説明

SPE−LC−MS−MSによる尿中リセドロネートの定量的測定

本発明は、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するためのSPE−LC−MS−MS法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するためのSPE−LC−MS−MS法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスホスホネート類は骨吸収を抑制し、そして骨粗しょう症及びパジェット病を含む代謝性骨疾患に対して効果的な治療である(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。骨吸収の防止は、成熟破骨細胞の機能に対する抑制作用に起因する。いくつかの生物分析法がビスホスホネート類について発表されている。一般にこれらの方法は、UV、蛍光(カラム前又はカラム後誘導体化を伴う)、伝導度、炎光光度リン選択的(flame photometric phosphorus selective)、屈折率及び探査型(explorative)光散乱検出を用いるイオン交換及びイオン対クロマトグラフィーに主に基づく(非特許文献5; 非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。
【0003】
アシル化及びシリル化と組み合わせたGC−MSの技術は、ヒト尿中のリセドロネートを測定するために用いられている(非特許文献11)。ヒト尿中のリセドロネートの分析のためのより感度のよい方法が、酵素結合免疫測定法(ELISA)を使用して達成されている (非特許文献12)。UV検出を用いるカラムスイッチングイオン対HPLCもまた、ヒト尿中のリセドロネートを定量すると報告されている (非特許文献13)。これらの方法のいくつかは非常に高い感度を示したが、これらは全て非常に複雑で時間がかかる。
【0004】
近年、抽出後又はカートリッジでの誘導体化を用いるリセドロネートのためのLC/MS/MS法の開発により一層の努力が払われている (非特許文献14; 非特許文献15)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】I. Elomaa, C. Blomqvist, L. Porkka, T.Holmstrom, T.Taube, C.Lamberg−Allardt, G.H. Borgstrom. Lancet 1985; i:1155
【非特許文献2】J.P. Kosonen, J. Pharm Biomed Anal. 1992; 10:881
【非特許文献3】J.A. Cantril, H.M. Buckler, D.C. Anderson, Ann. Rheumatol. Dis. 1986; 45:1012
【非特許文献4】H.Fleisch, Horm. Metab. Res. 1997; 29:145
【非特許文献5】V. Virtanen, L.H.J. Lajunen, J. Chromatogr. 1993; 617:291
【非特許文献6】V. Virtanem, L.H.J. Lajunen, Talanta 1993; 40: 661
【非特許文献7】S.E. Meek, D.J. Pietrzyk Anal. Chem. 1988; 60:1397
【非特許文献8】M.J. Lovdahl, D.J. Pietrzyk, J. Chromatogr. A 1999; 850:143
【非特許文献9】R. Niemi, H. Taipale, M. Ahlmark, J. Vepsalainen, T. Jarvinen, J. Chromatogr. B 1997; 701:97
【非特許文献10】T.L. Chester, Anal. Chem. 1980; 52:1621
【非特許文献11】D.Y. Mitchell, R.A. Eusebio, L.E. Dunlap, K.A. Pallone, J.D. Nesbitt, D.A. Russell, M.E. Clay, P.J. Bekker, Pharm. Res. 1998; 15:228
【非特許文献12】D.Y. Mitchell, M.A. Heise, K.A. Pallone, J.D. Nesbilt, M.E. Clay, J.D. Nesbitt, D.A. Russell, C.W. Melson, J. Clin. Pharmacol. 1999; 48:536
【非特許文献13】P.T. Vallano, S.B. Shugars, W.F. Kline, E.J. Woolf, B.K. Matuszewski, J. Chromatogr. B 1003; 794:23
【非特許文献14】L.S. Zhu, V.N. Lapko, J.W. Lee, Y.J. Basir, C. Kafonek, R. Olsen, C. Briscoe, Rapid commun. Mass Spectrom. 2006, 20: 3421
【非特許文献15】S.Turcotte, J. Couture, F. Vallee, AAPS PharmSci Vol. 5, No. 4, Abstract M1357 (2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法であって、該方法は:
a)内部標準を尿サンプルに添加すること;
b)尿サンプルを、メタノールでコンディショニングされているオアシスHLB(Oasis HLB)カートリッジにかけること;
c)カートリッジを水中約1% (v/v)TEA及びメタノール中約1% (v/v)ギ酸で洗浄すること;
d)リセドロネートを、少なくとも1回、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物で真空下溶離すること;
e)溶離した溶液をエバポレートし、そして10%(v/v)メタノールと90%(v/v)0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物で再構成して、リセドロネートと内部標準とのサンプル混合物を得ること;及び
f)サンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析すること;
を含む、方法に関する。
【0007】
尿サンプル中のリセドロネートの定量的測定のための前述のSPE−LC−MS−MS法は、比較的単純で感度が良く、正確でかつ精密であり、そして以下の図面及び以下の詳細な説明を用いてより十分に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】リセドロネートのESI−MSスペクトル図である。
【図2】デオキシ−リセドロネートのESI−MSスペクトル図である。
【図3】マウス尿中のリセドロネートのクロマトグラムであり(LLOQ 10ng/mL)、ここで保持2.27分におけるピーク強度は、ブランクマウス尿サンプルのHPLCスペクトルにおける同じピークの強度の3倍より大きい。このことは、マウス尿中10ng/mLのリセドロネート濃度を定量できることを意味する。
【図4】マウスコントロール尿のクロマトグラムである。
【図5】リセドロネート及びデオキシ−リセドロネートの典型的なクロマトグラムである。
【図6】マウス尿中のリセドロネートの典型的な較正曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義及び略語
上で使用されるように、そして本発明の記載全体を通して、以下の略語は、別に指示がなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする:
amu 原子質量単位
Cps カウント毎秒
CV% パーセント変動係数
Diff% 理論濃度と実測濃度との間の差のパーセンテージ
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ESI エレクトロスプレーイオン化
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
LC−MS 高圧液体クロマトグラフィー−質量分析
LLOQ 定量下限
MRM 多反応モニタリング
MS 質量分析
m/z 質量/電荷
NH4Ac 酢酸アンモニウム
NH4OH 水酸化アンモニウム
SD 標準偏差
SPE 固相抽出
TEA トリエチルアミン
v/v 体積/体積
【0010】
上で使用されるように、そして本発明の記載全体を通して、以下の用語は、別に指示がなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0011】
「デオキシ−リセドロネート」は、以下の化学構造:
【化1】

を有する(1−ホスホノ−2−ピリジン−3−イル−エチル)−ホスホン酸を意味する。
【0012】
「イナートシルフェニル(Inertsil Phenyl)−3 HPLCカラム」は、バリアン社(Varian, Inc.)により製造販売されている。
【0013】
「内部標準」は、分析においてサンプル、ブランク及び較正標準に一定量添加される、化学物質である。この化学物質は、内部標準シグナルに対する検体シグナルの比を、これらの標準の検体濃度の関数としてプロットすることにより較正のために使用される。これは、サンプル調製又はサンプル導入の間の検体損失について測定及び補正するために行われる。特に、内部標準は、検体の化学構造と類似するが同一ではない化合物である。
【0014】
「オアシスHLB(Oasis HLB)カーリッジ」は、ウォーターズ社(Waters Corporation)により製造販売されている。尿サンプルが有するカートリッジのサイズは尿中のリセドロネート濃度に依存する。リセドロネート濃度が低いほど、より大きいサイズのカートリッジ、より大きい体積の尿サンプル及びカートリッジを洗浄してリセドロネートを溶離するための溶液を使用すべきである。
【0015】
「リセドロネート」は、以下の化学構造:
【化2】

を有する(1−ヒドロキシ−1−ホスホノ−2−ピリジン−3−イル−エチル)−ホスホン酸を意味する。
【0016】
「尿サンプル」は、ヒト尿サンプルを含む哺乳動物尿サンプルを意味する。
【0017】
本発明の特定の実施態様
本発明の1つの特定の実施態様は、尿サンプルがマウス又はラットの尿サンプルである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0018】
本発明の別の特定の実施態様は、内部標準がデオキシ−リセドロネートである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0019】
本発明の別の特定の実施態様は、オアシスHLB(Oasis HLB)カートリッジが30mg オアシスHLB(Oasis HLB)カートリッジである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0020】
本発明の別の特定の実施態様は、内部標準が、水溶液として;より詳細には約10μg/mL水溶液として添加されるデオキシ−リセドロネートである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0021】
本発明の別の特定の実施態様は、尿サンプルの量が約0.4mLである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0022】
本発明の別の特定の実施態様は、カートリッジが約1mLのメタノールでプレコンディショニングされている、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0023】
本発明の別の特定の実施態様は、カートリッジが約1mLのメタノール、続いて水中1%(v/v)TEA約0.5mLでプレコンディショニングされている尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0024】
本発明の別の特定の実施態様は、カートリッジが水中約1% (v/v)TEA約0.5mL及びメタノール中約1%(v/v)ギ酸約0.5mLで洗浄される、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0025】
本発明の別の特定の実施態様は、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物の量が約1.5mLである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0026】
本発明の別の特定の実施態様は、リセドロネートを、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物約0.75mLで2回溶離する、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0027】
本発明の別の特定の実施態様は、10%(v/v)メタノールと90%(v/v) 0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物の量が約100μLである、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0028】
本発明の別の特定の実施態様は、内部標準がデオキシ−リセドロネートであり、そしてサンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析することが、リセドロネート(risedroante)とデオキシ−リセドロネートとをイナートシルフェニル(Inertsil Phenyl)−3 HPLCカラム上で溶液A及び溶液Bの混合物を用いるグラジエント溶離によるHPLCにより分離することを含み、ここで溶液Aの量を約10%(v/v)から約95%(v/v)に増加させ、そして溶液Aは水中約90%(v/v)メタノールであり、そして溶液Bは2%(v/v)トリエチルアミンを含有する約10mM 酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液である、尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法である。
【0029】
本発明の別の特定の実施態様は、マウス又はラットの尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法であって、該方法は:
a)約10μg/mLデオキシ−リセドロネート水溶液約100μLをマウス又はラットの尿サンプル約0.4mLに添加すること;
b)マウス又はラットの尿サンプルを、メタノール約1mL、続いて水中1%(v/v)TEA約0.5mLでプレコンディショニングされている30mg オアシスHLB(Oasis HLB)カートリッジにかけること;
c)カートリッジを水中1%(v/v)TEA約0.5mL及びメタノール中1%(v/v)ギ酸約0.5mLで洗浄すること;
d)リセドロネートを、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物約1.5mLで真空下溶離すること;
e)溶離した溶液をエバポレートし、そして約10% (v/v)のメタノールと約90%(v/v)の約0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物約100μLで再構成してリセドロネート及びデオキシ−リセドロネートのサンプル混合物を得ること;及び
f)サンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析すること;を含み、ここでリセドロネートとデオキシ−リセドロネートとをイナートシルフェニル(Inertsil Phenyl)−3 HPLCカラム上で溶液A及び溶液Bの混合物を用いるグラジエント溶離によるHPLCにより分離し、そしてここで溶液Aの量を約10%(v/v)から約95%(v/v)に増加させ、そして溶液Aは水中約90%(v/v)メタノールであり、そして溶液Bは2%(v/v)トリエチルアミンを含有する約10mM 酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液である、方法である。
【0030】
本発明の別の特定の実施態様は、マウス又はラットの尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法であって、該方法は:
a)約10μg/mL デオキシ(dexoy)−リセドロネート水溶液約100μLを、マウス又はラットの尿サンプル約0.4mLに添加すること;
b)マウス又はラットの尿サンプルを、メタノール約1mL、続いて水中1%(v/v)TEA約0.5mLでプレコンディショニングされている30mg オアシスHLB(Oasis HLB)カートリッジにかけること;
c)カートリッジを水中1%(v/v)TEA約0.5mL及びメタノール中1%(v/v)ギ酸約0.5mLで洗浄すること;
d)リセドロネートを、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物約0.75mLで真空下2回溶離すること;
e)溶離した溶液をエバポレートし、そして約10% (v/v)のメタノールと約90%(v/v)の約0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物約100μLで再構成してリセドロネート及びデオキシ(dexoy)−リセドロネートのサンプル混合物を得ること;及び
f)サンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析すること;を含み、ここでリセドロネートとデオキシ(dexoy)−リセドロネートとをイナートシルフェニル(Inertsil Phenyl)−3 HPLCカラム上で溶液A及び溶液Bの混合物を用いるグラジエント溶離によるHPLCにより分離し、そしてここで溶液Aの量を約10%(v/v)から約95%(v/v)に増加させ、そして溶液Aは水中約90%(v/v)メタノールであり、そして溶液Bは2%(v/v)トリエチルアミンを含有する約10mM 酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液である、方法である。
【0031】
当然ながら、本発明は、言及される特定の実施態様の全ての適切な組み合わせを包含する。
【0032】
例証としてのみ示され、本発明をその範囲に限定するとみなされるべきではない以下の実施例から、本発明はより明確となる。
【実施例】
【0033】
工程1: マウス又はラットの尿中のリセドロネート尿標準の調製
1mg/mL リセドロネートストック溶液を、リセドロネートをHPCL等級の水に溶解することにより調製した。250μg/mL、100μg/mL及び50μg/mLのリセドロネート標準溶液を、250μL、100μL及び50μLの1mg/mLリセドロネートストック溶液をHPLC等級の水でそれぞれ希釈して1mLにすることにより調製した。250μg/mL、100μg/mL及び50μg/mLのリセドロネート標準溶液の適切な希釈を行って、25μg/mL、10μg/mL、5μg/mL、2.5μg/mL及び1μg/mLのリセドロネート使用溶液(working solutions)を得た。リセドロネート(Riseronate)尿標準(10ng/mLから2500ng/mLの範囲)を、4μLの各使用溶液を0.4mLのマウス又はラットコントロール尿(すなわち、リセドロネートを投与されないマウスまたはラットからの尿)中に添加することにより調製した。
【0034】
工程2: サンプル調製
リセドロネートを投与されているマウス又はラットから採取した0.4mL尿サンプルを、10×75mmガラス培養チューブに移した。100μLのストック内部標準溶液、すなわち10μg/mL デオキシ−リセドロネート水溶液、及び100μLの5%TEA水溶液を全てのリセドロネート尿標準及び尿サンプルにそれぞれ添加した。
【0035】
サンプル抽出を、30mg オアシスHLB(Oasis HLB)カートリッジ(1mL、ウォーターズ社(Waters Corporation)により製造販売、カタログ番号: WAT094225)を用いて行った。カートリッジを、1mLメタノール、続いて水中1% TEA 0.5mLでコンディショニングした。尿サンプルをカートリッジにかけた。このカートリッジを水中1% TEA 0.5mL及びメタノール中1%ギ酸0.5mLで洗浄し、次いで検体及び内部標準を、3mM EDTAを含有する水中60%メタノールの混合物0.75mLを用いて2つの連続した溶離工程を使用して溶離した。サンプル抽出の間に、真空(5−15 Psi)を各工程で使用してカートリッジに液体を通した。溶離した溶液を窒素下37℃で70分間乾燥し、次いで残留物を100μLの10%メタノール/90% 0.05 M NH4Ac−NH4OH緩衝液(pH 9.26)で再構成した。
【0036】
工程3: LC−MS/MS分析
リセドロネートの分析を、シマズ(Shimadzu) LC−10ADポンプ、SCL−10A VPシステムコントローラ、リープテクノロジーズ(Leap Technologies) HTS PALオートサンプラー及びAPI 4000三連四重極質量分析計を含むAPI 4000 LC−MS/MSシステム(MDSサイエックス社(MDS Sciex)により販売)を使用して行った。
【0037】
リセドロネート及び内部標準をイナートシルフェニル(Inertsil Phenyl)−3 HPLCカ
ラム(3μL、50×030mm、バリアン社(Varian, Inc.)により製造販売、カタログ番号: 0408−050×030)上で溶液Aと溶液Bとの混合物で6分グラジエント溶離することにより分離し、ここで溶液Aの量を10%から95%に増加させた。溶液Aは水中90%メタノールであり、そして溶液Bは2%トリエチルアミンを含む10mM酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液(pH=5.0)であった。流量を0.2mL/分で一定に維持した。サンプル(10μL 再構成)をHPLCカラム上に直接注入した。質量分析計を、リセドロネートについてネガティブモードで−58ボルトの衝突エネルギーにてトランジションm/z 281.9→63.1でモニタリングするようにプログラムした。m/z 265.8→79.2をデオキシ−リセドロネート内部標準を測定するために使用した。イオン源(source)温度を350℃に設定した。6分の分析実行時間を使用した。
【0038】
結果
直線性(Linearity)
リセドロネートマウス又はラット尿標準についてのアッセイは、10ng/mLのLLOQで10から2500ng/mLまで直線であった。LLOQにおいて決定された真度(accuracy)は14.8%で精度(precision)は17.8% (n=3)であった。バリデーションの間に得られた回帰パラメーターを表1に報告する。リセドロネートについて0.98又はそれ以上の相関係数を日間(day-to-day)の分析から得た。典型的な較正曲線を図6に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
特異性(specificity)
2.27の保持時間における小さなピークがマウスコントロール尿において見られたが、LLOQ(10ng/mL)のピーク高さはマウスコントロール尿におけるピーク強度の3倍より大きかった(図3及び図4を参照のこと)。従って、10ng/mLのリセドロネート濃度で定量することができる。
【0041】
精度
精度は、研究の持続期間にわたって各コントロールレベルにおいて測定された濃度の変動のパーセント係数として表される。マウス尿におけるコントロールについての日内変動係数は2.2〜9.6%の範囲であった。3つの濃度レベルにおけるコントロールについての日間精度は5.2〜10.3%の範囲であった。標準についての日内及び日間の精度は0.3〜26%の範囲であった。
【0042】
真度
アッセイ真度は、平均の測定された品質コントロール濃度と理論値との間のパーセント差として表される。
【0043】
マウス尿コントロールについての日内アッセイ真度は−5.3〜4.4%の範囲であった。日間の真度は3つの濃度レベルのコントロールを使用して3日の分析日にわたって測定された。日内の真度は−4.0〜6.0%の範囲であった。マウス尿標準の逆算した濃度からの真度は±15%以内であった。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
回収率
希釈せずにスパイクして(with neat spiked)抽出したマウス尿ブランクと比較した場合の抽出されたマウス尿中のリセドロネートの回収率は約51.3%であった。
【0047】
【表4】

【0048】
本発明は、その趣旨又は本質的な特性から逸脱することなく他の具体的な形態で具現化され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法であって:
a)内部標準溶液を尿サンプルに添加すること;
b)尿サンプルを、メタノールでコンディショニングされているオアシス HLBカートリッジにかけること;
c)カートリッジを水中約1% (v/v)TEA及びメタノール中約1% (v/v)ギ酸で洗浄すること;
d)リセドロネートを、少なくとも1回、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物で真空下溶離すること;
e)溶離した溶液をエバポレートし、そして10%(v/v)メタノールと90%(v/v)0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物で再構成して、リセドロネートと内部標準とのサンプル混合物を得ること;及び
f)サンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析すること;
を含む、方法。
【請求項2】
尿サンプルがマウス又はラットの尿サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内部標準がデオキシ−リセドロネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
内部標準が、水溶液として添加されるデオキシ−リセドロネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
内部標準が、約10μg/mLの水溶液として添加されるデオキシ−リセドロネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
オアシス HLBカートリッジが30mg オアシス HLBカートリッジである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
尿サンプルの量が約0.4mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カートリッジが約1mLのメタノールでプレコンディショニングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
カートリッジが、約1mLのメタノール、続いて水中1%(v/v)TEA約0.5mLでプレコンディショニングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カートリッジが、水中約1% (v/v)TEA約0.5mL及びメタノール中約1%(v/v)ギ酸約0.5mLで洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物の量が約1.5mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
リセドロネートを、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物約0.75mLで2回溶離する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
10%(v/v)メタノールと90%(v/v) 0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物の量が約100μLである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
内部標準がデオキシ−リセドロネートであり、そしてサンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析することが、リセドロネートとデオキシ−リセドロネートとをイナートシルフェニル−3 HPLCカラム上で溶液A及び溶液Bの混合物を用いるグラジエント溶離によるHPLCにより分離することを含み、ここで溶液Aの量を約10%(v/v)から約95%(v/v)に増加させ、そして溶液Aは水中約90%(v/v)メタノールであり、そして溶液Bは2%(v/v)トリエチルアミンを含有する約10mM 酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
マウス又はラットの尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法であって:
a)約10μg/mLデオキシ−リセドロネート水溶液約100μLをマウス又はラットの尿サンプル約0.4mLに添加すること;
b)マウス又はラットの尿サンプルを、メタノール約1mL、続いて水中1%(v/v)TEA約0.5mLでプレコンディショニングされている30mg オアシス HLBカートリッジにかけること;
c)カートリッジを水中1%(v/v)TEA約0.5mL及びメタノール中1%(v/v)ギ酸約0.5mLで洗浄すること;
d)リセドロネートを、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物約1.5mLで溶離すること;
e)溶離した溶液をエバポレートし、そして約10% (v/v)のメタノールと約90%(v/v)の約0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物約100μLで再構成してリセドロネート及びデオキシ−リセドロネートのサンプル混合物を得ること;及び
f)サンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析すること;
を含み、ここでリセドロネートとデオキシ−リセドロネートとをイナートシルフェニル−3 HPLCカラム上で溶液A及び溶液Bの混合物を用いるグラジエント溶離によるHPLCにより分離し、ここで溶液Aの量を約10%(v/v)から約95%(v/v)に増加させ、そして溶液Aは水中約90%(v/v)メタノールであり、そして溶液Bは2%(v/v)トリエチルアミンを含有する約10mM 酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液である、方法。
【請求項16】
マウス又はラットの尿サンプル中のリセドロネートを定量的に測定するための方法であって:
a)約10μg/mL デオキシ−リセドロネート水溶液約100μLを、マウス又はラットの尿サンプル約0.4mLに添加すること;
b)マウス又はラットの尿サンプルを、メタノール約1mL、続いて水中1%(v/v)TEA約0.5mLでプレコンディショニングされている30mg オアシス HLBカートリッジにかけること;
c)カートリッジを水中1%(v/v)TEA約0.5mL及びメタノール中1%(v/v)ギ酸約0.5mLで洗浄すること;
d)リセドロネートを、約3mM EDTAを含有する約60%(v/v)メタノールと約40%(v/v)水との混合物約0.75mLで2回溶離すること;
e)溶離した溶液をエバポレートし、そして約10% (v/v)のメタノールと約90%(v/v)の約0.05M NH4Ac−NH4OH緩衝液との混合物約100μLで再構成してリセドロネート及びデオキシ−リセドロネートのサンプル混合物を得ること;及び
f)サンプル混合物をLC−MS/MSシステムで分析すること;
を含み、ここでリセドロネートとデオキシ−リセドロネートとをイナートシルフェニル−3 HPLCカラム上で溶液A及び溶液Bの混合物を用いるグラジエント溶離によるHPLCにより分離し、ここで溶液Aの量を約10%(v/v)から約95%(v/v)に増加させ、そして溶液Aは水中約90%(v/v)メタノールであり、そして溶液Bは2%(v/v)トリエチルアミンを含有する約10mM 酢酸アンモニウム−酢酸緩衝液である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−520489(P2010−520489A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552847(P2009−552847)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/055849
【国際公開番号】WO2008/109632
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507363864)サノフィ−アベンティス・ユー・エス・エルエルシー (8)
【Fターム(参考)】