説明

RFIDシステム及びリーダ並びにRFIDタグ

【課題】 リーダに設けられるアンテナを小型に済ませることができながらも、RFIDタグとの間での良好な通信性能を得る。
【解決手段】 リーダライタの読取口の近傍に、RFIDタグ1との間での通信を行うダイポールアンテナからなるリーダ側アンテナ17を設ける。読取口の近傍に、リーダ側アンテナ17の偏波方向を示すための、2個のスポット状のマーカ光Mを通信方向(前方)に出射するマーカ光出射部20を設ける。このとき、2個のマーカ光Mは、リーダライタ2の通信可能範囲a内の最も遠い位置において交差し、通信可能最大距離を同時に示すものとなる。RFIDタグ1の表面に、タグ側アンテナ3の偏波方向を示す向き表示を設ける。向き表示の示すの方向とマーカ光Mの示す向きとを合わせるように、リーダライタ2を位置合せして通信を行うことにより、良好な通信性能を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば識別されるべき物体に付されるRFIDタグと、そのRFIDタグとの間で電磁波による通信を行ってデータを読取るリーダとを備えるRFIDシステム、及び、そのシステムに用いられるリーダ並びにRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
リーダとRFIDタグとの間で電磁波による通信を行うRFIDシステムにおいては、一般に、マイクロ波やUHF帯の周波数の電波が用いられている。このRFIDシステムでは、RFIDタグに対し、リーダを任意の位置に配置して通信(読取)を行う事情があるが、電磁波の偏波特性により、リーダ側のアンテナ及びRFIDタグのアンテナに、直線(線型)偏波方式のアンテナを採用した場合、RFIDタグに対するリーダの配置(アンテナ相互間の角度)によって、通信(読取)距離が大きく変化する問題がある。
【0003】
そこで、従来では、リーダ側のアンテナに、円偏波方式のアンテナを採用することにより、上記問題を解決するようにしていた(例えば特許文献1参照)。尚、この円偏波方式のアンテナとしては、例えば2個のダイポールアンテナをクロスして配置したもの、あるいはパッチアンテナ等が用いられる。
【特許文献1】特開2003−249871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、リーダ側のアンテナに円偏波方式のアンテナを採用した場合には、アンテナが比較的大型となり、設置に広い面積を必要とするため、リーダの小型化の障害となる問題があった。特に、携帯型(ハンディ)型のリーダにおいては、機器の小型化を図ることが望ましく、その観点からは、ダイポールアンテナのような直線偏波方式のアンテナを採用する方が好ましい。
【0005】
この場合、リーダ側のアンテナ及びRFIDタグのアンテナに、ダイポールアンテナのような直線偏波方式のアンテナを採用した場合でも、それら両アンテナの偏波方向を合わせた状態で通信を行うことができれば、良好な通信性能が得られる。ところが、従来では、そのようなアンテナの向き(偏波方向)を合わせて通信を行うことについては、何ら工夫がなされていなかった。
【0006】
尚、例えば米国特許第6318636号明細書には、RFIDタグの読取りと、バーコードの光学的な読取りとの双方が可能な、ハンディ型のリーダが示されており、バーコードを読取る際の位置合わせを行うためのマーカ光を照射する構成が示されている。しかし、このマーカ光は、バーコードを読取る際の読取方向を示すものに止まり、通信時のアンテナの向きを合わせるために役に立つものではなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、リーダに設けられるアンテナを小型に済ませることができながらも、RFIDタグとの間での良好な通信性能を得ることができるRFIDシステム、及び、そのシステムに用いるに好適なリーダ並びにRFIDタグを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、RFIDシステムにおいて、RFIDタグ側及びリーダ側のアンテナに、共にダイポールアンテナのような直線偏波方式のアンテナを採用した場合でも、ユーザによって、RFIDタグに対するリーダの読取向きの配置(アンテナ相互間の角度)を、両アンテナが同じ偏波方向となるように容易に調整することができれば、良好な通信性能を得ることができるといった着想の下、本発明を成し遂げたのである。
【0009】
即ち、本発明のRFIDシステムは、リーダ及びRFIDタグが、それぞれ直線偏波方式のリーダ側アンテナ及びタグ側アンテナを備えて構成されるものにあって、前記リーダは、前記リーダ側アンテナの偏波方向に対応した向きを示すためのマーカ光を通信方向に向けて出射するマーカ光出射手段を備えており、前記RFIDタグの表面には、前記タグ側アンテナの偏波方向に対応した向き表示がなされており、前記マーカ光出射手段から出射され前記RFIDタグに照射されたマーカ光の示す向きと、該RFIDタグの向き表示とを合わせることにより、前記リーダ側アンテナとタグ側アンテナとが同じ偏波方向となるように構成されているところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0010】
これによれば、ユーザは、RFIDタグの表面に設けられた向き表示によって、タグ側アンテナの偏波方向に対応した向きを知ることができる。一方、リーダに設けられたマーカ光出射手段から、リーダ側アンテナの偏波方向に対応した向きを示すためのマーカ光が、通信方向に向けて出射されるので、ユーザが、RFIDタグの表面にそのマーカ光が照射されるように位置合わせし、且つ、そのマーカ光の示す向きとRFIDタグの向き表示とを合わせるようにすれば、リーダ側アンテナとタグ側アンテナとが同じ偏波方向となるように、通信時のアンテナの向きを容易に合わせることができる。
【0011】
この結果、本発明のRFIDシステムによれば、リーダに設けられるリーダ側アンテナを小型に済ませることができながらも、RFIDタグとの間での良好な通信性能を得ることができる。尚、本発明にいうリーダとは、RFIDタグのデータの読取り専用のものは勿論、RFIDタグに対するデータの読取り及び書込みの双方が可能なリーダライタも含むものである。
【0012】
このとき、直線偏波方式のアンテナであるダイポールアンテナは、基板上に直接的にパターンを設けることで簡単に形成することができ、しかも直線的なパターンを設けるだけの極めて小さな面積で済むものとなっている。そこで、前記リーダ側アンテナ及びタグ側アンテナを、共にダイポールアンテナから構成すれば(請求項2の発明)、アンテナを簡単で安価に設けることができると共に、リーダ及びRFIDタグの小型化を図ることができる。
【0013】
また、上記マーカ光を、リーダ側アンテナとタグ側アンテナとの通信可能距離をも併せて示すように構成すれば(請求項3の発明)、ユーザは、マーカ光を見て、通信可能距離をも知ることができるので、通信可能距離から外れた位置で通信を行おうとすることを未然に防止でき、より一層効果的となる。
【0014】
本発明のRFIDシステムにおいては、前記リーダを、ユーザが手で持って操作するハンディ型に構成することができる(請求項4の発明)。ユーザが、RFIDタグの読取時に、リーダの向きや方向、距離を容易に調整することができ、また、リーダ側アンテナを小型にできるので、リーダ全体の小型化を図ることができ、ハンディタイプのものとして望ましいものなる。
【0015】
本発明のリーダは、RFIDタグとの間で電磁波による通信を行ってデータを読取るものにあって、直線偏波方式のアンテナを備えると共に、前記アンテナの偏波方向を示すためのマーカ光を通信方向に向けて出射するマーカ光出射手段を備えるところに特徴を有する(請求項5の発明)。
【0016】
これによれば、マーカ光出射手段から、リーダ側アンテナの偏波方向を示すためのマーカ光が、通信方向に向けて出射されるので、ユーザが、RFIDタグの表面にそのマーカ光が照射されるように位置合わせし、且つ、そのマーカ光の示す偏波方向とRFIDタグのアンテナの偏波方向とを合わせるようにすれば、リーダ側のアンテナとタグ側のアンテナとが同じ偏波方向となるように、通信時のアンテナの向きを容易に合わせることができる。この結果、アンテナを小型に済ませることができながらも、RFIDタグとの間での良好な通信性能を得ることができる。
【0017】
このとき、前記アンテナをダイポールアンテナから構成すれば(請求項6の発明)、アンテナを簡単で安価に設けることができると共に、リーダ全体の小型化を図ることができる。
【0018】
また、上記マーカ光を、RFIDタグとの通信可能距離をも併せて示すように構成すれば(請求項7の発明)、ユーザは、マーカ光を見て、通信可能距離をも知ることができるので、通信可能距離から外れた位置でRFIDタグとの通信を行おうとすることを未然に防止でき、より一層効果的となる。
【0019】
さらに、本発明のリーダを、ユーザが手で持って操作するハンディ型に構成すれば(請求項8の発明)、ユーザが、RFIDタグの読取時に、リーダの向きや方向、距離を容易に調整することができ、また、アンテナを小型にできるので、リーダ全体の小型化を図ることができ、ハンディタイプのものとして望ましいものなる。
【0020】
より具体的には、前記マーカ光を、通信電磁波の偏波面と並行に出射される2個のスポット光から構成し、それら2点のスポット光を結ぶ線が偏波方向を示すようにすることができる(請求項9の発明)。マーカ光出射手段を比較的簡単な構成としながらも、偏波方向を判りやすく示すことができる。
【0021】
このとき、2個のスポット光を、前記偏波面上に出射する構成とすれば(請求項10の発明)、リーダ側のアンテナとタグ側のアンテナとの間で、偏波面同士を位置合わせすることが容易となり、通信効率を高めることができる。
【0022】
さらに、それら2個のスポット光を、通信可能最大距離において交差するように斜め方向に出射する構成とすることができる(請求項11の発明)。これにより、RFIDタグに照射される2個のスポット光が、通信可能最大距離において1個に重なるようになり、そこから離れるほど2個のスポット光の間隔が広くなっていく。簡単な構成で通信可能最大距離を示すことが可能となる。
【0023】
ところで、マーカ光出射手段によるマーカ光の出射は、電源オン時に常に(断続的に)行うようにしたり、ユーザのスイッチ操作によって行うようにしたりしても良いが、マーカ光を、アンテナからの電磁波の出力時にのみ出射する構成とすることができる(請求項12の発明)。これにより、必要時にはマーカ光を出射することができながらも、マーカ光の出射による電力消費を小さく抑えることができる。
【0024】
本発明のリーダは、情報コードを光学的に読取る光学情報読取手段を併せて備えるものとすることができる。そして、この場合、マーカ光出射手段を、光学情報読取手段による情報コードの読取時に、その読取位置を示すためのマーカ光を出射する手段と兼用する構成とすることができる(請求項13の発明)。これにより、マーカ光出射手段を、RFIDタグのデータの読取りと情報コードの読取りとに兼用することができ、その分構成を簡単に済ませることができる。
【0025】
本発明のRFIDタグは、リーダとの間で電磁波による通信を行うものであって、直線偏波方式のアンテナを備えると共に、表面に、前記アンテナの偏波方向を示す向き表示がなされているところに特徴を有する(請求項14の発明)。これによれば、ユーザは、RFIDタグの表面に設けられた向き表示によって、アンテナの偏波方向を知ることができる。従って、ユーザが、RFIDタグの表面の向き表示と、リーダ側のアンテナの偏波方向とを合わせるようにすれば、リーダ側のアンテナとタグ側のアンテナとが同じ偏波方向となるように、通信時のアンテナの向きを容易に合わせることができる。この結果、アンテナを小型に済ませることができながらも、リーダとの間での良好な通信性能を得ることができる。
【0026】
このとき、前記アンテナを、ダイポールアンテナから構成することができる(請求項15の発明)。アンテナを簡単で安価に設けることができると共に、RFIDタグ全体の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図面を参照しながら説明する。
本実施例に係るRFIDシステムは、例えば商品などの物品に付されるRFIDタグ1(図1、図4参照)と、そのRFIDタグ1との間で電磁波(例えばマイクロ波やUHF帯の周波数の電波)による通信を行って電力の供給及びデータの読取りを行うリーダとしてのリーダライタ2(図2(a)参照)とを備えて構成される。
【0028】
尚、このリーダライタ2は、データの読取りだけでなく、RFIDタグ1に対するデータの書込みも行うものとなっている。また、このリーダライタ2は、ユーザが手で持って操作可能なハンディ型に構成されている。さらに、本実施例では、このリーダライタ2は、バーコードや二次元コード等の図示しない情報コードを、光学的に読取る光学情報読取装置の機能をも備えて構成されている。
【0029】
詳しく図示はしないが、前記RFIDタグ1は、例えばプラスチック製の荷札状(矩形板状)をなし、その内部に、リーダライタ2との間での通信を行うためのタグ側アンテナ3を備えると共に、データの保持及び応答信号を発生するRFIDチップを備えて構成される。前記タグ側アンテナ3は、直線偏波方式のアンテナからなり、ここではダイポールアンテナが採用されている。この場合、図示のように、タグ側アンテナ3は、例えばRFIDタグ1の長手方向に沿って延びるように配設されている。そして、後にも述べるように、このRFIDタグ1の表面には、タグ側アンテナ3の偏波方向(タグ側アンテナ3の延びる方向)を示すための例えば両矢印からなる向き表示4(図4参照)が、印刷等により記されている。
【0030】
また、周知のように、前記RFIDチップは、リーダライタ2の給電用信号から動作電源を得るための整流・平滑回路、通信等の制御を行うCPU、送受信信号の変調,復調を行う変復調回路、動作プログラム等を記憶するROM、データを記憶する読書き可能なEEPROM等をワンチップIC化して構成されている。このRFIDチップのEEPROMには、添付されるべき商品に関するデータが記憶されるようになっている。
【0031】
一方,前記リーダライタ2は、次のように構成されている。図2(a)に示すように、このリーダライタ2は、ケース5内に、前記RFIDタグ1との間での電波による通信を行う通信手段たる通信機構6、バーコード等の情報コードを光学的に読取る光学情報読取手段としての光学情報読取機構7、マイコンを主体として構成され全体の制御などを行う制御装置8(図3参照)等を組込んで構成される。
【0032】
前記ケース5は、基端側(図2(a)で右側)が握り部とされ、先端側がやや幅広となると共に前方にやや下降傾斜するように折曲がり、その先端部分が読取口5aとされている。この読取口5aは、やや横長な矩形状をなしている。このケース5の上面部には、複数のキースイッチ9aからなるキー入力部9が設けられると共に、例えばLCDからなる表示部10が設けられている。さらに、ケース5の側面部には、読取り(書込み)指示用のトリガキー(図示せず)も設けられている。キースイッチ9aや表示部10等は、ケース5内に配設されたプリント基板11に実装されており、また、詳しく図示はしないが、そのプリント基板11には、前記制御装置8や後述する各回路等も実装されている。尚、ケース5内には、電源となる二次電池(図示せず)なども組込まれている。
【0033】
前記光学情報読取機構7は、前記プリント基板11の下面側に実装されたCCDエリアセンサ等の撮像素子12、その前方に配置されたミラー13、前記読取口5aの内側近傍に配置された光学系ユニット14等からなる周知構成を備えている。前記光学系ユニット14は、基板14aに、結像レンズ15や、複数個のLED等からなる照明光源16を設けて構成されている。
【0034】
これにて、ユーザが、ケース5の読取口5aをバーコード等の読取対象に向けた状態で、読取操作(トリガキーのオン操作)を行うことにより、照明光源からの照明光が読取対象に照射され、その反射光が、結像レンズ15を通して入射され、ミラー13で折返されて撮像素子12に入力されるようになっている。そして、その撮影画像データから、前記制御装置8により、バーコード等のデコード処理が行われるようになっている。
【0035】
そして、前記通信機構6は、図3に示すように、リーダ側アンテナ17と、このリーダ側アンテナ17に接続された送信回路18及び受信回路19とを備えている。前記リーダ側アンテナ17は、直線偏波方式のアンテナからなり、ここではダイポールアンテナが採用されている。この場合、図2(b)や図1にも示すように、このリーダ側アンテナ17は、例えば下部の奥側において横方向に沿って水平に延びるように配設されている。
【0036】
また、図3に示すように、前記送信回路18及び受信回路19は前記制御装置8により制御されるようになっている。このとき、前記制御装置8は、前記送信回路18を通じてリーダ側アンテナ17に電力信号を出力すると共に、リーダ側アンテナ17が受けた受信信号を、受信回路19を通じて復調してデータとして抽出するようになっている。これにて、リーダ側アンテナ17(ケース5の読取口5a)を、読取るべきRFIDタグ1に近接させた状態で、該RFIDタグ1に対して電波により電力供給が行われると共に、データの通信(書込み及び読取り)が行われるようになっている。
【0037】
尚、上記したダイポールアンテナからなる直線偏波方式のリーダ側アンテナ17は、電界磁束がダイポール軸と並行に走るアンテナであるため、リーダライタ2が水平方向に配置された場合、図6に実線で示すように、水平に偏波する電波が出力される。ここで、同様なダイポールアンテナからなるタグ側アンテナ3(RFIDタグ1)が水平方向に配置されていれば、偏波方向が一致し、適切な通信性能が得られる。これに対し、タグ側アンテナ3(RFIDタグ1)が、地球表面に対し垂直に配置されている場合には、図6に破線で示すように、垂直な偏波面を持つことになり、この場合、通信効率が最低となり、RFIDタグ1の受信信号は、例えば3dBの損失を生ずる。
【0038】
さて、本実施例のリーダライタ2は、図2に示すように、ケース5内の読取口5aの近傍に、前記リーダ側アンテナ17の偏波方向を示すためのマーカ光Mを通信方向(読取口5aの前方)に出射するためのマーカ光出射手段たるマーカ光出射部20が設けられている。詳しく図示はしないが、このマーカ光出射部20は、例えば、LEDやレーザダイオードからなる光源の前部に集光レンズを配置して構成されており、前記基板14aに実装されている。これにより、マーカ光出射部20から出射されるマーカ光Mは、図4に示すように、拡がりのほとんど無い(少ない)平行光線からなる断面が円形のスポット光状とされている。
【0039】
このとき、本実施例では、図1及び図2(b)にも示すように、マーカ光出射部20は、リーダ側アンテナ17の左右に対称的に位置して読取口5a側を向くように一対が設けられている。これらマーカ光出射部20は、リーダ側アンテナ17の通信電磁波の偏波面に沿って、並行にマーカ光Mを出射するように設けられ、従って2個のマーカ光M(スポット光)を結ぶ線がリーダ側アンテナ17の偏波方向を示すものとなる。
【0040】
更にこのとき、図1に示すように、一対のマーカ光出射部20は、リーダ側アンテナ17の電波放射方向中心線Oに対して、互いにやや斜め内側を向くように配置されている。従って、2個のマーカ光Mは、読取口5aの前方の所定位置で交差することになるが、ここでは、図1にリーダライタ2の通信可能範囲aを破線で示しており、2個のマーカ光Mは、ほぼ通信可能最大距離(通信可能範囲a内の最も遠い位置)において交差するようになっている。
【0041】
これにより、例えばRFIDタグ1に対してリーダライタ2を近接させた状態から離れる方向に次第に移動させていくと、RFIDタグ1に照射される2個のマーカ光Mの間隔は次第に狭くなっていき、通信可能最大距離において、1点に重なり、その後は、2個のマーカ光Mの間隔が次第に広がっていくことになる。以上により、マーカ光Mは、リーダ側アンテナ17の偏波方向、及び、RFIDタグ1の読取方向(RFIDタグ1に対してリーダライタ2を向ける空間的な方向)、並びに、通信可能最大距離を同時に示すものとなる。
【0042】
そして、図3に示すように、これらマーカ光出射部20は、前記制御装置8により、マーカ駆動回路21を介して制御(オン・オフ制御)されるようになっている。本実施例では、制御装置8は、そのソフトウエア的構成(制御プログラムの実行)により、前記リーダ側アンテナ17からの電波の出力時にのみ、マーカ光出射部20をオンさせてマーカ光Mを出射させるようになっている。
【0043】
尚、このリーダライタ2は、上記光学情報読取機構7による情報コードの光学的な読取りと、上記通信機構6によるRFIDタグ1との間の通信(データ読取)との双方が可能となっているのであるが、それら機能の切替えは、例えば、ユーザがキー入力部9を操作してモードを選択することにより行われるようになっている。
【0044】
次に、上記構成の作用について、図5も参照しながら述べる。ユーザが、リーダライタ2を用いて、例えば商品に付されたRFIDタグ1のデータを読取る(あるいは書込む)場合には、ケース5の読取口5aをRFIDタグ1に近接させた状態で、トリガキーをオン操作する。すると、リーダライタ2により、RFIDタグ1に対して電波(電磁界)により電力供給が行われると共に、RFIDタグ1との間でのデータの通信(書込み及び読出し)が行われる。また、このときのリーダ側アンテナ17からの電波の出力時に、マーカ光出射部20がオンされてマーカ光Mが出射されるようになっている。
【0045】
図5のフローチャートは、制御装置8が実行するマーカ光出射部20の制御手順を示している。即ち、処理が開始されると、ステップS1にて、リーダ側アンテナ17からの電波の出力中かどうかが判断される。そして、電波の出力中であれば(ステップS1にてYes)、ステップS2にて、マーカ光出射部20がオンされ、マーカ光Mが出射される。これに対し、電波の出力中でなければ(ステップS1にてNo)、ステップS3にて、マーカ光出射部20がオフされ、マーカ光Mの出射が停止される。
【0046】
ところで、上述のように、リーダライタ2とRFIDタグ1との間での通信を行う際には、もし、リーダ側アンテナ17の偏波方向と、タグ側アンテナ3の偏波方向とが直角(90度あるいは270度)をなしていると、通信性能が大幅に低下してしまう事情がある。ところが、本実施例では、RFIDタグ1の表面にタグ側アンテナ3の偏波方向示す向き表示4がなされており、これと共に、リーダライタ2からは、リーダ側アンテナ17の偏波方向等を示すマーカ光Mが出射される。
【0047】
そこで、図4に示すように、ユーザは、RFIDタグ1に対してマーカ光Mが照射されるようにすると共に、RFIDタグ1の向き表示4の方向とマーカ光Mの示す向きとを合わせるように、両者(リーダライタ2)を位置合せする、特にリーダライタ2のケース5の向き(リーダ側アンテナ17の電波放射方向中心線Oまわりの回転角度)の調整を行うようにする。これにより、リーダ側アンテナ17の偏波方向とタグ側アンテナ3の偏波方向とを容易に合せることができ、その状態で通信を行うことによって、良好な通信性能を得ることができるのである。
【0048】
また、ユーザは、RFIDタグ1に照射されたマーカ光M(2個のマーカ光Mの間隔)を見て通信可能距離を知ることができるので、常に通信可能範囲a内で通信を行うことができ、通信可能範囲aから外れた位置で通信を行おうとすることが未然に防止されるのである。
【0049】
このように本実施例によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、リーダライタ2に設けられるリーダ側アンテナ17として、基板上に直接的にパターンを設けることで簡単に形成することができ、しかも直線的なパターンを設けるだけの極めて小さな面積で済むダイポールアンテナを採用した。従って、リーダ側アンテナ17を簡単で安価に設けることができると共に、リーダライタ2の小型化を図ることができる。特に、ユーザが手で持って操作するハンディ型のリーダライタ2として好適となる。RFIDタグ1に内蔵されるタグ側アンテナ3としても、同様のダイポールアンテナを採用したので、RFIDタグ1の小型化を図ることができる。
【0050】
そして、リーダライタ2にマーカ光出射部20を設け、更にRFIDタグ1に向き表示4を設けるようにしたので、ユーザが、リーダ側アンテナ17とタグ側アンテナ3とが同じ偏波方向となるように、通信時の両アンテナ17,3の向きを容易に合わせることができる。この結果、リーダライタ2とRFIDタグ1との間で、通信距離が変動してしまうことを防止し、常に良好な通信性能を得ることができる。
【0051】
また、特に本実施例では、マーカ光出射部20から出射されるマーカ光Mを、リーダ側アンテナ17の偏波面と並行(偏波面上)に出射される2個のスポット光から構成し、それら2点のスポット光を結ぶ線が偏波方向を示すようにすると共に、通信可能最大距離において交差するように構成したので、マーカ光出射部20を比較的簡単な構成としながらも、偏波方向を判りやすく示すことができ、しかも、ユーザがマーカ光Mを見て通信可能距離をも容易に知ることができる。更に、本実施例では、マーカ光Mを、リーダ側アンテナ17からの電磁波の出力時にのみ出射する構成とするとしたので、必要時にはマーカ光Mを出射することができながらも、マーカ光Mの出射による電力消費を小さく抑えることができるものである。
【0052】
尚、詳しく説明しなかったが、上記実施例のリーダライタ2において、光学情報読取機構7を用いてバーコード等の情報コードを光学的に読取る場合には、ユーザが、離れた位置からケース5の読取口5aをバーコード等の読取対象に向けた状態で、読取操作を行うようにすれば良い。このとき、上記マーカ光出射部20を、読取口5aと情報コードとの位置合せ用(読取位置を示すため)のマーカ光Mを出射する手段と兼用させることができ、その分構成を簡単に済ませることができる。
【0053】
但しこの場合、通信機構6によるRFIDタグ1との通信可能距離と、光学情報読取機構7による情報コードの読取可能距離とは異なっているので、マーカ光出射部20を情報コードの読取用に兼用させるためには、例えば、光源の前部に配置される集光レンズを光軸方向に移動させたり、複数種類のレンズを切替えたり、光源を光軸方向に移動させたりするといった、双方に対応させるための工夫を設けることが望ましい。
【0054】
その他、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、次のような種々の変形が可能である。即ち、上記実施例では、RFIDタグ1をタグ形状のものとしたが、カード状や、コイン形状等、様々な形状とすることができる。また、上記実施例では、RFIDタグ1の向き表示4及びマーカ光Mの示す向きを、共に偏波方向に一致させるよにしたが、例えば、共に偏波方向から90度ずれた向きを示すようにしても良く、要するに、向き表示4とマーカ光Mの示す向きとを合わせた状態で、双方のアンテナが同じ偏波方向となれば良い。
【0055】
RFIDタグ1に設けられる向き表示4としても、矢印形状に限らず、様々な変形が可能である。例えば、RFIDタグが細長い形状をなし、タグ側アンテナの偏波方向(ダイポール軸方向)をユーザが容易に判るような場合には、向き表示4を省略することも可能であり、この場合、リーダ側にマーカ光出射手段を設けることにより、所期の目的を達成することができる。
【0056】
更には、マーカ光Mのパターン(形状)としても、2点のスポット光に限らず、様々な変形が可能である。マーカ光出射手段によるマーカ光の出射のタイミングとしては、電源オン時に常に(断続的に)マーカ光を出射するようにしたり、ユーザのスイッチ操作によってマーカ光を出射するようにしたりしても良い。また、上記実施例では、リーダライタ2として説明したが、データの読取りのみを行うリーダであっても良く、光学情報読取機構7を備えるものでなくても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、RFIDシステムの要部の構成を示す平面図
【図2】リーダライタの内部構成を概略的に示す縦断側面図(a)及びその矢印A方向から見たリーダ側アンテナとマーカ光出射部との配置関係を示す図(b)
【図3】要部の電気的構成を示すブロック図
【図4】RFIDタグにマーカ光が照射された様子を示す図
【図5】マーカ光出射部の制御の手順を示すフローチャート
【図6】偏波の方向を説明するための図
【符号の説明】
【0058】
図面中、1はRFIDタグ、2はリーダライタ(リーダ)、3はタグ側アンテナ(ダイポールアンテナ)、4は向き表示、5はケース、5aは読取口、6は通信機構(通信手段)、7は光学情報読取機構(光学情報読取手段)、8は制御装置(制御手段)、17はリーダ側アンテナ(ダイポールアンテナ)、20はマーカ光出射部(マーカ光出射手段)、21はマーカ駆動回路、Mはマーカ光を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグと、このRFIDタグとの間で電磁波による通信を行ってデータを読取るリーダとを備えると共に、前記リーダ及びRFIDタグは、それぞれ直線偏波方式のリーダ側アンテナ及びタグ側アンテナを備えて構成されるRFIDシステムであって、
前記リーダは、前記リーダ側アンテナの偏波方向に対応した向きを示すためのマーカ光を通信方向に向けて出射するマーカ光出射手段を備えており、
前記RFIDタグの表面には、前記タグ側アンテナの偏波方向に対応した向き表示がなされており、
前記マーカ光出射手段から出射され前記RFIDタグに照射されたマーカ光の示す向きと、該RFIDタグの向き表示とを合わせることにより、前記リーダ側アンテナとタグ側アンテナとが同じ偏波方向となるように構成されていることを特徴とするRFIDシステム。
【請求項2】
前記リーダ側アンテナ及びタグ側アンテナは、共にダイポールアンテナからなることを特徴とする請求項1記載のRFIDシステム。
【請求項3】
前記マーカ光は、前記リーダ側アンテナとタグ側アンテナとの通信可能距離をも併せて示すように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のRFIDシステム。
【請求項4】
前記リーダは、ユーザが手で持って操作するハンディ型に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のRFIDシステム。
【請求項5】
RFIDタグとの間で電磁波による通信を行ってデータを読取るリーダであって、
直線偏波方式のアンテナを備えると共に、
前記アンテナの偏波方向を示すためのマーカ光を通信方向に向けて出射するマーカ光出射手段を備えることを特徴とするリーダ。
【請求項6】
前記アンテナは、ダイポールアンテナからなることを特徴とする請求項5記載のリーダ。
【請求項7】
前記マーカ光は、前記RFIDタグとの通信可能距離をも併せて示すように構成されていることを特徴とする請求項5又は6記載のリーダ。
【請求項8】
ユーザが手で持って操作するハンディ型に構成されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のリーダ。
【請求項9】
前記マーカ光は、通信電磁波の偏波面と並行に出射される2個のスポット光からなり、それら2点のスポット光を結ぶ線が偏波方向を示すことを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載のリーダ。
【請求項10】
前記2個のスポット光は、前記偏波面上に出射されることを特徴とする請求項9記載のリーダ。
【請求項11】
前記2個のスポット光は、通信可能最大距離において交差するように斜め方向に出射されることを特徴とする請求項9又は10記載のリーダ。
【請求項12】
前記マーカ光は、前記アンテナからの電磁波の出力時にのみ出射されることを特徴とする請求項5ないし11のいずれかに記載のリーダ。
【請求項13】
情報コードを光学的に読取る光学情報読取手段を併せて備えるものであって、前記マーカ光出射手段は、前記光学情報読取手段による前記情報コードの読取時に、その読取位置を示すためのマーカ光を出射する手段と兼用されることを特徴とする請求項5ないし12のいずれかに記載のリーダ。
【請求項14】
リーダとの間で電磁波による通信を行うRFIDタグであって、
直線偏波方式のアンテナを備えると共に、
表面に、前記アンテナの偏波方向を示す向き表示がなされていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項15】
前記アンテナは、ダイポールアンテナからなることを特徴とする請求項14記載のRFIDタグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−303907(P2006−303907A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122680(P2005−122680)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】