説明

SCR活性ゼオライト触媒の生産方法およびSCR活性ゼオライト触媒

SCR活性ゼオライト触媒の生産方法ならびにそれによって生産されるゼオライト触媒が開示されている。前記触媒を生産するためには、まず最初に、Feイオン交換されたゼオライトが還元性炭化水素雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第1の温度処理(3)に付され、こうしてFeイオンの酸化状態は低減しかつ/または前記ゼオライト上の前記Feイオンの分散度は増大し、その後、還元されたゼオライトは酸化性雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第2の温度処理(4)に付され、こうして炭化水素残渣または炭素残渣は酸化的に除去され、ゼオライトは第1および第2の温度処理の間にか焼されて(2)、触媒を提供する。前記生産方法により、ゼオライト中に含まれている鉄を+3未満の酸化状態で安定化させ、かつ/またはゼオライト上のFeイオンの分散度を恒久的に増大させて300℃未満の温度範囲内で高いSCR活性が達成されるようにすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCR活性ゼオライト触媒の生産方法に関する。本発明はさらに、SCR活性ゼオライト触媒に関する。本発明は、排気ガス中にたとえあったとしても少量しかNOが存在しない場合に、300℃未満の低温範囲内でゼオライト触媒のSCR活性が比較的低いという問題に関する。
【背景技術】
【0002】
過剰な空気と共に作動させられている内燃機関、特にディーゼルエンジン由来の排気ガスなどの酸素含有排気ガス中の窒素酸化物を除去するためには、二酸化チタン系の触媒が公知であり、具体的にはアンモニアなどの追加された還元剤を用いて、酸素の存在下で、触媒上で窒素酸化物が還元されて、分子窒素と水が得られる。この点に関しては、例として独国特許出願公開第2458888A1号明細書を参照されたい。この選択的触媒還元方法(selective catalytic reduction)、略してSCRプロセスにおいては、還元剤または排気ガス中で還元剤に転換される前駆物質が、触媒コンバータに進入する前に排気ガスに添加される。例えば、還元剤アンモニアのための公知の前駆物質は尿素であり、これは特に尿素水溶液の形で排気ガスに供給される。同様に代替的還元剤として公知であるのは、特に内燃機関における不完全燃焼の場合にすでに排気ガス中に燃焼産物として存在し得る炭化水素である。
【0003】
独国特許出願公開第2458888A1号明細書から公知であるSCR活性触媒は、タングステンおよび/またはバナジウムの酸化物が添加された、二酸化チタンを主成分として含むセラミック触媒組成物を含んでいる。ここで使用される触媒体は、被覆された触媒または非坦持触媒であってよい。被覆触媒においては、触媒組成物は支持体材料、例えばより具体的にはそれ自体触媒不活性であるコーディエライト(菱形両錐構造を有する組成MgAlSi18のケイ酸アルミン酸マグネシウム)に塗布されてきた。これに対して非坦持触媒は、全て触媒活性である触媒組成物から製造されている。このために、出発材料は一般に混練可能なスラリーを得るように加工され、このスラリーが押出し加工されて、流路を介して浸透を受けるハニカムを提供する。その後、押出し加工されたハニカムは、熱処理により固化を伴うか焼が施されて、完成した非坦持触媒を提供する。
【0004】
ゼオライトも同じく、SCR活性触媒のさらなる公知の成分である。ゼオライトすなわちフレームワークアルミノケイ酸塩は、一部の場合において気体分子規模の直径をもつ流路を介して浸透を受ける構造を形成し、その比表面積が高いことから、選択的触媒還元に特に適している。
【0005】
例えば、独国特許出願公開第198545502A1号明細書は、二酸化チタンおよびゼオライトを含む活性組成物を有する還元剤の存在下での窒素酸化物の分解のためのSCR活性触媒において、前記ゼオライトが水素イオン交換された酸性ゼオライトであるSCR活性触媒を開示している。
【0006】
英国特許出願公開第2193655A号明細書も同様に、SCRプロセスによる窒素酸化物の分解のための触媒を開示している。その中で規定されている触媒の触媒組成には、低い比表面積を有する二酸化チタンとイオン交換により得られる銅含有ゼオライトとが含まれている。指定された好ましいゼオライトは、モルデナイト、ZSM−5、およびフェリエライトである。
【0007】
同様に欧州特許出願公開第0393917A2号明細書から公知であるのは、窒素酸化物の分解のための触媒であり、その触媒組成には、イオン交換後に銅および/または鉄を含むゼオライトが含まれている。指定された好ましいゼオライトはUSY(超安定化Y)、ベータおよびZSM−20である。
【0008】
さらに、欧州特許出願公開第0219854A2号明細書は、アナターゼ多形体の二酸化チタンおよび水素形態またはアンモニウム形態の酸安定化ゼオライトを含む触媒を開示している。
【0009】
最後に、米国特許第5,271,913A号明細書は、ゼオライトを含む触媒組成を有する、SCRプロセスによる窒素酸化物の分解のための触媒を開示している。ここでは、ゼオライトは酸化セリウムまたは酸化鉄での含浸を受けている。指定された触媒は、硫黄含有構成要素に対する高い安定性を有すると考えられている。規定されている好ましいゼオライトはZSM−5タイプのゼオライトである。
【0010】
ゼオライト触媒は被覆触媒の形かまたは非坦持触媒の形のいずれかで生産可能である。特にペレットの形でのバルク材料触媒としてのゼオライト触媒の構成も、それ自体公知である。
【0011】
文献には、Feイオン交換されたゼオライトについて、特にその優れたSCR活性に関して言及されている。例えば刊行物「Ultra−Active Fe/ZSM−5 Catalyst For Selective Catalytic Reduction Of Nitric Oxide With Ammonia」,Gongshin Qi,Ralph T.Yang,Apple.Cat.B:Environmental 60(2005)13−22では、NOについてのFeイオン交換型ZSM−5ゼオライトのSCR活性が研究されており、アンモニアの存在下で350℃超の温度で90%近いNO転換率が達成されている。研究されたZSM−5タイプのゼオライトのイオン交換は、FeClを用いた含浸によって行われる。触媒組成物のか焼は空気中の酸化性雰囲気下で行なわれる。ゼオライト構造中に取込まれた鉄イオンの酸化状態は、X線回折および電子スピン共鳴測定を用いて+2および/または+3であるものと決定されている。特に、+2の酸化状態を有する鉄が、高い触媒活性の原因であることが疑われている。研究されたSCR反応中、+2の酸化状態の鉄は、漸進的に酸化される。
【0012】
以前の刊行物「Structure/Reactivity Correlation In Fe/ZSM5 For DENOx Applications.In−situ XAFS Characterization And Catalysis」,A.A.Battiston,J.H.Bitter,D.C.Koningsberger,Elsevierにおいては、ZSM−5タイプのFeイオン交換型ゼオライト(Fe ion-exchanged zeolite)も同様にそのSCR活性に関して研究されている。この場合、特に、ゼオライト構造中に取込まれた鉄イオンの配位部位は、X線分光法を用いて分析される。研究対象のZSM−5ゼオライトは、FeCl昇華を用いてイオン交換される。か焼された触媒組成物のSCR活性は、ブタンとイソブタンを還元剤として用いて分析される。各々の場合において、触媒組成物は、酸素、一酸化炭素およびイソブタンでの処理の後、X線分光法により研究される。SCR反応中、取込まれた鉄イオンの酸化状態は低減されると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第2458888A1号
【特許文献2】独国特許出願公開第198545502A1号
【特許文献3】英国特許出願公開第2193655A号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0393917A2号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0219854A2号
【特許文献6】米国特許第5,271,913A号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“Ultra−Active Fe/ZSM−5 Catalyst For Selective Catalytic Reduction Of Nitric Oxide With Ammonia”,Gongshin Qi,Ralph T.Yang,Apple.Cat.B:Environmental 60(2005)13−22.
【非特許文献2】“Structure/Reactivity Correlation In Fe/ZSM5 For DENOx Applications.In−situ XAFS Characterization And Catalysis”,A.A.Battiston,J.H.Bitter,D.C.Koningsberger,Elsevier.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、排気ガス中にNOがたとえあっても少量しか存在しない場合でも、特に低温範囲内で、比較的高く持続的なSCR活性を有するSCR活性ゼオライト触媒を生産する方法を規定することにある。さらに本発明の目的は、言及された特性を備えたゼオライト触媒を規定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
生産方法に関する目的は、本発明によると、第1にFeイオン交換されたゼオライトを還元性炭化水素雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第1の熱処理に付し、これにより、Feイオンの酸化状態を低減させかつ/またはゼオライト上のFeイオンの分散度を増大すること、その後、還元されたゼオライトを酸化性雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第2の熱処理に付し、これにより炭化水素残渣および/または炭素残渣を酸化的に除去すること、およびゼオライトを第1および第2の熱処理の間にか焼して触媒を提供することによって達成される。
【0017】
広範な所内研究によって、取込まれた鉄イオンの酸化状態が+3未満でありかつ/またはゼオライト上のFeイオンの分散度が増大された場合に、Feイオン交換されたゼオライトが高いSCR活性を有するという仮説が立証された。分散度とは、ここではゼオライト上のFeイオンの分布度を意味するものと理解される。分散度が高いことは、細かく分布していることを表わす。低い分散度は、ゼオライト上にFeクラスタが存在することを示唆する。
【0018】
このようなゼオライト触媒は、原理的にはイオン交換とか焼の後、例えばフォーミングガス下でまたはCOを用いてそれを還元して、取込まれた鉄イオンの酸化状態を+2の方向に低減させるか、または分散度を改変させることによって生産することができる。
【0019】
しかしながら、SCR条件下すなわち酸素の存在下では、触媒活性は漸進的に下降する。これは、薄黄色乃至ベージュの基調色から赤褐色の色合いに向かう還元されたFeイオン交換型ゼオライト触媒内の色変化と同時に発生する。これは、ゼオライトに結合された+2の酸化状態にある鉄が、Feに対応する、+3の酸化状態の鉄へと酸化させられることを示唆している。赤褐色の色合いへの色変化は同様に、鉄の分散度の低下すなわちゼオライト上のFeクラスタの形成にも関連づけすることができる。
【0020】
従って、本発明の目的は、持続する形で高いSCR活性を有するFeイオン交換型ゼオライト触媒を生産することにある。極めて広範な実証的研究の後、主として+3未満の酸化状態で鉄が存在しかつ/またはFeイオンが高い分散度でゼオライトに結合されているこのようなFeイオン交換型ゼオライト触媒は、通常通りに酸化性雰囲気中ではなくむしろ還元性炭化水素雰囲気中でか焼を行なうことによって持続的に生産可能であることが発見された。
【0021】
300℃〜600℃の温度範囲内でのか焼作業中の炭化水素または炭化水素の分解産物との今だに未確定ではある反応に起因して、ゼオライトに結合され特に+2というより低い酸化状態および/またはゼオライトの表面上の鉄の細かい分布まで低減された鉄は安定化されている。酸化性雰囲気中での再酸化または特に同様にSCR条件下および高温下での表面上のFeクラスタの再形成は阻止される。ゼオライト上の結合した鉄カチオンの配位部位はきわめて複雑である。鉄の正確な格子構造も化学的環境も正確には決定不可能である。より具体的には、ゼオライトのアニオンフレームワーク内部におけるこれらの条件下の酸化状態は、もはや整数とみなすことはできず、代って、分数の酸化状態が論じられている。しかしながら、還元条件下でか焼された触媒組成物中で確立された薄黄色乃至ベージュという基調色のため、平均酸化状態は+3未満の値で報告できる。換言すると、整数の酸化状態が定義される場合、+2の酸化状態を有する取込まれた鉄イオンが非常に多く存在するはずである。
【0022】
あるいは、クラスタ凝集と対照的に、観察可能な色にとっては、鉄の細かい分布も同様に極めて重要であり得る。これは、規定された処理がゼオライト上に恒久的に高い鉄の分散度を確立するということが、適切に調製されたゼオライト試料についてのUV−VIS測定によって、すなわち紫外線および可視スペクトル領域内の吸収スペクトルに基づいて発見されたからである。還元性か焼の方法ステップ無しで従来通り生産された試料の場合、UV−VISスペクトル内において約250〜600nmの間で広い吸収ピークが発生するが、一方本件で規定されている方法により生産された触媒の場合には、最高が約250nmにあり、より短かい波長へとシフトさせられた約400nmで下降し比較用試料の吸収曲線の下側に入る1つのピークを観察することができる。本件では400nm超での吸収は大きい鉄分子(酸化鉄、クラスタ)を示唆し、300〜400nmでの吸収はオリゴマーFeクラスタを示唆し、200〜300nmでの吸収は4面体または正8面体配位の鉄を示唆することから、分析結果は、ゼオライト上の鉄の分散度の増大を示している。この分散度は、さらに恒久的に維持される。Feクラスタの新しい形成は阻止される。
【0023】
炭化水素雰囲気下で還元されたゼオライトはその後、酸化性雰囲気中で300℃〜600℃の第2の熱処理においてさらにか焼され、これにより、酸化による炭化水素の残渣または分解産物が除去される。換言すると、炭化水素または炭素が燃焼される。同時に、触媒組成物のさらなる固化が起こり、これはか焼作業にとってきわめて重要である。
【0024】
全体的に見て、ゼオライトまたはゼオライトを含む触媒組成物は、こうして2段階でか焼され、ゼオライトは最初に炭化水素雰囲気中で還元され次に酸化性雰囲気中で酸化されて、有機残渣は本質的に除去される。完成した触媒組成物は薄黄色乃至ベージュの基調色を有することから、炭化水素雰囲気中での還元が、+2の酸化状態の鉄の+3の酸化状態の鉄への酸化および/または鉄の分散度の低下を阻止することが同時に示された。最終的な酸化的か焼は、還元鉄の新たな酸化および/または分散度の新たな減少を導かない。さらなる研究により、本発明によって生産された触媒組成物が、所望の恒久的に高いSCR活性を有することが確認されている。
【0025】
本発明には、触媒体の具体的構成に関する制約が一切ない。記載されている還元性および酸化性雰囲気中でのか焼は、ゼオライト粉末上またはゼオライト含有非坦持触媒上、あるいは具体的にはゼオライト含有組成物で被覆または含浸された支持体上のいずれにおいても行なうことができる。
【0026】
還元性条件下でか焼され最高900℃の温度まで加熱され10,000 l/hの空間速度で空気流に付されている非坦持触媒は、数時間後でさえ、取込まれた還元形態の鉄の酸化および/または分散度の減少を示唆すると考えられる色変化を一切示さないことが発見された。同じ実験条件下で、か焼後に還元された従来のFeイオン交換型ゼオライトは、わずか数分後に明らかな色変化を示す。
【0027】
さらなる研究から、第1の熱処理中に50分超の間温度が500℃を上回る場合、存在する+2の酸化状態にある鉄の割合および/または鉄の高い分散度をさらに一層安定化させることができる、ということが示された。鉄の配位部位すなわちゼオライトのアニオンフレームワーク環境を恒久的に構成するためまたはそれを保存するために活性化エネルギーが必要とされる可能性がある。ここでは50分超の長さが有利であることがわかっている。
【0028】
さらに、結合された鉄の安定化または還元のためには、第1の熱処理の終りでゼオライトを400℃未満の温度まで冷却することが有利であることも発見された。この状況下で広範な一連の測定によって経験的に、第2の熱処理中の酸化に先立ち還元性熱処理に冷却ステップを追加した場合SCR活性が改善されることが示された。ここで最高の結果は、冷却中に温度が400℃未満になった場合に達成可能である。
【0029】
本発明のさらに好ましい構成変形形態において、炭化水素雰囲気は、1体積%未満の酸素を含む。酸素含有量がさらに高いと、取込まれた鉄の還元が困難になる。
【0030】
炭化水素に関して、具体的には、規定された温度範囲内での熱分解を通して形成する長鎖炭化水素の分解産物が適切である。特に適切な出発材料は、特に有機ポリマーおよび/またはバイオポリマーであることが発見されている。これらのポリマーは同様に第1の熱処理中に炉内に導入される。これらのポリマーは炉内で、酸素を除去を伴う対応する温度で気体分解産物へと分解し、これは次に炭化水素雰囲気に寄与する。適切な有機ポリマーは特にポリエチレン類、ポリグリコール類またはポリプロピレン類である。有利なバイオポリマーは、多糖類、そしてこの状況下では特にセルロースであることが発見されている。ただし、ポリグルコサミン類および脂質も同様に対応して使用可能である。
【0031】
必要とされる炭化水素雰囲気の形成のための特定の選択肢は、不活性ガス雰囲気中で第1の熱処理を実施することであり、この場合、所望の炭化水素は気体形態で直接かまたは記載される通りの分解により供給される。使用される不活性ガスは特に窒素であってよい。ただし、希ガスも同様に想定可能である。
【0032】
本発明の特に好ましい構成においては、炭化水素は、反応性前駆体の形でか焼に先立ってゼオライト組成物に添加される。第1の熱処理中、反応性前駆体は所望の分解産物に分解し、これらの産物はこのとき炭化水素雰囲気を形成する。この構成においては、第1の熱処理中に追加の炭化水素を供給する必要は一切ない。炭化水素雰囲気は熱処理中に、ゼオライト組成物中に存在する前駆体分子の熱分解により形成する。
【0033】
本発明の特に有利な変形形態においては、ゼオライトは予め有機可塑化剤の添加により加工されて自由流動性組成物、特に押出し可能な組成物を提供し、第1の熱処理は不活性ガス雰囲気中で実施され、こうして有機可塑化剤は熱分解の結果として不活性ガス雰囲気中に炭化水素を放出することになる。このようして、押出し可能な組成物の生産のためにはいずれにせよ必要とされる有機可塑化剤を、同時に還元鉄の還元および安定化のためにも使用することができる。さらなる添加物は一切不要である。
【0034】
従来の方法における有機可塑化剤は、空気中すなわち酸化性雰囲気下でのか焼ステップ中に酸化され、その後除去されるが、一方ここでは不活性ガス雰囲気中の可塑化剤の熱分解により、還元のために所望され炭化水素雰囲気に寄与するまたは炭化水素雰囲気を形成する分解産物を形成する。典型的に、使用される可塑化剤は、個別のまたは組合せた形でのセルロースおよびポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドである。粉体ゼオライトがまず可塑化剤と、そして任意選択的にさらなる助剤および充填剤と共に、水を添加しながら加工されて、押出し可能な組成物を提供する。
【0035】
第1の変形形態において、この組成物は次に押出し加工されて、流路(channel)を介して浸透(permeate)を受けるハニカムを提供する。ハニカムを乾燥させた後、上述のか焼作業が行なわれる。還元性か焼の後には酸化的か焼が続き、可塑化剤の有機残渣および形成された分解産物は酸化によって除去される。酸化を用いた可塑化剤の除去によって、か焼作業中に触媒体内に細孔が形成され、これが比表面積を増大させる。
【0036】
第2の変形形態において、生成された組成物は、被覆として例えばコーディエライトなどの不活性支持体に塗布される。被覆された支持体は次に還元性および酸化性か焼に付される。不活性支持体は同様に、より具体的には、流路を介して浸透を受けるハニカムとして存在してもよい。
【0037】
さらなる加工に先立ち、生成された組成物を還元性か焼に付すこともまた想定可能である。
【0038】
か焼は2つの連続的段階で行なうことができる。この場合、ゼオライトは最初に、第1の炉内で還元性炭化水素雰囲気下で熱処理され、結果として還元される。その後、ゼオライトを冷却しながら第1の炉から取り出し第2の炉に供給する。第2の炉内では、酸化性か焼が酸化性雰囲気中で、特に空気中で実施され、これにより残留有機成分が除去される。
【0039】
しかしながら、好ましい構成においては、か焼作業全体を単一の炉内で行なうことも可能である。この場合、第1の熱処理の完了時点で、還元性炭化水素雰囲気を除去し代りに空気または酸素含有雰囲気を導入して、炉内の雰囲気を交換する。このような炉については、対応する導入口、ガス接続部、バルブおよび適切な制御システムを具備させなくてはならない。単一炉内でのか焼の実施は、還元されたゼオライトをさらなる炉に輸送する作業ステップが無いことから、プロセステクノロジーの観点から見て特に有利である。
【0040】
特に有利なゼオライトは、ベータタイプのゼオライト(フレームワーク構造名:BEA)またはZSM−5タイプのゼオライト(フレームワーク構造名:MFI)であること
がわかっている。さらなる適切なゼオライトは、フォージャサイト、フェリエライト、Y、ZSM−20、MCM−41、チャバザイトおよびSABOであることが発見された。ゼオライトの一般的命名法については、Kirk−Othmer,「Encyclopedia of Chemical Technology」,3rd ed.,Vol.15,John Wiley & Sons,New York,1981,p.640−669を参照されたい。ゼオライトの分類については、「Chemical Nomenclature and Formulation of Compositions of Synthetic And Natural Zeolites」 by R.M.Barrer,Pure Appl.Chem.51(1979),p.1091−1100という論文も参照されたい。個々のゼオライトの構造は、より具体的には、「Zeolite Atlas:Atlas of Zeolite Framework Types」,5th ed.,Ch.Baerlocher,W.M.Meier and D.H.Olson,Amsterdam,Elsevier(2001)からも得ることができる。
【0041】
ゼオライトのイオン交換のためには、原理的には、さまざまな方法が存在する。これらには、ゼオライト内に因果的に(必然的に)取込まれたカリウム、ナトリウムまたはカルシウムのカチオンを、例えば鉄などの所望のカチオンで交換することが関与する。これは、ゼオライト内のカチオンが、アニオン構造とのイオン相互作用によってのみ保持されることを理由として、原理的には容易に可能である。鉄によるイオン交換は、例えば塩化鉄からの昇華によってか、固体含浸によってかまたは対応する溶液からの液体イオン交換によって行うことができる。
【0042】
Feイオン交換型ゼオライトについて、文献では、SCR活性が生産作業または合成作業に左右されるものであるとしている。所内研究は意外なことに、本件において記述されている通りに生産されたゼオライト触媒のSCR活性が、Feイオン交換型ゼオライトの合成方法の如何に関わらず常に高いことを示している。合成作業またはイオン交換作業の如何に関わらず炭化水素雰囲気中の還元が常に、+2の酸化状態と同等の鉄の還元および安定化、および/または安定した高い分散度をもたらし、Feクラスタの形成は阻止されることが明らかである。
【0043】
ゼオライトは好ましくは、3〜7重量%の割合で鉄を含む。この範囲内で、所望の触媒活性が達成される。
【0044】
本発明によると、触媒に向けられた目的は、上述の方法によって生産されたSCR活性ゼオライト触媒によって達成される。対応してか焼された触媒組成を伴うこのようなゼオライト触媒は、Feイオン交換型ゼオライトを含み、ここでFeイオンは主として、+3未満の酸化状態でかつ/または高い分散度で存在する。記載した通り、この高い分散度はUV−VIS分光法を用いて実験により実証することができる。本発明の触媒の対応する試料の400nm〜600nmの波長範囲内のUV−VIS吸収は、炭化水素雰囲気中で還元無しの同等に生成された試料に比較して、恒久的に削減されることが発見された。従って、鉄の分散度は対応して増大する。大きなFeクラスタが際立って削減されている。このような方法で生産されたゼオライト触媒はこの点において、より高い+3の酸化状態へのFeイオンの転換および/またはFeクラスタの形成が阻止されたという点で、先行技術と異なっている。
【0045】
出願の時点では、請求対象の方法を超えるどの生産方法が、言及された特性を有するSCR活性ゼオライト触媒を生産できるかを予測することは不可能である。従って、主として+3未満の酸化状態および/またはUV−VISスペクトルに応じて高い分散度を有するFeイオンが存在し、かつ+3というより高い酸化状態へのFeイオンの転換および/またはFeクラスタの形成が阻止される、Feイオン交換型ゼオライトを含むか焼された触媒組成物を伴うSCR活性ゼオライト触媒が、それ自体で特許可能であるとみなされている。
【0046】
これに関連して「+3というより高い酸化状態へのFeイオンの転換および/またはFeクラスタの形成の阻止」という選択された表現は、反応速度の低下と同様活性化エネルギーの増大を包含する。「阻止」という用語は同様に+2または+3未満の酸化状態への鉄の不可逆的還元をも包含する。新たに規定された触媒の観察可能な特性は同様に、ゼオライト上の鉄の吸着部位が恒久的に安定化されており、そのため分散度が保存されると記述することもできる。言及された特性を各々個別に、完全に独立してまたは組合せた形で使用して、触媒を記述することが可能である。
【0047】
最終的に、規定されているゼオライト触媒を先行技術と区別する特性は、10,000 l/hの空間速度での同時空気流を用いて最高900℃の温度まで加熱した場合に現在のFeイオンの低い酸化状態に対応する薄黄色乃至ベージュの基調色で存在するか焼した触媒組成物が、1時間後でさえ色変化を一切示さないという事実に関して、観察し表現することが可能である。従来通りフォーミングガスまたはCOを用いて還元されている同等の触媒組成物は、同じ実験条件下でわずか数分後に+3というFeイオンのより高い酸化状態または低減した分散度に対応する赤褐色の基調色への色変化を示す。
【0048】
SCR活性ゼオライト触媒のために用いられるゼオライトは好ましくは、上述のゼオライトの1つであってよい。より具体的には、ゼオライトはベータタイプのまたはMFIタイプのゼオライトである。
【0049】
有利な構成において、ゼオライト触媒は押出し加工された非坦持触媒の形で存在している。
【0050】
さらなる研究により、本発明をさらなるイオン交換型ゼオライトに拡大することもできるということが示された。相応して、一般的なタイプ(generic type)のイオン交換型ゼオライトが、まず最初に、還元性炭化水素雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第1の熱処理に付され、これにより、導入されたイオンの酸化状態が低減されかつ/またはゼオライト上のこれらのイオンの分散度が増大され、その後、還元されたゼオライトは酸化性雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第2の熱処理に付され、これにより炭化水素残渣および/または炭素残渣が酸化的に除去され、ゼオライトは第1および第2の熱処理の間にか焼されて、触媒を提供する。
【0051】
イオン交換のためには、好ましい鉄と同様、上述の触媒活性に関して有利な金属は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニドおよび周期表の第III族の遷移金属を含む群由来のものであることがわかっている。
【0052】
より具体的には、好ましいのは鉄だけではなく、銅、セリウム、ハフニウム、ランタン、白金、銀、インジウム、バナジウム、ルテニウムおよびオスミウムも同様である。これらの金属はこの場合ゼオライト中に金属カチオンとして存在し、この場合、鉄に関する記載はこれらのカチオンにも相応してあてはめることができる。
【0053】
従って、第1の還元性熱処理中に、金属イオンの酸化状態は低減され、かつ/またはゼオライト上のその分散度は増大する。
【0054】
すでに述べた通り、300℃〜600℃の間の温度範囲内でのか焼作業中の炭化水素または炭化水素の分解産物との未確定の反応に起因して、ゼオライトに結合された上述の金属イオンは、低減された酸化状態で安定化され、かつ/またはゼオライトの表面上でその細かい分布が達成される。より具体的にはSCR条件および高温の下でさえ、酸化性雰囲気中での再酸化または表面上のクラスタの新たな形成が阻止される。ゼオライト上の結合した金属カチオンの配位部位はきわめて複雑である。結合した金属イオンの正確な格子構造も化学的環境も正確には決定不可能である。より具体的には、これらの条件下での酸化状態はもはやゼオライトのアニオン構造内部で整数とみなすことができず、代って、分数の酸化状態が論じられる。
【0055】
従って、本発明は同様に、還元により低減された酸化状態でかつ/または高分散度でゼオライト上にイオンが主として存在するイオン交換型ゼオライトを含むか焼された触媒組成物を伴うSCR活性ゼオライト触媒において、イオンのより高い酸化状態への転換および/または分散度の減少が阻止されているSCR活性ゼオライト触媒をも包含している。使用される金属イオンは、好ましくはCu、Hf、La、Au、In、V、ランタニドおよび周期表の第III族の遷移金属を含む群由来の金属であることがわかっている。より具体的には、好ましいのは鉄だけではなく、銅、セリウム、ハフニウム、ランタン、白金、銀、インジウム、バナジウム、ルテニウムおよびオスミウムも同様である。このような触媒は、より具体的には、比較的高い温度(700℃超)で空気流に付された場合でさえ酸化状態または分散度の変化に起因すると考えられる、いかなる色変化も示さない。
【0056】
本発明の実施形態について、以下の図面および実施例を参照しながら、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】SCR活性ゼオライト触媒の生産についての概略的流れ図である。
【図2】さまざまな触媒についてグラフの形で、アンモニアの存在下でのNOについての温度依存性転換率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実施例1a:
図1は、概略的流れ図によって、例示的実施形態に係るSCR活性ゼオライト触媒の生産を示す。第1のステップ1では、3重量%の割合で鉄を伴う粉体Feイオン交換型合成MFIゼオライト(Fe ion-exchanged synthetic MFI zeolite)を加工して、可塑性で自由流動性の組成物を得る。この目的で、粉体MFIゼオライトをガラス繊維と、同様に粉体ベーマイトと、混合し、セルロース、市販の可塑化剤および有機助剤としてのポリエチレンオキシドを添加しながら、5未満のpHを有する酸性水溶液中で加工して、可塑性で自由流動性の混合物を得る。可塑性混合物を次に押出し成形して、流路(channel)を介して浸透(permeate)され、丸い断面を有し、300cpsi(平方インチあたりのセル数)のセル密度を有する、ハニカム触媒体を得る。その後、触媒体を乾燥させる。非坦持触媒は、直径約2.5cm(1インチ)の接触部域および約7cmの流動長(flow length)を有する。
【0059】
その後、このようにして生産した非坦持触媒をか焼ステップ2に付す。この目的で、触媒体をN雰囲気下の炉内で第1の熱処理3に付す。触媒体を600℃の温度まで加熱し、1.5時間この温度に保つ。その後、触媒体を冷却し、室温で炉から取り出す。
【0060】
不活性ガス雰囲気中での第1の熱処理3の間に、有機可塑化剤として導入されたセルロースとポリエチレンオキシドとは熱分解の結果として気体炭化水素へと分解し、その結果還元性炭化水素雰囲気が炉内に形成する。これらの条件下で、MFIゼオライト中に存在する鉄は、+2の酸化状態をもつ鉄まで、あるいは少なくとも+3未満の分数の酸化状態まで漸進的に還元され、および/またはゼオライト上の鉄の分散度は増大させられる。選択された温度プロファイルは、還元形態の鉄または鉄の高い分散度を安定化させるという効果を達成し、これは雰囲気中に存在する炭化水素の影響を通して決定的に成し遂げられる。熱処理はさらに触媒体から水を駆逐し、触媒組成物の固化を達成する。還元性か焼の間、触媒組成物は同時に薄黄色乃至ベージュの基調色を呈し、この色は+2の酸化状態にある鉄の存在および/または分散度の増加を表わす。この色は有機ポリマーの分解産物によって隠され得るため、触媒体が全体に黒に見えることもあり得る。
【0061】
その後、第2の熱処理4を実施するため、還元されたゼオライト触媒を、雰囲気として空気が使用される第2の炉の中に導入する。その中で触媒体を再び約600℃の温度にし、約50分間この温度に保つ。この時間中、触媒中に存在する分解産物、およびなおも存在するセルロースおよび可塑化剤の原初の有機ポリマーは酸化され、最終的に除去される。触媒組成物はさらに固化する。第2の熱処理4の終了時点で、ゼオライト触媒は、目に見えて、言及された薄黄色乃至ベージュの基調色を有するようになる。
【0062】
その後、ゼオライト触媒を冷却し、第2の炉から取り出す。結果は、ハニカム非坦持触媒5の形をして、SCRプロセスによる窒素酸化物の分解向けのその用途ために調製される、完成したゼオライト触媒である。
【0063】
実施例1b:
一変形形態において、熱処理3および4は共通の炉内で実施される。この場合、第1の熱処理3が完了した時点で、触媒体を400℃未満の温度まで冷却し、その後還元性炭化水素雰囲気を除去して、炉内に空気を入れる。その後直ちに第2の熱処理4を、実施例1aと類似の要領で一貫して行なう。
【0064】
実施例1c:
実施例1aに従って、可塑性で自由流動性の組成物を生産する。不活性支持体と同じ寸法で同じセル密度のコーディエライトで構成された触媒体を、可塑性組成物で被覆する。その後、被覆された支持体を、実施例1aに従ったさらなる方法ステップ3および4に付す。結果は、被覆触媒体5’である。
【0065】
一実験においては、実施例1a、1bおよび1cに従って生産した非坦持触媒5および5’を900℃まで加熱して、10,000 l/hの空間速度で2時間、空気流に付す。非坦持触媒5および5’はこの間色変化を一切示さない。これらの非坦持触媒は固有の薄黄色乃至ベージュの基調色を保つ。換言すると、+2の酸化状態の鉄および/または鉄の高い分散度は第1の熱処理3に従った還元か焼により、恒久的に安定化されている。空気などの酸化性雰囲気下でさえ、+2の酸化状態の鉄から+3の酸化状態の鉄への酸化は一切発生せず、大きなFeクラスタも一切形成しない。+3の酸化状態にある鉄に典型的であるように、あらゆる酸化が直ちに赤褐色の基調色の色変化を導くと考えられる。鉄は主としてFeの形で存在することから、この色は錆に典型的なものである。同じことは、存在する酸化鉄クラスタにもあてはまる。
【0066】
実施例2:
これとの比較のため、実施例1aの方法ステップ1に従って全く同じように生産されたゼオライト触媒を製造する。これを次に、500℃を超える温度で空気中で従来の技術によってか焼する。
【0067】
実施例3:
実施例1aに従って、円形断面、300cpsiのセル密度、直径2.5cmの接触部域および約7cmの流動長を有する触媒体を、再度押出し加工する。しかしながらMFIタイプのゼオライトに代って、使用されるゼオライトはベータタイプのFeイオン交換型合成ゼオライトである。ベータタイプのゼオライトは、異なる特徴的3次元構造により、MFIタイプのゼオライトと異なっている。
【0068】
その後、触媒1a、2および3について、アンモニアの存在下でのNOの転換のための触媒活性(catalytic activity)を決定する。この目的で、触媒1a、2および3の各々を、25,000 1/hの標準化された空間速度で、NO600ppmの割合の窒素で構成された標準ガス流に付す。各々の場合において、触媒体内へ通す前後のNOの割合を決定し、これを用いて、触媒の上流側のNOの割合に基づいて転換を判定する。α=0.9という化学量論的係数で、すなわちNOの割合に比べてわずかに化学量論量より低い量で、還元剤としてアンモニアNHを標準ガスに供給する。その後、300℃未満のさまざまな温度ついて、それぞれの転換を判定する。
【0069】
タングステンおよびバナジウムの酸化物を添加した二酸化チタンで構成された触媒組成物を含む、同じ幾何形状の非坦持触媒についても、同じ実験を反復する。以下触媒をTiMoV触媒と呼ぶ。
【0070】
研究の結果は、図2に示されている。グラフ10は、温度14に対する比較用触媒2に正規化されたNOの転換の各々のプロットを示す。グラフ10は、曲線15に従った触媒1a(MFI)についての測定値を、測定曲線17に従った触媒3(ベータ)についての測定値を、そして測定曲線16に従った比較用触媒2についての測定値を示している。正規化の結果として、後者は値1の直線として計算されている。
【0071】
図2のグラフ10から、300℃未満の低温範囲内で還元か焼により得られた非坦持触媒1a、ゼオライトMFI(測定曲線15)が、同じ組成の従来通りに生産した触媒と比べて、NOの選択的触媒還元に関する触媒活性の明確な改善を示す、ということは明白である。この場合、転換は増大する。酸化された非坦持触媒3、ゼオライトベータ(測定曲線17)は、さらに一層改善された触媒活性を示す。
【0072】
300℃超の温度範囲では、触媒1aおよび3が達成するNO転換およびその触媒活性は、比較用触媒2のものに近づく。
【0073】
図2は、本発明に係る方法の実施形態によって生産された非坦持触媒が、300℃未満の低温範囲内の窒素酸化物の選択的還元に関して優れた触媒活性を有することを示している。+2の酸化状態または+3未満の分数の酸化状態にある鉄の恒久的安定化および/またはゼオライト上の鉄の恒久的な高分散度によって、このように生産されたSCR活性ゼオライト触媒は、特にディーゼルエンジンの場合がそうであるように、過剰な空気と共に作動させられる内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物削減に使用するために、この点に関して、群を抜いて適したものとなっている。従来のゼオライト触媒の場合、低温範囲内の触媒活性はNOの割合により決定的に左右されるが、本件で規定されているゼオライト触媒にこれはあてはまらない。図2は、具体的にはNOの不在下での、NOの分解のための本発明の触媒の群を抜いた触媒活性を示している。従って、従来のゼオライト触媒、より具体的にはFeイオン交換型ゼオライト触媒についても、通常は上流側に連結され、低温範囲内で排出された窒素酸化物中のNOの割合を増大させる酸化触媒を、本件で規定されているゼオライト触媒については、完全に無しで済ませることが可能である。このことは、構造空間の節約だけを意味するわけではない。実際、一般に必要とされる酸化触媒は希ガスを含み、従って高価であることから、本発明はコスト面の多大な利点を提供する。
【符号の説明】
【0074】
1 押出し可能な組成物の生産
2 か焼
3 第1の還元性熱処理
4 第2の酸化性熱処理
5 押出し加工された非坦持触媒
5’ 被覆された非坦持触媒
10 グラフ
12 NOx転換(NOx conversion)
14 温度
15 MFI触媒についての測定曲線1a
16 比較用触媒についての測定曲線2
17 ベータ触媒についての測定曲線3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SCR活性ゼオライト触媒を生産する方法において、
第1にFeイオン交換型ゼオライトが還元性炭化水素雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第1の熱処理(3)に付され、これにより、前記Feイオンの酸化状態が低減されかつ/または前記ゼオライト上の前記Feイオンの分散度が増大され、その後、前記還元されたゼオライトは酸化性雰囲気中で300℃〜600℃の範囲内の第2の熱処理(4)に付され、これにより炭化水素残渣および/または炭素残渣が酸化的に除去され、前記ゼオライトは前記第1および第2の熱処理(3および4)の間にか焼されて(2)、触媒を提供すること;
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の熱処理(3)中に50分超の期間にわたり温度が500℃を超過することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライトが前記第1の熱処理(3)の終りで400℃未満の温度まで冷却させられることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素雰囲気が1体積%未満の酸素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の熱処理(3)が、還元用として炭化水素が供給される不活性雰囲気中で実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記供給される炭化水素が、前記第1の熱処理(3)中に気体分解産物に転換される有機ポリマーおよび/またはバイオポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記供給される炭化水素が、ポリエチレン類、ポリグリコール類および/またはセルロースであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ゼオライトが予め有機可塑化剤の添加により加工されて自由流動性組成物、特に押出し可能な組成物を提供し、前記第1の熱処理(3)が不活性ガス雰囲気中で実施され、前記有機可塑化剤は熱分解の結果として前記不活性ガス雰囲気中に炭化水素を放出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記使用される可塑化剤がポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドおよび/またはセルロースであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記押出し可能な組成物が押出し加工されて非担持触媒(5)を提供し、前記非担持触媒(5)が前記複数の方法ステップに付されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
支持体(5’)が前記自由流動性組成物で被覆されており、前記被覆された支持体(5’)が前記方法ステップに付されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の熱処理(4)が空気中で実施されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の熱処理(3および4)が気体交換の直後に引き続き実施されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記使用されるゼオライトがベータまたはMFIタイプのゼオライトであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ゼオライトが3〜7重量%の鉄を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の通りに調製されたSCR活性ゼオライト触媒。
【請求項17】
+3未満の酸化状態でかつ/または高分散度で前記ゼオライト上にFeイオンが主として存在するFeイオン交換型ゼオライトを含む、か焼された触媒組成物を伴うSCR活性ゼオライト触媒において、前記Feイオンのさらに高い+3の酸化状態への転換および/またはその分散度の減少が阻止されていることを特徴とするSCR活性ゼオライト触媒。
【請求項18】
前記存在するFeイオンの前記低い酸化状態および/または前記高い分散度に対応する薄黄色の基調色から始まる前記触媒組成物が、2時間にわたる空気流を用いた700℃〜900℃の熱処理の間にいかなる色変化も示さないことを特徴とする請求項17に記載のSCR活性ゼオライト触媒。
【請求項19】
押出し加工された非坦持触媒(5)の形または被覆された支持体(5’)の形をしていることを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載のSCR活性ゼオライト触媒。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−503731(P2013−503731A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527217(P2012−527217)
【出願日】平成22年8月21日(2010.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005140
【国際公開番号】WO2011/026573
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512052111)ジョンソン マッセイ キャタリスト (ドイツ) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】