説明

SAW(表面音響波)識別タグの判別方法

1つの実施形態で(1)SAWタグ周波数帯で動作する電子デバイスから放射される信号を検出する工程、(2)信号の送信パターンの中のゼロ期間を識別する工程および(3)ゼロ期間の間に情報の通信を実行する工程を含む表面音響波(SAW)識別タグの判別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に表面音響波(SAW)識別タグの判別方法に関し、より詳細には表面音響波無線周波数識別タグから応答信号を分離し、それらのタグ上の符号化された情報を識別するための統合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、本発明の譲受人に譲渡され、本明細書に援用される、2003年9月15日に出願された米国仮出願第60/503,136号「Proposal for a Low Cost RFID Tag」の利益を主張するものである。
【0003】
コスト、データ容量および信頼可能な範囲に関して、従来技術の無線周波数識別(RFID)タグにおける固有の現存する制限に対処し、これを克服するために、識別タグとしてSAWデバイスを利用した新たな技術が開発されてきた。SAWタグは、本発明の譲受人に譲渡され、本明細書に援用される米国特許出願第10/024,624号「Surface Acoustic Wave Identification Tag Having Enhanced Data Content and Methods of Operation and Manufacture Thereof」、Hartmann,Clinton S.で詳細に説明されている。同時位相および時間偏移変調を含むSAWタグ上のデータの符号化に使用される原理は、同じく本発明の譲受人に譲渡され、本明細書に援用される米国特許出願第10/062,833号「Modulation by Phase and Time Shift Keying and Method of Using the Same」、Hartmann,Clinton S.で詳細に説明されている。グループ当たりマルチ・パルス変調を同時位相および時間偏移変調と結合することによるデータの符号化に使用される原理は、同じく本発明の譲受人に譲渡され、本明細書に援用される米国特許出願第10/062,894号「Modulation by Combined Multi−pulse per Group with Simultaneous Phase and Time Shift Keying and Method of Using the Same」、Hartmann,Clinton S.で詳細に説明されている。SAW識別タグおよびSAW識別タグ読み取り機に関するさらなる関連情報は、再度本発明の譲受人に譲渡され、本明細書に援用される米国特許第6,708,881B1号「Reader for a High Information Capacity Saw Identification Tag and Method of Use Thereof」、Hartmann,Clinton S.で詳細に言及されている。
【0004】
問い合わせを受けるRFIDタグは、問い合わせ信号に応えて無線信号を反射するか、または転送する。返信または応答信号は、復号化される場合、タグおよびタグに関連する任意の物体を識別するデータを含む。識別タグとして使用されるSAWデバイスは、大量のデータでの符号化が可能である。64または96ビットのデータで符号化される場合、特定の電子製品コード(EPC)仕様に従って、遠隔地から正確にタグを識別するための信頼できるシステムおよび方法が必要とされる。RFIDタグが使用される環境で、その他の電子デバイスもまた使用されることはしばしばある。これらのその他のデバイスにより送信される信号によって、問い合わせパルスへの応答を検出するのが困難になる。
【0005】
この問題は、ユーザが多数の物体を持っており、各々がそれ自体に固有の識別タグを有しているという状況で最も良く理解される。多数の識別タグが問い合わせパルスに応答して信号を返しているということに加え、他の無線周波数信号が存在することは大いにあり得る。例えば、倉庫または出荷施設で使用されるSAW識別タグ・システムが、無線ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)も動作している環境で操作されるということは、大いにあり得る。多数の物体の中で特定の物体を識別するために、各物体の各SAWタグからの応答を同時に生成する問い合わせ信号が送信される。SAWタグ読み取り機はSAW識別タグから返された信号の識別が可能でなければならないだけでなく、それらの信号への問い合わせ信号および応答が無線LANを妨害しないこともまた保証しなければならない。さらに、SAWタグ読み取り機はまた、無線LANによって生じるいかなる信号妨害にも対処できなければならない。したがって、SAWタグにとっては、タグが互いに直ちに区別されるように符号化されることが重要である。SAWタグ読み取り機が他の電子信号からのSAWタグの応答を判別することが可能であり、SAW識別タグ・システムからの信号が他のデバイスを妨害しないことも同様に重要である。SAWタグの固有のデータが直ちに区別されるようにSAWタグを符号化し、読み取る方法が必要とされる。SAW識別タグ・システムが他の信号が存在する環境で動作できるようにする方法もまた必要とされる。他のデバイスを妨害せずにSAW識別タグ・システムが動作できるようにする方法もまた必要とされる。
【特許文献1】米国仮出願第60/503,136号
【特許文献2】米国特許出願第10/024,624号
【特許文献3】米国特許出願第10/062,833号
【特許文献4】米国特許出願第10/062,894号
【特許文献5】米国特許第6,708,881B1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野で必要とされるのは、他の信号生成電子デバイスが用いられる環境でSAW識別タグ・システムを操作および使用し、なおかつ複数のSAWタグの応答の間の判別を確実に行う方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上で論じた従来技術の欠陥に対処するために、本発明は1つの実施形態で、(1)SAWタグの周波数帯で動作する電子デバイスから放射される信号を検出する工程、(2)信号の送信パターンの中のゼロ期間を識別する工程および(3)ゼロ期間中に情報の通信を実行する工程を含むSAW識別タグの判別方法を提供する。
【0008】
したがって、本発明は、SAW問い合わせパルスの送信か、またはそうした問い合わせパルスへの反射応答の受信のいずれかを妨害する可能性のある他の信号が存在する環境で、SAW識別タグ・システムを操作する方法を提供する。本発明によって、他の電子デバイスと同じ環境での、それらのデバイスの動作を妨害することのない動作もまた可能となる。例えば、SAW識別タグ・システムが、ISM周波数範囲内で動作する自動ドア開放システムのある食料品店で使用される場合、本明細書で説明する方法によって、SAWタグ・システムはドア開放システムによって送信される信号を検出し、その動作を調整してドア開放システムによって生じるいかなる妨害をも克服することができる。同じ理由から、SAWタグ識別システムは、ドアの開閉の繰り返しを生じさせることなく食料品店内で操作されることが可能である。
【0009】
1つの実施形態でゼロ期間(null period)とは周波数がゼロの期間のことであり、別の実施形態でゼロ期間とは時間がゼロの期間のことである。SAW識別タグ・システムは衝突信号を検出する場合、衝突信号が存在しない時間のゼロ期間の間に通信することができるか、またはゼロの周波数が検出される場合、システムは衝突しない周波数で動作するように通信周波数を変更することができる。
【0010】
他のデバイスが存在する中での動作が可能であり、かつそのようなデバイスを妨害しないことが重要であるために、本発明の別の実施形態で、SAWタグ情報の通信のために比較的低電力の設定が設けられる。別の実施形態で、通信に省略バースト転送(short transmission burst)が使用される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、SAWタグ周波数帯内で信号を放射する少なくとも1つの他の電子デバイスと同期してデータ情報を通信するためのSAW識別タグ・システムを提供する。1つの実施形態で通信は時間に基づいて同期化され、一方で別の実施形態では通信は周波数に基づいて同期化される。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、基板上に配置された少なくとも2つのSAWタグ識別番号リフレクタ群を有するSAW識別タグを提供する。同じく基板上に配置されるのは、少なくとも2つのタグ識別番号リフレクタ群のうちの1つに含まれるデータに依存する第1エラー検査リフレクタ群である。第2エラー検査リフレクタ群もまた基板上に配置され、少なくとも2つのタグ識別番号リフレクタ群のうちの少なくとも残りの1つに含まれるデータに依存する。さらに、基板上の第3エラー検査リフレクタ群は、少なくとも残り1つのタグ識別番号リフレクタ群、および第2エラー検査リフレクタ群に含まれるデータに依存する。SAW識別タグのさらに別の実施形態は、同期のリフレクタ群を基板上に有する。
【0013】
上記の変形形態で、本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群に含まれるデータに依存する第1エラー検査リフレクタ群とともに基板上に配置された少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群を有するSAW識別タグを提供する。この実施形態は、少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群および第1エラー検査リフレクタ群に含まれるデータに依存する、基板上に配置された第2エラー検査リフレクタ群を有する。その他の実施形態は、基板上に同期のリフレクタ群も有するSAW識別タグを提供する。
【0014】
本発明のさらなる別の実施形態で、SAW識別タグは、実質的に同種の第1反射特性を有するリフレクタとともに基板上に配置された第1リフレクタ群を有する。基板上に配置された第2リフレクタ群は、実質的に同種の第2反射特性を有する。別の実施形態で、第1の反射特性と第2の反射特性とは実質的に同種である。
【0015】
上記のものは本発明の概略の、むしろ広範な、好ましい、代替的な特徴を有しており、そのため当業者であれば以下で述べる発明の詳細な説明をより良く理解することができよう。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴は以下で説明される。本発明と同じ目的を実行するために、その他の構造の構成、または変更のための基礎として開示される概念および特定の実施形態を当業者は容易に使用できることを理解されたい。当業者にはまた、そうした均等構造が、その広範な形態の中で本発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解されたい。
【0016】
本発明をより完全に理解するために、これより添付の図面に関連した以下の説明を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
最初に図1を参照すると、RFIDタグとして使用される種類のSAWタグ100が図示されている。図示された実施形態は、無線周波数(RF)問い合わせ信号110を送信する読み取りアンテナ105を備える。RF信号110はタグ100上のアンテナ115によって受信され、圧電基板130上に配置されたトランスジューサ120を励起して最初の音響パルス140が生じるようにする。最初の音響パルス140は、基板130の表面135の上を下ってゆくにつれてその上に配置されたリフレクタ150に行き当たり、最初の音響パルス140の一部の反射を生じさせる。本明細書では、この反射されたパルスを応答音響パルス160と呼ぶ。
【0018】
図示した実施形態の特徴は、複数のリフレクタ150が、複数の応答音響パルス160を生成するように時間および位相位置に従って基板130上に配列されていることである。トランスジューサ120がこれらの応答音響パルス160を受信すると、アンテナ115を通して送信されるRF応答信号170が生成され、読み取りアンテナ105によって検出される。SAWタグ読み取り機(不図示)は次に、応答音響パルス160の中から検出される事前に定義された時間、位相および振幅パラメータを考慮して識別子を決定する。
【0019】
SAWタグ100を含むRFIDタグは、産業、科学および医学(ISM)周波数帯で動作する。米国では、この帯域は2.40から2.483GHzの範囲の80MHzの幅である。この帯域は、主に無線ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)やBluetooth(商標)無線トランシーバといった他のアプリケーションに使用されるため、SAWタグはこれらのアプリケーションが存在する中で動作し、かつこれらのアプリケーションを不必要に妨げないように構成されなければならない。SAWタグ100は、40MHzの帯域幅などの限られた周波数帯で動作するように構成されてもよいが、SAWタグ100自体はより広い帯域幅を支持し、ここでの動作が可能である。
【0020】
SAWタグ100は、他のアプリケーションが動作する環境と同じ環境で、同じISM周波数帯を用いて使用されることがしばしばあるので、周波数の混信の可能性がある。したがって、ISM帯域での動作には、SAWタグ100およびSAWタグ読み取り機が妨害のある環境内で動作できることが必要とされる。SAW識別タグ・システムの動作によって、ISM帯域で他のアプリケーションが妨害されないこともまた重要である。
【0021】
ここで図2を参照すると、同じISM周波数範囲で無線LANデバイス210および電子レンジ215が動作している環境の中で動作するSAW識別タグ・システム200が図示されている。無線LANデバイス210および電子レンジ215から放射される信号211、216を検出する検出モジュール206が、SAWタグ読み取り機205に接続されている。検出モジュール206もまた、無線LANデバイス210および電子レンジ215の送信パターン220の中のゼロ期間221を検出し、識別する。ゼロ期間221は信号221、216が送信されない場合の時間のゼロ期間221であるか、または信号が送信されていないISM帯域内の周波数が識別される場合の周波数のゼロ期間のいずれかであってよい。SAWタグ読み取り機205はこの情報を用いて、衝突信号211、216が送信されない場合に通信を行うか、またはそれがISM範囲内で周波数ゼロに変わることができ、その周波数を用いて通信を行うかのいずれかの方法によって、情報の通信を実行する。
【0022】
例えば、SAWタグ読み取り機205がLANデバイス210から衝突信号211を検出する場合、その動作をLANデバイス210の動作に同期化し、LANデバイス210が非アクティブの期間だけアクティブの状態にすることができる。通常8ミリ秒の非アクティブ期間で50%の負荷サイクルで動作する電子レンジ215の場合、SAWタグ読み取り機は非アクティブ期間内で動作が可能である。SAWタグ読み取り機205は問い合わせ信号110の送信、および応答音響パルス160の受信に数マイクロ秒を必要とするのみで、そうした8ミリ秒の非アクティブ期間内に多くの信号の送信および読み取りが可能である。電子レンジ215のその他の特色は、通常は8ミリ秒のアクティブ期間の間にISM帯域を通る比較的狭いエネルギーの帯域内で動作するということである。SAWタグ読み取り機205は、電子レンジ215がアクティブの間でも、エネルギーの狭帯域を検出し、他の周波数でSAWタグ応答を測定する間それらの帯域を避けることができる。同様に、無線LANおよびBluetoothのような他のアプリケーションはかなりの非アクティブ時間を有しており、それらがアクティブの場合、全体のISM周波数帯のうちの一部のみを使用する。上述のように、SAWタグ読み取り機205は、同時に他のISMアプリケーションへの妨害を防ぎながら、非アクティブの周波数帯および非アクティブ時間の区間を感知してSAWタグの読み取りの信頼性を確保することができる。
【0023】
無線LANデバイス210などの他のデバイスが存在する環境で動作する間、SAWタグ・システム200がそのようなデバイスを妨害しないことが重要である。取り消しの妨害が生じるのを避けるために、SAWタグ読み取り機205は、ごく短い期間のパルスで比較的低い電力を生成するように構成されてもよい。低電力と短いバーストとの組合せは、ほとんどの例で、SAWタグ読み取り機が無線LANデバイスまたはBluetooth(商標)アプリケーションを損なうことはないということを意味する。
【0024】
SAWタグ読み取り機205が無線LANデバイス210などの他のデバイスと共に存在する場合、デバイスから放射される信号と同期してSAWタグ100との通信を実行するようにSAWタグ読み取り機205もまた同期化されてよい。この同期化は時間、周波数またはそれらの両方によるものであってよい。SAWタグ・システム200はまた、SAWタグ読み取り機205が無線LANデバイス210などの他のシステムの存在を検出する場合、そのようなシステムと相互動作し、そのようなデバイスのアクセス・プロトコルと完全に互換であるように改良されてもよい。
【0025】
図3を参照すると、基板上でリフレクタの位置の群310を有するSAWタグ基盤300の配置を表すSAWタグ100の代表的な実施形態が図示されている。図示された配置300では、プリアンブル320はデータ群310に先行し、SAWタグのバージョン情報のためのデータ空間を提供すると共に、フレームおよび位相の同期化などの機能を備える。群310は時間価値315(符号tからt)によって分割される。各時間価値315の間隔は、1つの群310の中の最後のリフレクタの位置の中心と、その次の群310の最初のリフレクタの位置の中心との間の時間を表す。
【0026】
8つのリフレクタ群310を示す。これは基本的な128ビットの符号化構造の一般的なSAWタグ基盤300を示す。群310のいくつかはペイロード・データ符号を運搬し、一方で他の群310は同期化およびエラー検査に使用される。この場合、群311から群314までを含む群はペイロード・データまたはSAWタグ識別番号データを符号化するために使用される。説明のために、64ビット形式のペイロードの基盤がペイロード0 311、S1 312、S2 313およびS3 314の4つのペイロード群で使用されると仮定する。群315は同期化の群であり、エラー検査の群はEC0 316、EC1 317およびEC2 318である。本明細書で説明するエラー検査構造は2つの有用な概念、すなわち分割式エラー検査と入れ子式エラー検査とを含む。したがって、EC0 316はEC1 317およびEC2 318とは異なるデータ上でエラー検査を行うので、EC1 317およびEC2 318から完全に分かれている。分割式エラー検査を使用することで、EC0に依存するマスクを異なる高位のデータ・フィールド(例えば異なるマネージャおよびオブジェクト・フィールド)のために構成された複数のマスクのセットと共用することが可能になることにより、製造過程が容易になる。一方で、EC1 317およびEC2 318は入れ子構造になっている。EC2 318はEC1 317と同じデータのエラー検査を行い、EC1 317上でも同様に行われる。したがって、EC1 317とEC2 318との組合せは、実質的に32ビットのエラー検査の形式となる。EC1 317は厳密に符号スペースの分割(すなわち処理利得)に使用されてよく、一方でEC2 318は厳密にエラー検査に使用されるので、入れ子式の構成は従来の32ビットのエラー検査よりも柔軟性がある。処理利得が必要でないアプリケーションでは、EC1 317とEC2 318との組合せを32ビットのエラー検査に使用することができる。
【0027】
したがって、本発明は1つの実施形態で、基板上に配置された少なくとも2つのタグ識別番号またはペイロード・リフレクタ群311〜314(ペイロード0 311、S1 312、S2 313およびS3 314)を有するSAW識別タグ100を提供する。同じく基板上に配置されているのは、少なくとも2つのタグ識別番号リフレクタ群311〜314のうちの1つであり、この場合はS3 314に含まれるデータに依存する第1エラー検査リフレクタ群(EC0 316)である。第2エラー検査リフレクタ群(EC1 317)もまた基板上に配置されており、ペイロード0 311、S1 312およびS2 313のSAWタグ識別番号リフレクタ群に含まれるデータに依存する。一方でさらに、基板上の第3エラー検査リフレクタ群(EC2 318)は、少なくとも残りの1つのタグ識別番号リフレクタ群(ペイロード0 311、S1 312およびS2 313)および第2のエラー検査リフレクタ群EC1 317に含まれるデータに依存する。
【0028】
ここで図4を参照すると、「入れ子式」エラー検査プロトコルを使用したSAWタグ基盤400が図示されている。SAWタグ基盤400は、基板上に配置された少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群410を有する。第1エラー検査リフレクタ群411は、少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群410に含まれるデータに依存する。第2エラー検査リフレクタ群412は基板上に配置され、少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群410および第1エラー検査リフレクタ群411に含まれるデータに依存する。
【0029】
ここで図5を参照すると、群510の各々で複数のリフレクタ520を有する複数のリフレクタ群510を備えたSAWタグ基板500が図示されている。複数のデータ・ビットを少数のSAW反射で符号化するために、データはパルス位置を用いて符号化される。許容可能なパルス位置は問い合わせパルスの幅よりも細かく配置されるので、パルス位置を到達時間の検出のみによって識別するのは難しい。補足的なパルス間の判別は、異なる反射位相で異なるパルス位置を符号化することによって達成される。このために、連続するパルスが位相段階の連続する増分で符号化される。
【0030】
第1のパルス位置が0度の基準位相で符号化されるとすると、連続するパルス位置は位相段階の連続する集合で符合される。特定のリフレクタ520の位相は他のアクティブのリフレクタ520から独立しているが、特定のリフレクタ520の実際の位相はそれに先行するアクティブのリフレクタ520の数に依存する。SAWタグの構成で重要な考慮すべき点は、先のパルスが存在するか、または存在しないところで、特定のパルスの位相への依存性を最小化することである。この依存性は群の中の全てのリフレクタを同一のものにすることによって最小化される。
【0031】
したがって、本発明の1つの実施形態は、基板上に配置されたリフレクタ520の第1群511を有し、その第1群511の中の全てのリフレクタ520は実質的に同種の第1の反射特性を有するSAWタグ基板を提供する。SAWタグ基板500上に配置されたリフレクタ520の第2群512もまた、実質的に同種の第2反射特性を有する。別の実施形態で、第1反射特性と第2反射特性とは実質的に同種である。
【0032】
この実施形態は、先行する群の中で特定のリフレクタがアクティブである連続する群のための信号の開始位相が独立しているという点で有用である。複数の群510に渡る、同一または同一に近いリフレクタ520を使用することもまた、後方の返信パルスよりも高い振幅の前方の返信パルスを生じさせるという点で有益である。環境からの反響は、SAWタグ応答の始まり近くのほうが終わり近くよりも強いので、より強い振幅の前方のパルスが望ましい。
【0033】
同じく図5に示されているのは、基本的なデータ負荷を運搬する第1リフレクタ群510の前方に配置された開始リフレクタ530である。第1のデータ運搬リフレクタ群510の第1スロットの約100ナノ秒前に配置された開始リフレクタ530は、データの同期化の働きを高め、読み込み環境でマルチパス反射を測定するために使用されてもよい。この単一の、分離されたタグ開始パルスのタグ応答を観察することによって、一旦マルチパスの特徴が表されると、その後のデータ検出過程でマルチパスの影響を取り除くことができる。
【0034】
最後のアクティブ・データ群510の後に配置されたタグ終了リフレクタ540を同じく示す。タグ終了リフレクタ540は、所定の数のスロットの一定時間で出力パルスを生成し、最後のデータ群510の最後のスロット位置の後に配置される。タグ終了リフレクタ540の直接反射を補足の同期化情報のために使用することに加えて、これはSAWタグの最後部近くのデータ・リフレクタを伴う有用な三次反射に役立つ。タグ終了リフレクタからの補足の返信は、SAWタグ読み取り機が音響信号の返信を検出する能力を高める。SAWタグ基板の最後部近くのリフレクタからの第1反射は、通常前方のリフレクタからの反射よりも振幅が低いので、このことは特に有用な特徴である。
【0035】
タグ終了リフレクタのさらなる利点は、比較的短いSAWタグで使用されるということである。2つのデータ群を有するSAWタグは、同期化符号およびエラー修正符号の代わりにタグ終了リフレクタを使用できる。情報タグの第2応答は、時間を反映した同期化信号を与え、その冗長性のゆえに、有効なSAWタグの存在の確実性を高めるための信号整合性検査の形式を与える。
【0036】
本発明を詳細に説明してきたが、その最も広い形態の中で本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更、代替および改造物を作成できることを当業者には理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】RFIDタグとして使用される種類のSAWタグを示す図である。
【図2】無線LANデバイスおよび電子レンジがSAWタグ・システムと同じISM周波数範囲で周波数を生成している環境で動作するSAW識別タグ・システムを示す図である。
【図3】基板上にリフレクタの位置の群を備えたSAWタグ基盤の配置を表しているSAWタグの代表的な実施形態を示す図である。
【図4】「入れ子式」エラー検査プロトコルを使用したSAWタグ基盤を示す図である。
【図5】各群で複数のリフレクタを有する複数のリフレクタ群を備えたSAWタグ基盤を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面音響波(SAW)識別タグの情報を通信する方法であって、
SAWタグ周波数帯で動作する電子デバイスから放射される信号を検出する工程と、
前記信号の送信パターンの中のゼロ期間を識別する工程と、
前記ゼロ期間の間に前記情報の通信を実行する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記ゼロ期間が、周波数がゼロの期間である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼロ期間が、時間がゼロの期間である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
同じ周波数帯で動作する他のデバイスとの信号の混信を避けるための、表面音響波(SAW)識別タグの情報を通信する方法であって、
低電力を用いて前記情報の通信を実行する工程と、
前記通信を実行する工程を信号のバースト中で行わせる工程とを含む方法。
【請求項5】
前記短いバーストのタイミングを決定するために、周波数の偏移を利用する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
SAW識別タグの情報を通信する方法であって、
SAWタグの周波数帯で動作する電子デバイスから放射される少なくとも1つの他の信号を検出する工程と、
前記少なくとも1つの他の信号が非アクティブである区間で前記通信が行われるように、前記情報の通信を前記少なくとも1つの他の信号と同期して実行する工程とを含む方法。
【請求項7】
前記通信を実行する工程は、時間的に同期である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記通信を実行する工程は、周波数的に同期である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
基板上に配置された少なくとも2つのタグ識別番号リフレクタ群と、
前記基板上に配置され、前記少なくとも2つのタグ識別番号リフレクタ群のうちの1つに含まれるデータに依存する第1エラー検査リフレクタ群と、
前記基板上に配置され、前記少なくとも2つのタグ識別番号リフレクタ群のうちの少なくとも残りの1つに含まれるデータに依存する第2エラー検査リフレクタ群と、
前記基板上に配置され、前記少なくとも残りの1つのタグ識別番号リフレクタ群および前記第2エラー検査リフレクタ群に含まれるデータに依存する第3エラー検査リフレクタ群とを含むSAW識別タグ。
【請求項10】
基板上に配置された少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群と、
前記基板上に配置された少なくとも1つの同期のリフレクタ群とを含むSAW識別タグ。
【請求項11】
前記同期のリフレクタ群は、前記少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群の鏡像である請求項10に記載のSAW識別タグ。
【請求項12】
基板上に配置された少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群と、
前記基板上に配置され、前記少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群に含まれるデータに依存する第1エラー検査リフレクタ群と、
前記基板上に配置され、前記少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群および前記第1エラー検査リフレクタ群に含まれるデータに依存する第2エラー検査リフレクタ群とを含むSAW識別タグ。
【請求項13】
基板上に配置された少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群と、
前記基板上に配置され、前記少なくとも1つのタグ識別番号リフレクタ群に含まれるデータに依存する少なくとも1つのエラー検査リフレクタ群とを含むSAW識別タグ。
【請求項14】
基板上に配置され、実質的に同種の第1反射特性を有するリフレクタの第1群と、
前記基板上に配置されたリフレクタの第2群とを含むSAW識別タグ。
【請求項15】
実質的に同種の第2反射特性を有する前記リフレクタの第2群をさらに含み、
前記第1反射特性と前記第2反射特性とが実質的に同種である請求項14に記載のSAW識別タグ。
【請求項16】
基板上に配置されたリフレクタの群を含み、前記リフレクタの各々が実質的に同種の反射特性を有するSAW識別タグ。
【請求項17】
上部に配置されたリフレクタの群を有する基板と、
SAWタグ問い合わせ信号への反射応答を、前記リフレクタの群の中のリフレクタが前記問い合わせ信号への反射応答を生成する前に生成するように配置された開始リフレクタとを含むSAW識別タグ。
【請求項18】
前記開始リフレクタは、前記リフレクタの群から所定の距離に配置される請求項17に記載のSAW識別タグ。
【請求項19】
上部に配置されたリフレクタの群を有する基板と、
SAWタグ問い合わせ信号への反射応答を、前記リフレクタの群の中の各リフレクタが前記問い合わせ信号への反射応答を生成する後で生成するように配置されたタグ終了リフレクタとを含むSAW識別タグ。
【請求項20】
前記タグ終了リフレクタは、1つのリフレクタが問い合わせ信号への反射応答を最後に生成する前記リフレクタの群から所定の距離に配置される請求項19に記載のSAW識別タグ。
【請求項21】
前記タグ終了リフレクタは、前記問い合わせ信号の実質的に全てを反射する請求項19に記載のSAW識別タグ。
【請求項22】
前記タグ終了リフレクタは、前記リフレクタから応答パルスを生成する反射問い合わせ信号を生成する請求項19に記載のSAW識別タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−506367(P2007−506367A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526966(P2006−526966)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/029929
【国際公開番号】WO2005/029698
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504235654)アールエフ ソウ コンポーネンツ,インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】