説明

Vリブドベルト及びその製造方法

【課題】優れた異音抑制効果が長期に亘って持続するVリブドベルト、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】VリブドベルトBは、複数のVリブ14のそれぞれがゴム組成物で形成されたVリブ本体15表面に接着剤層16を介して短繊維17がVリブ14表面から突出するように貼設されて構成されており、接着剤層16は、Vリブ14のリブ先端部の厚さが10〜50μmであると共にリブ側面部の厚さが50〜200μmであり、且つ前者の方が後者よりも薄いことを特徴とする。VリブドベルトBの製造方法は、Vリブ本体15表面を覆うように第1接着剤層16aを形成した後、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層16aを除去してその上に第2接着剤層16bを形成することにより、接着剤層16を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vリブドベルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の補機駆動用ベルト伝動装置に使用する伝動ベルトとしてVリブドベルトが広く用いられている。
【0003】
ところで、自動車のエンジンでは、一定周期で爆発燃焼が生じ、それがクランク軸の角速度に微少な影響を与えるため、エンジンの回転数に回転変動が生じる。そして、そのような回転変動が生じると、クランクシャフトプーリに巻き掛けられたVリブドベルトが回転変動に追随できずにプーリ上でスティックスリップを起こしてしまう。また、Vリブドベルトが被水すると、Vリブドベルト表面の摩擦係数が部分的に大きくなりスティックスリップを起こしてしまう。
【0004】
これらのスティックスリップにより、ベルト走行中に異音が発生する。スティックスリップ異音を抑制するため、VリブドベルトのVリブ表面から短繊維を突出させ、それによってベルト表面の摩擦係数を低減することが行われている。
【0005】
特許文献1には、VリブドベルトのVリブ表面から短繊維が突出している構成が開示されており、また、短繊維を突出するように設ける方法として、Vリブ表面に接着剤層を形成し、その接着剤層の上に短繊維を吹き付けて植毛することが記載されている。
【0006】
特許文献2には、VリブドベルトのVリブ表面に、エチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して超高分子量ポリエチレン粉体を分散させたゴム組成物からなる表面層を形成し、この表面層に短繊維が植毛された構成が開示されている。そして、これによってスティックスリップ異音の抑制効果や優れた耐摩耗性が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−230679号公報
【特許文献2】特開2007−170454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スティックスリップ異音を抑制するために短繊維をVリブドベルトのVリブ表面から突出するように設けると、ベルト走行を開始した初期段階では異音抑制効果が得られるが、経時に伴ってVリブ表面から短繊維が抜け落ちてしまい、異音抑制効果が消失する問題がある。また、短繊維の抜け落ちを抑制するために接着剤層を厚くすると、接着剤層にクラックが生じやすくなり、それによってVリブドベルト表面にVリブ本体のゴムが露出してしまい、異音発生の原因となる。
【0008】
本発明の目的は、優れた異音抑制効果が長期に亘って持続するVリブドベルト、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のVリブドベルトは、ベルト内周側にベルト幅方向に並ぶと共に各々がベルト長さ方向に伸びるように設けられた複数のVリブを有するものであって、
複数のVリブのそれぞれは、ゴム組成物で形成されたVリブ本体表面に接着剤層を介して短繊維がVリブ表面から突出するように貼設されて構成されており、
接着剤層は、Vリブのリブ先端部の厚さが10〜50μmであると共にリブ側面部の厚さが50〜200μmであり、且つ前者の方が後者よりも薄いことを特徴とする。
【0010】
本発明のVリブドベルトは、リブ先端部に設けられた短繊維の方がリブ側面部に設けられた短繊維よりも配設密度が小さいことが好ましい。
【0011】
本発明のVリブドベルトは、Vリブ本体を形成するゴム組成物には短繊維が含まれていないことが好ましい。
【0012】
本発明のVリブドベルトの製造方法は、接着剤層を、Vリブ本体表面を覆うように第1接着剤層を形成した後、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層を除去し、その上に第2接着剤層を形成することにより構成することを特徴とする。
【0013】
本発明のVリブドベルトの製造方法は、第1接着剤層の不完全硬化時に、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層の除去を行うことが好ましい。
【0014】
本発明のVリブドベルトの製造方法は、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層の除去を、硬質部材を押しつけて削り取ることにより行ってもよい。
【0015】
この場合、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層の除去を、ベルト走行させながら行うことが好ましい。
【0016】
また、その場合、第1接着剤層の削り屑をエアで吹き飛ばすことが好ましい。
【0017】
本発明のVリブドベルトの製造方法は、短繊維を植毛して設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のVリブドベルトは、複数のVリブのそれぞれは、ゴム組成物で形成されたVリブ本体表面に接着剤層を介して短繊維がVリブ表面から突出するように貼設されて構成されており、接着剤層がリブ先端部の方がリブ側面部よりも薄く、リブ側面部の厚さが50〜200μmであるので、リブ側面部からの短繊維の脱落が抑止され、異音抑制効果を長期に亘って持続させることができる。
【0019】
また、本発明のVリブドベルトは、接着剤層がリブ先端部の方がリブ側面部よりも薄く、リブ先端部の厚さが10〜50μmであるので、ベルト屈曲時にリブ先端部の接着剤層に圧縮力が加わっても接着剤層にクラックが生じVリブ本体のゴムがVリブ表面に露出するのが抑制され、結果として、異音抑制効果を長期に亘って持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(Vリブドベルト)
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るVリブドベルトBを示す。このVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置に用いられるものであり、ベルト周長700〜3000mm、ベルト幅10〜36mm、及びベルト厚さ4.0〜5.0mmに形成されている。
【0022】
このVリブドベルトBは、接着ゴム層11、ベルト内周側の圧縮ゴム層12、及びベルト外周側の背面ゴム層13の三重層に構成されている。また、接着ゴム層11には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように心線18が埋設されている。
【0023】
接着ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に形成され、例えば、厚さ1.0〜2.5mmに形成されている。接着ゴム層11は、原料ゴムに種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。接着ゴム層11を構成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(H−NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、ブチルゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、塩素化ポリエチレン(CM)等が挙げられる。配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラックなどの補強材、充填材等が挙げられる。なお、接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、原料ゴムに配合剤が配合されて混練された未加硫ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたものである。
【0024】
圧縮ゴム層12は、リブ先端部を構成する複数のVリブ本体15がベルト内周側に垂下するように設けられている。これらの複数のVリブ本体15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略台形の突状に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ本体15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmに形成されている。また、リブ数は、例えば、3〜6個である(図1では、リブ数が3)。各Vリブ本体15は、その表面に接着剤層16を介して短繊維17が貼設されてVリブ14を形成している。
【0025】
圧縮ゴム層12は、原料ゴムに種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。圧縮ゴム層12を構成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(H−NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、ブチルゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、塩素化ポリエチレン(CM)等が挙げられる。原料ゴムは、これらのうち単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。配合剤としては、例えば、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、短繊維、無機充填材、カーボンブラック等の補強材等が挙げられる。なお、圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物は、原料ゴムに配合剤が配合されて混練された未加硫ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤より架橋させたものである。
【0026】
架橋剤としては、例えば、硫黄や、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ビス(t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらのうち、架橋剤については、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。
【0027】
架橋促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾン、ジベンドチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩等のチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・モノスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィド等のチウラム系架橋促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系架橋促進剤;ビスマレイミド系架橋促進剤;エチレンチオウレア系架橋促進剤等が挙げられる。これらのうち、架橋促進剤については、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。
【0028】
架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、不飽和カルボン酸金属塩、オキシム類化合物、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄等が挙げられる。これらのうち、架橋助剤については、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。
【0029】
短繊維としては、例えば、ポリエステル短繊維、ポリアミド短繊維、芳香族ポリアミド短繊維、ポリビニルアルコール短繊維、炭素短繊維、ポリテトラフルオロエチレン短繊維、綿短繊維等が挙げられる。これらのうち、短繊維については、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。短繊維は、例えば、長さが0.1〜5.0mm、及びアスペクト比(長さL、太さDに対してL/Dの比の値)が30〜300である。なお、クラックの発生を抑制する観点からは、圧縮ゴム層12には短繊維が配合されていないことが好ましい。
【0030】
無機充填材としては、例えば、グラファイト、シリカ、二硫化モリブデン、雲母、タルク、三酸化アンチモン、二セレン化モリブデン、二硫化タングステンや、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン、架橋アクリル樹脂、架橋ゴム微粒子等の粒子が挙げられる。これらのうち、無機充填材については、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。なお、クラックの発生を抑制する観点からは、圧縮ゴム層12には径又は長さが1μm以上の無機充填材が配合されていないことが好ましい。
【0031】
カーボンブラックとしては、例えば、カーボンブラックSAF、カーボンブラックHAF、カーボンブラックMAF、カーボンブラックGPF、カーボンブラックSRF、FT級カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラックについては、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。
【0032】
複数のVリブ14のそれぞれは、例えば、断面が略台形の突条のものである。Vリブ14の断面の形状が略台形である場合、リブ先端部とは台形のVリブ先端側の底辺に対応する部分(最もベルト内周側となる部分)であり、リブ側面部とは、台形の斜辺に対応する部分とV溝部分を合わせた部分である。なお、Vリブ14の断面の形状が略三角形や略半円形等であってもよいが、後述する第1接着剤層16aのリブ先端部の削り取りを確実に行う点から、Vリブ14の断面の形状は略台形であることが好ましい。
【0033】
Vリブ14は、Vリブ本体15の表面に、接着剤層16を介して短繊維17が貼設されたものである。なお、短繊維17はVリブ14表面から突出するように設けられている。
【0034】
接着剤層16は、リブ先端部の方がリブ側面部よりも厚さが薄くなるように構成されている。接着剤層16は、リブ先端部の厚さが10〜50μmであり、10〜30μmであることが好ましく、15〜25μmであることがより好ましい。厚さが10μmよりも薄いと他の部品と接着する等の原因で傷が付き、剥がれが生じてしまう。一方、厚さが50μmよりも厚いと、ベルト屈曲時に受ける圧縮力等によって早期にリブ先端部にクラックが発生しやすくなる。また、接着剤層16は、リブ側面部の厚さが50〜200μmであり、70〜150μmであることが好ましく、80〜120μmであることがより好ましい。厚さが50μmよりも薄いと短繊維17を十分に植毛することができず、短繊維17の脱落が起こる。一方、厚さが200μmよりも厚いと、ベルト屈曲時に受ける圧縮力等によって早期にリブ側面部にクラックが発生しやすくなる。
【0035】
接着剤層16を形成している接着剤としては、例えば、RFL接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、スチレン系接着剤、ポリカーボネート系接着剤、ポリエーテル系接着剤、未架橋ゴム組成物を溶剤に溶解させたゴム糊等が挙げられる。これらのうち、クラックの発生を抑制する観点から、優れた柔軟性及び耐摩耗性を備えたウレタン系接着剤を接着剤として使用することが好ましい。ウレタン系接着剤としては、例えば市販品として、ADEKA社製のアデカボンタイターF1200、トーヨーポリマー社製のポリネート704−8等が挙げられる。
【0036】
接着剤層16には、耐摩耗性材料が配合されていることが好ましい。耐摩耗性材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン、芳香族ポリアミド、ポリアリレート等の樹脂粒子が挙げられる。これらのうち、耐摩耗性材料としては、耐摩耗性に優れる点で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。耐摩耗性材料は、例えば、接着剤層16の接着剤成分100質量部に対する配合量が20〜40体積%であり、粒径が5〜20μmである。
【0037】
短繊維17としては、例えば、ポリエステル短繊維、ポリビニルアルコール短繊維、ポリアミド短繊維、綿短繊維、絹短繊維、麻短繊維、羊毛短繊維、セルロース短繊維、芳香族ポリアミド短繊維、全芳香族ポリエステル短繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール短繊維、炭素短繊維、ポリケトン短繊維、玄武岩短繊維等が挙げられる。これらのうち、短繊維17については、単一種で構成されていても、複数種で構成されていても、いずれでもよい。短繊維17は、例えば、繊維長が0.1〜10mm、及びアスペクト比が30〜50である。
【0038】
短繊維17は、リブ先端部の方がリブ側面部よりも配設密度が小さくなるように貼設されている。この短繊維17は、植毛によって設けられたものである。短繊維17は、例えば、リブ先端部には1cmあたり1〜10万本植毛されており、Vリブ14表面から短繊維17の先端の0.1〜10mmが突出している。また、短繊維17は、例えば、リブ側面部には1cmあたり10〜20万本植毛されており、Vリブ14表面から短繊維17の先端の0.1〜0.5mmが突出している。
【0039】
接着剤層16は、ベルト走行を行うとリブ側面部の方がリブ先端部に比べて摩耗しやすいが、短繊維がリブ先端部よりも多く貼設されており、また、接着剤層16に深く埋め込まれるようにして設けられているので、短繊維17の脱落を抑止することができる。そして、結果として、長期に亘る異音抑制効果を得ることができる。
【0040】
接着ゴム層11と圧縮ゴム層12とは、別々のゴム組成物で形成されていても、また、全く同じゴム組成物で形成されていても、いずれでもよい。
【0041】
心線18は、接着ゴム層11に、ベルト長さ方向に延びると共にベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設されている。心線18は、ポリエステル(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維等の撚り糸18’で構成されている。心線18は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理が施されている。
【0042】
背面ゴム層13は、例えば厚さ0.3〜0.8mmのシート状に形成され、接着ゴム層11のベルト外周側に一体に設けられてベルト背面部を構成している。背面ゴム層13は、原料ゴムに種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。背面ゴム層13を構成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(H−NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、ブチルゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、塩素化ポリエチレン(CM)等が挙げられる。配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラックなどの補強材、充填材等が挙げられる。なお、背面ゴム層13を形成するゴム組成物は、原料ゴムに配合剤が配合されて混練された未加硫ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤より架橋させたものである。
【0043】
接着ゴム層11と背面ゴム層13とは、別々のゴム組成物で形成されていても、また、全く同じゴム組成物で形成されていても、いずれでもよい。
【0044】
なお、本実施形態では接着ゴム層11の外周側が背面ゴム層13で被覆された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、接着ゴム層11のベルト外周側が背面補強布で被覆された構成であってもよい。
【0045】
以上の構成のVリブドベルトBによれば、接着剤層16のリブ側面部の厚さが50〜200μmであってリブ先端部の厚さよりも厚いので、短繊維17の配設密度がリブ側面部の方がリブ先端部よりも大きくなり、また、リブ側面部では短繊維17が接着剤層16に深く埋め込まれるようにして設けられているので、リブ側面部において短繊維17の脱落を抑止することができ、結果として、長期に亘る異音抑制効果を得ることができる。また、接着剤層16はリブ先端部の厚さが10〜50μmであるので、ベルト走行中にVリブドベルトBが屈曲しても、接着剤層16のリブ先端部に圧縮力が加わることによる接着剤層16のクラックの発生を抑制することができる。
【0046】
(Vリブドベルトの製造方法)
次に、Vリブドベルトの製造方法について図2〜図4に基づいて説明する。このVリブドベルトの製造方法は、ベルトスラブ成形工程、接着剤層形成工程、及び短繊維貼設工程を備えている。
【0047】
<ベルトスラブ成形工程>
まず、原料ゴムに各配合物を配合して、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して未架橋ゴムシートとする。また、心線18となる撚り糸18’をRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を行った後、撚り糸18’をゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。
【0048】
次に、外周にベルト背面を所定形状に形成する成形面を有する内金型と、内周にベルト内側を所定形状に形成する成形面を有するゴムスリーブとを用いて、ベルトスラブB’を成形する。
【0049】
初めに、図2(a)に示すように、内金型の外周を背面ゴム層13を形成するための未架橋ゴムシート13’で被覆した後、その上に、接着ゴム層11の外側部分11bを形成するための未架橋ゴムシート11b’を巻き付ける。次いで、その上に、心線18となる撚り糸18’を螺旋状に巻き付けた後、その上に、接着ゴム層11の内側部分11aを形成するための未架橋ゴムシート11a’を巻き付け、さらにその上に、圧縮ゴム層12を形成するための未架橋ゴムシート12’を巻き付ける。
【0050】
しかる後、内金型上の成形体にゴムスリーブを被せてそれを成形釜にセットし、内金型を高熱の水蒸気などにより加熱すると共に、高圧をかけてゴムスリーブを半径方向内方に押圧する。このとき、ゴム成分が流動すると共に架橋反応が進行し、加えて、撚り糸18’のゴムへの接着反応も進行する。これによって、図2(b)に示すような筒状のベルトスラブB’が成形される。
【0051】
そして、内金型からベルトスラブB’を取り外し、それを長さ方向に数個に分割した後、それぞれの外周を研磨ホイールによって研磨切削して断面V字状の溝を設ける。これにより、ベルトスラブB’にVリブ本体15が成形される。
【0052】
<接着剤層形成工程>
次に、図3に示すように、Vリブ本体15の表面に接着剤層16を形成する。
【0053】
まず、接着剤を溶媒に分散させた塗工液を調製する。例えば、接着剤として水系ポリウレタン接着剤を使用する場合、水を溶媒とした乳濁液を塗工液を調製する。また、例えば、接着剤としてゴム糊を使用する場合、未架橋ゴム組成物をトルエン等を溶媒として塗工液を調製する。接着剤を溶媒に分散させた状態でVリブ本体15表面に塗布するので、接着剤層16の厚さの制御が容易になる。
【0054】
次に、図3(a)に示すように、調製した塗工液をスプレー等を用いてVリブ本体15に塗布する。このときの第1接着剤層16aは、厚さが30〜100μmである。
【0055】
次いで、図3(b)に示すように、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層16aを、図4に示す装置を用いて除去する。この装置で使用される硬質部材41は、例えば、ステンレス製であり、縦50mm、横500mm、及び厚さ10mmの矩形の平板である。硬質部材41は、例えば、直線状に延びる辺を有し、この辺をリブ先端部に対して密着させるようにして第1接着剤層16aの削り取りを行う。図4に示されている2つのプーリPは平プーリであり、ベルトスラブB’は、Vリブ本体15が形成された側がベルト外周となるようにして2つのプーリPに巻き掛けられている。ベルトスラブB’を2つのプーリPに巻き掛けてベルト走行させると共に、硬質部材41をベルトスラブB’の第1接着剤層16aが形成された部分に押しつける。これにより、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層16aが削り取られる。
【0056】
リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層16aの削り取りは、第1接着剤層16aを塗布した後、それが完全に硬化する前に行うことが好ましい。第1接着剤層16aが完全に硬化してしまうと、第1接着剤層16aの削り取りが困難になるからである。また、リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層16aの削り取りは、第1接着剤層16aを塗布した後所定時間を経てから行うことが好ましい。第1接着剤層16aを塗布した直後に第1接着剤層16aの削り取りを行うと、硬質部材41で削ろうとする接着剤が隣り合うVリブ14とVリブ14との間に流れ込んでしまう虞があるからである。具体的には、例えばウレタン系接着剤を使用した場合、第1接着剤層16aを塗布した後10〜20分経過後にリブ先端部に対応する部分の第1接着剤層16aの削り取りを行うことが好ましい。
【0057】
また、ベルト走行及び第1接着剤層16aの削り取りと同時に、送風装置42等によって、削り取りの際に生じた第1接着剤層16aの削り屑を吹き飛ばして除去する。削り屑がベルトスラブB’のVリブ本体15表面に付着した状態で残ってしまうと、VリブドベルトBのリブ先端部に段差ができて不良品となるが、送風装置42でエアを送って削り屑をVリブ本体15表面から吹き飛ばすので、かかる問題は生じない。
【0058】
続いて、リブ側面部のみに第1接着剤層16aが形成されたVリブ本体15の表面に、スプレー等を用いて第2接着剤層16bを塗布する。これにより、リブ先端部の厚さがリブ側面部の厚さよりも薄くなるように接着剤層16を設けることができる。
【0059】
<短繊維貼設工程>
次に、表面に接着剤層16が形成されたVリブ本体15に、さらに、植毛によって短繊維17を貼設する。短繊維17は、例えば、予め静電処理を行ったものである。このとき、短繊維17がVリブ本体15表面から突出するようにして短繊維17を設ける。短繊維17の植毛方法としては、例えば、公知の吹き付けによる植毛を用いることができる。吹き付けによる植毛は、短繊維17が気流に搬送されて接着剤層16の表面に貼設されるので、接着剤層16の深い部分にまで短繊維17を埋め込むことが可能である。
【0060】
なお、短繊維17の植毛は、接着剤層16が完全に硬化する前に行うことが好ましい。接着剤層16が完全に硬化してしまうと、短繊維17の植毛が困難になるからである。短繊維17の植毛は、第2接着剤層16bを形成した後すぐに行うことがより好ましい。
【0061】
接着剤層16は、リブ先端部の方がリブ側面部よりも薄くなるように設けられるので、リブ側面部にはより多くの短繊維17が貼設されることとなり、しかも、短繊維17が接着剤層16に深く埋め込まれることとなるので、リブ側面部の短繊維17の抜け落ちが抑制される。そのため、長期に亘って異音抑制効果を持続させることができる。
【0062】
なお、短繊維17を貼設する方法は上記説明した吹き付けによる植毛に限られるものではなく、例えば、静電植毛による植毛によって短繊維17を植毛してもよい。ただし、静電植毛を行った場合には、静電気力によって短繊維17が捕捉されやすくなり、リブ側面部の接着剤層16への植毛が不十分となる可能性があるので、吹き付けによる植毛で短繊維17を貼設することが好ましい。
【0063】
続いて、加熱乾燥又は自然乾燥等によって接着剤層16に含まれる溶媒成分を揮発又は蒸発させ、接着剤層16を乾燥させる。
【0064】
最後に、ベルトスラブB’を所定幅に幅に輪切りして表裏を裏返すことにより、VリブドベルトBが得られる。
【0065】
次に、上記VリブドベルトBを用いた自動車のエンジンルームに設けられる補機駆動ベルト伝動装置50について説明する。
【0066】
図5は、その補機駆動ベルト伝動装置50のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置50は、4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられたサーペンタインドライブ方式のものである。
【0067】
この補機駆動ベルト伝動装置50のレイアウトは、最上位置のパワーステアリングプーリ51、そのパワーステアリングプーリ51の下方に配置されたACジェネレータプーリ52、パワーステアリングプーリ51の左下方に配置された平プーリのテンショナプーリ53と、そのテンショナプーリ53の下方に配置された平プーリのウォーターポンププーリ54と、テンショナプーリ53の左下方に配置されたクランクシャフトプーリ55と、そのクランクシャフトプーリ55の右下方に配置されたエアコンプーリ56とにより構成されている。これらのうち、平プーリであるテンショナプーリ53及びウォーターポンププーリ54以外は全てリブプーリである。そして、VリブドベルトBは、Vリブ14側が接触するようにパワーステアリングプーリ51に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ53に巻き掛けられた後、Vリブ14側が接触するようにクランクシャフトプーリ55及びエアコンプーリ56に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ54に巻き掛けられ、そして、Vリブ14側が接触するようにACジェネレータプーリ52に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ51に戻るように設けられている。
【0068】
以上のような構成の補機駆動ベルト伝動装置50では、上記VリブドベルトBを用いているので、被水時等にスティックスリップにより異音が発生するのを抑制することができ、しかもその異音抑制効果を長期に亘って持続させることができる。また、補機駆動ベルト伝動装置50のようなサーペンタインドライブ方式のベルト伝動装置ではベルトの屈曲部分が多いが、上記VリブドベルトBを用いているので、Vリブドベルトの屈曲によりリブ先端部の接着剤層16に圧縮力が加わっても、接着剤層16にクラックが生じてVリブ本体15のゴムがVリブ14表面に露出することを抑制でき、長期に亘る異音抑制効果が得られる。
【実施例】
【0069】
Vリブドベルトについて行った試験評価について説明する。
【0070】
(試験評価用ベルト)
以下の実施例1〜4及び比較例1〜3のVリブドベルトを作製した。
【0071】
<実施例1>
以下のVリブドベルトを作製し、これを実施例1とした。
【0072】
−ゴム組成物の調製−
EPDM(ダウケミカル社製 商品名:ノーデルIP4640)を原料ゴムとして、原料ゴム100質量部に対して、ステアリン酸(新日本理化社製 商品名:ステアリン酸50S)1質量部、酸化亜鉛(堺化学工業社製 商品名:酸化亜鉛3種)5質量部、老化防止剤(1)(大内新興化学社製 商品名:ノクラック224)0.5質量部、老化防止剤(2)(大内新興化学社製 商品名:ノクラックCD)2質量部、カーボンブラック(昭和キャボット社製 商品名:ショウワブラックIP200)60質量部、オイル(出光興産社製 商品名:PW−90)4質量部、及びジクミルパーオキサイド架橋剤(日本油脂社製 商品名:パークミルD)4質量部を配合したものを混練機で混練し、圧縮ゴム層を形成するための未架橋ゴム組成物とした。このゴム組成物の配合は表1にも示す。
【0073】
【表1】

【0074】
−接着剤用塗工液の調製−
ウレタンプレポリマー溶液(トーヨーポリマー株式会社製 商品名:ポリネート704−8、2液性ウレタンプレポリマー、MDI添加品、不揮発分70質量%)を接着成分として、この接着成分100.0質量部に対して硬化剤(トーヨーポリマー株式会社製 商品名:サファロンA)37.6質量部、PTFE粒子(株式会社喜多村製 商品名:KTL−10N)63.0質量部、及び酢酸ブチル61.5質量部を配合して攪拌することにより、接着剤層を形成するための塗工液を調製した。この塗工液の配合は表2にも示す。
【0075】
【表2】

【0076】
−短繊維の調製−
Vリブ本体に植毛する短繊維として、アラミド短繊維(帝人社製、商品名:テクノーラ、繊維長0.5mm、太さ1.7dT)を使用した。このアラミド短繊維には、予め電着処理を行った。
【0077】
−Vリブドベルトの成形−
上述のゴム組成物、接着剤用塗工液、及び短繊維を用いて、実施形態に説明した方法に従ってVリブドベルトを作製した。このVリブドベルトは、リブ先端部の接着剤層の厚さが20μm、及びリブ側面部の接着剤層の厚さが120μmであり、先端部に植毛された短繊維が約100000本/cm、及び側面部に植毛された短繊維が約15万本/cmであった。また、ベルト周長が1117mm、ベルト幅が10.68mm、ベルト厚さが4.3mm、Vリブ高さが2.0mm、及び、Vリブの傾斜角θが40°であった。
【0078】
なお、このVリブドベルトは、接着ゴム層及び背面ゴム層をEPDM組成物で形成し、心線をポリエステル繊維の撚り糸で形成した。
【0079】
<実施例2>
リブ先端部の接着剤層を厚さ50μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例2とした。
【0080】
<実施例3>
リブ側面部の接着剤層を厚さ50μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例3とした。
【0081】
<実施例4>
リブ側面部の接着剤層を厚さ200μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例4とした。
【0082】
<比較例1>
リブ側面部の接着剤層を厚さ30μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例1とした。
【0083】
<比較例2>
リブ側面部の接着剤層を厚さ300μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例2とした。
【0084】
<比較例3>
リブ先端部の接着剤層を厚さ100μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例3とした。
【0085】
<比較例4>
リブ先端部の接着剤層を厚さ220μm、及び、リブ側面部の接着剤層を厚さ100μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例4とした。
【0086】
<比較例4>
リブ先端部の接着剤層を厚さ100μm、及び、リブ側面部の接着剤層を厚さ100μmとなるように設けたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例5とした。
【0087】
(試験評価方法)
<ベルト走行試験>
図6は、ベルト走行試験に使用したベルト走行試験機60を示す。上下に並ぶように配された大径のリブプーリ61,62(上側が従動プーリ及び下側が駆動プーリ、共にプーリ径120mm)と、それらの上下方向中間位置に設けられたアイドラプーリ63(プーリ径80mm)と、アイドラプーリ63の右方に設けられた小径の従動リブプーリ64(プーリ径55mm)と、で構成されている。そして、VリブドベルトBは、Vリブ側が接触するように大径の従動リブプーリ61,小径の従動リブプーリ64,駆動リブプーリ62に順に巻き掛けられ、そして、背面側が接触するようにアイドラプーリ63に巻き掛けられている。このとき、アイドラプーリ63及び小径の従動リブプーリ64は、それぞれ、ベルト巻き付け角度が90°となるように配置されている。
【0088】
実施例1〜4及び比較例1〜3のVリブドベルトのそれぞれについてベルト走行試験機60に巻き掛け、小径の従動リブプーリ64を側方に559Nで引っ張るようにセットウェイトを付与すると共に大径の従動リブプーリ61に8.8kwの負荷が付与されるように設定し、雰囲気温度120℃の下で駆動リブプーリ62を反時計回りに4900rpmで回転させた。そして、Vリブドベルトの短繊維が脱落してゴムが露出する、或いは、Vリブ表面にクラックが発生して走行不可となる故障が起こるまで、ベルト走行を行った。なお、Vリブドベルト表面をビデオマイクロスコープで倍率100倍にして観察し、短繊維の脱落によって少しでもVリブ本体のゴムがVリブ表面に露出したときをゴムの露出として判断した。
【0089】
(試験評価結果)
表3は、ベルト走行試験の試験結果を示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3によれば、リブ先端部の接着剤層の厚さが等しくリブ側面部の接着剤層の厚さのみが異なる実施例1,3,4及び比較例1,2を比較すると、リブ側面部の接着剤層の厚さが50〜200μmである実施例1,3及び4は、比較例1,2に対して、走行時間が250時間以上と著しく長いことが分かる。リブ側面部の接着剤層の厚さが30μmである比較例1では、接着剤層の摩耗によって早期にVリブ本体のゴムがVリブに露出してしまい、300μmである比較例2では、早期にリブ側面部にクラックが生じている。
【0092】
リブ側面部の接着剤層の厚さが等しくリブ先端部の接着剤層の厚さのみが異なる実施例1,2、及び比較例3を比較すると、リブ先端部の接着剤層の厚さが50μm以下である実施例1,2では、比較例3に対して、走行時間が300時間以上と著しく長いことが分かる。リブ先端部の接着剤層の厚さが100μmである比較例3では、ベルト走行開始4時間後にリブ先端部にクラックが生じている。
【0093】
また、リブ先端部の接着剤層の厚さがリブ側面部の厚さよりも厚い比較例4、及び両者の厚さが等しい比較例5によれば、走行開始後すぐにリブ先端部にクラックが生じてしまうことが分かる。特に、リブ先端部の接着剤層の厚さがリブ側面部の厚さよりも厚い比較例4においては、走行開始後数分でリブ先端にクラックが生じている。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明はVリブドベルト及びその製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施形態に係るVリブドベルトの斜視図である。
【図2】Vリブドベルトの(a)使用材料及び(b)全体構成を合わせて示す斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は、接着剤層の形成方法を示す説明図である。
【図4】第1接着剤層の除去方法を示す説明図である。
【図5】実施形態の補機駆動用ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。
【図6】試験評価に用いたベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
【符号の説明】
【0096】
B Vリブドベルト
14 Vリブ
15 Vリブ本体
16 接着剤層
16a 第1接着剤層
16b 第2接着剤層
17 短繊維
41 硬質部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト内周側にベルト幅方向に並ぶと共に各々がベルト長さ方向に伸びるように設けられた複数のVリブを有するVリブドベルトであって、
上記複数のVリブのそれぞれは、ゴム組成物で形成されたVリブ本体表面に接着剤層を介して短繊維が該Vリブ表面から突出するように貼設されて構成されており、
上記接着剤層は、上記Vリブのリブ先端部の厚さが10〜50μmであると共にリブ側面部の厚さが50〜200μmであり、且つ前者の方が後者よりも薄いことを特徴とするVリブドベルト。
【請求項2】
請求項1に記載されたVリブドベルトにおいて、
上記リブ先端部に設けられた短繊維の方が上記リブ側面部に設けられた短繊維よりも配設密度が小さいことを特徴とするVリブドベルト。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載されたVリブドベルトにおいて、
上記Vリブ本体を形成するゴム組成物には短繊維が含まれていないことを特徴とするVリブドベルト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたVリブドベルトの製造方法であって、
上記接着剤層を、上記Vリブ本体表面を覆うように第1接着剤層を形成した後、上記リブ先端部に対応する部分の該第1接着剤層を除去し、その上に第2接着剤層を形成することにより構成することを特徴とするVリブドベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたVリブドベルトの製造方法において、
上記第1接着剤層の不完全硬化時に、上記リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層の除去を行うことを特徴とするVリブドベルトの製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載されたVリブドベルトの製造方法において、
上記リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層の除去を、硬質部材を押しつけて削り取ることにより行うことを特徴とするVリブドベルトの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載されたVリブドベルトの製造方法において、
上記リブ先端部に対応する部分の第1接着剤層の除去を、ベルト走行させながら行うことを特徴とするVリブドベルトの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれかに記載されたVリブドベルトの製造方法において、
上記第1接着剤層の削り屑をエアで吹き飛ばすことを特徴とするVリブドベルトの製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載されたVリブドベルトの製造方法において、
上記短繊維を植毛して設けることを特徴とするVリブドベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−112449(P2010−112449A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284657(P2008−284657)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】