説明

RHO経路のモディファイヤーとしてのKIFs及び使用方法

ヒトKIF23遺伝子はRHO経路のモジュレーターとして同定されており、したがってこれらは欠陥RHO機能を伴う疾患の治療上の標的である。KIF23の活性を調節する作用剤をスクリーニングすることを含む、RHOのモジュレーターを同定する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
低分子量GTPaseのRhoファミリーは、Rho、Rac、及びCDC42を含め、約20の哺乳類タンパク質を含んでいる。これらの遍在性であり且つ高度に保存されたタンパク質は、細胞の遊走及び形状変化、細胞−細胞間接着及び細胞−マトリックス間接着、細胞周期の進行及び細胞質分裂、並びに遺伝子発現を含む多数の細胞プロセスの重要な制御因子である(Burridge K及びWennerberg (2004) Cell 116(2):167-179参照)。それらと密接に関連するRasと同様に、Rho GTPaseは、生化学的に活性のGTP結合状態と不活性のGDP結合状態の間を切り替える分子スイッチとして作用する。周期の制御は、主に3つのクラスのタンパク質、即ち、GDPとGTPの交換を助けることで活性のGTP結合状態を促進するグアニン交換因子(GEFs)、GTPaseの比較的弱い内因性ヒドロラーゼ活性を刺激することにより不活性状態を促進するGTPase活性化タンパク質(GAPs)、並びにそれらのGDP結合型のGTPaseに結合してGTPaseを隔離するグアニン解離阻害剤(GDIs)により媒介される。多くのGEF及びそれらの標的のGTPaseは、様々な上流の刺激、例えば成長因子の結合、及び細胞−細胞間接着又は細胞−マトリックス間接着に対する応答に現れる。制御因子として、活性化されたRhoタンパク質は、細胞応答を誘発する1以上の様々な下流エフェクタータンパク質(例えば、rhoキナーゼ、フォミン、p21−活性化キナーゼ)に結合し、通常それを活性化する。
細胞周期の進行、細胞運動性及び組織浸潤の促進における個々のファミリーメンバーの確立された機能、並びにRhoタンパク質に作用する複数の異なるGEFに関連する発癌性特性に基づいて、癌の進行を促進するうえでRhoタンパク質が何らかの役割を果たす可能性が示唆されている。多数のGEFの構成的活性型は、1以上のRhoファミリーメンバーに活性化過剰を引き起こし、げっ歯類細胞に対して発癌性である。更に、特定のRhoタンパク質又はRhoエフェクターの過剰発現が、乳癌、肺癌及び結腸直腸癌を含む複数のヒト癌に観察されている(Croft DR等(2004) Can Res 64:8994-9001、及びその参考文献参照)。複数の事例において、インビボの動物モデルの研究により、Rhoタンパク質又はエフェクターの過剰発現が腫瘍細胞の侵襲及び/又は転移に有意に寄与することの、説得力のある証拠が提供されている(Sahai, E. (2005) Cur Opin Genet & Dev. (2005) 15:87-96参照)。
【0002】
線虫及びショウジョウバエ等のモデル系の研究により、機能及び構造に保存を示すRho、Rac及びCDC42の無脊椎動物のオルソログが同定された。線虫は、3つのRacコード化遺伝子(ced−10、mig−2、rac−2)と、単一の遺伝子コード化CDC42(cdc−42)又はRho(rho−1)を含む。これら3つの線形動物のRac遺伝子は、細胞運動性及び細胞遊走に重複性の役割を有し(Lundquist EA等、Development (2001) 128(22):4475-88)、一方rho−1は細胞質分裂に必要であり(Jantsch-Plunger V等(2000)J Cell Biol 149(7):1291-404)、cdc−42は細胞極性に極めて重要な役割を有する(Gotta Mら(2001)Curr Biol 11(7):482-488)。Dock180/ELMO(ced−2/ced−12)及びect2(let−21)を含む、複数の哺乳類GEFの線虫オルソログの特徴も明らかとなっている。これら特定のGEFは、Rho、Rac、又はCDC42変異体に関連する表現型と重複する機能喪失型変異表現型を示すだけでなく、機能的に保存されているように思われる。例えば、それらの哺乳類オルソログのように、線虫Rho(rho−1)及びEct2(let−21)は、有糸分裂の最後の分裂溝移入に必要とされる。この役割を反映して、細胞質分裂欠損表現型が、機能低下型let−21変異体に観察されるか、或いはlet−21又はrho−1のRNA阻害後に観察される(R. Francis、未刊行の観察結果;T. Schedl、個人的書簡)。
KIF23(キネシンファミリーメンバー23)は、キネシン様タンパク質ファミリーのメンバーである。このファミリーは、細胞内で小器官を輸送し、細胞分裂の間に染色体を動かす微小管依存性の分子モーターを含む。KIF23は、逆平行の微小管を架橋し、インビトロでの微小管運動を駆動することが判明している。この遺伝子の選択的スプライシングにより、2つの異なるアイソフォームをコードする2つの転写変異体が生じる。
【0003】
PPIE(ペプチジルプロリン異性化酵素E;シクロフィリンE)は、ペプチジル−プロリルシス・トランスイソメラーゼ(PPIase)ファミリーのメンバーである。PPIaseは、オリゴペプチド中のプロリンイミドペプチド結合のシス・トランス異性化を触媒し、タンパク質のフォールディングを加速する。PPIEは、RNA結合ドメインの他に、高度に保存されたシクロフィリン(CYP)ドメインを含み、PPIase及びタンパク質フォールディング活性を有し、更にはRNA結合活性を示す。
FDPS(ファネシル二リン酸合成酵素)は、イソプレン生合成経路におけるゲラニル二リン酸及びイソペンテニル二リン酸の、二リン酸及びトランス、トランス−ファネシル二リン酸への転換を触媒する。
【0004】
ホスファチジルイノシトール(PI)4−キナーゼ(PIK4CA)は、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸エステルの生合成の最初の段階を触媒する。哺乳動物のPI4−キナーゼは、その分子量、及び界面活性剤とアデノシンによる変性に基づき、II及びIIIの2種類に分類されている。この遺伝子については、異なるアイソフォームをコードする2つの転写変異体が開示されている。
リジンを持たないプロテインキナーゼ(リジン欠損プロテインキナーゼ;PRKWNK)は、保存された位置にリジンの代わりにシステインを含む細胞質セリン−スレオニンキナーゼであるが、キナーゼ活性は有している。2つのPRKWNK、即ちWNK1及びWNK4の突然変異は、高血圧、高カリウム血症、及び尿細管性アシドーシスを特色とする常染色体優性遺伝疾患である2型偽低性アルドステロン症を引き起こす。
【0005】
細胞間情報伝達は、他の細胞によって放出された特定のタンパク質リガンドを認識し、且つこのタンパク質リガンドによって活性化される1つの細胞表面のレセプターによって媒介されることが多い。細胞表面レセプターのあるクラスのメンバーであるレセプターチロシンキナーゼ(RTK)は、内因性のチロシンキナーゼ活性を含む細胞質ドメインを有することによって特徴付けられる。このキナーゼ活性は、レセプターの細胞外部分への同族リガンドの結合によって制御される。RTKは、細胞の種類に特異的な発現を示し、それらの細胞種類の増殖及び分化に重要な役割を果たしている。ROR1(神経栄養性チロシンキナーゼレセプター関連1)は、神経組織に発現するもので、膜貫通レセプタータンパク質チロシンキナーゼシグナル伝達経路に関与している可能性がある(Oishi, I.等(1999)Genes Cells 4:41-56; Masiakowski, P.及びCarroll, R. D. (1992) J Biol Chem 267:26181-90; Reddy, R. R.等(1996) Oncogene 13:1555-9)。ROR2(レセプターチロシンキナーゼ様オーファンレセプター2)は、RTKファミリーの別の神経特異的メンバーである。ROR2の突然変異は、優性B1型短指症及び劣性Robinow症候群を含む骨障害に関連している(Afzal, A. R.等(2000)Nat Genet 25:419-22; Oldridge, M.等(2000)Nat Genet 24:275-8)。
MELK(母系性胚性ロイシンジッパーキナーゼ)は、細胞極性及び微小管動力学に関与する進化的に保存されたKIN1/PAR−1/MARKキナーゼファミリーである。
【0006】
線虫などモデル生物のゲノムを操作できると、顕著な進化的保存の数により複雑な脊椎動物との直接の関連性を有する生化学プロセスを分析する、強力な手段が提供される。遺伝子及び経路の保存レベルが高いこと、細胞プロセスの類似性が高いこと、ならびにこれらモデル生物と哺乳動物との間で遺伝子の機能が保存されていることにより、特定の経路における新規遺伝子の関与及びこのようなモデル生物中におけるその機能の同定は、哺乳動物中における相関経路及びこれらを調節する方法を理解するのに直接寄与することができる(たとえば、DulubovaI等、J Neurochem 2001 Apr; 77(1):229-38; Cai T等、Diabetologia 2001 Jan; 44(1):81-8; Pasquinelli AE等、Nature. 2000 Nov 2; 408(6808):37-8; Ivanov IP等、EMBOJ 2000 Apr 17; 19(8):1907-17; VajoZ等,Mamm Genome 1999 Oct; 10(10):1000-4参照)。たとえば、目に見える表現型がもたらされる遺伝子の過少発現(たとえばノックアウト)又は過剰発現(「遺伝的エントリーポイント(genetic entry point)」と呼ばれる)を有する脊椎モデル生物で、遺伝子スクリーニングを行うことができる。追加の遺伝子を、無作為に又は標的を定めた方式で変異させる。ある遺伝子の変異によって遺伝的エントリーポイントの突然変異により引き起こされた最初の表現型が変化する場合、この遺伝子は、遺伝的エントリーポイントと同じ又は重複する経路に関与する「モディファイヤー」として同定される。遺伝的エントリーポイントがRHOなどの疾病経路に関係づけられているヒト遺伝子のオルソログである場合、新規の治療薬の魅力的な候補標的となり得るモディファイヤー遺伝子を同定することができる。
【0007】
特許、特許出願、公開公報、及び参照したGenbank識別番号の配列情報を含めた本明細書中で引用するすべての参考文献は、その全体が本明細書中に組み込まれる。
【0008】
(発明の概要)
本発明者らは、線虫でRHO経路を改変させる遺伝子を発見し、ヒトにおけるそのオルソログを同定し、本明細書中では以降これをRHOのモディファイヤー(MRHO)と呼ぶ。特に、本発明者らは、KIF23(キネンシンファミリーメンバー23)という遺伝子が、多数のヒト組織及び細胞系においてRHO経路を修飾することを発見した。この遺伝子は、MKLP1(細胞分裂キネシン様プロテイン1)として文献に既知である。このコード化タンパク質は、アミノ末端のキネシンモータードメインを含み、それに続いて頚部領域と、二量体形成に重要な茎部領域と、カルボキシ末端付近にNLS領域とを含む。このコード化タンパク質は、細胞質分裂の間に中央紡錘体の一部を形成する逆平行微小管(MT)を架橋する。このコード化タンパク質は、分裂溝の形成及び陥入を促進するEct2及びRhoA等の因子の補充を指示する。このコード化タンパク質はまた、逆平行MTを発現するほかの細胞構造においても機能する。本発明は、これらのRHOモディファイヤー遺伝子及びポリペプチドを利用して、RHO機能及び/又はKIF23機能の欠陥又は不全を伴う疾患の治療に使用できる候補治療剤であるKIF23調節剤を同定する方法を提供する。好ましいKIF23調節剤(modulating agent)は、KIF23ポリペプチドに特異的に結合してRHO機能を修復する。他の好ましいKIF23調節剤は、アンチセンスオリゴマーやRNAiなど、たとえば対応する核酸(すなわちDNA又はmRNA)に結合してそれを阻害することによってKIF23遺伝子発現又は生成物の活性を抑制する核酸モジュレーターである。
KIF23調節剤は、KIF23ポリペプチド又は核酸との分子相互作用のための任意の都合のよいインビトロ又はインビボのアッセイによって評価することができる。一実施態様では、KIF23ポリペプチド又は核酸を含むアッセイ系を用いて候補KIF23調節剤を試験する。対照と比べてアッセイ系の活性に変化を生じさせる作用剤は、候補RHO調節剤として同定される。このアッセイ系は細胞に基づくものでも、細胞を含まないものでもよい。KIF23調節剤には、KIF23関連タンパク質(たとえばドミナントネガティブ変異体やバイオ治療薬);KIF23に特異的な抗体;KIF23に特異的なアンチセンスオリゴマー及び他の核酸モジュレーター;KIF23と特異的に結合するか相互作用する、又は(例えばKIF23結合パートナーに結合することにより)KIF23結合パートナーと競合する化学剤が含まれる。特定の一実施態様では、結合アッセイを用いて小分子モジュレーターを同定する。特定の実施態様では、スクリーニングアッセイ系は、アポトーシスアッセイ、細胞増殖アッセイ、及び血管新生アッセイから選択される。
【0009】
別の実施態様では、最初に同定した候補作用剤や最初の作用剤から誘導した作用剤によって生じた血管形成、細胞死、又は細胞増殖の変化など、RHO経路における変化を検出する第2アッセイ系を使用して、候補RHO経路調節剤をさらに試験する。第2アッセイ系には、培養細胞又は非ヒト動物を使用することができる。特定の実施態様では、この二次アッセイ系は、血管新生、細胞死、又は細胞増殖の疾患(たとえば癌)などRHO経路に関係づけられた疾病又は疾患を有することが事前に確定されている動物を含めた、非ヒト動物を使用する。
本発明はさらに、哺乳動物細胞をKIF23ポリペプチド又は核酸に特異的に結合する作用剤と接触させることによって、哺乳動物細胞中のKIF23機能及び/又はRHO経路を調節する方法を提供する。この作用剤は、小分子モジュレーター、核酸モジュレーター、又は抗体であってよく、RHO経路に関連する病状を有することが事前に確定されている哺乳動物に投与することができる。
【0010】
(発明の詳細な記載)
Rho経路の機能の遺伝子モディファイヤーを同定するために特定の遺伝子のRNAiを利用する線虫の遺伝子スクリーニングが設定された。線虫の遺伝子を沈黙させるためのRNAiを用いる方法は従来技術において既知である(Fire A等、1998 Nature 391:806-811; Fire, A. Trends Genet. 15, 358-363 (1999); WO9932619)。虫の表現型を変化させる遺伝子が、RHO経路のモディファイヤーとして同定され、続いてそのオルソログが同定された。したがって、このモディファイヤーの脊椎動物のオルソログ、好ましくはヒトのオルソログであるKIF23遺伝子(すなわち核酸及びポリペプチド)は、癌などのRHOシグナル伝達経路の欠陥に関連する病変の治療における魅力的な薬剤標的である。表1(実施例2)にこれらのモディファイヤー及びそのオルソログを列挙する。
本発明では、KIF23機能を評価するインビトロ及びインビボの方法を提供する。KIF23又はその対応する結合パートナーの変調は、正常状態及び病態におけるRHO経路とそのメンバーとの関連性を理解し、RHOに関連する病状の診断方法及び治療様式を開発するのに有用である。本発明で提供する方法を使用して、直接的又は間接的に、たとえば酵素(たとえば触媒)活性又は結合活性などのKIF23機能に影響を与えてKIF23の発現を阻害又は亢進することによって作用するKIF23調節剤を同定することができる。KIF23調節剤は、診断、治療、及び製薬の開発に有用である。
【0011】
本発明の核酸及びポリペプチド
本発明で使用することができるKIF23核酸及びポリペプチドに関連する配列は、核酸は、Genbankに開示されており(Genbank識別(GI)番号又はRefSeq番号により参照)、表1及び添付の配列表に示す。
用語「KIF23ポリペプチド」とは、完全長のKIF23タンパク質又はその機能的に活性のある断片又は誘導体を言う。「機能的に活性のある」KIF23断片又は誘導体は、抗原活性や免疫原性活性、酵素活性、天然の細胞基質に結合する能力など完全長の野生型KIF23タンパク質に関連する機能活性を1つ又は複数示す。KIF23タンパク質、誘導体及び断片の機能活性は、当業者に周知の様々な方法によって(Current Protocols in Protein Science、1998年、Coligan他編、John Wiley & Sons, Inc.、ニュージャージー州ソマーセット)また以下にさらに述べるようにアッセイすることができる。一実施態様では、例えば細胞に基づくアッセイ又は動物アッセイにおいて、機能的に活性のあるKIF23ポリペプチドは、内因性KIF23活性の欠陥を救援する能力を有するKIF23誘導体であり、レスキュー誘導体は同じ種由来でも、異なる種由来でもよい。本発明の目的のために、機能的に活性のある断片には、キナーゼドメインや結合ドメインなどKIF23の構造ドメインを1つ又は複数含む断片も含まれる。タンパク質ドメインは、PFAMプログラムを使用して同定することができる(Bateman A.他、Nucleic Acids Res、1999年、27:260-2)。KIF23ポリペプチドを取得する方法については後述でさらに説明する。一部の実施態様では、好ましい断片は、機能的に活性のある、KIF23の少なくとも25個の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも50個、より好ましくは75個、最も好ましくは100個の連続したアミノ酸を含むドメイン含有断片である。さらに好ましい実施態様では、この断片は機能的に活性のあるドメインの全体を含む。
【0012】
用語「KIF23核酸」とは、KIF23ポリペプチドをコードするDNA又はRNA分子を言う。好ましくは、このKIF23ポリペプチド又は核酸あるいはその断片はヒト由来であるが、ヒトKIF23と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するオルソログ又はその誘導体でもよい。オルソログの同定方法は当技術分野において既知である。通常、異なる種のオルソログは、1つ以上のタンパク質モチーフの存在及び/又は3次元構造のために、同じ機能を保持している。一般に、オルソログは、通常タンパク質ベイト配列を使用し、BLAST分析のような配列相同分析により同定される。フォワードBLAST結果のうち最も合致する配列が、リバースBLASTの元のクエリ配列を取り出すのであれば、配列を潜在的オルソログとして指定する(Huynen MA及びBork P, Proc Natl Acad Sci、1998年、95:5849-5856; Huynen MA他、Genome Research、2000年、10:1204-1210)。CLUSTAL(Thompson JD他、1994年、NucleicAcidsRes22:4673-4680)など、多重配列アラインメントのためのプログラムを使用して、オルソログのタンパク質の保存域及び/又は残基をハイライトし、系統樹を作製してもよい。多様種の多重相同配列(例えばBLAST分析により取り出されたもの)を表す系統樹において、2種のオルソログ配列は、それら2種のそれ以外の全配列に対し、系統樹中最も接近して現われる。構造のスレッディング、又はタンパク質の折りたたみのその他分析法(例えばProCeryon(バイオサイエンス、オーストリア国ザルツブルク)を使用したもの)により潜在的なオルソログを同定してもよい。進化において、種分化に続いて遺伝子重複が起こるとき、線虫など単一種の単一遺伝子は、ヒトなど別の種の複数の遺伝子に対応する場合がある(パラログ)。本明細書において、「オルソログ」という表現は、パラログも含む。対象配列又は対象配列の特定の一部分に関して本明細書中で使用する「パーセント(%)配列同一性」とは、配列のアラインメントを行い、最大のパーセント配列同一性を得るために必要な場合はすべての検索パラメータを初期値に設定したプログラムWU−BLAST−2.0a19(Altschul他、J. Mol. Biol.、1997年、215:403-410)によって作製されたギャップを導入した後の、対象配列(又はその特定の一部分)中のヌクレオチドやアミノ酸と同一である候補誘導体の配列中のヌクレオチドやアミノ酸の割合として定義される。HSP S及びHSP S2パラメータは動的値であり、プログラム自体により、具体的な配列の組成と、目的配列と比較して検索する個々のデータベースの組成とに応じて確定される。%同一性値は、一致する同一ヌクレオチド又はアミノ酸の数を、パーセント同一性が報告される対象となる配列の長さで割ることによって決定される。「パーセント(%)アミノ酸配列類似性」は、%アミノ酸配列同一性の決定と同じ計算を行うが、同一アミノ酸に加えて保存的アミノ酸置換を含めて算定することによって決定される。
【0013】
保存的アミノ酸置換とは、タンパク質のフォールディングや活性が顕著に影響されないように、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換される置換である。互いに置換できる芳香族アミノ酸はフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンであり、互換性のある疎水性アミノ酸はロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリンであり、互換性のある極性アミノ酸はグルタミン及びアスパラギンであり、互換性のある塩基性アミノ酸はアルギニン、リジン及びヒスチジンであり、互換性のある酸性アミノ酸はアスパラギン酸及びグルタミン酸であり、互換性のある小さいアミノ酸はアラニン、セリン、スレオニン、システイン及びグリシンである。
あるいは、核酸配列のアラインメントは、Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズムによって提供される(Smith及びWaterman、1981年、Advances in Applied Mathematics、2:482-489; database:European Bioinformatics Institute; Smith及びWaterman、1981年、J. of Molec. Biol.、147:195-197;Nicholas他、1998年、「A Tutorialon Searching Sequence Databases and Sequence Scoring Methods」(www.psc.edu)及びこれに引用される参考文献であるW.R.Pearson、1991年、Genomics、11:635-650)。このアルゴリズムは、Dayhoffによって開発され(Dayhoff: Atlas of Protein Sequences and Structure、M. O. Dayhoff編、5suppl.、3:353-358、National Biomedical Research Foundation、米国ワシントンD.C.)、Gribskovによって正規化された(Gribskov、1986年、Nucl. Acids Res.14(6):6745-6763)スコアマトリックス(scoring matrix)を使用することによって、アミノ酸配列に適用することができる。スコアをつけるのに初期パラメータを用いたSmith−Watermanアルゴリズムを使用することができる(たとえば、ギャップ隙間ペナルティー(gap open penalty)12、ギャップ伸張ペナルティー(gap extension penalty)2)。作成されたデータでは、「一致」値は「配列同一性」を反映している。
【0014】
対象核酸分子から誘導した核酸分子には、KIF23の核酸配列とハイブリダイズする配列が含まれる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度、pH、ならびにハイブリダイズ及び洗浄中にホルムアミドなど変性剤を存在させることによって調節することができる。日常的に使用される条件は、容易に入手可能な手順書に記載されている(たとえば、Current Protocol in Molecular Biology、第1巻、第2.10章、John Wiley & Sons, Publishers、1994年; Sambrook他、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor、1989年)。一部の実施態様では、本発明の核酸分子は、6×単位強度クエン酸(single strength citrate)(SSC)(1×SSCは0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸Na、pH7.0である)、5×デンハルト溶液、0.05%のピロリン酸ナトリウム及び100μg/mlのニシン精子DNAを含む溶液中で、核酸を含むフィルターを8時間〜終夜、65℃でプレハイブリダイゼーションを行い;6×SSC、1×デンハルト溶液、100μg/mlの酵母tRNA及び0.05%のピロリン酸ナトリウムを含む溶液中で、18〜20時間、65℃でハイブリダイゼーションを行い、;0.1×SSC及び0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む溶液で、65℃で1時間フィルターを洗浄する高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、KIF23のヌクレオチド配列を含む核酸分子にハイブリダイズすることができる。
他の実施態様では、35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%のPVP、0.1%のフィコール、1%のBSA、及び500μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中で、核酸を含むフィルターを6時間、40℃で前処理し;35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.2%のBSA、100μg/mlのサケ精子DNA、及び10%(重量/体積)のデキストラン硫酸を含む溶液中で、18〜20時間、40℃でハイブリダイゼーションを行い;次いで、2×SSC及び0.1%のSDSを含む溶液で2度、1時間55℃で洗浄する、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用する。
あるいは、20%のホルムアミド、5×SSC、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%のデキストラン硫酸、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、8時間〜終夜、37℃でインキュベートし;同じ緩衝液中で18〜20時間、ハイブリダイゼーションを行い;1×SSCで、約37℃で1時間洗浄する、低いストリンジェントな条件を使用することができる。
【0015】
KIF23核酸及びポリペプチドの単離、生成、発現、及び異常発現
KIF23核酸及びポリペプチドは、KIF23機能を調節する薬剤の同定及び試験、ならびにRHO経路におけるKIF23の関与に関連する他の用途に有用である。KIF23核酸ならびにその誘導体及びオルソログは、利用可能な任意の方法を使用して得ることができる。たとえば、DNAライブラリをスクリーニングすることによって、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによって、目的のcDNA又はゲノムDNA配列を単離する技術が、当分野で周知である。一般的に、タンパク質の具体的な使用により、発現、生成、及び精製方法の詳細が規定される。たとえば、スクリーニングして調節剤を探すために使用するタンパク質を生成するには、これらタンパク質の特異的生物活性を保存する方法が必要であるかもしれないが、抗体を産生するためのタンパク質を生成するには、特定のエピトープの構造的な完全性が必要であるかもしれない。スクリーニング又は抗体を産生するために精製すべきタンパク質を発現させるには、特定のタグの付加が必要であるかもしれない(たとえば融合タンパク質の生成)。細胞周期制御や低酸素性応答の関与などKIF23機能を評価するのに使用するアッセイのためのKIF23タンパク質を過剰発現させるには、これらの細胞活動が可能な真核細胞系中での発現が必要であるかもしれない。タンパク質を発現、生成、及び精製する方法は当分野で周知であり、したがって、任意の適切な手段を使用することができる(たとえば、Higgins SJ及びHames BD編、Protein Expression: A Practical Approach、Oxford University PressInc.、ニューヨーク、1999年; Stanbury PF他、Principles of Fermentation Technology、第2版、Elsevier Science、ニューヨーク、1995年; Doonan S編、Protein Purification Protocols、Humana Press、ニュージャージー、1996年; Coligan JE他、Current Protocols in Protein Science編、1999年、John Wiley & Sons、ニューヨーク)。具体的な実施態様では、組換えKIF23は、欠陥RHO機能を有することで知られている細胞系で発現される。この組換え細胞は、以下にさらに記載する本発明の細胞に基づくスクリーニングアッセイ系で使用する。
【0016】
KIF23ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、任意の適切な発現ベクター内に挿入することができる。プロモーター/エンハンサーエレメントを含めて必要な転写シグナル及び翻訳シグナルは、ネイティブKIF23遺伝子及び/又はそのフランキング領域由来のものでよく、また異種性のものでもよい。ウイルス(たとえばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)で感染させた哺乳動物細胞系;ウイルス(たとえばバキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母、あるいはバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNAで形質転換させた細菌などの微生物など、様々な宿主−ベクター発現系が利用できる。遺伝子産物の発現を変調させ、修飾し、及び/又は特異的にプロセッシングする単離された宿主細胞系を使用することができる。
KIF23遺伝子産物を検出するために、発現ベクターは、KIF23遺伝子の核酸に発現可能に連結されたプロモーター、1つ又は複数の複製起点、及び1つ又は複数の選択可能なマーカー(たとえばチミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性など)を含むことができる。あるいは、インビトロアッセイ系(たとえば免疫アッセイ)におけるKIF23タンパク質の物理的又は機能的特性に基づいてKIF23遺伝子産物の発現をアッセイすることによって、組換え発現ベクターを同定することもできる。
【0017】
たとえば精製又は検出を促進するために、KIF23タンパク質、断片、又はその誘導体を、任意選択で融合体又はキメラタンパク質産物(すなわち、KIF23タンパク質が異なるタンパク質の異種タンパク質配列にペプチド結合を介して結合されている)として発現させることができる。標準の方法を使用して所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を互いにライゲートさせ、キメラ産物を発現させることによって、キメラ産物を作製することができる。また、タンパク質合成技術、たとえばペプチド合成機の使用(Hunkapiller他、Nature、1984年、310:105-111)によってキメラ産物を作製することもできる。
KIF23遺伝子配列を発現する組換え細胞が同定された後は、標準の方法(たとえばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及びゲル排除クロマトグラフィー;遠心分離;溶解度差;電気泳動)を使用して遺伝子産物を単離及び精製することができる。あるいは、標準の方法(たとえば免疫親和性精製)によって、天然源から天然に生じたKIF23タンパク質を精製することができる。タンパク質を得た後は、免疫アッセイ、バイオアッセイ、又は結晶学など他の物理的特性の測定など適切な方法によってこれを定量し、その活性を測定することができる。
本発明の方法では、KIF23又はRHO経路に関連する他の遺伝子の発現が変化するように(異常発現されるように)操作した細胞を使用することもできる。本明細書中で使用する異常発現とは、異所性発現、過剰発現、過少発現、及び無発現(たとえば遺伝子のノックアウト又は通常は正常に引き起こされる発現の遮断による)を包含する。
【0018】
遺伝子改変動物
候補RHO調節剤の活性を試験するため、又は細胞死や細胞増殖などRHO経路のプロセスにおけるKIF23の役割をさらに評価するために、KIF23の発現が変化するように遺伝子が改変された動物モデルを、インビボアッセイで使用することができる。好ましくは、変化したKIF23の発現により、正常なKIF23発現を有する対照動物に比べて低減又は上昇した細胞増殖、血管新生、又は細胞死のレベルなど、検出可能な表現型がもたらされる。この遺伝子改変動物はさらに、RHO発現が変化していてもよい(たとえばRHOノックアウト)。好ましい遺伝子改変動物は、特に、霊長類、げっ歯類(好ましくはマウス又はラット)などの哺乳動物である。好ましい哺乳動物でない種には、ゼブラフィッシュ、線虫(C.elegans)、及びショウジョウバエが含まれる。好ましい遺伝子改変動物は、染色体外エレメントとして存在する異種核酸配列をその細胞の一部分内に有するトランスジェニック動物、すなわちモザイク動物(たとえば、Jakobovits、1994年、Curr. Biol.、4:761-763によって記載されている技術参照)、又は異種核酸が生殖系列DNA内(すなわち細胞のほとんど又はすべてのゲノム配列中)に安定に組み込まれているトランスジェニック動物である。異種核酸は、たとえば宿主動物の胚又は胚性幹細胞を遺伝子操作することによって、このようなトランスジェニック動物の生殖系列内に導入される。
【0019】
トランスジェニック動物を作製する方法は当分野で周知である(トランスジェニックマウスには、Brinster他、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、82:4438-4442、1985年、どちらもLeder他による米国特許第4,736,866号及び第4,870,009号、Wagner他による米国特許第4,873,191号、ならびにHogan, B.、Manipulating the Mouse Embryo、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1986年参照;パーティクルボンバードメントについては、Sandford他による米国特許第4,945,050号参照;トランスジェニックショウジョウバエについては、Rubin及びSpradling、Science、1982年、218:348-53及び米国特許第4,670,388号参照;トランスジェニック昆虫については、Berghammer A.J.他、A Universal Marker for Transgenic Insects、1999年、Nature、402:370-371参照;トランスジェニックゼブラフィッシュについては、LinS.、Transgenic Zebrafish、Methods Mol Biol.、2000年、136:375-3830参照);魚、両生類卵及び鳥でのマイクロインジェクションについては、Houdebine及びChourrout、Experientia、1991年、47:897-905参照;トランスジェニックラットについては、Hammer他、Cell、1990年、63:1099-1112参照;胚性幹(ES)細胞を培養し、その後、電気穿孔、リン酸カルシウム/DNA沈降、直接注入などの方法を使用してDNAをES細胞に導入することによるトランスジェニック動物の作製には、たとえばTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells, A practical Approach、E. J. Robertson編、IRL Press、1987年参照)。利用可能な方法に従って非ヒトトランスジェニック動物を作製することができる(Wilmut,I.他、1997年、Nature、385:810-813;PCT国際公開公報WO97/07668号及びWO97/07669号参照)。
【0020】
一実施態様では、このトランスジェニック動物は、好ましくはKIF23発現が検出不可能又は僅かとなるようにKIF23機能の低下をもたらす、内因性KIF23遺伝子の配列中のヘテロ接合性又はホモ接合性の変化を有する「ノックアウト」動物である。ノックアウト動物は通常、ノックアウトする遺伝子の少なくとも一部分を有する導入遺伝子を含むベクターを用いた相同組換えによって作製される。通常、導入遺伝子を機能的に破壊するために、これに欠失、追加、又は置換を導入しておく。この導入遺伝子はヒト遺伝子(たとえばヒトゲノムクローン由来)でもよいが、より好ましくは、トランスジェニック宿主種由来の、ヒト遺伝子のオルソログである。たとえば、マウスゲノム中の内因性KIF23遺伝子を変化させるのに適した相同組換えベクターを構築するためには、マウスKIF23遺伝子を使用する。マウスにおける相同組換えの詳細な方法が利用可能である(Capecchi、Science、1989年、244:1288-1292; Joyner他、Nature、1989年、338:153-156参照)。げっ歯類でない哺乳動物及び他の動物のトランスジェニックを作製する手順も、利用可能である(Houdebine及びChourrout、上掲;Pursel他、Science、1989年、244:1281-1288;Simms他、Bio/Technology、1988、6:179-183)。好ましい実施態様では、特定の遺伝子がノックアウトされたマウスなどのノックアウト動物を使用して、ノックアウトされた遺伝子のヒトでの対応物に対する抗体を産生させることができる(Claesson MH他、1994年、Scan J Immunol、40:257-264;DeclerckPJ他、1995年、J Biol Chem.、270:8397-400)。
別の実施態様では、このトランスジェニック動物は、たとえばKIF23の追加のコピーを導入することによって、又はKIF23遺伝子の内因性コピーの発現を変化させる制御配列を作用可能に挿入することによって、KIF23遺伝子の発現の変化(たとえば発現の増大(異所性の増大を含む)又は低減)をもたらす変化をそのゲノム中に有する「ノックイン」動物である。このような制御配列としては、誘発性であり、組織特異的で構成的なプロモーター及びエンハンサーエレメントが含まれる。このノックインは、ホモ接合性又はヘテロ接合性であることができる。
【0021】
導入遺伝子の発現を制限可能にする選択された系を含む非ヒト動物のトランスジェニックも、作製することができる。作製し得るこのような系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である(Lakso他、PNAS、1992、89:6232-6236;米国特許第4,959,317号)。導入遺伝子の発現を制御するためにcre/loxPリコンビナーゼ系を使用する場合、Creリコンビナーゼと選択されたタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が必要となる。このような動物は、たとえば、一方が選択されたタンパク質をコードする導入遺伝子を含み、他方がリコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含む2匹のトランスジェニック動物を交配させることによる「ダブル」トランスジェニック動物を作製することによって、提供することができる。リコンビナーゼ系の別の例は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyce scerevisiae)のFLPリコンビナーゼ系である(O'Gorman他、1991年、Science、251:1351-1355;米国特許第5,654,182号)。好ましい実施態様では、導入遺伝子の発現を制御するため、また同一細胞内でのベクター配列が順次削除されるように、Cre−LoxP及びFlp−Frtの両方が同一系内で使用される(SunX他、2000年、NatGenet、25:83-6)。
遺伝学の研究において欠陥RHO機能に関係する疾病及び疾患の動物モデルとして、また以下に記載するスクリーニングで同定されたものなど候補治療剤のインビボ試験のために、遺伝子改変動物を使用してRHO経路をさらに解明することができる。この候補治療剤をKIF23機能が変化した遺伝子改変動物に投与し、表現型の変化を、偽薬による処置を与えた遺伝子改変動物及び/又は候補治療剤を与えたKIF23発現が変化していない動物などの適切な対照動物と比較する。
【0022】
KIF23機能が変化した上述の遺伝子改変動物に加えて、欠陥RHO機能(及びそれ以外は正常なKIF23機能)を有する動物モデルを本発明の方法において使用することができる。たとえば、以下に記載するインビトロアッセイのうちの1つで同定された候補RHO調節剤の活性をインビボで評価するために、RHOノックアウトマウスを使用することができる。好ましくは、候補RHO調節剤をRHO機能に欠陥がある細胞を有するモデル系に投与した場合、モデル系において検出可能な表現型の変化がもたらされ、これにより、RHO機能が修復されている、すなわち細胞が正常な細胞周期進行を示していることが示される。
【0023】
調節剤
本発明は、KIF23の機能及び/又はRHO経路と相互作用し及び/又はこれを調節する作用剤を同定する方法を提供する。本方法により同定された調節剤もまた本発明の一部である。このような作用剤は、RHO経路に関連する様々な診断及び治療用途、ならびにKIF23タンパク質及びRHO経路におけるその寄与のより詳しい分析に有用である。したがって、本発明はまた、KIF23相互作用剤又は調節剤を投与することによってKIF23活性を特異的に調節する工程を含む、RHO経路を調節する方法も提供する。
ここで使用する「KIF23調節剤」とは、KIF23機能を調節する任意の薬剤、例えば、KIF23と相互作用してKIF23活性を阻害又は増強するか、或いは正常なKIF23機能にその他の影響を与える薬剤である。KIF23機能への影響は、転写、タンパク質発現、タンパク質の局在化、細胞活性又は細胞外活性を含め、いかなるレベルでもよい。好ましい実施態様では、KIF23調節剤はKIF23の機能を特異的に調節する。表現「特異的調節剤」、「特異的に調節する」などは、本明細書中では、KIF23ポリペプチド又は核酸に直接結合し、好ましくはKIF23の機能を阻害、増強、又は他の形で変化させる調節剤を言うために使用する。また、これらの用語は、(たとえば、KIF23の結合パートナーと、又はタンパク質/結合パートナー複合体と結合してKIF23機能を変化させることによって)KIF23と結合パートナー、基質、又はコファクターとの相互作用を変化させる調節剤も包含する。さらに好ましい実施態様では、KIF23調節剤はRHO経路のモジュレーターであり(例えばRHO機能を回復させる及び/又は上方制御する)、よってRHO調節剤でもある。
好ましいKIF23調節剤には、小分子化合物;KIF23相互作用タンパク質(抗体及び他の生物療法物質を含む);及びアンチセンスやRNA阻害剤などの核酸調節剤が含まれる。調節剤を、たとえば組合せ療法などにおけるような他の活性成分及び/又は適切な担体や賦形剤を含んでもよい組成物として、薬剤組成物中に配合してもよい。化合物を配合又は投与する技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、第19版に出ている。
【0024】
小分子モジュレーター
小分子は多くの場合、酵素機能を有し及び/又はタンパク質相互作用ドメインを含むタンパク質の機能を調節することが好ましい。当分野で「小分子」化合物と呼ばれる化学剤は通常、分子量が10,000以下、好ましくは5,000以下、より好ましくは1,000以下、最も好ましくは500ダルトン以下である有機非ペプチド分子である。このクラスのモジュレーターには、化学的に合成した分子、たとえばコンビナトリアル化学ライブラリからの化合物が含まれる。合成化合物は、既知又は推定KIF23タンパク質の特性に基づいて合理的に設計又は同定する、あるいは化合物ライブラリをスクリーニングすることによっても同定することができる。このクラスの代わりの適切なモジュレーターは、天然産物、特に、やはり化合物ライブラリをスクリーニングしてKIF23調節活性を探すことによって同定することができる、植物や真菌類など生物由来の二次代謝産物である。化合物を作製して得る方法は、当分野で周知である(Schreiber SL、Science、2000年、151:1964-1969; Radmann J及びGunther J、Science、2000、151:1947-1948)。
以下に記載するスクリーニングアッセイから同定された小分子モジュレーターをリード化合物として使用することができ、それから候補臨床化合物を設計し、最適化し、合成することができる。このような臨床化合物は、RHO経路に関連する病状を処置するのに有用であるかもしれない。候補小分子調節剤の活性は、以下にさらに記載する反復性の二次的な機能検証、構造決定、及び候補モジュレーターの改変及び試験によって、数倍改善されるかもしれない。さらに、候補臨床化合物は、臨床的及び薬理的特性に特に注意を払って作製される。たとえば、活性を最適化し、製薬開発における毒性を最小限に抑えるために、試薬を誘導体化し、インビトロ及びインビボアッセイを使用して再スクリーニングすることができる。
【0025】
タンパク質モジュレーター
特異的なKIF23相互作用タンパク質は、RHO経路及び関連疾患に関連する様々な診断上及び治療上の用途、ならびに他のKIF23調節剤の検証アッセイにおいて有用である。好ましい実施態様では、KIF23相互作用タンパク質は、転写、タンパク質の発現、タンパク質の局在化、細胞活性又は細胞外活性を含めた正常なKIF23機能に影響を与える。別の実施態様では、KIF23相互作用タンパク質は、癌などRHOに関連する疾患に関連性があるので、KIF23タンパク質の機能に関する情報を検出及び提供するのに有用である(たとえば診断上の手段用)。
KIF23相互作用タンパク質は、KIF23発現、局在化、及び/又は活性を調節するKIF23経路のメンバーなど内因性のもの、すなわちKIF23と自然に遺伝学的又は生化学的に相互作用するものであってよい。KIF23モジュレーターには、KIF23相互作用タンパク質及びKIF23タンパク質自体のドミナントネガティブの形が含まれる。酵母ツーハイブリッド及び変異体スクリーニングにより、内因性KIF23相互作用タンパク質を同定する好ましい方法が提供されている(Finley, R. L.他、1996年、DNA Cloning-Expression Systems: A practical Approach、Glover D.及びHames B.D編、Oxford University Press、英国オックスフォード、ページ169-203;Fashema SF他、Gene、2000年、250:1-14;DreesBL、Curr Opin Chem Biol、1999、3:64-70;VidalM及びLegrain P、Nucleic Acids Res、1999年、27:919-29;米国特許第5,928,868号)。タンパク質複合体を解明するための好ましい代替方法は、質量分析である(たとえば、Pandley A及びMann M、Nature、2000年、405:837-846;Yates JR 3rd、Trends Genet、2000年、16:5-8の総説)。
【0026】
KIF23相互作用タンパク質は、KIF23に特異的な抗体やT細胞抗原受容体などの外因性タンパク質でよい(たとえば、Harlow及びLane、1988年、Antibodies, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory; Harlow及びLane、1999年、Using antibodies: a laboratory manual.、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー:Cold Spring Harbor Loboratory Press参照)。KIF23抗体については以下でさらに論じる。
好ましい実施態様では、KIF23相互作用タンパク質はKIF23タンパク質に特異的に結合する。好ましい代替実施態様では、KIF23調節剤はKIF23基質、結合パートナー、又はコファクターと結合する。
【0027】
抗体
別の実施態様では、このタンパク質モジュレーターはKIF23に特異的な抗体アゴニスト又はアンタゴニストである。この抗体は治療上及び診断上の用途を有しており、KIF23モジュレーターを同定するスクリーニングアッセイで使用することができる。また、様々な細胞応答ならびにKIF23の通常のプロセッシング及び成熟を担当するKIF23経路の部分の分析においても、この抗体を使用することができる。
周知の方法を使用してKIF23ポリペプチドと特異的に結合する抗体を作製することができる。好ましくは、この抗体はKIF23ポリペプチドの哺乳動物オルソログ、より好ましくはヒトKIF23に、特異的である。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAbs)、ヒト化又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、FAb発現ライブラリによって産生された断片、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、及び上記のうちいずれかのエピトープ結合断片であってよい。たとえば、KIF23のアミノ酸配列に対する抗原性を探すための通常のKIF23ポリペプチドスクリーニングによって、又はこれに対するタンパク質の抗原性領域を選択する理論的な方法を施用することによって、特に抗原性であるKIF23のエピトープを選択することができる(Hopp及びWood、1981年、Proc. Nati. Acad. Sci. U.S.A.、78:3824-28; Hopp及びWood、1983年、Mol. Immunol.、20:483-89; Sutcliffe他、1983年、Science、219:660-66)。記載の標準手順によって、10−1、好ましくは10−1〜1010−1、又はそれより強力な親和性を有するモノクローナル抗体を作製することができる(Harlow及びLane、上掲; Goding、1986年、Monoclonal Antibodies: Principles and practice(第2版)、Academic Press、ニューヨーク;米国特許第4,381,292号;米国特許第4,451,570号;米国特許第4,618,577号)。KIF23の粗細胞抽出物又は実質的に精製されたその断片に対する抗体を作製することができる。KIF23断片を使用する場合は、これらは、好ましくはKIF23タンパク質の少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個の連続したアミノ酸を含む。特定の実施態様では、KIF23に特異的な抗原及び/又は免疫原は、免疫応答を刺激する担体タンパク質に結合している。たとえば、対象ポリペプチドはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体に共有結合しており、このコンジュゲートは免疫応答を増強させるフロイント完全アジュバント中で乳化されている。従来のプロトコルに従って実験ウサギやマウスなど適切な免疫系を免疫化する。
【0028】
固定した対応するKIF23ポリペプチドを使用した固相酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)など適切なアッセイによって、KIF23に特異的な抗体の存在をアッセイした。ラジオイムノアッセイや蛍光アッセイなど他のアッセイを使用することもできる。
異なる動物種由来の異なる部分を含む、KIF23ポリペプチドに特異的なキメラ抗体を作製することができる。たとえば、抗体の生物活性はヒト抗体由来であり、その結合特異性はマウス断片由来となるように、ヒト免疫グロブリン定常領域をマウスmAbの可変領域に連結させてもよい。それぞれの種由来の適切な領域をコードする遺伝子を継ぎ合わせることによってキメラ抗体を作製する(Morrison他、Proc. Natl. Acad. Sci.、1984、81:6851-6855; Neuberger他、Nature、1984、312:604-608;Takeda他、Nature、1985、31:452-454)。キメラ抗体の一形態であるヒト化抗体は、組換えDNA技術によって(Riechmann LM他、1988年、Nature、323:323-327)マウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク領域及び定常領域のバックグラウンドに移植することによって(Carlos, T.M.、J.M. Harlan、1994年、Blood、84:2068-2101)作製することができる。ヒト化抗体は10%以下のマウス配列及び90%以下のヒト配列を含み、それにより、抗体特異性を保持したままで免疫原性がさらに低下又は排除される(CoM S及びQueen C.、1991年、Nature、351:501-501;Morrison SL.、1992年、Ann. Rev. Immun.、10:239-265)。ヒト化抗体及びそれらを産生させる方法は当分野で周知である(米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号、及び第6,180,370号)。
【0029】
アミノ酸架橋によってFv領域の重鎖断片と軽鎖断片とを連結させて形成した組換え単鎖ポリペプチドであるKIF23特異的単鎖抗体を、当分野で周知の方法によって産生することができる(米国特許第4,946,778号;Bird、Science、1988年、242:423-426; Huston他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1988年、85:5879-5883; Ward他、Nature、1989、334:544-546)。
抗体を産生するための他の適切な技術は、リンパ球をインビトロで、抗原ポリペプチド、又は代わりにファージや類似のベクター中の選定抗体ライブラリに曝すことを含む(Huse他、Science、1989年、246:1275-1281)。本明細書中で使用するT細胞抗原受容体は、抗体モジュレーターの範囲内に含まれる(Harlow及びLane、1988年、上掲)。
【0030】
本発明のポリペプチド及び抗体は、改変して又は改変せずに使用することができる。多くの場合、検出可能なシグナルをもたらす基質又は標的タンパク質を発現する、細胞にとって毒性である基質を共有結合又は非共有結合のどちらかによって結合させることによって抗体を標識する(MenardS他、Int J. Biol Markers、1989、4:131-134)。幅広い種類の標識及びコンジュゲーション技術が知られており、科学文献及び特許文献のどちらにも広く報告されている。適切な標識には、放射性核種、酵素、基質、コファクター、阻害剤、蛍光部分(moiety)、蛍光発光ランタニド金属、化学発光部分、生物発光部分、磁気粒子などが含まれる(米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;第4,366,241号)。また、組換え免疫グロブリンを産生させてもよい(米国特許第4,816,567号)。膜貫通毒素タンパク質とコンジュゲートさせることによって細胞質ポリペプチドに対する抗体をその標的に送達し到達させることができる(米国特許第6,086,900号)。
患者で治療的に使用する場合は、可能な場合は標的部位に非経口的投与によって、又は静脈投与によって本発明の抗体を投与する。臨床研究によって治療上有効な用量及び投与計画を決定する。通常、投与する抗体の量は患者の重量1kgあたり約0.1mg〜約10mgである。非経口投与には、薬学的に許容されるベヒクルを含む単位用量の注射可能な形態(たとえば溶液、懸濁液、乳濁液)で抗体を配合する。このようなベヒクルは本質的に無毒性で治療作用がない。例えば、水、生理食塩水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、及び5%のヒト血清アルブミンである。また、不揮発性油、オレイン酸エチル、又はリポソーム担体などの非水性ベヒクルを使用してもよい。ベヒクルには、等張性や化学的安定性を高める又は他の形で治療の可能性を高める緩衝剤や保存料など少量の添加剤が含まれ得る。このようなベヒクル中の抗体濃度は、通常約1mg/ml〜約10mg/mlである。免疫療法的な方法は文献にさらに記載されている(米国特許第5,859,206;国際公開公報0073469号)。
【0031】
特異的バイオ治療薬
好ましい実施形態では、KIF23と相互作用するタンパク質はバイオ治療薬に使用できる。製薬的に許容可能な担体及び容量に調製されたバイオ治療剤を使用して、シグナル伝達経路を活性化又は阻害することができる。この調節は、リガンドに結合することにより経路の活性を阻害すること、又はレセプターに結合することによりレセプターの活性を阻害するか、又はレセプターを活性化することにより行われる。或いは、バイオ治療薬自体が、レセプターを活性化又は阻害できるリガンドである。バイオ治療剤及びその製造方法は、米国特許第6146628号に詳細に開示されている。
KIF23がリガンドである場合、それをバイオ治療剤として使用することにより、その天然レセプターを活性化又は阻害することができる。或いは、前述したように、SULFの抗体をバイオ治療剤として使用することができる。
KIF23がレセプターである場合、そのリガンド、リガンドに対する抗体又はKIF23自体をバイオ治療薬として使用することで、βカテニン経路におけるKIF23の活性を調節できる。
【0032】
核酸モジュレーター
他の好ましいKIF23調節剤としては、一般的にKIF23活性を阻害するアンチセンスオリゴマーや二本鎖RNA(dsRNA)などの核酸分子が含まれる。好ましい核酸モジュレーターは、DNAの複製、転写、タンパク質翻訳部位へのKIF23 RNAの転位、KIF23 RNAからのタンパク質の翻訳、KIF23 RNAをスプライシングして1つ又は複数のmRNA種を得ること、又はKIF23 RNAに関与し又はそれによって促進され得る触媒活性など、KIF23核酸の機能を妨げる。
一実施態様では、このアンチセンスオリゴマーは、好ましくは5’非翻訳領域に結合することによってKIF23 mRNAと結合して、翻訳を阻止するのに十分相補的なオリゴヌクレオチドである。KIF23に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも6〜約200個の範囲のヌクレオチドである。一部の実施態様では、このオリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも10、15、又は20ヌクレオチド長である。他の実施態様では、このオリゴヌクレオチドは、好ましくは50未満、40、又は30ヌクレオチド長である。このオリゴヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA、あるいはそのキメラ混合物や誘導体又はそれを改変した変形であり得る。このオリゴヌクレオチドの塩基部分、糖部分、又はリン酸主鎖を改変してもよい。このオリゴヌクレオチドは、ペプチド、細胞膜を横切る輸送を促進する作用剤、ハイブリダイゼーションによってトリガされる切断剤、インターカレーション剤など他の付属基を含んでいてもよい。
【0033】
別の実施態様では、このアンチセンスオリゴマーはホスホチオエートモルホリノオリゴマー(PMO)である。PMOは、それぞれがモルホリンの六員環に結合している4種の遺伝子塩基(A、C、G、又はT)のうちの1つを含む、4種の異なるモルホリノサブユニットから組み立てられている。これらサブユニットのポリマーは、非イオン性のホスホジアミデートサブユニット間の連結によって結合されている。PMO及び他のアンチセンスオリゴマーの詳細な作製方法及び使用方法は、当分野で周知である(たとえば、国際公開公報99/18193号;Probst JC、Antisense Oligodeoxynucleotide and Ribozyme Design, Methods.、2000年、22(3):271-281;Summerton J及びWeller D.、1997年、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、7:187-95;米国特許第5,235,033号;米国特許第5,378,841号参照)。
好ましい代替KIF23核酸モジュレーターは、RNA干渉(RNAi)を媒介する二本鎖RNA種である。RNAiは、動物及び植物における配列特異的な翻訳後の遺伝子サイレンシングプロセスであり、サイレンシングされる遺伝子と相同の配列をもつ二本鎖RNA(dsRNA)によって開始される。線虫、ショウジョウバエ、植物、及びヒトで遺伝子をサイレンシングするためのRNAiの使用に関する方法は、当分野で周知である(Fire A他、1998年、Nature、391:806-811;Fire, A.、Trends Genet.、15、358-363、1999年; Sharp, P.A.、RNA interference 2001.、Genes Dev.、15、485-490、2001年; Hammond, S.M.他、Nature Rev. Genet.、2、110-1119、2001年; Tuschl, T.、Chem. Biochem.、2、239-245、2001年;Hamilton, A.他、Science、286、950-952、1999年;Hammond, S. M.他、Nature、404、293-296、2000年; Zamore, P.D.他、Cell、101、25-33、2000年; Bernstein, E.他、Nature、409、363-366、2001;Elbashir, S.M.他、Genes Dev.、15、188-200、2001年;国際公開公報0129058号;国際公開公報9932619号; Elbashir SM他、2001年、Nature、411:494-498; Novina CD及びSharp P. 2004 Nature 430:161-164; Soutschek J等 2004 Nature 432: 173-178; Hsieh AC等 (2004) NAR 32(3):893-901)。
【0034】
核酸モジュレーターは一般的に、研究試薬、診断薬、治療薬として使用される。たとえば、遺伝子の発現を厳密な特異性で阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、しばしば特定の遺伝子の機能を解明するのに使用される(たとえば、米国特許第6,165,790号参照)。また、核酸モジュレーターは、たとえば生体経路の様々なメンバーの機能を識別するためにも使用される。たとえば、アンチセンスオリゴマーは、病態の動物及び人の処置における治療的部分として利用されてきており、安全かつ効果的であることが数々の臨床治験で実証されてきた(Milligan J F他、Current Concepts in Antisense Drug Design、J Med、Chem.、1993年、36:1923-1937;TonkinsonJL他、Antisense Oligodeoxynucleotides as Clinical Therapeutic Agents、Cancer Invest.、1996年、14:54-65)。したがって、本発明の一態様では、RHO経路におけるKIF23の役割、及び/又はKIF23とこの経路の他のメンバーとの関係をさらに解明するためのアッセイで、KIF23に特異的な核酸モジュレーターを使用する。本発明の別の態様では、RHOに関連する病態を処置する治療剤として、KIF23に特異的なアンチセンスオリゴマーを使用する。
【0035】
アッセイ系
本発明は、KIF23活性の特異的なモジュレーターを同定するアッセイ系及びスクリーニング方法を提供する。本明細書中で使用する「アッセイ系」とは、具体的な事象を検出及び/又は測定するアッセイを実施してその結果を分析するのに必要なすべての構成要素を包含する。一般的に、一次アッセイを使用して、KIF23核酸又はタンパク質に関するモジュレーターの特異的な生化学的効果又は分子効果を同定又は確認する。一般的に、二次アッセイでは、一次アッセイによって同定されたKIF23調節剤の活性がさらに評価され、この調節剤がRHO経路に関連する方式でKIF23に影響を与えることが確認されることもある。場合によっては、KIF23モジュレーターを直接二次アッセイで試験する。
好ましい実施態様では、スクリーニング方法は、候補剤が存在しなければスクリーニング方法で検出される特定の分子事象に基づく対照活性(たとえばキナーゼ活性)が系によってもたらされる条件下で、KIF23ポリペプチド又は核酸を含む適切なアッセイ系を候補剤と接触させることを含む。作用剤の影響を受ける活性と対照活性との統計的に有意な差により、この候補剤がKIF23活性を、したがってRHO経路を調節することが示される。アッセイに使用するKIF23ポリペプチド又は核酸は、上述の核酸又はポリペプチドのいずれを含んでもよい。
【0036】
一次アッセイ
一般的に、試験するモジュレーターの種類によって一次アッセイの種類が決まる。
【0037】
小分子モジュレーター用の一次アッセイ
小分子モジュレーターには、候補モジュレーターを同定するためにスクリーニングアッセイを使用する。スクリーニングアッセイは、細胞に基づくものでもよく、またこの標的タンパク質に関連する生化学的反応を再度引き起こさせる又は保持する無細胞系を使用してもよい(Sittampalam GS他、Curr Opin Chem Biol、1997年、1:384-91及び付随の参考文献に総説がある)。本明細書中で使用する用語「細胞に基づく(細胞ベースの)」とは、生細胞、死滅細胞、又は膜分画、小胞体分画、ミトコンドリア分画など特定の細胞分画を使用したアッセイを言う。用語「無細胞」とは、実質的に精製されたタンパク質(内因性又は組換えによって生成された)、部分的に精製した又は粗細胞抽出物を使用したアッセイを包含する。スクリーニングアッセイでは、タンパク質−DNA相互作用、タンパク質−タンパク質相互作用(たとえば受容体−リガンド結合)、転写活性(たとえばレポーター遺伝子)、酵素活性(たとえば基質の特徴を介するもの)、セカンドメッセンジャーの活性、免疫原性、及び細胞形態や他の細胞性特徴の変化を含めた様々な分子事象を検出することができる。適切なスクリーニングアッセイでは、蛍光、放射活性、比色、分光光度、及び電流滴定を含めた広範囲の検出方法を使用して、検出する具体的な分子事象の読出しを行うことができる。
通常、細胞に基づくスクリーニングアッセイには、KIF23を組換えによって発現する系及び個々のアッセイで要求される任意の補助タンパク質が必要である。組換えタンパク質を生じさせる適切な方法では、関連する生物活性を保持しており、活性を最適化してアッセイの再現性を保証するのに十分な純度のタンパク質が、十分な量で生成される。酵母ツーハイブリッドスクリーニング、変異体スクリーニング及び質量分析は、タンパク質−タンパク質相互作用を決定し、タンパク質複合体を解明する好ましい方法を提供する。ある種の用途では、小分子モジュレーターを同定するスクリーニングにKIF23相互作用タンパク質を使用する場合、KIF23タンパク質に対する相互作用タンパク質の結合特異性を、基質による処理(たとえば候補KIF23に特異的に結合する作用剤の、KIF23発現性細胞におけるネガティブエフェクターとして機能する能力)、結合平衡定数(通常少なくとも約10−1、好ましくは少なくとも約10−1、より好ましくは少なくとも約10−1)、免疫原性(たとえばマウス、ラット、ヤギ又はウサギなどの異種宿主中でKIF23に特異的な抗体を誘発する能力)など様々な周知の方法によってアッセイすることができる。酵素及び受容体について、結合はそれぞれ基質及びリガンドによる処理によってアッセイすることができる。
【0038】
スクリーニングアッセイでは、KIF23ポリペプチド、その融合タンパク質、又はこのポリペプチドもしくは融合タンパク質を含む細胞又は膜に特異的に結合する、あるいはその活性を調節する、候補剤の能力を測定することができる。KIF23ポリペプチドは、完全長のものでも、また機能的なKIF23活性を保持しているその断片でもよい。KIF23ポリペプチドは、検出又は固定用のペプチドタグあるいは別のタグなど別のポリペプチドに融合させてもよい。KIF23ポリペプチドは、好ましくはヒトKIF23、あるいは上記のようなそのオルソログ又は誘導体である。好ましい実施態様では、スクリーニングアッセイで、KIF23と内因性タンパク質、外因性タンパク質、又はKIF23に特異的な結合活性を有する他の基質などの結合標的との相互作用の候補剤に基づく変調を検出し、これを使用して正常なKIF23遺伝子機能を評価することができる。
KIF23モジュレーターを探すためのスクリーニングに適合させることのできる適切なアッセイ様式は、当分野で周知である。好ましいスクリーニングアッセイはハイスループット又はウルトラハイスループットであり、したがって、リード化合物用の化合物ライブラリをスクリーニングする、自動化された費用効果の高い手段を提供する(Fernandes PB、Curr Opin Chem Biol、1998年、2:597-603; Sundberg SA、Curr Opin Biotechnol、2000年、11:47-53)。好ましい一実施態様では、スクリーニングアッセイで、蛍光偏光、時間分解蛍光、蛍光共鳴エネルギー移動を含めた蛍光技術を使用する。これらの系は、色素で標識した分子から放出されたシグナルの強度がそのパートナー分子との相互作用に依存する、タンパク質−タンパク質又はDNA−タンパク質相互作用をモニターする手段を提供する(たとえば、Selvin PR、Nat Struct Biol、2000年、7:730-4; Fernandes PB、上掲; Hertzberg RP及びPope AJ、Curr Opin Chem Biol、2000年、4:445-451)。
候補KIF23及びRHO経路モジュレーターを同定するために様々な適切なアッセイ系を使用することができる(例えば、特に、米国特許第6,165,992号及び同第6,720,162号(キナーゼアッセイ)、同第5,550,019号及び6,133,437号(アポトーシスアッセイ)、国際公開第01/25487号(ヘリカーゼアッセイ)、米国特許第6,114,132号及び同第6,720,162号(フォスファターゼ及びプロテアーゼアッセイ)、同第5,976,782号、6,225,118号及び6,444,434号(血管新生アッセイ))。好ましい特異的なアッセイを以下に詳述する。
【0039】
膜結合タンパク質であるか、又は細胞間タンパク質である、重要なシグナル伝達タンパク質のプロテインキナーゼは、アデノシン3リン酸塩(ATP)から、タンパク質基質中のセリン、スレオニン又はチロシン残基へのガンマリン酸塩の伝達を触媒する。[ガンマ−32P又は−33P]ATPからのリン酸の伝達をモニターするラジオアッセイが、キナーゼ活性をアッセイするために頻繁に使用される。例えば、p56(lck)キナーゼ活性のシンチレーションアッセイは、[ガンマ−33P]ATPからビオチン化したペプチド基質へのガンマリン酸の転移をモニターする。基質はシグナルを伝達するストレプトアビジン被覆ビーズに捕らえられる(Beveridge M他、J Biomol Screen、(2000) 5:205-212)。このアッセイはシンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用する。SPAにおいては、SPAビーズの表面に拘束された受容体に結合したラジオリガンドのみが、内部に固定化されたシンチラントによって検出され、それによりフリーリガンドから結合体を分離することなく、結合を測定することができる。プロテインキナーゼ活性のほかのアッセイでは、リン酸化した基質を特異的に認識する抗体を使用できる。例えば、キナーゼレセプター活性化(KIRA)アッセイは、培養細胞中の無償レセプターを刺激するリガンドによりレセプターチロシンキナーゼ活性を測定し、次いで特異的抗体で可溶化されたレセプターを培養し、ホスホチロシンELISAによりリン酸化を定量化する(Sadick MD, Dev Biol Stand (1999) 97:121-133)。プロテインキナーゼ活性のための抗体に基づくアッセイの別の例は、TRF(時間分解蛍光光度法)である。この方法では、ユーロピウムキレート標識した抗ホスホチロシン抗体を利用してマイクロタイタープレートウェル上にコーティングされた重合体基質へのリン酸の転移を検出する。次いで、時間分解、乖離増強蛍光を使用してリン酸化の量を検知する(Braunwalder AF, 他, Anal Biochem 1996 Jul 1;238(2):159-64)。キナーゼのまた別のアッセイには脱共役pH感度アッセイがあり、これを使用して潜在的インヒビターのハイスループットスクリーニングを行うか、又は基質特異性を決定することができる。キナーゼが、水素イオンの放出により、γ−ホスホリル基の、ATPから適切なヒドロキシル受容器への移動を触媒することから、pH感度アッセイは、適合する緩衝液/指標システムを用いたこの水素イオンの検出に基づいている(Chapman EおよびWong CH (2002) Bioorg Med Chem. 10:551-5)。
【0040】
プロテインホスファターゼは、タンパク質基質内のセリン、スレオニン又はチロシン残基からのガンマリン酸塩の除去を触媒する。ホスファターゼはキナーゼとは反対の作用を有するので、適切なアッセイによりキナーゼアッセイと同じパラメータを測定する。一実施例では、蛍光標識したペプチド基質の脱リン酸化により、基質のトリプシン切断が可能となり、これにより切断された基質の蛍光性が有意に高まった(Nishikata M等、Biochem J (1999) 343:35-391)。別の実施例では、反応成分の固定又は分離を必要としない、溶液に基づく均一系技術である蛍光偏光法(FP)を用いてプロテインホスファターゼのハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを開発する。このアッセイは標的とホスファターゼとの直接結合を使用するもので、標的のホスファターゼの濃度を増大させると脱リン酸化率が上昇して偏光に変化が生じる(Parker GJ等、(2000)J Biomol Screen 5:77-88)。
プロテアーゼは、特定の部位でタンパク質基質を切断する酵素である。例示的アッセイは、プロテアーゼ媒介性の切断によって起こる人工基質のスペクトル特性の変化を検出する。一実施例では、2つの異なる蛍光タグを分離する、4つのアミノ酸タンパク質分解認識配列を含む合成カスパーゼ基質が用いられる。蛍光共鳴エネルギー転移は、これらフルオロフォアの近接を検出し、よって基質が切断されているかどうかを示す(Mahajan NP等、Chem Biol (1999) 6:401-409)。
【0041】
ヘリカーゼは、二本鎖DNA及びRNAの巻き戻しに関与している。一実施形態では、DNAヘリカーゼ活性のアッセイにより、巻き戻しの開始時に一本鎖DNAからの放射標識オリゴヌクレオチドの転置が検出される(Sivaraja M等、Anal Biochem (1998) 265:22-27)。RNAヘリカーゼ活性のアッセイでは、一本鎖RNAからの放射標識したオリゴヌクレオチドの置換を検出するためにシンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用する(Kyono K等、Anal Biochem (1998) 257:120-126)。
【0042】
ペプチジル−プロリル異性化酵素(PPIase)はシクロフィリン、FK506結合タンパク質及びparavulinを含み、オリゴペプチド内のシス−トランスのプロリンペプチド結合の異性化を触媒するもので、細胞内のタンパク質が合成される間の、タンパク質のフォールディングに不可欠であると考えられている。PPIase活性の分光光度アッセイは、異性体に特異的な吸光度を直接測定することにより、又はキモトリプシンによる異性体に特異的な切断への共役異性化により、標識されたペプチド基質の異性化を検出することができる(Scholz C等、FEBS Lett (1997) 4414:69-73; Janowski B等、Anal Biochem (1997) 252:299-307; Kullertz G等、Clin Chem (1998) 44:502-8)。別のアッセイでは、シンチレーション近接アッセイ又は蛍光偏光アッセイを使用して、特定のPPIaseのリガンドを探すスクリーニングを行う(Graziani F等、J Biolmol Screen (1999) 4:3-7; Dubowchik GM等、Bioorg Med Chem Lett (2000) 10:559-562)。3,2−トランス−エノイル−CoA異性化酵素活性のアッセイも文献に既知である(Binstock, J. F.及びSchulz, H. (1981) Methods Enzymol. 71:403-411; Geisbrecht BV等(1999)J Biol Chem. 274:41797-803)。これらのアッセイでは、基質として3−シス−オクテノイル−CoAを使用し、3−シス−オクテノイル−CoAの、2−トランス−オクテノイル−CoAへの異性化の共役アッセイを使用して反応の進行を分光光度的にモニターする。
ユビキチン化は、細胞内のタンパク質の選択的タンパク質分解に先立ち、当該タンパク質にユビキチンを付着させるプロセスである。ユビキチン化阻害剤のスクリーニングを行うための蛍光共鳴エネルギー転移が従来技術として既知である(Boisclair MD等、J Biomol Screen 2000 5:319-328)。
【0043】
ヒドロラーゼは、特にエステラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、ヌクレオチダーセ、及びホスファターゼなどの基質の加水分解を触媒する。酵素活性アッセイは、加水分解活性を測定するために使用することができる。酵素の活性は、反応産物の出現率を分光光度的に測定することにより、過剰基質の存在下で測定する。加水分解のアッセイ及びハイスループットアレイは、当分野の当業者に既知である(Park CB及びClark DS (2002) Biotech Bioeng 78:229-235)。
キネシンはモータータンパク質である。キネシンのアッセイは、Blackburn等(Blackburn CL等、(1999) J Org Chem 64:5565-5570)によって記載されたように、それらのATP分解酵素活性を利用する。ATP分解酵素アッセイは、EnzCheckATP分解酵素キット(Molecular Probes)を使用して行われる。このアッセイは、Ultraspec分光計(Pharmacia)を使用して行われ、360nmまで吸光度を増大させることにより反応の進行をモニタリングする。微小管(終濃度1.7mM )、キネシン(終濃度0.11mM)、インヒビター(又はDMSOブランク、終濃度5%)、及びEnzCheck成分(プリンヌクレオチドホスホリラーゼ及びMESG基質)を、反応緩衝液(40mMのPIPES(pH6.8)、5mMのパクリタキセル、1mMのEGTA、5mMのMgCl2)中のキュベット内で予め混合する。MgATP(終濃度1mM)を加えることにより反応を開始させる。
シンチレーション近接アッセイのような、脂肪酸合成に関与するシンターゼ酵素のハイスループットアッセイが、当技術分野の文献に既知である(He X等(2000)Anal Biochem 2000 Jun 15;282(1):107-14)。
【0044】
アポトーシスアッセイ。アポトーシス又はプログラムされた細胞死とは、細胞内部で自殺プログラムが起動されて、DNAの断片化、細胞質の収縮、膜の変化、及び細胞死が起こることである。アポトーシスは、カスパーゼファミリーのタンパク質分解酵素によって媒介される。細胞の多くの変更パラメータは、アポトーシスが起こる間に測定することができる。アポトーシスのアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼに媒介されたジゴキシゲニン−11−dUTPニックエンド標識(TUNEL)アッセイによって実施することができる。TUNELアッセイは、フルオレセイン−dUTPの取り込み(Yonehara他、1989、J. Exp. Med.、169、1747)を追跡することによって細胞死に特徴的な核DNAの断片化を測定すること(Lazebnik他、1994、Nature、371、346)に使用される。組織培養細胞のアクリジンオレンジ染色によってアポトーシスをさらにアッセイすることができる(Lucas, R.他、1998、Blood、15:4730-41)。その他の細胞に基づくアポトーシスアッセイには、カスパーゼ−3/7アッセイ及び細胞死ヌクレオソームELISAアッセイが含まれる。カスパーゼ−3/7アッセイは、多数のアポトーシス経路におけるプログラム細胞死の段階で発生する事象のカスケードの一部としてのカスパーゼ切断活性の活性化に基づいている。カスパーゼ3/7アッセイ(Promega社から市販されているApo−ONETM同種カスパーゼ−3/7、cat#67790)では、溶解緩衝液と基質を混合して細胞に添加する。カスパーゼ基質は活性のカスパーゼ3/7で切断すると蛍光性となる。ヌクレオソームELISAアッセイは、当技術分野の専門家に周知の通常の細胞死アッセイであり、市販されている(Roche社、Cat#1774425)。このアッセイは、DNAとヒストンそれぞれに対して方向付けられたモノクローナル抗体を使用することにより、特に細胞可溶化物の細胞質断片中のモノ及びオリゴヌクレオソームの量を決定する定量的サンドイッチ−酵素−イムノアッセイである。DNA断片化が原形質膜の崩壊の数時間前に起こり、細胞質中に蓄積されるという事実から、モノ及びオリゴヌクレオソームはアポトーシスの間に細胞質中で濃縮された。アポトーシスが起こっていない細胞の細胞質断片にヌクレオソームは存在しない。ホスホ−ヒストンH2Bアッセイは、アポトーシスの結果であるヒストンH2Bのリン酸化に基づく別のアポトーシスアッセイである。ホスホヒストンH2Bを伴う蛍光色素を使用して、アポトーシスに起因するホスホヒストンH2Bの増大を測定することが出来る。アポトーシスに関連する多数のパラメータを同時に測定するアポトーシスアッセイも開発されている。そのようなアッセイでは、抗体又は蛍光色素に関連付けることができ、アポトーシスの様々な段階を特徴づける様々な細胞パラメータを標識し、CellomicsTMArrayScan(登録商標)HCSシステムなどの装置を用いて結果を測定する。測定可能なパラメータ及びそれらのマーカーには、中間段階のアポトーシスを特徴づける抗活性カスパーゼ3抗体、アポトーシスの後期段階を特徴づける抗PARP−p85抗体(切断PARP)、核を標識し、初期アポトーシスの指標としての核膨張と、後期アポトーシスの指標としての核凝縮とを測定するために使用されるヘキスト標識、高い細胞膜透過性により死細胞のDNAを標識するTOTO−3蛍光色素、及び細胞の細胞骨格の変化を評価してTOTO−3標識と相関する抗αチューブリン又はF−アクチン標識が含まれる。これらのアッセイはまた、細胞周期における遺伝子の関与及び細胞形態の変化の評価に使用できる。
【0045】
アポトーシスアッセイ系は、KIF23を発現する細胞、及び任意選択で欠陥RHO機能を有する(たとえば、野生型細胞に比べてRHOが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。このアポトーシスアッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較したアポトーシスの誘発における変化により、候補RHO調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、無細胞系を使用して最初に同定された候補RHO調節剤を試験する二次アッセイとして、アポトーシスアッセイを使用することができる。また、KIF23機能がアポトーシスにおいて直接役割を果たすかどうかを試験するためにアポトーシスアッセイを使用することもできる。たとえば、野生型細胞に比べてKIF23を過剰発現又は過少発現する細胞でアポトーシスアッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した細胞死応答の差により、KIF23が細胞死応答において直接役割を果たすことが示唆される。アポトーシスアッセイは、米国特許第6,133,437号にさらに記載されている。
【0046】
細胞増殖及び細胞周期アッセイ。細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BRDU)の取り込みを介してアッセイすることができる。このアッセイでは、新しく合成されたDNAにBRDUが取り込まれることにより、DNAが合成されている細胞集団が同定される。その後、抗BRDU抗体を用いて(Hoshino他、1986年、Int. J. Cancer、38、369; Campana他、1988年、J. Immunol. Meth.、107、79)、又は他の手段によって、新しく合成されたDNAを検出することができる。
また、ヒストンH3のリン酸化による有糸分裂が起こった細胞集団を同定するホスホ−ヒストンH3染色によって細胞増殖をアッセイする。セリン10におけるヒストンH3のリン酸化は、ヒストンH3のセリン10残基のリン酸化形態に特異的な抗体を用いて検出される(Chadlee,D.N.1995,J.Biol.Chem270:20098-105)。また、[H]−チミジンの取り込みを使用して細胞増殖を検査することもできる(Chen, J.、1996年、Oncogene、13:1395-403;Jeoung, J.、1995年、J. Biol. Chem.、270:18367-73)。このアッセイにより、S期のDNA合成の定量的な特徴づけが可能になる。このアッセイでは、DNAを合成している細胞が新しく合成されるDNA中に[H]−チミジンを取り込む。その後、シンチレーション計数器(たとえば、Beckman LS 3800液体シンチレーション計数器)による放射性同位元素の計数など標準の技術によって取り込みを測定することができる。別の細胞増殖アッセイでは、染料アラマーブルー(Biosource Internationalより入手可能)を使用する。これにより、生存細胞が減少した際には、蛍光発光させて細胞数を間接的測定値を提供する(Voytik-Harbin SL他, 1998, InVitro Cell Dev Biol Anim 34:239-46)。また別の増殖アッセイであるMTSアッセイは、インビトロでの化成物の細胞障害性の評価に基づき、可溶性のテトラゾリウム塩であるMTSを使用する。MTSアッセイとして例えばPromega CellTiter96(登録商標)水溶性非放射性細胞増殖アッセイ(Cat.#G5421)などが市販されている。
【0047】
また、軟寒天中のコロニー形成、又はクローン原性生存アッセイによって細胞増殖をアッセイすることもできる(Sambrook他、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor、1989年)。たとえば、KIF23で形質転換させた細胞を軟寒天プレートに播種し、2週間インキュベートした後コロニーを測定して計数する。
細胞増殖は代謝的活性細胞の指標としてATPレベルを測定することによってもアッセイできる。このようなアッセイとしては、Promega社による発光同種アッセイであるCell Titer−GloTMなどが市販されている。
【0048】
フローサイトメトリーによって細胞周期における遺伝子の関与をアッセイすることができる(Gray JW他、1986年、Int J Radiat Biol Relat Stud Phys Chem Med、49:237-55)。KIF23で形質移入させた細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、細胞周期の異なる段階における細胞の蓄積を示すフローサイトメトリー(Becton Dickinsonから入手可能)で評価することができる。
【0049】
遺伝子の、細胞周期、細胞運動又は細胞形態への関与は、上述のように、CellomicsTMArrayScan(登録商標)HCSシステムを使用して更に評価することができる。細胞形態の評価のために更に測定可能なパラメータ及びマーカーは、蛍光ホスホ−コフィリンである。コフィリンは、LIMKによってリン酸化される、RHO経路の下流に関与する遺伝子である。LIMKレベルが低下するとホスホ−コフィリンが減少し、アッセイの蛍光ホスホ−コフィリンが減少する。発現パターンがLIMKの発現パターンと一致する遺伝子は、RHO経路のメンバーである。細胞運動性については、細胞を96ウェルプレートに蒔いた後、RNAi等の対象モジュレーターを用いて処理し、次いで蛍光微粒子を含むコラーゲンプレートに移す。プレートを交換した後、細胞を固定して、ローダミン−Alexa546を用いて染色し、HCSシステムを使用して運動性トラックを観察及び測定する。
したがって、細胞増殖、細胞運動、細胞形態、又は細胞周期アッセイ系は、KIF23を発現する細胞、及び任意選択で欠陥RHO機能を有する(たとえば、野生型細胞に比べてRHOが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。このアッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した細胞増殖又は細胞周期の変化により候補RHO調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、無細胞アッセイ系など別のアッセイ系を使用して最初に同定された候補RHO調節剤を試験する二次アッセイとして、細胞増殖又は細胞周期アッセイを使用することができる。また、KIF23機能が細胞増殖又は細胞周期において直接役割を果たすかどうかを試験するために細胞増殖アッセイを使用することもできる。たとえば、野生型細胞に比べてKIF23を過剰発現又は過少発現する細胞で細胞増殖又は細胞周期アッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した増殖又は細胞周期の差により、KIF23が細胞増殖又は細胞周期において直接役割を果たすことが示唆される。
【0050】
血管新生。臍帯、冠動脈、又は真皮細胞など様々なヒト内皮細胞系を用いて血管新生をアッセイすることができる。適切なアッセイには、増殖を測定するアラマーブルーに基づいたアッセイ(Biosource Internationalから入手可能);血管新生エンハンサー又はサプレッサーが存在する又は存在しない場合の細胞が膜を通り抜ける遊走を測定するBecton Dickinson Falcon HTS FluoroBlockセルカルチャーインサートの使用など蛍光分子を用いた遊走アッセイ;Matrigel(登録商標)(Becton Dickinson)上の内皮細胞による管状構造の形成に基づいた細管形成アッセイが含まれる。したがって、血管新生アッセイ系は、KIF23を発現する細胞、及び任意選択で欠陥RHO機能を有する(たとえば、野生型細胞に比べてRHOが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。この血管新生アッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した血管新生の変化により候補RHO調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、別のアッセイ系を使用して最初に同定された候補RHO調節剤を試験する二次アッセイとして、血管新生アッセイを使用することができる。また、KIF23機能が細胞増殖において直接役割を果たすかどうかを試験するために血管新生アッセイを使用することもできる。たとえば、野生型細胞に比べてKIF23を過剰発現又は過少発現する細胞で血管新生アッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した血管新生の差により、KIF23が血管新生において直接役割を果たすことが示唆される。特に、米国特許第5,976,782号、同第6,225,118号及び同第6,444,434号に様々な血管新生アッセイが記載されている。
【0051】
低酸素誘発。転写因子である低酸素誘発性因子−1(HIF−1)のαサブユニットは、インビトロで低酸素に曝した後に腫瘍細胞中で上方制御される。低酸素条件下では、HIF−1は、糖分解酵素やVEGFをコードする遺伝子など腫瘍細胞の生存に重要であることで知られている遺伝子の発現を刺激する。低酸素条件によるこのような遺伝子の誘発は、KIF23で形質移入させた細胞を(たとえばNapco7001インキュベーター(Precision Scientific)で発生させた0.1%のO2、5%のCO2、及び残りはN2を用いた)低酸素条件下及び正常酸素(normoxic)条件下で増殖させ、その後Taqman(登録商標)によって遺伝子の活性又は発現を評価することによってアッセイすることができる。たとえば、低酸素誘発アッセイ系は、KIF23を発現する細胞、及び場合によっては欠陥RHO機能を有する(たとえば、野生型細胞に比べてRHOが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。この低酸素誘発アッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した低酸素応答の変化により候補RHO調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、別のアッセイ系を使用して最初に同定された候補RHO調節剤を試験する二次アッセイとして、低酸素誘発アッセイを使用することができる。また、KIF23機能が低酸素応答において直接役割を果たすかどうかを試験するために低酸素誘発アッセイを使用することもできる。たとえば、野生型細胞に比べてKIF23を過剰発現又は過少発現する細胞で低酸素誘発アッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した低酸素応答の差により、KIF23が低酸素誘発において直接役割を果たすことが示唆される。
【0052】
細胞接着。細胞接着アッセイでは、候補調節剤が存在する又は存在しない場合の、細胞と精製した接着タンパク質との接着、又は細胞の相互接着を測定する。細胞−タンパク質接着アッセイでは、細胞が精製したタンパク質に接着することを調節する作用剤の能力を測定する。たとえば、組換えタンパク質を生成し、PBSで2.5g/mLまで希釈し、マイクロタイタープレートのウェルをコーティングするのに使用する。陰性対照で使用するウェルはコーティングしない。その後、コーティングしたウェルを洗浄し、1%のBSAで遮断し、再度洗浄する。化合物を2×最終試験濃度まで希釈し、ブロッキングし、コーティングしたウェルに加える。その後、細胞をウェルに加え、結合しなかった細胞を洗い流す。カルセイン−AMなど膜透過性蛍光色素を加えることによって保持された細胞をプレート上で直接標識し、蛍光マイクロプレート読取装置でシグナルを定量する。
細胞−細胞接着アッセイでは、天然で生じたリガンドとの細胞接着タンパク質の結合を調節する作用剤の能力を測定する。これらのアッセイには、天然に又は組換えによって選択した接着タンパク質を発現する細胞を使用する。例示的なアッセイでは、細胞接着タンパク質を発現している細胞をマルチウェルプレートのウェル内に植え付ける。リガンドを発現している細胞をBCECFなど膜透過性蛍光色素で標識し、候補剤の存在下で単層に接着させる。結合しなかった細胞を洗い流し、蛍光プレート読取装置を使用して結合した細胞を検出する。
【0053】
ハイスループット細胞接着アッセイも記載されている。このようなアッセイの1つでは、マイクロアレイスポッターを使用して小分子リガンド及びペプチドを顕微鏡スライドの表面に結合させ、その後、未処置の細胞をスライドと接触させ、結合しなかった細胞を洗い流す。このアッセイでは、細胞系に対するペプチド及びモジュレーターの結合特異性が決定されるだけでなく、付着した細胞の機能的細胞シグナル伝達も、マイクロチップ上で免疫蛍光技術をインサイツで使用して測定される(Falsey JR他、Bioconjug Chem.、2001年5-6月、12(3):346-53)。
【0054】
抗体モジュレーターの一次アッセイ
抗体モジュレーターでは、適切な一次アッセイ試験は、KIF23タンパク質に対する抗体の親和性及び特異性を試験する結合アッセイである。抗体の親和性及び特異性を試験する方法は当分野で周知である(Harlow及びLane、1988年、1999年、上掲)。KIF23に特異的な抗体を検出する好ましい方法は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である。他の方法には、FACSアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及び蛍光アッセイが含まれる。
場合によっては、小分子モジュレーターについて記載したスクリーニングアッセイも、抗体モジュレーターを試験するために使用できる。
【0055】
核酸モジュレーターの一次アッセイ
核酸モジュレーターでは、一次アッセイにより核酸モジュレーターがKIF23遺伝子の発現、好ましくはmRNAの発現を阻害又は増強する能力を試験し得る。一般的に、発現分析には、核酸モジュレーター存在下又は非存在下の細胞の類似集団(たとえば、内因的に又は組換えによってKIF23を発現する2種の細胞プール)中のKIF23発現を比較することが含まれる。mRNA及びタンパク質の発現を分析する方法は当分野で周知である。たとえば、ノーザンブロッティング、スロットブロッティング、RNA分解酵素保護、定量的RT−PCR(たとえばTaqMan(登録商標)、PE Applied Biosystemsを使用)、又はマイクロアレイ分析を使用して、核酸モジュレーターで処置した細胞中でKIF23 mRNAの発現が低減していることを確認することができる(たとえば、Current Protocols in Molecular Biology、1994年、Ausubel FM他編、John Wiley & Sons, Inc.、第4章; Freeman WM他、Biotechniques、1999年、26:112-125;Kallioniemi OP、Ann Med、2001年、33:142-147;Blohm DH及びGuiseppi-Elie、A Curr Opin Biotechnol、2001年、12:41-47)。タンパク質の発現をモニターすることもできる。タンパク質は、最も一般的にはKIF23タンパク質又は特異的なペプチドのどちらかに対する特異的な抗体又は抗血清を用いて検出される。ウエスタンブロッティング、ELISA、インサイツ検出を含めた様々な手段が利用可能である(Harlow E及びLane D、1988年及び1999年、上掲)。
場合によっては、特にKIF23 mRNA発現を伴うアッセイ系において、小分子モジュレーターについて記載したスクリーニングアッセイも核酸モジュレーターを試験するために使用できる。
【0056】
二次アッセイ
調節剤がRHO経路に関連する様式でKIF23に影響を与えることを確認するために、二次アッセイを使用して上記の任意の方法によって同定したKIF23調節剤の活性をさらに評価することができる。本明細書中で使用するKIF23調節剤は、以前に同定した調節剤から誘導した候補臨床化合物又は他の作用剤を包含する。また、二次アッセイを使用して、特定の遺伝的又は生化学的経路における調節剤の活性を試験する、あるいは調節剤がKIF23と相互作用する特異性を試験することもできる。
二次アッセイでは一般的に、候補モジュレーター存在下又は非存在下において、細胞や動物の類似集団(たとえば、内因的に又は組換えによってKIF23を発現する2種の細胞プール)を比較する。一般的に、このようなアッセイでは、候補KIF23調節剤を用いて細胞や動物を処置することにより、処置しない(あるいはモック処置又はプラシーボ処置)細胞や動物と比較してRHO経路に変化がもたらされるかどうかを試験する。特定のアッセイでは、「感作させた遺伝的バックグラウンド」を使用する。本明細書中で使用する「感作させた遺伝的バックグラウンド」とは、RHO又は相互作用する経路における遺伝子の発現が変化するように操作した細胞や動物を表す。
【0057】
細胞に基づいたアッセイ
細胞に基づいたアッセイでは内因性RHO経路活性を検出するか、あるいはこれはRHO経路構成要素の組換えによる発現に依存し得る。前述の任意のアッセイをこの細胞に基づいた形式で使用することができる。候補モジュレーターは、通常は細胞培地に加えるが、細胞に注入する又は任意の他の有効な手段によって送達してもよい。
【0058】
動物アッセイ
候補KIF23モジュレーターを試験するために、正常又は欠陥のあるRHO経路の様々な非ヒト動物のモデルを使用することができる。通常、欠陥RHO経路のモデルでは、RHO経路に関与する遺伝子が異常発現される(たとえば過剰発現又は発現が欠けている)ように操作された遺伝子改変動物を使用する。一般的に、アッセイには、経口投与、注入などによって候補モジュレーターを全身に送達する必要がある。
好ましい実施態様では、新脈管形成及び血管新生をモニターすることによってRHO経路の活性を評価する。Matrigel(登録商標)アッセイにおける、KIF23に対する候補モジュレーターの影響を試験するために、欠陥のあるRHO及び正常なRHOを有する動物モデルを使用する。Matrigel(登録商標)は基底膜タンパク質の抽出物であり、主にラミニン、コラーゲンIV、及びヘパリン硫酸プロテオグリカンから構成される。これは、4℃の無菌的な液体として提供されるが、37℃で迅速にゲルを形成する。液体のMatrigel(登録商標)を、bFGF及びVEGFなど様々な血管新生剤、又はKIF23を過剰発現するヒト腫瘍細胞と混合する。その後、激しい血管性応答をサポートするためにこの混合物を雌の無胸腺ヌードマウス(Taconic、ニューヨーク州ジャーマンタウン)に皮下注入(SC)する。Matrigel(登録商標)ペレットを有するマウスに、経口(PO)、腹腔内(IP)、又は静脈内(IV)経路で候補モジュレーターを投薬してもよい。注入後5〜12日にマウスを安楽死させ、ヘモグロビン分析のためにMatrigel(登録商標)ペレットを回収する(Sigma plasma hemoglobin kit)。ゲルのヘモグロビン含有量は、ゲル中の新脈管形成の程度と相関していることが判明した。
【0059】
別の好ましい実施態様では、KIF23における候補モジュレーターの効果を腫瘍形成アッセイによって評価する。腫瘍異種移植アッセイは、当技術分野において既知である(例えば、Ogawa K他,2000, Oncogene 19:6043-6052を参照)。異種移植片は、通常、既存の腫瘍由来又はインビトロ培養物由来のいずれかの単一細胞懸濁液として、6〜7週齢の雌の無胸腺マウスに皮下組織内投与にて移植される。内因的にKIF23を発現する腫瘍を、マウス1匹あたり1×10〜1×10個の細胞を100μLの体積で、27ゲージの針を用いて脇腹に注入する。その後、マウスの耳に札をつけ、週2回腫瘍を測定した。平均腫瘍重量が100mgに達した日に候補モジュレーターによる処置を開始した。候補モジュレーターは、大量瞬時投与によってIV、SC、IP、又はPOで送達される。それぞれの独特な候補モジュレーターの薬理動態に応じて、1日に複数回投薬を行うことができる。腫瘍の重量を、カリパーを用いて垂直直径を測定することによって評価し、2つの次元の直径の測定値を掛け合わせることによって計算した。実験の最後に、切除した腫瘍をさらなる分析用のバイオマーカーの同定に利用することができる。免疫組織化学染色では、異種移植腫瘍を4%のパラホルムアルデヒド、0.1Mのリン酸、pH7.2で6時間、4℃で固定し、PBS中30%のショ糖に浸し、液体窒素で冷却したイソペンタン中で迅速に凍結させる。
【0060】
別の好ましい実施態様では、ホローファイバーアッセイを使用して腫瘍形成能をモニターする。ホローファイバーアッセイは米国特許第5,698,413号に開示されている。要約すると、本方法は、実験動物に対し、標的細胞を含む生体適合性の半透明なカプセル封入器を埋め込むこと、実験動物を候補調節剤で処置すること、及び候補モジュレーターに対する反応について標的細胞を評価することを含む。埋め込まれる細胞は、通常、既存の腫瘍又は腫瘍細胞系由来のヒト細胞である。適当な時間、通常約6日を置いて、埋め込んだ細胞を回収し、候補モジュレーターの評価に使用する。腫瘍形成能とモジュレーターの有効性は、マクロカプセル中に存在する生細胞の量をアッセイすることにより評価してもよく、これは、当技術分野において既知の試験、例えばMTT染色変換アッセイ、ニュートラルレッド染色取り込み、トリパンブルー染色、生細胞計算、軟寒天中に形成されたコロニーの数、細胞の回復能及びインビトロでの複製能等により決定できる。
【0061】
別の好ましい実施態様では、腫瘍形成能アッセイは、組織特異的な制御配列の制御の下で、優性オンコジーン、又は腫瘍サプレッサー遺伝子ノックアウトを有するトランスジェニック動物、通常マウスを使用する。これらのアッセイは通常トランスジェニック腫瘍アッセイと呼ばれる。好ましい用途では、トランスジェニックモデルにおける腫瘍の進行の特徴づけ又は制御が良好に行われる。例示的なモデルでは、「RIP1−Tag2」導入遺伝子は、インスリン遺伝子制御領域の制御の下でSV40大型T抗原オンコジーンを有し、膵臓β細胞に発現し、結果的に島細胞悪性腫瘍となる(Hanahan D, 1985, Nature 315:115-122; Parangi S等, 1996, Proc Natl Acad Sci USA 93:2002-2007; Bergers G等, 1999, Science 284:808-812)。通常過剰増殖性の島細胞のサブセット中の静止毛細血管が血管新生性となるので、「血管新生スイッチ(angiogenicswitch)」は、約5週目に起こる。RIP1−TAG2マウスは14週で死亡する。候補モジュレーターは、血管新生スイッチの直前(例えば腫瘍予防のモデルの場合)、小規模腫瘍の成長期(例えば処置のモデルの場合)、又は大規模及び/又は浸潤性腫瘍の成長期(例えば退行のモデルの場合)を含め、様々な段階において投与できる。腫瘍形成能及びモジュレーターの有効性は、腫瘍の数、腫瘍の大きさ、腫瘍の形態、血管密度、アポトーシス指数などを含め、寿命延長及び/又は腫瘍特性の評価であってもよい。
【0062】
診断及び治療上の使用
特異的なKIF23調節剤は、疾病又は疾病予後が血管新生、アポトーシス、又は細胞増殖性疾患などRHO経路の欠陥に関連している様々な診断及び治療用途に有用である。したがって、本発明は、KIF23活性を特異的に調節する作用剤を細胞に投与する工程を含む、細胞、好ましくはRHO機能の欠陥又は不全(例えば、RHOの過剰発現、過少発現、又は誤発現、或いは遺伝子突然変異による)を有することが事前に確定されている細胞におけるRHO経路を調節する方法も提供する。好ましくは、調節剤は細胞中に検出可能な表現型の変化を生じさせ、これにより、RHO機能が修復されたことが示される。本明細書で使用する「機能が修復された」という表現、及びそれと同等の表現は、所望の表現型が達成されたか、又は未処理の細胞と比較した場合に正常に近づいたことを意味する。例えば、RHO機能が修復されると、細胞増殖及び/又は細胞周期の進行が正常化するか、又は未処理の細胞と比較した場合に正常に近づく。本発明はまた、RHO経路を調節するKIF23調節剤の治療的有効量を投与することによる、RHO機能不全に関連する疾患又は疾病の治療方法を提供する。さらに本発明は、KIF23調節剤を投与することによる、細胞、好ましくはKIF23機能の欠陥又は不全を有することが事前に決定されている細胞において、KIF23機能を調節する方法を提供する。これらに加えて、本発明は、KIF23調節剤の治療的有効量を投与することによる、KIF23機能不全に関連する疾患又は疾病の治療法を提供する。
KIF23がRHO経路に関係しているという発見により、RHO経路の欠陥を伴う疾病及び疾患の診断及び予後評価、ならびにこのような疾病及び疾患の素因を有する対象の同定に使用可能な様々な方法が提供される。
【0063】
特定の試料でKIF23が発現されるかどうかを診断するために、ノーザンブロッティング、スロットブロッティング、RNA分解酵素保護、定量的RT−PCR、及びマイクロアレイ分析など様々な発現分析方法を使用することができる(たとえば、Current Protocols in Molecular Biology、1994年、Ausubel FM他編、John Wiley & Sons, Inc.、第4章; Freeman WM他、Biotechniques、1999年、26:112-125; Kallioniemi OP、Ann Med、2001年、33:142-147; Blohm及びGuiseppi-Elie、Curr Opin Biotechnol、2001年、12:41-47)。KIF23を発現する欠陥RHOシグナル伝達に関係する疾病又は疾患を有する組織は、KIF23調節剤を用いた処置に影響を受けやすいことが同定されている。好ましい用途では、RHO欠陥組織は正常組織に比べてKIF23を過剰発現する。たとえば、完全又は部分KIF23 cDNA配列をプローブとして使用した、腫瘍及び正常細胞系由来、又は腫瘍及び同一患者からの対応する正常組織試料由来のmRNAのノーザンブロット分析により、特定の腫瘍がKIF23を発現又は過剰発現するかどうかを決定することができる。あるいは、細胞系、正常組織及び腫瘍試料中のKIF23発現の定量的RT−PCR分析のために、TaqMan(登録商標)を使用する(PE Applied Biosystems)。
たとえばKIF23オリゴヌクレオチドなどの試薬、及びKIF23に対する抗体を利用して、上に記載した(1)KIF23遺伝子変異の存在の検出、又は疾患でない状態と比較したKIF23 mRNAの過剰発現又は過少発現のいずれかの検出、(2)疾患でない状態と比較したKIF23遺伝子産物の過剰存在又は過少存在のいずれかの検出、ならびに(3)KIF23に媒介されたシグナル伝達経路における摂動又は異常の検出のために、様々な他の診断方法を実施することができる。
【0064】
KIF23に特異的な抗体を少なくとも1つ、抗体の検出や抗体の固定化等に適する全ての試薬及び/又は装置、並びにそのようなキットを診断又は治療に使用する際の指示書を備えた、様々な試料中のKIF23の発現を検出するキットもまた提供される。
したがって、特定の実施態様では、本発明は、(a)患者から生体試料を得ること、(b)試料をKIF23発現用のプローブと接触させること、(c)工程(b)からの結果を対照と比較すること、及び(d)工程(c)が疾病又は疾患の可能性を示しているかどうかを決定することを含む、KIF23発現の変化と結び付けられる患者の疾病又は疾患を診断する方法を対象としている。好ましくは、この疾病は癌であり、最も好ましくは表2に示す癌である。プローブは、DNA又は抗体を含めたタンパク質のどちらであってもよい。
【実施例】
【0065】
以下の実験セクション及び実施例は、限定ではなく例示のために提供するものである。
【0066】
I.線虫RHOのスクリーニング
Rho経路機能の遺伝子モディファイヤーを同定するために、特定の遺伝子のRNAiを用いる線虫遺伝子スクリーニングを設計した。rho−1(RNAi)動物の表現型異常と同様の異常を示す変異体を、少しの発現低減により得られることから、Ect2−コード化遺伝子であるlet−21を、Rho経路のシグナル伝達の遺伝的エントリーポイントとして選択した。rho−1(RNAi)と同様に、let−21対立遺伝子であるoz93の弱い発現低減は、細胞質分裂及び核/細胞質分配の不全、並びに生殖細胞が減数分裂前期の太糸期より先に進行することを妨げる減数分裂周期異常を含む、複数の経路−診断欠陥を特徴とする生殖不能表現型を引き起こす。それよりも強い発現低減が起こっているlet−21変異体、el778もこれらの表現型を示す。しかしながら、より強い発現低減が起こっている変異体は、Ect2の弱い発現低減変異体には見られない2つの体細胞の表現型、即ち産卵口の隆起(Pvl)を示す表現型及び非強調的(Unc)運動を示す表現型も示す。遺伝子スクリーニングの基礎として、本発明者らは、任意の生物学的経路における弱い機能低下型変異体が、往々にして経路の別の場所において混乱を伴う遺伝子的相乗作用を示すという遺伝的原理を利用した。let−21(oz93)の弱い発現低減が起こっている変異体は、他の特定の既知のRho経路成分と組み合わせたときに実証されるように、前記の挙動を示す。例えば、let−2(oz93)とrho−1(RNAi)の組み合わせは、let−21(oz93)又はrho−1(RNAi)のみに観察されるものより遥かに浸透性の強いPvl及びUnc表現型(let−21の強い発現低減が起こっている変異体と同様の)を示す。これと同様の遺伝子的相乗作用は、rho−1の上流又は下流で機能する哺乳類の対応物を持つ他の遺伝子にも観察される。これらは、Rhoキナーゼ(let−502)、MGCRacGAP(cyk−4遺伝子)の線形動物のオルソログ;非筋細胞ミオシン重鎖II(nmy−2)、ミオシン軽鎖(MLC−2)及びフォミンタンパク質(cyk−1)の遺伝子を含む。これらの遺伝子の相互作用の表現型に基づいて、本発明者らは、let−21(oz93)変異体を用いた大規模なエンハンサースクリーニングにより、Rho/Ect2経路のシグナル伝達を促進するという正常機能を有する追加の新規遺伝子が同定されると仮定した。
【0067】
このlet−21/Ect2エンハンサースクリーニングでは、遺伝的に最適化されたlet−21(oz93)系を、約3100の線虫遺伝子について作成された二本鎖RNA(dsRNA)のライブラリと組み合わせて使用した。RNAライブラリに示された遺伝子は、PFAM検索及び線虫遺伝子情報のデータベース(例えば、WromBase、Worm Proteosome Database)のアノテーションなどの情報科学的方法によって決定される、酵素ドメインを含むか否かに優先的に基づいて選択された。let−21(oz93)系は、遺伝子型let−21(oz93)sqt−1(scl3)/mnC1;eri−1(mg366)の遺伝子的に平衡した系である。この系は、そのRoller行動表現型(sqt−1変異体によって付与される)により認識することができるlet−21とsqt−1との二重ホモ接合体と、非Rollerであるlet−21とsqt−1/++とのヘテロ接合体の両方を分離する。mnC1染色体逆位は、組換えを妨げ、一方eri−1変異体はRNAiに対する感受性を亢進する(Kennedy S等(2004)Nature 427(6975):645-649)。
遺伝子スクリーニングでは、let−21(oz93)ホモ接合体とヘテロ接合体の混合物を前幼虫休眠期(L1 diapose)で回収し、個々の遺伝子に対応するdsRNAの3.5×容積を用いて200℃で24時間インキュベートした後、線虫類成長プレート上に広げた。3〜4日後、Pvl及び/又はUnc表現型を示す虫の存在についてプレートのスコア付けを行った。各表現型を示す虫の適正な割合を、let−21のホモ接合体とヘテロ接合体について別々に決定した。let−21(oz93)ホモ接合体が、let−21(oz93)へテロ接合体と比較して有意に高い頻度でPvl及び/又はUnc表現型を発現する場合、遺伝子がlet−21と遺伝子的相乗作用を示すというスコア付けを行った。修正したTest Stat関数(Test Stat=[画分変異体let−21(oz93)+画分変異体遺伝子X(RNAi)動物]/平方根(全体の不変性);pはTest Stat値の二乗を2で除したもののカイ二乗分布として決定される)により、遺伝子相乗作用の統計的有意性(p<0.05)を決定した。
【0068】
このスクリーニングにより、Pvl表現型のみ又はPvl及びUnc表現型の両方について、let−21(oz93)との有意な遺伝子相乗作用を示した遺伝子が同定された。スクリーニングで得られた20のモディファイヤーが、刊行物においてRho、Rac、又はCDC42に関与するシグナル伝達経路に関連付けられた産物を有する哺乳類の遺伝子と相同であるという観察により、スクリーニングの部分的検証が行われた。追加的な経路の検証方法として、2つの遺伝子二次アッセイを設計し、モディファイヤーの試験に使用した。その1つでは、位置12にグリシンからバリンへの置換を含む構成的に活性化したrho−1導入遺伝子が構築され、この導入遺伝子は、発達中の産卵口細胞に発現を誘導するlin−31プロモーターの制御下にある虫において発現された。ゲノムに組み込まれたこの導入遺伝子を含む系は、(rrf−3 RNAi過敏性背景において)約80%の浸透性を有する多産卵口表現型を発現した。スクリーニングで得られた12のモディファイヤーからなるサブセットは、活性化されたrho−1表現型を部分的に抑制した。このことは、遺伝子レベルで、これらの遺伝子がrho−1の下流で(又はrho−1と平行して)機能することを示した。二次遺伝子検証アッセイでは、ミオシン軽鎖リン酸コード化遺伝子の温度感受性変異体、mel−11を使用した。この変異体、mel−11(it26)は、rho−キナーゼ(let−502)、ミオシン重鎖(nmy−1)又はミオシン軽鎖(mlc−4)の線虫オルソログのRNAiによって強く抑制されるが、Rho(rho−1)又はEct2(let021)のRNAiによっては抑制されない胚性致死性の表現型を示した。このような差異的な感受性に基づき、mel−11(it26)の抑制は、Rock/非筋細胞ミオシンシグナル伝達経路内においてrho−1の下流で作用する遺伝子を同定すると思われる。
【0069】
II.表1の分析
BLAST分析(Altschul等、上掲)を使用して線虫モディファイヤーのオルソログを同定した。「MRHOの記号」、及び「MRHOの別名」の欄には、Genbankにおける標的の記号及び既知の略称を記載した(存在する場合のみ)。「MRHO RefSeq_NA又はGI_NA」、「MRHO GI_AA」、「MRHOの名称」及び「MRHOの説明」には、国立バイオロジー情報センター(NCBI)から入手できるMRHOの標準的なDNA配列、MRHOタンパク質のGenbank識別番号(GI#)、MRHOの名称及びMRHOの説明を記載する。これらは全てGenbankから入手可能である。各アミノ酸の長さは「MRHOタンパク質長」の欄に示した。
スクリーニングで得られたRHOの線虫モディファイヤーの名称及びタンパク質配列(実施例1)は、それぞれ「モディファイヤーの名称」及び「モディファイヤーGI_AA」の欄にGI#によって示した。
表1

【0070】
III.キナーゼアッセイ
精製したか、部分的に精製したKIF23を、適切な反応緩衝液(例えば、塩化マグネシウム又は塩化マンガン(1−20mM)、及びミエリン塩基性タンパク質又はカゼインなどのペプチド又はポリペプチド基質(1−10μg/ml)を含むpH7.5の50mM Hepes)に希釈する。キナーゼの最終的な濃度は1−20nMである。酵素反応をマイクロタイタープレートで行い、アッセイのスループットを増大させることにより反応条件の最適化を促進する。96ウェルのマイクロタイタープレートを用い、最終容量を30−100μlとする。33PγATP(0.5μCi/ml)を加えて反応を開始させ、0.5から3時間室温でインキュベートする。EDTA付加によりネガティブコントロールを行い、それにより酵素活性に必要な二価カチオン(Mg2+又はMn2+)をキレート化する。インキュベーション後、EDTAを使用して酵素反応を消光させる。反応物の試料を96ウェルのガラフファイバーフィルタプレート(MultiScreen,Millipore)に移す。続いてフィルタをリン酸緩衝整理食塩水、希釈したリン酸(0.5%)、又はその他適切な媒体で洗浄し、過剰なラジオ標識ATPを除去する。シンチレーションカクテルをフィルタプレートに添加し、シンチレーションカウンティングにより取り込まれた放射能を定量化する(Wallac/PerkinElmer)。活性は、ネガティブコントロール反応値(EDTAクエンチ)の差引き後に検出される放射能の量と定義する。
【0071】
IV.発現分析
以下の実験で使用したすべての細胞系はNCI(米国立癌センター)の系であり、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション、バージニア州マナサス、20110-2209)から入手可能である。正常組織及び腫瘍組織は、Impath、UC Davis、Clontech、Stratagene、Ardais、Genome Collaborative及びAmbionから得た。
様々な試料中における開示した遺伝子の発現レベルを評価するために、TaqMan(登録商標)分析を使用した。
【0072】
Qiagen(カリフォルニア州バレンシア)のRNeasy kitを使用し、製造者のプロトコルに従って各組織試料からRNAを抽出して最終濃度50ng/μlにした。その後、ランダムヘキサマー及び1反応当たり500ngの全RNAを使用して、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)のプロトコル4304965に従ってRNA試料を逆転写させることによって一本鎖cDNAを合成した。
TaqMan(登録商標)プロトコルならびに以下の基準に従って、TaqMan(登録商標)アッセイ(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティー)を使用した発現分析用のプライマーを調製した。その基準は、a)ゲノムの混入を排除するために、イントロンにまたがるようにプライマーの対を設定すること、及びb)各プライマーの対が1つの産物のみを生成することである。発現分析は7900HT機器を使用して行った。
【0073】
製造者のプロトコルに従って、300nMのプライマー及び250nMのプローブならびに約25ngのcDNAを、96ウェルプレートでは25μlの全体積、384ウェルプレートでは10μlの全体積で使用して、TaqMan(登録商標)反応を実施した。標的が大量に存在する可能性が高くなるように広範囲の組織由来のcDNAを含む混合物である、ヒトcDNA試料のユニバーサルプール(universalpool)を使用して結果分析用の標準曲線を作成した。18SrRNA(すべての組織及び細胞中で普遍的に発現される)を使用して生データを正規化した。
それぞれの発現分析について、腫瘍組織試料を、同一患者からの対応する正常組織と比較した。対応する正常試料と比べて腫瘍中の遺伝子発現レベルが2倍以上高い場合に、ある遺伝子は腫瘍中で過剰発現されているとみなされる。正常組織が入手可能でない場合は、cDNA試料のユニバーサルプールを代わりに使用する。これらの場合では、腫瘍試料と同じ組織タイプからのすべての正常試料の平均との発現レベルの差が、すべての正常試料の標準偏差の2倍を超える場合(すなわち、腫瘍−平均(すべての正常試料)>2×STDEV(すべての正常試料))に、遺伝子は腫瘍試料中で過剰発現されているとみなされる。
【0074】
結果を表2に示す。各腫瘍種類について、同一患者から採取した腫瘍試料と一致する正常組織の対の数を示す。また、各腫瘍種類について、少なくとも二倍の過剰発現を示した試料の割合を示す。遺伝子が過剰発現されている腫瘍に投与することによって、本明細書中に記載したアッセイによって同定されたモジュレーターの治療上の効果をさらに検証することができる。腫瘍増殖の低下により、モジュレーターの治療上の有用性が確認される。患者から腫瘍試料を得、モジュレーターが標的としている遺伝子の発現をアッセイすることによって、モジュレーターを用いて患者を処置する前に患者が処置に応答する可能性を診断することができる。この遺伝子(又は複数の遺伝子)の発現データも、疾病の進行を診断する上でのマーカーとして使用することができる。このアッセイは、上記の発現分析によって、遺伝子標的に対する抗体によって、又は任意の他の利用可能な検出方法によって実施することができる。
表2

KIF23は、乳腫瘍、乳基底腫瘍、乳管腔腫瘍、大腸AC腫瘍、頭部/頚部腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、肺LCLC腫瘍、肺SCC腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、皮膚腫瘍、胃腫瘍、及び子宮腫瘍において強く発現した(P<0.001)。KIF23は、大腸腫瘍、肺AC3腫瘍、肺SCLC腫瘍及びリンパ腫において過剰発現した(0.05>P>0.001)。KIF23は、腎臓腫瘍においては低発現した(0.05>P>0.001)。
【0075】
V.KIF23機能アッセイ
RNAiの実験を行い、低分子干渉RNAを用いて様々な細胞株におけるKIF23配列の発現をノックダウンした(siRNA, Elbashir等、上掲)。以下の細胞株を実験に使用した:A549肺癌細胞、MBA−MB231T乳癌細胞、HCT116結腸直腸癌細胞、A2780ヒト卵巣癌細胞及びHELA子宮頸癌細胞。
【0076】
細胞増殖及び成長に対するKIF23RNAiの影響。上述のように、BrdU、カスパーゼ3、及びCell Titer−GloTMアッセイを使用して、細胞増殖に対するKIF23発現の低下の影響を研究した。
結果:KIF23のRNAiは、試験した全ての細胞株において細胞増殖を低減させた。
上述のように、標準コロニー成長アッセイを使用して、細胞成長に対するKIF23発現低下の影響を研究した。
結果:KIF23のRNAiは、試験した全ての細胞株において増殖を低減させた。
【0077】
アポトーシスに対するKIF23 RNAiの影響。
上述のように、更に多重パラメータアポトーシスアッセイを用いて、カスパーゼ3切断読み取りを使用し、アポトーシスに対するKIF23発現の低下の影響を研究した。
この実験の結果、KIF23のRNAiにより、試験した全ての細胞株においてアポトーシスが増大することが示された。
【0078】
転写レポーターアッセイ。更に、様々な転写因子の発現に対するKIF23の過剰発現の影響を研究した。このアッセイでは、ラット腸上皮細胞(RIE)又はNIH3T3細胞を、KIF23と共に様々な転写因子を含むレポーターコンストラクト及びルシフェラーゼを用いて形質移入した。次いで、KIF23の過剰発現に起因する転写活性の読み取りとしてルシフェラーゼの強度を測定した。KIF23の過剰発現は、AP1、NFKB、及びSRE(血清応答配列)を活性化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)KIF23ポリペプチド又は核酸を含むアッセイ系を提供する工程と、
(b)試験剤が存在しない場合に系により対照活性がもたらされる条件下で、アッセイ系を試験剤と接触させる工程と、
(c)試験剤の影響を受けたアッセイ系の活性を検出し、試験剤の影響を受けた活性と対照活性との差により試験剤を候補RHO経路調節剤として同定する工程と
を含む、候補RHO経路調節剤を同定する方法。
【請求項2】
アッセイ系がKIF23ポリペプチドを発現する培養細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養細胞がさらに欠陥RHO機能を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アッセイ系がKIF23ポリペプチドを含むスクリーニングアッセイを含み、候補試験剤が小分子モジュレーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アッセイが結合アッセイである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アッセイ系が、アポトーシスアッセイ系、細胞増殖アッセイ系、及び血管新生アッセイ系からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アッセイ系がKIF23ポリペプチドを含む結合アッセイを含み、候補試験剤が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アッセイ系がKIF23核酸を含む発現アッセイを含み、候補試験剤が核酸モジュレーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
核酸モジュレーターがアンチセンスオリゴマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
核酸モジュレーターがPMOである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(d)(c)で同定された候補RHO経路調節剤を、RHO機能に欠陥がある細胞を含むモデル系に投与し、RHO機能が修復されたことを示すモデル系における表現型の変化を検出する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
モデル系が欠陥RHO機能を有するマウスモデルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
RHO機能に欠陥がある細胞を、KIF23ポリペプチドと特異的に結合する候補モジュレーターと接触させることを含み、それによりRHO機能が修復される、細胞のRHO経路を調節する方法。
【請求項14】
RHO機能の欠陥に起因する疾病又は疾患を有することが事前に確定されている脊椎動物に候補モジュレーターを投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
候補モジュレーターが抗体及び小分子からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
(d)KIF23を発現している非ヒト動物又は培養細胞を含む二次アッセイ系を提供する工程と、
(e)二次アッセイ系を(b)の試験剤又はそれから誘導した作用剤と、試験剤又はそれから誘導した作用剤が存在しない場合に二次アッセイ系により対照活性がもたらされる条件下で接触させる工程と、
(f)作用剤の影響を受けた第2アッセイ系の活性を検出する工程
をさらに含み、作用剤の影響を受けた第2アッセイ系の活性と対照活性との差により試験剤又はそれから誘導した作用剤が候補RHO経路調節剤であることが同定される方法であり、
ここでの第2アッセイが作用剤の影響を受けたRHO経路における変化を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
二次アッセイ系が培養細胞を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
二次アッセイ系が非ヒト動物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
非ヒト動物がRHO経路の遺伝子を異常発現する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物の細胞をKIF23ポリペプチド又は核酸と特異的に結合する作用剤と接触させることを含む、哺乳動物細胞においてRHO経路を調節する方法。
【請求項21】
RHO経路に関連する病状を有することが事前に確定されている哺乳動物に作用剤を投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
作用剤が小分子モジュレーター、核酸モジュレーター、又は抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
(a)患者から生体試料を得て、
(b)試料をKIF23発現用のプローブと接触させ、
(c)工程(b)の結果を対照と比較して、
(d)工程(c)が疾病の可能性を示しているかどうかを決定する
ことを含む、患者の疾病を診断する方法。
【請求項24】
前記疾病が癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、表2に示すように25%より高い発現レベルの癌である、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2009−515527(P2009−515527A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540228(P2008−540228)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/043865
【国際公開番号】WO2007/058977
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(504408797)エクセリクシス, インク. (65)
【Fターム(参考)】