPVA多孔膜が得られることを見出した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0021】
(1) 網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔が設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔の最小径が1nm以上10nm以下であることを特徴とするPVA多孔膜。
(2) 前記PVAが架橋剤により架橋されていることを特徴とする(1)に記載のPVA多孔膜。
(3) 前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする(2)に記載のPVA多孔膜。
【0022】
(4) PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有することを特徴とするPVA多孔膜の製造方法。
【0023】
(5) 前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させた後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする(4)に記載のPVA多孔膜の製造方法。
(6) 前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする(4)に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【0024】
(7) PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合することを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載のPVA多孔膜の製造方法。
(8) 前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする(7)に記載のPVA多孔膜の製造方法。
(9) (1)〜(3)のいずれか1に記載のPVA多孔膜が、多孔性材料からなるフィルター上に配置されていることを特徴とするPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
(10) 前記多孔性材料が、PC、PTFE又はCAのいずれか一の材料であることを特徴とする(9)に記載のPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
【発明の効果】
【0025】
本発明のPVA多孔膜は、網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔が設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔の最小径が1nm以上10nm以下である構成なので、500nm以下という極薄の膜が透過流束を高めて透水性を高くできるとともに、1nm以上10nm以下に制御した各細孔の最小径が細孔のサイズ分布を狭くでき、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くすることができる。
【0026】
本発明のPVA多孔膜の製造方法は、PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有する構成なので、骨組みとして形成したナノストランドに取り付けた膨潤PVAを凝集させてから、ナノストランドのみを除去することができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0027】
本発明のPVA多孔膜を有する濾過フィルターは、先に記載のPVA多孔膜が、多孔性材料からなるフィルター上に配置されている構成なので、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしたPVA多孔膜であっても、容易に取り扱うことができる。また、このフィルターの透過流束は、多孔性の支持体の表面に形成された極薄のPVA多孔膜によって支配され、著しく大きな透過速度を有する濾過フィルターとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルターの一例を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
【図2】図1(b)のB部拡大模式図である。
【図3】本発明の実施形態であるPVA多孔膜が得られるメカニズムの説明図である。
【図4】本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法を説明する工程図である。
【図5】本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法を説明する工程図である。
【図6】本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法を説明する工程図である。
【図7】実施例1での水酸化銅のナノストランドのSEM像である。
【図8】実施例1でのPVAが表面に吸着したナノストランドのSEM像である。
【図9】実施例1でのPVA−ナノストランド複合体の膜の断面SEM像である。
【図10】実施例1で作製したPVA多孔膜の表面SEM像である。
【図11】実施例1で作製したPVA多孔膜の断面SEM像である。
【図12】実施例1で作製したPVA多孔膜(M−1)の5nm金ナノ粒子の濾過性能である。
【図13】実施例1で作製したPVA多孔膜(M−3)の5nm金ナノ粒子の濾過性能である。
【図14】実施例2で作製したPVA多孔膜(M−11)の断面SEM像である。
【図15】実施例2で作製したPVA多孔膜(M−13)の断面SEM像である。
【図16】実施例3で作製したGA架橋−PVA多孔膜の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本発明の実施形態)
<PVA多孔膜を有する濾過フィルター>
まず、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルターについて説明する。
図1は、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルターの一例を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
図1(a)に示すように、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、平面視略円形状である。しかし、これに限られず、平面視略矩形状、平面視略多角形状、平面視略楕円形状等としてもよい。
図1(b)に示すように、本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、本発明の実施形態であるPVA多孔膜21が、多孔性材料からなるフィルター31上に配置されてなる。
【0030】
フィルター31に用いる多孔性材料には、幅広い材質、細孔サイズ、形状及び膜厚のものを利用できる。
多孔性材料としては、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はセルロースアセテート(CA)のいずれかの材料が好ましい。PC、PTFE又はCAのいずれかの材料を用いることにより、取り扱いを容易にでき、濾過フィルターの強度及び耐久性を高めることができる。
多孔性材料の孔径は数nm〜数μmのものを用いることができる。
【0031】
フィルター31は、必ずしも平膜である必要はない。例えば、中空糸等を用いてもよい。中空糸等の表面であっても、PVA−ナノストランド複合体の膜を形成することが可能であり、以下説明する製造方法により、PVA多孔膜21を形成できる。
【0032】
<PVA多孔膜>
次に、本発明の実施形態であるPVA多孔膜について説明する。
PVA多孔膜21の膜厚は、10nm以上500nm以下の範囲である。PVA多孔膜21の膜厚を10nm以上とすることにより、分離膜としての阻止性能を高くできるとともに、膜厚を500nm以下とすることにより、溶媒の透過速度を速くでき、濾過性能の高い濾過フィルターとして用いることができる。
PVA多孔膜21の膜厚を10nm未満とした場合には、分離膜としての阻止性能が低下する。また、PVA多孔膜における溶媒の透過速度は、膜の厚みに反比例して減少するが、前記膜厚を500nm超とした場合、透過速度の減少が顕著になる傾向がある。
なお、PVA多孔膜21の膜厚は、PVA−ナノストランド混合液の濾過量や該混合液中のPVA濃度によって制御できる。
【0033】
図2は、図1(b)のB部拡大模式図である。
図2に示すように、本発明の実施形態であるPVA多孔膜21は、凝集されたPVAが網目状に集積されてなる。PVAの高分子鎖間には、複数の細孔Cが形成されており、網目状に集積されたPVAは、PVA多孔膜を構成している。各細孔Cは、一面側から他面側に連通されている。一面側と他面側の間で、細孔Cの径は一定ではなく、大きくなったり、小さくなったりしている。
【0034】
細孔Cの最小径dは1nm以上10nm以下の範囲である。各細孔Cの最小径dを1nm以上10nm以下に制御することにより、細孔Cのサイズ分布を狭くすることができ、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くすることができる。
【0035】
PVAは、架橋剤により架橋されていてもよい。PVAを、架橋剤により架橋することによって、網目状の集積構造を強化することができ、より安定な、かつ、より強固な膜とすることができる。
前記架橋剤としては、グルタルアルデヒド(GA)又はテトラエトキシシラン(TEOS)が好ましい。これらの材料は、取り扱いが容易であり、PVAを容易に架橋できる。架橋剤により架橋したPVA多孔膜は、水への安定性も向上する。
【0036】
さらに、PVA多孔膜に水をしみ込ませることで、二酸化炭素の選択的な分離膜として利用できる。これは、PVA多孔膜の細孔に取り込まれた水が二酸化炭素を選択的に溶解するためである。従って、PVA多孔膜に、特定のガスを溶解しやすい物質を取り込ませると、ガス分離膜としての選択性が向上することが容易に予想できる。本発明のPVA多孔膜の主な用途としては、有機溶媒用の濾過フィルターを想定しているが、上記の理由により、水処理膜やガス分離膜への応用も可能である。
【0037】
<PVA多孔膜の製造方法>
次に、本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態であるPVA多孔膜が得られるメカニズムの説明図である。PVA多孔膜が得られるメカニズムは以下のように説明できる。
【0038】
(1)まず、ナノストランドは、表面に多くの正電荷を有しており、水中でPVAを吸着後も、正電荷を保持している。このため、沈殿や凝集を起こすことなく、濾過により一定の厚みの膜を与える。PVAが中性の高分子であるため、PVA−ナノストランド複合体の膜は、厚み10nmまで極薄にすることができる。
(2)PVA−ナノストランド複合体の膜においても、ナノストランドは均質に分散しており、ナノストランドの回りには、PVAが吸着している。
(3)図3(a)に示すように、PVAは、ナノストランドへの吸着性が弱く、一部は水和して膨潤状態にある。これにエタノールを接触させると、図3(b)に示すように、PVAが凝集する。
(4)PVAは、一部がナノストランドに吸着しているため、凝集の際、分子鎖が長距離を移動できず、ナノストランドの表面に凝集する。
(5)その後、酸でナノストランドを溶出すると、図3(c)に示すように、ネットワーク状に凝集したPVA多孔膜が得られる。
即ち、本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、ナノストランドを利用して、PVAの凝集状態を制御することにより、1nm以上10nm以下の細孔を有するPVA多孔膜を提供するものである。
【0039】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、PVA−ナノストランド混合液調製工程S1と、PVA−ナノストランド複合体の膜形成工程S2と、PVA−ナノストランド複合体の膜の有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液(以下、有機溶媒等という。)、及び酸接触工程S3と、を有する。
【0040】
(PVA−ナノストランド混合液調製工程S1)
PVA−ナノストランド混合液調製工程S1は、ナノストランド水溶液調製工程と、PVA−ナノストランド混合液調製工程と、を有する。
まず、図4(a)に示すように、例えば、アミノエタノール水溶液と硝酸銅水溶液を混合・攪拌後、放置して、ナノストランド水溶液を調製する。
【0041】
ナノストランドとしては、水酸化銅、水酸化カドミウム、水酸化亜鉛のナノストランドが好適に用いられるが、取り扱いの観点から、水酸化銅のナノストランドが最適である。
なお、ナノストランドの濃度は、合成に用いた銅塩の濃度に換算すると2mM前後が適当であり、合成に用いた塩基の濃度に換算すると0.5mM程度が適当である。
【0042】
次に、図4(b)に示すように、PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する。
PVA−ナノストランド混合液におけるPVAの濃度は、0.005〜0.2mg/mL程度が適当である。
PVAとしては、ケン化度が高いものが好ましい。ただし、本発明では、PVAの希薄な水溶液を調製できればよく、0.005mg/mL以上の溶解性があればよい。また、水への溶解性をもつものであれば、PVAの共重合体でもよい。
【0043】
PVA−ナノストランド混合液は、グルタルアルデヒド(GA)やテトラエトキシシラン(TEOS)などの架橋剤を含むPVA水溶液から作製してもよい。
PVAには、様々な架橋剤を利用できることが知られており、その具体例は、論文5の総説に記載されている。
【0044】
ナノストランドは、複数の水酸基をもつ化合物をその表面に吸着する。
このため、実証されている訳ではないが、複数の水酸基を有し、有機溶媒に接触させることで凝集する性質の水溶性ポリマーであれば、PVAの代わりに利用できることを容易に予測できる。
【0045】
(PVA−ナノストランド複合体の膜形成工程S2)
次に、図5に示すように、PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する。
該濾過時間は、数分から数10分である。
【0046】
表面に数μmの孔をもつ多孔性材料を用いる場合には、該多孔性材料の表面を予めナノストランドのシートで覆うことが好ましい。平滑なナノストランドのシート上に、平滑なPVA−ナノストランド複合体の膜を形成してから、ナノストランドシートを除去することにより、表面に数μmの孔をもつ多孔性材料からなるフィルター上にも、平滑なPVA−ナノストランド複合体の膜を形成することができる。
なお、ナノストランドシートを除去する際、吸引濾過することにより、フィルター上に安定に配置されたPVA−ナノストランド複合体の膜を形成することができる。
【0047】
(PVA−ナノストランド複合体の膜の有機溶媒等、及び酸接触工程S3)
次に、前記PVA−ナノストランド複合体の膜に有機溶媒等及び酸を接触させる。
有機溶媒等は、先に記載したように、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液である。
【0048】
PVA−ナノストランド複合体の膜に有機溶媒等及び酸を接触させる方法としては、濾過法、浸漬法等がある。
濾過法は、PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして用いて、有機溶媒等及び酸を透過させる方法である。
具体的には、図6(a)に示すように、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させる。
【0049】
PVA−ナノストランド複合体の膜に有機溶媒等を接触させることにより、図3(a)及び図3(b)に示したように、膨潤したPVAを凝集させることができる。
該有機溶媒等の役割は、PVA−ナノストランド複合体の膜から水を吸収することである。このような有機溶媒としては、エタノールが好適に用いられる。また、他の水と混和する有機溶媒(メタノール、プロパノール、THF、アセトン、アセトニトリル等)も好適に用いられる。ただし、THFなどは、多孔性の支持体を膨潤させたり溶解させたりする可能性があり、使用に注意を要する。
【0050】
有機溶媒の代わりに、脱水性の塩の水溶液を利用してもよい。脱水性の塩は、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等である。これら脱水性の塩の水溶液によっても、PVA−ナノストランド複合体の膜から水を吸収することができる。
PVA−ナノストランド複合体の膜から水を吸収することにより、膨潤したPVAを凝集させることができる。
【0051】
次に、図6(b)に示すように、PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして用いて、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる。
酸により、ナノストランドを除去することができ、PVA多孔膜を製造できる。
【0052】
なお、このPVAの凝集操作とナノストランドの除去操作を1段階で行ってもよい。つまり、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程のみとしてもよい。
PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして用いて、所定の濃度の酸を添加した有機溶媒等を通過させることにより、PVAの凝集を生じさせるとともに、酸でナノストランドを除去して、PVA多孔膜を製造できる。
50mM程度の塩酸のエタノール溶液を用いる場合、PVAの凝集がナノストランドの溶出よりも先に起こることが確認されている。そのため、1段階の操作であっても、PVAを凝集させた後、ナノストランドの除去を行うことができ、PVA多孔膜を形成できる。
【0053】
浸漬法は、PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒等及び酸に浸漬する方法である。濾過法と同様の原理により、PVA−ナノストランド複合体の膜において、PVAを凝縮させ、その後、ナノストランドを除去することにより、PVA多孔膜を形成できる。
【0054】
PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合してもよい。前記架橋剤としては、GA又はTEOSを挙げることができる。GAやTEOS等の架橋剤を含むPVAを用いた場合、ナノストランドの除去前後に加熱処理、酸処理等を行って、PVAの架橋度を大きくすることができる。
【0055】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔Cが設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔Cの最小径dが1nm以上10nm以下である構成なので、500nm以下という極薄の膜が有機溶媒や水の透過流束を高くできるとともに、1nm以上10nm以下に制御した各細孔の最小径が細孔のサイズ分布を狭く(シャープに)でき、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くすることができる。
具体的には、有機溶媒や水の流束は、80kPaの圧力差において20〜4000L/m2hの範囲にできる。また、10nm以下のナノ粒子をほぼ100%の除去率で分離でき、5nm以下のナノ粒子を90〜100%の除去率で分離できる。
更に、PVA多孔膜に水をしみ込ませることで、二酸化炭素の選択的な分離膜として利用でき、特定のガスを溶解しやすい物質を取り込ませると、ガス分離膜としての選択性を向上させることができ、ガス分離膜への応用も可能である。
【0056】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、前記PVAが架橋剤により架橋されている構成なので、網目状の集積構造を強化することができ、より安定な、かつ、より強固な膜とすることができる。これにより、例えば、水処理用の限外濾過膜やガス分離膜として利用できる。
【0057】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜は、前記架橋剤がGA又はTEOSである構成なので、網目状の集積構造を強化することができ、より安定な、かつ、より強固な膜とすることができる。これにより、例えば、水処理用の限外濾過膜やガス分離膜として幅広い応用分野に利用できる。
【0058】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有する構成なので、骨組みとして形成したナノストランドに取り付けた膨潤PVAを凝集させてから、ナノストランドのみを除去することができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0059】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させた後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程である構成なので、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液の透過の際に、PVAをナノストランドに凝集させて、相分離構造をナノスケールで制御することができ、その後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過の際に、ナノストランドを除去することができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0060】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程である構成なので、PVAの凝集操作とナノストランドの除去操作を1段階で行うことができ、膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしてもフィルターを一様に覆うことができ、かつ、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下に制御したPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0061】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合する構成なので、架橋剤により架橋されているPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0062】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜の製造方法は、前記架橋剤がGA又はTEOSである構成なので、GA又はTEOSにより架橋されているPVA多孔膜を容易に製造することができる。
【0063】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、PVA多孔膜21が、多孔性材料からなるフィルター31上に配置されている構成なので、PVA多孔膜の膜厚を10nm以上500nm以下と極薄にしても、容易に取り扱うことができる。
【0064】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜を有する濾過フィルター11は、前記多孔性材料が、PC、PTFE又はCAのいずれか一の材料である構成なので、取り扱いを容易にでき、濾過フィルターの強度及び耐久性を高めることができる。また、前記多孔性材料がPVAとは異なる素材なので、限外濾過膜としての耐圧性などの材料特性を幅広く調整できる。
【0065】
本発明の実施形態であるPVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
室温(20℃)において、4mMの硝酸銅水溶液50mLに1mMのアミノエタノール水溶液50mLを一気に混合し、約10秒間撹拌後、室温で7日間放置した。
この水溶液4mLを、径200nmの孔を有するポリカーボネート製フィルター(有効面積2.27cm2:以下、PC製フィルターという。)で濾過した。これにより、PC製フィルター上にナノストランド膜を形成した。
該フィルターのナノストランド膜側の表面に白金を約2nm蒸着後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、7日間放置した水溶液の中に水酸化銅のナノストランドが形成されていることを確認した(図7)。
【0067】
上記の方法で調製したナノストランドの水溶液4mLを撹拌しながら、PVA(分子量:約10万、ケン化度:99%)の1mg/mLの水溶液を所定量(30μL〜600μL)加え、さらに5分間撹拌した。
PVA−ナノストランド混合液の4mLを、PC製フィルターを用いて減圧下(大気圧との圧力差:80kPa)で濾過し、引き続き10分間、減圧下で放置した。これにより、PC製フィルター上にPVA−ナノストランド膜を形成した。
【0068】
このフィルターのPVA−ナノストランド膜側の表面に白金を約2nm蒸着後、走査型電子顕微鏡で観察した。
図8には、PVA水溶液の混合量が200μLである場合のPC製フィルターの表面の観察像を示す。
PVAがナノストランドの表面に吸着しているため、ナノストランド単独の場合(図7)と比較して、ファイバーの幅が大きくなっていることが確認できた。
図9には、図8の試料を切断し、PVA−ナノストランド複合体の膜断面を観察した結果を示す。この写真から、PVA−ナノストランド複合体が約100nmの一定の膜厚を有し、PC製フィルターの200nmの孔を覆っていることが確認できた。
【0069】
PVA−ナノストランド複合体の膜からナノストランドを除去し、PVA多孔膜を製造するために、以下の操作を行った。
まず、所定量のPVA水溶液を用いて作製した前記PVA−ナノストランド混合液(4mL)を80kPaの減圧下でPC製フィルターを用いて濾過し、引き続き10分間、減圧下で放置した。
次に、50mMの塩酸のエタノール溶液(5規定の塩酸水溶液40μLを4mLのエタノールで希釈して調製)の4mLを濾過し、ナノストランドを溶出させた。
【0070】
表1には、PVA水溶液の混合量、PVA−ナノストランド混合液の濾過量、得られたPVA多孔膜の膜厚、ならびにPVA多孔膜に生じた細孔のサイズをまとめた。実施例1で作製したPVA多孔膜の膜厚と細孔サイズである。
PVA−ナノストランド混合液の調製に用いたナノストランド水溶液の量は全て4mLであり、細孔サイズの確認は、3.5nmのミオグロビンと5nmの金ナノ粒子の阻止率から確認した。
表1に示すように、PVA多孔膜の膜厚は、PVA水溶液の混合量と伴に増加した。
【0071】
【表1】
【0072】
図10には、PVA水溶液の混合量を50μLとした場合のPVA多孔膜(表1のM−3に対応)の断面の走査電子顕微鏡像(SEM像)を示す。
この像からPVA多孔膜が多くの細孔を持つことが確認できた。
また、図10における円形状の濃い部分は、PC製フィルターの孔に対応しており、この多孔膜がフィルターの200nmの孔を覆うように形成されていることが分かった。
図11には、200μLのPVA水溶液を混合することで製造されたPVA多孔膜の断面の観察像(表1のM−5に対応)を示す。
このPVA多孔膜の膜厚は、85nmであった。
【0073】
表1に示すように、実施例1において、5nmの金ナノ粒子を阻止できる最も薄いPVA多孔膜の厚みは16nmであった。
PVA水溶液の混合量が30μL以下の場合、支持体の200nmの孔を完全に覆うことができなかった。
【0074】
実施例1では、PVA多孔膜のナノ細孔のサイズを評価するために、金ナノ粒子の阻止率を評価した。
PVA多孔膜が水に溶解するため、金ナノ粒子の溶液は、市販のナノ粒子の水分散液をエタノールで50倍に希釈することで調製した。
【0075】
5nmの金ナノ粒子のエタノール溶液4mLを濾過した場合の濾過速度を表2にまとめた。実施例1で作製したPVA多孔膜のエタノールの透過性能である。
表2の膜の番号(M−1〜M−8)は、表1の番号に対応している。
M−1の膜では、減圧下(80kPa)でのエタノールの流束が846L/m2hであり、このような高速で金ナノ粒子を除去できる(図12を参照)ことが確認できた。
エタノールの流束は、膜厚の増加とともに減少した。
【0076】
【表2】
【0077】
図12は、表2のM−1の膜を用いて5nmの金ナノ粒子(エタノール溶液)を濾過した場合の紫外・可視吸収スペクトルの変化を示す。
濾過前の溶液(原液)が520nm付近の波長域に吸収極大をもつのに対し、濾過された溶液(濾過後)では、このピークが失われており、金ナノ粒子が除去されていることが分かった。
【0078】
図13には、表2のM−3の膜を用いて同様の実験を行った場合の濾過前後の吸収スペクトル変化を示す。
M−1からM−8の全てのPVA多孔膜において、直径5nmの金ナノ粒子の阻止率は、98〜100%であった。
【0079】
M−3では、エタノールに溶解したミオグロビン(10μg/mL)の阻止率を確認したところ、50%の阻止率が得られ、ミオグロビンのエタノール溶液の濾過速度は、80kPaの圧力差で、171L/m2hであった。
ミオグロビンは、直径約3.5nmのタンパク質である。
同様な結果は、他の膜でも得られており、本発明のPVA多孔膜は、直径3〜5nmのナノ細孔を有していることが確認できた。
【0080】
(実施例2)
PVA多孔膜は、様々な支持体の表面を覆うことができる。
実施例2では、耐有機溶媒性をもつポリテトラフルオロエチレン製フィルター(PTFE製フィルター)やセルロースアセテート製フィルター(CA製フィルター)の表面にPVA多孔膜を形成した。
フィルターには、有効面積2.27cm2のものを用いた。
【0081】
PTFE製フィルターの孔径は100nm、PC製フィルターの孔径は220nmである。
しかしながら、これらのフィルターの表面には数マイクロメートルの開口部を有する。
本実施例では、これらの支持体の開口部を一様な厚みのPVA多孔膜で覆うために、実施例1の方法により製造したナノストランドの水溶液10mLを濾過し、その表面にナノストランドのシートを形成させた。
【0082】
さらに、実施例1と同様な方法で製造したPVA−ナノストランド混合液(4mL)を80kPaの減圧下で濾過し、引き続き10分間、減圧下で放置した。
次に、50mMの塩酸のエタノール溶液(5規定の塩酸水溶液60μLを6mLのエタノールで希釈して調製)の6mLを濾過し、ナノストランドを溶出させた。
【0083】
表3には、PTFE製フィルターまたはCA製フィルターを用いて作製したPVA多孔膜についてまとめた。実施例2で作製したPVA多孔膜の膜厚と細孔サイズである。
【0084】
【表3】
【0085】
PTFE製フィルターの表面に形成されたPVA多孔膜の膜厚は、PVA水溶液の混合量と比例して増加した。
表3のPVA多孔膜の膜厚は、同じPVA水溶液の混合量における表1の結果と比較すると、5倍程度大きい。
この結果は、PTFE膜の表面に予め形成していたナノストランドのシートが、PVA−ナノストランド複合体の膜を形成するのに有効であり、混合したPVAの全量がPVA多孔膜になっていることを示している。
PVA多孔膜の細孔サイズは、いずれの膜も3〜5nmであった。
【0086】
図14には、PTFE製フィルターを支持体として用いて作製したPVA多孔膜(表3のM−11に対応)、図15にはCA製フィルターを支持体として用いて作製したPVA多孔膜(表3のM−13に対応)の断面の走査電子顕微鏡像を示す。
いずれの場合も、繊維状のフィルターの表面に平滑なPVA多孔膜が形成されていることが分かる。
【0087】
M−9からM−13の膜は、エタノールで希釈した5nmの金ナノ粒子を100%阻止する。
また、アセトンで希釈した金ナノ粒子であっても100%の阻止率が確認させている。
これらの結果は、本発明のPVA多孔膜が有機溶媒用の限外濾過膜として利用できることを示している。
【0088】
表4には、表3のM−11の膜を用いて様々な有機溶媒の透過実験を行い、その流束を計測した結果を示す。実施例2で作製したPVA多孔膜(M−11)の様々な有機溶媒の透過性能である。
【0089】
【表4】
【0090】
有機溶媒の流束は、ハーゲン・ポアズイユの式に従って、粘度に反比例して増加した。このことから、これらの有機溶媒がPVA多孔膜のナノ細孔を粘性流として透過することが確認できた。
200nmの膜厚を有するM−11の場合、最も高速の溶媒透過は、アセトンで観察され、その流束は、40kPaの圧力差で1488L/m2hであった。
この値は、1気圧の圧力差で3720L/m2hに対応する。
100nmの膜厚を有するM−9の膜では、さらに大きな速度で溶媒を透過させることができる。
【0091】
(実施例3)
PVAは水溶性であるため、PVA多孔膜を製造しても、水処理膜として利用することができない。
このため、実施例3ではPVAを架橋することで、水に安定なPVA多孔膜を製造した。
実施例1のPVAを用いて1wt%の水溶液を調製し、この水溶液0.5mLに撹拌しながら2wt%のグルタルアルデヒド(GA)水溶液0.5mLを加え、さらに4時間撹拌した。
このようにして得られたPVAとグルタルアルデヒドの混合水溶液を10倍に希釈し、PVA−GA溶液とした。
【0092】
上記のPVA−GA溶液100μLを実施例1の方法で調製したナノストランドの水溶液4mLに撹拌しながら加え、引き続き5分間撹拌させることで、PVA−GA−ナノストランド混合液を調製した。
一方、実施例2の方法でPTFE製フィルターの表面にナノストランドのシートを形成し、80kPaの減圧下で4mLのPVA−GA−ナノストランド混合液を濾過した。
引き続き10分間、減圧下で放置した後、実施例2の方法でナノストランドを溶出させ、100℃で5時間加熱した。
図16には、このようにして作製したGA架橋−PVA多孔膜の断面の走査電子顕微鏡像を示す。
【0093】
このGA架橋−PVA多孔膜の水の透水速度は、80kPaの圧力差で22L/m2hであり、水に分散させた直径5nmの金ナノ粒子を100%除去できることが確認された。
また、このGA架橋−PVA多孔膜を水に5分間浸漬し、多孔膜が濡れた状態において0.3MPaの圧力をかけて窒素ガスと二酸化炭素ガスの透過速度を測定したところ、窒素の透過速度が0.227GPU、二酸化炭素の透過速度が10.0GPUであった。
ガス透過の選択性は、44.1であった。
【0094】
(実施例4)
実施例4では、金属アルコキシドでPVAを架橋することで、水に安定なPVA多孔膜を製造した。
実施例1のPVAを用いて0.1wt%の水溶液を調製し、この水溶液1.0mLに撹拌しながら0.02mLのテトラエトキシシラン(TEOS)と0.1mLの塩酸水溶液(pH4)を加え、さらに4時間撹拌した。このようにしてPVA−TEOS溶液とした。
【0095】
上記のPVA−TEOS溶液560μLを実施例1の方法で調製したナノストランドの水溶液4mLに撹拌しながら加え、引き続き5分間撹拌させることで、PVA−TEOS−ナノストランド混合液を調製した。
次に、実施例1のPC製フィルターを用いて、80kPaの減圧下で、PVA−TEOS−ナノストランド混合液4mLを濾過した。
引き続き10分間、減圧下で放置した後、100℃で5時間加熱した。
さらにpH3の塩酸水溶液に1時間浸し、TEOS架橋−PVA多孔膜を作製した。
このTEOS架橋−PVA多孔膜の水の透水速度は、80kPaの圧力差で72.4L/m2hであり、水に分散させた直径5nmの金ナノ粒子を90%除去できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、PVA多孔膜、その製造方法及びPVA多孔膜を有する濾過フィルターに関するものであり、500nm以下の薄膜にして透水性を高くするとともに、各細孔の最小径を1nm以上10nm以下にして、10nm以下の径のナノ粒子の除去率を高くしたものであるので、有機溶媒用の限外濾過膜、水処理膜、ガス分離膜等に利用でき、色素や有機溶媒の回収、医薬品の製造等で利用可能性が大きく、各種分析産業、医薬品製造産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0097】
11…PVA多孔膜を有する濾過フィルター、21…PVA多孔膜、31…多孔性材料からなるフィルター、C…細孔、d…最小径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔が設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔の最小径が1nm以上10nm以下であることを特徴とするPVA多孔膜。
【請求項2】
前記PVAが架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1に記載のPVA多孔膜。
【請求項3】
前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする請求項2に記載のPVA多孔膜。
【請求項4】
PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有することを特徴とするPVA多孔膜の製造方法。
【請求項5】
前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させた後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする請求項4に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項6】
前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする請求項4に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項7】
PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項8】
前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする請求項7に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPVA多孔膜が、多孔性材料からなるフィルター上に配置されていることを特徴とするPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
【請求項10】
前記多孔性材料が、PC、PTFE又はCAのいずれか一の材料であることを特徴とする請求項9に記載のPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
【請求項1】
網目状のPVAが薄膜状に集積され、一面側から他面側に連通する複数の細孔が設けられたPVA多孔膜であって、膜厚が10nm以上500nm以下であり、各細孔の最小径が1nm以上10nm以下であることを特徴とするPVA多孔膜。
【請求項2】
前記PVAが架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1に記載のPVA多孔膜。
【請求項3】
前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする請求項2に記載のPVA多孔膜。
【請求項4】
PVAとナノストランド水溶液を混合して、PVA−ナノストランド混合液を調製する工程と、前記PVA−ナノストランド混合液を多孔性材料からなるフィルターで濾過して、PVA−ナノストランド複合体の膜を前記フィルター上に形成する工程と、前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程と、を有することを特徴とするPVA多孔膜の製造方法。
【請求項5】
前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液を透過させた後、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする請求項4に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項6】
前記PVA−ナノストランド複合体の膜を有機溶媒又は脱水性の塩の水溶液、及び酸に接触させる工程が、前記PVA−ナノストランド複合体の膜をフィルターとして、酸を含む有機溶媒又は酸を含む脱水性の塩の水溶液を透過させる工程であることを特徴とする請求項4に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項7】
PVA−ナノストランド混合液を調製する工程で、前記PVA−ナノストランド混合液に架橋剤を混合することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項8】
前記架橋剤がGA又はTEOSであることを特徴とする請求項7に記載のPVA多孔膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のPVA多孔膜が、多孔性材料からなるフィルター上に配置されていることを特徴とするPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
【請求項10】
前記多孔性材料が、PC、PTFE又はCAのいずれか一の材料であることを特徴とする請求項9に記載のPVA多孔膜を有する濾過フィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−34973(P2013−34973A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175384(P2011−175384)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]