説明

UHMWPEにおける複数の添加剤のブレンドによる相乗効果

製造における少なくとも2つの異なる添加剤によって架橋UHMWPEの耐酸化性が相乗的に増大される、耐酸化性の架橋された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を記載する。これにより、低レベルの添加剤および/または低レベルの架橋性照射もしくは化学物質を使用して、耐酸化性の架橋UHMWPEを製造することができる。低レベルの添加剤および/または架橋は、添加剤の相乗的相互作用があって初めて可能となる所望の物理的特性を有する架橋UHMWPEをもたらす。この架橋UHMWPEは、添加剤の相乗的相互作用があって初めて可能となる耐摩耗性および耐酸化性などの所望の物理的特性を有する、軸受構成要素などの医療用プロテーゼにおいて使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年5月4日出願の米国特許仮出願第61/175,308号の優先権を主張するものであり、この出願全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、耐酸化性ポリマーの製造および使用を含む、耐酸化性ポリマーに関する。これには、非限定的な例として耐酸化性の架橋された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が含まれる。本発明はさらに、かかるポリマーの1つまたは複数を含有し、またはそれから製造された医療用プロテーゼを含む、人工身体の部材における耐酸化性の架橋UHMWPEを含むポリマーの使用に関する。非限定的な例には、耐酸化性UHMWPEなどのポリマーが、関節の関節接合部材の表面を提供することを含み、関節の軸受部を形成する股関節および膝関節などの代替関節のための医療用プロテーゼが含まれる。非限定的な例では、医療用プロテーゼの一部は、金属またはセラミックから製造された球状部分などの医療用プロテーゼの別の部分が、体内の関節の使用中に軸受表面に対して関節接合する、寛骨臼の表面などの表面を形成するポリマー軸受を含有する。
【背景技術】
【0003】
人工膝および股関節移植片などの関節形成術におけるプロテーゼ移植片は、一般に関節の半分を成し、球状の構成要素の関節接合部を受けるための凹面のレセプタクル形状になっているUHMWPEなどのポリマーに対して、一般に関節のもう半分を成す、一般に金属またはセラミック製いずれかの球状構成要素の関節接合部を含む。10年以上前に、UHMWPEを電離放射線に曝露することによって材料が架橋され、耐摩耗性が劇的に改善されることが発見された。それとは対照的に、電離放射線はまた、ポリマー鎖の鎖切断をもたらし、材料における長寿命フリーラジカルを作成する。これらのフリーラジカルが消失しない場合、それらは酸素と反応し、ポリマーを酸化させ、その後機械特性およびトライボロジー特性を低下させる。フリーラジカルを消失させるために、一般に照射後の熱処理が行われる。
【0004】
融解温度を超える架橋ポリマーの加熱(すなわち再溶融)は、架橋材料における測定可能なフリーラジカルのすべてを消失させ、酸化に対してポリマーを安定化することが示されている。他方では、架橋鎖の可動性の低減によって結晶ラメラへの鎖の折りたたみが阻害されるため、再溶融によって結晶化度が低減し、したがって降伏強度および最大引張強度も低減する。
【0005】
あるいは、架橋ポリマーは、融解温度未満の温度に加熱することができる(すなわちサブメルト(sub-melt)アニーリング)。大型の結晶ラメラは、サブメルトアニーリング中に溶融しないので、その結晶化度は一般に維持または増大され、それによって一般に降伏強度が維持または改善され、得られる材料の最大引張強度の減少が少なくなる。それとは対照的に、サブメルト熱処理の選択によって、材料の非溶融結晶領域に測定可能な量のフリーラジカルが残り、それが経時的に外側に向かって移動し、酸化することがある。
【0006】
これらのトレードオフの結果、高度に架橋されたUHMWPEを、その機械特性を損なうことなく酸化に対して安定化する方法が望ましい。
【0007】
抗酸化剤とのUHMWPE樹脂のブレンドは、照射後の熱処理の必要性およびこれらの方法に固有のその後のトレードオフをなくすために使用されている。この手法では、単一の抗酸化剤を樹脂とブレンドし、次いでそのブレンドを圧縮成形またはラム押出などの標準技術によって強化する。次いで、この強化されたブレンドは、材料を架橋し、耐摩耗性を改善するために電離放射線に曝露される。ブレンドされた抗酸化剤は、フリーラジカル消去剤として作動し、損傷を受けたポリマー鎖に水素(H)原子を容易に供与し、次いでフリーラジカル上に積み込んで酸素と反応しない安定なフリーラジカルを形成することによって、酸化経路を遮断する。照射後の熱処理は、この特定の方法によるフリーラジカルの除去にとって必須でないため、機械特性はそれ程低下しない。
【0008】
他方では、このブレンド法には2つの固有の問題がある。第1に、各抗酸化分子は、有限数の水素原子を供与し/有限数のフリーラジカルをクエンチまたは消失させることができる。例えば、各ビタミンE分子は、2つのフリーラジカルをクエンチできることが理論化されている。結果として、フリーラジカルの消去中の抗酸化剤の消費は、酸化に対して保護をもたらすのに有効な時間を制限し得る。例えば、抗酸化剤の濃度が低すぎると、フリーラジカルのすべてが消失する前にフリーラジカルをクエンチする能力のすべてが消費され、したがって酸素と反応し、酸化を引き起こし得るフリーラジカルが残ることになる。この予測から、フリーラジカルのすべてを捕捉する前に抗酸化剤のすべてが消費されないようにし、長期間の耐酸化性を最大にするような高濃度の抗酸化剤を有することが好ましい。他方では、ある限界を超えて抗酸化剤の濃度を増大させると過飽和が生じて、ポリエチレンから抗酸化剤が溶離または拡散して出ることがある。この溶離の結果、抗酸化剤とヒトの身体との望ましくない相互反応または材料の表面に残る抗酸化剤の枯渇が生じ得る。
【0009】
第2に、照射されたポリマーの耐摩耗性の改善は、電離放射線によるフリーラジカルの発生、およびその後のポリマー鎖間の化学的結合(すなわち架橋)を形成するためのフリーラジカルの組合せに依存して決まる。照射中の抗酸化剤の存在によって、これらのフリーラジカルのいくらかが消去され、架橋の望ましくない阻害がもたらされる。結果として、抗酸化剤を含まないポリマーと比較して同レベルの耐摩耗性をもたらすためには、より高い照射線量が必要である。架橋の阻害を克服するために照射線量を増大させると、架橋された材料の延性および靭性がさらに低減する結果になる。この予測から、架橋の阻害および必要な照射線量を最小限にして所与の耐摩耗性を達成するために、抗酸化剤の濃度を最小限に抑えることが好ましい。
【0010】
それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7431874号および同第7498365号は、ブレンドによるこれらの問題を回避する方法を開示している。この方法によれば、UHMWPEは、拡散によって材料にビタミンE(Vit E)を導入する前に強化され、照射される。材料は、照射時には抗酸化剤を含有していないため、架橋は阻害されない。阻害が問題にならないため、ポリマー中のVit Eの濃度を増大させることによって、既存のフリーラジカルのすべてをクエンチし、長期間の耐酸化性をもたらすのに十分な量の抗酸化剤が存在するようにすることができる。
【0011】
この拡散方法の負の側面は、十分な量のVit Eを材料内に拡散させ、構成要素中にわたってその濃度を均質にするのに必要な時間および費用に関するものである。さらに、この方法で一般に利用される高濃度のVit Eは、濃度勾配を増大させ、それによってVit Eがポリエチレンから溶離または拡散して出て、表面の抗酸化剤が枯渇し得る。
【0012】
相乗的な抗酸化剤と、フリーラジカルのクエンチおよび抗酸化剤の「再生」または「再利用」に対するそれらの効果との組合せは、過去にも考慮されているが、医療用プロテーゼを含む医療上の使用に関するものはなかった。例えば、Vit Eの再生は、アスコルビン酸(ビタミンC)などの他の分子との化学反応によりインビボで生じることが文献において実証されている。この相互反応の結果、Vit E分子は「再充填(recharged)」され、理論的にはさらに2つのフリーラジカルをクエンチすることができる。この方法は、際限なく進行して、低濃度の抗酸化剤によって長期間の耐酸化性をもたらすことができる。相乗的分子によるクルクミンのインビボでの類似の再生は、腫瘍学研究に基づいて理論化されている。ポリマー科学では、Vit Eとホスフェート抗酸化剤の組合せまたはVit Eと多価アルコールの組合せは、類似の相乗的機構を介して共に変色を低減し、ポリプロピレンの溶融処理中のVit Eの高い保持率を増進する。
【0013】
UHMWPEに関する従来技術における研究のすべては、ただ1つの抗酸化剤をUHMWPEとブレンドするものであった。さらに、欧州特許出願第EP2047823A1号は、例えば、「経済上および効率上」は「1つの抗酸化剤が好ましい」と具体的に記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7431874号
【特許文献2】米国特許第7498365号
【特許文献3】欧州特許出願第EP2047823A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
単一の抗酸化剤を組み込むことの問題は、処理中、処理後のフリーラジカルのクエンチ中、および使用/提供中に、抗酸化剤が少なくとも部分的に消費されるということである。結果として従来技術の組成物は、耐用期間にわたって長期間の酸化から医療機器を保護するのに十分な抗酸化剤が存在するようにするために、高濃度の抗酸化剤を必要とする。このように高濃度の単一の抗酸化剤が必要になると、架橋が阻害され、所与の耐摩耗性を達成するために高い照射線量が必要となり、最終的には機械特性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、2つ以上の添加剤を架橋UHMWPEに添加することによって、2つの添加剤だけの相加的作用よりも(すなわち相乗的に)材料の耐酸化性が改善されるという発見に関する。この発見は少なくとも、2つ以上の異なる抗酸化剤または添加剤をUHMWPEに添加することによって耐酸化性UHMWPEを調製する方法、この耐酸化性UHMWPEを使用して製造された医療用プロテーゼ、およびかかる医療用プロテーゼを必要としている患者におけるかかる医療用プロテーゼの使用に関する。
【0017】
本発明のいくつかの潜在的に可能な処理経路の例を、図1に示す。本発明は、選択された添加剤および/または抗酸化剤の組合せが、UHMWPEのトライボロジー性能を損なうおそれがある単一の抗酸化剤のブレンドおよび不適切な架橋に現在関連する前述の問題の一方または両方を解決する医療機器の組成物を含む。
【0018】
本発明は、選択された相乗的添加剤/抗酸化剤を別の抗酸化剤とUHMWPEにブレンドして、抗酸化剤を再生または再利用し、フリーラジカル消去中の抗酸化剤の消費を回避することを含み、それによって高い耐酸化性を達成するだけでなく、高い耐摩耗性表面を生成する、低濃度の抗酸化剤を伴う医療機器を生成することもできる。さらに、低濃度の抗酸化剤によって、放射線に曝露する際の架橋の阻害が低減し、それにより所与の耐摩耗性を達成するための高い照射線量の必要性が低減され、したがって機械特性の低下を少なくすることができる。あるいは本発明は、類似の濃度の抗酸化剤を有するにもかかわらず、従来の機器と比較して耐酸化性が改善されている。
【0019】
さらに本発明は、強化/処理中の抗酸化剤の保存、ならびに処理および/または提供中のUHMWPEの変色の低減という点において、従来技術を上回る利点を有する。
【0020】
本発明の一実施形態は、(i)UHMWPE樹脂を得るステップと、(ii)UHMWPE樹脂を、第1の量の第1の添加剤および第2の量の第2の添加剤の両方と混成するステップと(第1および第2の添加剤は、異なる添加剤である)、(iii)第1および第2の添加剤と混成されたUHMWPEを強化するステップと、(iv)強化されたUHMWPEを架橋して、耐酸化性UHMWPEを作成するステップとを含む、医療用プロテーゼにおいて使用するための架橋された耐酸化性UHMWPEを調製する方法を含む。
【0021】
特定の実施形態では、UHMWPE樹脂は、少なくとも第1および/または第2の添加剤と混成される前に、例えば照射または化学的架橋によって架橋される。
【0022】
特定の実施形態では、UHMWPEの架橋は、照射架橋または化学的架橋によって行われる。
【0023】
本発明のまたさらなる実施形態では、抗酸化性に対する、少なくとも第1の添加剤および少なくとも第2の添加剤の組合せによる相乗効果によって、第1および/または第2の添加剤の量を低減して、例えば高濃度のいずれかの添加剤のみによって達成されていたのと同レベルの耐酸化性を達成することができる。
【0024】
またさらに特定の実施形態では、本発明のUHMWPEにおける低濃度の抗酸化添加剤によって、架橋を妨げる添加剤の量が少ないことから低い線量での架橋が可能になるので、UHMWPEにおける少なくとも第1の添加剤および/または少なくとも第2の添加剤の量を低減することに起因して、単一の添加剤が存在する場合に必要とされていた線量と比較して、照射または化学的架橋の線量を低減することができる。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、ステップ(ii)(先の)においてUHMWPE樹脂と混成される第1の添加剤の量は、UHMWPEの相対量に対して約50ppm〜約5,000ppm、より好ましくは約50ppm〜約2,000ppm、さらにより好ましくは約100ppm〜約1,000ppm、さらに好ましくは約200ppm〜約800ppmであり、ステップ(ii)(先の)においてUHMWPE樹脂と混成される第2の添加剤の量は、UHMWPEの相対量に対して約50ppm〜約5,000ppm、より好ましくは約50ppm〜約2,000ppm、さらにより好ましくは約100ppm〜約1,000ppm、さらに好ましくは約200ppm〜約800ppmである。
【0026】
本発明の他の実施形態では、ステップ(ii)(先の)においてUHMWPE樹脂と混成される第1の添加剤の量は、UHMWPEの相対量に対して約0.005wt.%〜約0.5wt.%であり、ステップ(ii)(先の)においてUHMWPE樹脂と混成される第2の添加剤の量は、UHMWPEの相対量に対して約0.005wt.%〜約0.5wt.%である。
【0027】
より具体的には、架橋が照射によって行われる特定の実施形態では、架橋の線量は、約1.5MRad〜約30MRad、より好ましくは約2.5MRad〜約15MRad、さらにより好ましくは約2.5MRad〜約12MRadである。
【0028】
他の実施形態では、前述の通り耐酸化性UHMWPEが製造された(2つ以上の添加剤と混成、強化および架橋された)後、UHMWPEは、医療用プロテーゼにおいて使用するための軸受構成要素にさらに機械加工される。
【0029】
特定の実施形態では、混成、強化および架橋されたUHMWPE、ならびにこのUHMWPEから製造された軸受構成要素の架橋密度は、約0.03mol/dm3〜約0.50mol/dm3である。
【0030】
先に論じた実施形態を含むさらなる実施形態では、第1の添加剤は、フェノール性抗酸化剤およびヒンダードアミンからなる群から選択され、第2の添加剤は、亜リン酸添加剤、多価アルコール、フェノール性抗酸化剤、ヒンダードアミン、カロテノイド、アミノ酸系添加剤、チオ共力剤(thiosynergist)および抗酸化剤(acid antioxidant)からなる群から選択される。
【0031】
またさらに、先に論じた実施形態を含むさらなる実施形態では、第1の添加剤のフェノール性抗酸化剤は、トコフェロール、トコトリエノール、クルクミノイド、フラボノイド、フェニルプロパノイドおよび合成フェノール性抗酸化剤からなる群から選択され、第1の添加剤のヒンダードアミン抗酸化剤は、chimassorb 944、chimassorb 119 FL、cyasorb UV 3346、tinuvin 144、tinuvin 765、tinuvin 770 DFからなる群から選択され、第2の添加剤の亜リン酸添加剤は、ホスフィット、ホスホニットおよびホスフィンからなる群から選択され、第2の添加剤の多価アルコールは、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンエトキシレートからなる群から選択され、第2の添加剤のフェノール性抗酸化剤は、トコフェロール、トコトリエノール、クルクミノイド、フラボノイド、フェニルプロパノイド合成抗酸化剤およびベンゾキノールからなる群から選択され、第2の添加剤のヒンダードアミンは、chimassorb 944、chimassorb 119 FL、cyasorb UV 3346、tinuvin 144、tinuvin 765、tinuvin 770 DFからなる群から選択され、第2の添加剤のカロテノイドは、β-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、エキネノンおよびゼアキサンチンからなる群から選択され、第2の添加剤のアミノ酸系添加剤は、グルタチオン、システイン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、第2の添加剤のチオ共力剤は、チオジプロピオン酸ジステアリル、irganox PS 800およびirganox PS 802からなる群から選択され、第2の添加剤の抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビル、アスコルベートおよびリポ酸からなる群から選択される。
【0032】
またさらに、例えば先に論じた非限定的な例を含む本発明の実施形態では、第1の添加剤のトコフェロールは、dl-α-トコフェロール、α-トコフェロール、δ-トコフェロール、γ-トコフェロールおよびβ-トコフェロールからなる群から選択され、第1の添加剤のトコトリエノールは、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールからなる群から選択され、第1の添加剤のクルクミノイドは、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、クルクミン硫酸塩、クルクミン-グルクロニド、ヘキサヒドロクルクミンおよびシクロクルクミンからなる群から選択され、第1の添加剤のフラボノイドは、ナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペリチン、ルテオリン、カテキン、アントシアニンからなる群から選択され、第1の添加剤のフェニルプロパノイドは、オイゲノールであり、第1の添加剤の合成フェノール性抗酸化剤は、irganox 1010、irganox 1076、irganox 245、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびブチル化ヒドロキシアニソールからなる群から選択され、第2の添加剤のホスフィットは、ultranox U626、hostanox PAR24、irgafos 168、Weston 619およびirgafox 126からなる群から選択され、第2の添加剤のホスホネートは、sandostab P-EPQであり、第2の添加剤のホスフィンは、pepfineであり、第2の添加剤のトコフェロールは、dl-α-トコフェロール、α-トコフェロール、δ-トコフェロール、γ-トコフェロールおよびβ-トコフェロールからなる群から選択され、第2の添加剤のトコトリエノールは、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールからなる群から選択され、第2の添加剤のクルクミノイドは、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、クルクミン硫酸塩、クルクミン-グルクロニド、ヘキサヒドロクルクミンおよびシクロクルクミンからなる群から選択され、第2の添加剤のフラボノイドは、ナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペリチン、ルテオリン、カテキンおよびアントシアニンからなる群から選択され、第1の添加剤の合成抗酸化剤は、irganox 1010、irganox 1076、irganox 245、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびブチル化ヒドロキシアニソールからなる群から選択され、第2の添加剤のベンゾキノールは、ユビキノールおよび補酵素Q10からなる群から選択される。
【0033】
さらに、例えば先に論じた実施形態を含む本発明の実施形態では、第1の添加剤のカテキンは、没食子酸エピガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキンおよびエピカテキンからなる群から選択され、第1の添加剤のアントシアニンは、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジンおよびペラルゴニジンからなる群から選択され、第2の添加剤のカテキンは、没食子酸エピガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキンおよびエピカテキンからなる群から選択され、第2の添加剤のアントシアニンは、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジンおよびペラルゴニジンからなる群から選択される。
【0034】
好ましい実施形態では、耐酸化性UHMWPEは、フェノール性抗酸化剤である第1の添加剤およびクルクミノイドである第2の添加剤をUHMWPE樹脂と混成し、混成された材料を強化し、強化されたUHMWPEを架橋するステップを含む前述の実施形態に従って製造される。またさらに好ましい実施形態は、第1の添加剤がdl-α-トコフェロールであり、第2の添加剤がクルクミンである前述のものを含む。
【0035】
さらに他の好ましい実施形態では、耐酸化性UHMWPEは、フェノール性抗酸化剤である第1の添加剤およびクルクミノイドである第2の添加剤をUHMWPE樹脂と混成し、混成された材料を強化し、強化されたUHMWPEを架橋するステップを含む前述の実施形態に従って製造される。またさらに好ましい実施形態は、第1の添加剤がdl-α-トコフェロールであり、第2の添加剤がクルクミンである前述の方法を含む。前述の実施形態に加えて、他の好ましい実施形態では、第1の添加剤はdl-α-トコフェロールであり、第2の添加剤はジペンタエリスリトールである。先の実施形態におけるまたさらに好ましい実施形態では、第1の添加剤はクルクミンであり、第2の添加剤はジペンタエリスリトールである。
【0036】
またさらに好ましい実施形態では、UHMWPE樹脂ならびに第1および第2の添加剤は、前述の通り混成され、その組合せは、本明細書に記載の通り強化され、UHMWPEは照射され、第1の添加剤はdl-α-トコフェロールであり、第1の添加剤はUHMWPEの相対量に対して約250ppmでUHMWPE樹脂と混成され、第2の添加剤はクルクミンであり、第2の添加剤はUHMWPEの相対量に対して約250ppmでUHMWPEと混成され、強化されたUHMWPEは、線量約10MRadの照射によって架橋される。
【0037】
他の好ましい実施形態では、UHMWPE樹脂ならびに第1および第2の添加剤は、前述の通り混成され、第1の添加剤であるdl-α-トコフェロールは、UHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、第2の添加剤であるクルクミンは、UHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、架橋は、線量約10MRadの照射によって行われる。
【0038】
さらに他の好ましい実施形態では、耐酸化性UHMWPEは、クルクミンである第1の添加剤およびジペンタエリスリトールである第2の添加剤をUHMWPE樹脂と混成し、混成された材料を強化し、強化されたUHMWPEを架橋するステップを含む前述の実施形態に従って製造される。
【0039】
またさらに好ましい実施形態では、UHMWPE樹脂ならびに第1および第2の添加剤は、前述の通り混成され、その組合せは、本明細書に記載の通り強化され、UHMWPEは照射され、第1の添加剤はクルクミンであり、第1の添加剤はUHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPE樹脂と混成され、第2の添加剤はジペンタエリスリトールであり、第2の添加剤はUHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、強化されたUHMWPEは、線量約10MRadの照射によって架橋される。
【0040】
他の好ましい実施形態では、UHMWPE樹脂ならびに第1および第2の添加剤は、前述の通り混成され、第1の添加剤であるdl-α-トコフェロールは、UHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、第2の添加剤であるクルクミンは、UHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、架橋は、線量約10MRadの照射によって行われる。
【0041】
本発明の他の好ましい実施形態は、先に概説し、以下に詳説する耐酸化性UHMWPEの製造方法のいずれかよって製造された架橋UHMWPEを含む軸受構成要素を含む医療用プロテーゼを含む。さらに好ましい実施形態では、本発明の方法に従って製造された軸受を有する医療用プロテーゼは、それに限定されるものではないが、股関節、膝関節または指関節プロテーゼなどの関節プロテーゼであってよい。
【0042】
本発明の他の実施形態では、先に概説し、以下に詳説する方法に従って製造された架橋耐酸化性UHMWPEの軸受構成要素を有する医療用プロテーゼは、人工股関節および関節プロテーゼを含むかかるプロテーゼを必要としている患者に施すことができる。
【0043】
本発明の他の実施形態では、第1および/または第2の添加剤は、厳密には強化および照射の前にそれらをUHMWPE樹脂と混成する以外の方法で、UHMWPEに添加される。
【0044】
例えば、本発明の実施形態では、第1の抗酸化剤は、第1の添加剤を有する強化されたUHMWPEを生成するために、UHMWPE樹脂(これ自体、既に架橋されていてもよい)と混成され、強化される。次いで、強化されたプリフォーム(perform)は、この時点で、または強化されたUHMWPEに第2の添加剤を添加する次のステップの後に架橋することができる。この実施形態のこのステップでは、第2の添加剤は、強化されたUHMWPE(既に架橋されているか、またはまだ架橋されていない)に、拡散によって添加される。例えば拡散は、強化されたUHMWPEに第2の添加剤を所望の量だけ入れ込むのに十分な時間をかけて、第2の添加剤を含有する溶液に強化されたUHMWPEを浸漬させることによって行うことができる。強化されたUHMWPEを、第2の添加剤を含有するガスまたはUHMWPE上に均一に沈着される微粉などの固体形態の第2の添加剤に曝露することによって、強化されたUHMWPE内に第2の添加剤を拡散させ、加熱して第2の添加剤を所望のレベルまで拡散させることもできる。少なくとも第1および第2の添加剤をUHMWPEに添加して、第1および第2の添加剤が添加され、それらの添加剤の組合せが架橋UHMWPEの耐酸化性の相乗的な増大をもたらす架橋UHMWPEを生成するあらゆる他の手段は、関連技術の技術者によって本発明の範囲に含まれると理解される。
【0045】
本発明のさらなる適用領域は、以下に提示の詳細な説明から明らかとなろう。詳細な説明および具体例は、本発明の特定の実施形態を示すものの、これらは単に例示目的であり、本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【0046】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図は、本発明の実施形態を例示するものであり、記載の説明と共に、本発明の原則、特徴および特性を説明する働きをする。図では、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】いくつかの潜在的に可能な処理経路を記載する例示的なフローチャートである。
【図2a】単一の抗酸化添加剤を有する架橋UHMWPEにおける抗酸化剤の濃度(●)、耐摩耗性(□)および耐酸化性(△)の関係を示す図である。
【図2b】少なくとも第1および第2の抗酸化添加剤を有する架橋UHMWPEにおける抗酸化剤の濃度(●)、耐摩耗性(□)および耐酸化性(△)の関係を示す図である。
【図3】a…各OIT実験を、等温セグメントにより30℃で開始して、チャンバーから酸素をパージするための窒素流を10分間使用し、次いで炉および試料を保持温度(T)まで20℃/分で加熱し、10分間保持して、試料および炉を平衡状態にしたことを示す図である。b…OIT測定を示す各実施例についての酸化誘導時間(OIT)測定を示す図である。
【図4】実施例2についての酸化誘導時間(OIT)測定を示す図である。
【図5】実施例3についての酸化誘導時間(OIT)測定を示す図である。
【図6】実施例4についての酸化誘導時間(OIT)測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
記載の実施形態の以下の説明は、単に例示的な性質のものであり、いかなる方法でも本発明、その適用または使用を制限するものではない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な実施形態および改変を本発明に加え得ることが容易に明らかとなろう。
【0049】
本発明は、少なくとも第1および少なくとも第2の抗酸化添加剤と既に混成された架橋UHMWPEに関する方法、生成物および生成物の使用方法に関し、第1および第2の抗酸化剤の組合せは、相乗的に相互作用し(すなわち付加的を上回る)、それによって摩耗特性および他の特性が改善された耐酸化性の架橋UHMWPE(XLPE)を作成することができる。これらの特性によって、本発明のXLPEは医療用移植片における使用に十分適したものになるが、このことは、全般的に新規の耐酸化性XLPEに関する特許請求する本発明を制限するものではない。XLPEは、医療用プロテーゼにおいて使用する場合、例えばプロテーゼの関節における軸受の形態であってよい。XLPEが耐酸化性であるためにその摩耗特性および他の特性が経時的に損なわれないことが理由となり、本発明のXLPEは、その耐酸化特性によって移植片における使用に十分適したものになる。このことは、その生成物が製造中に酸化の対象にならず、経時的にも酸化しないということを含む。いかなる理論にも拘泥するものではなく、またはいかなる方法でも理論に制限されるものではないが、この長期間の耐酸化性は、少なくともいくらかの抗酸化添加剤、またはUHMWPEにおける添加剤および/もしくは添加剤の生成物の相互反応によって形成された化合物および生成物を含むかかる添加剤の生成物を含有するXLPEの結果であると思われる。
【0050】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語を含むあらゆる用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的では、以下の用語は、別段指定されない限り下記の意味を有する。
【0051】
用語「超高分子量ポリエチレン」(「UHMWPE」)は当技術分野で周知であり、一般に原子質量単位が約400,000以上の重量平均分子量を有するポリエチレンポリマーを意味し、その意味を本明細書で採用する。好ましくは、超高分子量ポリエチレンは、原子質量単位が約1,000,000、より好ましくは約2,000,000、最も好ましくは約3,000,000以上の重量平均分子量を有する。一般に、超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は、原子質量単位が約10,000,000未満、より好ましくは原子質量単位が約6,000,000以下である。
【0052】
用語「医療用プロテーゼ」は当技術分野で周知であり、一般に動物の筋骨格系の代替または補完部分を企図された機器を意味し、その意味を本明細書で採用する。本発明の範囲に含まれる医療用プロテーゼの一般的な使用には、それに限定されるものではないが、例えば股関節、膝、肩、指、肘、足首、椎間関節および顎関節を含む人工関節が含まれる。一例として、それに限定されるものではないが、XLPEは、医療用プロテーゼにおいて関節の一部を形成する軸受構成要素として使用することができる。例えば、股関節または膝関節などのプロテーゼの関節におけるUHMWPE軸受構成要素は、受け入れカップ(receiving cup)の形状(寛骨臼カップなど)であってよく、これは、金属またはセラミック製の球などの人工関節の別の構成要素が関節の動きを関節接合する表面を提供する。医療用プロテーゼにおけるUHMWPEの他の使用は、本発明の範囲に明確に含まれる。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「化合物」は、単一の物質として、例えば定義、同定、定量化することができる任意のものを意味し、その用語の特定の使用状況によって明確に制限されない限り、それ以上特定の意味に制限されない。したがって、用語「化合物」には、それに限定されるものではないが、化合物、実体、分子、複合体、薬剤、添加剤等が含まれる。さらに、例えばそれらの特定の使用状況によって別段制限されない限り、用語「抗酸化化合物」、「抗酸化添加剤」、「抗酸化物質」および「抗酸化剤」は、同じものを意味する。
【0054】
「混成する」、「組合せ」、「混合する」、「混合物」等は、当技術分野で通常のそれらの意味を有し、それに限定されるものではないが、例えば混ぜる、ブレンドする、拡散する、圧縮する、混ざる、混ざり合う等によって2つ以上の薬剤が物理的に互いに近接することを含む。さらに、状況によって別段明確に示されない限り、用語「混成する」、「組合せ」、「混合する」、「混合物」等は、本明細書で使用される場合、2つ以上の薬剤を、任意の序列または順序および任意の量で混成することを含む。
【0055】
「照射する」、「照射」、「照射した」等、ならびに「放射する」、「放射」、「放射した」等は、関連技術において公知の意味を有し、一般に、対象(被験者、物品等)を、電離「放射線」に曝露することを意味し、ここで電離「放射線」に曝露された対象は「照射された」とし、それに限定されるものではないがγ放射(またはγ照射)、電子線照射(または電子線の(electro beam)放射線)、かかる照射の任意の線量(または照射)を任意の順序で含む。さらに、関連分野の技術者には、例えば先に示した通り照射および放射という用語の意味の間にわずかな差異があるが(例えば、放射線は供給源から放出され、放射線を受ける対象は照射される)、これらの用語は関連分野において同じ意味を指すのにしばしば互換的に使用されることが理解され、別段示されない限り、この意味を明確に本明細書において採用する。したがって非限定的な例では、本明細書で「既に照射されている」対象への言及は、「既に放射されている」対象への言及と同一であることを意味し、または非限定的な例では、対象は「照射されて」いても「放射されて」いてもよく、これらは共に同一であることを意味する。
【0056】
架橋UHMWPE(「XLPE」としても公知)に関して「架橋された」、「架橋する」および「架橋」等は、関連分野において公知の意味を有し、一般に分子ネットワークを作成するための2つ以上のポリマー鎖間の化学的共有結合の形成を意味する[例えば1]。「架橋UHMWPE」(または「XLPE」)は、それに限定されるものではないが、放射線または化学的手段を含む任意の手段によってUHMWPEを架橋することにより製造され得る。UHMWPEの放射線架橋は、当技術分野で周知であり、一般にそれに限定されるものではないが、γ放射線または電子線などの電離放射線にUHMWPEを曝露することを含む。以下の実施例は、例示的であり限定的ではない。穏やかに架橋されたUHMWPE材料は、一般に、2.5〜4.0Mradの範囲のγ放射線量を用いる滅菌中に作成することができ、この滅菌は、完成し、清浄にされ、パッケージされた移植片を伴う最後の方法ステップとして実施され得る。高度に架橋された材料は、4.0Mradを超える線量のγ放射線または電子線への曝露によって作成することができる。強化された棒またはロッドは、一般に、高度に架橋されたUHMWPEを作成するために放射線に曝露される。本発明の範囲および精神に含まれる場合、架橋UHMWPEは、強化の前、または混成および強化の前にUHMWPE樹脂を架橋することによって製造することができる(任意選択により、強化されたUHMWPEおよび/または強化されたUHMWPEから製造された成形済み移植片の架橋時に、再度さらに架橋することもできる(放射線によって))。化学的架橋は当技術分野で周知であり、一般に、UHMWPE樹脂をぺルオキシド[例えば2参照]またはシラン[例えば4参照]とブレンドすることを含む。
【0057】
「UHMWPEを強化する」などのUHMWPEの状況下での「強化する」および「強化」は、当技術分野で公知の意味を有し、一般に、本発明では1つまたは複数の薬剤を含有し得るUHMWPEを加熱および圧縮すること、ならびにUHMWPEをラム押出または圧縮成形して、一般に棒またはロッドの形態の「強化されたUHMWPE」を形成することを意味する。UHMWPEに言及する用語「強化する」および「強化された」は、一般に、UHMWPEが加熱および圧縮されていること、ならびに強化されたUHMWPEにおける応力を緩和するために、強化した(強化)後にアニーリングの関連分野で実施される(および関連分野の技術者に周知の)従来のステップによって処理されていることを含み、このアニーリングは、一般に、所定の時間および温度でUHMWPEを加熱して、圧縮によって生じた応力を発散させることを含む。したがって、用語「強化されたUHMWPE」は、本明細書で使用される場合、加熱および圧縮され、ラム押出または圧縮成形によって成形され、その後、強化応力を緩和するためにアニーリング処理されたUHMWPEを含む。
【0058】
all-rac-α-トコフェロールとしても公知の用語「dl-α-トコフェロール」は、およそ等しい量の8種類の可能な立体異性体(すなわち、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノール)のすべてのラセミ混合物である合成ビタミンEを意味する[例えば6参照]。添加剤であるdl-α-トコフェロールは、例えばSigma- Aldrich、ミズーリ州セントルイスから市販されている(Item T3251)。
【0059】
用語「クルクミン」は、その最も純粋な形態である、「ジフェルロイルメタン(diferuloymethane)」としても公知の化合物「1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン」を指し、これはウコン(Curcuma longa)から単離され、または化学的に合成されている。
【0060】
用語「ブチル化ヒドロキシトルエン」は「BHT」と略すことができる。
【0061】
用語「ブチル化ヒドロキシアニソール」は「BHA」と略すことができる。
【0062】
合成抗酸化剤は、人工であり天然には見出されないことを意味する。
【0063】
用語「相乗作用」は、以下の8つすべての段階(この段落を含む)および以下の等式(1)〜(4)に記載の意味を有する。用語「相乗作用」は、本発明に関係する分野では、2つ以上の添加剤の間の協調的な相互作用を意味することが知られており、この相互作用は、添加剤の個々の合計を超える効果によってポリマーの安定化を促進する[例えば9参照]。この意味を以下の式で示す。さらに明確にすると、当技術分野では拮抗作用も認識されており、これはポリマーの安定化を低下させる2つ以上の添加剤の間の相互作用であり、したがってこれらの添加剤の組合せの効果は、それらの個々の効果の合計に満たない。さらに当技術分野では、2つの添加剤の組合せの効果がそれらの個々の効果の合計に等しい相乗作用と拮抗作用の間の平衡は、添加剤の効果であることが認識されている。これらの定義は、以下の非限定的な式によって示される。
【0064】
ra=混成UHMWPEにおける添加剤aの相対濃度、
rb=混成UHMWPEにおける添加剤bの相対濃度、
rn=混成UHMWPEにおける添加剤nの相対濃度
(ra+rb+...+rn=1)、
OITa=UHMWPEにおける添加剤aのみの酸化誘導時間(OIT)、
OITb=UHMWPEにおける添加剤bのみの酸化誘導時間(OIT)、
OITn=UHMWPEにおける添加剤nのみの酸化誘導時間(OIT)、および
OITa、b、...n=UHMWPEにおける添加剤a、b、...nの酸化誘導時間(OIT)ならば、
付加的相互作用:OITa、b、...n=ra(OITa)+rb(OITb)+...+rn(OITn) (1)
相乗的相互作用:OITa、b、...n>ra(OITa)+rb(OITb)+...+rn(OITn) (2)
拮抗的相互作用:OITa、b、...n<ra(OITa)+rb(OITb)+...+rn(OITn) (3)である。
【0065】
相乗作用を定義するこれらおよび他の特定の等式が特定の状況において適用され、関連分野の技術者であれば様々な環境下で相乗作用を定義するのに特定の等式を作成するためにこれらの等式を十分に改変できることを、関連分野の技術者は容易に理解されよう。例えば、先の等式(1)〜(3)は、共に混成されたUHMWPEにおける添加剤の濃度の合計が、UHMWPEのみにおける添加剤の濃度と等しい場合に適用される。当業者は、この状況が存在しない場合の相乗作用を実証するための他の等式を容易に定義することができる。
【0066】
この一例として、本発明の主目的の1つは、第1の添加剤の濃度を低減すると同時に、混成、強化および架橋されたUHMWPEの耐酸化性を維持または改善できるということである。したがって、関連分野の技術者は、前述の等式が、この特定の場合における相乗作用を実証するのに十分適していることを認識されよう。しかし当業者であれば、この(または任意の)状況に対する等式を十分に決定することができる。例えば、これらの特定の環境下での相乗作用を定義するためには、当業者は、2つ以上の添加剤の間の相乗作用を定義するための非限定的な例である以下の等式を導出されよう。
【0067】
ra=混成UHMWPEにおける添加剤aの相対濃度、
rb=混成UHMWPEにおける添加剤bの相対濃度
(ra+rb=1)、
Ca=UHMWPEにおける添加剤aのみの質量濃度、
Cb=UHMWPEにおける添加剤bのみの質量濃度、
OIT(Ca)=UHMWPE中濃度Caにおける添加剤aのみの酸化誘導時間(OIT)、
OIT(Cb)=UHMWPE中濃度Cbにおける添加剤bのみの酸化誘導時間(OIT)、
OIT(Ca’、Cb’)=UHMWPE中濃度Ca’における添加剤aの酸化誘導時間(OIT)およびUHMWPE中濃度Cb’における添加剤bの酸化誘導時間(OIT)
(Ca’<Ca、Cb’<CbかつCa’+Cb’=Ca=Cb)ならば、
OIT(Ca’、Cb’)≧ra[OIT(Ca)]+rb[OIT(Cb)] (4)である。
【0068】
さらに当技術分野では、2つ以上の安定化添加剤または化合物(安定剤としても公知)の間の相乗的相互作用は、以下の機構の1つを介して作用すると分類できることが知られている。
(1)両方の添加剤が、一緒になって反応して、安定化においてより効率的な新しい種をもたらすこと、
(2)「第2の」添加剤が「第1の」添加剤またはその副生成物と反応して、第1の添加剤を再生し、または有害な効果を阻害すること、ならびに
(3)両方の添加剤が、ラジカル鎖の酸化および動力学的効果のみから生じる相乗作用の結果による異なるレベルで作用すること。
【0069】
明確には、理論に拘泥するものではなく、またはいかなる方法でも理論によって制限されるものではないが、単に例示目的により文献における研究に基づいて、本発明者らは、2つ以上の添加剤を架橋UHMWPEに添加することは、選択される特定の添加剤に応じて、機構2または3またはその両方のいずれかを介して作用すると理論化する。
【0070】
例えば、過去の研究によって、ビタミンC、カテキンおよび多価アルコールなどの様々な添加剤が、機構2を介してα-トコフェロールなどのフェノール性抗酸化剤と組み合わさって作用することが実証されている。これらの化合物は、トコフェロキシルラジカルをα-トコフェロールに再生または再利用し、したがってその分子を元の状態に戻すことができる。次いでこれによって、α-トコフェロール分子がさらなるフリーラジカルをクエンチできるようになり、材料を酸化から保護し続けられる。
【0071】
あるいは、スルフィドまたはホスフィットと混成されたフェノール性抗酸化剤は、一般に、機構3を介して作用すると考えられており、この機構では、フェノール性添加剤がぺルオキシドラジカルをクエンチし、スルフィドまたはホスフィットが、ヒドロペルオキシド基をアルコールに変換する。
【0072】
最後に、添加剤のいくつかの組合せは、機構2および3の両方を介して作用すると考えられている。例えば、ポリプロピレン中α-トコフェロールおよびホスフィット(phospite)であるUltranox U626のブレンドにおいて、ホスフィットは、ヒドロペルオキシドの失活(機構3)およびα-トコフェロールの再生(機構2)の両方に関与すると報告されている。
【0073】
用語「名目上の」は、本明細書で使用される場合、別の物質と混成されるある物質(例えばUHMWPE樹脂と混成される抗酸化添加物)の濃度を意味し、別の物質と混成される該物質の量は、それが混成される前の該物質の量である。例えば、特定の抗酸化添加剤が特定の量のUHMWPEと混成される場合、その特定の抗酸化剤の「名目上の」濃度は、混成する直前のその量であり得る(常ではなく、または必ずしもそうではないが、それが混成される物質の重量の百分率で表されることが多い)。この形態の測定は、別の物質に添加される物質が、消費、混成され、変更、反応し、もしくはその他の方法で変化し得る場合、またはそれが混成されると定量化が困難になる場合に特に有用である。しかし用語「名目上の」は、別の物質と混成されるある物質の「名目上の」量に変化が生じること、またはその他の方法で、混成されると測定および定量化が困難になるということを必ずしも必要としない。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「純粋な(neat)」は、何も添加されていない物質を指す(すなわち添加剤なし)。非限定的な例では、実施例2の1行目の「純粋なGUR1020 UHMWPE」とは、その過程におけるその時点では(すなわち、材料A、Bおよび/またはCを作成するために混成する前)、GUR1020 UHMWPEには何も添加されていないことを意味する。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「未照射の(virgin)」は、実施例の他の態様で処理されるようには実施例において処理されていない化合物、組合せ、物質、対象等を指し、一般には対照を指す。例えば実施例2の以下の文「純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、非照射状態に維持した(材料D-未照射)」では、用語「未照射」は、純粋なGUR 1020が照射されておらず、非照射対照であることを意味する。
【0076】
本発明の第1および第2の添加剤には、それらに明確に限定されるものではないが、以下の例が含まれる。(1)第1の添加剤:(a)フェノール性抗酸化剤、例えば(i)(1)dl-α-トコフェロール、(2)α-トコフェロール、(3)δ-トコフェロール、(4)γ-トコフェロールおよび(5)β-トコフェロールを含むトコフェロール、(ii)(1)α-トコトリエノール、(2)β-トコトリエノール、(3)γ-トコトリエノールおよび(4)δ-トコトリエノールを含むトコトリエノール、(iii)(1)クルクミン(すなわち、ジフェルロイルメタン)、(2)デメトキシクルクミン、(3)ビスデメトキシクルクミン、(4)テトラヒドロクルクミン、(5)ヘキサヒドロクルクミン、(6)クルクミン硫酸塩、(7)クルクミン-グルクロニド、(8)ヘキサヒドロクルクミノールおよび(9)シクロクルクミンを含むクルクミノイド、(iv)(1)ナリンゲニン、(2)ケルセチン、(3)ヘスペリチン、(4)ルテオリン、(5)カテキン((a)没食子酸エピガロカテキン、(b)エピガロカテキン、(c)没食子酸エピカテキンおよび(d)エピカテキンを含む)、(6)アントシアニン((a)シアニジン、(b)デルフィニジン、(c)マルビジン、(d)ペオニジン、(e)ペツニジンおよび(f)ペラルゴニジンを含む)を含むフラボノイド、(v)(1)オイゲノールを含むフェニルプロパノイド、(vi)(1)irganox 1010、(2)irganox 1076、(3)irganox 245、(4)ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および(5)ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む合成抗酸化剤、ならびに(b)(i)chimassorb 944、(ii)chimassorb 119 FL、(iii)cyasorb UV 3346、(iv)tinuvin 144、(v)tinuvin 765および(vi)tinuvin 770 DFを含むヒンダードアミンと、(2)第2の添加剤:(a)亜リン酸化合物、例えば(i)(1)ultranox U626、(2)hostanox PAR24、(3)irgafos 168、(4)irgafos 126および(5)weston 619を含むホスフィット、(ii)(1)sandostab P-EPQを含むホスホニット、(iii)(1)PEPFINEを含むホスフィン、(b)(i)ジペンタエリスリトール、(ii)トリペンタエリスリトール、(iii)トリメチロールプロパンエトキシレートを含む多価アルコール、(c)フェノール性抗酸化剤、例えば(i)(1)dl-α-トコフェロール、(2)α-トコフェロール、(3)δ-トコフェロール、(4)γ-トコフェロール、(5)β-トコフェロールを含むトコフェロール、(ii)(1)α-トコトリエノール、(2)β-トコトリエノール、(3)γ-トコトリエノールおよび(4)δ-トコトリエノールを含むトコトリエノール、(iii)(1)クルクミン(すなわち、ジフェルロイルメタン)、(2)デメトキシクルクミン、(3)ビスデメトキシクルクミン、(4)テトラヒドロクルクミン、(5)ヘキサヒドロクルクミン、(6)クルクミン硫酸塩、(7)クルクミン-グルクロニド、(8)ヘキサヒドロクルクミノールおよび(9)シクロクルクミンを含むクルクミノイド、(iv)(1)ナリンゲニン、(2)ケルセチン、(3)ヘスペリチン、(4)ルテオリン、(5)カテキン((a)没食子酸エピガロカテキン、(b)エピガロカテキン、(c)没食子酸エピカテキンおよび(d)エピカテキンを含む)、(6)アントシアニン((a)シアニジン、(b)デルフィニジン、(c)マルビジン、(d)ペオニジン、(e)ペツニジンおよび(f)ペラルゴニジンを含む)を含むフラボノイド、(v)(1)オイゲノールを含むフェニルプロパノイド、(vi)(1)irganox 1010、(2)irganox 1076、(3)irganox 245、(5)ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および(6)ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む合成抗酸化剤、(vii)(1)ユビキノールおよび(2)補酵素Q10を含むベンゾキノール、(d)ヒンダードアミン、(i)chimassorb 944、(ii)chimassorb 119 FL、(iii)cyasorb UV 3346、(iv)tinuvin 144、(v)tinuvin 765および(vi)tinuvin 770 DF、(e)(i)β-カロテン、(ii)リコペン、(iii)ルテイン、(iv)ゼアキサンチン、(v)エキネノンおよび(iv)ゼアキサンチンを含むカロテノイド、(f)(i)グルタチオン、(ii)システイン、(iii)チロシンおよび(iv)トリプトファンを含むアミノ酸系添加剤、(g)(i)チオジプロピオン酸ジステアリル、(ii)irganox PS 800、(iii)irganox PS 802を含むチオ共力剤、ならびに(h)(i)アスコルベート、(ii)パルミチン酸アスコルビルおよび(iii)リポ酸を含む他の添加剤。
【0077】
一実施形態は、架橋ポリエチレンにおけるフリーラジカルの消去に相乗効果をもたらす少なくとも2つの種類の添加剤を含有する医療機器のための軸受材料に関する。好ましい抗酸化添加剤は、Vit Eおよびクルクミンである。かかる効果を達成するために、任意の他の合成または天然抗酸化剤または相乗的添加剤を組み合わせて使用することができる。例えば、相乗的添加剤および抗酸化剤には、それに限定されるものではないがクルクミン、Vit E、多価アルコール、ホスフィット、ユビキノール-10、グルタチオン、アスコルビン酸、アンスラリン、没食子酸エピガロカテキンなどのカテキンまたはフラボノイドが含まれ得る。
【0078】
Vit Eまたはクルクミンなどの抗酸化剤は、対応する相乗的添加剤または抗酸化剤およびUHMWPE樹脂と、公知の濃度でブレンドされる。このブレンドは、ラム押出または圧縮成形などの従来技術によって強化される。強化後に、材料を標準の応力緩和のためのアニーリングにかけて、材料内に存在する残留応力を最小限に抑えることができる。強化されたブレンドは、材料を架橋して所望の耐摩耗性をもたらすために、空気中または不活性な環境下で電離放射線(例えば、γまたは電子線放射線)に曝露される。抗酸化剤および添加剤の存在に起因して、照射後の熱処理は不要となり得る。次いで、整形外科用の軸受構成要素などの医療機器は、この高度に架橋され、強化されたブレンドから機械加工され、従来の方法によって滅菌され得る。
【0079】
代替の一実施形態は、Vit E対クルクミンの好ましい比が1:1である、10Mradまで架橋されたUHMWPEから製造された医療機器を含むことができるが、任意の他の比を使用することもできる。好ましい放射線量は、1.5Mrad〜30Mradである。
【0080】
あるいは、1つまたは複数の添加剤は、樹脂とブレンドされ、相乗的添加剤の1つまたは複数は、強化後および架橋の前または後のいずれかに、強化された構成要素内に高温過程を使用して拡散される。例えば、クルクミンを樹脂とブレンドし、プリフォームに強化することができる。架橋後、ビタミンEを、プリフォームまたは機械加工した移植片のいずれかに拡散させることができる。拡散過程は、室温で実施することができる。しかし、拡散深度を増大させるために、ポリマーの融点までのより高い温度を使用することができる。したがって、例えばポリエチレンについては、拡散は150℃で実施することができる。プリフォームの変形を最小限に抑えるためには、低温、例えば120℃を使用することができる。拡散過程に使用される抗酸化剤は、固体、液体または気体の形態であってよい。固体形態の抗酸化剤については、細粉化した粉末をプリフォーム上に均一に沈着させ、アセンブリ全体を加熱して、抗酸化剤を拡散させることができる。あるいは、固体の抗酸化剤を、適切な溶媒に溶解することができる。α-トコフェロール(vit E)などの液体形態の抗酸化剤については、プリフォームは、室温または高温でわずかな時間から数時間かけて液体溶液に浸される。浸す時間は、ポリマー内の抗酸化剤の拡散率および使用される温度に応じて決定され得る。拡散率が高いほど、拡散時間が短縮される。
【0081】
代替の一実施形態では、架橋は、当技術分野で公知の化学的架橋過程を使用して達成される。かかる過程では、1つまたは複数の添加剤/抗酸化剤は、架橋剤と共に架橋の最中に同時に拡散またはブレンドされ得る。あるいは、化学的架橋は、抗酸化剤がブレンドされた樹脂を強化した後に行われる。
【0082】
いくつかの実施形態では、樹脂は、軽度に架橋され、次いで抗酸化剤とブレンドされる。強化後、それを再度照射して、所望のレベルの架橋を達成する。
【0083】
UHMWPEにおいて単一の抗酸化剤を使用する場合、その濃度は、所与の照射線量により、耐摩耗性および耐酸化性の両方の平衡を保つように注意深く選択しなければならない。図2aに示した通り、高レベルの抗酸化剤(A点)の選択によって架橋がかなり阻害され、したがって耐摩耗性が低減する(D点)。他方では、高濃度の抗酸化剤によって、酸化に対する抵抗性が増大する(E点)。
【0084】
耐摩耗性は、整形外科用機器における架橋UHMWPEにとって重要な第1の測定基準であるため、低濃度の抗酸化剤(B点)を使用するように選択すると、架橋の阻害度を低減し、耐摩耗性を改善することができる(C点)。しかし、機器の長期安定化に利用できる低濃度の抗酸化剤では、酸化に対する抵抗性が低下する(F点)。
【0085】
第1の抗酸化剤と少なくとも1つの第2の添加剤または抗酸化剤をUHMWPEに組み込むことによって、これらの重要な測定基準の間の関係に変化をもたらすことができる(図2b)。安定化化合物の間の相互作用は、低濃度の第1の抗酸化剤(H点)において、酸化に対する抵抗性を改善する(K点)。第1の抗酸化剤の濃度が低いので、架橋の阻害は低減され、所与の照射線量によって耐摩耗性が高くなる(I点)。
【0086】
(実施例)
(実施例1)
ここで図1を参照すると、ステップ1は、本願および必要な性能/特性に基づく、出発材料として使用されるポリマー樹脂または粉末の選択を示す。例えば、ポリマー樹脂は、GUR1050またはGUR1020超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、Teflon、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性のエラストマー等であってよい。ステップ2では、この選択されたポリマー樹脂を、遊星、リボン、タンブル、垂直、回転、プラウ(plow)、円柱またはナイフ型ブレンドなどの標準のブレンド/混合技術を用いて周囲条件下でブレンドすることによって、少なくとも2つの相乗的添加剤と混成する。特定の場合には、低分子量画分のポリマーを使用して、抗酸化添加剤の均一な分布を達成することができる。低分子量画分によって、抗酸化剤を拡散させ、したがって均一に分散させることができる低融点の構成成分が得られる。一例として、低分子量画分のポリエチレンは、出発樹脂としての超高分子量ポリエチレンとブレンドすることができる。ステップ3では、圧縮成形、ラム押出、射出成形などの標準技術を介して、ブレンドを強化してプリフォームにする。ステップ4では、標準の熱処理を実施して、強化中に発生する残留応力を緩和する。例えば、残留応力の緩和のための一般的な強化後の熱処理は、強化した材料をオーブンまたは適切な液体浴中で104℃以上に加熱し、その浸漬温度を保持し、材料を1時間あたり6℃未満の速度でゆっくり冷却することを含む。あるいは、熱処理は、抵抗加熱素子を用いて加熱される対流型の加熱オーブンを使用して実施することができる。あるいは、真空加熱を使用することができる。ステップ5では、最終的な移植片の所望の架橋レベルに応じて決定を行う。最終的な移植片が高度に架橋されることを企図しない場合、ステップ6は、所望の整形外科用構成要素を最終的な形状に機械加工することを含む。ステップ7では、移植片を、2.5〜4.0Mrad(25〜40kGy)の標準の線量を用いてγ放射線によって滅菌する。最終的な移植片が高度に架橋されることを企図する場合、ステップ8に記載の通り、空気中で5〜20Mrad(50〜200kGy)の範囲の線量を用いて、γ放射または電子線放射によって空気中でプリフォームを照射する。ステップ9では、最終的な移植片を、高度に架橋された
プリフォーム材料から機械加工する。ステップ10では、高度に架橋された移植片にとって望ましい滅菌方法に関する決定を行う。ステップ11では、移植片を、放射線を使用せずにガス滅菌によって滅菌する。ステップ12では、最終的な移植片を、2.5〜4.0Mrad(25〜40kGy)の標準の線量範囲を用いてγ放射線によって滅菌する。
【0087】
非限定的な方法でさらに実施例1に言及すると、一実施形態では、移植片を、股関節形成術のための軸受材料として使用することができ、一実施形態では、移植片を、膝関節形成術のための軸受材料として使用することができ、一実施形態では、移植片を、脊椎関節形成術のための軸受材料として使用することができ、一実施形態では、肩関節形成術のための軸受材料として使用することができる。
【0088】
(実施例2)
純粋なGUR1020 UHMWPE樹脂を、以下のものと混成した。
・材料A-500ppm(0.05wt.%)の名目上の濃度のdl-α-トコフェロール(ビタミンEまたはVit E)、
・材料B-500ppm(0.05wt.%)の名目上の濃度の精製クルクミンまたはジフェルロイルメタン(HPLCによって97.7%)、
・材料C-それぞれ250ppm(0.025wt.%)の名目上の濃度のdl-α-トコフェロールおよび精製クルクミン。
【0089】
all-rac-α-トコフェロールとしても公知のdl-α-トコフェロールは、およそ等しい量の8種類の可能な立体異性体(すなわち、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノール)のすべてのラセミ混合物である合成ビタミンEを指すことに留意されたい。次いで、これらの材料を圧縮成形によって強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、その後10Mrad(100kGy)の名目上の線量を用いてγ照射した。照射後、熱処理は実施しなかった。
【0090】
2つの対照材料も評価した。純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、非照射状態に維持した(材料D-未照射)。さらに、純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、10Mrad(100kGy)の名目上の線量を用いてγ照射し、再溶融して高度に架橋された材料を安定化した(材料E-10-XLPE)。
【0091】
これらの材料の耐酸化性を評価するために、ASTM D3895-07に記載のものと類似の方法で、Netzsch 204 F1 Phoenix(ノースカロライナ州Huntersville)の示差走査熱量計(DSC)を使用して酸化誘導時間(OIT)実験を実施した。プレート様の試料を材料内部から取り出し、0.01mgの分解能(resolution)まで秤量し、9〜11mgの質量範囲にした。各試料を、アルミニウムるつぼ内に圧着し、蓋に孔を開けてガス流が通過するようにした。蓋に孔を開けた空のアルミニウムるつぼを、参照試料として使用した。材料1つについて3つの試料を評価した(n=3)。
【0092】
UHMWPEを用いる限られた数の研究を含むOIT実験は、様々なポリマーの酸化安定性を迅速に評価するために利用されている。図3のaに示す通り、各OIT実験を、等温セグメントにより30℃で開始して、50mL/分の窒素流を10分間使用した。このステップを利用して、試料を保持するチャンバーおよびアルミニウムるつぼから酸素をパージして、加熱中の酸化を回避した。次いで炉および試料を、この実験では190℃の保持温度(T)まで20℃/分で加熱し、10分間保持して、試料および炉を平衡状態にした(図3のa)。時間t1で窒素ガス流を停止させ、酸素流を50mL/分ですぐに開始した。炉および試料の温度を、試料の酸化発生を表す発熱反応が観測されるまで、Tで保持した(図3のb)。この発熱の推定開始時間をt2と決定し、OIT(τ)をt1とt2の間の差として算出した。添加剤によって安定化したポリマーについて観測された誘導時間は、従来、安定剤の漸進的な消費と解釈されており、この後、DSCにおいて測定可能な発熱酸化反応が生じる(図3のb)。結果として、酸化誘導時間の長さは、酸化に対する抵抗性の大きさを示す。
【0093】
この実験では、標準の対照材料は共に酸化誘導時間0を示したが、このことは、これらの対照材料がこの保持温度における酸素流の導入直後に酸化したことを意味する(図4)。それとは対照的に、高度に架橋された500ppmのVit Eとのブレンド(材料A)は、3分のOITを示すことが見出され、高度に架橋された500ppmのクルクミンとのブレンド(材料B)は、10分のOITを有していた(図4)。混合物の法則(等式5)および抗酸化剤の濃度と誘導時間の間の当技術分野で公知の線形関係に基づいて、Vit Eおよびクルクミンの1:1ブレンド(材料C)では約6.5分のOITを予測することができる。
OITMix=0.5(OITa+OITb) (5)
ただし、OITMixは、混合物のOITであり、
OITaは、UHMWPEにおける物質aのOITであり、
OITbは、UHMWPEにおける物質bのOITである。
【0094】
しかし本発明者らは、Vit Eおよびクルクミン両方とのブレンド(材料C)が、等式5に基づいて予測され得るものより38%高い9分のOITをもたらしたことを発見した(図4)。
【0095】
これらの材料の機械特性を、一軸引張試験およびIzod衝撃試験によって評価した。一軸引張試験は、ASTM D638-03に従って実施した。これらの試験では、厚さ3.0mmのIV型試料を、破壊するまで5.08cm/分で試験した。複数の測定基準が、この試験を介して導出される。材料の降伏強度(YS)は、弾性から可塑性への変形の遷移と定義され、一般に、線形弾性領域の端部近くの応力であると決定される。最大引張強度(UTS)は、試験中に試料が受ける最大応力であり、破断点伸び(EL)は、破壊時の試料の長さの百分率の変化である。Izod衝撃試験は、ASTM F648-07に従って実施した。この試験では、2つの非常に鋭いノッチを有するUHMWPEの標準試料を、揺動振子によって破壊する。試料を破壊するのに必要なエネルギー量が、Izod衝撃強度である。したがって、破壊により多くのエネルギーを必要とする試料は、高い靭性を有し、Izod衝撃強度がより高い。
【0096】
一般に、UHMWPEの最大引張強度(UTS)は、架橋密度の増加に伴って低減する。この一般的な相関に基づいて、材料AおよびBに対する材料Cの低いUTS(Table 1(表1))は、より高いレベルの架橋が材料Cにおいて生じていることを示唆する。
【0097】
【表1】

【0098】
これらの結果に基づくと、クルクミンをVit E/UHMWPEブレンドに添加することによって、材料の耐酸化性が改善されると同時に、Vit E含量の低減が可能になることが明らかである。結果として、材料Cにおける所与の架橋密度および耐摩耗性を得るのに必要な照射線量を低減し、耐酸化性をさらに改善することができる。あるいは、照射線量を10Mradに維持し、材料Aと比較して耐摩耗性および耐酸化性の両方を改善することができる。
【0099】
(実施例3)
純粋なGUR1020 UHMWPE樹脂を、以下のものとブレンドした。
・材料A-500ppm(0.05wt.%)の名目上の濃度のdl-α-トコフェロール(ビタミンEまたはVit E)、
・材料F-それぞれ300ppm(0.03wt.%)の名目上の濃度のdl-α-トコフェロールおよび非抗酸化剤である多価アルコールのジペンタエリスリトール(DPE)。
【0100】
次いで、これらの材料を圧縮成形によって強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、その後10Mrad(100kGy)の名目上の線量を用いてγ照射した。照射後、熱処理は実施しなかった。
【0101】
再び、やはり2つの対照材料を評価した。純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、非照射状態に維持した(材料D-未照射)。さらに、純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、10Mrad(100kGy)の名目上の線量を用いてγ照射し、再溶融して高度に架橋された材料を安定化した(材料E-10-XLPE)。実施例2と同様に、これらの材料の耐酸化性を、OIT実験を介して190℃の保持温度で評価した。
【0102】
標準の対照材料は、190℃の酸素流の開始直後に酸化し(図5)、したがってOITは0であった。500ppmのVit EとブレンドしたUHMWPE(材料A)では、OITは3分であった(図5)。UHWMPEと300ppmのVit Eのみのブレンドに300ppmのDPEを添加すると(材料F)、OITは166%増の8分になった。したがって、第2の添加剤であるDPEへのVit Eの添加は、耐酸化性を改善すると同時に、Vit Eの濃度を40%低減することができ、したがって架橋効率が改善されることになる。DPEが抗酸化剤であると知られておらず、したがってUHMWPEのみと混成すると理論的には0のOITを示し得るという事実にもかかわらず、このような耐酸化性の改善が生じる。材料Aに対する材料Fの最大引張強度(UTS)の低減は、材料Fの架橋レベルがより高いことを示唆している(Table 1(表1))。結果として、所与の架橋密度および耐摩耗性を得るのに必要な照射線量を低減することができ、したがって材料Aと比較して耐酸化性および機械特性、特に延性および靱性が改善されることになる。
【0103】
あるいは、Vit E/DPEブレンドにおけるVit E濃度をさらに低減して、材料Aと同程度に、耐摩耗性を耐酸化性と組み合わせて改善することができる。
【0104】
(実施例4)
純粋なGUR1020 UHMWPE樹脂を、以下のものとブレンドした。
・材料B-500ppm(0.05wt.%)の名目上の濃度の精製クルクミンまたはジフェルロイルメタン(HPLCによって97.7%)、
・材料G-それぞれ300ppm(0.03wt.%)の名目上の濃度の精製クルクミンまたはジフェルロイルメタン(HPLCによって97.7%)および非抗酸化剤である多価アルコールのジペンタエリスリトール(DPE)。
【0105】
次いで、これらの材料を圧縮成形によって強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、その後10Mrad(100kGy)の名目上の線量を用いてγ照射した。照射後、熱処理は実施しなかった。
【0106】
再び、やはり2つの対照材料を評価した。純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、非照射状態に維持した(材料D-未照射)。さらに、純粋なGUR1020 UHMWPEを強化し、アニーリングして残留応力を緩和し、10Mrad(100kGy)の名目上の線量を用いてγ照射し、再溶融して高度に架橋された材料を安定化した(材料E-10-XLPE)。実施例2と同様に、これらの材料の耐酸化性を、OIT実験を介して190℃の保持温度で評価した。
【0107】
標準の対照材料は、190℃の酸素流の開始直後に酸化し(図6)、したがってOITは0であった。材料Bは、10分のOITを示した(図6)。UHWMPEと300ppmのクルクミンのみのブレンドに300ppmのDPEを添加すると(材料G)、耐酸化性は材料Bとおよそ同じであった。DPEが抗酸化剤であると知られておらず、したがってUHMWPEのみと混成すると理論的には0のOITを示し得るという事実にもかかわらず、このような耐酸化性の改善が生じる。材料GについてのUTSの低減(Table 1(表1))は、より大きい架橋度が得られたことを示唆し、したがって耐摩耗性が改善され得る。あるいは、材料Gに低いγ放射線量を照射して、材料Bに対してそれと等しい耐摩耗性、類似のUTSおよび耐酸化性の改善を達成することができる。
【0108】
対応する説明図を参照して、本発明の範囲から逸脱することなく前述の例示的な実施形態に様々な改変を加えることができるので、先の説明に含まれ、添付の図に示したあらゆる事項は、限定的ではなく例示的なものであると解釈されることを企図する。ここに記載の実施例の大部分はUHMWPEに関するが、任意の他のポリマーを使用することができる。したがって、本発明の幅および範囲は、前述の例示的な実施形態のいずれによっても制限されず、ここに添付の以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0109】
参考文献
優先出願(本願が優先権を主張し、出願の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2009年5月4日出願の米国特許仮出願第61/175,308号)を除き、本明細書で言及した特許、特許出願および刊行物は、本発明が関連する分野の技術者のレベルを示すものである。これらの文書はまた、本発明の時点において本発明が関連する分野の技術者に公知であったものを、厳密には非限定的な方法で例示することを企図する。これらの文書は、いかなる方法でもここに記載の本発明を制限することを企図しない。
(参考文献)
【0110】
対応する説明図を参照して、本発明の範囲から逸脱することなく前述の例示的な実施形態に様々な改変を加えることができるので、先の説明に含まれ、添付の図に示したあらゆる事項は、限定的ではなく例示的なものであると解釈されることを企図する。ここに記載の実施例の大部分はUHMWPEに関するが、任意の他のポリマーを使用することができる。したがって、本発明の幅および範囲は、前述の例示的な実施形態のいずれによっても制限されず、ここに添付の以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0111】
さらに、本発明およびその利点を詳説してきたが、本明細書では、添付の文および説明によって定義される通り、本発明から逸脱することなく様々な変更、置換および代替を加え得ることを理解されたい。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たし、もしくは実質的に同じ結果を達成する現存のもしくは後に開発される、利用され得る過程、機械、製造、事項の組成、手段、方法もしくはステップの実施形態、または任意の差異がごくわずかである特定の実施形態に限定されないものとする。したがって、添付の記載は、かかる過程、機械、製造、事項の組成、手段またはステップをそれらの範囲に含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)UHMWPE樹脂を得るステップと、(ii)前記UHMWPE樹脂を、第1の量の第1の添加剤および第2の量の第2の添加剤の両方と混成するステップであって、前記第1および前記第2の添加剤は異なる添加剤である、ステップと、(iii)前記第1および第2の添加剤と混成されたUHMWPEを強化するステップと、(iv)前記強化されたUHMWPEを架橋して耐酸化性UHMWPEを作成するステップであって、前記第1および第2の添加剤は前記架橋されたUHMWPEの耐酸化性を相乗的に増大させる、ステップとを含む、医療用プロテーゼにおいて使用するための架橋された耐酸化性UHMWPEを調製する方法。
【請求項2】
ステップ(i)において得られた前記UHMWPE樹脂が、ステップ(iv)における架橋を含むその後のステップの前に既に架橋されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋が、照射架橋および化学的架橋からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋が照射架橋である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)でUHMWPEと混成される前記第1の添加剤の量が、UHMWPEの相対量に対して約50ppm〜約5,000ppmであり、ステップ(ii)でUHMWPEと混成される前記第2の添加剤の量が、UHMWPEの相対量に対して約50ppm〜約5,000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)でUHMWPEと混成される前記第1の添加剤の量が、UHMWPEの相対量に対して約0.005%〜約0.5%であり、ステップ(ii)でUHMWPEと混成される前記第2の添加剤の量が、UHMWPEの相対量に対して約0.005%〜約0.5%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋の線量が約1.5MRad〜約30MRadである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記混成、強化および架橋されたUHMWPEを、医療用プロテーゼのための軸受構成要素に機械加工するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混成、強化、架橋および機械加工されたUHMWPE軸受構成要素の架橋密度が、約0.03mol/dm3〜約0.50mol/dm3である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の添加剤が、フェノール性抗酸化剤およびヒンダードアミンからなる群から選択され、前記第2の添加剤が、亜リン酸添加剤、多価アルコール、フェノール性抗酸化剤、ヒンダードアミン、カロテノイド、アミノ酸系添加剤、チオ共力剤および抗酸化剤からなる群から選択される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の添加剤のフェノール性抗酸化剤が、トコフェロール、トコトリエノール、クルクミノイド、フラボノイド、フェニルプロパノイドおよび合成フェノール性抗酸化剤からなる群から選択され、前記第1の添加剤のヒンダードアミン抗酸化剤が、chimassorb 944、chimassorb 119 FL、cyasorb UV 3346、tinuvin 144、tinuvin 765、tinuvin 770 DFからなる群から選択され、前記第2の添加剤の亜リン酸添加剤が、ホスフィット、ホスホニットおよびホスフィンからなる群から選択され、前記第2の添加剤の多価アルコールが、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンエトキシレートからなる群から選択され、前記第2の添加剤のフェノール性抗酸化剤が、トコフェロール、トコトリエノール、クルクミノイド、フラボノイド、フェニルプロパノイド合成抗酸化剤およびベンゾキノールからなる群から選択され、前記第2の添加剤のヒンダードアミンが、chimassorb 944、chimassorb 119 FL、cyasorb UV 3346、tinuvin 144、tinuvin 765、tinuvin 770 DFからなる群から選択され、前記第2の添加剤のカロテノイドが、β-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、エキネノンおよびゼアキサンチンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のアミノ酸系添加剤が、グルタチオン、システイン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のチオ共力剤が、チオジプロピオン酸ジステアリル、irganox PS 800およびirganox PS 802からなる群から選択され、前記第2の添加剤の抗酸化剤が、パルミチン酸アスコルビル、アスコルベートおよびリポ酸からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の添加剤のトコフェロールが、dl-α-トコフェロール、α-トコフェロール、δ-トコフェロール、γ-トコフェロールおよびβ-トコフェロールからなる群から選択され、前記第1の添加剤のトコトリエノールが、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールからなる群から選択され、前記第1の添加剤のクルクミノイドが、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、クルクミン硫酸塩、クルクミン-グルクロニド、ヘキサヒドロクルクミンおよびシクロクルクミンからなる群から選択され、前記第1の添加剤のフラボノイドが、ナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペリチン、ルテオリン、カテキン、アントシアニンからなる群から選択され、前記第1の添加剤のフェニルプロパノイドが、オイゲノールであり、前記第1の添加剤の合成フェノール性抗酸化剤が、irganox 1010、irganox 1076、irganox 245、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびブチル化ヒドロキシアニソールからなる群から選択され、前記第2の添加剤のホスフィットが、ultranox U626、hostanox PAR24、irgafos 168、Weston 619およびirgafox 126からなる群から選択され、前記第2の添加剤のホスホネートが、sandostab P-EPQであり、前記第2の添加剤のホスフィンが、pepfineであり、前記第2の添加剤のトコフェロールが、dl-α-トコフェロール、α-トコフェロール、δ-トコフェロール、γ-トコフェロールおよびβ-トコフェロールからなる群から選択され、前記第2の添加剤のトコトリエノールが、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールからなる群から選択され、前記第2の添加剤のクルクミノイドが、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、クルクミン硫酸塩、クルクミン-グルクロニド、ヘキサヒドロクルクミンおよびシクロクルクミンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のフラボノイドが、ナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペリチン、ルテオリン、カテキンおよびアントシアニンからなる群から選択され、前記第1の添加剤の合成抗酸化剤が、irganox 1010、irganox 1076、irganox 245、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびブチル化ヒドロキシアニソールからなる群から選択され、前記第2の添加剤のベンゾキノールが、ユビキノールおよび補酵素Q10からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の添加剤のカテキンが、没食子酸エピガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキンおよびエピカテキンからなる群から選択され、前記第1の添加剤のアントシアニンが、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジンおよびペラルゴニジンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のカテキンが、没食子酸エピガロカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキンおよびエピカテキンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のアントシアニンが、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジンおよびペラルゴニジンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の添加剤がフェノール性抗酸化剤であり、前記第2の添加剤がクルクミノイドである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の添加剤がdl-α-トコフェロールであり、前記第2の添加剤がクルクミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の添加剤であるdl-α-トコフェロールが、ステップ(ii)においてUHMWPEの相対量に対して約250ppmでUHMWPEと混成され、前記第2の添加剤であるクルクミンが、ステップ(ii)においてUHMWPEの相対量に対して約250ppmでUHMWPEと混成され、ステップ(iv)の前記架橋が、線量約10MRadの照射によって行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の添加剤がdl-α-トコフェロールであり、前記第2の添加剤がジペンタエリスリトールである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の添加剤であるdl-α-トコフェロールが、ステップ(ii)においてUHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、前記第2の添加剤であるクルクミンが、ステップ(ii)においてUHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、ステップ(iv)の前記架橋が、線量約10MRadの照射によって行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の添加剤がクルクミンであり、前記第2の添加剤がジペンタエリスリトールである、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の添加剤であるクルクミンが、ステップ(ii)においてUHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、前記第2の添加剤であるジペンタエリスリトールが、ステップ(ii)においてUHMWPEの相対量に対して約300ppmでUHMWPEと混成され、ステップ(iv)の前記架橋が、線量約10MRadの照射によって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から9のいずれかの方法によって製造された架橋UHMWPEを含む軸受構成要素を含む、医療用プロテーゼ。
【請求項22】
前記第1の添加剤がフェノール性抗酸化剤およびヒンダードアミンからなる群から選択され、前記第2の添加剤が、亜リン酸添加剤、多価アルコール、フェノール性抗酸化剤、ヒンダードアミン、カロテノイド、アミノ酸系添加剤、チオ共力剤および抗酸化剤からなる群から選択される、請求項21に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項23】
前記第1の添加剤のフェノール性抗酸化剤が、トコフェロール、トコトリエノール、クルクミノイド、フラボノイド、フェニルプロパノイドおよび合成フェノール性抗酸化剤からなる群から選択され、前記第1の添加剤のヒンダードアミン抗酸化剤が、chimassorb 944、chimassorb 119 FL、cyasorb UV 3346、tinuvin 144、tinuvin 765、tinuvin 770 DFからなる群から選択され、前記第2の添加剤の亜リン酸添加剤が、ホスフィット、ホスホニットおよびホスフィンからなる群から選択され、前記第2の添加剤の多価アルコールが、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンエトキシレートからなる群から選択され、前記第2の添加剤のフェノール性抗酸化剤が、トコフェロール、トコトリエノール、クルクミノイド、フラボノイド、フェニルプロパノイド合成抗酸化剤およびベンゾキノールからなる群から選択され、前記第2の添加剤のヒンダードアミンが、chimassorb 944、chimassorb 119 FL、cyasorb UV 3346、tinuvin 144、tinuvin 765、tinuvin 770 DFからなる群から選択され、前記第2の添加剤のカロテノイドが、β-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、エキネノンおよびゼアキサンチンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のアミノ酸系添加剤が、グルタチオン、システイン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、前記第2の添加剤のチオ共力剤が、チオジプロピオン酸ジステアリル、irganox PS 800およびirganox PS 802からなる群から選択され、前記第2の添加剤の抗酸化剤が、パルミチン酸アスコルビル、アスコルベートおよびリポ酸からなる群から選択される、請求項22に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項24】
関節プロテーゼである、請求項21に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項25】
股関節または膝関節プロテーゼである、請求項24に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項26】
前記軸受を製造する方法において、前記第1の添加剤がdl-α-トコフェロールであり、前記第2の添加剤がクルクミンである、請求項21に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項27】
前記軸受を製造する方法において、前記第1の添加剤がdl-α-トコフェロールであり、前記第2の添加剤がジペンタエリスリトールである、請求項21に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項28】
前記軸受を製造する方法において、前記第1の添加剤がクルクミンであり、前記第2の添加剤がジペンタエリスリトールである、請求項21に記載の医療用プロテーゼ。
【請求項29】
医療用プロテーゼを必要としている患者に、請求項21に記載の軸受構成要素を含む医療用プロテーゼを施すステップを含む、前記患者を治療する方法。
【請求項30】
前記軸受構成要素が請求項22に従う、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記軸受構成要素が請求項23に従う、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記医療用プロテーゼが関節プロテーゼである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記医療用プロテーゼが、股関節または膝関節プロテーゼである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記軸受構成要素が請求項26に従う、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記軸受構成要素が請求項27に従う、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記軸受構成要素が請求項28に従う、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−525926(P2012−525926A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509891(P2012−509891)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/033494
【国際公開番号】WO2010/129514
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【Fターム(参考)】