説明

TOLL様受容体モジュレーター及びその使用

本発明は、式(I)及び式(II):
【化1】
(式中、n、m、X、X、X、X、R、R、R、R11、R12、Y、Y、Y、Y及びYは本明細書で規定されるものである)からなる群から選択される化合物を提供する。本発明の幾つかの態様はこれらの化合物及びこれを含む組成物を使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、toll様受容体モジュレーター、これを含む組成物、並びにこれを作製する方法及びこれを使用する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は2009年9月23日に出願された米国仮出願第61/244,997号(その全体が参照により本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究の記載]
本発明は米国国立衛生研究所により認められた認可番号UL1RR025780での米国政府の支援により行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
疼痛の薬理及び治療には非常に長期にわたる動乱の歴史がある。紀元前3500年頃に疼痛を治療するのにケシ(opium poppy)抽出物を使用し始めて以来、急性及び慢性の疼痛からの効果的な緩和をもたらす治療に関する調査は驚くべき速度で発展を続けている。現在、疼痛は依然として重大な公衆衛生問題であり、患者の3分の2では現在利用可能なあらゆる薬物療法及び投与計画によっても疼痛の緩和がほとんど又は全く達成されていない。オピオイド(すなわちアヘン剤)薬物療法の利用によって、幾つかの報酬副作用及び強化副作用が生じ、これにより薬物の中毒状況へと移行する。残念なことに、患者の生活の質を改善しようとする際の重大な副作用は、患者を助けるために処方した治療に依存状態になる人がいることである。近年、オピオイドの誤用が急増しており、このことが医師及び患者に疼痛を最大限治療するのをためらわせている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、不当な依存状態を引き起こすことなく疼痛を治療するための化合物、組成物及び方法が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の幾つかの態様は、様々な化合物、これを含む組成物、並びにtoll様受容体(TLR)を変調するためにこれらの化合物及び組成物を使用し、TLRと関連した様々な臨床病態を治療する方法を提供する。
【0007】
本発明の他の態様は、式:
【化1】


及び
【化2】

(式中、
n及びmはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、
はそれぞれ独立してアルコキシド、任意で置換されたアルキル又はアルケニルであり、
はO、NR又はSであり、
は−OR、−SR又は−NRであり、
はそれぞれ独立してハロゲン化物又はアルコキシドであり、
、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
及びYはそれぞれ独立してO又はSであり、
及びYはそれぞれ独立してO、S又はNRであり、
はCH又はNであり、
、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
11はシクロアルキル又はアルキルであり、
12はアルキル、任意で置換されたアリール又はシクロアルキルである)からなる群から選択される化合物を提供する。
【0008】
幾つかの実施の形態では、該化合物は式:
【化3】

(式中、
m及びnはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、典型的にはm及びnはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、多くの場合m及びnはそれぞれ独立して0〜2の整数であり、
、X、X、X、R、R及びRは本明細書で規定されるものである)を有する。これらの実施の形態内では、幾つかの場合、XはOである。更に他の場合でXは−OHである。また他の場合でR、R及びRはアルキルである。典型的には、R、R及びRはメチルである。また他の場合でXはアルコキシド、ヘテロ置換アルキル又はアルケニル−アルキルである。多くの場合、Xはメトキシド、メトキシエチル又はアリルである。更に他の場合でXはアルコキシド、Cl又はFである。典型的には、Xはメトキシド又はClである。
【0009】
他の実施の形態では、該化合物は式:
【化4】

(式中、
及びYはOであり、
11、R12、Y、Y及びYは本明細書で規定されるものである)を有する。これらの実施の形態内では、いくつかの場合でYはNRである。典型的にはRは水素である。更に他の場合でYはO又はNHである。また他の場合でR11はアダマンチル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル又は1−エチルプロピルである。他の場合でR12はアルキル、アダマンチル、シクロヘキシル又は任意で置換されたフェニルである。多くの場合、R12はiso−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル、メトキシフェニル又はクロロフェニルである。
【0010】
本発明の他の態様は、Toll様受容体(TLR)を変調する方法であって、TLRを発現する細胞を有効な量の本明細書に開示の化合物に接触させることを含む、Toll様受容体(TLR)を変調する方法を提供する。通常、該化合物はTLRアンタゴニストである。
【0011】
本発明の更に他の態様は、Toll様受容体(TLR)活性化と関連する臨床病態に関して被験体を治療する方法を提供する。該方法は通常、本明細書に開示の化合物を該被験体に投与することを含む。通常、臨床病態はグリア細胞のToll様受容体(TLR)媒介性の活性化と関連する病態を含む。多くの場合、臨床病態は神経因性疼痛、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、又はそれらの組合せを含む。他の実施の形態では、臨床病態は、慢性疼痛、侵害受容、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、胃腸病変、心血管疾患、糖尿病、免疫関連病態、全身性病変、神経変性、陣痛誘発、発熱、発作、癲癇、癲癇発生、又はそれらの組合せを含む。多くの場合、望ましくないオピオイド副作用は、オピオイド依存、オピオイド報酬、オピオイド誘導性の呼吸抑制、オピオイド誘導性の運動失調、オピオイド誘導性の痛覚過敏、オピオイド誘導性の異痛若しくは痛覚過敏、オピオイド誘導性の胃腸障害、麻薬性腸症候群、オピオイド情動不安、又はそれらの組合せを含む。
【0012】
また本発明の他の態様は、被験体においてTLR4/MD−2相互作用と関連する臨床病態を治療する方法であって、かかる治療を必要とする該被験体にTLR4/MD−2相互作用阻害剤を投与することを含む、被験体においてTLR4/MD−2相互作用と関連する臨床病態を治療する方法を提供する。多くの場合、臨床病態は神経因性疼痛、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、又はそれらの組合せを含む。他の実施の形態では、臨床病態は、慢性疼痛、侵害受容、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、胃腸病変、心血管疾患、糖尿病、免疫関連病態、全身性病変、神経変性、陣痛誘発、発熱、発作、癲癇、癲癇発生、又はそれらの組合せを含む。通常、望ましくないオピオイド副作用は、オピオイド依存、オピオイド報酬、オピオイド誘導性の呼吸抑制、オピオイド誘導性の運動失調、オピオイド誘導性の痛覚過敏、オピオイド誘導性の異痛若しくは痛覚過敏、オピオイド誘導性の胃腸障害、麻薬性腸症候群、オピオイド情動不安、又はそれらの組合せを含む。
【0013】
本発明の更に他の態様はアヘン剤と本発明の化合物とを含む組成物を提供する。幾つかの実施の形態では、アヘン剤と本発明の化合物とを密接に混合する。他の実施の形態では、アヘン剤と本発明の化合物とが別々の形態にある。一般的に、当業者に知られるアヘン剤はいずれも本発明の組成物(及び方法)に使用することができる。代表的なアヘン剤は、(+)−異性体及び(−)−異性体の両方を含む。通常、本発明の組成物(及び方法)は、鏡像異性的に濃縮された、例えば90%ee以上、通常95%ee以上、多くの場合98%ee以上の(−)−アヘン剤を含む。好適なアヘン剤の具体例としては、とりわけモルヒネ、メタドン、オキシコドン、ブプレノルフィン、フェンタニル及びペチジン(pethidine)/メペリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の化合物がアヘン剤の効果を高めるため、通常該組成物におけるアヘン剤の量は、本発明の化合物の非存在下で通常使用されるアヘン剤の量よりも少ない。幾つかの実施の形態では、該組成物に存在するアヘン剤の量は、本発明の化合物の非存在下でのアヘン剤の推奨投薬量と比べて約50%〜約100%、通常約75%〜約100%、多くの場合約90%〜約100%である。代替的に該組成物におけるアヘン剤対本発明の化合物のモル比は約1000:1〜約10:1、通常約100:1〜約10:1、多くの場合約50:1〜約10:1の範囲である。
【0015】
本発明の更に他の態様は、かかる治療を必要とする被験体において疼痛を治療する方法を提供する。かかる方法は通常、該被験体に治療的に有効な量のアヘン剤と本発明の化合物との組合せを投与することを含む。幾つかの実施の形態では、アヘン剤と本発明の化合物とを同時に又は連続して投与する。
【0016】
また本発明の他の態様は、アヘン剤化合物の鎮痛効果を高める方法を提供する。かかる方法は、該被験体に、アヘン剤と治療的に有効な量の本発明の化合物とを同時に投与することを含む。「同時に投与する(co-administered)」という用語は、互いに数時間以内に、例えば1時間又は2時間以内に、通常1時間以内に、多くの場合30分以内に、より多くの場合10分以内にアヘン剤と本発明の化合物とを投与することを表す。アヘン剤と本発明の化合物とを別々に投与する場合、本発明の化合物をアヘン剤の投与の前後に投与することができることを理解するものとする。幾つかの実施の形態では、アヘン剤と本発明の化合物とを実質的に同時に投与する。「実質的に同時に投与する」及び「同時に投与する」という用語は、互いに5分以内に、通常3分以内に、多くの場合1分以内にアヘン剤と本発明の化合物とを投与することを表す。幾つかの特定の実施の形態では、本発明の化合物を、該アヘン剤を投与する前に投与する。かかる実施の形態では、一般的に本発明の化合物を、アヘン剤を投与する前、2時間以内に、通常1時間以内に、多くの場合0.5時間以内に投与する。また他の具体的な実施の形態では、本発明の化合物を、アヘン剤を投与した後に投与する。かかる実施の形態では、一般的に本発明の化合物を、アヘン剤を投与した後、約2時間以内に、通常1時間以内に、多くの場合0.5時間以内に投与する。
【0017】
本発明の他の態様は、被験体においてアヘン剤薬物療法の副作用を低減する方法を提供する。かかる方法は通常、治療的に有効な量の本発明の化合物を、アヘン剤薬物療法を受ける被験体に投与することを含む。幾つかの実施の形態では、該方法は本発明の化合物の非存在下でのアヘン剤の推奨投薬量と比べて約50%〜約100%のアヘン剤を被験体に投与することも含む。幾つかの特定の実施の形態では、本発明の化合物とアヘン剤とを被験体に実質的に同時に投与する。また他の実施の形態では、本発明の化合物を、アヘン剤を投与する前、2時間以内に、通常1時間以内に、多くの場合0.5時間以内に投与する。更に他の実施の形態では、本発明の化合物を、アヘン剤を投与した後、約2時間以内に、通常約1時間以内に、多くの場合約0.5時間以内に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)、(b)はMD−2との化合物A−2の結合の分子ドッキング実験の結果を示す図である。(a)化合物A−2がMD−2表面上でのLPS結合部位(矢印で示す)とは異なるアロステリック部位を認識することを示す、化合物A−2/ヒトMD−2複合体の全体図。(b)化合物A−2が高い空間相補性でポケットを認識することを示す、拡大図。(c)MD−2タンパク質が認識するTLR4表面上の同じクレフトでの化合物A−1とTLR4のLRR反復との結合。
【図2】TLR4/MD−2プルダウンアッセイの結果を示す棒グラフである。
【図3A】化合物A−1がマクロファージにおいてLPS誘導性のTLR4活性化を阻止することを示すグラフである。
【図3B】化合物A−2がマクロファージにおいてLPS誘導性のTLR4活性化を阻止することを示すグラフである。
【図4】化合物A−1と化合物A−2とがいずれもこれらの試験濃度では何ら有意な細胞毒性を引き起こさないを示した生存率アッセイの結果の棒グラフである。
【図5A】幾つかの本発明の化合物に対するハーグリーブス試験の結果を示す図である。
【図5B】幾つかの本発明の化合物に対するハーグリーブス試験の結果を示す図である。
【図5C】幾つかの本発明の化合物に対するハーグリーブス試験の結果を示す図である。(図面中の英語)図2NormalizedInhibition 正規化阻害control 対照 図3ANormalizedchange in cytoplasmic fluorescence 細胞質の蛍光の正規化変化Compound 化合物Time/s 時間/秒Add LPS LPSを添加Add C5a C5aを添加 図3BNormalizedchange in cytoplasmic fluorescence 細胞質の蛍光の正規化変化Compound 化合物Time/s 時間/秒Add LPS LPSを添加Add C5a C5aを添加 図4CellViability 細胞生存率% ViableCells 生存細胞(%)No Drug 薬物なしCompound 化合物 図5AMorphine +2126 salt base モルヒネ+2126塩ベース% Maximumpotential effect Hargreaves Tailflick 最大潜在効果(%)(ハーグリーブステールフリック)morphine +vehicle モルヒネ+ビヒクルmorphine +2126 salt モルヒネ+2126塩Time(min) 時間(分) 図5BTail テールmorphine モルヒネveh ビヒクルTime(min) 時間(分) 図5Cmorphine モルヒネvehicle ビヒクルTime(min) 時間(分)
【発明を実施するための形態】
【0019】
「アルキル」は1個〜12個、通常1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状の一価飽和炭化水素部分又は3個〜12個、通常3個〜6個の炭素原子を有する分岐した一価飽和炭化水素部分を表す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、tert−ブチル、ペンチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「任意で置換されたアルキル」は、1つ又は複数の水素原子が任意でハロゲン化物、ヒドロキシル、アルコキシ又は他のヘテロ原子置換基等の置換基で置き換えられた、本明細書で規定されるようなアルキル基を表す。
【0021】
「アルキレン」は、1個〜12個、通常1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状の二価飽和炭化水素部分又は3個〜12個、通常3個〜6個の炭素原子を有する分岐した二価飽和炭化水素部分を表す。アルキレン(alkylene)基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有する、2個〜10個の炭素原子を有する直鎖状の一価炭化水素部分又は3個〜10個の炭素原子を有する分岐した一価炭化水素部分、例えばエテニル、プロペニル等を表す。
【0023】
「アルケニルアルキル」は、式−R−R(式中、Rが本明細書で規定されるようなアルキレンであり、Rが本明細書で規定されるようなアルケニルである)の部分を表す。
【0024】
「アルコキシ」は、式−OR(式中、Rは本明細書で規定されるようなアルキルである)の部分を表す。
【0025】
「アルコキシアルキル」は、式−R−O−R(式中、Rは本明細書で規定されるようなアルキレンであり、Rは本明細書で規定されるようなアルキルである)の部分を表す。
【0026】
「アンタゴニスト」はアゴニストの効果を弱める化合物又は組成物を表す。アンタゴニストはアゴニストと共通する受容体領域に可逆的に又は不可逆的に結合することができる。アンタゴニストは受容体又は関連のイオンチャネル上の異なる部位で結合することもできる。さらに、「アンタゴニスト」という用語は機能的アンタゴニスト又は生理的アンタゴニストも含む。機能的アンタゴニストは同じ受容体に作用することなく、アゴニストの効果を逆転させる化合物及び/又は組成物を表す。すなわち機能的アンタゴニストにより、組織又は動物において応答が引き起こされ、その応答がアゴニストの作用に対抗する。例としては、細胞内二次メッセンジャーに対して、すなわち動物においては血圧に対して反対の効果を有する作用物質が挙げられる。機能的アンタゴニストは薬理学的な種類の応答に非常に似た応答をもたらす場合もある。
【0027】
「アリール」は6個〜15個の環原子を有する単環式、二環式又は三環式の一価芳香族炭化水素部分を表す。
【0028】
「任意で置換されたアリール」は、1つ又は複数のアリール環の水素がハロゲン化物、アルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ等の非水素置換基で置き換えられた、本明細書で規定されるようなアリール基を表す。2つ以上の置換基がアリール基に存在する場合、置換基はそれぞれ独立して選択される。
【0029】
「アリールオキシ」及び「アリールチオ」は、式−Z−Ar(式中それぞれ、Arは本明細書で規定されるようなアリールであり、ZはO及びSである)の部分を表す。
【0030】
「アラルキル」は、式−R(式中、Rは本明細書で規定されるようなアルキレン基であり、Rは本明細書で規定されるようなアリール基である)の部分を表す。アラルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「キラル中心」(すなわち立体化学中心、立体中心又は立体形成中心)は、非対称に置換された原子、例えば4つの異なる基が結合した炭素原子を表す。しかしながら、キラル中心の根本的な判断基準はその鏡像を重ね合わせることができないこと(nonsuperimposability)である。
【0032】
「シクロアルキル」は、3個〜20個の環炭素を有する通常飽和した単環式、二環式又は三環式の一価非芳香族炭化水素部分を表す。任意でシクロアルキルは環構造内において1つ又は複数、通常1つ、2つ又は3つの置換基で置換することができる。2つ以上の置換基がシクロアルキル基に存在する場合、置換基はそれぞれ独立して選択される。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、ノルボルニル、アダマンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
「(シクロアルキル)アルキル」は、式−R(式中、Rは本明細書で規定されるようなアルキレン基であり、Rは本明細書で規定されるようなシクロアルキル基である)の部分を表す。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルプロピル、3−シクロヘキシル−2−メチルプロピル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
「ハロ」、「ハロゲン」及び「ハロゲン化物」という用語は本明細書で区別なく使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0035】
「ハロアルキル」は、1つ又は複数の水素原子が同じ又は異なるハロ原子で置き換えられた、本明細書で規定されるようなアルキル基を表す。「ハロアルキル」という用語には、全てのアルキル水素原子がハロゲン原子で置き換えられた過ハロゲン化アルキル基も含まれる。ハロアルキル基の例としては、−CHCl、−CF、−CHCF、−CHCCl等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「ヘテロ置換アルキル」は、N、O又はS等のヘテロ原子を1つ又は複数含有する本明細書で規定されるようなアルキル基を表す。かかるヘテロ原子はヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノ、チオール、アルキルチオール等であり得る。
【0037】
「ヒドロキシアルキル」は1つ又は複数のヒドロキシル置換基を有するアルキル基を表す。
【0038】
「鏡像体過剰率」は鏡像体量の差異を表す。鏡像体過剰率の割合(%ee)を、他の鏡像体の割合から或る鏡像体の割合を減算することにより算出することができる。例えば、(R)−鏡像体の%eeが99%であり、(S)−鏡像体の%eeが1%である場合、(R)−異性体の%eeは、99%−1%すなわち98%である。
【0039】
「脱離基」は合成有機化学における脱離基、すなわち求核試薬によって置き換えることが可能な原子又は基と従来的に関連する意味を有し、ハロ(例えばクロロ、ブロモ及びヨード)、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ(例えばアセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(例えば2,4−ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ等を含む。
【0040】
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、一般的に安全で、非毒性であり、また生物学的にもまたそれ以外に関しても望ましくないことはない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を表し、獣医学的使用及びヒトへの薬学的使用に許容可能な賦形剤を含む。
【0041】
化合物の「薬学的に許容可能な塩」は薬学的に許容可能であり、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。かかる塩としては、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸により形成される、若しくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−(tertiary)ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等の有機酸により形成される、酸付加塩、又は(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、若しくはアルミニウムイオンで置き換えられるか、若しくはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等の有機塩基と配位する場合に形成される塩が挙げられる。
【0042】
「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」という用語は本明細書で区別なく使用され、かかるプロドラッグを哺乳動物被験体に投与するとin vivoで式Iによる活性のある親薬物を放出する任意の化合物を表す。式Iの化合物のプロドラッグを、in vivoで修飾(複数も可)が切断され、親化合物を放出することができるように、式Iの化合物に存在する1つ又は複数の官能基(複数も可)を修飾することにより調製する。プロドラッグとしては、式Iの化合物が挙げられるが、ここで、式Iの化合物におけるヒドロキシ基、アミノ基又はスルフヒドリル基は、in vivoで切断され、それぞれ遊離のヒドロキシ基、アミノ基又はスルフヒドリル基を再生することができる任意の基と結合する。プロドラッグの例としては、式Iの化合物におけるヒドロキシ官能基のエステル類(例えば酢酸誘導体、ギ酸誘導体及び安息香酸誘導体)、カルバメート類(例えばN,N−ジメチルアミノカルボニル)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「保護基」は、分子マスクにおいて反応基と結合した場合、その反応性を低減又は阻止する、アルキル基を除く部分を表す。保護基の例は、T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition, John Wiley & Sons, New York, 1999、及びHarrisonand Harrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8 (JohnWiley and Sons, 1971-1996)(その全体が参照により本明細書に援用される)に見ることができる。代表的なヒドロキシ保護基としては、アシル基、ベンジルエーテル類及びトリチルエーテル類、テトラヒドロピラニルエーテル類、トリアルキルシリルエーテル類及びアリルエーテル類が挙げられる。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチル基及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等が挙げられる。
【0044】
「対応する保護基」はそれが結合するヘテロ原子(すなわちN、O、P又はS)に対応する適切な保護基を意味する。
【0045】
「治療的に有効な量」は、疾患を治療するために哺乳動物に投与する場合、該疾患のかかる治療を達成するのに十分な化合物量を意味する。「治療的に有効な量」は化合物、疾患及びその重症度、並びに治療対象の哺乳動物の年齢、体重等によって変わる。
【0046】
疾患の「治療をすること」又は「治療」には、(1)疾患を予防すること、すなわち疾患に曝され得る、若しくは疾患の素因があり得るが、まだ疾患の症状を呈しない、若しくは示さない哺乳動物において、疾患の臨床症状を発現させないこと、(2)疾患を抑制すること、すなわち疾患若しくはその臨床症状の進行を停止させる若しくは低減させること、又は(3)疾患を緩和させること、すなわち疾患若しくはその臨床症状を退行させることが含まれる。
【0047】
化学反応を説明する場合、「処理する」、「接触させる」及び「反応させる」という用語は本明細書で区別なく使用され、示される及び/又は所望の生成物を生成するのに適切な条件下で2つ以上の試薬を添加又は混合することを表す。示される及び/又は所望の生成物を生成する反応は必ずしも初めに添加された2つの試薬の組合せに直接起因するものでなくてもよい、すなわち示される及び/又は所望の生成物の形成を最終的にもたらす混合物中で生成される中間体が1つ又は複数存在し得ることを理解するものとする。
【0048】
本明細書で使用される場合、「上で規定のもの」及び「本明細書で規定のもの」という用語は、可変のものに言及する場合、参照によりその可変のものの広い定義、並びに存在する場合、任意の狭い及び/又は好ましい、より好ましい、最も好ましい定義を包含する。
【0049】
「その誘導体又は類似体」という用語は、類似のコア構造から誘導され、又は類似のコア構造を有し、それらの用語の派生元である化合物の全ての生体活性を保持するそれらの化合物を表す。「全ての生体活性」という用語は、化合物について論ずる際に本明細書で言及される生体活性、例えばTLRアンタゴニスト特性等を表す。
【0050】
「慢性疼痛」は、特定のタイプの傷害又は疾患のプロセスと関連する自然治癒の時間的経過よりも長期間持続する疼痛を表す。
【0051】
「侵害受容性疼痛」は、損傷を患う身体部分を感知し、それに対して応答する神経と関連する疼痛を表す。侵害受容性疼痛(Nociceptivepain)は神経系外の傷害又は疾患により引き起こされる。侵害受容性疼痛は多くの場合、神経因性疼痛でより特徴的なより鋭い(sharper)外傷様疼痛とは異なる持続性の(on-going)鈍痛又は圧迫感である。侵害受容性疼痛は組織刺激、切迫傷害又は実傷害を伝達する。活性化すると、侵害受容性疼痛は疼痛シグナルを(末梢神経及び脊髄を介して)脳へと伝える。疼痛は通常、極めて限局性であり、持続し、多くの場合痛み又は拍動感(throbbing quality)を伴う。内臓疼痛は内部臓器に関わる侵害受容性疼痛のサブタイプである。内臓疼痛は一過性のものであり、限局性が低い傾向にある。侵害受容性疼痛は通常、時限的であり、例えば組織損傷が治癒すると、疼痛は通常消散する。(関節炎は顕著な例外であり、時限的ではない。)通常、侵害受容性疼痛はオピオイドによる治療に対して十分に応答する傾向にある。侵害受容性疼痛の例としては、捻挫、骨折、火傷、瘤、打撲、炎症(感染又は関節障害による)、閉塞及び筋膜疼痛(異常な筋緊張を示し得る)が挙げられる。
【0052】
概要
疼痛伝達能のために、ニューロンはこれまでに開発された全ての薬物療法の意図的な主要標的となってきた。概して、オピオイドはニューロンのオピオイド受容体で作用するだけで疼痛を変調し、かつオピオイドのアンタゴニストも同様にニューロン上でのみその効果を発揮すると考えられる。さらに、オピオイドの有害作用(例えば耐性、痛覚過敏、依存及び報酬等)及び有益作用(例えば鎮痛、咳止め等)はニューロンのオピオイド受容体に依存した、非常に類似した潜在的に切り離すことのできない機構により媒介されると従来より考えられている。
【0053】
これとは対照的に、本発明者らによって、中枢神経系の免疫適格細胞(グリア)、その受容体、及び分泌されるそのシグナル伝達因子が疼痛の処理及びオピオイド薬力学に関与することが示されている。特に、グリアは末梢神経傷害に応答して侵害受容の増大を開始及び維持する一定の役割を有することが示されている。近年、グリアが長期投与されたオピオイドの鎮痛作用を変調することもできることが示唆されている。したがって、本発明の幾つかの態様は、疼痛を変調(例えば低減又は排除)するためのグリアの薬理標的化(例えば変調)及びオピオイドの有効性の向上を提供する。
【0054】
本発明者らは、オピオイドがToll様受容体(TLR)と呼ばれるパターン認識受容体群のオピオイド誘導性の活性化による非古典的なオピオイド受容体形式での直接的なグリア活性化を引き起こすことも示している。TLRは神経因性疼痛、オピオイド耐性、オピオイド依存及びオピオイド報酬の重要なメディエーターである。このため幾つかの場合において、TLRをアンタゴナイズすることにより、神経因性疼痛が逆転し、オピオイド鎮痛及び非オピオイド鎮痛が高まる。鎮痛化合物、例えばオピオイドの有益作用(例えば古典的なニューロンのオピオイド受容体媒介性の鎮痛)及び有害作用(例えばグリア媒介性の副作用)、並びにそれらを変調する方法も本明細書に開示されている。
【0055】
グリア活性化は、神経因性疼痛、並びにオピオイド耐性、オピオイド依存及びオピオイド報酬の発生にも強く寄与する。このため、グリア活性化を弱めることが、神経因性疼痛を緩和し、オピオイド耐性、オピオイド依存及びオピオイド報酬の発生を低減する。オピオイド誘導性のグリア活性化は、非立体選択的なアゴニスト活性のために非オピオイド受容体を介して起こると考えられる。したがって、本発明の幾つかの態様は、TLR(例えばTLR2、TLR4、オピオイド鎮痛薬、非オピオイド鎮痛薬若しくはTLRアゴニストであることが知られる内因性の危険シグナルのいずれかと結合することができる他のTLR、又はそれらの組合せ)をアンタゴナイズする、若しくはTLRを遮断することにより、グリア活性化を弱めること、又は一般的にグリア活性化を低減することに関する。グリア活性化の低減は過度の(exaggerated)疼痛状態を軽減し、オピオイド鎮痛を高め、オピオイド耐性、オピオイド依存及びオピオイド報酬の発生を抑える。
【0056】
TLRと関連する幾つかの他の臨床病態としては、胃腸病変(例えば大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸疾患及びセリアック病)、心血管疾患(例えば炎症性心臓疾患、血管炎症、心筋虚血/再かん流傷害及びアテローム性動脈硬化症)、糖尿病(例えば糖尿病/インスリン耐性、(島細胞の破壊))、免疫関連病態(例えばアレルギー、喘息、湿疹、関節炎、狼瘡及び糸球体腎炎を含む自己免疫障害)、全身性病変(例えば一次敗血症又は二次敗血症、移植臓器拒絶及び肝毒性)、神経変性(例えば一般的にアルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及び老化を含む神経変性障害)、及び他の生理機能(例えば陣痛誘発、発熱、発作、癲癇及び癲癇発生)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって本発明の幾つかの態様はTLRのアゴニズムと関連する臨床病態を治療する方法を提供する。
【0057】
従来、グリア(星状膠細胞及び小膠細胞)はニューロンの構造支持体であり、中枢神経系(CNS)の恒常性を維持するのに重要なものであるとみなされてきた。グリアは軸索がなく、細胞間コミュニケーションにおける役割が発見されていなかったため、長い間疼痛研究において見過ごされてきた。宿主の生存における免疫監視、残屑の除去、並びに細胞外空間のイオン組成及び化学組成の調節を提供する際のCNSグリアの役割が既知である。しかしながら、多様な疼痛状態下においてグリアが関与している可能性については最近になって研究されたばかりである。疼痛調節におけるグリアの潜在的な役割に関する可能性がある指標の1つは星状膠細胞の活性化と神経因性疼痛との間の関連性(associative link)であった。例えば、神経因性疼痛を遮断した薬物はグリア活性化も低減した。
【0058】
活性化の際、小膠細胞及び星状膠細胞の機能は、従来の侵害受容性モジュレーター、例えば活性酸素種、一酸化窒素、プロスタグランジン、興奮性アミノ酸、成長因子及び炎症誘発性サイトカインを含む多種多様な神経興奮物質の産生及び放出を開始するという点で変わり、このことは最近になって認識されてきた。炎症誘発性サイトカインの中で主要なものはインターロイキン(IL)−1、IL−6及び腫瘍壊死因子−αである。理論によっては束縛されないが、脊髄グリアは中枢神経系におけるこれらの炎症誘発性サイトカインの主要な産生因子の1つであると考えられる。実際、脊髄グリアの活性化及びその後の炎症誘発性メディエーターの放出は、神経因性疼痛を含む多様な増強した疼痛状態の開始及び維持に関与すると考えられる。
【0059】
グリアを、神経因性疼痛を治療するための標的とすることができる場合、神経因性疼痛のグリア調節の点が数多く存在する。従来の疼痛療法は通常、ニューロンを介した疼痛シグナルの伝達を標的としてきたが、僅かしか成功していない。しかしながら、病変のニューロン成分を治療するだけではグリア成分は減衰せずに、疼痛シグナルを伝播するためにニューロンに情報伝達しようとする。グリアは、ニューロンを標的とする薬物による変調とは異なる経路/細胞内シグナル伝達カスケードによりニューロンを活性化させる可能性がある。おそらくこの解釈により、現行の疼痛療法が不運にも全体的に成功していないことを説明することができる。
【0060】
神経因性疼痛経路における初期工程の1つはグリアの活性化であると考えられる。多種多様なグリア活性化シグナルが同定されている。グリア活性化を開始するシグナル(複数も可)は送達される損傷原因(insult)に応じて変わり得る。ニューロンに放出される(neuronally-released)フラクタルキン、並びに従来のニューロン侵害受容性のモジュレーター及び伝達物質、例えば活性酸素種、一酸化窒素、プロスタグランジン、興奮性アミノ酸、P物質、ATP、成長因子及び炎症誘発性サイトカインを含む、グリア活性化のメディエーターの幾つかが十分に特徴付けられている。これらの事例の大部分において、既知の受容体媒介性の事象が特徴付けられている。
【0061】
神経因性疼痛において様々な点を、グリアが関与する神経因性疼痛を治療するための標的とすることができる。活性化シグナル又は一連の活性化シグナルがグリアを活性化するのに要求される。グリアの活性化は多くの場合、アンタゴナイズされる可能性がある細胞表面受容体により媒介される。「グリア活性化」という用語はグリアが炎症誘発性メディエーターを放出する状態を表す。この状態(すなわちグリア活性化)を変調する又は弱めることにより、グリア活性化又はその下流で起こる結果を遮断する様々な細胞事象を阻害することができる。抗炎症環境を生じさせることもでき、これにより、活性化シグナルが細胞を活性化するために越えなければいけない閾が増大する。
【0062】
炎症誘発性サイトカイン等の免疫炎症性メディエーターを、可溶性受容体(内因的に存在する)を使用すること、抗体を中和すること、又はサイトカインの活性型への成熟を低減させる若しくはサイトカイン分解速度を増大させる化合物により、目的とする受容体標的(シナプス前及び/又はシナプス後)に到達する前に中和することができる。ニューロン(シナプス前及び/又はシナプス後)に対する多くのグリア炎症性メディエーターの作用はニューロン受容体部位でアンタゴナイズされる可能性もある。疼痛シグナルの神経シグナル伝達(シナプス前及び/又はシナプス後)を低減する、現在利用されているニューロンを標的とした治療法は無数に存在する。
【0063】
本発明の幾つかの態様は、Toll様受容体(TLR)、例えばTLR2、TLR4、内因性の危険シグナルを認識する他のTLR、又はそれらの組合せにより中継されるシグナルを含む神経因性疼痛のイニシエーター及びメディエーターを変調することに関する。TLRは、危険シグナルであると考えられ、そのため宿主の生存を防御することを目的とする先天性免疫系の活性化を確実にする、外因性物質(例えば大腸菌及びサルモネラ菌等のグラム陰性細菌のリポ多糖(LPS))及び内因性物質(例えば損傷細胞から放出される熱ショックタンパク質及び細胞膜成分)上の広範な部分又は「パターン」を認識するおよそ10個の単一の膜透過受容体のファミリーである。TLR4は、LPSを認識するTLRであるとして広く特徴付けられている。アゴニストとTLRとの結合は下流の細胞内シグナル伝達経路を活性化し(そのコグネート受容体とのIL−1結合と同様に)、それにより炎症誘発性シグナルが生じる。
【0064】
本発明の幾つかの態様は、TLR2、TLR4、オピオイド鎮痛薬、非オピオイド鎮痛薬若しくはTLRアゴニストであることが知られる内因性の危険シグナルのいずれかと結合することができる他のTLR、又はそれらの組合せを変調する。本明細書で開示のように、広範の化学的に多様な化合物はTLR2、TLR4、上記のような他のTLR、又はそれらの組合せを変調することができる。理論によっては束縛されないが、例としてTLR2及びTLR4を用いると、TLR2及びTLR4は、損傷した、死滅しつつある及び死滅したニューロン及び他の細胞により放出される内因性の危険シグナル(宿主のDNA及びRNA、熱ショックタンパク質、細胞膜成分等)、並びに組織傷害のより一般的な態様(血漿タンパク質、細胞外基質分解産物等)を認識し、これらに応答するための幾つかの(ただし全てではない)重要なTLRであると考えられる。本発明者らは、正常ラットにおける選択的なTLR4アンタゴニストの急性くも膜下投与が慢性狭窄傷害により誘導される確立された神経因性疼痛を抑制することを示している。
【0065】
末梢神経傷害により、損傷した感覚ニューロンの近位軸索における熱ショックタンパク質の持続的な発現及びシナプス前終末の分解がもたらされる。中枢神経系における神経変性は数ヶ月から数年かけてゆっくりと起こる。そのため、神経傷害の結果として発生される内因性の危険シグナルが少なくともTLR2及びTLR4の固執性の(perseverative)活性化、またそれによる神経因性疼痛を維持するための固執性の動因(drive)を生じる可能性があることが明らかである。理論によっては束縛されないが、少なくともTLR2及びTLR4の並行活性化は、脊髄傷害による疼痛、脳卒中後の疼痛、多発性硬化症による疼痛及び中枢神経系起源の他の疼痛において起こることが予測され、かつそれらの原因となると考えられる。したがって、グリア活性化の変調を、神経因性疼痛を治療するのに使用することができる。
【0066】
本発明の幾つかの態様は、神経因性疼痛の制御のためにTLRを変調する(例えばTLRをアンタゴナイズする)ことができる化合物及び組成物を提供する。TLR2、TLR4及び他のTLRが内因性の危険シグナルの存在を伝達することができることを踏まえると、本発明の幾つかの実施形態は、TLR2、TLR4、他のTLR、又はそれらの組合せを変調する化合物及び組成物を提供する。幾つかの実施形態では、本発明の化合物及び組成物は血液脳関門に対して透過性である。
【0067】
オピオイド受容体がオピオイドの(−)−異性体と選択的に結合する。本発明者らは、多種多様な化合物がTLR4のLPS誘導性の活性化を遮断することが可能であることを見出している。NF−κBレポーター遺伝子(分泌型胚アルカリホスファターゼ、SEAP)の安定した同時トランスフェクションを伴うTLR4を安定してトランスフェクトした細胞株(Invivogen)を使用して、本発明者らは、TLR4におけるLPS活性の重要な非競合的アンタゴニズムを見出している。
【0068】
また本発明の化合物は全身投与後のCCI誘導性の異痛を逆転させる。かかる結果は、血液脳関門浸透性の小分子を、in vivoでTLR4活性をアンタゴナイズするのに使用することができることを示す。加えて、小分子によるTLR4アンタゴニズムはCCI誘導性の異痛を逆転させることができる。これらのデータは、神経因性疼痛におけるTLR4受容体の役割も示している。本発明の化合物のオピオイド活性の欠如のために、オピオイド鎮痛は影響を受けないと考えられる。理論によっては束縛されないが、本発明の化合物はTLR4受容体をアンタゴナイズすることにより神経因性疼痛を逆転させると考えられる。
【0069】
本発明の化合物は確立された異痛及び他の神経因性疼痛も逆転させる。理論によっては束縛されないが、この活性はTLR4アンタゴニストとしてのその作用により達成されると考えられる。
【0070】
疼痛の増大をもたらすグリア活性化の様式は送達される損傷原因に応じて変わり得る。このため、神経因性疼痛に対する有効な治療は通常、どのグリア活性化シグナル(複数も可)が疼痛経路に関与するかによって変わる。より広範な治療アプローチは既存のグリア活性化、及び/若しくは活性化したグリアにより放出される産物の生成を阻害する又は弱めることである。幾つかの場合において、本発明の化合物は、鎮痛を生じることなく、神経因性疼痛を逆転させ、動物を通常の基本的な疼痛応答性に戻す。そのため、これらの治療は全て抗異痛性及び/又は抗痛覚過敏性であり、基本的な侵害受容には影響を与えない。
【0071】
活性化状態でグリアにより放出される炎症性メディエーター及び侵害受容促進性(pro-nociceptive)メディエーターが数多く存在する。したがって、それぞれのメディエーターを臨床的にアンタゴナイズ又は中和することには限界がある。しかしながら、幾つかの場合において、炎症誘発性サイトカインはグリアによる疼痛の増大における因子の1つであると思われる。幾つかの場合において、主要な炎症誘発性サイトカイン(例えばIL−1、IL−6、腫瘍壊死因子−α)の作用を中和すること又はそれらの受容体をアンタゴナイズすることが、神経因性疼痛を阻止し、逆転させるのに良好な戦略であることが判明した。
【0072】
末梢神経障害に応答して観察されるグリア活性化と、長期のオピオイド曝露後のグリア活性化との間に類似性があることが観察されている。オピオイドのアゴニストがTLR2、TLR4、他のTLR、又はそれらの組合せを活性化し、本発明の化合物がこれらの受容体のうちの1つ又は複数を非立体選択的に遮断することも観察されている。
【0073】
本発明者らによって、TLRが神経因性疼痛とオピオイド誘導性のグリア活性化との両方に関与することが見出されている。したがって、本発明の幾つかの態様は、TLRアンタゴニスト又はこれを含む組成物を投与することにより、神経因性疼痛、オピオイド誘導性のグリア活性化、又はそれらの組合せを変調する方法を提供する。幾つかの実施形態では、TLRアンタゴニストはニューロンに対するオピオイドのアゴニストの疼痛抑制効果を大きく損なうことはない。
【0074】
1979年のT細胞機能のモルヒネによる変調の発見以来、多くの研究が、オピオイド曝露が宿主防御の従来的役割における免疫系の機能化に及ぼす影響を特徴付けることに焦点を合わせてきた。しかしながら、免疫適格細胞の活性化状態がオピオイド作用に及ぼす影響は最近になって研究されたばかりである。オピオイドによる末梢免疫細胞機能の変調は宿主防御を理解するのに重要であるが、これらの細胞はグリアほどオピオイド薬力学に対する顕著な効果を有する可能性は高くない。オピオイド鎮痛に対する効果を媒介する免疫適格細胞は通常、後根神経節、脊髄及び脳のグリアである。末梢免疫細胞は多くのTLR媒介性の臨床疾患、例えばクローン病に関わっている。
【0075】
オピオイド誘導性のグリア活性化とオピオイド耐性の発生との間の因果関係が最近になって認識されている。長期のモルヒネ投与後に、少なくとも一部はグリア活性化の結果として、耐性及びモルヒネ誘導性の痛覚過敏が生じると考えられている。かかる作用の主な原因であるとして提唱されている機構の1つは、炎症誘発性サイトカインの下流での上方調節を伴う一酸化窒素誘導性のp38 MAPK活性化によるものである。インターロイキン−1、インターロイキン−6及び腫瘍壊死因子はモルヒネ鎮痛に対抗する。
【0076】
モルヒネは、侵害受容性ニューロン上の古典的なオピオイド受容体でだけでなく、これを産生するグリア活性化シグナル、又は侵害受容の増大をもたらす事象の少なくとも同様のカスケードとしても作用すると考えられている。モルヒネのニューロン抗侵害受容活性とその侵害受容促進性のグリア活性化との組合せ(sum)が鎮痛の正味の低減をもたらす。さらに、グリア活性化が長期間のオピオイド治療とともに増大し、鎮痛耐性の増大をもたらす。また、オピオイド誘導性のグリア活性化は、長期のオピオイド投与に起因する非定型異痛及び痛覚過敏に強く寄与する。本発明者らによって、IL−1及び他の炎症誘発性サイトカインが全身投与又はくも膜下投与のいずれかの後数分以内にモルヒネ鎮痛に対抗することが見出されている。
【0077】
本発明者らは、神経傷害誘導性の異痛を逆転させる作用物質を、これらの同じ作用物質がモルヒネ鎮痛も変調するかどうかを規定するために使用することにより、神経障害誘導性のグリア活性化とオピオイド誘導性のグリア活性化との間の類似性を観察している。本発明者らは、グリア活性化を抑制すること、又は炎症誘発性のグリア産物を中和若しくはアンタゴナイズすることのいずれかにより神経因性疼痛に対抗する作用物質が、急性及び慢性の両方のモルヒネ鎮痛のグリアによる減衰にも対抗することを発見している。モルヒネの有効性を、オピオイド誘導性のグリア活性化を標的とすること、又は炎症誘発性サイトカインの作用を中和若しくはアンタゴナイズすることにより高めることができる。
【0078】
グリアの活性化は古典的な「ニューロン様」オピオイド受容体によっては媒介されないと考えられる。本発明者らは、TLRアンタゴニストを使用したグリア活性化における非古典的オピオイド受容体の関与を発見しており、この非古典的オピオイド受容体は古典的なオピオイド受容体活性を有さず、かなりのグリア活性化、異痛及び痛覚過敏、並びに炎症誘発性サイトカインのmRNA、タンパク質及びそれらの放出の上方調節を引き起こす。グリアには古典的なオピオイド受容体を発現するものもある。しかしながら、オピオイド曝露に起因する免疫変調はこれらの受容体によっては媒介されないと考えられる。
【0079】
本発明の幾つかの態様は、例えば(−)−オピオイド誘導性のグリア活性化、及び結果として起こる抗鎮痛性の炎症誘発性サイトカインの増大を遮断することにより、(−)−オピオイド(例えばモルヒネ)鎮痛を高めるためにTLRアンタゴニストを使用する方法を提供する。幾つかの実施形態では、TLRアンタゴニストは急性及び慢性の両方の(−)−オピオイド鎮痛を強く高めた。
【0080】
理論によっては束縛されないが、疼痛を治療する際に使用される(−)−オピオイドは、TLR2、TLR4、他のTLR、又はそれらの組合せのアゴニストであると考えられる。例えば、幾つかの臨床的に利用される(−)−オピオイドを試験した場合、それらは全て、TLR4アゴニストであることが見出された。これらのオピオイドのTLR4アゴニストにはとりわけ、モルヒネ、メタドン、オキシコドン、ブプレノルフィン、フェンタニル及びペチジン/メペリジンが含まれていた。
【0081】
概して、任意のTLR4アンタゴニスト(例えばオキシカルバゼピン、ベンラファキシン又は他のセロトニン/ノルエピネフリン再取込み阻害剤)を、薬物による、内因性分子(内因性の危険シグナル)による及び外来分子(細菌等)によるTLR活性化を遮断するために使用することができる。概して、TLR4アンタゴニストは、TLR4を活性化するどのような手段によってTLR4アゴニズムを遮断するのにも有用である。
【0082】
グリアのTLRのオピオイド誘導性の活性化を標的とすることにより、本発明者らは、この望ましくない態様のグリア活性化を低減する、又はこの望ましくない態様のグリア活性化がオピオイド誘導性の耐性、異痛及び痛覚過敏へと進行するのを防ぐことができた。有益なニューロン誘導性のオピオイド鎮痛はオピオイド誘導性のグリア活性化によっては妨げられない。
【0083】
少なくともTLR4は、オピオイド投与の侵害受容促進効果に強く寄与するオピオイド誘導性のグリア活性化の一部(component)の開始に関与すると考えられている。したがって、本発明の幾つかの態様は、TLRアンタゴニストを投与することによりオピオイド投与の侵害受容促進効果を低減する方法を提供する。
【0084】
幾つかの非選択的な免疫抑制治療がモルヒネ離脱挙動を改善することが観察されている。加えて、モルヒネ離脱中の疼痛の増大におけるグリアの関与がIL−1受容体アンタゴニスト又はIL−10により遮断される。
【0085】
モルヒネの依存性を漸増させる投薬計画によるTLRアンタゴニストの同時投与はナロキソン誘発性の離脱挙動を大きく低減させた。さらに、オピオイド作用と関連する脳核におけるグリア活性化の対応する低減が存在した。
【0086】
別の実験において、TLRアンタゴニストは、離脱誘導性の自発的な活動レベルの抑制及び体重の減少に反映されるように、これまでに確立された依存性及び自発的な離脱から保護することが見出された。これらのデータは、オピオイド誘導性のグリア活性化がモルヒネ依存の発生及び離脱挙動の誘発に関わることを示している。したがって、本発明の幾つかの態様は、TLRアンタゴニストを投与することにより、オピオイド依存、オピオイド離脱挙動、又はそれらの組合せを低減する方法を提供する。例えば、本発明者らは、TLRアンタゴニストの同時投与が離脱挙動を大きく低減させ、モルヒネ誘導性の体重減少を弱めたことを観察している。
【0087】
上述のように、TLRはモルヒネの強化作用及び付加作用を媒介する。このため、本発明の他の態様はオピオイドの有益作用を増大する、望ましくない効果を低減する、又はそれらの組合せのための方法を提供する。本発明のかかる態様は多くの場合、グリア活性化を標的とする。例えば、TLRアンタゴニストの同時投与がモルヒネ報酬の大幅な低減をもたらすことが観察された。
【0088】
理論によっては束縛されないが、TLR依存性のグリア活性化が神経因性疼痛をもたらすと考えられる。したがって、本発明の幾つかの態様はTLR依存性のグリア活性化を変調する(例えば低減する又は阻止する)ことにより、神経因性疼痛を低減する方法を提供する。1つの特定の実施形態はTLRアンタゴニストの投与を伴う。
【0089】
またTLR依存性のオピオイド誘導性のグリア活性化がオピオイド効果をもたらす、例えばオピオイド(例えばモルヒネ)鎮痛を低減し、オピオイド依存及びオピオイド報酬を生じ、呼吸抑制を引き起こすと考えられている。そのため、本発明の他の態様はオピオイド効果、例えばオピオイド鎮痛の低減、オピオイド依存、オピオイド報酬、又はそれらの組合せを低減又は阻止する方法を提供する。1つの特定の実施形態はTLRアンタゴニストの投与を伴う。
【0090】
本発明者らは、神経因性疼痛において、及びオピオイド暴露中にTLRをアンタゴナイズすること又はグリア活性化を弱めることは、オピオイド鎮痛の有効性を維持しながら、少なくとも部分的に異痛を逆転させ、望ましくないオピオイド副作用を低減することも発見している。オピオイドの負の(すなわち望ましくない)副作用は、例えばTLRアンタゴニスト等の血液脳関門浸透性の薬物療法を用いて、オピオイド誘導性のグリア活性化を標的とすることにより、有益作用と切り離すことができる。
【0091】
またグリア活性化が幾つかの乱用化合物の報酬能に少なくとも部分的に関与すると考えられる。そのため、グリア活性化は患者の薬物乱用傾向の予測因子である。このことが関係し得る患者集団の例としては、HIV/AIDS、ストレス及びうつ病等が挙げられる。これらの場合の全てで、薬物乱用には大きな関心が持たれる。したがって、本発明の幾つかの態様はグリア活性化のアンタゴニストを投与することにより薬物乱用を低減又は阻止する方法を提供する。
【0092】
化合物
本発明の幾つかの態様は、式:
【化5】

及び
【化6】

(式中、
n及びmはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、
はそれぞれ独立して、アルコキシド、任意で置換されたアルキル又はアルケニルであり、
はO、NR又はSであり、
は−OR、−SR又は−NRであり、
はそれぞれ独立して、ハロゲン化物又はアルコキシドであり、
、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
及びYはそれぞれ独立してO又はSであり、
及びYはそれぞれ独立してO、S又はNRであり、
はCH又はNであり、
、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
11はシクロアルキル又はアルキルであり、
12はアルキル、任意で置換されたアリール又はシクロアルキルである)からなる群から選択される化合物を提供する。
【0093】
幾つかの実施形態では、該化合物は式:
【化7】

(式中、
m及びnはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、典型的にはm及びnはそれぞれ独立して0〜4の整数であり、多くの場合m及びnはそれぞれ独立して0〜2の整数であり、
、X、X、X、R、R及びRは本明細書で規定されるものである)を有する。これらの実施形態内では、幾つかの場合、XがOである。更に他の場合でXが−OHである。また他の場合でR、R及びRがアルキルである。典型的には、R、R及びRがメチルである。また他の場合でXがアルコキシド、ヘテロ置換アルキル又はアルケニル−アルキルである。多くの場合、Xがメトキシド、メトキシエチル又はアリルである。更に他の場合でXがアルコキシド、Cl又はFである。典型的には、Xがメトキシド又はClである。
【0094】
他の実施形態では、該化合物は式:
【化8】

(式中、
及びYはOであり、
11、R12、Y、Y及びYは本明細書で規定されるものである)を有する。これらの実施形態内では、幾つかの場合、YがNRである。典型的にはRが水素である。更に他の場合でYがO又はNHである。また他の場合でR11がアダマンチル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル又は1−エチルプロピルである。他の場合でR12がアルキル、アダマンチル、シクロヘキシル又は任意で置換されたフェニルである。多くの場合、R12がiso−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル、メトキシフェニル又はクロロフェニルである。
【0095】
本明細書に記載の様々な実施形態の組合せが他の実施形態を形成することを認識するものとする。このため、多種多様な化合物、組成物及び方法が本発明内で例示される。
【0096】
本発明の他の態様は、式I及び/若しくは式IIの化合物、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはプロ−ドラッグを含む組成物を提供する。
【0097】
合成
本発明の化合物を、利用可能な出発材料から容易に調製することができる。本発明の化合物における様々な置換基は、出発化合物に存在していても、既知の置換の方法又は変換反応により中間体のいずれか1つに付加しても、又は最終生成物の形成後に付加してもよい。例えば、ニトロ基をニトロ化により付加することができ、ニトロ基を他の基、例えば還元によりアミノ基、並びにアミノ基のジアゾ化及びジアゾ基のハロゲンへの置き換えにより、又は単純にハロゲン化反応によりハロゲンへと変換することができる。アシル基をフリーデル・クラフツアシル化により付加することができる。それからウォルフ・キッシュナー還元及びクレメンゼン還元を含む様々な方法により、アシル基を対応するアルキル基に変換することができる。アミノ基をアルキル化して、モノアルキルアミノ基及びジアルキルアミノ基を形成することができ、メルカプト基及びヒドロキシ基をアルキル化して、対応するエーテルを形成することができる。第1級アルコールを当該技術分野で既知の酸化剤により酸化して、カルボン酸又はアルデヒドを形成することができ、第2級アルコールを酸化して、ケトンを形成することができる。このようにして、置換反応又は修飾(alteration)反応を利用して、単離生成物を含む、出発材料、中間体、又は最終生成物の分子を通じて多種多様な置換基を得ることができる。
【0098】
さらに当業者に明らかなように、従来の保護基は或る特定の官能基が望ましくない反応を受けることを防ぐのに必要とされ得る。特定の官能基に好適な保護基、並びに保護及び脱保護に好適な条件の選択は当該技術分野で既知である。例えば、多くの保護基、並びにその導入及び除去については、T. W. Greene and G. M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis,3rd ed., John Wiley & Sons, New York, 1999、及びそこに言及されている参考文献(これらは全て、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0099】
本発明の化合物は必然的に存在する或る特定の置換基を有し得るため、当然ながらそれぞれの置換基の導入は関連する具体的な置換基及びそれらの形成に必要とされる化学的性質に応じて変わる。このため、1つの置換基が第2の置換基を形成する際にどのように化学反応の影響を受けるかについての検討には当業者にとって精通した技法が含まれる。これは更に関連する環に応じて変わる。
【0100】
幾つかの場合において、本発明の化合物のラセミ混合物を調製することができ、所望の(+)−異性体又は(−)−異性体を、当業者に既知の多種多様なキラル分割法のいずれかを使用して分割又は分離する(すなわち鏡像異性的に濃縮する)ことができる。かかる分割法については例えば、the four volume compendium Optical Resolution Procedures for ChemicalCompounds: Optical Resolution Information Center, Manhattan College, Riverdale,N.Y.、及びEnantiomers, Racemates and Resolutions, JeanJacques, Andre Collet and Samuel H. Wilen; John Wiley & Sons, Inc., NewYork, 1981(これらはその全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0101】
幾つかの分割法では、ラセミ混合物を相対的に鏡像異性的に純粋な部分の化学的又は酵素的な結合によりジアステレオマー(diastereomers)混合物へと変換する。鏡像体とは異なり、ほとんどのジアステレオマーは、異なる物理特性、例えば溶解性、沸点、親和性(例えばクロマトグラフィカラム及び酵素に対する)等を有する。これらの異なる物理特性を用いて、例えば分別晶出、蒸留、クロマトグラフィ、酵素を使用した速度論的分割等により或るジアステレオ異性体を別のジアステレオ異性体と分離することができる。
【0102】
代替的に、化合物を鏡像異性的に純粋な又は濃縮された出発材料から鏡像選択的(enantioselectively)に合成することができる。
【0103】
本発明の化合物がオレフィン部分を含有し、かかるオレフィン部分がシス立体配置又はトランス立体配置のいずれかであり得る場合、主生成物として選択的にシス−オレフィン又はトランス−オレフィンを生成するために、該化合物を合成することができる。代替的に、オレフィン部分を含有する化合物を、シス−オレフィンとトランス−オレフィンとの混合物として生成し、既知の手法を用いて、例えばW.K. Chan, et al., J. Am. Chem. Soc., 1974, 96, 3642(これはその全体が本明細書に援用される)に記載のクロマトグラフィにより分離することができる。
【0104】
本発明の化合物は、塩基性のアミノ官能基が存在する場合は、酸と塩を形成し、酸官能基、例えばカルボン酸又はリン酸が存在する場合は、塩基と塩を形成する。かかる塩は全て、新たな生成物の単離及び/又は精製に有用である。酸及び塩基の両方との薬学的に許容可能な塩が特に価値を有する。好適な酸としては例えば、薬学的に許容可能な塩酸、シュウ酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸等が挙げられる。薬学的使用のための塩基性塩としてはNa塩、K塩、Ca塩及びMg塩が挙げられる。
【0105】
多くの本発明の化合物を生成する方法は、化学情報検索サービスデータベース、例えばCASオンラインを検索することにより容易に入手することができる様々な学術論文から容易に利用可能である。
【0106】
医薬組成物
本発明の化合物を所望の生理効果を達成するために患者に投与することができる。通常、患者は哺乳動物、多くの場合ヒトである。該化合物を選択された投与経路、すなわち経口経路又は非経口経路に適した多種多様な形態で投与することができる。これに関して非経口投与には、以下の経路による投与が含まれる:静脈内経路;筋肉内経路;皮下経路;眼内経路;滑液嚢内経路;経皮経路、眼経路、舌下経路及び頬側経路を含む経上皮経路;眼経路、皮膚経路、眼球経路、直腸経路及び吸入(例えば送気及びエアロゾルによる)を含む局所経路;腹腔内経路;直腸全身経路、及び中枢経路(例えば髄腔内経路、例えば脊髄周囲の脳脊髄液への経路、及び脳又は脳のCSFへの脳内経路)。
【0107】
活性のある化合物を、例えば不活性希釈剤とともに若しくは吸収可能な食用担体とともに経口投与することができ、又は活性のある化合物を硬殻ゼラチンカプセル又は軟殻ゼラチンカプセルに封入することができ、又は活性のある化合物を錠剤に圧縮することができ、又は活性のある化合物を食事の食品とともに直接組み込むことができる。経口療法投与のために、活性のある化合物を、賦形剤とともに組み込み、摂取可能な錠剤、頬側錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハ等の形態で使用することができる。かかる組成物及び調製物は少なくとも0.1%の活性のある化合物を含有し得る。当然ながら組成物及び調製物の割合は変えることができ、従来的に約1%〜約10%の重量単位であり得る。かかる治療的に有用な組成物における活性のある化合物の量は、好適な投薬量が得られるようなものである。好ましい本発明による組成物又は調製物は、経口投薬単位形が約1mg〜約1000mgの活性のある化合物を含有するように調製される。
【0108】
錠剤、トローチ、ピル、カプセル等は以下のものも含有していてもよい:トラガカントゴム、アカシアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑剤;及びスクロース、ラクトース若しくはサッカリン等の甘味料、又はペパーミント、冬緑油若しくはチェリー香料等の香味剤。投薬単位形がカプセルである場合、該投薬単位形は上記のタイプの材料に加えて、液体担体を含有することができる。様々な他の物質がコーティングとして、又はそれ以外にも投薬単位の物理形態を変更するために存在していてもよい。例えば、錠剤、ピル又はカプセルにシェラック、糖又はその両方をコーティングすることができる。シロップ又はエリキシルは、活性のある化合物と、甘味剤としてスクロースと、保存料としてメチルパラベン及びプロピルパラベンと、着色料と、チェリー香料又はオレンジ香料等の香味剤とを含有することができる。当然のことながら、任意の投薬単位形を調製する際に使用される任意の材料は、用いられる量で薬学的に純粋であり、実質的に非毒性であるものとする。加えて、活性のある化合物を持続放出調製物及び製剤に組み込むことができる。
【0109】
活性のある化合物を非経口投与することもできる。遊離塩基又は薬学的に許容可能な塩として活性のある化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と好適に混合した水の中で調製することができる。分散液をグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその混合物中で、並びに油中で調製することもできる。保存及び使用の通常条件下で、これらの調製物は微生物の成長を防ぐために保存料を含有する。
【0110】
注射使用に好適な医薬形態には、滅菌した水溶液又は分散液及び滅菌した注射用の溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は滅菌状態でなければならず、注射が容易な程度に流体でなければならない。この形態は製造及び保存の条件下で安定となることができ、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、その好適な混合物、及び植物油を含有する分散媒体の溶媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合に要求される粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の活動の阻止は様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によりもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むのが好ましい。吸収を遅延する作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの注射用組成物の持続的吸収。
【0111】
滅菌した注射用溶液は、上に列挙された様々な他の成分とともに適切な溶媒中に所要量の活性のある化合物を組み込み、その後必要に応じて滅菌濾過することにより調製される。概して、分散液は塩基性の分散媒体と上に列挙されたもの由来の要求される他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに様々な滅菌した活性成分を組み込むことにより調製される。滅菌した注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥技法及び凍結乾燥技法であり、これらにより予め滅菌ろ過した溶液から活性成分と、任意の更なる所望の成分との粉末が得られる。
【0112】
本発明の治療用化合物を哺乳動物に単独で又は上述のような薬学的に許容可能な担体と組み合わせて投与することができ、その割合は化合物の溶解性及び化学的性質、選択される投与経路、並びに標準的な薬務により決定される。
【0113】
医師は予防法又は治療に最も好適な本発明の治療剤の投薬量を決定し、その投薬量は投与形態及び選択される特定の化合物によって変わり、また治療下にある特定の患者によっても変わる。医師は一般的に、少ない投薬量から治療を開始し、その状況下で最適な効果が達成されるまで投薬量を徐々に増やそうと考える。治療投薬量は一般的に、約0.1mg/日〜約1000mg/日、好ましくは約10mg/日〜約100mg/日、又は1日で体重1Kgあたり約0.1mg〜約50mg、好ましくは1日で体重1Kgあたり約0.1mg〜約20mgとすることができ、本発明の治療剤を幾つかの異なる投薬単位で投与することができる。約2倍〜約4倍程度のより高い投薬量が経口投与で要求される場合がある。
【0114】
本発明の更なる目的、利点及び新規の特徴は、限定の意図を有しない以下の実施例を検討すれば当業者にとって明らかになる。実施例では、積極的に実行に移される手法は現在時制で記載されており、研究所で行った手法は過去時制で記載されている。
【実施例】
【0115】
グリアはアヘン剤(例えばモルヒネ、メタドン、メペリジン及びオキシコドン)により活性化され、このオピオイド誘導性のグリア応答はオピオイド鎮痛を抑制し、このことがオピオイド耐性及びオピオイド依存の発生の一因であると考えられている。本発明者らはオピオイド誘導性のグリア活性化がtoll様受容体4(TLR4)シグナル伝達経路により調節されることを発見している。TLR4はそのアクセサリータンパク質の骨髄分化因子2(MD−2)と複合体を形成して機能する膜貫通受容体である。本発明者らによるオピオイドがTLR4と相互作用するというこの発見により、現在のオピオイドベースの疼痛管理療法を改善することができる化合物の開発が為された。
【0116】
TLR4は、11個を超える同種成員を含むI型内在性膜糖タンパク質群であるTLRタンパク質ファミリーの表面受容体である。異なるTLRの刺激が異なる遺伝子発現パターンを誘導し、これにより先天性免疫の活性化がもたらされるだけでなく、抗原特異的な後天性免疫の発生が指示される。TLR4は、リポ多糖(LPS、古典的なTLR4アゴニスト及びグラム陰性細菌の細胞壁の構成要素)を検出し、このため先天性免疫系の活性化に重要であると考えられる。中枢神経系(CNS)内では、TLR4は、ニューロンによっては発現されず、主にグリア(大部分は小膠細胞であるが、一部の星状膠細胞も)により発現されると考えられる。これらのグリアはCNS先天性免疫応答に重要な免疫適格細胞である。ニューロンとグリアとの間の機能的差異が、ニューロンに影響を与えることなくグリアを選択的に標的化することが可能であることを示す。この選択性により、モルヒネの鎮痛効果を高める方法が可能となった。幾つかの実施形態では、モルヒネのグリア活性化の副作用を抑制するが、ニューロンでの鎮痛効果を持続することにより、オピオイド耐性及びオピオイド中毒の発生に寄与する経路を同時に阻害しながら、モルヒネの活性を改善することが可能である。
【0117】
TLR4/MD−2の相互作用は、該相互作用がTLR4シグナル伝達経路の一部であるため、魅力的な治療標的の1つである。さらに、MD−2は、TLRファミリータンパク質の中でも主にTLR4と相互作用する。かかる所見により、小分子モジュレーター(例えば阻害剤)に対する選択性及び特異性が認められる。幾つかの実施形態では、化学生物学的アプローチを使用して、TLR−4/MD−2界面を標的とする2つの小分子プローブ(各タンパク質結合パートナーを標的とする)を使用することにより、創薬に関する有効な標的としてTLR4/MD−2複合体を確立した。in vitro研究及びin vivo研究の両方が分子の有効性を示した。これらの結果はオピオイド誘導性のグリア活性化を消失させるための新たな戦略を示す。かかる戦略はオピオイド依存及びオピオイド耐性の発生を研究する手段も提供する。
【0118】
TLR4媒介性のグリア活性化を研究するための小分子プローブを特定するために、本発明者らはTLR4/MD−2複合体の高分解能X線構造を使用した。コンピューター内でのハイスループットスクリーニング法を、TLR4シグナル伝達経路の選択的な阻害剤を特定するために開発した。該方法を、該戦略を実証し、かつ有用な化学プローブを特定する機会を最大にするために、複合体中の両方のタンパク質に適用し、タンパク質間の界面を標的とした。MD−2(PDB ID 2E56、分解能2.00Å)の高分解能構造から開始し、様々なタンパク質立体構造を用いて表されるそれぞれのタンパク質標識を確立するために、まずタンパク質を分子動力学計算の実行(dynamics run)によりほどく。TLR4の構造をヒトTLR4とリンパ球抗原96(PDB ID 2Z65、分解能2.70Å)との複合体から導く。
【0119】
仮想スクリーニングのためのリガンドの構造を、100万個の薬物様小分子作用物質を含有するENAMINEのスクリーニングコレクションライブラリから導く。まずライブラリを、QUANTUMにより実行されるジャービス・パトリックアルゴリズムを用いてクラスタ化する。分子間の相違(「距離」)の評価尺度を、分子のDaylightフィンガープリントを用いて算出したTanimoto類似性により決定した。水性環境でのタンパク質−リガンド複合体全体に対する自由エネルギー摂動分子動力学計算の実行を、本発明者らが開発した連続溶媒和モデルを用いて行った。この方法は、極性液体の自由エネルギーを算出するのに正確性が高いことが証明されている。このモデリングにより、おおよそ10kの適切な分子量を有する代表的なクラスタのフォーカストライブラリ(focused library)が得られた。選択された化合物は全てENAMINEが供給するsdfファイルから抽出し、バッチモードでのQUANTUMの構造回復及び構造分類(typization)ソフトウェアコンポーネントにより処理し、続くドッキングのために準備した。続く分子動力学シミュレーションのために最適クラスタ重心とともにこの出力結果を選択した。加えて、特定したヒットの「フィンガープリント」を、これらをヒトプロテオーム全体を表すタンパク質(様々なタンパク質ファミリーから選択されるおよそ500個の代表的タンパク質)の元のパネル、並びにこのパネルからのあらゆるタンパク質/小分子及びタンパク質/タンパク質複合体に関する回収したIC50データにドッキングすることによりプロファイリングした。これらの更なるドッキングを行うことにより、2つのタンパク質に対する選択性及び特異性が高い阻害剤を特定する可能性が増大した。モデリングにより、化合物A−1が10μM未満のIC50の算出値でTLR4と結合し、化合物A−2が強力なMD−2アンタゴニストであることが示された。図1を参照されたい。
【0120】
これらの化合物をスキーム1及びスキーム2に示されるように合成した。化合物A−2を1,4−ジフェニレンジアミン(2−2)の反復アシル化により2工程で調製した。化合物A−1の合成をピラゾール(1−3)のアルキル化、その後のマンニッヒ様反応により達成し、四置換ピラゾール誘導体(1−5)を得た。最後に、化合物1−5のアミノ官能基による化合物1−2のエポキシド開環(opening)により化合物A−1を得た。
【化9】

Aceton:アセトン
reflux:還流
scheme 1:スキーム1
【化10】

1,4-dioxane:1,4−ジオキサン
scheme 2:スキーム2

【0121】
これらの化合物を、in vitro及びin vivoでのTLR4シグナル伝達経路の阻害に関しても評価した。プルダウンアッセイにより、化合物A−1及び化合物A−2がTLR4/MD−2相互作用を妨害したことが示された。HeLa細胞を、FLAG−sTLR4及びMD−2−FLAG−Hisに関する発現ベクターにより同時トランスフェクトした。MD−2/TLR4タンパク質複合体を、ニッケル樹脂を使用して培養上清から精製し、SDS−PAGEで分離して、FLAGタグに対する免疫ブロッティングにより検出した。0.1μM〜100μMの化合物A−2の存在下でのMD−2/TLR−4複合体のインキュベーションにより、ウェスタンブロッティングによるFLAGタグの可視化により定量化された、MD2とのTLR4の結合の消失が大幅に取り除かれた。化合物A−1は同様の効果を示した(図2)。
【0122】
Akt1シグナル伝達のモニタリングにより、化合物A−1及び化合物A−2の両方がラットマクロファージ細胞株(RAW 264.7)においてTLR4シグナル伝達を遮断することが示された。リポ多糖(LPS)誘導性のTLR4活性化がホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)カスケードを開始させ、ネズミマクロファージにおける原形質膜へのAkt1の転位を誘発する。Akt1−GFPレポーター13をトランスフェクトしたRAW 264.7細胞を薬物で処理した後、LPSで活性化させた。LPSの非存在下では、Akt1−GFPは、蛍光顕微鏡検査により観察されたようにサイトゾル全体に均一に拡散した。LPS(2ng/ml)の添加により、Akt1−GFPの原形質膜への急速な転位が引き起こされ、サイトゾルにおけるAkt1−GFP濃度が低下した。2μMと低い化合物A−1及び200nMと低い化合物A−2の用量により、シグナル伝達経路のLPS誘導性の活性化が大幅に消失した。図3A及び図3Bを参照されたい。
【0123】
LPS添加後、これらの細胞は非処理細胞と非常に類似した活性化プロファイルを示した。図3A及び図3B。PI3K15を刺激する少ない用量の走化性ペプチドC5a(25ng/mL)はいずれかの化合物により阻害されたAktシグナル伝達を回復させることが可能であった。Akt1−GFPの原形質膜への広域の転位が観察され、これによりこれらの細胞が通常のAktシグナル変換機能を保持することが確認された。Akt1はシグナル変換経路においてTLR4の直接下流にある。そのため、これらのデータは、化合物A−1及び化合物A−2の両方が、TLR4/MD−2複合体と直接相互作用させることによりTLR4媒介性のシグナル伝達を遮断することを示す。ネズミマクロファージは多種多様なTLR及び免疫受容体を発現する。TLR4のLPS誘導性のアゴニズムの阻害は、両方のアンタゴニストが他のTLRよりもTLR4経路に特異的であることを示す。化合物A−1の活性はHEK293細胞(分泌型アルカリホスファターゼレポーター遺伝子がNF−κBプロモータの下流に位置する)において確立されたTLR4アッセイで更に確認された。化合物A−1はTLR4の下流の炎症誘発性エフェクターを用量依存的に遮断するのに効果的であった。さらに、化合物A−1も化合物A−2も、顕著な細胞毒性を何ら示さなかった。図4を参照されたい。
【0124】
確立された動物モデルを、TLR4シグナル伝達アンタゴニストがin vivoでのモルヒネの鎮痛効果を高めることができるかを試験するために使用した。ハーグリーブス試験を、無拘束ラットの後肢及び尾による輻射熱誘導性の離脱応答を観察するのにかかる時間を測定するのに使用した。
【0125】
薬物投与の前、2つの読み取り値(readings)を5秒〜6秒のベースライン潜時で各部位において記録した。これらの薬物投与前のベースライン測定後に、薬物をくも膜下注射し(腰仙脊髄周辺の脳脊髄液空間に)、輻射熱に対するラットの応答を2時間の時間経過にわたり再評価した。化合物A−1又は化合物A−2のいずれかを単独で注射することによっては、検出可能な挙動効果は生じなかった(例えば自咬反応(self-directed biting)又はもがき反応(struggling)がなく、泣鳴反応がなく、また他の苦痛の徴候もない)。小分子プローブは同時投与するモルヒネの非存在下では疼痛応答性に対する効果がなかったが、小分子プローブはモルヒネの鎮痛効果を強く高め、ラットは2時間の時間経過(加熱(heat)は組織傷害を避けるために10秒で自動的に停止させた)で試験において記録可能な最大限の鎮痛を示した。
【0126】
神経生物学分野を研究するための化学生物学アプローチがグリア活性化の機構を理解する有用な手段を提供している。コンピューター内でのハイスループットスクリーニングを使用して、本発明者らはTLR4/MD−2相互作用の選択的かつ特異的な阻害剤を特定している。化合物A−2はMD−2を標的とし、化合物A−1はTLR4を標的としていた。これらの化合物の両方がモルヒネの鎮痛効果を高めることも実証された。TLR4/MD−2相互作用はオピオイド誘導性のグリア活性化の調節に好適な分子標的である。本発明の幾つかの態様は、オピオイド耐性及びオピオイド依存を抑制するための治療戦略も提供する。
【0127】
分子モデリング及び生理化学的パラメータの予測
仮想スクリーニング法には2つの段階が含まれていた:静的タンパク質モデルへのドッキング及び動的タンパク質モデルを用いた精密化。静的タンパク質モデル及び動的タンパク質モデルへのドッキングはQuantumのソフトウェアユーティリティを利用して行った。静的タンパク質モデルへのドッキングには、最小結合エネルギーによる結合ポケットにおけるリガンド位置の特定と、結合エネルギーの推定とが含まれていた。分子動力学研究では、算出したタンパク質−リガンドの結合エネルギーをタンパク質柔軟性に関して精密化した。使用する精密化法は水性環境でのタンパク質−リガンド複合体全体に関する完全な自由エネルギー摂動分子動力学計算の実行であった。このためこの精密化法は、タンパク質及びリガンドの両方の柔軟性に関するものである。
【0128】
化学合成
全ての反応は乾燥窒素又はアルゴン雰囲気下で炉乾燥ガラス器具又は火炎乾燥ガラス器具中で行った。メタノールを単蒸留により蒸留し、4Åのモレキュラーシーブ上で保存した。アセトンは蒸留してから使用した。メチルアミン・HCl塩を乾燥剤(decadent)としてPを使用して高真空下で一晩乾燥させた。他の試薬及び溶媒は全て、供給業者から受け取ったままのものを用した。フラッシュクロマトグラフィを32μm〜64μmのシリカゲルを使用して行った。H NMRスペクトルを、内部標準として残留CHCl(7.26ppm)を使用して、CDCl中で300MHz、400MHz又は500MHzで記録した。13C NMRスペクトルを、内部標準として残留CHCl(77.23ppm)を使用して、CDCl中で75MHzで記録した。正確な質量をエレクトロスプレーイオン化を用いて決定した。
【0129】
2−((4−エトキシフェノキシ)メチル)オキシラン
4−エトキシフェノール(0.25g、1.81mmol)、無水炭酸カリウム(0.50g、3.62mmol)及びエピクロロヒドリン(0.57ml、7.24mmol)をアセトン(4.52ml)に添加し、得られた不均一溶液を16時間還流した。混合物を室温まで冷却し、セライトパッドで濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。得られた油状物質(oil)をトルエン(20mL)に溶解し、水(15mL)、5%NaOH水溶液(20mL)及び再び水(20mL)で連続して洗浄した。有機層をMgSOを用いて乾燥させ、減圧下で濃縮し、白色固体として0.292g(83%)の2−((4−エトキシフェノキシ)メチル)オキシランを得た(mp=41℃)。H NMR(400MHz、CDCl)δ 6.91〜6.77(m、4H)、4.17(dd、J=11.0、3.2、1H)、3.98(q、J=7.0、2H)、3.91(dd、J=11.0、5.6、1H)、3.34(m、1H)、2.90(dd、J=4.9、4.1、1H)、2.75(dd、J=5.0、2.7、1H)、1.39(t、J=6.98、3H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ 153.72、152.78、115.90、115.90、115.59、115.59、69.71、64.18、50.49、44.98、15.15。HRMS(m/z):[MNa]1114Naに関する計算値 217.08;実測値 217.0826。
【0130】
1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール
水酸化カリウム粉末(1.751g、31.2mmol)を3,5−ジメチルピラゾール(2g、20.81mmol)の無水DMSO溶液(10.40ml)に添加し、得られた不均一溶液を80℃で1.5時間攪拌した後、室温まで冷却した。それから2−クロロベンジルクロリド(2.64ml、20.81mmol)を15分かけて6MのDMSOに添加し、溶液を更に1.5時間攪拌した。TLCにより完了を観察した後、反応物を水に注ぎ、得られた水相を2つの20mLのCHClで抽出した。合わせた有機層を100mLの水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、透明な液体として4.55g(99%)の1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾールを得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ 7.41〜7.31(m、1H)、7.24〜7.09(m、2H)、6.59〜6.50(m、1H)、5.90(s、1H)、5.31(s、2H)、2.26(s、3H)、2.15(s、3H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ 148.32、139.96、135.46、131.96、129.42、128.76、127.72、127.48、105.84、50.12、13.80、11.15。HRMS(m/z):[MNa]1213ClNNaに関する計算値 243.07;実測値 243.0651。
【0131】
1−(1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−4−イル)−N−メチルメタンアミン
【化11】

メタノール(9.06ml)に溶解した、1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール(1.00g、4.53mmol)、パラホルムアルデヒド(0.82g、27.20mmol)及びメチルアミン・HCl(0.92g、13.59mmol)の溶液を60℃で24時間攪拌した。混合物を室温まで冷却し、NaHCO水溶液(15mL)を用いてクエンチした。水層をエーテル(15mL)で3回抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた黄色の油状物質を、溶出溶媒として1:4:0.01 酢酸エチル:ヘキサン:トリエチルアミンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィを使用して精製し、透明な油状物質として0.73g(62%)の1−(1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−4−イル)−N−メチルメタンアミンを得た。H NMR(300MHz、CDCl)δ 7.40〜7.31(m、1H)、7.23〜7.08(m、2H)、6.54〜6.43(m、1H)、5.32(s、2H)、3.31(s、2H)、2.91(s、1H)、2.25(s、3H)、2.16(s、3H)、2.12(s、3H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ 148.12、138.48、135.57、131.94、129.42、128.72、127.61、127.41、114.38、50.24、49.08、40.68、12.36、9.75。HRMS(m/z):[MH]1418ClNに関する計算値 264.13;実測値 264.1253。
【0132】
1−(((1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル)(メチル)アミノ)−3−(4−エトキシフェノキシ)プロパン−2−オール
【化12】

2−((4−エトキシフェノキシ)メチル)オキシラン(0.06g、0.32mmol)及び1−(1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−4−イル)−N−メチルメタンアミン(0.10g、0.38mmol)をメタノール(0.32ml)に溶解し、68℃まで加温し、オキシランが消費されたことがTLCにより観察されるまで攪拌した。該溶液を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。得られた油状物質を、溶出溶媒として1:2:0.01 酢酸エチル:ヘキサン:トリエチルアミンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィを使用して精製し、透明な液体として0.09g(63%)の1−(((1−(2−クロロベンジル)−3,5−ジメチル−1H−ピラゾール−4−イル)メチル)(メチル)アミノ)−3−(4−エトキシフェノキシ)プロパン−2−オールを得た。H NMR(500MHz、CDCl)δ 7.35(dd、J=7.8、1.2、1H)、7.17(td、J=7.7、1.3、1H)、7.12(td、J=7.5、1.2、1H)、6.85〜6.79(m、4H)、6.48(dd、J=7.6、0.9、1H)、5.28(s、2H)、4.12〜4.04(m、1H)、3.97(q、J=7.0、2H)、3.90(d、J=4.9、2H)、3.47(d、J=13.2、1H)、3.34〜3.29(m、1H)、2.60(dd、J=12.2、9.7、1H)、2.48(dq、J=12.2、3.9、1H)、2.26(s、3H)、2.24(s、3H)、2.11(s、3H)、1.38(t、J=9.1、3H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ 153.47、153.04、148.04、138.67、135.31、131.92、129.43、128.79、127.58、127.50、115.63、115.63、115.53、115.53、113.71、71.25、66.37、64.14、59.51、51.70、50.28、42.09、15.13、12.36、9.82。HRMS (m/z):[MNa]2532ClNNaに関する計算値 480.20;実測値 480.2030。
【0133】
化合物A−2
【化13】

1−アダマンタンカルボニルクロリド(238mg、1.20mmol)を、1,4−ジフェニレンジアミン(108mg、1.0mmol)、トリエチルアミン(202mg、2.00mmol)、DMAP(6mg、0.05mmol)及び1,4−ジオキサン(4.0ml)の混合物に室温で添加した。12時間の攪拌後、反応溶媒の半分を蒸発させ、続いて溶液を溶出液としてEtOAcを用いたカラムクロマトグラフィに供した。中間体を無色の粉末として得た(収量113mg、40%)。塩化イソバレリル(14mg、0.10mmol)を、中間体(27mg、0.10mmol)、トリエチルアミン(20mg、0.20mmol)、DMAP(1.2mg、0.010mmol)及び1,4−ジオキサン(1.0ml)の溶液に室温で添加した。12時間の攪拌後、反応混合物をカラムクロマトグラフィ(1:1 EtOAc−ヘキサン)に供した。化合物A−2を無色の粉末として得た(収量30mg、85%)。
【0134】
他の化合物
調製され、試験される代表的な化合物の一部を以下に挙げる(塩及び鏡像異性的に濃縮された異性体も一部調製されたが、別個には示していない):
【化14】

【0135】
【表1】

butyl:ブチル
pentyl:ペンチル

【0136】
【化15−1】

【化15−2】

【化15−3】

【0137】
本発明の化合物の他の例としては以下のものが挙げられる:
【0138】
【化16】

【0139】
R位でのOHの置換は、この位置で形成されたエーテルに関する構造活性相関(SAR)にまで及ぶ。
【0140】
化合物2126のメチルエーテル型が優れた活性を示した。本発明の化合物には、ベンジルエーテル等の他のエーテル誘導体が含まれる。エーテル化合物が生体活性の増大を示す場合、このことは結合部位内においてヒドロキシル基が疎水ポケットに面していることを示し得る。これらの化合物のキラル型及び更なるエーテル(例えばR=Et、iPr、t−Bu等)が本発明の範囲内にある。
【0141】
実験データはエポキシド及びアミン断片の両方が活性であることを示している。更なる疎水性相互作用を、例えば以下の反応戦略を使用することにより、本発明の化合物に導入することができる。
【化17】

allyl:アリル

【0142】
コンピューターを使ったドッキングシミュレーション。
ドッキング研究を、AutoDock 4.0. Lamarckian Generic Algorithm(LGA)を用いて行い、リガンドのねじれ角はAUTOTORSを用いて変化させた。ドッキング実験に関する他の手順は全て、AutoDock 4.0プログラムのユーザーマニュアルに記載されている通りに従った。ドッキングさせた立体構造を、力場スコアリング関数を用いてAutoDock 4.0プログラムにより自動的にランク付けした。総数100個の異なる立体構造クラスタを、1.0Åのrmsd耐性を用いて100回の実行から見出した。これらの中で、最高のランクを得た3つのドッキング構造のうちの1つを分子の可視化に使用した。
【0143】
TLR4/MD−2プルダウンアッセイ
HeLa細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で8×10個/mlの密度まで成長させ、ダルベッコPBS/1.25% DMSO中の20μgのFlag−sTLR4及び10μgのMD−2−Flag−Hisを用いてエレクトロポレーション(250V、960μF)によりトランスフェクトした。プラスミドはファビオ研究所から無償で提供された。回収及び細胞接着が可能となるように、細胞を、FBSを含有するDMEMの入った10cmプレートで再び平板培養した。6〜8時間後、細胞培地を血清無含有培地293 SFM2(Invitrogen, CA, USA)に交換した。培地を24時間後に回収した。Hisタグ付けタンパク質複合体を捕捉するために、濾過した培地をProBondニッケル樹脂(Invitrogen, CA, USA)とともに一晩インキュベートした。それから樹脂をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、レムリ試料バッファー中で再懸濁して、沸騰させ、SDS−PAGE及び抗Flag mAbを用いた免疫ブロット法により分析した。TLR4/MD−2相互作用に対する小分子の効果を、DMSOに溶解した化合物(対照では同量のDMSO)を細胞に添加した後、一晩インキュベートすることにより評価した。
【0144】
安定してトランスフェクトしたRAW264.7マウスマクロファージ細胞株におけるTLR4シグナル伝達のリアルタイム顕微鏡検査。
TLR4シグナル伝達により、3つの並行した細胞内シグナル伝達経路の同時活性化がもたらされる。これらのうちの2つ(NF−κB及びMAPKを介する)は、TLR4活性化により誘導される炎症誘発性応答に主に関与すると考えられ、第3の並行経路(PI3K/Akt1)は細胞生存、アポトーシス及び細胞運動性との関連がより強いと考えられる。3つの経路は全てTLR4でのアゴニズムにより活性化されるので、これらのいずれか1つをTLR4活性化の反映として使用することができる。緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ付けAkt1を発現するために安定してトランスフェクトしたRAW264.7マウスマクロファージ細胞株が利用可能であることを考慮して、GFP−Akt1の動員及びサイトゾルクリアランスをTLR4活性化の指標として使用した。リポ多糖(LPS、大腸菌、血清型:0111:B4)をSigma(St. Louis, MO, USA)から入手した。細胞を10% FBS、10×ペニシリン/ストレプトマイシン及び10×l−グルタミンを添加した成長培地中で成長させ、それから35mm MatTekガラス底皿(Ashland, MA, USA)上の成長培地中で2×10細胞/mLの密度で18時間平板培養した後、画像化した。画像化の直前、成長培地をプレートから取り出し、pH7.4へと緩衝させた25mMのHEPESを添加したハンクス緩衝生理食塩水溶液(HBSS)1mLで2回洗浄し、加温しコンディショニングした画像化ハンクス緩衝培地(培地はRAW264.7細胞との24時間のインキュベートによりコンディショニングした)1mLに交換した。画像化を、60×油浸対物レンズと、対応する単一バンドの励起フィルター及び発光フィルターを有するGFP/RFPダイクロイックミラー(Chroma Technology, VT, USA)と、CoolSNAP ESカメラ(Photometrics,Tucson, AZ, USA)とを備えるNikonの倒立顕微鏡(Melville, NY, USA)で行った。水銀灯により励起が与えられた。画像を7.5秒ごとに取り込んだ。ベースラインの蛍光を5フレームで取り込んだ後、ビヒクル又はアンタゴニストを200μlで添加した。画像化を更に20フレーム続け、この時点でLPS又は試験アゴニスト(200μl)を適用し、更に20フレームでモニタリングした。目で見える応答が得られなければ、C5a(200μl)をプレートに添加し、細胞が応答性であるかを確認した。GFP−Akt1サイトゾルクリアランスを、ImageJを用いて定量化し、経時的な細胞質の蛍光の正規化変化として表した。
【0145】
RAW264.7一酸化窒素細胞TLR選択性アッセイ
RAW細胞を10% FBS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)及びL−グルタミン(2mM)を添加したDMEM中で成長させた。それからRAW細胞を1ウェル当たり100000個の細胞で96ウェルプレートに植え、先に記載の培地中で24時間成長させた。24時間後に培地を取り出し、マクロファージ−SFM(Invitrogen, CA, USA)に交換した。レーンを適切なTLR特異的リガンドでドープした:LPS(リポ多糖)、ポリ(I:C)(ポリイノシン酸−ポリシチジル酸)、FSL−1((S,R)−(2,3−ビスパルミトイルオキシプロピル)−Cys−Gly−Asp−Pro−Lys−His−Pro−Lys−Ser−Phe)、R848(4−アミノ−2−(エトキシメチル)−α,α−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール)及びPamCSK(N−パルミトイル−S−[2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2RS)−プロピル]−[R]−システイニル−[S]−セリル−[S]−リシル−[S]−リシル−[S]−リシル−[S]−リシン.3HCl)を使用し、それぞれTLR4、TLR3、TLR2/6、TLR7及びTLR2/1を選択的に活性化した。それぞれのリガンドに関して2つのレーン(1つはリガンドのみを含有し、もう1つはリガンドと300nMの化合物A−1とを有する)を作製した。それからプレートを24時間インキュベートした。インキュベーション後、培地100μLを取り出し、平らなブラック96ウェルマイクロフルオロプレート(Thermo scientific, MA, USA)に添加した。2,3−ジアミノナフタレン(0.62MのHCl中、0.05mg/ml)10μLをそれぞれのウェルに添加し、15分間インキュベートした。反応を3MのNaOH 5μLの添加によりクエンチし、プレートを、Beckman CoulterのDTX880リーダー(Beckman Coulter,CA, USA)で、365nmでの励起及び450nmでの発光により読み取った。亜硝酸(一酸化窒素の安定した代謝産物)濃度を亜硝酸の標準曲線から決定した。
【0146】
異なるTLR間の阻害剤の特異性を理解するために、SEAPレポーター遺伝子活性化アッセイ(以下を参照されたい)において99%阻害を示す化合物の選択性を、RAW細胞における一酸化窒素(NO)産生を測定することにより研究した。RAW細胞は全てのTLRを発現し、それぞれの特異的なTLRを受容体特異的なリガンドによる処理により個々に活性化することができる。TLRの活性化により、一酸化窒素(NO)等の炎症誘発性メディエーターの下流のシグナル伝達及び産生がもたらされる。この化合物(27μM)はTLR4媒介性のNO産生を阻害したが、TLR3、TLR2/6、TLR2/1及びTLR7のシグナル伝達に対する効果を無視できる程度しか示さなかった。これらの結果はこの化合物が他の同種のtoll様受容体に顕著な影響を与えることなく、LPS誘導性のTLR4の活性化を選択的に阻害することを示した。
【0147】
分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)アッセイ
SEAPアッセイの材料をApplied Biosystems(CA, USA)から入手し、製造業者の仕様書に従って利用した。TLR4及び分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を安定してトランスフェクトしたヒト胚腎臓293(HEK293)細胞をInvivogen(CA, USA)から入手した。細胞を10%ウシ胎児血清、10×ペニシリン/ストレプトマイシン、10×l−グルタミン、1×ノルモシン(ant−nr−1)及び1×HEK Blue(hb−sel)を添加したDMEM培地中で培養した。細胞を96ウェルプレートにおいて37℃で24時間植え付け後、薬物処理を行った。処理日に、培地を96ウェルプレートから取り出し、0.5% DMSOとともに1ng/mL〜20ng/mLのLPS及び0.2μM〜50.0μMの薬物又は3ng/mL〜400ng/mLのLPS−RSを含有する脳脊髄液(CSF)バッファー(124mMのNaCl、5mMのKCl、0.1mMのCaCl、3.2mMのMgCl、26mMのNaHCO及び10mMのグルコース(pH7.4))に交換した。
【0148】
それぞれのウェルからCSFバッファー(15μL)の試料を回収し、不透明な白色96ウェルプレート(Microfluor 2、Thermo Scientific MA, USA)に移した。それぞれのウェルを1×希釈バッファー45μLで処理し、マイクロシール(MSB1001、Bio-Rad, CA, USA)で覆い、65℃で30分間インキュベートした。30分後、プレートを氷上で室温まで冷却し、SEAPアッセイバッファー50μLをそれぞれのウェルに添加した。5分のインキュベーション後、反応バッファーで20倍希釈した3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2−(5−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸二ナトリウム(CSPD)50μLをそれぞれのウェルに添加した。20分後、それぞれのウェルの発光を、多モード分析ソフトウェアによりプレートリーダー(Beckman Coulter、DTX 880、CA, USA)を使用して測定した。SEAPレポーター遺伝子の活性化アッセイの結果の一部を以下の表に示す:
【0149】
【化18】

%inhibition:阻害率(%)

【0150】
細胞生存率アッセイ
ヒト胚腎臓293(HEK293)細胞に、TLR4及び必要なアセンブリ及びシグナル伝達タンパク質(MD2、CD−14、LPSBP等)を安定してトランスフェクトした。細胞を、10% FBSと、ペニシリン(100U/ml)と、ストレプトマイシン(100mg/ml)と、L−グルタミン(2mM)と、0.1mg/mlのノルモシン(InvivoGen, CA, USA)と、1×HEK Blue選択試薬(InvivoGen,CA, USA)とを添加したDMEM中で培養した。細胞を6cmプレートに植え付け、37℃でインキュベートすることにより65%〜75%の密集度まで成長させた後、薬物処理した。処理日に、培地を6cmプレートから取り出し、薬物処理を加えた脳脊髄液(CSF)バッファーに交換した。37℃で24時間のインキュベーション後、CSFを取り出し、細胞を0.05% トリプシン+0.2g/lのEDTA(Invitrogen, CA, USA)でかき混ぜ、新たなDMEMを添加した培地中で再懸濁した。再懸濁後、試料100μlをそれぞれの6cmプレートから採取し、0.4% Trypan Blue(Sigma, MO, USA)100μlと穏やかに混合し、5分間静置した。それから青色染色した細胞数と総細胞数との比を、NikonのTMS光学顕微鏡(Nikon Instrumentals, CA USA)下で深さが0.1mmのBright Line血球計(VWR, PA, USA)を使用して定量化した。
【0151】
RNAiによるTLR4及びMD−2の下方調節がモルヒネ誘導性の小膠細胞の活性化を阻害する
ネズミの小膠細胞株、BV−2を、Primaria処理したフラスコ(Falcon, BD Bioscience, CA, USA)内の10% FBSを添加したDMEM培地中で成長させた。約80%の密集度に到達したら、細胞をトリプシン消化によりフラスコから引き剥がした。SMARTpoolのsiRNA(Dharmacon, Lafayette, CO, USA)ストック溶液(50μM)6μLをD−PBS 14μlで希釈し、リポフェクタミンLTX(Invitrogen, Carslbad , CA, USA)8μlをD−PBS 12μlで希釈した。続いてTLR4 siRNAとリポフェクタミンLTX溶液とを6ウェルプレートのウェル内で穏やかに混合し、室温で30分間インキュベートした。それから細胞を1ml当たり5×10個の細胞の細胞密度で6ウェルプレートに植えた。48時間のRNAi後、200μMのモルヒネを添加した。それからプレートを更に24時間インキュベートした。その後、細胞を回収し、M−PER哺乳動物タンパク質抽出試薬(Thermo Scientific, Rockford, IL, USA)で溶解した。バックグラウンド炎症性因子に対するMD−2又はTLR4を下方調節する効果を研究するために、細胞を、72時間のRNAiの後に回収した。IL−1β及びTNF−αのレベルを製造業者の取扱説明書に従ってELISA(BD Biosceince, San Diego, CA, USA)により分析した。
【0152】
小分子阻害剤によるモルヒネ誘導性の小膠細胞の活性化の阻害
BV−2細胞をPrimaria処理したフラスコ(Falcon, BD Bioscience, CA, USA)内の10% FBSを添加したDMEM培地中で成長させた。約80%の密集度に到達したら、細胞をトリプシン消化によりフラスコから引き剥がした。それから細胞を1ウェル当たり4×10個の細胞で6ウェルプレートに植え、24時間成長させた。24時間後、培地を取り出し、1% FBSを添加したDMEMに交換し、モルヒネ(200μM)を添加した。加えて、化合物1、化合物2又は化合物3(10μM)をモルヒネと同時に又は単独で投与した。それからプレートを更に24時間インキュベートした。その後、細胞を回収し、M−PER哺乳動物タンパク質抽出試薬(Thermo Scientific, Rockford, IL, USA)で溶解した。IL−1βを製造業者の取扱説明書に従ってELISA(BD Biosceince, San Diego, CA, USA)により分析した。
【0153】
輻射熱に対する応答性の行動評価(ハーグリーブス試験)
病原体を含まない成体スプラーグ・ドーリー雄ラット(それぞれの実験で1群当たりラット数n=5〜6、300gm〜375gm、Harlan Labs, Madison, WI, USA)を全ての実験で使用した。ラットを、標準的な齧歯動物の食餌及び水を自由に入手することができる、温度(23+3℃)及び光(12時間:12時間 明:暗サイクル、0700に点灯)を制御した部屋に収容した。群の割り当てに関しては全ての試験をブラインドで行った。ラットは適切な試験環境に対して60分間の馴化を少なくとも3回行った後、行動試験を実施した。尾に適用した熱刺激に対する行動応答の閾値を、改良ハーグリーブス試験を用いて評価した。要するに、ベースライン引き抜き(withdrawal)値を、15分間隔で測定した尾の2つの連続した引き抜き潜時の平均から算出した。ベースラインの熱刺激に対する潜時は2秒〜3秒の範囲であり、10秒のカットオフ時間は組織損傷を避けるために与えられた。ベースライン引き抜き潜時の評価を薬物投与前、及び更に薬物投与後に経時的に行った。供試薬物と同量のビヒクルを投与した。
【0154】
炎症の全血モデル
炎症の全血モデルにおけるサイトカインIL−6、IL−8、(TNFα)及びIL1βの分泌に対する影響に関して本発明の化合物によるTLR4阻害の試験を、(i)制限構成における2126−HClの2つの変異体を比較するためのLPSと、(ii)TLR4/MD2、TLR2の両方を伴う先天性免疫応答、及び補体系(抗CD14及びコンプスタチンと比較する)を開始させるためのグラム陰性細菌とを使用して、Mollnes et al. (Blood, 2002, 100, 1869-1877)により記載された手順を用いて行った。
【0155】
化合物2126の塩酸塩(すなわち2126−HCl)は全血試験において最も効果的なTLR4阻害剤の1つであった。LPS刺激時のサイトカイン放出に対する2126−HClの効果をマイクロモル範囲の濃度で観察し、その効果は炎症性活性化因子LPSの存在下において等モル濃度(150μM)の化合物2126−9の塩酸塩よりも効果的であった。化合物2126の塩酸塩はこれらの濃度で、顕著な毒性効果を何ら示さず、又は任意の顕著な溶血反応を誘導した。化合物2126の塩酸塩は、抗CD14と比較してまたこれとは対照的に、LPS及び大腸菌の両方の刺激時のIl−8分泌の最大阻害の1つを示した。補体阻害剤コンプスタチンの添加により、大腸菌に応答するサイトカイン放出が更に低減した。しかしながら、試験したサイトカインレベル間の比率は、下流のシグナル伝達の抗CD14及び化合物2126の塩酸塩に指向性の遮断の両方に関して同じままであった。コンプスタチン自体はIl8及びIl−1βに特異的なようであり、初期のCD14依存性のサイトカインIl−6の分泌にはほとんど影響がなかった。しかしコンプスタチンは、大腸菌を活性化因子として使用した場合、Il−6レベルに対する抗CD14及び2126−HClの両方の阻害効果を増大させた。抗CD14はIl−6血漿レベルの低減に対して活性が強かった。これに対して、2126−HClはIl−6と、TNFα及びIl−1βとを阻害するが、Il−8の阻害は大幅に低いようであった。
【0156】
興味深いことに、CD14阻害は、LPSを活性化因子として使用した場合、100%低減すると思われるものであるにもかかわらず、大腸菌刺激時に補体により調節されるIl−1β血漿レベルを変えなかった。他方で、推定TLR4阻害剤2126−HCl(500μM)は影響を与えなかった。2126−HClは、コンプスタチン(25μM)により達成されたものと同様にIl−1βの血漿レベルを約50%低減し、コンプスタチンの存在下での30%までの更なる低減をもたらした。
【0157】
本発明の上記の記述は例示及び説明のために提示されている。上記の記載は本明細書において開示されている形態(単数又は複数)に本発明を限定する意図はない。本発明の記載には1つ又は複数の実施形態並びに或る特定の変形形態及び変更形態の記載が含まれているが、例えば本開示を理解した後に当業者の技術及び知識内にあり得るような他の変形形態及び変更形態も本発明の範囲内である。許容される程度まで代替的な実施形態(特許請求されるものに対して代替的な、交換可能な及び/又は均等な構造、機能、範囲又は工程が含まれる)を含む権利を、かかる代替的な、交換可能な及び/又は均等な構造、機能、範囲又は工程が本明細書に開示されているか否かにかかわらず、また任意の特許可能な主題を公衆に捧げる意図なく取得することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

及び
【化2】

(式中、
n及びmはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、
はそれぞれ独立して、アルコキシド、任意で置換されたアルキル又はアルケニルであり、
はO、NR又はSであり、
は−OR、−SR又は−NRであり、
はそれぞれ独立して、ハロゲン化物又はアルコキシドであり、
、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
及びYはそれぞれ独立してO又はSであり、
及びYはそれぞれ独立してO、S又はNRであり、
はCH又はNであり、
、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
11はシクロアルキル又はアルキルであり、
12はアルキル、任意で置換されたアリール又はシクロアルキルである)からなる群から選択される化合物。
【請求項2】
式:
【化3】

(式中、
m及びnはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、
、X、X、X、R、R及びRは請求項1で規定されるものである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がOである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が−OHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
、R及びRがアルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
、R及びRがメチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
がアルコキシド、ヘテロ置換アルキル又はアルケニル−アルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
がメトキシド、メトキシエチル又はアリルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がアルコキシド、Cl又はFである、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
がメトキシド又はClである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式:
【化4】

(式中、
及びYはOであり、
11、R12、Y、Y及びYは請求項1で規定されるものである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
がNRである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が水素である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
がO又はNHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
11がアダマンチル、n−ブチル、iso−ブチル、n−ペンチル又は1−エチルプロピルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
12がアルキル、アダマンチル、シクロヘキシル又は任意で置換されたフェニルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項17】
12がiso−ブチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル、メトキシフェニル又はクロロフェニルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Toll様受容体(TLR)を変調する方法であって、TLRを発現する細胞を有効な量の請求項1に記載の化合物に接触させることを含む、Toll様受容体(TLR)を変調する方法。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物がTLRアンタゴニストである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Toll様受容体(TLR)活性化と関連する臨床病態に関して被験体を治療する方法であって、請求項1に記載の化合物を該被験体に投与することを含む、Toll様受容体(TLR)活性化と関連する臨床病態に関して被験体を治療する方法。
【請求項21】
臨床病態がグリア細胞のToll様受容体(TLR)媒介性の活性化と関連する病態を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
臨床病態が神経因性疼痛、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、又はそれらの組合せを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
臨床病態が、慢性疼痛、侵害受容、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、胃腸病変、心血管疾患、糖尿病、免疫関連病態、全身性病変、神経変性、陣痛誘発、発熱、発作、癲癇、癲癇発生、又はそれらの組合せを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
望ましくないオピオイド副作用が、オピオイド依存、オピオイド報酬、オピオイド誘導性の呼吸抑制、オピオイド誘導性の運動失調、オピオイド誘導性の痛覚過敏、オピオイド誘導性の異痛若しくは痛覚過敏、オピオイド誘導性の胃腸障害、麻薬性腸症候群、オピオイド情動不安、又はそれらの組合せを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体においてTLR4/MD−2相互作用と関連する臨床病態を治療する方法であって、かかる治療を必要とする該被験体にTLR4/MD−2相互作用阻害剤を投与することを含む、被験体においてTLR4/MD−2相互作用と関連する臨床病態を治療する方法。
【請求項26】
臨床病態が神経因性疼痛、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、又はそれらの組合せを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
臨床病態が、慢性疼痛、侵害受容、急性オピオイド鎮痛、若しくは望ましくないオピオイド副作用、胃腸病変、心血管疾患、糖尿病、免疫関連病態、全身性病変、神経変性、陣痛誘発、発熱、発作、癲癇、癲癇発生、又はそれらの組合せを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
望ましくないオピオイド副作用が、オピオイド依存、オピオイド報酬、オピオイド誘導性の呼吸抑制、オピオイド誘導性の運動失調、オピオイド誘導性の痛覚過敏、オピオイド誘導性の異痛若しくは痛覚過敏、オピオイド誘導性の胃腸障害、麻薬性腸症候群、オピオイド情動不安、又はそれらの組合せを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
アヘン剤と請求項1に記載の化合物とを含む組成物。
【請求項30】
前記アヘン剤と前記請求項1に記載の化合物とを完全に混合する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記アヘン剤と前記請求項1に記載の化合物とが別々の形態にある、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記アヘン剤の量が前記請求項1に記載の化合物の非存在下での前記アヘン剤の推奨投薬量と比べて約50%〜約100%である、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記アヘン剤対前記請求項1に記載の化合物のモル比が約1000:1〜約10:1の範囲である、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
かかる治療を必要とする被験体において疼痛を治療する方法であって、該被験体に治療的に有効な量のアヘン剤と請求項1に記載の化合物との組合せを投与することを含む、かかる治療を必要とする被験体において疼痛を治療する方法。
【請求項35】
アヘン剤と請求項1に記載の化合物とを同時に又は連続して投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
被験体においてアヘン剤化合物の鎮痛効果を高める方法であって、該被験体にアヘン剤と治療的に有効な量の請求項1に記載の化合物とを同時に投与することを含む、被験体においてアヘン剤化合物の鎮痛効果を高める方法。
【請求項37】
アヘン剤と請求項1に記載の化合物とを実質的に同時に投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1に記載の化合物を、該アヘン剤を投与する前に投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
請求項1に記載の化合物を、該アヘン剤を投与する前、2時間以内に投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1に記載の化合物を、該アヘン剤を投与した後に投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
請求項1に記載の化合物を、該アヘン剤を投与した後、約2時間以内に投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
被験体においてアヘン剤薬物療法の副作用を低減する方法であって、治療的に有効な量の請求項1に記載の化合物を、アヘン剤薬物療法を受ける被験体に投与することを含む、被験体においてアヘン剤薬物療法の副作用を低減する方法。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物の非存在下での該アヘン剤の推奨投薬量と比べて約50%〜約100%の該アヘン剤を該被験体に投与することを更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物とアヘン剤とを該被験体に実質的に同時に投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物を、該アヘン剤を投与する前、2時間以内に投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
請求項1に記載の化合物を、該アヘン剤を投与した後、約2時間以内に投与する、請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2013−505942(P2013−505942A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531037(P2012−531037)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/050050
【国際公開番号】WO2011/038152
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512075235)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレート (1)
【Fターム(参考)】