説明

SiO2成形体、その製造法および該成形体の使用

無定形多孔質の連続気泡SiO成形体であって、該成形体が2層からなり、該層が同一の構造および組成を有することを特徴とする、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体、その製造法および該成形体の使用に関する。
【0002】
無定形多孔質の連続気泡SiO成形体は、数多くの技術的分野で利用されている。例としては、フィルター材料、断熱材料または熱遮蔽板が挙げられる。更に、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体から焼結および/または溶融によって、全ての種類の石英製品を製造することができる。この場合、高純度のSiO成形体は、例えばガラス繊維または光ファイバーのための”プレフォーム”として使用することができる。更に、前記方法でシリコン単結晶を引上げるためのるつぼを製造することもできる。
【0003】
無定形多孔質の連続気泡SiO成形体は、原理的に相応するSiO粉末の圧縮により製造されてもよいし、湿式化学的方法で製造されてもよい。セラミックから公知の粉末を圧縮するための方法、例えば冷間静水圧処理または熱間静水圧処理の場合には、一般に安定した成形体を得るために、有機の性質を有する結合剤が添加されなければならない。この結合剤は、後の段階で再び除去されなければならないかまたは燃焼されなければならない。これは、技術的に費用がかかり、高価であり、殊にシリコン単結晶を引き上げるためのるつぼを製造する際に必ず回避させることが必要である、望ましくない不純物をまねく。
【0004】
従って、多孔質のSiO成形体を製出するための好ましい方法は、湿式化学的方法である。この場合、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体をシリコン有機化合物の加水分解および縮合によって溶剤中で製造するような所謂ゾルゲル法と、この系に付加的になおSiO粒子を添加するような所謂コロイド状ゾルゲル法と、SiO粒子を溶剤中に分散させ、引続き変形するような所謂スリップ法とは、区別される。ゾルゲル法の主要な欠点は、成形体中で生じる固体含量が僅かであることである。これは、まさによりいっそう大きな幾何学的寸法の場合に、最大の亀裂の問題および破壊の問題をまねく。コロイド状のゾルゲル法において、SiO粒子の添加によって、分散液のよりいっそう高い充填度が達成され、したがって成形体中で生じる固体含量は、よりいっそう高くなる。このような方法は、欧州特許第705797号明細書および欧州特許第318100号明細書中に記載されている。しかし、この場合も生じる固体含量は、40〜60質量%であるにすぎず、したがって亀裂および破壊の問題は、解決されていない。
【0005】
WO 01/17902には、異なる粒径を使用することによって80質量%を上廻る固体含量を得ることができるような方法が記載されている。この結果、SiO成形体の本質的によりいっそう高い強度を生じるが、しかし、このような分散液の製造は、極めて費用がかかる。
【0006】
欧州特許第653381号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第2218766号明細書には、分散液を水中の石英ガラス粒子から製造し、SiO成形体を緩徐な水の取出しによって多孔質の金型上に形成させるようなスリップキャスティング法が開示されている。この場合も、80質量%を上廻る固体含量が達成される。
【0007】
しかし、スリップキャスティング法は、核酸に依存する水の取出しのために極めて時間がかかり、肉薄の成形部材に対してのみ使用可能である。この欠点は、ダイキャスティング法を使用することによって回避させることができる。
【0008】
この場合には、例えば、欧州特許第1245703号明細書または欧州特許第0196717号明細書B1の記載と同様に、SiO粒子を含有する分散液は、ダイカスト機のダイカスト金型中に注入され、多孔質のプラスチック膜を介してSiO成形体の形成下に脱水される。
【0009】
公知の全ての無定形多孔質の連続気泡SiO成形体は、湿式状態または乾燥状態で、即ち熱処理によってなお固定されていない状態で極めて脆く、亀裂および破壊に敏感であるという重大な欠点を有する。
【0010】
セラミック製造方法の場合に公知の微少亀裂形成の問題は、例えばSiO成形体の離型、乾燥または取り扱いの際に付加的に極めて頻繁に成形体の引裂きまたは破砕をまねく。これは、特に大きなSiO成形体、例えば管状物、棒状物またはるつぼ、殊にシリコン単結晶製造のためのるつぼが重要である場合に重大な問題である。
【0011】
光導波路または半導体の範囲で使用するための高純度のSiO成形体を製造する場合には、極めて頻繁に結合剤の添加を断念しなければならないので、この場合亀裂の問題は、なおいっそう大きくなる。
【0012】
従って、本発明の課題は、改善された亀裂形成挙動を有する無定形多孔質の連続気泡SiO成形体を提供することであった。
【0013】
更に、本発明の課題は、本発明による無定形多孔質の連続気泡SiO成形体を製造する方法を提供することであった。
【0014】
最初に記載された課題は、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体が2つの層からなり、これらの層が同一の構造および組成を有することによって特徴付けられる、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体によって解決される。
【0015】
このようなSiO成形体の製造は、SiO粒子を含有する分散液をダイカスト機のダイカスト金型中にポンプ輸送し、このダイカスト金型内で分散液をSiO成形体の形成下に内側の多孔質プラスチック膜および外側の多孔質プラスチック膜を介して湿分除去することによって行なわれる。
【0016】
この場合、分散液は、無定形のSiO粒子に対して10〜80質量%、特に50〜80質量%、特に有利に65〜75質量%の充填度を有する。
【0017】
分散剤として極性または非極性の有機溶剤、例えばアルコール、エーテル、エステル、有機酸、飽和または不飽和の炭化水素、または水またはこれらの混合物が存在していてよい。
【0018】
特に、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、またはアセトンまたは水、またはこれらの混合物が存在する。特に有利には、アセトンおよび水またはこれらの混合物が存在し、殊に有利には、水が存在する。
【0019】
特に有利には、上記の分散剤は、高度に純粋な形で使用され、例えば上記の分散剤は、刊行物に公知の方法により得ることができるかまたは商業的に入手することができる。
【0020】
水を使用する場合には、18メガΩ*cmの抵抗値を有する、有利に特殊に精製された水が使用される。
【0021】
特に、水には、鉱酸、例えばHCl、HF、HPO、HSOまたは珪酸が添加されるかまたはイオノゲン添加剤、例えば弗素塩が添加される。この場合、特に好ましいのは、HClまたはHFの添加であり、殊に好ましいのは、HFの添加である。
【0022】
記載された化合物の混合物が使用されてもよい。この場合には、分散液中でpH値は、2〜7、特に3〜6に調節される。
【0023】
また、同様に好ましくは、水に鉱物質塩基、例えばNH、NaOHまたはKOHが添加されてよい。特に好ましいのは、NHおよびNaOHであり、殊に好ましいのは、NHである。しかし、記載された化合物の混合物が使用されてもよい。この場合、pH値は、7〜11、特に9〜10に調節される。
【0024】
pH値の減少または上昇は、破片の形成中によりいっそう堅い破片を生じ、したがって安定したSiO成形体が形成される。
【0025】
SiO粒子の嵩密度(spezifische Dichte)は、有利に1.0〜2.2g/cmである。特に有利には、粒子は、1.8〜2.2g/cmの嵩密度を有する。殊に有利には、粒子は、2.0〜2.2g/cmの嵩密度を有する。
【0026】
更に、好ましくは、外側表面上に1nm当たり3個以下のOH基を有するSiO粒子、特に有利には、1nm当たり2個以下のOH基、殊に有利には、1nm当たり1個以下のOH基を有するSiO粒子である。
【0027】
SiO粒子は、1〜200μm、有利に1〜100μm、特に有利に10〜50μm、殊に有利に10〜30μmのD50値を有する粒度分布を有する。更に、できるだけ狭い粒度分布が有利である。
【0028】
好ましくは、0.001m/g〜50m/g、特に有利に0.001m/g〜5m/g、殊に有利に0.01m/g〜0.5m/gのBET表面積を有するSiO粒子である。SiO粒子は、特に最大で1%の結晶含量を有する。更に、特にSiO粒子は、分散剤とのできるだけ僅かな相互作用を示す。
【0029】
異なる出所の無定形SiO粒子、例えば後焼結された珪酸(融合シリカ)ならびに全ての種類の無定形の焼結されたかまたは圧縮されたSiOは、前記性質を有する。従って、前記の無定形SiO粒子は、特に本発明による分散液の製造に適している。
【0030】
相応する材料は、自体公知の方法で爆鳴気中で製造することができる。また、例えばExcelica(登録商標)の商標で日本のTokuyamaから商業的に入手することもできる。
【0031】
上記判断基準を満たす場合には、別の出所の粒子、例えば天然水晶、石英ガラス砂、ガラス状珪酸、粉砕された石英ガラスまたは粉砕された石英ガラス廃棄物ならびに化学的に製造された珪酸ガラス、例えば沈降珪酸、高分散性珪酸(火焔熱分解により製造されたヒュームドシリカ)、キセロゲルまたはアエロゲルが使用されてもよい。
【0032】
無定形SiOは、有利に沈降珪酸、高分散性珪酸、ヒュームドシリカまたは圧縮されたSiO粒子、特に有利に高分散性珪酸またはヒュームドシリカ、殊に有利にヒュームドシリカである。記載された異なるSiO粒子の混合物は、同様に可能であり、好ましい。
【0033】
更に、有利には、異なる粒度分布を有する無定形SiO粒子が使用される。このようなSiO粒子は、1〜100nm、有利に10〜50nmの粒径を有するSiO粒子、例えば融合シリカまたはヒュームドシリカを0.1〜50質量%の量、特に有利に1〜30質量%の量、殊に1〜10質量%の量で上記の無定形SiO粒子に混合することによって得ることができる。
【0034】
この場合、ナノ程度のSiO粒子は、1種の無機結合剤として本質的によりいっそう大きなSiO粒子の間で機能するが、しかし、よりいっそう高い充填度を達成するための充填材料としては機能しない。それによって、SiO粒子は、分散液中で有利に二頂の粒度分布を有する。
【0035】
1つの特殊な実施態様において、上記の粒子は、高純度の形で、即ち殊に300ppmw以下(parts per million per weight)、有利に100ppmw以下、特に有利に10ppmw以下、殊に有利に1ppmw以下で存在する。
【0036】
もう1つの特殊な実施態様において、分散液は、付加的に金属粒子、金属化合物または金属塩を含有することができる。この場合好ましいのは、分散剤中で可溶性である化合物であり、特に好ましいのは、水溶性金属塩である。
【0037】
添加剤の金属粒子、金属化合物または金属塩は、製造中および/または製造後に分散液に添加されてよい。分散液を製造する場合には、分散液が装入され、SiO粒子は、徐々に、有利に絶えず添加される。しかし、SiO粒子は、数多くの工程で(少量ずつ)添加されてもよい。
【0038】
SiO粒径および粒の大きさを選択することにより、細孔の大きさおよび分布は、分散液中で製造されたSiO成形体中で意図的に調節することができる。
【0039】
分散装置としては、当業者に公知の全ての機器および装置を使用することができる。更に、好ましいのは、磨耗による金属汚染を回避させるために、分散液と接触していてよい金属部材を含まない機器である。
【0040】
分散は、0℃〜50℃、有利に5℃〜30℃の温度で行なわれる。分散前および/または分散中および/または分散後に、当業者に公知の方法、例えば真空により、場合によっては分散液中に含有されているガス、例えば空気は、除去されてよい。好ましくは、これは、完全な分散中および/または完全な分散後に実施される。
【0041】
うして製造された均一な分散液中では、少なくとも5分間、有利に少なくとも30分間、粒子の沈降を生じない。引続き、分散液は、ダイカスト機のダイカスト金型中に移され、この金型内で分散液は、圧力下およびSiO成形体の形成下に内側の多孔質膜および外側の多孔質膜を介して脱水される。
【0042】
分散液でのダイカスト金型の充填は、当業者に公知の方法、例えばポンプ輸送により行なわれる。
【0043】
この場合、充填は、それぞれ任意の圧力で行なうことができるが、しかし、0.5〜100バール、特に有利に5〜30バール、殊に有利に5〜10バールで行なうことができる。破片の形成は、有利に0.5〜100バールの圧力下、特に有利に5〜30バール、殊に有利に5〜10バールの圧力で行なわれる。
【0044】
形成された破片の厚さは、望ましい成形体に応じて1〜50mmの間、有利に5〜30mmの間にある。破片の厚さ、多孔質膜および存在する圧力に応じて、形状安定性の破片の形成には、5〜90分間が必要とされる。
【0045】
分散液の移行および破片の形成は、0℃〜分散剤の沸点の温度で実施されることができる。好ましくは、20℃〜30℃の温度である。
【0046】
ダイカスト金型は、望ましい成形体の形状に相応する、密閉された中間空間を形成する2個の多孔質の膜部材からなる。1つ以上の個所で相応する供給管は、閉鎖されたダイカスト金型の充填を可能にする膜中に存在する。
【0047】
2個のダイキャスティング成形部材は、相応する閉鎖圧力で一体にされ、それによって上記の圧力で充填および破片の形成が可能になる。多孔質膜としては、有利に通気孔の多孔度5〜60体積%、有利に10〜30体積%を有する膜が使用される。膜の多孔度は、使用されるSiO粒子の大きさよりも大きくともよいし、小さくともよいし、等しくともよい。好ましくは、10ナノメートルないし100マイクロメートル、特に有利に100ナノメートルないし50マイクロメート、殊に有利に100ナノメートルないし30マイクロメートルの多孔度を有する膜が使用される。
【0048】
多孔質の膜は、特に均一な破片形成を行なうことができるようにするために、分散液の溶剤、有利に水によって完全に湿潤させることができる。
【0049】
膜のための材料としては、化学的に安定であり、自由な残留物、殊に金属残留物を含有しない、当業者に公知の全てのプラスチックが適している。既に商業的なスリップキャスティングで使用されているプラスチックは、有利に好適である。特に好ましいのは、ポリメタクリレートおよびポリメチルメタクリレートである。
【0050】
多孔質の膜の厚さは、製造すべき成形体の形状により左右される。
【0051】
2つの側に向かって多孔質のダイキャスティング膜部材中への分散液からの水の取出しが行なわれる。この場合、破片は、2つの側で外側から内側に向かって形成される。2つの層は、破片形成の終結に向かって一緒に成長する。こうして形成された破片は、常に2つの層からなる。層は、構造的構成および組成によって同一になるように形成されている。所謂層境界は、目視的にのみ破片の破断縁部について確認することができる(図1)。さらに拡大した場合(例えば、走査電子顕微鏡を用いて)、局所的に制限された、最小の密度変動を確認することができる(所謂組織、図2)。
【0052】
破片形成の後、SiO成形体の離型は、2個のダイキャスティング成形部材を離ればなれになるように動かしながら、同時に多孔質膜に圧縮空気および/または水を投入しながら行なわれる。圧縮空気または水は、例えば多孔質膜中に浸透される水によって反対方向に破片に向かって押圧し、薄手の水膜を破片と膜との間に形成することにより、破片を多孔質膜から外す。
【0053】
こうして形成された破片は、80〜95質量%の固体含量を有する。
【0054】
離型されたSiO成形体の乾燥は、当業者に公知の方法、例えば真空乾燥、熱いガス、例えば窒素または空気を用いて乾燥、接触乾燥またはマイクロ波乾燥により行なわれる。個々の乾燥方法を組み合わせることも可能である。好ましいのは、マイクロ波による乾燥である。
【0055】
乾燥は、25℃と分散剤の沸点との間の成形体中での温度で成形体の細孔中で行なわれる。
【0056】
乾燥時間は、成形体の乾燥体積、最大の層厚、分散剤および成形体の細孔構造に依存する。
【0057】
成形体を乾燥する場合には、僅かな収縮が起こる。この収縮は、湿った成形体の充填度に依存する。80質量%の充填度の場合、体積の収縮率は、2.5%以下であり、線形の収縮率は、1.0%以下である。よりいっそう高い充填度の場合には、収縮率は、相応してよりいっそう僅かである。
【0058】
本発明による成形体の密度は、1.4g/cm〜1.8g/cmの間にある。
【0059】
二頂の粒度分布を有する分散液から製造される本発明による成形体は、単峰性の粒度分布を有する分散液から製造された生成形体よりも高い強度を示す。
【0060】
全ての工程で高純度の材料を用いて作業するような特殊な実施態様において、成形体は、殊に300ppmw以下、有利に100ppmw以下、特に有利に10ppmw以下、殊に有利に1ppmw以下の金属の異質原子含量を有する。
【0061】
こうして得ることができる成形体は、任意の分散液および任意の形状の無定形の連続気泡SiO成形体であり、この場合この形状は、構造および組成の点で同一に形成されている2つの層からなる。
【0062】
ところで、意外なことに、離型中、乾燥中または取り扱い中に成形体の内側および/または外側に微小亀裂を生じる場合には、この亀裂は、成形体の2つの層境界が合わさる平面内に至るまで拡大することが見出された。それによって、成形体は、安定性のままであり、幾何学的寸法は、維持される(図3)。
【0063】
本発明による成形体は、特殊な性質のために多種多様に、例えば濾材、断熱材料、熱遮蔽板、触媒材料ならびにガラス繊維、光ファイバー、光学ガラスまたは全ての種類の石英品のための”プレフォーム”として使用されてよい。
【0064】
更に、特殊な実施態様において、多孔質成形体は、異なる分子、成分および物質で全部または部分的に代替されていてよい。好ましいのは、触媒活性である分子、成分および物質である。この場合には、例えば米国特許第5655046号明細書中に記載されているような当業者に公知の全ての方法が使用されてよい。
【0065】
1つの特殊な実施態様において、こうして得られた成形体は、なお焼結にかけることができる。この場合には、当業者に公知の全ての方法、例えば真空焼結、ゾーン焼結(Zonensintern)、アーク中での焼結、プラズマまたはレーザーを用いての焼結、誘導焼結、またはガス雰囲気またはガス流中での焼結が使用されてよい。
【0066】
更に、特殊な実施態様において、こうして得られた成形体は、米国特許第2003−0104920号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10324440号明細書の記載と同様になおCOレーザーを用いてガラス化されることができる。
【0067】
無定形多孔質の連続気泡成形体の焼結中に失われる。完全な焼結が行なわれた場合には、成形体中に層構造は、もはや存在していない。更に、完全に焼結されたケイ酸塩ガラス中には、組織は、もはや検出することもできない(図4および5)。
【0068】
こうして、少なくとも2.15g/cm、特に2.2g/cmの密度を有する、100%無定形(クリストバル石なし)の透明でガス不透過性の焼結されたケイ酸塩ガラス成形体を製造することができる。1つの特殊な実施態様において、焼結されたケイ酸塩ガラス成形体は、ガスの封入を有さず、および特に1ppm以下のOH基濃度を有する。全ての工程において高純度の材料を用いて作業しないような特殊な実施態様において、焼結された成形体は、300ppmw以下、有利に100ppmw以下、特に有利に10ppmw以下、殊に有利に1ppmw以下の金属の異質原子含量を有する。こうして製造されたケイ酸塩ガラス成形体は、原理的にケイ酸塩ガラスが使用されるような全ての用途に適している。好ましい使用領域は、全ての種類の石英品、ガラス繊維、光ファイバーおよび光学ガラスである。特に好ましい使用領域は、シリコン単結晶を引き上げるための高純度のケイ酸塩ガラスるつぼである。
【0069】
更に、特殊な実施態様において、分散液および/または多孔質成形体および/または焼結されたケイ酸塩ガラス成形体は、それぞれの成形体に付加的な性質を仲介する分子、成分および物質で代替されていてよい。
【0070】
更に、特殊な実施態様において、分散液および/または多孔質成形体には、全部または部分的に、クリストバル石形成を促進するかまたは生じさせる化合物が添加される。この場合には、例えば欧州特許第0753605号明細書、米国特許第5053359号明細書または英国特許第1428788号明細書の記載と同様に、クリストバル石形成を促進しおよび/または生じさせる、当業者に公知の全ての化合物が使用されてよい。この場合、好ましいのは、BaOHおよび/またはアルミニウム化合物である。
【0071】
このような成形体の焼結後、クリストバル石層を内部および/または外部に有するかまたは全体的にクリストバル石からなるSi単結晶の引き上げのためのるつぼを得ることができる。このるつぼは、特に結晶の引き上げに適している。それというのも、このるつぼは、温度安定性であり、例えばシリコン溶融液を殆んど汚染しないからである。それによって、結晶の引き上げの際によりいっそう高い歩留りを達成させることができる。
【0072】
次の実施例につき本発明をさらに詳説する。
【0073】
例1:
SiO分散液の製造
10リットルのプラスチック容器中に2回蒸留したHO3800gを装入した。プラスチックで被覆されたプロペラミキサーを用いて、最初にヒュームドシリカ712g(高分散性珪酸、BET表面積200m/g、Wacker-Chemie社、Muenchen在、からWacker HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を30分間で攪拌混入した。引続き、少量ずつ30分間で、Tokuyama社からExcelica(登録商標)SE-30の名称で入手可能なヒュームドシリカ8188g(珪酸 平均粒径30μm)を添加し、分散させた。
【0074】
完全な分散に引続き、分散液を10分間で、弱い低圧(0.8バール)に引き、場合によっては封入された気泡を除去した。
【0075】
こうして製造された分散液は、固体8900gからなり、このことは、70質量%の固体含量に相当した(その中、融合シリカ92%およびヒュームドシリカ8%)。
【0076】
例2:
SiO分散液の製造
10リットルのプラスチック容器中に2回蒸留したHO2190gを装入した。プラスチックで被覆されたプロペラミキサーを用いて、最初にヒュームドシリカ187.8g(高分散性珪酸、BET表面積200m/g、Wacker-Chemie社、Muenchen在、からWacker HDK(登録商標)N20の名称で入手可能)を30分間で攪拌混入した。引続き、少量ずつ30分間で、SiO粉末4931.2g(Mitsubishi社の12μmに微粉砕されたMKC 100粉末のD50値に対して)を添加し、分散させた。
【0077】
完全な分散に引続き、分散液を10分間で、弱い低圧(0.8バール)に引き、場合によっては封入された気泡を除去した。
【0078】
こうして製造された分散液は、固体5119gからなり、このことは、70質量%の固体含量に相当した(固体含量に対してヒュームドシリカ3.5%の含量を有する)。
【0079】
例3:
14”のるつぼ幾何学的寸法での成形体の製造(図6)
例1からのSiO分散液の一部分(1)を貯蔵容器(2)から10バールの圧力で導管系(3)を通じてメチルメタクリレートからなる、通気孔を有する2個のプラスチック膜(4および5)の間に圧送する。この膜は、30体積%の多孔度および20μmの平均孔径を有する。2個の膜の互いの間隔は、8mmの厚さの破片の形成を可能にする。2個の膜は、200バールの閉鎖圧力で反応作用を有する。分散液上に負荷される圧力によって、分散液の水の大部分は、膜中に圧入される。SiO破片が形成される。破片は、膜の両側から中心部に向かって2つの部分破片が中心部で一体になるまで成長する。
【0080】
45分間の破片形成の経過後、貯蔵容器中の圧力は、0バールの過圧に減少される。特に、膜中に敷設された空気用導管および水用導管(6)は、形成された成形体(7)を多孔質膜を通じて最終成形のために空気または水と反応させることを可能にする。この場合、成形体は、膜から外される。
【0081】
成形体は、初めて外側の膜(5)から外される。この場合、内側の膜(4)は、上向きに可動される。今や、成形体は、内側の膜(4)で懸吊される。形状閉鎖的な下地(8)は、成形体の下方に位置決めされる。その後に、成形体は、下地上に載置され、内側の膜(4)から外される。この場合、内側の膜(4)は、再び上向きに移動される。
【0082】
製造された無定形多孔質の連続気泡成形体は、89質量%の固体含量および11質量%の残留含水量を有する。90℃で3時間の乾燥後、成形体は、完全に乾燥されている。
【0083】
例4:
14”のるつぼ幾何学的寸法での成形体の製造(図6)
例2からのSiO分散液の一部分(1)を貯蔵容器(2)から5バールの圧力で導管系(3)を通じてメチルメタクリレートからなる、通気孔を有する2個のプラスチック膜(4および5)の間に圧送する。この膜は、30体積%の多孔度および20μmの平均孔径を有する。2個の膜の互いの間隔は、8mmの厚さの破片の形成を可能にする。
【0084】
2個の膜は、60バールの閉鎖圧力で反応作用を有する。
【0085】
分散液上に負荷される圧力によって、分散液の水の大部分は、膜中に圧入される。SiO破片が形成される。破片は、膜の両側から中心部に向かって2つの部分破片が中心部で一体になるまで成長する。
【0086】
30分間の破片形成の経過後、貯蔵容器中の圧力は、0バールの過圧に減少される。特に、膜中に敷設された空気用導管および水用導管(6)は、形成された成形体(7)を多孔質膜を通じて最終成形のために空気または水と反応させることを可能にする。この場合、成形体は、膜から外される。
【0087】
成形体は、初めて外側の膜(5)から外される。この場合、内側の膜(4)は、上向きに可動される。今や、成形体は、内側の膜(4)で懸吊される。形状閉鎖的な下地(8)は、成形体の下方に位置決めされる。その後に、成形体は、下地上に載置され、内側の膜(4)から外される。この場合、内側の膜(4)は、再び上向きに移動される。
【0088】
製造された無定形多孔質の連続気泡成形体は、78質量%の固体含量および22質量%の残留含水量を有する。90℃で3時間の乾燥後、成形体は、完全に乾燥されている。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明によるSiO成形体の破断縁部での層境界を示す略図。
【図2】本発明によるSiO成形体の層境界での組織を示す走査電子顕微鏡写真。
【図3】本発明によるSiO成形体中で発生した亀裂が層境界で終わっていることを示す略図。
【図4】境界層(組織)がなお目視可能である、焼結された破片を示す略図。
【図5】境界層(組織)がもはや目視不可能である、完全に焼結された破片の断面を示す略図。
【図6】例3および4の記載と同様に14”るつぼ幾何学的寸法で成形体を製造することを示す略図。
【符号の説明】
【0090】
1 SiO分散液の一部分、 2 貯蔵容器、 3 導管系、 4、5 プラスチック膜、 6 膜中に敷設された空気用導管および水用導管、 7 形成された成形体、 8 形状閉鎖的な下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形多孔質の連続気泡SiO成形体において、該成形体が2層からなり、該層が同一の構造および組成を有することを特徴とする、無定形多孔質の連続気泡SiO成形体。
【請求項2】
80〜95質量%の固体含量を有する、請求項1記載のSiO成形体。
【請求項3】
1.4g/cm〜1.8g/cmの密度を有する、請求項1または2記載のSiO成形体。
【請求項4】
1〜50mmの素地の厚さを有する、請求項1、2または3記載のSiO成形体。
【請求項5】
殊に300ppmw以下、有利に100ppmw以下、特に有利に10ppmw、殊に有利に1ppmw以下の金属の異質原子含量を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のSiO成形体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のSiO成形体の製造法において、SiO粒子を含有する分散液をダイカスト機のダイカスト金型中にポンプ輸送し、このダイカスト金型中で分散液をSiO成形体の形成下に内側の多孔質プラスチック膜および外側の多孔質プラスチック膜を介して湿分除去することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のSiO成形体の製造法。
【請求項7】
分散液でのダイカスト金型の充填をポンプを用いて行なう、請求項6記載の方法。
【請求項8】
充填を0.5〜100バールの行なう、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
素地の形成を0.5〜100バールの圧力下で行なう、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
5〜90分間の処理時間を有する、請求項6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
分散液の移行および素地の形成を20℃〜30℃の温度で実施する、請求項6から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ダイカスト金型が望ましい成形体の形状に相当する密閉された中間空間を形成する2個の多孔質膜部材からなる、請求項6から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
多孔質膜として5〜60体積%、有利に10〜30体積%の連続気泡多孔度を有する膜を使用する、請求項6から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
10nm〜100μmの細孔寸法を有する膜を使用する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
分散液が65〜75質量%の無定形SiO粒子の充填度を有する、請求項6から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
分散剤としてアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールまたはアセトンまたは水またはこれらの混合物が存在する、請求項6から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
分散剤として18メガΩ*cm以上の抵抗値を有する水が存在する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
SiO粒子が10〜50μmのD50値を有する粒度分布を有する、請求項6から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
SiO粒子が最大1%の結晶含量を有する、請求項6から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
分散液中でのSiO粒子が二頂の粒度分布を有する、請求項6から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
SiO成形体の離型を、2個のダイカスト成形部材を切り離し、同時に多孔質膜に圧縮空気および/または水を衝突させるながら行なう、請求項6から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
離型されたSiO成形体を真空乾燥、熱いガス、例えば窒素または空気による乾燥、接触乾燥またはマイクロ波乾燥により乾燥させる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
フィルター材料、断熱材料、熱遮蔽板、触媒担持材料として、ならびにガラス繊維、光ファイバー、光学ガラスまたは石英製品としての請求項1から6までのいずれか1項に記載の成形体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2007−504073(P2007−504073A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524302(P2006−524302)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009318
【国際公開番号】WO2005/028385
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】