説明

UZM−8ゼオライトを用いたアルキル化法

UZM−8ゼオライトを含有する固体触媒床を用いたオレフィンでの芳香族化合物のアルキル化法を開示する。ポリアルキル化芳香族化合物を触媒床に通して、アルキル化条件におけるオレフィン濃度を低下させる。触媒床から回収される流出物の一部分を触媒床に再循環させることができる。そのような操作により、触媒失活速度およびジフェニルアルカンの形成を低下させることができる。本明細書中で開示する方法は、多種多様な商業的に重要なアルキル化芳香族化合物、例えばエチルベンゼンおよびクメンの生成方法に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、アルキル化によりモノアルキル化芳香族化合物を生成するための方法に関する。具体的には、本発明は、エチルベンゼン、クメンおよびブチルベンゼンを生成するための高選択性アルキル化およびトランスアルキル化に関する。
【0002】
〜Cオレフィンでの芳香族化合物のアルキル化およびポリアルキル芳香族化合物のトランスアルキル化は、モノアルキル化芳香族化合物を生成するための2つの一般的な反応である。エチルベンゼンを生成するために工業的に実施されているこれら2つの反応の例は、エチレンでのベンゼンのアルキル化およびベンゼンとジエチルベンゼンのトランスアルキル化である。アルキル化反応ならびにその一般的な生成物および副生成物の簡単な概要を以下に示す:
【0003】
【化1】

【0004】
これらの副生成物に加え、C〜Cオレフィンは二量体化またはオリゴマー化してより高級なオレフィンを形成する可能性があり、これは、ベンゼンと反応して、4〜12個の炭素原子を伴うアルキル基を有するアルキルベンゼン、例えば、ブチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼンおよびドデシルベンゼンを形成する可能性がある。これらの重質アルキルベンゼンは、さらにアルキル化されて、他の重質ポリアルキル化ベンゼンを形成する可能性がある。
【0005】
一見したところ、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼンおよびテトラエチルベンゼン(TeEB)異性体の形成は、エチレンの効率的な利用の低下に相当する副生成物とみなされるかもしれないが、実際は、以下に示すように、それぞれベンゼンにより容易にトランスアルキル化されてエチルベンゼンを生成することができる:
【0006】
【化2】

【0007】
このように、アルキル化およびトランスアルキル化を組み合わせて、エチルベンゼンの生成量を最大限にすることができる。そのような組合わせは、一方がアルキル化を目的とし他方がトランスアルキル化を目的とする2つの反応帯域を有するプロセスか、アルキル化とトランスアルキル化の両方が起こる単一反応帯域を有するプロセスで実施することができる。多くの場合、設備投資が節約されるため、2つの反応帯域より単一反応帯域が好ましい。
【0008】
ジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼンとは対照的に、1−ジフェニルエタン(1,1−DPE)はアルキル化またはトランスアルキル化によりエチルベンゼンに容易に転化することができない。実際、1,1−DPE、ならびにジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼンを除くより重質なポリエチル化ベンゼン、ならびにブチルベンゼンおよびオクチルベンゼンの副生成は、事実上エチレンの利用効率における低減とベンゼンの損失のすべてに相当する。本明細書中で用いる“重質分”という用語は、ジアルキルおよびトリアルキルおよびテトラアルキル芳香族化合物を除くポリアルキル芳香族化合物であって、アルキル基が供給オレフィンと同数の炭素原子を有するもの;二量体化またはオリゴマー化したオレフィンから形成されるアルキル芳香族化合物、例えば、オレフィンがエチレンである場合はブチルベンゼン;ならびに、他のさらにより重質なアルキル化およびトランスアルキル化副生成物、例えば、ジフェニルエタン(DPE)、アルキル化ジアリールエタン(DAE)、ジフェニルプロパン(DPP)およびアルキル化ジアリールプロパン(DAP)のようなジフェニルアルカン(DPA)およびアルキル化ジアリールアルカン(DAA)をさす。組合わせプロセスに関する現在の最低限の要件は、1,1−DPEがエチルベンゼンに対し1.0重量%を超えないことである。いくつかの分野において1,1−DPE含量の近い将来の最低基準(near-term minimum standard)が0.5重量%以下になるという予測を考慮すると、1,1−DPEの形成それ自体がさらなる重要性および意味を担っている。
【0009】
アルキル化およびトランスアルキル化が起こってモノアルキル化芳香族化合物が生成する反応帯域において、重要な操作変数は、アルキル基あたりのアリール基のモル比である。この比の分子は、特定期間中に反応帯域を通過するアリール基のモル数である。アリール基のモル数は、たまたまアリール基が存在している化合物であるかどうかに関係なく、すべてのアリール基の和である。例えば、エチルベンゼン生成の状況では、1モルのベンゼン、1モルのエチルベンゼンおよび1モルのジエチルベンゼンのそれぞれが1モルのアリール基をアリール基の和に提供する。この比の分母は、所望のアルキル化芳香族化合物上のアルキル基と同数の炭素原子を有し同じ特定期間中に反応帯域を通過するアルキル基のモル数である。アルキル基のモル数は、パラフィンは含まない点を除き、たまたまアルキルまたはアルキル基が存在している化合物であるかどうかに関係なく、所望のモノアルキル化芳香族化合物上のアルキル基と同数の炭素原子を伴うすべてのアルキルおよびアルケニル基の和である。エチルベンゼン生成の状況において、エチル基のモル数は、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタンおよびより高級なパラフィンなどのパラフィンをエチル基のモル数の計算から除外する点を除き、たまたまエチルまたはエテニル基が存在している化合物であるかどうかに関係なく、すべてのエチルおよびエテニル基の和である。例えば、1モルのエチレンおよび1モルのエチルベンゼンはそれぞれ1モルのエチル基をエチル基の和に提供するが、1モルのジエチルベンゼンは2モルのエチル基を提供し、1モルのトリエチルベンゼンは3モルのエチル基を提供する。ブチルベンゼンおよびオクチルベンゼンはエチル基を1モルも提供しない。
【0010】
アルキル基あたりのアリール基のより低いモル比および供給オレフィンのより効率的な利用に対する炭化水素加工産業の要望に応えて、アルキルベンゼンの改善された生成方法が追求されている。
【0011】
発明の概要
UZM−8ゼオライトを含有する固体触媒を用いたアルキル化によりエチルベンゼンおよびクメンなどのアルキル芳香族化合物を生成するためのアルキル化法において、ジフェニルアルカンおよび/または二量体化もしくはオリゴマー化した供給オレフィンに対応するアルキル基を伴うアルキル芳香族化合物の形成を著しく低減する方法を発見した。本明細書中に開示する方法は、C〜Cアルキル基あたりのアリール基のモル比が低い、例えば6以下の場合、とりわけ有用である。該方法では、供給芳香族化合物、C〜Cオレフィン、および供給芳香族化合物のアルキル化誘導体を、UZM−8ゼオライトを含有するアルキル化触媒床に通す。UZM−8ゼオライト床に通す供給芳香族化合物、C〜Cオレフィン、および供給芳香族化合物のアルキル化誘導体の重量に基づくC〜Cオレフィンの濃度は比較的高く、最大17重量%、最大10重量%、または最大5重量%であることができる。C〜Cオレフィンの濃度は、好ましくは状況においてゼロに近い正数であることができるが、0.1重量%または1.5重量%という最小濃度を用いることもできる。供給芳香族化合物のアルキル化誘導体は、供給芳香族化合物より1〜6個多くのC〜Cアルキル基を有することができ、アルキル化誘導体は、供給芳香族化合物のジアルキル化またはトリアルキル化誘導体であることが好ましい。アルキル化誘導体はあらゆるプロセス流でUZM−8ゼオライト床に導入することができ、該流れは、UZM−8ゼオライト床流出物の再循環アリコート部分であることが好ましい。流出物の比較的少量のアリコート部分を用いることができ、例えば、アリコート部分の重量と供給芳香族化合物およびC〜Cオレフィンの総合重量との比は少なくとも0.1である。少なくとも1.0、2.5または4.0という、より高い比を用いることもできる。UZM−8ゼオライトを含む固体触媒を用いてのこの結果は、予期しないものであった。UZM−8ゼオライトは独特な層状構造を有し、その性能は、ベータ、オメガ、ZSM−5、PSH−3、MCM−22、MCM−36、MCM−49およびMCM−56などの従来技術のゼオライトから予測することができない。
【0012】
流出物の再循環物を用いてベンゼンをエチレン、プロピレンまたはブテンでアルキル化するアルキル化法は、従来技術の方法で用いられるゼオライトの代わりにUZM−8ゼオライトを用いる場合、選択性の点で著しい利益を示す。今回、本明細書中に開示する方法を用いることにより、エチルベンゼンおよびクメンのプロセスは、エチル基あたりのアリール基のモル比を小さくして有利に操作している間であっても、1,1−DPEおよび/または他の望ましくない副生成物の形成を最小限に抑えることができる。
【0013】
本明細書中に開示する方法をいずれかの特定の理論に限定するわけではないが、観察された結果は作業仮説により部分的に説明することができる。UZM−8ゼオライトの独特の層状構造により、UZM−8ゼオライトの表面付近または表面上の比較的多くの触媒活性点の利用が可能になると考えられる。活性点でモノアルキル化が起こると、生じたモノアルキル化芳香族化合物は表面からすぐに除去されることができる。これにより、ポリアルキル化したより重質な副生成物の形成が減少する。流出物の再循環物をUZM−8ゼオライトと一緒に用いると、活性点からのモノアルキル化芳香族化合物の輸送が容易になる。この作業仮説により、エチレン、プロピレン、ブテンおよびより高級なオレフィンで芳香族化合物をアルキル化するときにジアリールアルカンおよび他の副生成物の形成が減少することが説明される。例えば、エチレンでベンゼンをアルキル化すると、より少ない1,1−DPEおよびブチルベンゼンが形成するであろう。オレフィンが例えばプロピレンである場合、より少ない2,2−ジフェニルプロパン(2,2−DPP)およびヘキシルベンゼンが形成し、場合によってはより少ない1,1−ジフェニルプロパン(1,1−DPP)も形成するであろう。オレフィンがブテンである場合、より少ないジフェニルブタンおよびブチルベンゼンが形成するであろう。
【0014】
US−B−6835862には、芳香族供給原料、オレフィン供給原料、および流出物流のアリコート部分を、ゼオライトベータ、オメガ、ZSM−5、PSH−3、MCM−22、MCM−36、MCM−49およびMCM−56などのゼオライトを含有するアルキル化触媒床に通すことを含む、モノアルキル化芳香族化合物の生成方法が記載されている。単位時間あたりのアリコート部分の重量と前記単位時間あたりの芳香族供給原料およびオレフィン供給原料の合計重量との比は、2.5を超える。
【0015】
US−A−5877370には、エチルベンゼンの生成において形成する1,1−DPEの量の低減が記載されている。未使用ベンゼンの重量あたりの再循環流出物の重量の最大比は3であり、これは、5.0のフェニル/エチルモル比において、未使用供給物(すなわち未使用ベンゼンおよび未使用オレフィン)の重量あたりの再循環流出物の重量の比が2.5であることに相当する。
【0016】
詳細な説明
本明細書中に開示する方法は、アルキル化剤でのアルキル化基材のアルキル化に一般に適用可能であると予想することができる。本明細書中に開示する方法は、より具体的には、供給オレフィンでの供給芳香族化合物のアルキル化によるアルキル芳香族化合物の生成に適用することができる。ベンゼンが重要な主要供給芳香族化合物であるが、アルキル置換ベンゼン、縮合環系一般、およびそのアルキル化誘導体などの供給芳香族化合物を用いてもよい。そのような供給芳香族化合物の例は、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼンなど;キシレン、メシチレン、メチルエチルベンゼンなど;ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、メチルナフタレン、ジメチル−ナフタレン、およびテトラリンである。2種以上の供給芳香族化合物を用いてもよい。供給芳香族化合物は、1以上の芳香族供給流でアルキル化触媒床中に導入してもよい。各芳香族供給流は、1種以上の供給芳香族化合物を含有することができる。供給芳香族化合物(1以上)のほかに、芳香族供給流は、非芳香族化合物、例えば、限定するものではないが、供給芳香族化合物と同数、それより1個多い、または1個少ない数の炭素原子を有する飽和および不飽和環状炭化水素を含有していてもよい。例えば、ベンゼンを含有する芳香族供給流は、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロヘキセン、もしくはシクロヘプテン、およびこれら炭化水素のいずれかのメチル化変形物、またはそれらの混合物を含有することもできる。各芳香族供給流中の各供給芳香族化合物の濃度は0.01〜100重量%であることができる。
【0017】
2〜6個の炭素原子を含有する供給オレフィンは、本明細書中に開示する方法に考えられる主要アルキル化剤である。そのような供給オレフィンの例としては、C〜Cオレフィン、すなわち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、cis−ブテン−2、トランス−ブテン−2、およびイソ−ブテンが挙げられる。しかしながら、2〜20個の炭素原子を有する供給オレフィンを、本明細書中に開示する方法で効果的に用いてもよい。2種以上の供給オレフィンを用いてもよい。供給オレフィンは、1以上のオレフィン供給流でアルキル化触媒床中に導入してもよい。各オレフィン供給流は、1種以上の供給オレフィンを含有することができる。供給オレフィン(1以上)に加えて、オレフィン供給流は、非オレフィン、例えば、オレフィンと同数の炭素原子を有するパラフィンを含有していてもよい。例えば、プロピレン含有オレフィン供給流はプロパンを含有することもでき、エチレンを含有するオレフィン供給流はエタンを含有することもできる。各オレフィン供給流中の各供給オレフィンの濃度は0.01〜100重量%であることができる。
【0018】
本発明を適用することができるもっとも広く実施されている炭化水素転化法は、エチルベンゼンを生成するためのエチレンでのベンゼンの触媒的アルキル化、クメンを生成するためのプロピレンでのベンゼンの触媒的アルキル化、およびブチルベンゼンを生成するためのブテンでのベンゼンの触媒的アルキル化である。本明細書における本発明の説明では触媒的なクメンおよびブチルベンゼンの反応系に言及することもあるが、本説明は、触媒的エチルベンゼン反応系への適用に主として関連する。
【0019】
本明細書中に開示する方法を実施する際は、アルキル化反応帯域の流出物の一部分をアルキル化反応帯域に再び導入する。本明細書中で特記しない限り、“部分”という用語は−プロセス流について記載する場合−該流れのアリコート部分か、該流れの相違するフラクションであって、その発生源である流れ全体とは異なる組成を有するフラクションかのいずれかをさす。流れのアリコート部分は、その発生源である流れと実質的に同じ組成を有する流れの一部分である。本明細書中に開示する方法のいくつかの態様において、アルキル化反応帯域流出物の再導入部分は、トランスアルキル化剤を含有していてもよい。したがって、これらの態様を実施する際は、トランスアルキル化剤をアルキル化流出物と一緒にアルキル化反応帯域中に導入する。他の態様では、トランスアルキル化剤を、アルキル化流出物流の一部分とは異なる流れにより導入することができる。理論上、トランスアルキル化剤は、存在する場合、アルキル化基材(例えばベンゼン)をトランスアルキル化することができ、アルキル化剤(例えばエチレン)と混合することができ、アルキル化剤の注入点およびその下流においてアルキル化剤の濃度を低下させることができるあらゆる化合物であることができる。しかしながら、実際は、トランスアルキル化剤は、高純度エチルベンゼン生成物を高収率で生成するという該方法の目標に相反しない多くの特徴を有することが好ましい。第一に、トランスアルキル化剤は、1,1−DPEの形成を最小限に抑えることによりエチルベンゼンの収率を向上させることに加え、トランスアルキル化によりエチルベンゼンの収率を向上させるべきである。したがって、ポリエチルベンゼン、例えば、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼンなどは、ヘキサエチルベンゼンに至るまでのものさえ、それぞれエチレンによりアルキル化されているか否かに関わらず、それぞれエチルベンゼンにトランスアルキル化されることができるので好ましい。しかしながら、エチレンによるポリエチルベンゼンのアルキル化が起こり得るため、より軽質なポリエチルベンゼンがより重質なポリエチルベンゼンより好ましく、ジエチルベンゼンがもっとも好ましい。より一般的に、供給芳香族化合物をC〜Cオレフィンでアルキル化する場合、トランスアルキル化剤は、供給芳香族化合物より1〜6個多くのC〜Cアルキル基を有する供給芳香族化合物のアルキル化誘導体である。
【0020】
トランスアルキル化剤の第二の特徴は、トランスアルキル化剤がアルキル化反応帯域においてアルキル基あたりのアリール基のモル比を好ましくは低下させる点である。しかしながら、このことは、トランスアルキル化剤が少なくとも1個のアリール基と1個のアルキル基を有する場合、トランスアルキル化剤はアルキル基あたりのアリール基のモル比が1を超えるならば該比を低下させるので、通常は限定的な特徴ではない。アリール基1個あたり2個以上のアルキル基を伴うトランスアルキル化剤は、アルキル基あたりのアリール基のモル比が0.5を超える場合は該比を低下させ、アリール基1個あたりより多くのアルキル基を伴うトランスアルキル化剤の場合も同様である。第三に、トランスアルキル化剤は、所望のモノアルキル化芳香族化合物の収率に好ましくは悪影響を及ぼすべきでない。例えば、エチルベンゼン生成の状況においてトルエンおよびクメンは好ましくない。これは、エチレンがトルエンまたはクメンをアルキル化して、アルキル化またはトランスアルキル化により容易にエチルベンゼンに転化することができない副生成物をもたらす可能性があるためである。アルキル化流出物中に一般に存在しているが、エチルベンゼンも好ましくない。これは、エチルベンゼンは反応の平衡をエチルベンゼンの形成から別の方向へシフトさせる可能性があるほか、エチルベンゼンはエチレンと反応してスチレンおよび最終的に1,1−DPEを生成する可能性があるためである。したがって、生成物分離帯域のエチルベンゼンまたはクメン塔によりもたらされるエチルベンゼンまたはクメン生成物流のように、75重量%を超える所望のモノアルキル化芳香族化合物を含有する流れを、アルキル化反応帯域に再循環させないことが好ましい。第四に、トランスアルキル化剤は、所望のモノアルキル化芳香族化合物を含有する生成物流の純度に好ましくは悪影響を及ぼすべきでない。例えば、エチルベンゼン生成の状況においてキシレンは好ましくない。これは、キシレンは蒸留によりエチルベンゼンから分離することが比較的難しいためである。キシレンが好ましくない他の理由は、キシレンは、エチレンでのアルキル化によるエチルベンゼンの収率に悪影響を及ぼし得る点である。
【0021】
一般に、トランスアルキル化剤は、存在する場合、アルキル化剤でのアルキル化基材の所望のアルキル化生成物上のアルキル基の数より少なくとも1個多くの該アルキル化剤に対応するアルキル基でアルキル化されたアルキル化基材に相当する化合物であることが好ましい。一般的な場合、トランスアルキル化剤は、存在する場合、アルキル化剤でのアルキル化基材の所望のアルキル化生成物とは異なる。芳香族化合物がベンゼンでオレフィンがエチレンである場合、トランスアルキル化剤は一般にポリエチルベンゼンであることができ、適したトランスアルキル化剤としては、ジ−、トリ−およびテトラ−エチル芳香族炭化水素、例えば、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジエチルメチルベンゼン、ジエチルプロピルベンゼンなどが挙げられる。ジエチルベンゼンが好ましい。芳香族化合物がベンゼンでオレフィンがプロピレンである場合、トランスアルキル化剤は一般にポリプロピルベンゼンであることができ、適したトランスアルキル化剤としては、ジ−、トリ−およびテトラ−プロピル芳香族炭化水素、例えば、ジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルメチルベンゼン、トリイソプロピルメチルベンゼンなどが挙げられる。ジイソプロピルベンゼンが特に好ましいトランスアルキル化剤である。
【0022】
単位時間あたりにアルキル化触媒床に入れる流出物流の再循環部分の重量と、該単位時間あたりにアルキル化触媒床に入れる供給芳香族化合物と供給オレフィンの合計重量との比は、少なくとも0.1、少なくとも1.0、少なくとも2.5、少なくとも4.0、少なくとも7.0、または少なくとも10.0であることができる。本明細書では、この比を流出物再循環比またはR/FFとよぶこともある。
【0023】
本明細書中で用いる場合、アルキル化触媒床に入れるまたは通す芳香族供給原料とは、アルキル化触媒床に入れるまたは通す流出物流のアリコート部分以外の流れでアルキル化触媒床に入れるまたは通す供給芳香族化合物のすべてをさす。本明細書中で用いる場合、アルキル化触媒床に入れるまたは通すオレフィン供給原料とは、アルキル化触媒床に入れるまたは通す流出物流の前記部分以外の流れでアルキル化触媒床に入れるまたは通す供給オレフィンのすべてをさす。
【0024】
アルキル化触媒床に入れるまたは通すが流出物流のアリコート部分ではない流れとしては、限定するものではないが、芳香族供給流、オレフィン供給流、およびアルキル化触媒床への他のあらゆる供給流が挙げられる。そのような流れとしては、流出物流とは実質的に異なる組成を有するが流出物流を分離することにより生じる流れも挙げられる。例えば、アルキル化流出物流の一部分を典型的には分離帯域または生成物回収帯域に通して、流出物流の前記部分からモノアルキル化芳香族化合物を回収する。この分離の結果、アルキル化流出物流とは実質的に異なる組成を有する1以上の流れが回収される。これら回収される流れとしては、生成モノアルキル化芳香族化合物流、ライトエンドを含む流れ、供給芳香族化合物を含む再循環流、ポリアルキル芳香族化合物(例えばジアルキル芳香族化合物およびトリアルキル芳香族化合物)を含む1以上の流れ、および重質分を含む流れが挙げられる。
【0025】
これら回収される流れのうち、供給芳香族化合物再循環流の一部またはすべてをアルキル化触媒床に通すことがもっとも一般的である。しかしながら、回収される他の流れの一部またはすべてをアルキル化触媒床に通すこともできる。これら回収される流れの一部またはすべてのうちこのようにアルキル化触媒床に通す供給芳香族化合物はいずれも、本明細書中に開示する方法の目的に関し、アルキル化触媒床に入れるまたは通す芳香族供給原料に包含されると考えられる。同様に、これら回収される流れの一部またはすべてのうちアルキル化触媒床に通す供給オレフィンはいずれも、本発明の目的に関し、オレフィン供給原料に包含される。しかしながら、アルキル化触媒床に通すアルキル化触媒床流出物のアリコート部分中のあらゆる供給芳香族化合物または供給オレフィンはそれぞれ、本明細書中に開示する方法の目的に関し、アルキル化触媒床に通すまたは入れる芳香族供給原料またはオレフィン供給原料とみなさない。
【0026】
いくつかの態様において、単位時間あたりにアルキル化触媒床に入れるオレフィン供給原料の重量と、同じ単位時間あたりにアルキル化触媒床に入れる化合物の合計重量との比は、100を掛けると、一般に最大17重量%、最大10重量%、最大7重量%、最大5重量%、または最大3重量%である。本明細書では、この比を供給オレフィン比とよぶこともある。アルキル化条件は、供給芳香族化合物、C〜Cオレフィン、およびアルキル化触媒床に入れる供給芳香族化合物より1〜6個多くのC〜Cアルキル基を有する供給芳香族化合物のアルキル化誘導体の重量に基づく最大供給オレフィン濃度が、最大17重量%、最大10重量%、最大7重量%、最大5重量%、または最大3重量%であることを含む。
【0027】
芳香族供給流、オレフィン供給流、および流出物流のアリコート部分をアルキル化触媒床の上流で組み合わせて、好ましくは均質混合物ならびに均一な組成および温度を有する組み合わされた供給流を形成することが好ましい。1以上の他の流れもアルキル化触媒床の反応帯域に通す場合、入れたすべての流れから組み合わされた供給流が形成されるように他の流れ(1または複数)を混合することが好ましい。これは、アルキル化条件における供給オレフィン比および/または最大供給オレフィン濃度を確実に最小限に抑えるのに役立つ。これらの流れを組み合わせることは、バッチ式で、または非連続式で、または好ましくは連続式で行うことができる。
【0028】
アルキル化反応帯域は、1以上のアルキル化触媒床および/または1以上のアルキル化触媒反応器を含むことができ、各反応器は1以上のアルキル化触媒床を含有することができる。アルキル化帯域の一般的配置では2つのアルキル化反応器が採用され、そのそれぞれがアルキル化触媒床を有する。反応器の数は一般に8未満であり、所定の反応器中の触媒床の数は一般に6未満である。
【0029】
本明細書中に開示する方法のためのアルキル化条件は、アルキル基あたりのアリール基のモル比が一般に25〜1であることを包含する。モル比は1未満であることができ、モル比は0.75以下であってもよいと考えられる。エチル基あたり(またはクメンの生成ではプロピル基あたり)のアリール基のモル比は、少なくとも1.2であることが好ましい。モル比は好ましくは最大6、より好ましくは最大3である。
【0030】
一般に、アルキル化剤、特にオレフィンアルキル化剤あたりのアルキル化基材のモル比が一定である場合、供給流中のアリール基とアルキル基のモル比が大きいほど、アルキル化反応の結果生じる反応帯域における温度上昇は小さい。アルキル化反応は中程度の発熱性であると考えられる。反応器は、熱が生じたときにこれを除去するための間接的な熱交換手段を有することができるが、反応器は好ましくは断熱性であり、したがって流出物流の出口温度は反応体の入口温度より高い。R/FFが増大し、供給流中のアリール基とアルキル基のモル比が増大すると、反応帯域においてヒートシンクとして機能することができるアリール基の分量が増加し、したがって反応帯域における温度上昇が低減する。適切な反応温度は、一般に、60℃から、475℃またはさらに高温であることができるアルキル化基材の臨界温度までであることができる。反応帯域の入口温度は、一般に60℃〜260℃、好ましくは100〜250℃である。反応帯域で生じる温度上昇は、反応器中の全質量流量に応じて10〜190℃であることができるが、温度上昇は一般に5〜60℃、好ましくは5〜50℃である。
【0031】
反応帯域における温度上昇を最小限に抑えることは、炭化水素のクラッキングのような望ましくない副反応が起こる原因となる高い反応器出口温度を防ぐのに役立つ。高い反応温度は、反応帯域においてベンゼンおよび所望のモノアルキル芳香族化合物(例えばエチルベンゼンまたはクメン)の気化も引き起こす可能性がある。反応帯域における温度上昇は、反応帯域から流出物流を取り出し、流出物流の一部分を冷却し、流出物流の冷却部分を反応帯域に再循環させることにより、制御することができる。このようにして反応帯域に反応器流出物を再循環させることは、いくつかの反応帯域にとっては不利になる可能性があるが、触媒がUZM−8ゼオライトである場合、反応器流出物を反応帯域に再循環させても生成物分布は著しく改変されないため、本明細書中に開示する方法にとって不利ではない。生成物分布における著しい改変とは、反応器流出物流中の任意の生成物の濃度変化が0.5重量%を超えることである。反応条件において、UZM−8ゼオライトは、ベンゼンとエチレンの間のアルキル化反応およびベンゼンとジエチルベンゼンの間のトランスアルキル化反応の非常に活性な促進剤であり、これらの反応が少なくとも80%、一般に90%を超える程度で平衡の方向に進行するため、生成物分布における著しい改変は起こらない。ベンゼンとプロピレンおよびベンゼンとジイソプロピルベンゼンの間の類似の反応も、このような高い程度で進行する。したがって、反応帯域への反応器流出物の再循環はアルキル化またはトランスアルキル化反応の程度を著しく妨げず、反応器流出物の再循環は反応帯域の温度を制御する目的で採用することができる。
【0032】
アルキル化は液相で実施することが好ましい。したがって、反応圧は、少なくとも部分的液相を確保するのに足る高さである必要がある。エチレンがオレフィンである場合、反応の圧力範囲は通常1379〜6985kPa(g)、より一般的には3103〜4137kPa(g)である。好ましくは、反応条件はベンゼンを液相で維持するのに十分なものであり、エチレンの超臨界条件である。しかしながら、本明細書中に開示する方法の達成において圧力は重要な変数ではなく、唯一の基準は、圧力が少なくとも部分的液相を確保するのに足る高さであるということである。エチレン以外のオレフィンの場合、本明細書中に開示する方法は一般に345〜6985kPa(g)の圧力で実施することができる。
【0033】
供給オレフィンの1時間あたりの重量空間速度(WHSV)は0.01〜8.0hr−1であることができる。本明細書中で用いる場合、ある成分の時間あたりの重量空間速度とは、1時間あたりの該成分の重量流量を触媒重量で割ったものを意味し、ここにおいて、1時間あたりの該成分の重量流量と触媒重量は同じ重量単位にある。芳香族化合物、例えば、ベンゼンおよび少なくとも2個のC基を有するポリアルキル芳香族化合物がいくらかでも存在する場合、そのWHSVは一般に0.3〜480hr−1である。ポリアルキル芳香族化合物がジエチルベンゼンまたはトリエチルベンゼンである好ましい態様において、エチレンあたりのベンゼンのモル比は1.5:1〜6:1であり、エチレンのWHSVは0.1〜6.0hr−1であり、ベンゼンおよびポリエチルベンゼンを含む芳香族化合物のWHSVは0.5〜70hr−1である。
【0034】
エチルベンゼン生成の状況において、反応帯域で起こる主反応は、エチルベンゼンを生成するためのエチレンによるベンゼンのアルキル化である。これに加えて、他の反応が反応帯域で起こってもよい。例えば、ベンゼンをポリエチルベンゼンでトランスアルキル化してエチルベンゼンを生成することができる。ポリエチルベンゼンをエチレンでアルキル化することもできる。したがって、反応器流出物流はエチルベンゼンを含有しており、未反応ポリエチルベンゼン、またはポリエチルベンゼンが関与するアルキル化副反応の副生成物、またはポリエチルベンゼンが関与するトランスアルキル化副反応の副生成物を含有することもできる。他の反応が副生成物を形成する程度は本明細書中に開示する方法を実行することにより小さくなるが、反応器流出物流は通常これら副反応の副生成物を含有する。反応器流出物流は、未反応ベンゼンおよびベンゼンが関与するアルキル化副反応の副生成物またはベンゼンが関与するトランスアルキル化副反応の副生成物も含有することができる。これに加えて、反応器流出物流は未反応エチレンを含有することができるが、ベンゼンが通常少なくとも化学量論的割合で存在するので、未反応エチレンの濃度は非常に低いと思われる。供給流がエチレンに加えてC〜Cパラフィンを含有することは一般的ではないが、供給流中にエタンが存在する場合、反応器流出物流は未反応エタンも含有することができる。
【0035】
アルキル化流出物流は、モノアルキル化芳香族化合物に対し好ましくは1.0重量%未満のジアリールアルカン、より好ましくは0.5重量%未満のジアリールアルカン、さらにより好ましくは0.2重量%未満のジアリールアルカンを含有する。モノアルキル化芳香族化合物に対するジアリールアルカンのこれら低い収率は、アルキル化触媒床を用いて、該アルキル化触媒床とは異なる別個のトランスアルキル化触媒床を用いないで、実現することができる。
【0036】
本明細書中に開示する方法を実行する際、反応器流出物流をは、1つのアリコート部分をアルキル化反応帯域に再循環させて通すことができるように、少なくとも2つのアリコート部分に分離することができる。
【0037】
アルキル化流出物のアリコート部分の1つをアルキル化反応帯域に再循環させて導入する場合、通常アルキル化流出物の他の少なくとも1つのアリコート部分はモノアルキル化芳香族化合物を回収するための分離帯域に通す。分離帯域は一般に、未反応ベンゼンをアルキル化帯域に再循環させるためのベンゼン分別塔と、より重質なポリアルキルベンゼンからエチルベンゼンを生成物として回収するためのエチルベンゼン分別塔を含む。とりわけ供給流中に存在するポリアルキルベンゼンがジエチルベンゼンまたはトリエチルベンゼンである場合、ジエチルベンゼンおよびトリエチルベンゼンを他のより重質なポリアルキルベンゼンから分離するためにポリアルキルベンゼン分別塔を用いることもできる。分離帯域は一般に、反応器流出物中の未反応エチレン、エタン、または軽質C−マイナスパラフィン(C3-minus paraffin)の濃度が、それらが反応器流出物流から分離されているということを正当化するのに足る高さでない限り、脱エタン塔を含まない。
【0038】
したがって、モノアルキル化芳香族化合物を含む画分を生じることに加え、分離帯域は、アルキル化流出物のアリコート部分からアルキル化流出物の他の1以上の画分をもたらすこともできる。したがって、アルキル化流出物のアリコート部分をアルキル化反応帯域に再循環させることに加え、分離帯域から回収されたこれら他の画分の少なくとも1つの一部またはすべてをアルキル化反応帯域に通すこともできる。これら回収された他の画分はポリエチルベンゼンを含むことができ、これをトランスアルキル化剤としてアルキル化反応帯域に再循環させることができる。商業的なエチルベンゼンのプロセスでは、分離帯域によりもたらされるいくつかのプロセス流を用いて、そのようなポリエチルベンゼンをアルキル化反応帯域に供給することができる。
【0039】
本明細書中に開示する方法のための触媒は、UZM−8と呼ばれるアルミノシリケートおよび置換アルミノシリケートゼオライトのファミリーの1以上のメンバーを含有する。US−B−6756030にはUZM−8およびその調製法が記載されている。短く述べると、UZM−8ゼオライトは、1以上のオルガノアンモニウム種のみが構造規定剤として用いられているアルカリを含まない反応媒体中で調製される。この場合、微孔性結晶質ゼオライト(UZM−8)は、合成したままの形態での無水ベースで、以下の実験式により表される組成を有する:
【0040】
【化3】

【0041】
式中、Rは、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、第四級アンモニウムイオン、ジ第四級アンモニウムイオン、プロトン化アルカノールアミン、および第四級化アルカノールアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1つのオルガノアンモニウムカチオンである。好ましいオルガノアンモニウムカチオンは、非環式であるものか、環式基を一置換基として含有しないものである。これらのうち、少なくとも2個のメチル基を置換基として含有するものが特に好ましい。好ましいカチオンの例としては、限定するものではないが、DEDMA、ETMA、HMおよびそれらの混合物が挙げられる。Rと(Al+E)の比は“r”により表され、0.05〜5で変動する。Rの加重平均原子価である“p”の値は1〜2で変動する。Siと(Al+E)の比は“y”により表され、6.5〜35で変動する。Eは、四面体配位されていて、フレーム構造内に存在し、ガリウム、鉄、クロム、インジウムおよびホウ素からなる群より選択される元素である。Eのモル分率は“x”により表され、0〜0.5の値を有する一方、“z”はOと(Al+E)のモル比であり、以下の式により与えられる。
【0042】
【数1】

【0043】
UZM−8ゼオライトは、オルガノアンモニウムカチオンとアルカリおよび/またはアルカリ土類カチオンの両方を構造規定剤として用いて調製することができる。アルカリを含まない上記場合と同様に、ここでも同じオルガノアンモニウムカチオンを用いることができる。アルカリまたはアルカリ土類カチオンは、0.05M/Si未満の量で存在する場合に頻繁に、UZM−8の結晶化を加速することが観察されている。アルカリおよび/またはアルカリ土類金属を含有する系の場合、微孔性結晶質ゼオライト(UZM−8)は、合成したままの形態での無水ベースで、以下の実験式により表される組成を有する:
【0044】
【化4】

【0045】
式中、Mは、少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、アルカリおよびアルカリ土類金属からなる群より選択される。Mカチオンの具体例としては、限定するものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましいRカチオンとしては、限定するものではないが、DEDMA、ETMA、HMおよびそれらの混合物が挙げられる。Mと(Al+E)の比である“m”の値は0.01〜2で変動する。Mの加重平均原子価である“n”の値は1〜2で変動する。Rと(Al+E)の比は“r”により表され、0.05〜5で変動する。Rの加重平均原子価である“p”の値は1〜2で変動する。Siと(Al+E)の比は“y”により表され、6.5〜35で変動する。Eは、四面体配位されていて、フレーム構造内に存在し、ガリウム、鉄、クロム、インジウムおよびホウ素からなる群より選択される元素である。Eのモル分率は“x”により表され、0〜0.5の値を有する一方、“z”はOと(Al+E)のモル比であり、以下の式により与えられる。
【0046】
【数2】

【0047】
ここにおいて、Mが唯一の金属である場合、加重平均原子価はその1つの金属の原子価、すなわち+1または+2である。しかしながら、1より多くのM金属が存在する場合、その全量は
【0048】
【数3】

【0049】
であり、加重平均原子価“n”は以下の式により与えられる。
【0050】
【数4】

【0051】
同様に、R有機カチオンが1つだけ存在する場合、加重平均原子価は単一のRカチオンの原子価、すなわち+1または+2である。1より多くのRカチオンが存在する場合、Rの全量は以下の式により与えられる。
【0052】
【数5】

【0053】
そして、加重平均原子価“p”は以下の式により与えられる。
【0054】
【数6】

【0055】
本明細書中に開示する方法で用いる微孔性結晶質ゼオライトは、R、アルミニウム、ケイ素ならびに所望によりMおよびEの反応源を組み合わせることにより調製される反応混合物の水熱結晶化により調製する。アルミニウム源としては、限定するものではないが、アルミニウムアルコキシド、沈降アルミナ、アルミニウム金属、アルミン酸ナトリウム、オルガノアンモニウムアルミネート、アルミニウム塩およびアルミナゾルが挙げられる。アルミニウムアルコキシドの具体例としては、限定するものではないが、アルミニウムオルトsec−ブトキシドおよびアルミニウムオルトイソプロポキシドが挙げられる。シリカ源としては、限定するものではないが、テトラエチルオルトシリケート、コロイドシリカ、沈降シリカ、アルカリシリケートおよびオルガノアンモニウムシリケートが挙げられる。オルガノアンモニウムアルミノシリケート溶液からなる特殊試薬は、Al、SiおよびRの同時供給源として機能することもできる。E元素の供給源としては、限定するものではないが、ホウ酸アルカリ、ホウ酸、沈降オキシ水酸化ガリウム、硫酸ガリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸クロムおよび塩化インジウムが挙げられる。M金属の供給源としては、ハロゲン化物塩、硝酸塩、酢酸塩、およびアルカリまたはアルカリ土類金属それぞれの水酸化物が挙げられる。Rは、オルガノアンモニウムカチオンまたはアミンとして導入することができる。Rが第四級アンモニウムカチオンまたは第四級化アルカノールアンモニウムカチオンである場合、供給源としては、限定するものではないが、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびフッ化物化合物が挙げられる。具体例としては、限定するものではないが、水酸化DEDMA、水酸化ETMA、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサメトニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムおよび塩化コリンが挙げられる。Rは、アミン、ジアミン、または続いて加水分解してオルガノアンモニウムカチオンを形成するアルカノールアミンとして導入することもできる。非限定的な具体例は、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリエチルアミン、およびトリエタノールアミンである。Rの好ましい供給源は、限定するものではないが、ETMAOH、DEDMAOH、およびヘキサメトニウムジヒドロキシド(HM(OH))である。
【0056】
所望の成分の反応源を含有する反応混合物は、酸化物のモル比の点で以下の式により表すことができる:
【0057】
【数7】

【0058】
[式中、“a”は0〜25で変動し、“b”は1.5〜80で変動し、“c”は0〜1.0で変動し、“d”は10〜100で変動し、“e”は100〜15000で変動する]。アルコキシドを用いる場合、アルコールの加水分解生成物を除去するための蒸留または蒸発段階を包含することが好ましい。ここで、反応混合物を、85℃〜225℃、好ましくは125℃〜150℃の温度で、1日〜28日間、好ましくは5日〜14日間にわたり、自然圧力下の密封反応容器中で反応させる。結晶化の完了後、固体生成物を濾過または遠心分離などの手段により不均質混合物から単離した後、脱イオン水で洗浄し、100℃以下の周囲温度の空気中で乾燥する。
【0059】
上記方法から得られるUZM−8アルミノシリケートゼオライトは、以下の表Aに示すd−間隔(d-spacing)および相対強度を少なくとも有するX線回折パターンにより特徴付けられる。
【0060】
【表1】

【0061】
UZM−8組成物は、少なくとも600℃(および通常少なくとも700℃)まで安定である。典型的な焼成UZM−8試料に関連付けられる特徴的な回折線を以下の表Bに示す。合成したままのUZM−8の形態は有機カチオンを用いて拡大させることができ、層状構造を示している。
【0062】
【表2】

【0063】
UZM−8の独特な性質の一部に寄与するUZM−8の合成の一面は、これを均質溶液から合成することができるという点である。この化学反応では、可溶性アルミノシリケート前駆体を熟成中に縮合させて、非常に大きな外表面積および微結晶の細孔内の短い拡散経路を有する極めて小さな微結晶を形成する。これは、該材料の吸着および触媒特性の両方に影響を与え得る。
【0064】
合成したままのUZM−8材料は、その細孔内に電荷を釣り合わせるカチオンをいくつか含有する。アルカリまたはアルカリ土類金属を含有する反応混合物からの合成の場合、これらのカチオンの一部は、他のカチオンに交換することができる交換可能なカチオンであることができる。オルガノアンモニウムカチオンの場合、それらは、制御された条件下での加熱により除去することができる。UZM−8をアルカリを含まない系で調製する場合、オルガノアンモニウムカチオンは制御された焼成によりもっとも良好に除去され、したがっていかなるイオン交換段階も介在させることなく酸形態のゼオライトが作り出される。制御された焼成条件としては、複合触媒に関して本明細書中で以下に記載する焼成条件が挙げられ、ゼオライトをバインダーと組み合わせてからゼオライトの制御された焼成を実施することが場合によっては望ましい可能性があることができる。他方、オルガノアンモニウムの一部分をイオン交換により除去することが場合によっては可能であることができる。イオン交換の特殊な例では、UZM−8のアンモニウム形態を、アンモニア雰囲気中でUZM−8のオルガノアンモニウム形態を焼成することにより生じることができる。
【0065】
本明細書中に開示する方法に用いられる触媒は、焼成UZM−8を含有することが好ましい。合成したままのUZM−8を焼成すると、X線回折パターンなどに変化がもたらされる。本明細書中に開示する方法に用いられる触媒に用いられるUZM−8ゼオライトは、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満、さらにより好ましくは0.02重量%未満のアルカリおよびアルカリ土類金属を含有する。
【0066】
本明細書中に開示する方法で使用する場合、ゼオライトを、触媒粒子を好都合に形成するためのバインダーと、5〜100質量%のゼオライトと0〜95質量%のバインダーの割合で混合することが好ましく、ゼオライトが複合体の10〜90質量%を構成することが好ましい。バインダーは好ましくは多孔質であり、5〜800m/gの表面積を有し、炭化水素の転化プロセスに利用される条件に対し比較的耐熱性(refractory)であるべきである。バインダーの非限定的例は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、マグネシア、ボリア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、クロミア−アルミナ、アルミナ−ボリア、シリカ−ジルコニアなど;シリカ、シリカゲル、および粘土である。好ましいバインダーは非晶質シリカおよびアルミナ、例えば、ガンマ−、イータ−、およびシータ−アルミナであり、ガンマ−およびイータ−アルミナが特に好ましい。
【0067】
ゼオライトは、バインダーの有無にかかわらず、ピル、ペレット、押出物、球体などのさまざまな形状に成形することができる。好ましい形状は押出物および球体である。押出物は、金属成分を加える前または後のいずれかにゼオライトをバインダーおよび適切な解凝剤(peptizing agent)と混合して、直接的焼成に耐えるのに無難な保全性を伴う押出物の形成を可能にする的確な水分率を有する均質なドウまたは厚いペーストを形成することを包含する従来法により調製する。その後、ドウをダイに通して押し出して、造形された押出物を得る。多くの異なる押出物の形状、例えば、限定するものではないが、円筒形、クローバー形、ダンベル形、ならびに対称的および非対称的ポリローブ形(polylobate)が可能である。押出物をさらに任意の所望の形態、例えば球体に造形してもよいことも、本発明の範囲に含まれる。球体は、US−A−2620314に記載されている周知のオイル滴下法により調製することもできる。
【0068】
触媒複合体は、100°〜320℃の温度で2〜24時間またはそれより長時間にわたり乾燥し、通常、空気雰囲気中400°〜650℃の温度で1〜20時間にわたり焼成する。空気中での焼成は、触媒複合体を窒素中で焼成温度範囲に加熱し、該温度範囲で触媒複合体を1〜10時間にわたり保持することにより、先に行ってもよい。本明細書中に開示する方法に用いる触媒複合体は、表Bに示したd−間隔および相対強度を少なくとも有するX線回折パターンを有することが好ましい。
【0069】
本明細書中に開示する方法のための触媒複合体に用いられるバインダーは、触媒複合体に用いられるUZM−8ゼオライトより少ないアルカリおよびアルカリ土類金属を含有することが好ましく、より好ましくはアルカリおよびアルカリ土類金属をほとんどまたはまったく含有しない。したがって、触媒複合体は、バインダーにより全体としての触媒複合体のアルカリおよびアルカリ土類金属含量が効率的に低下するので、触媒複合体を形成するのに用いられるUZM−8ゼオライトより少ないアルカリおよびアルカリ土類金属含量を有する。
【0070】
本明細書中に開示する方法の以下の9つの態様のいずれにおいても、本明細書中に開示する供給オレフィンのいずれか、例えば、エチレン、プロピレン、またはブテンを用いることができる。以下の態様では、供給芳香族化合物としてベンゼンの使用を記載しているが、いずれの供給芳香族化合物を用いてもよい。また、これらの態様のいずれにおいても、アルキル化反応器に再循環させるためのアルキル化反応器流出物からのオーバーヘッド流としてベンゼンなどの供給芳香族化合物を回収するために、分別塔を用いることができる。
【0071】
一態様では、アルキル化反応器流出物のアリコート部分だけでなく、ポリアルキルベンゼン流も、UZM−8ゼオライト触媒が入っているアルキル化反応器に再循環させる。ポリアルキルベンゼン流は、典型的には、ジアルキルベンゼンおよびトリアルキルベンゼンのみを含有し、比較的低濃度のアルキルベンゼンを含有し、アルキル化反応器内で生じるもっとも重質なポリアルキルベンゼンを高濃度で含有しない。ポリアルキルベンゼン流は、典型的にはポリアルキルベンゼン分別塔からのオーバーヘッド流として回収される。
【0072】
他の態様では、2つのアルキル化反応器が一連の流れ配列にあり、第2アルキル化反応器流出物流のアリコート部分を第1アルキル化反応器に再循環させる。各アルキル化反応器にはUZM−8ゼオライト触媒が入っている。少なくとも理論的には、第2アルキル化反応器流出物流のアリコート部分は、経済面での考慮によってのみ限定される速度で再循環させることできる。生成物分離設備に向かって下流に通すアルキル化反応器流出物流のアリコート部分を除き、第2アルキル化反応器流出物流は、無制限の分量までの量で再循環に利用することができる。プロセス中の他の流れとは異なり、第2アルキル化反応器流出物流は、アルキル化およびトランスアルキル化反応が進行する程度を妨げることなくアルキル化反応器に再循環させることができる。
【0073】
他の態様において、2つのアルキル化反応器は一連の流れ配列にあり、アルキルベンゼン塔底流を第2アルキル化反応器流出物流のアリコート部分と一緒に第1反応器に再循環させる。アルキルベンゼン塔の底流は比較的低濃度のアルキルベンゼンを含有する。各アルキル化反応器にはUZM−8ゼオライト触媒が入っている。
【0074】
他の態様では、オレフィン流を、ベンゼン流およびアルキル化反応器流出物流の冷却したアリコート部分と混合する。組み合わされた流れをアルキル化反応器に入れ、UZM−8ゼオライトを含む固体アルキル化触媒と接触させてアルキルベンゼンを形成する。反応器流出物流を2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を他のアルキル化反応器または生成物分離帯域に通す。反応器流出物流の他のアリコート部分は、ボイラー給水で間接的に熱交換してスチームを発生させることにより冷却した後、組み合わせてアルキル化反応器供給流を形成する。
【0075】
他の態様において、2つのアルキル化反応器は一連の流れ配列にあり、各反応器には、同様に一連の流れ配列にある2つのUZM−8ゼオライト触媒床が入っている。供給芳香族化合物を第1アルキル化反応器の第1触媒床に入れ、供給オレフィンを各触媒床に入れる。第1アルキル化反応器の流出物を熱交換器で冷却し、第2アルキル化反応器に流す。第2アルキル化反応器の流出物を2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を下流のアルキル化反応器または生成物分離帯域に流す。他のアリコート部分は熱交換器で冷却し、2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコートを第1アルキル化反応器に流し、他のアリコート部分を第2アルキル化反応器に流す。
【0076】
他の態様において、2つのアルキル化反応器は一連の流れ配列にあり、各アルキル化反応器には一対のUZM−8ゼオライト触媒床が入っており、一対になっている2つの床のそれぞれも一連の流れ配列にある。供給芳香族化合物を第1アルキル化反応器の第1触媒床に入れ、供給オレフィンを各触媒床に入れる。第1アルキル化反応器の流出物を熱交換器で冷却し、第2アルキル化反応器に流す。第2アルキル化反応器の流出物を2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を下流のアルキル化反応器または生成物分離帯域に流す。他のアリコート部分は、熱交換器で冷却し、2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を第1アルキル化反応器の第1触媒床に流し、他のアリコート部分を第2アルキル化反応器の第1触媒床に流す。
【0077】
他の態様では、トランスアルキル化反応器とアルキル化反応器が一連の流れ配列にある。ポリアルキルベンゼンおよびベンゼンを任意の適切なトランスアルキル化反応器に入れ、US−B−6835862に記載されているベータ含有触媒のような任意の適切なトランスアルキル化触媒と接触させてアルキルベンゼンを形成する。適切なトランスアルキル化反応器については、例えば、US−A−4008290、US−A−4774377およびUS−A−4891458参照。トランスアルキル化反応器流出物を所望により加熱または冷却し、アルキル化反応器に流す。アルキル化反応器には一連の流れ配列にある2つのUZM−8ゼオライト触媒床が入っており、供給オレフィンは各触媒床に入れる。アルキル化反応器の流出物を2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を下流のアルキル化反応器または生成物分離帯域に流し、他のアリコート部分は熱交換器で冷却し、アルキル化反応器の第1触媒床に流す。
【0078】
他の態様において、アルキル化反応器には一連の流れ配列にある2つの触媒床が入っている。供給オレフィンおよび供給芳香族化合物を、US−A−4008290、US−A−4774377、US−A−4891458およびUS−B−6835862に記載されているような任意の適切なアルキル化触媒が入っている任意の適切なアルキル化反応器であることができる第1触媒床に入れる。第1触媒床の流出物を、UZM−8ゼオライト触媒が入っている第2触媒床に流す。供給オレフィンを第2触媒床に入れる。第2触媒床の流出物をアルキル化反応器から取り出し、2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を下流のアルキル化反応器または生成物分離帯域に流し、他のアリコート部分は熱交換器で冷却し、アルキル化反応器の第2触媒床に流す。
【0079】
他の態様において、2つのアルキル化反応器は一連の流れ配列にあり、各アルキル化反応器には一対のUZM−8ゼオライト触媒床が入っており、一対になっている2つの触媒床のそれぞれも一連の流れ配列にある。供給芳香族化合物を第1アルキル化反応器の第1触媒床に入れ、供給オレフィンを各触媒床に入れる。第1アルキル化反応器の流出物を熱交換器で冷却し、第2アルキル化反応器に流す。第2アルキル化反応器の流出物を分別塔、例えば、脱エタン塔または脱プロパン塔または脱ブタン塔に流して、より軽質な炭化水素を第2アルキル化反応器流出物から除去する。これらのより軽質な炭化水素は、エチルベンゼンを生成する場合はエタンおよびより軽質な化合物、クメンを生成する場合はプロパンおよびより軽質な化合物、ならびにブチルベンゼンを生成する場合はブタンおよびより軽質な化合物であることができる。この分別塔の底流を2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を下流のアルキル化反応器または生成物分離帯域に流す。他のアリコート部分は、所望により熱交換器で冷却し、2つのアリコート部分に分割する。一方のアリコート部分を第1アルキル化反応器の第1触媒床に流し、他のアリコート部分を第2アルキル化反応器の第1床に流す。
【0080】
実施例
実施例では以下の略語を用いる:
Al(Osec−Bu) − アルミニウムトリ−sec−ブトキシド
DEDMAOH − ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド
ETMAOH − エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド
TMABr − テトラメチルアンモニウムブロミド
【0081】
以下の実施例では、エチレン転化率を、反応器に入る流れの重量%で表されるエチレンと反応器から出てくる流れの重量%で表されるエチレンとの差を、反応器に入る流れの重量%で表されるエチレンで割ったものと定義する。ある成分の選択率は、反応器から出てくる該成分の分子中の炭素原子数と反応器に入る該成分の分子中の炭素原子数との差を、転化したエチレンの分子および転化したベンゼンの分子中の合計炭素原子数で割り、100を掛けたものと定義する。エチルベンゼン(EB)、ジエチルベンゼン(DEB)、トリエチルベンゼン(TEB)、およびテトラエチルベンゼン(TeEB)の選択率の合計は、正味の反応器流出物中のジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、およびテトラエチルベンゼンのすべてが典型的なトランスアルキル化帯域でEBにトランスアルキル化された後に回収される場合にもたらされるであろうEBへの合計選択率の説明となる。ブチルベンゼン(C−Bz)、ブチル−エチルベンゼン(C−EB)、およびブチル−ジエチルベンゼン(C−DEB)の選択率の合計ならびにジフェニルエタン(DPE)およびエチルジフェニルエタン(EDPE)の選択率の合計は、典型的なトランスアルキル化帯域でEBに容易にトランスアルキル化されることができず、したがって典型的にはEB生成量の損失を示す、望ましくない副生成物の説明となる。
【0082】
実施例1
70重量%のゼオライトベータおよび30重量%のアルミナバインダーを含む未使用アルキル化触媒を調製し、触媒Aとした。触媒AのためのゼオライトベータはUS−A−5522984に記載されている方法と実質的に同じ方法で調製した。
【0083】
アルミノシリケート反応混合物を以下の方法で調製した。7329.73g分のDEDMAOH(20%aq)をタンクに加えた。804.38g分のAl(Osec−Bu)(95%+)をタンクに加え、得られた溶液を45minにわたり完全に混合した。その後、2000gの分量の脱イオン水を溶液に加えた後、2526.96gの分量の沈降シリカ(UltrasilTM VN SP3、89%SiO)を加えた。次に、212.25gの脱イオン水に溶解した126.69gのNaOHの溶液を調製して反応混合物に加え、該反応混合物を30minにわたり完全に混合した。その後、反応混合物を19Lの撹拌機付き反応器に移した。タンクを1000gの脱イオン水ですすぎ、すすぎ液を反応器に移して反応混合物中に混合した。該反応混合物を3hで150℃まで加熱し、150℃で290hrにわたり熟成させた。固体生成物を濾過により収集し、脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥した。単離した生成物は、粉末X線回折分析によりUZM−8と同定された。元素分析は、単離した生成物の組成がSi/Al=11.77、Na/Al=0.26、N/Al=2.03、およびC/N=3.04の元素モル比からなることを示した。単離した生成物を、1重量部のNHNO、10重量部の脱イオン水および1重量部の単離した生成物からなるイオン交換溶液を用いて75℃で3hrにわたりアンモニウムイオン交換し、固体を濾過により収集した。アンモニウムイオン交換および濾過をさらに2回繰り返し、アンモニウムイオン交換を3重で行った材料を脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥した。乾燥した材料の試料を、540℃に加熱し、流通窒素存在下で該温度において2hr保持した後、流通空気に切り替えて該温度で14hr保持することにより焼成した。その後、BET表面積は481m/gであることが見いだされ、ミクロ細孔容積は0.14cc/gであった。その後、乾燥した材料の他の試料を配合して、80重量%のUZM−8および20重量%のアルミナを含む触媒にした。HNOで解凝したAlをバインダーとして、ならびにUZM−8およびアルミナの重量に基づき3.0重量%のSolka−FlocTM粉末セルロース(BW−40;International Fiber Corp.,North Tonawanda,NY,米国)を押出助剤として用いて押出を実施して、直径1.6mm(1/16in)の押出物を得た。該押出物を、マッフル炉内で、538℃まで加熱し、流通窒素存在下で該温度において1hr保持した後、流通空気に切り替えて該温度で15hr保持することにより活性化した。この触媒を触媒Bとした。
【0084】
アルミノシリケート反応混合物を以下の方法で調製した。ビーカー中で32.77g分のAl(Osec−Bu)(95%+)を538.39gのDEDMAOH(20%aq)に溶解し、10minにわたり完全に混合した。500gの分量の脱イオン水をビーカーに加えた。175g分の沈降シリカ(UltrasilTM VN SP3、89%SiO)を徐々に加え、反応混合物を10minにわたり完全に混合した。別のビーカーにおいて、6.58g分のNaBrおよび23.86g分のTMABrを123gの脱イオン水に溶解し、得られた溶液を反応混合物に加えた後、該反応混合物を10minにわたり完全に混合した。次に、14g(揮発物を含まないものに基づく)分の微粉砕UZM−8種結晶を反応混合物に加え、該反応混合物を20minにわたり完全に混合した。その後、反応混合物を2Lの撹拌機付き反応器に移し、2hrで150℃まで加熱し、150℃で166hrにわたり熟成させた。固体生成物を遠心分離により収集し、脱イオン水で洗浄し、風乾した。単離した生成物は、粉末X線回折分析によりUZM−8と同定された。元素分析は、単離した生成物の組成がSi/Al=15.69およびNa/Al=0.74の元素モル比からなることを示した。単離した生成物をアンモニウムイオン交換し、洗浄し、触媒Bについて記載したように乾燥した。乾燥した材料の試料の1つを触媒Bについて記載したように焼成した。その後、この試料の場合、BET表面積は413m/gであることが見いだされ、ミクロ細孔容積は0.146cc/gであった。UZM−8およびバインダーの重量に基づき0.5重量%のMethocelTMメチルセルロース(A4M;Dow Chemical Co.,Midland,MI,米国)を押出助剤として用いた点を除き触媒Bについて記載した方法で、乾燥した材料の他の試料を配合して80重量%のUZM−8および20重量%のアルミナを含む触媒にし、活性化した。この触媒を触媒Cとした。
【0085】
アルミノシリケート反応混合物を以下の方法で調製した。じゃま板付きタンク中で、6g(揮発物を含まないものに基づく)分の乾燥UZM−8種結晶を706.2gの脱イオン水に加え、完全に混合した。別のビーカーにおいて38.3g分の液体アルミン酸ナトリウム、108.5g分のETMAOH(20%aq)および4g分の50%NaOH溶液を混合した後、タンクに加えた。次に、137.2グラムの沈降シリカ(UltrasilTM VN SP3、89%SiO)をタンクに5分間で加え、反応混合物を20分間にわたり完全に混合した。その後、反応混合物を2Lの撹拌機付き反応器に移した。その後、反応混合物を2hrで150℃まで加熱し、150℃で165hrにわたり熟成させた。固体生成物を遠心分離により収集し、脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥した。単離した生成物は、粉末X線回折分析によりUZM−8と同定された。元素分析は、単離した生成物の組成がSi/Al=10.22、Na/Al=0.49、N/Al=0.74、およびC/N=5.21の元素モル比からなることを示した。単離した生成物をアンモニウムイオン交換し、洗浄し、触媒Bについて記載したように乾燥した。乾燥した材料の試料の1つを触媒Bについて記載したように焼成した。その後、この試料の場合、BET表面積は505m/gであることが見いだされ、ミクロ細孔容積は0.134cc/gであった。触媒が70重量%のUZM−8および30重量%のアルミナを含む点を除き触媒Bについて記載した方法で、乾燥した材料の他の試料を配合して触媒にし、活性化した。この触媒を触媒Dとした。
【0086】
アルミノシリケート反応混合物を以下の方法で調製した。ビーカー中で84.88g分のAl(Osec−Bu)(95%+)を386.73g分のDEDMAOH(20%aq)に激しく混合しつつ加えた。266.66g分の沈降シリカ(UltrasilTM VN SP3、89%SiO)を反応混合物に加えた。600gの分量の脱イオン水を反応混合物に加えた。その後、48gの脱イオン水に溶解した13.37gのNaOHを含有する溶液を、混合しつつ反応混合物に加えた。反応混合物を20分間にわたり完全に混合した。140g分のスラリー状UZM−8種結晶を反応混合物に加え、20分間にわたり完全に混合した。スラリー状UZM−8種結晶は、熟成後、濾過、遠心分離または他の手段により単離する前に、UZM−8ゼオライトを作成するために用いられる反応混合物である。その後、反応混合物を2Lの撹拌機付き反応器に移し、2hrで150℃まで加熱した後、150℃で216hrにわたり熟成させた。固体生成物を濾過により収集し、脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥した。単離した生成物は、粉末X線回折分析によりUZM−8と同定された。元素分析は、単離した生成物の組成がSi/Al=11.00、Na/Al=0.47、N/Al=1.17、およびC/N=5.53の元素モル比からなることを示した。単離した生成物をアンモニウムイオン交換し、洗浄し、触媒Bについて記載したように乾燥した。乾燥した材料の試料の1つを触媒Bについて記載したように焼成した。その後、この試料の場合、BET表面積は493m/gであることが見いだされ、ミクロ細孔容積は0.13cc/gであった。触媒Dについて記載した方法で、乾燥した材料の他の試料を配合して触媒にし、活性化した。この触媒を触媒Eとした。
【0087】
アルミノシリケート反応混合物を以下の方法で調製した。タンク中で、2115.55g分のDEDMAOH(20%aq)を10kgの脱イオン水に加えた。781.88g分の液体アルミン酸ナトリウムを反応混合物に徐々に加え、反応混合物を20minにわたり完全に混合した。2877.01g分の沈降シリカ(UltrasilTM VN SP3、89%SiO)を反応混合物に徐々に加え、20minにわたり完全に混合した。1400g分のスラリー状UZM−8種結晶を反応混合物に加え、該反応混合物をさらに20分間にわたり完全に混合した。その後、反応混合物を19Lの撹拌機付き反応器に移した。タンクを525gの脱イオン水ですすぎ、すすぎ液を反応器に移して反応混合物中に混合した。該反応混合物を6時間で150℃まで加熱し、150℃で138時間にわたり熟成させた。固体生成物を遠心分離により収集し、脱イオン水で洗浄し、50℃で乾燥した。単離した生成物は、粉末X線回折分析によりUZM−8と同定された。元素分析は、単離した生成物の組成がSi/Al=10.46、Na/Al=0.49、N/Al=0.59、およびC/N=6.22の元素モル比からなることを示した。単離した生成物をアンモニウムイオン交換し、洗浄し、触媒Bについて記載したように乾燥した。乾燥した材料の試料の1つを触媒Bについて記載したように焼成した。その後、この試料の場合、BET表面積は530m/gであることが見いだされ、ミクロ細孔容積は0.135cc/gであった。触媒Dについて記載した方法で、乾燥した材料の他の試料を配合して触媒にし、活性化した。この触媒を触媒Fとした。
【0088】
実施例2
実施例1のための試験に用いた実験手順は以下のとおりであった。ある体積の試験触媒を円筒形反応器に充填した。反応器は、固定触媒床の長さに沿った複数の距離において温度を測定するために位置決めされたサーモウェル中の熱電対を装備していた。乾燥ベンゼンを、260℃において、6.7hr−1のベンゼンのLHSVで24時間にわたり反応器に通した。
【0089】
その後、未使用ベンゼンの流量を調整し、初期試験条件になるように、反応器入口温度を所望の距離平均触媒床温度(distance average bed temperature)(DABT)より50℃低い温度に下げた。本明細書中で用いる場合、DABTは、触媒床温度を触媒床に沿った距離に対してプロットし、触媒床の入口から出口までの曲線の下側の面積をコンピューターで計算し、該面積を触媒床の長さで割ることにより算出される温度を意味する。未使用エチレンを反応器に導入した。その後、反応器流出物の一部分を再循環させ、これにより、未使用ベンゼン、未使用エチレン、および再循環された反応器流出物を組み合わせた供給物を反応器に流した。反応器入口温度を調整して所望のDABTを維持する一方、反応器流出物をサンプリングして分析した。その後、反応器入口温度および/または再循環される反応器流出物の量を調整し、反応器流出物を再びサンプリングした。このプロセスを、すべての所望のDABTおよび流出物再循環比(R/FF)における測定値および試料が得られるまで繰り返した。各触媒の性能を測定した期間に起こった触媒失活は最小限であったと考えられる。
【0090】
エチレンのWHSVは、触媒Aの試験では0.76hr−1、触媒BおよびCの試験では0.90〜0.92hr−1であった。これらの試験での未使用ベンゼンと未使用エチレンのモル比は2であった。これらの試験でのR/FFは4または8であった。エチル基あたりのアリール基のモル比は、組み合わされた反応器供給流と反応器流出物流全体とで実質的に同じなので、エチル基あたりのアリール基のモル比は、反応器流出物流のいずれかの部分を再循環することにより著しい影響を受けない。
【0091】
結果を図1〜4に示す。214〜218℃および239〜244℃のDABTで行った試験の追加的結果を表1に示す。図1〜4および表1の各結果は、各試験条件での測定値および/または分析値からの平均値である。図1は(EB+DEB+TEB+TeEB)への合計選択率対EBへの選択率のグラフであり、触媒Aを用いるプロセスと比較して、触媒BまたはCを用いるプロセスが所定のEB選択率において高い(EB+DEB+TEB+TeEB)への合計選択率を有することを示している。図2は(C−Bz+C−EB+C−DEB)への合計選択率対DABTのグラフであり、触媒BまたはCを用いるプロセスが、触媒Aを用いるプロセスと比較して、所定のDABTにおいて低い(C−Bz+C−EB+C−DEB)への合計選択率を有することを示している。図3は(DPE+EDPE)への合計選択率対DABTのグラフであり、触媒BまたはCを用いるプロセスが、触媒Aを用いるプロセスと比較して、所定のDABTにおいて低い(DPE+EDPE)への合計選択率を有することを示している。これらの結果は、アルキル化のための触媒BまたはCを用いるアルキル化−トランスアルキル化の組合わせプロセスが、触媒Aを用いるプロセスより多くのEBをもたらすことを示している。
【0092】
表1中の触媒Bに関する試験3および5は、R/FFが4.1から8.1にほぼ倍増しているにもかかわらず、EBへの選択率ならびに(EB+DEB+TEB+TeEB)、(C−Bz+C−EB+C−DEB)、および(DPE+EDPE)への各合計選択率は、ほぼ同じままであることを示している。
【0093】
同じDABTおよびR/FFにおいて、UZM−8ゼオライトのSi/Alモル比の31.38(触媒C)から23.54(触媒B)への変化は、実質的に同じまたはより高いEBへの選択率および(EB+DEB+TEB+TeEB)への合計選択率をもたらした。4.1〜4.3のR/FFにおいて、試験4および7は217〜218℃のDABTでこのことを示し、試験3および6は244℃のDABTでこのことを示している。これに加えて、(C−Bz+C−EB+C−DEB)への合計選択率は低下した。
【0094】
実施例3
実施例3のための試験に用いた実験手順は、実施例3のための試験では触媒が触媒Dであり、エチレンのWHSVが0.89hr−1であり、未使用ベンゼンと未使用エチレンのモル比が1.8であった点を除き、実施例2と同様であった。実施例3において、試験1および2の期間中のR/FFは4.3であった。その後、試験3の期間中は反応器流出物の再循環を中断した。試験を実施した期間に起こった触媒失活は最小限であったと考えられる。
【0095】
表2に示す結果は、各試験条件での測定値および/または分析値からの平均値である。表2は、ほぼ同じエチレン転化率において、反応器流出物を再循環させると、EB選択率および(EB+DEB+TEB+TeEB)への合計選択率が上昇し、(C−Bz+C−EB+C−DEB)および(DPE+EDPE)への合計選択率が低下したことを示している。これに加えて、反応器流出物を再循環させると、非芳香族化合物ならびにDPEおよびEDPEより重質な化合物への選択率が少なくとも66%低下した。
【0096】
実施例4
ある体積の試験触媒を実施例1に記載の円筒形反応器に充填した。乾燥ベンゼンを、260℃において、6.7hr−1のベンゼンのLHSVで24時間にわたり反応器に通した。その後、未使用ベンゼンの流量を調整し、初期試験条件になるように、反応器入口温度を所望のDABTより50℃低い温度に下げた。未使用エチレンを反応器に導入した。この試験での未使用ベンゼンと未試料エチレンのモル比は2であった。その後、反応器流出物の一部分を再循環させ、これにより、未使用ベンゼン、未使用エチレン、および再循環された反応器流出物を組み合わせた供給物を反応器に流した。反応器入口温度を調整して所望のDABTを維持した。触媒床内の温度は、反応が発熱性であるため、入ってくる供給物が触媒と接触すると上昇した。試験条件にある期間(例えば100時間)中に、時々、温度分布(触媒床温度対触媒床の至る所の距離)をプロットした。触媒失活速度は、触媒床の至る所でのこれら温度分布の経過速度であると考えた。各温度分布の位置を、温度分布における温度上昇の末端の目安である活性帯域の末端により定義した。温度分布上での活性帯域の末端は、温度上昇の直線部と最高触媒床温度における水平線との直線外挿の交点における触媒床中の距離であった。1セットの試験条件で失活速度を決定した後、未使用エチレンおよび未使用ベンゼンの速度を上昇(より高いLHSV)させて、失活速度を加速させた。
【0097】
結果を表3に示す。低いWHSV条件および運転中の比較しうる時間において、触媒Eの失活速度は触媒Aの失活速度の10分の1であった。エチレンのWHSVを上昇させた後、触媒Aの失活速度はわずかにしか低下せず、触媒Aは失活し続けたので、活性帯域の末端は触媒床の出口方向に移動し続けた。運転中の比較しうる時間中に、触媒Eの失活速度も低下し、触媒Aの失活速度よりはるかに遅いままであった。実際、より高いWHSV条件において、触媒Eの失活速度は、活性帯域の末端が触媒床の出口方向への移動を中断し、その代わりに触媒床の入口方向に移動するような程度で低下する。これは、活性触媒帯域の末端の位置対運転時間のプロットの勾配が負である(すなわち−0.0004)ことにより証明される。これは、アルキル化プロセスにおいて触媒Eを反応器流出物の再循環物と一緒に使用すると、触媒Aを用いる場合に比べ、エチレン処理量の増大と、したがってより長期間にわたるアルキレート生成量の増大が可能になることを示している。
【0098】
実施例5
実施例5のための試験に用いた実験手順は、触媒Fを用い、オレフィンがプロピレンであり、プロピレンのWHSVが1.07hr−1であり、未使用ベンゼンと未使用プロピレンのモル比が2.9であった点を除き、実施例2と同様であった。それぞれ、R/FFは4.9、7.2および11.4であり、組み合わせた供給物中のプロピレン濃度は2.7重量%、1.9重量%、および1.3重量%であった。プロピル基あたりのアリール基のモル比は、組み合わされた反応器供給流と反応器流出物流全体とで実質的に同じであり、したがって、プロピル基あたりのアリール基のモル比は、反応器流出物流のいずれかの部分を再循環することにより著しい影響を受けていない。試験を実施した期間に起こった触媒失活は最小限であったと考えられる。
【0099】
図4に示す結果は、各試験条件での測定値および/または分析値からの平均値である。図4は、より多くの反応器流出物を再循環させると、クメン(IPB)、ジプロピルベンゼン(DPB)およびトリプロピルベンゼン(TPB)への合計選択率が上昇したことを示している。
【0100】
実施例6
実施例6のための試験に用いた実験手順は、触媒Eを用い、オレフィンがプロピレンであり、未使用ベンゼンと未使用プロピレンのモル比が2.4であった点を除き、実施例4と同様であった。
【0101】
結果を表4に示す。低いWHSV条件および運転中の比較しうる時間において、触媒Eの失活速度は触媒Aの失活速度の38%であった。エチレンのWHSVを上昇させた後、触媒Aの失活速度は5倍に増大したが、運転中の比較しうる時間中に、触媒Eの失活速度は低下した。
【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】反応器流出物の再循環物を用いた試験の結果を示すグラフである。
【図2】反応器流出物の再循環物を用いた試験の結果を示すグラフである。
【図3】反応器流出物の再循環物を用いた試験の結果を示すグラフである。
【図4】反応器流出物の再循環物を用いた試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノアルキル化芳香族化合物を生成するためのアルキル化法であって、該方法が、
a)供給芳香族化合物を含む芳香族供給原料と、C〜Cオレフィンを含むオレフィン供給原料と、供給芳香族化合物より1〜6個多くのC〜Cアルキル基を有する供給芳香族化合物のアルキル化誘導体を含む追加的流れとを、固体触媒が入っているアルキル化触媒床に通すこと、ここにおいて、固体触媒は、少なくともAlOおよびSiO四面体単位の層状フレーム構造と、合成したままの無水ベースで以下の実験式:
【化1】

[式中、Mは、少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、“m”はMと(Al+E)のモル比であって0〜2.0で変動し、Rは、第四級アンモニウムカチオン、ジ第四級アンモニウムカチオン、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、プロトン化アルカノアミンおよび第四級化アルカノールアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1つのオルガノアンモニウムカチオンであり、“r”はRと(Al+E)のモル比であって0.05〜5.0の値を有し、“n”はMの加重平均原子価であって1〜2の値を有し、“p”はRの加重平均原子価であって1〜2の値を有し、Eは、ガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウムおよびそれらの混合物からなる群より選択される元素であり、“x”はEのモル分率であって0〜1.0の値を有し、“y”はSiと(Al+E)のモル比であって6.5〜35で変動し、そして“z”は、Oと(Al+E)のモル比であって、以下の式:
【数1】

により決定される値を有する]
により表される組成とを有する微孔性結晶質ゼオライトを含み、以下の表A:
【表1】

に示すd間隔および強度を少なくとも有するX線回折パターンを有することを特徴とする;
b)アルキル化条件において固体触媒存在下のアルキル化触媒床中で供給芳香族化合物をC〜Cオレフィンでアルキル化して、モノアルキル化芳香族化合物を形成すること、ここにおいて、モノアルキル化芳香族化合物は供給芳香族化合物より1個多くのC〜Cアルキル基を有する;ならびに
c)モノアルキル化芳香族化合物を含む流出物流をアルキル化触媒床から取り出すこと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
アルキル化条件が、段階(a)でアルキル化触媒床に通す供給芳香族化合物、C〜Cオレフィン、および供給芳香族化合物のアルキル化誘導体の重量に基づき最大17重量%のC〜Cオレフィン濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給芳香族化合物のアルキル化誘導体が供給芳香族化合物より2個多くのC〜Cアルキル基を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、追加的流れが流出物流のアリコート部分を含み、アルキル化条件が、流出物流のアリコート部分と段階(a)でアルキル化触媒床に通す供給芳香族化合物およびC〜Cオレフィンとの重量比が少なくとも0.1であることを含むことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、アルキル化条件がアリール基とC〜Cアルキル基のモル比が最大6であることを含むことを特徴とする、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
供給芳香族化合物が、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラリン、フェナントレン、およびそれらのアルキル化誘導体からなる群より選択される、請求項1、2、3、4または5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
供給芳香族化合物がベンゼンを含み、供給オレフィンがエチレンを含み、モノアルキル化芳香族化合物がエチルベンゼンを含む、請求項1、2、3、4、5または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
微孔性結晶質ゼオライトがイオン交換されており、0.1重量%未満のアルカリおよびアルカリ土類金属を含有する、請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
微孔性結晶質ゼオライトが焼成されており、表B:
【表2】

に示すd間隔および強度を少なくとも有するX線回折パターンを有することを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
微孔性結晶質ゼオライトがUZM−8である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−544986(P2008−544986A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519416(P2008−519416)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/024305
【国際公開番号】WO2007/005317
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】