説明

TiC超微粒子又はTiO2超微粒子担持カーボンナノチューブ、及びTiCナノチューブとこれらの製造方法

【課題】 カーボンナノチューブをテンプレート材料とした、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブとその製造方法を提供すること。また、カーボンナノチューブをテンプレート材料としたTiO超微粒子担持カーボンナノチューブとその製造方法を提供すること。
【解決手段】 原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において熱処理に供して反応させることを含み、その際、熱処理を、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うことを特徴とする製造方法。また、上記方法により得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気下で第二の熱処理に供し、その際、第二の熱処理を、TiCがTiOへ相変態する温度以上でナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行う製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブをテンプレート材料とした、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブとその製造方法に関するものである。更に、本発明は、カーボンナノチューブをテンプレート材料としたTiO超微粒子担持カーボンナノチューブとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブの発見以来、新たなセラミック一次元ナノ構造体の作製が試みられている。特に、カーボンナノチューブをテンプレート材料として用いること等により、さまざまなセラミックナノチューブの合成が行われている。しかしながら、現在までに報告されているナノチューブの多くは酸化物であり、炭化物セラミックナノチューブの合成に関する報告は数少ない。一例として、カーボンナノチューブをテンプレート材料にTiCナノ構造体を合成したことが報告されているが(非特許文献1参照)、このTiCナノ構造体は中空を有するチューブではなく、棒状のロッドであり、他にTiCナノチューブを製造したという報告は存在しない。同様に、TiC微粒子が担持されたカーボンナノチューブを製造したという報告も存在しない。
【0003】
一方、酸化物ナノチューブであるTiOナノチューブは、これまで多くの研究者により製造されている。しかしながら、これらはTiOナノシートが丸まって形成された層状の単結晶TiOナノチューブである(例えば、非特許文献2参照)。TiO超微粒子が担持されたカーボンナノチューブの製造例は報告されていない。
【非特許文献1】Hongjle Dai,外4名、炭化物ナノロッドの合成と特徴(Synthesis and characterization of carbide nanorods)、「ネイチャー(Nature)」、1995年6月29日、VOL 375、p.769−772
【非特許文献2】Tomoko Kasuga,外4名、酸化チタンナノチューブの形成(Formation of Titanium Oxide Nanotube)、「ラングミュア(Langmuir)」、アメリカ化学会1998年、14、p.3160−3163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カーボンナノチューブをテンプレート材料とした、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブとその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、カーボンナノチューブをテンプレート材料としたTiO超微粒子担持カーボンナノチューブとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の目的に鑑み鋭意研究を行った結果、本発明者らは、原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を用いて、所定の条件下で熱処理に供することにより、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブを大量に製造できることを発見し、本発明を完成させた。また、このようにして製造されたTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを、更に所定の条件下で熱処理に供することにより、TiO超微粒子担持カーボンナノチューブ製造できることを発見し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の第一は、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブを製造するための方法であって、原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、そして前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、前記カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において熱処理に供して反応させることを含み、その際、前記熱処理を、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うことを特徴とする。これにより、これまで製造されていなかった新規なTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブを提供することができる。
【0007】
本発明の製造方法においては、熱処理温度が1200℃〜1400℃であることが好ましい。これにより、熱処理によりTiCの生成反応が進行する一方、Tiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される。
【0008】
また、本発明の製造方法においては、カーボンナノチューブ及びTi粉末を、直接接触させることなく熱処理に供することが好ましい。これにより、反応後にカーボンナノチューブとTi粉末とを分離する不都合や、得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外表面にTi層が形成されうる不都合を回避することができる。
【0009】
更に、本発明の製造方法においては、所定の外径及び内径を有するカーボンナノチューブを選択して提供することにより、製造されるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外径及び内径を制御可能であることを特徴とする。これにより、寸法を制限要素とする用途に合わせた外径及び内径を有するTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブを提供することができる。
【0010】
本発明の第二は、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブであって、カーボンナノチューブの表面に約50nmの平均粒子径を有するTiC超微粒子が担持されていることを特徴とする。これにより、これまで製造されていなかった新規なTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを提供することができる。
【0011】
本発明の第三は、TiCナノチューブであって、TiCから構成され、かつ外径が約200nm以下であり内径が約100nm以下であることを特徴とする。これにより、これまで製造されていなかった新規なTiCナノチューブを提供することができる。
【0012】
本発明の第四は、TiO超微粒子担持カーボンナノチューブを製造するための方法であって、原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、前記カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において第一の熱処理に供して反応させ、その際、前記第一の熱処理を、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行い、そして得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気下で第二の熱処理に供し、その際、前記第二の熱処理を、TiCがTiOへ相変態する温度以上でナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うことを含むことを特徴とする。これにより、これまで製造されていなかった新規なTiO超微粒子担持カーボンナノチューブを提供することができる。
【0013】
本発明の製造方法においては、第一の熱処理温度が、1200℃〜1400℃であることが好ましい。これにより、熱処理によりTiCの生成反応が進行する一方、Tiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される。
【0014】
本発明の製造方法においては、カーボンナノチューブ及びTi粉末を、直接接触させることなく熱処理することが好ましい。これにより、反応後にカーボンナノチューブとTi粉末とを分離する不都合や、得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外表面にTi層が形成されうる不都合を回避することができる。
【0015】
本発明の製造方法においては、第二の熱処理温度が、300℃〜700℃であることが好ましい。これにより、TiCがTiOへ相変態する一方、ナノチューブ構造が維持される。
【0016】
本発明の第五は、TiO超微粒子担持カーボンナノチューブであって、カーボンナノチューブの表面に約50nmの平均粒子径を有するTiO超微粒子が担持されていることを特徴とする。これにより、これまで製造されていなかった新規なTiO超微粒子担持ナノチューブを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にしたがえば、これまでに製造されていなかった、カーボンナノチューブをテンプレート材料としたTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ、TiCナノチューブ、及びTiO超微粒子担持カーボンナノチューブが提供される。
【0018】
また、本発明にしたがえば、カーボンナノチューブをテンプレート材料としたTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ、TiCナノチューブ、及びTiO超微粒子担持カーボンナノチューブを、簡便かつ大量生産が可能な方法により製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のカーボンナノチューブをテンプレート材料とした、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブとその製造方法、並びにカーボンナノチューブをテンプレート材料としたTiO超微粒子担持カーボンナノチューブとその製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0020】
まず、本発明のカーボンナノチューブをテンプレート材料とした、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブとその製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0021】
本明細書中において「TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ」とは、その表面に約50nmの平均粒子径を有するTiC超微粒子が担持されていることを特徴とするカーボンナノチューブをいうものとする。また、本明細書中において「TiCナノチューブ」とは、TiCから構成され、かつ外径が200nm以下であり内径が100nm以下であるチューブをいうものとする。
【0022】
本発明のTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブを製造するための方法は、原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、そして前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、前記カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において熱処理に供して反応させることを含む方法である。
【0023】
本発明において使用することができるカーボンナノチューブには特に制限はない。但し、カーボンナノチューブにおける炭素からTiCへの相変態に伴う体積膨張により、チューブの中空構造が埋まってしまうことを避けるためには、内径が大きく肉厚が薄いものが好ましい。
【0024】
製造されるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外径及び内径は、原料であるカーボンナノチューブの外径及び内径に実質的に依存する。実際には、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブにおいては、TiC超微粒子が担持される量に依存してカーボンナノチューブ原料の寸法より大きくなり、TiCナノチューブにおいても原料であるカーボンナノチューブの寸法より大きくなるが、製造されるナノチューブの寸法においてはカーボンナノチューブ原料の寸法が支配的である。したがって、所定の外径及び内径を有するカーボンナノチューブを選択して提供することにより、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外径及び内径を制御することができる。
【0025】
また、本発明において使用することができるTi粉末には特に制限はない。但し、熱処理において蒸発の容易性を考慮すれば、Ti粉末は粒径が小さいものが好ましい。
本発明の一態様においては、原料であるカーボンナノチューブ及びTi粉末を非密封状態の容器中におく。非密封状態の容器中で反応を行うことにより、通常密封状態を形成するための手段として使用される石英ガラス封入などの処理工程を省くことができ、より簡便な製造方法を実現することができる。容器は熱処理温度、特に1200℃〜1400℃の温度に耐えうるものであれば制限はないが、好ましくは、坩堝である。坩堝は熱処理条件において原料と反応しない材質のものであればよく、好ましくは、窒化ボロン製坩堝である。
【0026】
本発明において、カーボンナノチューブ及びTi粉末の熱処理は、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うものとする。熱処理温度は、好ましくは、1200℃〜1400℃である。熱処理は電気炉等の適当な手段により行うことができる。また、熱処理は、カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において行うものとし、具体的には10−3Torr以下の圧力であることが好ましい。
【0027】
この熱処理によりTi粉末原料は気化し、蒸気としてカーボンナノチューブ原料の炭素と反応する。カーボンナノチューブ原料のうちすべての炭素がTiと反応して完全にTiC化すればTiCナノチューブが製造され、カーボンナノチューブ原料が完全にTiC化する前の段階では、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブが製造されることとなる。Tiと炭素の反応の進行は、熱処理温度、熱処理時間、Ti蒸気濃度等に依存し、これらの条件は相互に関係している。Ti蒸気濃度についてのみ考慮すれば、気化したTi蒸気の濃度が高い場合は反応が促進されてTiCナノチューブが製造され、Ti濃度が低い場合はTiC超微粒子担持ナノチューブが製造される。また、熱処理時間についてのみ考慮すれば、熱処理時間が充分に長い場合は反応が進行してTiCナノチューブが製造され、熱処理時間が短い場合は反応が進行せずにTiC微粒子担持ナノチューブが製造される。しかし実際には、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブとTiCナノチューブが同時に製造される場合が存在し、これは、カーボンナノチューブ原料の形状(塊状)により、Ti蒸気のカーボンナノチューブへの拡散濃度に分布が生じることによるものと考えられる。このようにして同時に製造されたTiC超微粒子担持カーボンナノチューブとTiCナノチューブの選別は、電子線回折によりカーボン単相由来のピークが存在しないこと、透過型電子顕微鏡によりカーボン単相由来の格子像が存在しないこと、X線回折によりカーボン以外のピークが生成していること等から行うことができる。
【0028】
本発明において、熱処理を行う時間は、100時間以下であればよく、熱処理温度とTi蒸気濃度を考慮して適宜決定することができる。
本発明において、カーボンナノチューブ及びTi粉末は、直接接触させることなく熱処理に供することが好ましい。カーボンナノチューブとTi粉末とを接触させて熱処理に供した場合、反応後にカーボンナノチューブとTi粉末とを分離する工程が必要となるため不都合である。このとき更に、1300℃の高温で熱処理を行う場合には、カーボンナノチューブとTi粉末とが強固に癒着し、得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外表面にTi層が形成されうる不都合もある。したがって、カーボンナノチューブ及びTi粉末を直接接触させることなく熱処理に供することにより、これらの不都合を回避することができる。
【0029】
このようにして製造される本発明のTiC超微粒子担持カーボンナノチューブは、その表面に約50nmの平均粒子径を有するTiC超微粒子が担持されたカーボンナノチューブである。また、本発明のTiCナノチューブは、TiCから構成され、かつ外径が200nm以下であり内径が100nm以下であるナノチューブである。
【0030】
次に、本発明のカーボンナノチューブをテンプレート材料とした、TiO超微粒子担持カーボンナノチューブとその製造方法の好適な実施形態について説明する。以下、特に説明しない事項については、上記説明したTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブとその製造方法の好適な実施形態と同様である。
【0031】
本明細書中において「TiO超微粒子担持カーボンナノチューブ」とは、その表面に約50nmの平均粒子径を有するTiO超微粒子が担持されていること特徴とするカーボンナノチューブをいうものとする。
【0032】
本発明のTiO超微粒子担持カーボンナノチューブを製造するための方法は、原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、前記カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において第一の熱処理に供して反応させ、そして得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気下で第二の熱処理に供して反応させることを含む方法である。
【0033】
本発明において第一の熱処理は、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うものとする。第一の熱処理温度は、好ましくは、1200℃〜1400℃である。
【0034】
本発明において、第二の熱処理は、TiCがTiOへ相変態する温度以上でナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うものとする。第二の熱処理温度は、好ましくは、300℃〜700℃である。
【0035】
このようにして製造される本発明のTiO超微粒子担持カーボンナノチューブは、その表面に約50nmの平均粒子径を有するTiO超微粒子が担持されたカーボンナノチューブである。
【0036】
以下、本発明を、一実施態様である実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
(実施例)
本発明の製造方法を実施するために使用できる装置の一例を、図1に示す。
図1において、原料であるカーボンナノチューブ1とTi粉末2とを、直接接触しないように窒化ボロン製の坩堝3中に入れた。本実施例において、カーボンナノチューブはGSI Creos社製のカルベール(登録商標)を使用し、ケイ素粉末は、ニラコ社製のTi粉末を使用した(粒度325メッシュ、純度99%)。
【0038】
その坩堝を、窒化ボロン製の蓋4で蓋をし、電気炉容器(真空容器)5に入れた。電気炉容器中を10−2Pa程度まで真空排気して、ヒーター6で電気炉内の雰囲気温度を1300℃にした後、坩堝を100時間電気炉容器中に静置して、カーボンナノチューブとTi粉末とを反応させた。
【0039】
製造されたTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及びTiCナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を、それぞれ、図2及び図3に示す。これらの図より、本発明の方法に従えば、平均50nmのTiC超微粒子を有するTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び外径が200nm以下であり内径が100nm以下のTiCナノチューブを製造することができることがわかる。
【0040】
さらに、製造されたTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを、温度450℃、保持時間3時間、大気中の条件で熱処理に供した。このようにして、製造されたTiO超微粒子担持カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を、図4に示す。図より、本発明の方法に従えば、平均50nmのTiO超微粒子を有するTiO超微粒子カーボンナノチューブを製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
TiOは、産業上において主に光触媒として応用されており、例えば光触媒能を向上させるために、Pt等の金属をTiOに担持させるという研究等も行われている。これにより、光照射によりTiO内に生成した電子は、金属であるPtに移行して還元反応を引き起こし、正孔はTiO表面で酸化反応を引き起こさせる。このように金属をTiOに担持させることにより、生成した電子と空孔が再結合を起こし、光触媒能が低下することを防ぐことができる。同様に、本発明にしたがって製造されるTiO超微粒子担持カーボンナノチューブにおいては、光照射下でTiO内に生成した電子が、カーボンナノチューブ内に取り込まれることにより、電子と空孔の再結合が起こりづらくなり、光触媒能が向上するものと考えられる。
【0042】
また、TiCはもともと超硬質材料であるために、TiC微粒子を担持することによりカーボンナノチューブの機械的特性の向上が考えられ、さらにはカーボンナノチューブを補強材として使用する複合材料の機械的特性の向上も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施するために使用できる装置の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明のTiC超微粒子担持カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明のTiCナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本発明のTiO超微粒子担持カーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0044】
1 カーボンナノチューブ
2 Ti粉末
3 窒化ボロン製坩堝
4 窒化ボロン製坩堝の蓋
5 電気炉容器(真空容器)
6 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブを製造するための方法であって、
原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、そして
前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、前記カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において熱処理に供して反応させることを含み、
その際、前記熱処理を、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記熱処理温度が、1200℃〜1400℃であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、直接接触させることなく熱処理に供することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
所定の外径及び内径を有するカーボンナノチューブを選択して提供することにより、製造されるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブの外径及び内径を制御可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
カーボンナノチューブの表面に約50nmの平均粒子径を有するTiC超微粒子が担持されていることを特徴とする、TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ。
【請求項6】
TiCから構成され、かつ外径が約200nm以下であり内径が約100nm以下であることを特徴とする、TiCナノチューブ。
【請求項7】
TiO超微粒子担持カーボンナノチューブを製造するための方法であって、
TiC超微粒子担持カーボンナノチューブ及び/又はTiCナノチューブを製造するための方法であって、
原料としてカーボンナノチューブ及びTi粉末を提供し、
前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、前記カーボンナノチューブが酸化され消失しない真空度において第一の熱処理に供して反応させ、その際、前記第一の熱処理を、TiCの生成反応が進行する温度以上でTiが溶融せずかつナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行い、そして
得られるTiC超微粒子担持カーボンナノチューブを、酸素を含む雰囲気下で第二の熱処理に供し、その際、前記第二の熱処理を、TiCがTiOへ相変態する温度以上でナノチューブ構造が維持される温度以下の温度で行うことを含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項8】
前記第一の熱処理温度が、1200℃〜1400℃であることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ及びTi粉末を、直接接触させることなく熱処理に供することを特徴とする、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第二の熱処理温度が、300℃〜700℃であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
カーボンナノチューブの表面に約50nmの平均粒子径を有するTiO超微粒子が担持されていることを特徴とする、TiO超微粒子担持カーボンナノチューブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−84369(P2007−84369A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273441(P2005−273441)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本セラミックス協会発行、2005年年会講演予稿集、2005年3月22日発行
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】