TEM試料作製方法、TEM試料及び薄片試料
【課題】ステージを傾けることなく薄片試料を試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製すること。
【解決手段】ステージ上に載置された試料Sから薄片試料2を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダ3に固定してTEM試料1を作製する方法であって、集束イオンビームによるエッチング加工により試料を穴掘りし、平面視矩形状に形成された薄片本体2aと該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部2bとで一体的に形成された薄片試料を作製する工程と、薄片試料を試料ホルダの近傍まで移動させる工程と、突出部が試料ホルダの表面に接触するように薄片試料を試料ホルダに接触させる工程と、原料ガスを突出部の周辺に供給しながら該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射して、デポジション膜Dにより突出部と試料ホルダとを固定する工程と、を備えているTEM試料作製方法を提供する。
【解決手段】ステージ上に載置された試料Sから薄片試料2を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダ3に固定してTEM試料1を作製する方法であって、集束イオンビームによるエッチング加工により試料を穴掘りし、平面視矩形状に形成された薄片本体2aと該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部2bとで一体的に形成された薄片試料を作製する工程と、薄片試料を試料ホルダの近傍まで移動させる工程と、突出部が試料ホルダの表面に接触するように薄片試料を試料ホルダに接触させる工程と、原料ガスを突出部の周辺に供給しながら該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射して、デポジション膜Dにより突出部と試料ホルダとを固定する工程と、を備えているTEM試料作製方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビームを利用したエッチング加工によって試料から薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製するTEM試料作製方法、この方法で製造されたTEM試料及びこの方法で用いられる薄片試料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を利用して、半導体デバイスや半導体素子(例えば、DRAM素子、不揮発性メモリや固体撮像素子等)の微細な断面構造を観察して故障解析等を行う技術が知られている。通常、透過電子顕微鏡によって観察を行う場合には、観察対象物である試料から微細な薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、TEM試料の一般的な作製方法について簡単に説明する。
始めに、試料に対して荷電粒子ビームの一種である集束イオンビーム(FIB:Focused Ion beam)を照射してエッチング加工し、数十nm〜百nm程度の厚みの薄い薄片試料を作製する。この際、試料から薄片試料を完全に切り離すのではなく、連結部を介して試料に部分的に連結させた状態で薄片試料を作製する。続いて、マイクロプローブ或いはナノピンセットを利用して薄片試料を保持する。この際、マイクロプローブを利用する場合には、マイクロプローブの先端付近にデポジション膜を発生させるための原料ガスを供給しながらFIBを照射する。すると、FIBの照射によって発生した二次電子によって原料ガスが分解され、マイクロプローブと薄片試料との境にデポジション膜が堆積する。その結果、マイクロプローブの先端に薄片試料を固定させて保持することができる。一方、ナノピンセットを利用する場合には、単純に薄片試料を把持する。これにより、やはり薄片試料を保持することができる。
【0004】
そして、薄片試料を保持した後、連結部に再度FIBを照射してエッチング加工する。これにより、連結部を切断でき、試料から薄片試料を完全に切り離すことができる。続いて、マイクロプローブ或いはナノピンセットによって薄片試料を保持しながら、該薄片試料を試料から離間させる。そして、ステージを動かすことで試料ホルダを薄片試料の真下付近まで移動させると共に、試料ホルダの上面或いは側面に薄片試料を近接させる。続いて、薄片試料と試料ホルダとの境に再度原料ガスを供給しながらFIBを照射する。これにより、薄片試料と試料ホルダとの間にデポジション膜を堆積させることができ、薄片試料を試料ホルダに固定することができる。
なお、マイクロプローブを利用して薄片試料を保持していた場合には、固定が終了した後、FIBの照射によってデポジション膜をエッチング加工により除去して、マイクロプローブと薄片試料との固定を解除しておく。
【0005】
その結果、試料ホルダに薄片試料を固定したTEM試料を作製することができる。そして、このTEM試料を透過電子顕微鏡で観察することで、試料の断面構造を観察することができ、故障解析等の各種の検査を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−172958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のTEM試料作製には、以下の課題がまだ残されていた。
始めに、一般的な構成として、試料は真空チャンバ内に収容された状態で5軸のステージ(水平移動、上下移動、傾斜及び回転可能なステージ)上に載置されている。また、FIBを照射する鏡筒は、試料の表面に対して垂直にFIBを照射できるように配置されている。また、試料から切り出した薄片試料は、試料ホルダの上面又は側面に取り付けられる。この際、TEM観察し易いように、薄片試料は試料ホルダの上面又は側面に対してほぼ垂直になるように設置されなければならない。
【0007】
そのため、薄片試料を試料ホルダに固定する際、図24(a)及び図24(b)に示すようにステージ100を傾けて、薄片試料101及び試料ホルダ102に向けて原料ガスを供給しながらFIBを照射してデポジション膜Dを形成する必要がある。デポジション膜Dを用いて薄片試料と101と試料ホルダ102とを固定するためには、デポジション膜Dは薄片試料101及び試料ホルダ102のそれぞれから成長し、合体した1つのデポジション膜Dになっていなければならない。よって、ステージ100を傾けないと、このような要求を満たしたデポジション膜Dを形成することができない。
これは、図25(a)及び図25(b)に示すように、試料ホルダ102の側面に薄片試料101を固定する場合も同様であり、やはりステージ100を傾ける必要がある。
【0008】
仮に、ステージ100を傾けない場合には、薄片試料101の上部にFIBが照射されてしまうので、デポジション膜Dが薄片試料101の上部付近にだけ生成されてしまう。そして、その後このデポジション膜Dを成長させたとしても、試料ホルダ102と接触するまで進行させることは困難であり、結果的に固定を行うことができない。従って、薄片試料101を試料ホルダ102に固定する場合には、上述したようにステージ100を傾けざるを得なかった。
【0009】
ところで、TEM試料の作製を行う場合には、通常、1つだけを作製するのではなく、一度に複数のTEM試料を作製する場合もある。この場合、上述したTEM試料の作製工程を何度も繰り返し行って、TEM試料を作製する必要がある。そのため、必然的に時間がかかってしまう作業であった。よって、今後できるだけ作業時間を短縮して、スループットの向上化を図ることが望まれている。
【0010】
しかしながら、従来のTEM試料の作製では、上述したように薄片試料を試料ホルダに固定する度に必ずステージを傾ける必要(傾斜動作させる必要)があった。そのため、ステージを傾ける時間の分だけ作業時間が延びてしまい、スループットが悪く、効率の良い作業を行うことができなかった。特に、TEM試料を作製するほど、作業時間が余計にかかってしまうものであった。
【0011】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その主目的は、ステージを傾けることなく薄片試料を試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製することができるTEM試料作製方法及び該方法で製造されたTEM試料を提供することである。
また、別の目的は、ステージを傾けることなく試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製するのに最適な薄片試料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係るTEM試料作製方法は、ステージ上に載置された試料から薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製するTEM試料作製方法であって、前記試料に向けて集束イオンビームを照射してエッチング加工により穴掘りし、平面視矩形状に形成された薄片本体と該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部とで一体的に形成された前記薄片試料を作製する作製工程と、保持機構により前記薄片試料を保持しながら、該薄片試料を前記試料ホルダの近傍まで移動させる移動工程と、前記突出部が前記試料ホルダの表面に接触するように前記保持機構で保持した前記薄片試料を試料ホルダに接触させる接触工程と、前記保持機構による保持を維持した状態で、デポジション膜を発生させる原料ガスを前記突出部の周辺に供給しながら該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射して、生成されるデポジション膜により突出部と試料ホルダとを固定する固定工程と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るTEM試料は、上記本発明のTEM試料作製方法で製造されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る薄片試料は、集束イオンビームの照射によるエッチング加工によって試料から作製され、デポジション膜により試料ホルダに固定されることでTEM試料となる薄片試料であって、平面視矩形状に形成された薄片本体と、該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部と、で一体的に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係るTEM試料作製方法及び薄片試料においては、まず、試料から厚みが数十nmから百nm程度の極薄の薄片試料を作製する作製工程を行う。即ち、ステージ上に載置された試料に向けて集束イオンビームを試料表面に対して垂直に照射する。集束イオンビームが照射されると、照射された部分だけを選択的にエッチング加工することができる。そのため、予め決められた試料の加工領域内を集束イオンビームによってエッチング加工により穴掘りすることができ、薄片試料を作製することができる。この際、平面視矩形状の薄片本体と、薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部と、で一体的に形成されるように薄片試料を作製する。
【0016】
次に、作製した薄片試料を保持機構により保持しながら試料から取り出すと共に、試料ホルダの近傍まで移動させる移動工程を行う。続いて、薄片試料を保持したまま試料ホルダに接触させる接触工程を行う。この際、薄片本体から突出した突出部を試料ホルダの表面に接触させる。次に、薄片試料と試料ホルダとを互いに固定させる固定工程を行う。即ち、保持機構で保持されている薄片試料の突出部の周辺に原料ガスを供給しながら、該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射する。このとき、集束イオンビームの照射方向は、試料ホルダの上面に対してほぼ垂直な方向である。
【0017】
集束イオンビームが照射されると、該集束イオンビームが突出部の近傍に当たって二次電子が発生する。するとこの二次電子は、原料ガスを分解して気体成分と固体成分に分離させる。分離したこの2つの成分のうち、固体成分だけが堆積してデポジション膜となる。このとき、薄片本体の上面と試料ホルダの表面との距離に比べて、突出部の上面と試料ホルダの表面との距離の方が近い。そのため、突出部の近傍、即ち、突出部と突出部に近い試料ホルダの表面とにそれぞれ堆積したデポジション膜は、成長して合体し、突出部と試料ホルダとを接続する1つのデポジション膜になることができる。これにより、突出部と試料ホルダとを固定することができる。その結果、試料ホルダに薄片試料を固定したTEM試料を作製することができる。
【0018】
特に、薄片試料を固定する際に、薄片本体の側面の一部から外方に突出した突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射している。そのため、集束イオンビームを薄片本体の真上方向から照射したとしても、短時間で確実に突出部と試料ホルダとを接続できるようにデポジション膜を成長させることができる。従って、従来のように、わざわざステージを傾けて集束イオンビームを薄片試料と試料ホルダとの境に向けて直接照射する必要がない。よって、ステージを傾ける作業が不要であると共に傾けるのに必要な時間を短縮することができるので、スループットを向上することができる。その結果、より短時間で効率良くTEM試料を作製することができる。よって、同じ作業時間で、従来よりも多くのTEM試料を作製することが可能である。従って、TEM試料の低コスト化に繋げることができる。
【0019】
また、本発明に係るTEM試料作製方法は、上記本発明のTEM試料作製方法において、前記作製工程の際、前記薄片本体と前記突出部とが共通の一辺を有するように、突出部を薄片本体の隅角部に形成することを特徴とする。
【0020】
この発明に係るTEM試料作製方法においては、薄片試料を作製する際に、薄片本体と突出部とが共通の一辺を有するように、突出部を平面視矩形状とされた薄片本体の4つの隅角部(角部)のうちいずれかの隅角部に形成する。このように、共通の一辺を有するように突出部を形成することで、突出部の剛性を高めることができる。従って、薄片試料の固定強度が弱いという懸念がなく、より安定且つ強固に固定することができる。
【0021】
また、本発明に係るTEM試料作製方法は、上記本発明のTEM試料作製方法において、前記作製工程の際、前記突出部の高さが前記薄片本体の高さの5%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とする。
【0022】
この発明に係るTEM試料作製方法においては、突出部の高さが薄片本体の高さの少なくとも5%以上確保されているので、デポジション膜を利用して確実に安定して突出部を固定することができる。仮に、5%より低い場合には、デポジション膜によって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
一方、突出部の高さが薄片本体の高さの20%以下であるので、デポジション膜を速やかに突出部と試料ホルダとの境まで成長させることができ、スループットの向上化に繋げることができる。仮に、20%を超える場合には、デポジション膜が突出部と試料ホルダとの境まで成長するのに時間がかかることが予想される。
このように、突出部の高さを上述した範囲内に収めることで、薄片試料の固定を短時間でしかも確実に安定して行うことができる。
【0023】
また、本発明に係るTEM試料作製方法は、上記本発明のTEM試料作製方法において、前記作製工程の際、前記突出部の横幅が前記薄片本体の横幅の10%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とする。
【0024】
この発明に係るTEM試料作製方法においては、突出部の横幅(突出長さ)が薄片本体の横幅の少なくとも10%以上確保されているので、デポジション膜を利用して確実に安定して突出部を固定することができる。仮に、10%より短い場合には、デポジション膜によって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
一方、突出部の横幅が薄片本体の横幅の20%以下であるので、突出部を無駄に長くする必要がない。仮に、20%を超える場合には、突出部の横幅が長くなりすぎてしまい、薄片試料の幅が少なくなったり、作製工程に時間がかかってしまったりすることが予想される。
このように、突出部の横幅を上述した範囲内に収めることで、作製工程にかかる時間を短縮することができると共に、薄片試料の固定を確実に安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るTEM試料作製方法及び薄片試料によれば、ステージを傾けることなく薄片試料を試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製することができる。よって、同じ作業時間で、従来よりも多くのTEM試料を効率良く作製することができる。
また、本発明に係るTEM試料によれば、上述した方法により効率良く製造されるので、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る一実施形態について、図1から図17を参照して説明する。
本実施形態のTEM試料作製方法は、図1に示すように、ウエーハ状の半導体デバイス等の試料Sから極薄の薄片試料2を取り出した後、該薄片試料2を試料ホルダ3にデポジション膜Dを利用して固定し、TEM試料1を作製する方法である。
なお、本実施形態では、図2に示すように、集束イオンビーム(FIB)と電子ビーム(EB)という2つのビームを照射できるダブルビーム式のTEM試料作製装置10を利用して、TEM試料1を作製する場合を例にして説明する。また、同一ステージ11上に、試料S及び試料ホルダ3が配置されている場合を例に挙げて説明する。
【0027】
まず、このTEM試料作製装置10について説明する。
TEM試料作製装置10は、試料S及び試料ホルダ3が載置されるステージ11と、FIB及びEBを照射する照射機構12と、FIB或いはEBの照射によって発生した二次荷電粒子Eを検出する検出器13と、デポジション膜Dを形成するための原料ガスGを供給するガス銃14と、検出された二次荷電粒子Eに基づいて画像データを生成すると共に、該画像データを表示部15に表示させる制御部16と、薄片試料2を挟持して保持することが可能なナノピンセット(保持機構)17と、を備えている。
【0028】
上記試料Sは、ホルダ20に固定された状態でステージ11上に載置されている。このホルダ20は、図3及び図4に示すように、中央に開口部21aを有する円形枠状に形成され、上面に試料Sを載置するホルダ本体21と、ホルダ本体21に載置された試料Sの外周に当接し、試料Sをホルダ本体21上で位置決めするガイド部22とを備えている。
ガイド部22は、ホルダ本体21の外周において、例えば等間隔に隙間を空けた状態で4箇所に設けられている。また、これらガイド部22の間には、ホルダ本体21に装着自在とされた試料カセット23がそれぞれ配置されている。そして、これら各試料カセット23には、試料ホルダ3を挟持することができる固定台24が複数装着されている。
【0029】
固定台24は、図5に示すように、基部24aと、図示しない固定ねじの締め込みによって基部24aに固定される固定部24bとで構成されており、基部24aと固定部24bと間で試料ホルダ3を挟持することができるようになっている。つまり、試料ホルダ3は、試料Sを載置しているホルダ20を介して、試料Sと同じステージ11上に配置された状態となっている。
【0030】
このステージ11は、図2に示すように制御部16の指示にしたがって作動するようになっており、5軸に変位することができるようになっている。即ち、ステージ11は、ホルダ20を水平面に平行で且つ互いに直交するX軸及びY軸と、これらX軸及びY軸に対して直交するZ軸とに沿って移動させる水平移動機構30aと、ホルダ20をX軸(又はY軸)回りに回転させて傾斜させるチルト機構30bと、ホルダ20をZ軸回りに回転させるローテーション機構30cとから構成される変位機構30によって支持されている。
よって、変位機構30によりステージ11を5軸に変位させることで、FIB或いはEBを所望する位置に向けて照射することができるようになっている。ところで、ステージ11及び変位機構30は、真空チャンバ31内に収納されている。そのため、真空チャンバ31内でFIB或いはEBの照射や原料ガスGの供給等が行われるようになっている。
【0031】
上記照射機構12は、ステージ11の上方に配置されており、Z軸に平行な鉛直にFIBを照射するFIB鏡筒32と、Z軸に対して斜めにEBを照射するSEM鏡筒33とから構成されている。
FIB鏡筒32は、イオン発生源32a及びイオン光学系32bを有しており、イオン発生源32aで発生させたイオンをイオン光学系32bで細く絞ってFIBにした後、試料Sや試料ホルダ3に向けて照射するようになっている。また、SEM鏡筒33は、電子発生源33a及び電子光学系33bを有しており、電子発生源33aで発生させた電子を電子光学系33bで細く絞ってEBにした後、試料Sや試料ホルダ3に向けて照射するようになっている。
【0032】
検出器13は、FIB或いはEBが照射されたときに、試料Sや試料ホルダ3から発せられる二次電子や二次イオン等の二次荷電粒子Eを検出して、制御部16に出力している。ガス銃14は、デポジション膜Dの原料となる物質(例えば、フェナントレン、プラチナ、カーボンやタングステン等)を含有した化合物ガスを原料ガスGとして供給するようになっている。この原料ガスGは、FIBの照射によって発生した二次荷電粒子Eによって分解され、気体成分と固体成分とに分離するようになっている。そして、分離した2つの成分のうち、固体成分が堆積することで、デポジション膜Dとなる。
【0033】
ナノピンセット17は、基端側がチルト機構30bに装着されたピンセットホルダ17aと、該ピンセットホルダ17aに支持された一対のピンセット部17bとを有している。なお、図2では、見易くするためにピンセットホルダ17aをチルト機構30bから離した状態で図示している。そして、ナノピンセット17は、図示しない圧電素子によって一対のピンセット部17bの先端を互いに接近、離間する方向に可動することができるようになっている。これにより、試料Sから作製した薄片試料2を挟持して保持することが可能とされている。
また、ピンセットホルダ17aは、水平移動及び上下移動が可能とされている。これにより、一対のピンセット部17bで保持した薄片試料2を、保持したまま自在に移動させることが可能とされている。
【0034】
制御部16は、上述した各構成品を総合的に制御していると共に、FIB鏡筒32及びSEM鏡筒33の加速電圧やビーム電流を変化させることができるようになっている。特に、制御部16は、FIB鏡筒32の加速電圧やビーム量を変化させることで、FIBのビーム径を自在に調整できるようになっている。これにより、観察画像を取得するだけでなく、試料Sを局所的にエッチング加工することができるようになっている。しかも、エッチング加工する際に、ビーム径を調整することで粗加工から仕上げ加工まで加工精度を自由に変えることが可能とされている。
【0035】
また、制御部16は、FIB或いはEBの照射により検出器13で検出された二次荷電粒子Eを、輝度信号に変換して観察画像データを生成した後、該観察画像データに基づいて表示部15に観察画像を出力させている。これにより、表示部15は、観察画像を表示できるようになっている。また、制御部16には、オペレータが入力可能な入力部16aが接続されており、該入力部16aによって入力された信号に基づいて各構成品を制御している。つまり、オペレータは、入力部16aを介して、所望する領域にFIBやEBを照射して観察したり、所望する領域にFIBを照射してエッチング加工を行ったり、所望する領域に原料ガスGを供給しながらFIBを照射してデポジション膜Dを堆積させたりすることができるようになっている。
【0036】
次に、このように構成されたTEM試料作製装置10を利用して、試料Sから極薄の薄片試料2を作製して取り出した後、該薄片試料2を試料ホルダ3に固定してTEM試料1を作製するTEM試料作製方法について説明する。
始めに、試料Sがホルダ本体21の上面に載置されたホルダ20を、真空チャンバ31内に収納されているステージ11上に載置した後、真空チャンバ31内を真空状態にセットする初期設定を行う。この初期設定が終了した後、試料Sをエッチング加工して薄片試料2を作製する作製工程を行う。
【0037】
この工程について詳細に説明する前に、薄片試料2について簡単に説明する。この工程で作製する薄片試料2は、図1に示すように、平面視矩形状に形成された薄片本体2aと、該薄片本体2aの側面の一部から側方(横幅方向)に向けて突出した突出部2bと、で一体的に形成された極薄(厚みが数十nmから百nm程度)の試料である。しかも、本実施形態では、薄片本体2aと突出部2bとが共通の一辺を有するように、突出部2bを薄片本体2aの角部、具体的には薄片本体2aの下側(試料ホルダ3側)に位置する角部に形成されるように薄片試料2を作製する。
【0038】
それでは、上記薄片試料2を作製する作製工程について詳細に説明する。
まず、オペレータは、試料Sのどの領域から薄片試料2を作製するのか決定した後、図6に示すように薄片試料2の作製領域S1を入力部16aに入力する。また、同時にエッチング加工する加工領域S2を入力部16aに入力する。
すると、制御部16は、変位機構30によりステージ11を適宜動作させながら、FIB鏡筒32から試料Sに向けてFIBを鉛直に照射させる。これにより、さきほど入力された作製領域S1を除く加工領域S2の範囲内にFIBを照射することができる。FIBが照射されると、照射された部分だけを選択的にエッチング加工することができる。
【0039】
そのため、図7に示すように、試料Sの加工領域S2内における薄片試料2の両側を穴掘りすることができる。この際、図7及び図8に示すように、2箇所の連結部35を介して薄片試料2が試料Sに支持されるようにエッチング加工する。なお、変位機構30によりステージ11を所定角度傾けることで、真上から鉛直に照射されるFIBによって、連結部35や薄片試料2の下側の領域を適宜エッチング加工することができ、連結部35によって宙に浮いた状態で薄片試料2を切り出すことができる。なおこの段階では、突出部2bは連結部35の一部として機能している。続いて、変位機構30により、ステージ11を水平状態にする。
【0040】
続いて、図9に示すように、2つの連結部35のうち、後にナノピンセット17が上方に配置される側の1つ(紙面に対して左側の連結部35)に再度FIBを照射して、該連結部35をエッチングにより予め切断しておく。この工程が終了した後、ナノピンセット17により薄片試料2を一旦保持する保持工程を行う。
具体的には、ピンセットホルダ17aにより一対のピンセット部17bを薄片試料2に近づけながら、図10に示すように、該一対のピンセット部17bで薄片試料2を挟持して保持する。そして、保持した後、図11及び図12に示すように、残されたもう一方の連結部35(薄片本体2aの下側に形成された連結部35)に再度FIBを照射して、該連結部35をエッチングにより切断する。この際、一部が薄片本体2aに繋がったままの状態となるように、連結部35の途中を切断する。この薄片本体2aに一部が繋がった連結部35の残りの部分が、突出部2bとなる。
これにより、平面視矩形状の薄片本体2aと突出部2bとが一体的に形成された薄片試料2を試料Sから作製することができる。この時点で、作製工程が終了する。
【0041】
次に、作製した薄片試料2をナノピンセット17で保持しながら、試料Sから取り出すと共に、同じステージ11上に載置されている試料ホルダ3の近傍まで移動させる移動工程を行う。具体的には、ピンセットホルダ17aにより一対のピンセット部17bを上昇させて薄片試料2を試料Sから持ち上げた後、変位機構30によりステージ11を水平移動及び上下移動させて、ナノピンセット17で保持した薄片試料2を試料ホルダ3の近傍に位置させる。
【0042】
続いて、ステージ11を水平状態のままで、図13に示すように、薄片試料2をナノピンセット17で保持したまま試料ホルダ3に接触させる接触工程を行う。この際、薄片本体2aから突出した突出部2bが試料ホルダ3の表面に接触するように一対のピンセット部17bを動かす。なお、本実施形態では、試料ホルダ3の上面に薄片試料2を接触させた場合を例にしている。
【0043】
次に、薄片試料2と試料ホルダ3とを互いに固定させる固定工程を行う。
即ち、図14に示すように、ナノピンセット17で保持されている薄片試料2の突出部2bの周辺にガス銃14から原料ガスGを供給しながら、該突出部2bの近傍、即ち、突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに向けてFIBを鉛直に照射する。FIBが照射されると、該FIBが突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに当たって二次電子が発生する。するとこの二次電子は、原料ガスGを分解して気体成分と固体成分に分離させる。分離した2つの成分のうち、固体成分だけが突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに堆積してデポジション膜Dとなる。そして、このデポジション膜Dは、突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアE、及び突出部2bと試料ホルダ3との境に付着し始めた後、徐々に成長し、最終的には図15に示すように突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEを全部覆う。
【0044】
上述した現象を補足すると、薄片試料2は薄片本体2aと突出部2bとで形成されているので、試料ホルダ3の表面に接触させた際に、薄片本体2aの上面と試料ホルダ3の表面との距離に比べて、突出部2bの上面と試料ホルダ3の表面との距離の方が近くなる。そのため、図14に示すように、突出部2bと指定エリアEとにそれぞれ堆積したデポジション膜Dは、その後成長して合体する。その結果、図15に示すように突出部2bと試料ホルダ3とを接続する1つのデポジション膜Dになる。
このような現象は、突出部2bが存在することによる特有の現象であり、従来では奏することができない効果である。
【0045】
その結果、突出部2bと試料ホルダ3とを固定することができる。その後、一対のピンセット部17bによる保持を解除することで、試料ホルダ3に薄片試料2を固定した図1に示すTEM試料1を作製することができる。
【0046】
特に、本実施形態のTEM試料作製方法では、薄片試料2を固定する際に、薄片本体2aの側面の一部から突出した突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに向けてFIBを照射している。そのため、FIBを真上から鉛直に照射したとしても、生成されたデポジション膜Dを短時間で確実に突出部2bと試料ホルダ3とを接続する1つのデポジション膜に成長させることができる。従って、従来のように、わざわざステージ11を傾けてFIBを薄片試料2と試料ホルダ3との境に向けて直接照射する必要がない。よって、ステージ11を傾ける作業が不要であると共に傾けるのに必要な時間を短縮することができるので、スループットを向上することができる。その結果、より短時間で効率良くTEM試料1を作製することができる。よって、同じ作業時間で、従来よりも多くのTEM試料1を効率良く作製することが可能である。従って、TEM試料1の低コスト化にも繋げることができる。
【0047】
また、薄片試料2を作製するにあたって、薄片本体2aの隅角部に突出部2bを形成し、薄片本体2aと突出部2bとが共通の一辺を有するようにしている。そのため、形成した突出部2bの剛性を高めることができる。従って、薄片試料2の固定強度が弱いという懸念がなく、より安定且つ強固に固定することができる。
【0048】
なお、TEM試料1を作製している間に、観察画像を確認したい場合には、適宜SEM鏡筒33からEBを照射すれば良い。こうすることで、EBの照射によって発生した二次荷電粒子Eを検出器13で検出でき、この検出結果から生成された観察画像データに基づいた観察画像を表示部15で確認することができる。
また、TEM試料1を作製した後、再度FIBを照射して薄片試料2の表面を仕上げる追加加工も可能となる。このようにすることで、TEM試料1の作製中に、薄片試料2の表面に何らかの理由で付着してしまった付着物を除去することができ、汚染のない高品質なTEM試料1を作製することができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、薄片試料2を作製する際に、図16に示すように突出部2bの高さH1が薄片本体2aの高さH2の5%〜20%の範囲内に収まるようにすることが好ましい。
突出部2bの高さH1を薄片本体2aの高さH2の5%以上にすることで、デポジション膜Dを利用して確実に安定して突出部2bを固定することができ、高品質なTEM試料1を作製することができる。仮に、突出部2bの高さH1が薄片本体2aの高さH2の5%より低い場合には、デポジション膜Dによって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
また、突出部2bの高さH1を薄片本体2aの高さH2の20%以下にすることで、デポジション膜Dを速やかに突出部2bと試料ホルダ3との境まで成長させることができ、スループットの向上化に繋げることができる。仮に、突出部2bの高さH1が20%を超える場合には、デポジション膜Dが突出部2bと試料ホルダ3との境まで成長するのに時間がかかることが予想される。
このように、突出部2bの高さH1を上述した範囲内に収めることで、薄片試料2の固定を短時間でしかも確実に安定して行うことができる。
【0050】
また、薄片試料2を作製する際に、図17に示すように突出部2bの横幅(突出長さ)W1が薄片本体2aの横幅W2の10%〜20%の範囲内に収まるようにすることが好ましい。
突出部2bの横幅W1を薄片本体2aの横幅W2の10%以上にすることで、デポジション膜Dを利用して確実に安定して突出部2bを固定することができる。仮に、突出部2bの横幅W1が10%より短い場合には、デポジション膜Dによって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
一方、突出部2bの横幅W1を薄片本体2aの横幅W2の20%以下にすることで、突出部2bを無駄に長くする必要がない。仮に、突出部2bの横幅W1が20%を超える場合には、作製工程に時間がかかることが予想される。
このように、突出部2bの横幅W1を上述した範囲内に収めることで、作製工程にかかる時間を短縮することができると共に、薄片試料2の固定を確実に安定して行うことができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、薄片試料2を試料ホルダ3の上面に固定したTEM試料1を作製した場合を例に挙げたが、この場合に限られるものではない。例えば、薄片試料2を作製する際に、図18に示すように薄片本体2aの上側(試料Sの表面側)に位置する角部に突出部2bが形成されるように作製する。そして、図19に示すように、突出部2bを試料ホルダ3の上面に引っ掛けるような形で、薄片試料2を試料ホルダ3の側面に固定したTEM試料1の作製も可能である。この場合であっても、やはりステージ11を傾けることなくデポジション膜Dを突出部2bの周辺に堆積させることができるので、同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、薄片本体2aと突出部2bとが共通の一辺を有するように薄片試料2を作製した場合を例にしたが、図20に示すように、薄片本体2aの側面の略中間付近に突出部2bが位置するように薄片試料2を作製することも可能である。
この場合であっても、例えば図21に示すように、突出部2bを試料ホルダ3の上面に引っ掛けるような形で、薄片試料2を試料ホルダ3の側面に固定したTEM試料1を作製することができる。この場合にも、やはり同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、円形枠状に形成されたホルダ20に試料ホルダ3が複数取り付けられている場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。ステージ1上に試料ホルダ3を配置できればどのようなホルダ構造であっても良い。
更に、上記実施形態では、同一ステージ11上に、試料Sと試料ホルダ3とが配置された構成を例に挙げて説明したが、必ずしも同じステージ11上に配置されている必要はなく、ステージ11とは切り離して試料ホルダ3を配置する構成であっても構わない。例えば、図22に示すように、真空チャンバ31内において、試料Sがホルダ20を介して載置されているステージ11に隣接するように、専用の架台M等を介して試料ホルダ3が配置されていても構わない。なお、図22では、見易くするために試料ホルダ3を誇張して図示している。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、Z軸に平行な鉛直方向にFIBを照射できるようにFIB鏡筒32を配置すると共に、Z軸に対して斜めにEBを照射できるようにSEM鏡筒33を配置したが、照射機構12の配置はこの場合に限定されるものではない。
例えば、図23に示すように、Z軸に平行な鉛直方向にEBを照射できるようにSEM鏡筒33を配置し、Z軸に対して斜めにFIBを照射できるようにFIB鏡筒32を配置した照射機構12としても構わない。この場合には、FIBが試料Sの表面に対して垂直に当たるようにステージ11を傾けておき、この状態を通常のポジションとしておけば良い。この場合であっても、試料ホルダ3に薄片試料2を固定する際にステージ11を通常のポジションから傾ける必要がなく、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るTEM試料作製方法を説明するための概要図である。
【図2】TEM試料作製方法を行うためのTEM試料作製装置の構成図である。
【図3】図2に示すTEM試料作製装置の構成品の1つであって、試料を固定するホルダの上面図である。
【図4】図3に示すホルダの断面矢視A−A図である。
【図5】図3に示すホルダの一部を拡大した図であって、試料ホルダが固定されている周辺を拡大した図である。
【図6】図2に示すTEM試料作製装置を利用してTEM試料を作製する場合の一工程を示す図であって、試料の表面に薄片試料の作製領域と、FIBによる加工領域とを設定した状態を示す図である。
【図7】図6に示す状態から、FIBによるエッチング加工を行って、試料を穴掘り加工して薄片試料を作製している状態を示す図である。
【図8】図7に示す断面矢視B−B図である。
【図9】図8に示す状態から、連結部の1つに再度FIBを照射して該連結部をエッチング加工により除去した状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態から、薄片試料をナノピンセットで挟持した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態から、残りの連結部に再度FIBを照射して該連結部をエッチング加工により除去し、薄片試料を試料から切り離した状態を示す図である。
【図12】図11に示す断面矢視C−C図である。
【図13】図11に示す状態から、薄片試料を試料ホルダの上面に載置した状態を示す図である。
【図14】図13に示す状態から、薄片試料の突出部に原料ガスを供給しながらFIBを照射して、デポジション膜を堆積させ始めた状態を示す図である。
【図15】図14に示す状態から、デポジション膜を成長させて、薄片試料と試料ホルダとを固定した状態を示す図である。
【図16】薄片試料を作製するにあたって、薄片本体の高さと突出部の高さとの関係を説明するための図である。
【図17】薄片試料を作製するにあたって、薄片本体の横幅と突出部の横幅との関係を説明するための図である。
【図18】本発明に係るTEM試料作製方法の変形例を示す図であって、薄片本体の上側の角部に突出部が形成されるように薄片試料を作製した状態を示す図である。
【図19】図18に示す薄片試料を試料ホルダの側面に固定したTEM試料を示す図である。
【図20】本発明に係るTEM試料作製方法の変形例を示す図であって、薄片本体の側面の略中間に突出部が形成されるように薄片試料を作製した状態を示す図である。
【図21】図20に示す薄片試料を試料ホルダの側面に固定したTEM試料を示す図である。
【図22】本発明に係る変形例を示す図であって、試料が載置されたステージとは別に試料ホルダが配置されている場合の簡略図である。
【図23】本発明に係る変形例を示す図であって、Z軸に平行な鉛直方向にEBを照射し、Z軸に対して斜めにFIBを照射する場合の鏡筒配置図である。
【図24】従来のTEM試料作製方法の一例を示す図であって、(a)はステージを傾けた状態で試料ホルダの上面に薄片試料を固定している状態を示す図であり、(b)は(a)に示す矢印A方向から見た図である。
【図25】従来のTEM試料作製方法の一例を示す図であって、(a)はステージを傾けた状態で試料ホルダの側面に薄片試料を固定している状態を示す図であり、(b)は(a)に示す矢印B方向から見た図である。
【符号の説明】
【0057】
D…デポジション膜
G…原料ガス
S…試料
H1…突出部の高さ
H2…薄片本体の高さ
W1…突出部の横幅
W2…薄片本体の横幅
FIB…集束イオンビーム
1…TEM試料
2…薄片試料
2a…薄片本体
2b…突出部
3…試料ホルダ
11…ステージ
17…ナノピンセット(保持機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビームを利用したエッチング加工によって試料から薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製するTEM試料作製方法、この方法で製造されたTEM試料及びこの方法で用いられる薄片試料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を利用して、半導体デバイスや半導体素子(例えば、DRAM素子、不揮発性メモリや固体撮像素子等)の微細な断面構造を観察して故障解析等を行う技術が知られている。通常、透過電子顕微鏡によって観察を行う場合には、観察対象物である試料から微細な薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、TEM試料の一般的な作製方法について簡単に説明する。
始めに、試料に対して荷電粒子ビームの一種である集束イオンビーム(FIB:Focused Ion beam)を照射してエッチング加工し、数十nm〜百nm程度の厚みの薄い薄片試料を作製する。この際、試料から薄片試料を完全に切り離すのではなく、連結部を介して試料に部分的に連結させた状態で薄片試料を作製する。続いて、マイクロプローブ或いはナノピンセットを利用して薄片試料を保持する。この際、マイクロプローブを利用する場合には、マイクロプローブの先端付近にデポジション膜を発生させるための原料ガスを供給しながらFIBを照射する。すると、FIBの照射によって発生した二次電子によって原料ガスが分解され、マイクロプローブと薄片試料との境にデポジション膜が堆積する。その結果、マイクロプローブの先端に薄片試料を固定させて保持することができる。一方、ナノピンセットを利用する場合には、単純に薄片試料を把持する。これにより、やはり薄片試料を保持することができる。
【0004】
そして、薄片試料を保持した後、連結部に再度FIBを照射してエッチング加工する。これにより、連結部を切断でき、試料から薄片試料を完全に切り離すことができる。続いて、マイクロプローブ或いはナノピンセットによって薄片試料を保持しながら、該薄片試料を試料から離間させる。そして、ステージを動かすことで試料ホルダを薄片試料の真下付近まで移動させると共に、試料ホルダの上面或いは側面に薄片試料を近接させる。続いて、薄片試料と試料ホルダとの境に再度原料ガスを供給しながらFIBを照射する。これにより、薄片試料と試料ホルダとの間にデポジション膜を堆積させることができ、薄片試料を試料ホルダに固定することができる。
なお、マイクロプローブを利用して薄片試料を保持していた場合には、固定が終了した後、FIBの照射によってデポジション膜をエッチング加工により除去して、マイクロプローブと薄片試料との固定を解除しておく。
【0005】
その結果、試料ホルダに薄片試料を固定したTEM試料を作製することができる。そして、このTEM試料を透過電子顕微鏡で観察することで、試料の断面構造を観察することができ、故障解析等の各種の検査を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−172958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のTEM試料作製には、以下の課題がまだ残されていた。
始めに、一般的な構成として、試料は真空チャンバ内に収容された状態で5軸のステージ(水平移動、上下移動、傾斜及び回転可能なステージ)上に載置されている。また、FIBを照射する鏡筒は、試料の表面に対して垂直にFIBを照射できるように配置されている。また、試料から切り出した薄片試料は、試料ホルダの上面又は側面に取り付けられる。この際、TEM観察し易いように、薄片試料は試料ホルダの上面又は側面に対してほぼ垂直になるように設置されなければならない。
【0007】
そのため、薄片試料を試料ホルダに固定する際、図24(a)及び図24(b)に示すようにステージ100を傾けて、薄片試料101及び試料ホルダ102に向けて原料ガスを供給しながらFIBを照射してデポジション膜Dを形成する必要がある。デポジション膜Dを用いて薄片試料と101と試料ホルダ102とを固定するためには、デポジション膜Dは薄片試料101及び試料ホルダ102のそれぞれから成長し、合体した1つのデポジション膜Dになっていなければならない。よって、ステージ100を傾けないと、このような要求を満たしたデポジション膜Dを形成することができない。
これは、図25(a)及び図25(b)に示すように、試料ホルダ102の側面に薄片試料101を固定する場合も同様であり、やはりステージ100を傾ける必要がある。
【0008】
仮に、ステージ100を傾けない場合には、薄片試料101の上部にFIBが照射されてしまうので、デポジション膜Dが薄片試料101の上部付近にだけ生成されてしまう。そして、その後このデポジション膜Dを成長させたとしても、試料ホルダ102と接触するまで進行させることは困難であり、結果的に固定を行うことができない。従って、薄片試料101を試料ホルダ102に固定する場合には、上述したようにステージ100を傾けざるを得なかった。
【0009】
ところで、TEM試料の作製を行う場合には、通常、1つだけを作製するのではなく、一度に複数のTEM試料を作製する場合もある。この場合、上述したTEM試料の作製工程を何度も繰り返し行って、TEM試料を作製する必要がある。そのため、必然的に時間がかかってしまう作業であった。よって、今後できるだけ作業時間を短縮して、スループットの向上化を図ることが望まれている。
【0010】
しかしながら、従来のTEM試料の作製では、上述したように薄片試料を試料ホルダに固定する度に必ずステージを傾ける必要(傾斜動作させる必要)があった。そのため、ステージを傾ける時間の分だけ作業時間が延びてしまい、スループットが悪く、効率の良い作業を行うことができなかった。特に、TEM試料を作製するほど、作業時間が余計にかかってしまうものであった。
【0011】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その主目的は、ステージを傾けることなく薄片試料を試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製することができるTEM試料作製方法及び該方法で製造されたTEM試料を提供することである。
また、別の目的は、ステージを傾けることなく試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製するのに最適な薄片試料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係るTEM試料作製方法は、ステージ上に載置された試料から薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製するTEM試料作製方法であって、前記試料に向けて集束イオンビームを照射してエッチング加工により穴掘りし、平面視矩形状に形成された薄片本体と該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部とで一体的に形成された前記薄片試料を作製する作製工程と、保持機構により前記薄片試料を保持しながら、該薄片試料を前記試料ホルダの近傍まで移動させる移動工程と、前記突出部が前記試料ホルダの表面に接触するように前記保持機構で保持した前記薄片試料を試料ホルダに接触させる接触工程と、前記保持機構による保持を維持した状態で、デポジション膜を発生させる原料ガスを前記突出部の周辺に供給しながら該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射して、生成されるデポジション膜により突出部と試料ホルダとを固定する固定工程と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るTEM試料は、上記本発明のTEM試料作製方法で製造されたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る薄片試料は、集束イオンビームの照射によるエッチング加工によって試料から作製され、デポジション膜により試料ホルダに固定されることでTEM試料となる薄片試料であって、平面視矩形状に形成された薄片本体と、該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部と、で一体的に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係るTEM試料作製方法及び薄片試料においては、まず、試料から厚みが数十nmから百nm程度の極薄の薄片試料を作製する作製工程を行う。即ち、ステージ上に載置された試料に向けて集束イオンビームを試料表面に対して垂直に照射する。集束イオンビームが照射されると、照射された部分だけを選択的にエッチング加工することができる。そのため、予め決められた試料の加工領域内を集束イオンビームによってエッチング加工により穴掘りすることができ、薄片試料を作製することができる。この際、平面視矩形状の薄片本体と、薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部と、で一体的に形成されるように薄片試料を作製する。
【0016】
次に、作製した薄片試料を保持機構により保持しながら試料から取り出すと共に、試料ホルダの近傍まで移動させる移動工程を行う。続いて、薄片試料を保持したまま試料ホルダに接触させる接触工程を行う。この際、薄片本体から突出した突出部を試料ホルダの表面に接触させる。次に、薄片試料と試料ホルダとを互いに固定させる固定工程を行う。即ち、保持機構で保持されている薄片試料の突出部の周辺に原料ガスを供給しながら、該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射する。このとき、集束イオンビームの照射方向は、試料ホルダの上面に対してほぼ垂直な方向である。
【0017】
集束イオンビームが照射されると、該集束イオンビームが突出部の近傍に当たって二次電子が発生する。するとこの二次電子は、原料ガスを分解して気体成分と固体成分に分離させる。分離したこの2つの成分のうち、固体成分だけが堆積してデポジション膜となる。このとき、薄片本体の上面と試料ホルダの表面との距離に比べて、突出部の上面と試料ホルダの表面との距離の方が近い。そのため、突出部の近傍、即ち、突出部と突出部に近い試料ホルダの表面とにそれぞれ堆積したデポジション膜は、成長して合体し、突出部と試料ホルダとを接続する1つのデポジション膜になることができる。これにより、突出部と試料ホルダとを固定することができる。その結果、試料ホルダに薄片試料を固定したTEM試料を作製することができる。
【0018】
特に、薄片試料を固定する際に、薄片本体の側面の一部から外方に突出した突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射している。そのため、集束イオンビームを薄片本体の真上方向から照射したとしても、短時間で確実に突出部と試料ホルダとを接続できるようにデポジション膜を成長させることができる。従って、従来のように、わざわざステージを傾けて集束イオンビームを薄片試料と試料ホルダとの境に向けて直接照射する必要がない。よって、ステージを傾ける作業が不要であると共に傾けるのに必要な時間を短縮することができるので、スループットを向上することができる。その結果、より短時間で効率良くTEM試料を作製することができる。よって、同じ作業時間で、従来よりも多くのTEM試料を作製することが可能である。従って、TEM試料の低コスト化に繋げることができる。
【0019】
また、本発明に係るTEM試料作製方法は、上記本発明のTEM試料作製方法において、前記作製工程の際、前記薄片本体と前記突出部とが共通の一辺を有するように、突出部を薄片本体の隅角部に形成することを特徴とする。
【0020】
この発明に係るTEM試料作製方法においては、薄片試料を作製する際に、薄片本体と突出部とが共通の一辺を有するように、突出部を平面視矩形状とされた薄片本体の4つの隅角部(角部)のうちいずれかの隅角部に形成する。このように、共通の一辺を有するように突出部を形成することで、突出部の剛性を高めることができる。従って、薄片試料の固定強度が弱いという懸念がなく、より安定且つ強固に固定することができる。
【0021】
また、本発明に係るTEM試料作製方法は、上記本発明のTEM試料作製方法において、前記作製工程の際、前記突出部の高さが前記薄片本体の高さの5%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とする。
【0022】
この発明に係るTEM試料作製方法においては、突出部の高さが薄片本体の高さの少なくとも5%以上確保されているので、デポジション膜を利用して確実に安定して突出部を固定することができる。仮に、5%より低い場合には、デポジション膜によって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
一方、突出部の高さが薄片本体の高さの20%以下であるので、デポジション膜を速やかに突出部と試料ホルダとの境まで成長させることができ、スループットの向上化に繋げることができる。仮に、20%を超える場合には、デポジション膜が突出部と試料ホルダとの境まで成長するのに時間がかかることが予想される。
このように、突出部の高さを上述した範囲内に収めることで、薄片試料の固定を短時間でしかも確実に安定して行うことができる。
【0023】
また、本発明に係るTEM試料作製方法は、上記本発明のTEM試料作製方法において、前記作製工程の際、前記突出部の横幅が前記薄片本体の横幅の10%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とする。
【0024】
この発明に係るTEM試料作製方法においては、突出部の横幅(突出長さ)が薄片本体の横幅の少なくとも10%以上確保されているので、デポジション膜を利用して確実に安定して突出部を固定することができる。仮に、10%より短い場合には、デポジション膜によって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
一方、突出部の横幅が薄片本体の横幅の20%以下であるので、突出部を無駄に長くする必要がない。仮に、20%を超える場合には、突出部の横幅が長くなりすぎてしまい、薄片試料の幅が少なくなったり、作製工程に時間がかかってしまったりすることが予想される。
このように、突出部の横幅を上述した範囲内に収めることで、作製工程にかかる時間を短縮することができると共に、薄片試料の固定を確実に安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るTEM試料作製方法及び薄片試料によれば、ステージを傾けることなく薄片試料を試料ホルダに固定でき、スループットを高めてより短時間で効率良くTEM試料を作製することができる。よって、同じ作業時間で、従来よりも多くのTEM試料を効率良く作製することができる。
また、本発明に係るTEM試料によれば、上述した方法により効率良く製造されるので、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る一実施形態について、図1から図17を参照して説明する。
本実施形態のTEM試料作製方法は、図1に示すように、ウエーハ状の半導体デバイス等の試料Sから極薄の薄片試料2を取り出した後、該薄片試料2を試料ホルダ3にデポジション膜Dを利用して固定し、TEM試料1を作製する方法である。
なお、本実施形態では、図2に示すように、集束イオンビーム(FIB)と電子ビーム(EB)という2つのビームを照射できるダブルビーム式のTEM試料作製装置10を利用して、TEM試料1を作製する場合を例にして説明する。また、同一ステージ11上に、試料S及び試料ホルダ3が配置されている場合を例に挙げて説明する。
【0027】
まず、このTEM試料作製装置10について説明する。
TEM試料作製装置10は、試料S及び試料ホルダ3が載置されるステージ11と、FIB及びEBを照射する照射機構12と、FIB或いはEBの照射によって発生した二次荷電粒子Eを検出する検出器13と、デポジション膜Dを形成するための原料ガスGを供給するガス銃14と、検出された二次荷電粒子Eに基づいて画像データを生成すると共に、該画像データを表示部15に表示させる制御部16と、薄片試料2を挟持して保持することが可能なナノピンセット(保持機構)17と、を備えている。
【0028】
上記試料Sは、ホルダ20に固定された状態でステージ11上に載置されている。このホルダ20は、図3及び図4に示すように、中央に開口部21aを有する円形枠状に形成され、上面に試料Sを載置するホルダ本体21と、ホルダ本体21に載置された試料Sの外周に当接し、試料Sをホルダ本体21上で位置決めするガイド部22とを備えている。
ガイド部22は、ホルダ本体21の外周において、例えば等間隔に隙間を空けた状態で4箇所に設けられている。また、これらガイド部22の間には、ホルダ本体21に装着自在とされた試料カセット23がそれぞれ配置されている。そして、これら各試料カセット23には、試料ホルダ3を挟持することができる固定台24が複数装着されている。
【0029】
固定台24は、図5に示すように、基部24aと、図示しない固定ねじの締め込みによって基部24aに固定される固定部24bとで構成されており、基部24aと固定部24bと間で試料ホルダ3を挟持することができるようになっている。つまり、試料ホルダ3は、試料Sを載置しているホルダ20を介して、試料Sと同じステージ11上に配置された状態となっている。
【0030】
このステージ11は、図2に示すように制御部16の指示にしたがって作動するようになっており、5軸に変位することができるようになっている。即ち、ステージ11は、ホルダ20を水平面に平行で且つ互いに直交するX軸及びY軸と、これらX軸及びY軸に対して直交するZ軸とに沿って移動させる水平移動機構30aと、ホルダ20をX軸(又はY軸)回りに回転させて傾斜させるチルト機構30bと、ホルダ20をZ軸回りに回転させるローテーション機構30cとから構成される変位機構30によって支持されている。
よって、変位機構30によりステージ11を5軸に変位させることで、FIB或いはEBを所望する位置に向けて照射することができるようになっている。ところで、ステージ11及び変位機構30は、真空チャンバ31内に収納されている。そのため、真空チャンバ31内でFIB或いはEBの照射や原料ガスGの供給等が行われるようになっている。
【0031】
上記照射機構12は、ステージ11の上方に配置されており、Z軸に平行な鉛直にFIBを照射するFIB鏡筒32と、Z軸に対して斜めにEBを照射するSEM鏡筒33とから構成されている。
FIB鏡筒32は、イオン発生源32a及びイオン光学系32bを有しており、イオン発生源32aで発生させたイオンをイオン光学系32bで細く絞ってFIBにした後、試料Sや試料ホルダ3に向けて照射するようになっている。また、SEM鏡筒33は、電子発生源33a及び電子光学系33bを有しており、電子発生源33aで発生させた電子を電子光学系33bで細く絞ってEBにした後、試料Sや試料ホルダ3に向けて照射するようになっている。
【0032】
検出器13は、FIB或いはEBが照射されたときに、試料Sや試料ホルダ3から発せられる二次電子や二次イオン等の二次荷電粒子Eを検出して、制御部16に出力している。ガス銃14は、デポジション膜Dの原料となる物質(例えば、フェナントレン、プラチナ、カーボンやタングステン等)を含有した化合物ガスを原料ガスGとして供給するようになっている。この原料ガスGは、FIBの照射によって発生した二次荷電粒子Eによって分解され、気体成分と固体成分とに分離するようになっている。そして、分離した2つの成分のうち、固体成分が堆積することで、デポジション膜Dとなる。
【0033】
ナノピンセット17は、基端側がチルト機構30bに装着されたピンセットホルダ17aと、該ピンセットホルダ17aに支持された一対のピンセット部17bとを有している。なお、図2では、見易くするためにピンセットホルダ17aをチルト機構30bから離した状態で図示している。そして、ナノピンセット17は、図示しない圧電素子によって一対のピンセット部17bの先端を互いに接近、離間する方向に可動することができるようになっている。これにより、試料Sから作製した薄片試料2を挟持して保持することが可能とされている。
また、ピンセットホルダ17aは、水平移動及び上下移動が可能とされている。これにより、一対のピンセット部17bで保持した薄片試料2を、保持したまま自在に移動させることが可能とされている。
【0034】
制御部16は、上述した各構成品を総合的に制御していると共に、FIB鏡筒32及びSEM鏡筒33の加速電圧やビーム電流を変化させることができるようになっている。特に、制御部16は、FIB鏡筒32の加速電圧やビーム量を変化させることで、FIBのビーム径を自在に調整できるようになっている。これにより、観察画像を取得するだけでなく、試料Sを局所的にエッチング加工することができるようになっている。しかも、エッチング加工する際に、ビーム径を調整することで粗加工から仕上げ加工まで加工精度を自由に変えることが可能とされている。
【0035】
また、制御部16は、FIB或いはEBの照射により検出器13で検出された二次荷電粒子Eを、輝度信号に変換して観察画像データを生成した後、該観察画像データに基づいて表示部15に観察画像を出力させている。これにより、表示部15は、観察画像を表示できるようになっている。また、制御部16には、オペレータが入力可能な入力部16aが接続されており、該入力部16aによって入力された信号に基づいて各構成品を制御している。つまり、オペレータは、入力部16aを介して、所望する領域にFIBやEBを照射して観察したり、所望する領域にFIBを照射してエッチング加工を行ったり、所望する領域に原料ガスGを供給しながらFIBを照射してデポジション膜Dを堆積させたりすることができるようになっている。
【0036】
次に、このように構成されたTEM試料作製装置10を利用して、試料Sから極薄の薄片試料2を作製して取り出した後、該薄片試料2を試料ホルダ3に固定してTEM試料1を作製するTEM試料作製方法について説明する。
始めに、試料Sがホルダ本体21の上面に載置されたホルダ20を、真空チャンバ31内に収納されているステージ11上に載置した後、真空チャンバ31内を真空状態にセットする初期設定を行う。この初期設定が終了した後、試料Sをエッチング加工して薄片試料2を作製する作製工程を行う。
【0037】
この工程について詳細に説明する前に、薄片試料2について簡単に説明する。この工程で作製する薄片試料2は、図1に示すように、平面視矩形状に形成された薄片本体2aと、該薄片本体2aの側面の一部から側方(横幅方向)に向けて突出した突出部2bと、で一体的に形成された極薄(厚みが数十nmから百nm程度)の試料である。しかも、本実施形態では、薄片本体2aと突出部2bとが共通の一辺を有するように、突出部2bを薄片本体2aの角部、具体的には薄片本体2aの下側(試料ホルダ3側)に位置する角部に形成されるように薄片試料2を作製する。
【0038】
それでは、上記薄片試料2を作製する作製工程について詳細に説明する。
まず、オペレータは、試料Sのどの領域から薄片試料2を作製するのか決定した後、図6に示すように薄片試料2の作製領域S1を入力部16aに入力する。また、同時にエッチング加工する加工領域S2を入力部16aに入力する。
すると、制御部16は、変位機構30によりステージ11を適宜動作させながら、FIB鏡筒32から試料Sに向けてFIBを鉛直に照射させる。これにより、さきほど入力された作製領域S1を除く加工領域S2の範囲内にFIBを照射することができる。FIBが照射されると、照射された部分だけを選択的にエッチング加工することができる。
【0039】
そのため、図7に示すように、試料Sの加工領域S2内における薄片試料2の両側を穴掘りすることができる。この際、図7及び図8に示すように、2箇所の連結部35を介して薄片試料2が試料Sに支持されるようにエッチング加工する。なお、変位機構30によりステージ11を所定角度傾けることで、真上から鉛直に照射されるFIBによって、連結部35や薄片試料2の下側の領域を適宜エッチング加工することができ、連結部35によって宙に浮いた状態で薄片試料2を切り出すことができる。なおこの段階では、突出部2bは連結部35の一部として機能している。続いて、変位機構30により、ステージ11を水平状態にする。
【0040】
続いて、図9に示すように、2つの連結部35のうち、後にナノピンセット17が上方に配置される側の1つ(紙面に対して左側の連結部35)に再度FIBを照射して、該連結部35をエッチングにより予め切断しておく。この工程が終了した後、ナノピンセット17により薄片試料2を一旦保持する保持工程を行う。
具体的には、ピンセットホルダ17aにより一対のピンセット部17bを薄片試料2に近づけながら、図10に示すように、該一対のピンセット部17bで薄片試料2を挟持して保持する。そして、保持した後、図11及び図12に示すように、残されたもう一方の連結部35(薄片本体2aの下側に形成された連結部35)に再度FIBを照射して、該連結部35をエッチングにより切断する。この際、一部が薄片本体2aに繋がったままの状態となるように、連結部35の途中を切断する。この薄片本体2aに一部が繋がった連結部35の残りの部分が、突出部2bとなる。
これにより、平面視矩形状の薄片本体2aと突出部2bとが一体的に形成された薄片試料2を試料Sから作製することができる。この時点で、作製工程が終了する。
【0041】
次に、作製した薄片試料2をナノピンセット17で保持しながら、試料Sから取り出すと共に、同じステージ11上に載置されている試料ホルダ3の近傍まで移動させる移動工程を行う。具体的には、ピンセットホルダ17aにより一対のピンセット部17bを上昇させて薄片試料2を試料Sから持ち上げた後、変位機構30によりステージ11を水平移動及び上下移動させて、ナノピンセット17で保持した薄片試料2を試料ホルダ3の近傍に位置させる。
【0042】
続いて、ステージ11を水平状態のままで、図13に示すように、薄片試料2をナノピンセット17で保持したまま試料ホルダ3に接触させる接触工程を行う。この際、薄片本体2aから突出した突出部2bが試料ホルダ3の表面に接触するように一対のピンセット部17bを動かす。なお、本実施形態では、試料ホルダ3の上面に薄片試料2を接触させた場合を例にしている。
【0043】
次に、薄片試料2と試料ホルダ3とを互いに固定させる固定工程を行う。
即ち、図14に示すように、ナノピンセット17で保持されている薄片試料2の突出部2bの周辺にガス銃14から原料ガスGを供給しながら、該突出部2bの近傍、即ち、突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに向けてFIBを鉛直に照射する。FIBが照射されると、該FIBが突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに当たって二次電子が発生する。するとこの二次電子は、原料ガスGを分解して気体成分と固体成分に分離させる。分離した2つの成分のうち、固体成分だけが突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに堆積してデポジション膜Dとなる。そして、このデポジション膜Dは、突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアE、及び突出部2bと試料ホルダ3との境に付着し始めた後、徐々に成長し、最終的には図15に示すように突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEを全部覆う。
【0044】
上述した現象を補足すると、薄片試料2は薄片本体2aと突出部2bとで形成されているので、試料ホルダ3の表面に接触させた際に、薄片本体2aの上面と試料ホルダ3の表面との距離に比べて、突出部2bの上面と試料ホルダ3の表面との距離の方が近くなる。そのため、図14に示すように、突出部2bと指定エリアEとにそれぞれ堆積したデポジション膜Dは、その後成長して合体する。その結果、図15に示すように突出部2bと試料ホルダ3とを接続する1つのデポジション膜Dになる。
このような現象は、突出部2bが存在することによる特有の現象であり、従来では奏することができない効果である。
【0045】
その結果、突出部2bと試料ホルダ3とを固定することができる。その後、一対のピンセット部17bによる保持を解除することで、試料ホルダ3に薄片試料2を固定した図1に示すTEM試料1を作製することができる。
【0046】
特に、本実施形態のTEM試料作製方法では、薄片試料2を固定する際に、薄片本体2aの側面の一部から突出した突出部2bを含む試料ホルダ3上の指定エリアEに向けてFIBを照射している。そのため、FIBを真上から鉛直に照射したとしても、生成されたデポジション膜Dを短時間で確実に突出部2bと試料ホルダ3とを接続する1つのデポジション膜に成長させることができる。従って、従来のように、わざわざステージ11を傾けてFIBを薄片試料2と試料ホルダ3との境に向けて直接照射する必要がない。よって、ステージ11を傾ける作業が不要であると共に傾けるのに必要な時間を短縮することができるので、スループットを向上することができる。その結果、より短時間で効率良くTEM試料1を作製することができる。よって、同じ作業時間で、従来よりも多くのTEM試料1を効率良く作製することが可能である。従って、TEM試料1の低コスト化にも繋げることができる。
【0047】
また、薄片試料2を作製するにあたって、薄片本体2aの隅角部に突出部2bを形成し、薄片本体2aと突出部2bとが共通の一辺を有するようにしている。そのため、形成した突出部2bの剛性を高めることができる。従って、薄片試料2の固定強度が弱いという懸念がなく、より安定且つ強固に固定することができる。
【0048】
なお、TEM試料1を作製している間に、観察画像を確認したい場合には、適宜SEM鏡筒33からEBを照射すれば良い。こうすることで、EBの照射によって発生した二次荷電粒子Eを検出器13で検出でき、この検出結果から生成された観察画像データに基づいた観察画像を表示部15で確認することができる。
また、TEM試料1を作製した後、再度FIBを照射して薄片試料2の表面を仕上げる追加加工も可能となる。このようにすることで、TEM試料1の作製中に、薄片試料2の表面に何らかの理由で付着してしまった付着物を除去することができ、汚染のない高品質なTEM試料1を作製することができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、薄片試料2を作製する際に、図16に示すように突出部2bの高さH1が薄片本体2aの高さH2の5%〜20%の範囲内に収まるようにすることが好ましい。
突出部2bの高さH1を薄片本体2aの高さH2の5%以上にすることで、デポジション膜Dを利用して確実に安定して突出部2bを固定することができ、高品質なTEM試料1を作製することができる。仮に、突出部2bの高さH1が薄片本体2aの高さH2の5%より低い場合には、デポジション膜Dによって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
また、突出部2bの高さH1を薄片本体2aの高さH2の20%以下にすることで、デポジション膜Dを速やかに突出部2bと試料ホルダ3との境まで成長させることができ、スループットの向上化に繋げることができる。仮に、突出部2bの高さH1が20%を超える場合には、デポジション膜Dが突出部2bと試料ホルダ3との境まで成長するのに時間がかかることが予想される。
このように、突出部2bの高さH1を上述した範囲内に収めることで、薄片試料2の固定を短時間でしかも確実に安定して行うことができる。
【0050】
また、薄片試料2を作製する際に、図17に示すように突出部2bの横幅(突出長さ)W1が薄片本体2aの横幅W2の10%〜20%の範囲内に収まるようにすることが好ましい。
突出部2bの横幅W1を薄片本体2aの横幅W2の10%以上にすることで、デポジション膜Dを利用して確実に安定して突出部2bを固定することができる。仮に、突出部2bの横幅W1が10%より短い場合には、デポジション膜Dによって固定そのものができなかったり、固定できたとしても固定が不安定になったりすることが予想される。
一方、突出部2bの横幅W1を薄片本体2aの横幅W2の20%以下にすることで、突出部2bを無駄に長くする必要がない。仮に、突出部2bの横幅W1が20%を超える場合には、作製工程に時間がかかることが予想される。
このように、突出部2bの横幅W1を上述した範囲内に収めることで、作製工程にかかる時間を短縮することができると共に、薄片試料2の固定を確実に安定して行うことができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、薄片試料2を試料ホルダ3の上面に固定したTEM試料1を作製した場合を例に挙げたが、この場合に限られるものではない。例えば、薄片試料2を作製する際に、図18に示すように薄片本体2aの上側(試料Sの表面側)に位置する角部に突出部2bが形成されるように作製する。そして、図19に示すように、突出部2bを試料ホルダ3の上面に引っ掛けるような形で、薄片試料2を試料ホルダ3の側面に固定したTEM試料1の作製も可能である。この場合であっても、やはりステージ11を傾けることなくデポジション膜Dを突出部2bの周辺に堆積させることができるので、同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、薄片本体2aと突出部2bとが共通の一辺を有するように薄片試料2を作製した場合を例にしたが、図20に示すように、薄片本体2aの側面の略中間付近に突出部2bが位置するように薄片試料2を作製することも可能である。
この場合であっても、例えば図21に示すように、突出部2bを試料ホルダ3の上面に引っ掛けるような形で、薄片試料2を試料ホルダ3の側面に固定したTEM試料1を作製することができる。この場合にも、やはり同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、円形枠状に形成されたホルダ20に試料ホルダ3が複数取り付けられている場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。ステージ1上に試料ホルダ3を配置できればどのようなホルダ構造であっても良い。
更に、上記実施形態では、同一ステージ11上に、試料Sと試料ホルダ3とが配置された構成を例に挙げて説明したが、必ずしも同じステージ11上に配置されている必要はなく、ステージ11とは切り離して試料ホルダ3を配置する構成であっても構わない。例えば、図22に示すように、真空チャンバ31内において、試料Sがホルダ20を介して載置されているステージ11に隣接するように、専用の架台M等を介して試料ホルダ3が配置されていても構わない。なお、図22では、見易くするために試料ホルダ3を誇張して図示している。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、Z軸に平行な鉛直方向にFIBを照射できるようにFIB鏡筒32を配置すると共に、Z軸に対して斜めにEBを照射できるようにSEM鏡筒33を配置したが、照射機構12の配置はこの場合に限定されるものではない。
例えば、図23に示すように、Z軸に平行な鉛直方向にEBを照射できるようにSEM鏡筒33を配置し、Z軸に対して斜めにFIBを照射できるようにFIB鏡筒32を配置した照射機構12としても構わない。この場合には、FIBが試料Sの表面に対して垂直に当たるようにステージ11を傾けておき、この状態を通常のポジションとしておけば良い。この場合であっても、試料ホルダ3に薄片試料2を固定する際にステージ11を通常のポジションから傾ける必要がなく、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るTEM試料作製方法を説明するための概要図である。
【図2】TEM試料作製方法を行うためのTEM試料作製装置の構成図である。
【図3】図2に示すTEM試料作製装置の構成品の1つであって、試料を固定するホルダの上面図である。
【図4】図3に示すホルダの断面矢視A−A図である。
【図5】図3に示すホルダの一部を拡大した図であって、試料ホルダが固定されている周辺を拡大した図である。
【図6】図2に示すTEM試料作製装置を利用してTEM試料を作製する場合の一工程を示す図であって、試料の表面に薄片試料の作製領域と、FIBによる加工領域とを設定した状態を示す図である。
【図7】図6に示す状態から、FIBによるエッチング加工を行って、試料を穴掘り加工して薄片試料を作製している状態を示す図である。
【図8】図7に示す断面矢視B−B図である。
【図9】図8に示す状態から、連結部の1つに再度FIBを照射して該連結部をエッチング加工により除去した状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態から、薄片試料をナノピンセットで挟持した状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態から、残りの連結部に再度FIBを照射して該連結部をエッチング加工により除去し、薄片試料を試料から切り離した状態を示す図である。
【図12】図11に示す断面矢視C−C図である。
【図13】図11に示す状態から、薄片試料を試料ホルダの上面に載置した状態を示す図である。
【図14】図13に示す状態から、薄片試料の突出部に原料ガスを供給しながらFIBを照射して、デポジション膜を堆積させ始めた状態を示す図である。
【図15】図14に示す状態から、デポジション膜を成長させて、薄片試料と試料ホルダとを固定した状態を示す図である。
【図16】薄片試料を作製するにあたって、薄片本体の高さと突出部の高さとの関係を説明するための図である。
【図17】薄片試料を作製するにあたって、薄片本体の横幅と突出部の横幅との関係を説明するための図である。
【図18】本発明に係るTEM試料作製方法の変形例を示す図であって、薄片本体の上側の角部に突出部が形成されるように薄片試料を作製した状態を示す図である。
【図19】図18に示す薄片試料を試料ホルダの側面に固定したTEM試料を示す図である。
【図20】本発明に係るTEM試料作製方法の変形例を示す図であって、薄片本体の側面の略中間に突出部が形成されるように薄片試料を作製した状態を示す図である。
【図21】図20に示す薄片試料を試料ホルダの側面に固定したTEM試料を示す図である。
【図22】本発明に係る変形例を示す図であって、試料が載置されたステージとは別に試料ホルダが配置されている場合の簡略図である。
【図23】本発明に係る変形例を示す図であって、Z軸に平行な鉛直方向にEBを照射し、Z軸に対して斜めにFIBを照射する場合の鏡筒配置図である。
【図24】従来のTEM試料作製方法の一例を示す図であって、(a)はステージを傾けた状態で試料ホルダの上面に薄片試料を固定している状態を示す図であり、(b)は(a)に示す矢印A方向から見た図である。
【図25】従来のTEM試料作製方法の一例を示す図であって、(a)はステージを傾けた状態で試料ホルダの側面に薄片試料を固定している状態を示す図であり、(b)は(a)に示す矢印B方向から見た図である。
【符号の説明】
【0057】
D…デポジション膜
G…原料ガス
S…試料
H1…突出部の高さ
H2…薄片本体の高さ
W1…突出部の横幅
W2…薄片本体の横幅
FIB…集束イオンビーム
1…TEM試料
2…薄片試料
2a…薄片本体
2b…突出部
3…試料ホルダ
11…ステージ
17…ナノピンセット(保持機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に載置された試料から薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製するTEM試料作製方法であって、
前記試料に向けて集束イオンビームを照射してエッチング加工により穴掘りし、平面視矩形状に形成された薄片本体と該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部とで一体的に形成された前記薄片試料を作製する作製工程と、
保持機構により前記薄片試料を保持しながら、該薄片試料を前記試料ホルダの近傍まで移動させる移動工程と、
前記突出部が前記試料ホルダの表面に接触するように前記保持機構で保持した前記薄片試料を試料ホルダに接触させる接触工程と、
前記保持機構による保持を維持した状態で、デポジション膜を発生させる原料ガスを前記突出部の周辺に供給しながら該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射して、生成されるデポジション膜により突出部と試料ホルダとを固定する固定工程と、を備えていることを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のTEM試料作製方法において、
前記作製工程の際、前記薄片本体と前記突出部とが共通の一辺を有するように、突出部を薄片本体の隅角部に形成することを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のTEM試料作製方法において、
前記作製工程の際、前記突出部の高さが前記薄片本体の高さの5%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のTEM試料作製方法において、
前記作製工程の際、前記突出部の横幅が前記薄片本体の横幅の10%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のTEM試料作製方法により製造されたことを特徴とするTEM試料。
【請求項6】
集束イオンビームの照射によるエッチング加工によって試料から作製され、デポジション膜により試料ホルダに固定されることでTEM試料となる薄片試料であって、
平面視矩形状に形成された薄片本体と、該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部と、で一体的に形成されていることを特徴とする薄片試料。
【請求項1】
ステージ上に載置された試料から薄片試料を取り出した後、該薄片試料を試料ホルダに固定してTEM試料を作製するTEM試料作製方法であって、
前記試料に向けて集束イオンビームを照射してエッチング加工により穴掘りし、平面視矩形状に形成された薄片本体と該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部とで一体的に形成された前記薄片試料を作製する作製工程と、
保持機構により前記薄片試料を保持しながら、該薄片試料を前記試料ホルダの近傍まで移動させる移動工程と、
前記突出部が前記試料ホルダの表面に接触するように前記保持機構で保持した前記薄片試料を試料ホルダに接触させる接触工程と、
前記保持機構による保持を維持した状態で、デポジション膜を発生させる原料ガスを前記突出部の周辺に供給しながら該突出部の近傍に向けて集束イオンビームを照射して、生成されるデポジション膜により突出部と試料ホルダとを固定する固定工程と、を備えていることを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のTEM試料作製方法において、
前記作製工程の際、前記薄片本体と前記突出部とが共通の一辺を有するように、突出部を薄片本体の隅角部に形成することを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のTEM試料作製方法において、
前記作製工程の際、前記突出部の高さが前記薄片本体の高さの5%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のTEM試料作製方法において、
前記作製工程の際、前記突出部の横幅が前記薄片本体の横幅の10%〜20%の範囲内に収まるように前記薄片試料を形成することを特徴とするTEM試料作製方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のTEM試料作製方法により製造されたことを特徴とするTEM試料。
【請求項6】
集束イオンビームの照射によるエッチング加工によって試料から作製され、デポジション膜により試料ホルダに固定されることでTEM試料となる薄片試料であって、
平面視矩形状に形成された薄片本体と、該薄片本体の側面の一部から側方に向けて突出した突出部と、で一体的に形成されていることを特徴とする薄片試料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−2308(P2010−2308A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161661(P2008−161661)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】
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