説明

RFIDプリンタ

【課題】読み書き対象ではないRFIDタグへの誤書き込み等を防止するために電波遮蔽材をアンテナの裏面側に配置する。すると、アンテナの裏面から放射される電波が電波遮蔽材に反射されて、その反射波とアンテナの表面から放射される電波とが逆位相で打ち消し合ってしまい、読み書き対象であるRFIDタグに対してデータの読み書きが正常に行われない。このような不具合発生の防止を、簡便な方策によって実現する。
【解決手段】RFIDタグ201は案内経路113に沿って搬送され、アンテナ103はその表面を案内経路113に対向させ、リーダライタ104はアンテナ103の表面側に位置付けられたRFIDタグ201に対してデータを読み書きする。アンテナ103の裏面側には、金属製の電波遮蔽材301が配置され、電波遮蔽材301におけるアンテナ103の裏面に対向する対向面302には、ヘアライン加工が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグに対して非接触通信によりデータの書き込み等を行うRFIDプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印字面に各種情報の印字が可能であると共に、非接触通信によるデータの読み書きを可能としたRFIDタグがある。RFIDタグの一例は、長尺の台紙に一定間隔で貼付されたラベル形態のRFIDラベルである。
【0003】
RFIDラベルを搬送して印字とデータの読み書きとを行うRFIDプリンタが普及している。RFIDプリンタは、RFIDラベルが通過する通信領域に対向させてアンテナを配置し、アンテナを介した非接触通信によってRFIDラベルに対してデータの読み書きを行う。
【0004】
図4は、アンテナ103が放射する電波の状況を示す模式図である。薄型直方体状のアンテナ103は、通信領域C側に指向性を有する。図4中のWaは、アンテナ103の通信領域C側の面(表面)からアンテナ103に対して垂直方向に放射された電波を示している。電波Waは、直進して、RFIDラベル201に到達する。
【0005】
これに対して、アンテナ103は、裏面側からも電波を放射する。図4中のWbは、アンテナ103の裏面からアンテナ103に対して垂直方向に放射された電波を示している。アンテナ103の裏面から放射される電波は、通信領域Cに位置しない(非接触通信を行うべきではない)別のRFIDラベル201に到達し、誤ってデータ書き込み等をしてしまうことがある。そこで、従来、不要な電波による誤書き込みを防止するために、電波を吸収する電波吸収シートや電波を遮蔽するアルミシートがハウジング内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−269085公報
【特許文献2】特開2006−333026公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アンテナ103の裏面から放射される不要な電波を遮蔽するために、図4に示すように、アンテナ103の裏面側を覆う形状を有する板金(電波遮蔽材M)を配置する場合がある。このとき、電波遮蔽材Mが、アンテナ103と対向する面であり凹凸が無く電波を鏡面反射させる面(以下、対向面Sとする)を備えていることがある。すると、電波Wbの対向面Sに対する入射角と反射角とが等しくなるため、電波Wbは電波遮蔽材Mによって垂直方向に反射され(反射波Wc)、反射波Wcがアンテナ103を通過してRFIDラベル201に到達してしまう。
【0008】
図5は、電波Wa及び反射波Wcを示す波形図である。図5に示すように、反射波Wcの位相が電波Waの位相に対して180°遅れて(又は進んで)しまうことがある。すると、電波Waと反射波Wcとが逆位相で合成されて著しく弱め合ってしまい、その結果、RFIDラベル201に対して、正常にデータの読み書きができないという不具合が生ずる。
【0009】
そこで、電波Waと反射波Wcとが打ち消し合う点(ヌル点)にRFIDラベル201が位置付けられることを回避するために、電波遮蔽材Mの上下位置を変えることが考えられる。しかし、ヌル点はわずかな環境の変化によっても変化してしまうため、電波遮蔽材Mの上下移動のみでは上記不具合は解消されない。
【0010】
アンテナ103の裏面から放射される電波Wbを乱反射することができれば、電波Waと反射波Wcとが逆位相で打ち消し合うことがないため、上記不具合は解消される。特許文献1及び特許文献2は、RFIDを利用する場合において電波を乱反射させる点に着目して見出された文献である。もっとも、特許文献1及び特許文献2には、電波が反射される面にどのような加工が施されたものであるかについては、明らかにされていない。電波遮蔽材Mが有する対向面Sに凹凸を形成する加工が施されれば電波Wbを乱反射させることができるが、加工が簡便なものでなかったり新規な部材を必要としたりする場合には、RFIDプリンタの設計変更を要するおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、アンテナが裏面から放射する電波を電波遮蔽材が反射することによって生じるRFIDタグに対してデータの読み書きが正常に行われないという不具合の発生を、簡便な方策によって防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のRFIDプリンタは、ハウジングと、前記ハウジング内の案内経路に沿ってRFIDタグを搬送する搬送機構と、前記案内経路の一面側に配置され、表面を前記案内経路に対向させるアンテナと、前記アンテナの表面側に置付けられたRFIDタグに対して非接触通信によるデータの読み書きを行うリーダライタと、前記アンテナの裏面側に配置され、前記アンテナの裏面に対向しヘアライン加工を施している対向面を有する金属製の電波遮蔽材と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電波遮蔽材におけるアンテナと対向する対向面にヘアライン加工が施されていることにより、アンテナの裏面から放射される不要な電波が乱反射されるので、アンテナの表面から放射される電波と反射波とが逆位相で打ち消し合うことがなくなり、RFIDタグに対して正常にデータの読み書きができないという不具合の発生が防止され、また、広く一般的に行われているヘアライン加工を電波遮蔽材の面に施したり一般的に流通しているヘアライン材を電波遮蔽材として採用したりできるので、極めて簡便に不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】RFIDプリンタを模式的に示す側断面図である。
【図2】電波遮蔽材をアンテナ及びラベル用紙と共に示す斜視図である。
【図3】アンテナが放射する電波の状況を示す模式図である。
【図4】アンテナが放射する電波の状況を示す模式図である。
【図5】電波及び反射波を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図1ないし図3に基づいて説明する。本実施の形態は、RFIDタグとしてのRFIDラベル201に対して、ラインサーマル印字方式による印字を行なうようにしたRFIDプリンタ101への適用例である。RFIDラベル201は、長尺状の台紙202に規定の間隔で貼付されている(図1参照)。RFIDラベル201と台紙202とを併せてラベル用紙211と呼ぶ。
【0016】
図1は、RFIDプリンタ101を模式的に示す側断面図である。RFIDプリンタ101は、各部を収納する直方体状のハウジング102を備える。ハウジング102には、RFIDラベル201を内側にしてロール状に巻回されたラベル用紙211を引き出し自在に保持する保持部105が配置されている。
【0017】
ラベル用紙211が有する個々のRFIDラベル201の表面は、熱印加により発色する印字面となっている。また、RFIDラベル201は、後述するリーダライタ104との間で非接触通信を実行する。そのために、RFIDラベル201は、ICチップ201a及びラベルアンテナ201b(いずれも図2参照)を内蔵している。RFIDラベル201は、電池を内蔵しないいわゆるパッシブタイプのRFIDタグである。本実施の形態では、RFIDラベル201とリーダライタ104との間の非接触通信の方式は、UHF(860MHz〜960MHz)帯の電波を使って通信する電波方式である。
【0018】
保持部105から引き出されたラベル用紙211は、回転する搬送ローラ107によって搬送力が付与されて、ハウジング102の前面の排出口106へと搬送される。すなわち、ラベル用紙211は、保持部105から排出口106に至る案内経路113に沿って搬送される。搬送ローラ107は、駆動ローラと従動ローラとによって構成され、駆動ローラは、駆動モータ(図示せず)を駆動源として回転駆動される。
【0019】
搬送ローラ107と排出口106との間には、RFIDラベル201と非接触通信を行うためのアンテナ103と、RFIDラベル201に印字を行うための印字部108とが配置されている。アンテナ103は、印字部108よりも、ラベル用紙211の搬送方向(以下、用紙搬送方向と呼ぶ)の上流側に配置されている。
【0020】
アンテナ103は、薄型の直方体形状を有して平面的な放射素子(図示せず)を内蔵し、案内経路113に対向配置されている。アンテナ103には、ハウジング102に内蔵されているリーダライタ104が接続している。リーダライタ104は、RFIDプリンタ101に接続するPC(図示せず)によって動作制御される。搬送ローラ107は、RFIDラベル201をアンテナ103と対向する領域(通信領域C)に位置付けてラベル用紙211の搬送を停止させる。PCからの動作制御を受けたリーダライタ104は、アンテナ103に電波を放射させる。通信領域Cに位置するRFIDラベル201では、アンテナ103が放射する電波をラベルアンテナ201bが受信して電力が発生し、ICチップ201aが起動する。起動したICチップ201aは、リーダライタ104との間で通信が可能となる。通信可能状態となって、リーダライタ104は、ICチップ201aが記憶しているデータを読み取ったり、ICチップ201aにデータを書き込んだりする。
【0021】
アンテナ103の指向性は、通信領域Cに位置するRFIDラベル201と非接触通信を行うため、上向きである。もっとも、アンテナ103は、通信領域C側の面(表面)とは反対側の面(裏面)からも電波を放射する。
【0022】
印字部108は、搬送されるラベル用紙211の下面側に配置されるプラテン109と、搬送されるラベル用紙211を介してプラテン109に当接するサーマルヘッド110とを有する。サーマルヘッド110は、一列に配設された発熱素子(図示せず)を有する。プラテン109は、駆動モータ(図示せず)を駆動源として回転駆動される。プラテン109の回転に伴って、サーマルヘッド110の発熱素子が選択的に発熱することによって、RFIDラベル201の印字面には印字が行われる。
【0023】
印字部108と排出口106との間には、剥離部111が配置されている。剥離部111は、搬送されるラベル用紙211の台紙202からRFIDラベル201を剥離して排出口106から排出させる。RFIDラベル201が剥離された台紙202は、剥離部111に沿って折り返され、ハウジング102が内蔵している巻取ローラ112によって巻き取られる。
【0024】
ところで、アンテナ103の下方領域には、金属製(一例として、アルミニウム製)の部材である電波遮蔽材301が配置されている。次に、図1及び図2に基づいて、本実施の形態の電波遮蔽材301について説明する。
【0025】
図2は、電波遮蔽材301をアンテナ103及びラベル用紙211と共に示す斜視図である。なお、図2のアンテナ103は、破線で示している。
【0026】
電波遮蔽材301は、一枚の板金を直角に折り曲げた形状を有している。すなわち、電波遮蔽材301は、矩形の主板部301aと、主板部301aの一端から垂直に立ち上がる副板部301bとを有する。電波遮蔽材301は、主板部301aがアンテナ103と平行な姿勢でハウジング102に配置される。副板部301bの上端は、アンテナ103の上面高さに達している。主板部301aの用紙搬送方向の長さは、アンテナ103のそれよりも長い。また、電波遮蔽材301の幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)の長さは、アンテナ103のそれよりも長い。つまり、電波遮蔽材301は、アンテナ103の下方領域とアンテナ103の用紙搬送方向上流側の領域とを覆っている。
【0027】
搬送ローラ107によってラベル用紙211が搬送され、一つのRFIDラベル201が通信領域Cに位置付けられる。この際、通信領域Cよりも用紙搬送方向上流側に位置する別のRFIDラベル201は、電波遮蔽材301の副板部301bよりも用紙搬送方向上流側に位置付けられる。
【0028】
このとき、電波遮蔽材301がアンテナ103の下方領域とアンテナ103の用紙搬送方向上流側の領域とを覆っているため、アンテナ103の裏面から放射される電波は、通信領域Cよりも用紙搬送方向上流側に位置する別のRFIDラベル201に到達せず、誤ってデータの読み書きをしてしまうことが防止される。
【0029】
そして、図2に示すように、電波遮蔽材301におけるアンテナ103を覆う面には、髪の毛のように長く連続した研磨目が形成される加工(ヘアライン加工)が施されている。ヘアライン加工には、適当な粒度(例えば、150〜240番の砥粒)のサンドブロックや研磨ベルトが使用される。ヘアライン加工技術は、周知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0030】
図3は、アンテナ103が放射する電波の状況を示す模式図である。アンテナ103の表面からアンテナ103に対して垂直方向に放射された電波Waは、直進して、RFIDラベル201に到達する。また、アンテナ103の裏面からは、アンテナ103に対して垂直方向に電波Wbが放射される。電波Wbは、金属である電波遮蔽材301によって反射される(反射波Wc)。
【0031】
しかし、本実施の形態によれば、電波遮蔽材301におけるアンテナ103と対向する対向面302は、ヘアライン加工が施されているので、複数本の研磨目によって凹凸を形成している。そのため、電波Wbの入射角と反射角とは等しくならず、図3に示すように、反射波Wcは対向面302によって乱反射される。したがって、反射波Wcの位相が電波Waの位相に対して180°遅れて(又は進んで)、反射波WcがRFIDラベル201に到達してしまうことがなくなる。すなわち、電波Waと反射波Wcとが逆位相で合成されて弱め合ってRFIDラベル201に対するデータの読み書きが正常に行われないという不具合の発生を防止することができる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、従来の電波遮蔽材M(図4参照)を、ヘアライン加工が施された対向面302を有する電波遮蔽材301に転換するだけでよい。つまり、広く一般的に行われているヘアライン加工を従来の電波遮蔽材Mの面に施したり、あるいは、一般的に流通しているヘアライン材を電波遮蔽材301として採用したりできる。そのため、極めて簡便な方策によって、RFIDラベル201に対するデータの読み書きが正常に行われないという不具合の発生を防止することができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、ヘアライン加工によって電波遮蔽材301の対向面302に形成される研磨目のパターンとして、RFIDラベル201の搬送方向に沿った直線状のものを示したが(図2参照)、対向面302の研磨目のパターンは、これに限定されるものではない。例えば、対向面302の研磨目は、RFIDラベル201の搬送方向と直交する方向に沿って形成されたものでもよいし、RFIDラベル201の搬送方向に対して斜めに形成されたものでもよい。また、円弧状に形成された研磨目であってもよい。さらには、上記の2以上のパターンを組み合わせて形成された研磨目であってもよい。研磨目がいずれのパターンであっても、対向面302は凹凸を形成するので電波Wbの入射角と反射角とは等しくならず、反射波Wcは対向面302によって乱反射される。すなわち、研磨目がRFIDラベル201の搬送方向に沿っている場合(図2参照)と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
101…RFIDプリンタ
102…ハウジング
103…アンテナ
104…リーダライタ
107…搬送ローラ(搬送機構)
201…RFIDラベル(RFIDタグ)
301…電波遮蔽材
301a…主板部
301b…副板部
302…対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内の案内経路に沿ってRFIDタグを搬送する搬送機構と、
前記案内経路の一面側に配置され、表面を前記案内経路に対向させるアンテナと、
前記アンテナの表面側に置付けられたRFIDタグに対して非接触通信によるデータの読み書きを行うリーダライタと、
前記アンテナの裏面側に配置され、前記アンテナの裏面に対向しヘアライン加工を施している対向面を有する金属製の電波遮蔽材と、
を備えるRFIDプリンタ。
【請求項2】
前記電波遮蔽材は、
前記対向面を有する板状の主板部と、
前記主板部のRFIDタグ搬送方向上流側の端部から立ち上がる板状の副板部と、
を備える請求項1記載のRFIDプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−206323(P2010−206323A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47258(P2009−47258)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】