説明

UV硬化耐湿性コーティングを備えた石膏パネル及びその製造方法

繊維状マットで表面仕上げされた石膏パネルであって、表面仕上げシートの少なくとも一方に、耐湿性であり、かつ例えばUV硬化可能であるような放射線により硬化可能なポリマーのコーティングを備えたパネルが開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石膏パネルに関し、より詳細には、硬化した石膏芯に接着した繊維状マットで表面仕上げされた少なくとも一つの面を備えた石膏パネルであって、該繊維状マットの表面が耐湿性であり、かつUV硬化のような放射線により硬化されたポリマーコーティングのコーティング面を備えた石膏パネルに関する。本発明はまた、そのような石膏パネル構造体を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面仕上げ用の紙製の二つのシートの間に硬化された石膏の芯が挟まれた石膏壁板のパネルは、建築物の建造における構造部材として長い間使用されてきた。そのようなパネルは、典型的には、部屋の間仕切り又は壁、エレベータの昇降路、階段の吹き抜け、天井等を形成するために使用されている。紙製の表面仕上げ面は、内壁をペインティングしたり、又は壁紙を貼ったりするのに特に望ましい滑らかな表面を提供する。紙は比較的安価な表面仕上げ用材料であり、かつ壁板の製造工程において容易に使用されるものではあるが、特に耐久性及び耐湿性に関しては不都合である。
【0003】
紙製の表面仕上げ材の代替物として、(ガラス繊維マットのような)他の繊維状マットが石膏壁板の表面仕上げ面材料として使用されてきた。そのような壁板の一例は、米国特許第3993822号明細書に記載されている。ガラス繊維状マットは改善された耐水性を提供し、かつ強度及びその他の構造的な寄与において重大な改良点をしばしば提供する。最近になって、種々のタイプのコーティング面を備えたガラス繊維状マットが、耐湿性の要求されるような適用において使用されるようになってきた。
【0004】
この構築物の石膏壁板パネルの使用における一つの特殊な適用は浴室であり、該浴室は典型的に多湿であり、かつシャワー、バスタブ及びシンクを使用することにより水が流れるので水の残る場所でもある。これらの適用においての使用に適した石膏壁板はある共通した必要条件、即ち、多湿及び高湿度環境に対してしばしば長期間にわたり抵抗性又は耐性であるという条件を共用している。
【0005】
浴室壁の通常の構築物は、内側の基礎部材である例えば石膏又は他の材料からなる壁板パネルにセラミック製のタイルが接着された多数重なった構造を含む。そのようなパネルは、当該技術分野においては「タイル下地板(tile backing board)」と参照され、本明細書中においては、便宜上、「タイル裏材料(tile backer)」と称する。通常の様式において、タイル裏材料シート(例えば、121.92cm(4フィート)×243.84cm(8フィート)×1.27cm(1/2インチ))は、さび止めしたくぎ又はネジにて止め金具に固定されている。セラミック製タイルのブロック(例えば、10.16cm(4インチ)×10.16cm(4インチ))は当該技術分野においては「マスチック樹脂(mastic)」として称される耐水性の接着剤、又は「薄い硬化モルタル(thin set mortar)」として一般的に称されるポートランドセメントベースの接着剤を用いてタイル裏材料シートに接着されている。その後、タイル間の空間及びタイルと例えばバスタブ又はシンクのへりのような他の隣接する面との間の空間が当該技術分野において「グラウト(grouting)」と称されている耐水性材料で満たされる。
【0006】
バスタブ、シャワー及びシンクの一つ以上を含む浴室を建設する上における主要な目的は、温水を含む水により劣化することに耐え得る材料を用いて連続かつ隣接する壁部を水密性にすることであることは理解されるべきである。セラミック製のタイルはそのような材料であり、かつ該タイルが直接接触する温水及び冷水のいずれに対しても基本的には不活性である。
【0007】
タイルが接着されるべきタイル裏材料が耐水性であることも重要である。理論的には、タイル裏材料の耐水性は、該裏材料が耐水性のタイル、グラウト及びマスチック樹脂によりシャワー、浴室及びシンクの水から遮断されているために重要ではないと思われる。しかしながら、経験上、そのようなことはなく、タイル裏材料に重ねられている材料の層を介して種々の様式にて湿気がしみ出す可能性があり、実際にはしみ出している。
【0008】
上記種々の様式のうちの一つの様式は、グラウトは不透水性というわけではなく、時間の経過により湿気を浸出させ、この状況は該グラウト中にひび割れを含む割れ目が形成されることによりさらに悪化するという事実に関連している。最終的に、グラウトを貫通して浸透する湿気はマスチック樹脂を介してその経路にて見られ、壁板の表面仕上げ面と接触する。該表面仕上げ面は、通常紙製、典型的には多数の層からなる紙製であり、湿気と接触することにより、薄層に剥がれるか又は劣化により品質が低下する傾向にある。例えば、紙製の表面仕上げ面は菌及び白カビからの生物学的な劣化にさらされる。実際に、紙は朽果てる。さらに、湿気が下側の硬化石膏芯と接触することになると、該硬化石膏を溶解し、さらに、該芯と紙製の表面仕上げ面とを結合している芯接着剤をも溶解させることになる。該接着剤は典型的にはデンプン材料である。これらの状態が進むと、タイルが下側の劣化した紙製表面仕上げされた石膏壁板から剥がれることになる。このような好ましくない状況は、温水が紙製表面仕上げされた石膏壁板と接触した場合は悪化する。
【0009】
下側の支持基盤からのタイルの剥離又は崩落を引き起こす別のタイプの湿度条件は壁板の端部から形成される接合部を含む多層壁構造のセグメントに関連する。一例は、壁板パネルの端部及びバスタブの縁に形成された接合部である。別の例は、二つの隣接する壁板パネルにより形成された接合部である。湿気が多層構造物を貫通してそのような接合部に到達すると、毛管作用にて拡散することにより紙製の表面仕上げ面の主要部及び芯をぬらすことになる。これにより、紙製の表面仕上げ面の層状剥離、及び/又は、芯及び/又は紙/芯の接着剤の溶解が起こる。これらが起こることにより、タイルが緩められ、崩落する。
【0010】
そのような湿気を帯びた状態における使用に適した耐水性石膏パネルの一例が、米国特許第5397631号明細書及び米国特許第5552187号明細書に記載されている。これらの特許によると、ガラス繊維マットで表面仕上げされた石膏パネルの製造に続いて、ガラスマットに面するパネルの表面が硬化(乾燥)したラテックスポリマーの耐湿性かつ耐水性樹脂コーティングにて被覆される。コーティング面は液体及び蒸気の両方のバリアとして作用し、約15乃至約35重量%の固体樹脂と、約20乃至約65重量%の充填材と、約15乃至約45重量%の水から構成され、92.90m(1000平方フィート)当たり約49.90kg(約110lbs)の固体装填が得られる水性コーティング組成物から形成される。この特許に従って使用するのに好ましい樹脂は、76RES1018(商標名)としてUnocal社のUnocal Chemicals部門より市販されているラテックスポリマーである。樹脂は、比較的低いフィルム形成温度を備えたスチレン−アクリルコポリマーである。樹脂から形成される水性コーティングは約148.9乃至204.4℃(300乃至400°F)の範囲の温度にて効果的に乾燥される。所望に応じて、樹脂のフィルム形成温度を下げるために合体剤が使用され得る。
【0011】
この試みは、紙製表面仕上げされた石膏パネルを厳しい湿度環境にて使用する場合、上述の起こりうる問題の多くを満足のゆく程度に解決できる石膏パネルを形成するものの、樹脂製コーティングそのもののコスト及びコーティングをどのように適用するかに関するコストのような更なるコストが加わるために、そのようなパネルを広く使用する上の障害となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の一つの重要な実施形態は、パネルがタイル裏材料として効果的に使用可能となるような、不透水性コーティングを備えた改良された石膏ベースの構造パネルに関する。改良された石膏パネルのさらに別の実施形態は、水及び湿気状態が通常起こりうるような商業的な建築物の排気設備、シャフト壁及び領域隔離壁のようなその他の用途にて使用され得る。板の設置時又は使用時のいずれかにおいて湿気及び湿度条件が避けられないような他の適用は、当業者にはあきらかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
繊維状マットで表面仕上げされた石膏パネル上に例えば紫外線による硬化のような放射線硬化されたコーティングの提供に依存する本発明のこれらの及びその他の実施形態は以下の記載から明らかであろう。
【0014】
本発明の一態様は、表面仕上げシートの少なくとも一方に、例えばUV硬化可能なポリマーのような放射線にて硬化可能なポリマーの耐湿性硬化コーティングを備えた繊維状マットの表面仕上げ面を備えた石膏パネルに関する。
【0015】
本発明の別の態様は、繊維状マットで表面仕上げされた石膏パネルを製造する方法に関し、該石膏パネルは、該繊維状表面仕上げシートの少なくとも一つに、UV硬化可能なポリマーのような放射線にて硬化可能なポリマーの硬化コーティングを備えている。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、繊維状マットで表面仕上げされた石膏パネルであって、表面仕上げシートの少なくとも一方に、例えばUV硬化可能なポリマーのような放射線硬化可能なポリマーの耐湿硬化コーティングと、タイルの結合又は該石膏パネルの他の装飾面処理を促進するのに十分な骨材材料とを有する繊維状マットで表面仕上げされた石膏パネルに関する。
【0017】
硬化コーティングは優れた耐水性及び防湿特性を提供する。さらに、コーティング面に対して優れた乱用抵抗性及び摩耗/引っかき抵抗性を与えて表面の耐久性を改良する。屋根材としての適用においては、コーティングはホットモップ(hot−mop)式ルーフィング設備において石膏パネルを使用する場合にしばしば遭遇する気泡(frothing)を著しく低減する。骨材添加物を含むコーティングはまた、モルタル、マスチック樹脂及びエポキシ樹脂のようなタイル固定材料に対する優れた接着性を示しながら、遮断に対する優れた抵抗性をも備える。
【0018】
本発明は、石膏パネルが、シャフト壁、階段の吹き抜け、領域の間仕切り壁、排気設備のような非常に多湿又は湿気の多い環境に設置時又は使用時にさらされるような適用における使用、特に浴室におけるタイル裏材料としての適用における使用に特に有利である。さらに別の適用法及び使用法は、以下に記載される本発明の詳細な説明から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の目的、特徴及び利点は、以下に示す本発明の実施形態のより詳細な説明及び添付された図面に図示されたように明らかであろう。図面において、符号は種々の図にわたり同一の部材を参照する。図面は必ずしも縮尺に従っている必要はなく、代わりに、強調部分は本発明の特徴を図示するように記載されている。
【0020】
図1に示されるように、本発明の放射線(UV)硬化されたポリマーコーティング15を備えた耐湿性石膏パネル又は耐湿性石膏板10の一実施形態は、二つの繊維状表面仕上げシート又はマット14及び16が貼られた石膏板芯12からなる。繊維状表面仕上げシート若しくはマットのいずれもガラス繊維マットであり得るか、いずれも紙繊維マットであり得るか、又は一方が紙マットであるとともに他方がガラスマットであり得る。本発明における使用に適する他の繊維状マットは以下の記載から明らかであろう。例えば、米国特許出願公開第20030203191号明細書及び米国特許出願公開第20020134079号明細書に記載されているような予めコーティングされたガラス繊維マットは同様に有効に使用され得る。パネルが高湿度環境にて使用するためにデザインされているような場合、好ましくはガラス繊維マットであるマットの少なくとも一つの表面は、例えばUV硬化のような放射線により硬化されたポリマーコーティング(図1及び2において符号15にて示されている)にてコーティングされている。
【0021】
放射線硬化されたコーティングは、好ましくは任意の未反応の成分を実質的に含まない処方物を用いて適用される。コーティングはパネルの初期製造の後に適用され、次いで、コーティングされたパネルが放射線(UV)源にさらされ、繊維状表面仕上げシート上のコーティングが硬化される。
【0022】
好ましい一実施形態において、石膏パネルは最初に鉱物性顔料(充填材)と、第一の結合剤であるポリマーラテックス接着剤と、選択的に第二の結合剤である無機接着剤との組み合わせ(例えば、混合物)を含有する乾燥した(熱硬化された)水性コーティング組成物を有する予めコーティングされたガラスマットを少なくとも一つの表面仕上げ用シートとして使用して製造され得る。そのような構成は、例えば、2001年4月19日に出願された同時係属出願である米国特許出願第09/837226号に記載されており、該出願は、本明細書中において、参照としてその全体が援用される。
【0023】
石膏パネルの初期製造に続いて、放射線により硬化可能な処方物(例えば、UVにより硬化可能な処方物)がコーティング層として石膏パネルの予め被覆されたマットの側に適用され、放射線(UV)源にさらされて放射線(UV)硬化可能なコーティング層が硬化される。
【0024】
本発明の使用に関連した多くの利点が存在する。第一の重要点は、放射線にて硬化されたポリマーがコーティングされた繊維状マットで表面仕上げされたパネルは、優れた耐候特性を備え、従って、該パネルの初期設置時又は使用時のいずれの場合においても、水との接触及び高湿度への露出を含むような用途においても安定な基質として半永久的に効果的に使用可能であるという点にある。本発明の放射線硬化されたポリマーでコーティングされた繊維状マットで表面仕上げされたパネルは、抗カビ性であるとともに抗腐食性である。
【0025】
硬化されたコーティングは、優れた耐水性及び防湿特性を提供する。また、コーティング面に対して優れた乱用抵抗性及び摩耗/引っかき抵抗性を与えて表面の耐久性を改良する。屋根材としての適用においては、コーティングはホットモップ式ルーフィング設備において石膏パネルを使用する場合にしばしば遭遇する気泡を著しく低減する。骨材添加物を含むコーティングはまた、モルタル、マスチック樹脂及びエポキシ樹脂のようなタイル固定材料に対する優れた接着性を示しながら、遮断に対する優れた抵抗性をも備える。
【0026】
石膏ボードは、典型的には石膏スラリーを繊維状表面仕上げ材の移動するシート上に分散する工程を含む方法により製造される。繊維状表面仕上げ材は典型的には、成形テーブル、支持ベルト、キャリアロール等のような設備により支持されている。続いて、通常繊維状仕上げ材の第二のシートがロールから該スラリーの頂部に供給され、二つの移動する繊維状表面仕上げシート間に該スラリーが挟持される。形成装置又は成形装置が使用され、該スラリーが所望の厚みに圧縮される。石膏スラリーが少なくとも部分的に硬化され、連続的な長さの板が切断され、さらに、加熱下にさらされ、石膏スラリーから過剰の水が蒸発する速度を増大することにより、板の乾燥が促進される。
【0027】
図3は石膏パネルを形成する製造ラインの一部の概略図である。そのような形態の特殊な詳細部は従来的なものであり、従って、概略的な説明によってのみ示されている。従来の様式において、石膏芯を形成する乾燥成分は予め混合され、ピンミキサ(図示しない)として一般的に参照されているタイプのミキサへ供給される。芯を形成する上において使用される水及び石鹸のような他の液体成分がピンミキサ内に量り入れられ、所望の乾燥成分と結合され、水性石膏スラリー41が形成され、該スラリー41はピンミキサの排出管40から放出される。泡状物質(石鹸)が該スラリーに加えられ、得られる芯の密度が制御される。スラリーは、排出管40の一つ以上の排出口を介して、(多層重ねの紙又は予めコーティングされたガラス繊維マットのような)繊維状表面仕上げ材料の水平に移動する連続ウェブ24上に堆積される。堆積される量は当業者に周知の様式にて制御され得る。
【0028】
繊維状表面仕上げ材料24はロール(図示しない)から供給され、予めコーティングされている場合は、コーティング面を下にして供給される。石膏スラリー41を受ける前に、繊維状表面仕上げ材料24のウェブはローラ(図示しない)にて平らにされ、通常、一つ以上の筋入れ装置(scoring device)(図示しない)により筋が入れられる。筋を入れることにより、繊維状表面仕上げ材料24の側部が上向きに折り曲げられるか、又は石膏パネルの端部付近にて折り曲げられる。繊維状表面仕上げ材料24及び堆積された石膏スラリー41は矢印Bの方向に移動する。繊維状表面仕上げ材料24の移動するウェブは製造されるべくパネルの第二の表面仕上げシートのパネルを形成し、スラリーは少なくとも部分的に(かつ好ましくは、一部のみが)繊維状表面仕上げ材料の厚みを貫通し、硬化する。硬化において、強力な接着結合が硬化した石膏と繊維状表面仕上げシートとの間に形成される。スラリーの繊維状表面仕上げシートへの部分的な貫通は、例えば、スラリーの粘度を制御するような従来から周知の方法に従って、かつ繊維状表面仕上げ材に種々のコーティングを適用することによって制御され得る。
【0029】
本発明のパネルの石膏芯は、基本的には、石膏壁板、乾燥壁、石膏板、石膏ラス及び石膏シージングとして一般的に周知である石膏構造製品において使用されるタイプのものである。そのような製品の芯は、水と、粉末状の無水硫酸カルシウム又は焼き石膏としても公知である硫酸カルシウム半水化物(CaSO・1/2HO)とを混合して水性石膏スラリーを形成し、その後、該スラリー混合物を水和するか、又は硬化して、比較的硬化した材料である硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)を形成することにより、形成される。該製品の芯は、一般的には、少なくとも約75乃至85重量%の硬化した石膏からなるが、本発明を通じて、芯における石膏の含量は任意の特定な含量に限定されるものではない。
【0030】
石膏スラリー41が繊維状表面仕上げマット材料24のウェブ上に堆積された後に、該ウェブの端部が形成するパネル又は壁板の端部の周囲に(当業者に周知の装置を用いて)徐々に折り返され、側部に沿ってスラリーの上面にて終了する。ロール(図示しない)から矢印Cの方向にて供給される、例えば紙である繊維状表面仕上げ材料22の別のウェブが、通常石膏スラリー41の上面に適用され、該繊維状表面仕上げ材料24の(底部)ウェブの折り曲げられた縁部にほんの僅か重ねられるのみである。無論、表面仕上げシート24の使用に適した任意の表面仕上げシートはまた、表面仕上げシート22に対しても使用可能である。例えば紙である繊維状表面仕上げ材料22の(頂部)ウェブを石膏スラリーの上面に適用する前に、重ねられ、かつ底部の繊維状表面仕上げシートの折り曲げられた縁部と接触するウェブの部分に沿って該ウェブに接着剤が適用される(接着剤の適用は図示しない)。好ましくは、デンプンベースの接着剤が使用される。一つの適切な接着剤はポリ(ビニルアルコール)ラテックス接着剤である。酢酸ビニルポリマーベースの接着剤、特に、加水分解されてポリビニルアルコールを形成する酢酸ビニルは、ホワイトグルー(white glue)として広く入手可能である。ウェブを供給及び接合するために種々の形態が使用され得る。
【0031】
例えば紙のような表面仕上げ材料22の(頂部)ウェブが適用された後に、繊維状表面仕上げ材料ウェブと、石膏スラリーと、第二の繊維状表面仕上げ材料ウェブとの「サンドウィッチ」がプレート50及び52の間にて所望の壁板厚となるように押圧される。これに代えて、ウェブ及びスラリーはローラ又はその他の様式にて所望の厚みに押圧される。次いで、スラリーと適用された表面仕上げ材料との連続的なサンドウィッチはコンベヤ54によって矢印Dの方向に搬送される。スラリー41は搬送時に硬化される。
【0032】
既に述べたように、本発明の石膏パネルは、少なくとも一つ、好ましくは第2の繊維状マットの表面仕上げ用シートと対面している。適切な繊維状マットは、石膏壁板の芯からなる硬化した石膏と強固な結合を形成することが可能な繊維状材料からなるマットを含む。そのような繊維状マットの非限定的な例としては、(1)紙(セルロース)繊維、(2)ガラス繊維のような鉱物性材料、(3)ポリオレフィン繊維のような合成樹脂繊維及び(4)鉱物性繊維と合成樹脂繊維の混合物のような繊維の混合物から形成されるマットである。ガラス繊維マットは、厳しい湿度環境において使用されるべくスレートで葺かれたパネルにおいては通常好ましいものである。紙繊維に基づく繊維状マットは概して多層構造体から構成される一方、ガラス繊維マットはしばしば単層構造体である。
【0033】
既に述べたように、表面仕上げ用シートの一方又は両方は、紙製表面仕上げシート、ガラス繊維マット表面仕上げシート、繊維状合成樹脂マット表面仕上げシート又はガラス繊維及び合成樹脂繊維の混合物のような繊維の混合物から形成される表面仕上げシートであり得る。好ましくは、高湿度の適用に対しては、表面仕上げシートの少なくとも一つがガラス繊維マット表面仕上げシートであり、より好ましくは、同時係属出願である米国特許出願第837226号に開示されている予めコーティングされたマットのような予めコーティングされたガラス繊維マットである。したがって、本発明の考慮された実施形態の幾つかにおいて、石膏パネルは、一例として、二つの紙製表面仕上げ材、二つのガラス繊維マット表面仕上げ材、又は一つの紙製表面仕上げ材と一つのガラス繊維マット表面仕上げ材とにより覆われた硬化した石膏芯を有する。「第一の表面仕上げ材(facer)」及び「第二の表面仕上げ材」なる用語は任意であり、各用語が石膏パネルの頂部層又は裏打ち層のいずれかを参照している。
【0034】
紙繊維から形成される適切な表面仕上げシートは、従来の壁板製品の表面仕上げシートに一般的に使用されているものを含む。そのような紙製品は当業者には周知である。好適な紙製表面仕上げシートの一例は、アイボリーペーパー(ivory paper)(多数重ね)であり、該アイボリーペーパーは、1000乃至3500の硬い内部サイジング(100%スルー)と、92.90m(1000平方フィート)当たり約24.49乃至25.40kg(約54乃至56ポンド)の基本重量と、0.3302cm(約0.013インチ)の全カリパスと、1250kg/m(約70lbs/インチ)(機械方向)及び411kg/m(約23lbs/インチ)(横方向)の引張強度と、約1.00乃至約1.50グラムの頂部ライナのコッブ表面ぬれ(Cobb surface wetting)と、約0.50乃至約1.50グラムの底部ライナのコッブ表面ぬれと、約15乃至約150sec.の空隙とを備えている。石膏壁板を形成するためのその他の適切な紙は、当業者に周知である。
【0035】
鉱物性繊維及び/又は合成樹脂繊維から一部が形成されている適切な繊維状マットは、連続した、又は分断したストランド又は繊維からなり、かつ織られたものであるか、又は不織性のものである。そのような構築物は市販されており入手可能である。
【0036】
細断ストランド及び連続ストランドから形成されるような不織性のガラスマットは満足のゆくように使用され、かつ織られた材料より費用もかからない。そのようなガラスマットのストランドは、典型的には適度な接着剤により互いに接着され、一体的な構造物を形成する。ガラス繊維マットは、例えば、約254.00乃至約1015.98μm(約10乃至約40mil)の範囲の厚みを有し、一般的には、マットの厚みは380.99乃至888.98μm(約15乃至約35mil)であることが適切である。上述のガラス繊維状マットは公知であり、種々の形態にて市販されている。不織性繊維マットはそのコストが低いことからしばしば好ましいものではあるが、織られた繊維状マットは、ある特殊な場合においては望ましいものであり、したがって、本発明と関連付けられた使用に対して考慮される。
【0037】
一つの適切なガラス繊維状マットは、ランダムなパターンにて配向されるとともに典型的には尿素ホルムアルデヒドベースの樹脂接着剤のような樹脂結合剤にて互いに結合されている細断された、不織性のガラス繊維フィラメントからなるガラス繊維マットである。この種のガラス繊維マットは、例えば、Manville Building Mateirals社から商標名「DURA−GLASS」にて市販されているもの、及びElk社からBUR又は屋根板マットとして市販されているもののように入手可能である。そのようなマットの一つの例は、名目上、厚みが838.18μm(33mil)であり、約13乃至16ミクロンの直径のガラス繊維が含まれている。ある種の構造的応用においてはより厚いマット及びより厚い繊維が使用されるものの、ガラス繊維マットは名目上507.99μm(20mil)の厚みであり、該マットは約10ミクロンの直径のガラス繊維を含んでおり、本発明における使用にも適している。本発明の使用に適するガラスマットは、通常はマットの表面積92.20m(1000平方フィート)当たり約4.54乃至13.61kg(10乃至30lbs.)の基本重量を有する。
【0038】
典型的には、ガラス繊維マットは、フォートリニア型抄紙機にて任意の実効可能な幅の連続した不織ウェブに湿式形成されるが、それに限定されるものではない。好ましくは、数リニアフィートの上方に傾いたワイヤに非常に希釈した製紙原料が配置され、そして数リニアフィートの高真空にて水分を除去するために使用される。次いで、ガラス繊維結合剤を適用する「カーテンコーター(curtain coater)」及び過剰の水を除去するとともに密着したマット構造物を形成するために接着剤を硬化するオーブンを使用する。
【0039】
形成され、かつ十分に硬化した後に、壁板は典型的には所望の長さに切断され、かつ乾燥される。焼き石膏が水和しかつ硬化する場合、乾燥工程は初期水和に続き、最終的には加熱により過剰の水分が繊維状表面仕上げシート又はマットから蒸発されるので該乾燥が促進される。したがって、繊維状表面仕上げシート又はマットは、適切な乾燥が必要であるこの段階において、水蒸気の通路を許容すべく十分に多孔性であることが必要である。従来からの連続的な石膏板製造において典型的に使用される乾燥条件は、約30乃至約60分の乾燥時間で、1分当たり約70乃至約600リニアフィートのラインスピードにて約93.3乃至約315.6℃(約200乃至約600°F)の温度を含む。無論、適切な石膏板製品を得るために乾燥時間及び乾燥温度の任意の組み合わせが使用可能であり、上述のパラメータは単なる一例である。
【0040】
この初期の壁板の製造の後に、耐水性コーティングが該壁板の少なくとも一つの面、又はこれに代えて該壁板の両面に適用される。
得られた石膏板は図1及び2に概略的に示されている。板は硬化した石膏芯12と該石膏芯を部分的に貫通することにより該石膏芯と接着される第一の繊維状表面仕上げシート14と第二の繊維状表面仕上げシート16とを備える。通常、芯は空隙(個々のドットにて図示されている)を備え、該空隙は、板の製造時に、密度を低減するために、石膏スラリーに加えたれた泡の結果として分配されている。
【0041】
構造パネルの硬化した石膏の芯を形成するための組成物は、硬化促進剤、硬化遅延剤、発泡剤、強化繊維及び分散剤のような種々の添加剤を含むことができる。加えて、スラリーの粘度を調製するために粘度調整剤を加えることもできる。粘土調整剤の例は、米国特許第4647496号明細書に開示されている。他の典型的な添加剤としては、耐水性添加剤及び耐火性添加剤が挙げられる。石膏の芯の耐水特性を改善するための種々の添加剤は、例えば、米国特許第5342680号明細書に開示されており、該添加剤はポリビニルアルコールとロウ−アスファルト乳剤との混合物を含む。一実施形態において、以下に詳細に記載されるように、壁板の耐水性は、ASTM法C−473の浸せき試験に従って試験した場合、約10%未満、好ましくは約7.5%未満、最も好ましくは約5%未満の水を吸収するものである。
【0042】
芯の重量(密度)を低減するために、小さな気泡を石膏に導入して、発泡された石膏芯を形成することはこれまでの一般的な方法であった。典型的には長鎖のアルキルスルホン酸塩である発泡剤又は石鹸は、この目的のために従来加えられてきた。石鹸を石膏スラリー中に通常に加えることによる一つの好ましくない結果は、硬化された石膏芯と紙製の表面仕上げ材との間の結合強度が低減することにある。この影響を相殺するために、通常、デンプン結合剤が石膏スラリーに加えられる。
【0043】
さらに最近になって、改良された石膏壁板構築物が開発された。一つの試みにおいて、石膏板は予めコーティングされたガラス繊維マットから製造され、該コーティングは、鉱物性顔料(充填材)と、第一の結合剤であるポリマーラテックス接着剤と、選択的に第二の結合剤である無機接着剤との乾燥した水性混合物からなる。この種の壁板は、2001年4月19日に出願された係属する米国特許出願第09/837226号に記載されており、該出願は、本明細書中において、参照としてその全体が援用される。別の構築物において、石膏芯は一方の面がガラス繊維マット(好ましくは、上述の出願に記載されているような予めコーティングされたガラスマット)で被覆され、他方の面が紙製シートで被覆されている。この壁板は2002年9月18日に出願された係属する米国出願第10/245505号に記載されており、該出願は、本明細書中において、参照としてその全体が援用される。
【0044】
壁板は、石膏芯の耐水性を改善するために添加剤としてロウ、又はロウ乳剤を含み得る。しかしながら、本発明はそれにより限定されるものではなく、石膏製品の耐水性を改善するのに効果的であるとして報告されている他の材料の例としては、金属樹脂酸塩;通常乳剤として供給されるロウ若しくはアスファルト又はそれらの混合物;ロウ及び/またはアスファルトととうもろこしデンプンと過マンガン酸カリウムとの混合物;石油及び天然アスファルト、コールタール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及び酢酸ビニルと塩化ビニルとのコポリマー及びアクリル樹脂のような熱可塑性合成樹脂のような水不溶性熱可塑性有機材料;金属ロジン石鹸と水可溶性アルカリ土類金属塩と残渣の燃料油との混合物;乳剤の形態である石油ロウと残渣の燃料油、パインタール、又はコールタールのいずれかとの混合物;残渣の燃料油とロジンとからなる混合物;芳香性イソシアネート及びジイソシアネート;有機水素(organohydrogen)ポリシロキサン;Dow Corning 772としてダウコーニング(Dow Corning)社から入手可能であるようなケイ酸塩;各々が、硫酸カリウム、アルカリ及びアルカリ土類アルミン酸塩、ポートランドセメント(Partland cement)のような物質を含むか、又は含んでいないロウ乳剤及びロウアスファルト乳剤;溶融したロウ及びアスファルト及び油脂可溶性かつ水分散性乳化剤の混和物を加え、分散剤としてポリアリールメチレン濃縮物のアルカリスルホン酸塩を含むカゼイン溶液と混合することにより調製されるロウ−アスファルト乳剤、が挙げられる。ケイ酸塩は、一般的には約0.05%乃至約0.4%の量にて使用され、より一般的には約0.1%の量にて使用される。これらの添加剤の混合物もまた使用され得る。
【0045】
壁板の耐水性を改善するために使用されるロウ乳剤及びロウ−アスファルト乳剤の種は市販されている。これらの乳剤のロウの部分は、パラフィン又は微結晶ワックスであることが好ましいが、その他のロウも使用可能である。アスファルトを使用する場合、一般的に、環球法に規定されているように、約46℃(115°F)の軟化点を有するべきである。水性乳剤中のロウ及びロウ−アスファルトの全量は、通常、水性乳剤の約50乃至約60重量%からなる。ロウ−アスファルト乳剤の場合、アスファルトのロウに対する重量比は、通常、約1:1から約10:1まで変化する。米国特許第3935021号明細書に報告されているように、ロウ−アスファルト乳剤を調製するための種々の方法が公知である。本明細書中に記載されている石膏組成物において使用され得る市販のロウ乳剤及びロウ−アスファルト乳剤は、United States Gypsum社(ロウ乳剤)、Monsey Products社(No.52Emulsion)、Douglas Oil社(Docal No.1034)、Conoco社(No.7131及びGypseal II)及びMonsey−Bakor社(Aqualite70)により販売されている。石膏芯に対する耐水特性を提供するために使用されるロウ乳剤又はロウ−アスファルト乳剤の量は、しばしば、硬化した石膏芯が形成される組成物の成分の全重量に基づいて約3乃至約10重量%の範囲内であり、好ましくは約5乃至約7重量%の範囲内である。
【0046】
石膏ベース芯の芯において使用される別の耐水性添加剤は、例えば米国特許第3455710号明細書、第3623895号明細書、第4136687号明細書、第4447498号明細書及び第4643771号明細書に参照されているようなタイプの有機ポリシロキサンである。この種の添加剤の一例は、ポリ(メチル−水素−シロキサン)である。使用時において、有機ポリシロキサンの量は、通常、少なくとも約0.2重量%であり、しばしば、約0.3乃至約0.6重量%の範囲内に留められる。
【0047】
別途記載されていない限り、石膏の芯に関連して本明細書中にて使用されている用語「重量%」は、硬化した石膏芯を形成する組成物の成分の全重量に基づく重量%を意味しており、該組成物はロウ又はロウ−アスファルト乳剤の水分を含むが、石膏組成物の水性スラリーを形成する際に加えられるべき更なる量の水は含まない。
【0048】
別の実施形態に従って、硬化した石膏芯と隣接する表面仕上げシートとの接着を促進するとともにデンプン又は従来の結合剤を石膏芯において使用する必要性を回避するために、効果的な量のポリビニルアルコールが結合剤として使用され得る。これは、2002年4月21日に出願された同時係属出願である米国特許出願第10/224591号に記載されており、当該出願の開示は、本明細書において参照として援用される。
【0049】
典型的には、石膏板の芯は、約560.65乃至約881.02kg/m(約35乃至約55lbs./ft)、より通常には、約640.74乃至800.93kg/m(約40乃至50lbs./ft)の密度を有する。無論、より高い密度及びより低い密度を有する芯も特別な適用において所望の場合には使用可能である。所定の密度を有する芯の製造は、例えば、適度な量の泡(石鹸)を、該芯を形成するための水性石膏スラリー中に導入するか、又は成形によるなどの周知の技術を用いて達成され得る。
【0050】
本発明の液体及び蒸気不透過性のコーティングを形成するのに適切な放射線(例えば、UV)により硬化可能な処方物は、典型的には、エチレン性不飽和(ethylenically unsaturated)二重結合を有する少なくとも一つのポリマーからなる。このポリマーは通常、該処方物の全量の約20乃至99重量%の範囲の量において供給される。加えて、処方物は好ましくは、反応性を備えていない(揮発性)希釈剤又は反応性を備えていない溶媒を本質的に含んでいない。このように、硬化工程において、反応性を備えていない構成成分をコーティングから除去するためにパネルに熱を加える必要がないので、放射線により硬化可能な処方物の全てが本質的には放射線硬化されたコーティングとなる。本明細書及び請求の範囲において使用されるように、「本質的に含んでいない(essentially free)」なる用語は、除去するために特別な準備を必要とせず(例えば、コーティングを乾燥するために加熱するなど)、かつコーティングに残留することにより該コーティングの所望の特性に好ましくない影響を与えることのないような非常に僅かな割合にて放射線硬化される処方物中にて存在しているような反応性を備えていない成分の量を意味する。
【0051】
現代の産業工程において生産性は非常に重要である。本質的に100%非揮発性である処方物を用いることにより得られるほぼ瞬間的な硬化は、コーティング処方物を適用してから、在庫又は分配のために処理されたコーティングされた石膏パネルを得るまでの時間を最小化することもできる。これは、従来の乾燥オーブンから出した直後に、石膏パネルがオンラインにてコーティングされることを可能にする。
【0052】
本発明に従って、処方物は石膏パネルの繊維状表面仕上げシート又はマットの少なくとも一つに適用され、次いで、例えば、250乃至400nmの範囲の波長のUV光を照射するような高エネルギーの照射にさらされるか、又は代替的に可能であるならば高エネルギーの電子(100乃至350keVの電子ビーム)で照射することにより、硬化される。幾つかの適用において、処方物の反応成分の効果的な架橋を起こすために加熱すれば十分であるか、又は該加熱が上述の高エネルギー照射と組み合わせて使用され得る。
【0053】
本発明の放射線により硬化可能な処方物に適したポリマーは、基本的には、UV照射又は電子ビームのような電磁照射にさらされた場合フリーラジカルの重合化を受けることが可能なエチレン性不飽和二重結合を有する任意のポリマーである。当業者に理解されるように、ポリマー中のエチレン性不飽和二重結合の量はポリマーの確実かつ効果的な架橋を実施するのに十分である必要がある。一般的には、ポリマー100gに対して0.01乃至1.0モル、通常は、ポリマー100gに対して0.05乃至0.8モル、最も一般的には、ポリマー100gに対して0.1乃至0.6モルの範囲のエチレン性不飽和二重結合の含量であれば十分であろう。
【0054】
本明細書及び請求の範囲全体を通して使用されるように、「ポリマー」なる用語は、ポリ縮合物、ポリ添加製品、化学的に修飾されたポリマー、オリゴマー及びプレポリマーとして当業者に一般的に参照されているようなエチレン性不飽和二重結合を含む材料を含むことを意図されている。適切なポリマーはしばしば、少なくとも3つの反応基を有する多官能性化合物と、他の単官能性化合物又は他の多官能性化合物とを反応させることにより得られ、少なくとも3つの反応基を有する多官能性化合物と反応し、反応後に、エチレン性不飽和二重結合を有する一つ以上の化合物が留まる。
【0055】
適切なポリマーは通常、ポリマー骨格に直接結合されるか、又はアルキレン基を介して結合されるアクリルオキシ、メタクリルオキシ、アクリルアミド又はメタクリルアミド基を備えている。そのようなポリマーは各々がエチレン性不飽和基を有する、シリコンベースの、ポリウレタンベースの、ポリエステルベースの、ポリエーテルベースの、エポキシ樹脂ベースの、メラミン樹脂ベースの、及び(メタ)アクリレートベースの、ポリマー及びコポリマーを含む。アクリルオキシ及び/又はメタクリルオキシ基を有するポリマーが最も一般的である。そのようなポリマーはしばしば、シリコンアクリレート、ポリウレタンアクリレート、アクリレート修飾ポリエステル若しくはポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メラミンアクリレート及び(メタ)アクリレートに基づくアクリレート修飾コポリマーと称されている。放射線による硬化可能なポリマーとして、エチレン性不飽和ポリエステルを使用することも可能である。
【0056】
エチレン性不飽和二重結合を有するシリコンは通常、アリル、メタリル、アクリロイル、又はメタクロイル基を有する直鎖状又は環状のポリジメチルシロキサン類である。エチレン性不飽和基はポリジメチルシロキサンの主骨格のシリコン原子に、直接、酸素原子を介して、又は直鎖状若しくは分枝状であるとともに一つ以上の隣接していない酸素原子により遮断され得るアルキレン基を介して結合される。アクリレート及び/又はメタクリレート基は例えばポリジメチルシロキサンのSi−OH基を、適切な酸クロライド、又はエチルエステル及びメチルエステルのような酸のアルキルエステルでエステル化させることにより該シリコンに導入される。別の方法は、エチレン性不飽和カルボン酸のプロピニルエステルをジメチルクロロシランでヒドロシリル化させ、この様式にて得られたクロロオルガノシリコン化合物をヒドロキシル基を含むポリジメチルシロキサンと反応させることである。別の官能基化法は、例えば3−クロロプロピル、又は2−メチル−3−クロロプロピルのようなシリコン原子上にω−クロロアルキル基を有するポリジメチルシロキサンから出発する。そのような化合物は、トリエチルアミンのような第3級アミン等の適切な塩基の存在下にて、ヒドロキシル基を含むエチレン性不飽和化合物で修飾され、エチレン性不飽和ポリシロキサンが得られる。ヒドロキシル基を含むエチレン性不飽和化合物の例としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールジー又はトリ(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレート等ポリヒドロキシ化合物とエチレン性不飽和カルボン酸とのエステルである。
【0057】
上述のエチレン性不飽和シリコンは当業者には周知であり、通常市販されている。
放射線硬化可能な処方物中における使用に適したエチレン性不飽和エポキシ樹脂誘導体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸のようなエチレン性不飽和モノカルボン酸とエポキシ基含有化合物又はオリゴマーとの反応生成物を特に包含する。モノカルボン酸に代えて、又はモノカルボン酸と共に、エチレン性不飽和ジカルボン酸と、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキサノール及び2−エチルヘキサノールのようなモノアルコール類とのモノエステルを使用することも可能である。適切なエポキシ基含有基質は、多価アルコールのポリグリシジルエーテルを特に包含する。これらは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びその誘導体、さらにはビスフェノールAとビスフェノールAのジグリジジルエーテルとを反応させることにより得られるビスフェノールAのオリゴマーのジグリシジルエーテル、そして更には、ノボラック(novolacs)のポリグリシジルエーテルを含む。考慮中であるエチレン性不飽和カルボン酸とグリシジルエーテルとの反応生成物は、第一級又は第二級アミンにて修飾され得る。さらに、エポキシ樹脂中のヒドロキシル基と、例えば酸クロライドのようなエチレン性不飽和カルボン酸の適切な誘導体と、の反応により、更なるエチレン性不飽和基を該エポキシ樹脂中に導入することが可能である。エチレン性不飽和エポキシ樹脂は当業者に周知であるとともに市販されている。
【0058】
放射線硬化可能なポリマーとして適するエチレン性不飽和メラミン樹脂の例は、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物と、ヒドロキシル基を含む化合物、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物、又はエチレン性不飽和モノカルボン酸のアミンとの反応生成物である。適切なメラミン−ホルムアルデヒド縮合物は特に、ヘキサメチロールメラミン(HMM)及びヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)である。適切なヒドロキシル基含有化合物は、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、特にアクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを包含する。HMMとの反応の可能性を有するその他の化合物としては、アリルアルコール及びクロチルアルコールのようなエチレン性不飽和アルコールである。そのような反応に適するその他の化合物は、無水マレイン酸のようなエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物である。HMM又はHMMMをアクリルアミド又はメタクリルアミドのようなエチレン性不飽和カルボン酸のアミドで修飾し、エチレン性不飽和メラミン樹脂を得ることも可能である。そのようなメラミン樹脂はまた周知である。
【0059】
本発明にて使用される放射線硬化可能な処方物を調製するのに適したエチレン性不飽和ポリマーは、エチレン性不飽和二重結合を含むポリエステルを含み得る。従来のジカルボン酸と、エチレン性不飽和ジカルボン酸及び/又はこれらの酸の無水物及び低分子量ジオールとの共重縮合により得られるエチレン性不飽和ポリエステルとして認められる材料と、他方、従来のポリエステル中のフリーのヒドロキシル基を誘導体化することにより得られるエチレン性修飾ポリエステルとの間には差異が存在する。ヒドロキシル基は、別に、又はヒドロキシル基含有ポリエステルの調製時に、誘導体化される。
【0060】
エチレン性不飽和ポリエステルは、無水マレイン酸と、少なくとも一つのその他のジカルボン酸及び/又はその無水物並びに低分子量ジオールとの共重縮合物を包含する。この場合、ジカルボン酸及び/又はそれらの無水物は、好ましくは、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、グルタル酸無水物、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸からなる群より好ましくは選択され、特にフタル酸無水物から選択されることが好ましい。適切なジオールは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より好ましくは選択され、特に1,2−プロピレングリコールが好ましい。
【0061】
エチレン性修飾ポリエステルを与える誘導体化に適切なヒドロキシル基含有ポリエステルは、二塩基性又は多塩基性カルボン酸と、二価アルコール及び/又は少なくとも一つのその他の多価アルコール成分との重縮合により通常の方法にて調製され得る。この場合における可能性の高い二価アルコールカルボン酸又は多価アルコールカルボン酸は、脂肪族及び芳香族カルボン酸並びにそれらのエステル及び無水物である。これらは、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、グルタル酸無水物、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸及び無水ピロメリット酸を含む。可能な二価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、これらの混合物、並びに、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのような環状エーテルの重付加ポリマーである。可能な多価アルコールの例としては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ソルビトール、エリスリトール及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンのような3個乃至6個のヒドロキシル基を含むアルコール類を含む。アルコール成分分子中の全てのヒドロキシル基の数が酸成分分子中の全てのカルボキシル基の数より多い場合、ヒドロキシル基含有ポリエステルが得られる。これらのヒドロキシル基は、特にアクリル酸及びメタクリル酸のような上述のエチレン性不飽和カルボン酸を用いて通常の方法により公知の様式にてエステル化され得る。エステル化反応時に形成される水は、例えば、脱水剤、抽出又は共沸蒸留により除去され得る。エステル化は、通常、例えば、硫酸、無水塩酸、トルエンスルホン酸、及び/又は酸イオン交換体のような強酸などの触媒の存在下にて起こる。ポリエステル中のヒドロキシル基を、例えば塩化アリル又は塩化メタアリルのような反応性のエチレン性不飽和化合物を用いてエーテル化することも可能である。さらに別の実施形態は、ジオール、ジカルボン酸、及び少なくとも一つのより塩基性のカルボン酸から形成されるポリエステルに関する。この場合、ヒドロキシル基は、カルボン酸基と、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドのようなアルキレンオキサイドとの反応により引き続いてポリエステル中に導入される。これらのアルコール部分は、次に、同様の方法にてエステル化、又はエーテル化される。これらの生成物は当業者に周知であるとともに市販されている。それらの平均分子量は、500乃至10000の範囲であり、より一般的には800乃至3000の範囲である。
【0062】
本発明の放射線硬化可能な処方物を製造するために使用され得る他のエチレン性修飾(modified)ポリエステルは、従来のアルコール成分を備えた従来のジ−又はポリカルボン酸を、好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸である、エチレン性不飽和モノカルボン酸とともに共濃縮させることにより得られるポリエステルである。そのようのポリマーは例えば欧州特許第279303号明細書より周知であり、当該明細書は、本明細書において更なる参照として援用される。この場合、エチレン性不飽和基は低分子量成分からポリエステルを構築する際に該ポリエステルに導入される。
【0063】
上記したように、放射線にて硬化可能なポリマーはまた、エチレン性不飽和ポリエーテルから選択され得る。エチレン性不飽和ポリエーテルは末端に不飽和基を有するポリエーテルの主骨格から調製される。ポリエーテルの主骨格は、例えば、ポリエステルを調製するためにジオール又はポリオール成分として上述のアルコールのような二価アルコール又は多価アルコールと、通常はエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであるエポキシドとを反応させることにより得られる。ポリエーテルの主骨格は、フリーのヒドロキシル基を含み、該ヒドロキシル基は上述の方法により、アリル、メタリル、クロチル若しくはフェニルアリル基に変換させるか、又はエチレン性不飽和カルボン酸、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いて、若しくは酸クロライド、C乃至Cアルキルエステル又は無水物のような適切な誘導体を用いてエステル化される。
【0064】
放射線により硬化可能なポリマーはまた、アクリレート(又はメタクリレート)に基づくエチレン性不飽和コポリマーであり得る。そのようなエチレン性不飽和コポリマーは、官能基化されたポリマー、即ち、フリーのヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、イソシアネート、アミノ及び/又はエポキシ基を有するポリマーを反応させることにより通常得られる。エチレン二重結合は、ポリマー中にて反応基と反応する官能基を有する適切な低分子量のエチレン性不飽和化合物を備えたポリマーを反応させて共有結合を生成することにより、構造中に導入される。
【0065】
そのようなポリマーの出発材料として使用される官能基化されたポリマーは通常、上述のタイプの官能基を備えた少なくとも一つのエチレン性不飽和モノマー、所望であればその他のエチレン性不飽和コモノマーのフリーラジカル重合化により得られる。官能基を備えたエチレン性不飽和モノマーは通常、重合化されるモノマーの全量の、5乃至50モル%まで、より一般的には15乃至40モル%まで、そして、最も一般的には20乃至35モル%までである。官能基を備えたモノマーの例は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノアルキルアクリレート及びアミノアルキルメタクリレート、アクロレイン、メタクロレイン、ビニルエチルケトン、N−ジアセトンアクリルアミド及びN−ジアセトンメタアクリルアミド、ビニルイソシアネート、ジメチル−3−イソプロペニルベンジルイソシアネート、4−イソシアナートスチレン、及びメタクリローイルイソシアネート、ω−イソシアナートアルキル(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和カルボン酸のイソシアネートのようなカルボニル化合物、グリシジルアリルエーテル及びグリシジルメタリルエーテルのようなグリシジル化合物、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、無水マレイン酸、無水メタクリル酸のようなエチレン性不飽和無水物、並びにアクリルアミド及びメタクリルアミドのようなエチレン性不飽和カルボン酸のアミドである。適切なコモノマーは通常、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、及び所望であれば、ビニル芳香族化合物から構成される群より選択される。適切なコモノマーの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、及びtert−ブチル(メタ)アクリレートのようなアクリル酸及びメタクリル酸のC乃至Cエステルである。他の適切なコモノマーは、スチレン、1−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン及び2−クロロスチレンである。より少ない程度にて、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン及びイソプレンのような共役ジエン類、例えばビニルイソブチルエーテル、アクリロニトリル、メタクリトニトリルのようなC乃至C20アルカノールのビニルエーテル並びに2−ビニルピリジン及びN−ビニルピロリドンのようなヘテロ環ビニル化合物のようなモノマーを使用することもできる。周知の実施形態は、コモノマーとして、特にメチルメタクリレートであるメタクリル酸のエステル類からなる群より選択される少なくとも一つのモノマーと、アクリル酸及び/又はスチレンのアルキルエステルから構成される群より選択される少なくとも一つの更なるコモノマーを包含する。
【0066】
官能基を備えるとともに上述の反応に適したエチレン性不飽和化合物は、官能基を備えた上述のエチレン性不飽和モノマーから選択される。エチレン性不飽和化合物の官能基は、ポリマー上の官能基と、ポリマーとの結合形成を備えて反応可能であることが前提条件である。適切な反応は縮合反応及び付加反応である。適切な官能基相互作用の例は、イソシアネート−ヒドロキシル、イソシアネート−アミノ、無水物−ヒドロキシル、無水物−アミノ、カルボニル−アミノ、カルボン酸クロライド−ヒドロキシル、グリシジル−ヒドロキシル、グリシジル−アミノ若しくはアミド、及びグリシジルーカルボキシルである。別の周知の実施形態において、エチレン性不飽和ポリマーはグリシジル基を有する官能基化ポリマーと、特に2−ヒドロキシエチルアクリレートのような上述のエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのようなヒドロキシル基を備えたエチレン性不飽和化合物との反応により得られる。そのようなエチレン性不飽和ポリマーの例は、欧州特許第650979号明細書に記載されており、当該明細書の開示は本明細書において参照として援用される。
【0067】
本発明の放射線硬化可能な処方物において使用されるポリマーの別の好適なタイプは、エチレン性不飽和二重結合を有するポリウレタン誘導体である。そのようなポリウレタンは、例えば第一級又は第二級のアミノ基またはヒドロキシル基のようなイソシアネート部分と反応性を有する少なくとも一つの官能基を自身が有するエチレン性不飽和化合物とイソシアネート含有ポリウレタンとの反応等により得られる。アミノ基又はヒドロキシル基を有する適切なエチレン性不飽和化合物の例は、特に、ジオール又はポリオールを用いたエチレン性不飽和カルボン酸の上述のエステル生成物であり、該生成物において少なくとも一つのヒドロキシル基はエステル化されないままである。そのような化合物の例は、特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、のようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばトリエチロールプロパンモノ及びジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ及びトリ(メタ)アクリレートのような多価アルコールのアクリル酸及び/又はメタクリル酸との部分的なエステル生成物及び対応するアミノアルキルエステル、並びにN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシアルキルアミド及び3−アミノアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0068】
イソシアネート基を含むポリウレタンは、脂肪族及び/又は芳香族のジイソシアネート又はポリイソシアネートを一つの(第一の)成分として、別の(第二の)成分としてヒドロキシル基を有する化合物と反応させることにより周知の方法にて得られる。第二の成分としてポリアミン及びアミノアルコールを併用することも、よりすくない程度であれば可能である。当業者に理解されるように、仮にアミン及び/又はアミノアルコールが使用された場合、得られるポリウレタンは尿素基を有する。ポリウレタン中のイソシアネート基の数は、出発物質のモル量の比率を介して周知の方法にて制御される。
【0069】
エチレン性不飽和部分は、既に述べたように官能基の相互反応により周知の方法にて、イソシアネート基を含むポリウレタン中に引き続いて導入され得る。ポリウレタンの調製において、第三の成分として、イソシアネート基と直接反応する官能基を備えたエチレン性不飽和化合物を使用することも可能である。
【0070】
ジイソシアネート又はポリイソシアネートの例は、4乃至12の炭素原子を有する直鎖又は分枝状のアルキレンイソシアネート、6から12個の炭素原子を有する環状脂肪族ジイソシアネート、8から14個の炭素原子を有する芳香族イソシアネート、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート、ウレトジオンジイソシアネート、ビウレット基を有するポリイソシアネート、ウレタン基及び/又はアロファネート基を有するポリイソシアネート、オキサジアジントリオン(oxadiazinetrione)基を有するポリイソシアネート、ウレトネイミン修飾ポリイソシアネート又はこれらの混合物である。
【0071】
ジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート及びテトラメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−、1,3−及び1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4‘−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)−メタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(イソフォロンジイソシアネート)並びに2,4−及び2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサンのような環状脂肪族ジイソシアネート、並びに2,4−ジイソシナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、4,4’−及び2,4−ジイソシアナトジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアネート及びイソプロペニルジメチルトリレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネートである。
【0072】
イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートは特に簡単なトリイソシアナトイソシアヌレートであり、ジイソシアネートの環状トリマー又は一つ以上のイソシアヌレート環を有するそれらのより高度な相同体の混合物である。
【0073】
ウレトジオンジイソシアネートは通常、ジイソシアネートの環状二量化生成物である。ウレトジオンジイソシアネートは、例えば、単独の成分として使用されるか、又はイソシアヌレート基を含むポリイソシアネートのような他のポリイソシアネートとの混合物中にて使用される。ビウレット基を有する適切なポリイソシアネートは好ましくは18乃至22重量%のNCO含量を有し、かつ、3乃至4.5の平均NCO官能性を備えている。
【0074】
ウレタン及び/又はアロファネート基を備えたポリイソシアネートは、例えば、過量のジイソシアネートと、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、1,2−ジヒドロキシプロパンのような単純な多価アルコール類又はそれらの混合物とを反応させることにより得られる。ウレタン及び/又はアロファネート基を有するこれらのポリイソシアネートは通常、12乃至20重量%のNCO含量を有するとともに、2.5乃至3の平均NCO官能性を備えている。
【0075】
オキサジアジントリオン基を含むポリイソシアネートはジイソシアネート及び二酸化炭素から調製される。
ヒドロキシルのような反応性に富む水素を有する適切な化合物は、ポリエステルの調製に関連付けて記載された低分子量のジオール及びポリオール並びに、ポリエステルジオールのようなポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールの例は、上述の二塩基性又は多塩基性、好ましくは二塩基性カルボン酸と、好ましくは二価アルコール及び所望に応じて更には三価アルコールである多価アルコールとからの反応生成物である。適切な出発成分の例は、上述の多塩基カルボン酸と多価アルコールである。ポリエステルジオールはまた、上述の低分子量のジオールに基づく出発物質の存在下にてラクトンのオリゴマー化により得られる、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン及びε−カプロラクトンのようなラクトンのオリゴマーであり得る。上述のポリエステルジオール又はポリエステルポリオールは通常、500乃至5000の範囲、好ましくは750乃至3000の範囲の平均分子量を有する。
【0076】
本発明の広い実施において、放射線にて硬化可能な処方物はまた、放射線によって硬化されない少量の更なるポリマー添加物、即ち、放射線硬化可能なエチレン性不飽和二重結合を備えていないポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは通常、処方物の10重量%未満の量にて存在し、好ましくは約50℃未満、通常は約40℃未満の比較的低いガラス転移温度を有するべきである。適切なポリマーは、ビニル芳香族化合物、1乃至12個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のビニルエステル、C乃至C10のアルキルアクリレート及びC乃至C10のアルキルメタクリレートから選択されるエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合化により調製されるものである。ビニル芳香族モノマーは、特に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びクロロスチレンを包含する。ビニルエステルは、プロピオン酸ビニルのような酢酸ビニルを特に包含する。アクリレート及びメタクリレートはそれぞれ、アクリル酸及びメタクリル酸と、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール及びシクロヘキサノールとのエステルを包含する。重合化されるべきモノマーはまた、コモノマーとして、35重量%までの、しばしば20重量%までのみの、そして、多くの場合にはわずか0.1乃至10重量%の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロペン及びイソブテンのようなα−オレフィン類、ブタジエン及びイソプレンのようなジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、これらの酸のアミド、特に、N−メチロール(メタ)アクリルアミドであるこれらの酸のN−アルキルアミド、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなこれらの酸のヒドロキシアルキルエステル、及び例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及びアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸を包含する。これらのコポリマーは通常、アクリル酸、メタクリル酸、これらのアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルから選択される。
【0077】
そのようなポリマーの調製は周知であり、少なくとも一つのフリーラジカル重合開始剤と、所望に応じて、乳化剤及び/又は保護コロイドからなる群より選択される界面活性剤との存在下において上述のモノマーのフリーラジカル水性乳剤重合化により起こる。
【0078】
幾つかの場合において、放射線により硬化可能なポリマーの物理的特性は、石膏パネルの繊維状表面仕上げ用シート上に放射線硬化可能な処方物の薄い均一なコーティングを形成することが不都合であり、かつ困難である。この場合、放射線硬化可能なポリマー成分に加え、該放射線硬化可能な処方物はまた、それ自身が好ましくはカチオン性又はフリーラジカル経路にて重合化可能である低分子量の希釈剤又は溶媒を含むことができる。従ってそのような成分の使用は、特殊な放射線硬化可能なポリマーの粘度が繊維状表面仕上げシート上に薄くかつ均一なコーティングを容易に形成することができないような状況下においては特に有用である。これらの添加剤は通常、少なくとも一つのエチレン性不飽和二重結合及び/又は一つのエポキシ基を有するとともに約800未満の分子量を有する化合物である。明記したように、そのような化合物は通常、放射線硬化可能な処方物の所望の実用的な稠度に調整するために使用される。このことは本発明において特に重要である。その理由は、処方物は好ましくは、水及び/又は不活性有機溶媒のような非反応性(揮発性)の希釈剤から本質的にフリーであるべきであるからである(即ち、該処方物は好ましくは、そのような成分を、該成分を除去するためにコーティング処方物を(例えば、加熱乾燥により)処理する必要のないような少量の程度にて含んでいる)。従って、そのような化合物はまた、反応希釈剤と称される。放射線硬化可能な処方物中の任意の反応希釈剤の割合は、該放射線硬化可能な処方物中の放射線硬化可能なポリマー及び反応希釈剤の全量に基づいて、通常、0乃至60重量%の範囲である。
【0079】
適切な反応希釈剤の例は、ビニル基含有モノマー、特に、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルホルムアミドのようなN−ビニル化合物、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールモノ−及びジビニルエーテル、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールモノ−及びジ−ビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノ−及びジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル及びポリテトラヒドロフランジビニルエーテルのようなビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及びラウリン酸ビニルのようなビニルエステル、並びにビニルトルエン、スチレン、2−及び4−ブチルスチレン、及び4−デシルスチレンのような芳香族ビニル、並びに、例えば、フェノキシエチルアクリレート、tert−ブチルシクロヘキシルアクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなアクリル酸モノマー、である。
【0080】
ビニル基を含む化合物はまた、カチオン性重合可能な反応希釈剤として直接使用することもできる。さらに、適切な化合物はエポキシ基を含有する化合物、例えば、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、3’,4’−エポシキシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボシキレート並びに例えばブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールジグリシジルエーテルのようなグリシジルエーテル類であり、不飽和アルデヒド類、ケトン類、ブタジエンのようなジエン類、スチレンのような芳香族ビニル、ビニルカルバゾールのようなN−置換ビニルアミン、及びテトラヒドロフランのような環状エーテルのようなカチオン性の重合可能なモノマーの同時使用もまた可能である。
【0081】
反応希釈剤はまた、エチレン性不飽和カルボン酸と、低分子量の二価アルコール又は多価アルコールとのエステル、好ましくは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルであり、特にアクリル酸エステルを含み、アルコールは好ましくは、更なる官能基を含んでいないか、又はせいぜいヒドロキシル基以外にはエーテル基を含む。
【0082】
そのようなアルコールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール及びより高度に濃縮されたクラスの代表物、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エトキシル化及びプロポキシル化されたビスフェノールのようなアルコキシル化フェノール化合物、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールのような3つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール類、及び対応するアルコキシル化、特にエトキシル化及びプロポキシル化されたアルコール類である。
【0083】
周知の反応希釈剤は上述の二価アルコール又は多価アルコールと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とのエステル生成物を含む。そのような化合物は通常、ポリアクリレート又はポリエーテルアクリレートとして定義される。ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートは、特に適している。
【0084】
一実施形態において、そのようなポリアクリレート又はポリエーテルアクリレートは第一級及び/又は第二級アミンとともに修飾される。適切なアミンは、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ジ−n−ブチルアミン、シクロヘキシルアミンのような環状脂肪族アミン、ピペリジン、ピペラジン、1−エチルピペラジン及びモルフォリンのような複素環アミン、例えばN−(アミノエチル)イミダゾール、N−(アミノエチル)モルフォリン、テトラヒドロフルフリルアミン及び2−アミノエチルチオフェンのような複素環基を含む第一級アミンのような第一級及び第二級脂肪族アミンの両方を包含する。他の適切な化合物は、エタノールアミン、3−アミノプロパノール及びモノイソプロパノールアミンのようなアルカノールアミン類、並びにメトキシプロピルアミン及びアミノエトキシエタノールのようなアルコキシアルキルアミンを含む。アミンで修飾されたポリアクリレート又はポリエーテルアクリレートにおけるアミン基のアクリレート基及び/又はメタクリレート基に対するモル比は通常、0.01:1から0.3:1の範囲である。
【0085】
本発明に従って使用される放射線硬化可能な処方物は、基本的には、放射線硬化可能なポリマーの液体調製物又は流動可能な(例えば、粉体の)調製物である。従って、粉体の硬化可能な処方物はまた、例えば周知のとおり、粉体コーティング金属面に対して包含される。あまり好ましくはないが、ホットメルト処方物も可能であり、これらは温度を上げるのみで流動可能になる。放射線硬化可能な処方物はまた、通常の補助剤、例えば、増粘剤、平坦化剤(flattening agents)、流動制御剤、界面活性剤、消泡剤、UV安定剤、乳化剤及び/又は保護コロイド並びに充填材を含む。適切な補助剤は、コーティング技術から当業者には周知であり、骨材(aggregate)において、処方物中に約0乃至約15重量%にて含まれている。適切な充填材は、シリコンテトラクロライドの加水分解により得られるケイ酸塩、ケイ土(siliceous earth)、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、無機及び有機顔料等を含み得る。適切な安定化剤は、オキサニリド、トリアジン、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンのような典型的なUV吸収剤を包含する。これらは、例えば、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン及び2,6−ジ−tert−ブチルピペラジン(HALS化合物)のような立体的に込み合ったアミンのような通常のフリーラジカルスカベンジャーと共に使用され得る。安定化剤は、処方物中に存在する重合化可能な成分に基づき、0.1乃至5.0重量%、好ましくは0.5乃至2.5重量%の量にて選択的に使用され得る。
【0086】
処方物がUV照射により硬化されスレートされる(slated)場合、処方物はまた少なくとも一つの光開始剤を含む。ここで、フリーラジカル硬化メカニズムに対する光開始剤(エチレン性不飽和二重結合の重合化)と、カチオン性硬化メカニズムに対する光開始剤(エチレン性不飽和二重結合のカチオン性重合化又はエポキシ基を含む化合物のカチオン性重合化)との間には区別が必要である。高エネルギー電子による硬化(電子ビーム硬化)に対しては、光開始剤の使用をなしで済ませることができる。
【0087】
フリーラジカル光重合、即ち、エチレン性不飽和二重結合の重合化のための適切な光開始剤は、4−フェニル−ベンゾフェノン及び4−クロロベンゾフェノンのようなベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン(Michler’s ketone)、アンソロン、1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン誘導体、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル及びブチルベンゾインエーテルのようなベンゾイン及びベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールのようなベンジルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、β−メチルアントラキノン及びtert−ブチルアントラキノンのようなアントラキノン及びその誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネート及びビスアシルフォスフィンオキシドのようなアシルフォスフィンオキシドである。
【0088】
カチオン性光重合、即ち、ビニル化合物又はエポキシ基を含む化合物の重合化に適する光開始剤は、4−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート及びトルエンジアゾニウムテトラフルオロアルセネートのようなアリールジアゾニウム塩、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロアルセネートのようなアリールイオドニウム塩、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、ベンゼン−及びトルエンスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート及びビス[4−ジフェニルスルフォニオフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェートのようなアリールスルフォニウム塩、ジフェニルジスルフォン及びフェニル−4−トリルジスルフォン、ジアゾジスルフォン、イミドトリフレート、ベンゾイントシレートのようなジスルフォン、N−エトキシイソキノリニウムヘキサフルオロフォスフェートのようなイソキノリニウム塩、N−エトキシ−4−フェニルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェートのようなフェニルピリジニウム塩、N−エトキシ−2−ピコリニウムヘキサフルオロフォスフェートのようなピコリニウム塩、フェロセニウム塩、チタノセン及びチタノセニウム塩である。
【0089】
これらの光開始剤は、必要であれば、放射線硬化可能な処方物の重合化可能な成分に基づいて、0.05乃至20重量%、より一般的には0.1乃至10重量%、最も一般的には1.0乃至5重量%の量にて使用される。
【0090】
放射線硬化可能な処方物はまた、カチオン性重合化可能な官能基、特にエポキシ基を有するポリマーを含む。これらは、エチレン性不飽和モノマーのコポリマー、コモノマーとしてエチレン性不飽和グリシジルエーテル及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを含むコポリマーを含む。
【0091】
それらはまた、ヒドロキシル基含有ポリエーテルのようなヒドロキシル基含有ポリマーのグリシジルエーテル、ポリエステル、ポリウレタン及びノボラックを含む。それらはさらに、カルボン酸基を含むポリマーのグリシジルエステルを含む。カチオン性重合化可能な成分を有することが所望である場合、放射線硬化可能な処方物は、カチオン性重合化可能なポリマーに代えて、又は該ポリマーと共に、低分子量のカチオン性重合化可能な化合物、例えば、低分子量のジオール若しくはトリオールのジ−若しくはポリグリシジルエーテル、又は低分子量のジ−若しくはポリカルボン酸のジエステル若しくはポリエステル、例えば、上述のようなカチオン性重合化可能な反応希釈剤を含み得る。
【0092】
本発明の広い実施において、処方物は代替的に、熱開始剤、即ち熱放射に応答する化合物を、光開始剤に対して提案した量と同等の量にて含むことができる。
本発明に従って使用するのに適したほとんどの放射線硬化可能な処方物は、1乃至5重量%の量にて光開始剤又は熱開始剤を、20乃至99重量%の量にてウレタン、エポキシ、ポリエステル又はアクリレートのようなエチレン性不飽和ポリマーを、0乃至60重量%の量にて多官能アクリレートを、5乃至10重量%の量にて他の添加物を含むことができる。無論、光開始剤と熱開始剤とを組み合わせて使用することもできる。そのような場合、例えば、光開始剤の活性により、処方物中に発生する熱が熱開始剤の活性化を引き起こすことがある。
【0093】
本発明に従って、放射線により硬化可能な処方物は、石膏パネルの少なくとも一つの繊維状表面仕上げシート上にコーティングを提供するために使用される。このために、該放射線により硬化可能な処方物は、周知の方法、例えば、石膏パネルの繊維状表面仕上げシート上への噴霧、こて塗り(trowelling)、ナイフによる適用、はけ塗り、ローラ塗り、又は注入により適用される。処方物は、ホットメルト法、又は粉体塗装法により石膏パネルの繊維状表面仕上げシートに適用することも可能である。
【0094】
繊維状マットの表面へ適用されるコーティングの量は、好ましくはコーティング中に完全にマットの表面を埋めるのに十分な量であるべきであり、好ましくは、コーティングから繊維がほとんど突出しない程度であるべきであり、好ましくは、コーティングが湿気(液体又は気体状態のいずれにおいても)の通路に影響を与えないような程度とすべきである。使用されるコーティングの量は、繊維状マットの性質に依存され得る。いくらかの場合において、コーティングが適用される繊維状マット基質が不均一であるために該コーティングの厚みを測定することが困難であろう。
【0095】
コーティングの重量は、処方物中に存在する重合化可能な成分に基づいて、通常石膏パネル92.90m(1000平方フィート)に対して0.454乃至22.68kg(1乃至50ポンド)の範囲であり、より一般的には、石膏パネル92.90m(1000平方フィート)に対して0.907乃至11.34kg(2乃至25ポンド)の範囲である。適用は、室温でも昇温下でも可能であるが、石膏芯の好ましくない焼成の原因となる条件を回避するために、100℃を超えない温度であることが好ましい。放射線硬化可能な処方物の量は特別な場合においてはより多くすることも少なくすることもできるが、ほとんどの適用に対しては、粉体コーティングの量は、石膏パネル92.90m(1000平方フィート)に対して0.907乃至11.34kg(約2乃至25ポンド)の範囲内にあると考えられる。
【0096】
概略的に述べると、コーティングの厚みは、少なくとも約12.7μm(0.5mils)とすべきであり、通常は約127μm(5mils)未満であるが、ガラス製マットが比較的薄くてコーティングが効果的に乾燥される場合、6.35μm(0.25mils)のコーティングで十分であろう。通常、コーティングの厚みは約127μm(5mils)を超える必要はなく、ほとんどの適用に対しては、約50.8μm(2mils)のコーティング厚であれば通常十分であるべきである。
【0097】
石膏パネルの繊維状表面仕上げシートへの硬化可能な処方物の薄いコーティングの適用に続いて、該成分は、例えばUV源のような放射線源下にコーティングされた石膏パネルを通過させることにより、放射線硬化された、例えば、UV硬化されたポリマーでコーティングされた石膏パネルが形成される。これらの技術に従って形成されるコーティングされた石膏パネルは、水に対する液体及び気体バリアを提供する。コーティングは、250乃至400nmの波長の高エネルギー照射、好ましくはUV照射にさらされることにより硬化されるか、又は高エネルギー電子(150から300kevの電子ビーム)で照射することにより硬化される。UV源の例としては、高圧水銀灯を含む。通常架橋を行うのに十分な放射線量は、80乃至3000mJ/cmの範囲にある。
【0098】
別の実施形態において、パネルがタイルの裏材料としての使用を意図された場合特に適切であるのは、骨材材料が放射線により硬化可能な処方物中に含まれるか、又は繊維状表面仕上げシートにコーティングされた硬化可能な処方物に適用されることである。加えられた骨材の目的は、十分な表面の荒さ、又は他の表面特性を備えた硬化されたコーティングを提供し、タイル又は他の表面処理物が放射線により硬化可能なコーティングに付着される能力を促進又は高めることにある。骨材の性質は広く変更可能であり、本発明のこの実施形態においては、特殊なタイプ又は大きさの骨材材料に限定されるものではない。「骨材」なる用語の範囲内に広く包含されるものとしては、セラミック製マイクロスフェア、ガラス製マイクロスフェア、炭酸カルシウム、砂、酸化アルミニウム(アルミナ)、粉砕した石、ガラス繊維、石膏、パーライト及び当業者に容易に認識され得る他の無機及び有機骨材材料がある。
【0099】
骨材は、繊維状表面仕上げシート上にコーティングされる前に硬化可能なコーティング処方物中に加えられるが、使用される量を制限し、かつそれを最も効果的に濃縮するためには、繊維状表面仕上げシートにコーティングされた後で、かつ該コーティングが硬化される前に、該骨材材料を硬化可能なコーティング処方物上に加えられることが好ましい。このようにして、骨材材料は、セラミックタイルのような種々の表面処理物の任意の一つの石膏パネルへの結合を誘導する表面の形態を作出するのに必要なコーティングの表面付近に留められる。コーティングに加えられるべき骨材の量は、広い範囲内にて変更可能であり、かつ適切な結合がなされる適切な表面を提供するのに必要とされる量のみが使用されると好ましい。任意の特別な骨材材料に対しては、日常的な試験のみを用いて適切なレベルに到達される。当業者により理解されるように、適用される骨材の量は、その目的がコーティング上に骨材の表面コーティングを提供することであって、通常はコーティングの深さへ骨材が完全に浸透する必要はないので、使用される骨材の密度の関数となるであろう。マイクロスフェアのような低密度材料に対しては、通常、92.90m(1000平方フィート)当たり約0.57kg(1.25ポンド)の量の骨材が適切であるべきである。炭酸カルシウムのようなより高密度の材料に対しては、92.90m(1000平方フィート)当たり、約6.80乃至18.14kg(15乃至40ポンド)の骨材料が適切であり、92.90m(1000平方フィート)当たり、約9.07乃至15.88kg(20乃至35ポンド)であるとより好ましい。
【実施例1】
【0100】
以下の表は、石膏パネルの繊維状表面仕上げシートに適した放射線硬化可能な処方物の幾つかの実施例を示す。
【0101】
各処方物は、光開始剤及び放射線硬化可能なポリマーを含む。
【0102】
【表1】

【実施例2】
【0103】
以下の表は、石膏パネルの繊維状表面仕上げシートに適した放射線硬化可能な処方物の更なる好ましい実施例を示す。
【0104】
【表2】

本発明は特殊な実施形態と組み合わせて記載されているが、上述の記載及び実施例は例示することを意図されたものであり、本発明の範囲を制限するものではないことは理解されるであろう。他の態様、利点及び修正は、本発明を実施する当業者には明らかであり、これらの態様及び修正は本発明の範囲内であり、添付された請求の範囲によってのみ限定される。特別に記載されていない限り、全ての百分率はUF樹脂固体物(UF resin solids)に基づいている。明細書全般及び請求の範囲において、「約」なる用語は+5%又は−5%までのものを包含することを意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態に従う、繊維表面仕上げシート及び放射線硬化可能な処方物の硬化コーティングを備えた石膏パネル又は石膏板の等角図である。
【図2】図1の耐湿性パネルの断面図である。
【図3】石膏パネルを形成する方法を図示する壁板生産ラインの一部の部分概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏パネルであって、
平坦な第一の面と平坦な第二の面とを有する石膏芯と、
前記第一の面に少なくとも接着される繊維状表面仕上げ材料と、
前記繊維状表面仕上げ材料上に放射線硬化可能な処方物の放射線硬化されたコーティングと、
を備える石膏パネル。
【請求項2】
前記繊維状表面仕上げ材料は多数の層からなる紙製表面仕上げ材料である請求項1に記載の石膏パネル。
【請求項3】
前記繊維状表面仕上げ材料は鉱物性繊維の不織マットである請求項1に記載の石膏パネル。
【請求項4】
前記繊維状表面仕上げ材料は単層ガラス繊維マットの表面仕上げ材料である請求項3に記載の石膏パネル。
【請求項5】
前記繊維状表面仕上げ材料は、織られた合成繊維マット、又は不織性の合成繊維マットである請求項1に記載の石膏パネル。
【請求項6】
前記繊維状表面仕上げ材料は、鉱物性繊維と合成繊維との混合物である請求項1に記載の石膏パネル。
【請求項7】
前記繊維状表面仕上げ材料は充填材と結合剤との水性混合物の乾燥コーティングを有する請求項3、4、5又は6に記載の石膏パネル。
【請求項8】
前記石膏芯は、該芯の耐水性を改善するのに十分な量の耐水性付加物を含む請求項1に記載の石膏パネル。
【請求項9】
前記耐水性付加物はロウ乳化剤、有機ポリシロキサン及びシリコネートのうちの少なくとも一つからなる請求項7又は8に記載の石膏パネル。
【請求項10】
前記石膏芯は、デンプンを本質的に含んでいない請求項9に記載の石膏パネル。
【請求項11】
前記放射線硬化されたコーティングに接着される骨材材料を有する請求項1に記載の石膏パネル。
【請求項12】
前記骨材材料はセラミックマイクロスフェア、ガラスマイクロスフェア、炭酸カルシウム、砂、酸化アルミニウム、粉砕された石、ガラス繊維、石膏及びパーライトから選択される請求項7又は8に記載の石膏パネル。
【請求項13】
請求項1に記載の石膏パネルにおいて、
前記石膏芯は、ロウ乳化剤、有機ポリシロキサン及びシリコネートのうちの少なくとも一つを、該芯の耐水特性を改善するのに十分な量にて含み、
前記石膏芯はデンプンを本質的に含んでおらず、かつ
前記繊維状マット表面仕上げ材料はガラス繊維からなる石膏パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513881(P2006−513881A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560788(P2004−560788)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/039504
【国際公開番号】WO2004/055286
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(598084518)ジー−ピー ジプサム コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】G−P Gypsum Corporation
【住所又は居所原語表記】133 Peachtree Street,N.E., Atlanta, Georgia 30303 U.S.A.
【Fターム(参考)】