説明

RE1Ba2Cu3O7−z超電導体

【課題】磁化及び交流損失が極めて小さいREBCO超電導線材を製造し得る、直流磁場中で磁化が極めて小さいか、又は、変動磁場中のピンニングロスが極めて小さい電磁特性を有するREBCO超電導体を提供する。
【解決手段】超電導現象が発現する温度域において、外部磁場が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線が、磁化ゼロ近傍で、磁化変化率が略ゼロで推移する磁化ゼロ区域を有することを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。ここで、REは、Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導温度域において、直流磁場及び交流磁場中で特異な電磁特性を発現する超電導体に関する。
【背景技術】
【0002】
RE1Ba2Cu37-z超電導体(RE:Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上。以下、RE1Ba2Cu37-zを「REBCO」と記載することがある。)は、高磁場領域で臨界電流密度Jc(以下、単に「Jc」ということがある。)の減少が小さく、磁場特性に優れているので、次世代の超電導線材材料として注目されている(特許文献1及び2、及び、非特許文献1〜6、参照)。
【0003】
REBCO超電導体は、ペロブスカイト型結晶構造を有し、c軸に沿うコヒーレント長が、a軸及びb軸に沿うコヒーレント長に比べて極めて短いので、超電導特性において、大きな異方性が発現する。
【0004】
REBCO超電導体の薄膜を備える線材(以下「REBCO超電導線材」ということがある。)の超電導特性は、結晶構造のCuO2面に関係し(非特許文献4、参照)、REBCO超電導線材の臨界電流密度Jcを大きくするためには、高度に配向(a軸とb軸)したREBCO超電導体の薄膜を線材基板上に形成する必要がある(図2、参照)。
【0005】
現在、1cm幅で臨界電流280A以上、長さ1km以上のREBCO超電導線材が得られていて、さらに、実用化に向けて、Jcの向上、及び/又は、Jcの異方性に関する研究が数多くなされている。しかし、REBCO超電導線材の磁気特性、特に、ピンニングロス(pinning loss(履歴損失))に関する研究は少ない。
【0006】
REBCO超電導線材におけるピンニングロスの異方性は、Jcの異方性の大きさにも依存するが、主に、超電導層の形状(アスペクト比)に大きく関係する(非特許文献7、参照)。アスペクト比が大きいほど、ピンニングロスの異方性は大きい。REBCO超電導線材の超電導層に垂直な外部磁場により生じるピンニングロスは、超電導層に平行な磁場により生じるピンニングロスより大きい。
【0007】
REBCO超電導線材で製造したコイルにおいて、超電導層に垂直な磁場により生じる交流損失は、超電導システムにおいて発生する全熱負荷の大部分を占める(非特許文献7〜9、参照)ので、交流損失の低減は、REBCO超電導線材を電気機器に実際に適用するに際し最も重要な課題となる。
【0008】
交流損失は、正確には、ピンニングロスと結合損失(coupling current loss)の和であるが、REBCO超電導線材を結束した超電導システムの場合、結合損失は、殆ど無視できるので、REBCO超電導線材を交流機器に応用する場合、REBCO超電導線材におけるピンニングロスを低減することが最も重要な課題となる。
【0009】
本発明者らは、REBCO超電導線材でソレノイドコイルを製造した場合におけるピンニングロスを、超電導層に複数の溝を形成することにより低減する方法を提案した(特許文献3及び非特許文献9、参照)が、超電導層に多数の溝を形成すると、超電導層の臨界電流Icが低下するので、ピンニングロスの低減には限界がある。
【0010】
一方、超電導線材を、重粒子加速器、医療機器(NMR等)、核融合機器等に適用する場合、超電導巻線が発生する磁界の大きさに対し、超電導線材の磁化による磁界の乱れ、及び、磁束クリープ現象によるこの磁界の乱れの時間変化を相対的に小さくするため、超電導線材には、ピンニングロスが小さいことに加え、磁化そのものが小さいことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−289666号公報
【特許文献2】特開2009−164010号公報
【特許文献3】特開2007−141688号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Foltyn L S R et al, 2007 Nat. Mater. 6, 631-42
【非特許文献2】Kang S et al, 2006 Science 311, 1911-4
【非特許文献3】Shiohara Y et al, 2007 Physica C 463-465, 1-6
【非特許文献4】Calestani G, 1996 High Temperature Superconductivity Models and Measurements (Singapore: World Scientific), pp1-40
【非特許文献5】Kakimoto K et al, 2003 Physica C 392-396, 783-9
【非特許文献6】Selvamanickam V et al, 2009 Progress in SuperPower's 2G HTS wire Development Program US Department of Energy Superconductivity for Electric Systems Peer Review, Alexandria, VA, USA, 4 August
【非特許文献7】Iwakuma M et al, 2005 IEEE Trans. Appl. Supercond.15, 1562-5
【非特許文献8】Iwakuma M et al, 1999 IEEE Trans. Appl. Supercond.11, 1482-5
【非特許文献9】Iwakuma M et al, 2009 Physica C 469. 1726-32
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、REBCO超電導線材を交流機器に適用する場合、交流損失を極力低減するため、REBCO超電導線材には、ピンニングロスが極力小さいことが求められる。また、REBCO超電導線材を直流機器に適用する場合、磁界の時間変化を極力低減するため、REBCO超電導線材には、ピンニングロスに加え、磁化が極力小さいことが求められる。
【0014】
そこで、本発明は、磁化及びピンニングロスが極めて小さいREBCO超電導線材を製造し得る、磁場中の磁化及びピンニングロスが極めて小さい電磁特性を有するREBCO超電導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、REBCO超電導体の磁化特性を鋭意調査し、その結果、REBCO超電導体の磁化曲線が、高磁場において、特異の挙動を示すことを見いだした。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、以下のとおりである。
【0017】
(1)超電導現象が発現する温度域において、外部磁場が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線が、磁化ゼロ近傍で、磁化変化率が略ゼロで推移する磁化ゼロ区域を有することを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。ここで、REは、Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上である。
【0018】
(2)前記磁化ゼロ域の磁化差(ΔM)が、臨界電流密度の大きさと、線材幅、又は、フィラメントに分割されている場合にはフィラメント幅の積に、一対一に対応しないことを特徴とする前記(1)に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0019】
(3)前記磁化曲線が、外部磁場の方向反転時に磁化が急激に落下する磁化急落区域を有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0020】
(4)前記磁化曲線が、前記磁化ゼロ区域を曲線全域にわたって有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0021】
(5)前記(1)〜(3)のいずれか又は2以上に記載の現象が顕著になることにより、磁化曲線が、外部磁場の増減時に、ほとんど膨らまない、即ち、外部磁場の増減時に、ほぼ同じ磁化軌跡をたどることを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0022】
(6)前記REがGdであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0023】
(7)前記REがYであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0024】
(8)前記REがY1-xGdx(0<x<1)であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0025】
(9)前記RE1Ba2Cu37-z超電導体の面内結晶配向度が6.0°未満であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0026】
(10)前記(1)〜(5)のいずれか又は2以上に記載の現象が、超電導電流輸送を主に担うCuO2超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束がCuO2平面間に侵入したほうが、量子化磁束がCuO2平面に垂直成分を持って、又は、CuO2平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って引き起こされることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0027】
(11)超電導電流輸送を主に担うCuO2超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束がCuO2平面間に侵入したほうが、量子化磁束がCuO2平面に垂直成分を持って、又は、CuO2平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って、磁化が小さいという現象、及び/又は、ピンニングロスが小さいという現象が発現することを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【0028】
(12)超電導電流輸送を主に担う超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束が超電導平面間に侵入したほうが、量子化磁束が超電導平面に垂直成分を持って、又は、超電導平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って、磁化が小さいという現象、及び/又は、ピンニングロスが小さいという現象が発現することを特徴とする超電導体。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、磁化及び交流損失が極めて小さいREBCO超電導線材を製造し得る、変動又は静止磁場中の磁化及びピンニングロスが極めて小さい電磁特性を有するREBCO超電導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】Gd1Ba2Cu37-z超電導体を超電導層として形成した試験線材Bの層構造を模式的に示す図である。
【図2】超電導層を形成する結晶の配向を示す図である。
【図3】鞍型ピックアップコイルを用いるピックアップコイル法を示す図である。
【図4】磁化の態様を示す図である。(a)は、結晶のc軸にほぼ沿って磁化(M//c)する態様を示し、(b)は、結晶のa軸とb軸にほぼ沿って磁化(M//ab)する態様を示す。
【図5】試験線材Aの磁化特性を、最大磁界振幅Bm:1.7T、又は、2.0Tで測定した結果を示す図である。(a)は、T=77K、θ=90°、45°、30°、及び、15°、最大磁界振幅Bm:1.7Tで測定した磁化曲線を示し、(b)は、T=64K、θ=90°、45°、30°、及び、15°、最大磁界振幅Bm:1.7Tで測定した磁化曲線を示し、(c)は、T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:2.0Tで測定した磁化曲線を示し、(d)は、T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:2.0Tで測定した磁化曲線の右端部を拡大して示す。
【図6】試験線材Aの磁化特性を、最大磁界振幅Bm:4.8Tで測定した結果を示す図である。(a)は、T=64K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、(b)は、T=35K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、(c)は、T=35K、θ=45°で測定した磁化曲線を示す。
【図7】試験線材Bの磁化特性を、最大磁界振幅Bm:1.7Tで測定した結果を示す図である。(a)は、T=77K、θ=90°、45°、30°、及び、15°で測定した磁化曲線を示し、(b)は、T=64K、θ=90°、85°、80°、75°、70°、65°、60°、55°、50°、45°、40°、35°、30°、25°、20°、及び、15°測定した磁化曲線を示し、(c)は、T=64K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、(d)は、T=45K、θ=90°、80°、70°、60°、50°、40°、30°、及び、20°で測定した磁化曲線の右上端部を示す。
【図8】試験線材Bの磁化特性を、T=45K及び35K、最大磁界振幅Bm:1.7Tで、θを10〜90°の範囲で変えて測定した結果を示す図である。(a)は、T=45Kで測定した磁化曲線を示し、(b)は、T=35Kで測定した磁化曲線を示す。
【図9】試験線材Bの磁化特性を、T、θ、及び、最大磁界振幅Bmを変えて測定した結果を示す図である。(a)は、T=77K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:2.8Tで測定した磁化曲線を示し、(b)は、T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:4.8Tで測定した磁化曲線を示し、(c)は、T=35K、θ=60°、最大磁界振幅Bm:4.8Tで測定した磁化曲線を示す。
【図10】試験線材Aと試験線材Bについて測定した、最大磁界振幅Bm(T)とピンニングロス(J/m3cycle)の関係を示す図である。(a)は、試験線材Aにつき、T=77K、θ=90°、45°、30°及び、15°で測定した結果を示し、(b)は、試験線材Bにつき、T=35K、θ=90°、60°、45°30°、15°、及び、10°で測定した結果を示す。
【図11】試験線材Bについて測定した、最大磁界振幅Bm(T)とピンニングロス(J/m3cycle)の関係を示す図である。(a)は、T=77K、θ=15°で測定(図9(a)に対応)した結果を示し、(b)は、T=64K、θ=15°で測定(図9(b)に対応)した結果を示し、(c)は、T=35K、θ=60°で測定(図9(b)に対応)した結果を示す。
【図12】REBCO超電導層(CuO2 plane)への量子化磁束(fluxoid)の侵入態様を模式的に示す図である。(a)は、REBCO超電導層へ垂直に侵入した態様を示し、(b)は、REBCO超電導層に平行に侵入した態様を示す。
【図13】超電導結晶の配向の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のRE1Ba2Cu37-z超電導体(以下「本発明超電導体」ということがある。)は、超電導現象が発現する温度域において、外部磁場の強度が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線が、磁化ゼロ近傍で、磁化変化率が略ゼロで推移する“磁化ゼロ区域”(これについては、後述する。)を有することを特徴とする。ここで、REは、Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上である。
【0032】
また、本発明超電導体は、前記磁化曲線が、外部磁場の方向反転時に磁化が急激に落下する“磁化急落区域”(これについても、後述する。)を有することを特徴とする。
【0033】
また、本発明超電導体は、前記磁化曲線が、外部磁場の方向反転時を含む増減時に、ほぼ同じ磁化軌跡をたどり膨らまないという特異な現象(これについても、後述する。)を発現することを特徴とする。
【0034】
1Ba2Cu37-z超電導体(RE=Y)及びGd1Ba2Cu37-z超電導体(RE=Gd)を例にとり、本発明超電導体の特異な電磁特性(磁化曲線)について説明する。
【0035】
IBAD(ion-beam-assisted deposition)法とPLD(pulsed-laser deposition)法を使用するRR(Reel-to-Reel)法を用いて、Y1Ba2Cu37-z超電導体(RE=Y)及びGd1Ba2Cu37-z超電導体(RE=Gd)を超電導層とする試験線材を製造した(非特許文献5、参照)。
【0036】
表1に、製造した試験線材A及び試験線材Bの諸元及び特性を示す。表中、BZOは、超電導層中に分散させたBaZrO3(常電導相)を意味する。BaZrO3は、磁束を捕捉するピンニングセンターとして機能する。また、表中、Δφは、超電導層結晶の面内配向度(図2と図13に示す、a−b平面方向の結晶の配向性の乱れの平均角度)であり、Δωは、a−b平面に垂直な方向の配向度(a−b平面に垂直な方向への配向性の乱れの平均角度)である。
【0037】
【表1】

【0038】
図1に、試験線材Bの層構造を模式的に示す。超電導層(GdBCO+BZO)が、中間層(CeO、厚さ:0.4μm)の上に形成され、超電導層の上に、超電導特性を安定化する安定化層(Ag、厚さ10μm)が形成されている。
【0039】
図2に、超電導層(GdBCO+BZO)の結晶配向を示す。結晶は、a軸とb軸が、線材基板面内に平行であり、c軸が、線材基板面に垂直である。即ち、超電導機構を担うCuO2面は線材基板面に平行に存在するので、優れた超電導特性を維持するためには、結晶は、高度に配向していることが必要である。それ故、Δφ、Δωは、ともに、極力小さいほうが好ましい。
【0040】
本発明者らは、超電導現象が発現する温度域において、試験線材Aと試験線材Bの磁化曲線を測定した。図3に、ピックアップコイル法による磁化測定に用いた鞍型ピックアップコイルを示す。なお、図中に、鞍型ピックアップコイルの寸法を例示した。鞍型ピックアップコイル1の中心部に試験線材2を挿入し、試験線材2を、長手方向の軸を中心にθ回転して磁化を測定した。
【0041】
図4に、外部磁場の変動によって誘起される超電導遮蔽電流と、これによる磁化の態様を示す(磁化は、遮蔽電流がつくる磁気モーメントの大きさを、超電導体単位体積当りに換算した値として定義される。)。図4(a)に、結晶のc軸にほぼ沿って磁化(M//c)する態様を示し、図4(b)に、結晶のa軸とb軸にほぼ沿って磁化(M//ab)する態様を示す。
【0042】
試験線材は、30〜77Kに冷却し、線材幅広面に対する磁界印加角度θを10〜90°の範囲で変えて磁化を測定した。θは、線材幅広面に平行が0°、垂直が90°である。磁場を、最大約5Tまで印加した。
【0043】
図5に、試験線材Aの磁化特性を、最大磁界振幅Bm:1.7T、又は、2.0Tで測定した結果を示す。
【0044】
図5(a)に、T=77K、θ=90°、45°、30°、及び、15°、最大磁界振幅Bm:1.7Tで測定した磁化曲線を示し、図5(b)に、T=64K、θ=90°、45°、30°、及び、15°、最大磁界振幅Bm:1.7Tで測定した磁化曲線を示す。
【0045】
図5(c)に、T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:2.0Tで測定した磁化曲線を示し、図5(d)に、T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:2.0Tで測定した磁化曲線の右端部を拡大して示す。なお、図5(b)において、矢印は、磁化過程を示す。
【0046】
図5(b)に示す磁化曲線(T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:1.7T)の左右両端(外部磁場の強度が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線)に、磁化ゼロ近傍で、磁化変化率が略ゼロで推移する“磁化ゼロ区域”(図中、M//c≒0、参照)が存在することが解る。
【0047】
“磁化ゼロ区域”の存在は、図5(c)及び図5(d)に示す磁化曲線(T=64K、θ=15°、最大磁界振幅Bm:2.0T)の左右両端の磁化曲線において、より顕著に見ることができる。図5(c)において、“磁化ゼロ区域”をΔBrで示し、磁化曲線が通常の挙動に戻る磁界をBrで示した。
【0048】
即ち、本発明者らは、超電導現象が発現する温度域において、外部磁場の強度が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線が、磁化ゼロ近傍で、磁化変化率が略ゼロで推移する磁化ゼロ区域を有することを見いだした。
【0049】
この点が、本発明者らが見いだした、RE1Ba2Cu37-z超電導体に係る新規な知見、即ち、“Iwakuma-Magnetization-Zero-Running効果(以下「IMZR効果」ということがある。)”とも言うべき知見であり、本発明の基礎をなす知見である。
【0050】
図6に、試験線材Aの磁化特性を、2T、3T、及び、4Tの直流バイアス磁場中で、磁界振幅Bmを変えて測定した結果を示す。図6(a)に、T=64K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、図6(b)に、T=35K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、図6(c)に、T=35K、θ=45°で測定した磁化曲線を示す。
【0051】
図6(a)〜(c)に示すように、低温であるほど、また、磁界印加角度θが小さいほど、ΔBrが大きく、IMZR効果が顕著であることが解る。
【0052】
図7に、試験線材Bの磁化特性を、最大磁界振幅Bm:1.7Tで測定した結果を示す。図7(a)に、T=77K、θ=90°、45°、30°、及び、15°で測定した磁化曲線を示し、図7(b)に、T=64K、θ=90°、85°、80°、75°、70°、65°、60°、55°、50°、45°、40°、35°、30°、25°、20°、及び、15°測定した磁化曲線を示す。
【0053】
図7(c)に、T=64K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、図7(d)に、T=45K、θ=90°、80°、70°、60°、50°、40°、30°、及び、20°で測定した磁化曲線の右上端部を示す。
【0054】
図7(a)に示す磁化曲線(θ=45°、30°、15°)の左右両端(外部磁場の強度が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線)に、“磁化ゼロ区域”(図中、M//c≒0[IMZR効果]、参照、)が存在することが解る。
【0055】
図7(b)に、試験線材Bの温度を77Kから64Kに下げた場合の磁化曲線を示すが、θ=15°の磁化曲線に、外部磁場の方向反転時に磁化が急激に落下する磁化急落区域(図中、Ad-M//c[Abrupt drop of M//c]、参照)が存在することが解る。
【0056】
即ち、本発明者らは、超電導現象が発現する温度域において、外部磁場の方向が反転するときに形成される磁化曲線に、外部磁場の方向反転時に、磁化が急激に落下する磁化急落区域(図中、Ad-M//c[Abrupt drop of M//c]、参照。Ad-M//cの区域を、図7(d)に示すように、ΔMdで表示することがある。)が存在することを見いだした。
【0057】
この点も、本発明者らが見いだした、RE1Ba2Cu37-z超電導体に係る新規な知見、即ち、“Iwakuma-Magnetization-Abrupt-Drop効果(以下「IMAD効果」ということがある。)”とも言うべき知見である。この知見も、本発明の基礎をなす知見である。
【0058】
図7(c)に示す磁化曲線(T=64K、θ=15°)には、IMZR効果に基づくΔBr(磁化ゼロ区域)と、IMAD効果に基づくΔMd(磁化急落区域)の両方が存在する。ΔMd(磁化急落区域)の存在は、図7(d)に示す磁化曲線に示すように、磁界印加角度θが小さくなるほど顕著である。
【0059】
図8に、試験線材Bの磁化特性を、T=45K及び35K、最大磁界振幅Bm:1.7Tで、磁界印加角度θを10〜90°の範囲で変えて測定した結果を示す。図8(a)に、T=45Kで測定した磁化曲線を示し、図8(b)に、T=35Kで測定した磁化曲線を示す。
【0060】
図8(a)及び(b)に示すように、低温であるほど、また、磁界印加角度θが小さいほど、ΔBr及びΔMdが大きく、IMZR効果及びIMAD効果が顕著であることが解る。
【0061】
さらに、図8(a)及び(b)において、θ=10°の磁化曲線に注目すると、45Kで現れていたBr(磁化ゼロ区域)及びΔMd(磁化急落区域)は35Kでは現れず、磁化曲線は、磁化ゼロ軸近傍で平坦な履歴を示すことが解る。
【0062】
即ち、磁化曲線が、(x)磁化ゼロ区域を曲線全域にわたって有するか、又は、(y)外部磁場の増減時に、ほぼ同じ磁化軌跡をたどり、ほとんど膨らまない磁化曲線となる。
【0063】
超電導温度域で磁化曲線が、上記のように平坦化する現象(“Iwakuma-Magnetization-zero-flat(IMZF)現象”ということがある。)も、本発明者らが見いだした、REBCO超電導体における特異な現象である。特異なIMZF現象の発現は、超電導層の超電導機構と関連しているが、これについては後述する。
【0064】
図9に、試験線材Bの磁化特性を、1〜4Tの直流バイアス磁場中で、温度T、及び、磁界印加角度θを変えて測定した結果を示す。
【0065】
図9(a)に、直流バイアス磁場1T及び2T中で、T=77K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、図9(b)に、直流バイアス磁場1T、2T、3T、及び、4T中で、T=64K、θ=15°で測定した磁化曲線を示し、図9(c)に、直流バイアス磁場1T、2T、3T、及び、4T中で、T=35K、θ=60°で測定した磁化曲線を示す。
【0066】
図9では、直流バイアス磁場中の磁化曲線が、ゼロ磁場を中心として外部磁界を変化させて測定した図7に示す磁化曲線に対して、どのように変化しているのかを示すために、ゼロ直流バイアス磁場の下で測定した磁化曲線も示している。
【0067】
図から、温度Tが低温になるほど、ΔBr(磁化ゼロ区域)が顕著に発現し、また、磁界印加角度θが小さいほど、ΔBr(磁化ゼロ区域)は拡大することが解る。
【0068】
本発明者らが見いだした磁化曲線の特異な挙動は、磁化曲線が囲う面積を大幅に縮減するから、ピンニングロスが大幅に低減することが期待できる。
【0069】
図10に、試験線材Aと試験線材Bについて測定した、磁場Bm(T)とピンニングロス(J/m3cycle)の関係を示す。図10(a)に、試験線材Aにつき、T=77K、θ=90°、45°、30°及び、15°で測定(図5(a)に対応)した結果を示し、図10(b)に、試験線材Bにつき、T=35K、θ=90°、60°、45°30°、15°、及び、10°で測定(図8(b)に対応)した結果を示す。
【0070】
図5(a)に示すように、試験線材Aの77Kにおける磁化曲線は通常の挙動を示す。この場合のピンニングロスは、臨界状態モデル(非特許文献7、参照)で予測した値と一致し、図10(a)に示すピンニングロス曲線において、変曲点の磁場は、磁束が線材の超電導層の中心部にまで侵入する中心到達磁場(Bp)に相当する。
【0071】
Bm>Bpの領域で、磁界印加角度θを変化させると、ピンニングロスは、θ=90°の場合のピンニングロスに対し、sinθで減少する、即ち、磁界印加角度θに対するピンニングロスをW(θ)とすると、W(θ)=W(90°)・sinθである。
【0072】
一方、試験線材Bの35Kにおける磁化曲線は、特異な挙動(図8(b)、参照。ΔBr(M//c≒0)、ΔMd(Ad-M//c)が存在する。)を示す。磁化曲線が囲む面積がピンニングロスに相当する。図8(b)に示す磁化曲線は、通常の磁化曲線に比べ、囲む面積が減る方向に変形しているから、ピンニングロスが減少する。
【0073】
特に、θ=15°及び10°のときのピンニングロスは、図10(b)に示すように、著しく減少した。例えば、Bm=1Tで、W(15°)=(1/13)W(90°)sin15°、W(10°)=(1/76)W(90°)sin10°である。また、Bm=2Tで、W(15°)=(1/6.6)W(90°)sin15°、W(10°)=(1/45)W(90°)sin10°である。
【0074】
直流バイアス磁場中でのピンニングロスの減少は、ゼロ磁場を中心とする交流磁場の場合に比べて、より顕著である。図11に、試験線材Bについて測定した、磁場Bm(T)とピンニングロス(J/m3cycle)の関係を示す。
【0075】
図11(a)に、T=77K、θ=15°で測定(図9(a)に対応)した結果を示し、図11(b)に、T=64K、θ=15°で測定(図9(b)に対応)した結果を示し、図11(c)に、T=35K、θ=60°で測定(図9(b)に対応)した結果を示す。
【0076】
試験線材Bの1〜4Tの直流磁場中におけるピンニングロスの変化には、磁化曲線に対応して二つの変曲点が現れる。上の変曲点は、中心到達磁場Bpに対応し、図10(a)及び(b)に示すように、Bdc=0Tのときの磁場と同じである。一方、下の変曲点においては、ピンニングロスが急に増加する。
【0077】
通常、磁化曲線における上下の磁化差(ΔM)は、臨界電流密度に相当(一対一に対応)するが、本発明超電導体の磁化曲線においては、超電導現象が発現する温度域にて、ΔBr(M//c≒0の磁化ゼロ区域)、及び/又は、ΔMd(Ad-M//cの磁化急落区域)が存在し、これら区域においては、上述したように、ピンニングロス(J/m3cycle)が大幅に低減するから、本発明の磁化区域の磁化差(ΔM)は、臨界電流密度に相当(一対一に対応)しない。
【0078】
また、上記磁化差(ΔM)は、線材幅、又は、フィラメントに分割されている場合にはフィラメント幅の積に相当(一対一に対応)しない。
【0079】
RE1Ba2Cu37-z超電導体の磁化曲線において、超電導現象が発現する温度域にて、ΔBr(M//c≒0の磁化ゼロ区域)、及び/又は、ΔMd(Ad-M//cの磁化急落区域)が存在することは、超電導層の超電導機構と密接に関連する。
【0080】
図12に、REBCO超電導層への磁束の侵入態様を模式的に示す。図12(a)に、量子化磁束(fluxoid)がREBCO超電導層(CuO2 plane)へ垂直に侵入した態様を示し、図12(b)に、量子化磁束(fluxoid)がREBCO超電導層に平行に侵入した態様を示す。
【0081】
図12(a)に示す磁束侵入態様は、図4(a)に示す、結晶のc軸にほぼ沿って磁化(M//c)する磁化態様にほぼ対応し、図12(b)に示す磁束侵入態様は、図4(b)に示す、結晶のa軸とb軸にほぼ沿って磁化(M//ab)する磁化態様にほぼ対応する。
【0082】
量子化磁束が結晶のc軸にほぼ沿って(CuO2 planeを貫いて)侵入した状態(図12(a)、参照)では、量子化磁束がCuO2 planeの超電導特性を阻害する。一方、磁束がREBCO超電導層(CuO2 plane)の間に平行に侵入した状態(図12(b)、参照)では、磁束は“CuO2 plane”の超電導特性を妨げないので、図8(b)に示す、35Kでθ=10°の磁化曲線のようにIMZF現象を発現する磁化曲線が実現する。
【0083】
IMZF現象は、“CuO2 plane”の結晶性と密接に関連する。図13に、超電導結晶の配向の一態様を示す。面内配向した結晶粒4の中に、面内配向角Δφの結晶粒3が存在すると、臨界電流密度Jcが小さい領域が形成される。それ故、Δφ≒0が望ましい。
【0084】
表1に示すように、試験線材AのΔφは5.4°であり、試験線材BのΔφは3.0°である。Δφは6.0°未満が好ましい。より好ましくは、4.0°未満、さらに、好ましくは3.0°未満である。
【0085】
以上のことから、IMZR効果、IMAD効果、及び、IMZF現象は、超電導電流輸送を主に担うCuO2超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束がCuO2平面間に侵入したほうが、量子化磁束がCuO2平面に垂直成分を持って、又は、CuO2平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って発現すると考えられる。
【0086】
即ち、RE1Ba2Cu37-z超電導体において、磁化が小さいという現象、及び/又は、ピンニングロスが小さいという現象は、超電導電流輸送を主に担うCuO2超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束がCuO2平面間に侵入したほうが、量子化磁束がCuO2平面に垂直成分を持って、又は、CuO2平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って発現すると考えられる。
【0087】
以上、RE=YとGdの場合のRE1Ba2Cu37-z超電導体(試験線材Aと試験線材B)を例にとり、本発明について説明したが、REは、Y1-xGdx(0<x<1)でもよい。また、本発明のIMZR効果及び/又はIMAD効果は、RE1Ba2Cu37-z超電導体を超電導現象が発現する温度域に冷却した状態で、磁場を高磁場にむけて印加すれば発現するから、REは、Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上である。
【0088】
また、上記原理を前提にすれば、本発明は、超電導電流輸送を主に担う超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束が超電導平面間に侵入したほうが、量子化磁束が超電導平面に垂直成分を持って、又は、超電導平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って、磁化が小さいという現象、及び/又は、ピンニングロスが小さいという現象が発現することを特徴とする超電導体を含むものである。
【0089】
本発明超電導体の製造方法について説明する。試験線材Aと試験線材Bは、前述したように、IBAD法とPLD法を使用するRR法を用いて製造した(非特許文献5、参照)。それ故、REが、Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上の本発明超電導体も、RR法を用いて製造することができる。IBAD法、PLD法、及び、RR法の条件は、特定の条件に限定されないが、結晶性の良い(Δφ、Δωがともに小さい)RE1Ba2Cu37-z超電導体を製造できるように選択することが望ましい。
【実施例】
【0090】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0091】
(実施例)
IBAD法とPLD法を使用するRR法を用いて、表1に示す試験線材Aと試験線材Bを、再度製造した。なお、試験線材AのΔφは5.3°で、試験線材BのΔφは2.9°であった。両試験線材において、超電導現象が発現する温度域で、冷却温度、磁場、及び、回転角を変えて、磁化特性を測定した。測定結果は、図5〜11に示す結果と同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
前述したように、本発明によれば、変動又は静止磁場中での磁化及びピンニングロスが極めて小さいREBCO超電導線材を製造し得るRECO超電導体を提供することができる。よって、本発明は、超電導機器製造産業において利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0093】
1 鞍型ピックアップコイル
2 試験線材
3 面内配向角Δφの結晶粒
4 面内配向した結晶粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導現象が発現する温度域において、外部磁場が増加から減少に、又は、減少から増加に転じて形成される磁化曲線が、磁化ゼロ近傍で、磁化変化率が略ゼロで推移する磁化ゼロ区域を有することを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。
ここで、REは、Y、Gd、Nd、Sm、Eu、Yb、Pr、及び、Hoの1種又は2種以上である。
【請求項2】
前記磁化ゼロ域の磁化差(ΔM)が、臨界電流密度の大きさと、線材幅、又は、フィラメントに分割されている場合にはフィラメント幅の積に、一対一に対応しないことを特徴とする請求項1に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項3】
前記磁化曲線が、外部磁場の方向反転時に磁化が急激に落下する磁化急落区域を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項4】
前記磁化曲線が、前記磁化ゼロ区域を曲線全域にわたって有することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項又は2項以上に記載の現象が顕著になることにより、磁化曲線が、外部磁場の増減時に、ほとんど膨らまない、即ち、外部磁場の増減時に、ほぼ同じ磁化軌跡をたどることを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項6】
前記REがGdであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項7】
前記REがYであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項8】
前記REがY1-xGdx(0<x<1)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項9】
前記RE1Ba2Cu37-z超電導体の面内結晶配向度が6.0°未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項又は2項以上に記載の現象が、超電導電流輸送を主に担うCuO2超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束がCuO2平面間に侵入したほうが、量子化磁束がCuO2平面に垂直成分を持って、又は、CuO2平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って引き起こされることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項11】
超電導電流輸送を主に担うCuO2超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束がCuO2平面間に侵入したほうが、量子化磁束がCuO2平面に垂直成分を持って、又は、CuO2平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って、磁化が小さいという現象、及び/又は、ピンニングロスが小さいという現象が発現することを特徴とするRE1Ba2Cu37-z超電導体。
【請求項12】
超電導電流輸送を主に担う超電導平面が主に二次元的に広がって、かつ、ある平面間隔で複数存在し、磁束又は量子化磁束が超電導平面間に侵入したほうが、量子化磁束が超電導平面に垂直成分を持って、又は、超電導平面に対し垂直又は斜めに侵入するより超電導凝縮エネルギーの差分だけ系のエネルギーが低くて安定であるという原理に従って、磁化が小さいという現象、及び/又は、ピンニングロスが小さいという現象が発現することを特徴とする超電導体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−38526(P2012−38526A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176685(P2010−176685)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り http://iopscience.iop.org/0953−2048/23/7/075009(掲載日:平成22年6月7日)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「イットリウム系超電導電力機器技術開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】