説明

UWB通信装置

【課題】アンテナから放射される無線信号の電力強度のばらつきを低減し、スペクトルマスクに適合させることができるUWB通信装置を提供する。
【解決手段】変調部4は、送信データSD1を変調して信号S1を生成する。プリドライバ部6は、ジッタ回路5から出力された信号S2を増大するものであり、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比を調整するための信号S3を生成することで、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を所定の基準値に調整する。ドライバ部7は、信号S3の論理を反転させて信号S4としてSRD回路8に出力する。BPF9は、信号S5から高周波の信号成分を抽出する帯域フィルタであり、抽出した高周波の信号成分をウルトラワイドバンド通信用のパルス信号である信号S6としてアンテナ10へ出力する。アンテナ10は、BPF9から出力された信号S6を無線信号として放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UWB通信装置に関し、特に、アンテナから出力される信号の電力強度のばらつきを低減させるUWB通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速無線伝送方式の一つとして、ウルトラワイドバンド(UWB:Ultra Wide Band)通信方式が注目されている。ウルトラワイドバンド通信とは、超広帯域無線を意味
し、中心周波数の25%以上、又は1.5GHz以上の帯域幅を占有する無線伝送方式を指し、搬送波を用いず、例えばパルス幅が1nsec以下等の極めて細かい短パルス信号からなるパルス信号列を用いて通信を行うものである(特許文献1)。このような短パルスを生成する高速パルス発生回路として、ステップリカバリダイオードを用いた無線送信回路が知られている。
【0003】
ところで、UWB通信装置の送信電力は各国において規定されており、米国においては、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)で規定されたスペクトラムマスクを超えないように送信電力を設定する必要がある。図14は、ステップリカバリダイオードを採用したUWB通信装置が出力する無線信号の波形を示し、(a)はUWB通信装置A〜Cの各々から出力される無線信号の電力と周波数との関係を示し、(b)はUWB通信装置A〜Cの各々から出力される無線信号の電圧と時間との関係を示している。
【0004】
UWB通信装置Aにおいては、(a)に示すように、出力される無線信号の電力スペクトラムのピーク値がスペクトルマスクを超えていることが分かる。また、UWB通信装置Bにおいては、(a)に示すように、出力される無線信号の電力スペクトラムのピーク値がスペクトルマスクに適合していることが分かる。また、UWB通信装置Cにおいては、(a)に示すように、出力される無線信号の電力スペクトラムのピーク値がスペクトルマスクに対して余裕があることが分かる。
【特許文献1】特表2003−515974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ステップリカバリダイオードを用いたUWB通信装置においては、ステップリカバリダイオード等の特性のばらつきによって、アンテナから放射される無線信号の電力強度がUWB通信装置毎にばらついてしまい、UWBの規格に沿うような無線信号を送信することが困難になるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、アンテナから放射される無線信号の電力強度のばらつきを低減し、所定のスペクトルマスクに適合した所望の電力強度を有する無線信号を放射することができるUWB通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるUWB通信装置は、オンオフキーイング変調により送信データを変調するUWB通信装置であって、前記送信データを変調する変調部と、前記変調部から出力された信号のスルーレートを調整するプリドライバ部と、前記プリドライバ部より出力された信号の論理を反転させるドライバ部と、前記ドライバ部から出力された信号に高周波の信号成分を生じさせるステップリカバリダイオード回路と、前記ステップリカバリダイオード回路により出力された信号から前記高周波の信号成分を抽出し、当該高周波の信号成分を前記送信データを表すパルスの信号として出力するフィルタ部と、前記フィルタ部から出力された信号を無線信号として放射するアンテナとを備え、前記プリドライバ部は、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することで、前記アンテナから放射される無線信号の電力強度を予め定められた基準値に調整することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、プリドライバ部により、ドライバ部から出力される信号のデューティ比が調整されて、アンテナから放射される無線信号の電力強度が所定の基準値になるように調整されるため、ステップリカバリダイオード等の特性のばらつきに起因して生じるアンテナから放射される無線信号の電力強度のばらつきを低減し、例えばFCCのスペクトルマスクに適合し、所望の電力強度を有するような無線信号を放射することができるUWB通信装置を提供することができる。すなわち、アンテナから出力される無線信号の電力強度は、ドライバ部から出力される信号のデューティ比が小さくなるにつれて増大するという特性に本発明者は着目した。そして、この特性に従って、ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することで、電力強度が例えばFCCのスペクトラムマスクを超えずスペクトルマスクに適合し、かつ、スペクトルマスクに近くなるような所定の基準値を有する無線信号をアンテナから放射することが可能となる。
【0009】
また、前記プリドライバ部は、前記変調部から出力された信号の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧を直線的に変化させ、この電圧の変化を示す直線の傾きを調整することで、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、プリドライバ部において、変調部から出力された信号の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧レベルが直線的に変化され、この電圧レベルの変化を示す直線の傾きが調整されることで、ドライバ部から出力される信号のデューティ比が調整されるため、当該信号のデューティ比を精度良く調整することができる。
【0011】
また、前記プリドライバ部は、前記変調部から出力される信号の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧を直線的に変化させる傾き調整部と、前記傾き調整部により電圧が直線的に変化された信号の電圧が閾値を下回ったとき、ハイレベルの信号を前記ドライバ部に出力する比較部と、前記閾値を調整することで、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整する閾値調整部とを備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、傾き調整部により、変調部から出力される信号の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧レベルが直線的に変化され、比較部により、傾き調整部から出力される信号の電圧レベルが閾値を下回ったとき、ハイレベルの信号がドライバ部に出力されるため、閾値を調整することで、ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することができる。
【0013】
また、前記プリドライバ部は、前記変調部から出力された信号を遅延させる遅延部と、前記遅延部により遅延された信号と、前記変調部から出力された信号であって前記遅延部により遅延されていない信号との論理積をとるAND回路と、前記遅延部により遅延された信号と、前記変調部から出力された信号であって前記遅延部により遅延されていない信号との論理和をとるOR回路と、前記変調部から出力された信号、前記AND回路から出力された信号、及び前記OR回路から出力された信号のいずれか1つを選択して出力することで、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整するセレクタとを備えることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、遅延部により、変調部から出力された信号が遅延され、AND回路により、遅延部により遅延された信号と、変調部から出力された信号であって、遅延部により遅延されていない信号との論理積がとられる一方、OR回路により、遅延部により遅延された信号と、変調部から出力された信号であって遅延部により遅延されていない信号との論理和がとられているため、OR回路及びAND回路の各々からデューティ比の異なる信号を出力することが可能となる結果、変調部から出力された信号、AND回路から出力された信号、及びOR回路から出力された信号のうちいずれか1つの信号をセレクタから出力させることで、ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することができる。
【0015】
また、前記送信データは、パルス同期信号部とデータ信号部とを備え、前記プリドライバ部は、前記アンテナから放射される無線信号において、前記データ信号部の電圧の波高値が、前記パルス同期信号部の電圧の波高値に対して21/2倍となるように、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、アンテナから放射される無線信号において、データ信号部の電圧の波高値が、パルス同期信号部の電圧の波高値に対して21/2倍となるように、ドライバ部から出力される信号のデューティ比が調整されるため、通信の信頼性を向上させることができる。すなわち、オンオフキーイング変調されたUWBの無線信号においては、データ信号部のパルス数は、パルス同期信号部のパルス数に対しておよそ半分となるため、データ信号部の電圧の波高値を、パルス同期信号部の電圧の波高値に対して21/2倍に設定しても、パルス同期信号部の電力強度が所定の基準値を超えないようにすることが可能となり、通信品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することで、アンテナから放射される信号の電力強度のばらつきを低減し、スペクトルマスクに適合させるUWB通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1によるUWB通信装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るUWB通信装置1のブロック図を示している。図1に示すUWB通信装置1は、オンオフキーイング変調により送信データを変調するUWB(ウルトラワイドバンド)通信装置であって、水晶発振子OSC1、発振回路2、データ生成部3、変調部4、ジッタ回路5、プリドライバ部6、ドライバ部7、SRD回路8、バンドパスフィルタ(BPF)9、及びアンテナ10を備えている。
【0019】
発振回路2は、水晶発振子OSC1を発振させて、UWB通信装置1の動作の基本となる周期信号、例えば送信される無線信号における短パルスの出力周期にされたクロック信号CLK1をデータ生成部3と変調部4とへ出力する。
【0020】
データ生成部3は、送信しようとするデータを生成し、このデータに送信先の受信装置の通信アドレス等のヘッダを付加して送信データSD1を生成し、送信データSD1を発振回路2から出力されたクロック信号CLK1と同期させて変調部4へ出力する。ここで、データ生成部3は、例えば、人の在不在を検出する検出装置、照明器具、及び空調装置等を制御するためにリモコン装置から送信される種々のデータを生成する。なお、データ生成部3は、自ら送信しようとするデータを生成するものに限られず、例えば外部に接続された機器から送信しようとするデータを受信して、このデータから送信データSD1を生成してもよい。
【0021】
変調部4は、ウルトラワイドバンド方式による変調を行う回路であり、データ生成部3から出力された送信データSD1とPN(Pseudorandom Noise)符号とを乗積することにより、送信データSD1を変調して信号S1を生成し、ジッタ回路5へ出力する。
【0022】
ジッタ回路5は、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度のピークが、例えばFCCで規定されたスペクトルマスクを超えないようにするために、変調部4から出力された信号S1にジッタを付与する。詳細には、ジッタ回路5は、信号S1の中央の振幅より小さい振幅の範囲内で乱雑に電圧が変動する乱雑信号を生成する乱雑信号生成部と、信号S1の電圧レベルと乱雑信号生成部により生成された乱雑信号との電圧レベルを比較する比較器とを備えている。
【0023】
プリドライバ部6は、ジッタ回路5から出力された信号S2のスルーレートを調整するものであり、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比を調整することで、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を所定の基準値に調整する。図2は、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比とアンテナ10から放射される無線信号の電力強度との関係を示したグラフであり、縦軸が無線信号の電力強度を示し、横軸が信号S4のデューティ比を示している。図2に示すように、信号S4のデューティ比が増大するにつれて、無線信号の電力強度が減少していることが分かる。そのため、図2に示すグラフに従って、信号S4のデューティ比を調整することで、アンテナ10から放射される無線信号のピーク値が所定の基準値となるように調整することができる。なお、所定の基準値としては、FCCで規定されたスペクトルマスクを超えず、かつ、スペクトルマスクに近くなるような値を採用することができる。
【0024】
詳細には、プリドライバ部6は、ジッタ回路5から出力された信号S2の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧を直線的に変化させ、この電圧の変化を示す直線の傾きを調整して信号S3を生成してドライバ部7に出力し、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比を調整する。
【0025】
図3は、プリドライバ部6の回路図を示している。プリドライバ部6は、インバータ61、PMOSトランジスタ62、NMOSトランジスタ63、3個の定電流回路64−1〜64−3、2個のスイッチSW1、SW2、設定部65、比較器66、及びプリドライバブロック部67を備えている。
【0026】
PMOSトランジスタ62のソースには、電源電圧が供給されており、PMOSトランジスタ62のドレインはNMOSトランジスタ63のドレインに接続されている。PMOSトランジスタ62のドレインとNMOSトランジスタ63のドレインとの接続点Xは、比較器66の入力側に接続されている。定電流回路64−1は、一端がNMOSトランジスタ63のソースに接続され、他端がグラウンドに接続されている。定電流回路64−2は、一端がスイッチSW1を介してNMOSトランジスタ63のソースに接続され、他端がグラウンドに接続されている。定電流回路64−3は、一端がスイッチSW2を介してNMOSトランジスタ63のソースに接続され、他端がグラウンドに接続されている。
【0027】
インバータ61は、信号S2を反転させてPMOSトランジスタ62及びNMOSトランジスタ63のゲートに出力する。PMOSトランジスタ62及びNMOSトランジスタ63は、接続点Xの電圧を、信号S3aとして比較器66へ出力する。点線で示すコンデンサC1は、寄生容量を示している。
【0028】
定電流回路64−1〜64−3は、信号S2の立ち下がり時における電圧を直線的に変化させ、この電圧の変化を示す直線の傾きを調整することで、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比を調整する。すなわち、NMOSトランジスタ63のソースに定電流回路64−1〜64−3が接続されていない場合、NMOSトランジスタ63のソースに流れる電流はコンデンサC1の影響により一定にはならないため、信号S3aの電圧はカーブを描いて変化するが、定電流回路64−1〜64−3を設けると、NMOSトランジスタ63のソースに流れる電流は一定となるため、信号S3aの電圧は直線的に変化する。なお、スイッチSW1、SW2によってオンされる定電流回路の個数が多いほど、NMOSトランジスタ63のドレインに流れる電流は大きくなるため、NMOSトランジスタ63のソースに接続する定電流回路の数を多くすると、信号S3aの立ち下がり時における電圧の傾きは大きくなり、信号S3aの電圧の変化速度を示すスルーレートを速くすることができる。
【0029】
設定部65は、ディップスイッチ等から構成され、ユーザによりなされた操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に従って、スイッチSW1、SW2をオン又はオフする。スイッチSW1、SW2は、機械式又はトランジスタ等の電気式のスイッチから構成され、設定部65によって受け付けられた操作入力に従って、オン・オフする。ここで、スイッチSW1、SW2はオンするとNMOSトランジスタ63のソースをグラウンドに接続し、オフするとNMOSトランジスタ63のソースを開放する。そして、ユーザは、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を測定し、この電力強度のピーク値が所定の基準値となるようなデューティ比を有する信号S4が生成されるように、オン・オフするスイッチSW1、SW2を設定する。
【0030】
比較器66は、一方の入力端子が接続点Xに接続され、他方の入力端子が定電圧回路66−1に接続され、出力端子がプリドライバブロック部67の入力側に接続され、定電流回路64により電圧が直線的に変化された信号S3aの電圧が電圧値Vth1を下回ったとき、ハイレベルの信号3bをプリドライバブロック部67に出力する。定電圧回路66−1は、一定の電圧値Vth1を比較器66に出力する回路から構成されている。
【0031】
プリドライバブロック部67は、例えば、特開2006−237661号公報の図2に開示されたプリドライバ回路から構成され、信号S3bのスルーレートを調整し、信号S3としてドライバ部7に出力する。
【0032】
図3に示すプリドライバ部6において、信号S2がハイレベルになると、PMOSトランジスタ62がオンしてコンデンサC1が充電され、信号S3aがハイレベルとなる。一方、信号S2がローレベルになると、NMOSトランジスタ63がオンして、定電流回路64−1〜64−3の少なくともいずれか1つによって、一定の電流値でコンデンサC1の電荷が放電され、一定の傾きで信号S3aが低下する。
【0033】
図4は、信号S3aと信号S3bとの波形図を示し、(a)は信号S3aの波形図を示し、(b)はスイッチSW1、SW2を共にオンした場合の信号S3bの波形図を示し、(c)はスイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフした場合の信号S3bの波形図を示し、(d)はスイッチSW1、SW2を共にオフした場合の信号S3bの波形図を示している。
【0034】
(b)に示すように、スイッチSW1、SW2が共にオンされている場合、NMOSトランジスタ63のソースには、3個の定電流回路64−1〜64−3が接続されるため、(a)に示すように、信号S3aの立ち下がり時における電圧の傾きK1は、傾きK2,K3より大きくなる。また、(c)に示すように、スイッチSW1がオン、スイッチSW2がオフされている場合、NMOSトランジスタ63のソースには、2個の定電流回路64−1、64−2が接続されるため、(a)に示すように信号S3aの立ち下がり時における電圧の傾きK2は、傾きK1より大きく、傾きK3より小さくなる。また、(d)に示すように、スイッチSW1、SW2が共にオフされている場合、NMOSトランジスタ63のソースには、定電流回路64−1のみが接続されるため、(a)に示すように信号S3aの立ち下がり時における電圧の傾きK3は、傾きK1、K2より小さくなる。
【0035】
従って、(b)に示すように、スイッチSW1、SW2を共にオンすると、信号S3aの電圧は、(c)、(d)の場合よりも速く電圧値Vth1まで降下するため、信号S3bのハイレベルの期間が長くなり、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比を小さくすることができる。また、(c)に示すように、スイッチSW1をオン、SW2をオフにすると、信号S3aの電圧は、(b)の場合より遅く、(d)の場合より速く電圧値Vth1まで降下するため、信号S4デューティ比を、(b)と(d)の間の値にすることができる。また、(d)に示すように、スイッチSW1、SW2を共にオフすると、信号S3aの電圧は、(b)、(c)の場合よりも遅くの電圧値Vth1まで降下するため、信号S3bのハイレベルの期間が短くなり、信号S4のデューティ比を大きくすることができる。
【0036】
図1に示すドライバ部7は、ソースが電源電圧に接続されたPMOSトランジスタと、ソースがグラウンドに接続され、ドレインがこのPMOSトランジスタのドレインに接続されたNMOSトランジスタとを備えるCMOSトランジスタから構成され、信号S3の論理を反転させて信号S4としてSRD回路8に出力する。
【0037】
SRD回路8は、ドライバ部7から出力された信号S4に高周波の信号成分を生じさせ信号S5としてBPF9に出力する。図5は、SRD回路8の回路図を示している。SRD回路8は、ハイパスフィルタ81、電圧−電流変換素子82、及びステップリカバリダイオードSRD1を備える。
【0038】
すなわち、ドライバ部7から出力された信号S4がハイパスフィルタ81に入力される。また、ハイパスフィルタ81の出力端子がステップリカバリダイオードSRD1のアノードに接続され、ステップリカバリダイオードSRD1のカソードがグラウンドに接続されている。また、所定のバイアス電圧Vbiasが、電圧−電流変換素子82を介してステップリカバリダイオードSRD1のアノードに供給されている。
【0039】
ハイパスフィルタ81は、例えばコンデンサを用いて構成されたハイパスフィルタで、ドライバ部7から出力された信号S4の高周波成分を通過させる。電圧−電流変換素子82は、バイアス電圧Vbiasを電流に変換する素子で、例えば抵抗やインダクタ等が用いられる。そして、ステップリカバリダイオードSRD1のアノードに生じた電圧が、信号S5としてBPF9へ出力される。
【0040】
図1に示すBPF9は、SRD回路8から出力された信号S5から高周波の信号成分を抽出する帯域フィルタであり、抽出した高周波の信号成分をウルトラワイドバンド通信用のパルス信号である信号S6としてアンテナ10へ出力する。アンテナ10は、BPF9から出力された信号S6を無線信号として放射する。
【0041】
図6は、上述のように構成されたUWB通信装置1の動作を説明する波形図である。まず、発振回路2によって、水晶発振子OSC1の発振周波数に基づきクロック信号CLK1が生成され、データ生成部3及び変調部4に出力される。次に、データ生成部3から、クロック信号CLK1と同期して送信データSD1が変調部4に出力される。そして、変調部4によって、送信データSD1とPN符号とが乗積されてウルトラワイドバンド方式による変調が施された信号S1が生成され、ジッタ回路5に出力され、ジッタ回路5は、変調部4から出力された信号S1にジッタを与え信号S2としてプリドライバ部6へ出力する。プリドライバ部6は、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比を調整するために、信号S2のスルーレートを調整し、信号S3としてドライバ部7に出力する。そして、ドライバ部7によって信号S3の論理が反転されて信号S4としてSRD回路8へ出力される。
【0042】
次に、SRD回路8に信号S4が入力されると、SRD回路8によって、信号S4の立ち下がり部分に高周波の信号成分が発生し、信号S4の立ち下がりが急峻にされ、かつ、立ち下がりにアンダーシュートを有する信号S5が生成される。この場合、SRD回路8によって生成される信号S5の波高値は、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比に応じて増減される。
【0043】
次に、SRD回路8から出力された信号S5から、バンドパスフィルタ9によって高周波の信号成分が抽出され、抽出された高周波の信号成分が信号S6としてアンテナ10へ出力され、アンテナ10によって無線信号として放射される。なお、信号S6の時間幅τ1は、ウルトラワイドバンド通信に用いられる1ns程度の時間幅である。
【0044】
このように、UWB通信装置1によれば、プリドライバ部6により、信号S2の立ち下がり時のスルーレートが調整され、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比が調整され、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度が調整されるため、ステップリカバリダイオードSRD1等の特性のばらつきに起因して生じるアンテナ10から放射される無線信号の電力強度のばらつきを低減し、スペクトルマスクに適合した所望の電力強度を有する無線信号を放射することができる。すなわち、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度は、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比が小さくなるにつれて増大するという特性に本発明者は着目した。そして、この特性に従って、ドライバ部7から出力される信号のデューティ比を調整することで、アンテナ10から所定の基準値を有する電力強度の無線信号を出力することが可能となる。
【0045】
また、例えば受信装置が自機の近傍に位置する場合や、受信装置の受信感度が高い場合等、UWB通信装置1の電力強度を低下させても通信可能な場合には、ユーザは、設定部65を操作して信号S4のデューティ比を大きくし、信号S6の電力強度を小さくすることによりドライバ部7における消費電流を低減することができる。
【0046】
また、ステップリカバリダイオードSRD1等の特性のばらつきを吸収するべく予め無線信号の電力強度をスペクトルマスクまで十分なマージンを取って低いレベルに設定する必要がないので、無線信号の電力強度を過剰に低いレベルに設定することにより送信距離が短縮されてしまうことを低減することができる。
【0047】
また、例えばUWB通信装置1が使用される温度環境により、ステップリカバリダイオードSRD1の温度特性の影響で無線信号の電力強度が低下して送信距離が短縮した場合には、設定部65を操作して信号S4のデューティ比を調整することにより、FCCのスペクトラムマスクを超えない範囲で送信距離を増大させるように無線信号の電力強度を微調整することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、信号S3aの立ち下がり時の電圧のスルーレートを調整していたが、これに限定されず、信号S3aの立ち上がり時の電圧のスルーレートを調整してもよい。この場合、定電流回路64−1をPMOSトランジスタ62のソースに接続し、定電流回路64−2、64−3をスイッチSW1、SW2を介してPMOSトランジスタ62のソースに接続すればよい。また、上記実施の形態では、定電流回路の個数を3個としたがこれに限定されず、2個又は4個以上にしてもよい。これにより、信号S4のデューティ比をよりきめ細かく調整することができる。また、各定電流回路の電流値を同一にしてもよいし、異なる値にしてもよい。
【0049】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2によるUWB通信装置1bについて説明する。図7は、UWB通信装置1bのプリドライバ部6の回路図である。実施の形態2によるUWB通信装置1bは、図3に示す定電圧回路66−1を可変電圧回路66−2で構成したことを特徴とする。なお、UWB通信装置1bの全体構成はUWB通信装置1と同一であるため、図1を用いる。また、実施の形態2において、実施の形態1と同一のものは説明を省略する。
【0050】
UWB通信装置1bのプリドライバ部6は、インバータ61、PMOSトランジスタ62、NMOSトランジスタ63、定電流回路64(傾き調整部)、設定部65(閾値調整部)、比較器66(比較部)、及び可変電圧回路66−2を備えている。PMOSトランジスタ62のドレインとNMOSトランジスタ63のドレインとの接続点Xは、比較器66の一方の入力端子に接続されている。定電流回路64は、一端がNMOSトランジスタ63のソースに接続され、他端がグラウンドに接続され、接続点Xから出力される信号S3aの立ち下がり時の電圧を直線的に変化させる。
【0051】
設定部65は、ディップスイッチやロータリースイッチ等から構成され、ユーザによりなされた操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に従って、可変電圧回路66−2の電圧値V0(閾値)を設定する。そして、ユーザは、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を測定し、この電力強度のピーク値が所定の基準値となるようなデューティ比を有する信号S4が生成されるように、電圧値V0を設定する。
【0052】
比較器66は、一方の入力端子が接続点Xに接続され、他方の入力端子が定電流回路64の正極に接続され、出力端子がドライバ部7の入力側に接続され、定電流回路64により電圧が直線的に変化された信号S3aの電圧が電圧値V0を下回ったとき、ハイレベルの信号をプリドライバブロック部67に出力する。可変電圧回路66−2は、設定部65により設定された一定の電圧値V0を比較器66に出力する回路から構成されている。
【0053】
図8は、信号S3aと信号S3bとの波形図を示し、(a)は信号S3aの波形図を示し、(b)は電圧値V0をV01に設定した場合の信号S3bの波形図を示し、(c)は電圧値V0をV02に設定した場合の信号S3bの波形図を示し、(d)は電圧値V0をV03に設定した場合の信号S3bの波形図を示している。
【0054】
(a)に示すように電圧値V0がV01に設定されると、V01はV01>V02,V03であるため、(b)に示すように信号S3bは、(c)、(d)に比べてより速くハイレベルになり、信号S3bのデューティ比が大きくなる。また、電圧値V0がV02に設定されると、V02は、V03<V02<V01であるため、(c)に示すように信号S3bは、(b)より遅く、(d)より速くハイレベルになり、信号S3bのデューティ比を(b)、(d)の間に設定することができる。また、電圧値V0がV03に設定されると、V03は、V03<V01,V02であるため、(d)に示すように信号S3bは(b)、(c)に比べてより遅くハイレベルになり、信号S3bのデューティ比が小さくなる。
【0055】
すなわち、電圧値V0を大きく設定すると、信号S3bのデューティ比が大きくなり、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比が小さくなる結果、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を大きくすることができる。一方、電圧値V0を小さく設定すると、信号S3bのデューティ比が小さくなり、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比が大きくなる結果、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を小さくすることができる。
【0056】
このように、UWB通信装置1bによれば、アンテナ10から出力される無線信号の電力強度のピーク値が所定の基準値となるように電圧値V0を調整することが可能となり、ステップリカバリダイオードSRD1等の特性のばらつきに起因する無線信号の電力強度のばらつきを低減させ、スペクトルマスクに適合させることができる。
【0057】
なお、実施の形態2では、信号S3bの立ち上がりタイミングを調整したが、信号S3bの立ち下がりタイミングを調整してもよい。この場合、定電流回路64をPMOSトランジスタのソースに接続して、信号S3aの立ち上がり時の電圧を直線的に変化させ、比較器66は、信号S3aが電圧値V0を超えたときにハイレベルの信号を出力するようにすればよい。
【0058】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3によるUWB通信装置1cについて説明する。図9は、UWB通信装置1cのプリドライバ部6の回路図である。なお、UWB通信装置1cの全体構成はUWB通信装置1と同一であるため、図1を用いる。また、実施の形態3において、実施の形態1、2と同一のものは説明を省略する。
【0059】
UWB通信装置1cのプリドライバ部6は、インバータ61、インバータ68−1,68−2(遅延部)、OR回路OR1、AND回路AND1、セレクタSEL、設定部65、及びプリドライバブロック部67を備えている。
【0060】
インバータ61は、出力端子が、セレクタSELに接続されると共に、インバータ68−1、68−2を介してAND回路AND1の一方の入力端子と接続されている。また、インバータ61は、出力端子がOR回路OR1の一方の入力端子に接続され、かつAND回路AND1の他方の入力端子に接続されている。インバータ68−2の出力端子は、OR回路OR1の他方の入力端子に接続されている。セレクタSELは、インバータ61の出力端子と、OR回路OR1の出力端子と、AND回路AND1の出力端子とが接続され、出力端子がプリドライバブロック部67の入力側に接続されている。
【0061】
インバータ68−1は、インバータ61から出力された信号S31を反転させると共に、所定時間遅延させ、インバータ68−2に出力する。インバータ68−2は、インバータ68−1から出力された信号を反転させると共に、所定時間遅延させ、AND回路AND1に出力する。ここで、インバータ68−1、68−2が入力される信号を遅延させる時間は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0062】
インバータ61は、信号S31をセレクタSEL及びインバータ68−1に出力する。OR回路OR1は、インバータ61から出力された信号S31と、インバータ68−2から出力された信号S32との論理和をとり、セレクタSELに出力する。AND回路AND1は、インバータ61から出力された信号S31と、インバータ68−2から出力された信号S32との論理積をとり、セレクタSELに出力する。
【0063】
設定部65は、ディップスイッチ等から構成され、ユーザからの操作入力を受け付ける。セレクタSELは、設定部65により受け付けられた操作入力に従って、インバータ61から出力された信号S31と、OR回路OR1から出力された信号S33と、AND回路AND1から出力された信号S34とのいずれか1つを選択し、信号S35としてプリドライバブロック部67に出力する。そして、ユーザは、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を測定し、この電力強度のピーク値が所定の基準値となるようなデューティ比を有する信号S4が生成されるように、セレクタSELから出力される信号S35を設定する。
【0064】
図10は、信号S31、S32、S33、S34の波形図を示している。ジッタ回路5から出力された信号S2は、インバータ61を介して信号S31としてセレクタSELに出力される。また、信号S2は、インバータ61を介してインバータ68−1に出力され、インバータ68−1、68−2により所定時間遅延され、信号S32として、AND回路AND1及びOR回路OR1に出力される。信号S31と信号S32とは、OR回路OR1により論理和がとられ、信号S33とされ、セレクタSELに出力される。また、信号S31と信号S32とはAND回路AND1により論理積がとられ、信号S34として、セレクタSELに出力される。そして、信号S31、信号S33及び信号S34のいずれか1つが、セレクタSELにより選択されプリドライバブロック部67に出力される。
【0065】
従って、OR回路OR1から出力された信号S33は、デューティ比が信号S31、信号S34よりも大きくなる結果、ドライバ部7から出力される信号S4のデューティ比は小さくなる。そのため、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を大きくする場合は、信号S33を信号S35としてセレクタSELに出力させ、アンテナ10から放射させる無線信号の電力強度を小さくする場合は、信号S34を信号S35としてセレクタSELに出力させ、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を中程度にしたい場合は、信号S31を信号S35としてセレクタSELに出力させることで、アンテナ10から放射される無線信号の電力強度を所定の基準値となるように調整することができる。
【0066】
なお、実施の形態3では、プリドライバ部6を図11に示すような構成にしてもよい。図11は、実施の形態3におけるプリドライバ部6の他の構成を示す回路図である。図11に示すプリドライバ部6は、図9に示すプリドライバ部6と同様な回路を3個設けたことを特徴とする。すなわち、図11に示すプリドライバ部6は、インバータ61の出力側に接続された3個のプリドライバユニット69−1〜69−3を備えている。プリドライバユニット69−1〜69−3は、図9に示すプリドライバ部6とほぼ同一構成であり、OR回路OR1、AND回路AND1、及びインバータ部68を備えている。プリドライバユニット69−1のインバータ部68は、2個のインバータ68−1,68−2を備え、プリドライバユニット69−2のインバータ部68は、4個のインバータ68−1,68−2,68−3,68−4を備え、プリドライバユニット69−3のインバータ部68は6個のインバータ68−1〜68−6を備えている。
【0067】
セレクタSELは、プリドライバユニット69−1〜69−3のOR回路OR1から出力される信号S33−1〜S33−3、及びプリドライバユニット69−1〜69−3のAND回路AND1から出力される信号S34−1〜S34−3、及びインバータ61から出力される信号S31のうち、設定部65による設定に従って1つの信号を選択し、信号S3としてドライバ部7に出力する。
【0068】
すなわち、信号S33−1から信号S33−3になるにつれて、インバータ部68による遅延が増大するため、デューティ比が大きくなる。また、信号S34−1〜信号S34−3になるにつれて、インバータ部68による遅延が増大するため、デューティ比は小さくなる。このように図11に示すプリドライバ部6を採用すると、よりきめ細かく信号S4のデューティ比を調整することができる。なお、図11においては、3つのプリドライバユニットを設けたが、これに限定されず2つ又は4つ以上のプリドライバユニットを設けてもよい。
【0069】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4によるUWB通信装置1dについて説明する。実施の形態4によるUWB通信装置1dは、データの種類に応じてアンテナ10から放射される無線信号の出力電圧を変えることを特徴としている。なお、UWB通信装置1dの全体構成はUWB通信装置1と同一であるため、図1を用いる。また、実施の形態4において、実施の形態1〜3と同一のものは説明を省略する。
【0070】
図12は、実施の形態4のUWB通信装置1dにおいてアンテナ10から出力される無線信号の通信フレームF1を示した波形図であり、図13は、通信フレームF1の拡大図である。なお、図13に示す短パルス信号Pは、図12に示す1本の直線を拡大して示している。図12に示すように、通信フレームF1は、パルス同期用のパルス同期部F11(プリアンブル部)と、データ信号部F12とを備えている。データ信号部F12は、ビット同期部F121と、ユニークワード部F122と、送信データ部F123とを備えている。また、図13に示す短パルス信号Pは周期t12、例えば50nsec周期で配置されており、短パルス信号Pのパルス幅は例えば1nsecにされている。
【0071】
パルス同期部F11は、通信フレームF1と図略の無線受信装置における短パルス信号Pの受信タイミングとを同期させるためのパルス列で、例えば100μsec〜900μsec程度の期間、短パルス信号Pが50nsec周期で連続するようにされている。ビット同期部F121は、ビット同期をとるためのパルス列で、予め設定された単位期間t13毎に、短パルス信号Pが無いパルス無区間B0と、短パルス信号Pが50nsec周期で連続するパルス有区間B1とが交互に配置されている。ユニークワード部F122は、ビット同期部F121と送信データ部F123とを区別するためのパルス列である。
【0072】
送信データ部F123は、1つのパルス無区間B0と、1つのパルス有区間B1とによって、1ビットのデータを表すようにされており、パルス無区間B0及びパルス有区間B1が、パルス無区間B0及びパルス有区間B1の順で配列された場合、ビット「0」を表し、パルス有区間B1及びパルス無区間B0の順で配列された場合、ビット「1」を表している。すなわち、送信データ部F123は、オンオフキーイング(OOK:On-Off Keying)変調方式でデータが変調されている。
【0073】
図12に示すように、データ信号部F12は、パルス同期部F11に対して短パルス信号Pの数が半分になっているため、パルス同期部F11における電力強度は、データ信号部F12の電力強度に比べて3dB高くなる。従って、アンテナ10から放射される無線信号においてデータ信号部F12の電圧の波高値をパルス同期部F11の電圧の波高値の21/2倍にしても、データ信号部F12の電力強度は3dB上昇するに留まる。
【0074】
そして、UWB通信装置1dのプリドライバ部6は、パルス同期部F11の電力強度が所定の基準値になるように信号S4のデューティ比を設定すると共に、パルス同期部F11の電圧の波高値に対して、データ信号部F12の電圧の波高値が21/2倍となるように、信号S4のデューティ比を設定する。これにより、パルス同期部F11とデータ信号部F12との電力強度を所定の基準値を超えないようにすることができる。
【0075】
ここで、プリドライバ部6は、実施の形態1〜3のいずれかの手法を用いて、信号S4のデューティ比を設定することができる。また、プリドライバ部6は、データ生成部3から、パルス同期部F11の開始タイミングと、データ信号部F12との開始タイミングを通知するための通知信号を受け、この通知信号に従って、ジッタ回路5から出力される信号S2のうち、パルス同期部F11を構成する信号S2と、データ信号部F12を構成する信号S2とを判定する。また、プリドライバ部6は、パルス同期部F11のデューティ比に対して、データ送信部F12の電圧の波高値をパルス同期部F11の電圧の波高値の21/2倍にするためのデューティ比を予め記憶しており、このデューティ比に従って、データ送信部F12における信号S4のデューティ比を調整する。
【0076】
このように、実施の形態4によるUWB通信装置1dによれば、データ信号部F12の電力強度が所定の基準値を超えないように上昇されているため、データ信号部F12の電力強度を増大させ、通信品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態1に係る無線送信装置及び無線送信回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】プリドライバ部から出力される信号のデューティ比とアンテナから放射される無線信号との関係を示したグラフである。
【図3】プリドライバ部及びドライバ部の回路図を示している。
【図4】信号S3aと信号S3bとの波形図を示している。
【図5】SRD回路の回路図を示している。
【図6】実施の形態1によるUWB通信装置の動作を説明する波形図である。
【図7】実施の形態2によるUWB通信装置のプリドライバ部の回路図である。
【図8】信号S3aと信号S3bとの波形図を示している。
【図9】実施の形態3によるUWB通信装置のプリドライバ部の回路図である。
【図10】信号S31、S32、S33、S34の波形図を示している。
【図11】実施の形態3におけるプリドライバ部の他の構成を示す回路図である。
【図12】実施の形態4のUWB通信装置においてアンテナから出力される無線信号の通信フレームを示した波形図である。
【図13】通信フレームF1の拡大図である。
【図14】ステップリカバリダイオードを採用したUWB通信装置が出力する無線信号の波形を示している。
【符号の説明】
【0078】
1、1b、1c、1d UWB通信装置
2 発振回路
3 データ生成部
4 変調部
5 ジッタ回路
6 プリドライバ部
7 ドライバ部
8 SRD回路
9 BPF
10 アンテナ
CLK1 クロック信号
F1 通信フレーム
F11 パルス同期部
F12 データ信号部
F121 ビット同期部
F122 ユニークワード部
F123 送信データ部
S1〜S6 信号
S31〜S35 信号
SD1 送信データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンオフキーイング変調により送信データを変調するUWB通信装置であって、
前記送信データを変調する変調部と、
前記変調部から出力された信号のスルーレートを調整するプリドライバ部と、
前記プリドライバ部より出力された信号の論理を反転させるドライバ部と、
前記ドライバ部から出力された信号に高周波の信号成分を生じさせるステップリカバリダイオード回路と、
前記ステップリカバリダイオード回路により出力された信号から前記高周波の信号成分を抽出し、当該高周波の信号成分を前記送信データを表すパルスの信号として出力するフィルタ部と、
前記フィルタ部から出力された信号を無線信号として放射するアンテナとを備え、
前記プリドライバ部は、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することで、前記アンテナから放射される無線信号の電力強度を予め定められた基準値に調整することを特徴とするUWB通信装置。
【請求項2】
前記プリドライバ部は、
前記変調部から出力された信号の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧を直線的に変化させ、この電圧の変化を示す直線の傾きを調整することで、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することを特徴とする請求項1記載のUWB通信装置。
【請求項3】
前記プリドライバ部は、
前記変調部から出力される信号の立ち上がり時又は立ち下がり時における電圧を直線的に変化させる傾き調整部と、
前記傾き調整部により電圧が直線的に変化された信号の電圧が閾値を下回ったとき、ハイレベルの信号を前記ドライバ部に出力する比較部と、
前記閾値を調整することで、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整する閾値調整部とを備えることを特徴とする請求項1記載のUWB通信装置。
【請求項4】
前記プリドライバ部は、
前記変調部から出力された信号を遅延させる遅延部と、
前記遅延部により遅延された信号と、前記変調部から出力された信号であって前記遅延部により遅延されていない信号との論理積をとるAND回路と、
前記遅延部により遅延された信号と、前記変調部から出力された信号であって前記遅延部により遅延されていない信号との論理和をとるOR回路と、
前記変調部から出力された信号、前記AND回路から出力された信号、及び前記OR回路から出力された信号のいずれか1つを選択して出力することで、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整するセレクタとを備えることを特徴とする請求項1記載のUWB通信装置。
【請求項5】
前記送信データは、パルス同期信号部とデータ信号部とを備え、
前記プリドライバ部は、前記アンテナから放射される無線信号において、前記データ信号部の電圧の波高値が、前記パルス同期信号部の電圧の波高値に対して21/2倍となるように、前記ドライバ部から出力される信号のデューティ比を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のUWB通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−294959(P2008−294959A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140797(P2007−140797)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】