説明

TABテープの製造方法

【課題】インナーリードの先端部の正確なリード幅や形状再現性を安定的に確保することを可能とするTABテープの製造方法を提供する。
【解決手段】ウェットエッチングによるフライングリード1のパターン加工と並行して、そのフライングリード1の先端の列よりも内側の領域内に、デバイス部9をほぼ横断すると共に縦断する内側ダミーパターン14を(内側ダミーパターンレジスト7を用いたウェットエッチングプロセスによって)、フライングリード1の先端に対して非連続となるようにその先端との間に間隔を置いて形成し、フライングリード1のパターン加工終了後に、その内側ダミーパターン14を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路チップのような電子デバイスが配置されるデバイス部を有すると共にその周囲を先端の列が囲むように配列形成された複数本のフライングリードのようなインナーリードを有するTABテープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のTABテープにおいては、いわゆるLSIチップ(半導体集積回路チップ)のような電子デバイスが配置される矩形の(四角い)孔であるデバイス部が、ポリイミドフィルムのような絶縁性基板を貫通するように穿ち設けられ、そのデバイス部に配置される電子デバイスと接続するためのフライングリードと呼ばれるインナーリードが形成されている。このフライングリードの先端部は、電子デバイスの接続パッド等に対する確実な接続を実現するために、いわゆるリード幅が所定の許容誤差の範囲内に収まるように精確に仕上げられることが要請される。
【0003】
ところが、フライングリードを含めて一般にインナーリードの先端部はリード幅が極めて小さく、全体的に細長い形状である。このため、ウェットエッチングプロセスで形成される際に、インナーリードの先端部は他の配線パターンの部分よりもサイドエッチングの影響を大きく受けるなどしてエッチングの進行が速く進むこととなり、所望の寸法よりも細くなりやすい傾向にある。
また、特にデバイス部として設けられた四角い孔の上に突出するフライングリードを形成する際、その部分の導体箔の下面(裏面)がデバイス部の孔を通してエッチング液に晒されることを防ぐために、その下面に耐エッチャント樹脂からなる裏止めと呼ばれるマスキングが施される。ところが、フライングリードが形成される部分の導体箔はデバイス部の孔の上に位置しているのであるから、裏止め材で支えられているだけの不安定な状態でウェットエッチングが施されることとなる。このため、エッチングによるパターン加工で得られたフライングリードの先端部は、形状再現性が悪化し、またリード幅の誤差が大きくなって、上記のような所定の許容誤差の範囲内に収めることが困難なものとなる傾向がある。
【0004】
そこで、インナーリードの先端部のリード幅の精度や形状再現性を向上させるために、ウェットエッチングプロセスでインナーリードの形成と並行してダミーパターンを設けるようにするという技術が提案されている。
図4、図5、図6は、それぞれ従来提案されているダミーパターンを形成するために用いられるレジストパターン(a)およびその仕上りの(目標とする)インナーリードのパターン形状(b)をそれぞれ示した平面図である。
【0005】
図4(a)に示した一例では、インナーリード100を形成するためのレジストパターン20の先端部に、ツノ状の補正パターン30を加えている。この提案によれば、補正パターン30を加えたことによって、ウェットエッチングプロセスでパターン加工された銅箔のような導体箔からなるインナーリード100は、先端部が痩せてしまうといった形状不良や寸法不良の発生が抑制されて、図4(b)に示すように、ほぼ正確な細長の矩形状のパターンに形成されることが期待される。
【0006】
また、図5(a)に示した一例では、図4(a)に示したツノ状の補正パターン30にさらに追加して、そのツノ状の補正パターン30の先端に、円形の補正パターン50を加えている。この提案によれば、補正パターン30および補正パターン50を加えたことによって、それらをエッチングレジストパターンとして用いたウェットエッチングプロセスでパターン加工された導体箔からなるインナーリード100は、先端部が痩せたりコーナー部分40が丸まってしまったりするといった形状不良や寸法不良の発生が抑制されて、図5(b)に示すように、ほぼ正確に細長な矩形状のパターンに形成されることが期待される。
【0007】
また、図6に示した一例では、多数のインナーリード100のレジストパターン20の先端の列が成す四角形の内側に、その各辺に対して所定の間隔を置いてほぼ平行に四辺が配置された四角い額縁状のダミーパターン60を加えるというものである。この提案によれば、ダミーパターン60をインナーリード100のレジストパターン20に近づけて配置することで、インナーリード100の先端のエッチング速度を遅らせて、仕上りのインナーリード100の先端部が先細に痩せたりコーナー部分40が丸まってしまったりするといった形状不良や寸法不良の発生を抑制し、これにより、図示は省略するが、ほぼ正確な細長の矩形状のパターンに形成されることが期待される(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−186343号公報
【特許文献2】特開平11−186344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来の技術によるダミーパターン30、50、60を用いたTABテープの製造方法では、次のような問題がある。
図4、図5に示したダミーパターン30、50を用いた方法では、インナーリード100の先端部における良好な形状再現性やリード幅の寸法精度を安定的に確保することが困難となる虞がある。すなわち、インナーリード100の先端部まで痩せることなく均一なリード幅を確保しようとしてツノ状の補正パターン30や円形の補正パターン50を寸法に余裕を持たせて大きめに形成すると、出来上がったインナーリード100の先端部にはツノ状の突起パターンが残る場合があり、これが隣接したインナーリード100同士で接触して電気的短絡を生じさせる要因となる虞がある。このような不都合の発生を回避するためには、補正パターンを小さめにせざるを得なくなるが、そうすると結果的にインナーリード100の先端部の正確なリード幅や形状再現性の安定的な確保が困難となる。
【0009】
また、図6に示したダミーパターン60を用いた方法では、ウェ地とエッチングプロセスによるインナーリード100のパターン形成が完了した後、レジストを剥離するが、このレジストの剥離工程の時点で完全にはエッチング(溶解)されないで額縁状に残っているダミーパターン60が剥離液中に浮遊し、インナーリード100の先端部に引っ掛かるなどしてそのインナーリード100を変形させたり破損させたりする虞がある。特に、このダミーパターン60はデバイス部の大きさとほぼ同じ大きさであるから、個々のインナーリード100の先端部の寸法と比較してかなり大きい。しかも一繋がりの(切れ目のない連続した)矩形状であるから、その各コーナー部分70がインナーリード100の先端に対して一旦引っ掛かると外れ難くなる傾向にある。このため、ダミーパターン60が一旦浮遊すると、多数のインナーリード100のうちのどれかに引っ掛かって、そのインナーリード100を変形もしくは破損させてしまう確率が極めて高くなる。しかし逆に、そのような不都合を回避しようとして、ウェットエッチングプロセスでインナーリード100のパターン形成が完了する以前にダミーパターン60が完全に溶解されて消滅するように設定すると、このダミーパターン60による効果が十分に発揮されなくなって、インナーリード100の先端部の正確なリード幅や形状再現性の確保が困難なものとなってしまう。
【0010】
さらには、上記の従来技術に係る方法では、いずれの方法を採用した場合でも、デバイス部における裏止め材が、ウェットエッチングプロセスにおけるエッチング液の噴射や流れに起因した流体力学的な揚力や圧力の影響を受けて、撓んだり振動するなどして亀裂や破損を生じることがある。すると、その亀裂や破損の部分からエッチング液が浸透してインナーリード100の先端部を溶解させ、その結果、インナーリード100の先端部の正確なリード幅や形状再現性の確保が困難なものとなるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、インナーリードの先端部の正確なリード幅や形状再現性を安定的に確保することを可能とするTABテープの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1のTABテープの製造方法は、表面に導体箔を貼り合わせてなる絶縁性基板における電子デバイスチップが配置される位置に当該絶縁性基板の表裏を貫通する矩形状の孔であるデバイス部を設けておき、前記導体箔の表面にエッチングレジストパターンを形成すると共に前記絶縁性基板の裏面に裏止め材を形成し、前記エッチングレジストパターンを用いたウェットエッチングにより前記導体箔をパターン加工して、前記デバイス部の周囲の各辺ごとにそれぞれ複数本の細長状のインナーリードを、当該インナーリードの長手方向が前記デバイス部に向かって伸びた形状を成すと共に当該インナーリードの先端が前記デバイス部の各辺に対して平行な列を成すように配列形成するTABテープの製造方法であって、前記ウェットエッチングによる前記インナーリードのパターン加工と並行して、前記インナーリードの先端の列よりも内側の領域内に、前記デバイス部を横断すると共に縦断する内側ダミーパターンを、前記インナーリードの先端に対して非連続となるように当該先端との間に間隔を置いて形成し、前記インナーリードのパターン加工終了後に前記内側ダミーパターンを除去することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の第2のTABテープの製造方法は、上記第1のTABテープの製造方法において、前記ウェットエッチングによるインナーリードのパターン加工と並行して、前記インナーリードの先端の各列によって構成される4辺に囲まれた領域内に、当該4辺の各辺に対してそれぞれ間隔を置いて平行に配置された細長状の周辺ダミーパターンを形成すると共に、前記周辺ダミーパターンで囲まれた領域内に、前記内側ダミーパターンを、前記周辺ダミーパターンに対して非連続となるように当該周辺ダミーパターンとの間に間隔を置いて形成し、前記インナーリードのパターン加工終了後に前記周辺ダミーパターンおよび前記内側ダミーパターンを除去することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の第3のTABテープの製造方法は、上記第2のTABテープの製造方法において、前記周辺ダミーパターンとして、前記4辺の各辺ごとにそれぞれ細長状のパターンを、隣り合う各辺のパターン同士が互いに非連続な配置となるように当該各辺のパターン同士の間に間隔を置いて形成することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の第4のTABテープの製造方法は、上記第2または第3のTABテープの製造方法において、前記ウェットエッチングによるインナーリードのパターン加工と並行して、前記周辺ダミーパターンとして前記4辺の各辺ごとにそれぞれ細長状のパターンを、隣り合う各辺のパターン同士が互いに非連続な配置となるように当該各辺のパターン同士の間に間隔を置いて形成すると共に、前記周辺ダミーパターンで囲まれた領域内に、1つの十字状または十字型を複数接続してなる格子状の内側ダミーパターンを、前記周辺ダミーパターンに対して非連続な配置となるように間隔を置いて形成し、前記インナーリードのパターン加工終了後に前記周辺ダミーパターンおよび前記内側ダミーパターンを除去することを特徴としている。
【0016】
また、本発明の第5のTABテープの製造方法は、上記第1ないし第4のうちいずれかのTABテープの製造方法において、前記インナーリードのパターン加工完了時における前記内側ダミーパターンのパターン幅を、50μm以上にすることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の第6のTABテープの製造方法は、上記第2ないし第5のうちいずれかのTABテープの製造方法において、前記インナーリードのパターン加工完了時における前記周辺ダミーパターンのパターン幅を、50μm以上にすることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の第7のTABテープの製造方法は、上記第1ないし第6のうちいずれかのTABテープの製造方法において、前記インナーリードが、前記デバイス部の領域内へと突出したフライングリードであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウェットエッチングによるインナーリードのパターン加工と並行して、インナーリードの先端の列よりも内側の領域内にデバイス部を横断すると共に縦断する内側ダミーパターンを、インナーリードの先端に対して非連続となるようにその先端との間に間隔を置いて形成することにより、デバイス部に配置された裏止め材がウェットエッチングプロセス中に大幅に振動することや破損することを防いで、インナーリードの先端部の正確なリード幅や形状再現性を安定的に確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本実施の形態に係るTABテープの製造方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るTABテープの製造工程における、フライングリードのパターン加工を行うためのウェットエッチングプロセスで用いられるレジストパターンを形成してなる作製途中のTABテープを示す平面図であり、図2は、そのウェットエッチングプロセスによって銅箔をパターン加工してフライングリードを形成してなるTABテープのA−A断面図である。
【0021】
本実施の形態に係るTABテープの製造方法における主要部である、フライングリード1を形成するためのウェットエッチングプロセスを開始するに当たり、まず、絶縁性基板であるポリイミドフィルム2の、半導体集積回路チップのような電子デバイスチップ(図示省略)が配置される所定位置に、その表裏を貫通する矩形状の孔であるデバイス部9を穿ち設ける。そのポリイミドフィルム2の表面に、パターン未加工の銅箔3をラミネートすることで、TAB基材8が作製される。
【0022】
そのTAB基材8における導体箔である銅箔3の表面に、例えばドライフィルム4のような感光性レジスト材をラミネートし、これを露光〜現像によりパターニングして、図1に示したようなリードパターンレジスト5、周辺ダミーパターンレジスト6、内側ダミーパターンレジスト7を形成する。これらは後のウェットエッチングプロセスでエッチングレジストパターンとして用いられるものである。そしてデバイス部9にはポリイミドフィルム2の裏面側から裏止め材10を配置して、いわゆる裏止めを施す。
【0023】
リードパターンレジスト5は、先端部にツノ状補正パターン11および円形補正パターン12が加えられたレジストパターンであり、仕上りの各フライングリード1がそれぞれ所定のリード幅を有してデバイス部9の内側に向かってその先端が所定の長さに亘って突出した細長い矩形状になるような寸法および形状に設定されている。それらツノ状補正パターン11および円形補正パターン12自体については、一般的に提案されているものでかまわない。
【0024】
周辺ダミーパターンレジスト6は、デバイス部9の四角い孔の4辺の各辺それぞれに対応して、その隣り合う各辺のパターン同士が互いに非連続な配置となるように互いの間に間隔を置いて配置され、かつリードパターンレジスト5との間にも所定の間隔を置いて配置された、個々が細長台形状をした全部で4つのレジストパターンである。この周辺ダミーパターンレジスト6は、ウェットエッチングプロセスによるフライングリード1のパターン加工完了後に周辺ダミーパターン13が消滅することなく所定のパターン幅以上を有して残るような寸法および形状に設定することが望ましい。
【0025】
内側ダミーパターンレジスト7は、上記の4つの周辺ダミーパターンレジスト6によって四角く囲まれた領域内に、デバイス部9を横断および縦断すると共に、周辺ダミーパターンレジスト6に対して非連続な配置となるようにその周辺ダミーパターンレジスト6との間に間隔を置いて形成された、1つの十字状のパターンである。
この内側ダミーパターンレジスト7についても、ウェットエッチングプロセスによるフライングリード1のパターン加工完了後に内側ダミーパターン14が消滅することなく所定のパターン幅以上を有して残るような寸法および形状に設定することが望ましい。
【0026】
このようなリードパターンレジスト5、周辺ダミーパターンレジスト6、内側ダミーパターンレジスト7をエッチングレジストパターンとして用いたウェットエッチングプロセスにより銅箔3をパターン加工して、フライングリード1、周辺ダミーパターン13、内側ダミーパターン14が並行して(一つのエッチング工程にて同時進行で)形成される。
【0027】
このウェットエッチングプロセスでは、周辺ダミーパターンレジスト6、内側ダミーパターンレジスト7に基づいて周辺ダミーパターン13、内側ダミーパターン14が形成されることによって、フライングリード1は、その先端部が痩せたり形状不良となったりすることが回避されて、正確なパターン幅および形状に形成される。
特に、内側ダミーパターン14は、フライングリード1のパターン形成と並行して、その期間中〜パターン形成完了後まで、デバイス部9を十字状に横断および縦断するような形状および寸法の内側ダミーパターン14が形成され続けるので、裏止め材10の破損等に起因したフライングリード1の形状不良や寸法不良等の発生が回避される。
すなわち、フライングリード1のパターン形成(パターン加工)のためのウェットエッチングプロセスの継続中は、この内側ダミーパターン14の材料力学的な剛性によって裏止め材10が物理的に支えられているので、エッチング液の噴流や圧力等に起因した裏止め材10の撓みや振動等を抑制して、破損や亀裂の発生を防止することが可能となるのである。
【0028】
このようにして形成されたフライングリード1は、デバイス部9の周囲の各辺ごとにそれぞれ配列形成された、個々が細長状のインナーリードである。これらのフライングリード1は、各々がその長手方向にデバイス部9へ向かって伸びてデバイス部9の領域内へと所定の長さに亘り突出し、かつそれらの先端がデバイス部9の各辺に対して平行な列を成して並んでいる。
【0029】
周辺ダミーパターン13は、銅箔3が周辺ダミーパターンレジスト6の形状に基づいてエッチングされて、デバイス部9の孔の4辺の各辺のそれぞれごとに、その隣り合う各辺のパターン同士が互いに非連続な配置となるように互いの間に間隔を置き、かつリードパターンレジスト5との間にも所定の間隔を置いて配置された、全部で4つの銅箔パターンである。個々の周辺ダミーパターン13は、それぞれ細長台形状となっている。
この周辺ダミーパターン13は、適切な余裕(安全率)を見込んで、フライングリード1のパターン加工完了後に少なくとも50μmのパターン幅以上を有して残るようにすることが望ましい。
【0030】
内側ダミーパターン14は、上記のような全部で4つの周辺ダミーパターン13で囲まれた領域内に、それら周辺ダミーパターン13に対して非連続なパターンとなるように間隔を置いて配置された、デバイス部9を横断すると共に縦断する1つの十字状のパターンである。この内側ダミーパターン14についても、上記の周辺ダミーパターン13と同様の理由から、フライングリード1のパターン加工完了後に少なくとも50μmのパターン幅以上を有して残るようにすることが望ましい。
周辺ダミーパターン13および内側ダミーパターン14を上記のようなパターン幅に残すようにするためには、パターン加工の際のウェットエッチングにおけるエッチングファクタ、銅箔3の厚さ等のプロセス諸条件に基づいて上記のような仕上りのパターン幅から逆算し、それぞれのエッチングレジストパターンである周辺ダミーパターンレジスト6、内側ダミーパターンレジスト7のパターン幅および形状を設定すればよい。
【0031】
フライングリード1が形成された後は、リードパターンレジスト5、周辺ダミーパターンレジスト6、内側ダミーパターンレジスト7を含む全てのレジストをこのTABテープの表面上から剥離し、また裏止め材を剥離して周辺ダミーパターン13および内側ダミーパターン14をこのTABテープから除去する。
このようにして、本実施の形態に係るTABテープのフライングリード1の部分を中心とした主要部が作製される。
【0032】
上記のような本実施の形態に係るTABテープの製造方法によれば、リードパターンレジスト5をエッチングレジストパターンとして用いたウェットエッチングによるフライングリード1のパターン加工工程が継続している期間中〜そのパターン加工が完了してフライングリード1が形成されるまでの間、それと並行して、デバイス部9を十字状に横断および縦断するような形状および寸法の内側ダミーパターン14が形成され続けるので、フライングリード1のパターン加工のためのウェットエッチングプロセスの継続中はずっと、この内側ダミーパターン14の剛性で裏止め材10を物理的に支えて、エッチング液の噴流や圧力等に起因した裏止め材10の撓みや振動等を抑制してその破損や亀裂の発生を回避することができ、その結果、フライングリード1の形状不良や寸法不良の発生を解消することが可能となる。
【0033】
ここで、内側ダミーパターン14をデバイス部9のほぼ全面に亘る広さのベタパターンにした場合について想定すると(図示省略)、その内側ダミーパターン自体の重量によって裏止め材が破れる虞がある。あるいはその他にも、エッチング液の噴射や流れ等による流体力学的な圧力を内側ダミーパターンがあたかも小さな翼もしくはブレードのように受けることとなり、その圧力によって剛性の高い内側ダミーパターンの四辺付近の柔らかな裏止め材が破断される虞もある。また特に、内側ダミーパターンをベタパターンとした場合、その一端が裏止め材から剥がれ始めると、銅箔のような金属導体箔は一般に裏止め材よりも剛性が高いので、その剥れ始めた内側ダミーパターンの一端がエッチング液の噴射や流れ等による流体力学的な圧力をさらに受け易くなって、一気にその剥れが加速されてしまう虞もある。
このように、内側ダミーパターンをデバイス部のほぼ全面に亘るベタパターンのような余りにも重くて広い形状および寸法にすると、その内側ダミーパターンによるパターン補正がむしろ逆効果となって、裏止め材を破損させる要因となる虞がある。
【0034】
そこで、本実施の形態に係るTABテープの製造方法では、内側ダミーパターン14を、十字状にデバイス部9を横断および縦断する形状および寸法とすることにより、その内側ダミーパターン14の重さおよび広さを適度なものにして、ウェットエッチングプロセスによるパターン加工工程における内側ダミーパターン14の重さや広さに起因した裏止め材10の破損を回避しつつ、その内側ダミーパターン14によって裏止め材10の大幅な撓みや振動を抑制して、それらに起因した裏止め材10の破損の発生を解消することができるようにしている。
【0035】
また、上記のような本実施の形態に係るTABテープの製造方法によれば、四角いデバイス部9の各辺ごとにそれぞれ1つずつ、隣り合うもの同士が互いに非連続に配置された、全部で4つの周辺ダミーパターン13を、その個々がほぼ直線的な細長短冊状(厳密には細長台形状)のパターンとなるように形成しているので、レジスト剥離工程や裏止め材剥離工程でそれら周辺ダミーパターン13が浮遊した際に、それらがフライングリード1に引っ掛かることを回避して、フライングリード1の破損や変形の発生を解消することができる。
【0036】
また、それら個々の周辺ダミーパターン13は、フライングリード1の先端の列に対して所定の間隔を置いて並行に配置されているので、ウェットエッチングプロセスによるパターン加工工程で裏止め材10全体が若干撓んだり振動したりしても、その動きに起因した歪みや振動等がフライングリード1に対してストレートに伝達されることを回避して、フライングリード1の破損や変形あるいは形状不良や寸法不良の発生を解消することができる。
【実施例】
【0037】
上記の実施の形態で説明したようなフライングリード1およびデバイス部9を有するTABテープを製造した。
銅箔3の厚さを35μm、エッチング工程完了後の周辺ダミーパターン13の幅および内側ダミーパターン14の幅を、いずれも100μmとなるように、周辺ダミーパターンレジスト6および内側ダミーパターンレジスト7のパターンを設定した。また、フライングリード1の先端と周辺ダミーパターン13との間隔を30μmとなるように設定した。
【0038】
その結果、パターン加工工程で裏止め材10の破損や剥れが生じることがなく、またレジスト剥離工程や裏止め材剥離工程で周辺ダミーパターン13や内側ダミーパターン14がフライングリード1に引っ掛かってそのフライングリード1を変形したり破損させたりすることがなく、正確な(許容誤差の範囲内の)形状および寸法のフライングリード1を確実に形成することができることが確認された。
【0039】
なお、内側ダミーパターン14の形状は、図1に示したような一つの十字状のもののみには限定されない。この他にも、図3に一例を示したような、十字型を複数接続してなる格子状のパターン7−2とすることなども可能である。
あるいはその他にも、図示は省略するが、例えば四角いデバイス部9の対角線方向に伸びる二つの短冊状を十字型に交差してなる斜め十字状パターンとすることなども可能である。
【0040】
また、上記実施の形態および実施例では、特にフライングリードを有するTABテープの製造方法の場合について詳述したが、インナーリードの形態としてはこのフライングリードのみには限定されないことは言うまでもない。裏止め材でデバイス部の裏止めを行った状態でインナーリード等の配線パターンをウェットエッチングによりパターン加工する工程を含んでいてその裏止め材の破損等を防ぐ必要のある場合に本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係るTABテープの製造工程におけるレジストパターンを形成してなる作製途中のTABテープを示す平面図である。
【図2】図1に示したTABテープにおけるA−A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るTABテープの製造工程に用いられる内側ダミーパターンの形状のバリエーションを示す平面図である。
【図4】従来から提案されているダミーパターンを形成するためのレジストパターン(a)およびその仕上りのインナーリードのパターン形状(b)の一例を示す平面図である。
【図5】従来から提案されているダミーパターンを形成するためのレジストパターン(a)およびその仕上りのインナーリードのパターン形状(b)の他の一例を示す平面図である。
【図6】従来から提案されているダミーパターンを形成するためのレジストパターン(a)およびその仕上りのインナーリードのパターン形状(b)のさらに他の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 フライングリード
2 ポリイミドフィルム
3 銅箔
4 ドライフィルム
5 リードパターンレジスト
6 周辺ダミーパターンレジスト
7 内側ダミーパターンレジスト
8 TAB基材
9 デバイス部
10 裏止め材
13 周辺ダミーパターン
14 内側ダミーパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導体箔を貼り合わせてなる絶縁性基板における電子デバイスチップが配置される位置に当該絶縁性基板の表裏を貫通する矩形状の孔であるデバイス部を設けておき、前記導体箔の表面にエッチングレジストパターンを形成すると共に前記絶縁性基板の裏面に裏止め材を形成し、前記エッチングレジストパターンを用いたウェットエッチングにより前記導体箔をパターン加工して、前記デバイス部の周囲の各辺ごとにそれぞれ複数本の細長状のインナーリードを、当該インナーリードの長手方向が前記デバイス部に向かって伸びた形状を成すと共に当該インナーリードの先端が前記デバイス部の各辺に対して平行な列を成すように配列形成するTABテープの製造方法であって、
前記ウェットエッチングによる前記インナーリードのパターン加工と並行して、前記インナーリードの先端の列よりも内側の領域内に、前記デバイス部を横断すると共に縦断する内側ダミーパターンを、前記インナーリードの先端に対して非連続となるように当該先端との間に間隔を置いて形成し、
前記インナーリードのパターン加工終了後に前記内側ダミーパターンを除去する
ことを特徴とするTABテープの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のTABテープの製造方法において、
前記ウェットエッチングによるインナーリードのパターン加工と並行して、前記インナーリードの先端の各列によって構成される4辺に囲まれた領域内に、当該4辺の各辺に対してそれぞれ間隔を置いて平行に配置された細長状の周辺ダミーパターンを形成すると共に、前記周辺ダミーパターンで囲まれた領域内に、前記内側ダミーパターンを、前記周辺ダミーパターンに対して非連続となるように当該周辺ダミーパターンとの間に間隔を置いて形成し、
前記インナーリードのパターン加工終了後に前記周辺ダミーパターンおよび前記内側ダミーパターンを除去する
ことを特徴とするTABテープの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のTABテープの製造方法において、
前記周辺ダミーパターンとして、前記4辺の各辺ごとにそれぞれ細長状のパターンを、隣り合う各辺のパターン同士が互いに非連続な配置となるように当該各辺のパターン同士の間に間隔を置いて形成する
ことを特徴とするTABテープの製造方法。
【請求項4】
請求項2または3記載のTABテープの製造方法において、
前記ウェットエッチングによるインナーリードのパターン加工と並行して、前記周辺ダミーパターンとして前記4辺の各辺ごとにそれぞれ細長状のパターンを、隣り合う各辺のパターン同士が互いに非連続な配置となるように当該各辺のパターン同士の間に間隔を置いて形成すると共に、前記周辺ダミーパターンで囲まれた領域内に、1つの十字状または十字型を複数接続してなる格子状の内側ダミーパターンを、前記周辺ダミーパターンに対して非連続な配置となるように間隔を置いて形成し、
前記インナーリードのパターン加工終了後に前記周辺ダミーパターンおよび前記内側ダミーパターンを除去する
ことを特徴とするTABテープの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のTABテープの製造方法において、
前記インナーリードのパターン加工完了時における前記内側ダミーパターンのパターン幅を、50μm以上にする
ことを特徴とするTABテープの製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5のうちいずれか1項に記載のTABテープの製造方法において、
前記インナーリードのパターン加工完了時における前記周辺ダミーパターンのパターン幅を、50μm以上にする
ことを特徴とするTABテープの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載のTABテープの製造方法において、
前記インナーリードが、前記デバイス部内側の領域内へと突出したフライングリードである
ことを特徴とするTABテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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