説明

Tiソース・ロッドを用いて(Nb,Ti)3Snワイヤを製造するための方法

【課題】マルチフィラメント(Nb,Ti)Sn超伝導ワイヤを製造するための方法における改善を開示する。
【解決手段】この方法は、NbまたはNb合金モノフィラメントを銅または銅合金シース内に包んだ複数のNbまたはNb合金ロッドを調製するステップ、これらのNbまたはNb合金ロッドを、銅を含むマトリクス内に詰め込んで、超伝導ワイヤのためのパック・サブエレメントを形成するステップ、このサブエレメント内にSnソース及びTiソースを設けるステップ、複数のサブエレメントを、もう一つの銅を含むマトリクス内に組み付けるステップ、そしてNbまたはNb合金ロッド内へSn及びTiを拡散させて(Nb,Ti)Snを形成するステップからなる。この方法は、NbまたはNb合金ロッド間に配置した、少数のTiドーパント・ソース・ロッドからTiをNb内へ拡散させるという改善がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2003年10月17日に出願した、米国仮出願第60/512,354号からの優先権を主張する。
この本発明は、概して、超伝導ワイヤ及びケーブルを調製する方法に関するもので、特に(Nb,Ti)Snの調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高磁場(〜>12T)で最も高いBc2(上側臨界磁界)と最も高い臨界電流とを得るためには、Nb3SnへTiまたはTaを添加する必要がある。(Nb,Ti)Snは、代替の(Nb,Ta)Sn材料よりも交流損失が低いため、急速に変化する磁場に懸念を抱く超伝導マグネットのメーカには、魅力的なソースとなっている。また、(Nb,Ti)Snは、(Nb,Ta)Snよりも歪み耐性が良いため、高応力マグネットの設計には、より有用である。(Nb,Ta)Sn複合材は、一般に、(Nb,Ti)Sn複合材内に用いる純Nbフィラメントよりも硬く製造が困難なNb7.5wt%Taフィラメントで製造する。
【0003】
内部スズ・ワイヤにTiを添加する現在最も一般的な方法は、Sn−Ti合金を使用することである。熱処理中、Sn内のTiは、複合線のCuマトリクスを介してSnと共に拡散して、Nbフィラメントと化学反応し、必要な高Bc2相を形成する。しかし、この従来のSn−Ti合金による方法の使用中には、いくつかの問題が発生する。一つの問題は、Sn−Ti合金の鋳造中に、寸法において直径が〜25μmで長さが〜100μmの硬い、ロッド状のSn−Ti金属間粒子が不可避的に形成されることである。これらの金属間粒子は、寸法がスズ・リザーバ寸法に相当する大きさに発達した場合、製造中、フィラメント(そして結局ワイヤ)を破壊する。結果は、ワイヤ、またはワイヤ内に使用するエレメントの最小径が制限されるということである。
【0004】
さらに、Sn−Ti合金は、製造が困難であり、高価である。品質管理も問題である。次世代融合マグネットに対するワイヤの注文を満たすだけの合金量を考えた場合、特に問題である。
【0005】
内部スズまたはブロンズ法ワイヤへTiを添加するもう一つの方法は、Nbフィラメントの各々の中央に、TiあるいはNb−Tiロッドを用いて、熱処理中に、各々のフィラメントの中央からTiを拡散させることである。この方法に関する問題は、実に、各フィラメントがその中央にTiまたはNb−Tiソースを持つ必要があり、ひどく高価であるということである。
【0006】
ブロンズ法ワイヤへTiを添加するさらにもう一つの方法は、Cu−Snの代わりに、Cu−Sn−Ti合金マトリクスを用いることである。この方法の問題は、割れのない状態で製造することが難しいことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した問題の全てを克服する。本発明によれば、(本文で「Tiドーパント・ソース」ロッドと言及する)Nb−Ti合金またはTiロッドは、NbまたはNb合金のロッド間に配置し、ロッド間に少なくともいくらかのCuまたはCu合金を介在させる。Tiドーパント・ソース・ロッドの数は、NbまたはNb合金ロッドの数に比べ小さく、これらのドーパント・ソース・ロッドを、より多数のNbまたはNb合金ロッド間に対称的に配置することが好ましい。本発明は、Nb3Sn生産のためのブロンズ法と共に用いることができるが、特に、内部スズ法を用いる場合に適用できる。一つの好適実施例では、Nb(またはNb合金)ロッドを、純SnまたはSn−Cu合金コアを囲むCuマトリクス内に分散させ、最終的なマルチフィラメント・ワイヤのためのこのサブエレメントを、TaまたはNbまたはNb合金拡散隔壁によって囲む。以下で、さらに明らかになるが、用語「サブエレメント」は、同類サブアセンブリと一緒にしっかりとまとめる(詰め込む)と、最終的な超伝導ワイヤのための前駆体アセンブリを形成するサブアセンブリに言及する。サブエレメント内のTiドーパント・ソース・ロッドは、Nb(またはNb合金ロッド)間に均一に、そして対称的に配置する。ロッドがNb合金からなる場合、そのような合金は、70wt%Nb以上からなる。Tiドーパント・ソース・ロッド内のTiの可能な濃度範囲は、およそ10から100重量%である。Nb47wt%Ti合金から形成したTiドーパント・ソース・ロッドは、延性が良く、また購入し易いため、特に有用である。熱処理中、Sn拡散と、Cu−Sn合金を通るTiの高拡散速度に助けられて、Tiドーパント・ソース・ロッドからのTiが、Tiドーパント・ソース・ロッドから周囲のNbまたはNb合金ロッドへ拡散する。Nb(またはNb合金)ロッドに対するTiドーパント・ソース・ロッドの正確な体積比の設計は、Tiドーパント・ソース・ロッド内のTiの重量%、NbまたはNb合金ロッドの量、そして所望の最終Tiドーピング濃度から決定する。Tiドーパント・ソース・ロッドは、加工ステップ中のCu−Ti金属間粒子形成を防止するために、Nb拡散隔壁によって保護すべきである。Ti拡散の有益な副作用は、反応過程でTiソース・ロッドがCuに置換されることである。このことは、有効フィラメント径及び交流損失を減少させるための、Tiソース・ロッドが超伝導領域を細分割するように作用可能なサブエレメントの設計(例えば、Tiソース・ロッドのスポーク)を示唆する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の方法は、内部スズ及びブロンズ法の方法を含む、あらゆるA15タイプ超伝導ビレットの設計に使用することができる。本発明によれば、マルチフィラメント(Nb,Ti)Sn超伝導ワイヤを製造するための方法が提供される。この方法では、複数のNbまたはNb合金ロッドを、銅を含むマトリクス内に詰め込んで、超伝導ワイヤのためのパック・サブエレメントを形成する。銅を含むマトリクス内のNbまたはNb合金ロッド間に、Tiドーパント・ソース・ロッドを詰め込み、そしてSnソースを、サブエレメント内に設ける、あるいはサブエレメントに隣接させて配置する。これらのサブエレメントを、もう一つの銅を含むマトリクス内に組み入れ、超伝導体のための前駆体と、この安定化させる銅との間に一つ以上の拡散隔壁を設け、そしてこの組み合わせ材をワイヤ形状へ絞る。それから、適切な熱処理によってSn及びTiをNbまたはNb合金ロッド内へ拡散させて、(Nb,Ti)Snを形成する。
【0009】
図1の概略図は、内部スズ法によってマルチフィラメント超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する。内部スズ・ビレットへのキーは、フィラメントの金属比率及び形状を設定するサブエレメントの設計である。一つの一般的なアプローチは、銅または銅合金でクラッディング(被覆)したNbまたはNb合金のモノフィラメントを押出成形することである。六角形状の再スタック内に詰め込むために、これらのモノフィラメントを六角形にして切断し、高電流密度ワイヤ設計に典型的なサブエレメント・ビレットを形成する。図1では、このアプローチを用いている。サブエレメント・ビレットを形成するためのもう一つの一般的な方法は、銅または銅合金ビレット・マトリクスに孔を開けて、それらの孔内に丸いNb合金ロッドを補充する。これは、低交流損失の適度な電流密度のワイヤ設計に典型的なものであり、例えば、ITER(国際熱核実験用原子炉)TF(トロイダル磁界)及びCS(中央ソレノイド)コイルのためのワイヤがある。図2に図解する方法では、このアプローチを用いる。本発明は、これらの一般的なタイプのサブエレメントの両方の用途、そしてNbまたはNb合金フィラメント持つ如何なるタイプの内部スズ・スタイル・サブエレメントの用途に適当である。
【0010】
次に図1a−1を参照する。NbまたはNb合金(例えば、Nb7.5%Ta、Nb1%Zr)モノフィラメント10が、銅または銅合金12のシース内に入っている。このCuで包んだNbモノフィラメントを、六角形(「ヘックス」)断面を持つロッド14へ引き抜き加工する。同様に図1a−2では、(Tiコアと化学反応する銅によるその後の処理ステップにおけるCu−Ti形成を阻止するために)Nb拡散隔壁15、そしてCuまたはCu合金(例えば、Cu0.7%Sn、酸化物分散強化型CuAl2O3)シース18で包んだTiまたはTi合金(例えば、Nb47%Ti、Nb50%Ti)モノフィラメント16を、断面が六角形のロッド19へ形成する。複数の銅六角形要素によって、あるいは銅の固まりから形成した中央銅マトリクス22を持つ、成形または機械加工した銅缶20内に、これらの六角ロッド14及び19を再スタックする。六角要素と銅缶20との間には、(反応シーケンス中の、スズの拡散を制限するために)Nb合金拡散隔膜23が設けられている。拡散隔壁23の選択、Ta、Nbまたはそのような隔壁として有用であると知られる類似合金の選択は、最終的な応用に依存するが、本発明の実施例を実質的に変化させるものではない。隔壁は、チューブ状であっても、あるいはシートを巻いたものであってもよい。しかし、反応可能な隔壁(例えばNb)を選択した場合は、Nb−Ti合金の量及び配分を決定する際に、この反応可能な隔壁の面積を考慮に入れなければならない。最終的な拡散の効果を増加させるために、Tiドーパント・ソース・ロッド19を、Nbロッド14全部に対して対称形に均一に配置することが好ましい。Tiドーパント・ソース・ロッドの数は、Ti合金ロッドの成分、Nb及びTiドーパント・ソース・ロッドの相対数及びサイズ、そして所望の最終Ti濃度に応じて決定する。およそ0.5〜3.0原子量%Tiに関係する文献に、(Nb,Ti)Snに対する最良の超電導特性が示されている。
【0011】
図1bのサブエレメント25を押出成形したら、最終再スタック方法のタイプを選択しなければならない。再スタックは、サブエレメントの絞りを促進し、有効な拡散及び反応のために十分に小さな寸法のフィラメントを得る、そして/あるいは拡散隔壁を加えるために、概して必要である(が、常に必要なものではない)。二つの基本的技術は、「ホット」及び「コールド」再スタッキングである。「ホット」方法は、最終再スタックをまず最初に熱間押出によって絞り、サブエレメントと銅マトリクスとの間の冶金結合を促進させることを含む。この方法は、文献で「熱間押出ロッド」と言及されている。「コールド」方法は、最終再スタックを冷間伸線加工技術のみによって絞ることを含む(欠点は結束が弱いことで、利点は単純であることである)。この方法は、文献で「再スタック・ロッド加工」と言及されている。「ホット」方法によって再スタックするには、サブエレメント25を引き抜き加工して、図1cのような六角要素を形成し、ガンドリルまたは他の適当な手段によって、孔27を形成する。本技術で既知であるように、孔27内に塩を充填し、サブエレメントと銅缶の再スタック29に詰め込み、再スタックを空にして、溶接し、そして熱間押出成形する。その後、孔28から塩を取り除き、図1dの複合ワイヤ・アセンブリ29のようにSnまたはSn合金で置き換える。「コールド」方法によって再スタックするには、押出成形したサブエレメント25の中央領域22にガンドリルで孔を開けて、スズまたはスズ合金を詰め込む。サブエレメントを絞って、(図1dの29内のパターンのように)再スタックし、それを最終ワイヤ・サイズへ冷間引き抜き加工する。
【0012】
ワイヤを最終サイズへ加工したら、熱処理を用いて、Sn及びTiをNbへ拡散させ、超伝導相を発生させる。Cuマトリクス内に詰め込んだ複数の六角サブエレメント26を含む図1dの複合構造物29は、その後、加熱スケジュールによって、Cuを介してSn及びTiをNbモノフィラメント内へ拡散させ、超伝導体を製造する。典型的に内部スズの場合、180℃〜570℃間で十時間から数百時間に渡る、マトリクス全域にスズを拡散させて高重量%Snブロンズ相を形成する前期反応シーケンスがある。その後、十時間から数百時間に渡る600℃〜725℃の反応過程があり、A15相(Nb,Ti)Snが形成される。さらに、使用する主要Nb合金ロッドまたは拡散隔壁が、Nb−Ta(例えば、Nb7.5wt%Ta)である場合、この技術によって、(Nb、Ta、Ti)Snを形成することが可能であることは明らかである。
【0013】
図2は、内部スズ法の変形における本発明の使用を図解する。図2aでは、銅ビレット31内のガンドリル孔35には、多数のNb合金ロッド32が充填され、これらのロッド32間には、対称的な間隔で少数のTiドーパント・ソース・ロッド34がある。ロッド32には銅のクラッディングは必要でないが、ロッド34は、Nb拡散隔壁で包まなければならないという点で、図1a−2のものに類似している。図2bでは、サブエレメント37のガンドリル中心33に、SnまたはSn合金39を挿入している。その後、これを引き抜き加工して、再パック・サイズへ成形する。図2cでは、成形サブエレメント38を銅管40内のTa拡散隔壁36内に詰め込んで、最終ワイヤ・サイズへ引き抜き加工し、その後、先に述べたように、熱処理で拡散を促す。
【0014】
Snソースをサブエレメント内にあるものとして主に説明したが、サブエレメント+スズが拡散隔壁内にある限り、加えてSnをサブエレメントに並べて配置することが可能な、それほど一般的でない技術を使用することも可能である。したがって図2cでは、サブエレメントに隣接させて、しかし拡散隔壁の内側に、多数の追加Sn領域を設けることができる。原則として、サブエレメントに隣接するスズをさらに増加させて補正すれば、サブエレメント内のスズをゼロまでさえも減らすことができる。
【0015】
図3では、本発明の方法を「ブロンズ法」に用いる。図3aに示す第一の押出加工では、Nb合金ロッド41は、アルファ相Cu−Sn合金のマトリクス42内にある。(図1a−2のように加工した)Tiドーパント・ソース・ロッド44を、NbまたはNb合金ロッド41間に対称的に配置している。図3bに示す第二の押出加工では、第一の押出加工からの六角成形ロッド50を、Cu−Sn缶51内に詰める。サブエレメントの中心に、例えばTaの一つのように、Cu安定化剤45を配置し、それを拡散隔膜46によって囲む。注目すべきことは、安定するCuが、複合材中央に配置される必要がない点である。代わりに、複合材の外側ジャケットをCuにしてもよい。そして、それをCu−Sn合金から拡散隔壁によって切り離す。製造業者は、現在、TaでNbフィラメントをドーピングする、またはTiでブロンズ・マトリクスをドーピングすることによって、高臨界電流密度A15材を得ている。本発明によれば、無ドープCu−Snマトリクス内に、NbまたはNb合金ロッドと共に分配させたTiドーパント・ソース・ロッドを使用することができる。製造コストを削減し、製造を容易にする。図3は、したがって、これを、内部的に安定した二重の押出工法に対して行う方法を示す。従来の技術による方法と異なる点は、第一の押出加工の設計において、Tiドーパント・ソース・ロッドを分配することである。そして必要ならば、熱処理を修正して、均一なTiの分散を確実にする。
【0016】
本発明を以下の例によってさらに説明するが、これらは、単に例であって、本発明を限定するものではないと考えるべきである。
【実施例1】
【0017】
この例では、加工に、図1に示すタイプのサブエレメントを使用して、ワイヤを調製した。したがって、分配した反応可能なNb拡散隔壁と共に、六角フィラメント・サブエレメント設計を用いた。三つの熱間押出加工(≧900°F)を含んだ。
【0018】
第一の押出加工。銅缶内でNbインゴットを押出成形し、その結果として生じたロッドを、再スタッキング(図1a)のための六角ロッドへ引き抜き加工して、Nbの銅被覆六角モノフィラメントを製造した。六角ロッドの典型的な寸法は、対辺が1/8インチ、長さが2フィートである。(図1aに示す)Nbロッドと共に再スタックするために、銅缶内で(Nb拡散隔壁と共に)Nb47wt%Tiを押出成形し、それによって生じたロッドを六角ロッドへ引き抜き加工することによって、Nb47wt%Tiの六角モノフィラメントを製造した。
【0019】
第二の押出加工。図1bの断面図に示すように、Nb合金隔壁チューブ内に、第一の押出加工からのロッドを再スタックした。銅被覆NbまたはNb合金六角のスタックの間に、対称形に一様な間隔のパターンで、Tiドーパント・ソース・ロッドを配置した。Nb六角マトリクスには、僅かに少数のNb47wt%Tiロッドで、最大Bc2に望ましい1〜3原子パーセントを得るに十分であったが、均等なTi拡散を促進するために、それらを再スタック内に対称的に、そして均一に分散しなければならない。これまでに議論した要素は、サブエレメントを形成する押出加工前に空にして溶接した銅缶内に配置した。押出成形したサブエレメント・ロッドは、六角形断面へ引き抜き加工し、ガンドリルで孔を開け、塩を詰め込んだ(図1c)。
【0020】
第三の押出加工。図1dに示すように、空にし、溶接して、2インチ径のロッドに押出成形した銅缶内に、18本のサブエレメント六角ロッドを再スタックした。この第三の押出加工ロッドは、水洗して塩を取り除き、Sn−Cu合金で置き換え(図1d)、それから最終サイズ(0.8mmの直径)へ引き抜き加工した。それから、典型的な内部スズ熱処理(100時間210℃、48時間400℃、そして180時間675℃)を用いて反応させた(図4を参照)。反応過程中、両フィラメントは完全に反応し、Nb47wt%Tiロッド中のチタンが、導体断面を通って分散した。これの証拠は三つあった。第一に、断面は、ワイヤ内のフィラメントがほぼ完全に反応したことを示した。第二に、臨界電流密度対外部磁場印加プロット(図5)は、Tiドープの成功なしにはあり得ないの大きさの臨界電流密度及びBc2(クレイマー外挿=27T)を示す。第三に、反応していないワイヤと反応したワイヤの断面を、SEM−EDS(エネルギー分散分光測定法)によって調べた。反応前に、Nbフィラメントが純Nbであり、Nb−Tiフィラメントが〜47wt%Tiであることを確認した。反応後、反応Nbフィラメント及び隔壁の全測定領域は、Ti濃度が〜0.6wt%Tiである(Nb,Ti)Snを示した。Nb47wt%Tiフィラメントが当初に存在した位置の大部分には銅が現れた。このことは、Ti拡散中に、その位置へ銅が拡散したと考察できる。注目すべきことは、この効果のため、交流損失を減少させるために、超伝導領域の内部セパレータとしてTiソース・フィラメントを使用することが可能である。サンプルを横切るX線ライン・スキャンは、Ti濃度勾配を示さず、均一なTi分散を示した。
【0021】
また、このロッドが、最終サイズへ、一本のワイヤの破壊もなく製造できたことにも注目すべきである。Nb7.5wt%Taフィラメント及び隔壁以外の、同じサイズの類似設計の類似ビレットでは、最終サイズへの製造に、1ダース以上のワイヤの破壊があった。これは、Nbが柔らかく、複合材を形成する銅及びスズと共に引き抜くのが容易なためであると考えられる。必要な高臨界電流密度ドーパントが、少ない延性Nb47wt%Tiロッド内に位置し、Nbフィラメント、SnソースまたはCuマトリクス内に存在しないため、優れた成形性を達成した。
【実施例2】
【0022】
この例では、加工に、図2に示すタイプのサブエレメントで使用してワイヤを調製した。したがって、単一の非反応Ta拡散隔壁と共に、丸いフィラメント・サブエレメントの設計を用いた。これは、一つの押出加工(≧900°F)を特徴とした。
【0023】
第一の押出加工
ガンドリルで孔を開けた銅ビレット(直径12.25インチ、図2a)内に、Nbロッド及びNb47wt%Tiロッド(直径0.54インチ)を詰め込み、このサブエレメントを3.1インチへ押出成形した。Nb47wt%Tiのモノフィラメント・ロッドを、例1で説明した方法と同様で製造した。
【0024】
このサブエレメントを、ガンドリルで孔を開け、スズを詰め、引き延ばして、再スタックのサイズに成形した。
【0025】
再スタック
Cuチューブ内のTa隔壁内に成形サブエレメントを詰め込んで、最終サイズ(直径0.81mm)へ引き抜き加工した。典型的な内部スズ熱処理(48時間210℃、48時間400℃、そして100時間675℃)を用いて、ワイヤを反応させた(図6)。反応過程中、両フィラメントが完全に反応し、Nb47wt%Tiロッド中のチタンが導体断面を通って分散した。これの証拠は三つあった。第一に、断面は、ワイヤのフィラメントがほぼ完全に反応したことを示した。第二に、臨界電流密度対外部磁場印加プロット(図7)は、Tiドープの成功なしにはあり得ない大きさの臨界電流密度及びBc2(クレイマー外挿=29T)を示す。第三に、反応していないワイヤと反応したワイヤの断面を、SEMEDS(エネルギー分散分光測定法)で調べた。反応前に、Nbフィラメントが純Nbであり、Nb−Tiフィラメントが〜47wt%Tiであることを確認した。反応後、反応Nbフィラメントの全測定領域は、Ti濃度が〜1.0wt%Tiである(Nb,Ti)Snを示した。当初Nb−Tiフィラメントが存在した位置には、主にNb、Sn及びCuが現れた。Tiの%は、約63wt%から約8wt%へ低下した。このことは、その箇所から離れてTiが拡散したことを示す。Ti拡散中に、Cu及びSnが、その箇所へ拡散したようだ(図9)。フィラメントを横切るX線ライン・スキャンは、Ti濃度の勾配を示さず、均一なTi分散を示した。
【0026】
本発明を、その特定な実施例に関して説明したが、この開示を考慮すると、当業技術者には本発明に対する多数の変形が可能であるが、そのような変形は本発明の範囲内にあることは明らかである。したがって、本発明は、広く解釈すべきであり、本文に添付の請求項の範囲によってのみ限定できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明を、例として、本文書に添付の図面に概略的に図解する。
【図1a−1】内部スズ法によって複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図1a−2】内部スズ法によって複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図1b】内部スズ法によって複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図1c】内部スズ法によって複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図1d】内部スズ法によって複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図2a】内部スズ法によってさらに複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図2b】内部スズ法によってさらに複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図2c】内部スズ法によってさらに複合超伝導ワイヤを調製する際に用いる本発明を図解する概略図である。
【図3a】ブロンズ法によって超伝導体ワイヤを調製する際に本発明を用いる実施例の、いくつかの押出加工ステップを図解する概略図である。
【図3b】ブロンズ法によって超伝導体ワイヤを調製する際に本発明を用いる実施例の、いくつかの押出加工ステップを図解する概略図である。
【図4】図1に図解する方法によって調製した反応ワイヤの断面顕微鏡写真である。
【図5】図4の反応ワイヤに対する非銅臨界電流密度対外部磁場印加を示すグラフである。
【図6】図2に図解する方法によって調製した反応ワイヤの断面顕微鏡写真である。
【図7】図5の反応ワイヤに対する非銅臨界電流密度対外部磁場印加を示すグラフである。
【図8】図2に図解する方法によって調製した反応ワイヤの、断面のSEM/EDS顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント(Nb,Ti)Sn超伝導ワイヤを製造するための方法であって、
a)複数のNbまたはNb合金ロッドを、銅を含むマトリクス内へ詰め込んで、前記超伝導ワイヤのためのパック・サブエレメントを形成するステップ、
b)前記銅を含むマトリクス内の前記NbまたはNb合金ロッド間にTiドーパント・ソース・ロッドを詰め込むステップ、
c)前記NbまたはNb合金ロッド内へ拡散させるためにアクセス可能なSnのソースを提供するステップ、
d)前記サブエレメントを、もう一つの銅を含むマトリクス内に組み入れるステップ、
e)ステップd)からの前記組み合わせ材をワイヤ形状へ絞るステップ、そして
f)前記Sn及び前記Tiを前記NbまたはNb合金ロッド内へ拡散させて(Nb,Ti)Snを形成するステップからなる、方法。
【請求項2】
ステップa)において、前記NbまたはNb合金ロッドを銅または銅合金内に包含する、請求項1による方法。
【請求項3】
前記Tiドーパント・ソース・ロッドが、銅または銅合金シース内のTiまたはTi合金ロッドからなる、請求項1による方法。
【請求項4】
前記TiまたはTi合金ロッドと前記銅シースとの間にNb拡散隔壁を設ける、請求項3による方法。
【請求項5】
前記Tiドーパント・ソース・ロッドの数が、前記NbまたはNb合金ロッドの数に比べて小さい、請求項3による方法。
【請求項6】
前記Tiドーパント・ソース・ロッドが、前記NbまたはNb合金ロッドの間で対称的に配置される、請求項5による方法。
【請求項7】
前記NbまたはNb合金ロッド内へ前記Snを内部Sn法によって拡散させる、請求項1による方法。
【請求項8】
前記Snソースが前記サブエレメント内にある、請求項7による方法。
【請求項9】
前記Snソースが前記サブエレメントに隣接している、請求項7による方法。
【請求項10】
ステップ(d)からの押出成形サブエレメントにガンドリルで孔を開け、それらの孔を前記SnまたはSn合金で充填する、請求項7による方法。
【請求項11】
前記サブエレメントの全体を単一の拡散隔壁によって囲む、請求項10による方法。
【請求項12】
前記NbまたはNb合金ロッド内へ前記Snをブロンズ法によって拡散させる、請求項1による方法。
【請求項13】
各サブエレメントが拡散隔壁を持つ、請求項10による方法。
【請求項14】
ステップ(1d)からの押出成形サブエレメントにガンドリルで孔を開け、塩を充填し、再スタックし、再び押出成形し、そして前記塩をSnまたはSn合金で置換する、請求項10による方法。
【請求項15】
前記包含NbまたはNb合金ロッドを、前記サブエレメントを詰め込むのに使用するための六角断面ロッドへ形成する、請求項2による方法。
【請求項16】
前記Tiドーパント・ソース・ロッドを、前記六角NbまたはNb合金ロッド間に詰め込めるように六角形断面へ形成する、請求項3による方法。
【請求項17】
ステップ(d)において、前記サブエレメントは断面が六角である、請求項1による方法。
【請求項18】
ステップ(a)において、前記NbまたはNb合金ロッドを、前記マトリクス内に開けた孔内に設置する、請求項1による方法。
【請求項19】
前記マトリクスがCu−Sn合金からなる、請求項18による方法。
【請求項20】
前記マトリクスがCuからなる、請求項18による方法。
【請求項21】
前記Tiドーパント・ソース・ロッドを、前記マトリクス内にさらに開けた孔内に挿入する、請求項18による方法。
【請求項22】
前記Tiドーパント・ソース・ロッドを前記サブエレメント内に、超伝導領域を分離するように戦略的に配置して、有効フィラメント径及び交流損失を減少させる、請求項5による方法。

【図1a−1】
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【図1a−2】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−509466(P2007−509466A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535334(P2006−535334)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/034022
【国際公開番号】WO2005/081700
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506128031)オックスフォード スーパーコンダクティング テクノロジー (2)
【氏名又は名称原語表記】OXFORD SUPERCONDUCTING TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】600 Milk Street, P.O.Box429, Carteret, NJ 07008−0429, U.S.A.
【Fターム(参考)】