RFパウダー粒子、RFパウダー、およびRFパウダーの励起方法
【課題】偽紙幣等の作製を困難にでき、特定共振周波数を有するタンク回路が自ら発振して高周波電磁界を発生させることができ、発振用電力を容易にかつ確実に供給することができるRFパウダー粒子、RFパウダー、RFパウダーの励起方法を提供する。
【解決手段】RFパウダー粒子21は、基板22の絶縁膜面上にアンテナとしてのコイル24(インダクタンス要素)とこのコイルの両端に接続されるコンデンサ25(キャパシタンス要素)とを形成し、インダクタンス要素とキャパシタンス要素でタンク回路34を形成し、このタンク回路34に電力を供給する光起電力素子30を基板22上に設けた。
【解決手段】RFパウダー粒子21は、基板22の絶縁膜面上にアンテナとしてのコイル24(インダクタンス要素)とこのコイルの両端に接続されるコンデンサ25(キャパシタンス要素)とを形成し、インダクタンス要素とキャパシタンス要素でタンク回路34を形成し、このタンク回路34に電力を供給する光起電力素子30を基板22上に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダーとして使用し、紙等に含有させ、外部から照射される光により高周波磁界を発生し、この高周波磁界により情報の読み取り等ができるRFパウダー粒子、RFパウダー、およびRFパウダーの励起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ICタグはユビキタス時代の入り口にある商品と考えられている。RF−ID(超小型無線認識)として名札やスイカカード、FeRAMカードなど、以前から開発が行われている。ICタグの市場は将来必ず大きいものに成長すると、多数の人が期待している。しかし、未だに期待しているほどには市場は育っていない。その理由として、コストとセキュリティー、機密の問題など、社会的に解決しなくてはならない課題があるからである。
【0003】
またRF−IDの技術は、紙幣や有価証券等の財産的価値を有する書面の識別への応用も考えられる。紙幣の偽造などが問題となっており、それらの問題を解決するための方法として、ICタグを紙幣等に埋め込むことが考えられる。しかしながら、ICタグの価格が高いことやサイズが大きいために上記のことが実現するには至っていない。
【0004】
ICタグの価格は、ICタグチップのサイズを小さくすることにより安くすることができる。それは、ICタグチップのサイズを小さくすれば、1枚のウェハから得られるICタグチップの数量を多くすることができるからである。現在までに、0.4mm角のICタグチップが開発されている。このICタグチップは、チップ内の128ビットのメモリデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取ることができる(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
一方、ICタグ以外の要素を用いた、紙幣やクレジットカード等の識別等に応用できる無線周波数自動識別(RF/AID)システムも考えられている。その一例として、特許文献1では、紙やプラスチックからなる基板に固定した配置で配置され、基板上にランダムな空間位置を占め、複数の無線周波数に共振する複数の共振子を含んでいる。複数の共振子は受動固体共振子である。受動固体共振子は、伸長した金属体から形成された薄双極子を含む。受動固体共振子は、より具体的に、石英クリスタルのような、石英ファミリーに属する材料からなっている。無線周波数ターゲットでは、基板の上に設けた複数の共振子が無線周波数の電磁波によって照射されるときに共振し、その共振を検出することによって複数の共振子の配置を把握し、これにより識別される。
【特許文献1】特開平10−171951号公報
【非特許文献1】宇佐美光雄、『超小型無線ICタグチップ「ミューチップ」』、応用物理、Vol.73、No.9、2004、p.1179−p.1183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙幣に従来のICタグを適用して偽装紙幣防止を行う場合、1つのICタグを付するだけでは構成が単純であるので、偽造紙幣を容易に作られてしまう可能性がある。そこでICタグよりもより小さいサイズの微小な回路素子が提案されることが望ましい。ICタグをより微小化することは、ICタグ自体がIC回路を内蔵しているので、大きな制約を受け、不可能である。このことは、特許文献1に記載された、受動固体共振子を含む素子であっても同じである。そこで本発明者らは、タンク回路のみを含むアンテナ回路要素を提案する。このアンテナ回路素子は、ICタグのサイズよりも相当に小さい微細サイズの素子として製作することが可能であり、パウダー粒子の程度の大きさを有するものである。他方、紙幣等にかかるアンテナ回路素子を付加・付着または含有させる場合に、当該アンテナ回路素子から情報を読取ることが重要な技術となる。情報の読取りには電磁誘導による結合が利用されるが、電磁結合のための高周波電磁界を発生させる電力の供給の仕方の解決法が技術的な大きな課題となる。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を鑑み、紙幣や有価証券等の財産的価値の高いシート状等の対象物について偽紙幣等を作製することを困難にすることができ、特定の共振周波数を有するタンク回路が外から与えた光エネルギを変換して自ら発振して高周波電磁界を発生させることができ、さらに発振用電力を容易にかつ確実に供給することができるRF粒子、このRFパウダー粒子を集めて作られるRFパウダー、およびRFパウダーの励起方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るRFパウダー粒子、RFパウダー、およびRFパウダーの励起方法は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0009】
本発明に係るRFパウダー粒子は、基板の絶縁膜面上にアンテナとしてのインダクタンス要素とこのインダクタンス要素の両端に接続されるキャパシタンス要素とを形成し、インダクタンス要素とキャパシタンス要素でタンク回路を形成し、タンク回路に電力を供給する光起電力素子を基板上に設けるように構成される。
【0010】
上記の構成において、好ましくは、インダクタンス要素は、絶縁膜面上に形成された複数巻きのコイルで形成され、光起電力素子はコイルの両端の間に電力が供給できるように接続されることを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、好ましくは、コイルと光起電力素子は10μm以上離れていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成において、好ましくは、コイルと光起電力素子は酸化膜を介して分離されていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成において、好ましくは、基板は半導体基板であり、光起電力素子は半導体基板上に形成されたPN接合からなるフォトダイオードであることを特徴とする。
【0014】
上記の構成において、好ましくは、光起電力素子は、複数のフォトダイオードを直列に接続してなる素子であることを特徴とする。
【0015】
上記の構成において、好ましくは、2つの受光面を有する光起電力素子で片方の受光面への光照射を阻止する光遮蔽部を備えることを特徴とする。
【0016】
上記の構成において、好ましくは、インダクタンス要素またはキャパシタンス要素が光遮蔽部となっていることを特徴とする。
【0017】
上記の構成において、好ましくは、基板で、光起電力素子の配置場所はインダクタンス要素の配置場所の下側であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成において、好ましくは、基板でキャパシタンス要素はインダクタンス要素の上側に配置されることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るRFパウダーは、パウダーの態様で使用され、当該パウダーを形成するパウダー粒子の各々は、前述したいずれかのRFパウダー粒子であることを特徴とする。
【0020】
上記の構成において、好ましくは、RFパウダー粒子に含まれるタンク回路は、外部から光起電力素子に照射される周期的パルス光に基づいて高周波磁界を発生することを特徴とする。
【0021】
上記の構成において、好ましくは、周期的パルス光の周波数は、タンク回路の共振周波数またはその整数分の1の周波数であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るRFパウダーの励起方法は、パウダーの態様で使用され、当該パウダーを形成するパウダー粒子の各々は、前述したいずれかのRFパウダー粒子であるRFパウダーの励起方法であって、光源からの光をRFパウダー粒子に照射し、この光によりRFパウダー粒子に含まれる光起電力素子で電力を発生し、この電力によりRFパウダー粒子に含まれるタンク回路で高周波磁界を発生することを特徴とする。
【0023】
上記の励起方法において、好ましくは、上記の光は、半導体レーザまたはLEDから放射されるレーザ光である。
【0024】
上記の励起方法において、好ましくは、上記の光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数をタンク回路の共振周波数に一致させることを特徴とする。
【0025】
上記の励起方法において、好ましくは、上記の光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数をタンク回路の共振周波数の整数分の1に一致させることを特徴とする。
【0026】
上記の励起方法において、好ましくは、周期的パルス光の照射は、アンテナ回路要素の基板の裏面側を照射する第1の周期的パルス光と、基板の表面側を照射する第2の周期的パルス光とによって行われることを特徴とする。
【0027】
上記の励起方法において、好ましくは、第1の周期的パルス光と第2の周期的パルス光の照射タイミングは異ならせていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、次の効果を奏する。
本発明に係るRFパウダー粒子およびRFパウダーによれば、基板上にタンク回路を形成し、このタンク回路に電力を供給する光起電力素子を基板上に設けたため、外部から照射される周期的パルス光によってタンク回路が高周波磁界を発生し、その高周波磁界を近傍に配置された検出コイルにより検出することができる。さらにタンク回路により発生される高周波磁界からRFパウダー粒子に関する周波数情報を読み出すことができる。
また本発明に係るRFパウダーの励起方法によれば、タンク回路に電力を供給する光起電力素子を備えたRFパウダーにおける光起電力素子に対して周期的パルス光を照射して発電させタンク回路に循環電流を流すようにし、さらに周期的パルス光の周波数をタンク回路の共振周波数と同一または整数分の1にすることにより、タンク回路によって高周波磁界を持続して発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1はRFパウダー含有基体を示す断面斜視図である。RFパウダー含有基体は、本発明に係るRFパウダーを含む。
【0031】
図1は拡大して示されている。例えば紙等のシート状または可撓性を有するプレート状の基体10の表面に、例えば3種類のRFパウダー粒子11,12,13が付着されている様子を示している。ここでは基体10の例として紙幣を用いる。RFパウダー粒子11〜13は、後述するように、周期的パルス光が照射されることにより、それぞれ、異なる高い周波数で共振し、高周波電磁界(結合要素は磁界)を生成するという特性を有している。RFパウダー粒子11〜13はほぼ同じ大きさを有している。
【0032】
上記のRFパウダー粒子11〜13のそれぞれは、実際には、多数または大量のRFパウダー粒子により粉状体の使用態様にて集合的にて取り扱われ、RFパウダーを構成する。図1では、RFパウダー粒子11〜13は全部で10個が示されているが、RFパウダー粒子の個数はこれに限定されるものではない。粉状体のRFパウダーの使用態様を考慮すれば、実際には、当該RFパウダー粒子11〜13はシート状の形状を有する基体10の表面全体に分散的に広がって存在している。上記のごとく、表面に存在する多数のRFパウダーを含む基体10を「RFパウダー含有基体10」と呼ぶことにする。
【0033】
上記の「RFパウダー」とは、パウダー(粉状体または粒状体)を形成する大量の粒子の各々が外部よりエネルギ(周期的パルス光等)を供給されることにより高周波電磁界(RF)を発生して外部のリーダとの間で情報の送受を行う電気回路要素(アンテナ回路要素)を有し、通常の使用態様が集合的形態であるパウダーとして使用されるものを意味する。
【0034】
次に、図2〜図5を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第1の実施形態を説明する。
【0035】
図2はRFパウダー粒子の外観斜視図を示し、図3はRFパウダー粒子の平面図を示し、図4は図3におけるA−A線に沿っての縦断面図を示し、図5は絶縁膜の下部に形成されたフォトダイオード部の平面図を示している。図4および図5の縦断面図においてRFパウダー粒子はその厚みを誇張して示している。
【0036】
RFパウダー粒子21は、好ましくは、立方体またはこれに類似した板状の直方体の形状を有し、外側表面での複数の矩形平面に関して、最長辺を含む矩形平面が好ましくは0.30mm角以下0.05mm角以上の大きさを有し、より好ましくは0.15mm角以下の大きさを有する3次元的な形状を有している。この実施形態のRFパウダー粒子21は、図3に示すように、その平面形状が略正方形になるように形成されている。RFパウダー粒子21では、略正方形の平面形状において、例えば図3中の一辺Lが0.15mm(150μm)となっている。
【0037】
RFパウダー粒子21では、図2および図4に示されるようにP型シリコン(Si)等の基板22上に光起電力素子30が形成されている。さらに光起電力素子30の上に絶縁層(酸化膜SiO2等)23を形成し、この絶縁層23の上に複数巻きのコイル24(インダクタンス要素)とコンデンサ(またはキャパシタ)25(キャパシタンス要素)とが形成される。コンデンサ25は、2つの部分25a,25bから構成されている。
【0038】
RFパウダー粒子21の上面で、絶縁層23の上に形成された絶縁層35(SiO2,SiN等)内にコイル24が形成されている。コイル24とコンデンサ25は、RFパウダー粒子21ごとに設定された特定の共振周波数で共振して周りに磁界を発生する(ここでは、これをアンテナ機能と呼ぶことにする)の高周波電磁界を生成するアンテナ機能を有している。より厳密には、後述するごとく、コイル24は下記のコンデンサ25と共にタンク回路(34)を形成し、当該タンク回路での共振作用に基づいてコイル24の近傍領域において高周波磁界を生じる。
【0039】
コイル24は、図2または図3に示されるように、RFパウダー粒子21の略正方形の平面形状の各辺に沿って、1本の導体配線を例えば三重巻きにすることにより形成されている。コイル24を形成する導体配線の材質は例えば銅(Cu)である。
【0040】
コイル24の両端部は所要の面積を有する長方形のパッド24a,24bとなっている。2つのパッド24a,24bは、それぞれ、ループ形状のコイル24の内周側と外周側に配置されている。パッド24a,24bのそれぞれは、コンデンサ25の2つのコンデンサ要素25a,25bの下側電極としての機能を有する。
【0041】
上記のパッド24a,24bのそれぞれは、後述するように、光起電力素子30内のフォトダイオード31の電極42およびフォトダイオード33の電極42とコンタクトホール(貫通配線)43,44を介して電気的に接続されている。
【0042】
上記において、目的の共振周波数設計に応じてコイル24の巻数と長さ、形状は任意に設定することができる。
【0043】
コンデンサ25は、本実施形態の場合には、2つのコンデンサ要素25a,25bから構成されている。コンデンサ要素25aは、上記の下側電極24aと上側電極26a(アルミニウム(Al)等)とから形成される。コンデンサ25bは、上記の下側電極24bと上側電極26bとから形成される。コンデンサ要素25a,25bの各々の上側電極26a,26bは導体配線26cで接続されている。実際には、2つの上側電極26a,26bと導体配線26cは一体物の導体金属層26として形成されている。下側電極24aと上側電極26aとの間、および下側電極24bと上側電極26bとの間には、それぞれ、絶縁膜27(SiO2)が設けられる。絶縁膜27によって、下側電極24aと上側電極26a、下側電極24bと上側電極26bは、それぞれ電気的に絶縁されている。
【0044】
コンデンサ要素25a,25bの各々の絶縁膜27は共通の一層の絶縁膜となっている。絶縁膜27の厚みは例えば30nmである。絶縁膜27は、2つのコンデンサ要素25a,25bの間の領域において、上側電極26a,26bの間をつなげる導体配線26cと、コイル24とを電気的に絶縁している。
【0045】
上記の構成によって、コイル24の両端部の間には、電気的に直列に接続された2つのコンデンサ要素25a,25bで作られるコンデンサ25が接続されることになる。ループを形成するように接続されたコイル24とコンデンサ25とによってタンク回路(LC共振回路)が形成される。このタンク回路は、光源から与えられる光に応じて上記の光起電力素子37が発電を行い、光起電力素子30から出力する電圧が共振周期より早く立ち上がるとその共振周波数に一致する周波数を有する高周波磁界を生成して、それは減衰する。
【0046】
なおコンデンサ25は、上側電極26a,26bと下側電極24a,24bからなる対向電極の大きさを設計することで、上記タンク回路の共振周波数を適宜に設計することができる。さらに誘電体(絶縁体)27の材料や厚みを選ぶことによっても周波数を設計することができる。
【0047】
上記の光起電力素子30は、コイル24とコンデンサ25によって形成されるタンク回路に共振作用を生じさせるための高周波の循環電流を流すためものであり、当該タンク回路に初期エネルギを与えるための手段である。光起電力素子30による発電動作のためのエネルギ源として、外部から照射される周期的パルス光が使用される。
【0048】
図4および図5において、光起電力素子30は、P型シリコン基板22上に形成された例えば3つのフォトダイオード31,32,33の直列接続に基づいて構成されている。フォトダイオード31〜33の各々は、外部から照射された光を電気エネルギに変換し、所要の電力を出力する。フォトダイオード31〜33は、それぞれ、N型半導体領域31a,32a,33aと、P型半導体領域31b,32b,33bとからなるPN接合を利用して形成される。ここでは、これらの3つのPN接合、すなわち3つのフォトダイオード31〜33は、3段の直列接続を形成している。光起電力素子30では、3段の直列接続によって、所要の高い電圧を得ている。また3つのフォトダイオード31〜33の各々では、基板22からの絶縁を行うために、P型シリコン基板22との間でPNP接合を形成している。P型シリコン基板22とN型半導体領域(拡散層)31a〜33aとが逆バイアスになり、分離構造が形成される。各段のフォトダイオード31〜33はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜41によって互いに分離され絶縁されている。また各段のフォトダイオード31〜33はAl配線42で直列的に接続されている。図4において、フォトダイオード31の電極42はコンタクトホール43に接続されてプラス電極になっており、フォトダイオード33の電極42はコンタクトホール44に接続されてマイナス電極になっている。基板22が電気的に浮遊しないように、図4中における右側端のPN接合であるフォトダイオード33のN型半導体領域33aはP型シリコン基板22とAl配線42で接続されている。それによって3つのフォトダイオード31〜33は、P型シリコン基板22を基準電位とすることになる。なお基板22としてN型シリコン基板を使うときは、PN接合の順序を反対に入れ換える。光起電力素子30を電気回路で表現すると、図6に示すように、3つのフォトダイオード31〜33が直列に接続された回路構造となっている。
【0049】
また図4から明らかなように、RFパウダー粒子21の表面の全体はP−SiN膜28により被覆されている。P−SiN膜28は、RFパウダー粒子21におけるタンク回路が形成されている側の表面の全体を保護している。
【0050】
さらに上記において、コンデンサ25は2つのコンデンサ要素25a,25bで構成したが、これに限定されず、いずれか一方による1つのコンデンサ要素で作ることもできる。コンデンサ25の容量値は、電極の面積を調整することにより適宜に変更することができる。複数のコンデンサを並列に配置することにより適宜に設計することもできる。
【0051】
以上の構造を有するRFパウダー粒子21は、その上面にループ状に接続されたコイル24とコンデンサ25とから成るタンク回路と、そのタンク回路に接続される光起電力素子30を有している。光起電力素子30は、外部から供給される周期的パルス光に基づいて発電を行い、その循環電流はタンク回路に供給される。タンク回路は、光起電力素子30からの電流を受けると、共振周波数で決まる高周波磁界を発生する作用を有する。このようにして、RFパウダー粒子21は設計された周波数のパルス光に共振して外部に磁界を生成する特性をもつ。
【0052】
図7は、RFパウダー粒子21上に形成されたタンク回路(LC共振回路)34と、このタンク回路34に並列に接続された光起電力素子30とを等価回路で示している。RFパウダー粒子21の絶縁層23上に1つのタンク回路34が形成される。タンク回路34は、インダクタンス要素(L)とキャパシタンス要素(C1)とから構成される。インダクタンス要素Lは上記コイル24によって作られる要素である。キャパスタンス要素C1は、上記コンデンサ25で作られる要素である。キャパシタンス要素C1は、実際上、2つのコンデンサ要素25a,25bの直列回路から作られている。光起電力素子30は、前述したごとく3つのフォトダイオード31〜33の直列回路から作られている。フォトダイオード31〜33は並列回路で構成することもできる。なおキャパシタンス要素C2は、フォトダイオード31〜33の寄生容量を示しており、キャパシタンス要素C1よりかなり小さい値に設計されている。
【0053】
次に、上記のRFパウダー粒子21の製造方法について、図4等を参照して説明する。P型シリコン基板22の上でAl配線42を用いて直列接続されたフォトダイオード31〜33は、よく知られた酸化膜絶縁分離技術と不純物拡散技術を適用して作製される。これによって光起電力素子30が作られる。基本的な構造は、図4に示した通りであり、3段に直列接続されたフォトダイオード31〜33の構造となっている。実際上、酸化膜41との界面リークを防止するため、拡散層と拡散層の間に、または光起電力素子30のチップ最外周に、ガードリング高濃度拡散層を設けることが望ましい。こうして作られた光起電力素子30の上に、アンテナ分離のための絶縁層(酸化膜)23を成長させ、その上にコイル24とコンデンサ25を作製する。パウダーにするために1枚のウェハから多数のRFパウダー粒子21を切り出す場合において、当該ウェハでの分離線のパターンをレジストで作製して深く(50μm程度)エッチングを行う。保護膜としてのP−SiN膜を作製してから、ウェハの裏面を研削してパウダー状にRFパウダー粒子21を分離する。
【0054】
以下に、RFパウダー粒子21の基本的な製造工程の手順(1)〜(41)の内容を箇条書きで概略的に示す。
(1)P型シリコン基板を準備する。(2)厚さ50nmのパッド酸化を行う。(3)厚さ100nmのプラズマシリコン窒化膜(P−SiN膜)を作製する。(4)パターン露光によりN−well窓を開ける。(5)リンのイオン注入を行う。(6)レジスト剥離を行う。(7)絶縁分離、窓開けのパターン露光を行う。(8)P−SiN膜のエッチングを行う。(9)レジスト剥離を行う。(10)1050℃での絶縁酸化を行う。(11)P−SiN膜を除去する。(12)P−well窓開け露光を行う。(13)ボロンイオン注入(BF2+)を行う。(14)900℃でのアニールを行う。(15)パッド酸化膜を除去する。(16)Al/TiNをスパッタリングによって500nmの厚さに堆積する。(17)Al配線のための露光を行う。(18)Al配線のエッチングを行う。(19)レジストの剥離を行う。(20)アンテナ分離のためのTEOS酸化膜を10μmで形成する。(21)接続孔露光を行う。(22)エッチングを行う。(23)レジスト剥離を行う。(24)厚さ100nmのバリアメタルTiNをスパッタリングによって堆積する。(25)コイルパターン露光を行う。(26)Cuをめっきにより厚さ2μmの堆積を行う。(27)レジスト剥離を行う。(28)TiNを除去する。(29)TEOS酸化膜を成長させる。(30)酸化膜をCMPする。(31)コンデンサ(キャパシタ)用誘電体膜(SiO2)を厚さ30nmで成長させる。(32)Alをスパッタリングにより厚さ500nmで堆積する。(33)Alパターン露光を行う。(34)Alエッチングを行う。(35)レジスト剥離を行う。(36)ダイシングパターン露光を行う。(37)深さ50μmのエッチングを行う。(38)レジスト剥離を行う。(39)100nmの厚さでP−SiN保護膜を成長させる。(40)裏面研削を行う。(41)パウダー粒子(パウダーチップ)の分離を行う。
以上のようにしてRFパウダー粒子21が作製される。
【0055】
次に、図8を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第2の実施形態を説明する。図8は第2実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図を示し、図3に対応している。図8において、図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0056】
第2実施形態に係るRFパウダー粒子21−1は、第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の変形例である。RFパウダー粒子21では、コンデンサ25の上側電極は1つの導体金属層26によるもの(26a,26b)であった。これに対して本実施形態に係るRFパウダー粒子21−1では、コンデンサ25の上側電極を形成するために2つの導体金属層47,48が形成されている。すなわち、上記の導体金属層26が2つに分割され、2つの導体金属層(47,48)が形成されたのと同じ意味を有している。導体金属層47は、2つの上側電極47a,47bとその間をつなぐ導体配線47cとから構成される。導体金属層48は、2つの上側電極48a,48bとその間をつなぐ導体配線48cとから構成される。上側電極47aと上側電極48aは下側電極24aに対向し、かつ上側電極47bと上側電極48bは下側電極24bに対向するように配置されている。その他の構成は、第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の構成と同じである。
【0057】
上記の構成によって、本実施形態に係るRFパウダー粒子21−1では、コンデンサ25については、導体金属層47で形成される第1のコンデンサ25−1と、導体金属層48で形成される第2のコンデンサ25−2とが設けられることになる。
【0058】
第2実施形態に係るRFパウダー粒子21−1によれば、その上面側に2つのコンデンサ25−1,25−2が形成されるため、2つの導体金属層47,48のそれぞれの導体配線47c,48cのうちのいずれか一方を切断すること、または両方共に切断しないことにより、異なる3通りのキャパシタンス値のうちのいずれか1つの値を後の工程で選択することができ、タンク回路34の共振周波数を変えることができる。これによりRFパウダー粒子21−1によれば、タンク回路34の共振周波数を3つの周波数のうちのいずれか1つに選択することができる。これにより、周波数別の製造効率を向上させることも可能である。
【0059】
次に、図9を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第3の実施形態を説明する。図9は第3実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図を示す。図9は、図3および図8に対応している。図9において、図3等で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0060】
第3実施形態に係るRFパウダー粒子21−2は、第2実施形態に係るRFパウダー粒子21−1の変形例である。本実施形態に係るRFパウダー粒子21−2では、コンデンサ25の上側電極を形成するために5つの導体金属層51,52,53,54,55が形成されている。すなわち、上側に形成される導体金属層が5つに分割され、5つの導体金属層51〜55が形成されたことを意味している。
【0061】
RFパウダー粒子21−2の絶縁層23の上面には、絶縁層35内にてコイル24のパターンが形成されている。コイル24の内周側端部および外周側端部には、下側電極24a,24bが形成されているが、前述した実施形態での下側電極に比して面積が広くなるように形成されている。
【0062】
導体金属層51は、2つの上側電極51a,51bとその間をつなぐ導体配線51cとから構成される。導体金属層52は、2つの上側電極52a,52bとその間をつなぐ導体配線52cとから構成される。導体金属層53は、2つの上側電極53a,53bとその間をつなぐ導体配線53cとから構成される。導体金属層54は、2つの上側電極54a,54bとその間をつなぐ導体配線54cとから構成される。導体金属層55は、2つの上側電極55a,55bとその間をつなぐ導体配線55cとから構成される。
【0063】
上側電極51a,52a,53a,54a,55aは下側電極24aに対向し、かつ上側電極51a,52a,53a,54a,55aは下側電極24bに対向するように配置されている。その他の構成は、第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の構成と同じである。
【0064】
上記の構成によって、本実施形態に係るRFパウダー粒子21−2では、コンデンサ25については、導体金属層51,52,53,54,55によってそれぞれ第1から第5のコンデンサ25−1,25−2,25−3,25−4,25−5が形成される。
【0065】
第3実施形態に係るRFパウダー粒子21−2では、コンデンサが5つあるため、コンデンサの5つの配線のうち、いくつかの配線を切断することにより、切断する前と異なるキャパシタンス値を持つことになり、タンク回路34の共振周波数を変えることができ、共振周波数を切断工程で選択することができる。なお本実施形態では5つのコンデンサを設けたが,その個数は5つに限定されない。
【0066】
次に、図10を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第4の実施形態を説明する。図11は第4実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図を示す。図10は図3に対応している。図10において、図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0067】
第4実施形態に係るRFパウダー粒子21では、基板22の上に形成するフォトダイオード31〜33の配置領域を点線56で示している。点線56で示されたフォトダイオード配置領域は、コイル24の形成領域の下側になっている。この構成を採用することによって、タンク回路34側の表面に照射される光は遮蔽される。また基板22の側から照射される光はフォトダイオードに照射され、これによりフォトダイオードは発電作用を生じる。片面を遮光する構造とすることにより、RFパウダー粒子21は次のような利点を有している。
【0068】
RFパウダー粒子21の基板22は、その厚さが10〜20μm程度の薄さのとき入射された光を透過する。従って、RFパウダー粒子21の表裏の両面から光を当てることも可能である。この場合には、RFパウダー粒子21の表裏が反転していても光入射が可能となり、フォトダイオード31〜33を励起してタンク回路34を発振させることができる。この場合に、複数のRFパウダー粒子の配置が離散的であって、光のスポットが1個のRFパウダー粒子しか照射しないのであれば問題ない。しかしながら、光のスポット内に複数のRFパウダー粒子が配置される場合には特別な問題が生じる。
【0069】
すなわち、RFパウダー粒子の表裏が反転している場合には、同時に光照射を受ける2つのRFパウダー粒子の各々が生成した磁界は位相が反転して磁界を弱め合うことになる。同数のRFパウダー粒子が反転している状態が生じていると、それぞれが発生する磁界は完全に打ち消し合うことになる。
【0070】
上記のような問題を解決するには、RFパウダー粒子21の片面が光遮蔽されていることが望ましい。RFパウダー粒子(21,21−1,21−2)では、コイル24とコンデンサ25等は、RFパウダー粒子21の表面の一部を遮蔽するように形成されている。しかし、さらに本実施形態のごとく、意図的に形成した金属膜であるコイル24の下側にフォトダイオード31〜33を配置するように設計することが望ましい。また別な材料で遮蔽してもよい。
【0071】
上記のようにRFパウダー粒子21で片面遮光すると、光スポット内に複数のRFパウダー粒子が含まれるときでも、遮蔽されないものだけが動作するので、RFパウダー粒子の表裏を選択して光照射しなくてもよいという利点が生じる。この片面遮蔽されたRFパウダー粒子は、シート状部材に多数含ませると、ほぼ半々の割合で表裏が反転する。この場合、透過できる光をシート両面から照射し、かつパルスのタイミングを共振振動の半周期だけずらすことで生成磁界を強め合うように振動させることができる。
【0072】
次に、図11を参照して、RFパウダー粒子21内に形成される光起電力素子30の他の構造例を説明する。図11は光起電力素子30の部分の平面図を示す。図11は図5に対応している。図11において、図5で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0073】
この光起電力素子30では、フォトダイオード31〜33の各々を接続するAl配線42を図11に示されるように面積を広く取り、そのAl配線42によってフォトダイオード31〜33の片面(状面)を光に対して遮蔽するようにしている。それにより、タンク回路側の面に照射された光はAl配線42によって遮蔽され、基板側から照射される光によってフォトダイオード31〜33は発電作用を生じる。
【0074】
上記構造の光起電力素子30を有するRFパウダー粒子21は、第4実施形態の場合と同様に、片面遮光すると、光スポット内に複数のRFパウダー粒子が含まれるときでも遮蔽されないものだけが動作する。このため、RFパウダー粒子の表裏を選択する必要がなくなる。Al配線42で片面遮蔽された光起電力素子30を有するRFパウダー粒子21は、シートに多数含ませると半々の割合で表裏反転する。この場合、透過できる光をシート両面から照射し、かつパルスのタイミングを共振振動の半周期だけずらすことで生成磁界を強め合うように振動させることができる。
【0075】
次に、図12と図13を参照して、上記構造を有するRFパウダー粒子21の動作と、高周波磁界の検出・測定とを説明する。以下では、図2〜図7を参照して説明された第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の例で説明する。
【0076】
図12に従ってRFパウダー粒子21の動作を説明する。RFパウダー粒子21は、前述の通り、フォトダイオード31〜33から成る光起電力素子30と、コイル24とコンデンサ25から成るタンク回路34とを含んでいる。光起電力素子30とタンク回路34とはコンタクトホール43,44による貫通配線により接続されている。
【0077】
図12で示した状態は、1つのRFパウダー粒子21に対して、矢印61で示すように外部より光61Aが照射され、かつRFパウダー粒子21から生成される高周波磁界62を検出・測定するための検出コイル63がRFパウダー粒子21の近傍に配置されている。検出コイル63は一重巻きあるいは多数巻きのへルムホルツコイルである。検出コイル63の一端は同軸線路64の中心導体に接続され、その他端は同軸線路64の外部導体に接続されている。検出コイル63は、RFパウダー粒子21内のタンク回路34からの生成磁界62を受信するための受信機の一部である。
【0078】
また上記の光61Aは、LEDやレーザなどの光源から照射される光である。RFパウダー粒子21に光61Aを当てると、光起電力素子30には光起電力が生じる。RFパウダー粒子21に与えられる光エネルギはシリコンのバンドギャップ1.14eVのフォトンエネルギーの光であればよい。しかしながら、シリコンの基礎吸収端は間接遷移型であるために効率がよくないので、基礎吸収端のエネルギギャップより大きい青色よりも波長の短い、エネルギーが高い光が望ましい。光起電力素子30を構成するPN接合に光が照射されると、フェルミエネルギの差が生じて光発電される。フェルミエネルギの差に相当する電圧がフォトダイオード31〜33の両端に発生する。
【0079】
図13を参照して、RFパウダー粒子21から生じる高周波磁界の検出・測定を説明する。図13では、等価回路で表現されたRFパウダー粒子21と、磁界62を検出する検出装置が示されている。
【0080】
RFパウダー粒子21は、タンク回路34と、これに並列に接続された光起電力素子30(フォトダイオード31〜33)とを備える。RFパウダー粒子21に対して、LEDまたは半導体レーザ等の光源65が配置される。光源65には、発光電源66から周期的パルス信号67が供給される。これにより光源65は前述の光61Aを放射する。この光61Aは周期的パルス光である。周期的パルス光61Aは、RFパウダー粒子21の光起電力素子30に対して照射される。
【0081】
RFパウダー粒子21の近傍には、検出コイル63が配置されるという位置関係になっている。この検出コイル63は一例として二重巻きに作られている。検出コイル63は、RF受信機68に接続されている。RF受信機68は、RFパウダー粒子21のタンク回路34からの共振作用に基づく高周波磁界を受信する。
【0082】
発光電源66とRF受信機68には制御パルス発生器69が接続されている。発光電源66は、制御パルス発生器69から与えられるパルス信号の周波数を基準にして光源65を周期的に発光させる。またRF受信機68は、制御パルス発生器69からのパルス信号に基づいて、光源65の周期的パルス光の周波数と同一の周波数で、検出コイル63からの検出信号を受信する。それにより、周波数キーイング検出を行うことができ、非常に感度良くタンク回路34からの磁界62を受信することができる。
【0083】
光源65からの光61Aを単発パルスとして照射すると、タンク回路34での共振動作でリンギングが起き、共振作用に基づく循環電流は消滅する。単発パルス光に基づくリンギングは小さいので、これを検出することは容易でない。しかしながら、光61Aを周期的パルス光としてタンク回路34の共振周波数の周期または、その周期の整数倍の周期に合わせて発生させると、光起電力素子30の発電作用を介してタンク回路34にエネルギを補給できる。キャパシタンス要素(C1)に充電する周期に合わせて光を照射すると、消費されたエネルギを補った上にさらにエネルギを蓄積することができる。これを繰り返すことにより、タンク回路34に蓄積するエネルギを増させることができる。その結果、タンク回路34における循環電流は周期的パルス光のパルスの数と共に増幅される。タンク回路34から外部に放射される磁界62の強度はパルス光のパルス数の増加と共に増加するが、光パルスの周波数がタンク回路34の共振周波数から外れると、電力補給のタイミングが合わなくなり、補給を行うことができない。この観点から、周期的パルス光61Aのパルス周波数を変化させて高周波磁界強度を測定することにより、光61Aの当たったタンク回路34の共振周波数を同定することができる。
【0084】
上記のごとく、RFパウダー粒子21のタンク回路34の周囲に生成された高周波磁界62を検出する方法は、検出コイル63を用いるのが簡便な方法である。なおホール素子を用いて高周波磁界62を検出することもできる。外部に生じる高周波磁界62はパルス光の数に依存して増加するので、連続させるパルス光の数を設定して検出感度を設定する。パルス光の周波数とタンク回路34の循環電流の周波数(外部磁界の周波数)は一致するので、検出信号でパルス光を発生するようにすると、正の帰還回路ループが形成される。このようにすると、RFパウダー粒子21のタンク回路34の共振周波数と一致した周波数が自動的に選択されてリンギング発振が持続する。
【0085】
次に図14を参照して、RFパウダー粒子21のタンク回路34でリンギング発振が持続する場合の測定系を説明する。
【0086】
図14において、符号21は前述のRFパウダー粒子であり、符号70は測定装置であり、符号71は前述の光源65に対応する光源である。RFパウダー粒子21は光起電力素子30とタンク回路34を有している。光源71はトリガーパルス77により周期的パルス光61Aを出射する。検出装置70は、演算増幅器72を含み、さらに演算増幅器72の入力側に検出コイル63を接続している。演算増幅器72では、動作点を決める抵抗73,74,75,76が設計されている。光源71は発光ダイオードとして図示されている。
【0087】
上記の構成を有する測定系によれば、まず周期的トリガ電圧を印加して光源71から周期的パルス光61Aを光起電力素子30に照射すると、タンク回路34での共振作用によって減衰する高周波磁界62が発生する。この高周波磁界62を増幅して発振させ、検出装置70を経由してその発振電圧信号を光源71側へフィードバックすることにより、光源71は、タンク回路34の固有の共振周波数と同一の周波数の電圧が印加され同一周波数のパルス光を出射することにより、タンク回路34の発振が持続される。
【0088】
図14において検出装置70の出力端子72aから出力される信号は、タンク回路34のインダクタンス要素Lと検出コイル63との共振磁界結合の度合いが大きいときには正帰還ループが形成されて振幅レベルの大きい発振信号S1となり、電磁結合の度合いが小さい時またはトリガー周波数が共振周波数から外れていくときには振幅レベルが略ゼロの信号S2となる。
【0089】
パウダーの共振周波数が予め分かっていて、場所だけをパルス光で特定する目的なら、最初から同周波数のトリガーを印加して探る方法もある。
【0090】
またRCパウダー粒子21等の光起電力素子30を励起する方法において、周期的パルス光を照射するにあたり、基板の裏面側を照射する周期的パルス光と、基板の表面側を照射する周期的パルス光とによって行うことも可能である。この場合には、表裏反転したパウダーの発振位相が逆になり外部磁界を弱める。これを避ける方法として2つの周期的パルス光についてそれぞれの照射タイミングは半周期ずらすように構成することが有効である。
【0091】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るRFパウダー粒子等は、偽造紙幣等を確実に防止できる紙幣やクレジットカードや書類等に対して利用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明が適用されるRFパウダー含有基体の断面斜視図である。
【図2】RFパウダー含有基体中に含まれる1つのRFパウダー粒子の第1実施形態の斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】光起電力素子におけるフォトダイオード部の平面図である。
【図6】光起電力素子の等価回路を示す概念図である。
【図7】本実施形態に係るタンク回路とタンク回路に接続した光起電力素子の等価回路を示す回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図11】RFパウダー粒子における光起電力素子のフォトダイオード部の平面図である。
【図12】本実施形態に係るRFパウダー粒子の動作を説明する図である。
【図13】本実施形態に係るRFパウダー粒子での検出作用と検出装置を説明する構成図である。
【図14】本実施形態に係るRFパウダー粒子での循環電流の増幅を説明する構成図である。
【符号の説明】
【0094】
10 RFパウダー含有基体
11,12,13 RFパウダー粒子
21 RFパウダー粒子
21−1 RFパウダー粒子
21−2 RFパウダー粒子
22 基板
23 絶縁層
24 コイル
25 コンデンサ(キャパシタ)
27 絶縁膜
30 光起電力素子
31,32,33 フォトダイオード
34 タンク回路
61A 周期的パルス光
62 磁界
63 検出コイル
65 光源
70 検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダーとして使用し、紙等に含有させ、外部から照射される光により高周波磁界を発生し、この高周波磁界により情報の読み取り等ができるRFパウダー粒子、RFパウダー、およびRFパウダーの励起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ICタグはユビキタス時代の入り口にある商品と考えられている。RF−ID(超小型無線認識)として名札やスイカカード、FeRAMカードなど、以前から開発が行われている。ICタグの市場は将来必ず大きいものに成長すると、多数の人が期待している。しかし、未だに期待しているほどには市場は育っていない。その理由として、コストとセキュリティー、機密の問題など、社会的に解決しなくてはならない課題があるからである。
【0003】
またRF−IDの技術は、紙幣や有価証券等の財産的価値を有する書面の識別への応用も考えられる。紙幣の偽造などが問題となっており、それらの問題を解決するための方法として、ICタグを紙幣等に埋め込むことが考えられる。しかしながら、ICタグの価格が高いことやサイズが大きいために上記のことが実現するには至っていない。
【0004】
ICタグの価格は、ICタグチップのサイズを小さくすることにより安くすることができる。それは、ICタグチップのサイズを小さくすれば、1枚のウェハから得られるICタグチップの数量を多くすることができるからである。現在までに、0.4mm角のICタグチップが開発されている。このICタグチップは、チップ内の128ビットのメモリデータを2.45GHzのマイクロ波で読み取ることができる(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
一方、ICタグ以外の要素を用いた、紙幣やクレジットカード等の識別等に応用できる無線周波数自動識別(RF/AID)システムも考えられている。その一例として、特許文献1では、紙やプラスチックからなる基板に固定した配置で配置され、基板上にランダムな空間位置を占め、複数の無線周波数に共振する複数の共振子を含んでいる。複数の共振子は受動固体共振子である。受動固体共振子は、伸長した金属体から形成された薄双極子を含む。受動固体共振子は、より具体的に、石英クリスタルのような、石英ファミリーに属する材料からなっている。無線周波数ターゲットでは、基板の上に設けた複数の共振子が無線周波数の電磁波によって照射されるときに共振し、その共振を検出することによって複数の共振子の配置を把握し、これにより識別される。
【特許文献1】特開平10−171951号公報
【非特許文献1】宇佐美光雄、『超小型無線ICタグチップ「ミューチップ」』、応用物理、Vol.73、No.9、2004、p.1179−p.1183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙幣に従来のICタグを適用して偽装紙幣防止を行う場合、1つのICタグを付するだけでは構成が単純であるので、偽造紙幣を容易に作られてしまう可能性がある。そこでICタグよりもより小さいサイズの微小な回路素子が提案されることが望ましい。ICタグをより微小化することは、ICタグ自体がIC回路を内蔵しているので、大きな制約を受け、不可能である。このことは、特許文献1に記載された、受動固体共振子を含む素子であっても同じである。そこで本発明者らは、タンク回路のみを含むアンテナ回路要素を提案する。このアンテナ回路素子は、ICタグのサイズよりも相当に小さい微細サイズの素子として製作することが可能であり、パウダー粒子の程度の大きさを有するものである。他方、紙幣等にかかるアンテナ回路素子を付加・付着または含有させる場合に、当該アンテナ回路素子から情報を読取ることが重要な技術となる。情報の読取りには電磁誘導による結合が利用されるが、電磁結合のための高周波電磁界を発生させる電力の供給の仕方の解決法が技術的な大きな課題となる。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を鑑み、紙幣や有価証券等の財産的価値の高いシート状等の対象物について偽紙幣等を作製することを困難にすることができ、特定の共振周波数を有するタンク回路が外から与えた光エネルギを変換して自ら発振して高周波電磁界を発生させることができ、さらに発振用電力を容易にかつ確実に供給することができるRF粒子、このRFパウダー粒子を集めて作られるRFパウダー、およびRFパウダーの励起方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るRFパウダー粒子、RFパウダー、およびRFパウダーの励起方法は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0009】
本発明に係るRFパウダー粒子は、基板の絶縁膜面上にアンテナとしてのインダクタンス要素とこのインダクタンス要素の両端に接続されるキャパシタンス要素とを形成し、インダクタンス要素とキャパシタンス要素でタンク回路を形成し、タンク回路に電力を供給する光起電力素子を基板上に設けるように構成される。
【0010】
上記の構成において、好ましくは、インダクタンス要素は、絶縁膜面上に形成された複数巻きのコイルで形成され、光起電力素子はコイルの両端の間に電力が供給できるように接続されることを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、好ましくは、コイルと光起電力素子は10μm以上離れていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成において、好ましくは、コイルと光起電力素子は酸化膜を介して分離されていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成において、好ましくは、基板は半導体基板であり、光起電力素子は半導体基板上に形成されたPN接合からなるフォトダイオードであることを特徴とする。
【0014】
上記の構成において、好ましくは、光起電力素子は、複数のフォトダイオードを直列に接続してなる素子であることを特徴とする。
【0015】
上記の構成において、好ましくは、2つの受光面を有する光起電力素子で片方の受光面への光照射を阻止する光遮蔽部を備えることを特徴とする。
【0016】
上記の構成において、好ましくは、インダクタンス要素またはキャパシタンス要素が光遮蔽部となっていることを特徴とする。
【0017】
上記の構成において、好ましくは、基板で、光起電力素子の配置場所はインダクタンス要素の配置場所の下側であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成において、好ましくは、基板でキャパシタンス要素はインダクタンス要素の上側に配置されることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るRFパウダーは、パウダーの態様で使用され、当該パウダーを形成するパウダー粒子の各々は、前述したいずれかのRFパウダー粒子であることを特徴とする。
【0020】
上記の構成において、好ましくは、RFパウダー粒子に含まれるタンク回路は、外部から光起電力素子に照射される周期的パルス光に基づいて高周波磁界を発生することを特徴とする。
【0021】
上記の構成において、好ましくは、周期的パルス光の周波数は、タンク回路の共振周波数またはその整数分の1の周波数であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るRFパウダーの励起方法は、パウダーの態様で使用され、当該パウダーを形成するパウダー粒子の各々は、前述したいずれかのRFパウダー粒子であるRFパウダーの励起方法であって、光源からの光をRFパウダー粒子に照射し、この光によりRFパウダー粒子に含まれる光起電力素子で電力を発生し、この電力によりRFパウダー粒子に含まれるタンク回路で高周波磁界を発生することを特徴とする。
【0023】
上記の励起方法において、好ましくは、上記の光は、半導体レーザまたはLEDから放射されるレーザ光である。
【0024】
上記の励起方法において、好ましくは、上記の光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数をタンク回路の共振周波数に一致させることを特徴とする。
【0025】
上記の励起方法において、好ましくは、上記の光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数をタンク回路の共振周波数の整数分の1に一致させることを特徴とする。
【0026】
上記の励起方法において、好ましくは、周期的パルス光の照射は、アンテナ回路要素の基板の裏面側を照射する第1の周期的パルス光と、基板の表面側を照射する第2の周期的パルス光とによって行われることを特徴とする。
【0027】
上記の励起方法において、好ましくは、第1の周期的パルス光と第2の周期的パルス光の照射タイミングは異ならせていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、次の効果を奏する。
本発明に係るRFパウダー粒子およびRFパウダーによれば、基板上にタンク回路を形成し、このタンク回路に電力を供給する光起電力素子を基板上に設けたため、外部から照射される周期的パルス光によってタンク回路が高周波磁界を発生し、その高周波磁界を近傍に配置された検出コイルにより検出することができる。さらにタンク回路により発生される高周波磁界からRFパウダー粒子に関する周波数情報を読み出すことができる。
また本発明に係るRFパウダーの励起方法によれば、タンク回路に電力を供給する光起電力素子を備えたRFパウダーにおける光起電力素子に対して周期的パルス光を照射して発電させタンク回路に循環電流を流すようにし、さらに周期的パルス光の周波数をタンク回路の共振周波数と同一または整数分の1にすることにより、タンク回路によって高周波磁界を持続して発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1はRFパウダー含有基体を示す断面斜視図である。RFパウダー含有基体は、本発明に係るRFパウダーを含む。
【0031】
図1は拡大して示されている。例えば紙等のシート状または可撓性を有するプレート状の基体10の表面に、例えば3種類のRFパウダー粒子11,12,13が付着されている様子を示している。ここでは基体10の例として紙幣を用いる。RFパウダー粒子11〜13は、後述するように、周期的パルス光が照射されることにより、それぞれ、異なる高い周波数で共振し、高周波電磁界(結合要素は磁界)を生成するという特性を有している。RFパウダー粒子11〜13はほぼ同じ大きさを有している。
【0032】
上記のRFパウダー粒子11〜13のそれぞれは、実際には、多数または大量のRFパウダー粒子により粉状体の使用態様にて集合的にて取り扱われ、RFパウダーを構成する。図1では、RFパウダー粒子11〜13は全部で10個が示されているが、RFパウダー粒子の個数はこれに限定されるものではない。粉状体のRFパウダーの使用態様を考慮すれば、実際には、当該RFパウダー粒子11〜13はシート状の形状を有する基体10の表面全体に分散的に広がって存在している。上記のごとく、表面に存在する多数のRFパウダーを含む基体10を「RFパウダー含有基体10」と呼ぶことにする。
【0033】
上記の「RFパウダー」とは、パウダー(粉状体または粒状体)を形成する大量の粒子の各々が外部よりエネルギ(周期的パルス光等)を供給されることにより高周波電磁界(RF)を発生して外部のリーダとの間で情報の送受を行う電気回路要素(アンテナ回路要素)を有し、通常の使用態様が集合的形態であるパウダーとして使用されるものを意味する。
【0034】
次に、図2〜図5を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第1の実施形態を説明する。
【0035】
図2はRFパウダー粒子の外観斜視図を示し、図3はRFパウダー粒子の平面図を示し、図4は図3におけるA−A線に沿っての縦断面図を示し、図5は絶縁膜の下部に形成されたフォトダイオード部の平面図を示している。図4および図5の縦断面図においてRFパウダー粒子はその厚みを誇張して示している。
【0036】
RFパウダー粒子21は、好ましくは、立方体またはこれに類似した板状の直方体の形状を有し、外側表面での複数の矩形平面に関して、最長辺を含む矩形平面が好ましくは0.30mm角以下0.05mm角以上の大きさを有し、より好ましくは0.15mm角以下の大きさを有する3次元的な形状を有している。この実施形態のRFパウダー粒子21は、図3に示すように、その平面形状が略正方形になるように形成されている。RFパウダー粒子21では、略正方形の平面形状において、例えば図3中の一辺Lが0.15mm(150μm)となっている。
【0037】
RFパウダー粒子21では、図2および図4に示されるようにP型シリコン(Si)等の基板22上に光起電力素子30が形成されている。さらに光起電力素子30の上に絶縁層(酸化膜SiO2等)23を形成し、この絶縁層23の上に複数巻きのコイル24(インダクタンス要素)とコンデンサ(またはキャパシタ)25(キャパシタンス要素)とが形成される。コンデンサ25は、2つの部分25a,25bから構成されている。
【0038】
RFパウダー粒子21の上面で、絶縁層23の上に形成された絶縁層35(SiO2,SiN等)内にコイル24が形成されている。コイル24とコンデンサ25は、RFパウダー粒子21ごとに設定された特定の共振周波数で共振して周りに磁界を発生する(ここでは、これをアンテナ機能と呼ぶことにする)の高周波電磁界を生成するアンテナ機能を有している。より厳密には、後述するごとく、コイル24は下記のコンデンサ25と共にタンク回路(34)を形成し、当該タンク回路での共振作用に基づいてコイル24の近傍領域において高周波磁界を生じる。
【0039】
コイル24は、図2または図3に示されるように、RFパウダー粒子21の略正方形の平面形状の各辺に沿って、1本の導体配線を例えば三重巻きにすることにより形成されている。コイル24を形成する導体配線の材質は例えば銅(Cu)である。
【0040】
コイル24の両端部は所要の面積を有する長方形のパッド24a,24bとなっている。2つのパッド24a,24bは、それぞれ、ループ形状のコイル24の内周側と外周側に配置されている。パッド24a,24bのそれぞれは、コンデンサ25の2つのコンデンサ要素25a,25bの下側電極としての機能を有する。
【0041】
上記のパッド24a,24bのそれぞれは、後述するように、光起電力素子30内のフォトダイオード31の電極42およびフォトダイオード33の電極42とコンタクトホール(貫通配線)43,44を介して電気的に接続されている。
【0042】
上記において、目的の共振周波数設計に応じてコイル24の巻数と長さ、形状は任意に設定することができる。
【0043】
コンデンサ25は、本実施形態の場合には、2つのコンデンサ要素25a,25bから構成されている。コンデンサ要素25aは、上記の下側電極24aと上側電極26a(アルミニウム(Al)等)とから形成される。コンデンサ25bは、上記の下側電極24bと上側電極26bとから形成される。コンデンサ要素25a,25bの各々の上側電極26a,26bは導体配線26cで接続されている。実際には、2つの上側電極26a,26bと導体配線26cは一体物の導体金属層26として形成されている。下側電極24aと上側電極26aとの間、および下側電極24bと上側電極26bとの間には、それぞれ、絶縁膜27(SiO2)が設けられる。絶縁膜27によって、下側電極24aと上側電極26a、下側電極24bと上側電極26bは、それぞれ電気的に絶縁されている。
【0044】
コンデンサ要素25a,25bの各々の絶縁膜27は共通の一層の絶縁膜となっている。絶縁膜27の厚みは例えば30nmである。絶縁膜27は、2つのコンデンサ要素25a,25bの間の領域において、上側電極26a,26bの間をつなげる導体配線26cと、コイル24とを電気的に絶縁している。
【0045】
上記の構成によって、コイル24の両端部の間には、電気的に直列に接続された2つのコンデンサ要素25a,25bで作られるコンデンサ25が接続されることになる。ループを形成するように接続されたコイル24とコンデンサ25とによってタンク回路(LC共振回路)が形成される。このタンク回路は、光源から与えられる光に応じて上記の光起電力素子37が発電を行い、光起電力素子30から出力する電圧が共振周期より早く立ち上がるとその共振周波数に一致する周波数を有する高周波磁界を生成して、それは減衰する。
【0046】
なおコンデンサ25は、上側電極26a,26bと下側電極24a,24bからなる対向電極の大きさを設計することで、上記タンク回路の共振周波数を適宜に設計することができる。さらに誘電体(絶縁体)27の材料や厚みを選ぶことによっても周波数を設計することができる。
【0047】
上記の光起電力素子30は、コイル24とコンデンサ25によって形成されるタンク回路に共振作用を生じさせるための高周波の循環電流を流すためものであり、当該タンク回路に初期エネルギを与えるための手段である。光起電力素子30による発電動作のためのエネルギ源として、外部から照射される周期的パルス光が使用される。
【0048】
図4および図5において、光起電力素子30は、P型シリコン基板22上に形成された例えば3つのフォトダイオード31,32,33の直列接続に基づいて構成されている。フォトダイオード31〜33の各々は、外部から照射された光を電気エネルギに変換し、所要の電力を出力する。フォトダイオード31〜33は、それぞれ、N型半導体領域31a,32a,33aと、P型半導体領域31b,32b,33bとからなるPN接合を利用して形成される。ここでは、これらの3つのPN接合、すなわち3つのフォトダイオード31〜33は、3段の直列接続を形成している。光起電力素子30では、3段の直列接続によって、所要の高い電圧を得ている。また3つのフォトダイオード31〜33の各々では、基板22からの絶縁を行うために、P型シリコン基板22との間でPNP接合を形成している。P型シリコン基板22とN型半導体領域(拡散層)31a〜33aとが逆バイアスになり、分離構造が形成される。各段のフォトダイオード31〜33はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜41によって互いに分離され絶縁されている。また各段のフォトダイオード31〜33はAl配線42で直列的に接続されている。図4において、フォトダイオード31の電極42はコンタクトホール43に接続されてプラス電極になっており、フォトダイオード33の電極42はコンタクトホール44に接続されてマイナス電極になっている。基板22が電気的に浮遊しないように、図4中における右側端のPN接合であるフォトダイオード33のN型半導体領域33aはP型シリコン基板22とAl配線42で接続されている。それによって3つのフォトダイオード31〜33は、P型シリコン基板22を基準電位とすることになる。なお基板22としてN型シリコン基板を使うときは、PN接合の順序を反対に入れ換える。光起電力素子30を電気回路で表現すると、図6に示すように、3つのフォトダイオード31〜33が直列に接続された回路構造となっている。
【0049】
また図4から明らかなように、RFパウダー粒子21の表面の全体はP−SiN膜28により被覆されている。P−SiN膜28は、RFパウダー粒子21におけるタンク回路が形成されている側の表面の全体を保護している。
【0050】
さらに上記において、コンデンサ25は2つのコンデンサ要素25a,25bで構成したが、これに限定されず、いずれか一方による1つのコンデンサ要素で作ることもできる。コンデンサ25の容量値は、電極の面積を調整することにより適宜に変更することができる。複数のコンデンサを並列に配置することにより適宜に設計することもできる。
【0051】
以上の構造を有するRFパウダー粒子21は、その上面にループ状に接続されたコイル24とコンデンサ25とから成るタンク回路と、そのタンク回路に接続される光起電力素子30を有している。光起電力素子30は、外部から供給される周期的パルス光に基づいて発電を行い、その循環電流はタンク回路に供給される。タンク回路は、光起電力素子30からの電流を受けると、共振周波数で決まる高周波磁界を発生する作用を有する。このようにして、RFパウダー粒子21は設計された周波数のパルス光に共振して外部に磁界を生成する特性をもつ。
【0052】
図7は、RFパウダー粒子21上に形成されたタンク回路(LC共振回路)34と、このタンク回路34に並列に接続された光起電力素子30とを等価回路で示している。RFパウダー粒子21の絶縁層23上に1つのタンク回路34が形成される。タンク回路34は、インダクタンス要素(L)とキャパシタンス要素(C1)とから構成される。インダクタンス要素Lは上記コイル24によって作られる要素である。キャパスタンス要素C1は、上記コンデンサ25で作られる要素である。キャパシタンス要素C1は、実際上、2つのコンデンサ要素25a,25bの直列回路から作られている。光起電力素子30は、前述したごとく3つのフォトダイオード31〜33の直列回路から作られている。フォトダイオード31〜33は並列回路で構成することもできる。なおキャパシタンス要素C2は、フォトダイオード31〜33の寄生容量を示しており、キャパシタンス要素C1よりかなり小さい値に設計されている。
【0053】
次に、上記のRFパウダー粒子21の製造方法について、図4等を参照して説明する。P型シリコン基板22の上でAl配線42を用いて直列接続されたフォトダイオード31〜33は、よく知られた酸化膜絶縁分離技術と不純物拡散技術を適用して作製される。これによって光起電力素子30が作られる。基本的な構造は、図4に示した通りであり、3段に直列接続されたフォトダイオード31〜33の構造となっている。実際上、酸化膜41との界面リークを防止するため、拡散層と拡散層の間に、または光起電力素子30のチップ最外周に、ガードリング高濃度拡散層を設けることが望ましい。こうして作られた光起電力素子30の上に、アンテナ分離のための絶縁層(酸化膜)23を成長させ、その上にコイル24とコンデンサ25を作製する。パウダーにするために1枚のウェハから多数のRFパウダー粒子21を切り出す場合において、当該ウェハでの分離線のパターンをレジストで作製して深く(50μm程度)エッチングを行う。保護膜としてのP−SiN膜を作製してから、ウェハの裏面を研削してパウダー状にRFパウダー粒子21を分離する。
【0054】
以下に、RFパウダー粒子21の基本的な製造工程の手順(1)〜(41)の内容を箇条書きで概略的に示す。
(1)P型シリコン基板を準備する。(2)厚さ50nmのパッド酸化を行う。(3)厚さ100nmのプラズマシリコン窒化膜(P−SiN膜)を作製する。(4)パターン露光によりN−well窓を開ける。(5)リンのイオン注入を行う。(6)レジスト剥離を行う。(7)絶縁分離、窓開けのパターン露光を行う。(8)P−SiN膜のエッチングを行う。(9)レジスト剥離を行う。(10)1050℃での絶縁酸化を行う。(11)P−SiN膜を除去する。(12)P−well窓開け露光を行う。(13)ボロンイオン注入(BF2+)を行う。(14)900℃でのアニールを行う。(15)パッド酸化膜を除去する。(16)Al/TiNをスパッタリングによって500nmの厚さに堆積する。(17)Al配線のための露光を行う。(18)Al配線のエッチングを行う。(19)レジストの剥離を行う。(20)アンテナ分離のためのTEOS酸化膜を10μmで形成する。(21)接続孔露光を行う。(22)エッチングを行う。(23)レジスト剥離を行う。(24)厚さ100nmのバリアメタルTiNをスパッタリングによって堆積する。(25)コイルパターン露光を行う。(26)Cuをめっきにより厚さ2μmの堆積を行う。(27)レジスト剥離を行う。(28)TiNを除去する。(29)TEOS酸化膜を成長させる。(30)酸化膜をCMPする。(31)コンデンサ(キャパシタ)用誘電体膜(SiO2)を厚さ30nmで成長させる。(32)Alをスパッタリングにより厚さ500nmで堆積する。(33)Alパターン露光を行う。(34)Alエッチングを行う。(35)レジスト剥離を行う。(36)ダイシングパターン露光を行う。(37)深さ50μmのエッチングを行う。(38)レジスト剥離を行う。(39)100nmの厚さでP−SiN保護膜を成長させる。(40)裏面研削を行う。(41)パウダー粒子(パウダーチップ)の分離を行う。
以上のようにしてRFパウダー粒子21が作製される。
【0055】
次に、図8を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第2の実施形態を説明する。図8は第2実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図を示し、図3に対応している。図8において、図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0056】
第2実施形態に係るRFパウダー粒子21−1は、第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の変形例である。RFパウダー粒子21では、コンデンサ25の上側電極は1つの導体金属層26によるもの(26a,26b)であった。これに対して本実施形態に係るRFパウダー粒子21−1では、コンデンサ25の上側電極を形成するために2つの導体金属層47,48が形成されている。すなわち、上記の導体金属層26が2つに分割され、2つの導体金属層(47,48)が形成されたのと同じ意味を有している。導体金属層47は、2つの上側電極47a,47bとその間をつなぐ導体配線47cとから構成される。導体金属層48は、2つの上側電極48a,48bとその間をつなぐ導体配線48cとから構成される。上側電極47aと上側電極48aは下側電極24aに対向し、かつ上側電極47bと上側電極48bは下側電極24bに対向するように配置されている。その他の構成は、第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の構成と同じである。
【0057】
上記の構成によって、本実施形態に係るRFパウダー粒子21−1では、コンデンサ25については、導体金属層47で形成される第1のコンデンサ25−1と、導体金属層48で形成される第2のコンデンサ25−2とが設けられることになる。
【0058】
第2実施形態に係るRFパウダー粒子21−1によれば、その上面側に2つのコンデンサ25−1,25−2が形成されるため、2つの導体金属層47,48のそれぞれの導体配線47c,48cのうちのいずれか一方を切断すること、または両方共に切断しないことにより、異なる3通りのキャパシタンス値のうちのいずれか1つの値を後の工程で選択することができ、タンク回路34の共振周波数を変えることができる。これによりRFパウダー粒子21−1によれば、タンク回路34の共振周波数を3つの周波数のうちのいずれか1つに選択することができる。これにより、周波数別の製造効率を向上させることも可能である。
【0059】
次に、図9を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第3の実施形態を説明する。図9は第3実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図を示す。図9は、図3および図8に対応している。図9において、図3等で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0060】
第3実施形態に係るRFパウダー粒子21−2は、第2実施形態に係るRFパウダー粒子21−1の変形例である。本実施形態に係るRFパウダー粒子21−2では、コンデンサ25の上側電極を形成するために5つの導体金属層51,52,53,54,55が形成されている。すなわち、上側に形成される導体金属層が5つに分割され、5つの導体金属層51〜55が形成されたことを意味している。
【0061】
RFパウダー粒子21−2の絶縁層23の上面には、絶縁層35内にてコイル24のパターンが形成されている。コイル24の内周側端部および外周側端部には、下側電極24a,24bが形成されているが、前述した実施形態での下側電極に比して面積が広くなるように形成されている。
【0062】
導体金属層51は、2つの上側電極51a,51bとその間をつなぐ導体配線51cとから構成される。導体金属層52は、2つの上側電極52a,52bとその間をつなぐ導体配線52cとから構成される。導体金属層53は、2つの上側電極53a,53bとその間をつなぐ導体配線53cとから構成される。導体金属層54は、2つの上側電極54a,54bとその間をつなぐ導体配線54cとから構成される。導体金属層55は、2つの上側電極55a,55bとその間をつなぐ導体配線55cとから構成される。
【0063】
上側電極51a,52a,53a,54a,55aは下側電極24aに対向し、かつ上側電極51a,52a,53a,54a,55aは下側電極24bに対向するように配置されている。その他の構成は、第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の構成と同じである。
【0064】
上記の構成によって、本実施形態に係るRFパウダー粒子21−2では、コンデンサ25については、導体金属層51,52,53,54,55によってそれぞれ第1から第5のコンデンサ25−1,25−2,25−3,25−4,25−5が形成される。
【0065】
第3実施形態に係るRFパウダー粒子21−2では、コンデンサが5つあるため、コンデンサの5つの配線のうち、いくつかの配線を切断することにより、切断する前と異なるキャパシタンス値を持つことになり、タンク回路34の共振周波数を変えることができ、共振周波数を切断工程で選択することができる。なお本実施形態では5つのコンデンサを設けたが,その個数は5つに限定されない。
【0066】
次に、図10を参照して、RFパウダーを作る1つのRFパウダー粒子の第4の実施形態を説明する。図11は第4実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図を示す。図10は図3に対応している。図10において、図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0067】
第4実施形態に係るRFパウダー粒子21では、基板22の上に形成するフォトダイオード31〜33の配置領域を点線56で示している。点線56で示されたフォトダイオード配置領域は、コイル24の形成領域の下側になっている。この構成を採用することによって、タンク回路34側の表面に照射される光は遮蔽される。また基板22の側から照射される光はフォトダイオードに照射され、これによりフォトダイオードは発電作用を生じる。片面を遮光する構造とすることにより、RFパウダー粒子21は次のような利点を有している。
【0068】
RFパウダー粒子21の基板22は、その厚さが10〜20μm程度の薄さのとき入射された光を透過する。従って、RFパウダー粒子21の表裏の両面から光を当てることも可能である。この場合には、RFパウダー粒子21の表裏が反転していても光入射が可能となり、フォトダイオード31〜33を励起してタンク回路34を発振させることができる。この場合に、複数のRFパウダー粒子の配置が離散的であって、光のスポットが1個のRFパウダー粒子しか照射しないのであれば問題ない。しかしながら、光のスポット内に複数のRFパウダー粒子が配置される場合には特別な問題が生じる。
【0069】
すなわち、RFパウダー粒子の表裏が反転している場合には、同時に光照射を受ける2つのRFパウダー粒子の各々が生成した磁界は位相が反転して磁界を弱め合うことになる。同数のRFパウダー粒子が反転している状態が生じていると、それぞれが発生する磁界は完全に打ち消し合うことになる。
【0070】
上記のような問題を解決するには、RFパウダー粒子21の片面が光遮蔽されていることが望ましい。RFパウダー粒子(21,21−1,21−2)では、コイル24とコンデンサ25等は、RFパウダー粒子21の表面の一部を遮蔽するように形成されている。しかし、さらに本実施形態のごとく、意図的に形成した金属膜であるコイル24の下側にフォトダイオード31〜33を配置するように設計することが望ましい。また別な材料で遮蔽してもよい。
【0071】
上記のようにRFパウダー粒子21で片面遮光すると、光スポット内に複数のRFパウダー粒子が含まれるときでも、遮蔽されないものだけが動作するので、RFパウダー粒子の表裏を選択して光照射しなくてもよいという利点が生じる。この片面遮蔽されたRFパウダー粒子は、シート状部材に多数含ませると、ほぼ半々の割合で表裏が反転する。この場合、透過できる光をシート両面から照射し、かつパルスのタイミングを共振振動の半周期だけずらすことで生成磁界を強め合うように振動させることができる。
【0072】
次に、図11を参照して、RFパウダー粒子21内に形成される光起電力素子30の他の構造例を説明する。図11は光起電力素子30の部分の平面図を示す。図11は図5に対応している。図11において、図5で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0073】
この光起電力素子30では、フォトダイオード31〜33の各々を接続するAl配線42を図11に示されるように面積を広く取り、そのAl配線42によってフォトダイオード31〜33の片面(状面)を光に対して遮蔽するようにしている。それにより、タンク回路側の面に照射された光はAl配線42によって遮蔽され、基板側から照射される光によってフォトダイオード31〜33は発電作用を生じる。
【0074】
上記構造の光起電力素子30を有するRFパウダー粒子21は、第4実施形態の場合と同様に、片面遮光すると、光スポット内に複数のRFパウダー粒子が含まれるときでも遮蔽されないものだけが動作する。このため、RFパウダー粒子の表裏を選択する必要がなくなる。Al配線42で片面遮蔽された光起電力素子30を有するRFパウダー粒子21は、シートに多数含ませると半々の割合で表裏反転する。この場合、透過できる光をシート両面から照射し、かつパルスのタイミングを共振振動の半周期だけずらすことで生成磁界を強め合うように振動させることができる。
【0075】
次に、図12と図13を参照して、上記構造を有するRFパウダー粒子21の動作と、高周波磁界の検出・測定とを説明する。以下では、図2〜図7を参照して説明された第1実施形態に係るRFパウダー粒子21の例で説明する。
【0076】
図12に従ってRFパウダー粒子21の動作を説明する。RFパウダー粒子21は、前述の通り、フォトダイオード31〜33から成る光起電力素子30と、コイル24とコンデンサ25から成るタンク回路34とを含んでいる。光起電力素子30とタンク回路34とはコンタクトホール43,44による貫通配線により接続されている。
【0077】
図12で示した状態は、1つのRFパウダー粒子21に対して、矢印61で示すように外部より光61Aが照射され、かつRFパウダー粒子21から生成される高周波磁界62を検出・測定するための検出コイル63がRFパウダー粒子21の近傍に配置されている。検出コイル63は一重巻きあるいは多数巻きのへルムホルツコイルである。検出コイル63の一端は同軸線路64の中心導体に接続され、その他端は同軸線路64の外部導体に接続されている。検出コイル63は、RFパウダー粒子21内のタンク回路34からの生成磁界62を受信するための受信機の一部である。
【0078】
また上記の光61Aは、LEDやレーザなどの光源から照射される光である。RFパウダー粒子21に光61Aを当てると、光起電力素子30には光起電力が生じる。RFパウダー粒子21に与えられる光エネルギはシリコンのバンドギャップ1.14eVのフォトンエネルギーの光であればよい。しかしながら、シリコンの基礎吸収端は間接遷移型であるために効率がよくないので、基礎吸収端のエネルギギャップより大きい青色よりも波長の短い、エネルギーが高い光が望ましい。光起電力素子30を構成するPN接合に光が照射されると、フェルミエネルギの差が生じて光発電される。フェルミエネルギの差に相当する電圧がフォトダイオード31〜33の両端に発生する。
【0079】
図13を参照して、RFパウダー粒子21から生じる高周波磁界の検出・測定を説明する。図13では、等価回路で表現されたRFパウダー粒子21と、磁界62を検出する検出装置が示されている。
【0080】
RFパウダー粒子21は、タンク回路34と、これに並列に接続された光起電力素子30(フォトダイオード31〜33)とを備える。RFパウダー粒子21に対して、LEDまたは半導体レーザ等の光源65が配置される。光源65には、発光電源66から周期的パルス信号67が供給される。これにより光源65は前述の光61Aを放射する。この光61Aは周期的パルス光である。周期的パルス光61Aは、RFパウダー粒子21の光起電力素子30に対して照射される。
【0081】
RFパウダー粒子21の近傍には、検出コイル63が配置されるという位置関係になっている。この検出コイル63は一例として二重巻きに作られている。検出コイル63は、RF受信機68に接続されている。RF受信機68は、RFパウダー粒子21のタンク回路34からの共振作用に基づく高周波磁界を受信する。
【0082】
発光電源66とRF受信機68には制御パルス発生器69が接続されている。発光電源66は、制御パルス発生器69から与えられるパルス信号の周波数を基準にして光源65を周期的に発光させる。またRF受信機68は、制御パルス発生器69からのパルス信号に基づいて、光源65の周期的パルス光の周波数と同一の周波数で、検出コイル63からの検出信号を受信する。それにより、周波数キーイング検出を行うことができ、非常に感度良くタンク回路34からの磁界62を受信することができる。
【0083】
光源65からの光61Aを単発パルスとして照射すると、タンク回路34での共振動作でリンギングが起き、共振作用に基づく循環電流は消滅する。単発パルス光に基づくリンギングは小さいので、これを検出することは容易でない。しかしながら、光61Aを周期的パルス光としてタンク回路34の共振周波数の周期または、その周期の整数倍の周期に合わせて発生させると、光起電力素子30の発電作用を介してタンク回路34にエネルギを補給できる。キャパシタンス要素(C1)に充電する周期に合わせて光を照射すると、消費されたエネルギを補った上にさらにエネルギを蓄積することができる。これを繰り返すことにより、タンク回路34に蓄積するエネルギを増させることができる。その結果、タンク回路34における循環電流は周期的パルス光のパルスの数と共に増幅される。タンク回路34から外部に放射される磁界62の強度はパルス光のパルス数の増加と共に増加するが、光パルスの周波数がタンク回路34の共振周波数から外れると、電力補給のタイミングが合わなくなり、補給を行うことができない。この観点から、周期的パルス光61Aのパルス周波数を変化させて高周波磁界強度を測定することにより、光61Aの当たったタンク回路34の共振周波数を同定することができる。
【0084】
上記のごとく、RFパウダー粒子21のタンク回路34の周囲に生成された高周波磁界62を検出する方法は、検出コイル63を用いるのが簡便な方法である。なおホール素子を用いて高周波磁界62を検出することもできる。外部に生じる高周波磁界62はパルス光の数に依存して増加するので、連続させるパルス光の数を設定して検出感度を設定する。パルス光の周波数とタンク回路34の循環電流の周波数(外部磁界の周波数)は一致するので、検出信号でパルス光を発生するようにすると、正の帰還回路ループが形成される。このようにすると、RFパウダー粒子21のタンク回路34の共振周波数と一致した周波数が自動的に選択されてリンギング発振が持続する。
【0085】
次に図14を参照して、RFパウダー粒子21のタンク回路34でリンギング発振が持続する場合の測定系を説明する。
【0086】
図14において、符号21は前述のRFパウダー粒子であり、符号70は測定装置であり、符号71は前述の光源65に対応する光源である。RFパウダー粒子21は光起電力素子30とタンク回路34を有している。光源71はトリガーパルス77により周期的パルス光61Aを出射する。検出装置70は、演算増幅器72を含み、さらに演算増幅器72の入力側に検出コイル63を接続している。演算増幅器72では、動作点を決める抵抗73,74,75,76が設計されている。光源71は発光ダイオードとして図示されている。
【0087】
上記の構成を有する測定系によれば、まず周期的トリガ電圧を印加して光源71から周期的パルス光61Aを光起電力素子30に照射すると、タンク回路34での共振作用によって減衰する高周波磁界62が発生する。この高周波磁界62を増幅して発振させ、検出装置70を経由してその発振電圧信号を光源71側へフィードバックすることにより、光源71は、タンク回路34の固有の共振周波数と同一の周波数の電圧が印加され同一周波数のパルス光を出射することにより、タンク回路34の発振が持続される。
【0088】
図14において検出装置70の出力端子72aから出力される信号は、タンク回路34のインダクタンス要素Lと検出コイル63との共振磁界結合の度合いが大きいときには正帰還ループが形成されて振幅レベルの大きい発振信号S1となり、電磁結合の度合いが小さい時またはトリガー周波数が共振周波数から外れていくときには振幅レベルが略ゼロの信号S2となる。
【0089】
パウダーの共振周波数が予め分かっていて、場所だけをパルス光で特定する目的なら、最初から同周波数のトリガーを印加して探る方法もある。
【0090】
またRCパウダー粒子21等の光起電力素子30を励起する方法において、周期的パルス光を照射するにあたり、基板の裏面側を照射する周期的パルス光と、基板の表面側を照射する周期的パルス光とによって行うことも可能である。この場合には、表裏反転したパウダーの発振位相が逆になり外部磁界を弱める。これを避ける方法として2つの周期的パルス光についてそれぞれの照射タイミングは半周期ずらすように構成することが有効である。
【0091】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るRFパウダー粒子等は、偽造紙幣等を確実に防止できる紙幣やクレジットカードや書類等に対して利用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明が適用されるRFパウダー含有基体の断面斜視図である。
【図2】RFパウダー含有基体中に含まれる1つのRFパウダー粒子の第1実施形態の斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】光起電力素子におけるフォトダイオード部の平面図である。
【図6】光起電力素子の等価回路を示す概念図である。
【図7】本実施形態に係るタンク回路とタンク回路に接続した光起電力素子の等価回路を示す回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るRFパウダー粒子の平面図である。
【図11】RFパウダー粒子における光起電力素子のフォトダイオード部の平面図である。
【図12】本実施形態に係るRFパウダー粒子の動作を説明する図である。
【図13】本実施形態に係るRFパウダー粒子での検出作用と検出装置を説明する構成図である。
【図14】本実施形態に係るRFパウダー粒子での循環電流の増幅を説明する構成図である。
【符号の説明】
【0094】
10 RFパウダー含有基体
11,12,13 RFパウダー粒子
21 RFパウダー粒子
21−1 RFパウダー粒子
21−2 RFパウダー粒子
22 基板
23 絶縁層
24 コイル
25 コンデンサ(キャパシタ)
27 絶縁膜
30 光起電力素子
31,32,33 フォトダイオード
34 タンク回路
61A 周期的パルス光
62 磁界
63 検出コイル
65 光源
70 検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に磁界生成させる電磁結合要素としてのインダクタンス要素とこのインダクタンス要素の両端に接続されるキャパシタンス要素とを形成し、前記インダクタンス要素と前記キャパシタンス要素でタンク回路を形成し、
前記タンク回路に電力を供給する光起電力素子を前記基板上に設けたことを特徴とするRFパウダー粒子。
【請求項2】
前記インダクタンス要素は、前記絶縁膜面上に形成されたコイルで形成され、前記光起電力素子は前記コイルの両端の間に接続されることを特徴とする請求項1記載のRFパウダー粒子。
【請求項3】
前記コイルと前記光起電力素子は10μm以上離れていることを特徴とする請求項2記載のRFパウダー粒子。
【請求項4】
前記コイルと前記光起電力素子は酸化膜を介して分離されていることを特徴とする請求項3記載のRFパウダー粒子。
【請求項5】
前記基板は半導体基板であり、前記光起電力素子は前記半導体基板上に形成されたPN接合からなるフォトダイオードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子。
【請求項6】
前記光起電力素子は、複数の前記フォトダイオードを直列または並列に接続してなる素子であることを特徴とする請求項5記載のRFパウダー粒子。
【請求項7】
2つの受光面を有する前記光起電力素子で片方の受光面への光照射を阻止する光遮蔽部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子。
【請求項8】
前記インダクタンス要素または前記キャパシタンス要素が前記光遮蔽部となっていることを特徴とする請求項7記載のRFパウダー粒子。
【請求項9】
前記基板で、前記光起電力素子の配置場所は前記インダクタンス要素の配置場所の下側あることを特徴とする請求項8項記載のRFパウダー粒子。
【請求項10】
前記基板で前記キャパシタンス要素は前記インダクタンス要素の上側に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載されたRFパウダー粒子の集合体であることを特徴とするRFパウダー。
【請求項12】
前記RFパウダー粒子に含まれるタンク回路は、外部から前記光起電力素子に照射される周期的パルス光に基づいて高周波磁界を発生することを特徴とする請求項11記載のRFパウダー。
【請求項13】
前記周期的パルス光の周波数は、前記タンク回路の共振周波数またはその整数分の1の周波数であることを特徴とする請求項12記載のRFパウダー。
【請求項14】
パウダーの態様で使用され、前記パウダーを形成するパウダー粒子の各々は、請求項1〜10のいずれか1項に記載されたRFパウダー粒子であるRFパウダーの励起方法であって、
光源からの光を前記RFパウダー粒子に照射し、この光により前記RFパウダー粒子に含まれる光起電力素子で電力を発生し、この電力により前記RFパウダー粒子に含まれるタンク回路で高周波磁界を発生することを特徴とするRFパウダーの励起方法。
【請求項15】
前記光は、半導体レーザから放射されるレーザ光であることを特徴とする請求項14記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項16】
前記光は、LEDから放射される光であることを特徴とする請求項14記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項17】
前記光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数を前記タンク回路の共振周波数に一致させることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項18】
前記光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数を前記タンク回路の共振周波数の整数分の1に一致させることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項19】
前記周期的パルス光の照射は、前記アンテナ回路要素の基板の裏面側を照射する第1の周期的パルス光と、前記基板の表面側を照射する第2の周期的パルス光とによって行われることを特徴とする請求項17または18記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項20】
前記第1の周期的パルス光と前記第2の周期的パルス光の照射タイミングは異ならせていることを特徴とする請求項19記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項1】
基板上に磁界生成させる電磁結合要素としてのインダクタンス要素とこのインダクタンス要素の両端に接続されるキャパシタンス要素とを形成し、前記インダクタンス要素と前記キャパシタンス要素でタンク回路を形成し、
前記タンク回路に電力を供給する光起電力素子を前記基板上に設けたことを特徴とするRFパウダー粒子。
【請求項2】
前記インダクタンス要素は、前記絶縁膜面上に形成されたコイルで形成され、前記光起電力素子は前記コイルの両端の間に接続されることを特徴とする請求項1記載のRFパウダー粒子。
【請求項3】
前記コイルと前記光起電力素子は10μm以上離れていることを特徴とする請求項2記載のRFパウダー粒子。
【請求項4】
前記コイルと前記光起電力素子は酸化膜を介して分離されていることを特徴とする請求項3記載のRFパウダー粒子。
【請求項5】
前記基板は半導体基板であり、前記光起電力素子は前記半導体基板上に形成されたPN接合からなるフォトダイオードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子。
【請求項6】
前記光起電力素子は、複数の前記フォトダイオードを直列または並列に接続してなる素子であることを特徴とする請求項5記載のRFパウダー粒子。
【請求項7】
2つの受光面を有する前記光起電力素子で片方の受光面への光照射を阻止する光遮蔽部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子。
【請求項8】
前記インダクタンス要素または前記キャパシタンス要素が前記光遮蔽部となっていることを特徴とする請求項7記載のRFパウダー粒子。
【請求項9】
前記基板で、前記光起電力素子の配置場所は前記インダクタンス要素の配置場所の下側あることを特徴とする請求項8項記載のRFパウダー粒子。
【請求項10】
前記基板で前記キャパシタンス要素は前記インダクタンス要素の上側に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載されたRFパウダー粒子の集合体であることを特徴とするRFパウダー。
【請求項12】
前記RFパウダー粒子に含まれるタンク回路は、外部から前記光起電力素子に照射される周期的パルス光に基づいて高周波磁界を発生することを特徴とする請求項11記載のRFパウダー。
【請求項13】
前記周期的パルス光の周波数は、前記タンク回路の共振周波数またはその整数分の1の周波数であることを特徴とする請求項12記載のRFパウダー。
【請求項14】
パウダーの態様で使用され、前記パウダーを形成するパウダー粒子の各々は、請求項1〜10のいずれか1項に記載されたRFパウダー粒子であるRFパウダーの励起方法であって、
光源からの光を前記RFパウダー粒子に照射し、この光により前記RFパウダー粒子に含まれる光起電力素子で電力を発生し、この電力により前記RFパウダー粒子に含まれるタンク回路で高周波磁界を発生することを特徴とするRFパウダーの励起方法。
【請求項15】
前記光は、半導体レーザから放射されるレーザ光であることを特徴とする請求項14記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項16】
前記光は、LEDから放射される光であることを特徴とする請求項14記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項17】
前記光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数を前記タンク回路の共振周波数に一致させることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項18】
前記光は周期的パルス光であり、この周期的パルス光のパルス周波数を前記タンク回路の共振周波数の整数分の1に一致させることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項19】
前記周期的パルス光の照射は、前記アンテナ回路要素の基板の裏面側を照射する第1の周期的パルス光と、前記基板の表面側を照射する第2の周期的パルス光とによって行われることを特徴とする請求項17または18記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【請求項20】
前記第1の周期的パルス光と前記第2の周期的パルス光の照射タイミングは異ならせていることを特徴とする請求項19記載のRFパウダー粒子の励起方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−134816(P2008−134816A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320338(P2006−320338)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】
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