説明

RNA合成のためのチオ炭素保護基

本発明の態様は、2’部位でチオ炭素保護基によって保護されている2’保護ヌクレオシドモノマーを含む。対象とするチオ炭素保護基には、チオカーボネート、チオノカーボネート、ジチオカーボネート基、およびチオノカルバメート保護基が含まれる。本発明の態様は、本発明の保護基を含む核酸、および本発明の保護基を使用した核酸の合成方法をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照文献
本出願は、米国特許法第119条(e)によって、2007年5月10日に出願された先の米国仮出願第60/928,722号の利益を主張し、該出願の開示は参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
[序論]
RNAの化学合成は、リボース中の2’−ヒドロキシル基が化学合成の間に保護されなくてはならないため、DNAの化学合成よりもはるかに困難な課題である。保護された2’−ヒドロキシルがヌクレオチド間ホスフェートに近接していることは、ヌクレオチド間連結の形成、およびオリゴリボヌクレオチドが合成されたときの、2’−保護基の除去の両方に関して問題を提起する。さらに、RNA中のヌクレオチド間結合は、DNAのそれよりもよりはるかに不安定である。
【0003】
最近まで、RNA合成への典型的なアプローチは、5’−ヒドロキシル基が酸に不安定なジメトキシトリチル(DMT)保護基(伸張しているオリゴリボヌクレオチドへのカップリング後に酸性条件下にて除去することができる)によって保護されているリボヌクレオシドモノマーを利用した。酸脱保護ステップの間のヌクレオチド間結合の異性化および切断を防ぐために、様々な酸に安定性の保護基が2’−ヒドロキシル上に置かれてきた。最も普及しているこれらの酸に安定性の保護基は、TBDMSとして知られているtert−ブチル−ジメチルシリル基と思われる(Ogilvieら、1979)。TBDMSの2’−保護基としての使用は、非常に長い間、RNA化学合成のための以前は小さかった市場を支配してきた(Usmanら、1987;Ogilvieら、1988)。
【0004】
しかし、TBDMSを使用して行うオリゴリボヌクレオチド合成は、決して満足のいくものではなく、典型的には低品質のRNA生成物を生成する。その結果、TBDMS保護基は、2’位から3’位に転位する。さらに、モノマー(例えば、5’−O−DMT−2’−O−TBDMS−リボ−3’−O−(β−シアノエチル,N−ジイソプロピル)ホスホラミダイト)の合成の間に、2’−シリル基の導入は位置選択的ではなく、したがって2’または3’位に付加される場合がある。ホスホラミダイト生成の間のシリル基の転位を妨げるために加えられた化学的必要条件と相まって、モノマーの合成は難易度が高く費用がかかる。これらのモノマーのカップリング効率は、2’−TBDMS保護基の立体障害によって大幅に減少し、完全な長さの生成物の収率および純度に影響を与えるだけでなく、この方法によって達成することができるオリゴリボヌクレオチドの長さを制限することもまた当技術分野で周知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合成RNAに対する需要は、主としてRNA干渉法の発見によって増加してきた。したがって、必要性の増大に対応するために、改善されたRNA合成スキーム、特に2’−保護基を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様には、2’部位でチオ炭素保護基によって保護されている2’保護ヌクレオシドモノマーが含まれる。対象とするチオ炭素保護基には、チオカーボネート、チオノカーボネートおよびジチオカーボネート保護基、ならびにチオノカルバメート保護基が挙げられるが、これらに限らない。本発明の態様は、本発明の保護基を含む核酸、および本発明の保護基を使用した核酸の合成方法をさらに含む。
【0007】
[定義]
本発明をさらに詳細に記載する前に、本出願において使用される用語は、別段の指示がない限り下記の通りに定義する。
【0008】
「ヌクレオチド」または「ヌクレオチド部分」とは、リン酸基、糖基および複素環式塩基を含む核酸(DNAまたはRNAまたはその類似体)のサブユニットならびにこのようなサブユニットの類似体を意味する。他の基(例えば、保護基)は、ヌクレオチドの任意の成分(複数可)に結合することができる。
【0009】
「ヌクレオシド」または「ヌクレオシド部分」は、糖基および複素環式塩基を含む核酸サブユニット、ならびにこのようなサブユニットの類似体を意味する。他の基(例えば、保護基)をヌクレオシドの任意の成分(複数可)に結合することができる。
【0010】
「ヌクレオシド残基」とは、(ヌクレオシドにおけるように)糖基および窒素含有塩基を、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはヌクレオシドホスホラミダイトにおけるなどのより大きな分子の一部として有する分子を意味する。
【0011】
「ヌクレオチドモノマー」は、より大きなオリゴヌクレオチド鎖中またはポリヌクレオチド鎖中に組み込まれておらず、単一のヌクレオチドサブユニットに相当する分子を意味する。ヌクレオチドモノマーはまた、活性化基または保護基がヌクレオチドモノマーの使用目的のために必要である場合、活性化基または保護基を有し得る。
【0012】
「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」という用語は、公知のプリン塩基およびピリミジン塩基、例えばアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、またはウラシル(U)を含有する部分だけでなく、修飾されている他の複素環式塩基を含有する部分もまた含むことを意図する。このような修飾には、メチル化プリンもしくはメチル化ピリミジン、アシル化プリンもしくはアシル化ピリミジン、アルキル化リボースまたは他の複素環が挙げられる。このような修飾には、例えば、ジアミノプリンおよびその誘導体、イノシンおよびその誘導体、アルキル化プリンもしくはアルキル化ピリミジン、アシル化プリンもしくはアシル化ピリミジン、チオール化プリンもしくはチオール化ピリミジンなど、または保護基の付加、例えばアセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、ベンゾイル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、フェノキシアセチル、ジメチルホルムアミジン、ジブチルホルムアミジン、N,N−ジフェニルカルバメート、もしくは同様のものなどの付加が挙げられる。プリン塩基またはピリミジン塩基はまた、上記の類似体でよい。適切な類似体は当業者には公知であり、関連するテキストおよび文献に記載されている。通常の類似体には、それだけに限らないが、1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチルアミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル(pseudouracil)、1−メチルシュードウラシル、ケオシン、イノシン、1−メチルイノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリンおよび2,6−ジアミノプリンが挙げられる。
【0013】
さらに、「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」という用語には、従来のリボース糖およびデオキシリボース糖だけでなく、他の糖もまた含有する部分が含まれる。修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドはまた、糖部分上の修飾を含み、例えば、ヒドロキシル基の1つまたは複数がハロゲン原子もしくは脂肪族基で置き換えられ、またはエーテル、アミン、もしくは同様のものとして官能化される。「類似体」とは、文字通り、類似の構造を有する模倣体、誘導体、または他の同様の用語として認識されている構造的特徴を有する分子を意味し、例えば、非天然(通常自然界に存在しない)ヌクレオチドを組み込んだポリヌクレオチド、非天然ヌクレオチド模倣体(2’−修飾ヌクレオシドなど)、ペプチド核酸、オリゴマーのヌクレオシドホスホネート、および保護基または連結基などの、付加された置換基を有する任意のポリヌクレオチドを含む。
【0014】
「ヌクレオチド間結合」または「ヌクレオチド結合」とは、天然に見出される核酸中のリン酸ジエステル連結、または核酸および核酸類似体の合成の技術分野から周知の連結などの、2つのヌクレオシド部分の間の化学連結を意味する。ヌクレオチド間結合は、ホスホ基またはホスファイト基を含んでもよく、連結を含んでもよく、ホスホ基またはホスファイト基の1個もしくは複数の酸素原子は、置換基で修飾されているか、あるいは他の原子、例えば、硫黄原子、またはモノアルキルアミノ基もしくはジアルキルアミノ基の窒素原子で置き換えられている。
【0015】
「基」には、置換形態および非置換形態の両方が含まれる。対象とする置換基には、1種または複数の低級アルキル、アミノ、イミノ、アミド、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、またはアリール、またはアルキル、アリール、アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、チオ、メルカプト、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ、およびボロニルが挙げられ、または1個もしくは複数の利用可能な炭素原子上で非ヒドロカルビル置換基、例えばシアノ、ニトロ、ハロゲン、ヒドロキシル、スルホン酸、スルフェート、ホスホン酸、ホスフェート、ホスホネート、または同様のものなどで任意選択的に置換されているものが挙げられる。任意の置換基は、反応収率に実質的に悪影響を与えないように選択される(例えば、そうでなければ特定の置換基または置換基の組合せなしに得られる収率の20%(または10%、または5%、または1%)を超えて低下させない)。さらに、置換基は、存在する他の基と化学的に適合性であり、当業者には公知の副反応を避けるように選択する。例えば、アルコールの水酸化物およびリチウム基は非適合性であり、互いに反応するので、アルコールはリチウム基で置換されないであろう。本開示における任意の基について、各置換基は、40、35、30、25、20、18、16、14、12、11、10、9、8、7、6、5、4または3個までの炭素原子を含み得る。全体として、任意の基について全ての置換基中の炭素原子の総数は、特定の実施形態では、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、18、16、14、12、11、10、9、8、7、6、5、4または3個以下である。
【0016】
「複素環」、「複素環式」、「複素環基」または「ヘテロシクロ」という用語は、少なくとも1つの炭素原子含有環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する、芳香族(「ヘテロアリール」)または非芳香族(例えば、3〜13員の単環式環系、7〜17員の二環式環系、もしくは10〜20員の三環式環系)を含めた、完全飽和環式基または部分不飽和環式基もしくは完全不飽和環式基を意味する。ヘテロ原子を含有する複素環基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を有してもよく、ここで窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子は、任意選択的に酸化されていてよく、窒素ヘテロ原子は任意選択的に四級化されていてよい。複素環基は、環または環系の任意のヘテロ原子または炭素原子に結合し得る。多環複素環の環は、1つまたは複数のスピロ結合を介して縮合、架橋および/または結合し得る。窒素含有塩基は、複素環の例である。他の例には、ピペリジニル、モルホリニルおよびピロリジニルが挙げられる。
【0017】
「置換複素環」、「置換複素環式」、「置換複素環基」および「置換ヘテロシクロ」という用語は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、オキソ、アリール、置換アリール、ヘテロシクロ、置換ヘテロシクロ、カルボシクロ(任意選択的に置換されている)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意選択的に置換されている)、アリールオキシ(任意選択的に置換されている)、アルカノイル(任意選択的に置換されている)、アロイル(任意選択的に置換されている)、アルキルエステル(任意選択的に置換されている)、アリールエステル(任意選択的に置換されている)、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、置換アミノ、ラクタム、尿素、ウレタン、スルホニルなどから好ましくは選択される1つまたは複数の基で置換されている複素環、複素環式、およびヘテロシクロ基を意味し、置換基の1つまたは複数の対は、それらが結合している原子と一緒になって、任意選択的に3〜7員環を形成する。
【0018】
「電子吸引基」という用語は、隣接原子からの価電子を引き付ける傾向を有する部分を意味する(すなわち、置換基は、隣接原子に関して電気陰性である)。電子吸引能力のレベルの定量化は、ハメットσ定数によって与えられる。この周知の定数は、多くの参照文献、例えば、March、Advanced Organic Chemistry251〜59、McGraw Hill Book Company、New York、(1977)に記載されている。電子吸引基には、ニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、クロリドなどが挙げられる。
【0019】
「電子供与基」という用語は、隣接原子から価電子を放出する傾向を有する部分を意味する(すなわち、置換基は、隣接原子に対してより電気陰性でない)。電子供与基には、アミノ、メトキシ、アルキル(直鎖状構造または分岐状構造を有することができるC1〜6アルキルを含む)、C4〜9シクロアルキルなどが挙げられる。
【0020】
「保護基」という語句は、本明細書で使用する場合、分子の部分が特定の化学反応を受けることを防ぎ、反応の完了後分子から除去可能な種を意味する。「保護基」は、例えば、Greeneら、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley and Sons、第2版、1991において教示されているように、従来の化学的意味において所望の反応の特定の条件下で官能基を可逆的に非反応性とする基として使用される。所望の反応後、保護基を除去し、保護された官能基を脱保護し得る。全ての保護基は、合成された分子の大部分が分解されない条件下で、除去可能(したがって、不安定)であるべきである。保護基と対照的に、「キャッピング基」は、持続的に分子のセグメントに結合し、そのセグメントのさらなる化学的変換を妨げる。保護基によって保護されている官能基は、保護基と称されるものの一部であってもよく、一部でなくてもよいことに留意すべきである。
【0021】
「ヒドロキシル保護基」または「O−保護基」とは、被保護基がヒドロキシルである保護基を意味する。「反応部位ヒドロキシル」は、3’−5’ポリヌクレオチド合成の間の末端5’−ヒドロキシル、または5’−3’ポリヌクレオチド合成の間の3’−ヒドロキシルである。「遊離反応部位ヒドロキシル」は、ポリヌクレオチド合成の間に反応してヌクレオチド間結合(例えば、ホスホラミダイト官能基とのヌクレオチド間結合)を形成することができる反応部位ヒドロキシルである。
【0022】
「チオ炭素保護基」とは、カルボニル部分またはチオノカルボニル部分を介して連結し、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立に選択される1つまたは複数の基に連結している酸素、硫黄または窒素をさらに有する保護基を意味し、ただし、チオ炭素保護基が窒素を介してその基に連結している場合、その基は、アリール、置換アリール、複素環または置換複素環からさらに選択することができる。
【0023】
「同時に脱保護する」という用語は、同じ工程において異なる保護基を除去することを目的とし、実質的に同時にまたは同時に行う工程を意味する。しかし、本明細書で使用する場合、この用語は、異なる保護基の脱保護が正確に同時にまたは同じ速度もしくは同じ動態で行われることを意味しない。
【0024】
「ホスホ」基には、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、およびH−ホスホン酸基が挙げられる。ホスホ基またはホスファイト基のいずれかの場合、置換された5員フリル環以外の化学部分は、ホスホ基またはホスファイト基のOに結合し、それによってフリル環とP原子との間が連結されることができる。
【0025】
「ホスホラミダイト基」という用語は、構造−P−(OR13)(NR1415)(式中、R13、R14、およびR15の各々は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、複素環、置換複素環、アリールまたは置換アリールである)を含む基を意味する。いくつかの実施形態では、R13、R14、およびR15は、低級アルキル、低級アリール、ならびに置換低級アルキルおよび低級アリールから選択し得る(好ましくは、18、16、14、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2個までの炭素を含有する構造で置換されている)。いくつかの実施形態では、R13は、2−シアノエチルまたはメチルであり、R14およびR15のいずれかまたは両方は、イソプロピルである。R14およびR15は、任意選択的に環状に結合することができる。
【0026】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブチルなどの、1〜24個、典型的には1〜12個の炭素原子の飽和直鎖、分岐状または環状の炭化水素基を意味する。「低級アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を意図し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブチルが挙げられる。「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルなどの環状アルキル基を意味する。
【0027】
さらに、「アルキル」という用語は、1〜24個の炭素原子を有し、エーテル−、チオ−、アミノ−、ホスホ−、オキソ−、エステル−、およびアミド−から選択される1つまたは複数の連結などのさらなる基をさらに有し、ならびに/または低級アルキル、アリール、アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、アミノ、スルホニル、チオ、メルカプト、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ、およびボロニルを含めた1つまたは複数のさらなる基で置換アルキル基を意味する「修飾アルキル」を含む。同様に、「低級アルキル」という用語は、1〜8個の炭素原子を有し、エーテル−、チオ−、アミノ−、ホスホ−、ケト−、エステル−、およびアミド−から選択される1つまたは複数の連結などのさらなる基をさらに有し、ならびに/または低級アルキル、アリール、アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、アミノ、スルホニル、チオ、メルカプト、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ、およびボロニルを含めた1つまたは複数の基で置換されている基を意味する「修飾低級アルキル」を含む。「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、置換基−O−R(式中、Rは上記定義のようなアルキルである)を意味する。「低級アルコキシ」という用語は、Rが低級アルキルであるそのような基を意味する。「チオアルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、置換基−S−R(式中、Rは上記定義のようなアルキルである)を意味する。
【0028】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、少なくとも1つの二重結合を含有する、2〜24個、典型的には2〜12個の炭素原子の分岐状、非分岐状、または環状(例えば、C5およびC6の場合)の炭酸水素基を意味する(エテニル、ビニル、アリル、オクテニル、デセニルなど)。「低級アルケニル」という用語は、2〜8個の炭素原子のアルケニル基を意図し、ビニルおよびアリルを特に含む。「シクロアルケニル」という用語は、環状アルケニル基を意味する。
【0029】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用する場合、別段の指定がない限り、少なくとも1つの三重結合を含有する、2〜24個、典型的には2〜12個の炭素原子の分岐状または非分岐状の炭酸水素基を意味する(アセチレニル、エチニル、n−プロピニル、イソプロピニル、n−ブチニル、イソブチニル、t−ブチニル、オクチニル、デシニルなど)。「低級アルキニル」という用語は、2〜8個の炭素原子のアルキニル基を意図し、例えば、アセチレニルおよびプロピニルを含み、「シクロアルキニル」という用語は、環状アルキニル基を意味する。
【0030】
「ヒドロカルビル」という用語は、アルキル、アルケニルまたはアルキニルを意味する。「置換ヒドロカルビル」という用語は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するヒドロカルビル部分を意味する。このような置換基には、例えば、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、複素環式、アラルキル、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分を含めてもよい。炭化水素鎖上で置換された部分は、適切な場合それら自体が置換されていてもよいことは当業者であれば理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基は、置換および非置換の形態のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、ならびにシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、−CNなどを含み得る。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CNなどでさらに置換されていてもよい。
【0031】
「アルコキシ」という用語は、酸素に連結したアルキル基を意味し、式:R−O−(式中、Rはアルキル基を表す)によって表してもよい。一例は、メトキシ基CHO−である。
【0032】
「アリール」という用語は、0〜4個のヘテロ原子を含み得る、5、6、および7員の単環芳香族基を意味する(例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなど)。環状構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、「アリール複素環」または「複素環式芳香族」と称し得る。「アリール」という用語はまた、2つ以上の環状環を有する多環式環系を含み、ここで2個以上の炭素は2つの隣接する環(環は「縮合環」である)に共通しており、環の少なくとも1つは芳香族である(例えば、他の環状環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/または複素環でよい)。「低級アリール」は、18個までの炭素(14、12、10、8または6個までの炭素など)を含有する。
【0033】
芳香環は、1つまたは複数の環位置において、置換ヒドロカルビルについて上記のような置換基(例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、複素環式、芳香族もしくは複素環式芳香族部分、−CF、−CN、または同様のもの)で置換されている場合がある。
【0034】
「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0035】
「連結」は、本明細書で使用する場合、第1の部分が2つの他の部分に結合し、その2つの他の部分は第1の部分を介して連結していることを意味する。典型的な連結には、エーテル(−O−)、オキソ(−C(O)−)、アミノ(−NH−)、アミド(−N−C(O)−)、チオ(−S−)、ホスホ(−P−)、エステル(−O−C(O)−)が挙げられる。
【0036】
「官能化された」は、材料に結合した特定の部分を有するように材料を修飾する工程を意味し、例えば、分子または基質を特定の部分を有するように修飾する。このようにして修飾された材料(例えば、分子または支持体)は、官能化された材料(例えば、官能化された分子または官能化された支持体)と称される。
【0037】
「置換されている」という用語は、化学構造、基、または部分について記載するために使用される場合、1個または複数の置換基を含む構造、基、または部分を意味する。本明細書で使用する場合、第1の基が第2の基「で置換されている」場合、第2の基は、第1の基に結合しており、それによって第1の基の部分(典型的には水素)が、第2の基で置き換えられている。
【0038】
「置換基」は、化学構造中の他の基を置き換える基を意味する。典型的な置換基には、非水素原子(例えば、ハロゲン)、官能基(これらに限定されないが、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル、シリル、シリルオキシ、ホスフェートなど)、ヒドロカルビル基、および1個または複数のヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル基が挙げられる。例示的な置換基には、アルキル、低級アルキル、アリール、アラルキル、低級アルコキシ、チオアルキル、ヒドロキシル、チオ、メルカプト、アミノ、イミノ、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、カルボキシ、スルフィド、スルホン、スルホキシ、ホスホリル、シリル、シリルオキシ、ボロニル、および修飾された低級アルキルが挙げられる。
【0039】
ハイフン、またはダッシュは、結合を示すためにこの明細書を通して様々な箇所で使用されており、例えば2つの指定された基がテキスト中でダッシュに直ちに隣接している場合、これは2つの指定された基が互いに結合していることを示す。同様に、テキスト中の指定された基の各々の間にダッシュがある一連の指定された基は、指定された基が示された順番で互いに結合していることを示す。また、テキストにおいてダッシュに隣接した単一の指定された基は、その指定された基が、典型的にはいくつかの他の指定されていない基に結合していることを示す。いくつかの実施形態では、ダッシュによって示される結合は、例えば、隣接する指定された基の間の共有結合であり得る。明細書を通して様々な箇所で、基は、テキストにおいて隣接するダッシュを伴って、または伴わずに記載される場合があり(例えば、アミドまたはアミド−、さらに例えば、アルキルまたはアルキル−、またさらには、Lnk、Lnk−または−Lnk−)、ここで基は他の基に結合している(または、結合する可能性を有する)ことが意図されていることを文脈は示し、このような場合、その基の同一性は、(テキストにおいて隣接するダッシュのあるなしを問わず)基名によって表示される。文脈が示す場合、単一の基は、複数の他の基に結合している場合(例えば、連結基など連結が意図されている場合)があることに留意されたい。
【0040】
点線、例えば、
【化1】

は、明細書を通して、いくつかの他の指定されていない基への結合を示すために指定された基に隣接して使用される。
【0041】
「任意選択的な」または「任意選択的に」は、引き続いて記載される状況が起こり得るまたは起こり得ないことを意味し、記載はその状況が起こる場合および起こらない場合を含む。例えば、「任意選択的に置換された」という語句は、水素でない置換基が存在し得るまたは存在し得ないことを意味し、したがって記載は、水素でない置換基が存在する構造、水素でない置換基が存在しない構造を含む。明細書を通して様々な箇所で、部分がゼロ時間以上存在すると記載し得る。これは部分が任意選択的であることと等しく、その部分が存在する実施形態およびその部分が存在しない実施形態を含む。任意選択的な部分が存在しない(構造中でゼロ時間存在する)場合、任意選択的な部分によって連結していると記載された隣接する基は、互いに直接連結している。同様に、部分は、(1)2つの隣接する基を連結する基、または(2)2つの隣接する基を連結する結合として記載されている場合がある。これは、部分が任意選択的であり、部分が存在する実施形態、および部分が存在しない実施形態を含むことと等しい。任意選択的な部分が存在しない(構造中でゼロ時間存在する)場合、任意選択的な部分によって連結していると記載された隣接する基は、互いに直接連結している。
【0042】
「結合した(Bound)」は、本明細書において直接または間接の結合を示すために使用し得る。化学構造との関連において、「結合した(bound)」(または「結合した(bonded)」)は、2つの部分を直接結合する、または(例えば、連結基もしくは分子の任意の他の介在部分を介して)2つの部分を間接的に結合する化学結合の存在を意味し得る。化学結合は、共有結合、イオン結合、配位錯体、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または疎水性スッタキングでよく、または多数のタイプの化学結合の特徴を示し得る。場合によっては、「結合した(bound)」は、結合が直接である実施形態、およびまた結合が間接である実施形態を含む。「遊離」は、遊離である部分との関連で使用される場合、その部分が反応するのに利用可能であり、またはその部分が一部となっている溶液の他の成分によって接触されていることを示す。
【0043】
「評価する」という用語は、任意の形態の測定を含み、要素が存在するか、またはしないかを決定することを含む。「決定する」、「測定する」、「検査する」、「評価する」および「アッセイする」という用語は、互換的に使用され、定量的および/または定性的決定を含み得る。評価は、相対的または絶対的であり得る。「の存在を評価する」は、存在する何かの量を決定すること、および/またはそれが存在するかもしくは存在しないかを決定することを含む。
【0044】
「単離された」または「精製された」は、物質がその物質が存在する試料中の実質的な部分を構成する(溶媒を除いて)、すなわち、物質がその自然または単離されていない状態において典型的には見出されるより多いような、物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド、染色体など)の単離を一般に意味する。典型的には、試料の実質的な部分は、試料の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約80%、またはさらに好ましくは少なくとも約90%を構成する(溶媒を除く)。例えば、単離したRNAの試料は、典型的には少なくとも約5%の全RNAを含み、パーセントは、この文脈では試料中の全RNAの質量(例えば、マイクログラム)を(試料中の全RNA+他の構成要素(溶媒を除く))の和の質量(例えば、マイクログラム)で割ったものとして計算される。対象とするポリヌクレオチドおよびポリペプチドを精製するための技術は当技術分野で周知であり、例えば、ゲル電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、フローソーティング、および密度による沈殿を含む。典型的な実施形態では、ヌクレオチド組成物(複数可)の1種または複数は、単離された形態である。より典型的には、3種全ては、本方法において使用する前に単離された形態で得る。
【0045】
「所定の」という用語は、その使用前にその同一性が公知である要素を意味する。例えば、「所定の配列」は、配列を有するポリヌクレオチドの使用または合成の前に、その同一性が公知である配列である。その要素は、名称、配列、分子量、その機能、または任意の他の特性もしくは識別子によって知られている場合がある。
【0046】
「上流」は、本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチド、例えばRNA分子に沿って5’方向を意味する。「下流」とは、ポリヌクレオチドに沿って3’方向を意味する。「3’−」および「5’−」は、当技術分野において公知のそれらの従来の意味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の態様には、2’部位でチオ炭素保護基によって保護されている2’保護ヌクレオシドモノマーが含まれる。対象とするチオカーボネート保護基には、チオカーボネート基およびジチオカーボネート基、ならびにチオノカルバメート保護基が挙げられる。本発明の態様には、本発明の保護基を含む核酸、および本発明の保護基を使用した核酸の合成方法がさらに含まれる。
【0048】
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は、記載されている特定の実施形態に限定されないことを理解すべきである。実施形態は当然ながら変化し得るためである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみであり、限定的なものではないことがまた理解される。
【0049】
値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限との間の各々のその間の値(文脈が明らかにそれ以外のことを示さない限り、下限のユニットの10分の1まで)、ならびにその示された範囲内の任意の他の示された値またはその間の値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立にそのより小さな範囲内に含まれる場合があり、示された範囲内の任意の特に除外された限度を前提として、本発明内にまた包含される。示された範囲が該限度の一方または両方を含む場合、それらの含められた限度の一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含められる。
【0050】
特定の範囲は、本明細書において「約」という用語が先行して数値が提示される。「約」という用語は、本明細書において、約が前に置かれる正確な数字、およびその用語が前におかれる数の近くの数、または概ねその数に対して文字通りの根拠を提供するために使用される。ある数が特に列挙した数に近い数または概ねその数であるかを決定することにおいて、列挙していない数に近い数または概ねその数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙した数と実質的な同等のものを提供する数であり得る。
【0051】
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様または同等の任意の方法および材料はまた、本発明の実施または試験において使用することができるが、代表的な例示的方法および材料を、ここで記載する。
【0052】
本明細書で引用されている全ての出版物および特許は、各々の個々の出版物または特許が参照することにより本明細書の一部をなすことが明確におよび個々に示されているかのように、参照することにより本明細書の一部をなすものとし、それとの関連で出版物が引用されている方法および/または材料を開示および記載するために参照することにより本明細書の一部をなすものとする。任意の出版物の引用は、出願日より前のその開示のためであり、先行発明に基づいて、本発明がこのような出版物に先行する資格がないことを承認すると解釈するべきではない。さらに、提供された出版物の日付は、個々に確認する必要があり得る実際の出版物の日付とは異なる場合がある。
【0053】
本明細書で使用する場合、および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそれ以外のことを示さない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、任意の任意選択的な要素を除外するように作成される場合があることをもまた留意されたい。それ自体として、この記述は、構成要素の列挙に関連して「単独で」、「のみ」などのこのような排他的な用語の使用、または「消極的な」限定の使用のための根拠の役割を果たすことを意図している。
【0054】
いくつかの化学構造の描写では通常であるように、ヒドリド基のいくつかは、明確にする目的のために描かれた構造から省略されているが、例えば、描かれた構造中の炭素の原子価結合を完全に記入するために必要に応じ存在すると理解するべきであることに留意すべきである。
【0055】
この開示を読んだ当業者には明らかなように、本明細書において記載され例示されている個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなしに、他のいくつかの実施形態のいくつかの特徴から容易に分離することができ、または合わせることができる個別の成分および特徴を有する。任意の列挙した方法は、列挙した事象の順番または論理的に可能な任意の他の順番で行うことができる。
【0056】
[チオ炭素保護基で保護されたモノマー]
上記で簡潔に述べたように、本発明の態様は、2’−チオ炭素保護基と、モノマーの2’酸素を保護しているチオ炭素保護基を含むモノマーとを含む。チオ炭素保護基とは、炭素原子に結合した硫黄原子(硫黄原子は、炭素原子に単結合または二重結合によって結合している場合がある)を含む保護基を意味する。保護基は、さらなるヘテロ原子、例えば、酸素、窒素などを含む場合もあり、含まない場合もある。特定の実施形態では、保護基は、チオカーボネートまたはジチオカーボネート保護基である。また他の実施形態では、下記でより詳細に記載する本発明のチオノカルバメート保護基中に存在するように、窒素原子が存在する。これらの保護基は、チオノカルバメート以外は、フェニル基を基として含有しない。それ自体として、本発明のチオ炭素保護基は、フェニルチオノカーボネート、フェニルチオカーボネートおよびフェニルジチオカーボネートを含まず、それらは本発明から除外される。
【0057】
本発明の実施形態は、2’チオカーボネート保護基(「チオカーボネート」は、例えば、下記式(I)によって記載されているように、ジチオカーボネートを含む)を有するヌクレオシドモノマーを含む。
【化2】

(式中、
は、保護されている複素環または保護されていない複素環であり、
またはRの各々は、水素、保護基、およびホスホラミダイト基から独立に選択され、
XおよびYは、独立に、硫黄または酸素であり、XおよびYの少なくとも1つは、硫黄であり、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから独立に選択される。)
【0058】
が第二級(−CH−R’R’’)ヒドロカルビル基または置換された第二級(−CH−R’R’’)ヒドロカルビル基である特定の実施形態では、R’およびR’’は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリールおよび置換アリールから独立に選択され、Yが酸素である特定の実施形態では、Rは第三級ヒドロカルビルではない、すなわち、Rは、
【化3】

ではない。
【0059】
式Iによって記述される化合物には、チオカーボネート、ジチオカーボネート、およびチオノカーボネートが挙げられるが、これらだけに限らない。これらの化合物の実施形態には、下記の式Icおよび式Idおよび式Ieによって表されるものが挙げられる。
【化4】

(式中、
は、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立に選択されるが、ただし、Rが第二級(−CH−R’R’’)ヒドロカルビル基または置換された第二級(−CH−R’R’’)ヒドロカルビル基である場合、R’およびR’’の各々は水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリールおよび置換アリールから独立に選択され、さらにただし、構造Ieにおいて示される化合物のみに関して、Rは、下記構造
【化5】

によって記述されるような第三級ヒドロカルビルではなく、このことはR’、R’’、R’’’の少なくとも1つはHであることを意味している。)
【0060】
適切なR基のさらなる例は、「Monomer Compositions for the Synthesis of RNA, Methods of Synthesis, and Methods of Deprotection」という表題で、2006年3月23日に出願された係属中の米国特許出願第11/388,112号において見出すことができ、その開示は参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0061】
本発明のまた他の実施形態では、式IのRは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはベンジル基である。このような実施形態の例には、下記の構造の化合物が含まれる。
【化6】

【0062】
特定の実施形態では、本発明のモノマーは、例えば、下記式IIにおいて示される構造による化合物において見出されるような2’チオノカルバメート保護基を含む。
【化7】

(式中、
は、保護されている複素環または保護されていない複素環であり、
またはRの各々は、水素、保護基、およびホスホラミダイト基から独立に選択され、
Nは、NHまたは第二級アミン(−NH−Z)、第二級ヒドロキシルアミン(−NH−O−Z)、第三級アミン(−N−ZZ’’)(式中、ZおよびZ’’は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、置換アリールから独立に選択され、ZもしくはZ’’は、Nに環状連結することができる)、または第三級ヒドロキシルアミン(−N−Z−OZ’’)(式中、ZおよびZ’’は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、置換アリールから独立に選択され、ZもしくはZ’’は、Nに環状連結することができる)である。)
【0063】
本発明のカルバメート保護基には、第一級、第二級、および第三級チオノカルバメートが挙げられる。これらの化合物の実施形態には、下記の式IIcおよび式IIdおよび式IIeおよび式IIfおよび式IIgおよび式IIhによって表されるものが挙げられる。
【化8】

(式中、
は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、置換アリールから選択され、ただし、IIcのみについては、Rは、2−(N−アミド)で置換されたフェニルではなく、
およびRは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、置換アリールから独立に選択され、ただし、RおよびRは、Nに環状連結することができる。)
【0064】
対象とする特定の化合物には、下記の構造によって記述されるものが含まれる。
【化9】

【0065】
上記の式に関して、B基は、保護されている複素環または保護されていない複素環である。複素環は、天然プリンおよびピリミジン塩基、例えば、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、またはウラシル(U)、または修飾プリンおよびピリミジン塩基、ならびに通常の類似体、例えば、本明細書において記載されているものなどから選択し得る。この文脈において検討される特定のプリンまたはピリミジン類似体には、2002年12月18日に出願された「Method of Producing Nucleic Acid Molecules with Reduced Secondary Structure」という表題の米国特許出願第10/324,409号において記載されているもの、およびまた1999年7月20日に出願された「Method of Producing Nucleic Acid Molecules with Reduced Secondary Structure」という表題の米国特許出願第09/358,141号(現在は放棄されている)において記載されているものが含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、複素環は、1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチルアミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、擬似ウラシル、1−メチル擬似ウラシル、ケオシン、イノシン、1−メチルイノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリンおよび2,6−ジアミノプリンから選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、複素環は、ポリヌクレオチド合成の技術分野において通常公知であるように、保護基を有し得る。特定の実施形態では、アセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、ベンゾイル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、フェノキシアセチル、ジメチルホルムアミジン、ジブチルホルムアミジン、またはN,N−ジフェニルカルバメートから選択される複素環保護基は、複素環に結合している。
【0068】
[2’チオ炭素保護基で保護されたモノマーの合成]
本発明のヌクレオシドモノマーを含有するチオ炭素保護基は、任意の都合のよいプロトコルを使用して生成することができる。特定の実施形態では、本発明の保護されたヌクレオシドモノマーは、式(III)
【化10】

(式中、
は、保護されているまたは保護されていない窒素含有塩基であり、
およびRは、それぞれ独立に、H、ホスホロアミデート基、ヒドロキシル保護基であり、またはRおよびRは、連結して、1,3−テトライソプロピルジシロキサン(TIPS)基などの二座保護基を形成する。)
において示される構造を有するヌクレオシドモノマーを、構造:Q−LG、
(式中、
Qは、チオ炭素保護基、例えば、上記のようなものであり、
LGは、ハロ基などの脱離基である。)
を有する化合物と、式(IV)
【化11】

の構造の2’保護ヌクレオシドモノマーを生成するのに十分な条件下で、接触させるプロトコルを使用して生成される。
【0069】
LGは、任意の都合のよい脱離基でよい。脱離基または活性化基には、イミダゾール、クロロ、p−ニトロフェノキシ、ペンタフルオロフェノキシ、O−スクシンイミジル、トリクロロメチル、ブロモ、およびヨードが挙げられるが、これらに限られない。
【0070】
特定の実施形態では、下記に例示するように、本発明のモノマーの合成は、Markewicz TIPS試薬などの試薬を用いて、保護基を合成下の組成物の2’−OH部位に局在させる、すなわち位置選択性を与える。下記のスキームでは、Rは、チオ炭素保護基である。2’−ヒドロキシル保護基上の特異的導入は、5’ −ヒドロキシル基および3’−ヒドロキシル基の一時的保護によって、例えば、Markewiczジシリルオキサン保護基の使用によって行われる。下記のスキームにおいて示される1,3−テトライソプロピルジシロキサン(TIPS)は、5’ ヒドロキシルおよび3’ヒドロキシルを同時に遮断するために使用され、2’−ヒドロキシルを位置選択的に保護することを可能にする一時的な二座保護基である。他の一時的二座保護基をまた用いてもよい。1,3−テトライソプロピルジシロキサン基は、フッ化物イオンの溶液を使用して、続いて除去される。
【0071】
スキーム1
【化12】

したがって、本発明の態様は、式V
【化13】

(式中、Bは、保護されている窒素含有塩基または保護されていない窒素含有塩基である。)
の化合物を、式Cl−C(S)−R(式中、Rは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルから独立に選択されるが、ただし、Rは、第三級ヒドロカルビルでなく、Rが第二級(−CH−R’R’’)ヒドロカルビル基または置換された第二級(−CH−R’R’’)ヒドロカルビル基である場合、R’およびR’’は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリールおよび置換アリールから独立に選択される)のクロロチオホルメートと反応させることによって、5’,3’−TIPS−2’−O−(R−チオ)カルボニル中間体を生成するステップと、
b)5’,3’−テトライソプロピルジシロキサン保護基を15当量〜40当量のHF/ピリジンで除去し、2’−O−(R−チオ)カルボニルリボヌクレオシド中間体を生成するステップと、
c)ステップb)の中間体を、DMTrClおよび5当量〜10当量のコリジンまたはルチジンと反応させ、任意選択的にDMAPまたはNMIを加え、5’−O−DMT−2’−O−チオカルボニル−リボヌクレオシド誘導体を生成するステップと、
d)ステップc)からの中間体を、CNEO−P(Cl)−N(iPr)または(ジイソプロピル)アミノメトキシクロロホスフィンから選択されるホスフィチル化試薬と反応させて、5’−O−DMT−2’−O−R−チオカルボニル−3’−O−メチル(−またはシアノエチル)ホスホラミダイトを精製するステップと
による本発明の化合物の作製方法を含む。上記の反応条件は例示的であり、類似の条件およびプロトコルはまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0072】
本明細書に記載する保護された2’−ヒドロキシル化合物、およびTIPS基を脱保護するために開発された条件について、この位置特異的な一時的保護は、前例のない効率で行うことができることが示されてきた。TIPS保護を選択的に脱保護し、一方2’−保護基を保存するために、特定の組成物および方法が開発されてきた。例えば、HF/ピリジンの使用は、チオ炭素保護基が保存される一方で、TIPSの選択的脱保護を可能にする。
【0073】
TIPS保護基の選択的除去の後または間の、環状カーボネートを形成する遊離3’−ヒドロキシルのさらなる反応の可能性を考慮することは重要である。2’位上のチオカーボネートは、HF/ピリジン/CHCNによるTIPS除去の間に環化を受けない。他方、チオカーボネートまたはカーボネートは、HF/ピリジン/CHCNの代わりにHF/TEAが使用される場合、ある程度環化する(下記のスキーム2を参照されたい)。
【0074】
スキーム2
【化14】

【0075】
この環化は望ましくない一方で、所望の生成物から容易に分離することができるデッドエンド環状カーボネート生成物を生じさせる。したがって、この環状種の形成は、最終のモノマー生成物および最終的なRNAオリゴヌクレオチドの完全性を確実にする好ましい副反応および利点である。この知見は、2’−ヒドロキシルから3’−ヒドロキシルに異性化し、問題のある5’から3’への連結が完全であるRNA生成物をもたらす場合がある、2’−ヒドロキシルについてのシランまたは他の保護基の使用と対照的である。HFを用いるこれらの脱保護反応において、HF錯体、例えば、HF−TEMEDまたはHF−TMAなどもまた使用することができる。他の溶媒、例えば、ジオキサン、THF、または塩化メチレンは、特定の条件下で環状カーボネートの形成によってチオカーボネート基の部分的な損失をもたらし得るが、このような溶媒もまた使用することができる。さらに、環状カーボネートは、所望の生成物から容易に分離可能である。
【0076】
これらの新規なRNAモノマーのための核酸塩基は、任意の都合のよいアプローチを使用して保護し得る。対象とする1つのアプローチは、Tiら、J.Am.Chem.Soc.、104、1316〜1319(1982)によって最初に記載されたジョーンズ手順として当技術分野において公知である。ジョーンズ手順は、塩化トリメチルシリルによる保護されていないヌクレオシドの一時的シリル化を使用して、ハロゲン化カルボニル基、活性化カルボニル基またはカルボニル無水物が核酸塩基の環外アミンと位置特異的に反応することを可能にする。この反応において、大幅に過剰の塩化トリメチルシリルを、ヌクレオシドのピリジンおよびジクロロメタン溶液に加える。これによって、環外アミン基と共に糖残基のヒドロキシル基の全てのトリメチルシリル化、および潜在的にヘテロ塩基上のイミノのトリメチルシリル化がもたらされる。シリル化される場合、環外アミン基は、ハロゲン化カルボニル基、活性化カルボニル基またはカルボニル無水物へのそれらの反応性を保持する一方、糖残基のヒドロキシル基は、同じ試薬との反応から保護される。これは環外アミンの位置特異的保護をもたらす。典型的な手順において、トリメチルシリル基は、炭酸水素ナトリウムの存在下で水性後処理(aqueous workup)によってヒドロキシル部分から除去される。極性溶媒中にトルエンスルホン酸を添加することによって、この手順を改変して、非水性後処理を支持することができる。Markewicz保護基TIPSを使用して合成したRNAモノマーについて、特定の実施形態では、ジョーンズ反応を行う前に保護されていないヌクレオシドをTIPS基と最初に反応させることは有利である。このような条件下では、TIPSで保護されたヌクレオシドは、有機溶媒中で有意により可溶性であり、5’ ヒドロキシルおよび3’ヒドロキシルが予め保護されている結果として、より少量の過剰な塩化トリメチルシリルを使用することが可能である。後処理の後、これらの反応からの生成物は、N−保護−3’,5’−テトライソプロピルジシロキサンヌクレオシドである。次いで、この化合物は、2’−保護基と直接反応することができる。
【0077】
窒素含有塩基のR−チオカーボネート、R−ジチオカーボネート、またはR−チオノカーボネート保護基による保護はまた、下記でより詳細に論じるように、RNAのワンステップの最終的脱保護を可能にし、塩基および2’−ヒドロキシル基は同時に脱保護される。
【0078】
本発明のいくつかの他の実施形態では、窒素含有塩基は、相当する2’−O−チオカーボネート以外の封鎖基によって保護される。ここで再び、RNAのワンステップの最終的脱保護、ならびに塩基および2’−ヒドロキシル基の同時の脱保護を行うことができる。これらの種類のヌクレオシドモノマーは、例えば、アセチル(Ac)、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル(iBu)、ベンゾイル(Bz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、フェノキシアセチル(Pac)、4−tert−ブチルフェノキシアセチル(Tac)、イソプロピルフェノキシアセチル(iPrPac)、フェニルオキシカルボニル、トリフルオロメチルオキシカルボニル、ジフルオロメチルオキシカルボニル、フルオロメチルオキシカルボニル、トリフルオロエチルオキシカルボニル、4−メチルフェニルオキシカルボニル、4−エチルフェニルオキシカルボニル、4−イソプロピルフェニルオキシカルボニル、4−tert−ブチルフェニルオキシカルボニル、2−メチルフェニルオキシカルボニル、2−エチルフェニルオキシカルボニル、2−イソプロピルフェニルオキシカルボニル、2−tert−ブチルフェニルオキシカルボニル 4−メトキシフェニルオキシカルボニル、4−エトキシフェニルオキシカルボニル、4−イソプロピルオキシフェニルオキシカルボニル、4−ブチルオキシフェニルオキシカルボニル、2−メトキシフェニルオキシカルボニル、2−エトキシフェニルオキシカルボニル、2−イソプロピルオキシフェニルオキシカルボニル、2−ブチルオキシフェニルオキシカルボニル、ベンジルチオカルボニル、2−クロロベンジルチオカルボニル、4−クロロベンジルチオカルボニル、2,4−ジクロロベンジルチオカルボニル、2−フルオロベンジルチオカルボニル、3−フルオロベンジルチオカルボニル、4−フルオロベンジルチオカルボニル、2−トリフルオロメチルベンジルチオカルボニル、3−トリフルオロメチルベンジルチオカルボニル、4−トリフルオロメチルベンジルチオカルボニル、4−ニトロベンジルチオカルボニル、メチルチオカルボニル、エチルチオカルボニル、イソプロピルチオカルボニル、ジメチルホルムアミジン、ジブチルホルムアミジン N,N−ジフェニルカルバメートなどによって、窒素含有塩基がすでに保護されているヌクレオシドから出発することによって合成することができる。
【0079】
特定の実施形態では、核酸塩基上の環外アミン基は、同じ試薬(ハロゲン化カルボニル基、活性化カルボニル基またはカルボニル無水物など)を使用して、2’−ヒドロキシルと同時に保護される。この反応スキームにおいて、保護されていないヌクレオシドは、無水ピリジンに溶解し、最初に1モル当量の1、3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンと反応し得る。試薬は特異的に反応し、3’−5’環状保護されたヌクレオシドを形成し、環外アミンおよび2’−ヒドロキシル部分を次のステップにおいてハロゲン化カルボニル、活性化カルボニル基またはカルボニル無水物と反応できるようにする。下記のスキーム3を参照されたい。
【0080】
スキーム3
【化15】

本発明のいくつかの他の実施形態では、窒素含有塩基は、チオカーボネート以外の封鎖基によって保護される。これらの種類のヌクレオシドモノマーは、例えば、アセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、ベンゾイル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、フェノキシアセチル、ジメチルホルムアミジン、またはN,N−ジフェニルカルバメートによって窒素含有塩基がすでに保護されているヌクレオシドから出発することによって合成することができる。次いで、ヌクレオシドは、TIPSClおよびジチオクロロホルメートまたはチオカルボニルクロロホルメートと反応することができ、上記のスキーム1において記載されているように処理される。
【0081】
−チオカーボネート保護基、R−ジチオカーボネート保護基、またはR−チオノカーボネート保護基を有するモノマーは、活性化R−チオカーボネート、R−ジチオカーボネート、またはR−チオノカーボネートを使用して合成することができる。適切なスキームの実施形態を、下記のスキーム4〜6に示す。
【0082】
スキーム4
5’−O−DMT−2’−O−ヒドロカルビルチオカルボニル−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトウリジンの合成
【化16】

NMI(N−メチルイミダゾール)
HF/ピリジンは、HF/ピリジン:70/30:w/wでできている錯体である。
Rによって、トリチル化反応は遅くすることができ、NMIまたはDMAPを少量(0.1当量)加えて、反応を加速することができる。
【0083】
スキーム5
5’−O−DMT−2’−O−ヒドロカルビルチオカルボニル−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−N−フェニルオキシカルボニルシチジンモノマー
【化17】

TMSCl=塩化トリメチルシリル
PhC(O)OCl=フェニルクロロホルメート
pTSOH=パラ−トルエンスルホン酸
R−C(O)SCl=チオクロロホルメート(エチルチオクロロホルメート)
DMAP−4,4’−ジメチルアミノピリジン
HF/ピリジンは、HF/ピリジン:70/30:w/wでできている錯体である。
コリジンは、2,4,6−コリジンである。
NMI−N−メチルイミダゾール
【0084】
スキーム6
5’−O−DMT−2’−O−ヒドロカルビルチオカルボニル−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−N−フェニルオキシカルボニルアデノシンおよび5’−O−DMT−2’−O−ヒドロカルビルチオカーボネート−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−N−フェニルオキシカルボニルグアニジンの合成
A)環外アミンの保護
【化18】

B)2’−ヒドロキシルの選択的保護および3’ホスフィチル化
【化19】

【0085】
例えば、tertブチルクロロチオホルメートなどの他の試薬が利用可能でない場合、2’−O−t−ブチルチオカーボネート(BSC)ウリジンを合成するために、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−(p−ニトロフェニル)カーボネートで保護されたウリジンを前駆体として使用し得る。次いで、スキーム7において下記に示すように、ナトリウム2−メチル−2−プロパンチオレートを使用して、p−ニトロフェニルカーボネートを置換する。
【化20】

【0086】
したがって、相当するクロロチオホルメートが利用できない場合、2’−チオカーボネートを合成するための一般のアプローチとして、相当するメルカプタン誘導体を使用し、それをホスゲンと反応させて、相当するクロロチオホルメートを得ることは可能であり、またはメルカプタンを2’O−(p−ニトロフェニル)カーボネートで保護されたヌクレオシドと反応させることもまた可能である。
【0087】
したがって、2’−チオノカルバメートの合成への一般のアプローチとして、式(V)のジシロキサンで保護されたヌクレオシドを、触媒量の4−(ジメチル)アミノピリジンの存在下で、アセトニトリル中の1,1’−チオカルボニルジイミダゾールと反応させることができる。これらの反応によって、保護されたヌクレオシドの式VIのイミダゾールチオノカルバメートおよび結晶性生成物への定量的変換がもたらされる。
【化21】

【0088】
式の化合物と、1.1当量のアンモニア、第一級アミンまたは第二級アミンとの、触媒量の4−(ジメチル)アミノピリジンを含むアセトニトリル中の反応は、所望の2’−チオノカルバメートへの定量的変換をもたらす。アニリンまたは他の弱い求核試薬の場合、1当量の4−(ジメチル)アミノピリジンを、相当するチオノカルバメートへの完全な変換を達成するために使用し得る。ジシアノエチルアミンなどの立体的に束縛されている弱い求核試薬の場合、反応は、アセトニトリル中で1当量の4−(ジメチル)アミノピリジンとの一晩の還流を用いてもよく、このように得られた生成物は、70%収率で単離し得る。これらの生成物は、5’,3’−テトライソプロピルジシロキサン保護基を15当量〜40当量のHF/ピリジンで最初に除去し、2’−O−チオノカルバメート−リボヌクレオシド中間体を生成することによって、活性RNA合成モノマーに変換し得る。次いで、この中間体は、5当量〜10当量のコリジンNMIを有するDMTrClと反応して、5’−O−DMT−2’−O−チオノカルバメート−リボヌクレオシド誘導体を生成し得る。次いでその生成物は、CNEO−P(Cl)−N(iPr)または(ジイソプロピル)アミノメトキシクロロホスフィンから選択されるホスフィチル化試薬と反応して、5’−O−DMT−2’−O−チオノカルバメート−リボヌクレオシド−3’−O−メチル(−またはシアノエチル)ホスホラミダイトを生成し得る。
【0089】
[チオ炭素保護基を使用した核酸合成]
本発明のヌクレオシドモノマーは、核酸、例えば、リボ核酸を効率的に合成するために使用できる。合成は、3’から5’への、または5’から3’へのいずれの方向にも行うことができる。例えば、3’から5’への方向では、5’−OHおよび3’−保護基を有する第1のヌクレオシドモノマーを、3’−ホスホラミダイトおよび5’−保護基を有する第2のヌクレオシドモノマーとカップリングする。第1のヌクレオシドモノマーは、固体支持体に任意選択的に結合している。または、合成を溶液中で行うことができる。5’−OHおよび3’−ホスホラミダイトを縮合させてホスファイトトリエステル連結を形成させ、ジヌクレオチドをもたらすカップリングステップの後、ジヌクレオチドをキャップ/酸化し、5’−保護基を除去する(脱保護)。次いで、ジヌクレオチドは、3’−ホスホラミダイトおよび5’−保護基を有する他のヌクレオシドモノマーとのカップリングに使用できる。核酸が所望の長さおよび/または配列に達するまでこれらのステップを繰り返し、2’−保護基を上記のように除去することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ヌクレオシドモノマーは、2’−OHと同じ保護基によって保護される塩基を含有し、従ってこれらの保護基の両方は同時に除去することができる。
【0090】
2’−ヒドロキシル上および任意選択的に塩基上のチオ炭素保護は、これらの保護基を除去する容易性および効率のために、以前は化学的に合成することが可能でなかったRNAの長い配列の合成を可能とする。本明細書において開示されている方法の実施形態によって合成された核酸は、長さで20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145または150個またはそれ以上のヌクレオチドと同じくらいの場合がある。さらに、本発明によって合成した核酸を他の核酸と合わせ、より長い核酸を形成することができる。例えば、70塩基の核酸は、70塩基の他の核酸と化学的ライゲーションによってカップリングすることができる。他の例として、2つの核酸は、RNAリガーゼで連結することができる。この場合、2’−保護基は、連結の前に除去するべきである。
【0091】
本発明の合成法は、化学物質が結合し得る表面を有する固体支持体上で行ってよい。いくつかの実施形態では、合成されている多数のオリゴヌクレオチドは、同じ固体支持体に直接的または間接的に結合し、アレイの一部を形成し得る。「アレイ」は、各配列の位置が知られているような、各々が空間的に画定され物理的にアドレス可能な態様で配置されている公知のモノマー配列の別々の分子の集まったものである。アレイ上に含有することができる分子数または「フィーチャー」は、大部分が基質の表面積、フィーチャーのサイズおよびフィーチャー間の間隔によって決定されるであろう(アレイ表面は、非フィーチャー領域によって表されるローカルバックグランド領域を含む場合もあり、含まない場合もある)。アレイは、1cm当たり数十万以上までのフィーチャーの密度、例えば2,500〜200,000フィーチャー/cmを有することができる。フィーチャーは、基質に共有結合している場合もあり、またはしていない場合もある。互換的に使用される「アレイ」または「化学アレイ」は、領域と関連する特定の化学部分または部分(リガンド、例えば、生体高分子(ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド配列(核酸)など)、ポリペプチド(例えば、タンパク質)、炭水化物、脂質など)を有するアドレス可能領域の任意の一次元、二次元または実質的に二次元(および三次元)の配置を含む。アレイ上の特定の所定の場所(すなわち、「アドレス」)における領域(すなわち、アレイの「フィーチャー」または「スポット」)は、特定の標的または標的の類を検出するように(フィーチャーは、そのフィーチャーの非標的を偶発的に検出し得るが)、アレイは、それが異なる部分(例えば、異なるポリヌクレオチド配列)の多数の領域を有する場合「アドレス可能」である。アレイフィーチャーは、そうである必要はないが典型的には、介在する空間によって分離されている。アレイの場合、「標的」は、様々な領域で基質に結合しているプローブ(「標的プローブ」)によって検出される移動相(典型的には流体)中の部分として言及されるであろう。しかし、「標的」または「プローブ」のいずれかは、他によって評価されるものであり得る(したがっていずれも、他と結合することによって評価される分析物、例えば、ポリヌクレオチドの未知の混合物であり得る)。
【0092】
いくつかの他の実施形態では、合成されているオリゴヌクレオチドは、ビーズに直接的または間接的に結合している。適切な固体支持体は、種々の形態および組成物を有してもよく、天然材料、合成的に修飾されている天然材料、または合成材料由来であってよい。適切な支持体材料の例には、シリカ、テフロン(登録商標)、ガラス、アガロース(例えば、PharmaciaからのSepharose(登録商標))およびデキストラン(例えば、またPharmaciaからのSephadex(登録商標)およびSephacyl(登録商標))などの多糖類、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸メチルのコポリマーなどが挙げられるがこれらに限定されない。基質表面上で合成されるオリゴヌクレオチドの最初のモノマーは、典型的には連結部分に結合しており、連結部分は次にシリカ基質上にある表面の親水基、例えば、表面のヒドロキシル部分に結合している。いくつかの実施形態では、ユニバーサルリンカーが使用される。いくつかの他の実施形態では、最初のモノマーは、例えば、表面のヒドロキシル部分と直接反応する。代わりに、オリゴヌクレオチドを、本発明によって最初に合成し、合成後に当技術分野において公知の方法によって固体基質に結合することができる。したがって、本発明は、オリゴヌクレオチドのアレイを調製するために使用することができ、ここでは、オリゴヌクレオチドは、アレイ上で合成されるか、または合成後にアレイ基質に結合される。
【0093】
本方法の効率および容易性によって、オリゴヌクレオチド合成は、小さなスケールまたは大きなスケールで行うことができる。したがって、本方法の1回の完全な操作(1つの容器中)で作製されるオリゴヌクレオチドの量は、マイクログラム未満、またはマイクログラム、数十マイクログラム、数百マイクログラム、グラム、数十グラム、数百グラム、またはさらにキログラムの場合がある。
【0094】
本発明の特定の実施形態では、本発明の二重に保護されたモノマーは、リボ核酸の合成において、例えば、リボ核酸の固相合成または溶相合成において使用される。本発明による合成は、いずれの方向でも(例えば、3’から5’へ、または5’から3’へ)行うことができる。例えば、3’から5’への方向では、5’−OHおよび3’保護基を有する第1のヌクレオシドモノマーは、3’ホスホラミダイト基および5’保護基を有する第2のヌクレオシドモノマーとカップリングする。第1のヌクレオシドモノマーは、例えば、合成が固相合成プロトコルを使用して行われる場合、任意選択的に固体支持体に結合している。あるいは、この合成は、溶液中で行うことができる。
【0095】
5’−OHおよび3’−ホスホラミダイトを縮合させてホスファイトトリエステル連結を形成させ、ジヌクレオチドをもたらすカップリングステップの後、ジヌクレオチドを、キャップ/酸化し、5’−保護基を除去(脱保護)する。次いで、ジヌクレオチドを、3’−ホスホラミダイト基および5’−保護基を有する他のヌクレオシドモノマーとのカップリングに使用できる。オリゴヌクレオチドが所望の長さおよび/または配列に達するまで、これらのステップを繰り返す。
【0096】
それ自体として、本発明の態様は、保護されていないヒドロキシル基を有するヌクレオシド残基および2’チオカーボネート保護基を有するヌクレオシドモノマーを提供するステップと、2’チオカーボネートで保護されたヌクレオシドモノマーをヌクレオシド残基に共有結合させ、核酸を生成するのに十分な条件下で、ヌクレオシド残基と2’チオカーボネートで保護されたヌクレオシドモノマーとを接触させるステップとを含む核酸の合成方法を含む。上記の項は、合成プロトコルの単一のモノマー付加ステップを説明し、所望の通りさらなるモノマーで上記の方法を反復し、所望の長さおよび配列のポリマーを生成する。上記で概説したように、各モノマー付加ステップの間に、この方法は、核酸を酸化および脱保護剤に曝露するステップを含み得る。
【0097】
ヌクレオシドモノマーおよびオリゴヌクレオチドの合成における使用に加えて、チオ炭素保護基は、環状カーボネート形成を最小限にする一方で、1,2−ジオール部分または1,3−ジオール部分を保護することが望ましい他の分子中で有利に使用することができる。例えば、チオ炭素保護基はまた、保護基を除去しない一方で、TIPS以外のシロキサン保護基、例えばTBDMS、トリメチルシリル、トリエチルシリル、およびトリイソプロピルシリルなどを有するアルコールの位置選択的脱保護のために使用することができる。保護されているアルコールは、ヌクレオシドモノマーまたはオリゴヌクレオチド以外の分子である場合がある。
【0098】
[RNA脱保護]
種々の異なる脱保護プロトコルを用いてもよい。例えば、Dellingerらへの米国特許第6,222,030号、Dellingerらへの米国特許第7,135,565号、Seioら(2001)、Tetrahedron Lett.42(49):8657〜8660において記載されているように、脱保護/酸化反応は本質的に、ポリヌクレオチドの合成のために使用される報告された条件下で行ってよい。当業者は理解するであろうが、本明細書における開示を考えると、脱保護/酸化ステップのための条件は、使用される保護基の性質によって変化し得る。本明細書に記載するような2’−O上の保護基と適合性であるように、同時の脱保護および酸化ステップのための条件(すなわち、3’−ヒドロキシル保護基または5’−ヒドロキシル保護基の放出のために必要な条件)は、3’−ヒドロキシル保護基または5’−ヒドロキシル保護基の脱保護をもたらす条件下で、新生ポリヌクレオチドの2’−O部位(複数可)の各々の上の保護基が新生ポリヌクレオチドに安定的に結合し続けるように選択するべきである。いくつかの実施形態では、脱保護/酸化反応のための条件は、中性から中程度に塩基性の範囲のpHを含む。さらなる実施形態では、脱保護/酸化反応のpHは、少なくとも約6.5のpHを含み、さらに少なくとも約7.0のpHを含み、またさらに少なくとも約7.5のpHを含み、少なくとも約6.0である。さらなる実施形態では、pHは、約11未満のpHを含み、さらに約10.5未満のpHを含み、またさらに約10未満のpHを含み、約12未満である。
【0099】
特定の実施形態は、本明細書に記載するように特に有利な合成条件および特性をもたらすように選択し得る組み合わせた脱保護/酸化試薬を用いる。いくつかの実施形態では、組み合わせた脱保護/酸化ステップは、中性または穏やかに塩基性の水性条件下で、伸長しているポリヌクレオチド鎖をα効果求核試薬と接触させ、反応性部位ヒドロキシル保護基(例えば、3’から5’への方向における合成のために5’末端、または5’から3’への方向における合成のために3’末端)を除去することを提供する。ここで、この保護基は求核攻撃に対して不安定である。α効果求核試薬はまた、新規に形成されたホスファイトトリエステル連結を酸化し、ホスホトリエステル連結を生じさせる。
【0100】
脱保護/酸化試薬は、ポリヌクレオチドの合成と適合性の任意の化合物または化合物の混合物でよく、本明細書において議論される特性を有する。いくつかの実施形態では、脱保護/酸化試薬は、新規に形成されたホスファイトヌクレオチド間連結を急速に酸化するのに十分に高い酸化剤の濃度を含む。特定の実施形態では、この濃度は、少なくとも0.1%vol/volであり、少なくとも0.5%vol/volを含み、さらに少なくとも約1.0%vol/volを含み、またさらに少なくとも約3.0%vol/volを含む。これらの実施形態において、酸化剤の濃度は、核酸塩基または保護された核酸塩基のかなり(例えば、合成サイクルの反復毎に1%未満)の量の酸化分解を回避するのに十分に低くあるべきである。特定の実施形態では、この濃度は、10%vol/vol未満であり、9%vol/vol未満を含み、さらに7%vol/vol未満を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、脱保護/酸化試薬は、脱保護/酸化反応の間に反応混合物中で中性から穏やかな塩基性pHでペルオキシアニオンの源を提供する。ペルオキシアニオンの濃度は、平衡状態でヒドロペルオキシド種の酸解離定数と関連するであろう。ペルオキシアニオンの濃度は、総ヒドロペルオキシド濃度(すなわち、全てのヒドロペルオキシド種、例えば、プロトン化形態および非プロトン化形態の合計)の0.01%〜99%の範囲内であり、総ヒドロペルオキシド濃度の0.05%〜90%の範囲を含み、さらに総ヒドロペルオキシド濃度の0.1%〜50%の範囲を含み、またさらに総ヒドロペルオキシド濃度の1.0%〜30%の範囲を含む。
【0102】
特定の実施形態では、α効果を示す求核性脱保護試薬は、ペルオキシドまたはペルオキシドの混合物である。いくつかの実施形態では、脱保護/酸化反応が行われるpHは一般に、求核性脱保護試薬のpKa(すなわち、相当するペルオキシアニオンの形成のためのpKa)未満の約3pHユニットから、求核性脱保護試薬のpKaを超える約3pHユニットまでの範囲である。さらなる実施形態では、脱保護/酸化反応のpHは、求核性脱保護試薬のpKaの約1pHユニット下から約pH11までの範囲である。他の実施形態では、pHは、十分高い濃度のペルオキシアニオンの形成を可能にする範囲であろう(例えば、ペルオキシドのpKaから約11のpHまで)。ペルオキシドは、無機または有機であってよい。有機過酸化物中で適切なものは、式M+OOH−のものを含む(式中、M+は、例えば、H+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、または同様のものを含めた任意の対イオンである)。いくつかの実施形態では、過酸化リチウムまたは過酸化水素およびそのアルカリ性の安定化した形態が使用される。適切な有機過酸化物には、式ROOH(式中、Rは、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール、および修飾アルキルからなる群から選択される)のものが含まれる。より詳細には、有機過酸化物は、式(VI)、式(VII)、または式(VIII)
【化22】

(式中、R13からR19は、ヒドリド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、および置換アリールからなる群から独立に選択される。)
の構造を有する。いくつかの実施形態では、α効果求核試薬は、t−ブチル−ヒドロペルオキシドまたはメタクロロ過安息香酸である。例えば、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)ペルオキシアニオンは、反応性部位ヒドロキシル上の保護基の除去のために有用であることが見出されてきた。
【0103】
上記で示したように、合成サイクルのステップは、カップリングステップおよび同時の脱保護/酸化ステップを含むことができる。本発明によるポリヌクレオチドの合成方法の一実施形態では、合成サイクルのこれらのステップは、複数回繰り返され、所望の配列を有するポリヌクレオチドを生成し得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、所望の配列および長さを有するオリゴヌクレオチドをもたらす一連のカップリングおよび脱保護/酸化ステップ後、このように得られたオリゴヌクレオチドは、合成後の脱保護ステップを経て、そこで複素環および/または2’−酸素上の保護された部位は脱保護される。例えば、このように得られたヌクレオチドのヌクレオチドサブユニットの複素環および/または2’−部位に結合した保護基を除去し、脱保護されたオリゴヌクレオチドを生じさせ得る。
【0105】
本発明によるいくつかの実施形態は、下記のスキーム8(Acはチオ炭素保護基を表す)において示されているように、合成後のRNA脱保護のための方法および組成物、特にHBF/TEMEDなどの2’−ベンゾジチオラン(BDT)基をpH3.8で除去するために使用される組成物を提供する。
【化23】

【0106】
スキーム8
上記で簡潔に述べたように、合成されたポリマーからチオ炭素保護基を除去するために、種々のプロトコルを用いてもよい。特定の実施形態では、フッ化テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムなど)などのフッ化物イオン含有溶液を使用して、保護基を直接除去する。これらの塩は、適切な濃度、例えば、1モルの濃度でテトラヒドロフラン、ジオキサン、またはアセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒に溶解し得る。TBAF(テトラブチルアモニウムフルオリド)などの酸性プロトンを含有しない溶液は、2’−ヒドロキシルからのチオカーボネート保護基、ジチオカーボネート保護基またはチオノカーボネート保護基の脱保護において、HF/TEMEDまたはHF/TEA(トリエチルアミン)などのフッ化水素酸塩より有意により良好に作用する。TBAFによるカルバメートの脱保護が、最近報告されている(Jacquemardら、Tetrahedron60:10039〜47(2004))。脱シリル化反応における非フッ化水素酸を含有するTBAFなどのフッ化物イオン塩の効率は、水分含有率を5%未満に維持することによって非常に改善されたことがこれまで示されてきた(Hogrefeら、Nucleic Acids Research21:479〜41(1993))。チオカーボネート、ジチオカーボネートまたはチオノカーボネートの脱保護効率は、溶液の水分含有率を下げることによって非常に増強されることもまた示された。これらの溶液は、2%〜4%の水を含めた2%〜6%の水などの、2%〜10%の水(v:v)を含有することができる。しかし、これらの溶液に分子ふるいを加えることによりTBAF溶液中の水分含有率を下げることによってまた、室温でのホフマン脱離と称される化学反応によって、TBAFの分解をもたらすことができる(Coxら、J.Org.Chem.:49 3216〜19(1984))。このように得られた分解生成物は、酸性塩テトラブチルアンモニウム−ヒドロビフルオリド(HFTBAまたはビフルオリド)を生じさせる。ビフルオリドが存在しないTBAFの溶液は、ビフルオリドを含有する溶液より、チオカーボネート、ジチオカーボネートまたはチオノカーボネート保護基をさらにより急速および効率的に脱保護することが示された。19Fフッ素NMRを使用し(SunおよびDiMagno、J.AM.Chem.Soc.:127、2050〜51(2005))、強塩基(例えば、これらだけに限定されないが、水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウムなど)上でTBAF溶液を保存することによりそれを除去することによって、あるいは第三級アミン(例えば、これらだけに限定されないが、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなど)、またはテトラアルキルアンモニウム水酸化物(水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)など)などを添加することによってビフルオリド含量を決定することが可能である。2’−ヒドロキシル上のチオカーボネート保護基、ジチオカーボネート保護基、チオノカルバメート保護基、またはチオノカーボネート保護基の脱保護のために使用されるTBAFの溶液は、特定の実施形態では、5%未満などの30%未満のビフルオリド、特定の実施形態では2%未満のビフルオリドを含有する。
【0107】
特定の実施形態では、TBAOH自体が、2’−チオカーボネート、ジチオカーボネートまたはチオノカーボネート保護基を脱保護することができる試薬として作用する。実際に、過剰のテトラアルキルアンモニウム水酸化物中で処理したTBAF溶液は、溶液中に10%超の水分が含有する場合でさえ、これらの新規の2’−保護基の脱保護において高度に活性である場合があることが見出された。しかしTBAOHを、ビフルオリドを含有するTBAFの溶液にビフルオリドと等しいモルで加える場合、チオカーボネート、ジチオカーボネートまたはチオノカーボネート保護基の脱保護において高度に活性であるためには、脱保護溶液のこのように得られた水分含有率は低くあるべきである。これらのTBAF/TBAOH溶液は、2%〜4%の水を含めた2%〜6%の水などの、2%〜10%の水を含有することができる。TBAOHをTBAF溶液にビフルオリド含量を超えて加える場合、このように得られた溶液は、水分含有率に関わらず、チオカーボネート、ジチオカーボネートまたはチオノカーボネート、またはチオノカルバメート保護基の脱保護において高度に活性である場合がある。したがって、要約すると、
[TBAOH]≒[HFTBA]である場合、TBAF/TBAOH中で[HO]<5%である。
[TBAOH]>[HFTBA]である場合、TBAF/TBAOH中で[HO]<30%である。
【0108】
しかし、RNA上の2’−ヒドロキシル基の脱保護に使用することができる過剰の水酸化テトラアルキルアンモニウムおよび水の両方には限度がある。過剰な水酸化テトラアルキルアンモニウムの存在下で、極性非プロトン性溶媒脱保護溶液の水分含有率が高くなりすぎた場合、このように得られたRNA生成物は、当技術分野で周知の一般の塩基機構によって分解される場合がある。特定の実施形態では、これらの溶液の水分含有率は、5%以下を含めた10%以下などの30%以下である。同様に、水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃度が極性非プロトン性溶媒溶液中で高くなりすぎると、RNA生成物はまた分解される場合がある。水酸化テトラアルキルアンモニウムは、20%以下を含めた25%以下などの30%以下の濃度で溶解するはずである。TBAOH単独(すなわち、TBAFを含まない)はまた、極性非プロトン性溶媒中で希釈されて、2’−ヒドロキシルからチオカーボネート保護基、ジチオカーボネート保護基、チオノカーボネート保護基、またはチオノカルバメート保護基を脱保護することができる。しかし、同じ希釈濃度のTBAOHを含有するTBAF溶液と比較して脱保護速度は遅い。希釈したTBAOH溶液へのRNAの曝露は、数日後2’−チオカーボネート保護基の完全な脱保護によって部分的RNA分解をもたらした。同じ希釈されたTBAOH濃度で過剰なTBAOHを含有する1モルのTBAF溶液(すなわち[TBAOH]>[HFTBA])は、数時間内でRNAの完全な脱保護をもたらした。さらに、このTBAOH/TBAF溶液へのRNAの数日間の曝露は、所望のRNA生成物の観察可能な分解を何らもたらさなかった。したがって、TBAF溶液は、脱保護反応の促進およびRNA骨格の分解からの保護の両方において役割を有するようである。TBAFの代わりに、極性非プロトン性溶媒(例として、ジオキサン、THFおよびアセトニトリルなどがあるが、これらに限定されない)に1モラーで溶解した他のテトラアルキルアンモニウム塩(例えば臭化テトラブチルアンモニウム、および酢酸テトラブチルアンモニウムなど)、およびTBAOHの添加に加えたものの両方が、RNA骨格を分解から保護する一方で、チオカーボネート保護基、ジチオカーボネート保護基、チオノカーボネート保護基、またはチオノカルバメート保護基の脱保護を促進することができることを、本発明者らはさらに見出した。これらのテトラアルキルアンモニウム塩は、極性非プロトン性溶媒溶液に、0.5モル以上の濃度を含めた0.25モル以上の濃度などの0.1モル以上の濃度で溶解するはずである。
【0109】
本発明の実施形態は、2’−O−チオカルボニル、2’−O−ジチオカルボニル、2’−O−チオノカルボニル、または2’−O−チオノカルバメート保護基を含む、RNAを脱保護するために使用される溶液のための組成物を含む。このような組成物は、TBAF、制御された量の強塩基(例えば、TBAOH、NaOH、炭酸カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムなどであるが、これらに限定されない)および無機水酸化物(例えば、LiOH、CsOHなどであるが、これらに限定されない)および制御された量の水を含むが、ただし、[TBAOH]≒[HFTBA]である場合、TBAF/TBAOH溶液は、2%〜4%の水を含めた2%〜6%の水などの、2%〜10%の水を許容することができ、[TBAOH]>[HFTBA]である場合、TBAF/TBAOH溶液は、5%以下の水を含めた10%以下の水などの30%以下の水を含有することができる。
【0110】
他の組成物は、極性非プロトン性溶媒(例として、ジオキサン、THFおよびアセトニトリルなどがあるが、これらに限定されない)中に1モラーの濃度で溶解したテトラアルキルアンモニウム塩(臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)、および酢酸テトラブチルアンモニウム(TBAA)など)を含む。極性非プロトン性溶媒に可溶性の強塩基(例えば、TBAOH、水酸化テトラアルキルアンモニウムなどであるが、これらに限定されない)および無機水酸化物(例えば、LiOH、CsOHなどであるが、これらに限定されない)をこれらの溶液に加えることによって、RNA骨格を分解から防ぐ一方で、チオカーボネート保護基、ジチオカーボネート保護基、チオノカーボネート保護基、またはチオノカルバメート保護基の脱保護を加速する。
【0111】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書において記載されたような組成物を含む。RNA脱保護溶液は、THF、ジオキサン、およびアセトニトリルから選択される極性非プロトン性溶媒中に溶解したTBAF、TBABおよびTBAAから選択されるテトラブチルアンモニウム塩の1M溶液に加えた、MeOHまたはHOに溶解した水酸化テトラアルキルアンモニウムおよび無機水酸化物から選択される10%〜30%(v/v)の強塩基の1M溶液を含み、前記RNA脱保護溶液中の水の最終含量は、20%(v/v)未満、さらに好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満である。
【0112】
さらなる実施形態では、チオノカーボネートおよびチオノカルバメートは、RNA鎖の破壊をもたらさない条件下で、アミンを使用して脱保護することができる。
【化24】

【0113】
周知の通り、RNAは、2−ヒドロキシル基を伴うエステル交換反応によって塩基条件下にて切断および分解を受ける。[Journal of Organic Chemistry、1991、56(18)、5396〜5401頁;Journal of the American Chemical Society、1999、121(23)、5364〜5372頁;Chemical Reviews、1998、98(3)、961〜990頁]。「水溶液中のRNAの2’−ヒドロキシルのpKaは、塩濃度および塩基配列によって変化する場合があるが、典型的には概ね13である[Journal of the American Chemical Society、2001、123(12)、2893〜2894頁;J Org Chem、2003、68(5)、1906〜10頁]。(プロトン化)アンモニアのpKaは、約9.2である。これは、合成的に調製されたオリゴヌクレオチドから保護基を除去するために典型的に使用される濃縮した水酸化アンモニウム水溶液は、12を超えるpHを有することを意味する。これらの高pHで、かなりの量の2’−ヒドロキシルが脱保護され、周知の塩基触媒のエステル交換反応によって、骨格切断がもたらされる。
【化25】

【0114】
メチルアミン(pKa10.6)またはトリエチルアミン(pKa10.6)などのより強い塩基は、典型的な水性条件下で、アンモニアよりもさらに速くRNA骨格切断を促進するであろう。オリゴヌクレオチド合成は典型的には、アンモニアまたはメチルアミンなどのアミン塩基の水溶液と共に除去される塩基上の保護基を使用する。RNAの場合、塩基によって触媒される骨格切断を避けるために、この手順の間2’−ヒドロキシル保護が損なわれていないことが望ましい。
【0115】
しかし、アミン塩基および2’−ヒドロキシルについて先に記載したpKaは、水性条件についてである。弱酸および塩基のイオン化定数は、有機溶媒の存在下で実質的に変化する場合があることが知られている[J Biochem Biophys Methods、1999、38(2)、123〜37頁]。双極性非プロトン性溶媒中、特にジメチルスルホキシド中の有機分子の酸性度は、広範に研究されてきた。水中で4.7のpKaを有する酢酸は、DMSO中で12.3のpKaを有し、はるかにより弱い酸である。水中で約15のpKaを有するメタノールは、DMSO中で約28のpKaを有する。一般に、荷電したアニオン種にイオン化する中性化合物(アルコキシアニオンにイオン化するヒドロキシル基など)について、溶媒の誘電体の減少は一般に、下記の平衡状態について酸平衡定数の減少(pKaの増加)をもたらす。
【化26】

【0116】
したがって、フェノールは、水(誘電率=78)中でpKaが約10であり、一方DMSO(誘電率=47)中でpKaが約16であり、アセトニトリル(誘電率=36)中でpkaが約27であり[J.Phys.Chem.、1965、69(9)、3193〜3196頁;J.Am.Chem.Soc.、1968、90(1)、23〜28頁;Journal of Organic Chemistry、2006、71(7)、2829〜2838頁]、16桁の変化である。したがって、アセトニトリル中で、フェノールは非常に弱い酸である(相当するアニオンは、非常に強い塩基である)。溶媒の誘電強度は、化合物のpKaに影響を与えることができる唯一の変数ではないことを理解すべきである。溶媒の塩基性度、極性、水素結合、ならびに他の特異的および非特異的な相互作用は、溶媒の溶媒和能力に影響を与えることができ、溶解した溶質のpKaに有意な効果を有することができる。
【0117】
プロトン化アミンの解離など、中性化合物に解離する荷電した化合物について、溶媒の誘電体の減少は一般に、pKaの比較的小さな変化のみをもたらす。
【化27】

【0118】
したがって、水中の(プロトン化)トリエチルアミンは、pKaが約11であり、一方DMSO中でpKaは約9であり、アセトニトリル中でpKaは約18である。アセトニトリル中で、トリエチルアミンは、水中よりもいくぶんより強い塩基であり(水からアセトニトリルへのΔpKaは約7である)、一方DMSO中ではそれは実際により弱い塩基である。
【0119】
結果として、RNAは、有機溶媒中のアミンを使用して2’−脱保護される場合がある。RNAの分解のための塩基によって触媒される機構は、環化および切断反応が有意な速度で起こることができるように、十分な程度までヒドロキシルを脱プロトンする塩基の能力によって決まる。2’−ヒドロキシルを脱プロトン化するアミン塩基の水溶液の場合、約4pKaユニットの差異があり、これは大差がなく、その結果アミン塩基の濃縮された溶液はヒドロキシルを有意に脱プロトン化することができる。しかし、有機溶媒が使用される場合、2’−ヒドロキシルのpKaは、アミン塩基のそれより有意に増加する。アセトニトリルなどの溶媒中で、アンモニアまたはメチルアミンなどの通常のアミンは、2’−ヒドロキシルを脱プロトン化するのに十分に強い塩基ではない。実際は、アセトニトリル中のアミン塩基は、フェノールでさえ脱プロトン化するほど十分に強くない。アンモニアは、アセトニトリル中でより強い塩基になるが(共役酸のpKaは、水からアセトニトリルに行くときに9.2から16.5に上昇する、約7のΔpKa)[J.Am.Chem.Soc.、1968、90(1)、23〜28頁]、フェノールは、比較的より弱い酸となり、pKaは約10から27に増加する(ΔpKa約17)。水中で1未満のpKaユニットのpka差異を有するフェノールおよびアンモニアの酸塩基対は、アセトニトリル中で約10pKaユニットのpKa差異を有する。RNAの2’−ヒドロキシルなどの脂肪族ヒドロキシルのアセトニトリル中の実際のpKaは、測定するのが困難な点まで増加する(計算によって、約35のpKaとなる)。アセトニトリルおよび多くの他の有機溶媒中で、アミン塩基と脂肪族アルコールとの間の溶媒が媒介する平衡状態は、10桁を超えて2種の中性種を支持し、RNAの分解は感知できるほどの速度では起こらないであろう。
【化28】

【0120】
したがって、RNAを有機溶媒中のアミン塩基の溶液に曝すことは、環外アミン保護基および2−ヒドロキシル保護基の両方のRNAの脱保護を実現する実用的方法である。アミン塩基の求核性、したがって脱保護速度は、いくつかの有機溶媒中で増強されさえする場合がある。環外アミンおよび2’−ヒドロキシルの脱保護は、同時にまたは順次に行うことができる。溶液が、保護基の適切な選択に加え、アミンおよびヒドロキシルの好ましいpKa差異を有意に変化させるための十分な水を含有する限り、RNAの分解は脱保護速度と比較して非常に遅いであろう。
【0121】
他の実施形態では、試薬の溶液の送達を避けることが望ましい。アンモニアまたはメチルアミンなどのアミン塩基は、室温および室内圧力で気体であり、多くの他のアミン塩基は、このような条件下ではかなりの蒸気圧を有する。それらは、気体として、または他の成分が窒素またはアルゴンなどの不活性ガスであるガス混合物の成分として送達することができる。
【0122】
気相中で、アミンの塩基性度およびアルコールの酸性度はまた、RNAの安定性のために好ましい。(メチルアミンのプロトン親和力は約214kcal/モルであり、一方アルコール(例えばエタノール)の気相酸性度は、約370kcal/モルである。)しかし、気相送達の場合、任意の実際の化学反応および平衡は、固相表面、ならびに水を含めた吸着された溶媒の不定の残留する量によって影響を受ける可能性があることは理解すべきである。アミンの気相送達が、有効であり、時には好ましい液相送達の代替形態であることを本発明者らは示した。あるいは、アミン塩基は、アセトニトリルまたはジオキサンなどの有機溶媒に溶解したアミンの溶液からの気相ヘッドスペース成分として送達することができる。この場合、有機溶媒蒸気もまた送達され、特定の条件下で固体支持体上にて凝縮し得る。他の代替形態は、未希釈アミンを加えるが、液体を樹脂のバルクと直接接触しないようにすることである。これは、例えば、別々の容器中にあることによって液体との接触から隔てる器へ液体を加えることによって、または少量の未希釈アミンを比較的より多い量の樹脂に加えることによって行うことができ、このようにして樹脂を部分的に湿らせるのみである。アンモニアおよびメチルアミンなどのアミンは、加圧下でのみ液体であり、(閉鎖系中で)平衡状態に達するまで気相中に自然に気化する。プロピルアミンおよびブチルアミンなどのアミンは、室温で顕著な蒸気圧を有する液体であり、より少ない程度に気化するであろう。他の代替の送達方法は、有機溶媒中にアミンを加えるが、溶液を樹脂のバルクと直接接触しないようにすることである。これは、未希釈アミン送達と同様に挙動するであろうが、このように得られた気相はまた、溶媒の蒸気圧によって決定されるように有機溶媒蒸気を含有するであろう。未希釈アミン送達の場合のように、これは閉鎖系中で行うことができ、アミンおよび溶媒は、気相と平衡状態に達し、または不活性ガス流もしくは溶媒蒸気は、開放系中で動的平衡をもたらすために使用することができる
【0123】
他の実施形態では、RNAを固体支持体の表面に共有結合しているリンカーは、アンモニアなどの塩基によって切断される場合があるが、RNA自体は樹脂から移動しないため、適切な有機溶媒中または気相中にアミン塩基の溶液を送達することには有意な利点がある。多くの有機溶媒(例えばイソプロパノールおよびアセトニトリル)中で、RNAはあまり可溶性ではなく、かつ/または固体支持体に吸着されたままであるか、結合したままであろう。これは、アミンの水溶液またはDMSO溶液による固体支持体の処理と対照的であり、リンカーの切断およびそれに続くRNAの水またはDMSO溶液への溶解をもたらす。
【0124】
一実施形態では、チオノカーボネートおよびチオノカルバメートを、合成RNAの2’−ヒドロキシルから切断することができ、アミンは所望のRNAの分解をもたらさない。
【0125】
一実施形態では、チオノカルバメートで保護された2’−ヒドロキシルの脱保護は、チオノカルバメートの切断条件および構造の両方によって決まる。一般に、チオノカルバメートの切断についていくつかの可能な機構があり、下記に適切なアミン塩基の例として使用されるアンモニアを示す。示される第1の機構は、第二級窒素を含有するチオノカルバメートについてであり、これは、イソチオシアネートの形成を介して進行する塩基によって触媒される反応を示す[Canadian Journal of Chemistry−Revue Canadienne De Chimie、2005、83(9)、1483〜1491頁]。
【化29】

【0126】
第2の機構は、カルボニル上のアンモニアの攻撃、チオノウレアおよびアルコールのそれに続く形成を伴う反応を示す[Bulletin of the Korean Chemical Society、2006、27(1)、143〜146頁]。
【化30】

【0127】
酸性水素のpKaは、R=エチルについて約13.6であると推定される[Canadian Journal of Chemistry−Revue Canadienne De Chimie、2005、83(9)、1483〜1491頁]。アンモニアなどの比較的弱い塩基では、アニオン中間体への反応は、窒素のpKaを減少させる場合があるR基によって支持され、共鳴または電子求引性誘起効果によって窒素上の負の電荷を安定化させるはずである。しかし、窒素上の負の電荷を安定化するR基はまた、アニオン中間体のイソチオシアネートへの分解を減速させるであろう。それに続くチオノウレアおよびアルコールの形成の競合する機構は、カルボニルを求核攻撃に対して活性化させるのに十分な電気陰性であるR基、および攻撃する求核試薬のための少ない立体障害によって支持されるはずである。第三級窒素化合物の場合、競合するイソチオシアネート機構についての可能性はなく、化合物は求核攻撃によってアミノ分解を受けるのみの場合がある。
【化31】

【0128】
上記の機構の1つの可能性のある初期生成物[Bulletin of the Korean Chemical Society、2006、27(1)、143〜146頁]は、下記に示される四面体の中間体である。
【化32】

【0129】
このような中間体は、1つまたは複数のプロトン移動ステップが、2’−ヒドロキシルの排除および生成物形成が起こる前に起こることを示唆する。適切なプロトン供与種の存在および反応性、または溶媒の介在は、反応が起こるために重要であり得る。
【0130】
下記に示す代替の協奏的な4中心遷移状態もまた可能である場合があり、アリールN−エチルチオノカルバメートのアセトニトリル中のアミノ分解と共に作用することが示された[Journal of Organic Chemistry、2005、70(14)、5624〜5629頁]。
【化33】

【0131】
協奏的機構では、遷移状態を安定化させる保護基および攻撃する求核試薬の構造的修飾が、一番大事なことである。
【0132】
さらなる実施形態では、チオカーボネートは、アミンを使用してカルバメートに変換されることができる。2’−O−チオカーボネートは、第一級アミンまたは第二級アミンを使用して、チオールの置き換えによって安定した修飾された2’−ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに変換することができる。
【化34】

【0133】
[核酸生成物]
本発明の態様は、本発明の方法の核酸生成物をさらに含む。本発明の方法の核酸生成物、例えば、RNAは、特定の実施形態では、2〜50個以上の長さのモノマー単位を含めた2〜100個以上の長さのモノマー単位などの、2〜200個以上の長さのモノマー単位の範囲でサイズが異なってよい。特定の実施形態では、核酸生成物のサイズは、2〜25個の長さのモノマー単位、例えば、19、20、21、または22個の長さのモノマー単位を含めた17〜23個の長さのモノマー単位などの、15〜25個の長さのモノマー単位の範囲である。
【0134】
特定の実施形態では、本発明の核酸生成物は、式(VI)
【化35】

(式中、
は、上記定義のような保護されている窒素含有塩基または保護されていない窒素含有塩基であり、
Qは、例えば、上記のようなチオ炭素保護基であり、
12は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、および置換アリールからなる群から選択され、
Mは、1を超える整数である。)
の構造を有する。
【0135】
さらなる実施形態では、核酸は、下記の式Ixa〜IXcの構造を有する。
【化36】

【0136】
さらなる実施形態では、核酸は、下記の式Xの構造を有する。
【化37】

式中、上記の構造における変数は、上記定義の通りである。
【0137】
[用途]
本発明の方法によって生成される核酸生成物は、研究、診断および治療への用途を含めて種々の用途に使用される。例えば、核酸生成物は、例えば、プローブ、プライマーなどとして研究用途に使用される。診断用途に関して、核酸生成物はまた、プローブ、プライマー、または診察プロトコルにおいて用いられる他の作用剤としての使い道を見つけることができる。治療への用途に関して、核酸生成物は、任意のDNA、RNAまたは他の核酸療法(遺伝子治療用途におけるアンチセンス核酸、干渉RNA(すなわち、iRNAまたはRNAi)用途など)としての使い道を見つける。
【0138】
核酸が合成される用途によって、核酸は、それらの合成の後にいくつかの態様で修飾される場合もあり、されない場合もある。それ自体として、特定の実施形態では、核酸生成物は、合成の後にさらに修飾されない。また他の実施形態では、核酸は、それらの合成の後にいくつかの態様で修飾される。
【0139】
種々の異なる修飾は、所望の通り核酸生成物に行い得る。例えば、核酸生成物が干渉リボ核酸(iRNA)である場合、種々の合成後の修飾が望ましい場合がある。iRNA剤は、作用剤、例えば、コレステロールの安定性、分布または細胞取込みを改善するために選択されるリガンドに結合するようにさらに修飾することができる。下記の合成後修飾は、便宜上主にiRNAの実施形態に関して記載する。しかし、このような修飾は、DNAの実施形態に容易に適合され、以下の説明は、そのような実施形態もまた包含する。
【0140】
下記の修飾は、所望の通り支持体からの核酸の切断の前または後に行い得る。
【0141】
修飾されていないRNAは、核酸の成分、すなわち、糖、塩基、およびホスフェート部分が、天然に生じるもの、例えば、人体中に天然に生じるものと同じ、または本質的に同じ分子を意味する。当該技術では、まれな、または通常ではないが、天然に存在するRNAを、修飾したRNAとして称してきた。例えば、Limbachら、(1994)Nucleic Acids Res.22、2183〜2196を参照されたい。修飾されたRNAと称される場合が多いこのようなまれまたは通常ではないRNA(明らかにこれらは典型的には転写後修飾の結果であるため)は、本明細書で使用する場合、修飾されていないRNAという用語の範囲内である。本明細書で使用する場合、修飾されたRNAは、核酸の成分の1つまたは複数、すなわち糖、塩基、およびホスフェート部分が、天然に生じたものと違う、例えば、人体に生じたものと違う分子を意味する。それらは修飾された「RNA」と称される一方、それらは当然ながら、修飾のためにRNAでない分子を含むであろう。ヌクレオシド代用物は、ハイブリダイゼーションがリボホスフェート骨格、例えば、リボホスフェート骨格の非荷電模倣体で見られるものと実質的に同様であるように、塩基が正しい空間的関係に存在することを可能にする、リボホスフェート骨格が非リボホスフェート構築体と置き換えられている分子である。上記の各々の例は、本明細書において議論されている。
【0142】
本明細書に記載する修飾は、本明細書に記載する任意の二本鎖RNAおよびRNA様分子、例えば、iRNA剤に組み込むことができる。iRNA剤のアンチセンス鎖およびセンス鎖の一方または両方を修飾することが望ましい場合がある。核酸はサブユニットまたはモノマーのポリマーであるので、下記の修飾の多くは、核酸内で繰り返される位置で行われ、例えば、塩基、またはホスフェート部分、またはホスフェート部分の非連結Oの修飾である。場合によっては、修飾は核酸において対象の位置の全てで起こるであろうが、多くの場合、実は大部分の場合、起こらないであろう。例示として、修飾は、3’ 末端または5’末端の位置でのみ起こる場合があり、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上の位置、または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド中でのみ起こる場合がある。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、または両方で起こる場合がある。例えば、非連結O位置でのホスホロチオエート修飾は、一方または両方の末端でのみ起こる場合があり、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上の位置、または鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチド中でのみ起こる場合があり、または二本鎖および一本鎖領域、特に末端で起こる場合がある。同様に、修飾は、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方上で起こる場合がある。場合によっては、センス鎖およびアンチセンス鎖は、同じ修飾または同じ種類の修飾を有するが、他の場合では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、異なる修飾を有し、例えば、場合によっては1つの鎖のみ、例えばセンス鎖を修飾することが望ましい場合がある。
【0143】
iRNA剤への修飾の導入の2つの主要な目的は、生物環境中での分解に対するそれらの安定化および薬理学的特性、例えば、薬力学的特性の改善であり、これらを下記でさらに議論する。iRNA剤の糖、塩基、または骨格への他の適切な修飾は、2004年1月16日に出願された国際出願第PCT/US2004/01193号に記載されている。iRNA剤は、2004年4月16日に出願された国際出願第PCT/US2004/011822号に記載されている塩基などの非天然塩基を含むことができる。iRNA剤は、非炭水化物環状担体分子などの非天然糖を含むことができる。iRNA剤中に使用するための非天然糖の例示的な特徴は、2003年4月16日に出願された国際出願第PCT/US2004/11829号に記載されている。
【0144】
iRNA剤は、ヌクレアーゼ耐性を増加させるために有用なヌクレオチド間連結(例えば、キラルホスホロチオエート連結)を含むことができる。さらに、または代わりに、iRNA剤は、増加したヌクレアーゼ耐性のためにリボース模倣体を含むことができる。増加したヌクレアーゼ耐性のための例示的なヌクレオチド間連結およびリボース模倣体は、2004年3月8日に出願された国際出願第PCT/US2004/07070号に記載されている。
【0145】
iRNA剤は、オリゴヌクレオチド合成のためのリガンド結合モノマーサブユニットおよびモノマーを含むことができる。例示的なモノマーは、2004年8月10日に出願された米国特許出願第10/916,185号に記載されている。iRNA剤は、2004年3月8日に出願された国際出願第PCT/US2004/07070号に記載されているものなどのZXY構造を有することができる。iRNA剤は、両親媒性部分と複合体を形成することができる。iRNA剤と共に使用するための例示的な両親媒性部分は、2004年3月8日に出願された国際出願第PCT/US2004/07070号に記載されている。
【0146】
他の実施形態では、iRNA剤は、モジュール複合体を特徴とする送達剤と複合体を形成することができる。複合体は、(a)縮合剤(例えば、例えばイオン相互作用または静電相互作用を介して、核酸を引き付ける、例えば、結合することができる作用剤)、(b)融合誘導因子(例えば、細胞膜を通して融合および/または輸送されることのできる作用剤)、および(c)ターゲッティング基、例えば、細胞または組織ターゲッティング剤、例えば、指定された細胞型に結合するレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば、抗体の1種または複数(3種全てを含めた、2種以上などの)と連結している担体剤を含むことができる。送達剤と複合体を形成したiRNA剤は、2004年3月8日に出願された国際出願第PCT/US2004/07070号に記載されている。
【0147】
iRNA剤は、iRNA二本鎖のセンスおよびアンチセンス配列間などの非標準的対合を有することができる。非標準的iRNA剤の例示的な特徴は、2004年3月8日に出願された国際出願第PCT/US2004/07070号に記載されている。
【0148】
iRNA剤は、ヌクレアーゼに対して増強された耐性を有することができる。増加したヌクレアーゼ耐性および/または標的への結合親和性のために、iRNA剤、例えば、iRNA剤のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、例えば、2’−修飾リボースユニットおよび/またはホスホロチオエート連結を含むことができる。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、いくつかの異なる「オキシ」置換基または「デオキシ」置換基で修飾または置き換えることができる。
【0149】
「オキシ」−2’ヒドロキシル基修飾の例には、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCHOR、「ロックされた」核酸(LNA)(2’ヒドロキシルが、例えば、メチレン橋によって同じリボース糖の4’炭素に結合している)、O−AMINEおよびアミノアルコキシ、O(CHAMINE、(例えば、アミン=NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が挙げられる。メトキシエチル基(MOE)(OCHCHOCH、PEG誘導体)のみを含有するオリゴヌクレオチドは、強いホスホロチオエート修飾で修飾されたものに相当するヌクレアーゼの安定性を示すことは注目すべきである。
【0150】
「デオキシ」修飾には、例えば、アミノ官能基で任意選択的に置換されていてもよい、水素(すなわち、部分的二本鎖RNAのオーバーハング部分に特に関連するデオキシリボース糖)、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ(例えば、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸)、NH(CHCHNH)CHCH−アミン(アミン=NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)、−−NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ、メルカプト、アルキル−チオ−アルキル、チオアルコキシ、ならびにアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニルが挙げられる。
【0151】
耐性を増加させる1つの方法は、2004年5月4日に出願された米国特許出願第60/559,917号に記載されているように、切断部位を同定し、そのような部位を修飾して、切断を阻害することである。例えば、ジヌクレオチド5’−UA−3’,5’−UG−3’,5’−CA−3’,5’−UU−3’、または5’−CC−3’は、切断部位としての機能を果たすことができる。したがって、5’ヌクレオチドを修飾することによって増強されたヌクレアーゼ耐性を達成し、例えば、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチド(ウリジンは、2’−修飾ヌクレオチドである)、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオチド(5’−ウリジンは、2’−修飾ヌクレオチドである)、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチド(5’−シチジンは、2’−修飾ヌクレオチドである)、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチド(5’−ウリジンは、2’−修飾ヌクレオチドである)、または少なくとも1つの5’−シチジン−シチジン−3’(5’−CC−3’)ジヌクレオチド(5’−シチジンは、2’−修飾ヌクレオチドである)をもたらすことができる。iRNA剤は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのこのようなジヌクレオチドを含むことができる。特定の実施形態では、iRNA剤の全てのピリミジンは、2’−修飾を有し、したがってiRNA剤は、エンドヌクレアーゼに対して増強された耐性を有する。
【0152】
ヌクレアーゼ耐性を最大化するために、1つまたは複数のホスフェートリンカー修飾(例えば、ホスホロチオエート)と組み合わせて2’修飾を使用することができる。いわゆる「キメラ」オリゴヌクレオチドは、2つ以上の異なる修飾を含有するものである。
【0153】
オリゴヌクレオチド骨格中にフラノース糖を含むことはまた、エンドヌクレアーゼ的切断を減少させることができる。iRNA剤は、3’カチオン基を含むことによって、またはヌクレオシドを3’−末端にて3’−3’連結で反転させることによって、さらに修飾することができる。他の代替形態では、3’−末端は、アミノアルキル基、例えば、3’C5−アミノアルキルdTで遮断することができる。他の3’結合体は、3’−5’エキソヌクレオチドの切断を阻害することができる。理論に束縛されるものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの3’結合体は、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3’−末端に結合することから立体的に遮断することによってエキソヌクレオチドの切断を阻害し得る。小さなアルキル鎖、アリール基、または複素環式結合体または修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)でさえ、3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0154】
同様に、5’結合体は、5’−3’エキソヌクレオチドの切断を阻害することができる。理論に束縛されるものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの5’結合体は、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの5’−末端に結合することから立体的に遮断することによってエキソヌクレオチドの切断を阻害し得る。小さなアルキル鎖、アリール基、または複素環式結合体または修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)でさえ、3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0155】
iRNA剤は、二重iRNA剤が少なくとも一端上に一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含む場合、ヌクレアーゼに対して増加した耐性を有することができる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、1〜4個の対を成さないヌクレオチド、他の実施形態では2〜3個の対を成さないヌクレオチドを含む。一実施形態では、末端ヌクレオチド対に直接隣接した一本鎖オーバーハングの対を成さないヌクレオチドは、プリン塩基を含有し、末端ヌクレオチド対は、G−C対であり、または最後の4つの相補的ヌクレオチド対の少なくとも2つは、G−C対である。さらなる実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、1つまたは2つの対を成さないヌクレオチドを有してもよく、例示的な実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、5’−GC−3’である。特定の実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’−末端上にある。一実施形態では、iRNA剤は、2−ヌクレオチドオーバーハング5’−GC−3’が形成されるようにアンチセンス鎖の3’−末端上のモチーフ5’−CGC−3’を含む。
【0156】
したがって、iRNA剤は、例えば、対象の体内に見出されるヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる分解を阻害するための修飾を含むことができる。これらのモノマーは、本明細書においてNRMまたはヌクレアーゼ耐性促進モノマーと称され、相当する修飾はNRM修飾と称される。多くの場合、これらの修飾は、iRNA剤の他の特性、例えば、タンパク質、例えば、輸送タンパク質、例えば、血清アルブミン、もしくはRISCのメンバーと相互作用する能力、または第1および第2の配列が、互いに二本鎖を形成するか、もしくは他の配列、例えば、標的分子と二本鎖を形成する能力もまた調節するであろう。
【0157】
1種または複数の異なるNRM修飾を、iRNA剤またはiRNA剤の配列中に導入することができる。NRM修飾は、配列またはiRNA剤中で2回以上使用することができる。
【0158】
NRM修飾は、末端にのみ置くことができるもの、および任意の場所に置くことができる他のものを含む。ハイブリダイゼーションを阻害することができるいくつかのNRM修飾を、切断部位または特にアンチセンス鎖上の対象配列または遺伝子を標的とする配列の切断領域中ではなく、末端領域のみで使用してもよい。それらは、二本鎖iRNA剤の二本の鎖間の十分なハイブリダイゼーションが維持されるならば、センス鎖中のどこでも使用することができる。いくつかの実施形態では、オフターゲットサイレンシングを最小化することができるため、切断部位またはセンス鎖の切断領域中にNRMを置くことが望ましい。
【0159】
特定の実施形態では、NRM修飾は、それらがセンス鎖またはアンチセンス鎖上に含まれているかによって、異なって分布するであろう。アンチセンス鎖上にある場合、エンドヌクレアーゼ切断を妨げるまたは阻害する修飾は、(参照することにより本明細書の一部をなすものとするElbashirら、2001、Genes and Dev.15:188に記載されているように)RISCによって媒介される切断、例えば、切断部位または切断領域に供される領域中に挿入するべきではない。標的の切断は、20または21のヌクレオチドアンチセンス鎖のほぼ中央で、またはアンチセンス鎖と相補的である標的mRNA上の第1のヌクレオチドの約10または11ヌクレオチド上流で起こる。本明細書で使用する場合、切断部位は、標的mRNA上、またはそれとハイブリダイズするするiRNA剤鎖上の切断部位のいずれかの側におけるヌクレオチドを意味する。切断領域は、切断部位のいずれかの方向の1、2、または3ヌクレオチド以内のヌクレオチドを意味する。
【0160】
このような修飾は、末端領域、例えば、対象中の配列を標的とする配列もしくは標的としない配列の末端位置または末端の2、3、4、もしくは5位に導入することができる。
【0161】
その薬理学的特性を含めたiRNA剤の特性は、例えばリガンド、例えばテザーリガンドの導入によって影響を与え調整することができる。多種多様の物質、例えばリガンドは、iRNA剤、例えば、リガンド結合モノマーサブユニットの担体に結合することができる。リガンド結合モノマーサブユニットとの関連で例を下記に記載するが、それは単に好ましいものである。実態は、他のポイントでiRNA剤にカップリングすることができる。
【0162】
重要であるのは、介在テザーを介して、直接または間接に共有結合的に担体にカップリングしているリガンドである。特定の実施形態では、リガンドは、介在テザーを介して担体に結合している。リガンドまたはテザーリガンドは、リガンド結合モノマーが伸長している鎖中に組み込まれている場合、リガンド結合モノマー上に存在し得る。いくつかの実施形態では、「前駆体」リガンド結合モノマーサブユニットが伸長している鎖中に組み込まれた後で、リガンドが「前駆体」リガンド結合モノマーサブユニット中に組み込まれる場合がある。例えばアミノ末端テザー、例えばTAP−(CHNHを有するモノマーは、例えば、伸長しているセンス鎖またはアンチセンス鎖中に組み込み得る。それに続く操作において、すなわち、前駆体モノマーサブユニットの鎖への組込み後、求電子基、例えば、ペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基を有するリガンドは、リガンドの求電子基を前駆体リガンド結合モノマーサブユニットテザーの末端求核基とカップリングすることによって、引き続いて前駆体リガンド結合モノマーに結合させることができる。
【0163】
特定の実施形態では、リガンドは、それが組み込まれているiRNA剤の分布、ターゲッティングまたは寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、例えば、このようなリガンドがない種と比較して、選択した標的、例えば、分子、細胞または細胞型、区画、例えば、細胞または器官の区画、組織、器官または体の領域について増強された親和性を提供する。
【0164】
対象とするリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション、および特異性の特性を改良することができ、また得られた天然もしくは修飾されたオリゴリボヌクレオチド、または本明細書に記載するモノマーの任意の組合せを含むポリマー分子および/または天然もしくは修飾されたリボヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を改良し得る。リガンドは一般に、例えば、取込みを増強するための治療用修飾因子、例えば、分布をモニターするための診断用化合物またはレポーター基、架橋剤、ヌクレアーゼ−耐性付与部分、および天然または通常でない核酸塩基を含むことができる。一般例には、親油性分子、脂質、レクチン、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、ビタミン、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸)、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリンターゲッティング分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣体が挙げられる。
【0165】
リガンドは、天然または組換えまたは合成分子(合成ポリマーなど、例えば、合成ポリアミノ酸)でよい。ポリアミノ酸の例にはポリリシン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例には、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン部分、例えば、カチオン脂質、カチオンポルフィリン、ポリアミンの第四級塩、またはαヘリカルペプチドが挙げられる。
【0166】
リガンドはまた、ターゲッティング基、例えば、細胞ターゲッティング剤または組織ターゲッティング剤、例えば、サイロトロピン、メラノトロピン、界面活性タンパク質A、ムチン炭水化物、グリコシル化ポリアミノ酸、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパルテート、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体を含むことができる。
【0167】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、例えば、低密度リポタンパク質(LDL)、またはアルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、またはペプチド、例えば、コリガンドに対して特異親和性を有する分子、または抗体、例えば、特定の細胞型(癌細胞、内皮細胞、または骨細胞など)に結合する抗体である場合がある。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含み得る。それらはまた、共同因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド種を含むことができる。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38MAPキナーゼの活性化因子、またはNF−κBの活性化因子でよい。
【0168】
リガンドは、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、例えば細胞の微小管、マイクロフィラメント、および/または中間径フィラメントを破壊することにより、細胞へのiRNA剤の取込みを増加させることができる物質、例えば、薬物でよい。薬物は、例えば、タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンでよい。
【0169】
一態様によれば、リガンドは、脂質または脂質をベースとする分子である。このような脂質または脂質をベースとする分子は、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する。HSA結合リガンドは、結合体の標的組織、例えば、肝臓の実質細胞を含めた肝臓組織への分布を可能にする。HSAに結合することができる他の分子はまた、リガンドとして使用することができる。例えば、ネプロキシンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質をベースとするリガンドは、(a)結合体の劣化に対する抵抗を増加させ、(b)標的細胞または細胞膜へのターゲッティングもしくは輸送を増加させ、および/または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調節するために使用することができる。
【0170】
脂質をベースとするリガンドは、結合体の標的組織への結合を調節、例えば制御するために使用することができる。例えば、HSAにより強力に結合する脂質または脂質をベースとするリガンドは、腎臓を標的とする可能性がより低く、したがって体から排出される可能性がより低い。HSAにより弱く結合する脂質または脂質をベースとするリガンドを使用して、結合体を腎臓に標的することができる。また重要なのは、その開示が参照することにより本明細書中の一部をなすものとするWO/2005/023994に記載されている脂質修飾である。
【0171】
他の態様では、リガンドは、部分、例えば、標的細胞、例えば、増殖性細胞によって取り込まれるビタミンまたは栄養素である。これらは、望ましくない細胞増殖、例えば、悪性または非悪性型のもの、例えば、癌細胞によって特徴付けられる障害を治療するために特に有用である。例示的なビタミンには、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。他の例示的なビタミンには、Bビタミン、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、または癌細胞によって取り込まれる他のビタミンもしくは栄養素が挙げられる。
【0172】
他の態様では、リガンドは、細胞浸透剤、ヘリカル細胞浸透剤である。いくつかの実施形態では、作用剤は両親媒性である。例示的な作用剤は、tatまたはアンテナペディアなどのペプチドである。作用剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣体、インバートマー、非ペプチド連結または擬似ペプチド連結、およびD−アミノ酸の使用を含めて修飾することができる。ヘリカル剤は、親油性および疎油性相を有し得るα−ヘリカル剤でよい。
【0173】
特定の実施形態では、iRNA剤は5’リン酸化されており、または5’末端でホスホリル類似体を含む。アンチセンス鎖の5’−ホスフェート修飾は、RISCによって媒介される遺伝子発現抑制と適合性のものを含む。適切な修飾には、5’−モノホスフェート((HO)2(O)P−O−5’)、5’−ジホスフェート((HO)2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’)、5’−トリホスフェート((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’)、5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’)、5’−アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾されたまたは修飾されていないヌクレオチドキャップ構造が挙げられる。他の適切な5’−ホスフェート修飾は、当業者には公知であろう。
【0174】
センス鎖を不活性化して、活性RISCの形成を妨げ、それによって潜在的なオフターゲット効果を減少させるために、センス鎖を修飾することができる。これは、センス鎖の5’−リン酸化を妨げる修飾によって、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドによる修飾によって達成することができる(Nykanenら、(2001)ATP requirements and small interfering RNA structure in the RNA interference pathway、Cell、107、309〜321を参照されたい)。リン酸化を妨げる他の修飾もまた使用することができる、例えば、5’−OHをO−MeではなくHと単に置換する。代わりに、大きなかさ高い基を、5’−ホスフェートに加え、それをリン酸ジエステル連結に変えることができる。
【0175】
所望である場合、本明細書に記載する核酸(例えば、iRNA、DNAなど)剤は、非経口的に、例えば注射、経口、局所、目へなどによって、対象への投与のために配合することができる。それ自体として、核酸は、製薬学的に許容可能なビヒクルを混合して、医薬組成物を提供することができる。説明を容易にするために、この項における配合物、組成物、および方法は、修飾されていないiRNA剤に関して主として議論される。しかし、これらの配合物、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾されたiRNA剤と共に行うことができ、この実施は本発明の範囲内であることを理解すべきである。
【0176】
配合されたiRNA剤組成物は、種々の状態をとることができる。いくつかの例では、組成物は、少なくとも部分結晶性、不均一に結晶性、および/または無水(例えば、80、50、30、20、または10%未満の水)である。他の例では、iRNA剤は、水相中に、例えば、水を含めた溶液中にあり、この形態が吸入による投与のために好ましい形態である。水相組成物または結晶性組成物は、送達ビヒクル、例えば、リポソーム(特に、水相のための)、または粒子(例えば、結晶性組成物のために、必要に応じて微粒子)中に組み込むことができる。一般に、iRNA剤組成物は、意図した投与方法と適合性のある態様で配合される。
【0177】
iRNA剤製剤は、他の作用剤、例えば、他の治療剤またはiRNA剤を安定化する作用剤、例えば、iRNA剤と複合体を形成してiRNPを形成するタンパク質と組み合わせて配合することができる。また他の作用剤には、キレート剤、例えば、EDTA(例えば、Mg24などの二価カチオンを除外するため)、塩、RNAse阻害剤(例えば、RNAsinなどの広い特異性のRNAse阻害剤)などが挙げられる。
【0178】
一実施形態では、iRNA剤製剤は、他のiRNA剤、例えば、第2の遺伝子に関してRNAiを媒介することができる第2のiRNA剤を含む。また他の製剤は、少なくとも3、5、10、20、50、または100以上の異なるiRNA種を含むことができる。いくつかの実施形態では、作用剤は、同じ遺伝子であるが異なる標的配列を対象にする。
【0179】
核酸は、適切な製薬学的に許容可能なビヒクル、すなわち、担体または希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に配合することができ、固体、半固体、液体または気体の形態の製剤、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液剤、坐薬、注射剤、吸入剤およびエアゾール剤などに配合し得る。それ自体として、作用剤の投与は、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮的、気管内などの投与を含めて様々な方法で達成することができる。
【0180】
医薬品剤形において、作用剤は、単独でまたは適切な関連物中で、および他の医薬活性化合物と組み合わせて投与し得る。下記の方法および賦形剤は、単に例示的なものであり、決して限定するものではない。
【0181】
経口製剤のために、作用剤は、単独で、あるいは適切な添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤および香味剤と組み合わせて、錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を作製することができる。
【0182】
作用剤は、水性溶媒または非水溶媒、例えば野菜油または他の同様の油、合成脂肪族酸グリセリド、より高級な脂肪族系酸のエステルまたはプロピレングリコール中でそれらを溶解、懸濁または乳化することによって、所望であれば、従来の添加剤、例えば可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤などと共に、注射のための製剤に配合することができる。
【0183】
作用剤は、吸入によって投与されるエアロゾル配合物において用いることができる。本発明の化合物は、加圧した許容できる噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などに配合することができる。
【0184】
さらに、作用剤は、乳化基剤または水溶性基剤などの種々の基剤と混合することによって、坐薬に作製することができる。本発明の化合物は、坐薬によって直腸に投与することができる。坐薬は、体温で溶融するが室温で凝固する、カカオバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコールなどのビヒクルを含むことができる。
【0185】
シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤などの経口または直腸投与のための単位剤形を提供してもよく、各投与単位、例えば、スプーン1杯、テーブルスプーン1杯、錠剤または坐薬は、1種または複数の阻害剤を含有する所定の量の組成物を含有する。同様に、注射または静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、生理食塩水または他の製薬学的に許容可能な担体中の溶液として、組成物中に阻害剤(複数可)を含み得る。
【0186】
「単位剤形」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトおよび動物対象のための単位投与量として適した物理的に個別の単位を意味し、各単位は、製薬学的に許容可能な希釈剤、担体またはビヒクルと関連して所望の効果を生じさせるのに十分な量で計算された所定の量の本発明の化合物を含有する。本発明の新規な単位剤形についての明細は、用いられる特定化合物および達成される効果、および宿主における各化合物と関連する薬力学によって変わる。
【0187】
ビヒクル、補助剤、担体または希釈剤などの製薬学的に許容可能な賦形剤は、一般で容易に利用可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤などの製薬学的に許容可能な補助物質は、一般で容易に利用可能である。
【0188】
核酸はまた、マイクロインジェクション、または小胞の融合を含めて他の経路によって組織もしくは宿主細胞中に導入し得る。Furthら(1992)、Anal Biochem205、365〜368において記載されているように、ジェット式注射もまた筋肉内投与のために使用し得る。文献(例えば、Tangら(1992)、Nature356、152 154を参照されたい)に記載されているように、核酸を金微粒子上にコーティングし、微粒子銃装置または「微粒子銃」によって皮内に送達することができ、ここでは、金微粒子をDNAでコーティングし、次いで皮膚細胞中に衝突させる。対象とするさらなる核酸送達プロトコルには、それだけに限らないが、第5,985,847号および第5,922,687号を含む対象とする米国特許(その開示は、参照することにより本明細書の一部をなすものとする);WO/11092;Acsadiら、New Biol.(1991)3、71〜81;Hickmanら、Hum.Gen.Ther.(1994)5、1477〜1483;およびWolffら、Science(1990)247、1465〜1468などにおいて記載されているものが挙げられる。例えば、上記のウイルスおよび非ウイルスによって媒介される送達プロトコルを参照されたい。したがって、重要なのは、このような送達方法において使用するための薬剤ビヒクルである。
【0189】
この方法の実施形態によって生成されるリボ核酸は、種々の異なる用途に使用され、それだけに限らないが、識別的遺伝子発現分析、遺伝子サイレンシング用途、核酸ライブラリー作製用途および治療用途が挙げられる(例えば、アンチセンスRNA、siRNAなどの生成における用途)。本発明の実施形態に従って生成されたRNAについてのこれらのタイプの有用性に関するさらなる詳細は、その開示が参照することにより本明細書の一部をなすものとする、「Array−Based Methods for Producing Ribonucleic Acids」という表題で、2006年4月13日にUS−2006−0078889−A1として公開され、2004年10月8日に出願された、係属中の米国特許出願第10/961,991号において提供されている。
【0190】
[キット]
また対象となるものは、本発明の特定の実施形態の実施において使用するためのキットである。特定の実施形態では、キットは、少なくとも2種の異なる保護されたモノマー、例えば、本発明による2’チオ炭素によって保護されたヌクレオシドモノマーを含み、キットは、同じ核酸塩基を有するモノマーまたは異なる核酸塩基、例えば、A、G、CおよびUを有するモノマーを含み得る。キットには、本発明の方法において用いられるさらなる試薬、例えば、緩衝液、酸化剤、キャッピング剤、切断剤などをさらに含み得る。
【0191】
特定の実施形態は、各々、アデニン、ウラシル、グアニン、およびシトシンを含む4種のこのようなヌクレオシドモノマーを含む。アデニン、グアニン、およびシトシンの各々は、ヌクレオシドの2’−OHを保護する同じチオ炭素保護基によるなど任意選択的に保護されている。ヌクレオシドモノマーは、DMTなどの5’−保護基、3’−保護基、および/またはホスホラミダイト基を任意選択的に含む。キットは、TBAF、tBuOOH、H、HF、HF−ピリジン、HF−TEMED、HF−TEA、ピリジン、TEMED、未希釈アルキルアミン、有機溶媒中のアミン、未希釈もしくは溶媒系中のアミンの混合物、および/またはTEAまたはTBAHなどの、合成後のRNA脱保護のための試薬をさらに含み得る。
【0192】
いくつかの他のキットの実施形態は、ヌクレオシドモノマー前駆体の調製に有用な成分を含む。キットは、TIPSClおよびジチオクロロホルメートまたはチオカルボニルクロロホルメートを含み得る。キットは、HF、ピリジン、CHCN、DMT含有遮断剤(DMTクロリドなど)、および/またはCHOP(NiPrなどの試薬をさらに含み得る。キットは、脱保護試薬/組成物、例えば、上記のようなものを含み得る。キットはまた、保護されていないリボヌクレオシドモノマー、例えば、アデノシン、グアノシン、ウリジン、および/またはシチジンなどを含み得る。
【0193】
特定の実施形態では、キットは、対象の方法を実施するための取扱説明、または取扱説明を得るための手段(例えば、使用者に取扱説明を提供するウェブページを指示するウェブサイトのURL)をさらに含み、これらの取扱説明は、被印刷物上に印刷されている場合があり、被印刷物は添付文書、包装、試薬容器などの1つまたは複数でよい。対象となるキットにおいて、1種または複数の成分は、好都合または所望のように同じ容器中または異なる容器中に存在する。
【0194】
下記の例は、本発明の化合物の合成を例示するものであり、本明細書に添付の特許請求に記載されている本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0195】
[実験]
I. 様々な2’−チオカーボネートモノマーの合成
A. 5’−O−DMT−2’−O−チオカルボニル−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトウリジンの合成
【化38】

NMI(N−メチルイミダゾール)
HF/ピリジンは、HF/ピリジン:70/30:w/wで作られた錯体である。
Rによって、トリチル化反応は遅くなる場合があり、NMIまたはDMAPは、反応を促進するために少量(0.1当量)加えることができる。2’−O−t−ブチルチオカーボネート(BSC)ウリジンを合成するために、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−(p−ニトロフェニル)カーボネートで保護されたウリジンを前駆体として使用してよい。下記で示すように、p−ニトロフェニルカーボネートを置き換えるためにナトリウム2−メチル−2−プロパンチオレートを使用してよい。
【0196】
相当するクロロチオホルメートが利用できない場合、2’−チオカーボネートの合成への一般のアプローチとして、相当するメルカプタン誘導体を使用して、それをホスゲンと反応させて、相当するクロロチオホルメートを得ることが可能であり、またはメルカプタンを2’O−(p−ニトロフェニル)オキシカルボニルで保護されたヌクレオシドと反応させることもまた可能である。
【0197】
B. 5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−t−ブチルチオカルボニル(BSC)ウリジンの合成
5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−(p−ニトロフェニル)カーボネートで保護されたウリジン(15mmole)を、ピリジンと3度同時蒸発させ、次いで真空ポンプで4時間乾燥させた。無水ピリジン(150mL)およびナトリウム2−メチル−2−プロパンチオレート(24mmole)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。生成物を、EtOAc(0〜30%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。収率76.4%、ESI MS:609(M+Li)、637(M+Cl)
【0198】
C. 5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−エチルチオカルボニル(ESC)ウリジンの合成
5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)ウリジン(15mmole)を、ピリジンと3度同時蒸発させ、次いで真空ポンプ上で12時間乾燥させた。無水ピリジン(150mL)、およびエチルクロロチオホルメート(18mmole)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。生成物を、クロロホルム(50〜100%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。
収率74.3%
ESI MS:581(M+Li)、609(M+Cl)
【0199】
D. TIPS2’−O−チオカルボニルで保護されたウリジンの除去
フッ化水素−ピリジン錯体(HF:Py7:3、7mL)を、氷冷のピリジン(8mL)のアセトニトリル(46.5mL)溶液に注意深く加えた。次いで、このように形成されたピリジン−HF試薬(32mL)を、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−カーボネートで保護されたウリジン(10mmole)を有するフラスコに移し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を水(300mL)中の塩化カルシウムの5%溶液でクエンチした。粗生成物をEtOAcで抽出し(3〜5回)、無水NaSOで乾燥させた。濾過後、有機層を濃縮乾燥し、真空ポンプ上に16時間置いた。
収率85〜100%
ESI MS:
BSC類似体:361(M+1)、383(M+Na)、399(M+K)
ESC類似体:333(M+1)、355(M+Na)、371(M+K)
【0200】
E. 5’−O−DMT2’−O−チオカルボニルで保護されたウリジン3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトの合成
2’−O−チオカーボネートで保護されたウリジン(3mmole)を、真空ポンプ上で6時間乾燥させた。無水THF(30mL)、2,4,6−コリジン(22.5mmole)およびジメトキシトリチルクロリド(3.3mmole)を加え、TLC(CHCl3/MeOH9:1)がヌクレオシド基質の完全な消失を示すまで混合物を室温で撹拌した(16〜24時間)。2,4,6−コリジン(3mmole)および1−メチルイミダゾール(1.5mmole)を、一度に加え、N,N−ジイソプロピルメチルホスホンアミド酸クロリドを反応混合物に10〜15分間にわたりゆっくりと加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、EtOAc(0〜50%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。
収率60〜65%
ESI MS:
ESCモノマー:802(M+Li)、830(M+Cl)
BSCモノマー:830(M+Li)、858(M+Cl)
31P NMR(CDCl):
ESCモノマー:152.33、151.72
【0201】
F. 5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−エチルチオカルボニル(ESC)N−フェニルオキシカルボニルシチジンの合成
5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)リボシチジン(10mmole、4.85g)を、乾燥ピリジンと同時蒸発させることによって乾燥させた。この化合物を100mlの乾燥ピリジンに溶解し、トリメチルクロロシラン(5当量、50mmole、6.34ml)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、クロロギ酸フェニルを加えた(1.2当量、12mmole、1.51ml)。反応物を室温で2時間撹拌した。2mlのメタノールを加えることによって過剰のクロロホルメートをクエンチし、反応物を水中の炭酸水素ナトリウムの飽和溶液によって希釈した。この溶液をジクロロメタンで抽出した。次いで、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。
【0202】
この反応の粗生成物を、160mlのジクロロメタンおよび30mlのTHF中の5.7gのp−トルエンスルホン酸中で希釈した。反応物を室温で15分間撹拌した。炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液200mlを加えることによって、反応物をクエンチした。この溶液をジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。
【0203】
粗生成物を乾燥ピリジンと同時蒸発させることによって乾燥させ、100mlの乾燥ピリジンに溶解し、エチルクロロチオホルメート(1.7当量、1.76ml)およびDMAP(0.1当量、0.122g)を加えた。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で希釈した。この混合物をジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。粗製物をカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 75/25)によって精製した。生成物を泡として得た(4ステップにわたり4g、60%)。
H NMR 400MHz(CDCl):8.2(s,1H);7.45−7.2(m,5H);5.95(s,1H);5.55(d,1H);4.35(m,1H);4.3(d,1H);4.2−3.95(m,2H);2.95−2.8(m,2H);1.3(t,3H);1.15−0.95(m,27H)G
質量スペクトル ESI:700.2274[M+Li]
【0204】
G. 2’−O−エチルチオカルボニルN−フェニルオキシカルボニルシチジンの合成
5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)2’−O−エチルチオカーボネートN−フェニルカルバメートシチジン(2.57g、5.7mmole)を乾燥アセトニトリルと同時蒸発させることによって乾燥させ、次いで40mlの乾燥アセトニトリルで希釈し、HF/ピリジン(30当量のHF、4.33ml)を加え、反応物を室温で5時間撹拌した。CaClの溶液を加えることによってフッ化物をクエンチし、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。
【0205】
粗製物を乾燥アセトニトリルと同時蒸発させ、次いで40mlの乾燥THFに溶解し、10当量(7.55ml)の2,4,6−コリジンを反応物に加えた。DMTCl(1.2当量、2.31g)を加え、反応物を室温で3時間30分撹拌した。さらに5当量の2,4,6−コリジン(3.3ml)、0.5当量(0.22ml)のN−メチルイミダゾールおよび2.5当量(2.75ml)のN,N−ジイソプロピルメチル−ホスホンアミド酸クロリドを加えた。反応物を室温で4時間撹拌した。混合物を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。粗製物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/ピリジン75/20/5〜20/75/5)によって精製した。所望の生成物を僅かに黄色の泡として得た(3ステップにわたり1.64g、31%)。
31P NMR 400MHz(CDCN):151.709−151.325
質量スペクトル ESI:921.332[M+Li]
【0206】
H. 環外アデノシルアミノ基の保護
5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)アデノシン(3.9mmole、2g)を、乾燥ピリジンと2度同時蒸発させた。この化合物を20mlの乾燥ピリジンに溶解し、トリメチルクロロシラン(5当量、19.6mmole、2.48ml)を加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、クロロギ酸フェニルを加えた(2当量、7.84mmole、0.98ml)。反応物を室温で2時間撹拌した。次いで、5mlの水を反応物に加え、混合物を室温でさらに2時間撹拌した。次いで、反応物を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で希釈した。この溶液をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。粗製物をカラムクロマトグラフィー(CHClからCHCl/MeOH 90/10)によって精製した。生成物を白色の泡として得た(0.62g、25%)。
H NMR 400MHz(CDCl):9.85(s,1H);8.75(s,1H);8.2(s,1H);7.4−7.2(m,5H);6.05(s,1H);5.05(m,1H);4.65(d,1H);4.15−4(m,4H);3.75(s,1H);1.15−0.95(m,27H)
【0207】
I. 5’−O−DMT−2’−O−エチルチオカルボニル−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−N−フェニルオキシカルボニルアデノシンの合成
5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)N−フェニルオキシカルボニルアデノシン(0.62g、1mmole)を無水ピリジンと同時蒸発させることによって乾燥させ、5mlの乾燥ピリジンに溶解した。エチルクロロチオホルメート(1.7当量、2mmole、0.208ml)およびDMAP(0.1当量、0.012g)を加えた。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液によって希釈した。粗反応混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。
【0208】
粗生成物を乾燥アセトニトリルと同時蒸発させることによって乾燥させ、次いで5mlの乾燥アセトニトリル中で希釈した。HF/ピリジン(30当量のHF、0.375ml)を加え、反応物を室温で5時間撹拌した。CaClの溶液を加えることによってフッ化物をクエンチし、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。
【0209】
乾燥アセトニトリルと同時蒸発させることによって粗生成物を乾燥させ、次いで5mlの乾燥THF、10当量(1.35ml)の2,4,6−コリジンを加えた。DMTCl(1.2当量、0.4g)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。さらに5当量の2,4,6−コリジン(0.7ml)、0.5当量(0.039ml)のN−メチルイミダゾールおよび2.5当量(1.45ml)のN,N−ジイソプロピルメチル−ホスホンアミド酸クロリドを加えた。反応物を室温で2時間撹拌した。混合物を炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。粗製物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/ピリジン75/20/5〜20/75/5)によって精製した。所望の生成物を白色の泡として得た。
31P NMR 400MHz(CDCl):152.925−152.040
【0210】
J. 5’−O−DMT−2’−O−チオカルボニル−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトN−チオカルボニルシチジン、N−チオカルボニルグアノシン、およびN−チオカルボニルアデノシンの合成
【化39】

【0211】
II. モノマー上の異なる2’−チオカーボネート基の切断/脱保護研究
フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(1M)のTHF溶液を使用して、様々な2’−チオカルボニル保護基を切断した。全てのチオカーボネートは、この溶液によって切断され、予想どおりより多いアルキル基を有するチオカーボネートについて半減期が増加したように思われる。
【表1】

【0212】
III. 様々な2’−チオカルボニルカーボネートおよびジチオカーボネートモノマーの合成
A. 5’,3’−TIPS−2’ペンタフルオロフェニルオキシチオカルボニル−ウリジンの合成
5’,3’TIPS−ウリジン(5mmol)をピリジンと2度同時蒸発させ、DCM/Py(9ml/4ml)溶液に溶解した。DMAP(122mg、1mmol)を加え、(20摂氏温度で)溶液を水浴に浸した。ペンタフルオロフェニルクロロチオノホルメート(1.6mL、10mmol)をゆっくりと加え(1分間にわたり)、反応物を5時間撹拌し、そこで水を加えた。溶液をDCM)で2度抽出し、水で2度洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAC/ヘキサン)上で精製し、表題化合物(64%収率)を得た。質量計算値:712.17、観測値:719.18[M+Li]+、746.2[M+Cl]−。
【0213】
B. チオノおよびジチオカーボネートの合成のための一般法
3’,5’−TIPS2’−O−ペンタフルオロフェニルオキシチオカルボニルウリジンを1,4−ジオキサンと2度同時蒸発させ、THF(3ml)に溶解し、アルゴン下に置いた。関連するアルコキシド/チオアルコキシド(2.1当量)を加え、反応混合物を1時間撹拌し、そこで飽和NaHCOを加え、溶液をEtOAcで2度抽出し、1度洗浄し、ブラインで1度洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)によって精製した。
【0214】
IV. 様々なチオノカルバメートで保護されたモノマーの合成
A. 5’−O−DMT−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−2’−O−モルホリノチオノカルバメートウリジンの合成
3’−5’−テトライソプロピルジシロキサンウリジン(ChemeGenes)、10mmol(4.8グラム)を、セラムストッパーを備えた500mlの丸底フラスコ中の100mlの無水アセトニトリルに溶解した。反応物に、1.9グラムの1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(Aldrich)を0.2グラムの4−(ジメチル)アミノピリジンと共に加えた。ヒートガンを使用して反応物を加熱し、試薬が溶解して溶液が透明となるまで撹拌した。反応物を一晩(12時間)撹拌した。12時間後、反応混合物は結晶のスラリーであった。結晶を、中型焼結ガラス漏斗を通した濾過によって単離した。生成物を冷たいアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥させた。TLC分析によって、生成物は5.97グラムの生成物(100%)をもたらす単一の種であることが確認された。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1、597.12m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1、3−ジイル)−2’−チオノイミダゾールであると確認した。生成物を、ヒートガンを使用して加熱することによって100mlの無水アセトニトリルに再溶解した。反応物に、11mmolのモルホリンを加えた。反応物を栓でふさぎ、3時間撹拌した。TLC分析は、出発物質からより速く流れる生成物へのスポットからスポットへの変換を示した。その生成物を、ガラスへのアセトニトリルの蒸発によって単離した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1、615.21m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1、3−ジイル)−2’−モルホリノ−チオノカルバメートと確認した。フッ化水素−ピリジン錯体(HF:Py 7:3、7mL)を、氷冷のピリジン(8mL)のアセトニトリル(46.5mL)溶液に注意深く加えた。次いで、このように形成したピリジン−HF試薬(32mL)を、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−モルホリノ−チオノカルバメートで保護されたウリジン(10mmole)を有するフラスコに移し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を、水(300mL)中の塩化カルシウムの5%溶液でクエンチした。粗生成物をEtOAcで抽出し(3〜5回)、無水NaSOで乾燥させた。濾過後、有機層を粘性油へと濃縮し、TLCによって単一のスポットとして示される3.5グラム(94%収率)の生成物(ESI−Q−TOF質量分析によってM+1、373.10m/eの質量を有する2’−モルホリノ−チオノカルバメートで保護されたウリジンの確認された同一性を有する)を得た。2’−O−モルホリノチオノカルバメートで保護されたウリジン(9.4mmole)を無水THF(95mL)に再溶解し、2,4,6−コリジン(70.5mmole)およびジメトキシトリチルクロリド(11.75mmole)を加え、TLC(CHCl3/MeOH9:1)がヌクレオシド基質の完全な消失を示すまで混合物を室温で撹拌した(16〜24時間)。2,4,6−コリジン(9.4mmole)および1−メチルイミダゾール(4.5mmole)を一度に加え、N,N−ジイソプロピルメチルホスホンアミド酸クロリド(23mmol)を、反応混合物に10〜15分間にわたりゆっくりと加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、EtOAc(0〜50%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0215】
B. 5’−O−DMT−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−2’−O−チオモルホリノ−1,1−ジオキシドチオノカルバメートウリジンの合成
3’−5’−テトライソプロピルジシロキサンウリジン(ChemeGenes)、10mmol(4.8グラム)を、セラムストッパーを備えた500mlの丸底フラスコ中の100mlの無水アセトニトリルに溶解した。反応物に、1.9グラムの1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(Aldrich)を0.2グラムの4−(ジメチル)アミノピリジンと共に加えた。ヒートガンを使用して反応物を加熱し、試薬が溶解して溶液が透明となるまで撹拌した。反応物を一晩(12時間)撹拌した。12時間後、反応混合物は結晶のスラリーであった。結晶を、中型焼結ガラス漏斗を通した濾過によって単離した。生成物を冷たいアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥させた。TLC分析によって、生成物は5.97グラムの生成物(100%)を生じさせる単一の種であることを確認した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1、598.12m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1、3−ジイル)−2’−チオノイミダゾールであると確認した。生成物を、ヒートガンを使用して加熱することによって100mlの無水アセトニトリルに再溶解した。反応物に、11mmolのチオモルホリン−1,1−二酸化物(TCI America)および1.1mmolの4−(ジメチル)アミノピリジンを加えた。反応物に栓をし、12時間撹拌した。12時間後、反応混合物は、結晶のスラリーであった。結晶を、中型焼結ガラス漏斗を通した濾過によって単離した。生成物を冷たいアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥させた。TLC分析によって、生成物は6.61グラムの生成物(99%)を生じさせる単一の種であることを確認した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1、664.21m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1、3−ジイル)−2’−O−チオモルホリノ−1,1−ジオキシドチオノカルバメートであると確認した。フッ化水素−ピリジン錯体(HF:Py7:3、7mL)を、氷冷のピリジン(8mL)のアセトニトリル(46.5mL)溶液に注意深く加えた。次いで、このように形成されたピリジン−HF試薬(32mL)を、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−O−チオモルホリノ−1,1−ジオキシドチオノカルバメートで保護されたウリジン(10mmole)を有するフラスコに移し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を、水(300mL)中の塩化カルシウムの5%溶液でクエンチした。粗生成物をEtOAcで抽出し(3〜5回)、無水NaSOで乾燥させた。濾過後、有機層を粘性油となるまで濃縮し、TLCによって単一のスポットとして示される3.4グラム(80%収率)の生成物(ESI−Q−TOF質量分析によってM+1、422.10m/eの質量を有する2’−O−チオモルホリノ−1,1−ジオキシドチオノカルバメートで保護されたウリジンの確認された同一性を有する)を得た。2’−O−チオモルホリノ−1,1−ジオキシドチオノカルバメートで保護されたウリジン(8.0mmole)を無水THF(80mL)に再溶解し、2,4,6−コリジン(60mmole)およびジメトキシトリチルクロリド(10.0mmole)を加え、TLC(CHCl3/MeOH9:1)がヌクレオシド基質の完全な消失を示すまで混合物を室温で撹拌した(16〜24時間)。2,4,6−コリジン(8.0mmole)および1−メチルイミダゾール(4.0mmole)を一度に加え、N,N−ジイソプロピルメチルホスホンアミド酸クロリド(20mmol)を反応混合物に10〜15分間にわたりゆっくりと加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、EtOAc(0〜50%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0216】
C. 5’−O−DMT−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−2’−O−ジメチルヒドロキシルアミノチオノカルバメートウリジンの合成
3’−5’−テトライソプロピルジシロキサンウリジン(ChemeGenes)、10mmol(4.8グラム)を、セラムストッパーを備えた500mlの丸底フラスコ中で100mlの無水アセトニトリルに溶解した。反応物に、1.9グラムの1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(Aldrich)を0.2グラムの4−(ジメチル)アミノピリジンと共に加えた。ヒートガンを使用して反応物を加熱し、試薬が溶解して溶液が透明となるまで撹拌した。反応物を一晩(12時間)撹拌した。12時間後、反応混合物は結晶のスラリーであった。結晶を、中型焼結ガラス漏斗を通した濾過によって単離した。生成物を冷たいアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥させた。TLC分析によって、生成物は5.97グラムの生成物(100%)を生じさせる単一の種であることを確認した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1,598.12m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−チオノイミダゾールであると確認した。生成物を100mlの無水アセトニトリルに懸濁させた。反応混合物に、11mmolのN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(Aldrich)、15mmolのジイソプロピルエチルアミンおよび1.1mmolの4−(ジメチル)アミノピリジンを加えた。ヒートガンを使用して反応物を加熱し、試薬を溶解させ、透明な溶液を得た。混合物を栓でふさぎ、12時間撹拌した。12時間後、反応混合物を油となるまで蒸発させ、真空下で乾燥させた。TLC分析によって、生成物は5.9グラムの生成物を生じさせる単一の種であることを確認した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1、590.24m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−O−ジメチルヒドロキシルアミノチオノカルバメートであると確認した。フッ化水素−ピリジン錯体(HF:Py7:3、7mL)を、氷冷のピリジン(8mL)のアセトニトリル(46.5mL)溶液に注意深く加えた。次いで、このように形成されたピリジン−HF試薬(32mL)を、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−O−ジメチルヒドロキシルアミノチオノカルバメートで保護されたウリジン(10mmole)を有するフラスコに移し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を、水(300mL)中の塩化カルシウムの5%溶液でクエンチした。粗生成物をEtOAcで抽出し(3〜5回)、無水Na2SO4で乾燥させた。濾過後、有機層を粘性油となるまで濃縮し、TLCによって単一のスポットとして示される3.1グラム(86%収率)の生成物(ESI−Q−TOF質量分析によってM+1,348.09m/eの質量を有する2’−O−ジメチルヒドロキシルアミノチオノカルバメートで保護されたウリジンの確認された同一性を有する)を得た。2’−O−ジメチルヒドロキシルアミノチオノカルバメートで保護されたウリジン(8.7mmole)を無水THF(90mL)に再溶解し、2,4,6−コリジン(61mmole)およびジメトキシトリチルクロリド(10.0mmole)を加え、TLC(CHCl3/MeOH9:1)がヌクレオシド基質(16〜24時間)の完全な消失を示すまで混合物を室温で撹拌した。2,4,6−コリジン(9.0mmole)および1−メチルイミダゾール(4.5mmole)を一度に加え、N,N−ジイソプロピルメチルホスホンアミド酸クロリド(22mmol)を反応混合物に10〜15分間にわたりゆっくりと加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、EtOAc(0〜50%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0217】
D. 5’−O−DMT−3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイト−2’−O−フェニルアミノチオノカルバメートウリジンの合成
3’−5’−テトライソプロピルジシロキサンウリジン(ChemeGenes)、10mmol(4.8グラム)を、セラムストッパーを備えた500mlの丸底フラスコ中の100mlの無水アセトニトリルに溶解した。反応物に、1.9グラムの1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(Aldrich)を0.2グラムの4−(ジメチル)アミノピリジンと共に加えた。ヒートガンを使用して反応物を加熱し、試薬が溶解して溶液が透明となるまで撹拌した。反応物を一晩(12時間)撹拌した。12時間後、反応混合物は結晶のスラリーであった。結晶を、中型焼結ガラス漏斗を通した濾過によって単離した。生成物を冷たいアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥させた。TLC分析によって、生成物は5.97グラムの生成物(100%)を生じさせる単一の種であることを確認した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1,598.12m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−チオノイミダゾールであると確認した。生成物を100mlの無水アセトニトリルに懸濁させた。反応混合物に、11mmolのアニリン(Aldrich)、および11mmolの4−(ジメチル)アミノピリジンを加えた。反応物に還流凝縮器を適合させ、12時間加熱還流した。12時間後、反応混合物を油へと蒸発させて、真空下で乾燥させた。生成物は、2.2−アンヒドロウリジンと共に約80%収率で存在することがTLC分析によって確認された。生成物を、メタノール/塩化メチレングラジエント(0〜5%)を使用してシリカゲル上で精製した。ESI−Q−TOF質量分析によって、生成物をM+1,621.33m/eの質量を有する5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−O−フェニルアミノチオノカルバメートであると確認した。フッ化水素−ピリジン錯体(HF:Py 7:3、7mL)を、氷冷のピリジン(6.5mL)のアセトニトリル(37.2mL)溶液に注意深く加えた。次いで、このように形成されたピリジン−HF試薬(25mL)を、5’,3’−O−(テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−2’−O−ジメチルヒドロキシルアミノチオノカルバメートで保護されたウリジン(8mmole)を有するフラスコに移し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を、水(300mL)中の塩化カルシウムの5%溶液でクエンチした。粗生成物をEtOAcで抽出し(3〜5回)、無水Na2SO4で乾燥させた。濾過後、有機層を粘性油となるまで濃縮し、TLCによって単一のスポットとして示される2.4グラム(81%収率)の生成物(ESI−Q−TOF質量分析によってM+1,379.18m/eの質量を有する2’−O−フェニルアミノチオノカルバメートで保護されたウリジンの確認された同一性を有する)を得た。2’−O−フェニルアミノチオノカルバメートで保護されたウリジン(6.4mmole)を無水THF(65mL)に再溶解し、2,4,6−コリジン(45mmole)およびジメトキシトリチルクロリド(8.0mmole)を加え、TLC(CHCl3/MeOH9:1)がヌクレオシド基質(16〜24時間)の完全な消失を示すまで混合物を室温で撹拌した。2,4,6−コリジン(6.4mmole)および1−メチルイミダゾール(3.2mmole)を一度に加え、N,N−ジイソプロピルメチルホスホンアミド酸クロリド(16mmol)を反応混合物に10〜15分間にわたりゆっくりと加えた。次いで、反応混合物をさらに2時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を、EtOAc(0〜50%)のグラジエントと共にヘキサンを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0218】
V. 固体支持体上のオリゴウリジン合成のための一般手順
標準的RNAサイクルによってGlen ResearchからのdT−Q−CPGカラムを使用して1マイクロモルスケールで全ての合成を行った。カップリングステップのために、ホスホラミダイトおよびテトラゾールを合成カラムに送達し、10分間置いた。
【0219】
全ての合成ステップの完了後、ホスフェート部分上のメチル保護基を除去するために、オリゴリボヌクレオチド(まだCPGに結合している)を二ナトリウム2−カルバモイル−2−シアノエチレン−1,1−ジチオレートのDMF(1mL)溶液(1M)で30分間室温にて処理し、次いで水、その後アセトニトリルによって洗浄し、アルゴンによって乾燥させた。
【0220】
2’−保護されたオリゴヌクレオシドを含有するチオノカルバメートについて、シアノエチルホスフェート保護基を、無水アセトニトリル中の20%ジエチルアミンを使用して室温にて1時間で切断することができる。
【0221】
オリゴマーを固体支持体から切断し、THF(1mL)中のTBAF溶液(1M)による処理によって2’−脱保護した。TBAF溶液は5%未満の水分含有率で乾燥させなければならないことに留意するのが重量である。UT五量体について、脱保護は1時間(ESC保護)および6時間(BSC保護)以内に完了した。
【0222】
0.1MのTEAAで反応物をクエンチし、標準的手順を使用してPoly−pakカートリッジ上で乾燥させ、蒸発乾固させた。このように得られた反応生成物を水に溶解し、HPLCによって分析した[ODS−Hypersil(5m)、カラム4.0×250、流量1.5mL/min、50mMのTEAB中の0〜20%MeCN(直線勾配)、40分間]。
【0223】
場合によっては、オリゴマーを、TEMED/HF/MeCN混合物(2:1:7、1mL)で室温にて40分間処理することによって、(2’−脱保護を行わずに)固体支持体から切断した。上記のように、反応物をクエンチし、脱塩、分析した。
【0224】
チオノカーボネートおよびチオノカルバメート保護基について、無水アミンを使用して、オリゴヌクレオチドを支持体から切断し、脱保護した。典型的な条件は、80psiの無水アンモニアガス、室温、6〜24時間;30psiの無水メチルアミン、室温、1〜6時間;アンモニアを無水アセトニトリルに溶解、6〜24時間;エチレンジアミンをフェノールに溶解、6〜12時間;1、3−プロパンジアミン、未希釈、4〜16時間、モルホリン、未希釈、16〜48時間;無水アセトニトリル中のヒドロキシメチルアミン、4〜12時間であった。
【0225】
気体状アミンを排気し、固体支持体を無水アルゴンガス流で洗浄した。次いで、固体支持体を真空下に2〜12時間置き、次いで緩衝化した水溶液を使用してオリゴヌクレオチドを支持体からすすぎ、HPLCによって分析した[ODS−Hypersil(5m)、カラム4.0×250、流量1.5mL/min、50mMのTEAB中の0〜20%MeCN(直線勾配)、40分間]。無水溶媒に溶解した無水未希釈アミンまたはアミンを、3〜10容のアセトニトリルを使用して支持体からすすいだ。このように得られた支持体を無水アルゴンガス流で洗浄した。次いで、固体支持体を真空下に2〜12時間置き、次いで緩衝化した水溶液を使用してオリゴヌクレオチドを支持体からすすぎ、HPLCによって分析した[ODS−Hypersil(5m)、カラム4.0×250、流量1.5mL/min、50mMのTEAB中の0〜20%MeCN(直線勾配)、40分間]。
【0226】
VI. 固体支持体上の3’−TU(2’ESC)POC(2’ESC)POC(2’ESC)−POC(2’ESC)POC(2’ESC)の混合配列の合成
標準的RNAサイクルによってGlen ResearchからのdT−Q−CPGカラムを使用して1マイクロモルスケールで合成を行った。カップリングステップのために、ホスホラミダイトおよびテトラゾールを合成カラムに送達し、10分間置いた。
【0227】
このオリゴリボヌクレオチド合成において使用されるホスホラミダイトは、U2’ESC2’O−エチル−チオカルボニル5’−O−DMT3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトウリジン;CPOC2’ESC(2’O−エチルチオカルボニル5’−O−DMT3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトN−フェニルオキシカルボニルシチジン)およびAPOC2’ESC2’O−エチルチオカルボニル5’−O−DMT3’−O−[メチル−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトN−フェニルオキシカルボニルシチジン)であった。
【0228】
全ての合成ステップの完了後、およびホスフェート部分上のメチル保護基を除去するために、オリゴリボヌクレオチド(まだCPGに結合している)を、DMF(1mL)中の二ナトリウム2−カルバモイル−2−シアノエチレン−1,1−ジチオレートの1Mの溶液で30分間室温にて処理し、次いでDMF、次にメタノール、次にアセトニトリルで洗浄し、アルゴンによって乾燥させた。
【0229】
オリゴマーを固体支持体から切断し、THF(1mL)中のTBAF溶液の1Mの溶液による一晩の処理によって2’−脱保護し、それに10%(v/v)のMeOH中のTBAOH(1M)を加えた。
【0230】
0.1MのTEAAで反応物をクエンチし、標準的手順を使用してPoly−pakカートリッジ上で脱塩し、蒸発乾固させた。このように得られた反応生成物を水に溶解し、HPLCによって分析した[ODS−Hypersil(5m)、カラム4.0×250、流量1.5mL/min、50mMのTEAB中の0〜20%MeCN(直線勾配)、40分間]。
【0231】
VII. 脱保護
THF中のテトラブチルアンモニウムフルオリドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、4.3%であると見出した。−60℃での溶液の19F NMRを使用して、10%でのビフルオリド濃度を決定した。溶液を無水水酸化ナトリウムペレット上で9日間保存すると、水分含有率は3.1%に下がり、ビフルオリド含量は1%に下がった。この溶液は、RNA五量体を1時間で脱保護することが示された。
【0232】
THF中のテトラブチルアンモニウムフルオリドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、4.3%であると見出した。溶液の19F NMRを使用して、10%でのビフルオリド濃度を決定した。溶液を無水炭酸カリウム上で9日間保存すると、水分含有率は3.7%に下がり、ビフルオリド含量は0%に下がった。この溶液は、RNA五量体を1.5時間で脱保護することが示された。
【0233】
THF中のテトラブチルアンモニウムフルオリドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、4.3%であると見出した。−60℃での溶液の19F NMRを使用して、10%でのビフルオリド濃度を決定した。水10%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって12%、および19F NMRを使用してビフルオリド0%であった。この溶液は、RNA五量体を3時間で脱保護することが示された。
【0234】
THF中のテトラブチルアンモニウムフルオリドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、4.3%であると見出した。溶液の19F NMRを使用して、10%でのビフルオリド濃度を決定した。メタノール10%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって3.2%、および19F NMRを使用してビフルオリド0%であった。この溶液は、RNA五量体を45分間で脱保護することが示された。
【0235】
THF中のテトラブチルアンモニウムフルオリドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、4.3%であると見出した。溶液の19F NMRを使用して、10%でのビフルオリド濃度を決定した。メタノール20%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって3.4%、19F NMRを使用してビフルオリド0%であった。この溶液は、RNA五量体を30分間で脱保護することが示された。
【0236】
THF中のテトラブチルアンモニウムブロミドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、1.8%であると見出した。水10%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。この溶液は、RNA五量体を1.2時間で脱保護することが示された。
【0237】
THF中のテトラブチルアンモニウムブロミドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、1.8%であると見出した。水20%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。この溶液は、RNA五量体を45分間で完全に脱保護することが示されたが、いくらかの分解生成物があった。
【0238】
THF中のテトラブチルアンモニウムブロミドの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、1.8%であると見出した。メタノール20%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって2.1%であった。この溶液は、RNA五量体を30分間で脱保護することが示された。
【0239】
THF中の酢酸テトラブチルアンモニウムの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、2.2%であると見出した。メタノール20%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって2.4%であった。この溶液は、RNA五量体を30分間で脱保護することが示された。
【0240】
ジオキサン中の酢酸テトラブチルアンモニウムの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、1.8%であると見出した。メタノール20%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって2.1%であった。この溶液は、RNA五量体を1.5時間で脱保護することが示された。
【0241】
アセトニトリル中の酢酸テトラブチルアンモニウムの1.0モル溶液を、カールフィッシャー滴定によって水分含有率について分析し、1.6%であると見出した。メタノール20%中の水酸化テトラブチルアンモニウム1.0モル(vol/vol)を、この溶液に加えた。水の最終濃度は、カールフィッシャー滴定によって1.8%であった。この溶液は、RNA五量体を30分間で脱保護することが示された。
【0242】
A. 2’−エチルチオカーボネートで保護された化合物上のDMSO中のTBAFを使用したRNAオリゴヌクレオチドの脱保護
TU20
HPLC
分析
【表2】

ESI−Q−TOF質量分析
【表3】

M(測定値):6364.0
M(U20T、計算された最も強いピーク):6364.6
【表4】

TU40
HPLC分析
【表5】

【0243】
B. アンモニアガスを使用したTU2’−チオノカルバメートの脱保護
2’−チオノモルホリノカルバメート
【化40】

80psiでのアンモニアガスによる処理
HPLC分析
【表6】

ESI−トラップ質量分析
【表7】

気体メチルアミン(30psi)による処理
HPLC分析
【表8】

ESI−トラップ質量分析
【表9】

【0244】
C. 2’−チオノチオモルホリノ−1,1−ジオキシドカルバメート
【化41】

80psiでのアンモニアガスによる処理
HPLC分析
【表10】

ESI−トラップ質量分析
【表11】

30psiでの気体メチルアミンによる処理
HPLC分析
【表12】

ESI−トラップ質量分析
【表13】

【0245】
略語
本開示では、下記の略語は下記の意味を有する。定義されていない略語は、それらの一般に受け入れられる意味を有する。
℃=摂氏温度
hr=時間
min=分
sec=秒
μM=マイクロモル
mM=ミリモル
M=モル
ml=ミリリットル
μl=マイクロリットル
mg=ミリグラム
μg=マイクログラム
DMAP=4,4’−ジメチルアミノピリジン
DMT=ジメトキシトリチル
NMI=N−メチルイミダゾール
TBAF=フッ化テトラブチルアンモニウム
TBAOH=水酸化テトラブチルアンモニウム
TBAA=酢酸テトラブチルアンモニウム
TBAB=臭化テトラブチルアンモニウム
TBDMS=tert−ブチル−ジメチルシリル
TIPS=1,3−テトライソプロピルジシロキサン
TEA=トリエチルアミン
TEAA=酢酸トリエチルアンモニウム
TEAB=炭酸水素トリエチルアンモニウム
TEMED=N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン
RP−HPLC=逆相高速液体クロマトグラフィー
【0246】
文献
Beigelman L,and Serebryany V,Nucleosides,Nucleotides,and Nucleic Acids 22:1007−1009(2003).
Capaldi et al.,Nucleic Acids Research 22(12):2209−2216(1994).
Greene, et al.,"Protective Groups in Organic Synthesis,"John Wiley and Sons,Second Edition(1991).
Hogrefe et al., Nucleic Acids Research 21(20):4739−4741(1993).
March, Advanced Organic Chemistry,McGraw Hill Book Company,New York(1977).Pages251−259.
Markiewicz WT,J.Chem Research(S)24−25(1979).
Ogilvie et al.,Can.J.Chem. 57:2230−2238(1979).
Ogilvie et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85: 5764 (1988).
Rao et al.,J.Chem.Soc., Perkin Trans.2:43−55 (1993).
Reese CB, Org.Biomol. Chem. 3(21):3851−68 (2005).
Sakatsume et al.,Tetrahedron 47:8717− 8728 (1991).
Scaringe et al.,Nucleic Acids Research 18(18):5433−5441 (1990).
Usman et al.,J.Am.Chem.Soc.109:7845(1987).
【0247】
理解を明確にする目的のために上記の発明を説明および例として少し詳しく説明してきたが、本発明の教示の観点から、添付の特許請求の趣旨または範囲を逸脱することなく、一定の変化および修飾をそれに対して行い得ることは当業者には容易に明らかである。
【0248】
したがって、上記は、本発明の原理を単に例示する。当業者であれば、本明細書において明示的に記載または示していないが、本発明の原理を具体化し、その精神および範囲内に含まれる様々な組合せを考案することができるであろうことを理解されたい。さらに、本明細書において記載された全ての例および条件的な言語は、本発明の原理および当該技術を推進するために本発明者らが寄与する概念の理解において読者の助けとなることを主として目的としており、このように明確に列挙した例および条件に限定されるものではないと解釈される。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体例を列挙した本明細書における全ての記述は、その構造的および機能的両方の等価物を包含することを意図する。さらに、このような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物、すなわち、構造に関わらず同じ機能を遂行する開発された任意の要素の両方を含むことを意図する。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され記載された例示的な実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2’ヒドロキシルチオ炭素保護基を含むヌクレオシドモノマー。
【請求項2】
前記2’ヒドロキシルチオ炭素保護基が、チオカーボネート保護基である、請求項1に記載のヌクレオシドモノマー。
【請求項3】
下記構造
【化1】

(式中、
は、保護されている複素環または保護されていない複素環であり、
またはRの1つは、水素、保護基、およびホスホラミダイト基から独立に選択され、
XおよびYは、独立に、硫黄または酸素であり、XおよびYの少なくとも1つは、硫黄であり、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから独立に選択される)
を有する、請求項2に記載のヌクレオシドモノマー。
【請求項4】
前記2’ヒドロキシルチオ炭素保護基が、チオノカルバメート保護基である、請求項1に記載のヌクレオシドモノマー。
【請求項5】
下記構造
【化2】

(式中、
は、保護されている複素環または保護されていない複素環であり、
またはRの各々は、水素、保護基、およびホスホラミダイト基から独立に選択され、
Nは、第二級アミン(−NH−Z)または第三級アミン(−N−ZZ’’)であり、ZおよびZ’’は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、置換アリールから選択され、ZまたはZ’’は、Nに環状連結することができる)
を有する、請求項4に記載のヌクレオシドモノマー。
【請求項6】
(a)保護されていないヒドロキシル基を有するヌクレオシド残基および2’保護ヌクレオシドモノマーを提供するステップであって、前記2’保護ヌクレオシドモノマーが、2’チオ炭素保護基を含むステップと、
(b)前記ヌクレオシドモノマーを前記ヌクレオシド残基に共有結合させて、核酸を生成するのに十分な条件下で、前記ヌクレオシド残基を前記ヌクレオシドモノマーと接触させるステップと
を含む、核酸を合成する方法。
【請求項7】
前記核酸を酸化および脱保護剤に曝すステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接触ステップを少なくとも一度反復するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記2’ヒドロキシル保護基を除去するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヌクレオシド残基が、固体支持体に共有結合をしている、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸を前記固体支持体から切断し、遊離核酸を生成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遊離核酸を化学的に修飾し、修飾された核酸を生成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記修飾された核酸を、製薬学的に許容可能なビヒクルと混合するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸を化学的に修飾して修飾された核酸を生成し、次いで前記化学修飾された核酸を前記固体支持体から切断するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
下記構造
【化3】

(式中、
は、保護されている窒素含有塩基または保護されていない窒素含有塩基であり、
Qは、チオ炭素保護基であり、
12は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アリール、および置換アリールからなる群から選択され、
mは、1を超える整数である)
を含む核酸。

【公表番号】特表2010−526835(P2010−526835A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507715(P2010−507715)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/063342
【国際公開番号】WO2008/141248
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【出願人】(308032460)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト (25)
【Fターム(参考)】