説明

Snめっき材およびその製造方法

【課題】摩擦係数が低く、はんだ濡れ性および接触信頼性に優れたSnめっき材およびそのSnめっき材の低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】銅または銅合金からなる基材上にCu−Sn化合物層が形成され、このCu−Sn化合物層上に純Sn層が形成されたSnめっき材において、純Sn層の厚さが0.3〜1.5μmであり、Snめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上であり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Snめっき材およびその製造方法に関し、特に、挿抜可能な接続端子などの材料として使用されるSnめっき材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、挿抜可能な接続端子の材料として、銅や銅合金などの導体素材の最外層にSnめっきを施したSnめっき材が使用されている。特に、Snめっき材は、接触抵抗が小さく、接触信頼性、耐食性、はんだ付け性、経済性などの観点から、自動車、携帯電話、パソコンなどの情報通信機器、ロボットなどの産業機器の制御基板、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの端子やバスバーの材料として使用されている。
【0003】
一般に、このようなSnめっきは、電気めっきによって行われており、Snめっき材の内部応力を除去してウイスカの発生を抑制するために、電気めっきの直後にリフロー処理(Sn溶融処理)が行われている。このようにSnめっき後にリフロー処理を行うと、Snの一部が素材や下地成分に拡散して化合物層を形成し、この化合物層の上に柔らかい溶融凝固組織になったSn層(以下「純Sn層」という)が形成される。この純Sn層は、優れた接触信頼性、耐食性およびはんだ付け性を得るために極めて重要な役割を果たす。
【0004】
しかし、純Sn層は軟質で変形し易いため、リフロー処理を施したSnめっき材を挿抜可能な接続端子などの材料として使用すると、接続端子の挿入時に表面が削れて摩擦係数が高くなって挿入力が高くなるという問題がある。また、自動車などの接続端子では、端子の多極化が進んでおり、端子の数に比例して組立て時の挿入力が上昇し、作業負荷が問題になっている。
【0005】
このような問題を解消するため、リフロー処理を施したSnめっき材では、軟質層である純Sn層の膜厚を薄くして、リフロー処理により硬質なCu−Sn化合物層などの化合物層を下地に形成することによって、摩擦係数の低減を図っている。しかし、純Sn層を薄くすると、素材や下地の成分が経時変化により最表面に速く拡散して耐熱性や接触信頼性が低下する。そのため、Cu−Sn化合物層の下層に拡散抑制層としてNi層を挿入する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、銅または銅合金の表面に、NiまたはNi合金からなる下地めっき層と、Cu−Sn合金からなる中間めっき層と、SnまたはSn合金からなる表面めっき層とをこの順で形成し、中間めっき層を形成するCu−Sn合金の平均結晶粒径を、このめっき層の断面を観察したときに、0.05μm以上で0.5μm未満とし、中間めっき層の表面の平均粗さRaを0.1〜0.5μmとすることにより、Snめっき材の耐熱性を向上させるとともに挿入力を低くする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、0.3〜15質量%のNiを含有する銅合金からなる母材の表面に、リフローまたは溶融Snめっきにより、表層側の厚さ0.5μm以下のSn層と、その下層の平均断面径0.05〜1.0μmで平均縦横比1以上の柱状結晶のCu−Sn合金層とからなる、厚さ0.2〜2.0μmのSnめっき層を形成することにより、Snめっき銅合金材料の接触信頼性を維持しながら挿入力を低くする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−147579号公報(段落番号0007)
【特許文献2】特開2009−108389号公報(段落番号0013−0025)
【特許文献3】特開2002−298963号公報(段落番号0004−0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2の方法では、Niめっきの工程の分だけ工程数が多くなり、めっきラインの管理コストやイニシャルコストが増大する。また、純Sn層を0.2μm以下の薄い層にすると、挿入力を低くすることができるものの、Cu−Sn化合物層が露出する部分が生じて、はんだ付け性や耐食性が劣化する。
【0010】
また、特許文献3の方法では、基材の種類がNiを含有する銅合金に限定され、製造コストが高くなる。
【0011】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、摩擦係数が低く、はんだ濡れ性および接触信頼性に優れたSnめっき材およびそのSnめっき材の低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銅または銅合金からなる基材上にCu−Sn化合物層(拡散層)が形成され、このCu−Sn化合物層上に純Sn層が形成されたSnめっき材において、純Sn層の厚さを0.3〜1.5μm、Snめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径を1.3μm以上、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを0.15μm以上にすることにより、摩擦係数が低く、はんだ濡れ性および接触信頼性に優れたSnめっき材を低コストで製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明によるSnめっき材は、銅または銅合金からなる基材上にCu−Sn化合物層が形成され、このCu−Sn化合物層上に純Sn層が形成されたSnめっき材において、純Sn層の厚さが0.3〜1.5μmであり、Snめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上であり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上であることを特徴とする。
【0014】
このSnめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径(Cu−Sn化合物の結晶粒の横の長さ)に対する、Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面におけるCu−Sn化合物の各々の結晶粒の最大の高さの平均値(Cu−Sn化合物の結晶粒の縦の長さ)の比率(縦の長さ/横の長さ)が0.5以下であるのが好ましい。
【0015】
また、このSnめっき材の各層間の界面と略垂直な断面上の所定の領域において、Cu−Sn化合物の各々の結晶粒の幅(各層間の界面と略平行な方向の長さ)が0.7μm以下の微細結晶粒の個数をΣRx、1.3μm以上の粗大結晶粒の個数をΣRyとして、微細結晶粒と粗大結晶粒の和に対して粗大結晶粒が存在する割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)が25〜60%であるのが好ましい。
【0016】
さらに、このSnめっき材の純Sn層の表面に潤滑油が塗布されているのが好ましく、この潤滑油の塗布量が0.2mg/dm以上であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明によるSnめっき材の製造方法は、電気めっきにより銅または銅合金からなる基材上にSn層を形成し、Sn層の表面を乾燥させた後、Sn層の表面を加熱してSnを溶融させた後に冷却することにより、基材上にCu−Sn化合物層を形成し、その上に純Sn層を形成する、Snめっき材の製造方法において、電気めっきを0.1g/L以上のSn酸化物を含むSnめっき浴を使用して行い、Snを溶融させた後の冷却を空冷保持した後に水冷することによって行い、基材と純Sn層との間に形成されるCu−Sn化合物層のSnめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上になり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上になるように、電気めっきの電流密度と空冷保持時間を設定し、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.8〜1.8μmになるように電気めっきの通電時間を設定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明によるSnめっき材の製造方法は、電気めっきにより銅または銅合金からなる基材上にSn層を形成し、Sn層の表面を乾燥させた後、Sn層の表面を加熱してSnを溶融させた後に冷却することにより、基材上にCu−Sn化合物層を形成し、その上に純Sn層を形成する、Snめっき材の製造方法において、電気めっきを0.1g/L以上のSn酸化物を含むSnめっき浴を使用して行い、Snを溶融させた後の冷却を空冷保持した後に水冷することによって行い、電気めっきの電流密度をa(A/dm)、空冷保持時間b(秒)とすると、1≦a≦5、1≦b≦5、b≧a−1.5を満たすように電流密度および空冷保持時間を設定し、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.8〜1.8μmになるように電気めっきの通電時間を設定することを特徴とする。
【0019】
上記のSnめっき材の製造方法において、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.9〜1.6μmになるように電気めっきの通電時間を設定するのが好ましい。また、Snを溶融させた後に冷却した後、表面に潤滑油を塗布するのが好ましく、その潤滑油の塗布量が0.2mg/dm以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、摩擦係数が低く、はんだ濡れ性および接触信頼性に優れたSnめっき材を低コストで製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるSnめっき材の実施の形態では、銅または銅合金からなる基材上にCu−Sn化合物層(拡散層)が形成され、このCu−Sn化合物層上に純Sn層が形成されたSnめっき材において、純Sn層の厚さが0.3〜1.5μmであり、Snめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上であり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上である。
【0022】
このように、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を粗大に成長させると、摩擦係数を低減させる効果があり、Snめっき材を挿抜可能な接続端子の材料として使用した場合に、挿入時に純Sn層の表面が削られるのを抑制して、挿入力を低減させる効果が得られる。また、純Sn層を薄くする必要がないため、Snめっき材の耐熱性や接触信頼性も維持することができる。
【0023】
Cu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm未満では、摩擦係数を低減させる効果が不十分になるため、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.3μm以上であり、1.3〜3μmであるのが好ましく、1.5〜2.0μmであるのがさらに好ましい。また、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm未満では、表面の粗さが不十分で、摩擦係数を低減させる効果が不十分になるため、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.15μm以上であり、0.15〜0.3μmであるのが好ましい。
【0024】
また、Snめっき材の純Sn層の厚さが0.3μm未満であると、Snめっき材としての本来の特性を発揮できなくなり、1.5μmを超えると、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm未満になって、表面の粗さが不十分で、摩擦係数を低減させる効果が不十分になるため、Snめっき材の純Sn層の厚さが0.3〜1.5μmであり、0.4〜1.2μmであるのが好ましい。
【0025】
このSnめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径(Cu−Sn化合物の結晶粒の横の長さ)に対する、Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面におけるCu−Sn化合物の各々の結晶粒の最大の高さの平均値(Cu−Sn化合物の結晶粒の縦の長さ)の比率(縦の長さ/横の長さ)が0.5以下であるのが好ましい。この比率が0.5を超えると、摩擦係数を低減させる効果が不十分になるため、0.5以下であるのが好ましい。
【0026】
また、このSnめっき材の各層間の界面と略垂直な断面上の所定の領域において、Cu−Sn化合物の各々の結晶粒の幅(各層間の界面と略平行な方向の長さ)が0.7μm以下の微細結晶粒の個数をΣRx、1.3μm以上の粗大結晶粒の個数をΣRyとして、微細結晶粒と粗大結晶粒の和に対して粗大結晶粒が存在する割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)が25〜60%であるのが好ましい。この粗大結晶粒の存在割合が25%未満の場合や60%を超える場合には、Cu−Sn化合物の結晶粒が略均一に配置されており、摩擦係数を低減させる効果が不十分であるため、粗大結晶粒の存在割合は25〜60%であるのが好ましく、30〜50%であるのがさらに好ましい。
【0027】
また、このSnめっき材の純Sn層の表面に潤滑油が塗布されているのが好ましく、この潤滑油の塗布量が0.2mg/dm以上であるのが好ましい。このようにSnめっき材のSn層の表面に潤滑油が塗布すると、Snめっき材のCu−Sn化合物の結晶粒の粗大化により形成された純Sn層の表面の凹凸構造に潤滑油が保持されて、Snめっき材の摩擦係数をさらに低減する効果が得られるが、潤滑油の塗布量が0.2mg/dm未満では、その効果を十分に発揮することができない。
【0028】
また、本発明によるSnめっき材の製造方法の実施の形態では、電気めっきにより銅または銅合金からなる基材上にSn層を形成し、Sn層の表面を乾燥させた後、Sn層の表面を加熱してSnを溶融させた後に冷却することにより、基材上にCu−Sn化合物層を形成し、その上に純Sn層を形成する、Snめっき材の製造方法において、電気めっきを0.1g/L以上のSn酸化物を含むSnめっき浴を使用して行い、Snを溶融させた後の冷却を空冷保持した後に水冷することによって行い、基材と純Sn層との間に形成されるCu−Sn化合物層のSnめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上になり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上になるように、電気めっきの電流密度と空冷保持時間を設定し、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さ(Snめっき層の電析厚さ)が0.8〜1.8μmになるように電気めっきの通電時間を設定する。
【0029】
具体的には、電気めっきにより銅または銅合金からなる基材上にSn層を形成し、Sn層の表面を乾燥させた後、Sn層の表面を加熱してSnを溶融させた後に冷却することにより、基材上にCu−Sn化合物層を形成し、その上に純Sn層を形成する、Snめっき材の製造方法において、電気めっきを0.1g/L以上のSn酸化物を含むSnめっき浴を使用して行い、Snを溶融させた後の冷却を空冷保持した後に水冷することによって行い、電気めっきの電流密度をa(A/dm)、空冷保持時間b(秒)とすると、1≦a≦5、1≦b≦5、b≧a−1.5を満たすように電流密度および空冷保持時間を設定し、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.8〜1.8μmになるように電気めっきの通電時間を設定する。
【0030】
Snめっき浴は、0.1g/L以上のSn酸化物を含み、0.2g/L以上のSn酸化物を含むのが好ましい。Snめっき浴がSn酸化物を含むと、電気めっきの際にSn酸化物がSn結晶の内部、表面および粒界に巻き込まれ、また、Sn酸化物の存在によりSnの電析が阻害されて、Sn電析が不均一に核生成されるため、電析Snの結晶粒を粗大且つ不均一に生成させることができる。また、Snめっき浴が硫酸錫を含み、Snめっき浴に空気を吹き込んだり、Snめっき浴を攪拌または循環させて大気と接触させることによって、Sn酸化物がSnめっき浴中に生成されるのが好ましい。
【0031】
電流密度が5A/dmより高くなると、Sn電析が均一に核生成するため、電析Snの結晶粒が微細且つ均一に成長するが、電流密度を1〜5A/dm、好ましくは1.5〜3A/dmにすれば、Sn電析が不均一に核生成されるため、電析Snの結晶粒を粗大且つ不均一に生成させることができる。
【0032】
また、空冷保持時間が5秒より長くなると、Cu−Sn化合物の結晶粒径が粗大化し過ぎて5μmを超え、粒界が減少してSnめっき材の表面粗さが小さくなり過ぎるとともに、粗大結晶粒が存在する割合が小さくなり過ぎて、摩擦係数を低減させる効果が不十分になるので、Cu−Sn化合物の結晶粒径を適度に粗大化させ且つ不均一に生成するために、空冷保持時間は1〜5秒であり、2〜4秒であるのが好ましい。
【0033】
なお、Snめっき材のリフロー処理(Sn溶融処理)は、Snめっき材を235〜280℃、好ましくは245〜270℃で10〜20秒間保持することによって行うことができる。
【0034】
上記のSnめっき材の製造方法において、電気めっきにより形成されるSn層の厚さ(電析厚さ)が1.8μmより厚くなると、電流密度や空冷保持時間を調整しても、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上にすることができないため、電気めっきにより形成されるSn層の厚さを0.8〜1.8μmとし、0.9〜1.6μmにするのが好ましい。
【0035】
また、上記のSnめっき材の製造方法の実施の形態において、Snを溶融させた後に冷却した後、表面に潤滑油を塗布するのが好ましく、潤滑油の塗布量が0.2mg/dm以上であるのが好ましい。Snめっき材の摩擦係数をさらに低減させるために、Sn層の表面に潤滑油が塗布されているのが好ましいが、潤滑油の塗布量が0.2mg/dm未満では、その効果を十分に発揮することができない。
【実施例】
【0036】
以下、本発明によるSnめっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
まず、素材(被めっき材)として、(ミツトヨ株式会社製のビッカース硬度計により試験荷重0.5kgfで測定した)ビッカース硬さが105で長さ100mm×幅60mm×厚さ0.4mmの純銅板(無酸素銅C1020)を用意し、前処理として、電解脱脂を行った後に水洗し、その後、酸洗した後に水洗した。
【0038】
また、硫酸Sn(SnSO)60g/Lと硫酸(HSO)75g/Lとクレゾールスルホン酸30g/Lとβナフトール1g/Lを含有する1Lの水溶液に空気を1L/分の流量で30分間吹き込んで0.2g/LのSn酸化物を生成させてSnめっき浴を作製した。なお、電子線マイクロアナライザ(EPMA)によって、生成した物質がSnと酸素(O)で構成される物質(SnOとSnOの混合物)であることを確認した。また、Snめっき浴中のSn酸化物の生成量は、空気の吹き込み量(L/分)と吹き込み時間(分)を調整してSn酸化物を生成させた後に、ろ紙(ADVANTEC社製のGA−100(保留粒子径1.0mm))によりろ過して液中の固体分を採取し、扇風機で24時間乾燥させて重量を測定することによって定量した。
【0039】
次に、前処理済の素材とSn板を100mm離間させて2Lビーカーに配置し、上記のSnめっき浴1Lをビーカーに入れ、ビーカー中のスターラーを300rpmで回転させてSnめっき浴を攪拌し、液温20℃に制御し、素材およびSn板をそれぞれ陰極および陽極として、電流密度3A/dmで50秒間通電して、素材の両面のそれぞれ長さ50mm×幅60mmの領域にSnめっき層を形成した。
【0040】
このように素材上にSnめっき層を形成したSnめっき材を水洗し、Snめっき材の表面を乾燥させた後、Snめっき材のリフロー処理(Sn溶融処理)を行った。このリフロー処理では、近赤外線ヒーター(ハイベック社製)によって、大気雰囲気においてSnめっき材を250℃で10秒間加熱してSnめっき層の表面を溶融させた後、近赤外線ヒーターを停止して2秒間大気雰囲気に保持することによって空冷保持し、その直後に温度20℃の水槽内に浸漬して冷却した。
【0041】
なお、リフロー処理前のSnめっき材について、Snめっき層の厚さ(電析厚さ)を測定し、電析Snの結晶粒度を求めた。Snめっき層の厚さ(電析厚さ)は、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツル株式会社製)を用いて測定し、電析Snの結晶粒度は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により得られる二次電子像(SEI)を用いて、Snめっき層の表面を倍率5000倍に拡大して、JIS H0501の切断法に準じて求めた。その結果、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。
【0042】
このようにして作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定した。純Sn層の厚さは、JIS H8501の電解式試験方法に準じて、電解式膜厚計(中央製作所製のTH11)を用いて測定した。また、Cu−Sn化合物層の厚さは、純Sn層と同様に電解式膜厚計を用いて測定し、純Sn層の厚さの測定後に再測定を行って計測表示される値をCu−Sn化合物層の厚さとした。その結果、純Sn層の厚さは0.7μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.8μmであった。なお、集束イオンビーム(FIB)を用いて、Snめっき材の表面と略垂直な断面(Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面)を露出させ、走査イオン顕微鏡(SIM)で断面観察を行ったところ、純Sn層およびCu−Sn化合物層の厚さはいずれも電解式膜厚計で測定した厚さと同じであった。
【0045】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、上記の電解式膜厚計を用いて純Sn層を溶かすことによって、Snめっき材の表面と略平行な面(Snめっき材の各層間の界面と略平行な面)にCu−Sn化合物層を露出させ、走査イオン顕微鏡(SIM)で倍率5000倍に拡大して表面観察を行い、JIS H0501の切断法に準じてCu−Sn化合物の平均結晶粒径を求めた。その結果、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.6μmであった。
【0046】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、集束イオンビーム(FIB)を用いて、Snめっき材の表面と略垂直な断面(Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面)を露出させ、走査イオン顕微鏡(SIM)で倍率2000倍に拡大して断面観察を行い、Snめっき材の各層間の界面と略平行な方向の長さ60μmの領域において、Cu−Sn化合物の各々の結晶粒の幅(各層間の界面と略平行な方向の長さ)を計測し、その幅が0.7μm以下の微細結晶粒の個数をΣRx、1.3μm以上の粗大結晶粒の個数をΣRyとして、微細結晶粒と粗大結晶粒の和に対して粗大結晶粒が存在する割合(%)をΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)から算出した。その結果、ΣRxは39個、ΣRyは21個であり、Cu−Sn化合物の粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は35%であった。
【0047】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、集束イオンビーム(FIB)を用いて、Snめっき材の表面と略垂直な断面(Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面)を露出させ、走査イオン顕微鏡(SIM)で倍率5000倍に拡大して断面観察を行い、Snめっき材の各層間の界面と略平行な方向の長さ20μmの領域において、Snめっき材の各層間の界面と略垂直な方向のCu−Sn化合物の各々の結晶粒の最大の高さを計測し、全ての結晶粒の最大の高さの平均値をCu−Sn化合物の結晶粒の縦の長さとした。一方、リフロー処理後のSnめっき材について、Snめっき材の表面と略平行な面(Snめっき材の各層間の界面と略平行な面)にCu−Sn化合物層を露出させ、走査イオン顕微鏡(SIM)で倍率5000倍に拡大して表面観察を行い、JIS H0501の切断法に準じて求めた平均結晶粒径をCu−Sn化合物の結晶粒の横の長さとした。このようにして求めたCu−Sn化合物の結晶粒の縦の長さと横の長さから、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比(縦の長さ/横の長さ)を算出したところ、0.35であった。
【0048】
また、リフロー処理後のSnめっき材の表面粗さとして、超深度顕微鏡(KEYENCE社製のVK−8500)による測定結果から、JIS B0601に準じて(表面粗さを表すパラメータである)算術平均粗さRaを算出した。その結果、算術平均粗さRaは0.15μmであった。
【0049】
これらの結果を表2に示す。
【表2】

【0050】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。
【0051】
摩擦係数(μ)は、リフロー処理後のSnめっき材から切り出した2枚の平板状の試験片の一方をインデント加工(R=1.5mm)して凸形状の圧子とするとともに、平板状の試験片をベース側の評価試料とし、ロードセルを使用して圧子を負荷荷重300gfで評価試料の表面に押し付けながら移動速度60mm/分で7mm滑らせ、摺動距離1mmから5mmまでの4mmの区間で水平方向にかかる力の平均値(F)を測定し、負荷荷重(N)で除して、μ=F/Nから算出した。その結果、摩擦係数は0.18であった。
【0052】
はんだ濡れ性の評価は、リフロー処理後のSnめっき材からプレスで打ち抜いた幅10mm、長さ60mmの試験片を、ソルダーチェッカ(株式会社レスカ製のSAT−5200)を用いて、85℃で相対湿度85%の環境下に24時間放置した後に、非活性フラックスを塗布し、260℃に保持したPbフリーはんだ(Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu)槽に浸漬速度4mm/sで長さ4mmの部分を10秒間浸漬して、めっき面を外観観察することにより、試験片のはんだに浸漬した表面積に対するはんだで濡れた部分の面積(はんだ濡れ率)を求めることによって行った。その結果、はんだ濡れ率は98%であり、はんだ濡れ性は良好であった。
【0053】
高温放置後の接触信頼性の評価は、リフロー処理後のSnめっき材から切り出した試験片を大気雰囲気下において120℃の恒温槽内に120時間保持した後に恒温槽から取り出し、20℃の測定室において試験片の表面の接触抵抗値(高温放置後の接触抵抗値)を測定することによって行った。接触抵抗値の測定は、マイクロオームメータ(株式会社山崎精機研究所製)を使用して、開放電圧20mV、電流10mA、直径0.5mmのU型金線プローブ、最大荷重100gf、摺動有り(1mm/100gf)の条件で5回測定して、(最大荷重100gfが加えられたときの)平均値を求めた。その結果、高温放置後の接触抵抗値は1.2mΩであり、接触信頼性が良好であった。
【0054】
これらの結果を表3に示す。なお、表4において、はんだ濡れ率が90%以上ではんだ濡れ性が良好な場合を○、はんだ濡れ率が90%未満ではんだ濡れ性が良好でない場合を×で示し、高温放置後の接触抵抗値が2mΩ以下で接触信頼性が良好な場合を○、高温放置後の接触抵抗値が2mΩより高く接触信頼性が良好でない場合を×で示している。
【0055】
【表3】

【0056】
[実施例2]
電流密度2A/dmで75秒間通電し、Snめっき層を加熱溶融後の空冷保持時間を1秒とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.6μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0057】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.6μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.9μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.5μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは22、粗大結晶粒の個数ΣRyは22であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は50%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.45であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.21であった。これらの結果を表2に示す。
【0058】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.20であり、はんだ濡れ率が95%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が0.8mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0059】
[実施例3]
硫酸Sn(SnSO)60g/Lと硫酸(HSO)75g/Lとクレゾールスルホン酸30g/Lとβナフトール1g/Lを含有する1Lの水溶液に空気を1L/分の流量で150分間吹き込んで1.0g/LのSn酸化物を生成させてSnめっき浴を作製し、電流密度5A/dmで30秒間通電し、Snめっき層を加熱溶融後の空冷保持時間を4秒とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.0μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0060】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.5μm、Cu−Sn化合物層の厚さは1.1μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は2.1μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは42、粗大結晶粒の個数ΣRyは15であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は25%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.30であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.19であった。これらの結果を表2に示す。
【0061】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.21であり、はんだ濡れ率が97%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.4mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0062】
[実施例4]
通電時間を75秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.5μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0063】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは1.0μm、Cu−Sn化合物層の厚さは1.0μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.6μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは37、粗大結晶粒の個数ΣRyは20であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は35%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.40であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.17であった。これらの結果を表2に示す。
【0064】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.18であり、はんだ濡れ率が94%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が0.8mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0065】
[実施例5〜6]
リフロー処理後のSnめっき材の表面に、プレスや切断加工などの塑性加工に使用する潤滑油(JX日鉱日石エネルギー株式会社製のユニプレスPA5)を、それぞれ0.2mg/dm(実施例5)および20mg/dm(実施例6)塗布した以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。このようにした作製したリフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0066】
また、リフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.7μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.8μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.6μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは39、粗大結晶粒の個数ΣRyは21であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は15%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.35であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.15であった。これらの結果を表2に示す。
【0067】
また、リフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.12であり、はんだ濡れ率が93%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.3mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0068】
[比較例1]
通電時間を35秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは0.7μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0069】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.1μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.8μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.6μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは42、粗大結晶粒の個数ΣRyは14であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は15%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.40であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.15であった。これらの結果を表2に示す。
【0070】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.18であり、はんだ濡れ率が85%ではんだ濡れ性は良好でなく、高温放置後の接触抵抗値が3.7mΩで接触信頼性が良好でなかった。これらの結果を表3に示す。
【0071】
[比較例2]
電流密度5A/dmで30秒間通電し、Snめっき層を加熱溶融後の空冷保持時間を1秒とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.0μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0072】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.6μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.8μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.1μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは19、粗大結晶粒の個数ΣRyは1であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は5%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.65であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.08であった。これらの結果を表2に示す。
【0073】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.36であり、はんだ濡れ率が75%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.5mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0074】
[比較例3]
電流密度4A/dmで37秒間通電し、Snめっき層を加熱溶融後の空冷保持時間を1秒とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0075】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.7μm、Cu−Sn化合物層の厚さは1.0μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.5μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは39、粗大結晶粒の個数ΣRyは21であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は35%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.40であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.09であった。これらの結果を表2に示す。
【0076】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.35であり、はんだ濡れ率が95%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.5mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0077】
[比較例4]
通電時間を37秒間とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは2.0μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0078】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは1.4μm、Cu−Sn化合物層の厚さは1.2μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.6μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは37、粗大結晶粒の個数ΣRyは20であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は35%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.45であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.12であった。これらの結果を表2に示す。
【0079】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.40であり、はんだ濡れ率が94%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が0.7mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0080】
[比較例5]
Snめっき層を加熱溶融後の空冷保持時間を1秒とした以外は、実施例1と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.3μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0081】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.7μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.8μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.1μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは38、粗大結晶粒の個数ΣRyは2であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は5%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.60であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.19であった。これらの結果を表2に示す。
【0082】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.34であり、はんだ濡れ率が93%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.7mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0083】
[比較例6]
リフロー処理後のSnめっき材の表面に、プレスや切断加工などの塑性加工に使用する潤滑油(JX日鉱日石エネルギー株式会社製のユニプレスPA5)0.2mg/dmを塗布した以外は、比較例2と同様の方法により、リフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.0μmであった。このようにした作製したリフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0084】
また、リフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.6μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.8μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.1μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは19、粗大結晶粒の個数ΣRyは1であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は5%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.65であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.08であった。これらの結果を表2に示す。
【0085】
また、リフロー処理および潤滑油塗布後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.26であり、はんだ濡れ率が95%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が0.9mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0086】
[比較例7]
Snめっき層を加熱溶融後の空冷保持時間を1秒とした以外は、実施例3と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.0μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0087】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.7μm、Cu−Sn化合物層の厚さは0.9μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.3μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは10、粗大結晶粒の個数ΣRyは30であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は75%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.45であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.11であった。これらの結果を表2に示す。
【0088】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.31であり、はんだ濡れ率が91%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.2mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。
【0089】
[比較例8]
硫酸Sn(SnSO)60g/Lと硫酸(HSO)75g/Lとクレゾールスルホン酸30g/Lとβナフトール1g/Lを含有する1Lの水溶液からなるSnめっき浴(Sn酸化物を含まないSnめっき浴)を使用した以外は、実施例3と同様の方法により、リフロー処理後のSnめっき材を作製した。なお、実施例1と同様の方法により、リフロー処理前のSnめっき材のSnめっき層の電析厚さを測定するとともに、電析Snの結晶粒度を求めたところ、電析厚さは1.0μm、電析Snの結晶粒度は1.1μmであった。このようにした作製したリフロー処理後のSnめっき材の製造条件と、リフロー処理前のSnめっき層の電析厚さおよび電析Snの結晶粒度を表1に示す。
【0090】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、純Sn層の厚さおよびCu−Sn化合物層の厚さを測定し、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径を求め、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxと粗大結晶粒の個数ΣRyから粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)を算出し、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比を算出し、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaを算出した。その結果、純Sn層の厚さは0.7μm、Cu−Sn化合物層の厚さは1.0μm、Cu−Sn化合物の平均結晶粒径は1.5μmであった。また、Cu−Sn化合物の微細結晶粒の個数ΣRxは8、粗大結晶粒の個数ΣRyは35であり、粗大結晶粒の存在割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)は81%であった。また、Cu−Sn化合物の結晶粒の縦横比は0.55であり、Snめっき材の表面の算術平均粗さRaは0.12であった。これらの結果を表2に示す。
【0091】
また、リフロー処理後のSnめっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の摩擦係数を算出し、はんだ濡れ性および高温放置後の接触信頼性を評価した。その結果、摩擦係数は0.36であり、はんだ濡れ率が95%ではんだ濡れ性は良好であり、高温放置後の接触抵抗値が1.4mΩで接触信頼性が良好であった。これらの結果を表3に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金からなる基材上にCu−Sn化合物層が形成され、このCu−Sn化合物層上に純Sn層が形成されたSnめっき材において、純Sn層の厚さが0.3〜1.5μmであり、Snめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上であり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上であることを特徴とする、Snめっき材。
【請求項2】
前記Snめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径(Cu−Sn化合物の結晶粒の横の長さ)に対する、前記Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面におけるCu−Sn化合物の各々の結晶粒の最大の高さの平均値(Cu−Sn化合物の結晶粒の縦の長さ)の比率(縦の長さ/横の長さ)が0.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のSnめっき材。
【請求項3】
前記Snめっき材の各層間の界面と略垂直な断面上の所定の領域において、Cu−Sn化合物の各々の結晶粒の幅(各層間の界面と略平行な方向の長さ)が0.7μm以下の微細結晶粒の個数をΣRx、1.3μm以上の粗大結晶粒の個数をΣRyとして、微細結晶粒と粗大結晶粒の和に対して粗大結晶粒が存在する割合ΣRy×100/(ΣRx+ΣRy)が25〜60%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のSnめっき材。
【請求項4】
前記純Sn層の表面に潤滑油が塗布されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のSnめっき材。
【請求項5】
前記潤滑油の塗布量が0.2mg/dm以上であることを特徴とする、請求項4に記載のSnめっき材。
【請求項6】
電気めっきにより銅または銅合金からなる基材上にSn層を形成し、Sn層の表面を乾燥させた後、Sn層の表面を加熱してSnを溶融させた後に冷却することにより、基材上にCu−Sn化合物層を形成し、その上に純Sn層を形成する、Snめっき材の製造方法において、電気めっきを0.1g/L以上のSn酸化物を含むSnめっき浴を使用して行い、Snを溶融させた後の冷却を空冷保持した後に水冷することによって行い、基材と純Sn層との間に形成されるCu−Sn化合物層のSnめっき材の各層間の界面と略平行な面におけるCu−Sn化合物の平均結晶粒径が1.3μm以上になり且つSnめっき材の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以上になるように、電気めっきの電流密度と空冷保持時間を設定し、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.8〜1.8μmになるように電気めっきの通電時間を設定することを特徴とする、Snめっき材の製造方法。
【請求項7】
電気めっきにより銅または銅合金からなる基材上にSn層を形成し、Sn層の表面を乾燥させた後、Sn層の表面を加熱してSnを溶融させた後に冷却することにより、基材上にCu−Sn化合物層を形成し、その上に純Sn層を形成する、Snめっき材の製造方法において、電気めっきを0.1g/L以上のSn酸化物を含むSnめっき浴を使用して行い、Snを溶融させた後の冷却を空冷保持した後に水冷することによって行い、電気めっきの電流密度をa(A/dm)、空冷保持時間b(秒)とすると、1≦a≦5、1≦b≦5、b≧a−1.5を満たすように電流密度および空冷保持時間を設定し、電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.8〜1.8μmになるように電気めっきの通電時間を設定することを特徴とする、Snめっき材の製造方法。
【請求項8】
前記電気めっきにより基材上に形成されるSn層の厚さが0.9〜1.6μmになるように電気めっきの通電時間を設定することを特徴とする、請求項6または7に記載のSnめっき材の製造方法。
【請求項9】
前記Snを溶融させた後に冷却した後、表面に潤滑油を塗布することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載のSnめっき材の製造方法。
【請求項10】
前記潤滑油の塗布量が0.2mg/dm以上であることを特徴とする、請求項9に記載のSnめっき材の製造方法。

【公開番号】特開2013−76122(P2013−76122A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216050(P2011−216050)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】